- 1 -令和3年10月6日判決言渡令和3年(行コ)第20号損害賠償(政務調査費不正支出)請求控訴事件(以下「第1事件」という。),同第212号訴えの追加的併合申立事件(以下「第2事件」という。)(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第538号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人が当審において追加した第2事件に係る訴えを却下する。 3 当審における訴訟費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決の主文第1項及び第3項を取り消す。 2 被控訴人は,A党荒川区議会議員団及びBに対し,各自32万4298円に対する平成30年4月9日から令和3年1月13日まで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 3 被控訴人は,A党荒川区議会議員団及びBに対し,各自123万7992円及びこれに対する平成30年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を荒川区職員42名に支払うよう請求せよ。 (控訴人は,上記2及び3のとおり,当審において,従前の請求の関連請求に該当するとして,被控訴人に対し,荒川区長であるB個人〈以下「B」という。〉 に被控訴人及び荒川区職員42名に対して金員を支払うよう請求することを求める訴え〈第2事件〉を追加して提起した。)第2 事案の概要等(以下,略称は,基本的に原判決のそれによる。) 1 事案の概要⑴ 本件は,東京都荒川区(荒川区)の住民である控訴人が,平成30年度に 荒川区が同区議会の会派の一つであるA党荒川区議会議員団(本件議員団)- 2 -に交付した政務活動費について,本件議員団が新潟県α町(β町)において行った研修会(本件研修)に要した費用(交通費,会場費 が同区議会の会派の一つであるA党荒川区議会議員団(本件議員団)- 2 -に交付した政務活動費について,本件議員団が新潟県α町(β町)において行った研修会(本件研修)に要した費用(交通費,会場費及び宿泊費。本件費用)38万3190円(控訴人の主張額)は,荒川区議会政務活動費の交付に関する条例(平成13年荒川区条例第1号。本件条例)等で定められた政務活動費を充てることができる政務活動に要する経費に該当せず,本件議 員団が本件費用を政務活動費から支出したことは違法であり,本件議員団は,その全額を不当利得として荒川区に返還するとともに,地方税法の規定により,本件費用の額に対する平成30年4月9日(政務活動費の交付を受けた日)から支払済みまで年14.6%(ただし,最初の1か月を経過する日までは年7.3%)の割合による延滞金及び本件費用の額に35%の割合を乗 じて得た金額の重加算金にそれぞれ相当する額の金員を荒川区に支払うべきであり,併せて,上記研修会に私費で参加した荒川区の幹部職員42名(本件職員ら)に,不法行為に基づく損害賠償としてその旅費相当額123万7992円を支払うべきであるとして,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき, ア被控訴人が,本件議員団に対し,38万3190円並びにこれに対する平成30年4月9日から支払済みまで年14.6%(ただし,最初の1か月を経過する日までは年7.3%)の割合による延滞金及び本件費用(38万3190円)に35%の割合を乗じて得た金額の重加算金13万4116円(1円未満切捨て)にそれぞれ相当する額の金員を支払うよう請求 すること,イ被控訴人が,本件議員団に対し,123万7992円及びこれに対する平成30年4月9日から支払済みまで民法(平成29年 円未満切捨て)にそれぞれ相当する額の金員を支払うよう請求 すること,イ被控訴人が,本件議員団に対し,123万7992円及びこれに対する平成30年4月9日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金を本件職員らに支払うよう請求すること, を求めた事案である。 - 3 -⑵ 原審は,本件訴えのうち,被控訴人が本件議員団に対し,本件職員らに損害賠償金を支払うよう請求することを求める部分(上記⑴イ)については,住民訴訟として不適法であるとして,これを却下し(原判決主文第1項),上記⑴アについては,本件費用として38万8470円を支出したことは,政務活動費の使途基準(本件使途基準)に適合しない違法なものであり,「本 件議員団の平成30年度の政務活動費の支出額から本件費用を控除した額(1215万5702円)」が「同年度に本件議員団に交付された政務活動費の額(1248万円)」を下回り,その差額(32万4298円)が不当利得になるとして,被控訴人が本件議員団に対し,本件費用中32万4298円を支払うよう請求することを求める限度で認容し(原判決主文第2項), その余の請求は棄却した(原判決主文第3項)。 ⑶ 控訴人は,原判決中,上記却下部分(原判決主文第1項)及び棄却部分(原判決主文第3項)を不服とし,上記第1の2及び3に記載の限度で本件控訴の提起をするとともに,当審において,上記⑴ア及びイの関連請求に該当すると主張して,被控訴人に対し,荒川区長であるB個人に対して上記第1の 2及び3のとおり,本件議員団に支払請求する金額と同額の金員を支払うよう請求することを求める訴え(第2事件)を併合して提起し,従前の本件議員団に関する請求と同一の訴訟手続内で審理,判 第1の 2及び3のとおり,本件議員団に支払請求する金額と同額の金員を支払うよう請求することを求める訴え(第2事件)を併合して提起し,従前の本件議員団に関する請求と同一の訴訟手続内で審理,判断することを求めた。 他方,被控訴人は,原判決の認容部分(原判決主文第2項)について,不服の申立てをせず,また,第2事件に係る訴えの提起(請求の追加的併合) に対しては,これに同意しないとの意見を述べた。 2 関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び当事者の主張の要旨関係法令等の定め,前提事実並びに争点及び当事者の主張の要旨は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」1ないし3(原判決3頁8行目から12頁2行目まで)に記載のとおりである から,これを引用する。 - 4 -⑴ 原判決4頁10行目の「本件条例の別表(第9条関係)」の次に「(甲7)」を加える。 ⑵ 原判決4頁16行目の「交通費,経費」を「交通費,旅費」と改める。 ⑶ 原判決5頁23行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 「エ Bは,平成30年度当時,荒川区の区長であった者である(弁論の全趣 旨)。」⑷ 原判決6頁12行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 「エ本件議員団は,平成30年10月9日,荒川区長から,平成30年度下半期分の政務活動費624万円の交付を受けた。(甲15の8)」⑸ 原判決6頁13行目冒頭の「エ」を「オ」と,同19行目冒頭の「オ」を 「カ」と,同22行目冒頭の「カ」を「キ」とそれぞれ改める。 ⑹ 原判決7頁17行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 「⑸ 本件議員団による支払本件議員団は,令和3年1月13日(原判決言渡しの日),荒川区に対し,32万4298円を支払った。」 ⑹ 原判決7頁17行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 「⑸ 本件議員団による支払本件議員団は,令和3年1月13日(原判決言渡しの日),荒川区に対し,32万4298円を支払った。」 ⑺ 原判決11頁14行目冒頭から同15行目末尾までを削除する。 ⑻ 原判決11頁19行目の「32万4218円」を「32万4298円」と改める。 ⑼ 原判決11頁21行目冒頭から12頁2行目末尾までを次のとおり改める。 「 さらに,本件議員団は,上記利得に法律上の原因がないことを知らなかっ たことに過失があり,悪意の受益者と同視されるから,年5分の割合による利息ないし遅延損害金を付して,上記利得を返還すべきである。」 3 第2事件について⑴ 控訴人の主張本件議員団は,β町への宿泊を伴う本件研修を計画し,先生役として,本 件職員らを無報酬かつ自費でβ町まで同行させたが,荒川区の区長であるB- 5 -は,本件職員らの参加を知りながら,あるいはこれを知り得る立場にありながら,それを黙認した。これは,本件議員団の不正な政務活動費の支出に教唆者又は幇助者として加担したものであり,Bは,本件議員団と共同不法行為をしたものとして,本件議員団と連帯して,荒川区に対し損害賠償責任を負うほか,本件職員らに対しても,旅費相当額の賠償責任を負う。 控訴人は,従前の請求の「関連請求に係る訴え」(行政事件訴訟法19条1項)に該当するものとして,当審において,Bの損害賠償責任について,従前の請求と併合して審理することを求める。 ⑵ 被控訴人の主張第2事件に係る訴えは,従前の訴えとの関係で,請求権の内容やその相手 方,対象とする財務会計行為又は怠る事実を異にするものであり,「関連請求に係る訴え」には当たらない。 被控訴人 主張第2事件に係る訴えは,従前の訴えとの関係で,請求権の内容やその相手 方,対象とする財務会計行為又は怠る事実を異にするものであり,「関連請求に係る訴え」には当たらない。 被控訴人は,第2事件に係る訴えの提起(請求の追加的併合)について,同意しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件議員団が本件職員らに損害賠償金を支払うよう請求することを求める訴えの適法性及びその当否)について当裁判所も,原審と同じく,本件訴えのうち,被控訴人に対し,本件議員団が本件職員らに損害賠償金を支払うよう請求することを求める部分は,不適法であり,却下すべきものと判断する。その理由は,原判決の「事実及び理由」 中の「第3 当裁判所の判断」1(原判決12頁4行目から同14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 争点⑵(本件費用の支出の適法性)及び争点⑶(本件議員団が荒川区に返還すべき不当利得の有無及びその額)について当裁判所も,原審と同じく,本件費用(38万8740円)を政務活動費と して支出することは,本件使途基準に適合しない違法なものであり,本件議員- 6 -団は,荒川区に対し,不当利得として,本件費用のうち32万4298円を返還すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」2及び3(原判決12頁15行目から19頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決13頁1行目の「議員としての活動」を「議員の議会活動の基礎と なる調査研究活動」と改める。 ⑵ 原判決14頁1行目の「場合であっても,」から同9行目末尾までを次のとおり改める。 「場合であり,議員の調査研究その他の活動は多岐にわたり, 会活動の基礎と なる調査研究活動」と改める。 ⑵ 原判決14頁1行目の「場合であっても,」から同9行目末尾までを次のとおり改める。 「場合であり,議員の調査研究その他の活動は多岐にわたり,個々の経費の支出がこれに必要か否かについては議員の合理的判断に委ねられる部分がある ことを考慮しても,経費の支出が調査研究のための必要性に欠けるものであったことがうかがわれる場合には,特段の事情のない限り,当該支出は,本件使途基準に適合しない違法なものと認めるべきところ(最高裁平成21年(行ヒ)第214号同22年3月23日第三小法廷判決・裁判集民事233号279頁参照),本件においても,当該調査研究活動の内容やその客観的 な目的,性質に照らし,議員としての調査研究活動との間の関連性が乏しい活動に伴う経費や,社会通念に照らして,調査研究その他の活動のための必要性,相当性に欠けるものであるときは,特段の事情のない限り,違法な支出と認めるのが相当である。」⑶ 原判決15頁13行目の「連絡等に対しても,」の次に「後日対応を必然 のものとせず,」を加える。 ⑷ 原判決16頁20行目から同21行目にかけての「結局のところ,」の次に「個別の議論や意見交換,情報交換の要素が一部含まれるとしても,」を加える。 ⑸ 原判決17頁11行目の「議長」を「区長」と改める。 ⑹ 原判決18頁12行目の「不当利得返還義務を負う。」を「不当利得返還- 7 -義務を負うところ,本件議員団は,令和3年1月13日,荒川区に対し,32万4298円を支払った(前提事実⑸)。」と改める。 ⑺ 原判決18頁14行目の「(平成30年4月9日)からの延滞金相当額」を「(平成30年4月9日)から令和3年1月13日まで年5分の割合による金員」と改める。 った(前提事実⑸)。」と改める。 ⑺ 原判決18頁14行目の「(平成30年4月9日)からの延滞金相当額」を「(平成30年4月9日)から令和3年1月13日まで年5分の割合による金員」と改める。 ⑻ 原判決19頁1行目末尾に「控訴人は,本件議員団が本件費用の支出に法律上の原因がないことを知らなかったことに過失があるから,悪意の受益者と同視すべきであるとも主張するが,民法704条の解釈上,採用することはできない。」を加える。 ⑼ 原判決19頁10行目冒頭から同14行目末尾までを削除する。 3 第2事件に係る訴え等について控訴人は,当審において,Bについて,荒川区の区長として,本件職員らが本件研修に参加することを知りながら,あるいはこれを知り得る立場にありながら,それを黙認したことは,本件議員団による不正な政務活動費の支出に教唆者又は幇助者として加担したものというべきであり,本件議員団と共同不法 行為をしたものとして,荒川区に対し損害賠償責任を負うほか,本件職員らに対しても,旅費相当額の賠償責任を負う旨主張し,従前の請求の関連請求に該当するとして,第2事件に係る訴えを提起し,従前の本件議員団に関する請求と同一の訴訟手続内で併合して審理,判断することを求めた。また,従前の請求における不当利得として返還すべき金額に対する年5分の割合による利息な いし遅延損害金の請求の可否の判断においても,上記Bの不法行為性を加味すべきであると主張する。 しかしながら,本件において,Bが,本件職員らが本件研修に参加することを認識していたのか,認識し得る立場にあったのか,認識してそれを黙認していたのかといった事実は,本件議員団が上記利得ないし遅延損害金の支払義務 を負うか否かという法的帰結を直接左右するものではないし,本 いたのか,認識し得る立場にあったのか,認識してそれを黙認していたのかといった事実は,本件議員団が上記利得ないし遅延損害金の支払義務 を負うか否かという法的帰結を直接左右するものではないし,本件議員団によ- 8 -る不正な政務活動費の支出に教唆者又は幇助者として加担したのかといった点を含め,これらを認めるに足りる的確な証拠はないというべきである。 また,そもそも第2事件に係る訴えは,控訴審において提起されたものであり,控訴人は,当審において,従前の本件議員団に関する請求と同一の訴訟手続内で併合して審理,判断することを求めているところ,被控訴人は,これに 同意しない旨の意見を述べているのであるから(上記第2の3⑵),第2事件に係る請求が関連請求(行政事件訴訟法13条)に該当するか,第2事件に係る訴えについて,監査請求が前置されているか(地方自治法242条の2第1項柱書),出訴期間が遵守されているか(同条第2項)などの点について検討するまでもなく,かかる訴えの提起(請求の追加的併合)は,不適法なものと して,却下を免れない(行政事件訴訟法43条3項,41条2項,19条1 項,16条2項。なお,最高裁昭和59年3月29日第一小法廷判決・裁判集民事141号511頁参照)。 第4 結論よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却する とともに,控訴人が当審において関連請求に該当するものとして追加提起した第2事件に係る訴えは,不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部 裁判長裁判官小出邦夫 - 9 -裁判官鈴木和 等裁判所第9民事部 裁判長裁判官小出邦夫 裁判官鈴木和典 裁判官塩谷真理絵
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