判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨別紙2請求の趣旨一覧記載のとおり。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は、北海道知事が新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年5月11日号外法律第31号。ただし、令和3年2月3日号外法律第5号による改正後のもの。以下「特別措置法」という。)31条の6第3項に基づいて令和3年7月6日付け及び同年8月24日付けで行った、原告らが経営する別紙3店舗目録記載の各店舗(以下「本件各店舗」という。ただし、令和3年8月24日付け命令については、別紙3店舗目録記載8の店舗を除く。)の営業時間を午前5時から午後8時までとする各命令(以下、令和3年7月6日付け命令を「本件各処分1」と、同年8月24日付け命令を「本件各処分2」といい、本件各処分1と本件各処分2を併せて「本件全処分」という。)が違法であると主張して、原告らが各命令の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め等⑴ 本件全処分に関連する特別措置法、同法施行令(平成25年4月12日号外政令第122号。ただし、令和3年2月10日号外政令第28号による改正後のもの。以下「施行令」という。)並びに感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年10月2日号外法律第1114号。ただし、令和3年2月3日号外法律第5号による改正後のもの。以下「感染症法」という。)の定めは、別紙4記載のとおりである。 このうち、特別措置法31条の4第1項は、概要、新型インフルエンザ等対策本部長(以下「政府対策本部長」という。)は、新型インフルエンザ等(感染症法6条7項(3号が新型コロナウイルス このうち、特別措置法31条の4第1項は、概要、新型インフルエンザ等対策本部長(以下「政府対策本部長」という。)は、新型インフルエンザ等(感染症法6条7項(3号が新型コロナウイルス感染症)に規定する新型インフルエンザ等感染症等を指す(特別措置法2条1号参照)。国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令(施行令5条の3第1項)で定める要件に該当するものに限る。)が国内で発生し、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置(以下「まん延防止等重点措置」という。)を集中的に実施する必要があるものとして政令(施行令5条の3第2項)で定める要件に該当する事態(以下「本件事態」という。)が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨等を公示するものと規定する。 また、特別措置法31条の6は、概要、第1項において、都道府県知事は、同法31条の4第1項に規定する本件事態において、重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該都道府県知事が定める期間及び区域において、措置を講ずる必要があると認める業態に属する事業を行う者に対し、営業時間の変更その他重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するために必要な措置として政令(施行令5条の5)で定める措置を講ずるよう要請することができると規定し、第3項において、第1項の規定による要請を受けた者が正当な理由がないのに当該要請に応じないときは、都道府県知事は、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めると 当な理由がないのに当該要請に応じないときは、都道府県知事は、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り、当該者に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができると規定する。 ⑵ また、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長は、令和3年2月12日付けで「『新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律』 及び『新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令』の公布について」と題する事務連絡(乙27。以下「本件事務連絡」という。)を発した。本件事務連絡には、特別措置法31条の6第3項所定の命令(以下「まん延防止等重点措置に係る命令」ともいう。)に関し、まん延防止等重点措置における営業時間変更等の命令を行うことができる「特に必要があると認めるとき」に該当する状況は、必ずしも現に対象となる個別の施設においてクラスターが発生している必要がないが、例えば、「すでに同種の業態においてクラスターが多数発生していること」(以下「事情①」という。)、「対象となる施設において、『3つの密』に当たる環境が発生し、又は、感染防止対策が極めて不十分であるなど、当該施設においてクラスターが発生するリスクが高まっていると確認できること」(以下「事情②」という。)、「対象となる区域において、引き続き感染が継続しており、当該都道府県において感染が拡大するおそれが高まっていること」(以下「事情③」という。)等が考えられると記載されている(同〔9、10、23〕)。 3 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる(証拠の掲記がな 事情③」という。)等が考えられると記載されている(同〔9、10、23〕)。 3 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる(証拠の掲記がない事実は当事者間に争いがなく、証拠番号には、特に断らない限り、枝番号を含む。また、複数頁にわたる書証のうち認定に用いた主な箇所の頁数(書証に頁数が付されているものはそれにより、付されていないものは当該書証の冒頭からの丁数による。)を〔 〕内に摘示する。)。 ⑴ 当事者等原告らは、いずれも飲食店経営等を事業目的とする株式会社であり、原告大成住宅を母体とするグループ企業である。原告大成住宅は別紙3店舗目録記載1ないし4の各店舗を、原告日本エコ・ソリューションは同5及び6の各店舗を、原告古川物産は同7の店舗を、原告札幌食研は同8及び9の各店舗を、原告千葉商事は同10の店舗を、原告安藤商事は同11及び12の各店舗を、そ れぞれ経営していた。 ⑵ 本件各処分1発令の経緯等ア政府対策本部長は、北海道について、特別措置法32条3項に基づき、令和3年5月23日から同年6月20日まで新型インフルエンザ等緊急事態措置(以下「緊急事態措置」という。)を実施すべき区域とすることなどを公示していたところ(乙28〔6〕)、令和3年6月17日、特別措置法31条の4第1項に基づき、まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要がある事態が発生したと認められるとして、実施すべき区域を北海道ほか9都府県とし、実施すべき期間を北海道ほか6都府県については令和3年6月21日から同年7月11日までとすることなどを公示した(乙5)。 イその後、北海道知事(以下「本件処分行政庁」という。)は、令和3年6月23日、特別措置法31条の6第1項に基 は令和3年6月21日から同年7月11日までとすることなどを公示した(乙5)。 イその後、北海道知事(以下「本件処分行政庁」という。)は、令和3年6月23日、特別措置法31条の6第1項に基づき、原告らに対し、本件各店舗について、同月21日から同年7月11日までの間、営業時間を午前5時から午後8時までとするよう文書で要請した(甲3、乙10)。 ウ本件処分行政庁は、令和3年6月28日、原告らに対し、本件各店舗について、同年7月1日午後8時以降も前記イの要請に応じていないことが認められた場合には、特別措置法31条の6第3項に基づき、営業時間の変更を命ずることとなることなどを通知した(甲4、乙12)。 エ本件処分行政庁は、令和3年6月28日、行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会の付与として、原告らに対し、本件各店舗について、同年7月5日正午までに弁明書の提出を求めることなどを通知した(甲5、乙13)。 原告らは、令和3年7月5日、本件処分行政庁に対し、本件各店舗に係る弁明書を提出した(乙14)。 オ本件処分行政庁は、令和3年7月6日、特別措置法31条の6第3項に基づき、原告らに対し、本件各店舗について、同年6月21日から同年7月1 1日までの間、営業時間を午前5時から午後8時までとするよう命ずる本件各処分1を行った(甲6、乙1)。 ⑶ 本件各処分2発令の経緯等ア政府対策本部長は、令和3年7月30日、特別措置法31条の4第1項に基づき、まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要がある事態が発生したと認められるとして、実施すべき区域を北海道ほか4府県とし、実施すべき期間を令和3年8月2日から同月31日までとすることなどを公示した(乙15)。 イ本件処分行政庁は ある事態が発生したと認められるとして、実施すべき区域を北海道ほか4府県とし、実施すべき期間を令和3年8月2日から同月31日までとすることなどを公示した(乙15)。 イ本件処分行政庁は、令和3年8月10日、特別措置法31条の6第1項に基づき、原告ら(原告千葉商事を除く。)に対し、別紙3店舗目録記載1ないし7、9及び11の各店舗について、同月2日から同月31日までの間、営業時間を午前5時から午後8時までとするよう文書で要請した(乙18)。 本件処分行政庁は、令和3年8月11日、原告千葉商事及び原告安藤商事に対し、別紙3店舗目録記載10及び12の各店舗について、前記と同様の要請を行った(乙19)。 ウ本件処分行政庁は、令和3年8月16日、原告ら(原告千葉商事を除く。)に対し、別紙3店舗目録記載1ないし3、5ないし7、9及び12の各店舗について、同月18日午後8時以降も前記イの要請に応じていないことが認められた場合には、特別措置法31条の6第3項に基づき、営業時間の変更を命ずることとなることなどを通知した(甲7、乙21)。 本件処分行政庁は、令和3年8月17日、原告大成住宅、原告千葉商事及び原告安藤商事に対し、別紙3店舗目録記載4、10及び11の各店舗について、同月19日午後8時以降も前記イの要請に応じていないことが認められた場合には、特別措置法31条の6第3項に基づき、営業時間の変更を命ずることとなることなどを通知した(甲9、乙23)。 エ本件処分行政庁は、令和3年8月16日、原告ら(原告千葉商事を除く。)に対し、別紙3店舗目録記載1ないし3、5ないし7、9及び12の各店舗について、行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会の付与として、同月23日正午までに弁明書の 、原告ら(原告千葉商事を除く。)に対し、別紙3店舗目録記載1ないし3、5ないし7、9及び12の各店舗について、行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会の付与として、同月23日正午までに弁明書の提出を求めることなどを通知した(甲8、乙22)。 本件処分行政庁は、令和3年8月17日、行政手続法13条1項2号に基づく弁明の機会の付与として、原告大成住宅、原告千葉商事及び原告安藤商事に対し、別紙3店舗目録記載4、10及び11の各店舗について、同月24日正午までに弁明書の提出を求めることなどを通知した(甲10、乙24)。 原告らは、令和3年8月23日、本件処分行政庁に対し、本件各店舗(ただし、別紙3店舗目録記載8の店舗を除く。)に係る弁明書を提出した(乙25)。 オ本件処分行政庁は、令和3年8月24日、特別措置法31条の6第3項に基づき、原告らに対し、本件各店舗(ただし、別紙3店舗目録記載8の店舗を除く。)について、令和3年8月2日から同月31日までの間、営業時間を午前5時から午後8時までとするよう命ずる本件各処分2を行った(甲11、乙2)。 カ本件処分行政庁は、令和3年8月26日、原告らに対し、北海道が緊急事態措置を実施すべき区域となったことから、同日で本件各処分2を終了する旨を通知した(甲12、乙26)。 ⑷ 過料の決定等ア本件処分行政庁は、令和3年7月29日、札幌地方裁判所に対し、本件各処分1に違反したことを理由に原告らを20万円以下の過料に処すべきことを通知した。同裁判所は、同年10月16日、原告らが本件各処分1に違反した事実を認め、それが特別措置法80条1号に該当するとして、本件各 店舗ごとに原告らを過料10万円に処する旨の決定をし(乙3)、原告らは、これを支払った(甲24)。 イ 各処分1に違反した事実を認め、それが特別措置法80条1号に該当するとして、本件各 店舗ごとに原告らを過料10万円に処する旨の決定をし(乙3)、原告らは、これを支払った(甲24)。 イ本件処分行政庁は、令和3年10月14日、札幌地方裁判所に対し、本件各処分2に違反したことを理由に原告らを20万円以下の過料に処すべきことを通知した。同裁判所は、令和4年1月21日、原告らが本件各処分2に違反した事実を認め、それが特別措置法80条1号に該当するとして、本件各店舗ごとに原告らを過料10万円に処する旨の決定をし(乙4)、原告らは、これを支払った(甲25)。 ⑸ 本件訴えの提起原告らは、令和3年12月28日、本件訴えを提起した。 4 争点⑴ 行政事件訴訟法9条1項括弧書所定の「処分の取り消しによって回復すべき法律上の利益」(以下、単に「訴えの利益」という。)が認められるか(本案前の争点)⑵ 本件全処分が違法と認められるかア本件全処分の基礎となった新型コロナウイルス感染症が特別措置法31条の4第1項所定の「新型インフルエンザ等」に当たるか(本件各処分1、本件各処分2)イ本件各処分1発令時において、北海道が特別措置法31条の4第1項所定の本件事態下にあったといえるか(本件各処分1)ウ本件全処分について「特に必要があると認めるとき」(特別措置法31条の6第3項)といえるか(本件各処分1、本件各処分2)エ本件全処分が必要最小限のもの(特別措置法5条)といえるか(本件各処分1、本件各処分2)オ手続上の瑕疵の存否(本件各処分1、本件各処分2) 5 当事者の主張 ⑴ 訴えの利益が認められるか(本案前の争点)【原告らの主張】原告らは、本 分2)オ手続上の瑕疵の存否(本件各処分1、本件各処分2) 5 当事者の主張 ⑴ 訴えの利益が認められるか(本案前の争点)【原告らの主張】原告らは、本件各処分1及び本件各処分2に違反したとして科された過料を支払ったが、本件全処分が取り消されれば、過料の決定はその前提を欠くこととなる。 したがって、原告らには、本件全処分の取消しを求める訴えの利益がある。 【被告の主張】本件各処分1は、令和3年7月11日の経過によって、本件各処分2は、同年8月26日の経過によって、それぞれその効果が消滅している。 また、原告らは過料の決定を受けたところ、過料の決定に当たっては裁判所は被審人の陳述を聴くこととされ(非訟事件手続法120条2項)、当該裁判に対しては、被審人は即時抗告ができるのであるから(同条3項)、原告らは、過料の裁判手続において、本件全処分の違法を争えば足りる。 したがって、原告らには、本件全処分の取消しを求める訴えの利益が認められない。 ⑵ 本件全処分が違法と認められるか【原告らの主張】ア本件全処分の基礎となった新型コロナウイルス感染症が特別措置法31条の4第1項所定の「新型インフルエンザ等」に当たるか新型コロナウイルス感染症にかかった場合に肺炎、多臓器不全又は脳症が発生する頻度が感染症法6条6項1号に掲げるインフルエンザのそれよりも高いことを示す資料は見当たらない。当該事項について被告が提出する証拠は、計測方法が不明であったり、時期や国が異なっていたりするなど、有意な参考資料とはいい難い。 したがって、新型コロナウイルス感染症は、特別措置法31条の4第1項所定の「新型インフルエンザ等」には当たらない。 、時期や国が異なっていたりするなど、有意な参考資料とはいい難い。 したがって、新型コロナウイルス感染症は、特別措置法31条の4第1項所定の「新型インフルエンザ等」には当たらない。 イ本件各処分1発令時において、北海道が本件事態下にあったといえるか本件事態下にあったかどうかは、その要件を満たすか否かにより判断されるべきであって、特別措置法31条の4第1項所定の政府対策本部長の公示がされているか否かにより判断されるとの被告の主張は争う。 そして、本件各処分1が発令された頃の北海道の新型コロナウイルス感染症の状況は、入院患者数や新規感染者数の推移に照らして、明らかに減少傾向であった。そして、本件各処分1の時点において、北海道は「ステージⅢ」にも「ステージ4」にも該当しておらず、当時の北海道が本件事態下にあったとはいえない。 ウ本件全処分について「特に必要があると認めるとき」といえるか 本件各処分1について営業時間の短縮が新型コロナウイルス感染症のまん延防止にいかなる効力を有するかは不明である。また、午前5時や午後8時という線引きの合理的な理由も見当たらない。さらに、本件各処分1発令時において、北海道の新型コロナウイルス感染症の感染は減少傾向にあった。 これらのことからすると、効果の明らかでない本件各処分1をすることが「特に必要」であったということはできない。 本件各処分2について前記のとおり、営業時間短縮命令の効果が明らかではない上、被告は、本件各処分1の発令によって営業時間の短縮に応じない店舗をむしろ増やしているのであるから、本件各処分2が「特に必要」であったとはいえない。 本件事務連絡について本件事務連絡はあく 1の発令によって営業時間の短縮に応じない店舗をむしろ増やしているのであるから、本件各処分2が「特に必要」であったとはいえない。 本件事務連絡について本件事務連絡はあくまで参考になるにすぎず、「特に必要」か否かは、その当時の社会情勢に加え、当該命令の持つ効果を踏まえて総合的に判断されねばならないところ、前記のとおり、本件全処分は「特に必要」で はなかった。 エ本件全処分が必要最小限のものといえるか営業時間短縮命令の効果が明らかでないことや、午前5時や午後8時といった線引きの理由も明らかではないことから、本件全処分が必要最小限であったとはいえない。 オ手続上の瑕疵の存否被告は、本件全処分に当たり、弁明の期間を1週間後の正午までとしているが、法改正により新設されたばかりで前例のない不利益処分をする場合の弁明の準備期間としてはあまりに短く、十分な手続保障がされているとはいい難い。 また、被告は、原告らに対し、何度か簡易な書面を交付したにすぎず、営業時間の短縮にどのような効果があるのか、なぜその時間帯だけを制限するのかといった情報は皆無で、営業時間を短縮する必要性を裏付けるデータもない。このように被告の対応は、事業者の理解を求める丁寧な運用であるなどと評価することはできない。 【被告の主張】ア本件全処分の基礎となった新型コロナウイルス感染症が特別措置法31条の4第1項所定の「新型インフルエンザ等」に当たるか本件全処分発令時において、政府対策本部長は、特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項に規定する要件に該当する「新型インフルエンザ等」が国内で発生したと認め、公示しており、当該公示には、新型コロナウイルス感染症について、肺 本部長は、特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項に規定する要件に該当する「新型インフルエンザ等」が国内で発生したと認め、公示しており、当該公示には、新型コロナウイルス感染症について、肺炎の発生頻度が感染症法6条6項1号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることが明示されている。 そして、当時得られる最新の知見に基づいて新型インフルエンザ等対策本部(以下「政府対策本部」という。)が令和2年4月7日に改正した「新型コ ロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(以下「基本的対処方針」という。)において、新型コロナウイルス感染症における肺炎の発生頻度が感染症法6条6項1号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと結論付けたことや、本件全処分時に流行していたアルファ株やデルタ株は従来株に比較して重症化しやすい可能性が指摘されていたことを踏まえると、本件全処分時において、新型コロナウイルス感染症が、施行令5条の3第1項の要件(すなわち、かかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法6条6項1号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められること)を満たしていたことは明らかである。 イ本件各処分1発令時において、北海道が本件事態下にあったといえるか 法令上、本件事態が発生したか否かを判定するのは政府対策本部長であり、本件各処分1の発令時に北海道が本件事態下にあったかどうかは、特別措置法31条の4に基づく政府対策本部長の公示がされているか否かにより判断されるものであって、都道府県知事が当該公示を離れて自ら判断するものではない。 仮に、この点をおくとしても、政府対策本部 1条の4に基づく政府対策本部長の公示がされているか否かにより判断されるものであって、都道府県知事が当該公示を離れて自ら判断するものではない。 仮に、この点をおくとしても、政府対策本部長による特別措置法31条の4第1項所定の公示が行われた時点及び本件各処分1が発令された時点における北海道における感染状況に係る各指標のほか、新規感染者数の増加を予測する上での先行指標を総合的に勘案すると、前記各時点において、北海道は、道外の感染状況が波及することにより、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大するおそれが十分認められる状況であった。 また、前記各時点における北海道における医療提供体制等の負荷に係る各指標によれば医療提供体制の負荷は高い状況にあったといえることに加え、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大するおそれが十分認められる状況にあったことを踏まえると、前記各時点において、北海道は、医療 の提供に支障が生ずるおそれがあると認められる状況であった。 したがって、北海道は、前記各時点において、実質的にみても本件事態下にあった。 ウ本件全処分について「特に必要があると認めるとき」といえるか本件事務連絡が特別措置法31条の6第3項の「特に必要があると認める」に該当する例として記載する3つの事情(事情①ないし③)は、それぞれ並列の関係にあると解釈するのが合理的であり、同項に基づく命令を行うに際しては、いずれか一つの例示に該当することで足りる。そして、以下のとおり、事情①ないし③がいずれも認められるから、「特に必要があると認めるとき」といえる。 本件各処分1についてa 飲食業界において集団感染事例が発生していることクラスター分析の結果、日常生活の中で められるから、「特に必要があると認めるとき」といえる。 本件各処分1についてa 飲食業界において集団感染事例が発生していることクラスター分析の結果、日常生活の中では、飲酒を伴う会食による感染リスクが極めて高く、クラスター発生の主要な原因の一つであることなどが示されており、現に、本件全処分以前の時点で、北海道内において、飲食店等における集団感染が発生していた。 b 個別の飲食店において感染防止対策の状況からクラスターが発生するリスクが高まっていること本件各処分1に先立って原告らが本件各店舗において徹底していた旨弁明する感染防止対策は、政府対策本部が決定した基本的対処方針の要請内容に照らして、従業員への検査推奨、マスク着用その他感染防止に関する措置の周知、正当な理由なくマスク着用等の感染防止措置を講じない者の入場の禁止及び施設の換気等について触れておらず、不十分なものである。 そのため、本件各処分1発令当時の状況を客観的にみると、本件各店舗の感染防止対策は十分とはいえず、本件各店舗においてクラスターが 発生する蓋然性は否定できない。 c 対象地域において感染拡大のおそれが高まっていること本件各処分1の時点においては、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(以下「アドバイザリーボード」という。)等における分析においても、連休等に伴って東京の新規感染者数の増加が各地へ影響することや、緊急事態宣言の解除後のリバウンドへの懸念が示されていた。札幌市では引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続されていたのであり、かつ、北海道で感染が拡大するおそれが高まっていたのであるから、対象地域において感染拡大のおそれが高まっていた されていた。札幌市では引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続されていたのであり、かつ、北海道で感染が拡大するおそれが高まっていたのであるから、対象地域において感染拡大のおそれが高まっていた。 本件各処分2についてa 飲食業界において集団感染事例が発生していること前記a記載のとおり。 b 個別の飲食店において感染防止対策の状況からクラスターが発生するリスクが高まっていること原告らは、本件各処分2に先立って行われた弁明の機会に本件各店舗の感染防止対策に何ら言及していないが、仮に従前の感染防止対策が継続されていたとしても、基本的対処方針の内容に照らして、従業員への検査推奨、マスク着用その他感染防止に関する措置の周知、正当な理由なくマスク着用等の感染防止措置を講じない者の入場の禁止、施設の換気、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)等の活用の呼び掛け、同一グループの入店の人数制限及び滞在時間の制限等が確認できず、不十分なものである。 そのため、本件各処分2発令当時の状況を客観的にみると、本件各店舗の感染防止対策は十分とはいえず、本件各店舗においてクラスターが発生する蓋然性は否定できない。 c 対象地域において感染拡大のおそれが高まっていること 本件各処分2の時点においては、政府対策本部における分析においても、全国的に急速な感染拡大となっており、北海道でも感染拡大が継続する可能性が指摘されていた。札幌市では引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続されていたのであり、かつ、北海道で感染が拡大するおそれが高まっていたのであるから、対象地域において感染拡大のおそれが高まっていた。 エ本件全処分が き新型コロナウイルス感染症の感染が継続されていたのであり、かつ、北海道で感染が拡大するおそれが高まっていたのであるから、対象地域において感染拡大のおそれが高まっていた。 エ本件全処分が必要最小限のものといえるか本件全処分は、「今冬の感染対策の効果の分析について~人出と感染者数を中心に~令和3年4月8日版」(乙29)の分析を踏まえ、政府対策本部において策定された基本的対処方針に基づいて、飲食店を対象として措置区域を定めた上で、営業全部の停止を求めるのではなく営業時間を午前5時から午後8時までとしたものであるから、必要最小限のものであった。 オ手続上の瑕疵本件全処分の内容は、2度にわたる本件処分行政庁の要請内容の一部を命ずるものであって、原告らによる弁明が特段困難なものとは認められず、現に原告らから詳細な弁明書が提出されたことに照らしても、その提出期限を1週間後の正午としたことが短いとはいえない。 また、原告らに対する要請文書や、命令の事前通知、弁明の機会の付与の通知は、いずれも、被告の職員が本件各店舗を訪問し、午後8時以降の営業の事実を確認した上で、本件各店舗の責任者又は従業員に趣旨を説明して手交したものであるほか、併せて、原告らの登記簿上の本店所在地の住所にも送付したものであるから、本件全処分の手続として適切かつ相当なものである。 第3 当裁判所の判断 1 訴えの利益が認められるかについて(本案前の争点)⑴ 被告は、本件各処分1は令和3年7月11日の経過によって、本件各処分2 は同年8月26日の経過によって、それぞれの効果が消滅していることなどから、原告らは訴えの利益を有しないと主張する。 ⑵ しかしながら、本件全処分が本件訴訟の判決により取り消されれば、原 は同年8月26日の経過によって、それぞれの効果が消滅していることなどから、原告らは訴えの利益を有しないと主張する。 ⑵ しかしながら、本件全処分が本件訴訟の判決により取り消されれば、原告らは、それを再審事由(非訟事件手続法83条3項、民事訴訟法338条1項8号)として、過料の決定について再審の申立て(非訟事件手続法83条1項)をすることができるから、原告らは、本件全処分の取消しを求める訴えの利益を有している。 ⑶ これに対し、被告は、過料の決定に当たっては、裁判所は被審人の陳述を聴くこととされ(非訟事件手続法120条2項)、当該裁判に対しては、被審人は即時抗告ができるのであるから(同条3項)、原告らは、過料の裁判手続において、本件全処分の違法について争えば足りるなどと主張する。 しかしながら、非訟事件手続としての過料の裁判手続は簡易迅速な制度であるほか(非訟事件手続法4条)、過料の裁判手続において処分の違法を争うことを認めるのは、いわゆる取消訴訟の排他的管轄(行政事件訴訟法3条2項参照)に抵触することなどに照らせば、原告らは、本件全処分の効果が消滅した後においても、その違法を取消訴訟において争うことができるというべきであって(なお、本件事務連絡においても、過料の決定の前提となった命令に対する不服は、取消訴訟で争うことが前提とされている(乙27〔14〕)、被告の主張は採用できない。 ⑷ 以上によれば、原告らには、訴えの利益が認められる。 2 本件全処分の基礎となった新型コロナウイルス感染症が特別措置法31条の4第1項所定の「新型インフルエンザ等」に当たるか⑴ 特別措置法31条の4第1項の「新型インフルエンザ等」は、単に感染症法6条7項に規定する新型インフルエンザ等感染症などに該当するだけでは足りず 1項所定の「新型インフルエンザ等」に当たるか⑴ 特別措置法31条の4第1項の「新型インフルエンザ等」は、単に感染症法6条7項に規定する新型インフルエンザ等感染症などに該当するだけでは足りず、「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る」とされている。そして、この政 令で定める要件を規定した施行令5条の3第1項は、「当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第6条第6項第1号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められること」との要件を定めている(以下、感染症法6条6項1号のインフルエンザを「季節性インフルエンザ」という。)。 ⑵ 政府対策本部長は、本件全処分の各発令時において、新型コロナウイルス感染症が特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項所定の「新型インフルエンザ等」に該当すると判断し、本件処分行政庁は、これを踏まえて本件全処分をした。 ⑶ア特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項は、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護するという特別措置法の趣旨(1条)を踏まえて規定されたものであるところ、これらの規定にいう「新型インフルエンザ等」に該当するかの判断は、その性質上、公衆衛生学や、医学等に関する専門的知見に基づく政策的な判断が必要不可欠であるといえる。そうすると、政府対策本部長には、特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項所定の「新型インフルエンザ等」の該当性に関する判断につき裁量権が認められ、その判断が違法になるのは、裁量権の範囲を逸脱 すると、政府対策本部長には、特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項所定の「新型インフルエンザ等」の該当性に関する判断につき裁量権が認められ、その判断が違法になるのは、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られると解するのが相当である。 そこで、新型コロナウイルス感染症が「新型インフルエンザ等」に当たるとした政府対策本部長の前記⑵の判断に裁量権の逸脱又は濫用が認められるかを検討する。 イ認定事実前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 令和2年4月7日改正の基本的対処方針には、新型コロナウイルス感染症について、「重症度としては、季節性インフルエンザと比べて死亡リスクが高いことが報告されている。中国における報告(令和2年2月28日公表)では、確定患者での致死率は2.3%、中等度以上の肺炎の割合は18.5%であることが報告されている。季節性インフルエンザに関しては、致死率は0.00016%~0.001%程度、肺炎の割合は1.1%~4.0%、累積推計患者数に対する超過死亡者数の比は約0.1%であることが報告されている。このように新型コロナウイルス感染症における致死率及び肺炎の割合は、季節性インフルエンザに比べて、相当程度高いと考えられる。」との記載がある(乙49〔6〕)。かかる新型コロナウイルス感染症に関するデータは、中国疾病予防管理センターによる報告に基づくものであり、季節性インフルエンザに関するデータは、厚生労働省のデータや、米国や英国の報告に基づくものである(乙50の2〔1、2〕)。 そして、一般的にウイルスは増殖・流行を繰り返す中で少しずつ変異していくものであり、国立感染症研究所によると、懸念される変異株(Vari 告に基づくものである(乙50の2〔1、2〕)。 そして、一般的にウイルスは増殖・流行を繰り返す中で少しずつ変異していくものであり、国立感染症研究所によると、懸念される変異株(VariantofConcern:VOC)は、B.1.1.7 系統の変異株(アルファ株。 以下「アルファ株」という。)やB.1.617.2 系統の変異株(デルタ株。以下「デルタ株」という。)があるとされ、本件各処分1当時の主流株であったアルファ株は、診断時に肺炎以上の症状を有しているリスクが従来株の1. 4倍(40歳~64歳では1.66倍)と推定され、本件各処分2当時の主流株であったデルタ株は、アルファ株よりも感染しやすい可能性も示唆され、従来株より、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性が指摘されていた。さらに、アルファ株及びデルタ株は、いずれも重症化しやすい可能性も指摘されていた。(乙28〔18、19〕、33〔22、23〕)ウ前記認定事実によれば、政府対策本部長は、公的機関が明らかにし、信頼性のある客観的なデータに基づいて、新型コロナウイルス感染症が季節性イ ンフルエンザと比較して肺炎等の重篤な症例の発生頻度が高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあると結論付けていると認められ、その政府対策本部長の判断が不合理とはいえない。 これに対し、原告らは、中国疾病予防管理センターによる新型コロナウイルス感染症に関する報告と、厚生労働省等による季節性インフルエンザに関するデータは、計測手法等が同じであるか明らかではなく、比較の資料としては不適格であるなどと主張する。しかしながら、新型コロナウイルス感染症や季節性インフルエンザでは、全ての感染者数を探知することは不可能であり、短期的あるいはリアルタイムの疫学 なく、比較の資料としては不適格であるなどと主張する。しかしながら、新型コロナウイルス感染症や季節性インフルエンザでは、全ての感染者数を探知することは不可能であり、短期的あるいはリアルタイムの疫学的評価においては、報告された罹患者数もしくは報告された感染者数から推定した罹患者数を分母に用いる症例致死率が使われることが多く、新型コロナウイルス感染症の肺炎の発症率も正確に評価することは現時点(令和4年3月2日時点)では困難であるとされているのであって(乙57〔2、3〕)、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による国民生活や国民経済への影響を最小となるようにするための迅速かつ現実的な対応として、限られたデータの中で、各データを比較するという手法をとって前記の判断をしたことが不合理であるということはできないから、原告らの主張は前記結論を左右しない。 したがって、新型コロナウイルス感染症が特別措置法31条の4第1項、施行令5条の3第1項所定の「新型インフルエンザ等」に該当するとの政府対策本部長の判断に、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 3 本件各処分1の適法性⑴ 本件各処分1発令時において、北海道が本件事態下にあるといえるかア特別措置法31条の4第1項が定める本件事態について、その具体的内容を規定した施行令5条の3第2項は、概要、まん延防止等重点措置を集中的に実施しなければ、特定の区域が属する都道府県における新型インフルエンザ等感染症の患者及び無症状病原体保有者等の発生の状況、当該都道府県に おける感染症患者等のうち新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない者の発生の状況、特定の区域における新型インフルエンザ等の感染の拡大の状況その他の新型インフルエンザ等の発生の状況を踏まえ、当該都道 フルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない者の発生の状況、特定の区域における新型インフルエンザ等の感染の拡大の状況その他の新型インフルエンザ等の発生の状況を踏まえ、当該都道府県において新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合であって、当該感染の拡大に関する状況を踏まえ、当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるときに該当するとする。 イ政府対策本部長は、本件各処分1に先立つ令和3年6月17日、北海道が本件事態下にあると判断し(前提事実⑵ア参照)、本件処分行政庁は、これを踏まえて本件各処分1をした。 ウ本件事態下にあるか否かについては、前記2⑶アと同様に、その性質上、公衆衛生学や、医学等に関する専門的知見に基づく政策的な判断が必要不可欠であるといえる。また、「当該都道府県において新型インフルエンザ等の感染が拡大するおそれがあると認められる場合」や「当該都道府県の区域において医療の提供に支障が生ずるおそれがあると認められるとき」(施行令5条の3第2項)といった判断作用を伴う一定の幅のある文言が用いられている。そうすると、本件事態下にあると認められるかに関する政府対策本部長の判断には、裁量権が認められ、その判断が違法になるのは、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られるというべきである。 そこで、本件各処分1の発令時の北海道が本件事態下にあるとした政府対策本部長の判断に、裁量権の逸脱又は濫用が認められるかを検討する。 認定事実前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 a 新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下「分科会」という。)の提 言分科会は、令和2年8月 前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 a 新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下「分科会」という。)の提 言分科会は、令和2年8月7日に「今後想定される感染状況と対策について」と題する文書にて提言を行い(甲13)、その後、令和3年4月15日に「感染再拡大(リバウンド)防止に向けた指標と考え方に関する提言(案)」と題する文書において内容を一部変更した再度の提言(以下「分科会提言」という。甲14)を行った。 分科会提言は、医療への負荷に至るような感染の拡大の予兆を探知し、先手先手で対策を講じるためのステージ分類を通した対策のためのものであり、講ずべき施策の提案として、まん延防止等重点措置の活用が挙げられている「ステージⅢ」(感染者の急増及び医療提供体制における大きな支障の発生を避けるための対応が必要な段階)の指標は別紙5のとおりである。 分科会提言では、「まん延防止等重点措置に関しては、基本的にはステージⅢの段階から用いるが、感染が急拡大する予兆が認められる等の状況においては、ステージⅡ(感染者の漸増及び医療提供体制への負荷が蓄積する段階)から用いることも考えられる」こと、「都道府県は、特定の地域及び特定の集団において、感染者数が増加し、その傾向が継続すれば、早晩医療が逼迫する恐れがあると判断される場合に、先手を打ち適用を検討する必要がある」こと、「本指標は『あくまで目安』であり、ステージの判断については、各指標を機械的に当てはめて判断するものではなく、地域の実情を把握している都道府県が総合的かつ主体的に行うものである、ただし、広域的な感染拡大の蓋然性が高い場合には、国はリーダーシップを発揮していただきたい」といった考え方が示されている。 実情を把握している都道府県が総合的かつ主体的に行うものである、ただし、広域的な感染拡大の蓋然性が高い場合には、国はリーダーシップを発揮していただきたい」といった考え方が示されている。 そして、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長が令和2年8月7日付けで作成した「今後の感染状況の変化に対応した対策の実施 に関する指標及び目安について」では、分科会提言の指標はあくまで目安であり、指標をもって機械的に判断するのではなく、国や地方公共団体においてこれらの指標を総合的に判断して、感染の状況に応じ積極的かつ機動的に対策を講じていくことが求められているとされている(甲13〔2〕)。 b 基本的対処方針の定め令和3年6月17日変更の基本的対処方針では、まん延防止等重点措置の実施の考え方として、「都道府県の特定の区域において感染が拡大し、当該都道府県全域に感染が拡大するおそれがあり、それに伴い、医療提供体制・公衆衛生体制に支障が生ずるおそれがあると認められる事態が発生していること(特に、分科会提言におけるステージⅢ相当の対策が必要な地域の状況になっている等)を踏まえ、政府対策本部長が基本的対処方針分科会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する」とされ、まん延防止等重点措置の終了の考え方として、「都道府県の感染及び医療提供体制・公衆衛生体制のひっ迫の状況(特に、まん延防止等重点措置を実施している区域の感染状況が、都道府県全域に感染を拡大させるおそれがない水準か等)を踏まえて、政府対策本部長が基本的対処方針分科会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する」としている(乙28〔13〕)。 また、緊急事態措置を実施すべき区域から除外された地域においては、対策の緩和については段階的に行い、必要な対策は「ステージⅡ」 十分踏まえた上で総合的に判断する」としている(乙28〔13〕)。 また、緊急事態措置を実施すべき区域から除外された地域においては、対策の緩和については段階的に行い、必要な対策は「ステージⅡ」相当以下に下がるまで継続するとされている(乙28〔21〕)。 c 被告による「新しい警戒ステージ」の設定被告は、令和2年8月25日、北海道独自の「新しい警戒ステージ」を設定し、令和3年2月13日、その一部に変更を加えた(以下、変更後のものを「警戒ステージ」という。甲17)。これは、被告が分科会提 言に準じることを基本としつつ、北海道の実情を踏まえて、指標及び講ずべき施策を設定したものであり、分科会提言の「ステージⅢ」は、警戒ステージにおける「ステージ4」に対応するものとされ、「ステージ4」の指標は別紙6のとおりである。 d 北海道の状況令和3年6月17日の時点における直近の北海道等の医療提供体制等の負荷等にかかる各指標は別紙7のとおりであり(乙52)、同月30日の時点における直近の北海道等の医療提供体制等の負荷等にかかる各指標は別紙8のとおりである(乙53)。同日のアドバイザリーボードによる分析では、東京で新規感染者数が増加に転じており、東京及び首都圏における更なる感染拡大や各地への影響が強く懸念されること、夜遅くまで酒類の提供を行う飲食店やマスクなしの会食も散見され、飲食の場面への対策を強化していくことが重要であること、北海道について、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、緊急事態宣言解除後の1週間で夜間滞留人口が増加しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要であることなどとされている(乙34〔1、2〕)。 また、令和3年7月1日から同月6日までの期間における各日時点での北海道に 増加しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要であることなどとされている(乙34〔1、2〕)。 また、令和3年7月1日から同月6日までの期間における各日時点での北海道における医療提供体制等の負荷等の状況は、別紙9のとおりであって(甲18の4ないし9)、当該期間における北海道の状況は、分科会提言の「ステージⅢ」、警戒ステージにおける「ステージ4」の指標を一部満たしていた部分がある一方、その全てには達していなかった(争いなし)。 検討a 本件各処分1の発令時において、北海道は、緊急事態措置を実施すべき区域から除外された地域であるとされ(前提事実⑵ア)、当該地域においては、対策の緩和は段階的に行い、必要な対策は「ステージⅡ」相 当以下に下がるまで継続するとされていたところ(認定事実b)、北海道について、緊急事態宣言解除後の1週間で夜間滞留人口が増加しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要であるとされていたこと(認定事実d)や、東京での新規感染者数が増加に転じており、各地への影響が強く懸念されていたこと(認定事実d。なお、まん延防止等重点措置は、地域的に感染を抑え込み、都道府県全域への感染拡大、更には全国的かつ急速なまん延を防ぐという趣旨で創設されたものであり、東京など他地域の感染状況が及ぼす影響を考慮することは特別措置法の予定するところである。)、本件各処分1の直近においても、病床のひっ迫状況は警戒ステージにおける「ステージ4」に概ね相当するレベルにあったことなどの事情に照らし、かつ、基本的対処方針に沿って分科会の意見を十分踏まえた上でなされたこと(認定事実b、弁論の全趣旨)を考慮すると、本件各処分1の発令時における北海道の状況が分科会提言の「ステージⅢ」の指標の全て 、かつ、基本的対処方針に沿って分科会の意見を十分踏まえた上でなされたこと(認定事実b、弁論の全趣旨)を考慮すると、本件各処分1の発令時における北海道の状況が分科会提言の「ステージⅢ」の指標の全てに達していない(認定事実d)としても、本件各処分1の発令時の北海道が本件事態下にあるとの政府対策本部長の判断が、不合理であるとはいえない。 b これに対し、原告らは、本件各処分1の発令直近の北海道の指標が分科会提言における「ステージⅢ」や、警戒ステージにおける「ステージ4」を満たさないから、北海道は本件事態下にあったものとは認められないなどと主張する。 しかしながら、前記のとおり、基本的対処方針に照らせば、北海道における指標が「ステージⅡ」相当以下になるまで必要な対策は継続することになるのであり、また、前記aの各事情が存在するにもかかわらず、目安である「ステージⅢ」や「ステージ4」を充足していないことから直ちに、北海道が本件事態下にあるとの政府対策本部長の判断が裁量権を逸脱・濫用したものと認めることはできない。そのため、原告らの主 張には理由がない。 c したがって、本件各処分1の発令時において、北海道が本件事態下にあるとの政府対策本部長の判断に裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 ⑵ 本件各処分1について「特に必要があると認めるとき」といえるかア認定事実前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 本件事務連絡(乙27)の記載a まん延防止等重点措置に係る命令前記第2の2⑵記載のとおり。 b 特別措置法45条3項所定の命令(以下「緊急事態措置に係る命令」ともいう。)「緊急事態における施設の使用制限等の命令を行うこと 置に係る命令前記第2の2⑵記載のとおり。 b 特別措置法45条3項所定の命令(以下「緊急事態措置に係る命令」ともいう。)「緊急事態における施設の使用制限等の命令を行うことができる『(中略)特に必要があると認めるとき』に該当する状況は、必ずしも現に対象となる個別の施設においてクラスターが発生している必要はないが、例えば、専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されている上に、当該施設において、いわゆる『3つの密』に当たる環境が発生し、クラスターが発生するリスクが高まっていることが実際に確認できる場合などが考えられる(同〔11、12、23〕)。 学識経験者への意見聴取本件処分行政庁は、特別措置法31条の6第4項に基づき学識経験者からの意見聴取を行ったところ、多数の学識経験者らは、同条第3項の命令を行う必要があるとの意見を述べた(乙11)。 基本的対処方針の定め 基本的対処方針は、新型コロナウイルス感染症の特徴として、「新型コロナウイルス感染症は、主に飛沫感染や接触感染によって感染し、①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場所(互いに手を伸ばしたら手が届く距離での会話や発声が行われる)という3つの条件(以下「三つの密」という。)の環境で感染リスクが高まる。このほか、飲食を伴う懇親会等大人数や長時間に及ぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要である。」、「重点措置区域においては、都道府県が定める期間、区域等において、飲食を伴うものなど感染リスクが高く感染拡大の主な起 生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要である。」、「重点措置区域においては、都道府県が定める期間、区域等において、飲食を伴うものなど感染リスクが高く感染拡大の主な起点となっている場面等に効果的な対策を徹底する。」、クラスター対策を強化する観点から大規模な歓楽街においては、早期に予兆を探知し、必要に応じ、エリア・業種を絞った営業時間短縮要請等を機動的に行うことなどと記載している(乙28〔17、18、21、48、49〕)。 飲食店でのクラスターについて分科会は、令和2年12月23日付け「現在直面する3つの課題」において、感染拡大の重要な要素の1つとして「飲食を介しての感染」とし、感染経路が判明しているクラスター(見えているクラスター)だけを見ても飲食店でのクラスターが多いこと、レストランの再開が感染を最も増加させること、これまでのクラスター分析の結果から、日常生活の中では、飲食を伴う会食による感染リスクが極めて高く、クラスター発生の主要な原因の一つであることなどから、感染経路が分からない経路の多くは、飲食店における感染によるものと考えられるとしていたことなどの分析結果を明らかにした(乙38〔6、7、11〕)。 北海道の状況a 本件各処分1の発令前の時点における北海道の状況は、前記⑴ウd 記載のとおりである。 また、当時、新型コロナウイルス感染症の先行指標と考えられていた「感染経路不明割合の増加」及び「若年層の感染割合の増加」について(乙37〔10ないし12〕)、令和3年7月2日の時点で、感染経路不明割合が46.9%であり、年代別感染者のうち10代の割合が13. 2%、20代ないし30代の割合が43.7%で若年層の感染割合が合計56.9%であった(乙3 )、令和3年7月2日の時点で、感染経路不明割合が46.9%であり、年代別感染者のうち10代の割合が13. 2%、20代ないし30代の割合が43.7%で若年層の感染割合が合計56.9%であった(乙36〔1、8〕)。 b また、分科会は、すすきのの夜間における人出が高い水準であると北海道の新規感染者数が増加することや、すすきのの人出が増加すると北海道における実効再生産数(ある時点において一人の感染者が全感染期間に新たに感染させる人数の平均値をいい、1以上で増加傾向となる。)が1以上になる傾向にあることを示唆していた(同〔12、15〕)。札幌駅の午後8時の人出は令和3年7月1日時点で5万3137人であり、同年6月20日時点と比較して28.9%増加しており、すすきの駅周辺の午後8時の人出は同年7月1日時点で5万5544人であり、同年6月20日時点と比較して42.5%増加していた(乙36〔22、23〕)。 c 令和3年7月6日時点における新型コロナウイルス感染症のワクチン(以下「ワクチン」という。)の接種率(全年代人口当たりの接種割合)は、接種1回目が19.79%、接種2回目が9.07%であった(乙39)。 d 令和3年6月29日、北海道内で最初となるデルタ株感染の疑い事例が確認され、同年7月1日にも旅行で北海道を訪れていた者からデルタ株感染の疑い事例が確認された(乙36〔25〕)。 e 北海道内における集団感染の発生状況は、別紙10記載のとおりである(乙36〔13〕、42〔18〕)。 イ判断枠組みまん延防止等重点措置に係る命令が「特に必要があると認めるとき」か否かは、前記2⑶アと同様に、その性質上、公衆衛生学や、医学等に関する専門的知見に基づく政策的な判断が必要不可欠であるといえる。そのため、 防止等重点措置に係る命令が「特に必要があると認めるとき」か否かは、前記2⑶アと同様に、その性質上、公衆衛生学や、医学等に関する専門的知見に基づく政策的な判断が必要不可欠であるといえる。そのため、「特に必要があると認めるとき」といえるかに関する都道府県知事の判断には、裁量権が認められるというべきである。したがって、都道府県知事が「特に必要があると認めるとき」と判断したことが違法であるか否かは、裁量権の行使としてされたことを前提として、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に違法となると解するのが相当である。 その上で、まん延防止等重点措置に係る命令に関する事務は法定受託事務であるところ(特別措置法74条)、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長は、地方自治法245条の9第1項に基づき、処理基準として本件事務連絡を定めている。したがって、本件事務連絡は、まん延防止等重点措置に係る命令の「特に必要があると認めるとき」か否かの都道府県知事の判断に裁量権の逸脱濫用が認められるかを検討する際に、参考にすべきであるといえる。 ところで、まん延防止等重点措置は、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、本件事態が発生したと認める場合に執られるものであるが、基本的対処方針は、特定の区域において感染が拡大し、当該都道府県全域に感染が拡大するおそれがある場合に行われることを想定するのみならず、緊急事態措置区域から除外された後に、段階的な対策の緩和の一環として行われる場合も想定している。そして、後者の場合には、感染が当該都道府県全体としては減少傾向であったとしても、特定の区域の状況や感染が再拡大するリスク等を考慮して、期間・区域等を絞った機動的で して行われる場合も想定している。そして、後者の場合には、感染が当該都道府県全体としては減少傾向であったとしても、特定の区域の状況や感染が再拡大するリスク等を考慮して、期間・区域等を絞った機動的で効果的な対策を徹底することが求められており(乙 28〔35、38〕)、また、いずれの場合であっても、命令等に当たっては、要請に応じている店舗との公平性を保つことができるよう、その適切な運用を図ることが求められている(同〔39〕)。また、特別措置法は、まん延防止等重点措置に係る命令について、31条の6第3項、1項において、「措置を講ずる必要があると認める業態に属する事業を行う者」を対象としており、かかる文言に照らせば、個々の事業者ごとの感染対策に必ずしも着目することを求める趣旨ではないことがうかがわれる。そして、本件事務連絡は、まん延防止等重点措置に係る命令と緊急事態措置に係る命令における「特に必要があると認めるとき」についてそれぞれ定めているが、前記のとおり、まん延防止等重点措置に係る命令は業態ごとの感染状況に着目していることのほか、緊急事態措置に係る命令はまん延防止等重点措置と比較して施設の使用の制限又は停止等という更に強い私権の制限を伴う措置も可能であり(特別措置法45条3項、2項)、その違いに由来して緊急事態措置に係る命令においては更に高い必要性が求められる場合があると考えられることに照らせば、まん延防止等重点措置に係る命令において求められる必要性は、緊急事態措置に係る命令において求められる必要性と必ずしも同じである理由はない。本件事務連絡の文言のほか、以上のことによれば、本件事務連絡は、事情①ないし③を全て充足することを常に求めているものとは解されない。 以上を前提に、本件処分行政庁の「特に必要があると認めるとき」を満 事務連絡の文言のほか、以上のことによれば、本件事務連絡は、事情①ないし③を全て充足することを常に求めているものとは解されない。 以上を前提に、本件処分行政庁の「特に必要があると認めるとき」を満たすとの判断に、裁量権の逸脱又は濫用が認められるかを検討する。 ウ検討事情①について分科会の分析によれば、飲食店でのクラスターの発生が感染拡大の要因となっていることが示され(認定事実)、基本的対処方針においても、飲食は感染リスクが高いものとされ、クラスター対策の観点から歓楽街にお ける対策の必要性が説かれていた(認定事実)。また、北海道の飲食店でも、クラスターの発生が多数確認されていた(認定事実e)。かかる事情に鑑みれば、店舗型の飲食業については、「すでに同種の業態においてクラスターが多数発生していること」が認められる。 事情③について前記認定事実によれば、本件各処分1の発令時において、北海道では、当時新型コロナウイルス感染症の先行指標であると考えられていた「感染経路不明割合の増加」及び「若年層の感染割合の増加」が高い水準でみられたこと(認定事実a)や、分科会がすすきのの夜間の人流と新型コロナウイルス感染症の北海道における感染拡大との相関関係を示唆していた中で、すすきのの夜間の人出が増加していたこと(認定事実b)、ワクチンの2回目の接種率が9.07%にとどまり(認定事実c)北海道の住民の大部分が免疫を獲得していなかったこと、従来株より免疫やワクチンの効果を低下させる可能性や重症化しやすい可能性も指摘されていたデルタ株の感染が、北海道内においても確認され始めていたこと(前記2⑶イ、認定事実d)に照らせば、本件各処分1の発令時の北海道においては、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続して ていたデルタ株の感染が、北海道内においても確認され始めていたこと(前記2⑶イ、認定事実d)に照らせば、本件各処分1の発令時の北海道においては、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続しており、その感染が拡大するおそれが高まっている状況にあったものと認められる。 小括したがって、北海道において、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続し、感染が拡大するおそれが高まっていたこと、既に店舗型の飲食業界においてクラスターが多数発生し、当該クラスターが感染拡大の要因と考えられていたことのほか、多数の学識経験者らがまん延防止等重点措置に係る命令を行う必要があるとの意見を述べていたこと(認定事実)を考慮すると、本件処分行政庁が本件各処分1を発令する「特に必要がある」と認めた判断は、不合理ではなく、裁量権の逸脱又は濫用は認められ ないというべきである。 これに対し、原告らは、本件各処分1の有効性が明らかではないなどと主張するが、後記⑶イのとおり、本件各処分1の発令時の知見に照らせば、本件各処分1の有効性が認められるのであって、原告らの主張には理由がない。 ⑶ 本件各処分1が必要最小限のものといえるかについてア認定事実前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 政府対策本部は、基本的対処方針において、まん延防止等重点措置を実施すべき区域における取組等として、「感染リスクが高いと指摘されている飲食の場を避ける観点から、都道府県知事が定める期間及び区域において、法31条の6第1項等に基づき、飲食店(宅配・テイクアウトを除く。)に対する営業時間の短縮(20時までとする。)の要請を行うこと。」を挙げた(乙28〔36、38〕)。 分科会は、「今冬の感染対策の効果 条の6第1項等に基づき、飲食店(宅配・テイクアウトを除く。)に対する営業時間の短縮(20時までとする。)の要請を行うこと。」を挙げた(乙28〔36、38〕)。 分科会は、「今冬の感染対策の効果の分析について~人出と感染者数を中心に~」(令和3年4月8日版)において、東京都及び大阪府での新規陽性者数の増加局面(令和2年12月5日から令和3年1月11日まで)における寄与率として、「人出の中でも、特に21時の人出の寄与率が大きかったと考えられる」とし、新規陽性者数の減少局面(令和3年1月12日から同年2月11日まで)における寄与率として、「新規陽性者数の減少局面においては、飲み会の抑制、21時の人出の減少の寄与率が大きかったと考えられる」としたほか、これまで得られた知見として、「20時までの営業時間短縮要請は、夜(21時)の人出の減少にもつながり、新規陽性者数の減少に効果があったと考えられる」、「感染者の増加局面・減少局面のいずれにおいても、飲食につながると考えられる夜(21時)の人 出が特に影響したと考えられ」るとした(乙29〔7、12、17〕)。 本件各処分1の発令時において、新型コロナウイルス感染症専用の中和抗体薬や抗ウイルスの経口治療薬はなく(弁論の全趣旨)、呼吸不全がある中等症Ⅱ以上の新型コロナウイルス感染症の治療方法としては、呼吸療法2種、薬物療法4種(レムデシビル、ステロイド、バリシチニブ及びヘパリン)であり、症状が軽症から呼吸不全のない中等症Ⅰに重症化することを予防するための治療法は存在しなかった(乙44の1〔34〕)。 イ検討本件各処分1の発令時において、北海道におけるワクチンの2回目の接種率は9.07%にとどまり(前記⑵アc)、北海道の住民の大部分が免疫を獲得していない状況にあったところ 〕)。 イ検討本件各処分1の発令時において、北海道におけるワクチンの2回目の接種率は9.07%にとどまり(前記⑵アc)、北海道の住民の大部分が免疫を獲得していない状況にあったところ、新型コロナウイルス感染症専用の経口治療薬等が開発されておらず、軽症患者の重症化予防のための治療方法は存在せず、中等症Ⅱ以上の患者に対する治療方法も限られたものであった(認定事実)。そのため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策としては、人流を抑制するという手段を採らざるを得ない状況であった。 そして、本件各処分1の発令当時の知見として、午後9時の人出が新規陽性者の増減に寄与する割合が大きく、午後8時までの営業時間短縮要請が午後9時の人出の減少につながり、新規陽性者数の減少に効果があると考えられていたことが認められるのであって(認定事実)、当時の知見に照らせば、午後8時以降の飲食店の営業を制限する内容のまん延防止等重点措置に係る命令は、飲食店での飲食に伴う人流を抑制し、もって新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するために有効であったといえる。 このように、本件処分行政庁は、新型コロナウイルス感染症の治療方法が限られている中で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐという目的から、当時の知見等を踏まえて相当な範囲で飲食店での飲食に伴う人出を減らし、新規感染者数を減らそうとしたものであるから、仮に原告らに営業損 害等の不利益を与えるものであったとしても、必要以上の制限を課したものであったとまでは認められない。 したがって、本件各処分1は、必要最小限のものであったと認められる。 ⑷ 手続上の瑕疵についてア原告らは、法改正により新設されたばかりで前例のない不利益処分に対する弁明の準備期間として1週 って、本件各処分1は、必要最小限のものであったと認められる。 ⑷ 手続上の瑕疵についてア原告らは、法改正により新設されたばかりで前例のない不利益処分に対する弁明の準備期間として1週間は短く、十分な手続保障がなされていないなどと主張する。 行政手続法30条は、弁明の機会の付与の際に、弁明書の提出期限までに「相当な期間」を置くことを規定するところ、かかる「相当な期間」は、行政庁が行う不利益処分の内容や性質等に応じて個別に判断されるものであると解される。 本件では、本件各処分1が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために速やかに発令されるべき性質のものであることなどを考慮し、本件処分行政庁は、弁明書の準備期間として1 週間という期間を定めたものと認められるのであって、その判断が不合理であるとはいえない。 したがって、行政手続法30条の違反は認められない。 イその他、原告らは、手続上の瑕疵として本件処分行政庁は丁寧な運用をしていないなどと縷々主張するが、被告が行政手続法その他の手続規定に反したものとは認められず、原告らの主張は、本件各処分1の適法性を左右するものではない。 ⑸ 結論以上によれば、本件各処分1は、適法と認められる。 4 本件各処分2の適法性⑴ 本件各処分2について「特に必要があると認められるとき」といえるかア認定事実前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認 められる。 アドバイザリーボードの分析令和3年8月18日のアドバイザリーボードの分析によれば、今後の見通しと必要な対策として、「これまでの緊急事態措置やまん延防止等重点措置の継続や拡大にもかかわらず、滞留人口の減少は限定 ードの分析令和3年8月18日のアドバイザリーボードの分析によれば、今後の見通しと必要な対策として、「これまでの緊急事態措置やまん延防止等重点措置の継続や拡大にもかかわらず、滞留人口の減少は限定的で、デルタ株への置き換わりが進み、感染者数がこれまでにはない規模で全国的に増加しているが、今後お盆の影響もあり、更に感染者数が増加してくることも想定される。こうした中で、重症者数も過去最大規模となり、死亡者数の増加傾向も見え始めているが、高齢の感染者も増加しており、今後さらに死亡者が増加することが懸念される。全国各地で、災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要。」、「救える命が救えなくなるような危機的な状況さえ危惧され、一刻も早く、現下の感染拡大を速やかに抑えることが重要である。直ちに、新規感染者数の増加を速やかに減少させるためには、接触の機会を更に削減する(中略)などが重要である。」、「国や自治体においてはこれまでの対策のより一層の強化やきめ細やかな呼びかけを行うとともに、市民の生活において外出を半分以下とし、混雑した場所を避けることで、接触機会を削減していただくことが必要。」などとされている(乙41〔3〕)。 北海道の状況a 本件各処分2発令前の時点における北海道の状況は、別紙11記載のとおりであり、分科会提言の「ステージⅣ」の指標に全て該当していた。 また、当時、新型コロナウイルス感染症の先行指標と考えられていた「感染経路不明割合の増加」及び「若年層の感染割合の増加」について、令和3年8月17日の時点で、感染経路不明割合が43.0%であり、年代別感染者のうち10代の割合が14.8%、20代ないし30代の割合が46.1%で若年層の感染割合が合計60.9%であった(乙4 2〔1、14〕)。 経路不明割合が43.0%であり、年代別感染者のうち10代の割合が14.8%、20代ないし30代の割合が46.1%で若年層の感染割合が合計60.9%であった(乙4 2〔1、14〕)。 b また、札幌駅の午後9時の人出は令和3年8月17日時点で3万6260人であり、同月1日時点と比較して17.0%減少していたが、同年6月20日時点と比較すると11.4%増加しており、すすきの駅周辺の午後9時の人出は同年8月17日時点で4万7368人であり、同月1日時点と比較して17.3%減少していたが、同年6月20日と比較すると32.3%増加していた(乙42〔21、22〕)。 c 令和3年8月24日時点におけるワクチンの接種率は、接種1回目が43.70%、接種2回目が34.68%であった(乙43)。 d 北海道内における令和3年8月11日から同月17日までのデルタ株のスクリーニング検査において、検査陽性率が70.7%に達しており、デルタ株への置き換わりが進んでいた(乙42〔4、20〕)。 学識経験者への意見聴取本件処分行政庁は、特別措置法31条の6第4項に基づき学識経験者からの意見聴取を行ったところ、多数の学識経験者らは、同条第3項の命令を行う必要があるとの意見を述べた(乙20)。 イ検討以下、前記3⑵イの判断枠組みに沿って、本件処分行政庁の「特に必要があると認めるとき」を満たすとの判断に、裁量権の逸脱又は濫用が認められるかを検討する。 事情①について前記3⑵ウのとおり、店舗型の飲食業界においてクラスターが多数発生していたことが認められる。 事情③についてアドバイザリーボードにおいて、全国的な感染拡大が継続しており、新規感染者の抑制策を講じる必要性が強調されていたこと(認定事実)、 数発生していたことが認められる。 事情③についてアドバイザリーボードにおいて、全国的な感染拡大が継続しており、新規感染者の抑制策を講じる必要性が強調されていたこと(認定事実)、 本件各処分2の発令時において、北海道が分科会提言の「ステージⅣ」の指標を全て満たしていたこと(認定事実a)、当時、新型コロナウイルス感染症の先行指標と考えられていた「感染経路不明割合の増加」及び「若年層の感染割合の増加」も高い水準を維持していたこと(認定事実a)、札幌駅やすすきの駅周辺における人出が高い水準であったこと(認定事実b)、ワクチンの2回接種率が34.68%であり(認定事実c)、未だ北海道の住民の大部分が免疫を獲得していないという状況にあったこと、従来株より免疫やワクチンの効果を低下させる可能性や重症化しやすい可能性が指摘されていたデルタ株への置き換わりが進んでいたこと(前記2⑶イ、認定事実d)などを踏まえると、本件各処分2の発令時の北海道においては、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続しており、その感染が拡大するおそれが高まっている状況にあったものと認められる。 小括したがって、北海道において、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染が継続し、感染が拡大するおそれが高まっていた上、既に店舗型の飲食業界においてクラスターが多数発生し、当該クラスターが感染拡大の要因と考えられていたこと(前記3⑵ア)のほか、多数の学識経験者らがまん延防止等重点措置に係る命令を行う必要があるとの意見を述べていたこと(認定事実)などを考慮すると、本件処分行政庁が本件各処分2を発令する「特に必要がある」と認めた判断は、不合理ではなく、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 これに対し、原告らは、本件各処分1の発令によって、営 どを考慮すると、本件処分行政庁が本件各処分2を発令する「特に必要がある」と認めた判断は、不合理ではなく、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 これに対し、原告らは、本件各処分1の発令によって、営業時間の短縮に応じない店舗をむしろ増やしているなどとし、本件各処分2は「特に必要」がなかったなどと主張するが、本件各処分1の発令後に営業時間の短縮に応じない店舗が増えたことを裏付ける的確な証拠はないほか、仮に営 業時間の短縮に応じない店舗が増えたとしても、そのことがまん延防止等重点措置に係る命令に新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として効果がないことを示すものではないから、原告らの主張は採用できない。 ⑵ 本件各処分2が必要最小限といえるかについてア認定事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。)本件各処分2の発令時において、新型コロナウイルス感染症専用の中和抗体薬や抗ウイルスの経口治療薬はなく(弁論の全趣旨)、呼吸不全がある中等症Ⅱ以上の新型コロナウイルス感染症の治療方法としては、呼吸療法2種、薬物療法4種(レムデシビル、ステロイド、バリシチニブ及びヘパリン)であり、症状が軽症から呼吸不全のない中等症Ⅰに重症化することを予防するための治療法は薬物療法1種(中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブ)にとどまり、同中和抗体薬は令和3年7月19日に新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認されたものであるところ、日本への流通も限られたものになるとして、製造販売業者から厚生労働省が提供を受け、配分することとされていた(乙44の2〔35〕、45〔1、7〕)。 イ検討本件各処分2の発令時において、北海道におけるワクチンの2回目の接種率は34.68%にとどまり(前記⑴アc)、依然として北 ととされていた(乙44の2〔35〕、45〔1、7〕)。 イ検討本件各処分2の発令時において、北海道におけるワクチンの2回目の接種率は34.68%にとどまり(前記⑴アc)、依然として北海道の住民の大部分が免疫を獲得していない状況にあったところ、新型コロナウイルス感染症専用の経口治療薬等が開発されておらず、中等症Ⅱ以上の患者に対する治療方法も限られたものであり、軽症患者の重症化予防のための治療方法も広く一般に普及する状況にはなかった(前記認定事実)。 また、本件各処分1と同様に、本件各処分2の発令当時の知見(前記3⑶ア)に照らしても、まん延防止等重点措置に係る命令は、飲食店での飲食に伴う人流を抑制し、もって新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止す るために有効であったといえる。 このように、本件処分行政庁は、新型コロナウイルス感染症の治療方法が限られている中で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐという目的から、当時の知見を踏まえて相当な範囲で飲食店での飲食に伴う人出を減らし、新規感染者数を減らそうとしたものであるから、仮に原告らに営業損害等の不利益を与えるものであったとしても、必要以上の制限を課したものであったとまでは認められない。 したがって、本件各処分2は、必要最小限のものであったと認められる。 ⑶ 手続上の瑕疵について前記3⑷と同様に、本件各処分2には、手続上の瑕疵が認められない。 ⑷ 結論以上によれば、本件各処分2は、適法と認められる。 第4 結語よって、原告らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官谷口哲也 裁判官長峰志 主文 原告らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 札幌地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官谷口哲也 裁判官長峰志織 裁判官北村規哲 (別紙1当事者目録及び別紙3店舗目録添付省略)
▼ クリックして全文を表示