平成14(わ)104 道路交通法違反,危険運転致死

裁判年月日・裁判所
平成14年9月17日 函館地方裁判所
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判決文本文5,010 文字)

平成14年9月17日宣告平成14年(わ)第104号道路交通法違反,危険運転致死被告事件 主文 被告人を懲役3年6か月に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.25ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,平成14年5月13日午後10時5分ころ,函館市A町B番C号付近道路において,普通乗用自動車を運転した。 第2 前記日時ころ,最高速度を時速40キロメートルと指定されている左方に湾曲する前記道路において,前記車両を運転してD町E丁目方面からF町方面に向けて進行するに当たり,その進行を制御することが困難な時速100キロメートルを超える高速度で自車を走行させたことにより,自車を道路の湾曲に応じて進行させることができず,右斜め前方に暴走させ,道路右側の街路灯等に激突させて自車の同乗者G(当時22歳)を車外へ放出させ,よって同人を外傷性ショックにより同所付近で即死させた。 (事実認定の補足説明)1(1)判示第2の事実について,被告人は,時速100キロメートルを超える速度で,本件現場のカーブ(以下「本件カーブ」という。)を曲がる意思があったわけではなく,本件カーブの手前で減速するつもりであったが,そのタイミングが遅れたために事故を惹起した旨を供述し,弁護人は,被告人に時速100キロメートルを超える速度で本件カーブを走行する意思がなかった以上,被告人には危険運転行為についての故意がないから,危険運転致死罪は成立せず,業務上過失致死罪が成立するにすぎないと主張する。そこで,この 速度で本件カーブを走行する意思がなかった以上,被告人には危険運転行為についての故意がないから,危険運転致死罪は成立せず,業務上過失致死罪が成立するにすぎないと主張する。そこで,この点について以下検討する。 (2)まず,本件の態様についてみると,関係各証拠によれば,本件現場の道路は片側2車線の跨線橋道路であり,被告人の進行方向から見ると,ほぼ直線で約6パーセントの勾配の坂を上り,曲線半径100メートルという幹線道路としては比較的急な本件カーブを左方に曲がり,約6パーセントの勾配の坂を下るという構造になっており,同所の指定最高速度は時速40キロメートルとされ,本件カーブを通過するための限界旋回速度は時速約95キロメートル程度であると推定されるところ,被告人は時速100キロメートルを超える速度で本件車両を運転して,本件カーブにさしかかり,同カーブを曲がりきれずに,自車を右斜め前方に暴走させ,道路右側の街路灯等に激突させて自車の同乗者である被害者を車外へ放出させ,即死させていることが認められ,これによれば,被告人は,客観的には「その進行を制御することが困難な高速度」で本件車両を進行させたものと認められ,被告人も弁護人もこの点については争うものでないと思われる。 (3)そこで,さらに被告人の危険運転行為についての故意の存否についてみると,危険運転致死罪は故意犯であるから,被告人に,「進行を制御することが困難な高速度」であることの認識が必要であるが,その内容は,客観的に速度が速すぎるため道路の状況に応じて車両を進行させることが困難であると判断されるような高速度で走行していることの認識をもって足り であることの認識が必要であるが,その内容は,客観的に速度が速すぎるため道路の状況に応じて車両を進行させることが困難であると判断されるような高速度で走行していることの認識をもって足り,その速度が進行制御が困難な高速度と判断されることの認識までは要しないと解すべきである。これを本件についてみると,関係各証拠によれば,①被告人は,本件現場に至るまで,国道上を時速100キロメートルを超える速度で走行していることを認識しながら本件車両を本件現場に向けて進行させていたこと,②被告人は,過去に何度も本件カーブを通行した経験から,本件カーブが急であり,本件カーブを通過できる限界速度は時速80キロメートルくらいであると思っていたことから,本件カーブを通過する際には適宜減速して通過するつもりであったこと,③ところが,被告人はスピードメーターなどに気を取られ,本件車両が本件カーブに近づいていたことを,その直前になって初めて気付きブレーキをかけたものの,間に合わずに本件事故に至ったことが認められる。してみると,被告人としては,前記のとおりの本件現場付近の道路状況を認識し,その上で,同所を安全に進行することはできない速度である時速100キロメートルを超える高速度で走行していることを認識しながら本件現場に向けて進行し,本件カーブを通過可能な速度まで減速するという進行制御をすることができずに,そのままの速度で本件現場に至って本件事故を惹起させたのであるから,被告人が,本件当時,客観的に進行を制御することが困難と判断されるような高速度で,本件車両を走行させていたことを認識していたことは優に認められる。 弁護人の主 せたのであるから,被告人が,本件当時,客観的に進行を制御することが困難と判断されるような高速度で,本件車両を走行させていたことを認識していたことは優に認められる。 弁護人の主張は,被告人は,本件カーブを時速100キロメートルを超える速度で走行しようとする意図を有していなかった以上,被告人には危険運転行為についての故意が認められないというものであるが,被告人が,本件カーブにさしかかったら減速しようと思っていたとしても,高速走行をしていたがゆえに現実には減速できなかったのであり,被告人は,そのような速度調節という進行制御ができないほどの高速度で本件車両を進行させて本件事故を惹起させており,本件は正に危険運転致死傷罪が想定する事故態様の典型例の1つに該当すると考えられ,弁護人が主張するような危険回避のための措置をとろうとする意思の存否は,量刑判断の一事情としては考慮されるとしても,犯罪の成否について影響を与えるものではないというべきである。 2 また,弁護人は,被害者の車中における言動は被告人の高速走行を助長しているから,被告人の高速走行を幇助したもので,被害者は高速走行についての共同加功者にあたり,個人の身体の安全という危険運転致死罪の保護法益を放棄していたといえ,本罪は成立しないと主張する。 しかしながら,関係各証拠によれば,被告人が被害者及びHを本件車両に乗せて,本件犯行の前に一般道において高速走行をするなどした際,被害者は「加速がいいな。」などと言ってHと共にはしゃいでいたこと,被告人が,そのような被害者らの反応に気をよくして,いわゆるアクセルターンや高速走行を続けるなどし,本件事故に至ったことが認められるが,こ がいいな。」などと言ってHと共にはしゃいでいたこと,被告人が,そのような被害者らの反応に気をよくして,いわゆるアクセルターンや高速走行を続けるなどし,本件事故に至ったことが認められるが,これらの被害者の言動をもってして,被害者に幇助行為や幇助の意思があったとか,被害者が身体の安全という保護法益を放棄したと評価することは到底できないというべきである。 3 以上の次第であって,弁護人の上記主張はいずれも採用することができず,判示のとおり,危険運転致死罪の成立を認めたものである。 (法令の適用)罰条第1の行為平成13年法律第51号による改正前の道路交通法119条1項7号の2,道路交通法65条1項,平成14年政令第24号による改正前の道路交通法施行令44条の3第2の行為刑法208条の2第1項後段,前段(人を死亡させた場合)刑種の選択第1の罪懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い第2の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)未決勾留日数刑法21条(60日を算入)(量刑の事情) 1 本件は,被告人が,酒気を帯びた上,自動車を無謀運転して死亡交通事故を発生させた事案である。 被告人は,当初から飲酒する予定であっ 刑法21条(60日を算入)(量刑の事情) 1 本件は,被告人が,酒気を帯びた上,自動車を無謀運転して死亡交通事故を発生させた事案である。 被告人は,当初から飲酒する予定であったにもかかわらず,自己の所有する自動車に被害者らを同乗させて飲食店に向かい,2軒の飲食店で飲酒した後,自車を運転しており,さらに,本件事故の直前には,自己の運転する自動車が高速度の出せる自動車であることを同乗者らに誇示するために,本件事故現場近辺の道路や駐車場において,制限速度を大きく超えるスピードで車を運転したり,いわゆるアクセルターンをするなど,危険性の高い運転行為を繰り返しており,本件における危険運転行為もその一環としてされたものと認められる。また,被告人は,平成2年に普通運転免許を取得したものの,度重なる交通違反により平成4年には免許取消しとなり,その後,平成8年に免許を再取得したものの,平成9年に時速38キロメートル超過の道路交通法違反の罪で罰金6万円の略式命令を受けるとともに,30日間の免許停止処分を受けるなどしているのに,被告人自身,その後も常に制限速度を守っていたわけではなく,飲酒運転もしたことがあるなどと供述していることなどをも併せ考慮すると,被告人の交通法規に対する規範意識の低劣さは目に余るものがある。 本件事故の態様も,被告人は,進路前方に急カーブが待ち受けていることを認識しながら,殊更に加速をして自動車を時速100キロメートルを超える高速度で走らせ,その結果,ブレーキ等の措置が遅れ,カーブを曲がりきれず,道路脇の街路灯等に自車を激突させたものであり,その運転態様は,道路状況を勘案すれば極めて危険かつ悪質なものであって無謀なものといわざるを得ない。そし キ等の措置が遅れ,カーブを曲がりきれず,道路脇の街路灯等に自車を激突させたものであり,その運転態様は,道路状況を勘案すれば極めて危険かつ悪質なものであって無謀なものといわざるを得ない。そして,このような危険な運転行為により,被害者は車外に放出されて即死し,貴重な1人の生命が奪われているのであり,発生した結果は重大であるというほかない。 被害者は,被告人が飲酒していることを認識しながら,自動車に同乗するなど,軽率であった点もあるが,このような事情があるにしても,被害者が,被告人の無謀な運転により,死傷の結果を生じることまでを容認していたわけではないことは明らかであって,被告人の無謀運転により,22歳の若さにして突如として前途のあった生命を奪われた被害者の無念さは想像するに余りあり,被害者の遺族らの被害感情も,意見陳述の中にも垣間見られるとおり,非常に強いものがある。 以上によれば,本件各犯行の犯情は悪質で,その刑責は重いといわなければならず,本件において,被告人につき社会内処遇を選択する余地はないというべきである。 2 他方,本件は好意同乗の事案であること,被告人は,事故発生の直前には危険を感じ,ブレーキを踏むなど事故回避のための制御措置を執ろうとしたことは認められること,反省している旨の供述をしていること,本件が報道され,事件当時まで勤務していたIを懲戒免職されたほか,本件により約4か月間身柄を拘束されるなど,既に一定の社会的制裁を受けていると認められること,被害者の遺族に対しては,被告人の加入していた自動車保険により,賠償金が支払われる見込みがあること,現在内縁関係にある前妻が今後被告人を監督する旨述べていることなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。 対しては,被告人の加入していた自動車保険により,賠償金が支払われる見込みがあること,現在内縁関係にある前妻が今後被告人を監督する旨述べていることなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。 3 そこでこれらの諸事情を総合考慮し,主文のとおり量刑した。 (求刑懲役4年)平成14年9月17日函館地方裁判所刑事部裁判長裁判官成川洋司裁判官高橋康明裁判官野村武範

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