【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人中井宗夫上告趣意第一点について。 原判決認定の事実中被告人が昭和二二年七月二四日占領軍用物資である真空管約 三百
主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人中井宗夫上告趣意第一点について。 原判決認定の事実中被告人が昭和二二年七月二四日占領軍用物資である真空管約三百個を、同月二七日同真空管約四百個をそれぞれ不法に所持した点は、一九四六年二月一九日連合国最高司令部発日本政府宛覚書「刑事裁判権の行使」に関する件の第二項C(占領軍又はその凡ての兵員又は占領軍に所属若くは随伴する凡ての者の財産を権限なしに所持、取得、受領又は処分する行為)に基き発せられた昭和二一年六月一二日勅令三一一号第一条第四号(連合国占領軍、その将兵又は連合国占領軍に附属し、若しくは随伴する者の財産を不法に所持し、取得し、受領し、又は処分する行為)に該当することは所論のとおりである。 しかし、一九四七年(昭和二二年)六月二七日附連合国最高司令部発日本政府宛「刑事裁判権の行使」の修正に関する覚書により同日司令部から日本政府に対し「(1)右一九四六年二月一九日附覚書の第二項Cを削除する。(2)占領軍若しくはそのすべての兵員、又は占領軍に所属若しくは随伴する凡ての者の財産を正当の権限なしに所持、取得、受領又は処分することを禁止する。(3)上記第二項の違反は、一九四六年六月一二日の勅令第三一一号の規定によつて訴追する。(4)この覚書の内容に牴触する一切の法律規定はこれに従つて修正することを要する。」旨の指令が発せられた。従つて前記一九六四年二月一九日附覚書第二項Cは、昭和二二年六月二七日附修正覚書を以て削除され、当該行為に対する日本裁判所の刑事裁判権の行使の制限は解除されると共に同指令第二項の違反行為は、同日より右指令第四項並びに前記勅令三一一号第四条第三項に基き日本政府が法律規定を修正して特別の法令を発する迄は(その特別法令は昭和二二年八月二五日 の制限は解除されると共に同指令第二項の違反行為は、同日より右指令第四項並びに前記勅令三一一号第四条第三項に基き日本政府が法律規定を修正して特別の法令を発する迄は(その特別法令は昭和二二年八月二五日公布施行された- 1 -政令一六五号及び一六六号である)前記勅令三一一号第二条第三項にいわゆる「連合国最高司令官の日本帝国政府に対する指令の趣旨に反する行為」であつて、同令第四条の「占領目的に有害な行為をした者」に該当するものといわなければならない。 しかるに、所論は、一九四七年六月二七日の覚書は、日本政府に対する指令であつて、直に日本国民を拘束するものではないと主張する。しかし、前記勅令三一一号第二条第三項は、連合国最高司令官の日本帝国政府に対する指令の趣旨に反する行為は、同令にいわゆる占領目的に有害な行為であると定義し、同令第四条は、一般的に占領目的に有害な行為をした者は、すべて所定の刑罰に処する旨規定しているから、右覚書による指令は、日本政府に対する指令ではあるが、その指令の趣旨に反する行為については、日本国民は右勅令四条によつて処罰を免れないものといわなければならない。されば前記被告人の同年七月二四日及び翌二五日の不法所持は、右昭和二二年六月二七日より同年八月二四日までの期間内における占領目的に有害な行為というべく、従つて、わが国の裁判権に属すること明らかである。 また、所論は、前記勅令第三一一号第一条第四号の不法所持については同条により公訴を行うことができないものであると主張する。右勅令第一条第四号は昭和二二年八月二五日政令第一六六号により削除されたのであるから、同号に該当する罪の公訴は、同日以後初めてこれを行うことができるに至つたものと解するを相当とする、しかし、前述のごとく本件の不法所持は前記修正覚書が発せられた後にその趣 より削除されたのであるから、同号に該当する罪の公訴は、同日以後初めてこれを行うことができるに至つたものと解するを相当とする、しかし、前述のごとく本件の不法所持は前記修正覚書が発せられた後にその趣旨に反して行われたものであつて前記勅令三一一号第二条第三項により占領目的に有害な行為である。そして、右第一条は、単に公訴の提起を制限するに過ぎないもので、前記のように既に成立した不法所持の罪に対する公訴権を失わしめるものではないから、前述のごとく公訴の制限が右政令一六六号によつて削除された同年八月二五日以後においては有効に公訴を提起するを妨げないものであること論を俟- 2 -たない。そして、本件公訴は、同年九月一六日横浜地方裁判所に提起されたものであること記録上明らかであるから、本件公訴を目して不適法ということはできない、それ故論旨は採ることができない。 同第二点について。 所論は判示物品が進駐軍所有に係るものであるかどうかについて原裁判所は審理を尽していない違法を犯しているというのてあるが、原判示事実の認定は原判決挙示の証拠に照してたやすくこれを肯認することができ、その間反経験則等の違法はなく、従つて原判決には所論の違法は存しない。所論は結局事実審たる原裁判所の裁量に属する事実認定を非難するに帰し上告適法の理由とならぬ。 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見である。 検察官安平政吉関与昭和二五年七月一三日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官沢田竹治郎裁判官真野毅裁判官斎藤悠輔裁判官岩松三 竹治郎裁判官真野毅裁判官斎藤悠輔裁判官岩松三郎- 3 -
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