令和7(行ケ)10009 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月8日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文35,753 文字)

令和7年10月8日判決言渡 令和7年(行ケ)第10009号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年8月6日判決 原告 株式会社東亜産業 同訴訟代理人弁護士 高橋雄一郎 同 阿部実佑季 同 金森毅 被告 neoALA株式会社 同訴訟代理人弁理士 今村玲英子 同訴訟代理人弁護士 河合哲志 同 松阪絵里佳 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が無効2024-800030号事件について令和6年12月17日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、発明の名称を「5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途」とする発明に係る特許(特許第4417865号。請求項の数8。平成17年2月25日出願(優先権主張(日本):平成16年3月30日(以下「本件優先日」という。)、同年11月30日)、平成21年12月4日設定登録。以下、この特許を「本件特許」といい、特許出願に係る願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」という。)の特許権者である。(甲18) ⑵ 原告は、令和3年9月13日、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の特許を れた明細書及び図面を「本件明細書等」という。)の特許権者で ある。(甲18)⑵ 原告は、令和3年9月13日、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の特許を無効にすることを求める審判請求(無効2021-800078号。以下「先の審判請求」という。)をした。 特許庁は、令和4年7月15日、請求不成立の審決をした。原告は、同審決 の取消しを求める訴訟を知的財産高等裁判所(知財高裁)に提起したが(知財高裁令和4年(行ケ)第10091号。以下、この訴訟を「前件訴訟」という。)、知財高裁は、令和5年3月22日、原告の請求を棄却する旨の判決をした。原告は、この判決を不服として、最高裁判所に上告受理申立てをしたが、同申立てを受理しないとの決定がされ、知財高裁の上記判決が確定し、 先の審判請求に係る審決も確定した。 ⑶ さらに、原告は、令和6年3月15日、本件発明に係る特許を無効にすることを求める審判請求(無効2024-800030号。以下「本件審判請求」という。)をした。 ⑷ 特許庁は、令和6年12月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」 との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日、原告に送達された。 ⑸ 原告は、令和7年1月23日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。 「下記一般式(1)HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)(式中、R1 は、水素原子又は炭素数1~18 のアルキル基を示し;nは0~2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。」 3 本件審判請求で主張された 1)n(OH)2-n (1)(式中、R1 は、水素原子又は炭素数1~18 のアルキル基を示し;nは0~2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。」 3 本件審判請求で主張された無効理由 被告は、本件審判請求において、以下の内容の無効理由を主張した。 本件発明は、甲1(JournalofPhotochemistryandPhotobiologyB:Biology,2002, 67(3), p.187-193)に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は、同項の規定に違反して特許されたものであり、同法123条1項2号に該 当し、無効にすべきである。 4 本件審決の理由等無効理由に対する本件審決の判断の要旨は次のとおりである。 ⑴ 甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(本件審決「理由」第6、2⑴ア) <甲1発明>「5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩水に0~5mMの濃度で溶解した溶液。」⑵ 本件発明と甲1発明とは、「5-アミノレブリン酸に関する物。」である点で一致し、以下の相違点1において相違する。(本件審決「理由」第6、3⑴) <相違点1>本件発明は、「下記一般式(1)HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)(式中、R1 は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を示し;nは0~2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。」であるのに 対して、甲1発明は「5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩 水に0~5mMの濃度で溶解した溶液。」である点。 ⑶ 相違点1に関 5-アミノレブリン酸リン酸塩。」であるのに 対して、甲1発明は「5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩 水に0~5mMの濃度で溶解した溶液。」である点。 ⑶ 相違点1に関する判断(本件審決「理由」第6、3⑵)ア塩の技術的意義について(本件審決「理由」第6、3⑵ア、イ)本件発明は、特定化合物のリン酸塩を発明特定事項とするものである。 甲5ないし9及び乙1(本件訴訟における甲13)、乙3(本件訴訟にお ける甲15)から認定できる技術的事項を総合すれば、塩とは「酸の陰性成分(陰イオンや付加化合物の酸等)と塩基の陽性成分(陽イオンや付加化合物の有機塩基等)の電荷が中和され、化学結合力によって結合した化合物」であると理解すべきであり、溶媒がない状態で単離された形態を取り得ると考えられる(以下「化合物として単離された塩の場合」という。)。 また、本件明細書全体の記載(特に段落【0017】における「本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、固体でも溶液でもよい。溶液とは、水をはじめとする溶媒に溶解又は分散した状態を示すが、そのpHがpH調整剤等によって調整されたものでもよい。」という記載)を参照し理解した上で、塩の技術的意味を理解すると、「溶媒に溶解又は分散した状態」の 「塩」は、溶質と溶解の混合物中の一成分として、その陰性成分と陽性成分が化学結合力により結合した形態をとり得ると考えられる(以下「混合物の一成分として存在する塩の場合」という。)。 したがって、本件発明の塩の技術的意味としては、「化合物として単離された塩の場合」と「混合物の一成分として存在する塩の場合」があるので、 これらの双方の場合について検討する。 さらに、「混合物の一成分として存在する塩の場合」の検討にあたっては、当該 単離された塩の場合」と「混合物の一成分として存在する塩の場合」があるので、 これらの双方の場合について検討する。 さらに、「混合物の一成分として存在する塩の場合」の検討にあたっては、当該混合物に含まれる溶媒が「水」の場合に、水に溶けた「塩」はイオン化し、水和され、あるいは、電離平衡の状態となることが明らかであるから、「水溶液中で各種イオンが水和状態である場合」と「水溶液中で各種イ オンが電離している状態と電離していない状態の平衡状態を有している 場合」について行うものとする。 イ甲1発明におけるイオン成分について(本件審決「理由」第6、3⑵ウ)甲1発明は、「リン酸緩衝生理食塩水」に対して「5-アミノレブリン酸塩酸塩」を溶解した溶液であるから、「5-アミノレブリン酸塩酸塩」は「5-アミノレブリン酸」、「H+」及び「Cl-」に電離・水和して水溶液中に存在 し、何らかの電離平衡状態が存在しているものである。また、甲3によると、「リン酸緩衝生理食塩水」は少なくとも「NaCl、KH2PO4、Na2HPO4」を含有するから、当該溶液には「Na+、Cl-、K+、H2PO4-、HPO42-」のイオン成分が含まれている。そうすると、甲1発明は、少なくとも「5-アミノレブリン酸、H+、Na+、Cl-、K+、H2PO4-、HPO42-」をイオン状態で含む 水溶液である。 ウ本件発明の塩に該当するかどうかの判断(本件審決「理由」第6、3⑵エ、オ)(ア) 化合物として単離された塩の場合本件発明について、塩が化合物として単離されたものを意味する場合、 甲1発明の溶液は、溶質と溶媒の混合物であって、溶媒がない状態で「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が単離されているものでないから、本件発明と甲1発明の溶液は異 単離されたものを意味する場合、 甲1発明の溶液は、溶質と溶媒の混合物であって、溶媒がない状態で「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が単離されているものでないから、本件発明と甲1発明の溶液は異なる。 (イ) 混合物の一成分として存在する塩の場合a 甲1発明の各種イオンが水和状態である場合 甲1発明の溶液に、「5-アミノレブリン酸」、「H+」及び「H2PO4-」(又は「HPO42-」)のイオンが水和状態で単に含まれていたとしても、当該イオンは相互に化学結合力によって結合していないから塩であるとはいえず、本件発明の塩にも該当しない。 b 甲1発明の各種イオンが電離している状態と電離していない状態の 平衡状態を有している場合 甲1発明は、pH緩衝溶液中の5-アミノレブリン酸の分解を調べるためのpH調整前の溶液であって、複数のイオンが濃度不明な状態で存在し、かつ、多数の電離平衡状態(平衡式)が想定されるなか、特定のイオンの組合せが、有効なイオン濃度(活量)で特定の電離平衡により「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を生成しているとする具 体的な説明や証拠は存在しないし、各種イオン濃度に関係なく、かつ、平衡の優先順位を考慮することなく「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を生成する電離平衡が生じるという技術常識も確認できない。 しかも、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」という一行記載が存在していても、当該塩の製造方法が技術常識でない状況では、「5-アミノ レブリン酸リン酸塩」を引用発明として認定できないのであるから(例えば、先の無効審判に対する審決の知財高裁令和4年(行ケ)第10091号)、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」という一行記載すらない甲1から「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を認定し、結果として記載さ えば、先の無効審判に対する審決の知財高裁令和4年(行ケ)第10091号)、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」という一行記載すらない甲1から「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を認定し、結果として記載されているに等しいと判断し、引用発明として認定することはで きない。 よって、甲1発明の溶液は、化学結合力によって結合した「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を含む水溶液ともいえない。 (ウ) したがって、相違点1は実質的相違点である。 エ結論(本件審決「理由」第6、3⑷、第7) したがって、本件発明は、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法29条1項3号に該当せず、本件発明についての特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、原告が主張する無効理由によって無効とすることはできない。 5 原告の主張する取消事由 本件発明の甲1発明に対する新規性の有無に関する判断の誤り 第3 取消事由に関する当事者の主張〔原告の主張〕 1 本件審決における「塩」の解釈が誤りであること⑴ 本件審決は、「混合物の一成分として存在する塩の場合」(前記第2の4⑶ウ(イ))において、技術常識を参酌して請求項1に記載された文言である「塩」 の意義を限定して解釈し、この限定解釈に基づいて本件発明の要旨認定を行い、この発明の要旨認定に基づいて、本件発明と甲1発明との間に実質的相違点があると判断した。 しかし、本件発明の「塩」については、本件明細書等を参照して請求項1に記載された文言を解釈すれば足り、「溶媒に溶解又は分散した状態」におけ る「塩」は、「溶質と溶媒の混合物中の一成分として、その陰性成分と陽性成分が化学結合力により結合した形態」に限られない。 本件明細書等の段落【0017】によれば、「溶液」である「5- におけ る「塩」は、「溶質と溶媒の混合物中の一成分として、その陰性成分と陽性成分が化学結合力により結合した形態」に限られない。 本件明細書等の段落【0017】によれば、「溶液」である「5-アミノレブリン酸リン酸塩」は、「溶媒に溶解又は分散した状態」をいい、pHが調整されたものでなくてもよい。 また、段落【0018】によれば、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」には、「(水)溶液形態」のものが含まれる。 そして、本件特許の特許請求の範囲の請求項3は、「水溶液の形態である請求項1又は2記載の5-アミノレブリン酸リン酸塩。」であり、請求項1(及び請求項2)を引用する請求項であって、かつ、請求項1に係る発明の構成 を「水溶液の形態であるもの」に限定しているから、本件発明は、請求項3に記載された「水溶液の形態であるもの」を当然に含む。 また、段落【0017】には、「溶液」に「溶解」と「分散」の二つの状態が含まれることが記載されているが、「分散」は「結合」と対になる概念であり、【0017】における「分散」は、均一な溶媒の中に、5-アミノレブリ ン酸リン酸塩の微粒子が分布又は散在した状態を指すものと解され、これは 「化学的結合力」により「結合」した状態とは相容れない。 以上によれば、本来不要である技術常識を参酌して本件発明に係る請求項1の文言「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を限定解釈した、本件審決による本件発明の要旨認定は誤りである。 正しい請求項1の文言解釈及びこれに基づく本件発明の要旨認定によれ ば、本件発明には、水溶液中で陽イオン(陽性成分)と陰イオン(陰性成分)とに分離したものと分離していないものの両方が含まれる。また、およそ水溶液中に含まれる陽イオン(陽性成分)と陰イオン(陰性成分)の比率がどの は、水溶液中で陽イオン(陽性成分)と陰イオン(陰性成分)とに分離したものと分離していないものの両方が含まれる。また、およそ水溶液中に含まれる陽イオン(陽性成分)と陰イオン(陰性成分)の比率がどのようなものであっても、また、電荷が中和しているか否かにかかわらず、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」に含まれる。 ⑵ 被告は、後記〔被告の主張〕1⑵のとおり、特許法施行規則24条、24条の4、様式29及び様式29の2を挙げ、用語を「その有する通常の意味」として解釈すべきと主張する。 しかし、特許法施行規則の上記各条項及び各様式によれば、明細書及び特許請求の範囲において、使用される用語を特定の意味で使用しようとする場 合に、その意味を定義して使用するときは、その有する普通の意味で使用しないことができる。 本件明細書等及び特許請求の範囲の請求項3に記載された「溶液の形態」は、「塩」を普通の意味とは異なり、本件明細書等の段落【0017】、【0018】、請求項3に記載されたとおりの意味に定義して使用しようとするも のであるから、文献等を参照して「塩」の普通の意味を解釈することは不要である。 2 本件発明と甲1発明に実質的相違点がないこと甲1発明は、水溶液中に含まれるアミノレブリン酸イオン(陽性成分)、H2PO4-、HPO42-(陰性成分)の混合物である。 これに対し、上記1のとおり、本件発明には、水溶液中で陽イオンと陰イオ ンとに分離したものと分離していないものの両方が含まれるのであり、正しく認定されるべき本件発明は、水に溶けた「5-アミノレブリン酸リン酸塩」であり、アミノレブリン酸イオン(陽性成分)、H2PO4-、HPO42-(陰性成分)を含む水溶液(混合物)である。 したがって、本件発明と甲1発明との間 、水に溶けた「5-アミノレブリン酸リン酸塩」であり、アミノレブリン酸イオン(陽性成分)、H2PO4-、HPO42-(陰性成分)を含む水溶液(混合物)である。 したがって、本件発明と甲1発明との間に実質的相違点はない。 3 甲1に5-アミノレブリン酸リン酸塩が記載されていること本件審決は、刊行物に基づいてある引用発明が認定できるか否かについて、刊行物に物質の「一行記載」が含まれるかどうかを重視した。 しかし、甲1に「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の物質名、構造式等の「一行記載」は含まれないが、水溶液の形態である「5-アミノレブリン酸リン酸 塩」の構成及び製造方法が記載されている。 甲1の訳文3頁10ないし13行には、「ALA塩酸塩」(「ALA」はアミノレブリン酸を意味する。)を「PBS」(「PBS」はリン酸緩衝生理食塩水を意味する。)に溶解させたことが記載されている。「ALA塩酸塩」は水溶液中で5-アミノレブリン酸イオンと塩化物イオンに電離する。「PBS」にはナトリ ウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、リン酸二水素イオン(H2PO4-)及びリン酸水素イオン(HPO42-)が含まれる(甲9、28)。そうすると、「ALA塩酸塩」を「PBS」に溶解させた物質には、水、5-アミノレブリン酸イオン及びリン酸二水素イオン又はリン酸水素イオンが含まれる。これは、水に溶解した5-アミノレブリン酸リン酸塩にほかならないから、甲1の上記箇所には、 水溶液の形態である5-アミノレブリン酸リン酸塩の構成が記載されている。 そして、同箇所には、「ALA塩酸塩」を「溶解」させるという、水溶液の形態である5-ALAリン酸塩の製造方法も記載されている。 したがって、本件審決の判断は誤りであり、甲1から引用発明として水溶液の形態で 同箇所には、「ALA塩酸塩」を「溶解」させるという、水溶液の形態である5-ALAリン酸塩の製造方法も記載されている。 したがって、本件審決の判断は誤りであり、甲1から引用発明として水溶液の形態である「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を認定することができる。 〔被告の主張〕 被告としては、本件発明は、新規で有用な化学物質を実際に製造し固体として取り出して提供したものであり、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」とは、5-アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンが化学結合力により結合してなる物質(化合物)を意味し、甲1発明の溶液のように、単に水溶液中に5-アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンが化学結合することなく別々に 存在するにすぎない状態のものは包含しないという立場である。したがって、本件審決の判断のうち、「化合物として単離された塩の場合」(前記第2の4⑶ウ(ア))についての判断で十分と考えるが、仮に、本件発明が「混合物の一成分として存在する塩の場合」(前記第2の4⑶ウ(イ))を含んでいるとしても、甲1発明の溶液は、化学結合力によって結合した「5-アミノレブリン酸リン酸塩」 を含む水溶液とはいえず、本件発明は甲1発明に記載された発明であるとはいえない。 1 「塩」の意義に関する本件審決の認定に誤りがないこと⑴ 甲13、14(審判段階の乙1、2)によれば、「塩」とは、「陰イオン性の基を有する酸と陽イオン性の基を有する塩基とからなる化合物」を意味し、 甲15(審判段階の乙3)によれば、「化合物」とは、2種以上の元素の原子が互いに化学結合力によって結合することによって生じる物質をいうから、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」とは、5-アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンとが化学結合力によって結 上の元素の原子が互いに化学結合力によって結合することによって生じる物質をいうから、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」とは、5-アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンとが化学結合力によって結合してなる物質(化合物)を意味する。 これに対し、甲1発明の溶液に存在する5-ALAイオンと、リン酸二水素イオン(H2PO4-)及びリン酸水素イオン(HPO42-)とは、水和されていて別々に存在しており、アミノレブリン酸とリン酸とが化学結合力によって結合してなる物質(化合物)、すなわち「塩」ではない。したがって、甲1発明は「5-アミノレブリン酸リン酸塩」ではないから、本件発明と甲1発明には相違 点が存在する。 ⑵ 特許法施行規則24条の4及び同規則様式29の2の〔備考〕9並びに同規則24条及び同規則様式29の〔備考〕8によれば、特許請求の範囲及び明細書を記載するに当たっては、用語をその有する普通の意味で使用することが求められており、用語の解釈に当たっては、明細書中に特定の意味で使用するとする用語の定義の記載がない限り、その有する普通の意味として解 釈すべきである。 そして、本件明細書等には、本件発明における「5-アミノレブリン酸リン酸塩」又は「塩」の用語を特定の意味で用いるとの定義の記載はないから、本件発明に係る特許請求の範囲の記載を解釈するに当たっては、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」及び「塩」の用語の普通の意味を把握する必要があ り、本件発明における「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の用語の普通の意味を把握するために、「塩」や「化合物」という技術用語の意味を記載した辞典や化学の入門書等(甲5~9、13、15)の記載を参酌した本件審決の判断手法に誤りはなく、上記⑴と同旨である本件審決の「塩」の技術的意 するために、「塩」や「化合物」という技術用語の意味を記載した辞典や化学の入門書等(甲5~9、13、15)の記載を参酌した本件審決の判断手法に誤りはなく、上記⑴と同旨である本件審決の「塩」の技術的意味の認定に誤りはない。 ⑶ 前記のとおり、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」は、製造して固体として取り出したものであるから、本件明細書等の段落【0017】にいう「溶液」及び段落【0018】にいう「水溶液」は、製造して固体として取り出した一般式(1)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩を溶媒に溶解又は分散させた状態のものを意味する。 また、請求項3の記載が請求項1を引用しているからといって、請求項1が請求項3に係る発明を当然に包含する関係にはない。請求項3は、請求項1(又は2)に係る「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を水に溶解又は分散させた状態のものを意味するにすぎず、請求項1は、請求項3の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を水に溶解又は分散させた状態のもの、すなわち5 -アミノレブリン酸とリン酸塩とが化学結合力によって結合していないもの を含まない。 2 甲1に「5-アミノレブリン酸リン酸塩」は記載されていないこと本件発明の技術的意義は、従来、微生物・発酵分野、動物・医療分野及び植物分野において有用なことが知られていた5-アミノレブリン酸(本件明細書等の段落【0002】)について、塩酸塩としてのみ製造法が知られていた(【0 003】)ところ、5-アミノレブリン酸塩酸塩を使用することにより生じる問題(段落【0004】、【0005】)を解決する「5-アミノレブリン酸の新規な塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物を提供する」(段落【0006】)ことにある。 落【0004】、【0005】)を解決する「5-アミノレブリン酸の新規な塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物を提供する」(段落【0006】)ことにある。 すなわち、本件発明は、製造方法その他の入手方法が知られていなかった5 -アミノレブリン酸の新規な塩である「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を提供するものであるから、新規の化学物質の発明であるといえ、前件訴訟の知財高裁判決が判示するとおり、刊行物にその技術的思想が開示されているというためには、一般に、当該物質の構成が開示されていることに止まらず、その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして、 刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要であるというべきである。 原告が、前記〔原告の主張〕3において指摘する甲1の記載の箇所には、「5 -アミノレブリン酸リン酸塩」又はこれと同義の物質名や化学構造式の一行記載は存在せず、甲1の全体を見ても、そのような記載はない。そうすると、引用文献に「5-ALAホスフェート」という物質名の一行記載が存在した前件訴訟と異なり、本件の甲1には、新規の化学物質である「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の構成の開示すらない。 また、甲1には、リン酸イオンを含むPBSに5-アミノレブリン酸塩酸塩 を溶解したものが記載されているにすぎず、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の製造方法を理解し得る程度の記載もされていない。そして、甲1に接した当業者が、本件優先日当時の技術常識に基づいて、「5-アミノ 溶解したものが記載されているにすぎず、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の製造方法を理解し得る程度の記載もされていない。そして、甲1に接した当業者が、本件優先日当時の技術常識に基づいて、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の製造方法その他の入手方法を見いだすことができるとはいえない。 以上のとおり、甲1には、新規な化学物質である「5-アミノレブリン酸リ ン酸塩」の構成の開示すらなく、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」という化合物の製造方法を理解し得る程度の記載はなく、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができたともいえないのであるから、甲1に本件発明が提供する新規の化学物質である「5-アミノ レブリン酸リン酸塩」が記載されているということはできない。 したがって、本件発明が甲1に記載された発明であるとはいえない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の概要等⑴ 特許請求の範囲 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1は、前記第2の2のとおりである。 ⑵ 本件明細書等の記載本件明細書等の記載は、別紙「本件明細書等の記載」のとおりである。 ⑶ 本件発明の概要 上記⑴の特許請求の範囲並びに上記⑵の本件明細書等の記載によれば、本件発明の技術分野、背景技術、発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段並びに発明の効果は、以下のとおり認められる。 ア技術分野本件発明は、微生物・発酵、動物・医療、植物等の分野において有用な 5-アミノレブリン酸リン酸塩に関する発明である。(段落【0001】) イ背景技術5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野、動物・医療分野及び植物分 の分野において有用な 5-アミノレブリン酸リン酸塩に関する発明である。(段落【0001】) イ背景技術5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野、動物・医療分野及び植物分野における様々な用途に有用であることが知られ、また、塩酸塩としてのみその製造方法が知られていた。 しかしながら、5-アミノレブリン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、 医薬分野においては、5-アミノレブリン酸塩酸塩よりも低刺激性の5-アミノレブリン酸の塩が求められていたものであり、また、植物分野においては、5-アミノレブリン酸塩酸塩を利用すると噴霧器のノズルが詰まったり、果実の着色が十分でなかったりするという問題が指摘されていた。 (段落【0002】ないし【0005】) ウ発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段本件発明は、低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩を提供することを目的とする発明であり、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することにより、5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造し、上記の課題を解決しようとする発明で ある。(段落【0006】及び【0007】)エ発明の効果本件発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、臭気が感じられない上、皮膚や舌に対して低刺激性であり、皮膚等への透過性も良好であることから、これを含有する組成物は光力学的治療又は診断用薬として有用である ほか、水溶液にした場合の塩化物イオン濃度が低いため、植物への投与において塩素被害が生じにくくなるという効果を奏する。(段落【0013】) 2 甲1発明について⑴ 甲1の記載内容甲1には、以下の記載が存在する。なお、甲1は英語で記載された文献で あり、以下の和訳は本件審 にくくなるという効果を奏する。(段落【0013】) 2 甲1発明について⑴ 甲1の記載内容甲1には、以下の記載が存在する。なお、甲1は英語で記載された文献で あり、以下の和訳は本件審決が挙げたものであって(本件審決「理由」第5、 1⑴)、本件で原告が提出した甲1の訳文に記載されたものと一部異なる箇所がある。 ア 「要旨5-アミノレブリン酸(ALA)が癌やその他の疾患の光線力学的治療薬として世界中で評価されている。しかしながら、溶液中でのその安定特 性はまだ十分に理解されていない。この研究では、pH緩衝溶液中のALAの分解を調べた。生理的pHに緩衝されたPBS中のALA溶液は不安定であり、278nm付近の光子を吸収する分解生成物を引き起こすことが判明した。細胞内でのポルフィリン生成を刺激する溶液の能力は、分解により徐々に失われるが、その反応速度はUV吸収生成物の形成速度とは 異なる。したがって、いくつかの化学経路が生理的pHでの溶解したALAの分解に寄与している可能性がある。UV吸収生成物の形成速度の温度研究でも、複雑な形成プロセスが関与していることが示されている。 キーワード:アミノレブリン酸;光線力学的治療薬;安定性」(187頁の要旨(Abstract)。本件審決にいう「摘記(1a)」。) イ 「2.素材と方法2.1.化学物質ALA塩酸塩はノルスク・ハイドロ社(ノルウェー)から入手した。ALA塩酸塩は、PBS、又は2mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを添加したRPMI -1640増殖培地(Gibco、NY)に、0~50mMの範囲の濃度で溶解された。これらの溶液のpHは、その後5M水酸化カリウムで7. 2に調整された lのストレプトマイシンを添加したRPMI -1640増殖培地(Gibco、NY)に、0~50mMの範囲の濃度で溶解された。これらの溶液のpHは、その後5M水酸化カリウムで7. 2に調整された。使用した全ての化学物質は分析純度のものであった。」(187ページ右欄6~14行。本件審決にいう「摘記(1b)」。)ウ 「4.考察 ALA溶液が黄色に変色したという観察はNovoら[7]の知見と一 致しており、中性に近いpHで分解がより顕著になるという知見も同様である。我々の実験では、やや類似した実験でpHが7.4から6.1に著しく低下することを見出したNovoらの観察とは対照的に、pHは保存中に変化しなかった。この違いは、おそらく、彼らが我々よりも高濃度のALAを使用したため、使用したリン酸緩衝生理食塩水の緩衝能を超えて しまったことが寄与していると思われる。」(191ページ左欄下から4行~右欄7行。本件審決にいう「摘記(1c)」。)エ 「6.注釈ALA、5-アミノレブリン酸;EDTA、エチレンジアミン四酢酸;FCS、ウシ胎児血清;PBS、リン酸緩衝生理食塩水;PDT、光線力 学的治療薬;PpIX、プロトポルフィリンIX」(193ページ左欄3~7行。本件審決にいう「摘記(1d)」。)⑵ 上記⑴の記載によれば、甲1は、pH緩衝溶液中の5-アミノレブリン酸の安定性に関する研究について記載した技術文献である。そして、前記⑴イ(摘記(1b))の記載によると、5M水酸化カリウムでpH7.2に構成さ れる前の溶液として、5-アミノレブリン酸塩酸塩を、PBSに0~50mMの範囲の濃度で溶解して溶液を形成することが記載されている。「PBS」とは、前記⑴エ(摘記(1d))の記載によると、「リン酸緩衝生理食塩水」 として、5-アミノレブリン酸塩酸塩を、PBSに0~50mMの範囲の濃度で溶解して溶液を形成することが記載されている。「PBS」とは、前記⑴エ(摘記(1d))の記載によると、「リン酸緩衝生理食塩水」を意味している。 そうすると、甲1には、「5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理 食塩水に0~50mMの濃度で溶解した溶液。」との発明が記載されていると認められる。 本件審決は、甲1発明を「5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩水に0~5mMの濃度で溶解した溶液。」と認定したが、甲1の記載内容からすれば、「5mM」は誤りであり、上記のとおり「50mM」が正しい というべきである。 そして、本件審決が認定した相違点1は、甲1発明の認定に係る上記誤りを正しいものにすると次のとおりとなる。 本件発明は、「下記一般式(1)HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)(式中、R1 は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を示し;nは0~ 2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。」であるのに対して、甲1発明は「5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩水に0~50mMの濃度で溶解した溶液。」である点。 (以下、上記のとおり認定した相違点を「相違点1’」という。) 3 取消事由(本件発明の甲1発明に対する新規性の有無に関する判断の誤り) について⑴ア本件審決は、前記第2の4⑶ア及びウのとおり、本件明細書等の記載とともに、甲5ないし9、13、15といった辞典等の文献の記載事項から導かれる技術常識を参酌して、本件発明における「塩」の技術的意味を「酸の陰性成分と塩基の陽性成分の電荷が中和され、化学結合力によって結合 した化 、13、15といった辞典等の文献の記載事項から導かれる技術常識を参酌して、本件発明における「塩」の技術的意味を「酸の陰性成分と塩基の陽性成分の電荷が中和され、化学結合力によって結合 した化合物」と解釈し、この解釈を前提として、甲1発明の溶液は、化学結合力によって結合した「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を含む水溶液といえないから、相違点1は実質的相違点であると判断しており、被告は、本件審決の上記判断は正当である旨主張する。 イしかし、本件明細書等には、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸 塩」が、固体(結晶)の状態のものや、5-アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンが化学結合力によって結合したものに限定される趣旨の記載は存在しない。 そして、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載される本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が、請求項3に記載の「水溶液の形態」 である場合、5-アミノレブリン酸リン酸塩は水に溶解する結果、5-ア ミノレブリン酸イオンとリン酸イオンに電離した状態で存在することになることは当業者の技術常識である(当事者双方の主張も、このことを前提としていると解される。)ところ、本件特許の請求項1及び当該請求項1の従属項である請求項3の記載から見て、当業者は、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」には、固体(結晶)の状態のものだけでなく、 「水溶液中に5-アミノレブリン酸とリン酸をイオンの状態で含んでなる形態にある5-アミノレブリン酸リン酸塩」も含まれると理解するというべきである。 ウ被告は、前記第3〔被告の主張〕の柱書及び1⑶のとおり、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」は、製造して固体として取り出したも のであるから、本件明細書等の段落【0017】にいう「溶液 被告は、前記第3〔被告の主張〕の柱書及び1⑶のとおり、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」は、製造して固体として取り出したも のであるから、本件明細書等の段落【0017】にいう「溶液」及び段落【0018】にいう「水溶液」は、製造して固体として取り出した5-アミノレブリン酸リン酸塩を溶媒に溶解又は分散させた状態のものを意味すると主張する。 しかし、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」につき、これを 製造して固体として取り出したものであると解すべき根拠となる本件明細書等の記載は見当たらない。 むしろ、本件明細書等の段落【0019】には、「本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸をイオン含有水溶液で溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することに より製造することができる。また、その混合液に貧溶媒を加えて結晶化させることにより、5-アミノレブリン酸リン酸塩を固体として得ることができる。」と記載されており、5-アミノレブリン酸リン酸塩を、5-アミノレブリン酸を含む溶出液とリン酸液との混合液の状態(液体の状態)で製造することと、当該混合液から固体として得ることが区別して記載され ているといえ、この段落の記載からしても、本件発明における5-アミノ レブリン酸リン酸塩は製造して固体として取り出したものであると解することはできず、5-アミノレブリン酸リン酸塩の溶液あるいは水溶液は固体として取り出した5-アミノレブリン酸リン酸塩を溶媒に溶解又は分散させたものであるとも解されない。 エ上記イ及びウによれば、本件審決が、本件発明の「5-アミノレブリン 酸リン酸塩」における「塩」の技術的意味を「酸の陰性成分と塩基の陽性成分の電荷が中和され、化学結合力によ とも解されない。 エ上記イ及びウによれば、本件審決が、本件発明の「5-アミノレブリン 酸リン酸塩」における「塩」の技術的意味を「酸の陰性成分と塩基の陽性成分の電荷が中和され、化学結合力によって結合した化合物」と解したことは相当ではない。 そして、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」における「塩」を上記のとおり解することを前提として、「甲1発明の溶液は、化学結合力によって結合 した『5-アミノレブリン酸リン酸塩』を含む水溶液といえない」との理由により相違点1は実質的相違点であると判断することもできない。この点は、本件発明と甲1発明の相違点を相違点1’(前記第4の2⑵)と認定しても変わらない。 ⑵ア特許法29条1項は、同項3号の「特許出願前に・・・頒布された刊行 物に記載された発明」については特許を受けることができないと規定するものであるところ、上記「刊行物」に「物の発明」が記載されているというためには、同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが、発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行 錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に、当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。 特に、当該物が新規の化学物質である場合には、新規の化学物質は製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから、 刊行物にその技術的思想が開示されているというためには、一般に、当該 物質の構成が開示されていることに止まらず、その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして、刊行物に製造方法を が開示されているというためには、一般に、当該 物質の構成が開示されていることに止まらず、その製造方法を理解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして、刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができ ることが必要であるというべきである。 イ前記2⑵のとおり、甲1には、5M水酸化カリウムでpH7.2に構成される前の溶液として、5-アミノレブリン酸塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に0~50mMの範囲の濃度で溶解して溶液を形成することが記載されている。 そして、本件審決が説示するとおり(本件審決「理由」第6、3⑵ウ)、リン酸緩衝生理食塩水に5-アミノレブリン酸塩酸塩を溶解させた溶液において、5-アミノレブリン酸塩酸塩は5-アミノレブリン酸、H+、Cl-に電離・水和して水溶液中に存在し、かつ、リン酸緩衝生理食塩水はリン酸イオン(H2PO4-又はHPO42-)を含んでいるから、甲1発明の溶液は、5 -アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンを含むものであり、このことは甲1の記載に接した当業者であれば認識することができるといえる。 ウしかし、甲1には、「水溶液の形態である5-アミノレブリン酸リン酸塩」すなわち「水溶液中に5-アミノレブリン酸とリン酸をイオンの状態で含んでなる形態にある5-アミノレブリン酸リン酸塩」を含め、5-アミノ レブリン酸リン酸塩という化合物を製造し、この化合物を得ることについての記載はなく、そもそも「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の文言も存在しない。 また、5-アミノレブリン酸はアミノ酸の一種であると レブリン酸リン酸塩という化合物を製造し、この化合物を得ることについての記載はなく、そもそも「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の文言も存在しない。 また、5-アミノレブリン酸はアミノ酸の一種であるところ(甲4〔訳文5頁23行〕に、5-アミノレブリン酸がアミノ酸の一種であることを 示す記載がある。)、アミノ酸の塩酸塩を、リン酸緩衝生理食塩水のような リン酸イオンを含む水溶液と混合することによって、アミノ酸のリン酸塩を製造することができるということが、本件優先日当時の技術常識であったとも認められず、その他、5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造方法が技術常識であったと認めるに足りる証拠はない。 エそうすると、甲1発明の溶液について、本件優先日当時、これが「5- アミノレブリン酸イオンとリン酸イオンを含む水溶液」であって、5-アミノレブリン酸とリン酸がいずれもイオンの状態で水溶液中に含まれていることは、当業者が認識できたとしても、そのことをもって、甲1の記載に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、本件優先日当時の技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度 に、甲1において、「水溶液中に5-アミノレブリン酸とリン酸をイオンの状態で含んでなる5-アミノレブリン酸リン酸塩」という、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」なる化合物に係る発明の技術的思想が開示されているということはできない。 したがって、本件発明が甲1に記載されているとは認められず、甲1か ら5-アミノレブリン酸リン酸塩を引用発明として認定することはできない。 この点に関する原告の主張(前記第3〔原告の主張〕3)は、上記説示に照らし、採用することができない。 そして、上記説示内容に照らせば、本件発明と甲1発明との相違点は相 て認定することはできない。 この点に関する原告の主張(前記第3〔原告の主張〕3)は、上記説示に照らし、採用することができない。 そして、上記説示内容に照らせば、本件発明と甲1発明との相違点は相 違点1’(前記2⑵)のとおりであると認められ、かつ、相違点1’は、実質的な相違点であるといえる。 したがって、本件発明は、甲1発明と一致するものではないから、甲1発明に対して新規性を欠くものとはいえない。 オ(ア) 本件審決は、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」という一行記載が存在 していても、当該塩の製造方法が技術常識でない状況では、「5-アミノ レブリン酸リン酸塩」を引用発明として認定できないのであるから、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」という一行記載すらない甲1から「5-アミノレブリン酸リン酸塩」を認定し、結果として記載されているに等しいと判断し、引用発明として認定することはできないと説示し(前記第2の4⑶ウ(イ)b)、本件発明は、甲1に記載された発明であるとはい えず、特許法29条1項3号に該当しない旨判断しており(前記第2の4⑶エ)、この判断内容は、上記ウ及びエの判断内容と同旨であるということができる。 (イ) なお、前記2⑵のとおり、本件審決による甲1発明の認定には誤り(濃度を「0~50mM」と認定すべきところを「0~5mM」と認定した 誤り)があり、それにより、本件発明と甲1発明の相違点の認定にも、相違点1’と認定すべきところ相違点1と認定した誤りがある。また、前記⑴ウのとおり、本件審決には、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」における「塩」の技術的意味を「酸の陰性成分と塩基の陽性成分の電荷が中和され、化学結合力によって結合した化合物」と解した 点で誤りがあり、そのように解する 明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」における「塩」の技術的意味を「酸の陰性成分と塩基の陽性成分の電荷が中和され、化学結合力によって結合した化合物」と解した 点で誤りがあり、そのように解することを前提として、「甲1発明の溶液は、化学結合力によって結合した『5-アミノレブリン酸リン酸塩』を含む水溶液といえない」との理由により相違点1又は相違点1’が実質的相違点であると判断することは相当でないというべきである。 しかし、前記ウ及びエの説示内容は、本件審決の上記の認定・判断の 誤りの有無によって左右されず、上記(ア)のとおり、本件審決も前記ウ及びエと同旨の判断をしているから、本件審決の上記の認定・判断の誤りは、本件審決の結論に影響するものであったとは認められず、本件審決についてこれを取り消すべき違法があるとは認められない。 4 取消事由に関する結論 以上によれば、本件発明は甲1発明とはいえず、特許法29条1項3号に該 当せず、本件発明についての特許は無効とすることはできないとの本件審決の判断の結論に誤りはなく、取消事由には理由がない。 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 別紙本件明細書等の記載 1 発明の詳細な 裁判官水野正則 別紙本件明細書等の記載 1 発明の詳細な説明⑴ 技術分野 「本発明は、微生物・発酵、動物・医療、植物等の分野において有用な5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物に関する。」(段落【0001】)⑵ 背景技術「5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野においては、VB12 生産、 ヘム酵素生産、微生物培養、ポルフィリン生産など、動物・医療分野においては、感染症治療(非特許文献1)、殺菌、ヘモフィラス診断、誘導体原料、除毛、リウマチ治療(非特許文献2)、がん治療(非特許文献3)、血栓治療(非特許文献4)、癌術中診断(非特許文献5)、動物細胞培養、UVカット、ヘム代謝研究、育毛、重金属中毒ポルフィリン症診断、貧血予防などに、植 物分野においては農薬などに有用なことが知られている。」(段落【0002】)「一方、5-アミノレブリン酸は塩酸塩としてのみ製造法が知られており、原料として馬尿酸(特許文献1参照)、コハク酸モノエステルクロリド(特許文献2参照)、フルフリルアミン(例えば、特許文献3参照)、ヒドロキシメチルフルフラール(特許文献4参照)、オキソ吉草酸メチルエステル(特許文 献5参照)、無水コハク酸(特許文献6参照)を使用する方法が報告されている。」(段落【0003】)「しかしながら、5-アミノレブリン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、製造過程、調剤・分包過程で気化した塩化水素により、装置腐食や刺激性を発生することを考慮する必要があり、これらを防止する措置を講ずることが 望ま アミノレブリン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、製造過程、調剤・分包過程で気化した塩化水素により、装置腐食や刺激性を発生することを考慮する必要があり、これらを防止する措置を講ずることが 望ましい。また、5-アミノレブリン酸塩酸塩を、直接、ヒトへの経口投与 や皮膚への塗布の場合、舌や皮膚に灼熱感を感じるような刺激性がある。よって、医薬の分野で利用する5-アミノレブリン酸として、5-アミノレブリン酸塩酸塩よりも低刺激性の5-アミノレブリン酸の塩が求められていた。」(段落【0004】)「また、5-アミノレブリン酸塩酸塩は植物の分野に利用されている(特 許文献7参照)が、植物に対して一般的に使用されている殺菌剤成分の硝酸銀等と混合して使用すると、5-アミノレブリン酸塩酸塩と硝酸銀が反応して塩化銀の沈殿が発生する場合があり、噴霧器のノズルが詰まって噴霧できなくなる可能性があり、操作上、注意を要した。 また、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液を果実へ直接噴霧をした場合、 塩化物イオンが存在すると、果実の着色が十分ではない場合があった。」(段落【0005】)⑶ 発明が解決しようとする課題「従って、本発明は低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物 を提供することにある。」(段落【0006】)⑷ 課題を解決するための手段「本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意検討を行った結果、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することにより、上記要求が満たされる5-アミノレブリン酸リン酸塩 が得られることを見出し、本発明を完成させた。」(段落【0007】)⑸ 発明の効果「本発明の5-アミノ をリン酸類と混合することにより、上記要求が満たされる5-アミノレブリン酸リン酸塩 が得られることを見出し、本発明を完成させた。」(段落【0007】)⑸ 発明の効果「本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、臭気が感じられず、そのため取り扱いやすい物質である。しかも、皮膚や舌に対して低刺激性であり、また皮膚等への透過性も良好であることからこれを含有する組成物に光力学 的治療又は診断用薬として有用である。本発明の製造方法によれば、簡便か つ効率よく5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造することができる。また、水溶液にした場合の塩化物イオン濃度が低いため、植物への投与において、塩素被害が生じにくい。」(段落【0013】)⑹ 発明を実施するための最良の形態「一般式(1)で表わされる本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、 固体でも溶液でもよい。固体とは、結晶を示すが、水和物でもよい。溶液とは、水をはじめとする溶媒に溶解又は分散した状態を示すが、そのpHがpH調整剤等によって調整されたものでもよい。また、水をはじめとする溶媒は、2種以上を混合して使用してもよい。pH調整剤としては、リン酸、ホウ酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸、トリス、酢酸、乳酸、酒石酸、シュ ウ酸、フタル酸、マレイン酸やそれらの塩などを用いた緩衝液又はグッドの緩衝液が挙げられる。」(段落【0017】)「溶液形態の5-アミノレブリン酸リン酸塩としては、水溶液が好ましい。 該水溶液中の5-アミノレブリン酸リン酸塩濃度は0.01wtppm~10wt%、さらに0.1wtppm~5wt%、特に1wtppm~ 1wt%が好ましい。また、この水溶液のpHは3~7、さらに3.5~7、特に4~7が好ましい。また、この水溶液中には、5-アミノレ %、さらに0.1wtppm~5wt%、特に1wtppm~ 1wt%が好ましい。また、この水溶液のpHは3~7、さらに3.5~7、特に4~7が好ましい。また、この水溶液中には、5-アミノレブリン酸リン酸塩以外の塩が含まれていてもよく、その場合塩化物イオン濃度は5-アミノレブリン酸リン酸塩の50モル%以下、さらに10モル%以下、特に3モル%以下が好ましい。」(段落【0018】) 「本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノレブリン酸をイオン含有水溶液で溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することにより製造することができる。また、その混合液に貧溶媒を加えて結晶化させることにより、5-アミノレブリン酸リン酸塩を固体として得ることができる。陽イオン交換樹脂に吸着させる5-アミノレブリ ン酸としては、特に制限されず、純度なども制限されない。すなわち、特開 昭48-92328号公報、特開昭62-111954号公報、特開平2-76841号公報、特開平6-172281号公報、特開平7-188133号公報等、特開平11-42083号公報に記載の方法に準じて製造したもの、それらの精製前の化学反応溶液や発酵液、また市販品なども使用することができる。尚、好ましくは、5-アミノレブリン酸塩酸塩が用いられる。」 (段落【0019】)「陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂又は弱酸性陽イオン交換樹脂のいずれでもよい。また、キレート樹脂も好適に使用できる。これらのうちで、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の種類としては、ポリスチレン系樹脂にスルホン酸基が結合したものが好 ましい。」(段落【0020】)「5-アミノレブリン酸の陽イオン交換樹脂への吸着は 樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の種類としては、ポリスチレン系樹脂にスルホン酸基が結合したものが好 ましい。」(段落【0020】)「5-アミノレブリン酸の陽イオン交換樹脂への吸着は、適当な溶媒に溶解した5-アミノレブリン酸溶液を陽イオン交換樹脂に通液することにより実施できる。このような溶媒としては、5-アミノレブリン酸が溶解すれば特に制限されないが、水;ジメチルスルホキシド;メタノール、エタノール、 プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系;ピリジン系などが挙げられ、水、ジメチルスルホキシド、メタノール又はエタノールが好ましく、水、メタノール又はエタノールが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。また、精製前の化 学反応溶液や発酵液を使用する場合には、反応溶媒の除去や適当な溶媒による希釈を行ってもよい。なお、上記溶媒、精製前の化学反応溶液や発酵液は、前記pH調整剤により、pH調整してもよい。」(段落【0021】)「溶出に用いられるイオン含有水溶液としては特に限定されないが、リン酸、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモ ニア、アミン、アミノ基を有する化合物を水に溶解したものが好ましく、水 酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、 トリエチル ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、 トリエチルアミンを水に溶解したものがより好ましく、アンモニアを水に溶解したものが特に好ましい。これらの水溶液は2種以上を組み合わせて使用してもよい。アンモニア水の濃度は、0.01~10Nが好ましく、0.1~3Nが特に好ましい。」(段落【0022】)「5-アミノレブリン酸の溶出液と混合されるリン酸類としては、一般 式:HOP(O)(OR1)n(OH)2-n(2)〔R1及びnは前記定義のとおりである。〕で表わされる化合物を使用することができる。このようなリン酸類としては、例えば、リン酸;メチルリン酸、エチルリン酸、n-ブチルリン酸、2-エチルヘキシルリン酸、ヘキサデシルリン酸、ベンジルリン酸、オレイルリン酸、フェニルリン酸等のリン酸モノエステル;ジメチルリン酸、 ジエチルリン酸、ジn-ブチルリン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジベンジルリン酸、ジオレイルリン酸、ジフェニルリン酸等のリン酸ジエステルが挙げられ、メチルリン酸、エチルリン酸、オレイルリン酸、フェニルリン酸、ジメチルリン酸、ジエチルリン酸、ジn-ブチルリン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、ジヘキサデシルリン酸、 ジベンジルリン酸、ジオレイルリン酸又はジフェニルリン酸が特に好ましい。 また、次亜リン酸又は亜リン酸も好適に使用できる。」(段落【0023】)「リン酸類は、水和物又は塩のいずれでもよく、また適当な溶媒に溶解又は分散したものも好適に使用できる。リン酸類の混合量は、吸着した5-アミノレブリン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶出量に対して、 ン酸類は、水和物又は塩のいずれでもよく、また適当な溶媒に溶解又は分散したものも好適に使用できる。リン酸類の混合量は、吸着した5-アミノレブリン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶出量に対して、1 ~5000倍モル量が好ましく、より好ましくは1~500倍モル量、特に 1~50倍モル量が好ましい。なお、吸着した5-アミノレブリン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶出量は、陽イオン交換樹脂や溶出液の種類、溶出液の通流量によっても異なるが、通常、吸着した5-アミノレブリン酸量に対し、90~100%である。」(段落【0024】)「このような溶媒としては、水;ジメチルスルホキシド;メタノール、エ タノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系;ピリジン系などが挙げられ、水、ジメチルスルホキシド、メタノール又はエタノールが好ましく、水、メタノール又はエタノールが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。」(段 落【0025】)「貧溶媒としては、固体が析出するものであれば特に制限されないが、このような溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメ トキシエタン等のエーテル系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、γ-ブチロラクトン等のエステル系;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系などが挙げられ、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトン又はアセト ブチロラクトン等のエステル系;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系などが挙げられ、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、アセトン又はアセトニトリルが好ましく、酢酸メチル、γ-ブチロラクトン、アセト ン又はアセトニトリルが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。」(段落【0026】)「イオン含有水溶液による溶出及び溶出液とリン酸類との混合の温度は、溶出液及びリン酸類が固化しない状態において、-20~60℃が好ましく、-10~30℃が特に好ましい。」(段落【0027】) 「本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸のア ミノ基がアシル基で保護されたものや、アミノ基に1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル型分子骨格となるような保護基が結合したもののように、アミノ基が加水分解可能な保護基で保護された5-アミノレブリン酸から製造してもよい。また、本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、本発明以外の製造方法、すなわち、2-フェニル-4-(β -アルコキシカルボニル-プロピオニル)-オキサゾリン-5-オンを所望のリン酸を用いて加水分解する方法や5-アミノレブリン酸塩酸塩等のリン酸塩以外の塩を溶媒中で所望のリン酸類と接触させる方法によっても得てもよい。リン酸類としては前記一般式(2)のもの、反応溶媒としては前記記載のものを使用することができる。」(段落【0028】) 「5-アミノレブリン酸リン酸塩(1)は、後記実施例に示すように、5-アミノレブリン酸塩酸塩に比べて、臭気は感じられず、皮膚や舌に対する刺激性が弱く、更に変異原性が認められない。更に、動物の皮膚及び植物の表皮への透過性に優れている。従 、後記実施例に示すように、5-アミノレブリン酸塩酸塩に比べて、臭気は感じられず、皮膚や舌に対する刺激性が弱く、更に変異原性が認められない。更に、動物の皮膚及び植物の表皮への透過性に優れている。従って、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩と同様に、ヒトを含む動物における光力学的治 療又は光力学的診断剤として有用である。光力学的治療又は診断剤としては、癌、感染症、リウマチ、血栓、にきび等の治療又は診断剤が挙げられる。」(段落【0029】)「5-アミノレブリン酸リン酸塩の光力学的治療剤又は診断剤としての使用に際しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特表2001 -501970号公報、特表平4-500770号公報、特表2005-501050号公報、特表2004-506005号公報、特表2001-518498号公報、特表平8-507755号公報に開示されている処方、方法で使用すればよい。」(段落【0030】)「5-アミノレブリン酸リン酸塩を含有する光力学的治療又は光力学的 診断用組成物は、皮膚外用剤、注射剤、経口剤、坐剤等の剤形にすることが できる。これらの剤形にするにあたっては、薬学的に許容される担体を用いることができる。当該担体としては、水、結合剤、崩壊剤、溶解促進剤、滑沢剤、充填剤、賦形剤等が用いられる。」(段落【0031】)「また、5-アミノレブリン酸リン酸塩を例えば、植物用途に使用する場合、一般的に使用される肥料成分等を含有してもよい。肥料成分としては、 特許文献7に開示されている物質が挙げられる。 5-アミノレブリン酸リン酸塩は、植物活性化剤としても有用である。植物活性化剤としての使用に際しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特許文献7に開示され 開示されている物質が挙げられる。 5-アミノレブリン酸リン酸塩は、植物活性化剤としても有用である。植物活性化剤としての使用に際しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特許文献7に開示されている方法で植物に対して使用すればよい。」(段落【0032】) ⑺ 実施例「以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。」(段落【0033】)「実施例1 5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造強酸性イオン交換樹脂(AMBERLITEIR120BNa、オル ガノ(株)製)180mLをカラムに詰めた。イオン交換樹脂は、塩酸処理してナトリウムイオン型から水素イオン型に変換してから使用した。次いで、当該カラムに、5-アミノレブリン酸塩酸塩20.00g(119mmol)をイオン交換水1000mLに溶解したものを通液した後、イオン交換水1000mLを通液した。次に、1Nアンモニア水をゆっくりと通液し、黄色 の溶出液346mLを採取した。採取した溶出液を85%リン酸16mL(H3PO4238mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液にアセトン400mLを加え、スタラーで激しく攪拌してから4℃で16時間静置した。析出した固体を吸引ろ過で回収し、アセトン500mLで洗浄した。得られた固体を12時間減圧乾燥し、目的物23.04g(101mmol) を得た。その物性データを以下に示す。」(段落【0034】) 「融点:108~109℃1H-NMR(D2O,400MHz)δppm:2.67(t,2H,CH2),2.86(t,2H,CH2),4.08(s,2H,CH2)13C-NMR(D2O,100MHz)δppm:30(CH2),37(CH2),50(CH2),18 pm:2.67(t,2H,CH2),2.86(t,2H,CH2),4.08(s,2H,CH2)13C-NMR(D2O,100MHz)δppm:30(CH2),37(CH2),50(CH2),180(CO),207(COO)元素分析値:C5H9NO3・H 3PO4として理論値:C26.21%;H5.28%;N6.11%実測値:C25.6%;H5.2%;N6.1%イオンクロマトグラフィーによるPO43-の含有率:理論値:41.45% 実測値:43%イオンクロマトグラフィー分析条件;分離カラム:日本ダイオネクス製IonPacAS12A、溶離液:Na2CO3とNaHCO3を含有する水溶液(Na2CO3:3.0mmol/L、NaHCO3:0.5mmol/L)、流速:1.5mL/min.、試料導入量:25μL、カラム温度:35℃、 検出器:電気伝導度検出器。」(段落【0035】)「実施例2 5-アミノレブリン酸(リン酸ジ-n-ブチル)塩の製造強酸性イオン交換樹脂(AMBERLITEIR120BNa、オルガノ(株)製)180mLをカラムに詰めた。イオン交換樹脂は、塩酸処理してナトリウムイオン型から水素イオン型に変換してから使用した。次いで、 当該カラムに、5-アミノレブリン酸塩酸塩20.00g(119mmol)をイオン交換水1000mLに溶解したものを通液した後、イオン交換水1000mLを通液した。次に、1Nアンモニア水をゆっくりと通液し、黄色の溶出液321mLを採取した。採取した溶出液をリン酸ジ-n-ブチル50.00g(238mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液に アセトン400mLを加え、スタラーで激しく攪拌してから-25℃で16 時間静置した。析出した固体を吸 ブチル50.00g(238mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液に アセトン400mLを加え、スタラーで激しく攪拌してから-25℃で16 時間静置した。析出した固体を吸引ろ過で回収した。得られた固体を12時間減圧乾燥し、目的物14.67g(43mmol)を得た。その物性データを以下に示す。 1H-NMR(D2O,400MHz)δppm:0.75(6H,CH3),1.23(4H,CH2),1.41(4H,CH2),2.46(2H,CH 2),2.59(2H,CH2),3.66(4H,CH2),3.80(2H,CH2)13C-NMR(D2O,100MHz)δppm:14(CH3),20(CH2),29(CH2),34.2(CH2),34.3(CH2),36(CH2),67(CH2O),176(COO),204(CO)」(段落【0036】) 「実施例3 5-アミノレブリン酸リン酸塩の臭気測定5人の被験者が、実施例1で製造した5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液(カラムからの溶出液とリン酸の混合液)及びその固体の臭気を直接嗅ぎ、下記の基準に従って臭気を評価した。結果を表1に示す。」(段落【0037】) 「・評価基準◯:臭いが感じられない。 △:臭いはするが不快ではない。 ×:不快な臭いがする。」(段落【0038】)「比較例1 5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液及び固体を使用する以外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。なお、5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液は、実施例1の5-アミノレブリン酸塩リン酸塩の水溶液の、5-アミノレブリン酸及びリン酸イオン濃度と、5-アミノレブリン酸及び塩化物イオン濃度とが、それぞれ同モル濃度となるように、5-アミノレブリン酸塩 酸 -アミノレブリン酸塩リン酸塩の水溶液の、5-アミノレブリン酸及びリン酸イオン濃度と、5-アミノレブリン酸及び塩化物イオン濃度とが、それぞれ同モル濃度となるように、5-アミノレブリン酸塩 酸塩の固体と塩酸とイオン交換水により、調製した。結果を表1に示す。」(段 落【0039】)「【表1】」(段落【0040】)「実施例45-アミノレブリン酸リン酸塩0.5gを水1mLに溶解した水溶液を使 用する以外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。結果を表2に示す。」(段落【0041】)「比較例25-アミノレブリン酸塩酸塩0.5gを水1mLに溶解した水溶液を使用する以外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。結果を表2に示す。」(段 落【0042】)「【表2】」(段落【0043】)「表1、2より、5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液は、5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液に比較して臭気が認められなかった。5-アミノ レブリン酸塩酸塩の水溶液の製造に必要な臭気対策や腐食性ガス対策が簡略化され、取り扱いがより簡便であった。また、5-アミノレブリン酸リン酸塩の固体も、5-アミノレブリン酸塩酸塩の固体と比べると臭気が認められず、秤量、分封等の取り扱いがより簡便であった。」(段落【0044】)「実施例5 5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の酸性度測定 濃度1~1000mMの5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液、5-アミ ノレブリン酸塩酸塩水溶液を各々調製し、その酸性度を25℃にてpHメーターで測定した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、同一濃度の場合、5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の酸性度は、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液よりも低かった。」(段落【0045】) ーターで測定した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、同一濃度の場合、5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の酸性度は、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液よりも低かった。」(段落【0045】)「実施例6 5-アミノレブリン酸リン酸塩の刺激試験 5人の被験者が、実施例1で得た5-アミノレブリン酸リン酸塩の固体5mgを直接舌にのせ、下記の基準に従って味覚を評価した。結果を表3に示す。」(段落【0046】)「・評価基準◯:刺激が感じられない。 △:刺激はあるが弱い。 ×:強い刺激がある。」(段落【0047】)「比較例35-アミノレブリン酸塩酸塩の固体5mgを使用する以外は実施例6と同様にして、味覚を評価した。結果を表3に示す。」(段落【0048】) 「【表3】」(段落【0049】)「表3より、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩と比較して強い刺激が認められなかった。」(段落【0050】)「実施例7 微生物(細菌)を用いる変異原性試験(復帰突然変異試験) 試験は、「微生物を用いる変異原性試験の基準」(昭和63年労働省告示第77号)(平成9年労働省告示第67号による一部改正)及び「新規化学物質等に係る試験の方法について」(平成15年11月21日付け:薬食発1121002号、平成15・11・13製局第2号、環保企発第0311210 02号)の「細菌を用いる復帰突然変異試験」に準拠して行った。5-アミノレブリン酸リン酸塩を蒸留水(和光純薬工業)に5%(w/v)溶解した溶液0.1mLに0.1Mナトリウム-リン酸緩衝液(pH7.4)0.5mL(代謝活性化試験ではS9mix0.5mL)を加え、更に各試験菌液(ヒスチジン要求性のSalmonellatyphimu た溶液0.1mLに0.1Mナトリウム-リン酸緩衝液(pH7.4)0.5mL(代謝活性化試験ではS9mix0.5mL)を加え、更に各試験菌液(ヒスチジン要求性のSalmonellatyphimuriumT A100,TA98,TA1535及びTA1537ならびにトリプトファン要求性のEscherichiacoliWP2 uvrAの5種類の菌株を使用(日本バイオアッセイ研究センター))0.1mLを加え、37℃で20分間振盪しながら、プレインキュベーションした。培養終了後、あらかじめ45℃に保温したトップアガーを2.0mLを加え、最小グルコース 寒天平板培地に重層した。また、最小グルコース寒天平板培地は、各用量2枚設けた。ただし、溶媒対照(陰性対照)は3枚設けた。37℃で48時間培養した後、テスト菌株の生育阻害の有無を実体顕微鏡を用いて観察し、出現した復帰変異コロニー数を計数した。計測に際しては自動コロニーアナライザー(CA-11:システムサイエンス(株))を用い86mm径プレート (内径84mm)の約80mm径内を計測し面積補正及び数え落とし補正をパーソナルコンピューターで行い算出した。ただし、コロニー数が1500以上では、自動コロニーアナライザーの信頼性が落ちるため、実体顕微鏡にてプレート内5点をマニュアル測定し平均値に面積補正を行った。用量設定試験は、ガイドライン上定められた最高用量である用量5000μg/pl ateを最高とし公比4で希釈した7用量を実施した。その結果、S9 mixの有無によらず、いずれの菌株においても溶媒対照と比較して2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかった。本被験物質の菌に対する生育阻害は認められなかった。本被験物質の沈殿も認められなかった。従って、本試験はガイドラ 株においても溶媒対照と比較して2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかった。本被験物質の菌に対する生育阻害は認められなかった。本被験物質の沈殿も認められなかった。従って、本試験はガイドライン上定められた最高用量である用量5000μg/ plateを最高とし公比2で希釈した5用量を設定した。その結果、代謝 活性の有無によらず、いずれの菌株においても溶媒対照と比較して2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかったことから(表4)、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、突然変異誘発能を有さないことが確認された。」(段落【0051】)「【表4】 」(段落【0052】) 「実施例8 急性経口毒性試験試験は、OECDガイドラインNo.423「急性経口毒性-急性毒性等級法」(2001年12月17日採択)に準拠して行った。一群3匹の絶食させた雌のラット(Sprague-DawleyCD種)に5-アミノレブリン酸リン酸塩を体重1kg当たり300mgの投与量で処理した。更に 別の絶食させた複数郡の雌ラットを体重1kg当たり2000mgの投与量で処理した。投与後2週間連続して観察した。その結果、いずれのラットにおいても死亡が確認されず(表5)、全身毒性の徴候もなく、全てのラットで通常の体重増加が示され(表6)、急性経口半数致死量(LD50)は、体重1kg当たり2500mgより大きいと推定された。」(段落【0053】) 「【表5】」(段落【0054】) 「【表6】」(段落【0055】)「実施例9 急性皮膚刺激性試験試験は、OECDガイドラインNo.404「急性皮膚刺激性/腐蝕性試験」(1992年7月17日採択)及びEU委員会指令92/69/EEC B 【0055】)「実施例9 急性皮膚刺激性試験試験は、OECDガイドラインNo.404「急性皮膚刺激性/腐蝕性試験」(1992年7月17日採択)及びEU委員会指令92/69/EEC B4法急性毒性(皮膚刺激性)に準拠して行った。ニュージーランド白ウサギ3匹(雄)を用い、毛をそった2.5cm四方の無傷な皮膚に5-アミノレブリン酸リン酸塩0.5gを蒸留水0.5mLに溶解したもの(pH3. 1)を4時間塗布し、1、24、48、72時間まで観察を行った。その結果、24時間以内でごく軽度な赤斑が観察されたが、48時間後の観察では 正常となった(表7、8)。また、ニュージーランド白ウサギ1匹(雄)を用いて、毛をそった2.5cm四方の無傷な皮膚に5-アミノレブリン酸リン酸塩0.5gを蒸留水0.5mLに溶解したもの(pH3.1)を3分、1時間塗布し、1、24、48、72時間まで観察を行った結果では、何の皮膚刺激性も観察されなかった(表7、8)。このことより、P.I.I値(一 次皮膚刺激性指数)は0.5であり、現行の国連勧告GHSでの刺激性分類では分類外で刺激性物質には当てはまらないことが確認された。なお、対照として5-アミノレブリン酸塩酸塩0.5gを蒸留水0.5mLに溶解したものは、pHが2.0以下でOECDガイドラインより腐蝕性ありと判断さ れるため、行わなかった。」(段落【0056】)「【表7】」(段落【0057】)「【表8】」(段落【0058】) 「実施例10 動物表皮透過性試験透析セル(有効面積1.13cm2、図2)を用い、受容層にpH6.8の生理食塩水17mLを攪拌しながら37℃に保った。前処理した豚皮全層(表皮+真皮)をメンブランフィルターにのせ、透析セルに設置した。供与層には、 積1.13cm2、図2)を用い、受容層にpH6.8の生理食塩水17mLを攪拌しながら37℃に保った。前処理した豚皮全層(表皮+真皮)をメンブランフィルターにのせ、透析セルに設置した。供与層には、1mMの5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液を0.5mL添加した。 所定時間毎に受容層の溶液を0.2mL採取し、新たに生理食塩水を補充し た。採取した試料又は標準液それぞれ0.05mLとA液(アセチルアセトン/エタノール/水=15/10/75(v/v/v)の混合溶液1Lに塩化ナトリウム4g含む)3.5mLとB液(ホルマリン85mLを水で1Lに希釈した溶液)0.45mLを混合し30分間加熱処理し、30分後水冷して5-アミノレブリン酸濃度をHPLCで測定し(分析条件は、蛍光検出 器:励起波長473nm、蛍光波長363nmを用い、溶離液はメタノール/2.5%酢酸水溶液=40/60(v/v)溶液を用い、カラムはWakosil-II 5C18HG、4.6mφ×150mmを用い、流速は1. 0mL/min、温度25℃で行った。)、標準液のピーク面積から各濃度を算出した。 次に、豚皮の替わりにタマネギの表皮を使用して、供与層の5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の濃度を0.1mMにして同様に行った。その結果を図3、4に示す。図3、4から解るように、豚皮、タマネギ表皮において5-アミノレブリン酸塩酸塩と5-アミノレブリン酸リン酸塩は、同様の透過性を示した。」(段落【0059】) 「比較例45-アミノレブリン酸リン酸塩の代わりに5-アミノレブリン酸塩酸塩を使用する以外は、実施例10と同様にして、透過性を測定した。」(段落【0060】)「このことより、実施例9で示したように、5-アミノレブリン酸塩酸塩 を直接、皮膚 アミノレブリン酸塩酸塩を使用する以外は、実施例10と同様にして、透過性を測定した。」(段落【0060】)「このことより、実施例9で示したように、5-アミノレブリン酸塩酸塩 を直接、皮膚に塗布した場合、刺激性があるが、5-アミノレブリン酸リン酸塩では、皮膚刺激性は感じられず、皮膚への透過性が同等であり、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩以上に医療(光線力学治療や光力学的診断剤)や植物に有効な塩であることが確認できた。」(段落【0061】) 「実施例11(塩化銀の沈殿発生実験) 5-アミノレブリン酸リン酸塩0.5gと硝酸銀0.5gをイオン交換水10mLに溶解し、5分静置し液の様子を観察した。沈殿の発生は認められなかった。 なお、5-アミノレブリン酸塩酸塩0.5gと硝酸銀0.5gをイオン交換水10mLに溶解し、5分静置し液の様子を観察した。沈殿の発生が認めら れた。」(段落【0062】)「実施例12(りんごの着色実験)実施例1で得られた、5-アミノレブリン酸リン酸塩をイオン交換水に溶解させ、表の所定濃度とした。その液に展着剤(丸和バイオケミカル(株)社製「アプローチBI」)を濃度が0.1重量%となるように加えた。pHは リン酸を用いて調整した。 上記の5-アミノレブリン酸リン酸塩を5-アミノレブリン酸塩酸塩として、またpH調整のリン酸を塩酸とする以外は同様にして5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液を調製した。 りんご「ふじ」の子実が着果し、未だ赤色に着色していない主枝3本に対 し、調製した液を1枝当たり2L噴霧した(9月15日)。約2ヵ月後(11月6日)にりんごを収穫し、着色度を調べた。着色の測定にはミノルタ社製、色彩度計CR-200を用いた。結果を表9に示す し、調製した液を1枝当たり2L噴霧した(9月15日)。約2ヵ月後(11月6日)にりんごを収穫し、着色度を調べた。着色の測定にはミノルタ社製、色彩度計CR-200を用いた。結果を表9に示す。」(段落【0063】)「【表9】」(段落【0064】) 「表9中のLab値では、Lは明るさ、aは赤、bは黄を表す。従ってaの値が高いほど赤が濃いことになる。5-アミノレブリン塩酸塩よりも5-アミノレブリン酸リン酸塩の方が赤の着色が濃かった。」(段落【0065】)「実施例13(植物活力効果)内径12cmの磁気製ポットに火山灰土壌が600g充填されかつ、1つ のポットに高さ15cmまで育ったツユクサが1本植えられているものを12個ずつ用意して20℃の恒温環境におき、1日1回下記散布液による茎葉散布処理を行った。21日後の葉の様子を観察した。その結果を表10にまとめた。」(段落【0066】)「【表10】 」(段落【0067】)「表10の結果より、5-アミノレブリン酸リン酸塩に、5-アミノレブリン酸塩酸と同等以上の植物の活力効果が認められた。」(段落【0068】)「実施例14(植物生長調節効果)イネ種(アキニシキ)をベンレート(住化タケダ園芸(株)製)(200倍) 水溶液に一昼夜浸漬し、その後、暗条件、30℃にてインキュベートし催芽した。ハト胸期のステージのそろった種子を選び、カッターナイフで溝をつけた発泡ポリエチレンシートに、ピンセットを用いて1シート当たり10粒 挟み込み、表11に示す各濃度の5-アミノレブリン酸リン酸塩150mLを満たした腰高シャーレにこのシートを浮かべ、25℃、5,000ルクス連続光照射下で24時間インキュベートした。反復数は各濃度3反復とした。 3日 に示す各濃度の5-アミノレブリン酸リン酸塩150mLを満たした腰高シャーレにこのシートを浮かべ、25℃、5,000ルクス連続光照射下で24時間インキュベートした。反復数は各濃度3反復とした。 3日後、調査を行い各区の第一葉鞘長、及び種子根長を測定し無処理区に対する比を算出し、それらの平均値を算出した。その結果を表11に示す。」(段 落【0069】)「【表11】」(段落【0070】)「5-アミノレブリン酸リン酸塩は5-アミノレブリン酸塩酸塩と同等以上の植物生長促進効果を示した。」(段落【0071】) 「実施例15(耐塩性向上効果)内径12cmの排水穴のない磁気製ポットに畑土壌を600g充填し、ワタの種子(品種;M-5 Acala)を7~8粒播種して1cm覆土し、温室内で育成させた。その後通常の管理を行い、子葉展開時に、表12に示す濃度の供試化合物と展着剤(ネオエステリン:クミアイ化学社製)を0. 05%(v/v)含有する耐塩性向上剤を調製し、10アール当たり100リットルの散布水量で茎葉に散布処理した。各々の供試化合物は表12の濃度とした。4日後、表12に示すように土壌重量当たり0~1.5重量%に相当する量の塩化ナトリウムを30mLの水に溶解させて土壌に滴下処理した。更に通常の栽培を続け、23日後に調査を行った。調査は目視観察によ って行い、結果は塩害を以下に示す6段階で評価した。結果を表12に示す。」 (段落【0072】)「(評価段階)0:全く塩害が見られない。 1:極弱い塩害が見られる。 2:弱い塩害が見られる。 3:明らかな塩害が見られる。 4:強い塩害が見られる。 5:植物体は塩害により枯死した。」(段落【0073】)「【表12】」(段落【0074】) る。 2:弱い塩害が見られる。 3:明らかな塩害が見られる。 4:強い塩害が見られる。 5:植物体は塩害により枯死した。」(段落【0073】)「【表12】」(段落【0074】) 「表12に示したように、5-アミノレブリン酸リン酸塩は5-アミノレブリン酸塩酸塩と同等以上の耐塩性向上効果を示した。」(段落【0075】)「上記実施例で用いた5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液中の塩化物イオン濃度を、以下の条件のイオンクロマト法で測定した結果、いずれも検出限界(0.1ppm)以下であった。 測定条件は、A.分離カラム(日本ダイオネクス製IonPacAS12A)、B.ガードカラム(日本ダイオネクス製IonPacAG12A)、C.溶離液(Na2CO3:3.0mmol/L、NaHCO3:0.5mmol/Lからなる水溶液)、D.流量(1.5mL/min)、E.サプレッサ (ASRS(リサイクルモード、電流値50mA))、F.試料導入量(25μL)、G.恒温槽温度(35度)、H.検出器(電気伝導度検出器)による。」(段落【0076】) 2 図面⑴ 図1 ⑵ 図2 ⑶ 図3 ⑷ 図4

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