平成27(ワ)4988 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年2月17日 名古屋地方裁判所
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判決文本文40,172 文字)

令和2年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第4988号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年10月23日判決 主文 1 被告は,原告に対し,7353万9929円及びこれに対する平成27年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。ただし,被告が5900万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,9056万4859円及びこれに対する平成27年4月 13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,名古屋市交通局(以下「交通局」という。)に嘱託職員として勤務してい たaの母親であり唯一の相続人である原告が,aは交通局における勤務中に受けたいじめ等により中等症うつ病エピソードを発病して平成27年4月13日に自殺した(以下「本件自殺」という。)のであり,交通局には安全配慮義務違反があったなどと主張して,被告に対し,債務不履行又は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として9056万4859円及びこれに対するaの死亡日から支払済みまで民 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(末尾に証拠を掲げた事実以外は当事者間に争いがない。)⑴ 当事者等ア被告は,普通地方公共団体であり,名古屋市交通事業の設置等に関する条例(昭和41年名古屋市条例第59号) 1 前提事実(末尾に証拠を掲げた事実以外は当事者間に争いがない。)⑴ 当事者等ア被告は,普通地方公共団体であり,名古屋市交通事業の設置等に関する条例(昭和41年名古屋市条例第59号)に基づき,自動車運送事業及び高速度鉄道事業を設置し,これらの業務を執行させるため,管理者1名を置いて いる。交通局は,上記管理者の権限に属する事務を処理するために設けられた組織であり,同管理者の権限に属する事務として地下鉄事業も処理している。(乙55,弁論の全趣旨)イ交通局は,現業職員を期間の定めのない正規職員として採用する前に,一定期間,期間の定めのある嘱託職員として採用する制度(以下,同制度によ り交通局に採用された者を「若年嘱託職員」という。)を設けていた。一般技術に関する業務に従事する若年嘱託職員は,委嘱の日の属する年度の末日において,19歳以上35歳以下であって,地方公務員法上の欠格事由のない者から選抜して委嘱された。若年嘱託職員の任用期間は,委嘱をした当該年度内であり,勤務成績が良好な者については,1年ごとに任用期間が更新さ れるが,任用期間は,通算して3年を超えることはできないとされていた。 (乙7,弁論の全趣旨)ウ a(昭和58年●月●日生,男性)は,平成25年4月1日,若年嘱託職員として交通局に採用され,約1か月間の研修の後,交通局b工場の修車係台車B班に配属になり(以下,交通局の下位の機関をそれぞれ「b工場」, 「修車係」及び「台車B班」などという。),本件自殺に至るまで,台車B班で勤務をしていた。aの任用期間は,その間,平成26年4月1日及び平成27年4月1日に,それぞれ1年間更新された。 エ原告は,aの母親であり,唯一の相続人である。 ⑵ b工場の組織及び業務内容等 ア b工 の任用期間は,その間,平成26年4月1日及び平成27年4月1日に,それぞれ1年間更新された。 エ原告は,aの母親であり,唯一の相続人である。 ⑵ b工場の組織及び業務内容等 ア b工場は,名古屋市営地下鉄c線に使用する車両の整備等を所掌しており, 管理係,検車係及び修車係を設けている。このうち,修車係は,①8年を越えない期間ごとに行う車両の全般検査,②4年又は走行距離60万kmを越えない期間ごとに行う車両の重要部検査を主な業務としている。これらは,いずれも,1か月から1か月半ほどの期間をかけて車両の主要部品を分解して行う検査であり,車両の装置ごとに担当する班が存在する。その中でも台 車A班及び台車B班は,車両の車輪や足回りの部品(台車装置)の分解整備を担当し,1編成6両のうち3両を台車A班が,残りを台車B班が担当することとなっている。(乙11,13)b工場では,課長職として工場長が,係長職として管理係長,検車係長及び修車係長が置かれ,交通局の事務分掌規程や高速電車係員規程によれ ば,工場長及び各係長が所属職員を指揮監督するものとされている。(乙1,11,12)b工場の修車係長は,aの在職期間中,平成26年3月31日まではd(以下「d係長」という。),同年4月1日から平成27年3月31日まではe(以下「e係長」という。)であった。(乙40,弁論の全趣旨) aがb工場に勤務していた当時の台車B班は,チーフ1名,サブチーフ2名及び班員6名で構成されていた。チーフ及びサブチーフは,規程等に定めはないものの,通例,十分な知識や経験を有する職員から選ばれ,チーフは,班のリーダーとして現場作業に従事するとともに,他の職員への技術指導等を行う役割を担い,サブチーフは,チーフを補佐する役割を 定めはないものの,通例,十分な知識や経験を有する職員から選ばれ,チーフは,班のリーダーとして現場作業に従事するとともに,他の職員への技術指導等を行う役割を担い,サブチーフは,チーフを補佐する役割を担 っていた。(乙40,46,弁論の全趣旨)台車B班のチーフは,aの在職期間中,平成26年9月30日まではf(以下「fチーフ」という。),同年10月1日からはg(以下「gチーフ」という。)であった。また,台車B班のサブチーフのうち,1名は,aの在職期間を通じて,h(以下「hサブチーフ」という。)であり,もう1名は, 平成26年4月1日からⅰ(以下「ⅰサブチーフ」という。)であった。(甲 53,乙46,弁論の全趣旨)⑶ aは,平成27年4月13日,名古屋市内の公園の路肩に停車した自動車内で練炭を燃焼させ,一酸化炭素中毒により死亡した(本件自殺)。(甲46) 2 本件の争点及び当事者の主張本件の争点は,被告の責任原因(争点1),損害の発生及びその額(争点2), 過失相殺等による賠償額減額(争点3)であり,当事者の主張は,以下のとおりである。 ⑴ 被告の責任原因(争点1)(原告の主張)ア本件自殺がb工場における勤務に起因すること及び相当因果関係 本件自殺は,以下のとおり,b工場における勤務に起因するものであり,後に記載する義務違反との間で相当因果関係が認められる。 hサブチーフによる言動b工場内では,hサブチーフその他の者によるいじめが常態化しており,特にhサブチーフの態度や言動等により,精神が不安定になり,精神科に 通院するようになった職員や退職に追い込まれた職員がいたことから,hサブチーフの言動は,指導の域を明らかに超えており,いじめと評価すべきものであった。 hサブチーフ 不安定になり,精神科に 通院するようになった職員や退職に追い込まれた職員がいたことから,hサブチーフの言動は,指導の域を明らかに超えており,いじめと評価すべきものであった。 hサブチーフによるいじめは,aがb工場で勤務を開始してからはaに向けられるようになり,具体的には,「お前なんかあっち行っとれ。」,「い つまでこの職場にいるんだ。」,「まだ(この職場に)いるのか。」などと言ったり,大声で「辞めろ。」と言ったりするものであり,常態的にaにとってのストレスとなっていた。 このようなhサブチーフによる言動は,平成23年12月26日付け都道府県労働局長宛通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について (基発1226第1号)」により定められた認定基準(以下「労災認定基 準」という。)において,心理的負荷が「強」であるとされる「ひどい嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」に該当するものであるし,平成24年3月16日付け地方公務員災害補償基金各支部長宛通知「精神疾患等の公務災害の認定について(地基補第61号)」(以下「公務災害認定基準」という。)において,「強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象」であると される「職場でひどい嫌がらせ,いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」に該当するものであった。 fチーフの異動fチーフは,上司に対して,自分とaを一緒にしておいてほしいと希望していたが,交通局は,平成26年10月,hサブチーフとaの所属はそ のままに,fチーフのみを台車B班から異動させた。その結果,hサブチーフを注意したり,aをフォローしたりすることができる者がいなくなり,aは,ますます精神的に追い込まれた。これは,労災認定基準にいう「理解してくれていた人の異動があった」に該当し,これ自 ,hサブチーフを注意したり,aをフォローしたりすることができる者がいなくなり,aは,ますます精神的に追い込まれた。これは,労災認定基準にいう「理解してくれていた人の異動があった」に該当し,これ自体の心理的負荷の強度は「弱」とされているが,本件においては,hサブチーフの言動によ るaに対する心理的負荷を更に強くするものであった。また,公務災害認定基準において,「強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象」であるとされる「機構・組織等の改革又は人事異動等による,急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合」に準ずるものであった。 平成27年3月16日の出来事aは,平成27年3月16日,減速機のピニオン蓋を変形させてしまった(以下「ピニオン蓋の変形の件」という。)が,即座に申告しなければいけないミスであるとの認識を欠いていたため,申告が遅れてしまい,ⅰサブチーフから注意を受けるということがあった。これによりaは心理的負 荷をうけたものの,その強度は,労災認定基準でいうと,「弱」であった。 平成27年4月8日の出来事aは,平成27年4月8日,職場で発覚した油漏れ(以下「油漏れの件」という。)について,自分の作業に原因があるのではとパニックになることがあった。油漏れの件の原因は,結局判明しなかったものの,aは,後にgチーフから,その原因はaにある旨指摘をされたことにより,労災認 定基準でいう「中」の心理的負荷を受けた。 平成27年4月10日の出来事aは,平成27年4月10日,gチーフ,hサブチーフ及びⅰサブチーフに囲まれて1時間程度の長時間にわたる面談(以下「本件面談」という。)を余儀なくされた。その際,①gチーフが,油漏れの件について,原因は 判明していないにもか フ,hサブチーフ及びⅰサブチーフに囲まれて1時間程度の長時間にわたる面談(以下「本件面談」という。)を余儀なくされた。その際,①gチーフが,油漏れの件について,原因は 判明していないにもかかわらず,aの責任であると決めつけるなどし,②hサブチーフが,ピニオン蓋の変形の件について,その必要がないのに,具体的な損害額を告げ,③gチーフ及びhサブチーフが,aに対し,やる気があるのかどうか問い,aが答えられずに時間が過ぎていく間,何度も回答を迫り,次第に口調も強くなり,hサブチーフが「どうせまた野球部 に頼るんだろう。」と述べ,gチーフが「このままで仕事をするなら上司におれが採用しないでくれと言いに行くぞ。」と述べるなどの不適切な行為があった。これらにより,aは,労災認定基準でいう「中」の心理的負荷を受けた。 心理的負荷の総合評価 以上を踏まえれば,aがb工場における勤務に起因して受けていた心理的負荷は,本件自殺前の時点で,総合評価として労災認定基準でいう「強」といえるものであった。 精神障害の発病本件の事実経過やaによるツイッターへの投稿内容によれば,aには, 本件自殺前の時点において,うつ病エピソードの典型的な3つの症状のす べてが認められ,さらに他の一般的な症状のうち4つが認められる。そして,aの抑うつ状態は,平成27年1月頃には臨床的に問題になる程度に至っていたから,症状が2週間を優に超えていた。 よって,aは,中等症うつ病エピソードを発病していたものである。 業務外要因の不存在 他方,aには,b工場における勤務以外に精神障害や本件自殺に至る原因となる心理的負荷や個体側要因は存在しなかった。 相当因果関係以上のとおり,aは,b工場における業務に起因し 他方,aには,b工場における勤務以外に精神障害や本件自殺に至る原因となる心理的負荷や個体側要因は存在しなかった。 相当因果関係以上のとおり,aは,b工場における業務に起因して,「強」と評価できる心理的負荷を受け,これにより,中等症うつ病エピソードを発病した。 そのような状態にあるaが自殺をすることは,その病態からして通常あり得ることというべきであり,そのような事態(本件自殺)が実際に生じたのであるから,相当因果関係が当然認められる。 イ安全配慮義務違反被告は,aに業務の遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して心身 の健康を損なうことがないよう,また,自殺まで追い込まれることがないよう注意し,適切な措置を講ずべき義務を負う。本件における被告の安全配慮義務違反の具体的内容は,以下の2点である。 hサブチーフの言動に対する対応・対処がなく,むしろ,aの支えであったfチーフを異動させるなど,職場環境を悪化させたこと hサブチーフによる問題のある言動は,b工場において常態化しており,aが対象となる以前も,複数の者がhサブチーフの言動により精神が不安定になり,中には,精神科に通院するようになった職員や退職に追い込まれた職員がいたのであるから,hサブチーフの言動は,管理職において看過してはならないものであった。このようなhサブチーフによる言動は, b工場内でも周知の事実であり,これを見かねた他の職員から幾度となく 上申がされていたのであるから,b工場の工場長や修車係長も,当然把握していたものである。 そして,aは,hサブチーフによるいじめにより,大きな心理的負荷を受けていたのであるから,被告には,職場環境を整える義務の一環として,aをhサブチーフの下に配属しない,又は仮に配 いたものである。 そして,aは,hサブチーフによるいじめにより,大きな心理的負荷を受けていたのであるから,被告には,職場環境を整える義務の一環として,aをhサブチーフの下に配属しない,又は仮に配属するにしても,aが精 神的に追い込まれることがないよう,aとhサブチーフの関係に気を配る義務があったものというべきである。 しかし,被告は,組織としてhサブチーフに適切な指導を行い,態度を改めさせるなどせず,aとhサブチーフの班を変えるなどの対策もしていない。むしろ,交通局は,平成26年10月,aとhサブチーフの配属は そのままに,これまで現場でaのフォローをしていたfチーフのみを異動させ,その後,何らaのためのフォロー態勢も整えなかった。 本件面談におけるgチーフ及びhサブチーフの言動が不適切であったことaは,gチーフ及びhサブチーフらに囲まれて,長時間にわたる本件面 談を余儀なくされ,その中で,gチーフ及びhサブチーフは,aを不適切な方法で叱り,正規職員になれない旨述べるなどした。aが本件面談の時点において既に相当強度のストレス状態に置かれていたことは,gチーフ及びhサブチーフに加え,b工場の工場長や修車係長も当然認識していた。 したがって,b工場の工場長や修車係長は,gチーフ及びhサブチーフら が適切な言動をするよう監督し,aに対して,b工場における勤務に絶望を抱くような発言をすることは厳に慎むよう,指導監督しなければならなかったにもかかわらず,これを怠ったものである。 ウ予見可能性に関する補充その他b工場の管理職による予見可能性 b工場の工場長及び修車係長は,hサブチーフによるいじめを把握して いたはずである。仮にこれを同人ら管理職が把握していなかったとしても,hサブチーフによ 場の管理職による予見可能性 b工場の工場長及び修車係長は,hサブチーフによるいじめを把握して いたはずである。仮にこれを同人ら管理職が把握していなかったとしても,hサブチーフによるいじめは,強度の心理的負荷をもたらす程度のもので,かつ,実際に現場で起こっていたことであるし,a以前にも他の複数の職員が対象となり,中には退職に至る者もおり,管理職において積極的に調査・対応をしなければならない事柄であった。管理職がこれら事情を把握 していないとすれば,それは,管理職と現場の報告・協議が十分でなかったが故である。 また,精神障害を発病した者が自殺に至るのはままあることであるから,hサブチーフによるaに対するいじめ等を認識していた(認識すべきであった)b工場の工場長及び修車係長は,これに対する適切な措置を講じな ければaが自殺のような重大な行動を起こすおそれがあることを予見できたものである。 本件面談はhサブチーフらによる不法行為と評価し得ること本件面談については,hサブチーフによるいじめにgチーフが加担したものであり,両名によるいじめ(不法行為又は安全配慮義務違反)である。 そして,本件面談とaの精神障害の発病・本件自殺との間には相当因果関係が認められることからすれば,b工場の工場長及び修車係長の予見可能性を問うまでもなく,被告は,国家賠償法1条1項に基づき賠償責任を負う。 (被告の主張) ア aが精神障害を発病したのか不明であることaのストレス状態は交通局が把握する限り問題がなかったことa aは,平成25年6月及び平成26年6月,交通局が実施する健康診断を受診し,同年8月,保健師と面談を行い,平成25年9月及び平成26年9月,交通局が実施したストレスチェックを受けたが,いずれに a aは,平成25年6月及び平成26年6月,交通局が実施する健康診断を受診し,同年8月,保健師と面談を行い,平成25年9月及び平成26年9月,交通局が実施したストレスチェックを受けたが,いずれに おいても,そのストレス状態に大きな問題は見られなかった。 bb工場の修車係長は,毎年度2回,職員に対する人事制度上の面談を行っており,その際には,健康状態の確認や悩み相談等も行っているところ,aからいじめ等に関する申告や相談はなかった。 c 交通局は,「なやみ相談窓口」を設置し,所属長や人事課長等が相談員として相談に応じる制度を設けており,これを職員に周知しているが, aから相談はなかった。交通局は,その他にも,保健師が電話相談に応じる「保健師電話相談」制度や臨床心理士が直接相談に応じる相談窓口「こころへのアドバイス」を設け,これを職員に周知しているものの,aから相談はなかった。 aの状態 aは,精神障害を発病している旨の診断を受けたことはなく,職場の野球部の活動にも変わりなく参加していたし,私生活でも,バンド活動を行ったり,平成27年1月頃からは,格闘技のジムに通い始めたりするなど,様々な活動に意欲的に参加していたのであるから,うつ病エピソードの症状はみられなかった。 原告は,aによるツイッターへの投稿内容を指摘するが,これらは,いずれも抽象的であり,仕事や職場のことに関連するものであるかどうかも不明であるし,そもそも交通局における健康診断やストレスチェックにおいて精神障害の発病が否定された時期においても,aは,ツイッター上にネガティブな投稿をしており,抑うつのエピソードとしては疑問である。 イ本件自殺はb工場における勤務に起因するものではなく相当因果関係がないことhサブチ いても,aは,ツイッター上にネガティブな投稿をしており,抑うつのエピソードとしては疑問である。 イ本件自殺はb工場における勤務に起因するものではなく相当因果関係がないことhサブチーフの言動hサブチーフのaに対する言動に関する原告の主張は,日時を特定しない抽象的なものであり,本件自殺との間に因果関係がある事実を的確に指 摘できているとはいえない。 fチーフの異動fチーフは,台車B班の隣の台車A班に異動したのであり,異動後もaと作業場が近く,引き続きaのフォローをしたり,野球部での活動を通じてaと会ったりしていたのであるから,fチーフの異動による心理的負荷は相当低いというべきである。 ピニオン蓋の変形の件及び油漏れの件これらによる心理的負荷は,軽微なものである。なお,油漏れの件の原因は,判明しなかったものの,aには作業担当者としての責任があることから必要な指導がされたにすぎず,gチーフは,aに責任を押し付けたりしたものではない。 本件面談gチーフ及びhサブチーフは,aを問い詰めたり叱責したりしようとしたわけではなく,正規職員への採用も視野に入る若年嘱託職員3年目を迎えるaに対し,激励やアドバイスをしようとしたものであり,退職を強要したり,勧奨したりする言動もなかった。上記両名の言動は,全体として, aに対する指導の範囲を逸脱するものではなかった。よって,これによる心理的負荷の程度は,労災認定基準でいう「弱」にすぎないものである。 心理的負荷の総合評価以上のとおり,本件自殺前の概ね6か月の間において,平均的労働者にとって精神障害を発病させるほどの強度の心理的負荷が生じるような出 来事は,業務上発生していない。よって,b工場における勤務と本件自殺との ,本件自殺前の概ね6か月の間において,平均的労働者にとって精神障害を発病させるほどの強度の心理的負荷が生じるような出 来事は,業務上発生していない。よって,b工場における勤務と本件自殺との間に相当因果関係は認められず,本件自殺は,aのストレスに対する個体側の反応性ないし脆弱性(対人関係の不得手や交通局採用前の職歴から想定される。)に起因したものと思料される。 ウ本件自殺の予見可能性はなく安全配慮義務違反もないこと hサブチーフのaに対する言動は,一部不適切な発言はあったものの, 作業ミスや手際の悪さに対する指導や注意の過程で行われたもので,全体として業務指導の範囲内であり,いじめに相当するものではなかった。これによる心理的負荷の程度も,「強」であったとはいえず,現に,b工場の工場長及び修車係長も,hサブチーフによるいじめは認識していない。そもそも原告の主張は,hサブチーフによるいじめについて,日時や具体的 内容を特定していない。 b工場では,fチーフが,aに対するhサブチーフの指導や注意が厳しい口調であった場合,aのフォローを行ったり,hサブチーフを注意したりしていたし,gチーフも,平成26年10月に台車B班に配属になって以降,hサブチーフがaに対して厳しい口調で指導をしていた際,「若い 子をきつく怒るな。」とhサブチーフを注意するなど,aに対しては周囲の職員がフォローしていたし,e係長も,職場巡回の際,適宜,aに声掛けをしていた。その他にも,b工場では,健康診断,ストレスチェック及び年2回の面談の実施や各種相談窓口の設置により,aの心身の状態に配慮する体制をとっていたものである。そして,当時のaが強度のストレス を受けている状態にある様子は認められなかった(現に,aの家族や友人も の実施や各種相談窓口の設置により,aの心身の状態に配慮する体制をとっていたものである。そして,当時のaが強度のストレス を受けている状態にある様子は認められなかった(現に,aの家族や友人も,本件自殺の直前であってもaに異常は感じていなかった。)ことから,aが精神障害を発病することや,自殺に至ることは予見できなかったものであり,それ以上の特段の配慮を行う必要性は認められなかった。 本件面談は,aに対して激励やアドバイスを行うものであり,指導の範 囲を逸脱するものではなく,当時,aには心理状態に特段の問題を抱えている様子はみられなかったことからすれば,当時の状況下において,b工場の工場長や修車係長がaの心理状態に配慮し,gチーフらに対し,aへの指導の際に現に慎むべき言動について,具体的に指導監督する義務があったとは認められない。また,本件面談におけるhサブチーフ及びgチー フの言動が,安全配慮義務に違反する,あるいは不法行為に該当するよう な不適切なものであったとはいえない。 ⑵ 損害の発生及びその額(争点2)(原告の主張)ア aの法定相続人は,原告のみであり,原告は,aの被告に対する損害賠償請求権を相続した。 イ損害項目葬儀費用 150万円死亡慰謝料及び原告固有の慰謝料 2700万円交通局は,職場内でのいじめを認識していたにもかかわらず,これを黙殺したのであり,その責任は,重大である。 他方,aは,私生活は充実していたが,職場での人間関係や心理的負荷に耐えられず,自殺を選択せざるを得なかったのであり,その精神的苦痛は甚大であったといわざるを得ない。また,原告は,当時,aと二人暮らしであり,年金とa 充実していたが,職場での人間関係や心理的負荷に耐えられず,自殺を選択せざるを得なかったのであり,その精神的苦痛は甚大であったといわざるを得ない。また,原告は,当時,aと二人暮らしであり,年金とaの収入により生計を立てていた。原告は,aの自殺によりショックを受けただけでなく,交通局から十分な説明を受けることが できず,さらに,その説明の一部(交通局が全員から聴取を行い,改善を行った。)も事実ではないようであり,その精神的苦痛は甚大である。 したがって,aの死亡慰謝料及び原告固有の慰謝料は,合わせて2700万円が相当である。 逸失利益 5306万4859円 以下のとおり算定すべきである。 a 基礎収入賃金センサスのうち,「産業計,企業規模計,男性,大学・大学院卒,全年齢平均」により648万1600円とする。なお,被告は,aが交通局の正規職員になることを前提に将来の年収について推計をすべき としているが,昇進の時期は職員によって異なるし,交通局の給与支給 に関する規程も,ほとんど毎年,場合によっては年内に複数回改正されており,社会状況や経済状況等により様々な変更があり得るところである。よって,被告による推計には蓋然性が認められないから,基礎収入は,飽くまで賃金センサスにより算定すべきである。 b 生活費控除率 50%とする。 c ライプニッツ係数就労可能年数について,本件自殺当時32歳から67歳までの35年間として,16.374とする。 d 計算式 648万1600円×(1-0.5)×16.374弁護士費用 900万円ウ損害合計 る。 d 計算式 648万1600円×(1-0.5)×16.374弁護士費用 900万円ウ損害合計 9056万4859円(被告の主張)ア逸失利益算定に当たっては,概ね30歳未満の若年者について,平均賃金 を基礎収入として用いる場合があるが,aは,本件自殺当時32歳であり,これには当たらない。本件自殺の前月(平成27年3月)のaの給与支給実績額は,諸手当を含み20万5576円であり,逸失利益の算定に当たっては,基礎収入を年額246万6912円(20万5576円×12)とすべきである。 イ仮に平均賃金を用いるとしても,賃金センサスによるのではなく,交通局において65歳まで勤務した場合の平均賃金を使用すべきである。原告が主張する基礎収入は,aが交通局職員として勤務を続けたとして推計される賃金額より著しく高いものである。 aは,本件自殺当時,若年嘱託職員であったが,平成28年4月1日か ら被告の正規職員となることを前提にして推計すると,別表「全年齢平均 収入の推計」のとおりであり,基礎収入は,年額498万7738円とすべきである。なお,別表の各欄の算定根拠は,以下のとおりである。 a 給料月額平成27年度は若年嘱託職員としての給料月額,平成28年度から令和24年度までは被告の正規職員としての給料月額の平均額(他の職員 との均衡を考慮し,通常の定期昇給及び昇格をした場合の平均額),令和25年度から令和29年度までは,定年退職後に引き続き再任用職員として在職した場合の給料月額を用いる。 b 地域手当及び賞与前記給料月額の10%を月額の地域手当とし,給料月額と地域手当 ),令和25年度から令和29年度までは,定年退職後に引き続き再任用職員として在職した場合の給料月額を用いる。 b 地域手当及び賞与前記給料月額の10%を月額の地域手当とし,給料月額と地域手当の 合計に,所定の割合を6月期又は12月期の別に乗じて得た額の合計を賞与とする。 c 超過勤務手当aの平成26年度の超過勤務実績の平均時間を使用し算出する。 ⑶ 過失相殺等による賠償額減額(争点3) (被告の主張)ア aは,いじめを受けていたことや健康状態に問題があったことについて,上司や保健師との面談でも述べていないし,交通局が設置する相談窓口に相談もしていない。 イ原告は,aと同居しており,本件自殺の直前にも会話をするなど,身近に 接していたにもかかわらず,aの異変に気付くことができなかった。 ウ以上は,a及び原告の過失と評価されるものであり,相当程度の過失相殺又は信義則上の減額が認められるべきである。 (原告の主張)ア使用者は,労働者からの申告がなくても,その健康に関わる労働環境等に 十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っており,安易に過失相殺を認める べきではないと一般に解されている。本件でも,hサブチーフは,aだけでなく,以前から他の職員にもパワハラやいじめを行っていたのであり,b工場の管理職は,これを認識していたか,少なくとも認識し得る状況にあった。 そうすると,aからの申告の有無にかかわらず,被告としては,積極的にこのような問題を解決しなければならなかったのであるから,過失相殺を認め るべきではない。 イ原告は,b工場の実態を知り得る立場になく,また,aの自殺を予見することは具体的にも抽象的にも困難であったのであり,aの異変に気付かなかったということのみで過失相殺 め るべきではない。 イ原告は,b工場の実態を知り得る立場になく,また,aの自殺を予見することは具体的にも抽象的にも困難であったのであり,aの異変に気付かなかったということのみで過失相殺を認めるべきではない。 ウなお,aには,同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想 定される範囲を外れる脆弱性を有していたなどの事情があるとはいえないから,このような意味での減額も認めるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ aの経歴・性格等ア aは,平成18年3月,j大学理工学部電気電子工学科を卒業し,同年4月,株式会社kに就職して電気系統の管理等の業務に従事したが,平成19年頃,腰を痛めたことにより休職するなどした後,平成20年5月,痛めた腰への負担等を理由に退職した。aは,その後,プールの監視員やレンタル ビデオ店のアルバイトをしていたが,平成24年夏頃,交通局の若年嘱託職員の募集に応募し,平成25年4月から交通局における勤務を開始した。 (甲35,乙2,原告)イ aは,元来,他人との付き合いが苦手な面があり,特に,大学を卒業し就職してから,対人関係に問題を感じるようになった。他方で,aは,j大学 に入学後,軽音楽部に所属していたところ,同大学卒業から9年以上経過し た後に行われたaの葬儀の際には,同部の関係者が多数参列していたことや,在学中の平成16年9月にバンドを結成し,同大学卒業後も,平成21年3月及び平成24年7月にアルバムを発売するなど活動を続けていたことから,学生生活や私生活において他者とのコミュニケーションに大きな問題を抱えていた事情はうかがわれない。 (甲10の1及び2,甲 年3月及び平成24年7月にアルバムを発売するなど活動を続けていたことから,学生生活や私生活において他者とのコミュニケーションに大きな問題を抱えていた事情はうかがわれない。 (甲10の1及び2,甲35,36,原告) ウ aには,交通局での勤務を開始する以前,精神科の受診歴はなかった。(甲35,弁論の全趣旨)エ aは,平成25年6月に実兄が結婚して新居に転居して以降は,原告と二人暮らしであった。(甲35)⑵ hサブチーフとa及びfチーフの関係 aは,交通局においてb工場の修車係台車B班に配属されたが,台車B班のhサブチーフは,aが配属されて少しした頃から,aに対し,「お前なんかあっち行っとれ。」,「いつまでこの職場にいるんだ。」,「まだいるのか。」,「辞めろ。」などと発言して厳しく当たるようになった。(甲35,原告)fチーフは,hサブチーフと同じ高校の先輩であるところ,hサブチーフが 交通局に採用されて以降,hサブチーフの言動が気になった際は,たびたび注意していた。なお,fチーフ自身は,hサブチーフがaに対して厳しい言動をしている場面に居合わせたことはほとんどなかったが,b工場の他の職員から,hサブチーフがaに対してそのような言動をしている旨聞いていた。(甲53,f) ⑶ 平成25年6月の健康診断及び定期面談ア aは,平成25年6月,交通局が実施する健康診断を受診し,問診票の「最近,気になる症状」として,便秘,下痢,肩・背中・腰が痛む,朝の目覚めが悪いにチェックを付け,保健師に相談したいことはない旨記載した。なお,上記の平成25年6月分を始め,健康診断の結果は,b工場の管理職に伝達 される仕組みにはなっていない。(乙16,40,e,弁論の全趣旨) イ d係長は,平成 ない旨記載した。なお,上記の平成25年6月分を始め,健康診断の結果は,b工場の管理職に伝達 される仕組みにはなっていない。(乙16,40,e,弁論の全趣旨) イ d係長は,平成25年6月,aの定期面談を実施したが,aからいじめに関する申告や相談はなかった。(乙40)⑷ 平成25年8月の出来事ア aは,平成25年8月12日,職場においてhサブチーフから,「早くしろ。」と大声で怒鳴られ,仕事を終えて帰宅すると,「もう嫌だ。」と言って, 机に突っ伏すなどした。aは,発熱していたため,病院で点滴を受けるなどしたものの,同月13日の午前になっても体力が回復しない様子で「もう行けない。」などと述べ,同日から休暇を取り,b工場に出勤しなくなった。 (甲35,乙6,原告)イ aは,平成25年8月15日,自分で調べて見つけたlメンタルクリニッ クを受診した。担当医師は,aについて,劣等感に起因する自意識過剰から対人関係で緊張しやすく,そのために注意力が鈍ったり,視線が気になったり,自分の意見を上手く伝えられなかったりすることが生じているようであるが,精神障害や発達障害とは認められない旨診断している。 (甲23の1,甲35,36) ウ d係長は,b工場の管理係長とともに,平成25年8月19日,aと面談をした。aは,人間関係に悩んでいること,体力面や若年嘱託職員という身分に対する不安があること,b工場における仕事は従前抱いていたイメージと異なるため,辞めるかどうか悩んでいることなどを述べた。(乙41)エ fチーフは,修車係の副主任とともに,平成25年8月20日,aの自宅 近くの喫茶店でaと話をし,交通局を辞めないように説得するなどした。fチーフは,aに対し,hサブチーフのことで辛い思いをしているのでは ,修車係の副主任とともに,平成25年8月20日,aの自宅 近くの喫茶店でaと話をし,交通局を辞めないように説得するなどした。fチーフは,aに対し,hサブチーフのことで辛い思いをしているのではないかと質問したものの,aは,これに対し,はっきりとした返答はしなかった。 (甲53,f,弁論の全趣旨)オ aは,平成25年8月21日,勤務を再開した。(乙6) カ aは,勤務再開後,fチーフからの誘いでb工場の野球部に入部し練習に 参加するようになった。aは,平成27年4月8日まで,同部の練習(平日の昼休みに加え,月に二,三回,土曜日に半日)のほとんどに参加していた。 (f,弁論の全趣旨)⑸ 平成25年9月のストレスチェックaは,平成25年9月頃,交通局が実施するストレスチェック(n大学監修) を受け,仕事,最近1か月の状態及び周囲の人々との関係等について回答したが,その結果に特筆すべき問題点はなかった。なお,上記の平成25年9月分を始め,ストレスチェックの結果は,b工場の管理職に伝達される仕組みにはなっていない。(乙22ないし24,40)⑹ 平成26年2月の定期面談 d係長は,平成26年2月,aの定期面談を実施したが,aから,いじめに関する申告や相談はなかった。(乙40)⑺ カウンセリング受診aは,平成26年3月頃,自らカウンセリングを受けることにしたが,カウンセラーからは,精神障害の発病の可能性が指摘されることはなく,あなたは 普通ですよ,何かあったら来なさいなどと言われるにとどまった。(甲35)⑻ 平成26年6月の健康診断及び定期面談ア aは,平成26年4月以降も,hサブチーフから職場において,「辞めろ。」,「まだ辞めないのか。」,「こんなふうでは正規の職員になれないぞ。 甲35)⑻ 平成26年6月の健康診断及び定期面談ア aは,平成26年4月以降も,hサブチーフから職場において,「辞めろ。」,「まだ辞めないのか。」,「こんなふうでは正規の職員になれないぞ。」などといった嫌味を言われることがあった。(甲35,原告) イ aは,平成26年6月12日,交通局が実施する健康診断を受診し,問診票の「最近,気になる症状」として,腹が張った感じ,胃がもたれる,下痢,汗が多い,口が渇く,いつも楽しめることが楽しめなくなった,夜中によく目が覚める,朝の目覚めが悪いにチェックを付け,保健師に相談したいことはない旨記載した。保健師は,同日,上記問診票の結果を踏まえてaと面談 したが,aは,2年目でまだ疲れがある,夜中に目が覚めるのは前年の秋く らいからであるが,ぐっすり眠ることができる日もあるので大丈夫などと回答している。(乙18,弁論の全趣旨)ウ e係長は,平成26年6月24日,aの定期面談を実施したが,aから,いじめに関する申告や相談はなかった。(甲7,乙3の1,乙40,e)エ e係長は,平成26年6月,ⅰサブチーフの定期面談を実施した。ⅰサブ チーフは,その際,e係長に対し,hサブチーフと台車B班の班員であるm(以下「m」という。)の2名が,aに対してきつく当たっている旨報告した。 なお,mは,平成26年10月1日,台車B班から異動した。(甲52,ⅰ)⑼ ツイッター裏アカウントによる投稿aは,平成26年7月,従前から使用しているものとは別のツイッターアカ ウント(以下「本件裏アカウント」という。)を利用して,ツイッターへの投稿を開始した。本件裏アカウントによる投稿のうち本件に関連するものは,別紙「本件裏アカウント投稿内容」のとおりである。(甲6,弁論の全趣旨)⑽ 裏アカウント」という。)を利用して,ツイッターへの投稿を開始した。本件裏アカウントによる投稿のうち本件に関連するものは,別紙「本件裏アカウント投稿内容」のとおりである。(甲6,弁論の全趣旨)⑽ 平成26年8月の保健師との面談保健師は,平成26年8月19日,前記⑻イの問診票の記載を踏まえ,aの 面談を実施した。保健師は,aについて,睡眠は改善傾向にある,明らかな精神の不調はなさそうであると判断したが,念のため,交通局が設けている保健師や臨床心理士の相談窓口を紹介した。上記面談の結果は,b工場の管理職には伝達されていない。(乙19,20,e)⑾ 平成26年9月のストレスチェック aは,平成26年9月頃,交通局が実施するストレスチェック(n大学監修)を受け,仕事,最近1か月の状態,周囲の人々との関係などについて回答したが,その結果に特筆すべき問題点はなかった。(乙25ないし27)⑿ fチーフの異動等ア fチーフは,定例の異動により,平成26年10月1日に台車B班から台 車A班へ異動することとなった。fチーフは,その内示を受けて,e係長に 対し,台車B班からfチーフが抜けてhサブチーフとaが残ることになるが問題ないのか,fチーフに代わって誰が2名の様子を見るのか,などと質問した。(甲53,f)イ gチーフは,平成26年10月1日に台車B班のチーフとなったが,同年11月頃,hサブチーフがaを大きな声で注意しているのを聞いて,hサブ チーフに対し,若い職員にきつく怒らないよう注意した。fチーフは,その話を聞いて,gチーフに対し,自分も台車B班にいた際は若い職員に強く言わないようhサブチーフを注意していた,hサブチーフには注意してほしい旨伝えた。(乙46,g)⒀ 格闘技ジムに通うようになった 話を聞いて,gチーフに対し,自分も台車B班にいた際は若い職員に強く言わないようhサブチーフを注意していた,hサブチーフには注意してほしい旨伝えた。(乙46,g)⒀ 格闘技ジムに通うようになったこと aは,同僚の誘いを受けて,平成27年1月頃から同年3月頃まで,頻度はそれほど多くはなかったものの,格闘技のジムに通うようになり,懇親会や試合の応援,旅行などにも参加した。(甲35,原告)。 ⒁ 平成27年2月の定期面談e係長は,平成27年2月18日,aの定期面談を実施したが,aから,い じめに関する申告や相談はなかった。(甲7,乙3の2,乙40,e)⒂ 平成27年3月16日の出来事(ピニオン蓋の変形の件)aは,平成27年3月16日,減速機からピニオン蓋を取り外す作業を行う際,本来は,ピニオン蓋取り付けボルト6本を全て外してから,ピニオン蓋抜き取り用ボルト2本をねじ込み,ピニオン蓋を少しずつ浮かせながら作業をす る必要があるところ,ピニオン蓋取り付けボルトを締め付けたまま,ピニオン蓋抜き取り用ボルトをねじ込む作業を行ったため,ピニオン蓋を変形させたが,これを直ちに周囲に報告しなかった(ピニオン蓋の変形の件)。その後,同日中に,上記ピニオン蓋の変形が明らかになり,aは,自身が変形させた旨報告した。ⅰサブチーフは,aに対し,「すぐに言わないかんよ。」と注意した。 (甲7, 52,ⅰ) ⒃ 平成27年4月8日の出来事(油漏れの件)等ア gチーフらは,平成27年4月8日,台車回転試験を実施した際,台車の減速機のピニオン蓋から油漏れが生じていることを発見した(油漏れの件)。 油漏れを起こした箇所は,a及び台車B班の他の班員が作業を担当していた部分であったが,油漏れの原因は,台車を分解しても判明 車の減速機のピニオン蓋から油漏れが生じていることを発見した(油漏れの件)。 油漏れを起こした箇所は,a及び台車B班の他の班員が作業を担当していた部分であったが,油漏れの原因は,台車を分解しても判明しなかった。油漏 れの問題は,同月9日に再度台車回転試験が実施されて解消した。(甲7,52,乙46)イ aは,平成27年4月9日,当初から予定していた休暇により出勤しなかった。aは,同日,自宅で過ごしたが,油漏れの件が気になっている様子であり,同月10日に出勤する際も,原告に対し,油漏れの件の責任が自身に あるのではないかと思うと職場に行きづらい旨述べていた。(甲35,弁論の全趣旨)⒄ 平成27年4月10日の出来事(本件面談)ア gチーフ,ⅰサブチーフ及びhサブチーフは,平成27年4月10日(以下,⒄項においては,同日の出来事の場合,年月日の記載を省略する。)午前 11時10分頃,台車係員室の近くでピニオン蓋の変形の件及び油漏れの件について話をしていたところ,aが集塵機の清掃作業を終えた旨報告に来た。 そこで,上記4名は,aを端にして横一列に座って話をすることとなった。 (甲7,52,乙46,g,ⅰ)イ gチーフは,aに対し,ピニオン蓋の変形の件について,今後,部品を壊 すことがあれば,若年嘱託職員であるaの正規職員への採用について修車係長に自信を持って良い評価を伝えることができない旨述べ,油漏れの件について,aのみの責任ではないとしながらも,技術員として悔しくないのか問うなどした。その上で,gチーフが,ⅰサブチーフ及びhサブチーフに対し,aへのアドバイスを尋ねたところ,ⅰサブチーフは,周囲とコミュニケーシ ョンを取ることでミスを減らすことができるようになる旨述べた。他方,h サブチーフは,a びhサブチーフに対し,aへのアドバイスを尋ねたところ,ⅰサブチーフは,周囲とコミュニケーシ ョンを取ることでミスを減らすことができるようになる旨述べた。他方,h サブチーフは,aに対し,仕事ができていると思うかと質問し,aが「大体できていると思います。」と返答すると,「僕はできていないと思う。」などと述べた。gチーフ及びⅰサブチーフはこれを否定したが,hサブチーフは,さらに,ピニオン蓋の変形の件について,その損害は60万円である,副主任に頭を下げさせた,aとはみんな一緒に仕事をしたくないと思っている, 野球部の人も仲良くしてくれているが,一緒に仕事をするようになればaを避けるようになるはずであるなどと述べた(なお,ピニオン蓋の変形の件による損害額は,実際には10万円から15万円ほどであったが,hサブチーフがこれを知っていたか否かは明らかではない。)。その後,gチーフは,aに対し,やる気があるなら話を続けるが,ないなら続けても仕方がないなど と述べたが,hサブチーフは,「何も考えず,やる気があると言っておけばいいと思っているんだろう。」などと述べた。aは,これに対し,約20分間,返答することができずにいたが,その間,gチーフとhサブチーフは,aに対し,やる気があるのかと数回問うなどした。その後,hサブチーフが,やる気がないなら辞める道もある,fチーフらにまた頼るのであろうなどと述 べると,aは,ようやく,「やる気はあります。」と答えた。これを受けて,gチーフは,aに対し,話の続きは午後3時30分から行う旨述べ,11時50分頃,面談を一旦終了した。(甲7ないし9,52,ⅰ)ウ aは,昼休みの野球部の練習に参加しなかった。 エ aは,午後の業務がひと段落した午後4時頃,gチーフに対し,「話合いは 11時50分頃,面談を一旦終了した。(甲7ないし9,52,ⅰ)ウ aは,昼休みの野球部の練習に参加しなかった。 エ aは,午後の業務がひと段落した午後4時頃,gチーフに対し,「話合いは どうしましょうか。」と自ら話し掛け,午前と同じ場所で,面談を続けることとなった。なお,hサブチーフは,午後から休暇を取っていたため,gチーフ,ⅰサブチーフ及びaの3名で話をすることになった。 (甲7,乙46,g)オ gチーフが,aに対し,やる気があるならどうするつもりなのかと質問したところ,aは,「これからも頑張っていきます。」と述べた。gチーフは, 台車B班内にある減速機班と小物班間の人員入替えを慣例どおりに行うと, 平成27年4月15日以降,aとhサブチーフが同一の班になるところ,aがhサブチーフではなく,ⅰサブチーフと1年間通じて仕事をできるようにする旨述べた。aは,ⅰサブチーフに対し,「お願いします。」と述べるなどし,午後の話合いは5分程度で終了した。(甲7,乙46,g)カ aは,その後,後片付けや戸締りをするなどしていたが,他の職員が,a の心身の変調に気付くことはなかった。(甲7,乙46,g,ⅰ)⒅ 本件自殺に至るまでの経過ア aは,平成27年4月10日の帰宅後,原告に対し,ピニオン蓋の変形の件やオイル漏れの件について叱られたこと,gチーフとhサブチーフが正規職員にはなれないと嫌味を言い,いつものように相変わらず辞めろと言って きたこと,翌日,野球部の練習があれば参加するつもりであることなどを述べた。(甲35,原告)イ aは,平成27年4月11日,野球部の練習が雨天により中止になったため,日中,自宅で過ごした後,夜からバンドの友人と飲み会に出掛け,朝方,帰宅した。友人らは,飲み会の際,aの (甲35,原告)イ aは,平成27年4月11日,野球部の練習が雨天により中止になったため,日中,自宅で過ごした後,夜からバンドの友人と飲み会に出掛け,朝方,帰宅した。友人らは,飲み会の際,aの心身の変調に気付くことはなかった。 (甲35)ウ原告は,平成27年4月12日午前10時頃,aと顔を合わせたが,心身の変調に気付くことはなかった。aは,同日,友人のライブを見に出かけ,午後9時頃,帰宅した。(甲35,原告)エ aは,その後,原告が気付かないうちに自宅を出て,平成27年4月13 日,名古屋市内の公園の路肩に停車した自動車内で練炭を燃焼させ,一酸化炭素中毒により死亡した(本件自殺)。(甲35,46) 2 事実認定の補足説明⑴ hサブチーフの言動についてア hサブチーフの言動については,以下の供述がある。 原告は,aから,hサブチーフのaに対する言動について以下のとおり 聞いていた旨供述する(甲35,原告)。 ① aがb工場に配属になり,少しした段階で,「お前なんかあっち行っとれ。」,「いつまでこの職場にいるんだ。」,「まだいるのか。」,「辞めろ」などと言われた。 ② 平成25年8月12日,「早くしろ。」と大声で怒鳴られた。aは,そ の翌日からしばらく出勤しなくなった。 ③ 平成26年4月以降も,「辞めろ。」,「まだ辞めないのか。」,「こんなふうでは正規の職員になれないぞ。」などといった嫌味を言われた。 ⅰサブチーフは,hサブチーフの言動について以下のとおり供述する(甲52,ⅰ)。 ① hサブチーフによる厳しい言動の対象になるのは,大人しくて,かつ,hサブチーフが個人的に嫌いな人であった。 ② hサブチーフは,単に間違っている旨指摘すれば足りる程度のことでひどく怒っ ① hサブチーフによる厳しい言動の対象になるのは,大人しくて,かつ,hサブチーフが個人的に嫌いな人であった。 ② hサブチーフは,単に間違っている旨指摘すれば足りる程度のことでひどく怒ったり叱ったりし,その後,特にフォローもしない。わざわざ近寄って言ったり,他人に言いふらしたりすることもしていた。台車B 班のある班員は,クレーン操作をしていた際,hサブチーフが激怒したため動揺してしまい,ⅰサブチーフがクレーン操作を交代せざるを得ないほどであった。 ③ hサブチーフは,aに対し,たびたび他人の名前を出して,aが批判されている旨述べていた。 ④ hサブチーフは,「アスペ(アスペルガー症候群のこと)」などとaの人格を否定する趣旨の発言をしていた。 ⑤ hサブチーフは,aに対し,辞めろという話を常日頃していた。 イ前記各供述の信用性について検討するに当たっては,以下の事情を指摘することができる。 ⅰサブチーフに,hサブチーフを虚偽の供述により貶めようとする動機 があるとは証拠上認められない。また,ⅰサブチーフは,後記のとおりその作成経緯及びその作成時期等に照らし信用できる甲第8号証においても,hサブチーフが普段からaに対し「辞めろ。」と言っていた旨回答したことが記載されている。 fチーフは,平成25年8月20日,同月13日以降出勤していなかっ たaに対し,hサブチーフの言動に悩んでいるのではないかと尋ねている。 これは,fチーフ自身が,hサブチーフがaに対して厳しい言動をしている場面に居合わせたことはほとんどなかったものの,そのような噂を聞いていたためであった。 後記のとおりその作成経緯及びその作成時期等に照らし信用できる甲 第7号証によれば,hサブチーフは,本件面談の際,a たことはほとんどなかったものの,そのような噂を聞いていたためであった。 後記のとおりその作成経緯及びその作成時期等に照らし信用できる甲 第7号証によれば,hサブチーフは,本件面談の際,aに対し,aとはみんな一緒に仕事をしたくないと思っている,野球部の人も仲良くしてくれているが,一緒に仕事をするようになればaを避けるようになるはずである,やる気がないなら辞める道もある,fチーフらにまた頼るのであろうなどと,aの自信を失わせ,職場で孤立させるような言動を現に行ってい る。 前記のとおり信用できる甲第8号証には,台車B班の複数の班員が,hサブチーフがaに対し普段から「辞めろ。」と言っていた旨回答したことが記載されている。そして,上記台車B班の複数の班員がhサブチーフについて虚偽の供述を行い,hサブチーフを貶める動機は見当たらない。 gチーフは,本件面談において,aに対し,今後,台車B班内の慣例の人員入替えの方法を変更し,aがhサブチーフではなく,ⅰサブチーフと1年間通じて仕事をできるようにする旨述べているところ,これは,gチーフにおいても,aがhサブチーフの言動を負担に感じていることを認識していたが故であると認められる。 ウ前記イの各事情を踏まえれば,hサブチーフのaに対する言動に関する前 記アの各供述は,そこに記載した限度でその信用性を肯定することができる。 さらに,本件証拠上,hサブチーフの言動がaの在職期間を通じて改善されたなどという事情は認められないことを踏まえれば,hサブチーフは,aに対し,aがb工場で勤務を開始して以降,継続して長期間にわたり,強い口調により怒鳴りつけ,職場には不要であるとしてaの自信を失わせる発言や, 正規職員への登用が困難であるとして将来への不安をあおる し,aがb工場で勤務を開始して以降,継続して長期間にわたり,強い口調により怒鳴りつけ,職場には不要であるとしてaの自信を失わせる発言や, 正規職員への登用が困難であるとして将来への不安をあおる発言,周囲から必要とされていないとしてaを職場で孤立させる発言,何らかの精神障害を抱えているかのような指摘をするなど人格を否定する発言をしていたものと認められる。 そして,hサブチーフのこのような強圧的な言動は,職場の上司ないし先 輩による業務上の指導として正当化する余地がおよそないものであって,aに対して過重な心理的負荷を与え続けるものであったことが明らかである。 以上に対し,hサブチーフは,aを一人前にしたかったこと,職務中は常に危険と隣り合わせで,些細なことが大事故になること,乗客の安全にも関わることから厳しく指導することもあったが,飽くまで職務の範囲内 であり,行き過ぎた指導だったとは思わない,「いつまでこの職場にいるんだ。」,「まだいるのか。」,「まだ辞めないのか。」,「こんなふうでは正規の職員になれないぞ。」などと言ったことはないなどと供述する(乙43,h)。 しかし,hサブチーフは,本件面談の際にも,gチーフ及びⅰサブチー フが否定する中,ただ一人aに対して仕事ができていないと述べたり,特段の根拠も指導上の必要性もないのに,aとはみんな一緒に仕事をしたくないと思っているなどと述べてaに孤立感を与え,さらにaに対して嫌味を述べたばかりか長時間にわたり沈黙を続けたaに対して辞める道もあるなどと述べている(甲7)。本件面談におけるこのような言動に照らす と,hサブチーフの上記供述は,不自然なものであって到底信用できない。 また,gチーフは,hサブチーフの言動について,厳しい口調になるこ 。本件面談におけるこのような言動に照らす と,hサブチーフの上記供述は,不自然なものであって到底信用できない。 また,gチーフは,hサブチーフの言動について,厳しい口調になることはあったものの,それは何か作業ミス等があった場合のみであり,他の職員にも同様の言動をしていたため,いじめではなく指導であったと考える旨供述する(乙46,g)。 しかし,仮に,hサブチーフがaに対して厳しい言動をするのが,主に, aが作業ミス等をした場合であったとしても,殊更にaの自信を失わせ,職場で孤立させるような言動や,人格を否定するような言動を指導として正当化することは困難であることからすると,そもそも,hサブチーフ及びgチーフの述べる「指導」の意味は,社会通念上想定される適切な指導の範囲を外れたものであることがうかがわれる。 以上によれば,hサブチーフ及びgチーフの前記各供述は,前記ウの判断を覆すに足りるものではない。 ⑵ e係長への進言についてア e係長は,ⅰサブチーフとの面談においては,hサブチーフとmが台車B班において強い意見を言っているとは聞いたものの,専らaを対象にしてい るとは聞いていなかった趣旨の供述をする(e)。 しかし,現場で強い意見を言っている者がいる旨の申告を受けた際,管理職として,それが誰を対象にしたどのような言動なのかを具体的に確認しないというのは不自然であり,e係長の上記供述は採用できない。 イ e係長は,fチーフが平成26年10月に台車B班から台車A班に異動す ることになった際,fチーフからaの教育はどうするのか,自分に任せたのではないのかと言われた記憶はあるが,hサブチーフとaだけが台車B班に残ることを問題視する発言はなかった趣旨の供述をする(e)。 しかし,若年嘱 ,fチーフからaの教育はどうするのか,自分に任せたのではないのかと言われた記憶はあるが,hサブチーフとaだけが台車B班に残ることを問題視する発言はなかった趣旨の供述をする(e)。 しかし,若年嘱託職員である原告に対する教育は,fチーフでなければできない業務というわけではない。むしろ,fチーフは,hサブチーフの高校 の先輩であり,かつaとも野球部での活動等を通じて関係が深い自分以外の 者に,hサブチーフとaの関係を踏まえた適切な対処ができるのかを疑問視し,e係長の認識を確認しようとしたと解するのが自然であり,このような事情と整合しないe係長の上記供述は採用できない。 ⑶ 本件面談についてア本件面談の際のやり取りに関する甲第7号証ないし9号証(b工場が原告 からの質問を受けて平成27年5月15日付け,同年6月15日付け及び同年7月21日付けでそれぞれ行った回答)は,本件自殺から間がなく,本件訴訟が提起される前の時期に専ら事実関係を明らかにする目的で関係者から事情聴取の上で作成されたものであって,聴取に応じた関係者自身や被告にとって不利な事実も記載されていることに照らして信用できる。よって, 本件面談については,これらの証拠及びこれらに沿う掲記の証拠から前記のとおり認定することとした。 イ hサブチーフは,本件面談の際に,aに対して辞めるという選択肢を示したことはない,ⅰサブチーフが辞めるのも1つの手だよと言っていたなどと供述し(h),gチーフも,辞めるという選択肢を出したのはⅰサブチーフで ある旨供述する(g)。 しかし,上記各供述は,前記で検討したような信用できる甲第7号証ないし9号証に反するし,本件面談が行われた当日,aが原告に述べた内容とも一致せず,採用できない。また,gチーフは,aに対し (g)。 しかし,上記各供述は,前記で検討したような信用できる甲第7号証ないし9号証に反するし,本件面談が行われた当日,aが原告に述べた内容とも一致せず,採用できない。また,gチーフは,aに対しやる気はあるのかと質問したところ,aが黙ってしまったので,約20分間,aが答えるのを黙 って待っていた旨供述する(g)が,同じく信用できる甲第7号証及び9号証に反する上,その内容自体不自然であり,採用できない。 3 医学的知見等⑴ うつ病の診断基準等世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類第10回修正版(ICD-1 0)の診断ガイドライン(以下「診断ガイドライン」という。)は,うつ病エピ ソードについて,典型的な症状として,抑うつ気分,興味と喜びの喪失,活動性の減退による易疲労感の増大や活動性の減少を挙げ,その他の一般的な症状として,集中力と注意力の減退,自己評価と自信の低下,罪責感と無価値感,将来に対する希望のない悲観的な見方,自傷あるいは自殺の観念や行為,睡眠障害,食欲不振を挙げている。その上で,診断ガイドラインは,軽症うつ病エ ピソード(F32.0)については,典型的な症状のうちの少なくとも2つ,さらに,他の一般的な症状のうちの少なくとも2つが存在し,最短でも2週間は持続していることを求め,中等症うつ病エピソード(F32.1)については,典型的な症状のうちの少なくとも2つ,さらに,他の一般的な症状のうちの少なくとも3つが存在し,そのうちの一部の症状が著しい程度であるか,あ るいは,全般的で広範な症状であり,最短でも2週間は持続していることを求めている。また,中等症うつ病エピソードの場合,患者は,通常社会的,職業的又は家庭的生活を続けることがかなり困難になるであろうとしている。(甲38,47) り,最短でも2週間は持続していることを求めている。また,中等症うつ病エピソードの場合,患者は,通常社会的,職業的又は家庭的生活を続けることがかなり困難になるであろうとしている。(甲38,47)⑵ p医師の意見 o病院精神保健支援センター長であるp医師は,aに関して,大要,以下のとおり述べている(以下「p医師意見」という。)。(甲37,48,51)ア aには,本件裏アカウントによる投稿の内容からすると,抑うつ気分,興味と喜びの喪失,活動性の減退による易疲労感の増大や活動性の減少のいずれも認められ,さらに,自己評価と自信の低下,罪悪感と無価値感,将来に 対する希望のない悲観的な見方,自傷あるいは自殺の観念がみられた。このような症状は,本件裏アカウントによる平成26年12月の投稿には既に現れており,遅くとも平成27年1月頃には顕在化していたものである。本件自殺に至るまで,その持続期間は,2週間を優に超えている。 イ aには,妄想や幻覚などの精神病症状は認められないから,精神病症状を 伴う重症うつ病エピソードには該当しない。また,aは,自宅から職場に通 い交通局における勤務をしていたこと,野球部の活動やライブ活動などにも一応参加していたことなどからは,社会的,職業的あるいは家庭的な活動を続けることがほとんどできない状態とはいえないため,精神病症状を伴わない重症うつ病エピソードにも該当しない。そこで,診断ガイドラインに挙げられた症状の項目数を満たす中等症うつ病エピソードと評価することとな るが,aの場合は,中等症うつ病エピソードの診断基準である「典型的な症状のうち2つ,一般的な症状のうち3つ」より多くの項目を満たしているため,その症状は,中等症の中でも重症寄りと考えるべきである。 ウ平成27年4月 等症うつ病エピソードの診断基準である「典型的な症状のうち2つ,一般的な症状のうち3つ」より多くの項目を満たしているため,その症状は,中等症の中でも重症寄りと考えるべきである。 ウ平成27年4月10日の本件面談は,本件自殺の直接的な契機になったと考えられるが,前記のとおり,平成26年12月頃からうつ病エピソードは 継続しており,本件面談によりうつ病エピソードが発病したわけではない。 エ aは几帳面かつ真面目な性格であることを踏まえると,以前から友人と約束していたのであろうライブを断ったり,その前に自殺を決行したりすることはできなかったものと考えられ,ライブに行ったという事実をもって,aのうつ状態が回復したと評価することはできない。 ⑶ r教授の意見q大学大学院医学研究科のr教授(精神・認知・行動医学分野)は,aに関して,大要,以下のとおり述べている(以下「r教授意見」という。)。(乙44)ア平成26年12月から平成27年2月頃までの本件裏アカウントによる投稿からは,疲労,不安,逃げ出したい心境,不眠,自信喪失,職場におけ る対人関係の悩みなどがうかがわれ,この時期に,適応障害又はうつ病レベルの状態であった可能性も否定しきれないが,平成26年9月までの健康診断やストレスチェックの結果に加え,欠勤などが生じていないこと,さらにaは平成27年1月から格闘技のジムに通うようになったことなどからすると,中等症うつ病エピソードに罹患していた可能性は極めて低い。なお, 健康診断やストレスチェックにおいて,精神障害の発病がうかがわれなかっ た時期においても,本件裏アカウントにおいては,ネガティブな投稿がされていたことから,本件裏アカウントによる投稿の内容のみでもってうつ病の診断をするのは慎重であるべきで うかがわれなかっ た時期においても,本件裏アカウントにおいては,ネガティブな投稿がされていたことから,本件裏アカウントによる投稿の内容のみでもってうつ病の診断をするのは慎重であるべきである。 aには,その後の経過を踏まえれば,平成27年3月16日のピニオン蓋の変形の件から,うつ状態が発現した可能性が高い。同年4月8日の油漏れ の件も,aが原因であるかは明らかではないものの,aにとって強いストレス要因になったことが想定される。よって,精神障害(適応障害又はうつ病)が顕在化したのは,ピニオン蓋の変形の件以降,又は油漏れの件以降であると推測されるが,いずれの可能性が高いかは不明である。また,その症状の程度については,はっきりしないが,欠勤などが生じていないことから,重 症である可能性は低い。 aには,対人関係の不得手さやそれまでの職歴からすると,一定のストレス脆弱性が存在することが想定され,精神障害の発病の原因として,aのストレス反応の特徴や性格特性等が一定の割合で寄与していた可能性がある。 イ aには,重篤なうつ病であることを示唆する仕事上の能力低下や欠勤はな く,妄想症状等もなかったことから,少なくとも周囲がすぐに気付くような重篤なうつ病であった可能性は考えにくいし,精神障害の発病及び本件自殺を周囲が予見することは難しかったものと思われる。 4 本件自殺に至る経過について前記1ないし3までの事実を踏まえ,本件自殺に至る経過について検討する。 ⑴ 本件自殺に至るまでのaの精神状態に関しては,以下の事実を指摘することができる。 ア aは,平成25年8月に出勤することができなくなった際,精神科を受診したが,その時点では,精神障害の発病は確認されなかった。その後,平成26年6月には,興味や喜びの を指摘することができる。 ア aは,平成25年8月に出勤することができなくなった際,精神科を受診したが,その時点では,精神障害の発病は確認されなかった。その後,平成26年6月には,興味や喜びの減退,不眠といった精神障害を疑わせる症状 がみられたものの,同年8月に保健師と面談した際には,精神の不調は確認 されなかった。 イ aは,平成26年7月から,本件裏アカウントによる投稿を開始しており,別紙のとおり,その当初から弱気な内容を含む投稿をしていたものの,平成26年12月になると,「心の痛みが。逃げたい。」,「逃避したい。」,「苦しい。」,「このまま消えたい。」(いずれも同月1日),「さよなら人間。」(同月4 日),「とりあえずいっぺん死んだ方がいいよ,俺。」(同月5日),「ヤバイつかれてもう不安しかない。達成感あると思ったのに。」(同月14日)などとうつ病エピソードの典型的症状である抑うつ気分や易疲労性,その他の一般的症状である自己評価と自信の低下,罪責感と無価値感,将来に対する希望のない悲観的な見方をうかがわせる投稿を行っている。aは,引き続き,平 成27年1月にも,「自分の事が信用できなくなってきてる。」,「つらい。逃げたい。」,「真っ白になりたい。」,「寝たいのに寝れない。」(いずれも同月8日),「もうキツイ。」,「どうせなにもできないんだ。」,「ひとりに。」,「せめて忘れたい。」(いずれも同月12日)など,上記うつ病エピソードの典型的な症状及びその他の一般的症状をうかがわせる投稿を行った。 ウ aは,ピニオン蓋の変形の件があった翌日(平成27年3月17日),「考えないのは向き合いたくないだけ。」,「どうせこんなかんじならなぜ悩むのか。」,「ぼくはウソつきでクズだ。」,「そんな感情も消えつつ は,ピニオン蓋の変形の件があった翌日(平成27年3月17日),「考えないのは向き合いたくないだけ。」,「どうせこんなかんじならなぜ悩むのか。」,「ぼくはウソつきでクズだ。」,「そんな感情も消えつつある。」,「ただ気が楽になりたいと思っている。」,「自分のせいなのに。」などと投稿し,さらに,油漏れの件(平成27年4月8日)を経て,「逃げ癖がついている。」,「あ たまがおかしくなれたなら。」(いずれも同日),「色々と投げ出したい。」,「もう自分が好きになれそうもない。」(いずれも同月9日)などと投稿しており,抑うつ気分やその他一般的症状はさらに進行していることがうかがえる。 エ aは,本件面談(平成27年4月10日)の後,「なにもかも捨てたい願望ばかりあふれてくる。辛い。逃げたい。」,「忘れたい。忘れたい。忘れたい。」 (いずれも同月11日)と投稿した後,同月13日,本件自殺に至っている。 ⑵ 精神障害の発病及び本件自殺ア前記⑴を踏まえると,aについて,遅くとも本件自殺の時点では,うつ病エピソードの典型的な症状のうち,少なくとも抑うつ気分,易疲労性の2つが存したこと,さらにその他の一般的な症状のうち,少なくとも自己評価と自信の低下,罪責感と無価値感,将来に対する希望のない悲観的な見方,自 傷あるいは自殺の観念や行為の4つが存し,これらのうち,自傷あるいは自殺の観念や行為を除く症状が2週間を越える相当期間継続していたことが認められる。そうすると,aは,遅くとも本件自殺の時点において,軽症うつ病エピソードを発病していたものといえ,本件自殺は,当該精神障害の影響により,正常の認識,行為選択能力が著しく阻害された状態,あるいは自 殺を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態下で行われたものと認 いたものといえ,本件自殺は,当該精神障害の影響により,正常の認識,行為選択能力が著しく阻害された状態,あるいは自 殺を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態下で行われたものと認められる。 イなお,p医師意見は,これを超えて,aは,重症寄りの中等症うつ病エピソードを発病していた旨指摘するものの,中等症うつ病エピソードの患者は,通常社会的,職業的又は家庭的活動を続けていくのがかなり困難になるとさ れている。aは,抑うつ気分の進行がうかがえる平成26年12月頃以降も本件自殺に至るまで,b工場に出勤し,台車B班における勤務をこなし,さらに,野球部の練習に参加したり,格闘技のジムに通ったりしており,ⅰサブチーフ及びfチーフを含め,周囲がその心身の変調に気付くこともなかった(ⅰ,f)し,私生活においても,本件自殺直前に,友人と飲み会やライ ブに行くことができており,生活を共にしていた原告でさえ,aが落ち込んでいるようだと考えることはあっても,これを越えて,その心身の著しい変調までは気付かなかった(原告)。そうすると,aにおいて,社会的,職業的又は家庭的活動に相当の困難が生じていたとまではいえず,中等症うつ病エピソードを発病していたとまでは認められない。 ウ被告は,交通局における健康診断やストレスチェックにおいて,精神障害 への罹患が否定された時期においても,aは,ツイッター上にネガティブな投稿をしており,本件裏アカウントによる投稿を抑うつのエピソードとするのは疑問である旨主張し,r教授意見も同旨の指摘をする。 しかし,本件自殺の時点において,精神障害を発病していた可能性が高いという限度では,p医師意見及びr教授意見が一致するところであるし,a の本件裏アカウントによる投稿にうつ病エピソ 摘をする。 しかし,本件自殺の時点において,精神障害を発病していた可能性が高いという限度では,p医師意見及びr教授意見が一致するところであるし,a の本件裏アカウントによる投稿にうつ病エピソードの症状が顕在してきたのは,健康診断やストレスチェックが行われたより後の平成26年12月になってからであるから,被告の主張は採用できない。 ⑶ b工場における勤務と本件自殺との事実的因果関係ア aは,b工場で勤務を開始して以降,前記2⑴ウのとおり,継続して長期 間にわたり,hサブチーフから過重な心理的負荷となる強圧的な言動を受けていたところ,自らの精神状態に不安を覚え,平成25年8月には精神科医の診察を,平成26年3月頃にはカウンセリングを自発的に受け,さらに,同年6月には,興味と喜びの喪失や不眠について自覚症状が生じているところである。aは,それでも同年8月の時点では,精神障害の発病にまでは至 っていなかったが,同年10月に自身にとって精神的な支えとなっていたfチーフが異動した後,同年12月頃から,抑うつ気分等のうつ病エピソードの症状が顕在化し始め,平成27年3月16日のピニオン蓋の変形の件,同年4月8日の油漏れの件の際には,当該症状はさらに進行していた。そのような状況下において,aは,同月10日,本件面談の際,gチーフから,正 規職員になれない可能性をほのめかされ,hサブチーフから,ピニオン蓋の変形の件による損害額を突き付けられた上,前記のとおり,aの自信を失わせる発言,職場で孤立させるような発言を受けた。さらに,aは,gチーフ及びhサブチーフから,やる気はあるのかと聞かれたが,約20分間答えられないという,相応の精神的打撃を受けていることが明らかな徴表を示して いたところ,上記両名から,さらにやる気がある チーフ及びhサブチーフから,やる気はあるのかと聞かれたが,約20分間答えられないという,相応の精神的打撃を受けていることが明らかな徴表を示して いたところ,上記両名から,さらにやる気があるかどうか問われ続け,hサ ブチーフからは辞める道もあるなどと言われたものである。 イこのような経過及び前記⑵の検討内容を踏まえれば,aは,hサブチーフの言動により継続的かつ長期間にわたり過重な心理的負荷を受け続けていたが,fチーフが異動した後,もはやこれに耐えきることができなくなり,うつ病エピソードの症状が顕在化し,これが進行していたところ,本件面談 において,さらに相当程度の心理的負荷を受けたことが最終的なきっかけとなって,軽症うつ病エピソードの影響下で本件自殺に至ったものと認められる。 ウ被告は,本件裏アカウントによる投稿の内容は,いずれも抽象的であり,仕事や職場のことに関連するものであるかどうかも不明であるなどと主張 する。 しかし,aは,平成27年2月20日には,「やっぱり職場は好きになれない人多いが,コミュニケーションとれないと仕事にならないし,そこから逃げてる自分が辛い。(以下略)」などと投稿しているし,前記のとおり,ピニオン蓋の変形の件,油漏れの件,本件面談の後に,抑うつ気分等をうかがわ せる投稿を行っていること,さらに,仕事や職場以外にaにとって大きなストレス要因となるものが存したとうかがわせるに足りる事実や証拠は存しないことからすれば,上記各投稿は,交通局における業務による心理的負荷に起因するものと解するのが相当である。被告の上記主張は,前記イの判断を覆すに足りるものではない。 5 安全配慮義務違反,国家賠償法上の違法及び相当因果関係について⑴ 労働者が労働するに際し,心理的負 と解するのが相当である。被告の上記主張は,前記イの判断を覆すに足りるものではない。 5 安全配慮義務違反,国家賠償法上の違法及び相当因果関係について⑴ 労働者が労働するに際し,心理的負荷等が過度に蓄積すると,労働者の心身の健康を損なう危険があることから,使用者は,労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するの が相当であり,使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を 有する者は,使用者の当該注意義務の内容に従って,その権限を行使すべきである。そして,このことは,地方公共団体と地方公務員との関係においても妥当すると解されるから,被告は,地方公務員が遂行する公務の管理に当たって,当該公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負い,これに違反する行為は,国家賠償法上違法であるというべきである。 ⑵ア既に検討したとおり,aと同じ台車B班に所属していたhサブチーフは,正規職員として採用される前段階である若年嘱託職員であるaに対し,aがb工場で勤務を開始して以降,継続して長期間にわたり,強い口調により怒鳴りつけ,aの自信を失わせる発言,将来への不安をあおる発言,aを職場で孤立させる発言及び人格を否定する発言を行っていた。 イ hサブチーフは,fチーフの前では,aに対し,前記のような言動を行うことは控えていたようであるが,これらの言動は,hサブチーフとaとの間で秘密裡に職場内の誰にも気付かれないまま行われる類のものではない。また,実際に,ⅰサブチーフは,e係長に対し,hサブチーフのaに対する言動について問題提起をしているし,fチーフも,e係長に対し,台車B 密裡に職場内の誰にも気付かれないまま行われる類のものではない。また,実際に,ⅰサブチーフは,e係長に対し,hサブチーフのaに対する言動について問題提起をしているし,fチーフも,e係長に対し,台車B班か ら台車A班に異動するに際して,hサブチーフとaを台車B班に残すことについて問題提起をしているなど,b工場の管理職において,hサブチーフの問題ある言動を認識することは,十分可能であったものと認められる。 ウそして,前記のようなhサブチーフの強圧的な言動は,指導として正当化する余地がおよそなく,aに対し過重な心理的負荷を与え続けるものである ことが明らかであるから,b工場の管理職ひいては被告は,継続的かつ長期間にわたるこのような言動によりaが既に相当強度の心理的負荷を感じていたことを優に認識できる状況であった。 他方,aは,就業開始から2年を経過しており,若年嘱託職員として最終年に入っていたにもかかわらず,その直近(平成27年3月16日)におい てピニオン蓋の変形の件を生じさせ,その報告も遅れていた以上,被告がa に対して業務上の指導を行う必要性は認められるところである。しかるに,本件面談は,殊更にaの自信を失わせ,職場で孤立させ,aの生じさせた損害額を具体的な根拠なく突き付け,aの人格を否定して職場に居場所がないかの如く難詰し,長時間にわたって沈黙してしまったaに追い打ちをかけるようにやる気の有無を尋ね,さらには辞職の選択肢を示して決断を求めると いうものであって,およそ業務上の指導としては行き過ぎた追及的ないし糾問的なものである。そうすると,本件面談は,業務上の指導として相当性を逸脱した,aに対して殊更に心理的負荷を与えるものというほかない。 以上のようなaの状況及び本件面談の態様によれば,被告は, し糾問的なものである。そうすると,本件面談は,業務上の指導として相当性を逸脱した,aに対して殊更に心理的負荷を与えるものというほかない。 以上のようなaの状況及び本件面談の態様によれば,被告は,遅くとも本件面談(平成27年4月10日)の時点で,aが,業務に関連して本件面談 のような相当性を逸脱した言動を受ければ,精神障害を発病し,あるいは既に発病している精神障害の影響を強く受け,その結果として,自殺に及び得ることを予見可能であったものと認められる。 そうすると,被告は,上記時点において,aに対して業務上の指導を行うに当たり,aの生命及び健康等を危険から保護するため,本件面談のような 相当性を逸脱した言動を回避すべき義務を負っていたというべきであり,そうであるのに上記の態様で本件面談が行われている以上,aに対する安全配慮義務に違反したものというほかなく,国家賠償法上の違法がある。 エ被告は,aには強度のストレスを受けている状態にある様子は認められなかったのであるから,予見可能性は認められない旨主張する。確かに,aは, 定期面談で心身の不調等を訴えたことはなく,交通局が設ける相談窓口等を利用した形跡もない。さらに,aは,本件自殺に至るまで,b工場に出勤し,台車B班における勤務をこなし,野球部の練習に参加したり,格闘技のジムに通ったりしており,本件自殺直前の時点においても,b工場の職員だけでなく,原告やaの友人もaの変調には気付かなかったというのであるから, その日頃の様子のみから,精神障害の発病や自殺に及び得ることの予見可能 性を認めることは困難である。 しかし,前記のとおり,hサブチーフの従前の言動は,指導として正当化する余地がおよそなく,aに対し過重な心理的負荷を与え続けるものであり,b工場 予見可能 性を認めることは困難である。 しかし,前記のとおり,hサブチーフの従前の言動は,指導として正当化する余地がおよそなく,aに対し過重な心理的負荷を与え続けるものであり,b工場の管理職は,現にaが相当強度の心理的負荷を感じていることを優に推認できる状況であったことからすれば,上記被告の主張は,前記ウの判断 を覆すに足りるものではない。 ⑶ 以上のとおり,aは,hサブチーフのおよそ指導として正当化する余地のない強圧的な言動により継続的かつ長期間にわたり過重な心理的負荷を受け続け,fチーフが異動した後にはもはやこれに耐えきることができなくなってうつ病エピソードの症状を顕在化・進行させていた一方,被告は,hサブチーフ によるこのような言動を認識することが十分可能であり,ひいてはaが相当強度の心理的負荷を感じていたことを認識できる状況にあったのであるから,遅くとも本件面談(平成27年4月10日)の時点で,aに対して業務上の指導を行うに当たり,さらに相当性を逸脱した言動により心理的負荷を生じさせ,これによりaが精神障害を発病し,あるいは既に発病している精神障害の影響 を強く受け,その結果として自殺に及ぶことのないよう配慮すべき義務があったのにこれを怠り,業務上の指導として相当性を逸脱した態様による本件面談が行われたのである。そして,aは,本件面談によりさらに心理的負荷を受けたことで本件自殺に至ったものであるから,被告の上記義務違反と本件自殺との間には相当因果関係が認められる。 よって,被告は,aの死亡について国家賠償法1条1項に基づく責任を負う。 6 損害の発生及びその額(争点2)について(弁護士費用は後述)⑴ 葬儀費用 100万5318円甲第40号証及 て国家賠償法1条1項に基づく責任を負う。 6 損害の発生及びその額(争点2)について(弁護士費用は後述)⑴ 葬儀費用 100万5318円甲第40号証及び41号証によれば,原告は,aの葬儀費用として,100万5318円を支出したことが認められ,これに反する証拠はない。 ⑵ 死亡慰謝料及び原告固有の慰謝料 2500万円 aの死亡当時の年齢(32歳),原告との生活状況,aが勤務していた間のb工場における出来事,交通局によるaに対する支援の実際,その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,aの死亡による慰謝料及び原告固有の慰謝料は,合計して2500万円とすることが相当である。 ⑶ 逸失利益 4083万4611円 ア基礎収入原告は,基礎収入について,賃金センサスの「産業計,企業規模計,男性,大学・大学院卒,全年齢平均」を用いるべきである旨主張する。しかし,aは,本件自殺当時32歳で,交通局の若年嘱託職員として稼働し,平成28年4月1日からは,交通局の正規職員となる可能性が相当程度存したものと 認められる。そして,乙第7号証,53号証,54号証(枝番含む。)及び弁論の全趣旨によると,仮に,aが平成27年4月13日以降も交通局における勤務を続けた場合,その収入額は,別表「全年齢平均収入の推計」に近い額になった可能性が高いものと認められる一方,原告は,aの将来収入がこれより高額になり得たことを立証できていない。したがって,基礎収入につ いては,別表記載の年額498万7738円とするのが相当である。 イその他生活費控除率は50%とし,就労可能年数は本件自殺当時の32歳から67歳までの35年間分と がって,基礎収入につ いては,別表記載の年額498万7738円とするのが相当である。 イその他生活費控除率は50%とし,就労可能年数は本件自殺当時の32歳から67歳までの35年間分とし,中間利息控除はライプニッツ方式により行うこととするのが相当である。 ウ計算式498万7738円×(1-0.5)×16.374⑷ まとめ以上より,過失相殺等による賠償額減額(争点3)前の損害額(弁護士費用を除く。)は合計して,6683万9929円となる。 7 過失相殺等による賠償額減額(争点3)について ⑴ 被告は,aがいじめを受けていたことや健康状態に問題があったことについて上司や保健師との面談でも述べておらず,相談窓口に相談もしていないことはaの過失であるから,賠償額について過失相殺又は信義則上の減額をすべきである旨主張する。 しかし,前記のとおり,hサブチーフがaに対し精神的に相応の負荷になり 得る言動を行っていることについては,aからの申告がなくても,交通局において把握することが可能であったところ,交通局が,aに対し,hサブチーフによる言動に関する聴取を行ったとか,それにもかかわらず,aが敢えて回答をしなかったなどという事情は認められない(fチーフが,休暇中のaに対し,平成25年8月20日,hサブチーフによる言動に負担を感じているのではな いかと質問し,aがこれに明確な回答をしなかった事実は認められるものの,aの休暇中の出来事であることに加え,本件自殺から1年半以上前の出来事であるから,このことを重視することはできない。)。そして,aが,b工場の管理職や相談窓口に対し,職場の先輩であるhサブチーフによる言動に心理的負荷を感じている旨,自ら積極的に申告することに躊躇を覚えるの から,このことを重視することはできない。)。そして,aが,b工場の管理職や相談窓口に対し,職場の先輩であるhサブチーフによる言動に心理的負荷を感じている旨,自ら積極的に申告することに躊躇を覚えるのは自然であり, 安全配慮義務を尽くしたとはいえない被告との関係において,aのこのような不申告を非難することは相当ではなく,公平の観点から賠償額を減額すべきであるとはいえない。 また,aは,自身の健康状態について,平成26年6月の健康診断の際,問診票を通じて一定の症状がある旨保健師に報告し,その後,同年8月にも保健 師との面談を行うなどしているが,その際,自身の健康状態について,事実を隠蔽していたような事情は認められない。その後,aは,本件自殺に至るまで,自身の精神状態について自ら積極的に相談窓口を利用することまではしていないものの,上記のとおり,aが心理的負荷を感じている原因は,交通局には申告しにくい類のものであり,特に被告との関係でこれを非難することは相当 ではないことからすれば,賠償額を減額すべき事情であるとはいえない。 以上からすれば,上記被告の指摘する事情でもって,過失相殺や信義則上の減額をすべきとは認められない。 ⑵ 被告は,原告がaと同居しており,本件自殺の直前にも会話をするなど,身近に接していたにもかかわらず,aの異変に気付くことができなかったことは原告の過失であるから,賠償額について過失相殺又は信義則上の減額をすべき である旨主張する。 しかし,aは,大学を卒業して,30歳になってから交通局の職員となり,独立の社会人として自らの意思と判断に基づき交通局における業務に従事していたのであり,原告は,親としてaと同居していたとはいえ,このようなaの健康状態の管理についてはa本人に任せ,例えば未 となり,独立の社会人として自らの意思と判断に基づき交通局における業務に従事していたのであり,原告は,親としてaと同居していたとはいえ,このようなaの健康状態の管理についてはa本人に任せ,例えば未成年者に対して行うよう な関与をしないのが通常であり,また,職場の者や友人もaの心身の変調には気付かなかったというのであるから,原告がaの異変に気付かなかったことを非難することはできない。加えて,aに発病した精神障害や前記損害は,交通局における業務に当たって過重な心理的負担を受けたために生じたものであるところ,仮に,原告がaの異変に気付いたとしても,原告が,aの勤務状況 を改善する措置を採り得る立場にあったとは,容易にいうことはできない。 以上からすれば,原告本人に,過失相殺や信義則上の減額をすべき事情があったとは認められない。 ⑶ その他,本件で認められる事実を踏まえても,過失相殺等による賠償額の減額をすべき事由は認められない(aの性格等がaと同種の業務に従事する労働 者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものであったなどという事情も認められない。)。 8 まとめ(弁護士費用,遅延損害金等)以上検討したところ及び本件事案の性質を踏まえると,本件における弁護士費用相当損害額は,670万円とすることが相当である。よって,被告は,原告に 対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として7353万9929円及びこ れに対するaの死亡日である平成27年4月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文1項掲記の範囲で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないから棄却し,被告の申立てにより被告に担保 損害金を支払う義務を負う。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文1項掲記の範囲で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないから棄却し,被告の申立てにより被告に担保 を立てさせて仮執行免脱の宣言をすることとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官井上泰人 裁判官野村武範 裁判官伊藤達也 別表(省略) 別紙本件裏アカウント投稿内容 1 平成26年7月から同年8月まで⑴ 「寝れなくて,また明日苦労するのだろうな,悪循環。」(7月6日)⑵ 「人がこわいのか。どうでもいいのか。」(7月6日) ⑶ 「すぐモヤモヤしてしまう。」(7月8日)⑷ 「人生甘えだらけなのかも。」(7月9日)⑸ 「自分のツイートみてるとこの年齢でこれはヤバいと思う。でも多分つぶやかずにはいられない。」(7月12日)⑹ 「もう自分がたぶんやる気ないだけなのに,どうしてヘコむのか。」(7月1 5日)⑺ 「確かに緊張でのテンパり具合は人一倍ひどい。」(7月15日)⑻ 「色々ひきこもりたい。」(7月15日)⑼ 「ぼくはあさはかな人間なの?」(7月24日)⑽ 「心のどこかでは自分が間違ってるなんて思ってない。」(8月3日) ⑾ 「もうね,夏は鬱ですわ。色々あったから。」(8月6日)⑿ 「自分がよくなる兆しがなにも見えない。」(8月12日)⒀ 「要領良くてなんですか?頭使うてなんですか?生まれてこの方そのあたりがどこかわかってない。」(8月19日)⒁ 「クズな自分をなんとしても自己正当化したい,」(8 見えない。」(8月12日)⒀ 「要領良くてなんですか?頭使うてなんですか?生まれてこの方そのあたりがどこかわかってない。」(8月19日)⒁ 「クズな自分をなんとしても自己正当化したい,」(8月19日) ⒂ 「もう自分という人間が期待できていない。」(8月20日) 2 平成26年9月から同年11月まで⑴ 「やはりココロの問題なのか。」(9月3日)⑵ 「最近人間関係なげやりだしね,仕方ないよね(主に職場)」(9月3日)⑶ 「気持ちがつづかない。眠りたいけど,眠れない。」(9月23日) ⑷ 「久々に落ち込みの波が。てか目の前の事に気がつかない......ダメ人間す。」 (10月20日)⑸ 「よくわからないが,憂鬱かな感じが漂っている。」(11月3日)⑹ 「ここまでくるとある意味すごい。一週通りこしてテンションあがってきた。」(11月28日) 3 平成26年12月 ⑴ 「心の痛みが。逃げたい。」(12月1日)⑵ 「逃避したい。」(12月1日)⑶ 「苦しい。」(12月1日)⑷ 「このまま消えたい。」(12月1日)⑸ 「さよなら人間。」(12月4日) ⑹ 「とりあえずいっぺん死んだ方がいいよ,俺。」(12月5日)⑺ 「来週から,期待されたいのか,あきらめたいのか。不安定。」(12月12日)⑻ 「ヤバイつかれてもう不安しかない。達成感あると思ったのに。」(12月14日) ⑼ 「世界の最果てにいって。つかなくても行って,それだけしたい。」(12月14日)⑽ 「いつまでもつかなぁ。」(12月18日)⑾ 「よくわからない。」(12月19日) 4 平成27年1月から同年2月まで ⑴ 「ボロボロでくさっていく自分と,それでも立ち上がろうとする自分で揺れ でもつかなぁ。」(12月18日)⑾ 「よくわからない。」(12月19日) 4 平成27年1月から同年2月まで ⑴ 「ボロボロでくさっていく自分と,それでも立ち上がろうとする自分で揺れ動いている。ただ風俗と最強伝説黒沢がなかったら揺れ動くことさえなかったかも。」(1月3日)⑵ 「自分の事が信用できなくなってきてる。」(1月8日)⑶ 「つらい。逃げたい。」(1月8日) ⑷ 「真っ白になりたい。」(1月8日) ⑸ 「寝たいのに寝れない。」(1月8日)⑹ 「なんともいえない程度の熱が不安ばかりかきたてる。それとも不安が先なのか。」(1月9日)⑺ 「もうキツイ。」(1月12日)⑻ 「どうせなにもできないんだ。」(1月12日) ⑼ 「ひとりに。」(1月12日)⑽ 「せめて忘れたい。」(1月12日)⑾ 「やっぱり職場は好きになれない人多いが,コミュニケーションとれないと仕事にならないし,そこから逃げてる自分が辛い。まあいいやになってきているし。」(2月20日) 5 平成27年3月⑴ 「考えないのは向き合いたくないだけ。」(3月17日)⑵ 「どうせこんなかんじならなぜ悩むのか。」(3月17日)⑶ 「ぼくはウソつきでクズだ。」(3月17日)⑷ 「そんな感情も消えつつある。」(3月17日) ⑸ 「ただ気が楽になりたいと思っている。」(3月17日)⑹ 「自分のせいなのに。」(3月17日)⑺ 「大衆に迎合したい。生きやすくなるという意味では。でも僕は不適合。」(3月18日)⑻ 「誰かになにかしてあげるということが,できないダメな人です。せめて寛 容になる位しかない人です。」(3月22日)⑼ 「目的を見出せない。」(3月24日)⑽ 「だいぶ前から死ん )⑻ 「誰かになにかしてあげるということが,できないダメな人です。せめて寛 容になる位しかない人です。」(3月22日)⑼ 「目的を見出せない。」(3月24日)⑽ 「だいぶ前から死んでいる。」(3月26日)⑾ 「なにもやる気しないし,ダラダラしてた。」(3月29日)⑿ 「なにもしてきてない僕だけど,誰か助けてほしい。」(3月29日) ⒀ 「このまま消えないだろうか,自分。」(3月31日) 6 平成27年4月⑴ 「逃げ癖がついている。」(4月8日)⑵ 「あたまがおかしくなれたなら。」(4月8日)⑶ 「色々と投げ出したい。」(4月9日)⑷ 「もう自分が好きになれそうもない。」(4月9日) ⑸ 「なにもかも捨てたい願望ばかりあふれてくる。辛い。逃げたい。」(4月11日)⑹ 「忘れたい。忘れたい。忘れたい。」(4月11日)以上

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