平成14(ワ)646 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年8月13日 神戸地方裁判所
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判決文本文24,589 文字)

主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して4262万6285円及び被告株式会社りそな銀行については内1872万2088円に対する平成13年8月25日から,内1875万9370円に対する同月30日から,内514万4827円に対する平成14年1月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を,被告有限会社アストラコーポレーションについては内3748万1458円に対する平成13年9月21日から,内514万4827円に対する平成14年1月8日から各支払済みまで年18.25パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その7を被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して6089万4694円及び被告株式会社りそな銀行については内2674万5840円に対する平成13年8月25日から,内2679万9100円に対する同月30日から,内734万9754円に対する平成14年1月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を,被告有限会社アストラコーポレーションについては内5354万4940円に対する平成13年9月21日から,内734万9754円に対する平成14年1月8日から各支払済みまで年18.25パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告有限会社アストラコーポレーション(以下「被告アストラ」という。)から信用状付き輸出手形2通の買取りをし,株式会社三井住友銀行(以下「三井住友銀行」という。)に取 要本件は,原告が,被告有限会社アストラコーポレーション(以下「被告アストラ」という。)から信用状付き輸出手形2通の買取りをし,株式会社三井住友銀行(以下「三井住友銀行」という。)に取立てを依頼したところ,その後に信用状が偽造されたものであることが判明したため,(1) 当該信用状の真偽の確認ができない旨の注記をしなかった信用状通知銀行である株式会社大和銀行(以下「大和銀行」という。)に対し,不法行為に基づき,輸出手形の買取代金2674万5840円と2679万9100円の小計5354万4940円及び付帯荷物の処分費用734万9754円の合計6089万4694円並びに内2674万5840円に対する輸出手形の買取日の翌日である平成13年8月25日から,内2679万9100円に対する上記同様の日である同月30日から,内734万9754円に対する処分費用の最終支出日の翌日である平成14年1月8日から各支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求め,(2) 被告アストラに対し,信用金庫取引契約及び外国向為替取引契約に基づき,輸出手形の買戻代金小計5354万4940円及び付帯荷物の処分費用734万9754円の合計6089万4694円並びに内5354万4940円に対する輸出手形の不渡りが判明した後の日である平成13年9月21日から,内734万9754円に対する処分費用の最終支出日の翌日である平成14年1月8日から各支払済みまで約定の年18.25パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案であるが,訴訟の係属中に大和銀行が株式会社あさひ銀行を合併して,商号を株式会社りそな銀行(以下「被告りそな銀行」といい,被告アストラと併せて「被告ら」という。)に変更した。 1 争いのない事実等(1) 当事者(争 行が株式会社あさひ銀行を合併して,商号を株式会社りそな銀行(以下「被告りそな銀行」といい,被告アストラと併せて「被告ら」という。)に変更した。 1 争いのない事実等(1) 当事者(争いのない事実)ア原告は, 神戸中央支店において外国為替業務を行っているが,外国の銀行との間で外国為替取引に関する業務提携契約(以下「コルレス契約」という。)を締結していない。 イ大和銀行は,外国為替業務を行なっており,コルレス契約を締結している。 大和銀行は,平成15年3月3日,株式会社あさひ銀行を合併し,商号を株式会社りそな銀行(被告りそな銀行)に変更した。 ウ被告アストラは,中古のコピー機及びパチスロ機の輸出業者である。 (2) 原告と被告アストラとの間の取引ア原告は,平成8年7月16日から,被告アストラとの間で,信用金庫取引契約及び外国向為替手形取引契約を締結し,以後,信用状付き輸出手形買取取引を行ってきた(争いのない事実)。 イ被告アストラが原告に差し入れた信用金庫取引約定書には,次の定めがある(甲第6号証)。 第3条(利息,損害金等)② 貴金庫に対する債務を履行しなかった場合には,支払わなければならない金額に対し年18.25パーセントの割合による損害金を支払います。この場合の計算方法は年365日の日割計算とします。 ウ被告アストラが原告に差し入れた外国向為替手形取引約定書には,次の定めがある(甲第7号証)。 第11条(付帯荷物の保全等)① 外国向荷為替手形の支払義務者が外国向荷為替手形の支払,引受または債務の確認を拒絶した場合には,貴金庫または為替取引先等は 証)。 第11条(付帯荷物の保全等)① 外国向荷為替手形の支払義務者が外国向荷為替手形の支払,引受または債務の確認を拒絶した場合には,貴金庫または為替取引先等は付帯荷物の陸揚げ,通関,倉入れ,付保,転売等荷物の保全に必要と認めた臨機の処置をとることができるものとし,これによる損害は私の負担とします。なお,この処置をとらなかった場合に生じた損害も私の負担とします。 第15条(買戻債務)① 外国向為替手形の買取を受けた後,次の各号の事由が一つでも生じた場合には,当該各号に記載する外国向為替手形について,貴金庫から通知,催告等がなくても当然手形面記載の金額の買戻債務を負担し,直ちに弁済します。なお,信用状条件により貴金庫が引受人または支払人となっている外国向為替手形についても,同様とします。 2.外国向為替手形の支払義務者による支払,引受または債務の確認が拒絶された場合には,その外国向為替手形。 ② 外国向為替手形の買取を受けた後,次の各号の事由が一つでも生じた場合には,当該各号に記載する外国向為替手形について,貴金庫の請求によって手形面記載の金額の買戻債務を負担し,直ちに弁済します。なお,信用状条件により貴金庫が引受人または支払人となっている外国向為替手形についても,同様とします。 1.外国向為替手形の取立,再買取が拒絶された場合には,その外国向為替手形。 2.貴金庫が外国向為替手形の代り金相当額の償還を請求された場合には,その外国向為替手形。 3.外国向為替手形の支払義務者による支払が行われたにもかかわらず,貴金庫における外国向為替手形の代り金の回収が遅延 金相当額の償還を請求された場合には,その外国向為替手形。 3.外国向為替手形の支払義務者による支払が行われたにもかかわらず,貴金庫における外国向為替手形の代り金の回収が遅延し,もしくは不能となった場合には,その外国向為替手形。 4.前各号以外のときでも外国向為替手形について債権保全を必要とする相当の事由が生じた場合には,その外国向為替手形。 第16条(弁済金額の為替相場)前条によって,私が負担する外国向為替手形の買戻債務または求償債務を円貨で弁済する場合に適用される為替相場は,その債務を弁済する時における貴金庫直物電信売相場とすることを承認します。 (3) 信用状付き輸出手形買取取引(弁論の全趣旨)ア信用状とは,銀行が輸入商等自己の顧客の依頼により発行する書面で,他地において当該顧客に信用を供与した特定の者が振り出した手形を一定の条件の下に自己が引受け・支払をする旨を約定することにより顧客に信用を供与することを目的とするものをいう。 そして,信用状付き輸出手形買取取引とは,輸出荷物の仕向地の銀行が発行した信用状と船荷証券等の船積書類が添付された為替手形の買取取引をいう。 イ他地の輸入業者(信用状発行依頼人)は,信用状の発行を取引先の銀行(信用状発行銀行)に依頼し,当該銀行が信用状を発行すると,信用状発行の事実は,信用状発行銀行から,信用状発行依頼人又は信用状の利益を受ける輸出業者(受益者)が指定した銀行(信用状通知銀行)に対し,通知される。 信用状通知銀行は,国際商業会議所制定の「荷為替信用状に関する統一規則および慣例」(以下「信用状統一規則」という。)7条a前段の規定に基づ (信用状通知銀行)に対し,通知される。 信用状通知銀行は,国際商業会議所制定の「荷為替信用状に関する統一規則および慣例」(以下「信用状統一規則」という。)7条a前段の規定に基づき,当該信用状が外観上正規に発行されたものであるか否かを点検し,信用状発行の事実を受益者に通知する。その際,当該信用状の真偽の確認ができない場合には,その旨注記して受益者に通知される。 受益者(信用状付き輸出手形買取依頼人)は,信用状付き輸出手形の買取りを取引先の銀行(上記手形買取銀行)に依頼し,当該買取銀行は,自ら信用状発行銀行に信用状付き輸出手形の取立てをするか,又は,他の銀行に信用状付き輸出手形の買取りを依頼する。 (4) 本件に至る経緯等ア信用状通知書の受信(乙第1号証)大和銀行は,平成13年7月25日12時20分,ナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK)から,信用状発行銀行を同行,受益者を被告アストラとする信用状(以下「本件信用状」という。)の発行の通知をテレックスで受けた。 上記通知には,信用状通知銀行への連絡事項として「この信用状の真正の確認は,・・・シティバンク(CITIBANK,NEWYORK)に対し行われたし」と記載されていた。 イシティバンクへの照会(乙第2号証)大和銀行は,同日14時35分,シティバンクに対し,スイフト(金融機関の間の通信をコンピューターと通信回線を使用したデータ通信として処理するシステム)で本件信用状の真正を確認すべく照会した。 ウシティバンクからの回答(乙第3号証)大和銀行は,同日22時18分,シティバンクから,「貴行が当行に何を するシステム)で本件信用状の真正を確認すべく照会した。 ウシティバンクからの回答(乙第3号証)大和銀行は,同日22時18分,シティバンクから,「貴行が当行に何を要求しているかにつき,より具体的にお知らせ下さい。」との通知を受けた。 エ信用状条件変更通知書の受信(乙第4号証)大和銀行は,同月25日23時15分,ナショナルシティバンクから,本件信用状につき,船積商品又は役務の内容に関する条項に追加事項がある旨の条件変更の通知(以下「本件条件変更信用状」という。)をテレックスで受けた。 オシティバンクへの照会(乙第5ないし7号証)大和銀行は,同月26日12時27分から同月30日17時6分までの間,3回にわたり,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく照会した。 カ回答文書の受信(乙第8号証)大和銀行は,同月31日16時47分,「CITIBANKN.A. NEWYORK,ナンシーデレオン/テストキー管理セクション,当行参照番号E07300181」を発信元として,本件信用状及び本件条件変更信用状につきテストキーに問題がないとの回答文書をテレックスで受けた。 キ被告アストラへの通知(甲第1号証の1,第1号証の2)大和銀行は,上記回答に基づき,本件信用状及び本件条件変更信用状に問題がないと判断し,接受信用状通知状をもって,被告アストラにその旨通知した。 ク原告と被告アストラ間の外国為替取引(甲第2,3号証)原告の神戸中央支店は,平成13年8月,被告アストラから,本件信用状及び本件条件変更信用状付き輸出手形 た。 ク原告と被告アストラ間の外国為替取引(甲第2,3号証)原告の神戸中央支店は,平成13年8月,被告アストラから,本件信用状及び本件条件変更信用状付き輸出手形(以下「本件輸出手形」という。)2通の買取りを依頼された。 原告の神戸中央支店は,本件輸出手形に上記接受信用状通知状が添付されていたことから,本件輸出手形の買取りに応じることとし,信用状条件及びその他船荷証券等の船積書類を点検した上,同月24日に額面20万0870米ドル,同月29日に額面20万1270米ドルの各信用状付き輸出手形の買取りを行った。 原告の神戸中央支店は,三井住友銀行の神戸営業部に対し,上記信用状付き輸出手形の買取りを依頼し,これに応じた三井住友銀行は,信用状発行銀行であるナショナルシティバンクあてに本件輸出手形を送付し,取立てを行った。 ケ信用状の偽造の判明(甲第5号証)しかし,信用状に記載された輸出手形及び船積書類等の送付先住所にはナショナルシティバンク(NATIONALCITYBANK)しか存在せず,ナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK)は存在しないことから,その後,本件信用状及び本件条件変更信用状の真偽が調査されたところ,同年9月5日,本件信用状及び本件条件変更信用状が偽造されたものであることが判明した。 そのため,原告の神戸中央支店は,同月20日,三井住友銀行から,本件輸出手形2通を額面合計40万2140米ドルで買戻しをした。 (5) 弁済金額の為替相場(甲第16号証)本件訴訟の提起直前の日である平成14年3月6日時点における直物電信売相場は,1米ドル133.15円である。 米ドルで買戻しをした。 (5) 弁済金額の為替相場(甲第16号証)本件訴訟の提起直前の日である平成14年3月6日時点における直物電信売相場は,1米ドル133.15円である。 したがって,本件輸出手形の買戻金額40万2140米ドルを円に換算すると,5354万4941円(計算式・402,140 米ドル×133.15円=53,544,941円)となる。 5 争点(1) 大和銀行の責任の有無(原告の主張)大和銀行は,信用状通知銀行として,信用状の外観上の正規性を点検すべき注意義務があるにもかかわらず,これを怠り,本件信用状及び本件条件変更信用状の真偽の確認ができない旨の注記をすることなく,受益者である被告アストラに通知したものである。 すなわち,大和銀行は,平成13年7月25日12時20分,ナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK)から,信用状発行銀行を同行,受益者を被告アストラとする本件信用状の発行の通知をテレックスで受けた。 本件信用状の発行の通知で留意すべきことは,当該通知がスイフトではなく,テレックスで来たことである。テレックスは,銀行間の通信回線でないため,より注意を尽くさなければならないのである。 そして,大和銀行は,同日14時35分,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状の真正を確認すべく照会したが,同日22時18分,シティバンクから,「貴行が当行に何を要求しているかにつき,より具体的にお知らせ下さい。」との通知を受けた。この時,まさに本件信用状の正規性を疑うべき相当の理由が発生したといえるのである。 その後,大和銀行は,同月26日12時27分から同月30日17時6分までの間,3回にわ 通知を受けた。この時,まさに本件信用状の正規性を疑うべき相当の理由が発生したといえるのである。 その後,大和銀行は,同月26日12時27分から同月30日17時6分までの間,3回にわたり,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく照会したが,テストキー等確認の番号が入っているテレックス又はスイフトによる連絡がないまま,同月31日16時47分,「CITIBANKN.A.NEWYORK,ナンシーデレオン/テストキー管理セクション,当行参照番号 E07300181」を発信元として,本件信用状及び本件条件変更信用状につきテストキーに問題がないとの回答文書をテレックスで受けた。ここでも留意しなければならないことは,当該通知がテレックスで来たこと,このテレックスにはテストキーの記載がないこと,前回の通知と今回の通知が異なっていることである。これらの点も,本件信用状及び本件条件変更信用状の正規性を疑うべき相当の理由があるといえるものである。 そもそもテレックスによる通知は,信用性が低く,必ずテストキーでこれを確認しなければならない。このことは,信用状の取扱業務の初歩であって,信用状の正規性を確認する一般的な方法である。 大和銀行が受け取ったテレックスにはテストキーの記載がなく,大和銀行は,その真正を確認すべき方法がなかったのであるから,再度,スイフト又はテレックスで,テストキーの記載のある回答を求めるべきであった。 それにもかかわらず,大和銀行は,上記通知が真正なものであると軽信し,テストキーで正規性の確認ができる回答を求めず,また,正規性の確認ができていないのに,正規性の確認ができない旨の注記をすることなく,被告アストラに通知したものであり,その過 正なものであると軽信し,テストキーで正規性の確認ができる回答を求めず,また,正規性の確認ができていないのに,正規性の確認ができない旨の注記をすることなく,被告アストラに通知したものであり,その過失は重大であって,とても信用状の正規性の確認に当たって相応の注意をしたとはいえないものである。 したがって,大和銀行は,原告に対し,民法709条に基づき,原告が本件信用状及び本件条件変更信用状付き輸出手形の買取りにより被った損害を賠償すべき責任を負う。 (被告りそな銀行の主張)大和銀行が,信用状通知銀行として,信用状統一規則7条aに定められた「自行通知の信用状が外観上正規に発行されたものとみられるかどうかを点検するために相応の注意を払う」義務を負うこと自体は,何ら否定するものではない。 もっとも,信用状通知銀行が負うべき義務は,あくまでも「信用状の外観上の正規性を点検するために相応の注意を払うこと」に限定されているのであって,信用状の外観上の正規性を点検した上で,その正規性を保証するような義務までも負担するものではない。 信用状通知銀行の義務が上記のとおり限定されている趣旨は,信用状取引が大量に行われている現在の銀行実務において,円滑かつ迅速な事務処理が要求されているところにある。 すなわち,信用状通知銀行に課される注意義務については,銀行の預金払戻業務に際しての注意義務と同様に,一定の限界があると解するのが相当である。 本件当時,大和銀行の国際事務センターでは,1日当たり約1000件のテレックス及びスイフトの送受信がなされており,銀行の注意義務は,このような大量の事務処理がなされていることを前提として判断されるべきである。また,巧妙に仕組まれた信用状の偽造 当たり約1000件のテレックス及びスイフトの送受信がなされており,銀行の注意義務は,このような大量の事務処理がなされていることを前提として判断されるべきである。また,巧妙に仕組まれた信用状の偽造を発見し得る程度の注意義務を信用状通知銀行に課すことは,実務的に不可能を強いるものとなるのであって,到底首肯し難い。本件は,過去に例を見ない巧妙に仕組まれた犯罪の一環であり,この種の例外的なケースにおいて,信用状通知銀行に対し高い注意義務を課すことは,犯罪者グループを喜ばせ,犯罪を助長する結果となることを十分考慮すべきである。 この点につき,原告は,銀行間の通信には通常スイフトが利用されているところ,本件において,信用状発行通知書がテレックスで送付されていることから,大和銀行は,スイフトによる通知を受けた場合に比べ,より注意を尽くさなければならないと主張する。しかし,銀行実務では,現在でも,銀行間におけるテレックスを利用した送受信は行われており,必ずしもスイフトを利用して通信がなされているというものではない。また,テレックスによる送信において,テストキーは相手方を確認する上で重要な機能を有しているが,必ずしも重要な通信のすべてにテストキーが付されているわけでもない。 大和銀行は,前記「1 争いのない事実等」(4)記載のとおり,本件信用状及び本件条件変更信用状に問題がないと判断し,接受信用状通知状及び接受信用状条件変更通知状をもって,被告アストラにその旨通知したものであり,信用状通知銀行として必要な相応の注意義務を十分に尽くしたものであって,何ら落ち度はない。 したがって,大和銀行は,原告に対し,民法709条に基づき,原告が本件信用状及び本件条件変更信用状付き輸出手形の買取りにより被った損害を賠償す したものであって,何ら落ち度はない。 したがって,大和銀行は,原告に対し,民法709条に基づき,原告が本件信用状及び本件条件変更信用状付き輸出手形の買取りにより被った損害を賠償すべき責任を負わない。 (2) 被告アストラによる本件輸出手形の買戻債務の発生の有無(原告の主張)被告アストラは,原告に対し,前記「1 争いのない事実等」(2)ウのとおり,外国向為替手形面記載の金額の買戻債務及び同金額に対する年18.25パーセントの割合による損害金の支払義務を負担している。 (被告アストラの主張)原告は,被告アストラが本件輸出手形の買戻義務及び遅延損害金の支払義務を負うと主張するが,本件は,そもそも外国向為替手形取引約定書第15条①及び②各記載の買戻債務の発生要件を充足してない。 すなわち,信用状発行銀行であるナショナルシティバンクは,当初から存在しなかったのであるから,同条①及び②にいう「外国向為替手形の買取を受けた後」の要件を充足することはあり得ない。 したがって,被告アストラは,原告に対し,外国向為替手形面記載の金額の買戻債務及び同金額に対する年18.25パーセントの割合による損害金の支払義務を負担しない。 (3) 荷物の価値の有無(原告の主張)被告アストラは,原告に対し,前記「1 争いのない事実等」(2)ウのとおり,原告が付帯荷物の保全に必要と認めた臨機の処置をとったことによる損害の支払義務を負担している。 原告は,三井住友銀行から,本件輸出手形2通の買戻しをした後,香港に保管されていた付帯荷物(以下「本件荷物」という。)を日本に持ち帰ったが,これらの付帯荷物は,無価値であり ている。 原告は,三井住友銀行から,本件輸出手形2通の買戻しをした後,香港に保管されていた付帯荷物(以下「本件荷物」という。)を日本に持ち帰ったが,これらの付帯荷物は,無価値であり,廃棄処分にせざるを得なかった。 廃棄処分に要した費用は,別紙「積戻し荷物に係る諸経費」のとおり,合計734万9754円であった。 (被告アストラの主張)本件荷物は有価値であった。原告の換価処分に問題があったため,本件荷物が無価値になってしまったというだけのことである。現に,被告アストラが本件荷物の調達に要した原価は1628万5580円であり,また,神戸税関が算定した本件荷物の価値は38万8900米ドルであった。 したがって,原告が主張する立替費用734万9754円につき,被告アストラに支払義務はない。 (4) 弁済時の円換算による請求の可否(原告の主張)被告アストラは,前記「1 争いのない事実等」(2)ウのとおり,被告アストラが負担する外国向為替手形の買戻債務または求償債務を円貨で弁済する場合に適用される為替相場につき,その債務を弁済する時における直物電信売相場とすることを承認している。 (被告アストラの主張)原告は,三井住友銀行からの要求に応じて,本件輸出手形の払戻しをしており,この払戻時に,円換算での損害額は確定するはずである。 したがって,為替レートの関係で,このように確定した円換算での払戻額を超える請求を認めることは,不当な利得を許すこととなり,信義則に反し許されるべきではない。 (5) 過失相殺の成否(被告りそな銀行の主張)仮に大和銀行に信用状通知銀行としての めることは,不当な利得を許すこととなり,信義則に反し許されるべきではない。 (5) 過失相殺の成否(被告りそな銀行の主張)仮に大和銀行に信用状通知銀行としての注意義務違反があり,原告に対して不法行為責任を負うとしても,原告は,信用状付き輸出手形の買取銀行として,① 買取依頼人の信用状態,② 信用状の点検,③ 船積書類及び付帯荷物の確認等に関する注意義務を怠り,漫然と被告アストラから本件輸出手形の買取りをしたのであるから,損害の発生に過失があり,過失相殺が適用されるべきである。 すなわち,① 買取依頼人の信用状態は,銀行の債権保全上極めて重要であり,買取依頼人の資産,経営状態,経営者の人物,経営手腕等を調査確認することが必要であるにもかかわらず,原告は,被告アストラにつき,上記のような信用状態を十分調査しないで輸出手形の買取りをした。また,② 本件信用状及び本件条件変更信用状に信用状発行銀行として記載されているナショナルシティバンクは,実在しない銀行であったところ,原告は,これを見落として本件輸出手形の買取りをしたものであり,信用状発行銀行の信用状態どころか,その存在すら確認していない。さらに,③ 輸出手形が不渡りになり,かつ,買取依頼人から償還を受けることもできない場合には,船積書類ないしそれに化体されている付帯荷物の処分によって債権の回収を図ることになる。したがって,手形の買取りに当たっては,船積書類の有効性等に注意するとともに,付帯荷物の性質,換価性等を十分考慮しなければならない。しかし,原告は,本件荷物である中古のコピー機及びパチスロ機について,その商品価値,つまり担保価値について全く調査しなかった。 (原告の主張)被告りそな銀行は,原告には, し,原告は,本件荷物である中古のコピー機及びパチスロ機について,その商品価値,つまり担保価値について全く調査しなかった。 (原告の主張)被告りそな銀行は,原告には,信用状付き輸出手形の買取銀行としての注意義務を怠り,漫然と被告アストラから本件輸出手形の買取りをしたのであるから,損害の発生に過失があり,過失相殺が適用されるべきであると主張する。しかし,過失相殺の適用に当たって斟酌できる被害者の過失は,不法行為者の行為を助成しあるいは協力して,損害を発生させたか又は増大させたかという問題である。 たとえ原告に何らかの過失があるとしても,大和銀行の信用状の正規性の確認義務を怠ったという不法行為を助成するものではなく,また,大和銀行と協力して当該不法行為がなされたものでもないから,上記斟酌できる被害者の過失とならないというべきである。 そして,① 買取依頼人の信用状態に関する調査については,原告は,これまでにも被告アストラから輸出手形の買取りをして無事に決済されており,この度も,被告アストラに預金を担保として提供させ,更に保証人を徴求しており,原告による本件輸出手形の買取りに関し,何ら落ち度はない。 また,② 信用状の点検については,原告が本件輸出手形の買取りをする前に, 大和銀行が既に正規性の確認をしており,原告がそれ以上に確認をする必要はないものである。 さらに,③ 船積書類及び付帯荷物の確認については,輸出取引は,相対する商人が,サンプルをチェックするなどして荷物の内容を確認し価格を設定しているものであり,輸出手形の買取業務において,付帯荷物の価値まで確認することはない。 (6) 被告アストラによる原告に対する損害賠償請求権を受働債権とする相殺の可否 確認し価格を設定しているものであり,輸出手形の買取業務において,付帯荷物の価値まで確認することはない。 (6) 被告アストラによる原告に対する損害賠償請求権を受働債権とする相殺の可否(被告アストラの主張)本件で,中古のコピー機及びパチスロ機を適正に売却すれば,38万8930米ドルを回収することができた。しかるに,原告は,売却の努力をせず,担保を廃棄し,被告アストラの本件荷物を毀損破棄したのであるから,被告アストラは,原告に対し,38万8930米ドルの不法行為に基づく損害賠償請求権を有する。 そこで,被告アストラは,原告に対し,平成14年11月7日の本件弁論準備手続期日において,上記損害賠償債権をもって,原告の本訴請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をする。 (原告の主張)原告は,被告アストラから,外国向為替手形取引契約に基づき,本件荷物を付帯荷物とする外国向為替手形の買取りをしたものであるから,付帯荷物につき,担保のため,譲渡を受け,更に担保権を実行することができる。 そして,原告は,この権利に基づき,担保物である本件荷物の転売につき,自ら相応の努力をし,被告アストラにも転売の協力を求めたが,結局,買い手が現れなかったところ,本件荷物の評価額に照らし保管料を負担することが不相当であったため,本件荷物を廃棄処分したものであり,この廃棄処分に当たり,被告アストラから書面による了解を得ている。 したがって,そもそも被告アストラは,原告に対し,38万8930米ドルの不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。 (7) 損害の填補の有無(被告りそな銀行の主張)原告は,本件輸出手形を買い取 は,原告に対し,38万8930米ドルの不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。 (7) 損害の填補の有無(被告りそな銀行の主張)原告は,本件輸出手形を買い取った際に,被告アストラから,担保として2000万円の預金を保有していた。 したがって,被告アストラの原告に対する上記預金債権と原告の被告アストラに対する輸出手形買戻請求権等とは対当額で相殺されているはずであり,損害額は,輸出手形の買戻代金額から2000万円が控除されるべきである。 (原告の主張)原告は,本件輸出手形を買い取った際に,被告アストラから,担保として2000万円の預金を保有していたが,被告らからの支払がなされた後に,未回収部分及び付帯費用につき当該預金と相殺する予定である。 したがって,原告の損害額はいまだ填補されていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(大和銀行の責任の有無)について(1) 前記争いのない事実等に,証拠(甲第1ないし8,10ないし12,14ないし16号証,乙第1ないし8,14号証,丙第27号証〔書証については枝番を含む。以下同じ。〕,証人A,被告アストラ代表者B)及び弁論の全趣旨を総合すれば,大和銀行による本件信用状及び本件条件変更信用状の処理の経緯等につき,次の事実が認められる。 ア大和銀行は,平成13年7月25日12時20分,ナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK)から,2001年7月24日付金額USD500,440に係るテストキーを52181として,信用状発行銀行を同行,受益者を被告アストラとする本件信用状の発行の通知をテレックスで受けた。 上記通知には,信用状通知銀行への連絡 0,440に係るテストキーを52181として,信用状発行銀行を同行,受益者を被告アストラとする本件信用状の発行の通知をテレックスで受けた。 上記通知には,信用状通知銀行への連絡事項として「この信用状の真正の確認は,・・・シティバンク(CITIBANK,NEWYORK)に対し行われたし」と記載されていた。 イ大和銀行は,同日14時35分,シティバンクに対し,上記テストキーを使用して,スイフトで本件信用状の真正を確認すべく照会した。 ウ大和銀行は,同日22時18分,シティバンクから,「貴行が当行に何を要求しているかにつき,より具体的にお知らせ下さい。当行は,シティバンクであり,テスト52181は当行のものとは思われません。」との通知を受けた。 エ大和銀行は,同日23時15分,ナショナルシティバンクから,2001年7月25日付金額USD500,440に係るテストキーを33018として,本件信用状につき,船積商品又は役務の内容に関する条項に追加事項がある旨の本件条件変更信用状の通知をテレックスで受けた。 オ大和銀行は,同月26日12時27分,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく照会した。 しかし,上記照会に対する回答がなかったため,大和銀行は,同月27日16時12分,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく2回目の照会をした。 その後,大和銀行は,被告アストラからの催促を受け,同月30日17時6分,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく3回目の照会をした。 カ大和銀行は,同月31日16時47分,「 からの催促を受け,同月30日17時6分,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく3回目の照会をした。 カ大和銀行は,同月31日16時47分,「CITIBANKN.A. NEWYORK,ナンシーデレオン/テストキー管理セクション,当行参照番号E07300181」を発信元として,「当行はナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK,NEWALBANY,IN.)と当行の間でとられた下記テストキーが正しいものであることを確認する。 (1) 2001年7月24日付金額USD500,440.00 のテスト 52181(2) 2001年7月25日付金額USD500,440.00 のテスト 33018それ故,荷為替信用状No.CNCB5021-01の開設とそのアメンドNo.1に係る上記テストキーを付された発電は正式なものであり,即刻処理を行うに何等問題のないものである。」として,本件信用状及び本件条件変更信用状につきテストキーに問題がないとの回答文書をテレックスで受けた。 キ大和銀行は,上記回答に基づき,本件信用状及び本件条件変更信用状に問題がないと判断し,接受信用状通知状をもって,被告アストラにその旨通知した。 ク原告の神戸中央支店は,同年8月,被告アストラから,本件信用状及び本件条件変更信用状付き本件輸出手形2通の買取りを依頼された。 原告の神戸中央支店は,本件輸出手形に上記接受信用状通知状が添付されていたことから,本件輸出手形の買取りに応じることとし,信用状条件及びその他船荷証券等の船積書類を点検した上,同月24日に額面20万0870米ドル,同月29日に額面20万12 信用状通知状が添付されていたことから,本件輸出手形の買取りに応じることとし,信用状条件及びその他船荷証券等の船積書類を点検した上,同月24日に額面20万0870米ドル,同月29日に額面20万1270米ドルの各信用状付き輸出手形の買取りを行った。 原告の神戸中央支店は,三井住友銀行の神戸営業部に対し,上記信用状付き輸出手形の買取りを依頼し,これに応じた三井住友銀行は,信用状発行銀行であるナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK 320PEARLSTREETNEWALBANYIN 47150 USA)あてに本件輸出手形を送付し,取立てを行った。 ケしかし,信用状に記載された輸出手形及び船積書類等の送付先住所にはナショナルシティバンク(NATIONALCITYBANK)しか存在せず,ナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK)は存在しないことから,本件輸出手形の送付を受けたナショナルシティバンクは,銀行名のつづりが異なる信用状に不審を抱き,同月30日4時38分,三井住友銀行に対し,「我々は,ナショナルシティバンク(NATIONALCITYBANK)で,ナショナルシティバンク(NATIONALCITIBANK)ではありません。我々のニューアルバニー(NEWALBANY)支店では,イントラフィン(INTRAFIN) に対してNo.NCB5021-01のLCを発行しておらず,また,我々の顧客でもありません。」と述べ,信用状の真偽を確かめるため,本件信用状のコピーの送付等を求めた。 これを受けて,三井住友銀行は,ナショナルシティバンクに対し,本件信用状のコピーを送付した。 ナショナルシティバンクは 信用状のコピーの送付等を求めた。 これを受けて,三井住友銀行は,ナショナルシティバンクに対し,本件信用状のコピーを送付した。 ナショナルシティバンクは,本件信用状の真偽を調査したところ,インディアナ州のニューアルバニー事務所(NEWALBANYOFFICE,IN)は,当該信用状を発行したことはなく,同年9月5日,信用状が偽造されたものであることが判明した。 そのため,原告の神戸中央支店は,同月20日,三井住友銀行から,輸出手形2通を402,140 米ドルで買戻しをした。 (2) ところで,信用状統一規則7条は,信用状通知銀行の義務につき,「a信用状は,他の銀行を通じて,その通知銀行の側でなんの約束もなく,受益者に通知することができる。しかし,当該銀行は,信用状を通知することを選んだ場合には,自行通知の信用状が外観上正規に発行されたものとみられるかどうかを点検するために相応の注意を払う。当該銀行は,信用状を通知しないことを選んだ場合には,その旨を遅滞なく発行銀行に通報しなければならない。b もし,通知銀行が,そのような外観上の正規性を確認することができない場合には,その指図を送付してきたとみられる銀行に対して,信用状の正規性を確認することができなかった旨を,遅滞なく通報しなければなならない。それにもかかわらず,当該銀行は,信用状を通知することを選んだ場合には,そのような信用状の正規性を確認することができなかった旨を,受益者に通知しなければならない。」と定めている。 このように,信用状の制度は,通知銀行が,信用状が外観上正規に発行されたものとみられるかどうかを点検するために相応の注意を払った上,受益者に通知するところ,仮に外観上の正規性を確認するこ このように,信用状の制度は,通知銀行が,信用状が外観上正規に発行されたものとみられるかどうかを点検するために相応の注意を払った上,受益者に通知するところ,仮に外観上の正規性を確認することができない場合には,その旨を受益者に通知しなければならないとすることにより,信用状に対する信頼が確保され,ひいては海外取引の安全が図られるものである。 上記認定の事実によれば,大和銀行は,ナショナルシティバンクから,2001年7月24日付金額USD500,440に係るテストキーを52181として,本件信用状の発行の通知をテレックスで受け,シティバンクに対し,上記テストキーを使用して,スイフトで本件信用状の真正を確認すべく照会したが,シティバンクから,「貴行が当行に何を要求しているかにつき,より具体的にお知らせ下さい。当行は,シティバンクであり,テスト52181は当行のものとは思われません。」との通知をテレックスで受けたこと,その後,大和銀行は,2回にわたり,シティバンクに対し,スイフトで本件信用状及び本件条件変更信用状の真正を確認すべく照会したが,いずれについても,シティバンクからの回答文書の受信がなかったこと,大和銀行は,3回目の照会に対し,「CITIBANKN. A.NEWYORK,ナンシーデレオン/テストキー管理セクション,当行参照番号 E07300181」を発信元として,本件信用状及び本件条件変更信用状につきテストキーに問題がないとの回答文書をテレックスで受けたため,上記回答に基づき,本件信用状及び本件条件変更信用状に問題がないと判断し,接受信用状通知状をもって,被告アストラにその旨通知したことが認められる。 上記事実にかんがみれば,大和銀行は,シティバンクから受信した1度目の回答文書の内容が,大和 がないと判断し,接受信用状通知状をもって,被告アストラにその旨通知したことが認められる。 上記事実にかんがみれば,大和銀行は,シティバンクから受信した1度目の回答文書の内容が,大和銀行の照会に対する回答になっておらず,かつ,大和銀行が使用したテストキーがシティバンクのものとは異なると指摘されているのであって,本件信用状の外観上の正規性を疑うべき事情が認められたにもかかわらず,このことに特段留意することなく,その後も,2回にわたり,漫然とシティバンクに対して照会を続け,3回目の照会でようやく,2度目の回答文書を受信したが,この文書は,テレックスで受信され,しかも,テストキーの記載のないものであり,その真正を確認すべき方法がなかったのであるから,上記のような本件信用状の外観上の正規性を疑うべき事情の存在を併せ考えれば,大和銀行としては,再度,スイフト又はテレックスで,テストキーの記載のある回答を求めるべきであった。しかるに,大和銀行は,これを怠り,2度目の回答文書を真正なものであると軽信し,テストキーで正規性の確認ができる回答を求めず,また,正規性の確認ができていないのに,正規性の確認ができない旨の注記をすることなく,被告アストラに通知したものである。 以上の事実に照らしてみると,大和銀行は,本件信用状及び本件条件変更信用状が外観上正規に発行されたものとみられるかどうかを点検するために相応の注意を払ったとはいえず,原告に対し,民法709条に基づき,原告が本件輸出手形の買取りにより被った損害を賠償すべき責任を負うといわなければならない。 (3) この点につき,被告りそな銀行は,銀行実務では,現在でも,銀行間におけるテレックスを利用した送受信は行われており,必ずしもスイフトを利用して通信がなされているとい なければならない。 (3) この点につき,被告りそな銀行は,銀行実務では,現在でも,銀行間におけるテレックスを利用した送受信は行われており,必ずしもスイフトを利用して通信がなされているというものではないし,また,テレックスによる送信において,テストキーは相手方を確認する上で重要な機能を有しているが,必ずしも重要な通信のすべてにテストキーが付されているわけでもないと主張する。確かに,被告りそな銀行が主張するとおり,銀行間における送受信は,必ずしもスイフトによっているわけではなく,テレックスによることもあり,しかも,テレックスによる送受信のすべてにテストキーが付されているわけでもないが,このことは,ひとたび本件のようなトラブルが発生した場合に,テレックスについてテストキーによる確認作業をした者の責任を免責する効果までもたらすものとはいえない。 さらに,被告りそな銀行は,① 信用状通知銀行に課される注意義務について,銀行の預金払戻業務に際しての注意義務と同様に,一定の限界があると解するのが相当である,また,② 巧妙に仕組まれた信用状の偽造を発見し得る程度の注意義務を信用状通知銀行に課すことは,実務的に不可能を強いるものとなるのであって,到底首肯し難いなどと主張する。しかし,上記①の点について,信用状の外観上の正規性の確認業務と銀行預金の払戻業務とでは,その時間的余裕の程度にかなりの相違が認められるし,しかも,信用状通知銀行は,信用状の外観上の正規性を確認することができない場合には,そのような信用状の正規性を確認することができなかった旨を,受益者に通知すれば足りるのであって,信用状通知銀行に課される注意義務を銀行預金の払戻業務に際しての注意義務と同様に解することは困難である。また,上記②の点については,前記認定の事実に照 かった旨を,受益者に通知すれば足りるのであって,信用状通知銀行に課される注意義務を銀行預金の払戻業務に際しての注意義務と同様に解することは困難である。また,上記②の点については,前記認定の事実に照らして,大和銀行は,本件信用状及び本件条件変更信用状が外観上正規に発行されたものとみられるかどうかを点検するために相応の注意を払ったとはいえないと判断したというにすぎず,巧妙に仕組まれた信用状の偽造を発見し得る程度の注意義務を信用状通知銀行に課しているというわけでもない。 したがって,被告りそな銀行の上記主張はいずれも採用できない。 2 争点(2)(被告アストラによる本件輸出手形の買戻債務の発生の有無)について被告アストラは,信用状発行銀行であるナショナルシティバンクは,当初から存在しなかったのであるから,そもそも外国向為替手形取引約定書第15条①及び②にいう「外国向為替手形の買取を受けた後」の要件を充足することはあり得ず,買戻債務は発生しないと主張する。 しかし,上記条項が被告アストラによる買戻債務の発生事由を定めたのは,要するに,原告が外国向為替手形の買取りをしたにもかかわらず,その取立てが効を奏しなかったなどの理由から,原告が損害を被ることを防ぐためであり,このことは,信用状発行銀行であるナショナルシティバンクが当初から存在しなかったため,本件輸出手形の額面金額の回収ができなかった本件においても,同様に当てはまるものといえる。この点に関する被告アストラの上記解釈は形式的にすぎるといわざるを得ない。 したがって,本件についても,外国向為替手形取引約定書第15条①及び②の適用があり,被告アストラは,原告に対し,外国向為替手形面記載の金額の買戻債務及び同金額に対する年18.25パーセン したがって,本件についても,外国向為替手形取引約定書第15条①及び②の適用があり,被告アストラは,原告に対し,外国向為替手形面記載の金額の買戻債務及び同金額に対する年18.25パーセントの割合による損害金の支払義務を負担する。 3 争点(3)(荷物の価値の有無)について(1) 被告アストラは,本件荷物は有価値であったが,原告の換価処分に問題があったため,本件荷物が無価値になってしまったというだけのことであるから,原告が主張する立替費用734万9754円につき,被告アストラに支払義務はないなどと主張する。 (2) そこで,検討するに,証拠(甲第8,10,11,12,14,15号証,証人A,被告アストラ代表者B)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件荷物の廃棄処分に至る経緯等につき,次の事実が認められる。 ア平成13年9月5日に本件信用状の偽造が判明した後,原告は,直ちに被告アストラに連絡し,本件輸出手形の買戻しを請求したが,被告アストラは,資金不足を理由としてこれに応じなかった上,本件輸出手形に係る取引の仲介業者の氏名及び所在を積極的に調査開示しようとしなかった。 イその後,同年10月10日,本件荷物が香港港から神戸港にシップバックされたが,被告アストラは,同月12日,原告に対し,本件荷物の処分(廃棄を含む。)は,被告アストラの費用負担の下で,一切の処理を原告にまかせることに同意するとともに,処理後には金額及び方法について何ら異議の申立てをしないことを約した。 ウこれを受けて,原告は,取引先の遊技業者等に本件荷物の売却を持ちかけたが,売却に至らなかった。 そこで,原告は,被告アストラに対しても,転売先を探すよう依頼し,被告アストラも,例えば取引先のドミ 告は,取引先の遊技業者等に本件荷物の売却を持ちかけたが,売却に至らなかった。 そこで,原告は,被告アストラに対しても,転売先を探すよう依頼し,被告アストラも,例えば取引先のドミニオン・ニッポン株式会社を通じて,本件荷物の転売先を探したが,同社も,同月30日付けで,被告アストラに対し,十数社のアメリカの関連企業に打診したものの本件荷物の売却は非常に困難であると判断した旨のファックスを送付してきた。 エこのような状況を踏まえ,原告と被告アストラは,同年11月5日,本件荷物のうち,中古のパチスロ機について,転売の見通しが全くなく,保管料が高額であることも考え,廃棄処分にすることとし,同月12日,そのすべてを廃棄処分にした。 その後も,原告と被告アストラは,本件荷物のうち,中古のコピー機については,転売の努力をしたが,結局,転売先が見つからなかったことから,保管料及び廃棄費用も考慮し,同年12月18日,そのすべてを他の会社に無償で譲渡した。 オ本件荷物の保管料は,中古のパチスロ機について,同年11月1日から同月20日までの間で18万3120円を要し,中古のコピー機については,同年11月1日から同年12月20日までの間で36万7500円を要した。 カ本件荷物の廃棄処分又は無償譲渡の時点でも,被告アストラは,原告に対し,シップバックの費用や保管料を支払わなかった。 (3) 上記認定の事実によれば,原告は,自ら本件荷物の転売の努力をし,被告アストラにも転売の協力を求めたが,結局,買い手が現れなかったところ,本件荷物の評価額に照らし保管料を負担することが不相当であったため,これを廃棄処分又は無償譲渡したものであることが認められる。 これらの事実にかんが 結局,買い手が現れなかったところ,本件荷物の評価額に照らし保管料を負担することが不相当であったため,これを廃棄処分又は無償譲渡したものであることが認められる。 これらの事実にかんがみれば,本件荷物は,それ自体としては,被告アストラが主張するように,本件荷物の調達に要した原価が1628万5580円であり,また,神戸税関が算定した本件荷物の価値が38万8900米ドルであったとしても,国内外で転売先をみつけることができず,転売の見通しが全く立たなかったのであるから,もはや交換価値のないものといわなければならない。 したがって,本件荷物は無価値であるといわざるを得ず,原告の立替費用734万9754円につき,被告アストラに支払義務があるというべきである。 4 争点(4)(弁済時の円換算による請求の可否)について前記「1 争いのない事実等」(2)ウのとおり,被告アストラは,外国向為替手形取引約定書第16条に基づき,被告アストラが負担する外国向為替手形の買戻債務または求償債務を円貨で弁済する場合に適用される為替相場につき,その債務を弁済する時における直物電信売相場とすることを承認していることが認められる。 そして,被告アストラは,信義則に照らし,上記条項の適用を許すべきでないと主張するけれども,本件全証拠を精査してみても,上記条項の適用を排除すべき特段の事情は認められない。 5 争点(5)(過失相殺の成否)について(1) 前記1認定説示のとおり,大和銀行は,原告に対し,民法709条に基づき,原告が本件輸出手形の買取りにより被った損害を賠償すべき責任を負うとしても,本件信用状及び本件条件変更信用状に信用状発行銀行として記載されているナショナルシティバンクは,実在しない銀行であったと ,原告が本件輸出手形の買取りにより被った損害を賠償すべき責任を負うとしても,本件信用状及び本件条件変更信用状に信用状発行銀行として記載されているナショナルシティバンクは,実在しない銀行であったところ,原告は,信用状発行銀行の存在を確認しないで,本件輸出手形の買取りをしたことなどにかんがみると,原告に生じた損害のすべてを被告らの負担とするのは公平に失するといわざるを得ない。 もっとも,原告の損害の発生については,原告にも一定程度の責任があるとはいえ,三井住友銀行による本件輸出手形の取立ての過程において,ナショナルシティバンクが本件信用状及び本件条件変更信用状の真偽を調査してはじめて,これらが偽造されたものであることが判明したものであり,大和銀行も,ナショナルシティバンクの存在を確認せず,当該銀行が実在しないことに気づかなかったものであること,その他大和銀行が負う信用状通知銀行としての義務の内容及び程度,信用状制度の趣旨及び目的等に照らして考えると,原告の上記過失は,大和銀行の前記過失に比してなお軽いというべきである。 よって,本件においては,上記認定に係る一切の事情を斟酌し,3割の過失相殺を行うのが相当である。 (2) この点につき,原告は,たとえ原告に何らかの過失があるとしても,大和銀行の信用状の正規性の確認義務を怠ったという不法行為を助成するものではなく,また,大和銀行と協力して当該不法行為がなされたものでもないから,原告の過失は被害者の過失とならないというべきであると主張する。しかし,過失相殺は,損害賠償額を定めるにつき,具体的な公平を図るため,被害者に損害の発生及び拡大に過失があったときは,これを斟酌すべきであるとする制度であるから,原告が大和銀行の不法行為を助成するなどしていないと は,損害賠償額を定めるにつき,具体的な公平を図るため,被害者に損害の発生及び拡大に過失があったときは,これを斟酌すべきであるとする制度であるから,原告が大和銀行の不法行為を助成するなどしていないとしても,仮に原告により信用状発行銀行の存在が調査確認されていた場合には,原告の損害の発生及び拡大をある程度回避することができたと解されるので,やはり過失相殺の適用が認められてしかるべきである。 また,原告は,信用状の点検につき,原告が本件輸出手形の買取りをする前に, 大和銀行が既に正規性の確認をしており,原告がそれ以上に確認をする必要はないとも主張するが,信用状付き輸出手形の取引において,大和銀行による信用状の外観上の正規性の確認がまず前提となっていることは明らかであるものの,それが唯一絶対のものでもないのであるから,原告が信用状発行銀行の存在を調査確認する必要がないとまではいえない。 なお,被告りそな銀行は,原告には,信用状付き輸出手形の買取銀行として,信用状の点検のほか,買取依頼人の信用状態,及び,船積書類及び付帯荷物の確認等に関する注意義務を怠った過失があると主張する。しかし,本件で,本件輸出手形の不渡りの原因は,信用状発行銀行が実在しなかったことに尽きるものであり,大和銀行の過失も,この点に関するものであること,原告は,これまで被告アストラから輸出手形の買取りをしてきたが,トラブルが生じたことはなかった上,本件輸出手形の買取りに際しても,被告アストラに預金を担保として提供させるとともに,保証人をつけさせるなどしていること,船籍書類の確認に関する落度は特段認められないこと,付帯荷物の性質及び換価性についても,中古のパチスロ機及びコピー機は,日本国内から海外への輸出という方法をとれば,一般的には市場性を有す いること,船籍書類の確認に関する落度は特段認められないこと,付帯荷物の性質及び換価性についても,中古のパチスロ機及びコピー機は,日本国内から海外への輸出という方法をとれば,一般的には市場性を有するものと考えても,それほど不合理なものとはいえないことにかんがみれば,買取依頼人の信用状態,及び,船積書類及び付帯荷物の確認等に関する注意義務について,原告の過失を認めることは困難というべきである。 (3) 原告の損害額は,本件輸出手形の買取代金2674万5840円と2679万9100円の小計5354万4940円及び付帯荷物の処分費用734万9754円の合計6089万4694円であるところ,前示の次第でその3割を各控除すると,それぞれ1872万2088円と1875万9370円の小計3748万1458円及び514万4827円の合計4262万6285円となる。 6 争点(6)(被告アストラによる原告に対する損害賠償請求権を受働債権とする相殺の可否)について被告アストラは,原告は,本件荷物の売却の努力をせず,担保を廃棄し,被告アストラの本件荷物を毀損破棄したのであるから,被告アストラは,原告に対し,38万8930米ドルの不法行為に基づく損害賠償請求権を有すると主張し,原告に対し,上記損害賠償債権をもって,原告の本訴請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をする。 しかし,前記3で認定説示したとおり,原告は,本件荷物の転売につき,自ら相応の努力をし,被告アストラにも転売の協力を求めたが,結局,買い手が現れなかったところ,本件荷物の評価額に照らし保管料を負担することが不相当であったため,本件荷物を廃棄処分したものである。 上記事実に,被告アストラは,その費用負担で,本件荷物に関する一切の処理を原告にま ,本件荷物の評価額に照らし保管料を負担することが不相当であったため,本件荷物を廃棄処分したものである。 上記事実に,被告アストラは,その費用負担で,本件荷物に関する一切の処理を原告にまかせることに同意したこと,原告と被告アストラは,協議の上,本件荷物を廃棄処分又は無償譲渡することに決めたこと,本件荷物の保管料が高額であったこと,本件荷物の廃棄処分又は無償譲渡の時点でも,被告アストラは,原告に対し,シップバックの費用や保管料を支払わなかったことを併せ考えると,原告による本件荷物の廃棄処分は不法行為に当たらないといわざるを得ない。 したがって,被告アストラによる相殺の主張は,前提を欠き,採用できない。 7 争点(7)(損害の填補の有無)について被告りそな銀行は,原告は,被告アストラの原告に対する預金債権と原告の被告アストラに対する輸出手形買戻請求権等とは対当額で相殺されているはずであり,損害額は,輸出手形の買戻代金額から2000万円が控除されるべきであると主張する。 しかし,本件全証拠によっても,被告アストラの原告に対する預金債権と原告の被告アストラに対する輸出手形買戻請求権等とが対当額で相殺された事実は認められない(この点につき,訴訟手続の進行中,本争点は損益相殺の成否として位置づけられていたことがうかがわれるが〔平成15年3月31日付け「求釈明」と題する書面〕,損益相殺とは,同一の原因によって利益を受けている場合に,この利益を損害額から控除して賠償額を算定することであり,本件において,原告が損害を受けたことと,預金債権との相殺を実行することが同一の原因によるものでないことは明らかであるから,本件は損益相殺の問題ではない。)。 また,被告りそな銀行の上記主張について,被告りそな 害を受けたことと,預金債権との相殺を実行することが同一の原因によるものでないことは明らかであるから,本件は損益相殺の問題ではない。)。 また,被告りそな銀行の上記主張について,被告りそな銀行が被告アストラの原告に対する預金債権をもって相殺を援用する旨のものであると解するとしても,被告りそな銀行の原告に対する債務は不法行為により生じたものであり,被告りそな銀行は相殺をもって原告に対抗できないことは明らかであるから(民法509条),当該主張も採用できない。 8 結論以上の検討結果によれば,原告の本訴請求は,被告らに対し,連帯して4262万6285円及び被告りそな銀行については内1872万2088円に対する平成13年8月25日から,内1875万9370円に対する同月30日から,内514万4827円に対する平成14年1月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員の,被告アストラについては内3748万1458円に対する平成13年9月21日から,内514万4827円に対する平成14年1月8日から各支払済みまで年18.25パーセントの割合による金員の支払を求める限度で理由があるので,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官中川博文

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