昭和58(行ツ)148 選挙の効力及び当選の効力に関する審査裁決取消

裁判年月日・裁判所
昭和60年1月22日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所 昭和57(行ケ)3
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件を大阪高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人吉原稔の上告理由について  一 上告人らは、昭和五六年一二月六日執行

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判決文本文5,245 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人吉原稔の上告理由について一上告人らは、昭和五六年一二月六日執行の滋賀県東浅井郡a町議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)において、a町選挙管理委員会(以下「町選管」という。)が公職選挙法(以下「公選法」という。)二二条二項(昭和五七年法律八一号による改正前のもの。以下同じ。)の規定に基づいて行つた選挙人名簿の登録(以下「本件選挙時登録」という。)に際し、現実の住所移転を伴わない架空転入が大量にあつたにもかかわらず、調査の疎漏により有権者の一割近い数の被登録資格のない者を登録したが、このような架空転入者に対する町選管の処置は、公選法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものであるから、本件選挙は無効というべきであり、また少くとも大量の架空転入工作をした当選者八名の当選は無効であると主張して、本件選挙における選挙の効力及び当選の効力に関する審査申立をしたところ、被上告人は、昭和五七年一一月一六日、本件選挙のために相当数の架空転入が行われたことは一応推認できるが、このような被登録資格を有しない者の選挙人名簿への登録は公選法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものとはいえない、また当選者が大量の架空転入工作を図つたとしても、そのことから直ちにその者の当選を無効であるとすることはできないとして、上告人らの審査申立を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。そこで、上告人らは、被上告人を相手方として原審裁判所に本件裁決の取消し及び本件選挙を無効とする裁判等を求める本件訴えを提起した。 - 1 -これに対し、原審は、上告人らの選挙無効及び当選無効の そこで、上告人らは、被上告人を相手方として原審裁判所に本件裁決の取消し及び本件選挙を無効とする裁判等を求める本件訴えを提起した。 - 1 -これに対し、原審は、上告人らの選挙無効及び当選無効の主張を排斥した本件裁決を正当として是認したが、上告人らの選挙無効の主張に対しては、架空転入者の登録に関する町選管の処置は、被登録資格のない者を誤つて登録したことに帰するもので、このような瑕疵は登録に関する不服として専ら公選法二四条、二五条所定の手続によつて争われるべきものであつて、同法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものとはいえない旨判示した。 二ところで、市町村の選挙管理委員会が公選法二二条二項の規定に基づき選挙を行う場合にする選挙人名簿の登録(以下「選挙時登録」という。)は、当該選挙だけを目的とするものではなく、当該選挙が行われる機会に選挙人名簿を補充する趣旨でされるものであるから、その手続は、当該選挙の管理執行の手続とは別個のものに属し、したがつて、右登録手続における市町村選挙管理委員会の行為が公選法の規定に違反するとしても、直ちに同法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものとはいえない。以上によれば、右選挙管理委員会が選挙時登録の際に被登録資格の調査の疎漏により被登録資格の確認が得られない者を選挙人名簿に登録したとしても、右瑕疵は結局選挙人名簿の個個の登録の誤り、すなわち選挙人名簿の脱漏、誤載に帰するものにすぎないから、公選法二四条、二五条所定の手続によつてのみ争われるべきものであり、それだけでは選挙人名簿自体の無効をきたすものでもなければ、また選挙時登録全部を無効にするものでもなく、右瑕疵があることをもつて直ちに選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものとはいえないこ それだけでは選挙人名簿自体の無効をきたすものでもなければ、また選挙時登録全部を無効にするものでもなく、右瑕疵があることをもつて直ちに選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものとはいえないことはいうまでもないが、選挙人名簿の調製に関する手続につきその全体に通ずる重大な瑕疵があり選挙人名簿自体が無効な場合において、選挙の管理執行にあたる機関が右無効な選挙人名簿によつて選挙を行つたときには、右選挙は選挙の管理執行につき遵守すべき規定に違反するものというべきである(最高裁昭和五二年(行ツ)第九四号同五三年七月一〇日第一小法廷判決・民集三二- 2 -巻五号九〇四頁参照)。そして、市町村選挙管理委員会は、選挙人名簿の登録にあたつては、被登録資格を有する者のみを選挙人名簿に登録すべきであつて(公選法二二条)、被登録資格を有することについて確認が得られない者を登録してはならないのであるから(同法施行令一〇条)、選挙時登録の際に現実の住所移転を伴わない架空転入が大量にされたのではないかと疑うべき事情があるときは、市町村選挙管理委員会としては、選挙時登録にかかる選挙人名簿の登録にあたり、被登録資格の一つである当該市町村の区域内に住所を有するかどうかについて特に慎重な調査を実施して適正な登録の実現を図る義務があるというべきであり、右の事情が存するのに、右選挙管理委員会の行つた調査が住所の有無を具体的事実に基づいて明らかにすることなく、単に調査対象者あてに文書照会をしたり、その関係者のいい分を徴するにとどまるものであつて、その実質が調査というに値せず、調査としての外形を整えるにすぎないものであるときは、市町村選挙管理委員会が公選法二一条三項及び同法施行令一〇条所定の被登録資格についての調査義務を一般的に怠つたものとして、選挙時登録にかかる選挙人名簿 しての外形を整えるにすぎないものであるときは、市町村選挙管理委員会が公選法二一条三項及び同法施行令一〇条所定の被登録資格についての調査義務を一般的に怠つたものとして、選挙時登録にかかる選挙人名簿の調製に関する手続につきその全体に通ずる重大な瑕疵があるものというべきであるから、当該選挙時登録全部が無効となり、またこのように選挙時登録全部が無効な場合において選挙の管理執行にあたる機関が右無効な選挙時登録を含む選挙人名簿によつて選挙を行つたときは、右選挙は公選法二〇五条一項所定の「選挙の規定に違反する」ものと解するのが相当である。 三本件についてこれをみると、所論のいうところによれば、(一) a町では、通常、月間の転入者数が二〇人前後にすぎないのに、昭和五六年七月には六四人、八月には四一二人と転入届をした者の数が異常に増加し、しかもその届出は代理人によるものが大部分を占め、一人の代理人が多数の者を代理して転入届をするといつた例も多く、またその届出内容からすると、一軒の世帯主のところに十数人の転- 3 -入者が同居しているものといわざるを得ないような例もみられた、(二) 町選管は、同年九月の町議会の一般質問において、七、八月に大量の架空転入があつたとして転入者の住所の有無が問題とされたため、町長部局に住民基本台帳に基づく転入者の実態調査を実施するよう依頼した、(三) そこで、町長部局は、昭和五六年一月一日から同年九月三〇日までに転入した五七六人についてa町に住所を有しているか否かの実態調査をすることとし、同年一〇月、右の調査対象者あてに同町に住所を有しているか否かの確認を求める文書照会を行つたところ、これに対し、四八九人につき同町に住所を有している旨の回答があり、未回答の八七人について更に文書による再照会をしたところ、そのうち八五人に 所を有しているか否かの確認を求める文書照会を行つたところ、これに対し、四八九人につき同町に住所を有している旨の回答があり、未回答の八七人について更に文書による再照会をしたところ、そのうち八五人につき同じく住所を有する旨の回答があり、残り二人については結局未回答に終つた、(四) 更に町選管と町長部局は、右の調査対象者のうち、もともとa町に住所を有していた世帯主のところに同居人として転入した旨の届出をしていた三一六人について、訪問による実態調査を実施したが、その調査結果は、調査対象者三一六人のうち三一〇人が同町に住所を有していることが確認されたというものであつた、(五) しかしながら、その訪問調査の方法は、町長部局の職員が、もともとa町に住所を有している世帯主又はその妻等に対し、その同居人として転入届が出されている者の氏名をあらかじめ記載した調査票を示したうえ、当該同居人とされている者の居住の有無について、その世帯主等のいい分をそのまま調査票に記載するというものであり、この調査によつて住所を有することが確認されたとされる三一〇人については結局本人に対する面接は一人も行われなかつた、(六) そして町選管は、以上に記載した以外には被登録資格についての調査を行わなかつた、というのである。 所論のいう叙上の事実関係が認められるとするならば、当時においても、現実の住所移転を伴わない架空転入が大量にされたのではないかと疑うべき事情があつたものというべきであり、しかも昭和五六年九月のa町議会の一般質問において七、- 4 -八月に大量の架空転入があつたとして転入届をした者の住所の有無が問題とされたというのであるから、町選管としては、本件選挙時登録にかかる選挙人名簿の作成にあたり、住所の有無について特に慎重な調査をすべき事情が存したものというべきであ 転入届をした者の住所の有無が問題とされたというのであるから、町選管としては、本件選挙時登録にかかる選挙人名簿の作成にあたり、住所の有無について特に慎重な調査をすべき事情が存したものというべきであるのに、本件選挙時登録に際し行われた文書照会による調査及び調査の対象となつている本人に面接することなく訪問先の世帯主等から同居人の居住の有無を確認することに終始した訪問調査は、住所の有無を具体的な事実に基づいて明らかにすることなく、調査対象者あてに文書照会をしたり、その関係者のいい分を徴するにとどまるものであつて、その実質は調査というに値せず、調査としての外形を整えたにすぎないものというほかはないから、本件選挙時登録に際し、町選管は被登録資格についての調査義務を一般的に怠つたものというべきこととなり、そうすると、本件選挙時登録にかかる選挙人名簿の調製に関する手続につきその全体に通ずる重大な瑕疵があることとなるから、本件選挙時登録全部が無効となり、したがつて、右無効な本件選挙時登録を含む選挙人名簿によつて行われた本件選挙は、公選法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものというべきこととなるといわざるを得ない。 四そして、記録によれば、所論のいう前記の事実関係が存在することがうかがわれるから、更に審理を尽くせば、右の事実が認定されたうえ、本件選挙が公選法二〇五条一項所定の「選挙の規定に違反する」ものとする上告人らの主張が是認される可能性が十分に存するものというべきである。しかるに、原審は、本件選挙時登録に際し町選管がどのような方法によつて住所の有無を調査したかについての事実関係を何ら確定することなく、したがつてまた本件選挙時登録にかかる選挙人名簿が無効か否かについての判断をすることなく、架空転入者の登録に関する町選管 方法によつて住所の有無を調査したかについての事実関係を何ら確定することなく、したがつてまた本件選挙時登録にかかる選挙人名簿が無効か否かについての判断をすることなく、架空転入者の登録に関する町選管の処置は公選法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である「選挙の規定に違反する」ものにあたらないとしているのであつて、原判決は、公選法二〇五条一項、二二条- 5 -二項、同法施行令一〇条の各規定の解釈適用を誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法をおかしたものというべきである。そして、本件選挙時登録が前記のとおり全部無効ということになれば、これが公選法二〇五条一項所定の「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」にあたることは記録上明らかであり、したがつて本件選挙も無効というべきこととなるから、原判決の右の違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は右の趣旨をいう点において理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件選挙時登録にかかる選挙人名簿の調製に関する手続につきその全体に通ずる重大な瑕疵があるか否かについて更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官安岡滿彦裁判官伊藤正己裁判官木戸口久治裁判官長島敦- 6 - 島敦

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