主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 原判決(主文)の表示及び被控訴人の本件請求の趣旨 1 控訴人が平成12年6月27日付けで被控訴人に対してした分限免職処分を取り消す。 2 訴訟費用は控訴人の負担とする。 第3 事案の概要 1 本件は,東京都交通局(都交通局)の職員で都営バス(都バス)の運転手をしていた被控訴人が,控訴人が平成12年6月27日付けで被控訴人に対してした分限免職処分(本件処分)の取消しを求めた事案である。 なお,被控訴人は,当初被告を東京都として本件処分取消訴訟を提起したが,本件処分をした行政庁は東京都ではなく,控訴人であることを理由に,控訴人が本案前の答弁として本件訴えの却下を求めた。そこで,被控訴人は,行政事件訴訟法15条の規定に基づき被告を控訴人に変更することの許可の申立てをしたので,原審裁判所は,被控訴人の申立てを理由があるものと認め,その変更を許可する旨の決定をした。 2 前提事実(本件処分及びこれに至る経緯等)(1) 当事者ア東京都は,東京都地方公営企業の設置等に関する条例1条4号に基づき,地方公営企業法の全部が適用される事業として自動車運送事業を設置し,東京都公営企業組織条例1条1号,2条に基づき,同事業を所管する局として交通局を置き,同局の管理者として控訴人を置いている。控訴人は,都交通局の職員の任免その他の身分取扱いに関する事項を掌理する事務を担任する者である(地方公営企業法9条2号)。 イ被控訴人は,平成3年8月1日付けで採用された都交通局の職員である。 被控訴人は,同年9月25日,バス運転手の職務に従事することを命じられ,以後都バスの運転手として都交通 営企業法9条2号)。 イ被控訴人は,平成3年8月1日付けで採用された都交通局の職員である。 被控訴人は,同年9月25日,バス運転手の職務に従事することを命じられ,以後都バスの運転手として都交通局練馬自動車営業所(平成11年4月1日から都交通局北自動車営業所練馬支所とその名称を変更。以下同日前後を通じて「練馬支所」という。)に所属し勤務してきた。 ウ平成11年4月1日から平成12年4月まで練馬支所長はA(A支所長),平成11年4月から本件処分時まで北自動車営業所長はB(B所長)であった。 (2) 被控訴人の受傷ア被控訴人は,平成10年10月31日,練馬支所構内の車庫において,バスを運転中接触事故を起こし,頸部捻挫の傷害(本件傷害)を負った。被控訴人は,同年12月1日付けで公務災害の認定を請求し,本件傷害は,平成11年7月6日,地方公務員災害補償基金東京都支部長により,公務災害と認定された。 イ被控訴人は,平成12年6月20日,同支部長に対し,本件傷害の後遺症によるうつ病について公務災害認定の追加請求を行った。同請求は,本件訴訟が原審において係属していた段階では,同支部長において審査中であった。 (3) 被控訴人に対する懲戒処分ア控訴人は,平成12年2月23日付けで,地方公務員法29条1項各号に該当することを理由に,被控訴人に対し,14日間の停職を命ずる懲戒処分(従前懲戒処分)をした。 従前懲戒処分の理由の概要は,以下のとおりである。 被控訴人は,平成11年度に次の①ないし④の服務規程違反行為を行った。被控訴人のこの一連の行為は,東京都交通局自動車運転取扱心得(本件心得)3条,都交通局自動車係員服務要綱(本件服務要綱)4条,5条,6条,7条,9条,10条,地方公務員法32条,33条に違反する非違行為に該当する。 ① 平成11年7 交通局自動車運転取扱心得(本件心得)3条,都交通局自動車係員服務要綱(本件服務要綱)4条,5条,6条,7条,9条,10条,地方公務員法32条,33条に違反する非違行為に該当する。 ① 平成11年7月6日,同月14日,8月21日,同月22日,平成12年1月27日,2月1日,連絡なく当日欠勤を行い,私事欠勤をした。 ② 平成11年9月25日,白61系統αからβ駅までの間,脱帽運転を行った。 ③ 居眠運転の防止のため,毎日,2枚ほどのガムを噛んでの運転を恒常的に行っていた。 ④ 平成11年10月10日,β駅前停留所(新宿方面行き)において,乗用車運転手に対し,クラクションを30秒ほど鳴らし,周囲を騒然とさせた。 イ被控訴人は,停職期間明けの平成12年3月9日,職場に復帰した。 (4) 本件処分ア控訴人は,平成12年6月27日付けで,被控訴人に対し,被控訴人を分限免職とする本件処分をした。 本件処分の理由の概要は,以下のとおりである。 (ア) 被控訴人は,平成10年度から平成11年度にかけて,次のような服務規程等に対する違反行為(本件違反行為。個別の違反行為をいうときは,以下「本件違反行為①」などという。)を行った。これらの行為は,東京都交通局職員服務規程(交通局服務規程)6条,12条2項,本件心得3条,5条,19条,27条,本件服務要綱5条,7条,9条,10条,15条1項,地方公務員法32条,33条に違反している。 ① 平成10年9月18日,γ町停留所において,乗客から乗車の申入れがあったにもかわらず,ドアを開けず出発した。 ② 同年10月31日,練馬所内において,車両接触事故が発生した際,料金箱を路上に放り投げて破損させた。 ③ 平成11年9月25日,脱帽の上,ガムを噛みながら乗務していた。 ④ 同年10月10日,β駅前停留所において,乗用車の 所内において,車両接触事故が発生した際,料金箱を路上に放り投げて破損させた。 ③ 平成11年9月25日,脱帽の上,ガムを噛みながら乗務していた。 ④ 同年10月10日,β駅前停留所において,乗用車の運転手に対し,クラクションを約30秒間鳴らし続けた。 ⑤ 同年7月6日,同月14日,8月21日,同月22日,平成12年1月27日,2月1日の計6日間,無届欠勤を行った。 ⑥ 平成12年2月22日,白61系統午前10時35分ころδ駅西口到着のダイヤに乗務した際,急停車,急発進を繰り返した。 ⑦ 平成12年3月23日に無届欠勤を行った。 (イ) 被控訴人は,平成3年12月から平成10年8月にかけて,事故を11回起こしている(本件一連事故)。 (ウ) これらのことから,被控訴人は,地方公務員法28条1項1号及び3号に該当する。 イ都交通局では,分限免職処分をする場合の基準を設けている。その一つとして,「過去5年以内に欠勤等を理由に停職処分を受けたにもかかわらず,再び欠勤等を理由に処分の対象となった者」は,「勤務成績が良くない場合」に該当するとしている(本件基準)。控訴人は,都交通局の懲戒分限審査委員会(審査委員会)の答申を経た上,被控訴人が従前懲戒処分を受けたにもかかわらず,数週間後に無届欠勤をした行為が本件基準に該当することを主な理由として,本件処分をした。 (5) 被控訴人は,平成12年9月25日,本件訴えを提起した。 3 本件処分に関係のある法令等の定め(1) 地方公務員法地方公務員法28条1項は,「職員が,『勤務実績が良くない場合』(1号),『その職に必要な適格性を欠く場合』(3号)に該当する場合においては,その意に反して,これを降任し,又は免職することができる。」旨規定し,また,同法は,「職員は,その職務を遂行するに当って,法令,条例,地方 に必要な適格性を欠く場合』(3号)に該当する場合においては,その意に反して,これを降任し,又は免職することができる。」旨規定し,また,同法は,「職員は,その職務を遂行するに当って,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従…わなければならない。」(32条),職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」(33条)と規定している。 (2) 交通局服務規程,本件心得及び本件服務要綱ア交通局服務規程交通局服務規程は,「職員は,休暇を請求するときは,前日までに上司に申し出てその承認を得なければならない。ただし,やむを得ない事由によりあらかじめ承認を得ることができないときは,出勤時限後30分以内までにその旨を申し出なければならない。」(6条),「職員は,執務環境の整理に努めるとともに,物品等の保全活用に心掛けなければならない。」(12条2項)と規定している。 イ本件心得本件心得は,「運転手,ガイド,車掌,誘導員,運行管理者及び整備管理者その他自動車の運行に密接な関係を有する職務に従事する者(以下「運転関係従事者」と総称する。)は,自動車の運行に関し,この心得に定めるもののほか,法令等を守り,公安委員会及び警察官の指示又は命令に従わなければならない。」(3条),「運転関係従事者は,相互に協力し,輸送の円滑及び安全な運行の確保並びに旅客サービスに努めなければならない。」(5条),「運転手は,自動車を停車させようとするときは,非常の場合を除き,穏やかに制動し,急停車による乗客の転倒事故のないよう注意しなければならない。」(19条),「運転手は,停留所に利用客を認めたときは,自動車を停車させ,乗車の取扱いをしなければならない。ただし,満員のときは,徐行又は一時停止させ,車外 倒事故のないよう注意しなければならない。」(19条),「運転手は,停留所に利用客を認めたときは,自動車を停車させ,乗車の取扱いをしなければならない。ただし,満員のときは,徐行又は一時停止させ,車外マイクでその旨を利用客に告げ通過することができる。」(27条2項)と規定している。 ウ本件服務要綱本件服務要綱は,乗務員(運転手等)等を係員と規定し(3条),「係員は,事業の公共性を自覚し,常に品位を高め,心身の健康に留意し,職務の遂行に当たっては全力をあげてこれに専念し,輸送の安全確保と輸送力の増強に努めなければならない。」(4条),「係員は,自己の職務に関する法令等を守らなければならない。」(5条),「係員は,執務するときは所定の制服及び制帽を着用し,常に制服の整正に努めなければならない。」(7条本文),「係員は,指定された時刻までに出勤しなければならない。」(9条1項),「遅参早退等をする場合は,勤怠係にその旨を届け出て,その指示に従わなければならない。」(同条2項),「係員は,休暇の承認を得るときは,前日までに所定の手続きをしなければならない。」(10条1項),「係員は,やむを得ない事由のほか,欠勤をしてはならない。」(同条2項),「係員は,病気のため欠勤するときは,医師の診断書を添え,かつ,期間を定めて届け出なければならない。」(同条3項),「乗務員は,上司の命に従い,旅客を安全,確実かつ迅速に輸送し旅客の応対に当たっては親切丁寧を旨とし,不安,嫌悪の感を与えぬように心掛けなければならない。」(15条1項)と規定している。 4 本件の主たる争点は,①被控訴人が,勤務実績が良くない場合」(地方公務員法28条1項1号),「その職に必要な適格性を欠く場合」(同項3号)に該当するか否か,②本件処分に控訴人による裁量権の逸脱ないし濫用があ たる争点は,①被控訴人が,勤務実績が良くない場合」(地方公務員法28条1項1号),「その職に必要な適格性を欠く場合」(同項3号)に該当するか否か,②本件処分に控訴人による裁量権の逸脱ないし濫用があるか否かである。 5 原判決は,まず,争点①について,被控訴人は,本件違反行為①ないし④,⑥を行い,バス乗務員として勤務した8年10か月の間にバス運行中の事故を11回起こし,また,平成11年6月9日,無届欠勤をその前の約半年間で6回程度行ったため,支所長及び所長から,今後有給休暇の振り替えを行わず,私事欠勤として扱うと注意されたにもかかわらず,その後も無届欠勤を6回行い(本件違反行為⑤),本件違反行為③ないし⑤等の行為によって,停職処分14日間の従前懲戒処分を受けたことが認められ,そして,被控訴人は,従前懲戒処分を受けたにもかかわらず,停職期間明けの平成12年3月9日のわずか2週間後である同月23日無届欠勤(本件違反行為⑦)をしたものである旨判断した上で,本件違反行為①ないし⑥について,これを処分の理由とするのは不当である旨の被控訴人の主張を排斥し,本件違反行為③ないし⑤は,公務員としてふさわしくない非行として懲戒処分の対象となるとともに,その態様からして,被控訴人の勤務実績や職務に必要な適格性を判断する一事情となるから,本件処分において本件違反行為③ないし⑤を分限処分の理由として斟酌することも許される旨説示し,「勤務実績が良くない場合」の該当性について,都交通局は,欠勤等につき本件基準に該当する者は「勤務実績が良くない場合」に当たるとしているところであり,過去に欠勤等を理由に停職処分を受けながら再び欠勤等を行う者は,その勤務実績が良くないと評価されてもやむを得ないから,都交通局が「勤務実績が良くない場合」の一つとして本件基準を定めているこ であり,過去に欠勤等を理由に停職処分を受けながら再び欠勤等を行う者は,その勤務実績が良くないと評価されてもやむを得ないから,都交通局が「勤務実績が良くない場合」の一つとして本件基準を定めていることは,処分の平等,公平性を保つ見地から合理的なものというができる旨判断したが,被控訴人が無届欠勤等により平成12年2月23日付けで従前懲戒処分を受けた後にした同年3月23日の無届欠勤(本件違反行為⑦)については,平成10年10月31日発生の公務災害(本件傷害)を原因とするかは不明であるが,休職が必要な程度の心因性のうつ状態の典型症状である,朝体が動かせない状態になったため,欠勤を届出ることができなかったことによるものであり,病気であるうつ状態によって引き起こされたものである以上,合理的な理由のない「欠勤等」には当たらないと認定し,被控訴人が従前懲戒処分を受けたにもかかわらず,無届欠勤をしたからといって,これを処分の対象とすることはできず,被控訴人は本件基準に該当するとはいえない旨判断し,これにとどまらず,被控訴人は,朝起きられない状態になることについて早期に精密検査を受けるなどして原因を解明すべきであるし,練馬支所長,北自動車営業所長ら上司にその旨報告すべき義務があった旨の控訴人の主張に対して,被控訴人は,朝起きられない状態になることについて,これが精神疾患によるものであるとの認識を欠いていたと認定し,病識を欠いた被控訴人が控訴人主張の対応を怠ったことをもって,被控訴人の規律遵守の意識が著しく低いとまでは評価できない旨判断し,また,被控訴人は,本件違反行為⑦のほかに,本件違反行為①ないし⑥の行為をし,また,平成3年12月から平成10年8月にかけて11回に及ぶ事故を起こしており,これらのことは被控訴人が公務員として自己の職責を誠実かつ能率的に処 反行為⑦のほかに,本件違反行為①ないし⑥の行為をし,また,平成3年12月から平成10年8月にかけて11回に及ぶ事故を起こしており,これらのことは被控訴人が公務員として自己の職責を誠実かつ能率的に処理し得る能力が劣るもので,本件基準を離れても被控訴人は「勤務実績が良くない場合」に当たるとする余地があると指摘しながら,被控訴人は,都交通局が「勤務実績が良くない場合」の一つの基準としている本件基準に該当するとはいえないこと,本件違反行為③ないし⑤については,従前懲戒処分の対象とされ,被控訴人は停職14日間という制裁を受けていること,本件違反行為①,②は平成10年当時の行為である上,本件違反行為①ないし④,⑥については,被控訴人が一応反省の意を表した文書を提出し,乗客からの苦情についての上司の指導に一応従う姿勢を見せていること,本件一連事故は,物損事故にとどまるものもあり,それ以外の事故でも,乗客等に与えた傷害の程度はいずれも重いものではなかった上,うち10件は本件処分の3年6か月以上前のものであり,約2年前の事故1件は被控訴人の責任が30パーセント以下の区分外とされる事故であることからすれば,これらのことのみでは分限免職処分の対象となるほどの「勤務実績が良くない場合」に当たるとまではいえない旨判断し,さらに,仮に被控訴人が「勤務実績が良くない場合」に当たるとしても,被控訴人は本件基準に該当しない上,本件違反行為①ないし⑥については,被控訴人が制裁を受けたり,反省の意を表するなどしていることや,本件一連事故の態様,その発生時期を考慮すると,控訴人が被控訴人に対し,被控訴人が本件基準に該当することを主な理由として分限免職処分をもって臨むことは,裁量権の逸脱ないし濫用がある旨判断し,さらに,「その職に必要な適格性を欠く場合」の該当性については, 控訴人に対し,被控訴人が本件基準に該当することを主な理由として分限免職処分をもって臨むことは,裁量権の逸脱ないし濫用がある旨判断し,さらに,「その職に必要な適格性を欠く場合」の該当性については,被控訴人が本件違反行為①ないし④,⑥についてその後同種の行為を反復していないこと,無届欠勤についても被控訴人がうつ状態になった時期に集中しており,それ以前8年間は無届欠勤はないこと,被控訴人のうつ状態は,治ゆ機転は不明であるが,原因となったストレスが除去されれば職場復帰が可能であったことを併せ考えれば,被控訴人には簡単に矯正できない持続性を有する素質,能力,性格等に起因してその職務の円滑な遂行に支障が生ずる高度の蓋然性があるとまではいえないから,被控訴人が「職に必要な適格性を欠く場合」に該当するとはいえない旨判断し,結局,本件処分は違法であって取り消されるべきであると説示して,被控訴人の本訴請求を認容したので,控訴人が控訴をした。 6 上記1ないし4以外の本件事案の概要は,下記7及び8に記載のとおり控訴人の当審における主張及び控訴人の当審における主張に対する被控訴人の反論を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄第2及び第3に記載のとおり(原判決2頁4行目から16頁19行目まで。ただし,原判決7頁23行目の「その職に必要な適格性を欠く」を「その職に必要な適格性を欠く場合」に改め,同10頁4行目及び10行目の各「勤務成績」をそれぞれ「勤務実績」に改める。)であるから,これを引用する。 7 控訴人の当審における主張(1) 原判決言渡後の事情について原判決言渡し後,被控訴人が平成12年6月20日付けで地方公務員災害補償基金東京都支部長に対して行っていた本件傷害の後遺症によるうつ病について公務災害認定の追加請求に関して,平成14年6月18日付けで, 決言渡し後,被控訴人が平成12年6月20日付けで地方公務員災害補償基金東京都支部長に対して行っていた本件傷害の後遺症によるうつ病について公務災害認定の追加請求に関して,平成14年6月18日付けで,被控訴人のうつ状態は公務外の災害と認定された。したがって,被控訴人のうつ状態が平成10年10月31日の公務災害に起因するとか,控訴人からの度重なる嫌がらせのためにうつ病に罹患したとかという,原審における被控訴人の主張は,容れる余地がない。 (2) 原判決の事実認定について原判決は,次のとおり,被控訴人の病識の有無等の重要な事実についてその認定を誤っており,取消しを免れない。 ア原判決は,被控訴人が平成11年7月6日から平成12年2月1日まで計6日無届欠勤をした際に,被控訴人の自覚としては,朝目は覚めるが体を動かす意欲がなく,いわゆる金縛りのような状態になっており,食事をとることもトイレに行くこともできず,横になったまま眠ってしまって,夕方過ぎになってようやく動けるようになるという状態であったが,被控訴人が自分に精神疾患があるとは考えていなかった旨認定している。 しかし,被控訴人は,無届欠勤が多いということは認識していたものの,病気休暇や病気休暇の手続を取らずに当日欠勤をしていたのは,自分がかつて自殺未遂をしたとか,あるいはそういう病気(精神疾患)かもしれないとかということが恥ずかしいから手続をとれず,医師にも相談できなかったためであると自ら認めており,このことは,被控訴人が,自らが精神疾患に罹患している可能性があることを認識していたことを示している。 このように,被控訴人は,うつ病に罹患しながらその病識を欠いていたという状態ではなく,自殺未遂ををしたり,朝起きられずに出勤しようとすると胃痛・吐き気・下痢の症状が出るということに関して,自 る。 このように,被控訴人は,うつ病に罹患しながらその病識を欠いていたという状態ではなく,自殺未遂ををしたり,朝起きられずに出勤しようとすると胃痛・吐き気・下痢の症状が出るということに関して,自らが精神疾患に罹患している可能性を自覚しながらそのことを第三者に知られたくないという意識により,敢えて精神科を受診せず,そして,被控訴人の上司に自らの体調を正確に説明しないまま,うつ状態にあることを放置していたというべきである。 イ原判決は,被控訴人が平成12年2月23日に医療法人社団慶竹会ほづみクリニック(ほづみクリニック)を受診した際に,診察をしたC医師は,被控訴人の過去の事情と被控訴人の症状との関連が分からないから診察できないとして,被控訴人に同じ状態になったら受診するように言って治療を行わなかったと認定し,そのため,被控訴人としては精神疾患によるものとの認識を欠き,病気休暇の手続を取ることができず,ほづみクリニックの診断内容にかんがみれば,被控訴人がその後自分が突然朝起きられない状態となって無届欠勤を行うかも知れない状態であると認識できたとはいえない旨判示している。 しかし,被控訴人は,平成12年2月23日,自ら精神科医院であるほづみクリニックで診察を受け,被控訴人を診察したC医師は,被控訴人に対しては精神安定剤を処方して再度の来院を指示し,その診療に関して,社会保険診療報酬支払基金に対してはうつ状態又は非定型精神障害という疾病名で報酬請求を行っているのである。要するに,被控訴人は,C医師から被控訴人の症状に関して疾病ではないとか又は疾病は完治しているとかとの診断を受けたわけではなく,医薬品を処方された上で再度の来院を指示されているのであるから,被控訴人に何らの病識がなかったということは到底認められない。 したがって,被控訴人を診 完治しているとかとの診断を受けたわけではなく,医薬品を処方された上で再度の来院を指示されているのであるから,被控訴人に何らの病識がなかったということは到底認められない。 したがって,被控訴人を診察したC医師が,診断を下せないままに治療をしなかったとの事実認定,及び,被控訴人としては精神疾患によるものとの認識を欠いていたたため病気休暇の手続を取ることができず,被控訴人がその後自分が突然朝起きられない状態となって無届欠勤を行うかも知れない状態であると認識できたとはいえないとの事実認定は,いずれも客観的な証拠に基づいておらず,経験則にも反した不合理な事実認定である。 ウ原判決は,欠勤等について,勤務実績が良くないと評価されるのは,その欠勤等が合理的な理由のない欠勤等をいうものと認定し,被控訴人に関しては,自己の精神疾患に関して病識を欠いていたと認定した上で,被控訴人の規律遵守の意識が著しく低いとまではいえないので,被控訴人の無届欠勤は,「勤務実績が良くない場合」に当たらないと結論付けている。 しかし,原判決が,本件基準が適用されない理由として挙げた「合理的な理由」とは,公務員に対する分限制度が,公務の非違行為に対する責任追及の意味を有する懲戒制度と異なり,そもそも公務の能率の維持とその適正な運営の確保を目的としていることを考えれば,「合理的な理由」の有無の判断に当たっては,対象となる公務員に欠勤等に関して帰責事由があったかどうかが基準となるのではなく,公務の能率維持とその適正な運営の確保の観点から,許容すべき事情があるかどうかが基準となるべきである。 そして,敢えていうならば,公務の能率維持とその適正な運営の確保の観点からは許容できない欠勤等であったとしても,当該欠勤等について特段の事情があれば,処分権限者の裁量として,本件基準をその ある。 そして,敢えていうならば,公務の能率維持とその適正な運営の確保の観点からは許容できない欠勤等であったとしても,当該欠勤等について特段の事情があれば,処分権限者の裁量として,本件基準をそのまま適用しないこともできるというにすぎない。すなわち,公務の能率維持とその適正な運営の確保の観点からいえば,公務員が疾病により勤務できない状況となった場合であっても,まずは病気休暇のための事前の届出を求めているのであり,かかる事前の届出がなければ,公務に支障をきたすことは明らかである。特に,被控訴人が従事している都バス運転手という職種にある者が無届欠勤をしたとすれば,正確かつ安全な運行が求められる公共交通機関の運営に極めて大きな支障が生じ,代替運転手の確保など具体的に公務の混乱,停滞,都民に対するサービスの低下を招くことは容易に分かることである。よって,公務の能率維持とその適正な運営の確保の観点からいえば,無届欠勤が何ら合理的な理由のある欠勤とならないというべきであり,被控訴人が平成12年3月23日に無届欠勤をしたことについては,何ら合理的な理由がある欠勤と認めることはできない。 エ原判決は,被控訴人のうつ状態の原因となったストレスが除去されれば,被控訴人が職場に復帰できる見込みがあるが,それがいつになるかは分からない状態であったと認定している。 しかし,D医師の陳述書及びその証人尋問調書によっても,被控訴人が職場復帰できる見込みがあるとの認定の根拠は見出せず,D医師の認識は職場復帰の可否はやってみなければ分からないというものである。すなわち,D医師は,被控訴人のうつ状態について,「精神病というのは,本当にいろいろな状態があるので,一義的にわからないことも多々あります。特に,Eさんの病状の診断は困難でした。」と陳述している(甲28)のであ 師は,被控訴人のうつ状態について,「精神病というのは,本当にいろいろな状態があるので,一義的にわからないことも多々あります。特に,Eさんの病状の診断は困難でした。」と陳述している(甲28)のであるから,原因となったストレスが除去されれば被控訴人が職場に復帰できる見込みがあるとの事実認定にはなり得ない。 (3) 分限免職事由の有無について原判決は,控訴人が被控訴人に対し,被控訴人が本件基準に該当することを理由として本件処分をしたことに関し,裁量権の逸脱ないし濫用があると判断しているが,これは,次のとおり,原判決の誤った事実認定を前提としており,取り消されるべきである。 ア原判決は,勤務実績が良くないと評価されるためには,欠勤等が合理的理由のない欠勤等をいうと判示しているが,ここで欠勤等に合理的な理由があるといえるためには,欠勤等をすることの理由に合理性があるだけでなく,その手続面においても定められた規則に従った欠勤等であること,または,仮に手続を履践できない場合には履践できないことについて合理的な理由があることが,要件となるというべきである。そして,被控訴人が平成12年3月23日に欠勤したことにつき,欠勤のための手続を欠いたことに合理的な理由があるかどうかが問題となる。 前記のとおり,被控訴人は,精神疾患であること又はその可能性を認識しながら,敢えて自己の都合により専門医への受診を避けていたというべきである。したがって,被控訴人が精神疾患であるとの認識を欠いていたとはいえず,本来,無届欠勤の理由について練馬支所長ら上司に相談した上で精神科を受診する等して適切な病気休暇又は病気休職の手続をとるべきところ,被控訴人がそれを行わなかったことについて何ら合理的な理由は見出せない。 イ原判決は,被控訴人には,簡単に矯正できない持続性を有する 受診する等して適切な病気休暇又は病気休職の手続をとるべきところ,被控訴人がそれを行わなかったことについて何ら合理的な理由は見出せない。 イ原判決は,被控訴人には,簡単に矯正できない持続性を有する素質,能力,性格等に起因してその職務の円滑な遂行に支障が生ずる高度の蓋然性があるとまではいえないとして,「その職に必要な適格性を欠く場合」には当たらないと判断した。 しかし,原判決の上記判断の根拠に,被控訴人のうつ状態は,原因となったストレスが除去されれば職場復帰が可能であったことが挙げられており,かかる職場復帰の可能性の認定は,すでに主張したとおり証拠に基づいた認定ではなく,むしろ,被控訴人のうつ状態が被控訴人の性格と深く結びついており,うつ状態の原因が何であるか,また,その原因の除去が可能であるかについては不明であるといわざるを得ないのである。 被控訴人は,従前懲戒処分である停職処分を受けるまで,自らの都合により専門医の受診を拒否していたのであり,停職処分の際に初めてほづみクリニックを受診した後も,何ら明白な理由もなく,自分は当日欠勤をするはずがないと思い込み,停職処分明けわずか2週間後に再度無届欠勤をしたというのであり,かかる被控訴人の勤務に対する姿勢は,うつ状態に理由を求めるべきことではなく,被控訴人が円滑に職務を遂行しようとする意思を欠いていることの表れであるというべきである。 したがって,被控訴人が,多数回にわたる無届欠勤以外にも,多数回の違反行為や事故を惹起し,そのたびに練馬支所・当局から再三再四にわたり口頭又は文書による指導,叱責等を受けていたにもかかわらず,これを一向に改めず更に違反行為等を繰り返していたことにかんがみると,まさに被控訴人には,簡単に矯正できない持続性を有する素質,能力,性格等に起因した,その職務の円滑 責等を受けていたにもかかわらず,これを一向に改めず更に違反行為等を繰り返していたことにかんがみると,まさに被控訴人には,簡単に矯正できない持続性を有する素質,能力,性格等に起因した,その職務の円滑な遂行に支障が生ずる高度の蓋然性があるといわざるを得ないのであって,「その職に必要な適格性を有しない場合」に該当することは明らかである。 そして,無届欠勤は,その職種に関係なくいかなる公務に関しても,公務の能率維持やその適正な運営の確保の障害になることは明らかであるから,無届欠勤を繰り返す者について,他の職種に転職させることにより公務員としての地位を維持させるべき理由も認められない。 8 控訴人の当審における主張に対する被控訴人の反論(1) 本件基準と無届欠勤について被控訴人が事前の欠勤の届出をできなかったのは,自らが自覚していなかったうつ状態という精神疾患に由来するという,まことにやむを得ない事情があったからである。そうであるのに,それを何ら考慮せずに,控訴人が形式的な本件基準のみを重視して本件処分をすることは,かえって公務の能率維持とその適正な運営の確保の観点からも不適当であるといわなければならない。 また,そもそも本件基準は周知されていなかったのみならず,成文化すらされておらず,極めて不明確な基準であった。そして,どのような理由があっても一律に形式的に再度処分の対象になったこと自体を問題とするのは,内容の点からしても合理的な基準とはいえない。したがって,不明確かつ不合理な本件基準に形式的に該当することを理由に機械的に発令された本件処分は,適正手続,明確性の原則を内容とする憲法31条に違反し無効である。 控訴人は,被控訴人が病気休暇の事前届出をしなかったことを殊更に言い立てているが,それもうつ状態に起因しているやむを得ないものなので 正手続,明確性の原則を内容とする憲法31条に違反し無効である。 控訴人は,被控訴人が病気休暇の事前届出をしなかったことを殊更に言い立てているが,それもうつ状態に起因しているやむを得ないものなのであり,これをもって分限免職処分という,一人の人間の人生をも左右する重大な処分にまで相当するというのは,一般人の健全な常識の観点からも行き過ぎであるといわなければならない。加えて,被控訴人は,当時,毎日朝具合が悪くて起きられない状態であったわけではなく,平成12年3月23日に突発的に朝起きられない状態になるまで,通常の控訴人職員と全く同様に,控訴人から何ら指摘を受けることなく,勤務していた。これを被控訴人が殊更に敢えて「自覚しつつ」病気休暇の手続を取らずにいたと故意的にとらえるのは,明らかな誤謬である。 (2) 被控訴人の病識について被控訴人が自ら病識がない,あるいは百歩譲って自らの体調不良が大したものではないと考えたとしても,それはやむを得ないことであって,「盲信」などとあたかも免職が相当であるかのように誇張して非難されるべきことではない。被控訴人は,平成12年2月23日に専門医がいる然るべき精神科に通院したのである。仮に,控訴人の立場に立って,被控訴人が精神疾患であることの未必的認識がなかったとはいえないことを前提にしても,少なくとも,平成12年3月23日の欠勤が分限免職に相当する程の悪質かつ重大なものではなかったことは明らかである。 また,控訴人は,これ以上公務への悪影響を与えないように,上司に報告又は相談することを被控訴人が怠ったと主張する。しかし,被控訴人は,平成12年2月23日午前中に,新宿にある東京都庁で懲戒停職処分を受けたその足で,εにあるほづみクリニックのC医師の診察を受け,その後練馬にある職場の上司に報告,相談しているの しかし,被控訴人は,平成12年2月23日午前中に,新宿にある東京都庁で懲戒停職処分を受けたその足で,εにあるほづみクリニックのC医師の診察を受け,その後練馬にある職場の上司に報告,相談しているのである。したがって,この点に関する控訴人の主張は,失当である。 (3) 「その職に必要な適格性を欠く場合」の該当性についてこの点,控訴人は,被控訴人が欠勤を繰り返したという結果をとらえて,適格性を欠くものと決めつけている。しかし,被控訴人の欠勤は,精神疾患に由来するものであって,被控訴人の素質,能力,性格等に起因するものでは全くなかった。被控訴人の欠勤が多くなったのは平成11年以降であり,それまでの8年間は被控訴人の勤務態度は良好であった。また,被控訴人は,平成12年3月23日以降は自覚的に通院して治療を受けており,現在では,朝の早い旅館での住み込みのアルバイトや観光バスの運転のアルバイトで稼働するなどしており,うつ状態に起因して無断欠勤をすることなどなくなっている。したがって,控訴人は,被控訴人のうつ状態が「簡単に矯正することができない持続性を有する」と一方的に決めつけているが,明らかな誤りであるといわざるを得ない。 9 証拠関係本件の証拠関係は,原審及び当審の訴訟記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから,これらを引用する。 第4 当裁判所の判断 1 前提事実関係本件違反行為①ないし⑦の具体的内容,その違反行為に対する控訴人及び被控訴人の対応,本件一連事故の具体的内容,従前懲戒処分及びこれに対する被控訴人の対応,被控訴人の体調不良とうつ状態等,被控訴人による診断書の提出,これに対する控訴人の対応,被控訴人による公務災害の追加請求と控訴人によるD医師に対する事情聴取,控訴人が分限処分及び懲戒処分を行う際の手続と基準並びに本件処分の主 等,被控訴人による診断書の提出,これに対する控訴人の対応,被控訴人による公務災害の追加請求と控訴人によるD医師に対する事情聴取,控訴人が分限処分及び懲戒処分を行う際の手続と基準並びに本件処分の主たる理由についての認定及び判断は,原判決の「事実及び理由」欄第4の1に記載のとおり(原判決16頁22行目から27頁2行目まで。ただし,原判決22頁19行目の「原告の過去の事情」から同頁21行目の「治療は行わなかった」までを「被控訴人に対し種々の問診を行った結果,被控訴人がうつ状態かも知れないと思ったものの,被控訴人に対し明確な診断名を告げることなく,精神安定剤等を処方し,薬がなくなる1週間後に再度来院するよう指示した」に改め,同頁21行目の「(なお」の前に「甲32,33。」を加え,同25頁10行目の末尾に「そして,被控訴人が行った公務災害認定の追加請求について,平成14年6月18日付けで,被控訴人のうつ状態は,公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな疾病とは認められないことを理由に,公務外の災害と認定された。」を加え,同頁11行目の「乙20」の次に「,22」を加える。)であるから,これを引用する。 2 争点①(被控訴人が,「勤務実績が良くない場合」(地方公務員法28条1項1号),「その職に必要な適格性を欠く場合」(同項3号)に該当するか否か)について(1) 当裁判所も,本件違反行為①ないし⑥について,これを処分の理由とするのは不当である旨の被控訴人の主張及び本件違反行為⑤の無届欠勤については,被控訴人がうつ病に罹患しており,そのため所定の手続を経ることができなかったから,被控訴人にはやむを得ない事情がある旨の被控訴人の主張は,いずれも採用することができないものと判断する。そのように判断する理由は,原判決の「事実及び理由」欄第4の2( を経ることができなかったから,被控訴人にはやむを得ない事情がある旨の被控訴人の主張は,いずれも採用することができないものと判断する。そのように判断する理由は,原判決の「事実及び理由」欄第4の2(1)に記載のとおり(原判決27頁4行目から25行目まで)であるから,これを引用する。 (2) また,当裁判所も,本件違反行為③ないし⑤は,公務員としてふさわしくない非行として懲戒処分の対象となるとともに,本件処分においてこれらを分限処分の理由として考慮する対象となるものと判断する。そのように判断する理由は,原判決の「事実及び理由」欄第4の2(2)に記載のとおり(原判決27頁26行目から28頁13行目まで)であるから,これを引用する。 (3) そこで,本件処分で指摘された本件違反行為が「勤務実績が良くない場合」(地方公務員法28条1項1号),「その職に必要な適格性を欠く場合」(同項3号)に該当するか否かについて検討する。 ア 「勤務実績が良くない場合」の該当性について(ア) 前記前提事実記載のとおり,都交通局は,欠勤等につき本件基準に該当する者は,「勤務実績が良くない場合」に当たるとしているところ,過去に欠勤等を理由に停職処分を受けながら再び欠勤等をした者は,その勤務実績が不良であると評価されてもやむを得ないというべきであるから,都交通局が「勤務実績が良くない場合」の一つとして「過去5年以内に欠勤等を理由に停職処分を受けたにもかかわらず,再び欠勤等を理由に処分の対象となった者」という一定の要件の下に本件基準を定めていること自体は,処分の画一性や公平性を確保する見地にかんがみると,相応の合理性があるものと認めることができる。本件基準がそれ自体不当であるとか,明確性を欠く旨の被控訴人の主張は,採用することができず,したがって,また,不明確かつ不合理な する見地にかんがみると,相応の合理性があるものと認めることができる。本件基準がそれ自体不当であるとか,明確性を欠く旨の被控訴人の主張は,採用することができず,したがって,また,不明確かつ不合理な本件基準に形式的に該当することを理由に機械的に発令された本件処分は,適正手続,明確性の原則を内容とする憲法31条に違反し無効である旨の当審における被控訴人の主張も,採用の限りでない。 もとより,欠勤等をもって勤務実績が不良と評価される所以は,その欠勤等をした者の勤務態度の不良等の事由が存在し,そのような勤務態度を問題とするからであり,したがって,本件基準にいう「欠勤等」は,無届欠勤のような,それ自体合理的理由のない欠勤等を指すものと解するのが相当である。 もっとも,無届欠勤であっても,事前に届出ることを期待することができないような特段の事情が存在するような場合には,無届であることをもって,直ちに勤務態度が不良であると評価するのは相当でない。 (イ) この点に関し,被控訴人は,無届欠勤をしたが,事前の欠勤の届出ができなかったのは,自らが自覚していなかったうつ状態という精神疾患に由来する,やむを得ない事情があったからである旨主張する。 しかしながら,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,被控訴人は,平成11年7月6日から平成12年2月1日まで計6日無届欠勤をし,その際の被控訴人の自覚としては,朝目はさめるものの体を動かす意欲がなく,いわゆる金縛りのような状態となり,食事を摂ることもトイレに行くこともできず,横になったまま眠ってしまい,夕方過ぎにようやく動けるようになるという状態であり,そのような自覚症状があったにもかかわらず,被控訴人は,無届欠勤後A支所長に欠勤の理由を聞かれ,腹痛や吐き気の体調不良とだけ申告し,都交通局が年2回実施する定期健 動けるようになるという状態であり,そのような自覚症状があったにもかかわらず,被控訴人は,無届欠勤後A支所長に欠勤の理由を聞かれ,腹痛や吐き気の体調不良とだけ申告し,都交通局が年2回実施する定期健康診断や保健婦により健康相談の際にも,精神的な悩みや疾病をうかがわせるような症状についての訴えを何らせず,しかも,従前懲戒処分を受けた平成12年2月23日,体調不良等のため,精神神経科の専門医院であるほづみクリニックを受診し,診察に当たったC医師から,具体的な診断名の告知までは受けなかったものの,精神安定剤等の処方を受け,薬がなくなる1週間後には再度来院するよう指示されていたのであり,被控訴人において,具体的な病名までは認識することができなかったとしても,前記のような身体的不調という自覚症状が存在していたのであり,被控訴人自身においてそれが何らかの精神的疾患によるものではないかと考えたからこそ,精神神経科の専門医院であるほづみクリニックを受診したものと解さざるを得ないのであって,当時被控訴人においてうつ状態という精神疾患に罹患しているとの病識を欠いていたとしても,朝体が動かせず起きられない状態になること,これまでにも無届欠勤をするに至った原因がそのような身体的な不調にあることをいずれも十分認識していたものと認められる(しかも,被控訴人は,C医師から指示された薬がなくなる1週間後にほづみクリニックで診察を受けることなく,無届欠勤をした平成12年3月23日の翌日に再度ほづみクリニックを受診したことが認められる。)から,事前に上司に自らの身体の不調を報告ないし説明し,あるいは,早期に適切な診療を受けるなどして,再び無届欠勤するような事態を回避する措置を講ずることができたものと認められるにもかかわらず,被控訴人において何らそのような措置を講じなかった し説明し,あるいは,早期に適切な診療を受けるなどして,再び無届欠勤するような事態を回避する措置を講ずることができたものと認められるにもかかわらず,被控訴人において何らそのような措置を講じなかった結果,無届欠勤をするような状態にまで立ち至ったものというべきである。 そもそも,被控訴人がうつ状態という精神疾患に罹患しているとの病識がなかったとしても,そのことから直ちに,うつ状態との病識の欠如を理由に事前に欠勤を届け出ることができなかったなどということはできない筋合いであって,両者の間には,必ずしも論理必然的な結び付きはないのであり,少なくとも被控訴人において朝目が覚めても金縛りのような状態となって起きられないといった自覚症状がある以上,たとえ被控訴人にうつ状態に罹患しているとの病識が欠如していたとしても,そのことをもって無届欠勤を正当化する理由とすることは許されないものといわざるを得ない。 したがって,事前に欠勤を届け出ることができなかったことについて,被控訴人にやむを得ない事情があったとは認めることができず,被控訴人の上記主張は,採用することができない。 (ウ) 加えて,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,被控訴人は,本件違反行為⑦のほか,本件違反行為①ないし⑥の行為をし,また,平成3年12月から平成10年8月にかけて11回に及ぶ本件一連事故を起こし,本件一連事故においては,高い過失割合の運転ぶりにより,高齢の乗客複数名を次々と負傷させ,かつ,被控訴人の運転する都バスの周辺を走行する乗用車に物損を生ぜしめるなど,はなはだ不良な勤務成績を累積しているところ,本件違反行為③ないし⑤については,従前懲戒処分の対象とされ,被控訴人は停職14日間という制裁を受けいるが,分限処分は,被処分者の一定期間にわたる勤務態度や勤務成績等をもとに勤務 累積しているところ,本件違反行為③ないし⑤については,従前懲戒処分の対象とされ,被控訴人は停職14日間という制裁を受けいるが,分限処分は,被処分者の一定期間にわたる勤務態度や勤務成績等をもとに勤務実績の良否,職務に対する適格性の有無を問題とするものであるから,分限免職事由として従前懲戒処分の対象とした事由も,被控訴人の従前懲戒処分への対応ぶりとともに,当然その考慮に入れるべきであり,従前懲戒処分の対象とされたとの一事をもってこれを看過ないし軽視することは許されないものといわなければならない。 しかして,被控訴人が本件違反行為①ないし④,⑥について反省の意思を表明していることや,本件一連事故の発生時期等を斟酌しても,これらの行為は,いずれも「勤務実績が良くない場合」に当たるものと認められ,分限免職処分の対象となる事由として当然考慮することができるというべきである。 (エ) 以上によれば,被控訴人は都交通局が「勤務実績が良くない場合」の一つの基準としている本件基準に該当すること,加えて,本件違反行為①ないし⑥,本件一連事故にみられる上記のような被控訴人のこれまでの都バスの運転手としての勤務成績等を考慮すると,被控訴人は,地方公務員法28条1項1号の「勤務実績が良くない場合」に当たるものと認めるのが相当である。 イ 「その職に必要な適格性を欠く場合」の該当性について(ア) 地方公務員法28条1項3号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは,当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質,能力,性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり,または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解すべきである(最高裁判所昭和48年9月14日第2小法廷判決・民集27巻8号925頁参照)ところ,このような見地から,被控訴人が があり,または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解すべきである(最高裁判所昭和48年9月14日第2小法廷判決・民集27巻8号925頁参照)ところ,このような見地から,被控訴人がその職に必要な適格性を欠くか否かについて判断するに,都バスは不特定多数の乗客を安全,確実かつ迅速に輸送する公共交通機関であるから,その運転手である被控訴人は,指定された時刻までに出勤しなければならないことや乗客に対して安全な運行を心がけることはもちろん,本件服務要綱に定める所定の制帽の着用義務を遵守することや,体調不良等により欠勤する場合には,事前に連絡するなどして都バスの円滑な事業運営に支障が生じないよう配慮すべき責務を負っていたにもかかわらず,前記のとおり,被控訴人は,平成10年9月から平成12年2月までの間に本件違反行為①ないし④,⑥の行為をし,また,前記のような合計11回に及ぶ本件一連事故を起し,もって高齢の乗客が多い都バスの運転手として,しかも,交通量の多い道路をその運行経路とする都バスの運転手として,その能力,性格等について大いにその適格性に疑問を呈さざるを得ない乗務ぶりをしてきたほか,平成11年7月から平成12年2月までの間に計6日間無届欠勤をし,平成11年9月24日には,A支所長に対し,「同じことを繰り返さない」旨の反省文を提出するに至るまで強く反省自戒を求められていたのであり,ところが,それにもかかわらず,その後も平成12年1月27日,2月1日に無届欠勤を繰り返し,これらの無届欠勤等を理由に停職14日間という従前懲戒処分を受け,その際にも,「処分のもととなった行為を反省し,今後は迷惑をかけない」旨記載した誓約書を提出するとともに,その証として退職願を差し入れていたが,そのような懲戒処分を受けて職場復帰をしたわずか2週間後に再 にも,「処分のもととなった行為を反省し,今後は迷惑をかけない」旨記載した誓約書を提出するとともに,その証として退職願を差し入れていたが,そのような懲戒処分を受けて職場復帰をしたわずか2週間後に再び無届欠勤をしたものであって,前示のとおり,当時被控訴人においてうつ状態という精神疾患に罹患しているとの病識がなかったとしても,事前に欠勤を届け出ることができなかったことについて,やむを得ない事情があるとは到底認めることができず,しかも,無届欠勤以外にも多数の違反行為や不良な勤務成績を重ねていたことでもあるから,事前に上司に自らの身体の不調を報告ないし説明し,あるいは,早期に適切な診療を受け(前記認定のとおり,平成12年2月23日には被控訴人がほづみクリニックでC医師の診察を受け,精神安定剤等を処方され,1週間後に再度の来院を指示されていたのであるから,同年3月23日に再び無届欠勤をするに至る前に,C医師から指示されたとおり再度ほづみクリニックを受診したり,上司に相談したりするなどしていたならば,本件処分の主たる理由となった従前懲戒処分後における無届欠勤といった最悪の事態はあるいは避けることができた可能性を否定することができないところであり,被控訴人が少なくとも何故C医師の指示に従わなかったのか,被控訴人のためにも遺憾というほかはない。),再び無届欠勤するような事態を回避する措置を何ら講じなかった被控訴人は,都バスの運転手としての自覚に欠けるとともに,規律遵守の意識が著しく低いと評価されてもやむを得ないものというべきであって,以上のような被控訴人の勤務態度,乗務姿勢等は,都バスの円滑な事業運営といった公務の能率維持及びその適正な運営の確保の観点からしても,公共交通機関である都バスの運転手の職務の遂行にとって極めて重大な障害となるものであり, 務態度,乗務姿勢等は,都バスの円滑な事業運営といった公務の能率維持及びその適正な運営の確保の観点からしても,公共交通機関である都バスの運転手の職務の遂行にとって極めて重大な障害となるものであり,その素質,能力,性格等において都バスの運転手としての職務を遂行するのに必要な適格性を欠くものといわざるを得ない。 (イ) 以上検討したところによれば,被控訴人は,地方公務員法28条1項3号の「その職に必要な適格性を欠く場合」に当たるものと認めるのが相当である。 3 争点②(本件処分に控訴人による裁量権の逸脱ないし濫用があるか否か)について(1) 被控訴人は,当時の練馬支所の取扱いとは異なり,被控訴人のみが私事欠勤扱いされたり,控訴人が主張する本件違反行為について,乗客からの苦情を都交通局に報告するかどうかは営業所長に裁量があり,被控訴人は不利益取扱いを受けた可能性があり,被控訴人のみを不利益に取り扱うことは,処分の平等性を欠くし,また,躁うつ病に罹患した者は休職とされており,これらの例に比し,軽微な違反行為等をとらえて,公務災害の後遺症であるうつ状態の被控訴人を分限免職処分とすることは,被控訴人に対する不合理な差別的取扱いであり,控訴人の裁量権の逸脱ないし濫用があるなどと主張する。 しかしながら,本件処分は,前記のとおりの処分事由に基づいてなされたものであって,被控訴人のみを不利益に取り扱ったものとは認められず,また,被控訴人の本件違反行為等が軽微なものであるとは認められないし,さらに,前示のとおり,被控訴人のうつ状態が公務災害の後遺症であるとも認めることができないから,被控訴人の上記主張は,採用することができない。 (2) 被控訴人は,被控訴人を分限免職せずに内勤職員に配置転換することが可能であったにもかかわらず,控訴人はこれを選択せずに本件 ことができないから,被控訴人の上記主張は,採用することができない。 (2) 被控訴人は,被控訴人を分限免職せずに内勤職員に配置転換することが可能であったにもかかわらず,控訴人はこれを選択せずに本件処分をし,そのため被控訴人は失職しており,この取扱いは,分限免職事由とされる事実に比し,被控訴人の被る不利益が不当に過大であり,また,被控訴人は,本件処分当時,公務災害の追加認定を申請中であり,これが認められれば,本件処分は労働基準法19条に違反する違法な処分となるが,控訴人がこれを知りつつした本件処分には,控訴人の裁量権の逸脱ないし濫用がある旨主張する。 しかしながら,被控訴人の無届欠勤が本件処分の理由の一つとなっているけれども,公務の能率維持及びその適正な運営の確保の見地からすると,無届欠勤は,その職種に関係なく,いかなる公務に関しても,その円滑な職務の遂行にとって重大な障害となることは明らかであるから,控訴人が,無届欠勤等を繰り返す被控訴人に対し,分限免職にすることをせずに下乗勤務としての内勤職員に配置転換する方途を選択しなかったからといって,本件処分が被控訴人に対し不当に過大な不利益を与えるものであるとまでは認めることができないし,また,被控訴人が本件処分当時公務災害の追加認定を申請していたとしても,被控訴人に対し本件処分をする上で,何らの妨げとなるものではなく,控訴人がそのような事情を知りながら本件処分をしたとしても,そのことから直ちに,その裁量権の逸脱ないし濫用があると認めることはできない。他に,本件処分に関し控訴人による裁量権の逸脱ないし濫用があると認めるに足りる証拠はない。したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。 (3) その他,本件処分に違法事由があると認めるに足りる証拠はなく,したがって,本件処分は適法 し濫用があると認めるに足りる証拠はない。したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。 (3) その他,本件処分に違法事由があると認めるに足りる証拠はなく,したがって,本件処分は適法になされたものというべきである。 4 以上によれば,本件処分の取消しを求める被控訴人の本件請求は,理由がなく,棄却を免れない。 第5 結論よって,以上と異なる原判決は相当でなく,本件控訴は,理由があるから,原判決を取り消し,被控訴人の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部裁判長裁判官雛形要松裁判官山崎勉裁判官西謙二は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官雛形要松
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