平成20年3月13日判決言渡平成17年(ワ)第3846号不正競争防止法に基づく差止等請求事件口頭弁論終結の日平成19年12月6日主文 被告Y1株式会社及び被告株式会社Y2は,別紙営業秘密目録(2)記載1のバリ取りツール(BT-13)の図面並びに同目録記載2の設計CADデータ及び表データを使用して,ダイカスト用バリ取りロボットシステム又はダイカスト用面取りロボットシステムを設計又は製造してはならない。 被告Y1株式会社及び被告株式会社Y2は,その占有する別紙営業秘密目録(2)記載1のバリ取りツール(BT-13)の図面の複製物並びに同目録記載2の設計CADデータ及び表データを廃棄せよ。 被告らは,原告に対し,連帯して325万4809円及びこれに対する平成17年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告と被告Y3及び被告Y4との間においては,これを4分し,その1を同被告らの負担とし,その余を原告の負担とし,原告と被告Y1株式会社及び被告株式会社Y2との間においては,これを3分し,その1を同被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。 この判決は,第1項から第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告Y1株式会社及び被告株式会社Y2は,別紙営業秘密目録(1)記載のR番別仕入れ明細を使用して,ダイカスト用ロボットシステムの見積書を作成してはならない。 被告Y1株式会社及び被告株式会社Y2は,別紙営業秘密目録(2)記載のバリ取りツール図面,設計CADデータ及び表データを使用して,ダイカスト用バリ取りロボットシステム又はダイカスト用面取りロボットシステムを設計又は製造してはならない。 被告らは 目録(2)記載のバリ取りツール図面,設計CADデータ及び表データを使用して,ダイカスト用バリ取りロボットシステム又はダイカスト用面取りロボットシステムを設計又は製造してはならない。 被告らは,その占有する別紙営業秘密目録(1)記載のR番別仕入れ明細の複製物並びに別紙営業秘密目録(2)記載のバリ取りツール図面の複製物及び同目録記載の設計CADデータ,表データを廃棄せよ。 被告らは,原告に対し,連帯して,1585万円及びこれに対する平成17年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要原告はロボットシステムにつき我が国有数のシェアを有する会社であり,被告Y3(昭和34年▲月▲日生。)及び被告Y4(昭和49年▲月▲日生。被告Y3と併せて「被告Y3ら」という。)は原告の従業員であった者であり,被告Y1株式会社及び被告株式会社Y2(被告Y1と併せて「被告会社ら」という。)は原告と同種のロボットシステムを取り扱う会社である。 本件は,原告が,過去に受注したロボットシステムの部品構成や仕入額等が記録された別紙営業秘密目録(1)記載のR番別仕入れ明細(以下「本件プライスリスト」という。)並びに別紙営業秘密目録(2)記載1のバリ取りツール図面(以下「本件設計図」という。)及び同目録記載2の設計CADデータ,表データ(以下「本件CADデータ等」といい,本件設計図と併せて「本件設計図等」という。)が原告の営業秘密であり,被告らがこの営業秘密を不正に取得し,不正に使用したとして,被告らに対し,不正競争防止法2条1項7号,8号,3条,4条に基づいて,本件プライスリスト及び本件設計図等の使用差止めとその廃棄及び損害賠償を求めている事案である。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)(1) 当事者ア原告は, 3条,4条に基づいて,本件プライスリスト及び本件設計図等の使用差止めとその廃棄及び損害賠償を求めている事案である。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)(1) 当事者ア原告は,産業用ロボットシステムの製造販売等を営業目的とする株式会社(設立昭和47年12月,資本金4500万円)であり,特に,アルミダイカスト製品の取出しロボットシステム等においては,全国1位のシェアを有している。 イ被告Y1は,ダイカスト生産設備用その他の離型剤,スプレー装置・機器の販売等を営業目的とする株式会社(設立昭和42年2月,資本金5000万円)であり,被告Y2の製造するダイカスト生産設備及び周辺機器の販売を担当する商社である。 被告Y2は,被告Y1のエンジニアリングサービス部門から独立して設立されたダイカスト生産設備及び周辺機器の製造等を営業目的とする株式会社(設立平成8年11月,資本金9750万円)であって,全株式の60%を被告Y1及びその代表取締役であるBが有しており,被告Y1のダイカスト生産設備関係業務の製造部門を担当する子会社である。 被告Y1は,離型剤(製品が金型から離れやすくするために金型に塗布する薬剤)の販売について大きなシェアを有しており,10年くらい前から離型剤の取引先であるダイカスト製品の製造メーカーから,スプレーロボット,取出しロボット等を受注するようになり,当初は,そのシステム開発及び製造を原告に委託していたが,その後,被告Y2においてそのシステム開発及び製造を行うようになったことから,被告会社らは,ダイカスト製品に係るロボットシステムにおいて,原告と競業関係が生ずるようになった。 ウ被告Y3は,もと原告のSI事業部の営業第2課長であったが,平成17年1月31日付けで原告を退社し,同年4月1日に株式会社C(なお,C社 トシステムにおいて,原告と競業関係が生ずるようになった。 ウ被告Y3は,もと原告のSI事業部の営業第2課長であったが,平成17年1月31日付けで原告を退社し,同年4月1日に株式会社C(なお,C社はその後被告Y2に吸収合併された。)を設立してその代表取締役に就任した。 被告Y4は,もと原告の機械設計部主任であったが,被告Y3と同時に原告を退社し,C社の取締役に就任した。 エC社は,産業用ロボットシステム及び工作機械並びにその関連機器の設計,製造,加工,販売等を営業目的として,被告Y3らが中心となって,平成17年4月1日に設立された株式会社(資本金2000万円)であり,被告Y1の常務取締役D及び被告Y2の常務取締役Eがそれぞれ取締役に就任し,被告Y1のダイカスト生産設備関係業務の設計を担当していた。 (2) 原告が設計,製造するバリ取りロボットの概要原告は,アルミダイカスト製品に生ずるバリを取るためのロボットシステムを設計,製造しているが,このバリ取りロボットは,エアシリンダーでシャフトを前後に往復運動させるスケラーと,そのシャフトに装着するスケラー用刃具(円柱状のヤスリ。以下「バリ取りツール」ともいう。)から成るバリ取りハンドをロボットのアームに装着し,スケラー用刃具を前後に往復運動させながらダイカスト製品のバリ部分に接触,移動させることによって,バリを取るものである。また,ダイカスト製品の穴の入り口にバリが生じている場合には,モーターで面取り刃具を回転させる面取りハンドをロボットのアームに装着し,面取り刃具を回転させながらダイカスト製品のバリの生じている穴に押し当てることによって,バリ取りをすると同時に面取りをするものである。 (3) 本訴で原告が主張する営業秘密の概要ア原告は,過去に製造販売したロボットシステムの製造コスト及び構 リの生じている穴に押し当てることによって,バリ取りをすると同時に面取りをするものである。 (3) 本訴で原告が主張する営業秘密の概要ア原告は,過去に製造販売したロボットシステムの製造コスト及び構成部品をその構成ユニット別に明確にするため,ロボットシステムごとに,コンピューター上の「R番別仕入れ明細」に「ユニット」,「分類」,「品名/部品番号」,「メーカー/材質」,「型式」,「数量」,「発注先会社名」,「納入日付」,「金額」を入力し,このデータをコンピューター上で保管していた(以下,このデータを「プライスリスト」という。別紙営業秘密目録(1)記載の製品番号に係るものが本件プライスリストに当たる。)。なお,原告は,ロボットシステムを頭文字にRを付した製品番号(例・R-3346)で管理しており,その製品番号を「R番」と称している。また,「分類」の内訳は,「2:メカ部品費」,「3:メカ購入品費」,「5:メカ外注費」等とされていた。 イ原告は,スケラーに装着して効率よくバリを取るためのバリ取りツールを設計し,本件設計図を作成した。 ウ原告は,F株式会社から受注を受けて,平成16年5,6月ころ,モーター駆動の面取りハンドを装着した天吊り面取りロボットシステム(製品番号「R-3371」。以下「原告システム」という。)を設計,製作したが,その設計の際,本件CADデータ等を作成した。 (4) 被告Y3らが原告を退職した前後の経緯ア被告Y3らは,原告を退社して,被告会社らの協力を得ながら新会社を設立して独立することを決意し,被告Y3は平成16年12月10日に,被告Y4は同月20日ころに,それぞれ,原告に対し,平成17年1月末で退職する旨の辞表を提出した。 イ被告Y4は,平成16年12月21日,被告Y3の社内メールアドレスにあてて,別紙営業秘密 日に,被告Y4は同月20日ころに,それぞれ,原告に対し,平成17年1月末で退職する旨の辞表を提出した。 イ被告Y4は,平成16年12月21日,被告Y3の社内メールアドレスにあてて,別紙営業秘密目録(1)記載のロボットシステムの製品番号(以下「本件各製品番号」という。)を記載した上,「その他,Y3が気になる物件」,「以上の物の価格表を打ち出してもらえませんか?それらをまとめたいと思います。Y2との価格比較をやりたいと,考えていますがどうでしょう?それに伴い,見積もりの見直し等,必要と思いますが。」と記載したメールを送信した。 被告Y3は,被告Y4の求めに応じ,そのころ,本件各製品番号のロボットシステムのプライスリスト(本件プライスリスト)のうち,少なくともその一部を印刷して複製し,これを被告Y4に渡した。 ウ被告Y1の従業員G(昭和46年▲月▲日生。)は,平成16年12月28日午後2時53分,被告Y4の社内メールアドレスにあてて,「いつもお世話になります。今回は助けていただく事となります申し訳ありませんがよろしくお願いします。」,「ちなみに正直受注はしましたがレイアウト及び納入納期程度の受注のみで細かな点の詰めができていませんのでお知恵も借りられればと虫のいい考えをしております。すみません。」,「※取り出し及びトリミング等は弊社より納入しておりますので図面関係あります。」,「※1月8日の弊社訪問時に申し訳ありませんがバリ取りツールの参考図面等の資料がありましたら持参して頂けますでしょうか?弊社検討及び参考図も当日お渡しできると思いますので良い方法を決めたいと考えております。」,「都合の良いことばかりで申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。」とのメールを,「041210-850isバリ取りシステム.pdf」という名称のファイルを 方法を決めたいと考えております。」,「都合の良いことばかりで申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。」とのメールを,「041210-850isバリ取りシステム.pdf」という名称のファイルを添付して送信した(なお,上記の「受注」とは株式会社Hからのロボットシステムの受注のことである。)。 Gは,平成16年12月28日午後2時59分,被告Y4の社内メールアドレスにあてて,「追加分資料です。」とのメールを,「バリ取り箇所12・4.xls」という名称のファイルを添付して送信した。 Gは,同日午後3時5分,被告Y4の社内メールアドレスにあてて,「これで3回目です。メールが入っていないようであれば申し訳ないですが電話をください。」とのメールを送信した。 エ被告Y4は,同月29日,被告Y3の社内メールアドレスにあてて,Gから同月28日午後2時53分に受信した上記メールを転送し,その際,「お疲れ様です。Gさんの物件です。目を通していてください。」とのメッセージを付し,「H.lzh」という名称のファイルを添付した。なお,「H.lzh」という名称のファイルは,被告Y4が,Gから送信された複数のファイルを圧縮したものであって,それらのファイルは,いずれも被告Y1がHから注文を受けたロボットシステムに関するものであり,被告Y2が作成した「バリ取り設置図5」及び「バリ取りセルレイアウト構想側面図」,バリ取り発生箇所等を示した書面,製作工程表,バリ取り工程のサイクルタイムを記載した表の5点であった。 オGは,平成17年1月5日,被告Y4の社内メールアドレスにあてて,同月8日に被告Y2本社及び被告Y1本社において,被告Y1のD常務,G,被告Y2の代表取締役I,E常務ほかが,被告Y3らと面談する予定である旨のメールを送信した。被告Y4は,同月5日,被告Y3の ,同月8日に被告Y2本社及び被告Y1本社において,被告Y1のD常務,G,被告Y2の代表取締役I,E常務ほかが,被告Y3らと面談する予定である旨のメールを送信した。被告Y4は,同月5日,被告Y3の社内メールアドレスにあてて,同メールを転送した。 被告Y4は,同月7日,Gに対し,J株式会社のFVS-1-1(スケラー)が手配できるか否かの確認を求めるメールを送信し,Gは,同日,被告Y4に対し,同スケラーが手配可能である旨のメールを送信した。 カ被告Y3らは,同月8日,予定どおり,被告Y2本社及び被告Y1本社において,D常務,G,I社長ほかと面談した。その際,被告Y3らは,少なくともK株式会社のバリ取りツールの組図とヤスリ(刃具)の図面(乙ロ3の1・2)を持参した。 キ被告Y4は,Gから送付されたHのロボットシステムに係る資料を基にそのレイアウト図(甲4)を作成し,同月20日,I社長,G,被告Y2のL,被告Y3に対し,同図面のデータを添付して送信した。また,被告Y4は,同ロボットシステムの表面加工治具の設計図を作成し,同月23日,被告Y2のL,I社長,G,被告Y3に対し,同図面データを添付して送信した。 ク被告Y3らは,同月31日,原告を退社した。 (5) 被告会社らによるM株式会社及び株式会社N工業所から受注したロボットシステムの製造,販売被告Y1は,平成17年4,5月ころ,Mから350tダイカストマシン(以下,ダイカストマシンのことを「DCM」ともいう。)に設置するスプレーロボット(以下「350tスプレーロボット」という。)1台を,同年7,8月ころ,Nから800tDCMに設置する取出しロボット(以下「800t取出しロボット」という。)1台及び500tDCMに設置する取出しロボット(以下「500t取出しロボット」という。)2台をそれぞ 月ころ,Nから800tDCMに設置する取出しロボット(以下「800t取出しロボット」という。)1台及び500tDCMに設置する取出しロボット(以下「500t取出しロボット」という。)2台をそれぞれ受注し,被告Y2に製造させて,同年7~12月ころ,これらを販売した。 原告は,これらの受注・販売行為は,本件プライスリストを使用した被告らの不正競争行為によってされたものであると主張している。 (6) 被告会社らによるHから受注したロボットシステムの製造,販売被告Y1は,平成16年12月ころ,Hから,ダイカスト製品用のバリ取りロボット2台を受注し,被告Y2に製造させ(被告Y4が平成17年2月上旬に1か月の契約で被告Y2に常駐して同ロボットシステムの設計を担当した。),平成17年3月ころ,これらを販売した(以下,Hに納入したバリ取りロボットを「被告システム」という。)。被告システムには,バリ取りハンド及び面取りハンドが装着されている。 なお,原告システムの面取りハンドは,モーターの軸に,カップリング,スピンドルシャフト,コレットケース,ロックナット等を介して面取り刃具(客先支給品)を取り付け(これにより,面取り刃具がモーターによって回転する。),これらの部材をフローティングプレートに固定した上,ロボットのアームに固定されるジョイントプレートに,バネを介してフローティングプレートを設置し,面取り刃具の周辺に近接スイッチが設けられている。こうした構造により,面取り刃具の軸方向に力がかかっても,バネがたわんで逃げることが可能となる(こうした機構を「フローティング機構」という。)。 一方,被告システムの面取りハンドは,エアシリンダー及びロックプレートが設置され,面取りハンドを上下反転する際に安定性を欠くという欠点をなくすため,フローティング機構が働かな ング機構」という。)。 一方,被告システムの面取りハンドは,エアシリンダー及びロックプレートが設置され,面取りハンドを上下反転する際に安定性を欠くという欠点をなくすため,フローティング機構が働かないようにロックする機構が付加されているものの,原告システムとほぼ同様のフローティング機構を備えている。 原告は,このバリ取りロボット2台の構成部分のうち,バリ取りツールが本件設計図を,モーター駆動の面取りハンド(同ハンドをロボットに装着する部分を含む。)が本件CADデータ等を,それぞれ使用して製造されたもので,これらの製造・販売行為は被告らの不正競争行為によってされたものであると主張している。 争点 (1) 本件プライスリストに係る不正競争行為ア本件プライスリストは営業秘密に当たるか。 イ被告らによる本件プライスリストの不正取得,不正使用行為の有無。 ウ本件プライスリストに係る不正競争行為による損害の有無及び額。 (2) 本件設計図等に係る不正競争行為ア本件設計図等は営業秘密に当たるか。 イ被告らによる本件設計図等の不正取得,不正使用行為の有無。 ウ本件設計図等に係る不正競争行為による損害の有無及び額。 第3争点に関する当事者の主張 本件プライスリストに係る不正競争行為について(1) 争点アについて(原告の主張)本件プライスリストは,以下に述べるとおり,有用性,秘密管理性及び非公知性を有しており,不正競争防止法2条6項の営業秘密に当たる。 ア有用性についてプライスリストは,原告の製造するロボットシステムの商品別の付加部品リストで,過去25年間に受注,製造,販売した具体的な物件ごとに作成されており,経費項目分類,品名,部品番号,メーカー,材質,型式,数量,発注先,納入日,金額が記載されている(甲7はそのひな形である。)。 本件プ 25年間に受注,製造,販売した具体的な物件ごとに作成されており,経費項目分類,品名,部品番号,メーカー,材質,型式,数量,発注先,納入日,金額が記載されている(甲7はそのひな形である。)。 本件プライスリストには,本件各製品番号のロボットシステムにつきユニット別の構成部品のメーカー,品番,仕入先,価格が明示されており,特に,多数使用されている市販の汎用部品については,多種の中から実績のある最適のものが選択されて掲載されている。したがって,同業他社は,本件プライスリストの内容を知れば,上記ロボットシステムの基本的構造,部品構成,部品の仕入価格や仕入先が分かり,原告製品と同水準のロボットシステムを,原告製品よりも安い製造原価で製造できることになる上,その見積り,受注に当たっては,原告より優位に立つことにも貢献する。 イ秘密管理性について(ア) 不正競争防止法が保護の要件として秘密管理性を要求するのは,第1に,秘密として管理されていないような情報は遅かれ早かれ他に知られるところとなり,企業の優位性は失われることになるから,法的保護を欲する者には,その優位性を保持させるため情報を秘密として管理する相応の自助努力を促す必要があると考えられること,第2に,情報が自由に流通する場合には,当初の形態を保持することが困難で,諸々の情報が混入して出回ることになり,その出所源が不明となる場合が少なくないため,保護されるべき情報と他の情報とを区別して法的保護を欲していることを明示させる必要があると考えられるからである。 この2点の要請に照らせば,法の要求する秘密管理性は,事業者が情報の利用者によって秘密であることが分かるように管理していれば足りることになるところ,小規模企業や開発研究部門の従業員が数名から数十名である場合においては,全員にとってその秘密情報 性は,事業者が情報の利用者によって秘密であることが分かるように管理していれば足りることになるところ,小規模企業や開発研究部門の従業員が数名から数十名である場合においては,全員にとってその秘密情報の重要性が認識可能であるのみならず,小規模企業のメリットは,大企業とは異なり,事務の簡略化や組織の簡素化を可能とするところにあるところ,大企業と同様の厳格な秘密管理を要求することは,小規模企業のメリットを減殺することになる。 したがって,営業秘密の秘密管理性の判断については,小規模の企業においては情報の利用者にとって秘密であると認識可能であるか否かを基準として相対的に判断するのが相当である。 (イ) プライスリストは,営業秘密として,原告の調達部がコンピューターにより管理し,調達部,営業部門及び一部の機械設計部門の者のみが,特定のパソコンのみから指定されたパスワードを入力する方法によってのみアクセスすることができるようになっていた。印刷についても,部門責任者の許可がなくてはできないこととなっており,印刷されたプライスリストについては,厳重に管理するよう常に指導していた。 プライスリストは,営業秘密として文書に明示こそされていなかったものの,上記のとおり,原告として相応の管理体制をとっており,そのことについては原告の従業員がいずれも十分に認識していたものである。原告が小規模企業であって,大規模企業のようなコストをかけた管理がされていたものではないが,このような秘密管理の下で本事件に至るまで秘密が外部に漏洩した事実はなかったものであり,プライスリストは秘密管理性を有しているというべきである。 ウ非公知性についてプライスリストは,社外秘とされて原告社内のみで利用されているから,公知にはなっていない。 (被告Y3らの主張)ア有用性についてプライ 管理性を有しているというべきである。 ウ非公知性についてプライスリストは,社外秘とされて原告社内のみで利用されているから,公知にはなっていない。 (被告Y3らの主張)ア有用性についてプライスリストは,他の情報を入手しないと当該ロボットの構造は分からないし,汎用部品だけでなく外注部品も記載されているので,他社が見ても部品構成が明確になるとはいいきれず,見積額の減額に有用ともいえない。また,用いられている汎用部品が分かるとしても,汎用部品はエンドユーザーが条件を指定する場合にはその条件を満たすものの中から,指定がない場合には担当設計者が知っている部品の中から適宜決めるものであるから,汎用部品の選択はロボットメーカーのノウハウではない。プライスリストは,その名前のとおり,金額についての資料であり,原告にとって損を出さないための最低受注金額をある程度推測するための資料として商談や見積り作成の参考になるにとどまる。競業者として,是非とも入手したいのは見積金額であって,原価構成ではないから,プライスリストを入手しても,ロボットの営業活動において原告より優位に立つとはいえない。 したがって,本件プライスリストには有用性があるとはいえない。 イ秘密管理性についてプライスリストを見たり印刷したりできるのは原告の調達部と営業部門の部屋に設置されたパソコンに限られていたが,そのパスワードは,営業部長Oから営業部員全員にメールで教えられ,被告Y3の在職中一度も変更されなかったし,営業部のパソコン等にパスワードを記載した付せんが貼ってあることもあった。このパスワードの入力が必要であっても,共通パスワードを教えてもらえば,他の従業員でもこれらのパソコンを使ってアクセスすることが可能であった。 また,「部外秘」,「営業秘密」等の表示はされていなかったし,印刷 ワードの入力が必要であっても,共通パスワードを教えてもらえば,他の従業員でもこれらのパソコンを使ってアクセスすることが可能であった。 また,「部外秘」,「営業秘密」等の表示はされていなかったし,印刷も禁止されていなかった。印刷されたプライスリストは,保管場所の定めはなく,終業後の従業員の机上にも放置されていたし,使用済み後に回収するとの定めもなく,回収も徹底されていなかった。 被告Y3は,O営業部長からパスワードを教えられており,プライスリストを印刷するときに許可が必要であるとはされていなかった。 被告Y4は,印刷されたプライスリストを第三者に開示することが厳禁であるとは知らされていなかった。 したがって,本件プライスリストには秘密管理性があるとはいえない。 (被告会社らの主張)ア有用性についてプライスリストは,過去に原告が製造した物件の原価が記載されているとのことであるが,部外者は,そのリストが顧客のどのような要請に適合した物件に関するものであったかという周辺情報がわからないから,これを将来の案件のために使用できる余地はないに等しい。そのリストが,直近に製造された物件に関するものでなければ,そこに記載されている部品の良否,単価情報の有用性にも疑念が生じる。 また,被告会社らがそのリストに記載された部品と同じものを使用する場合でも,その部品の購入原価は,同時に何個調達するか,従前の取引経緯,納品を受ける工場の所在地によって,異なってくるのは当然であるから,被告会社らが原告の部品単価を知ったとしても,同額以下の原価で調達することが可能になるわけではない。 したがって,被告会社らが,仮に原告の部品構成や製造原価を把握できたとしても,自社のコスト引下げや見積り減額に有用とは限られないから,プライスリストに有用性があるとはいえない。 イ秘密管理 ない。 したがって,被告会社らが,仮に原告の部品構成や製造原価を把握できたとしても,自社のコスト引下げや見積り減額に有用とは限られないから,プライスリストに有用性があるとはいえない。 イ秘密管理性について原告の就業規則には,「別に定める業務上の秘密事項及び会社の不利益となる事項を社外に漏らすこと」をしてはならない事項と規定されているが(28条),プライスリストには部外秘の資料であることを示す表示はされていない。 原告は,運用として,パソコンにアクセスする際のパスワードによって,プライスリストを管理していたものの,それ以外の「ルール」なるものは周知されていないばかりか,明確に定められてさえいなかった。しかも,共通のパスワードを入力すればパソコンのプライスリストにアクセスが可能であり,各自のパスワードは変更されたこともなく,パスワードを記載した付せんをパソコンに貼っている者もいた上,印刷されたプライスリストを管理する制度はなかったから,プライスリストがパスワードによって管理されていたとしても,その効果は極めて限定的なものであった。 しかも,プライスリストのうち,部品構成に関する情報は,原告が顧客に納入してロボットシステムに係る取扱説明書に添付された「調達部品表」及び個々の部品の使用箇所を図示した図面に記載されており,その取扱説明書は顧客に対して守秘義務を課さない状態で開示されていた。 したがって,本件プライスリストには秘密管理性があるとはいえない。 (2) 争点イについて(原告の主張)ア被告らの不正取得・不正使用行為(ア) 被告Y4は,原告の競業者である被告会社らのために,本件各製品番号のロボットシステムの製造原価や使用部品の種類・仕入価格等が記載されている本件プライスリストを入手してこれを被告Y1の同種製品の見積りの検討の用に供する 競業者である被告会社らのために,本件各製品番号のロボットシステムの製造原価や使用部品の種類・仕入価格等が記載されている本件プライスリストを入手してこれを被告Y1の同種製品の見積りの検討の用に供するという目的で,被告Y3に対し,平成16年12月21日ころ,本件プライスリストを印刷して交付するよう求め,被告Y3は,これに応じて被告Y4にその目的のあることを知って,不正の競業をし,原告に損害を与える目的で,そのころ,被告Y4に対し,原告から開示を受けた本件プライスリストを印刷して複製し,これを交付して開示した。被告Y3らの行為は不正競争防止法2条1項7号,8号に該当する。 被告Y3らは,共同して,平成16年12月21日ころ,原告の営業秘密としてその従業員に開示されている,本件各製品番号のロボットシステムの製造原価や使用部品の種類・仕入価格等の記載されている本件プライスリストの複製物を,原告と競業関係にある被告Y1の同種製品の見積りの検討の用に供して,不正の競業をし,原告に損害を与える目的で,Gに対しこれを交付して開示した。被告Y3らの行為は不正競争防止法2条1項7号,8号に該当する。 (イ) 被告Y1は,平成16年12月21日ころ,被告Y3らから,本件プライスリストの複製物を,これが不正開示行為であることを知りながら,交付を受けて取得し,平成17年3月から6月にかけて,これを使用してダイカスト用ロボットシステムの見積書を作成して,M及びNに提出し,その受注を得て,これを,不正開示であることを知る被告Y2に製造させて,販売した。 被告Y2は,平成16年12月ころから平成17年9月ころにかけ,被告Y3らによる不正開示行為によって被告Y1が取得したものであることを知りながら,被告Y1から前記ロボットシステムの本件プライスリストの複製物の交付を受けて 12月ころから平成17年9月ころにかけ,被告Y3らによる不正開示行為によって被告Y1が取得したものであることを知りながら,被告Y1から前記ロボットシステムの本件プライスリストの複製物の交付を受けてこれを取得し,これを使用して,M及びN向けのダイカスト用ロボットシステムを製造し,平成17年8~12月ころこれらを被告Y1に販売した。 被告会社らの行為は不正競争防止法2条1項8号に該当する。 イ被告らの不正取得・不正使用を裏付ける事実(ア) 被告Y4は,平成16年12月21日,被告Y3に対し,「価格表を打ち出してもらえませんか,Y2との価格比較をやりたいと考えています。」とのメールを送信している。 (イ) 被告Y1は,顧客に対し,原告が作成する見積書と全く同形式の見積書を提出している。 (ウ) 原告がMに提出した350tスプレーロボットの見積額は650万円(税別)で,被告Y1がMから350tスプレーロボットを受注した金額は610万円(税別)であり,被告Y1の見積額は,原告の見積額より僅かに少額となっている。 (エ) 原告がNに提出した800t取出しロボット1台及び500t取出しロボット2台の見積額の合計は2505万円で,被告Y1の見積額は,800t取出しロボット1台が845万円,500t取出しロボット2台が各825万円,合計2495万円であった。 なお,Nに納入された800t取出しロボットには切断ハンドが付加されており,被告Y1の見積額には切断ハンドの見積相当額約45万円が含まれていたが,原告の見積額にはこれが含まれていなかったから,原告の上記見積額に切断ハンドの見積額を加えた2550万円と,被告Y1の見積額の合計額2495万円を比較すると,被告Y1の見積額は,原告の見積額より55万円少額となっている。 (オ) ロボットシステムの基本的構造を知 切断ハンドの見積額を加えた2550万円と,被告Y1の見積額の合計額2495万円を比較すると,被告Y1の見積額は,原告の見積額より55万円少額となっている。 (オ) ロボットシステムの基本的構造を知るメーカーであれば,型式,寸法,材質や個数などが明らかにされている使用部品を見ることにより,自ずとロボットシステムの構造が明確に理解できる。 (被告Y3らの主張)ア被告Y4が,被告Y3に対し,価格表(本件プライスリスト)を打ち出して交付してほしいと求め,本件プライスリストの一部の交付を受けたことは認めるが,これをGに交付した事実はない。したがって,被告Y3らは,不正に原告の営業秘密を取得していないし,不正に競業する目的で,被告会社らに営業秘密を交付して開示していない。 被告Y3は,本件プライスリストの一部を印刷し,これを被告Y4に渡したが,これは,被告Y4が,当時,原告の顧客であるP,Q,R及びSの4社の物件の設計を担当しており,類似するシステムとして参考になる可能性のある本件プライスリストを見て,コストダウンに役立てようと思い,また,赤字契約をなくすために赤字契約の有無を確認しようと思い,被告Y3に対し,これまでは頼んでも応じてくれなかったが被告Y2の話を出して頼めば応じてくれるだろうと考えて,本件プライスリストを見せてほしいとメールで依頼したからである。 被告Y4は,本件プライスリストの一部を見せてもらい,これを被告Y3に返還し,被告Y3はこれを在職中に廃棄処分したので,現在は残っていない。 イ被告Y4は,被告Y2との価格比較をする意図はなかった。 (被告会社らの主張)被告Y3らが本件プライスリストを不正取得したか否かは知らない。Gが本件プライスリストの交付を受けたことは否認する。 原告は,被告Y3らが平成16年12月ころ本件プライスリス 。 (被告会社らの主張)被告Y3らが本件プライスリストを不正取得したか否かは知らない。Gが本件プライスリストの交付を受けたことは否認する。 原告は,被告Y3らが平成16年12月ころ本件プライスリストを取得してこれをGに交付した旨主張するが,被告Y1がMから見積依頼を受けたのが平成17年3月中旬であり,Nから見積依頼を受けたのが平成17年2月10日ころであるから,平成16年12月の時点で本件プライスリストを不正取得しようとすることなどあり得ない。 M及びNは,いずれも,原告の営業対応の拙劣さから,原告との商談を打ち切ったものであり,特に,Nの受注案件については,原告は見積書すら提出しておらず,Nが予定していたタイムスケジュールに遅れが生ずる可能性があることから選考対象から外したものである。したがって,被告Y1がM及びNから受注を受けたことと,被告Y1の見積内容に原告の営業秘密が使用されたか否かとの間には何らの因果関係もない。 被告Y1が顧客に提出した見積書と原告が作成する見積書の形式は異なっている。 また,その形式によって,被告Y1が原告の本件プライスリストを見て作成したことを示す事情も見受けられない。 両者の見積金額はM向けの案件において約7%,N向け案件においても約2.2%異なっており,同じ資料に基づいて積算したにしては,明らかな差が生じている。 しかも,見積金額については,出精値引きが行われるのが通例なので,仮に見積金額が近似していたとしても,これをもって,積算資料の不正利用の有無を推認する資料とすることはできない。 (3) 争点ウについて(原告の主張)アM関係被告Y1は,ダイカスト用ロボットシステム1式を610万円で販売し,被告Y1及びその製造を担当した被告Y2において,併せて少なくとも185万円の利益を得,原告は同額の損害を 原告の主張)アM関係被告Y1は,ダイカスト用ロボットシステム1式を610万円で販売し,被告Y1及びその製造を担当した被告Y2において,併せて少なくとも185万円の利益を得,原告は同額の損害を被った。 イN関係被告Y1は,800t取出しロボット1台及び500t取出しロボット2台を,代金合計2495万円で販売し,被告Y1及びその製造を担当した被告Y2において,併せて少なくとも750万円の利益を得,原告は同額の損害を被った。 (被告Y3らの主張)原告の主張は,不知ないし否認する。 N向けのシステムについては,Nが原告から見積りをもらうために連絡がほしいと伝えたにもかかわらず,原告が連絡しなかったため,競合先がない状況で被告Y1が受注することになったものである。 M向けのシステムについては,原告の対応が悪かったため,Mが原告への発注を控えたものである。 したがって,原告が,これらのシステムの販売によって被告Y1が得た利益に相当する分の損害を被ったということはできない。 (被告会社らの主張)被告Y1が平成17年4月ころMから受注した350tスプレーロボットは,代金610万円であり,被告Y1の粗利は19万円,被告Y2の粗利は75万2464円であった。 被告Y1が平成17年7月ころNから受注した800t取出しロボット1台は代金845万円,500t取出しロボット2台は代金各825万円,合計2495万円であり,被告Y1の粗利合計は140万円,被告Y2の粗利合計は281万8595円であった。 本件設計図等に係る不正競争行為について(原告の主張)(1) 争点アについて本件設計図等は,以下に述べるとおり,有用性,秘密管理性及び非公知性を有しており,不正競争防止法2条6項の営業秘密に当たる。 ア有用性について本件設計図等は,原告においてロボット 争点アについて本件設計図等は,以下に述べるとおり,有用性,秘密管理性及び非公知性を有しており,不正競争防止法2条6項の営業秘密に当たる。 ア有用性について本件設計図等は,原告においてロボットシステムを製造するために不可欠のものであり,部品のサイズ・材質・精度,組立て状況等が明示されており,競業者が見れば容易にロボットシステムの部品を製作し,組立て,ロボットシステムを製造できるのであって,その有用性は明らかである。 イ秘密管理性について本件設計図等は,原告が製造販売したロボットシステム又はバリ取りツールの設計図等であり,原告では,営業秘密として厳重に管理されており,原告の従業員は当然これらが営業秘密であるという認識を十分持っていた。管理について特に文書化されていなかったが,部門ごとに行われる朝礼により,必要に応じて部門長から指示されていた。 機械設計部の部屋の入口には,部外者立入禁止の表示があり,営業部社員を除いて責任者の許可なく機械設計部以外の者が入室することはなかった。 原告では,手書きの設計図は機械設計部の部屋の鍵付きキャビネットに保管し,CADデータはサーバーに保管されていたが,平成16年当時は原則としてすべてCADにより設計していた。CADで設計した場合も,印刷して,これを原図と称して,手書きの設計原図と同様に,製品ごとにファイルしてキャビネットに保管していた。 機械設計部の従業員は,設計原図を自由に借り出せるが,一定期間継続して使用する場合には,毎日キャビネットに返還しなくても期間終了後に返還すればよいことになっており,その間は各人の責任で保管することになっていた。 営業部の従業員にあっては,得意先との打合せの際に設計原図を必要とすることがあり,得意先の希望する機種と類似の製品の設計原図をファイルごと外部に持ち出してい は各人の責任で保管することになっていた。 営業部の従業員にあっては,得意先との打合せの際に設計原図を必要とすることがあり,得意先の希望する機種と類似の製品の設計原図をファイルごと外部に持ち出していたが,外部に設計原図を持ち出すときは,技術部長又はその代行者の許可を得て,管理台帳に,持ち出し日,持ち出し原図の製品番号,持ち出し者氏名を記入し,技術部責任者の承認サインが必要であり,管理台帳への記入は,平成4年の開始当初は徹底されていなかったが,平成12年以降は徹底されていた。 外注先に部品図を示す場合には,設計原図をコピーし,技術部長又はその代行者の許可を受けた上,出図印を押して社外に持ち出すことができたが,外注先には第三者に開示しないとの約束を取り付けていた。このようなコピーは原則として回収した上廃棄することになっていたが,外注先には繰り返し発注することもあって回収しない図面もあった。 また,取扱説明書の添付図面として一部の図面をコピーして得意先に交付するのが一般であるが,これについても技術部長が承認した上,出図印を押すことになっており,得意先には第三者への開示禁止の約束をさせていた。 そのほかには原則として設計原図のコピーは禁止していたが,特に必要な場合には,技術部長の許可の下にコピーを許可しており,その場合,コピーには「社外秘」の押印をし,用が済んだら廃棄することになっていた。CADデータを印刷したものも,設計原図と同様に扱われており,使用済みのものは廃棄されることとされていた。 なお,営業部の従業員が,得意先との打合せのため,機械設計部長の許可を得てパソコンにCADデータをコピーして社外に持ち出すことがあったが,それは1製品に関する設計図表のうちの必要最小限のものに限り,使用後は削除することとされており,かつ,開示した得意先には外部に を得てパソコンにCADデータをコピーして社外に持ち出すことがあったが,それは1製品に関する設計図表のうちの必要最小限のものに限り,使用後は削除することとされており,かつ,開示した得意先には外部に漏らさないことの了解を得ていた。また,機械設計部の従業員が被告Y1に対してCADデータをメールで送信したこともあるが,原告の得意先としての被告Y1に対し技術上必要な範囲のものを送信したのみで,極めて例外的なケースにすぎず,これについても,被告Y1との間で第三者に開示しないとの暗黙の了解があったものである。そして,原本あるいはコピーを持ち出すには,機械設計部の従業員であるか否かを問わず,上司の許可を得た上,管理台帳に原図名,持ち出し日,持ち出し者名を記入し,上司のサインをもらうことになっていた。 上記(1)(原告の主張)イ(ア)記載のとおり,営業秘密の秘密管理性の判断については,小規模の企業においては情報の利用者にとって秘密であると認識可能であるか否かを基準として相対的に判断するのが相当であり,上記の事実関係に照らせば,本件設計図等は,秘密管理性を有しているというべきである。 ウ非公知性について原告の製造販売するロボットシステム及びバリ取りツールの図面・表,CADデータ・表データは,前記のとおり原告において営業秘密として管理しており,外部には公表されていないものであり,いずれも公知とはなっていない。 (被告Y3らの主張)原告では,手書きの設計図や印刷された設計図は,必ずキャビネットで保管していたわけではなく,キャビネットについていた鍵は全く施錠されていなかった。 設計部門以外の従業員が,キャビネット内の図面を設計室外へ持ち出す場合にのみ管理台帳に記名押印することになっていたが,責任者がいなくても持ち出しは可能であり,許可を受けるシステムにはなっ なかった。 設計部門以外の従業員が,キャビネット内の図面を設計室外へ持ち出す場合にのみ管理台帳に記名押印することになっていたが,責任者がいなくても持ち出しは可能であり,許可を受けるシステムにはなっていなかったし,管理台帳の使用はいい加減であった。また,基本的には持ち出した図面をキャビネットに返却することになっていたが,全く徹底されていなかった。 設計図は,手書きのものも印刷されたものもCADデータについても「部外秘」,「営業秘密」等の表示はされておらず,パスワード等のアクセス制限措置も採られておらず,機械設計部にあるパソコン(全部で12台ほど)を使えば他の従業員でも設計図を閲覧することができた。 また,印刷も禁止されておらず,印刷された設計図は,保管場所の定めはなく,使用済み後に回収するとの定めもなく,回収も徹底されていなかった。 原告は,自社の従業員に対し,CADデータ等の設計図が営業秘密に当たるとか,その取扱いに注意すべきであるとの考えを何ら周知していなかった上,従業員にこれらの設計図を営業秘密として守らせるためのルール(マニュアルの作成等)も整備していなかった。 営業部の従業員は,機械設計部の従業員から,電子メールに添付する方法により,CADデータの送付を受けていたし,営業部の従業員は,原告から支給されたノートパソコンにCADデータを保存した上,営業活動の際,これを顧客に対して見せることがあった。 原告は,ロボットシステムの納入先の顧客に対し,取扱説明書に,組図のCADデータを印刷したもの(なお,組図を拡大コピーすれば,組図に表記された縮尺を基にして,容易に,部品図を作成することが可能である。)を添付して交付していたが,当該顧客に対し,その開示を禁ずる措置は採っていなかったし,当該図面(組図)上に,秘密情報であるとの表示を行うことも 基にして,容易に,部品図を作成することが可能である。)を添付して交付していたが,当該顧客に対し,その開示を禁ずる措置は採っていなかったし,当該図面(組図)上に,秘密情報であるとの表示を行うこともなかった。なお,原告が本件において,特に問題にしている面取りツールの組図は,Fに対し,守秘義務を課さない状態で交付されている。 したがって,本件設計図等は,秘密管理性を有していたとはいえない。 (被告会社らの主張)本件設計図等は,次のとおり,秘密管理性を有しているとはいえない。 ア秘密管理性を有するか否かを判断するに当たっては,従業員にとって営業秘密の漏洩となれば会社から懲戒処分を受ける根拠とされ,あるいは不正競争防止法違反として刑事罰(同法21条1項4号)を科される根拠となりかねない重大事であるから,何が秘密情報であるかは明確に線引きされなければならない。 原告は,小規模企業や開発研究部門の従業員が数名から数十名である場合においては全員にとってその秘密情報の重要性が認識可能であるなどと主張するが,対象となる従業員の多寡によって区別することに合理的な根拠はなく,原告のような主張は,管理がずさんでありながらお手盛り処分を当然視する経営者にありがちな独善的な見解にすぎない。 なお,研究開発部門の人数が2,3名であれば,個別の口頭指示ということも可能かもしれない(それによって秘密管理性がありといえるか否かの法的評価については別論である。)が,これが5名を超える多数人にわたれば,当然線引きと取扱いを明確にしたルールが必要というべきである。 イ原告の就業規則には,「別に定める業務上の秘密事項及び会社の不利益となる事項を社外に漏らすこと」をしてはならない事項と規定されているが(28条),本件設計図等には部外秘の資料であることを示す表示はされていない。 原告 ,「別に定める業務上の秘密事項及び会社の不利益となる事項を社外に漏らすこと」をしてはならない事項と規定されているが(28条),本件設計図等には部外秘の資料であることを示す表示はされていない。 原告には,設計図やCADデータ及びそのコピーの管理方法を定めたマニュアル,通達等の文書はなく,朝礼等において口頭による秘密管理に関する指示がされていたとは認められないし,仮に口頭での指示があったとしても,管理方法に関する「ルール」は確立されていなかった。 また,原告では,設計原図の持ち出しに関して管理台帳があったが,そこへの記載は全く徹底されていなかった。しかも,原告は,顧客に機械を納品する際,設計図(組図とパーツ図の双方)が添付された取扱説明書を交付しているが,取扱説明書や設計図には原告の了解なくこれらを部外者に示してはならない旨が記載されておらず,また,これらを交付する際,これらを機密とする旨の契約又は口頭での確認もされていない。 原告の従業員は,競合先である被告会社らに対して,CADデータを,パスワードを設定することなく,メールに添付して送信したことがあり,その際,守秘義務に関する約束は,被告会社らとの間で,文書はもとより口頭でさえ取り交わしていない。 そのほか,CADデータについて,パスワードによる管理はされておらず,アクセスしたパソコン・担当者を特定するシステムになっておらず,機械設計部の室内に入った者やパソコンを操作している者の監視体制もなかった。また,設計図について,保管するキャビネットには鍵がかかっておらず,コピーの行方・廃棄を確認するシステムも定められておらず,設計図が機械設計部の部屋の横の方に,机の上にも下にも保管されている状況であった。 したがって,本件設計図等は,秘密管理性を有していたとはいえない。 (2) 争点イについて( テムも定められておらず,設計図が機械設計部の部屋の横の方に,机の上にも下にも保管されている状況であった。 したがって,本件設計図等は,秘密管理性を有していたとはいえない。 (2) 争点イについて(原告の主張)ア被告らの不正取得・不正使用行為(ア) Gは,平成16年12月28日,被告Y4あてにメールを送り,被告Y1がHから受注したロボットシステムについての関係図面・バリ取り箇所等の資料を送付して,ロボットシステムの設計に関する協力を要請するとともに,被告Y3らが平成17年1月8日に被告Y1を訪問する際にバリ取りツールの参考図面の資料を持参するように依頼した。被告Y4は,平成16年12月29日,このメールを被告Y3に転送した。 被告Y3らは,共同して,平成17年1月8日ころ,原告から部外秘として機械設計部門の従業員に開示されている設計図のうち,本件設計図等を不正に複製取得した上,被告Y2がこれを使用してロボットシステムを製造して被告Y1がこれを販売することによって不正の競業をし,原告に損害を与える目的で,Gに交付して開示した。 また,被告Y4は,同年2月ころ,自ら本件設計図等を使用して,被告Y2においてH向けのロボットシステム(1体のロボットにバリ取りハンドと面取りハンドの二つのハンドが装着されるもの)を設計,作図した。 被告Y3らの行為は,不正競争防止法2条1項7号に該当する。 (イ) 被告会社らは,平成17年1月ころ,共同して,本件設計図等が被告Y3らの不正開示行為によることを知りながら,これを取得し,これらに基づき,バリ取りロボットシステム2台を設計・製造して,同年6月ころ,Hに販売した。 被告会社らの行為は,不正競争防止法2条1項8号に該当する。 イ被告らの不正取得・不正使用を裏付ける事実(ア) Gは,被告Y4に対し,バリ取りツー 2台を設計・製造して,同年6月ころ,Hに販売した。 被告会社らの行為は,不正競争防止法2条1項8号に該当する。 イ被告らの不正取得・不正使用を裏付ける事実(ア) Gは,被告Y4に対し,バリ取りツールの資料を交付するように要請していた。 (イ) 被告Y3は,陳述書において,K関係の資料を1月8日に持参したと記載している。 (ウ) バリ取りツールについて原告は,本件設計図のとおり,バリ取りツールについて,バリ取りの部位・大きさ等に応じて,数十種類の形状のものを開発済みである。本件設計図に基づかないで開発するには長期間の開発期間が必要となる。被告Y1は,受注後,短期間で,Hに納めたロボットシステムを完成納品しており,刃具について開発をした経過が全くうかがわれない。 (エ) 面取りハンド及びその装着部分についてHに納入されたロボットシステム(被告システム)と原告が設計した天吊り面取りロボットシステム(原告システム)との類似点a市販部品の共通性原告システムと被告システムの部品構成は,別紙部品構成比較表のとおりであり,平行キーが原告システムでは「5×5×L15」サイズのJIS規格品であるのに対し,被告システムでは「5×5×L25」サイズのミスミ製品となっていること,ベアリングの品番がLLUとZZの相違があること,バネの個数が被告システムが原告システムの2倍であること,被告システムにのみエアシリンダーがあること以外は,品番・個数・メーカーの同じ部品が使用されている。 相違点についても,平行キーは単に長さの違いがあるにすぎず,また,ベアリングはシール方法の違いだけでサイズが同一であって,いずれも大きな差異ではない。 被告システムにおけるバネの個数の増加及びエアシリンダーの存在は,被告システムに原告システムにはないロックプレートを追加したために必要に の違いだけでサイズが同一であって,いずれも大きな差異ではない。 被告システムにおけるバネの個数の増加及びエアシリンダーの存在は,被告システムに原告システムにはないロックプレートを追加したために必要になったものと思われるが,設計手順からみれば原告システムの設計図面に追加しただけにすぎない。 b加工部品の共通性原告システムに用いられた加工部品(甲24の図中①~⑮まで)と,被告システムの面取りハンドの加工部品(乙イ11の①~⑰)とを比較すると,被告システムには,原告システムの丸キー⑭がなく,原告システムのセンサーBKT⑮に当たる部分がプレート⑭となっており,原告システムにはないロックプレート⑮,カラー⑯・⑰が追加されているという相違はあるが,他の①~⑬は,部品名こそ違え同じ部品であり,番号も同じである。 さらに,被告システムの加工部品中,ホルダー⑨,シャフト⑧,ホルダー①及びホルダー④と,原告システムのコレットケース⑨,スピンドルシャフト⑧,ベアリングケース①及びカップリング④とを比較すると,形状及び寸法が全く同じである。 cモーターの延長ケーブルの選定原告システムの当初の図面(甲24)では,面取りハンドのモーターの延長ケーブルが「接続ケーブルCC05FBL<5mタイプ>」と記載されていた。しかし,このタイプは,可動性の少ない固定ケーブルであって,面取りハンドのように常に大きく移動する部分には,本来,可動ケーブルを用いる必要があった。原告従業員は,この誤りに気付いて可動ケーブルに変更し,図面(甲17)に「CC05FBR<5mタイプ>」と変更する旨記載した(なお,可動ケーブルの品番は「CC05FBRL」が正確な表記であり,上記のとおり「CC05FBR」と記載したのは誤記である。)。 被告システムの面取りハンドのモーターの延長ケーブルは,原告 記載した(なお,可動ケーブルの品番は「CC05FBRL」が正確な表記であり,上記のとおり「CC05FBR」と記載したのは誤記である。)。 被告システムの面取りハンドのモーターの延長ケーブルは,原告の当初の図面と同様に,固定ケーブルの「CC05FBL<5mタイプ>」が選択されているが,これは,被告Y4が,原告の図面の誤りに気付かず,原告システムのCADデータを漫然と引用したことによるものといわざるを得ない。 d以上のとおり,被告システムの図面(乙イ11)は,甲24,26~28のCADデータを基にして修正作成されたものである。 原告システムのCADデータ及び表データ全体は,コンピューターのフォルダ内にまとめて管理されていたから,被告Y4は,上記で指摘した各CADデータのみならず,原告システムのCADデータ及び表データ全体(本件CADデータ等)を不正に取得したといわざるを得ない。 このことは,被告Y4が,原告を退社した後わずか12日が経過した平成17年2月12日に被告システムの設計を完了している(乙イ11の作成日付参照)ことからも明らかである。 (被告Y3らの主張)アGが,被告Y4あてにメールを送り,バリ取りツールの図面等を持参するよう要請し,被告Y4が上記メールを被告Y3に転送した事実はあるが,被告Y3らが,本件設計図等をGに交付した事実は否認する。 被告Y4は,原告の顧客である被告Y1からバリ取りシステムのレイアウト図を作ったので検討してみてほしいと依頼され,無料のサービスとして,被告Y1の指示どおり被告Y2から送られてきたCADファイルに加工を加え,さらに,原告の名前の入った図枠(図面の縁取り線,日付やタイトル等記入枠を構成する枠線)を付けたレイアウト図(甲4)を被告Y1に送付したことはあるが,これは他の顧客に対しても一般的に行って を加え,さらに,原告の名前の入った図枠(図面の縁取り線,日付やタイトル等記入枠を構成する枠線)を付けたレイアウト図(甲4)を被告Y1に送付したことはあるが,これは他の顧客に対しても一般的に行っていた原告の通常業務である。なお,これらの設計サービスは,被告Y4が協力したものであって,被告Y3は関与していない。 イバリ取りツールについて被告Y4が,被告Y2向けに作成したバリ取りツールは,乙イ16の図面のとおりであり,この図面は,被告Y3がKから入手していた刃具の図面(乙ロ3の2)を参考にしながら,被告Y4が独自に作成したものである。 本件設計図と乙イ16の図面のバリ取りツールを比較すると,確かに,刃具の基本的な構造に大きな差異はないし,数値が近似している箇所も複数あるが,それは,いずれもKの図面を模倣して作成されたからにほかならない。 なお,被告Y4が,原告の図面やCADデータを盗用したものでないことは,刃部A,刃部Bの刃幅や,刃の角に付ける丸みの半径等が相違していることからも明らかである。 ウ面取りハンド及びその装着部分について面取りハンド及びその装着部分について,原告システムの図面と被告システムの図面の内容が,原告指摘の点で類似していることは認めるが,次の事情によれば,被告Y4が,被告システムの図面を作成するに当たってCADデータを盗用した事実がないことは明らかである。 (ア) 被告システムの図面(乙イ11)に記載された部品のうち,カラー⑥,支柱⑦,ホルダー⑨,プレート⑭,ロックプレート⑮については,原告システムの部品と材質が異なる。 (イ) 原告社内において,面取りハンドの構造を最初に考案し,これを設計部に指示して製品化したのは,被告Y3自身であって,被告Y3は,自ら考案した面取りハンドの構想を,原告から退職した後,被告Y2に持ち ) 原告社内において,面取りハンドの構造を最初に考案し,これを設計部に指示して製品化したのは,被告Y3自身であって,被告Y3は,自ら考案した面取りハンドの構想を,原告から退職した後,被告Y2に持ち込んで再び製品化したのである。 また,原告社内において,面取りハンドの部品図を最初にCADデータ化したのは,被告Y4自身であって,面取りハンドの部品図を自ら設計し,データ化した被告Y4が,その経験と知識を利用して,原告を退職した後,被告Y2のために,同種の面取りハンドの設計をしたのである。 したがって,面取りハンドに関する原告の図面と被告Y2の図面が類似しているのは,むしろ当然であって,何ら不自然なことではない。 (ウ) 原告は,原告の図面と被告Y2の図面において加工部品の番号の付け方が類似していると指摘する。 しかし,被告Y4は,原告を退職する前9か月間に,F向けの面取りロボットシステム4台に関し,12回も設計と見直しを実施した結果,こうした加工部品の番号の付け方が経験として染み付いていた。しかも,加工部品の番号は,購入する既製品との接合部に組み付ける部品及び設計上込み入った形状の部品から順に付したものである。 したがって,原告の図面と被告Y2の図面において加工部品の番号の付け方が類似ないし共通の順番になっても不自然ではない。 (エ) 原告は,被告システムの加工部品中,ホルダー⑨,シャフト⑧,ホルダー①及びホルダー④と,原告システムのコレットケース⑨,スピンドルシャフト⑧,ベアリングケース①及びカップリング④とを比較すると,形状及び寸法が全く同じであると主張する,a被告システムのホルダー⑨,シャフト⑧及びホルダー①についてこれらの寸法は,被告システムの部品図(乙イ12~14)と,原告システムの部品図(甲26,27の2,28)とを比較すれば明 と主張する,a被告システムのホルダー⑨,シャフト⑧及びホルダー①についてこれらの寸法は,被告システムの部品図(乙イ12~14)と,原告システムの部品図(甲26,27の2,28)とを比較すれば明らかなように,両者の数値が一致するものもあるが,全く同一ではなく,異なる数値が採用されている箇所が複数あり,寸法の数値を記載する位置が異なるものもある。 bホルダー④についてホルダー④は,モーターの軸の回転を受けて,その回転動力を先に伝達するホルダーであるから,その内径(φ15)はモーターの軸の太さによって決まってくる。 外寸のうち,幅(φ30)は,上記によって定まった内径を所与の数値として,同じ設計者が記憶と自らの感覚に基づいて設計する限り,同一ないしほぼ一致した数値になるのが当然であって,このことはφ30というキリのよい数字であればなおさらである。 外寸のうち,長さについては,原告システムでは37.2㎜となっているのに対し,被告システムでは38㎜となっており,近似してはいるが,同一の数字ではなく,このことは,被告Y4が原告のCADデータを利用したのではなく,自らの記憶と感覚に基づいて再度設計したことを物語っている。 深さが2.3㎜(17.3㎜と15㎜の差)のキー溝のところに設けられた孔(直径5㎜)の位置及び大きさが一致しているとしても,それは,平行キーの大きさがJIS規格で決まっていることによるものであるから,一致して当然である。 キー溝から90度ずれた位置に設けられた孔の位置については,平行キーの位置を所与とすると,ほぼ同様の数値とならざるを得ず,むしろ,同じ設計者が,CADデータを上書きすることなく,再度設計したからこそ,中心間の長さに微妙な差(19.2㎜と20㎜)が生じたものといえる。 c接続ケーブルについて原告は,面取りロボットの むしろ,同じ設計者が,CADデータを上書きすることなく,再度設計したからこそ,中心間の長さに微妙な差(19.2㎜と20㎜)が生じたものといえる。 c接続ケーブルについて原告は,面取りロボットのモーターの延長ケーブルは可動ケーブルでなければ間違いであると主張する。 しかし,被告Y4は,原告に在籍した当時,カタログを見てモーターの延長ケーブルに用いた「CC05FBL」が固定ケーブルであることに気付いていたが,Fに対して確認し,固定ケーブルでも何ら支障が生じていないとの返答を得ていたため,被告システムの設計に際しても,実績があり,しかも可動式より安価な固定ケーブルをあえて用いたものである。 (エ) その他の事情a被告システムの図面(乙イ11)と原告システムの図面(甲17)と対比すると,乙ロ6に記載のとおり,①原告システムの図面に表記されているカバー状の部品が,被告システムの図面には表記されていない,②被告システムの図面では,部品名として「オリエンタモーター」と誤った記載がされているが,原告システムの図面では「オリエンタルモーター」と正しく記載されている,③原告システムの図面では,実際の設置位置に従い,モーターの中心線が,面取りハンドの中心軸よりやや上方向にずれた状態になるように記載されているが,被告システムでは,実際の設置位置とは異なり,モーターの中心線が,面取りハンドの中心軸とほぼ重なる位置に誤って記載されている,という違いがあり,CADデータを盗用していないことは明らかである。 b被告Y4は,自らの経験を通じて蓄えた知識やノウハウを基に,独自の創意工夫を加えて,被告システムの図面を作成したものであり,このことは,①原告システムと被告システムでは近接センサーが異なる位置に取り付けられていること,②被告システムには,原告システムには 独自の創意工夫を加えて,被告システムの図面を作成したものであり,このことは,①原告システムと被告システムでは近接センサーが異なる位置に取り付けられていること,②被告システムには,原告システムにはないロック機構が採用されており,そのために,原告システムにはない部品(シリンダー,ガイドシャフト)が取り付けられていること,③被告システムには,上記②以外にも原告システムにはない部品(ブラケット)が取り付けられていること,などの事情からもうかがうことができる。 c被告システムの図面(乙イ11)の設計を完了した日は,平成17年2月12日ではない。被告Y4は,おそらく作成を開始した日を同図面の「年月日」欄に入力したものと思われる。 (被告会社らの主張)アGが,被告Y4に対し,被告Y1がHから受注したロボットシステムの各部の図面を送信して協力を依頼するとともに,「バリ取りツールの参考図面の資料」を持参するように要請し,被告Y4がこのメールを被告Y3に転送したことは認めるが,被告Y3らが,本件設計図等をGに交付した事実は否認する。 Gは,平成17年1月8日に被告Y3から参考図面の交付を受けたが,それは,K作成の図面(乙ロ3の1・2)である。 イ被告会社らは,面取りハンド及びその装着部に関する被告Y3らの主張を援用する。 被告Y2は,被告Y4が面取りロボット及びバリ取りロボットの設計をしたことがあり,自らの知識と経験によって設計することができるとのことであったから,被告Y4に対し,H向けのロボットの設計を依頼し,設計図(乙イ11~15)の提供を受けたが,被告Y3らに対して,原告のCADデータを持ち出すよう依頼したこともないし,被告Y3らが原告から持ち出したものを使用して設計したとも聞いていない。まして,被告Y1はそのような認識を有していない。 (3 告Y3らに対して,原告のCADデータを持ち出すよう依頼したこともないし,被告Y3らが原告から持ち出したものを使用して設計したとも聞いていない。まして,被告Y1はそのような認識を有していない。 (3) 争点ウについて(原告の主張)被告会社らは,上記のとおり,バリ取りロボット2台をHに対し2170万円で販売し,合わせて少なくとも650万円の利益を上げ,原告は同額の損害を被った。 (被告Y3らの主張)原告の主張は,不知ないし否認する。 原告は,H向けのシステムについて,受注活動をしていない。 したがって,原告が,これらのシステムの販売によって被告Y1が得た利益に相当する分の損害を被ったということはできない。 (被告会社らの主張)被告Y1がHから受注したダイカスト製品用のバリ取りロボット2台は,代金2170万円であり,被告Y1の粗利が204万円,被告Y2の粗利が121万4809円であった。 第4当裁判所の判断 本件プライスリストに係る不正競争行為について(1) 争点アについてア有用性について(ア) 本件プライスリストは,原告が本件各製品番号のロボットシステムにつきその構成ユニット別の製造コスト及び構成部品を明確にするため,部品の仕入れを行う調達部において,「ユニット」,「分類」,「品名/部品番号」,「メーカー/材質」,「型式」,「数量」,「発注先会社名」,「納入日付」,「金額」をコンピューターに入力して保管していたデータである。 同業他社が本件プライスリストを見れば,本件各製品番号のロボットシステムについて,その構成ユニット別に,どのような市販部品(汎用部品)が使用されたか,その仕入先及び仕入単価が分かり,また,外注部品(特製部品,特注部品)についても,本件プライスリスト上に記録された「品名/部品番号」によってはそれがどのような部 市販部品(汎用部品)が使用されたか,その仕入先及び仕入単価が分かり,また,外注部品(特製部品,特注部品)についても,本件プライスリスト上に記録された「品名/部品番号」によってはそれがどのような部品であるかが分からないとしても,どの外注先から仕入れているものであるかが分かるから,これらの情報は,ロボットシステムを設計,製造,販売する同業他社にとって,汎用部品及びその仕入先,外注部品の外注先を選択する上において,また,当該仕入先,外注先との価格交渉をする上において,有益な情報であると認められる。 (イ) 原告は,本件プライスリストにより,原告のロボットシステムの基本的構造が分かると主張するが,本件プライスリストからは外注部品がどのような部品であるかは分からないし,また,用いられた汎用部品及び外注部品が分かったとしても,その情報のみからロボットシステムの基本的構造が分かるとは認められない。 (ウ) また,原告は,本件プライスリストにより,ロボットシステムの見積り,受注に当たって原告より優位に立つことができると主張する。 しかし,本件プライスリストは,汎用部品及び外注品の仕入価格が記載されているにすぎないものであって,見積額は,仕入価格のみならず,市場における類似商品の価格状況,当該販売先との取引経緯及び将来の販売見込み等の具体的な諸事情を基にして算定されるものであるから,本件プライスリストに係る情報を入手したとしても,そのことから直ちに原告の見積額を一定の精度をもって推知できることにはならない。原告のSI事業部の営業課長を勤めた経験を持つT(昭和11年▲月▲日生。)は,証人尋問において,N及びMの見積書を作成する際,従前の見積書を参考にしたこと,本件訴訟のためにプライスリストを印刷してもらったほかは,自分自身であるいは他の従業員に依頼してプラ ▲月▲日生。)は,証人尋問において,N及びMの見積書を作成する際,従前の見積書を参考にしたこと,本件訴訟のためにプライスリストを印刷してもらったほかは,自分自身であるいは他の従業員に依頼してプライスリストを印刷したことはない旨述べているのであって,原告の社内においても,見積書を作成する際にプライスリストの情報が有用なものとして用いられていなかったものと認めるのが相当である。 したがって,本件プライスリストにより,ロボットシステムの見積り,受注に当たって原告より優位に立つことができるとは直ちに認められない。 (エ) 以上によれば,本件プライスリストは,同業他社が,本件各製品番号のロボットシステムと同種のロボットシステムを設計,製造するに当たり,その汎用部品及びその仕入先,外注部品の外注先を選択する上において,また,当該仕入先及び外注先との価格交渉をする上において,有用性があるものと認められる。 イ秘密管理性について不正競争防止法が事業活動に有用な情報につき営業秘密として保護されるための要件として「秘密として管理されている」ことを挙げている(2条6項)のは,当該情報が営業秘密として客観的に認識できるように管理されているのでなければ,当該情報の取得,使用又は開示行為が不正競争行為に当たるか否かが明らかでなくなり,経済活動の安定性が阻害されることを理由とするものと解される。このことからすれば,「秘密として管理されている」とは,当該営業秘密について,従業員及び外部者から認識可能な程度に客観的に秘密としての管理状態を維持していることをいい,具体的には,当該情報にアクセスできる者が制限されていること,当該情報にアクセスした者が当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていることなどが必要と解され,要求される情報管理の程度や態様は,秘密 該情報にアクセスできる者が制限されていること,当該情報にアクセスした者が当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていることなどが必要と解され,要求される情報管理の程度や態様は,秘密として管理される情報の性質,保有形態,企業の規模等に応じて決せられるものというべきである。 以下,上記観点から,本件プライスリストの営業秘密性について検討する。 (ア) 証拠(甲13,35,乙ロ7,証人U,証人T)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 原告においては,産業用ロボットの設計,製造及び営業の業務を,ロボットシステム部門(平成15年11月以降は「SI事業部」と呼ばれていた。なお,「SI」はシステムインテグレーションの略)が取り扱っており,SI事業部は技術部と営業部に分かれ,技術部は更に設計部門と製造部門に分かれていた。なお,平成17年11月に組織の大幅な改変が行われ,各事業部門の営業部を統合して営業本部が設けられたが,営業本部には,各事業部門に応じた営業課が設けられていた。 また,特製部品や市販部品の仕入れは調達部が担当していた。 プライスリストは,調達部がコンピューター上のデータとして作成,管理していたところ,このデータは,調達部の者のほか営業部及び一部の機械設計部門の者のみが,共通のパスワードを入力することによってパソコンからこれを見たり,印刷したりすることができた。なお,営業部の従業員は,O営業部長からメールでそのパスワードを通知されたところ,このパスワードが変更されたことはなく,営業部の従業員の中には,パソコンに当該パスワードを記載した付せんを貼っている者もいた。 プライスリストを印刷する際は部門責任者の許可を要し,その利用が終わり次第廃棄する建前になっており,朝礼において,時々,そうしたプライスリスト及びその印字用 を記載した付せんを貼っている者もいた。 プライスリストを印刷する際は部門責任者の許可を要し,その利用が終わり次第廃棄する建前になっており,朝礼において,時々,そうしたプライスリスト及びその印字用紙の管理を厳重にするように注意されることがあった。もっとも,プライスリストが業務上の秘密事項に該当することを定めた文書や,その管理方法を定めたマニュアルもなく,プライスリストを印刷したものに「社外秘」等の押印をする取決めはなかったし,営業部門の従業員の中には,プライスリストを印刷したものを廃棄しないでそのまま保管している者もいた。 (イ) 上記事実関係によれば,プライスリストは,原告の従業員の中で限られた調達部,営業部及び機械設計部の者しかアクセスできない上,アクセスする際にはパスワードを入力することが求められ,印刷する際には部門責任者の許可を要するものとされていたことに加え,プライスリストは機械製造メーカーにとって一般的に重要であることが明らかな仕入原価等の情報が記載されており,プライスリストの外部への提示や持ち出しが許されていたという事情は認められないのであるから,パスワードが変更されず,パソコン上にパスワードを記載した付せんを貼っている者がいたことや,秘密管理の方法を定めたマニュアルがなく,印刷したものに「社外秘」等の押印をする取決めがなかったとしても,プライスリストは,従業員にとってそれが営業秘密であることを客観的に認識することができたものと認められる。 したがって,本件プライスリストは秘密管理性を有するものと認められる。 ウ非公知性について本件プライスリストは,原告が,製造販売した本件各製造番号のロボットシステムにつきその構成ユニット別の製造コスト及び構成部品を明確にするため作成したものであり,その情報が刊行物に記載されていたとか公然 件プライスリストは,原告が,製造販売した本件各製造番号のロボットシステムにつきその構成ユニット別の製造コスト及び構成部品を明確にするため作成したものであり,その情報が刊行物に記載されていたとか公然と知られていたような事情は認められないから,非公知性を有していると認められる。 エ以上によれば,本件プライスリストは,原告の営業秘密であると認められる。 (2) 争点イについてア前記前提事実に証拠(乙ロ1,2,7,8,被告Y3,被告Y4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 被告Y3は,昭和56年9月1日,原告に入社し,平成6年4月ころ,営業技術の担当となり,その後SI事業部の営業第2課長に昇進したが,平成15年ころから,営業実績を上げれば上げるほど多くの仕事を担当させられると感じ,また上司の対応等にも不満を抱くようになったことから,退職を考えるようになった。 被告Y3は,平成16年11月初めころ,被告Y1のGに会った際,原告を辞めようと思っていることを伝え,同月中ころ,Gと電話で話した末,原告を辞めて新会社を設立して独立することを決意した。 (イ) 被告Y4は,平成15年7月1日,原告に入社し,それまで経験のなかった機械設計の仕事をするようになったが,その後しばらくして上司の言動等に不満を抱くようになり,平成16年11月ころ,被告Y3から被告Y1と組んで仕事をするつもりである旨の話を聞いて,これに関心を持った。 (ウ) 被告Y3らは,同月27日,被告Y1を訪問し,D常務,G,被告Y2のI社長と面談した。 その後,被告Y3は同年12月10日に,被告Y4は同月20日ころに,それぞれ,原告に対し,平成17年1月末で退職する旨の辞表を提出した。 (エ) 被告Y4は,平成16年12月21日,被告Y3の社内メールアドレスにあてて,本件 月10日に,被告Y4は同月20日ころに,それぞれ,原告に対し,平成17年1月末で退職する旨の辞表を提出した。 (エ) 被告Y4は,平成16年12月21日,被告Y3の社内メールアドレスにあてて,本件各製品番号を記載した上,「その他,Y3が気になる物件」,「以上の物の価格表を打ち出してもらえませんか?それらをまとめたいと思います。Y2との価格比較をやりたいと,考えていますがどうでしょう?それに伴い,見積もりの見直し等,必要と思いますが。」と記載したメールを送信した。 (オ) 被告Y3は,被告Y4の求めに応じ,本件各製品番号のロボットシステムに係る本件プライスリストの一部を印刷して複製し,これを被告Y4に渡した。なお,本件全証拠によっても,被告Y3の複製した本件プライスリストの一部を特定することはできない。 イ被告Y3らは,被告Y4が被告Y3に本件プライスリストの開示を求めた理由について,被告Y4が,当時原告において設計を担当していたロボットシステムについて,類似するシステムの本件プライスリストを見てコストダウンの参考にしようと考えたためである旨主張し,被告Y4は,本人尋問において,同趣旨の供述をし,上記メール中の「Y2との価格比較をやりたいと,考えていますがどうでしょう?」との部分は,そのように記載すれば被告Y3が本件プライスリストを見せてくれると思ったから記載した旨供述し,「それに伴い,見積もりの見直し等,必要と思いますが。」との部分は,被告Y3の見積金額に問題があると考えていたことから,被告Y3に対し,原価を把握した上で見積金額の見直しをしてほしいという趣旨で記載した旨供述する。被告Y3も,本人尋問において,これに沿う供述をする。 しかし,上記メールを送付したのは,被告Y3らがいずれも原告を退社する決意をして辞表を提出し,原告を退社し しいという趣旨で記載した旨供述する。被告Y3も,本人尋問において,これに沿う供述をする。 しかし,上記メールを送付したのは,被告Y3らがいずれも原告を退社する決意をして辞表を提出し,原告を退社した後に被告会社らの関与の下で原告と同種の事業を行うことを予定していた時期のことであって,この時期に被告Y4が原告のロボットシステムの原価を基にその見積価格を見直そうと考える動機に乏しく,むしろ,原告を退社した後に関わることになる被告会社らの製造,販売に係るロボットシステムについて,本件プライスリストを基にした原告製品に用いられている汎用部品の部品名,仕入先及び仕入価格並びに外注部品の下請先及び仕入単価との比較をするなどして,アルミダイカスト製品の取出しロボットシステム等において全国1位のシェアを有する原告の営業上の秘密を不正に利用する意図を有していたと考えるのが自然であり,被告Y3らの上記供述部分を採用することはできない。もっとも,被告Y1が,M及びNからロボットシステムの見積依頼を受けたのは平成17年2~3月ころのことであったから(乙イ4,5),被告Y4が本件プライスリストを基に仕入価格等の比較をしようと思ったのは,M又はNからの具体的な見積依頼を意識したものとは認め難い。 したがって,上記の事実経過に照らせば,被告Y3らは,原告を退職した後に,営業秘密である本件プライスリストを用いて,ロボットシステムの業界において,被告会社ら及びC社が優位な地位を得て原告に損害を与える目的であったと認めるのが相当である。 ウ原告は,被告Y3らが本件プライスリストをGに交付し,被告Y1において,M及びNからの受注案件について,原告のものと同形式の見積書を用い,原告が提示した見積額よりも若干下回る見積額を提示して,M及びNからロボットシステムを受注した旨主 をGに交付し,被告Y1において,M及びNからの受注案件について,原告のものと同形式の見積書を用い,原告が提示した見積額よりも若干下回る見積額を提示して,M及びNからロボットシステムを受注した旨主張する。 (ア) 原告と被告Y1の各見積書の記載形式の異同について検討する。 原告の見積書(甲19,20)は,1枚目に,ファナック社製のロボット本体と周辺装置に分けた見積額及び総合計見積額を記載し,2枚目に,ロボット本体について「機構部仕様」,「制御部仕様」,「ソフトウエア仕様」,「その他」の項目に分けてその仕様明細を記載し(各明細別の金額は記載されていない。),オプション項目を記載し(各項目別の金額が記載されている。),3枚目に,周辺機器について,「スプレーヘッド」,「バルブユニット」,「取出ロボットハンド」,「取出ロボット架台」などの項目に分けてそれぞれの金額が記載されている。 被告Y1の見積書(乙イ8~10)は,1枚目に,ファナック社製のロボット本体の見積額と,周辺装置については数項目に分けて各項目別の見積額を記載するとともにその合計見積額が記載されている。 被告Y1の見積書の記載項目は,ロボットシステムの見積書において一般に想定される項目が記載されているにすぎず,他社の見積書の特徴を取り込んだと推認されるような記載部分は認められないし,原告の上記の見積書と比較しても,原告の見積書の方が被告Y1のそれより,ロボット本体及び周辺装置の各項目についてかなり詳細に記載されており,各見積書の形式が同一であるとも類似しているとも認めることはできない。 (イ) 原告と被告Y1の各見積金額について検討する。 原告のMに対する見積額は,690万円である(甲19)。原告のNに対する見積額は,見積書によれば800t取出しロボット1台,500t取出しロボット2台で 原告と被告Y1の各見積金額について検討する。 原告のMに対する見積額は,690万円である(甲19)。原告のNに対する見積額は,見積書によれば800t取出しロボット1台,500t取出しロボット2台で合計2505万円であり(甲20),原告が見積金額に含めなかったと主張する800t取出しロボットの切断ハンドの金額45万円を加算すると,上記見積合計額は2550万円となる。 被告Y1のMからの受注額は610万円(乙イ21の1),Nに対する見積額は,800t取出しロボット1台が845万円,500t取出しロボット2台が1650万円(各825万円ずつ)で合計2495万円である(乙イ8~10)。 原告は,原告及び被告Y1の上記各見積額を比較することによって,被告Y1が,本件プライスリストに基づいた原価計算を基にして,原告の見積額を下回るような見積額を算出して提示した旨主張するが,前記(1)ア(ウ)で述べたとおり,本件プライスリストに係る情報を基にしても原告の見積額を一定の精度をもって推知できるとはいえない上,被告Y1の見積額が原告のそれを下回っていることや各見積額の差額の程度に照らしても,被告Y1が,本件プライスリストの情報を基にM及びNの受注案件に係る見積額を算出したものと直ちに認めることはできない。 (ウ) 被告Y1がMとNから受注を得た経緯について原告は,被告Y1がM及びNからロボットシステムの受注を得たのは,被告Y1が本件プライスリストを入手して,その情報を基にして見積書を作成,提示することができたためである旨主張する。 しかし,M及びNが原告と被告Y1に対しロボットシステムの見積りを依頼した結果,原告ではなく被告Y1に発注したのは,両社の見積額を比較した結果というよりも,むしろ,過去に納品された製品についての原告のアフターサービスに不満のあったこ しロボットシステムの見積りを依頼した結果,原告ではなく被告Y1に発注したのは,両社の見積額を比較した結果というよりも,むしろ,過去に納品された製品についての原告のアフターサービスに不満のあったことや見積依頼後の対応が原告よりも被告Y1の方が良かったためであると認められるから(乙イ4,5),こうした事情に照らせば,被告Y3らが本件プライスリストを入手したことと,被告Y1がM及びNからロボットシステムを受注したこととの間に因果関係は認められない。 (エ) 被告Y3がGに対し本件プライスリストを交付したか否かについて以上のとおり,被告Y1が作成したM及びNの受注案件に係る見積書を検討しても本件プライスリストを用いた事実は推認できないし,被告Y3は,陳述書(乙ロ7)において,被告Y3がGに本件プライスリストを交付したことはない旨述べ,Gも,陳述書(乙イ22)において,Gと被告Y3との間でプライスリストについての話がされたことはない旨述べており,そのほか,Gが被告Y3らに対し本件プライスリストの交付を求めたとか,被告Y3らが本件プライスリストをGに交付したという事実を認めるに足りる証拠はない。 被告Y4は,原告を退社した後に被告Y2においてHのロボットシステムの設計を担当しており(乙ロ2),被告Y4が本件プライスリストを入手した目的が,被告Y2において設計を担当する際に本件プライスリストに記載された原告のロボットシステムの汎用部品の部品名,仕入先及び仕入価格並びに外注部品の下請先及び仕入単価等の情報を参考にするためであったとすれば,被告Y4が本件プライスリストをGに提供するまでの必要は認められないのであるから,被告Y4の本件プライスリストの入手経緯やその後の職務内容に照らしても,被告Y3らが本件プライスリストをGに交付したものと認めることもでき リストをGに提供するまでの必要は認められないのであるから,被告Y4の本件プライスリストの入手経緯やその後の職務内容に照らしても,被告Y3らが本件プライスリストをGに交付したものと認めることもできない。 エ被告Y3が被告Y4に交付した本件プライスリストの一部の複製物は,間もなく被告Y3に返却され,被告Y3によって廃棄された(乙ロ1,2,7,8,被告Y3,被告Y4)。 (3) 以上によれば,本件プライスリストが原告の営業秘密であることが認められるものの,被告Y3らが本件プライスリストをGに交付した事実は認められず,また,被告会社らが,M及びNの受注案件において,本件プライスリストを用いて見積書を作成して,これらの受注を得た事実も認められない。 また,原告は,被告らに対し,不正競争防止法3条2項に基づいて,本件プライスリストの複製物の廃棄を求めているところ,被告会社らが本件プライスリストの複製物の交付を受け又はこれを使用した事実は認められないし,また,被告Y3の取得した本件プライスリストの一部の複製物は,既に廃棄されたものと認められる。 したがって,原告が,被告会社らに対して,本件プライスリストを使用してダイカスト用ロボットシステムの見積書を作成することの差止めを求める請求,被告らに対して,本件プライスリストの複製物の廃棄を求める請求及び合計935万円の損害賠償を求める請求はいずれも理由がない。 本件設計図等に係る不正競争行為について(1) 争点アについてア有用性について本件設計図は,バリ取りハンドに装着するスケラー用刃具(バリ取りツール)の寸法,材料,熱処理方法・硬度,仕上の程度等が記載されたものであり(甲15の1~5),競業者がこれらを見れば,原告のスケラー用刃具と同等のものを製作することが可能となる。 また,本件CADデータ等 寸法,材料,熱処理方法・硬度,仕上の程度等が記載されたものであり(甲15の1~5),競業者がこれらを見れば,原告のスケラー用刃具と同等のものを製作することが可能となる。 また,本件CADデータ等は,原告が設計,製造したモーター駆動の面取りハンドを設置した「天吊りバリ取りロボットシステム(DC826)」(製品番号R-3371)のシステムレイアウト図,ユニット組付図,部品図,市販購入品一覧表,油気圧回路図等で構成され,部品図には,各部品の形状,寸法,材料,加工精度等が記載されており(甲17,34,36),競業者がこれらを見れば,原告の上記ロボットシステムと同等のものを製作することが可能となる。 したがって,本件設計図等は有用性があると認められる。 イ秘密管理性について(ア) 証拠(甲13,16,40,41及び42の各1~15,43,乙イ23の1・2,24,26の1~3,27の1~3,28の1・2,29,乙ロ7,8,証人U,証人T,被告Y3,被告Y4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a保管状況について原告では,機械設計部がロボットシステムの設計図を製作,管理しているが,かつては手書きで設計図を製作し,これらを製品番号ごとにファイルに綴った上,鍵付きのキャビネットに保管し,平成13年ころから,コンピューターのCADシステムを利用して設計図の製作,管理を行うようになり,平成16年ころ以降は,原則としてCADシステムで設計図の製作,管理を行っている。CADシステムで設計した場合も,原図を印刷して,手書設計図と同様に,製品番号ごとにファイルに綴った上,鍵付きのキャビネットに保管している。 b設計原図の持ち出しについて設計部門の従業員は,新しいロボットシステムの設計の参考にするため,キャビネットから過去のロボットシステムの設 ァイルに綴った上,鍵付きのキャビネットに保管している。 b設計原図の持ち出しについて設計部門の従業員は,新しいロボットシステムの設計の参考にするため,キャビネットから過去のロボットシステムの設計図のファイルを取り出して参照することがあったが,こうした場合に管理台帳(甲16)へ記入することは求められていなかったし,また,キャビネットは施錠もされていなかった。同従業員は,設計を終えるまでの数日間,設計原図を自分の机の引き出し等に保管して利用し,その後キャビネットに返却するという取扱いをしており,終業後に机の上に放置したままにしている場合もあった。また,従業員が設計原図が必要になって探した際に初めてなくなっていることに気付くこともあり,キャビネットに返却されない設計原図もあった。 設計部門以外の従業員は,設計室内ではキャビネットに保管されている設計原図を自由に見ることができたが,設計室外に持ち出す場合には,管理台帳(甲16)に持ち出し年月日,持ち出し原図の製品番号,持ち出し者氏名を記入する建前となっていた。なお,管理台帳への記入は,平成5年が2回,平成6年が5回,平成7年が15回,平成8年が1回,平成9年が3回,平成10年が5回,平成11年が8回であり,同年までは管理台帳への記入が徹底されていなかったが,平成12年以降は,記入の回数も増えて,概ね管理台帳への記入が徹底されるようになった。 営業部門の従業員等は,得意先に赴いて打合せをする際,得意先の希望する機種と類似する原告製品を参考にするために,設計原図を上記のように持ち出してファイルごと持参し,必要な図面をその都度取り出して参照することがあった。 c外注先・仕入先に対する設計原図の管理について設計原図のコピー自体は禁止されておらず,例えば,外注先に部品の製造を依頼する際には部品図等を ,必要な図面をその都度取り出して参照することがあった。 c外注先・仕入先に対する設計原図の管理について設計原図のコピー自体は禁止されておらず,例えば,外注先に部品の製造を依頼する際には部品図等をコピーして交付する必要があるが,機械設計部長がその設計内容を承認した図面であれば,コピーしてこれを外注先に交付することについて上司の承認は不要であった。なお,外注先に交付した図面のコピーは,回収した上で廃棄する建前となっていたが,これは徹底されておらず,回収されない図面もあった。 原告は,昭和58年から平成10年にかけて,外注先との間で,原告の文書による事前の同意なくしては担当外の従業員及び第三者に対し本件秘密事項(原告の開示した技術情報に関する秘密事項)を開示漏洩しないこと,本件秘密事項を本物件の製作以外の目的に使用しないこと,原告から貸与された図面,仕様書等本件秘密事項を含むすべての文書を無断で複製せず,原告の要求があったときは本物件の納入後直ちに原告に返却することなどを内容とする「秘密保持に関する念書」(甲39の1~6)を取り交わした。もっとも,原告の提出した証拠によれば,同念書は,昭和58年6月に2社(うち1社は対象物件が2件),平成元年12月に1社,平成5年4月に1社,平成10年1月に1社の合計5社との間で取り交わされたことが認められるにとどまる。 また,原告は,平成14年2月,仕入先に対し品質保証体制の整備充実を求めるために「仕入先における品質保証の手引き」(甲40)を作成し,同手引きにおいて,原告が仕入先に対し貸与又は承認する図面・標準類を仕入先にて管理する方法を明確にし業務の円滑化及び機密の保持を図ることを目的とした「文書(図面・標準類)管理要領」を定め,仕入先に対し,あらかじめ図面類の統括管理部署及びその管理責任者を決定し, を仕入先にて管理する方法を明確にし業務の円滑化及び機密の保持を図ることを目的とした「文書(図面・標準類)管理要領」を定め,仕入先に対し,あらかじめ図面類の統括管理部署及びその管理責任者を決定し,責任者登録表により原告の製造部生産管理課に登録することを義務付け,管理責任者は,①当該管理要領に基づく図面類の管理・監督,②図面類に記載されている事項の機密保持,③図面類の社内配布先の決定を行うことを義務付ける旨を明記した。原告は,平成14年3~4月,仕入先15社との間で同手引きに係る「取引基本覚書」(甲41の1~15)を取り交わし,各仕入先から,品質保証責任者,図面・文書管理責任者及び緊急時の連絡先を記載した「責任者登録表」(甲42の1~15)の交付を受けた。 dCADデータについてCADシステムで作成した設計データ及び表データは,すべてコンピューターのサーバーに保管され,技術部門のコンピューター端末のみによって,そのデータにアクセスすることができたが,技術部門の従業員は,そのデータをコンピューター端末にコピーして利用することがあり,また,印刷した図面については,設計原図のコピーと同様の扱い(上記cのとおり)をしていた。 もっとも,設計部門の従業員が,営業部門の従業員に対し,電子メールに添付する方法によりCADデータを送信することがあったし,取引先に対して,設計図面のコピーやCADデータを提供することがあり,こうした場合には提供した設計図面等を第三者に開示しないように注意することはなかった。 e取扱説明書について原告は,得意先にロボットシステムを納入した際,取扱説明書(乙イ23の1・2)を交付しているところ,その取扱説明書には,「調達部品表」及び個々の部品の使用箇所を図示した組図が添付されており,同組図はCADデータを印刷したものである 納入した際,取扱説明書(乙イ23の1・2)を交付しているところ,その取扱説明書には,「調達部品表」及び個々の部品の使用箇所を図示した組図が添付されており,同組図はCADデータを印刷したものである。 そして,同取扱説明書には,その内容が秘密情報であるとか原告の了解なく第三者に開示してはならないことが明記されてはなく,原告はロボットシステムを納品した株式会社V及びMに対し,同取扱説明書の内容が秘密情報であるとか原告の了解なく第三者に開示してはならない旨を申し入れたことも,守秘義務契約書を取り交わしたこともなかった。また,原告は,Fに対してロボットシステム(原告システム)を納入した際にも,上記のような取扱説明書を交付しており,同取扱説明書には,本件CADデータ等のうち原告が被告システムとの類似性を示すものとして特に問題としている組図(甲24,甲34の3枚目)も含まれていたところ,Fに対して,同取扱説明書の内容が秘密情報であるとか原告の了解なく第三者に開示してはならない旨を申し入れたり,守秘義務契約書を取り交わしたこともなかった。 なお,原告は,株式会社Vの取扱説明書の取扱い等に関して同社の常務取締役のW作成の陳述書(甲43)を提出するが,株式会社Vの社内的な取扱いについて述べるものにすぎず,これによって,原告が,取扱説明書を交付する取引先に対して,その内容が秘密情報であるとか原告の了解なく第三者に開示してはならない旨を申し入れたり,守秘義務契約書を取り交わしていたとの事実を認めることはできない。 (イ) 営業秘密の秘密管理性については,前記1(1)イに説示したとおり,当該情報にアクセスできる者が制限されていること,当該情報にアクセスした者が当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていることなどが必要と解され,要求される情報管理 説示したとおり,当該情報にアクセスできる者が制限されていること,当該情報にアクセスした者が当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていることなどが必要と解され,要求される情報管理の程度や態様は,秘密として管理される情報の性質,保有形態,企業の規模等に応じて決せられるものというべきである。 上記のとおり,原告においては,ロボットシステムの設計図は,設計室内のキャビネットに保管され,設計部門の者が設計室内で行う設計作業のために設計原図を持ち出すことは自由にできたものの,設計部門以外の者が設計室外に持ち出す場合には,少なくとも平成12年以降は管理台帳への記入が求められていたこと,CADシステムで作成した設計データ及び表データは,すべてコンピューターのサーバーに保管され,そのデータにアクセスすることができる端末を技術部門のものに限ってデータにアクセスできる者を技術部門の従業員のみに限定していたこと,設計原図のコピーを交付するような外注先・仕入先との間で一部「秘密保持に関する念書」を取り交わしていたこと,上記設計図及び設計データ等には機械製造メーカーにとって一般的に重要であることが明らかなロボットの設計・製造に係る技術情報が記載されていることが認められる。以上の事実関係に照らせば,原告においては,ロボットシステムの設計図及び設計データ等にアクセスできる者が特定の従業員に制限されており,また,上記設計図等にアクセスした従業員においては当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できたものと認めるのが相当である。 なお,原告が得意先に交付する取扱説明書には,設計図等と同様のロボットシステムの組図が添付されており,得意先に対して,同取扱説明書を秘密にするように申し入れたり守秘義務契約を締結してはいなかったし,取引先に対して,設計図のコピ 扱説明書には,設計図等と同様のロボットシステムの組図が添付されており,得意先に対して,同取扱説明書を秘密にするように申し入れたり守秘義務契約を締結してはいなかったし,取引先に対して,設計図のコピーやCADデータを提供することがあった事実が認められるものの,それは,原告がロボットの部品を製造依頼する仕入先や完成したロボットを販売する得意先に対して必要に応じて設計図等を提供したものにすぎないというべきであり,その際に秘密保持契約を締結していなかったとしても,そのことから原告が仕入先や得意先に対して設計図等を提供した目的以外の用途にこれらを用いることまでを許諾したものとは認めることはできない。そして,原告が仕入先や得意先に対して上記のような設計図等の提供行為を行っていたことにより,原告の従業員において,仕入先や得意先に対して求められる情報管理がその程度の緩やかなものでよいと認識することになるとしても,設計図等が営業秘密であって自己又は第三者のために流用することが許されないという認識又は認識可能性が失われるものとは認められない。 したがって,本件設計図等は秘密管理性を有していたと認められる。 ウ非公知性について本件設計図等は,原告がバリ取りツール及び原告システムを設計,製造するために作成したものであり,その情報が刊行物に記載されていたとか公然と知られていたような事情は認めらないし,ロボットシステムを販売した取引先に交付した取扱説明書に設計図面の一部が添付されていたとしても,当該取引先においてこの情報を公開したという事情も認められないから,非公知性を有していると認められる。 エ以上によれば,本件設計図等は,原告の営業秘密であると認められる。 (2) 争点イについてア本件CADデータ等に係る不正取得,不正使用の事実について(ア) 前記前提事 有していると認められる。 エ以上によれば,本件設計図等は,原告の営業秘密であると認められる。 (2) 争点イについてア本件CADデータ等に係る不正取得,不正使用の事実について(ア) 前記前提事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 aGは,平成16年12月28日,当時原告の従業員であった被告Y4に対し,Hから受注したロボットシステムに関し,具体的な資料を送付した上で設計上のアドバイスを求め,被告Y4もそれに応じてレイアウト図(甲4)を作成して協力し,また,被告Y4は平成17年1月31日付けで原告を退社した後,1か月の契約で被告Y2に常駐して被告システムの設計を担当した。 b被告Y4は,同年2月12日ころに,被告システムの「組み図」(乙イ11)を作成し,同月24,25日ころに,ホルダー(乙イ12),シャフト(乙イ13),ホルダー(乙イ14),ホルダー(乙イ15)の各図面を作成した(各図面中の記載に基づいて上記作成日を認定することができ,被告Y4の本人尋問及び陳述書《乙ロ8》中,これに反する供述部分は採用することができない。)。 c被告システムは,原告システムとほぼ同様のフローティング機構を備えており,エアシリンダー及びロックプレート(面取りハンドを上下反転する際に安定性を欠くという欠点をなくすため,フローティング機構が働かないようにロックするための部品)が付加されている点を除けば,ほぼ同様の構造を有している。 d原告システムと被告システムの部品構成は,別紙部品構成比較表のとおりであり,平行キーが原告システムでは「5×5×L15」サイズのJIS規格品であるのに対し,被告システムでは「5×5×L25」サイズのミスミ製品となっていること,ベアリングの品番がLLU(原告システム)とZZ(被告システム)の相違が 「5×5×L15」サイズのJIS規格品であるのに対し,被告システムでは「5×5×L25」サイズのミスミ製品となっていること,ベアリングの品番がLLU(原告システム)とZZ(被告システム)の相違があること,バネの個数が被告システム(6個)が原告システム(3個)の2倍であること,被告システムにのみエアシリンダーがあること以外は,品番・個数・メーカーの同じ部品が使用されている(甲24,34,乙イ11)。 e被告システムのホルダー(乙イ12),シャフト(乙イ13),ホルダー(乙イ14),ホルダー(乙イ15)は,それに対応する原告システムのコレットケース(甲26),スピンドルシャフト(甲27の1・2),ベアリングケース(甲28),カップリング(甲32)と若干寸法が異なるもののその形状が酷似している。 f被告システムのホルダーの図面(乙イ14)の正面断面図には,その断面の取り方に従えば全く存在しないはずのボルト孔が,原告システムのベアリングケースの図面(甲28)のそれと同様に記載され,しかも,原告システムの上記図面上に誤って記載された右端上部のボルト孔まで記載されており(甲36,被告Y4),不自然な一致状況が認められる(なお,被告システムの上記図面上に表示はないものの,被告Y4は,本人尋問において,上記図面は真上から中心点まで及び中心点から右下45度に向かう断面で切ったものである旨供述するところ,この断面に従ったとしても,右端上部に記載されたボルト孔は存在しないから,原告システムの上記図面と同様の誤記が存することに変わりはない。)。また,両図面の中心線等を示す一点鎖線の描画状況(一点鎖線の始点及び終点の位置,長線・空白・短線の位置関係,他の線との交差状況)は全く同一である(一点鎖線の描画状況が全く同一であることは,原告システムのカップリングの 線等を示す一点鎖線の描画状況(一点鎖線の始点及び終点の位置,長線・空白・短線の位置関係,他の線との交差状況)は全く同一である(一点鎖線の描画状況が全く同一であることは,原告システムのカップリングの図面《甲32》と被告システムのホルダーの図面《乙イ15》についても同様である。)。 (イ) 上記のとおり,原告システムと被告システムとが,フローティング機構等の基本的な構造が類似しているというにとどまらず,各部品が若干の寸法の違いを除けばその形状が酷似していることについて,被告Y3らは,被告システムと原告システムには,設計上の差異点(近接センサーの位置の違い,フローティング機構をロックする機構の付加,ブラケットの付加,部品の寸法の違い)や図面の表記上の差異点(組図に記載すべきカバーが記載されていない,「オリエンタモーター」との誤記,モーターの中心線の位置の違い)が存するから,被告Y4が本件CADデータ等を使用した事実は認められないし,被告Y4は原告在職中に原告システムの部品図を設計した経験を有するから,本件CADデータ等を使用しなくても被告システムの設計は可能であり,そうした経験に基づいて被告システムを設計したのであるから,被告システムが原告システムと類似することは何ら不自然なことではない旨主張する。 しかし,被告Y4が原告在職中に原告システムを設計した経験を有するとしても,原告システムの各部品に酷似した部品を設計できるような詳細な形状までを記憶していたとは考え難いし,図面上の表記において不自然な一致状況が認められることを併せ考慮すれば,被告Y4が本件CADデータ等を使用することなく被告システムを設計したとの被告Y3らの主張は採用することが困難である。被告Y3らが主張する図面の表記上の差異点(組図に記載すべきカバーが記載されていない,「オリエ CADデータ等を使用することなく被告システムを設計したとの被告Y3らの主張は採用することが困難である。被告Y3らが主張する図面の表記上の差異点(組図に記載すべきカバーが記載されていない,「オリエンタモーター」との誤記,モーターの中心線の位置の違い)は,被告システムを設計するに当たって本件CADデータ等に変更を加えた際に生じたものと推認することができるから,こうした差異点の存在は,被告Y4が被告システムを設計する際に本件CADデータ等を使用したとの事実と何ら矛盾するものではない。 したがって,被告Y3らは,コンピューター内のフォルダにまとめて管理されていた本件CADデータ等を取得した上これを使用して被告システムを設計したものと認められ,その目的は,被告会社らにおいて不正の競業その他の不正の利益を得る目的で,又は原告に損害を加える目的であったと認められる。 イ本件設計図に係る不正取得,不正使用の事実について(ア) 本件設計図のうち,被告システムのバリ取りツール図面(乙イ16)と最も類似しているのはバリ取りツール(BT-13)の図面(甲15の4。以下「本件13図」という。)であるので,まず,被告らが本件13図を不正取得,不正使用したか否かを検討するに,被告システムのバリ取りツール図面と本件13図は,いずれも,円柱状のヤスリの設計図であって,先端から順に,直径○㎜の刃部A,刃のない部分(直径○㎜の長さ○㎜の円柱状部分,直径○㎜から直径○㎜になる長さ○㎜の円錐状部分,直径○㎜の長さ○㎜の円柱状部分),直径○㎜の刃部Bとから成る(直径の寸法公差はいずれも±○㎜)。刃部A及び刃部Bは,(中略)円柱状のヤスリを形成しており,刃部Aの山部と谷部の段差は○㎜,刃部Bの同段差は○㎜となっている。先端部分には丸みが付けられているものの,刃部A及び刃部Bの山 ±○㎜)。刃部A及び刃部Bは,(中略)円柱状のヤスリを形成しており,刃部Aの山部と谷部の段差は○㎜,刃部Bの同段差は○㎜となっている。先端部分には丸みが付けられているものの,刃部A及び刃部Bの山部には丸みは付けられていない。なお,本件13図には谷部(中略)に半径○㎜の丸みが付けられているが,被告システムのバリ取りツール図面は,上記と同様に谷部の丸みが作図されているものの,その半径を示す記載が欠けている。 上記のように,被告システムのバリ取りツール図面は,本件13図とその形状が極めて酷似しており,先端部分の丸みの半径が○㎜(被告システム)と○㎜(本件13図),刃部Aの長さが○㎜(被告システム)と○㎜(本件13図),刃部Bの長さが○㎜(被告システム)と○㎜(本件13図)と異なっていることが認められるものの,これらの差異は上記の一致状況に比べればわずかなものである。 そして,被告Y4が上記の一致状況に見られるような詳細な形状,寸法までを記憶していたとは考え難い。 (イ) なお,被告Y3らは,被告システムのバリ取りツールは,被告Y3がKから入手したバリ取りツール図面(乙ロ3の2)を参考にして被告Y4が設計した旨主張し,被告Y4は本人尋問及び陳述書(乙ロ8)においてこれに沿う供述をする。 しかし,Kのバリ取りツール図面においては,直径○㎜の刃部A,刃のない部分(直径○㎜の長さ○㎜の円柱状部分,直径○㎜から直径○㎜になる長さ○㎜の円錐状部分),直径○㎜の刃部Bとから成り,刃のない部分と刃部Bの間には長さ○㎜の円柱状部分が存在していないこと,刃部Aの段差は○~○㎜,刃部Bの段差は○~○㎜とされていること,山部には半径○㎜の丸みが付けられているものの先端には丸みがないことなどの点で差異が認められる。 このようにKのバリ取りツール図面に上記の差異が存すること ㎜,刃部Bの段差は○~○㎜とされていること,山部には半径○㎜の丸みが付けられているものの先端には丸みがないことなどの点で差異が認められる。 このようにKのバリ取りツール図面に上記の差異が存すること,被告システムのバリ取りツール図面と本件13図が極めて酷似しており,Kのバリ取りツールの図面よりもその一致の程度は高いこと,被告システムのバリ取りツール図面には,刃部の谷部に本件13図と同様の丸みが作図されているもののその半径を示す記載が欠けているという不自然な作図部分が存することに加え,前記前提事実記載のとおり,Gは平成16年12月28日に原告在職中の被告Y4に対し,「バリ取りツールの参考図面等の資料」の提供を求めていること,被告Y4は上記のとおり本件CADデータ等を不正に取得してHのロボットシステムの設計に使用したことなどの事実に照らすと,被告Y4がKの図面を参考にして被告システムのバリ取りツール(乙イ16)を設計したとの上記供述部分を直ちに採用することはできず,被告Y3らにおいて,本件設計図のうち少なくとも本件13図の複製物を不正に取得して,被告システムのバリ取りツールの設計に使用したものと認めるのが相当である。 (ウ) 本件設計図のうち本件13図以外の図面(甲15の1~3,5)は,いずれも被告システムのバリ取りツールとは全体の形状や刃部の凹凸部分の形状が異なっており,本件全証拠によっても,被告らがこれらの図面を不正取得又は不正使用したことを認めるには足りない。 ウ以上によれば,被告Y3らは,不正の競業その他の不正の利益を得る目的で,又は原告に損害を加える目的で,原告の営業秘密である本件設計図のうち本件13図の複製物及び本件CADデータ等を持ち出し,これを使用して被告システムを設計したものであり,被告Y3らの行為は,不正競争防止法2条1 損害を加える目的で,原告の営業秘密である本件設計図のうち本件13図の複製物及び本件CADデータ等を持ち出し,これを使用して被告システムを設計したものであり,被告Y3らの行為は,不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たる。 また,被告Y2は,被告Y3らの設計に基づいて被告システムを製造し,被告Y1は,Hに対して被告システムを販売したものであるから,被告会社らは被告Y3らから原告の営業秘密である本件13図及び本件CADデータ等の技術情報の開示を受けてこれを使用したものと認められる。そして,前記前提事実記載のとおり,Gにおいて,原告在職中の被告Y4に対し,Hから受注したロボットシステムに関する設計協力を依頼し,面談を予定していた平成17年1月8日に参考図面等の資料を持参することまでを求め,被告Y4が原告を退職した後に被告Y2に1か月間常駐して被告システムの設計を担当したのであるから,被告会社らは,被告Y4が被告システムの設計の際に原告の営業秘密である本件13図及び本件CADデータ等を使用したことを認識しており,仮に認識していなかったとしてもそのことについて重大な過失があったものと認められるから,被告会社らの行為は,不正競争防止法2条1項8号の不正競争行為に当たる。 なお,上記の経過及び被告Y3らの設立したC社が被告Y2に吸収合併されたことに照らすと,本件13図の複製物及び本件CADデータ等は,被告会社らが占有管理しているものと認められ,仮に被告Y4においてこれを保持しているとしても,それは被告会社らの占有補助者としての保持にすぎないと認めるのが相当である。 エ被告会社らは,本件13図及び本件CADデータ等を使用してダイカスト用バリ取りロボットシステム又はダイカスト用面取りロボットシステムを設計又は製造するおそれが認められるから,原告の 相当である。 エ被告会社らは,本件13図及び本件CADデータ等を使用してダイカスト用バリ取りロボットシステム又はダイカスト用面取りロボットシステムを設計又は製造するおそれが認められるから,原告の被告会社らに対する本件13図及び本件CADデータ等を使用した設計,製造行為の差止めを求める請求並びに本件13図の複製物及び本件CADデータ等の廃棄を求める請求はいずれも理由がある。 他方,原告の被告会社らに対する本件13図を除く本件設計図に係る差止め請求及び廃棄請求並びに被告Y3らに対する本件設計図の複製物及び本件CADデータ等の廃棄請求は,いずれも理由がない。 (3) 争点ウについて上記のとおり,被告らは,Hに納品したバリ取りロボット(被告システム)2台の設計,製造,販売において相通じて不正競争行為を行ったものであり,上記の経緯に照らせば被告らには故意又は過失が認められることは明らかであるから,これらの行為は共同不法行為に当たると認められる。したがって,被告らは,これらの不正競争行為によって原告が被った損害について連帯して賠償する義務を負う。 被告Y2は,バリ取りロボット(被告システム)2台を製造してこれを被告Y1に販売し,粗利益121万4809円を得ており,また,被告Y1は,これを被告Y2から仕入れてファナック製のロボットに装着してHに販売し,粗利益204万円を得たことが認められる(被告会社らの利益合計は325万4809円。乙17の1)。原告は,被告会社らがHにバリ取りロボット2台を販売したことで合計650万円の利益を上げた旨主張するが,被告会社らが325万4809円を超える利益を得たことを認めるに足りる証拠はなく,また,被告会社らの得た利益が粗利益合計325万4809円を下回ることを認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告が,被告らの不 325万4809円を超える利益を得たことを認めるに足りる証拠はなく,また,被告会社らの得た利益が粗利益合計325万4809円を下回ることを認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告が,被告らの不正競争行為によって被った損害は325万4809円と推定することができるから(不正競争防止法5条2項),被告らは連帯して325万4809円及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成17年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 結論 以上によれば,原告の被告らに対する請求は,被告会社らに対し,本件13図及び本件CADデータ等を使用して,ダイカスト用バリ取りロボットシステム又はダイカスト用面取りロボットシステムを設計又は製造することの差止め,その占有する本件13図の複製物及び本件CADデータ等の廃棄を求める請求,並びに,被告らに対し,連帯して325万4809円及びこれに対する平成17年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官(別紙)営業秘密目録(1)原告の下記製品番号に係るロボットシステムのR番別仕入れ明細R-3236,3237800tDCM取出・スプレーロボットシステムR-3253,3254800tDCM取出・スプレー・堰折りロボットシステムR-3288800t取出ロボットシステムR-3290,3291350tDCM取出・スプレー・堰折りロボットシステムR-33622250tDCMインサートロボットシステムR-3372800tDCM 800t取出ロボットシステムR-3290,3291350tDCM取出・スプレー・堰折りロボットシステムR-33622250tDCMインサートロボットシステムR-3372800tDCMスプレーロボットシステムR-3390天吊り面取りロボットシステムR-3391800tDCM取出ロボットシステムR-3403天吊り面取りロボットシステムR-3466350t取出トリミングロボットシステムR-3476,34771650tDCM取出・スプレーロボットシステム(別紙)営業秘密目録(2) 原告作成のバリ取りツール図面(BT-3,6,7,13,16) 原告作成の「R-3371」天吊り面取りロボットシステムの下記の設計CADデータ及び表データ(1) AR00001_調達部品表.xls(2) AR00001-000.dwg(3) R000001_加工部品表.xls(4) R000001_調達部品表.xls(5) R000001-000.dwg(6) R000001-001(1.dwg(7) R000001-001(2.dwg(8) R000001-002.dwg(9) R000001-003.dwg(10) R000001-004.dwg(11) R000001-005.dwg(12) R000001-006.dwg(13) R000001-007.dwg(14) R000001-008.dwg(15) R000001-009.dwg(16) R000001-010.dwg(17) R000001-011.dwg(18) R000001-012.dwg(19) R000001-013.dwg(20) R000001-014.dwg(21) R000001-015.dwg(22) R0000 1.dwg(18) R000001-012.dwg(19) R000001-013.dwg(20) R000001-014.dwg(21) R000001-015.dwg(22) R000001-016.dwg(23) R000001-017.dwg(24) R000001-018.dwg(25) R000001-019.dwg(26) R000001-020.dwg(27) R000001-021.dwg(28) R000001-022.dwg(29) R000001-023.dwg(30) R000001-024.dwg(31) R000001-025.dwg(32) R000001-026.dwg(33) R000001-027.dwg(34) R000001-028.dwg(35) R000001-029.dwg(36) R000001-030.dwg(37) R000001-031.dwg(38) R000001-032.dwg(39) R000001-033,034.dwg(40) R000001-035.dwg(41) R000001-036,037.dwg(42) R000001-038.dwg(43) WH00001_加工部品表.xls(44) WH00001_調達部品表.xls(45) WH00001-000.dwg(46) WH00001-001.dwg(47) WH00001-002.dwg(48) WH00001-003.dwg(49) WH00001-004.dwg(50) WH00001-005.dwg(51) WH00001-006.dwg(52) WH00001-007.dwg(53) WH00001-008.dwg(54) WH00001-009.dwg(55) 01-005.dwg(51) WH00001-006.dwg(52) WH00001-007.dwg(53) WH00001-008.dwg(54) WH00001-009.dwg(55) WH00001-010.dwg(56) WH00001-011.dwg(57) WH00001-012.dwg(58) WH00001-013.dwg(59) WH00001-014.dwg(60) WH00001-015.dwg(61) WJ00001_加工部品表.xls(62) WJ00001_調達部品表.xls(63) WJ00001-000.dwg(64) WJ00001-001.dwg(65) WJ00001-002.dwg(66) WJ00001-003.dwg(67) WJ00001-004.dwg(68) WJ00001-005.dwg(69) WJ00001-006.dwg(70) WJ00001-007.dwg(71) WJ00001-008.dwg(72) WJ00001-009.dwg(73) WJ00001-010.dwg(74) WJ00001-011.dwg(75) WJ00001-012.dwg(76) WJ00001-013.dwg(77) WJ00001-014.dwg(78) WJ00001-015.dwg(79) WJ00001-016.dwg(80) WJ00001-017.dwg(81) WJ00001-018.dwg(82) WJ00001-020.dwg(83) WJ00001-021.dwg(84) WJ00001-022.dwg(85) WJ00002_加工部品表.xls(86) WJ00002_調達部品表.xls(87) WJ00002-000.dwg(88) 021.dwg(84) WJ00001-022.dwg(85) WJ00002_加工部品表.xls(86) WJ00002_調達部品表.xls(87) WJ00002-000.dwg(88) WJ00002-001.dwg(89) WJ00002-002.dwg(90) WJ00002-003.dwg(別紙)部品構成比較表(以下省略)
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