令和3(ワ)10959 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月30日 大阪地方裁判所
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判決文本文24,867 文字)

1主文1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求5被告は、原告に対し、200万円及びこれに対する平成30年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 原告は、大阪市情報公開条例(平成13年大阪市条例第3号。以下「情報公開条例」という。)5条に基づき、「a市長が大阪市の職員(特別職も含む)10と一対一で送受信したメール一切(平成24年11月17日~同年12月17日)」(ただし、被告において公文書として取り扱っていないものに限る。以下「本件文書」という。)の公開請求(以下「本件公開請求」という。)をした。これに対し、大阪市長は、上記メールは、二人の間の送受信にとどまるものであり、組織共用の実態を備えておらず、公文書に該当しないとして、本件15文書を非公開とする旨の決定(以下「本件非公開決定」という。)をした。そこで、原告は、大阪市長に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を経て、本件非公開決定の取消し等を求める訴え(以下「別件訴訟」という。)を提起したところ、本件文書の一部に公文書が含まれているとして、同決定を取り消す旨の判決が言い渡され、確定した。その後、大阪市長は、本20件文書の存否について調査したが不存在であったとして、本件文書が実際に存在しないことを理由に、改めて本件文書を非公開とする旨の決定(以下「本件再非公開決定」という。)をした。 本件は、原告が、本件公開請求時及び本件異議申立て時(以下「本件公開請求時等」という。)には本件文書が存在していたにもかかわらず、大阪市長や25被告の職員(以下、単に「職員」という。)がこれを調査・保存することなく 2消去・廃棄したこ 以下「本件公開請求時等」という。)には本件文書が存在していたにもかかわらず、大阪市長や25被告の職員(以下、単に「職員」という。)がこれを調査・保存することなく 2消去・廃棄したことは国家賠償法上違法であり、これにより精神的苦痛を受けたなどと主張して、同法1条1項に基づき、被告に対し、慰謝料等合計200万円及びこれに対する平成30年12月25日(本件再非公開決定の日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 52 本判決においては、略語として、電子メールのことを単に「メール」といい、大阪市長が庁内メールを利用して送信又は受信したメールを包括して「市長メール」という。また、メールが転送された場合、転送元のメールを「転送元メール」といい、これを引用して転送したメールを「転送メール」という。 また、市長メールのうち大阪市長と職員が一対一で送受信したメールのこと10を「一対一メール」といい、一対一メールのうち被告において本件非公開決定当時公文書として取り扱っていたものを「組織共用一対一メール」といい、一対一メールから組織共用一対一メールを除いたもの(被告において公文書として取り扱っていなかったもの)を「真正一対一メール」という(ただし、一対一メールが転送された場合の転送元メールが真正一対一メールに該当するか否15かには争いがある。)。そして、本件公開請求において原告が公開を求めた本件文書は、真正一対一メールのうち平成24年11月17日から同年12月17日まで(以下「本件対象期間」という。)に送受信されたものであり、本件文書のうち別件訴訟の控訴審判決において公文書と判断されたもの(職務上の指示、報告等に利用されたもの)を「公開対象一対一メ 月17日まで(以下「本件対象期間」という。)に送受信されたものであり、本件文書のうち別件訴訟の控訴審判決において公文書と判断されたもの(職務上の指示、報告等に利用されたもの)を「公開対象一対一メール」という。 203 関係法令等の定め(1) 情報公開条例(甲1)情報公開条例2条2項本文は、同条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有して25いるものをいう旨規定する。 3(2) 大阪市公文書管理条例(平成18年大阪市条例第15号。以下「公文書管理条例」という。甲12)ア 公文書管理条例6条2項は、大阪市の機関は、同条1項の規定により編集された公文書の保存期間が満了するまでの間、その内容、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所にお5いて、識別を容易にするための措置を講じた上で当該公文書を保存しなければならない旨規定する。 イ 公文書管理条例6条3項は、公文書の保存期間は、同条例別表の左欄に掲げる公文書の区分に応じ、同表の右欄に定める期間とする旨規定し、同条例別表は、重要な報告等に関するものについては10年、報告等に関す10るものについては3年、報告等に関する軽易なものについては1年、その他の公文書については事務処理上必要な1年未満の期間などと定めている。 ウ 公文書管理条例6条6項は、大阪市の機関は、保存期間が満了した公文書について、職務の遂行上必要があると認めるときは、一定の期間を定めて当該保存期間を延長するものとする旨、この場合において、当該延長に15係る保存期間が満了した後なお職務の遂行上当該公文書を保存する必要があると認 行上必要があると認めるときは、一定の期間を定めて当該保存期間を延長するものとする旨、この場合において、当該延長に15係る保存期間が満了した後なお職務の遂行上当該公文書を保存する必要があると認めるときも、同様とする旨規定する。 (3) 大阪市公文書管理規程(平成13年達第9号。甲14。以下「公文書管理規程」という。)ア 公文書管理規程38条1項は、保存期間が満了する公文書のうち同項各20号に掲げるものは、公文書管理条例6条6項の規定により保存期間を延長するものとする旨規定し、①現に監査、検査等の対象になっているもの(1号)、②現に係属している訴訟における手続上の行為をするために必要なもの(2号)、③現に係属している不服申立てにおける手続上の行為をするために必要なもの(不服申立てに対する裁決又は決定の日の翌日か25ら起算して1年を経過していないものを含む。)(3号)、④情報公開条 4例10条2項等の決定の日の翌日から起算して1年を経過していないもの(4号)、⑤前各号に掲げるもののほか、主管課長が職務の遂行上なお保管の必要があると認めるもの(5号)を掲げる。 イ 公文書管理規程40条2項は、保存期間が1年未満の公文書は、事務処理上必要でなくなった後主管課長が速やかにその性質に応じて適切に処分5しなければならない旨規定する。 4 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) メールアドレスの付与等被告は、庁内情報ネットワークを構築しており、庁内メールの使用等に供10するため、①大阪市長及び職員に対し、個人メールアドレス(以下「個人アドレス」という。)を一人につき一つ付与するほか、②各課ないしグループに対しても、その内部で共有して利用できる組織メ に供10するため、①大阪市長及び職員に対し、個人メールアドレス(以下「個人アドレス」という。)を一人につき一つ付与するほか、②各課ないしグループに対しても、その内部で共有して利用できる組織メールアドレスを付与している。 なお、本判決にいう「一対一メール」は、大阪市長と職員の双方が庁内メ15ールの個人アドレスを用いて送受信したメールだけではなく、その一方が庁内情報ネットワーク外の私的なメールアドレス(以下「外部アドレス」という。)を用いて送受信したものも含まれる。 (2) メールの保存場所等被告が管理するメールサーバ内には、各個人アドレスに対応するメールボ20ックスがあり、個人アドレスを利用して送受信されたメールは、送信者側においては送信済みメールとしてメールボックス(送信済みフォルダ)に保存され、受信者側においては受信メールとしてメールボックス(受信フォルダ)に保存される。 個人アドレスを利用して送受信されたメールは、メールサーバ内のメール25ボックスに自動的に保存されるが、大阪市長や職員がそれぞれ使用する庁内 5情報利用パソコンに自動的には保存されない(同パソコン内に保存するにはそのための操作が別途必要である。)。また、各個人アドレスに対応するメールボックス内の送受信メールは、大阪市長又は職員が自ら庁内情報利用パソコンを操作して消去することが可能であり、退職の場合を除き、メールボックス内のメールが自動的に消去されることはない。 5(3) 市長メールに係る専用フォルダの設置等(乙6)大阪市政策企画室長兼情報公開室長は、平成23年12月27日付けで、被告の各所属長に対し、「市長メールに係る専用フォルダの設置について(通知)」(以下「旧解釈通知」という。)を発出した。 旧解釈通知は、 策企画室長兼情報公開室長は、平成23年12月27日付けで、被告の各所属長に対し、「市長メールに係る専用フォルダの設置について(通知)」(以下「旧解釈通知」という。)を発出した。 旧解釈通知は、要旨、市長メールについて、公開請求等に円滑に対応する10ため、「市長メール(保存用)」という名の専用フォルダ(以下、そのメールアドレスを「公開用アドレス」という。)を設置して取り扱うこととしたこと、大阪市長又は職員が複数の職員に宛ててメールを送信する際には、専用フォルダ(公開用アドレス)にも同時送信してこれを登録すること、専用フォルダ内の市長メールの保存期間は登録後1年間とすること、市民等から15市長メールの公開請求があった際は、専用フォルダから対象となるメールを特定し、非公開情報を除いて公開することなどが記載されている。 そして、旧解釈通知においては、「組織共用メールの範囲」について、次のとおり記載されている(以下、一対一メールの保有形態により組織共用性を判断する被告の当時の解釈を「旧解釈」という。)。 20「●対象となるメール組織共用の実質を備えた状態で保有されている電子メール〇1対1メールのうち、・公用PCの共有フォルダで保有・プリントアウトしたものを当事者以外の職員が保有25〇1対1メールの内容が転送先の公用PCで保有 6〇1対多数のメール(同報メール、CC、BCC)」(4) 本件公開請求とその後の経緯ア 弁護士である原告は、平成25年4月18日、大阪市長に対し、情報公開条例5条に基づき、「a市長が大阪市の職員(特別職も含む)と一対一で送受信したメール一切(平成24年11月17日~同年12月17日)」5の公開を請求した(本 4月18日、大阪市長に対し、情報公開条例5条に基づき、「a市長が大阪市の職員(特別職も含む)と一対一で送受信したメール一切(平成24年11月17日~同年12月17日)」5の公開を請求した(本件公開請求)。 なお、原告は、後記ウの本件異議申立てにおいて、被告において公文書として保有されているもの(組織共用一対一メール)は本件公開請求の対象とはしない旨を明らかにした。(甲2、乙1)イ 大阪市長は、平成25年5月1日付けで、「上記請求にある一対一のメ10ールは、二人の間の送受信にとどまるものであり、組織共用の実態を備えておらず、公文書に該当しないため」として、本件文書を公開しない旨決定した(本件非公開決定。甲3)。 ウ 原告は、平成25年6月28日付けで、本件非公開決定を不服として、大阪市長に対し本件異議申立てをした。大阪市長は、同年8月15日付け15で、本件異議申立てにつき、大阪市情報公開審査会(以下「審査会」という。)に諮問した。(甲4、乙1)エ 審査会は、平成26年8月29日付けで、大阪市長に対し、「市長と職員の間で一対一で送受信されたメールについては、組織共用の実質がない」などとして、本件非公開決定は妥当であるとの答申(以下「本件答申」と20いう。)をした(乙1)。 オ 大阪市長は、本件答申を受けて、平成26年9月18日付けで、本件異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲4)(5) 別件訴訟の提起とその後の経緯ア 原告は、平成26年12月18日、大阪地方裁判所に本件非公開決定の25取消し等を求める訴え(別件訴訟)を提起したところ、同裁判所は、平成 728年9月9日、本件文書には公文書に該当するもの(確定した職務命令及び職務命令に基づく報告に利用されたもの)が含まれるとして、本件非公 (別件訴訟)を提起したところ、同裁判所は、平成 728年9月9日、本件文書には公文書に該当するもの(確定した職務命令及び職務命令に基づく報告に利用されたもの)が含まれるとして、本件非公開決定を取り消す旨の判決(甲5。以下「別件一審判決」という。)をした。 イ 被告は、平成28年9月21日、別件一審判決の敗訴部分を不服として5控訴を提起した。また、被告は、同年10月6日、本件文書の存否を調査したが、不存在であった。(甲6、乙2、3)ウ 大阪高等裁判所は、平成29年9月22日、本件文書の中には、「職務上の指示、報告等」(職務命令を含む職務上の指示、意見表明をしたり、逆に職務上の報告を受けたりするなど、職務上の指示、意見表明、報告等10の職務上の情報のやり取りをいう。以下同じ。)に利用されたもの(公開対象一対一メール)があると認められ、これは「組織的に用いるもの」として公文書に該当するとして、被告の控訴を棄却する旨の判決(甲6。以下「別件控訴審判決」という。)をした。 エ 被告は、平成29年10月4日、別件訴訟につき上告受理の申立てをし15たが、最高裁判所は、平成30年11月20日、上告審として受理しない旨の決定をした(甲7)。 (6) 本件再非公開決定等ア 被告は、平成30年12月4日、本件文書の存否を改めて調査したが、不存在であった(乙4、5)。 20イ 大阪市長は、平成30年12月25日付けで、本件文書が「実際に存在しない」ことを理由に、本件文書を公開しない旨決定した(本件再非公開決定。甲8)。 (7) 本件対象期間に送受信された一対一メール等ア bからの一対一メール25当時被告の特別顧問(特別職)であったbは、平成24年11月26 8日、同人の外部アドレスから、大阪市長 ) 本件対象期間に送受信された一対一メール等ア bからの一対一メール25当時被告の特別顧問(特別職)であったbは、平成24年11月26 8日、同人の外部アドレスから、大阪市長(当時)のa(以下「a氏」という。)の個人アドレスに、一対一メールとして、動物園の運営に関する改善点等を指摘する旨のメールを送信し、a氏は、同日、上記メールを複数の職員の個人アドレス及び公開用アドレスに転送するメールを送信した(甲11、22)。 5イ cからの一対一メール当時大阪市甲区長(特別職)であったcは、平成24年11月28日、同人の個人アドレスから、a氏の個人アドレスに、一対一メールとして、上記アのメールにて指摘された点を甲区でも採り入れたい旨のメール(以下、上記アの転送元メールと併せて「b転送元メール等」という。)10を送信し、a氏は、同月29日、上記メールを複数の職員の個人アドレス及び公開用アドレスに転送するメール(以下、上記アの転送メールと併せて「b転送メール等」という。)を送信した(甲9、10)。 5 争点(1) 争点1(本件公開請求時等における公開対象一対一メールの存否)15(2) 争点2(公文書該当性の解釈を誤り、保存期間の延長をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄した違法・過失)(3) 争点3(公文書に該当する可能性があったのに、保存の指示をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄した違法・過失)(4) 争点4(本件非公開決定の理由付記の違法・過失)20(5) 争点5(損害の有無及びその額)6 争点に対する当事者の主張原告の主張は別紙1「準備書面7」記載のとおりであり、被告の主張は別紙2「被告第9準備書面」及び別紙3「被告第10準備書面」記載のとおりであり、双方の主張の 額)6 争点に対する当事者の主張原告の主張は別紙1「準備書面7」記載のとおりであり、被告の主張は別紙2「被告第9準備書面」及び別紙3「被告第10準備書面」記載のとおりであり、双方の主張の骨子は以下のとおりである。 25(1) 争点1(本件公開請求時等における公開対象一対一メールの存否) 9(原告の主張)公開対象一対一メールが他の職員に転送された場合でも、その転送元メールは引き続き公開対象一対一メールに該当する。したがって、b転送元メール等は転送されても公開対象一対一メールであり、転送時点で実施機関(大阪市長)に保有されていたことは明らかである。そして、b5転送元メール等は、本件公開請求時等においても存在していたと推認される。 また、別件控訴審判決も認定しているように、本件公開請求時等において、b転送元メール等以外の公開対象一対一メールも存在したと推認される。 10(被告の主張)公開対象一対一メールが他の職員に転送された場合、その転送元メールは公開対象一対一メールに該当しない。したがって、b転送元メール等は、公開対象一対一メールに該当しない。 本件公開請求時等において、公開対象一対一メールが存在したことは立15証されていない。仮に公開対象一対一メールが本件公開請求時より前に作成・取得・保有されていたとしても、①当時は被告において公文書として扱われていなかったため削除された可能性が高く、実際に2度の調査では不存在という結果が出ていること、②職員のメールボックスの容量が制限されていたこと、③組織共用すべきものは公文書化するという20一対一メールの取扱いに係るルールが存在したこと、④仮に転送元メールが公文書(公開対象一対一メール)であったとしても、市長メールとして多くが公開されており、 用すべきものは公文書化するという20一対一メールの取扱いに係るルールが存在したこと、④仮に転送元メールが公文書(公開対象一対一メール)であったとしても、市長メールとして多くが公開されており、同内容のものなど保存期間が1年未満のものは公文書管理規程40条2項に基づき適法に削除可能であることから、本件公開請求時等には既に存在しなかった可能性が高い。 25(2) 争点2(公文書該当性の解釈を誤り、保存期間の延長をせず、公開対象一 10対一メールを消去・廃棄した違法・過失)(原告の主張)公開対象一対一メールは「公文書」であるから、被告は、大阪市長が本件非公開決定をした結果、公文書管理規程38条1項4号により、また、原告が本件異議申立てを行い、別件訴訟を提起した結果、同項2号、3号5及び5号により、公開対象一対一メールの保存期間について延長決定すべき義務があった。 それにもかかわらず、被告が公開対象一対一メールの公文書該当性の解釈を誤り、保存期間の延長をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄したことは、国家賠償法上違法であり、過失も認められる。 10(被告の主張)被告は、本件公開請求時、真正一対一メール(一対一メールのうち公文書として取り扱われていないメール)は公文書に該当しないとの旧解釈を採用しており、このような当時の解釈は、確立した判例がない中、取扱いが明確であり、過去の答申等からしても一定の合理性があった。よって、15公開対象一対一メールに公文書管理規程の適用はなく、被告に保存期間の延長決定をする義務並びに予見可能性及び結果回避可能性はない。 したがって、仮に公開対象一対一メールが存在していたとしても、保存期間の延長決定をしなかったことや、公開対象一対一メールを消去・廃棄したことにつき、 義務並びに予見可能性及び結果回避可能性はない。 したがって、仮に公開対象一対一メールが存在していたとしても、保存期間の延長決定をしなかったことや、公開対象一対一メールを消去・廃棄したことにつき、国家賠償法上の違法性や過失はない。 20(3) 争点3(公文書に該当する可能性があったのに、保存の指示をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄した違法・過失)(原告の主張)原告が本件異議申立てを行い、別件訴訟を提起していた以上、本件文書が「公文書」に該当すると判断される可能性があったから、被告には、25公文書管理規程38条1項2号、3号及び5号の法意(類推適用)及び 11信義則等に照らし、本件文書の存否を調査した上、保存等の指示をする義務(以下「調査保存義務」という。)があった。 それにもかかわらず、被告が本件文書の存否を調査することも保存等の指示をすることもなく、本件再非公開決定時までに公開対象一対一メールを消去・廃棄したことは、国家賠償法上違法であり、過失も認められ5る。 (被告の主張)公文書管理規程38条の対象は「公文書」であるから、当時公文書として取り扱われていない文書(私文書として取り扱われていたもの)について、公文書管理規程の法意(類推適用)から調査保存義務は導かれな10い。また、旧解釈は明白に不合理なものではなく、一対一メールの組織共用性判断について確立した判例もなかったことから、信義則上のルールとして調査保存義務が導かれるものではない。したがって、仮に公開対象一対一メールが存在していたとしても、その存否を調査して保存等の指示をしなかったことや、本件公開対象一対一メールを消去・廃棄し15たことにつき、国家賠償法上の違法性や過失はない。 (4) 争点4(本件非公開決定の理由付記の違法 、その存否を調査して保存等の指示をしなかったことや、本件公開対象一対一メールを消去・廃棄し15たことにつき、国家賠償法上の違法性や過失はない。 (4) 争点4(本件非公開決定の理由付記の違法・過失)(原告の主張)仮に、本件公開請求時において公開対象一対一メールが存在しなかった場合、解釈上の不存在は公開請求の対象文書が存在することが前提と20なるから、被告は、大阪市行政手続条例8条等に基づき、本件非公開決定において本件文書が物理的に不存在であることを示す義務を負っていた。 それにもかかわらず、大阪市長が、本件非公開決定において、本件文書が物理的に不存在であることを示すことなく、解釈上の不存在である25との理由を提示したことは、国家賠償法上違法であり、過失も認められ 12る。 (被告の主張)ア 原告の上記主張は、時機に後れた主張であるから、却下されるべきである。 イ 公開請求の対象文書の物理的な不存在と解釈上の不存在は、それぞれ独5立した不存在理由であり、公開請求の対象文書が物理的に存在することが解釈上の不存在の前提となっているわけではなく、大阪市長は、原告の主張する理由提示義務を負っていない。 したがって、大阪市長が、本件非公開決定において、本件文書が物理的に不存在であることを示すことなく、解釈上の不存在であるとの理由を提10示したことにつき、国家賠償法上の違法性や過失はない。 (5) 争点5(損害の有無及びその額)(原告の主張)原告は、公開対象一対一メールが消去・廃棄されたこと等により、理由なく公文書の公開請求を妨げられないという利益を侵害され、精神的苦15痛を受けるとともに、本件非公開決定の違法性を争うために弁護士に依頼するなどし、200万円(慰謝料150万円と弁護士費用 理由なく公文書の公開請求を妨げられないという利益を侵害され、精神的苦15痛を受けるとともに、本件非公開決定の違法性を争うために弁護士に依頼するなどし、200万円(慰謝料150万円と弁護士費用50万円の合計)の損害を被った。 (被告の主張)否認ないし争う。仮に、b転送元メール等が公開対象一対一メールに当20たるとしても、これらの文書は既に転送後の文書を含めた形で原告を含む全ての者に公開されているから、原告に精神的損害は発生していない。 また、原告は、弁護士であるから、弁護士費用を損害として認めるべきではないし、仮に認めるとしてもその評価は通常とは異なると考えるべきである。 25第3 当裁判所の判断 131 争点1(本件公開請求時等における公開対象一対一メールの存否)本判決においては、争点2及び争点3について先に検討し、必要な範囲で争点1について検討することとする(後記4参照)。 2 争点2(公文書該当性の解釈を誤り、保存期間の延長をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄した違法・過失)5(1) 認定事実(旧解釈に関する経緯等)前提事実に加え、各項記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア 「公文書に該当する電子メールの取扱いについて(通知)」の発出(乙25)10大阪市総務局行政部行政管理担当課長は、平成21年1月、「公文書に該当する電子メールの取扱いについて(通知)」を、被告の各所属総括文書管理者に発出した。 この通知における説明では、要旨、①職員が送受信したメールについては、その内容と取り扱われ方から考えて、「組織的に用いるもの」に15該当するものは公文書となり、情報公開の対象となること、②「組織的に用いるもの」かどうかは、業務上必要なものと たメールについては、その内容と取り扱われ方から考えて、「組織的に用いるもの」に15該当するものは公文書となり、情報公開の対象となること、②「組織的に用いるもの」かどうかは、業務上必要なものとして、組織内で共用すべき内容であると認められるメールか否かであり、認められる例として、「職権・職責に基づいて送受信された、業務命令、通知、報告、照会回答、外部との交渉記録等」、認められない例として、「電話や口頭と同20レベルの一過性の意思伝達を内容とする事務的な連絡や挨拶、参考として個人的な意見や考えを伝える場合等」が挙げられていた。また、③メールの日常の取扱いとして、個人アドレスで送受信したメールの日常の保管・削除は、各職員において行っているが、メールが公文書として取り扱うべきものであると認められるときは、文書管理システム内に保管25したり、用紙に出力するなどして、組織共用できるように保存しなけれ 14ばならないことなどが記載されていた。 イ 平成21年当時の大阪府におけるメールの管理(乙22)大阪府(当時の知事はa氏)は、平成21年4月14日、電子メールの管理の特例に関する規則(平成21年大阪府規則第56号)を公布・施行した。同規則2条は、行政文書であるメールは、①二以上の職員が5共用するメールアドレスを用いて送信し、又は受信したメール(1号)、②知事又は職員が自己のメールアドレスを用いて送信し、又は受信したメールであって、二以上の職員等に対し同時に送信されたもの(2号)及び③上記①②のメール以外のメールであって、転送、用紙への印刷その他の方法により他の職員等と共有しているもの(3号)であるとして10いる。 ウ 旧解釈通知による解釈運用(前提事実(3)、乙6~8、顕著な事実)大阪市政策企画室長兼情報 送、用紙への印刷その他の方法により他の職員等と共有しているもの(3号)であるとして10いる。 ウ 旧解釈通知による解釈運用(前提事実(3)、乙6~8、顕著な事実)大阪市政策企画室長兼情報公開室長は、平成23年12月27日付けで、旧解釈通知を発出した(なお、a氏は、同月19日に大阪市長に就任した。)。旧解釈通知においては、「●対象となるメール」(組織共15用一対一メール等)は組織共用性があるものとして公文書に該当するが、「●対象とならないメール」(真正一対一メール等)は公文書に該当しないという旧解釈を前提としている。なお、旧解釈は、当時の大阪府の解釈運用(上記イ)にならったものである。 「●対象となるメール20組織共用の実質を備えた状態で保有されている電子メール〇1対1メールのうち、・公用PCの共有フォルダで保有・プリントアウトしたものを当事者以外の職員が保有〇1対1メールの内容が転送先の公用PCで保有25〇一対多数のメール(同報メール、CC、BCC) 15●対象とならないメール2人の送受信だけに留まるもの〇一対一メールのうち、・当事者が公用PCのマイドキュメント、メールボックスで保有・プリントアウトしたものを当事者のみが保有5実施機関が保有していないもの〇私用PCで保有」エ 本件答申の内容(前提事実(4)エ、乙1)審査会は、平成26年8月29日付けで、大阪市長に対し、本件非公開決定は妥当であるとの本件答申をした。本件答申は、一対一メールの組織10共用性につき、「一般的に、一対一で送受信されるメールは、あくまでも電話や口頭と同レベルの一過性の意思伝達をメールという手段によって行ったにすぎないことを踏まえると、その内容の如何を問わ 織10共用性につき、「一般的に、一対一で送受信されるメールは、あくまでも電話や口頭と同レベルの一過性の意思伝達をメールという手段によって行ったにすぎないことを踏まえると、その内容の如何を問わず、未だ組織としての検討の段階に至っておらず、組織共用されたものには該当しないと解される。」、「市長と職員の間で一対一で送受信されたメールについて15は、組織共用の実質がないことから、実施機関が本件文書を公文書として保有していないとする実施機関の主張に、特段、不自然不合理な点は認められない。」としている。 オ 関係府省への確認結果等(乙13、14、16)総務省行政管理局情報公開・個人情報保護推進室(行政機関の保有する20情報の公開に関する法律を所管する部署)の担当者は、別件訴訟の控訴審係属中の平成29年1月20日、被告の担当者に対し、「個人用メールボックスで送受信した電子メールを組織で共用するサーバへ移した場合や、組織メールボックスで送受信した電子メールについては、他の複数の職員が見ることができることを前提としているものであることから、組織共用25性があるものと認められる可能性が高いと思われます。一方で、個人メー 16ルアドレスをもって担当者個人がやり取りしている限りにおいては、一対一であるか一対多であるかにかかわらず、組織として共用する前提をもって送受信されていないことを理由に組織共用性が認められない、という判断もあり得ると思われます。」などと述べた。 また、総務省大臣官房政策評価広報課(総務省に対する情報公開請求を5担当する部署)の担当者は、平成29年1月20日、被告の担当者に対し、「職員個人の段階に留まるもので、端末のデスクトップや個人用メールアドレスの受信ボックスでの保存に留まるものなどについては 5担当する部署)の担当者は、平成29年1月20日、被告の担当者に対し、「職員個人の段階に留まるもので、端末のデスクトップや個人用メールアドレスの受信ボックスでの保存に留まるものなどについては、組織共用性があるとまでは認められないのではないでしょうか。」などと述べた。 カ 別件一審判決及び別件控訴審判決の内容等(甲5~7)10別件一審判決は、本件文書のうち「確定した職務命令及び職務命令に基づく報告」に利用されたものについては、「組織的に用いるもの」に該当し、公文書に該当すると解すべきであるとした。 別件控訴審判決は、本件文書のうち「職務上の指示、報告等」に利用されたもの(公開対象一対一メール)については、「組織的に用いるもの」15に該当し、公文書に該当すると解すべきであるとした。 なお、最高裁判所は、別件訴訟につき、上告審として受理しない旨の決定をしたため、本件文書の公文書該当性やその範囲に係る同裁判所の判断は示されていない。 キ 総務省行政管理局編「詳解情報公開法」の解説(乙15)20総務省行政管理局編「詳解情報公開法」(平成13年公刊)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項の「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」の解説(23~25頁)において、「『組織的に用いる』とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織25において、業務上必要なものとして、利用又は保存されている状態のもの 17を意味する。」「したがって、①職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないもの(自己研鑽のための研究資料、備忘録等)、②職員が 」「したがって、①職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のためにのみ利用し、組織としての利用を予定していないもの(自己研鑽のための研究資料、備忘録等)、②職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し、③職員の個人的な検討段階に留まるもの(中略)などは、5組織的に用いるものには該当しない。」「作成又は取得された文書が、どのような状態にあれば組織的に用いるものと言えるかについては、①文書の作成又は取得の状況(中略)、②当該文書の利用の状況(中略)、③保存又は廃棄の状況(中略)などを総合的に考慮して実質的な判断を行うこととなる。」としている。 10(2) 国家賠償法上の違法性及び過失の判断枠組みア 国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから、公務員による公権力の行使に同項にいう違法があ15るというためには、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁、最高裁令和5年10月26日第一小法廷判決・集民270号215頁等参照)。 20イ ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し、実務上の取扱いも分かれていて、そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に、公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといって、直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない(最高裁昭和4 場合に、公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行したときは、後にその執行が違法と判断されたからといって、直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない(最高裁昭和46年6月2425日第一小法廷判決・民集25巻4号574頁、最高裁昭和49年12月1 182日第一小法廷判決・民集28巻10号2028頁等参照)。 (3) 検討ア 原告は、公開対象一対一メールは「公文書」であるから、被告は、公文書管理規程38条1項2号ないし5号により、公開対象一対一メールの保存期間について延長決定(公文書管理条例6条6項)すべき義務があった5のに、その公文書該当性の解釈を誤り、保存期間の延長をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄したことは、国家賠償法上違法であり、過失もある旨主張する。 そこで、以下、公開対象一対一メールについて、被告がこれを公文書に該当しないと解釈し、公文書管理規程38条各号に基づく保存期間の延長10をしなかったことにつき、上記(2)の判断枠組みを踏まえ、国家賠償法上の違法性及び過失が認められるか否かについて検討する。 イ 認定事実ウのとおり、被告は、大阪府知事であったa氏が大阪市長に就任した平成23年12月、大阪府の解釈運用に合わせる形で、旧解釈通知を発出し、真正一対一メールは公文書に該当しない旨の旧解釈による解釈15運用を開始している。しかるところ、その当時から現在に至るまで、送受信者以外の者に共有されていないメール(本件にいう真正一対一メール)が公文書に該当し又は該当し得ることを明確に判示した最高裁判例はなく、その点に係る通説的・支配的な学説も見当たらない。また、少なくとも別件一審判決が言い渡された平成28年9月9日までは、その点について判20示した下級審裁判 ことを明確に判示した最高裁判例はなく、その点に係る通説的・支配的な学説も見当たらない。また、少なくとも別件一審判決が言い渡された平成28年9月9日までは、その点について判20示した下級審裁判例も見当たらず、国や地方公共団体において統一的な解釈が示されていたとか、統一的な運用が行われていたというわけでもない(そもそも、旧解釈は大阪府の解釈運用にならったものである。)。なお、令和元年公刊の宇賀克也「情報公開・オープンデータ・公文書管理」121頁(甲20)は、別件一審判決及び別件控訴審判決を題材とした論稿に25おいて、「電子メールが情報公開法制において公文書に該当するのがいか 19なる場合であるかについては、コンセンサスが成立しているわけではない。」としている。 また、総務省行政管理局編「詳解情報公開法」は、作成又は取得された文書がどのような状態にあれば「組織的に用いるもの」といえるかについて、①文書の作成又は取得の状況、②当該文書の利用の状況、③保存又は5廃棄の状況などを総合的に考慮して実質的な判断を行うとしているところ(認定事実キ)、真正一対一メールは、送受信者だけが作成又は取得するものであり、送受信者以外の職員の利用には供されておらず、送受信者の送受信フォルダにのみ存在し、送受信者が自己の判断で消去・廃棄するものであるから、組織共有すべきものとして別途共有フォルダへの保存等が10されない限り、送受信者間でのみ排他的に利用されているものであって、その内容にかかわらず、組織としての共用文書の実質を備えた状態には至っていないという考え方は十分にあり得る(他方で、真正一対一メールにつき、別件一審判決がいう「確定した職務命令及び職務命令に基づく報告」や別件控訴審判決がいう「職務上の指示、報告等」に利用されたもの っていないという考え方は十分にあり得る(他方で、真正一対一メールにつき、別件一審判決がいう「確定した職務命令及び職務命令に基づく報告」や別件控訴審判決がいう「職務上の指示、報告等」に利用されたものでな15くとも、より広い範囲で、あるいは例外なく公文書に該当するという考え方も十分にあり得る。なお、最高裁判所は別件訴訟につき上告審として受理しない旨の決定をしたにすぎず、法解釈を示したわけではないため、今後同種の論点が争われた場合、裁判所が別件控訴審判決の判断に拘束されることはなく、法解釈として別件控訴審判決と異なる判断に至ることは制20度上当然にあり得る。)。 さらに、大学教授や弁護士を委員とする審査会も、本件答申において、「一般的に、一対一で送受信されるメールは、あくまでも電話や口頭と同レベルの一過性の意思伝達をメールという手段によって行ったにすぎないことを踏まえると、その内容の如何を問わず、未だ組織としての検討の段25階に至っておらず、組織共用されたものには該当しないと解される。」と 20して、旧解釈の考え方を妥当とし、真正一対一メールの組織共用性を否定しているし(認定事実エ)、総務省行政管理局情報公開・個人情報保護推進室の担当者や、総務省大臣官房政策評価広報課の担当者も、平成29年1月時点で、被告の担当者に対し、旧解釈の考え方を否定せず、むしろそのような考え方に沿う内容の回答をしている(認定事実オ)。 5しかも、被告においては、当時、大阪市長と職員のメールのうち組織共用すべきものについては、公開用アドレスに同時送付し専用フォルダに登録したり、共有フォルダに保存したり、他の職員に転送するなどして組織共用文書(公文書)として扱うこととしており、公開請求がなくとも、専用フォルダ内のメールは、市民情報プラ 同時送付し専用フォルダに登録したり、共有フォルダに保存したり、他の職員に転送するなどして組織共用文書(公文書)として扱うこととしており、公開請求がなくとも、専用フォルダ内のメールは、市民情報プラザにおいて市民の閲覧に供されて10いた(前提事実(3)、認定事実ア、乙7、8、35、証人a、証人d)。 また、個々の公開請求ごとに大阪市長や職員の送受信フォルダを検索し、その内容を一つ一つ確認して組織共用性(公文書性)を判断する運用は、日々大量に送受信されるメールの性質上、業務上の負担が相当重いものとなり得る。そうすると、当時の被告の運用は、市民への情報公開を図りつ15つ、市長メールの取扱いを明確化し、情報公開事務を効率化する実務的な工夫として、合理的な面があったといえる。また、当時、個々の職員が、大阪市長に対し、他の職員にその存在や内容を明らかにされない前提で、セクハラやパワハラといった組織内部のセンシティブな問題についてメールすることもあったところ(証人a)、そのような一対一メールが情報公20開の対象となり得るとすれば、一対一メールを用いたそのような相談等は事実上困難になると考えられ、旧解釈は、一対一メールを用いた上記のような相談等を可能にする機能もあったといえる。 そうすると、本件公開請求時から少なくとも別件一審判決が言い渡された平成28年9月9日までは、旧解釈に相当の根拠がなかったとはい25えず、公開対象一対一メールについて、被告がこれを公文書に該当しな 21いと解釈し、公文書管理規程38条各号に基づく保存期間の延長をしなかった結果、少なくとも同日までに公開対象一対一メールが全て廃棄・消去されたとしても、大阪市長や職員に職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情が 長をしなかった結果、少なくとも同日までに公開対象一対一メールが全て廃棄・消去されたとしても、大阪市長や職員に職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があるとはいえず、国家賠償法上違法な行為があったとはいえないし、その点に5過失があるとも認められない。 (4) 原告の主張についてこれに対し、原告は、被告が採用していた旧解釈は、国の解釈とは異なる不合理なものであると主張し、同旨の意見書(甲31)を提出する。 しかし、前述のとおり、総務省行政管理局編「詳解情報公開法」に示さ10れている組織共用性の判断要素に照らしても、別件訴訟において、旧解釈が正当とされる余地は十分にあったというべきであり、旧解釈が必ずしも国の解釈と異なるとはいえないし、不合理なものともいえない。原告の上記主張や意見書は、当裁判所と見解を異にするものであって、採用することができない。 153 争点3(公文書に該当する可能性があったのに、保存の指示をせず、公開対象一対一メールを消去・廃棄した違法・過失)(1) 公文書管理規程38条に基づく調査保存義務について原告は、本件文書は本件異議申立てや別件訴訟において「公文書」に該当すると判断される可能性があったから、被告には、公文書管理規程38条120項2号、3号及び5号の法意に照らし、又はその類推適用により、本件文書の存否を調査した上、保存等の指示をする義務(調査保存義務)があったと主張する。 しかし、公文書管理規程は、大阪市長が保有する公文書の管理に関し必要な事項を定めるものであって(1条)、公文書の適正な管理等のため、公文25書管理条例等の細則を定めるものであり、また、そもそも公文書として取り 22扱われていない文書に保存期間の 必要な事項を定めるものであって(1条)、公文書の適正な管理等のため、公文25書管理条例等の細則を定めるものであり、また、そもそも公文書として取り 22扱われていない文書に保存期間の定め(公文書管理条例6条3項、別表)を観念することはできないから、そのような文書について、公文書管理規程38条1項2号、3号及び5号を類推適用して保存期間の延長をする義務を導くことは解釈論として無理があるし、同条は飽くまでも保存期間を延長すべき場合を列挙するものであって、これらの規定やその法意から、公開請求に5係る対象文書の存否に係る調査保存義務を導き出すことは困難である(もちろん、各地方公共団体の判断において、原告が主張するような調査保存義務を条例や規則等で明示的に定めることは可能であるが、それは上記判断とは別論である。)。 したがって、公文書管理規定38条1項2号、3号及び5号の法意又はそ10の類推適用により被告に上記の調査保存義務があったとする原告の主張は、採用することができない。 なお、原告は、最終準備書面として提出された別紙1(準備書面7)において、上記の議論に関し、公文書等の管理に関する法律5条4項等を援用するが、これにより上記判断が左右されるものではない。 15(2) 信義則や条理に基づく調査保存義務についてア 原告は、本件異議申立てや別件訴訟において本件文書が「公文書」に該当すると判断される可能性があったから、被告には、信義則に照らし、本件文書の存否を調査した上、保存等の指示をする義務(調査保存義務)があったと主張する(なお、原告が提出する意見書は、信義則ではなく、条20理に基づく調査保存義務があるとする〔甲38〕。)。 しかし、公開請求につき、その対象文書が公文書には該当しないとの理由で非公開 主張する(なお、原告が提出する意見書は、信義則ではなく、条20理に基づく調査保存義務があるとする〔甲38〕。)。 しかし、公開請求につき、その対象文書が公文書には該当しないとの理由で非公開決定がされた場合(解釈上の不存在の場合)において、その判断につき実施機関に注意義務違反がないにもかかわらず、また、調査保存義務を裏付ける具体的な法令の定めが存在しないにもかかわらず、将来の25取消訴訟等において公文書に該当すると判断される可能性があるという一 23事をもって、一律に、信義則や条理に照らし、公開請求の対象文書の存否を調査した上、保存等の指示をする職務上の義務(調査保存義務)が発生するものとは解し難い(このことは、例えば、「〇〇に関する個人的な検討段階のメモ一切」といったように、将来公文書と判断される可能性が低く、他方でその存否を調査することが容易でない場合を想定すれば、明ら5かである。)。 また、公開請求の対象文書が公文書には該当しないと判断した場合(解釈上の不存在の場合)においても、当該文書の存否を調査した上、保存等の指示をする職務上の義務(調査保存義務)があるという考え方は、本件の証拠関係の下では、それに近いものとして、平成20年1210月24日の内閣府情報公開・個人情報保護審査会の答申(甲30)の「当該請求文書が廃棄され、あるいは亡失することがないよう配慮すべき法的責務」を負う旨の説示が見られるにすぎず(ただし、当該答申の事案は、対象文書が明確に特定されており、調査が必要な本件の事案とは異なっている。また、答申の結論に直結しない苦言に関する部分であ15る上、「法的責務」というあいまいな表現が用いられている。)、最高裁判例や下級審裁判例においてこの点を明言したものは見当たらないし、その他の答 た、答申の結論に直結しない苦言に関する部分であ15る上、「法的責務」というあいまいな表現が用いられている。)、最高裁判例や下級審裁判例においてこの点を明言したものは見当たらないし、その他の答申も特に見当たらない。また、この点につき、通説的・支配的な学説があるとか、統一的な解釈運用が示されていたというわけでもない。このような調査保存義務の議論状況に照らすと、そもそも、大阪20市長や職員が、本件文書につき調査保存義務があるという認識を有するには、困難な面があったといわざるを得ない。 イ もっとも、公開請求の対象文書が公文書ではないとして消去・廃棄された場合、後に取消訴訟等において公文書であると判断されても、これを公開することができなくなってしまう上、事案によっては、法令上の義務で25はなくとも、ひとまず対象文書を廃棄しないでおくことが当然に期待され 24る場合もあり得る(例えば、対象文書が具体的に特定されており、特段の調査をしなくともその所在が明らかで、当該文書をそのまま保管しておくことに支障がない場合など)。 そうすると、調査保存義務に係る前述の議論状況等を前提としても、個別事案における具体的な事情(例えば、取消訴訟等において公文書と判断5される可能性の程度、存否の調査に要する労力や時間、保存に係る支障の有無及び程度など)によっては、信義則又は条理に照らし、職務上の注意義務として調査保存義務が発生する場合もあり得るというべきであり、対象文書の存否を調査してその保存等の指示をすることなくその消去・廃棄に至ったことが、職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものとして、10国家賠償法上の違法性及び過失があると評価される場合もあり得ると考えられる。 そこで、被告が本件公開請求後に本件文書の存否を調査して が、職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものとして、10国家賠償法上の違法性及び過失があると評価される場合もあり得ると考えられる。 そこで、被告が本件公開請求後に本件文書の存否を調査してその保存等を指示しなかったことにつき、職務上通常尽くすべき注意義務の違反(国家賠償法上の違法性及び過失)があると評価すべき特段の事情があるか否15かについて、以下検討する。 ウ 確かに、本件文書(本件対象期間に送受信された真正一対一メール)については、被告の旧解釈にも相当の根拠があったといえるが、公文書に該当するという見解(別件訴訟における原告の主張)にも相当の根拠があったといえ、別件一審判決及び別件控訴審判決において本件文書の一部に公20文書が含まれると判断されたことに照らしても、本件公開請求時や本件非公開決定時において、将来の取消訴訟等において本件文書が公文書と判断される可能性は十分にあったといえる。 しかし、本件公開請求の対象文書(本件文書)は、「a市長が大阪市の職員(特別職も含む)と一対一で送受信したメール一切(平成24年1125月17日~同年12月17日)」(ただし、被告において公文書として取 25り扱っていないものに限る。)というものであって、本件対象期間における真正一対一メールを包括的、網羅的にその対象文書とするものであり、大阪市長だけではなく、特別職を含む職員全体を対象として全庁的に調査しなければ、その存否を確定し得ない性質のものである。そして、本件公開請求がされた時点で、大阪市長や職員が保有する本件文書の有無を調査5し、その内容にかかわらず一律にその保存を指示するとすれば、そのような全庁的な調査確認の依頼、これに対する各部署ないし職員の回答、回答の集約と確認、対象文書の保存場所等の指示など、 有無を調査5し、その内容にかかわらず一律にその保存を指示するとすれば、そのような全庁的な調査確認の依頼、これに対する各部署ないし職員の回答、回答の集約と確認、対象文書の保存場所等の指示など、関連する業務上の負担は相応に重いものとなり得る。しかも、当時、個々の職員が、大阪市長に対し、他の職員にその存在や内容を明らかにされない前提で、セクハラや10パワハラといった組織内部のセンシティブな問題についてメールすることもあったところ、そのような一対一メールについても一律に調査対象とし、その存否等について報告が求められることとなれば、そのようなメールの存在や内容が職員の意に反して他の職員に知られてしまうなど、旧解釈の下で想定されていなかった支障が発生する可能性もある。 15しかも、本件公開請求当時、原告以外の市民からも、一対一メールを含む市長メールの包括的、網羅的な公開請求がされる可能性はあったといえ、そのような公開請求があれば、基本的に、本件公開請求への対応と同様の対応を行うことになるものと解される。そうすると、原告の本件公開請求について上記のような調査等を行うのであれば、他の市民から同種の公開20請求が行われるたびに、上記のような全庁的な調査等の事務を行うことになり、被告の潜在的な業務上の負担は相当なものとなり得る。被告が旧解釈に基づく解釈運用を行っていたのは、市長メールに係る公開請求のたびに大阪市長や職員の送受信フォルダを検索し、その内容を確認するといった業務上の負担や煩雑を避け、情報公開事務の明確化や効率化を図る趣旨25も含まれていたと解されるのであるから、公開請求のたびに上記のような 26調査等を行うことは、旧解釈の上記趣旨にも反することとなる。 さらに、旧解釈については、前述のとおり、大阪府の解 も含まれていたと解されるのであるから、公開請求のたびに上記のような 26調査等を行うことは、旧解釈の上記趣旨にも反することとなる。 さらに、旧解釈については、前述のとおり、大阪府の解釈運用にならったものであるところ、大学教授や弁護士を委員とする審査会の本件答申において旧解釈が妥当とされているなど、相当の根拠があったといえるのであり、少なくとも別件一審判決が言い渡されるまでは、直ちに従来の取扱5いを変更し、本件文書の調査や保存を検討しなければならないような具体的な事情があったとはいえない。 エ そうすると、本件公開請求時から少なくとも別件一審判決が言い渡された平成28年9月9日までは、被告が本件文書の存否を調査してその保存等を指示しなかったことにつき、職務上通常尽くすべき注意義務の違反10(国家賠償法上の違法性及び過失)があると評価すべき特段の事情があったとは認められない。 したがって、少なくとも別件一審判決が言い渡された平成28年9月までは、大阪市長や職員に職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と調査保存義務を懈怠したと認め得るような事情があるとはいえず、15国家賠償法上違法な行為があったとはいえないし、その点に過失があるとも認められない。 4 別件一審判決言渡し時点における公開対象一対一メールの存否について(1) 上記2及び3で説示したところによれば、少なくとも別件一審判決が言い渡された平成28年9月9日までは、仮に公開対象一対一メールが大阪市長20や職員により消去・廃棄されていたとしても、国家賠償法上の違法性や過失があるとは認められない。他方で、同日以降に公開対象一対一メールが消去・廃棄されていたとすれば、国家賠償法上の違法性や過失があると認められる余地がある。 そこで、平成 国家賠償法上の違法性や過失があるとは認められない。他方で、同日以降に公開対象一対一メールが消去・廃棄されていたとすれば、国家賠償法上の違法性や過失があると認められる余地がある。 そこで、平成28年9月9日時点で公開対象一対一メールが存在していた25か否かにつき検討するに、本件文書は、真正一対一メールのうち本件対象期 27間(平成24年11月17日から同年12月17日まで)に送受信されたものであって、平成28年9月9日時点において、送受信から既に約3年9か月もの期間が経過している(なお、公開対象一対一メールの保存期間は、原則として、公文書管理条例別表の「その他の公文書」の保存期間である、事務処理上必要な1年未満であると解される。)。さらに、a氏が別件一審判5決に先立つ平成27年12月に大阪市長を退任していること(顕著な事実)、本件非公開決定当時、職員の個人アドレスのメールボックスの保存容量は小さく、送受信が制限されないようこまめにメールを削除しなければならなかったこと(証人d、証人e、証人f)、別件一審判決言渡しの約1か月後である平成28年10月6日(回答期限同月20日)、被告が本件文書の存否10を調査したところ、全ての回答が不存在であったこと(乙2、3)も考慮すると、別件一審判決が言い渡された同年9月9日時点において、公開対象一対一メールが存在していたとは認められない。 (2) なお、公開対象一対一メールの存否(争点1)に関しては、b転送元メール等の公開対象一対一メール該当性が強く争われているが、この点は、どち15らに解したとしても、上記認定を左右するものではない。 ただし、審理の経過に鑑み付言するに、原告は、本件異議申立てにおいて、「…市長から一対一でメールを受信した職員が当該メールを他の職員に転 5らに解したとしても、上記認定を左右するものではない。 ただし、審理の経過に鑑み付言するに、原告は、本件異議申立てにおいて、「…市長から一対一でメールを受信した職員が当該メールを他の職員に転送している場合など、当該メールがその後別途公文書として保有されているメールについては本件請求において求めるものではなく」としているのであり20(乙1)、しかも、b転送元メール等は、それ自体は被告において公文書として取り扱われていないとしても、b転送メール等(公文書)に引用されることにより公文書の一部として取り扱われているのであるから、本件異議申立てにおける対象文書の上記限定の趣旨を合理的に解釈すれば、本件公開請求の対象文書にb転送元メール等は含まれていないと解するのが自然である25し、少なくとも、そのように被告が理解したことにつき過失はないというべ 28きである。 (3) 以上によれば、平成28年9月9日時点において、公開対象一対一メールが存在していたとは認められないから、大阪市長や職員が、同日以降において、公開対象一対一メールを消去・廃棄したとは認められない。 したがって、公開対象一対一メールの消去・廃棄に関し、国家賠償法上の5違法性や過失があるとは認められない。 5 争点4(本件非公開決定の理由付記の違法・過失)について(1) 原告は、仮に、本件公開請求時において公開対象一対一メールが存在しなかった場合、被告は、本件非公開決定において本件文書が物理的に不存在であることを示す義務を負っていたと主張する。 10しかし、本件公開請求時において公開対象一対一メールが存在していたかどうかはともかく、解釈上の不存在は、公開請求の対象文書が公文書に該当しないとするものであり、物理的に存在することが論理的な前提となる かし、本件公開請求時において公開対象一対一メールが存在していたかどうかはともかく、解釈上の不存在は、公開請求の対象文書が公文書に該当しないとするものであり、物理的に存在することが論理的な前提となるものではないから、大阪市長が本件非公開決定時において原告が主張するような義務を負っていたとは認められない。また、原告の主張によれば、公文書と15して組織的に管理されていない文書(個人的なメモ等)であっても、公開請求の対象文書とされたというだけで、常にその存否を調査しなければならないことになり、不合理である。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 (2) なお、被告は、原告の上記主張は時機に後れたものとして却下されるべき20旨主張するが、上記主張は訴訟の完結を遅延させるものとはいえず、これを却下すべき場合には当たらない。 第4 結論よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 25 29大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官 徳地 淳 5 裁判官 中 村 雅 人 10 裁判官 牛 濵 裕 輝 30(別紙の掲載省略)

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