平成12(行ウ)10 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年10月22日 和歌山地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文6,185 文字)

主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 被告は,古座町に対し,1118万0160円及びうち880万0480円に対する平成12年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は,被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 被告主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨古座町の住民である原告らは,古座町長の地位にある被告が国民宿舎「A」の支配人に対して給与等を支給したことが地方自治法の定める給与条例主義に反して違法であり,これによって,古座町は平成11年度及び平成12年度の支給合計に相当する1118万0160円の損害を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)242条の2第1項4号による住民訴訟として,古座町に代位して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,古座町が被った上記損害1118万0160円及びそのうち平成11年4月から平成12年11月までの支出分に相当する880万0480円に対する訴状送達の日の翌日である平成12年12月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対し,被告は,上記支給の違法性を否認するなどして争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(乙1ないし3,6,8ないし11)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。 (1) 当事者原告らは,いずれも古座町内に居住する住民である。 被告は,平成9年7月ころから古座町長の地位にある者である。 (2) 本件支出被告は,古座町長として,平成11年4月1日,国民宿舎「A」支配人(以下,同国民宿舎,同支配人 に居住する住民である。 被告は,平成9年7月ころから古座町長の地位にある者である。 (2) 本件支出被告は,古座町長として,平成11年4月1日,国民宿舎「A」支配人(以下,同国民宿舎,同支配人をそれぞれ単に「国民宿舎」「支配人」ということがある。)にBを新たに任命した上,議会の議決を経た予算の執行として,上記Bに対し,平成11年度には給料として411万7200円,期末勤勉手当として129万8880円(合計541万6080円)を,平成12年度には給料として411万7200円,期末勤勉手当として少なくとも150万8800円(少なくとも合計562万6000円)をそれぞれ支払った(Bに支払われた平成11・12年度の給料及び期末勤勉手当を以下「本件支出」といい,その合計は,以上のとおり1104万2080円を下らない。)。 (3) 本件支出に関連する条例等古座町では,昭和46年1月28日,「古座町国民宿舎設置及び管理に関する条例」(以下「本件条例」という。)を定めた。同条例においては,宿舎の管理は町長が行うこととし(3条1項),宿舎の管理に支配人1人をおくこと(12条),この条例に規定するものの外,宿舎の管理及び運営について必要な事項は管理者が定めるものとすること(15条)などが規定されている。 古座町長は,昭和46年ころ,上記条例15条の規定に基づき,古座町国民宿舎就業規則,職員給料表及び給与規程を定めた。 (4) 本件条例の改正古座町議会は,平成13年3月15日,以下のような内容を含む本件条例の一部を改正する条例を可決・成立させた(改正後の本件条例を「本件改正条例」という。)。 ① 職員の給与の種類は,給料及び手当とする。 職員の給料は,一般職の職員の例による。 手当の種類は,扶養手当,通勤手当,技術手当,宿直手当,期末手当,勤勉手 件条例を「本件改正条例」という。)。 ① 職員の給与の種類は,給料及び手当とする。 職員の給料は,一般職の職員の例による。 手当の種類は,扶養手当,通勤手当,技術手当,宿直手当,期末手当,勤勉手当,超過勤務手当,住居手当及び調整手当とする。 上記手当のうち,扶養手当,通勤手当,期末手当,勤勉手当,超過勤務手当,住居手当及び調整手当の額及び支給方法については,一般職の職員の例による(以上,13条)。 ② 技術手当は,管理又は監督の地位にある職員に支給する。 技術手当の額は,月額1万円以内とする(以上,14条)。 ③ 宿直勤務を命ぜられた職員には,当該宿直勤務について宿直手当を支給する。 宿直手当の額は,勤務1回につき4200円以内とする(以上,15条)。 ④ 職員が勤務しないときは,その勤務しないことにつき,特に承認のあった場合を除くほか,その勤務しない1時間につき,勤務時間1時間当たりの給与額を減額して給与を支給する(16条)。 ⑤ この条例は,公布の日から施行し,昭和46年2月1日から適用する(附則)。 (5) 住民監査請求等原告らは,平成12年9月19日,古座町監査委員に対し,損害補てんするために必要な措置を講ずることを求める旨の住民監査請求をしたところ,監査委員は,同年11月13日,被告に条例制定の必要性の認識が欠けていたことを認め,所要の是正措置を行うよう勧告したものの,被告に対して損害賠償を求めない旨を決定し,原告らは,そのころ,同決定の通知を受けた。 原告らは,平成12年12月9日,本件訴えを提起した。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件支出には給与条例主義に反する違法があるか。 (原告らの主張)被告が行った本件支出は,条例の根拠に基づかないもので,給与条例主義に反し違法である。 この点,被告は,後記 当事者の主張(1) 本件支出には給与条例主義に反する違法があるか。 (原告らの主張)被告が行った本件支出は,条例の根拠に基づかないもので,給与条例主義に反し違法である。 この点,被告は,後記のとおり,給与条例主義に反しない旨主張する。しかし,本件条例は,公の施設の設置目的や施設の設置及び管理方法について定めたものであり,職員の給与について定めたものではない。仮に古座町国民宿舎就業規則が本件条例の委任を受けたものであるとしても,それは個別的委任の範囲を超えた包括委任であり違法であるし,支配人の給与が同規則の対象とされているかは疑問である。 また,そもそも支配人が一般職であるか特別職であるかということすら明確に意識されず,この点に関する議会での被告の答弁等が二転三転したのも,給与の支給根拠が不明確であることを示すものである。 (被告の主張)本件においては,条例に具体的な金額まで記載されていないものの,本件条例の委任に基づき,古座町長が古座町国民宿舎就業規則・給与規定・給料表等(乙2,3)という合理的かつ明確な基準を定め,しかも毎年の給料については個別具体的に特別会計として町議会の議決及び決算承認を経ているのであるから,これをもって給与条例主義に反するということはできない。 (2) 本件支出に争点(1)で原告らが主張するような違法があると認められる場合に,本件改正条例によってその違法は治癒されるか。 (被告の主張)古座町では,平成13年3月15日の本件条例の改正による本件改正条例によって,前記のとおり,「(国民宿舎の)職員の給料は,一般職の職員の例による。」とされ(13条2項),職員に支給する諸手当についても規定が設けられ(13条3項・4項,14条,15条),附則において,「この条例は,公布の日から施行し,昭和46年2月1日から の職員の例による。」とされ(13条2項),職員に支給する諸手当についても規定が設けられ(13条3項・4項,14条,15条),附則において,「この条例は,公布の日から施行し,昭和46年2月1日から適用する。」との遡及適用が規定された。 したがって,仮に本件支出が違法であっても,上記改正により,その違法は治癒され,遡及的に適法となったものである。 (原告らの主張)被告が上記のとおり主張するように,条例の改正により過去のことまで適法にできるというのは,給与条例主義の趣旨を反故にするものであり,行政の公平と透明性が求められる今日,そのような事態が許されるべきではない。 とりわけ,本件においては,町長に対し,支配人に支給する給与を包括委任するとの条例もなく,町長による支給の根拠が条例上どこにも認められていなかったのであるから,このような場合にまで遡及適用を認めることはできない。 仮に本件改正条例によるとしても,同条例は,国民宿舎職員の一般職に対する給与に関するものであって,特別職には適用されない。一般職か特別職かは職員の根本に関わるもので,一方に他方の給与体系を適用することは,地方公務員法が成績主義と終身職を踏まえて一般職に適用させた趣旨を没却するからである。そして,支配人は特別職であると解すべきであるから,結局,支配人には本件改正条例の適用がなく,本件支出は依然として条例の根拠がないというべきである。 (3) 被告に故意・過失があったか。 (原告らの主張)古座町長という地位にある被告が,その職務を行うにつき,前記のような違法行為をしたのであるから,被告には少なくとも過失が認められるというべきである。 (被告の主張)原告らの上記主張は争う。 国民宿舎の支配人については,被告が町長に就任する以前の昭和50年4月1日から昭和57年3月31 ら,被告には少なくとも過失が認められるというべきである。 (被告の主張)原告らの上記主張は争う。 国民宿舎の支配人については,被告が町長に就任する以前の昭和50年4月1日から昭和57年3月31日までの間,CもBと同様に嘱託員として勤務し,前記のような運用により給料が支給されていたし,他に,古座町では,幼稚園の園長も嘱託員として採用し,その給与の支給を前記のような運用によっていた例もあった。 被告は,このような前例のもとで,町長に就任した後,国民宿舎の支配人であるBの給与について,上記と同様の運用によって処理したにすぎず,このような運用が違法であるとの認識も有していなければ,その認識可能性もなかったというべきであって,被告には故意・過失がないというべきである。 (4) 古座町が被った損害額はいくらか。 (原告らの主張)被告がBに給料等として支出した本件支出が違法であるから,これにより古座町は支出額相当の1118万0160円の損害を被ったというべきである。 (被告の主張)支配人として職務に従事させている以上,給与を支払うのは当然であるし,その額も相当である。また,支配人がDからBに代わるに当たって,支配人の給与額も減少している。してみると,Bに対する給与の支給(本件支出)が古座町に損害を発生させたとはいえない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(給与条例主義違反の有無)について前記前提事実のとおり,国民宿舎の職員に対する給与について,改正前の本件条例においては,かろうじて「この条例に規定するものの外,宿舎の管理及び運営について必要な事項は管理者が定めるものとする。」(15条)と規定されているだけで,昭和46年当時の古座町長が,上記条例15条の規定に基づいて,古座町国民宿舎就業規則及び職員給料表等を定めたものである。しかしなが 事項は管理者が定めるものとする。」(15条)と規定されているだけで,昭和46年当時の古座町長が,上記条例15条の規定に基づいて,古座町国民宿舎就業規則及び職員給料表等を定めたものである。しかしながら,上記条例15条が,その文言に照らし,国民宿舎職員の給与の支給基準・方法等についてまで委任したものであるとまで認めることは困難である。のみならず,仮に委任したものであるとしても,当該委任は,何ら大綱をも示さない全くの白紙委任というべきであるから,給与条例主義(地方自治法204条3項,204条の2等)に反するものとして許されないといわなければならない。 したがって,被告がした本件支出もまた給与条例主義に反して違法であるというべきである。 2 争点(2)(違法性の治癒)について前記前提事実のとおり,本件改正条例が,前記の新設規定を盛り込み,昭和46年2月1日から適用するとして遡及適用することとしたのは,古座町議会が,本件改正条例の制定によって,被告を含む歴代古座町長のした国民宿舎職員に対する給与の支給を是認し,さかのぼって条例の根拠を与えることによりこれを適法なものとしたものと解するのが相当である。 これに対し,原告らは,本件改正条例の遡及適用を認めることは給与条例主義の趣旨を反故にするものであって許されるべきではなく,とりわけ本件においては,町長による支給の根拠が条例上どこにも認められていなかったのであるから,このような場合にまで本件改正条例の遡及適用を認めることはできない旨主張する。しかしながら,被告がした本件支出が違法とされるのは,前記1に判示したとおり,本件支出が条例上の根拠を有しないからにほかならず,これと条例を改正することの可否,遡及適用することの可否とは次元を異にするというべきであるし,古座町議会としては,上記のような事情や 示したとおり,本件支出が条例上の根拠を有しないからにほかならず,これと条例を改正することの可否,遡及適用することの可否とは次元を異にするというべきであるし,古座町議会としては,上記のような事情や過去の支給額等をも当然考慮の対象とした上で条例を改正し遡及適用することとしたものと考えられるのであって,遡及適用を否定する理由は全くないといわなければならない。この点に関する原告らの主張は採用することができない。 さらに,原告らは,本件改正条例が遡及的に適用されるとしても,本件改正条例は国民宿舎職員の一般職に対する給与に関するものであり,特別職には適用されないことを前提に,支配人は特別職であると解すべきであるから,結局,支配人には本件改正条例の適用がなく,支配人の給与に関するかぎり,依然として条例による根拠がない旨主張する。しかしながら,地方公務員の特別職を規定した地方公務員法3条3項各号所定の職に,国民宿舎の支配人の職が該当するものはないから,同職は一般職であるといわなければならない(同条2項)。その上,本件改正条例(乙1,10)は,12条1項・2項において,職員として支配人1人ほかをおくこととし,13条以下において,職員の給与についての規定を設けていることからすると,支配人も13条以下の規定によって給与を受けるべき職員に含まれるのは当然の帰結である。したがって,この点に関する原告らの主張も採用の限りでない。 3 結論以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの本件請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官間史恵裁判官田中幸大 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官間史恵裁判官田中幸大

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