- 1 -H19.2.7東京高等裁判所平成17年(ネ)第1549号保証債務請求控訴事件主文原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 上記取消部分に係る被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨主文と同旨第2事案の概要 被控訴人Aファイナン本件は,①被控訴人A総合ファイナンス株式会社(スア貸)のJに対する平成元年2月22日金銭消費貸借契約に基づく貸付金債権()及びKに対する平成元年3月28日金銭消費貸借契約に基づく貸付金債付金債権権()につき,A埼玉信用組合()が連帯保証をしたとして,イ貸付金債権A埼玉Aファイナンスが,A埼玉を吸収合併した控訴人に対し,ア及びイ各貸付金債権に係る保証債務と控訴人に対する借入金債務とを対当額で相殺した後の4億1830万5900円及び内2億8974万8481円に対する平成14年9月25日から支払済みまで約定の年18%の割合による遅延損害金の支払を,②被控訴人株式会社B()の有限会社Cに対する平成元年12月18日金銭消費貸借契約被控訴人Bに基づく貸付金債権(),株式会社Dに対する平成2年7月16日金ウ貸付金債権銭消費貸借契約に基づく貸付金債権()及び同年9月14日金銭消費エ貸付金債権貸借契約に基づく貸付金債権(),E有限会社に対する平成4年5月オ貸付金債権22日金銭消費貸借契約に基づく貸付金債権()のうち,ウ及びカ各カ貸付金債権貸付金債権につき,A栃木信用組合()が,エ及びオ各貸付金債権につき,A栃木A埼玉がそれぞれ連帯保証をしたとして,被控訴人Bが,A埼玉及びA栃木を吸収合併した控訴人に対し,ウないしカ各貸付金債権に係る保証債務と控訴人に対する借入金債務とを対当 各貸付金債権につき,A栃木A埼玉がそれぞれ連帯保証をしたとして,被控訴人Bが,A埼玉及びA栃木を吸収合併した控訴人に対し,ウないしカ各貸付金債権に係る保証債務と控訴人に対する借入金債務とを対当額で相殺した後の10億5544万1648円並びに内350- 2 -0万円に対する平成7年1月14日から支払済みまで約定の年18.5%の割合による遅延損害金及び内10億0703万7872円に対する平成14年9月27日から支払済みまで約定の年18%の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。 原審は,被控訴人Aファイナンスのア貸付金債権,被控訴人Bのエ及びオ各 貸付金債権については,いずれも5年の商事消滅時効が完成しているとして,同各貸付金債権に係る連帯保証債務の履行請求を棄却したが,その余の貸付金債権については,平成元年,A埼玉と被控訴人Aファイナンス,平成元年及び同4年,A栃木と被控訴人Bとの間において,平成元年又は平成4年の貸付当時に交付された念書又は「証」と題する書面によりそれぞれ連帯保証契約が成立したとして,その後の和解契約による一部放棄後の同各貸付金債権に係る保証債務と控訴人に対する各借入金債務とを対当額で相殺した後の額につき被控訴人らの請求をいずれも認容した。 ア,エ及びオ各貸付金債権が時効により消滅したことにより,これらに係る連帯保証債務の履行請求権も消滅したとの原判決の判断については,被控訴人らは控訴しておらず,同各貸付金債権に係る連帯保証請求権は,当審における審判の対象にならない。 当裁判所は,原審と異なり,平成9年4月,イ,ウ及びカ各貸付金債権に係 る連帯保証契約の成立は認められるものの,これらは,合併前のA埼玉及び同A栃木の理事長らの権限濫用によるものであり,被控訴人らは同権限濫用を知り,又は容易に知るこ ,イ,ウ及びカ各貸付金債権に係 る連帯保証契約の成立は認められるものの,これらは,合併前のA埼玉及び同A栃木の理事長らの権限濫用によるものであり,被控訴人らは同権限濫用を知り,又は容易に知ることができたから,控訴人は,同連帯保証契約上の責任を負担しないと解すべきであり,被控訴人らの請求はいずれも理由がなく,これを棄却すべきものと判断した。 (当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ 前提事実って容易に認められる事実)(1)貸付金債権の発生- 3 -イ貸付金債権ア被控訴人Aファイナンス(代表者L)は,平成元年3月28日,東京都台東区において不動産業を営む株式会社Dの代表者であるK(日本通称名M)に対し,不動産購入資金として,弁済方法・平成元年10月から毎月26日限り元利均等払,利息・長期プライムレート+0.8%(当初年6.5%),返済期間及び回数・平成元年10月から平成16年9月まで180回,遅延損害金・年18%,支払を1回でも怠ったときは当然に期限の利益を喪失し,直ちに債務の全額を弁済する旨の約定で2億円を融資した。(甲2の1ないし3,同4の1及び2,乙14の1及び2)ウ貸付金債権イ被控訴人B(代表者N)は,平成元年12月18日,宇都宮市に本店を置き,ホテル・旅館業を営む有限会社C(旧有限会社F・代表者O)に対し,ビジネスホテル買収資金として,弁済方法・平成2年6月から毎月23日限り元利均等払,利息・長期プライムレート+0.8%(当初年7.3%),遅延損害金・年18%,支払を1回でも怠ったときは当然に期限の利益を喪失し,直ちに債務の全額を弁済する旨の約定で5億円を融資した。(甲3の1ないし6,乙15の1及び2)カ貸付金債権ウ被控訴人B(代表者N)は,平成4年5月22日,栃木県小山市において遊技 の利益を喪失し,直ちに債務の全額を弁済する旨の約定で5億円を融資した。(甲3の1ないし6,乙15の1及び2)カ貸付金債権ウ被控訴人B(代表者N)は,平成4年5月22日,栃木県小山市において遊技場業を営むE有限会社(代表者P)に対し,パチンコ店舗設備資金として,弁済方法・平成4年11月から毎月23日限り元利均等払,利息・長期プライムレート+2. 5%(当初年8.5%),遅延損害金・年18%,支払を1回でも怠ったときは当然に期限の利益を喪失し,直ちに債務の全額を弁済する旨の約定で3億5000万円を融資した。(甲6の1及び5,乙15の1及び2)(以下,イ,ウ及びカ各貸付金債権を併せて「」といい,これらに本件貸付金債権係る債務を併せて「」という。)本件貸付金債務(2)念書及び証の交付- 4 -A埼玉(理事長Q)は,平成元年4月3日,被控訴人Aファイナンスに対し,アイ貸付金債権につき「当組合は貴社とともにその管理回収に責任をもって協力します。」,「期限の利益喪失事項が発生したときは,当組合は債権回収に責任をもってその正常化に努めると共に,貴社の催告があれば本貸出金の全部又は一部を当組合が債務引受をいたします。」と記載された「念書」と題する書面()を本件念書交付した。(甲2の2)A栃木(理事長R)は,平成元年11月10日,被控訴人Bに対し,ウ貸付イ金債権につき「当組合は貴社とともにその管理回収に責任をもって協力します。」,「期限の利益喪失事項が発生したときは,当組合は債権回収に責任をもってその正常化に努めるとともに,貴社と協議の上本貸出金の全部又は一部を当組合が債務引受をいたします。」と記載された「証」と題する書面()を交付した。な本件証1お,本件証1は,B4版の紙面の右半分で,その左半分を形成する「融資顧客紹介状」 本貸出金の全部又は一部を当組合が債務引受をいたします。」と記載された「証」と題する書面()を交付した。な本件証1お,本件証1は,B4版の紙面の右半分で,その左半分を形成する「融資顧客紹介状」と題する書面と一体となっている。(甲3の2)A栃木(理事長R)は,平成4年2月20日,被控訴人Bに対し,カ貸付金ウ本件証2。 本債権につき本件証1と同様の書面(以下本件証1及び証2を併せて「」という。)を交付した。(甲6の2)。 件証(3)保証書及び常任理事会議事録の交付A埼玉(理事長S)は,平成9年4月初旬ころ,被控訴人Aファイナンスア(代表者T)に対し,イ貸付金債権につき常勤役員全員の合意に基づき連帯して債務保証をする旨明記された同月1日付け「保証書」及び同貸付金債権に対する債務保証を確認し,新たに別紙保証書に連帯保証人として署名捺印する旨記載された同日付け「信用組合常任理事会議事録」を交付した。(甲2の3及び4,乙14の6,18)A栃木(理事長U)は,平成9年4月初旬ころ,被控訴人B(代表者V)にイ対し,ウ及びカ各貸付金債権につき常勤役員全員の合意に基づき連帯して債務保証をする旨明記された同月22日付け「保証書」及び同貸付金債権に対する債務保証- 5 -を確認し,新たに別紙保証書に連帯保証人として署名捺印する旨記載された同日付け「信用組合常任理事会議事録」を交付した。(甲3の3及び4,同6の3及び4,乙15の4,18)(以下,上記ア及びイ記載の「保証書」,「信用組合常任理事会議事録」をそれぞれ併せて「」,「」という。)本件保証書本件議事録(4)イ貸付金債権に係る調停被控訴人Aファイナンス(代表者W)は,平成11年1月20日,東京簡易裁判所に対し,A埼玉(理事長S)を相手方とするイ貸付金債権に係る連帯保証債務に 保証書本件議事録(4)イ貸付金債権に係る調停被控訴人Aファイナンス(代表者W)は,平成11年1月20日,東京簡易裁判所に対し,A埼玉(理事長S)を相手方とするイ貸付金債権に係る連帯保証債務に本件調ついての調停の申立てをし,同年2月26日,両者間に下記内容の調停()が成立し,調停調書が作成された。(甲2の7,80,乙14の7)停記①A埼玉が被控訴人Aファイナンスに対し,平成元年4月3日,イ貸付金債権につき連帯保証の予約をしたことを確認する。 ②被控訴人Aファイナンスが,平成10年9月30日,上記予約に基づき連帯保証の履行を催告したことにより,A埼玉にイ貸付金債権に係る連帯保証債務が発生したことを確認する。 ③A埼玉は,被控訴人Aファイナンス対し,上記連帯保証債務として,イ貸付金債権の残元本1億7676万3901円及びこれに対する平成10年9月30日から支払済みまで年18%の割合による遅延損害金の支払義務があることを確認する。 ④A埼玉は,被控訴人Aファイナンスに対し,平成11年8月31日限り,上記残元本及びこれに対する平成10年9月30日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金を支払う。 ⑤A埼玉が④の支払をしたときは,被控訴人Aファイナンスは,その余の支払を免除する。 ⑥被控訴人AファイナンスとA埼玉は,本件に関し,本調停条項に定めるほか,- 6 -何らの債権債務がないことを確認する。 (5)ウ及びカ各貸付金債権に係る和解契約被控訴人B(代表者W)及びA栃木(理事長U)は,平成11年3月23日,下記内容の和解契約()を締結した。(甲74)本件和解契約記①ウ貸付金債権につき平成元年12月18日,カ貸付金債権につき平成4年5月22日,それぞれ連帯保証予約契約が締結されたことを確認する。 ②平成11年2月 )を締結した。(甲74)本件和解契約記①ウ貸付金債権につき平成元年12月18日,カ貸付金債権につき平成4年5月22日,それぞれ連帯保証予約契約が締結されたことを確認する。 ②平成11年2月22日の予約完結権行使に基づき,A栃木は,連帯保証人として,被控訴人Bに対し,ウ及びカ各貸付金債権につき支払義務のあることを確認する。 ③A栃木は,被控訴人Bに対し,平成11年8月31日限り,ウ貸付金債権の残元本4億7237万0483円及びこれに対する平成10年5月24日から支払済みまで年3.62%の割合による利息並びにカ貸付金債権の残元本3億2022万8372円及びこれに対する平成9年10月24日から支払済みまで年6.8%の割合による利息をそれぞれ支払う。 ④A栃木が③の支払をしたときは,その余の支払義務を免除する。 (6)控訴人に対する借入金債務被控訴人Aファイナンスは,平成13年8月17日,控訴人から3億円を借アり入れた。 被控訴人Bは,平成13年6月5日,控訴人から9億円を借り入れた。 イ(7)控訴人の破綻控訴人は,平成13年8月24日,預金保険法74条1項2号に基づき内閣総理大臣から権限委任を受けた金融庁長官により金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受けて破綻し,救済金融機関であるG信用組合及び株式会社整理回収機構に事業譲渡を行った上,平成14年12月29日,預金保険法87条2項の許可決定により解散した。 - 7 -(8)相殺の意思表示被控訴人Aファイナンスは,平成14年9月24日,控訴人に対し,ア及びアイ各貸付金債権に係る保証債務と上記(6)アの借入金債務(残元本額2億9100万円)とを対当額で相殺する旨の意思表示をした上,相殺後の保証債務2億8974万8481円及びこれに対する遅延損害金支払義務の履行を 債権に係る保証債務と上記(6)アの借入金債務(残元本額2億9100万円)とを対当額で相殺する旨の意思表示をした上,相殺後の保証債務2億8974万8481円及びこれに対する遅延損害金支払義務の履行を求めた。(甲7)被控訴人Bは,平成14年9月26日,控訴人に対し,ウ,オ及びカ各貸付イ金債権に係る保証債権と上記(6)イの借入金債務(残元本額8億8200万円)とを対当額で相殺する旨の意思表示をした上,相殺後の保証債務10億0703万7872円及びこれに対する遅延損害金支払義務の履行を求めた。(甲8) 争点 ()(1)連帯保証契約の成立争点1本件念書又は本件証の交付(平成元年又は平成4年)によるものア本件保証書及び本件議事録の交付(平成9年4月)によるものイ本件調停又は本件和解契約(平成11年)において確認されたもの(当審にウおける予備的主張)()(2)連帯保証契約の効力争点2本件念書又は本件証の交付(平成元年又は平成4年)によるものア本件保証書及び本件議事録の交付(平成9年4月)によるものイ本件調停又は本件和解契約(平成11年)において確認されたもの(当審にウおける予備的主張)()(3)主債務の消滅時効争点3 争点1に係る当事者の主張(1)本件念書又は本件証の交付による連帯保証契約の成立(争点1ア)被控訴人らアA埼玉は,本件念書を,A栃木は,本件証を,いずれも本件貸付金債権につき連帯保証債務を負担する趣旨で被控訴人らに交付し(前記4(2)),これによって- 8 -本件貸付金債務に係る連帯保証契約が成立した。同契約による保証債務は,本件念書が作成された日(イ貸付金債権)又は融資実行日(ウ及びカ各貸付金債権)に発生した。本件保証書は,この保証債務の内容を確認し又は明確にしたものである。 控訴人及 立した。同契約による保証債務は,本件念書が作成された日(イ貸付金債権)又は融資実行日(ウ及びカ各貸付金債権)に発生した。本件保証書は,この保証債務の内容を確認し又は明確にしたものである。 控訴人及び同補助参加人預金保険機構イ被控訴人Aファイナンスは,全国各都道府県に設立された朝鮮民主主義人民共和国系の信用組合()が株主となって設立した会社で,各A信組の実質的な子A信組会社である。同被控訴人は,各A信組が融資することが不可能な案件について,融資を行っていた。 被控訴人Bは,被控訴人Aファイナンスでさえも融資することが危険な案件について,A信組から紹介を受けて融資を行っていた企業である。本件貸付金債権に係る貸付けは,A埼玉及びA栃木が金融機関として融資することができない案件であり,このような危険な融資先のためにA埼玉又はA栃木が保証をすることはあり得ない。 本件念書及び本件証は,単にA埼玉又はA栃木が被控訴人らに顧客の紹介をする程度の意味しか持たないもの,又は被控訴人らの貸付金の回収について協力するという意味を持つものにすぎない。 (2)本件保証書及び本件議事録の交付による連帯保証契約の成立(争点1イ)被控訴人らア本件保証書及び本件議事録の交付(前記4(3))によって,平成9年4月ころ,控訴人と被控訴人らとの間において本件貸付金債権につき控訴人が連帯保証をする旨の契約が成立した。 控訴人イ本件保証書及び本件議事録の交付時,A埼玉,A栃木及び被控訴人らのいずれにおいても,本件保証書の交付によって新たにA埼玉又はA栃木が連帯保証債務を負担する意思は全くなく,連帯保証契約は成立していない。 (3)本件調停又は本件和解契約において確認された連帯保証契約の成立(争点1- 9 -ウ)被控訴人らア本件調停(ア)被控訴人Aファイナン する意思は全くなく,連帯保証契約は成立していない。 (3)本件調停又は本件和解契約において確認された連帯保証契約の成立(争点1- 9 -ウ)被控訴人らア本件調停(ア)被控訴人AファイナンスとA埼玉とは,平成11年2月26日,前記4(4)のとおり,A埼玉がイ貸付金債権に係る連帯保証債務を負うことを確認する旨の本件調停を成立させた。 本件和解契約(イ)被控訴人BとA栃木とは,平成11年3月23日,前記4(5)のとおり,A栃木がウ及びカ各貸付金債権に係る連帯保証債務を負うことを確認する旨の本件和解契約を締結した。 控訴人イA埼玉が,平成元年4月3日,イ貸付金債権につき連帯保証の予約をした事(ア)実がないことは明らかで,存在しない事実を確認する本件調停は,何らの効力もなく,これによって連帯保証契約が成立することもない。 A栃木が,ウ貸付金債権につき平成元年12月18日,カ貸付金債権につき(イ)平成4年5月22日,それぞれ連帯保証予約契約を締結した事実がないことは明らかで,存在しない事実を確認する本件和解契約は,何らの効力もなく,これによって連帯保証契約が成立することもない。 争点2に係る当事者の主張(1)本件念書又は本件証の交付による連帯保証契約の効力(争点2ア)控訴人及び同補助参加人預金保険機構ア本件念書及び本件証については,A埼玉及びA栃木の理事会あるいは常任理(ア)事会の承認決議がなく,被控訴人らはこのことを知っていたか,知らなかったことに過失があるから,これらに基づく連帯保証契約は,その成立を認めることができるとしても,民法93条ただし書の類推適用により無効である。 法人の代表者が権限を濫用して代表行為を行い,相手方が代表者の意図を知(イ)- 10 -り,又は知り得べきであったときは,民法93条ただし書を ても,民法93条ただし書の類推適用により無効である。 法人の代表者が権限を濫用して代表行為を行い,相手方が代表者の意図を知(イ)- 10 -り,又は知り得べきであったときは,民法93条ただし書を類推して法人はその行為につき責めに任じないと解されている(最判昭和38年9月5日第一小法廷判決・民集17巻8号909頁,最判昭和42年4月20日第一小法廷判決・民集21巻3号741頁)。本件において,連帯保証契約が成立したと認められるとしても,次のとおり控訴人の理事長の権限濫用行為があり,これにつき被控訴人らは知っていたか,又は少なくとも容易に知り得たのであるから,控訴人は,同契約に基づく保証責任を負わない。 法令違反a本件念書及び本件証が作成された当時,A信組は,協同組合による金融事業に関する法律(平成4年法律第87号による改正前のもの。 )6条によって同一協金法人に対する信用供与額が制限されており,また,中小企業等協同組合法(昭和63年法律第77号による改正前のもの)9条の8第2項6号によって代理貸付の場合以外に保証を行うことが禁止されていた。A埼玉及びA栃木が本件貸付金債権の保証を行うことはこれらの法律の規定に違反する行為である。 内部手続違反b本件貸付金債権の保証については,債務者からの保証委託もなく,保証料の徴求もされていない。しかも,求償権に係る担保の設定もされていない上,保証債務の会計帳簿への記帳すらされていない。簿外の債務保証,無担保による債務保証は,大蔵省通達(昭和52年1月25日蔵銀152号)により禁止されていた行為である。 被控訴人らイ(ア)朝信被控訴人らとA埼玉及びA栃木との間には,在日本朝鮮信用組合協会()の指導により,A埼玉及びA栃木は自らが紹介したすべての融資案件について協連帯保証をするという合 。 被控訴人らイ(ア)朝信被控訴人らとA埼玉及びA栃木との間には,在日本朝鮮信用組合協会()の指導により,A埼玉及びA栃木は自らが紹介したすべての融資案件について協連帯保証をするという合意が既に存在していた。したがって,A埼玉又はA栃木が被控訴人らに対して本件念書又は本件証を交付したときには,連帯保証債務を負担することにつき事前に内部的な手続で承認がされていたと解するのが相当であり,- 11 -常任理事会の議事録が存在しないことをもって連帯保証契約の効力を否定することはできない。 連帯保証契約の締結につき理事会の決議を要するとしても,本件常任理事会(イ)の決議は,実質的に理事会の決議と同視し得るものである。また,A埼玉及びA栃木は,自ら本件念書,本件証,本件保証書及び本件議事録を差し入れておきながら,理事会決議が存在しないことを理由に連帯保証契約の無効を主張するのは信義則ないし禁反言の原則に反し許されない。 (2)本件保証書及び本件議事録の交付による連帯保証契約の効力(争点2イ)控訴人及び同補助参加人預金保険機構ア本件保証書は,本件貸付金債権に係る保証債務を発生させるのではなく,被(ア)控訴人らが融資を受けている一般市中銀行に対して被控訴人らの経営状況に不安がないことを示すために作成するという共通の認識のもとに作成されたものであり,本件保証書の交付によってされた合意は,通謀虚偽表示として民法94条1項により無効である。 A信組の業務の執行は,理事会が決することであり(中小企業等協同組合法(イ)(平成9年法律第72号による改正前のもの。 )36条の2),業務の中で中企法も多額の借財を行うことは,理事会自らが決しなければならない事項である(商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。 )260条2項の類推適用)。 前のもの。 )36条の2),業務の中で中企法も多額の借財を行うことは,理事会自らが決しなければならない事項である(商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。 )260条2項の類推適用)。 商法本件貸付金債権につき連帯保証を行うことは,多額の借財に該当し,理事会による承認決議がない以上,連帯保証契約は無効であり,被控訴人らは理事会の承認決議がされていないことについて悪意又は重過失があるから,控訴人は,連帯保証契約が無効であることを被控訴人らに対抗することができる。 連帯保証契約は,専ら被控訴人らの利益を図り,A埼玉及びA栃木に損失を(ウ)与える内容であることが明らかである。しかも,本件保証書が作成された当時,A信組は,前記(1)ア(イ)aのとおり,協金法6条によって同一人に対する信用供与額が制限されており,また,中小企業等協同組合法(平成4年法律第87号に- 12 -よる改正前のもの)9条の8第2項6号によって組合員のための債務保証以外の保証を行うことが禁止されていた。A埼玉及びA栃木が本件貸付金債権の保証を行うことはこれらの法律に違反する行為であり,また,簿外の債務保証,無担保による債務保証が内部手続違反であることは,前記(1)ア(イ)bのとおりである。このような事情に加え,平成9年4月当時,A埼玉及びA栃木の財務状況は悪化し,主債務者の信用状況も悪化していたのであるから,本件連帯保証契約を締結することは,A埼玉及びA栃木の各理事長の権限濫用行為であり,A埼玉及びA栃木に対する背信行為である。そして,このことにつき被控訴人らは知っていたか又は少なくとも容易に知り得たのであるから,仮に本件連帯保証契約が成立したと認められるとしても,控訴人は,同契約に基づく保証責任を負わない。 協金法6条による信用供与額の規制に違反する行為に対 いたか又は少なくとも容易に知り得たのであるから,仮に本件連帯保証契約が成立したと認められるとしても,控訴人は,同契約に基づく保証責任を負わない。 協金法6条による信用供与額の規制に違反する行為に対しては直接の罰則が(エ)ないものの,金融事業を営む信用組合は,同条において準用されている銀行法第4章所定の業務停止・解散命令等の各種監督に服しており,この監督に違反した場合には懲役刑を含む罰則があるまで規定されていること,被控訴人らは,出資及び人的交流を含めて各A信組と極めて密接な関係にあり,取引に対する信頼を保護しなければならない第三者とは全く異なる立場にあること,現今の社会情勢においては金融業務の健全確保,預金者等の利益保護,金融システムに対する一般の信用の維持が重要視されていることから,本件連帯保証契約は,公序良俗に反する無効な行為というべきである。 被控訴人らイ各A信組の総代会決議により定められた規約である融資審査規程(甲26)の第1節3条において「常任理事会は,貸出審査業務における最終決定機関であり,構成員(常任理事)の合議によりその可否を決定する。」と定められており,本件連帯保証契約の締結を含む貸出審査業務については,常任理事会に権限が与えられているから,本件保証書の作成・交付につき常任理事会の決議がある本件連帯保証契約は有効に締結された。理事会決議が存在しないことは,本件連帯保証契約の無効- 13 -事由にならない。商法260条2項は,中企法において準用されていない。 (3)本件調停又は本件和解契約において確認された連帯保証契約の効力(争点2ウ)控訴人及び同補助参加人預金保険機構ア本件調停及び本件和解契約で確認された連帯保証の予約契約が締結されてい(ア)たとしても,同契約の締結につき理事会及び常任理事会の承認決議がさ 力(争点2ウ)控訴人及び同補助参加人預金保険機構ア本件調停及び本件和解契約で確認された連帯保証の予約契約が締結されてい(ア)たとしても,同契約の締結につき理事会及び常任理事会の承認決議がされておらず,このことを被控訴人らは知っていたから,連帯保証予約契約及びそれに基づく連帯保証契約は効力を生じない。 本件調停の成立及び本件和解契約の締結については,前記(2)ア(ウ)と(イ)同様の事情があるほか,その当時,経営状態が悪化し,巨額の経常損失を計上する状況にあったA埼玉及びA栃木が,主債務者がいずれも破綻状態であった本件各貸付金債権の保証をしたならばA埼玉ら自身の破綻が必至という状況下にあったこと,A信組は,平成11年4月,全国一斉に被控訴人らに対して合計約160億円の支払を行い,同年5月,支払を行ったA信組のすべてが破綻している事実に照らせば,本件調停及び本件和解契約は,A埼玉及びA栃木が公的管理下に入る前に公的資金を獲得することをねらって行われたもので,A埼玉及びA栃木の理事長の権限濫用行為であることが明らかである。そして,被控訴人らは,これらのことを確知していたか,又は少なくとも容易に知り得たのであるから,仮に本件調停及び本件和解契約が成立したと認められるとしても,控訴人は,同契約に基づく保証責任を負わないし,本件和解契約締結前の事情に基づき,本件連帯保証契約の無効等を主張することを妨げられない。 被控訴人らイ前記(2)イと同じ。 主債務の消滅時効に係る当事者の主張(争点3)(1)イ貸付金債権控訴人ア- 14 -一個の債権の一部についてのみ判決を求める趣旨を明らかにして訴えを提起した場合,訴え提起による消滅時効中断の効力は,その一部についてのみ生じ,残部には及ばない(最高裁昭和34年2月20日第二小法廷判決・民 債権の一部についてのみ判決を求める趣旨を明らかにして訴えを提起した場合,訴え提起による消滅時効中断の効力は,その一部についてのみ生じ,残部には及ばない(最高裁昭和34年2月20日第二小法廷判決・民集13巻2号209頁)。この理は調停申立の場合にも適用されると解すべきである。 被控訴人Aファイナンスは,平成11年1月20日,A埼玉を相手方として,イ貸付金債権につき元本の一部1000万円の支払を求める旨の調停の申立てをした。 したがって,イ貸付金債権の残余については,被控訴人AファイナンスがKから最後の弁済を受けた平成6年12月30日の翌日から5年を経過した平成11年12月31日をもって消滅時効が完成した。控訴人は,平成17年5月30日(第1回口頭弁論期日),被控訴人Aファイナンスに対し,時効を援用する旨の意思表示をした。 被控訴人Aファイナンスイイ貸付金債権については,上記調停の申立てにより消滅時効は中断した。同調停申立ての趣旨は,元本の一部1000万円の支払を求めるものであるが,成立した調停調書においては,同貸付金債権の元本及び遅延損害金全額につき支払義務の確認がされているのであるから,被控訴人Aファイナンスは,A埼玉に対し,イ貸付金債権全額について支払を請求したというべきであり,仮にそうでないとしても,少なくとも黙示的に請求の拡張を行ったと解すべきである。 (2)カ貸付金債権控訴人アカ貸付金債権に係る最終弁済日は,平成9年10月24日である。したがって,その5年後である平成14年10月24日の経過をもって消滅時効が完成した。控訴人は,平成16年6月15日(原審第10回弁論準備手続期日),被控訴人Bに対し,時効を援用する旨の意思表示をした。 被控訴人Bは,Eが平成12年10月13日に債務承認をしたので時効は中断したとして,同日を作 成16年6月15日(原審第10回弁論準備手続期日),被控訴人Bに対し,時効を援用する旨の意思表示をした。 被控訴人Bは,Eが平成12年10月13日に債務承認をしたので時効は中断したとして,同日を作成日とする甲第79号証を提出した。しかし,同書証は,①本- 15 -件訴訟提起から1年半以上経過した平成16年6月15日(原審第10回弁論準備手続期日)において提出されたもので,その時まで提出されなかったこと自体が不自然であること,②同書証は,形式,文言及び内容において,被控訴人Bが他の融資先から徴求した債務承認書(甲2の6,4の6,5の6,78等)と全く異なっていることに照らし,上記作成日に作成されたものではない。 被控訴人BイEは,平成12年10月13日,カ貸付金債権に係る残元金及び遅延損害金の支払義務のあることを承認し,債務承認書(甲79)を作成し,被控訴人Bに交付した。よって,カ貸付金債権については,同日,消滅時効は中断した。 第3当裁判所の判断 本件念書及び本件証の交付による連帯保証契約の成立(争点1ア)本件念書及び本件証の内容は,前記前提事実(第2の4(2))のとおりで(1)あって,いずれも保証債務を負担する旨の文言の記載はなく,保証意思が表明されていると認めることはできない。本件念書及び本件証の作成者であるA埼玉及びA栃木はもとより,被控訴人らの担当者も金融業務に従事しており金融に関する法律知識を十分備えていたことは自明のことであるから,本件念書及び本件証の交付によって,A埼玉及びA栃木と被控訴人らとの間において,本件貸付金債権に係る連帯保証契約が成立したことを認めることは到底できない。A埼玉及びA栃木において,本件念書及び本件証の作成・交付につき常任理事会の承認決議すらされておらず,会計帳簿に連帯保証契約により発生す に係る連帯保証契約が成立したことを認めることは到底できない。A埼玉及びA栃木において,本件念書及び本件証の作成・交付につき常任理事会の承認決議すらされておらず,会計帳簿に連帯保証契約により発生する保証債務の記載もないこと(弁論の全趣旨)は,当該連帯保証契約が成立していないことを裏付けるものである。 被控訴人らは,各A信組と被控訴人らとの間には,朝信協の指導により,A(2)信組が紹介した融資先については,すべてA信組が保証を行うという合意が既に成立しており,保証債務を負担することにつき,事前に内部的な手続で承認がされていたと解するのが相当であり,常任理事会の議事録が存在しないことをもって保証契約の効力を否定することはできないと主張する。 - 16 -しかし,A信組と被控訴人らとの間において,被控訴人らの主張する合意が事前に成立したと認めるべき的確な証拠はなく,また,当該合意につき理事会の決議がされたことを認めることができない以上,合意としての効力を認めることはできず,被控訴人らの主張は前記認定を左右しない。 なお,証拠(甲24,27,28。枝番号のあるものを含む。)によれば,本件念書又は本件証と同様の書類を交付したA信組が,その後,債務者に対して被控訴人らに対する弁済のための資金を融資したり,被控訴人らに対して債務者の債務を弁済していることが認められる。しかし,それは,当該A信組と被控訴人らとの密接な関係を背景にした何らかの協議に基づくものと推認するのが相当であり,そのこと自体が当該A信組の理事長らの背任となる可能性のあることを措くとしても,上記弁済等がされた事実によって,上記認定が左右されるものではない。 以上によれば,争点2以下の当否を判断するまでもなく,本件念書又は本件証の交付に基づき連帯保証債務の履行を求める請求は,理由がない。 上記弁済等がされた事実によって,上記認定が左右されるものではない。 以上によれば,争点2以下の当否を判断するまでもなく,本件念書又は本件証の交付に基づき連帯保証債務の履行を求める請求は,理由がない。 本件保証書及び本件議事録の交付による連帯保証契約の成立(争点1イ)本件保証書には,前記前提事実(第2の4(3))のとおり,被控訴人らの(1)融資先に対する各貸付金債権につき連帯保証をする旨の記載があり,これによって本件貸付金債権につき連帯保証契約()が締結されたこと及び本本件連帯保証契約件議事録により,同契約に係る常任理事会の決議がされことを認めることができる。 控訴人は,本件貸付金債権につき連帯保証をすることは,多額の借財に当た(2)り,商法260条2項の類推適用により理事会の決議事項であるから,理事会の承認決議がない本件連帯保証契約は効力がない旨主張する。 しかし,中企法は,商法260条2項を準用しておらず,理事会の権限は,法令が特に理事会の決議事項であると定めたものを除き,定款又は理事会の決議で代表理事に委任することができるし(最高裁昭和40年9月22日大法廷判決・民集19巻6号1656頁),常任理事会に委任することも許されると解すべきである。 そして,各A信組の総代会決議によって定められた融資審査規程(甲26)第1- 17 -節3条は「常任理事会は,貸出審査業務における最終決定機関であり,構成員(常任理事)の合議によりその可否を決定する。」と定めており,金融機関における「貸出」には保証をすることも含まれると解するのが相当であるから,A信組においては,保証契約の締結に係る決定権限は常任理事会に与えられており,理事会決議が存在しないことは本件連帯保証契約の無効事由にはならないというべきである。 本件調停又は本件和解契約において 信組においては,保証契約の締結に係る決定権限は常任理事会に与えられており,理事会決議が存在しないことは本件連帯保証契約の無効事由にはならないというべきである。 本件調停又は本件和解契約において確認された連帯保証契約の成立(争点1ウ)本件念書及び本件証の内容は,前記前提事実(第2の4(2))のとおりであって,前記1で説示したと同様の理由で,いずれも連帯保証の予約契約を締結する意思が表明されていると認めることはできず,争点2以下の当否を判断するまでもなく,本件調停又は本件和解契約において確認された連帯保証の予約契約及び予約完結権行使に基づき連帯保証債務の履行を求める請求は理由がない。 本件保証書及び本件議事録の交付による本件連帯保証契約の効力(争点2イ)前記前提事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認め(1)られる。 ア主債務者による弁済Kは,イ貸付金債権(平成元年3月28日貸付。2億円。元利均等払い)に(ア)つき,平成元年10月から分割弁済金の支払を始め,約定に基づき平成4年9月まで月額約60万円前後が元本に充当される支払をしたが,その後元本の返済をせず,平成6年12月まで利息の支払をしただけであり,平成4年10月時点で期限の利益を喪失したというべき筋合いである。そして,Kは,本件連帯保証契約が締結された平成9年4月初旬現在で約4年6か月,本件調停が成立した平成11年2月現在で約5年の間,イ貸付金債権(元本残高約1億7676万円)に係る支払を遅滞していた。(甲2の1ないし6)また,D(Kが代表取締役)は,エ貸付金債権(平成2年7月16日貸付。3億- 18 -円。平成4年7月13日一括弁済)及びオ貸付金債権(同年9月14日貸付。2億5000万円。平成4年9月13日一括弁済)につき,平成6年12月までエ 付金債権(平成2年7月16日貸付。3億- 18 -円。平成4年7月13日一括弁済)及びオ貸付金債権(同年9月14日貸付。2億5000万円。平成4年9月13日一括弁済)につき,平成6年12月までエ及びオ各貸付金債権に係るそれぞれ月額約20万円前後の利息の支払を間欠的に行っただけで,返済期限における支払を怠り,その後,エ貸付金債権につき平成7年1月に一部弁済をしただけで,平成9年4月初旬現在,4年9か月以上,平成11年2月現在,5年7か月以上の間,エ及びオ各貸付金債権(元本残高合計2億8500万円)に係る支払を遅滞していた。(甲4の1及び5,同5の1及び5)Cは,ウ貸付金債権(平成元年12月18日貸付。5億円。元利均等払い)(イ)につき,平成2年6月から平成6年3月まで月額約50万円前後が元本に充当される支払をしたが,同年4月以降平成10年5月までは利息の支払しかしておらず,平成6年4月時点で期限の利益を喪失したというべき筋合いである。そして,Cは,平成9年4月初めころの時点で,既に約3年,平成11年3月現在,約3年11か月の間,ウ貸付金債権(元本残額約4億7237万円)に係る支払を遅滞していた。 (甲3の1ないし6)Eは,カ貸付金債権(平成4年5月22日貸付。3億5000万円。元利均(ウ)等払い)につき,平成4年11月から平成7年6月までほぼ約定に従った支払をしたが,その後,平成9年3月までの間は月額約18万円の利息の支払をしたのみで,平成7年7月時点で期限の利益を喪失したというべき筋合いである。そして,Eは,平成9年4月初旬現在,約1年9か月の間,カ貸付金債権(元本残額約3億2765万円)に係る元本の支払を怠っていた。Eは,その後,平成9年4月から同年10月までの元利金の支払をしたが,同年11月以降元利金の支払を怠り,平成11 9か月の間,カ貸付金債権(元本残額約3億2765万円)に係る元本の支払を怠っていた。Eは,その後,平成9年4月から同年10月までの元利金の支払をしたが,同年11月以降元利金の支払を怠り,平成11年3月現在の未払残元本額は約3億2000万円となっており,平成12年には,Eの所有不動産上の抵当権が株式会社足利銀行の申立てにより実行された。また,Eは,平成7年の法人県民税及び不動産取得税のほか,平成8年以降の固定資産税の支払もしていない。(甲6の1ないし5)当事者に関する事情イ- 19 -控訴人は,組合員に対する融資等の事業を行うことを目的として中小企業等(ア)協同組合法に基づき全国各都道府県に設立された朝鮮民主主義人民共和国出身者らに対する融資等を目的とする信用組合の一つとして設立され(昭和27年6月20日設立当時の名称は,「H信用組合」),平成11年10月25日,同様の信用組合であるA埼玉(昭和33年7月3日設立)及びA栃木(昭和40年1月11日設立)等関東地域のA信組を吸収合併し,平成13年8月24日に金融再生法に基づき金融再生委員会により破綻認定を受けた金融機関であり,全国のA信組を会員とし,A信組の統一的な発展及び共同体制の強化を図ることによって,A信組の組合員の経済的地位の向上に寄与することを目的として昭和28年11月23日に設立された朝信協(平成12年3月解散)の会員であった。(乙8の1及び2,同9,18,丙3,4,5)被控訴人Aファイナンスは,昭和62年9月22日,抵当証券による融資業(イ)務を目的として全国のA信組が株主となって設立した株式会社であり,被控訴人Bは,昭和63年6月2日,貸金業等を目的としてA信組及び朝信協の理事らが株主となって設立した株式会社である。 我が国において,後にいわゆるバブル経済と称せ 主となって設立した株式会社であり,被控訴人Bは,昭和63年6月2日,貸金業等を目的としてA信組及び朝信協の理事らが株主となって設立した株式会社である。 我が国において,後にいわゆるバブル経済と称せられる経済情勢の下で,全(ウ)国のA信組の組合員からの資金需要が高まっていた昭和62年ころ,中小企業等協同組合法に基づき設立されたA信組は,組合員の相互扶助を目的とする閉鎖的な金融機関としての性格上,法令,通達等により組合員に対する長期・多額の信用供与を行うことが制限されており,組合員の資金需要に応えることが困難であるため,同需要に応えることを目的として朝信協の主導の下に被控訴人らが設立された。 (甲9の1及び2,同107の1及び2)Tは,平成元年12月から被控訴人Aファイナンスの取締役(平成9年6月(エ)辞任),平成8年5月から代表取締役(同前時期辞任)に就任していたほか,昭和63年4月から平成5年4月までA愛知の理事長,平成元年12月から平成10年6月まで朝信協の副会長又は会長に就任しており,本件保証書が交付された平成9- 20 -年4月当時は,被控訴人Aファイナンスの代表取締役と朝信協の会長を兼任していた。 Vは,昭和35年にA神奈川に採用された後,朝信協の関連会社の株式会社I計算センター副社長を経て,昭和62年9月(設立時)から被控訴人Aファイナンスの取締役(平成9年6月辞任),平成6年6月から被控訴人Bの取締役,本件保証書が交付された平成9年4月当時は,その代表取締役に就任していた。 また,Wは,昭和41年6月にA大阪に採用された後,平成元年5月,A兵庫常務理事,平成9年6月,被控訴人Aファイナンスの代表取締役に就任し,平成11年2月(本件調停及び本件和解契約の成立)当時,被控訴人Bの代表取締役を兼務しており,平成11年6月にA 元年5月,A兵庫常務理事,平成9年6月,被控訴人Aファイナンスの代表取締役に就任し,平成11年2月(本件調停及び本件和解契約の成立)当時,被控訴人Bの代表取締役を兼務しており,平成11年6月にA香川理事長に就任する等した。 これらの事例を含め,被控訴人らの役員の大部分は,設立当初からA信組及び朝信協の役職員経験者らであった。(甲70ないし74,乙1ないし7,14,15,丙6ないし8(枝番号のあるものを含む。))被控訴人らとA埼玉及びA栃木との間における本件連帯保証契約は,上記の(2)とおり,本件貸付金債権に係る主債務者が既に長期間にわたり支払を怠っている時期に締結され,長期間にわたる不払の事実に加え,主債務者の事業内容,残債権額等を考慮すると,当時,容易に主債務者の事業が回復し,債権回収が順調に行われると認め得る事情は見当たらない。本件連帯保証契約は,主債務者らから保証委託を受けて締結されたものでもなく,保証料の支払がされたことも,求償債権に係る担保の設定を受けたことも窺うことができないことを総合考慮すると,A埼玉及びA栃木の理事長が専ら被控訴人らの利益を図るためにした行為であるといわざるを得ず,また,被控訴人らの代表者らが被控訴人らの融資先である本件貸付金債権に係る主債務者の上記弁済状況等を認識していたことは明白であるから,被控訴人らとA埼玉及びA栃木の理事,理事長らとの間に朝信協等を介した密接な人事上の関係が存在することをも考え併せると,被控訴人らはA埼玉及びA栃木の理事長の上記意図を知っていたか,又は容易に知ることができたと認めるのが相当である。 - 21 -以上に認定した事情の下においては,民法93条ただし書の規定を類推して,A埼玉及びA栃木は,その理事長の締結した本件連帯保証契約上の責任を負担しないと解するのが相当である 相当である。 - 21 -以上に認定した事情の下においては,民法93条ただし書の規定を類推して,A埼玉及びA栃木は,その理事長の締結した本件連帯保証契約上の責任を負担しないと解するのが相当である(最高裁昭和38年9月5日第一小法廷判決・民集17巻8号909頁,最高裁昭和42年4月20日第一小法廷判決・民集21巻3号697頁参照)。 以上によれば,本件保証書及び本件議事録の交付による連帯保証契約の成立 に基づく被控訴人らの請求は,その余の主張につき判断するまでもなく,理由がない。 なお,被控訴人Aファイナンスの本件調停において確認されたイ貸付金債権に係る連帯保証債務の履行を求める請求に係る主張(当審において追加された。)は,前提事実(第2の4(4))のとおり債務名義となる調停証書が作成されており,同請求に係る訴えの利益にも疑義があるが,上記に説示の限度で判断すれば足り,請求の趣旨の追加がされてもいないことをも踏まえると,これを主文に掲げる必要はないものと解する。 また,被控訴人Bの主張する本件和解契約は,その成立を認め得るとしても,上記4(1)において認定した事実経過の下では,本件連帯保証契約と同様,A栃木の理事長が専ら被控訴人Bの利益を図る意図のもとに行った行為であるといわざるを得ず,被控訴人Bの代表者はA栃木の理事長の上記意図を知っていたか,又は容易に知ることができたというべきであり,民法93条ただし書の規定の類推により,同被控訴人は,上記4(2)において説示したのと同様の理由により,A栃木に対し,本件和解契約に基づく請求をすることができないと解すべきである。 まとめ 以上によれば,被控訴人らの控訴人に対する請求はいずれも理由がない。 第4 結論 よって,当裁判所の上記判断と異なる原判決は一部不当であり,本件控訴は理由があるから ないと解すべきである。 まとめ 以上によれば,被控訴人らの控訴人に対する請求はいずれも理由がない。 第4 結論 よって,当裁判所の上記判断と異なる原判決は一部不当であり,本件控訴は理由があるから,原判決中控訴人敗訴部分を取り消し,同取消部分に係る被控訴人らの- 22 -請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第1民事部裁判長裁判官江見弘武裁判官植垣勝裕裁判官岩井伸晃
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