令和3年8月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第28929号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日令和3年7月28日判決原告浜松ホトニクス株式会社 同訴訟代理人弁護士設樂隆一尾関孝彰寺下雄介深沢正志松本直樹大澤恒夫同訴訟代理人弁理士長谷川芳樹柴田昌聰同訴訟復代理人弁護士佐々木健詞同補佐人弁理士小曳満昭今村玲英子被告株式会社東京精密同訴訟代理人弁護士半場秀筬島裕斗志前田直哉三縄隆松村啓服部誠中村閑同訴訟復代理人弁護士柿本祐依 主文 1 被告は,別紙1被告製品目録記載の各製品を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。ただし,被告が2億5000万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「レーザ加工装置」とする特許第3935188号の特許(以下「本件特許1」という。)に係 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「レーザ加工装置」とする特許第3935188号の特許(以下「本件特許1」という。)に係る特許権(以下「本件特許権1」という。)及び発明の名称を「レーザ加工装置」とする特許第3990711号の特許(以下「本件特許2」という。)に係る特許権(以下「本件特許権2」という。 また,本件特許1と本件特許2を併せて「本件各特許」,本件特許権1と本件特許権2を併せて「本件各特許権」という。)の特許権者である原告が,被告に対し,別紙1被告製品目録記載の各製品(以下,同目録記載の各製品を併せて「被告製品」という。)が,本件各特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり,被告が,被告製品の製造,譲渡,輸出及び譲渡の申出をすることが,こ れらの発明の実施をするものとして本件各特許権の侵害に当たると主張し,特許法100条1項に基づく被告製品の製造,譲渡,輸出及び譲渡の申出等の差止め並びに同条2項に基づく被告製品の廃棄を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者 ア原告は,光半導体,光学応用機器等の開発・製造を主たる業務とする株式会社である。 イ被告は,精密計測機器及び半導体製造装置の製造等を業務とする株式会社である。 (2) 本件各特許 ア本件特許1(ア) 原告は,平成12年9月13日に出願した特願2000-278306号に基づく優先権を主張して行った平成13年9月13日を出願日とする特許出願(特願2001-278707号)の一部を分割して,平成18年3月14日, 年9月13日に出願した特願2000-278306号に基づく優先権を主張して行った平成13年9月13日を出願日とする特許出願(特願2001-278707号)の一部を分割して,平成18年3月14日,新たに本件特許1の特許出願(特願2006-6 9918号。以下「本件出願1」という。)をし,平成19年3月30日,本件特許権1の設定登録(請求項の数2)を受けた(甲1の1,1の2。 以下,本件出願1の願書に添付した明細書と図面(甲1の2)を併せて「本件明細書1」という。また,明細書の発明の詳細な説明に記載された段落番号及び図面については,単に【0001】,【図1】などと記載 する。)。 (イ) 原告は,平成30年4月24日,本件出願1の願書に添付した特許請求の範囲を訂正することを求める旨の訂正審判請求(訂正2018-390074号事件)をし,同年7月3日,当該訂正を認める旨の審決がされ,同審決は同月13日に確定した(甲1の1,1の3)。 イ本件特許2(ア) 原告は,平成14年3月12日に出願した特願2002-67348号に基づく優先権を主張して行った平成15年3月11日を出願日とする特許出願(特願2003-574373号)の一部を分割して,平成18年3月14日,新たに本件特許2の特許出願(特願2006-69 936号。以下「本件出願2」という。)をし,平成19年7月27日, 本件特許権2の設定登録(請求項の数2)を受けた(甲2の1,2の2。 以下,本件出願2の願書に添付した明細書と図面(甲2の2)を併せて「本件明細書2」という。)。 (イ) 原告は,平成30年4月24日,本件出願2の願書に添付した特許請求の範囲を訂正することを求める旨の訂正審判請求(訂正2018-3 90075号事件)をし,同年7 明細書2」という。)。 (イ) 原告は,平成30年4月24日,本件出願2の願書に添付した特許請求の範囲を訂正することを求める旨の訂正審判請求(訂正2018-3 90075号事件)をし,同年7月3日,当該訂正を認める旨の審決がされ,同審決は同月13日に確定した(甲2の1,2の3)。 (3) 本件各特許の特許請求の範囲ア本件特許1本件特許1の特許請求の範囲の請求項1及び2(いずれも前記(2)ア(イ) の訂正後のもの)は以下のとおりである(甲1,79。これらの請求項1及び2に係る発明を,以下,順に「本件発明1-1」,「本件発明1-2」といい,併せて「本件発明1」という。)。 (ア) 【請求項1】(本件発明1-1)ウェハ状の加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成す るレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照 射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集光用レンズと,隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加 工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数 及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部と,を備え,前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置。 動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部と,を備え,前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置。 (イ) 【請求項2】(本件発明1-2)前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポット間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御することを特徴とする請求項1 記載のレーザ加工装置。 イ本件特許2本件特許2の特許請求の範囲の請求項1及び2(いずれも前記(2)イ(イ)の訂正後のもの)は以下のとおりである(これらの請求項1及び2に係る発明を,以下,順に「本件発明2-1」,「本件発明2-2」といい,併せ て「本件発明2」という。また,本件発明1と本件発明2を併せて「本件各発明」という。)。 (ア) 【請求項1】(本件発明2-1)半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって, 前記半導体基板が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと, 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の 集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板におけ 切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における 前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,を備え,前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する,ことを特徴とするレーザ加工装置。 (イ) 【請求項2】(本件発明2-2) 半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記半導体基板が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源か ら出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と, 前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,を備え, 前記半導体基板はシリコン基板であり, 前記制御部は,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御することを特徴とするレーザ加工装置。 (4) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明は,それぞれ,以下のとおり,構成要件に分説することができる(以下,分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成 要件1A」などという。)。 ア本件発明1(ア) 本件発明1-1 ぞれ,以下のとおり,構成要件に分説することができる(以下,分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成 要件1A」などという。)。 ア本件発明1(ア) 本件発明1-11A ウェハ状の加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって, 1B 前記加工対象物が載置される載置台と,1C パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,1D 前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポ ットを形成させる集光用レンズと,1E 隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光 の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部と,を備え,1F 前記加工対象物はシリコンウェハであること1G を特徴とするレーザ加工装置。 (イ) 本件発明1-2 1H 前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポット間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御すること1I を特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。 イ本件発明2(ア) 本件発明2-12A 半導体基板の内部に ,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御すること1I を特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。 イ本件発明2(ア) 本件発明2-12A 半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,2B 前記半導体基板が載置される載置台と, 2C レーザ光を出射するレーザ光源と,2D 前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,2E 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ 光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,2F 前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と, 2G 前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,を備え,2H 前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する,2I ことを特徴とするレーザ加工装置。 (イ) 本件発明2-2 2J 半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,2K 前記半導体基板が載置される載置台と,2L レーザ光を出射するレーザ光源と,2M 前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光 源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,2N 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部 出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,2N 前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制 御部と,2O 前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,2P 前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,を備え, 2Q 前記半導体基板はシリコン基板であり,2R 前記制御部は,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する2S ことを特徴とするレーザ加工装置。 (5) 被告の行為 被告は,業として,被告製品を製造し,譲渡し,輸出し,及び譲渡の申出をしている。 (6) 被告製品の構成ア被告製品のうち,別紙1被告製品目録記載1の製品(以下「被告製品1」という。)は,主として300mm 径のウェハのレーザ加工を行う装置であり, 同目録記載2の製品(以下「被告製品2」という。)は,主として200mm 径のウェハのレーザ加工を行う装置であるが,これらの各製品の構成は,本件各発明の構成要件に対応する範囲において同じである。 イ被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張)記載の構成(以下,番号に対応させて「構成①」などという。)のうち,少なくとも,構成①の第1文,構成②,構成③,構成④の第1文,構成⑧,構成⑨,構成⑩並び に構成⑪の第1文及び第2文を備えている。また,被告製品におけるレーザ波長は約1.1μmである。 ウ被告製品は,本件各発明の次の構成要件を充足する。 本件発明1-1につき,構成要 成⑩並び に構成⑪の第1文及び第2文を備えている。また,被告製品におけるレーザ波長は約1.1μmである。 ウ被告製品は,本件各発明の次の構成要件を充足する。 本件発明1-1につき,構成要件1B,1C,1F及び1G本件発明1-2につき,構成要件1I(ただし「請求項1記載の」の部 分を除く。)本件発明2-1につき,構成要件2B,2C及び2I本件発明2-2につき,構成要件2K,2L,2Q,2R及び2S 3 争点(1) 被告製品が本件発明1の技術的範囲に属するか(争点1) ア被告製品が本件発明1-1の技術的範囲に属するか(構成要件1A,1D及び1Eの充足性)(争点1-1)イ被告製品が本件発明1-2の技術的範囲に属するか(構成要件1Hの充足性)(争点1-2)(2) 被告製品が本件発明2の技術的範囲に属するか(争点2) ア被告製品が本件発明2-1の技術的範囲に属するか(構成要件2A,2Dないし2Hの充足性)(争点2-1)イ被告製品が本件発明2-2の技術的範囲に属するか(構成要件2J,2Mないし2Pの充足性)(争点2-2)(3) 本件特許1についての無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否 (争点3) ア本件発明1の特開平11-163403号公報(以下「乙24公報」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-1)(争点3-1)イ本件発明1の特開平11-71124号公報(以下「乙26公報」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-2)(争点3-2)ウ本件発明1の特開昭50-131458号公報(以下「乙57公報」と いう。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-3)(争点3-3)エ本件発明1の特開昭50-64898号公報(以下「乙 ウ本件発明1の特開昭50-131458号公報(以下「乙57公報」と いう。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-3)(争点3-3)エ本件発明1の特開昭50-64898号公報(以下「乙58公報」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-4)(争点3-4)オ本件発明1の特開平4-111800号公報(以下「乙25公報」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-5)(争点3-5) カ本件発明1の特開平11-138896号公報(以下「乙59公報」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-6)(争点3-6)キ本件発明1の国際公開第00/32349号(以下「乙60公報」という。)を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-7)(争点3-7)ク本件発明1の明確性要件違反(無効理由1-8)(争点3-8) ケ本件発明1のサポート要件違反(無効理由1-9)(争点3-9)コ本件発明1の実施可能要件違反(無効理由1-10)(争点3-10)サ本件発明1の分割要件違反による新規性欠如(無効理由1-11)(争点3-11)(4) 本件特許2についての無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否 (争点4)ア本件発明2の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-1)(争点4-1)イ本件発明2の乙26公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-2)(争点4-2) ウ本件発明2の乙57公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-3) (争点4-3)エ本件発明2の乙58公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-4)(争点4-4)オ本件発明2の乙25公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-5)(争点4-5) カ本件発明2の乙5 件発明2の乙58公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-4)(争点4-4)オ本件発明2の乙25公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-5)(争点4-5) カ本件発明2の乙59公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-6)(争点4-6)キ本件発明2の乙60公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-7)(争点4-7)ク本件発明2の明確性要件違反(無効理由2-8)(争点4-8) ケ本件発明2のサポート要件違反(無効理由2-9)(争点4-9)コ本件発明2の実施可能要件違反(無効理由2-10)(争点4-10)(5) 本件各発明についての原告による実施許諾の有無(争点5)(6) 差止請求及び廃棄請求の当否(争点6)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(被告製品が本件発明1-1の技術的範囲に属するか(構成要件1A,1D及び1Eの充足性))について(原告の主張)(1) 構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」について ア 「改質領域」及び「改質スポット」の意義(ア) 「改質領域」及び「改質スポット」に該当するための要件本件発明1における加工対象物は,シリコンウェハであるところ(構成要件1F),本件明細書1では,シリコンウェハにおける「改質領域」として「溶融処理領域」を明示している(【0025】)。そうすると,本 件発明1の構成要件1A及び1Eの「改質領域」については,本件明細 書1における「溶融処理領域」がこれに該当するものと理解できる。 また,本件発明1は,「複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成する」(構成要件1E)ものであるから,「改質スポット」とは,単数の「溶融処理領域」を指すものと理解できる。 のと理解できる。 また,本件発明1は,「複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成する」(構成要件1E)ものであるから,「改質スポット」とは,単数の「溶融処理領域」を指すものと理解できる。 そして,本件明細書1の【0025】によれば,「溶融処理領域」とは, ①「一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも一つ」,②「相変化した領域や結晶構造が変化した領域」又は③「単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別な構造に変化した領域」,「例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領域, 単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域」を意味するものである。 したがって,上記の①ないし③のいずれかに該当するものは,本件発明1の「溶融処理領域」に当たり,同「改質領域」ないし「改質スポット」に該当する。 (イ) 多光子吸収に係る被告の主張について被告は,「改質領域」ないし「改質スポット」について,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定される旨主張するが,同主張は,以下のとおり理由がない。 a 多光子吸収は本件発明1の発明特定事項ではないこと 本件発明1の目的は,「加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供することである」(本件明細書1の【0005】)。その課題解決手段は,請求項1及び2記載の構成であり,本件特許1の特許請求の範囲の記載には,多光子吸収により改質領域を形成するとの限定はない。また,本件明 細書1における本件発明1の背景技術,課題解決手段,発明の効果の 記載にも,多光子吸収により改質領域を形成すると は,多光子吸収により改質領域を形成するとの限定はない。また,本件明 細書1における本件発明1の背景技術,課題解決手段,発明の効果の 記載にも,多光子吸収により改質領域を形成するとの記載はない。 前記(ア)のとおり,本件発明1は,「改質領域」(溶融処理領域)が形成されることを要件としているが,溶融処理領域が多光子吸収により形成されようと,単光子吸収により形成されようと,客観的には同じ溶融処理領域が形成されるため,多光子吸収により形成されるかどう かは,特許発明の対象とはされておらず,特許請求の範囲に記載されていない。シリコンウェハ内部における溶融処理領域の形成が多光子吸収によりされることは,出願時における特許発明の実施形態についての科学的仮説ないし理論的分析にすぎず,その科学的仮説ないし理論的分析は,発明特定事項とはされていないため,本件発明1の対象 ではない。したがって,光子吸収に関する科学的仮説ないし理論的分析が出願後において一部変遷しているとしても,このことは本件発明1の技術的範囲の解釈に何も影響を与えるべきものではない。 なお,原告は,他の出願において,改質領域を多光子吸収によるものと限定する場合には,その請求項において「多光子吸収による改質 領域」(特許第3408805号公報(乙43。以下「乙43公報」という。)参照)と記載しており,請求項に「多光子吸収による」との限定があるものと,この限定がないものとを区別して出願している。したがって,本件発明1のように請求項に「多光子吸収による」との限定がないものについては,「改質領域」及び「改質スポット」を多光子 吸収によるものに限定すべき理由はない。 b 本件明細書1における多光子吸収の記載の位置付け本件明細書1における多光子吸収に関す いものについては,「改質領域」及び「改質スポット」を多光子 吸収によるものに限定すべき理由はない。 b 本件明細書1における多光子吸収の記載の位置付け本件明細書1における多光子吸収に関する記載は,本件発明1の実施形態であるレーザ加工装置による切断加工におけるシリコンウェハ内部の高温溶融現象を,出願時の技術水準によって理論的に解析した ものであり,この現象が多光子吸収によるものであることは,出願時 における支配的な科学的仮説であった。 ただし,これは出願時における当業者の理解に基づく科学的仮説ないし理論的分析に基づくものにすぎず,本件発明1の実施形態において,多光子吸収が生じているか否かを直接的に確認しているわけではない。 また,透過性が高い長波長のレーザ光により,シリコンウェハの内部の集光点において,シリコン単結晶の融点を超えて溶融させることができるのであれば,その高温加熱の始まりの光子吸収が多光子吸収であろうと単光子吸収であろうと,その溶融後再固化による割れ現象が生じることに変わりはない。 科学的仮説は,科学的解析技術の進展とともに一層深化し,変遷することも珍しくはなく,本件においても,上記科学的仮説は,その後進展し,変化している。しかしながら,このような場合においても,本件発明1の技術的範囲の解釈は,あくまでも特許請求の範囲の記載によるべきであり,理論的分析(科学的仮説)が,特許請求の範囲に 記載されておらず,発明特定事項となっていない場合は,明細書の実施形態におけるこのような理論的分析(科学的仮説)の記載により,限定解釈がされるべきではない。 c 出願経過の参酌(包袋禁反言)について(a) 被告は,原告が,乙43公報に係る特許第3408805号の特 許(以下「本件 析(科学的仮説)の記載により,限定解釈がされるべきではない。 c 出願経過の参酌(包袋禁反言)について(a) 被告は,原告が,乙43公報に係る特許第3408805号の特 許(以下「本件先行特許」という。)を原告出願に係る特許群の中で基本特許に位置付けていたことから,本件特許1の権利範囲の解釈に当たっては,本件先行特許の審査経過等が考慮されるべきであり,原告が,本件先行特許の審査経過等において,改質領域が多光子吸収によるものと主張した以上,本件発明1の「改質領域」は,禁反 言の効力により,多光子吸収によるものに限定解釈されるべきであ ると主張する。 しかしながら,一般に,互いに独立した特許出願同士は別個独立のものであるから,特許の権利範囲解釈に当たって,他の特許の審査経過等を参酌するのは相当ではなく,本件特許1の権利範囲解釈に当たっても,本件先行特許の審査経過等を参酌する理由はない。 したがって,本件発明1の「改質領域」が禁反言の効力により多光子吸収によるものに限定解釈されるべきであるとの被告の上記主張は理由がない。 (b) 被告は,原告が,本件発明1の審査過程での審査官からの通知(乙49)に対する説明の一覧表(乙51)の「要点」において, 本件先行特許について,「基本特許」と記載して,「無効審判において半導体ウエハに限定」と説明するのみで,「改質領域」については,本件発明1と何ら異ならないものとして説明していることから,本件発明1の「改質領域」は,本件先行特許に係る発明の改質領域と同様に「多光子吸収によるもの」に限定されるべきであり,また, 原告は審査官を欺いて特許を得たものであるといえるから,本件発明1に基づく原告の権利行使は権利の濫用として許されないと主張する。 しかしなが 吸収によるもの」に限定されるべきであり,また, 原告は審査官を欺いて特許を得たものであるといえるから,本件発明1に基づく原告の権利行使は権利の濫用として許されないと主張する。 しかしながら,本件先行特許の請求項では,「多光子吸収による改質領域」などと,「改質領域」に限定が付されているのに対し,本件 発明1の請求項では,「改質領域」にそのような限定が付されていない。よって,「多光子吸収による改質領域」等の限定が付されている本件先行特許に係る発明の構成要件と,このような限定が付されていない本件発明1の「改質領域」との構成要件では,その解釈が異なるのは当然である。 そして,上記一覧表の記載は,本件先行特許に係る発明と本件発 明1が上記「要点」以外で一致することを示すものではない。 また,上記一覧表に基本特許に位置付けられる本件先行特許の記載があるからといって,審査官が,本件先行特許に係る発明との相違部分のみ審査を行うことはなく,本件発明1の「改質領域」が本件先行特許における「改質領域」と同様であると理解したり,「多光 子吸収によるもの」に限定されると理解したりすることはない。よって,上記一覧表の記載が審査官を欺くことにはならない。 したがって,本件発明1の「改質領域」が本件先行特許に係る発明の改質領域と同様に「多光子吸収によるもの」に限定され,また,本件発明1に基づく原告の権利行使が権利の濫用として許されない 旨の被告の上記主張は理由がない。 (ウ) ボイド(「ヴォイド」ないし「void」と表記されることもある。 以下同じ。)に係る被告の主張について被告は,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限られる旨主張するが,以下のとおり,ボイドは本 件発明 ることもある。 以下同じ。)に係る被告の主張について被告は,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限られる旨主張するが,以下のとおり,ボイドは本 件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれ,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されない。 a ボイドは「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれることボイドは,シリコンの単結晶であった固体が急激な温度上昇により, 溶融し,気化したものが,再固化する過程で生じた空間であり,まさに本件明細書1で記載されている「溶融後再固化した領域」(【0025】)の一部であるから,溶融処理領域に当たり,「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれる。 b 本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成 しないものに限定されないこと (a) 本件発明1は,特許請求の範囲において,ボイドの存否を構成要件として規定しておらず,本件明細書1の記載においても,ボイドの存否についての記載はないから,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」がボイドを形成しないものに限定解釈される理由はない。 (b) 被告は,原告が,特許第4703983号公報(乙62。以下「乙62公報」といい,乙62公報に記載された発明を「乙62発明」という。)に係る特許出願(特願2004-212059号。 「乙62出願」という。)の審査経過において,本件明細書1と同じ内容を有する特開2002-205180号公報(乙63。以下 「乙63公報」といい,乙63公報に記載された発明を「乙63発明」という。)につき,ボイドが形成されないと主張したとして,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,ボイド 63。以下 「乙63公報」といい,乙63公報に記載された発明を「乙63発明」という。)につき,ボイドが形成されないと主張したとして,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,ボイドを形成しないものに限定されると主張する。 しかしながら,乙62出願は本件特許1とは別の出願(後願)で あり,本件発明1の技術的範囲を定めるに当たり,乙62出願の出願経過を参酌すべき理由はない。 また,乙62発明は,本件発明1の原出願に係る発明の改良発明であるところ,本件特許1の出願時において,微小空洞(ヴォイド)は観察されていなかった。本件特許1の出願後,パルスピッチを大 きくすることにより微小空洞(ヴォイド)が観察されること(微小空洞(ヴォイド)が形成され,その後も残存すること),その条件において,より優れた切断が可能であることが考察され,乙62出願がされたものである。 これに対し,本件発明1は,パルスピッチを構成要件において規 定しておらず,乙62発明のようにボイドが形成され,その後も残 存するパルスピッチのものもその技術的範囲に含むものであることは明らかであり,本件発明1は微小空洞(ヴォイド)が残存しないものに限定されないことは当然である。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (c) 被告は,原告が,本件発明1の審査過程で,審査官からの通知 (乙49)に対する説明として提出した一覧表(乙51)の記載等から,本件発明1は微小空洞を形成しない発明であると主張する。 しかしながら,上記一覧表における「改質領域として溶融処理領域と微小空洞を形成する」との記載は,乙62発明の特徴に関する記載であって,本件発明1に関するものではないから,本件発明1 がこの記載により,微小空洞を形成しない発明と 質領域として溶融処理領域と微小空洞を形成する」との記載は,乙62発明の特徴に関する記載であって,本件発明1に関するものではないから,本件発明1 がこの記載により,微小空洞を形成しない発明と理解されるいわれはない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域において「溶融」が生じていること (ア) 少なくとも以下に示す5つの根拠から,被告製品によるレーザ加工領域は溶融によって形成されているといえる。 ① レーザ加工領域の温度がシリコンの融点を超えること② 被告製品は,熱的加工が特徴のナノ秒レーザを用いていること③ レーザ加工領域を撮影したSEM(走査型電子顕微鏡)写真におい て溶融痕が観察されること④ 溶融が生ずることを示すステルスダイシングの技術文献が数多く存在すること⑤ レーザ加工領域においてアモルファス及び多結晶が存在すること(ラマン分光法ないしラマン分光分析法(以下,単に「ラマン分光分 析」という。)) (イ) ① レーザ加工領域の温度がシリコンの融点を超えることa シリコンの融点は,常圧時が最も高いが,その常圧時においても1687Kである(甲51,52,乙72)。 そして,スタンフォード大学の研究者(MarcJankowski,MartinM.Fejer)と原告の研究員(清田大樹,原佳祐)により令和2年2月28 日にオンラインで発刊された共同研究(「Numericalsimulationandvalidationofsubsurfacemodificationandcrackformationinducedbynanosecond-pulsedlaserprocessingin ionofsubsurfacemodificationandcrackformationinducedbynanosecond-pulsedlaserprocessinginmonocrystallinesilicon」J.Appl.Phys. 127,085106(2020)(甲51)。以下「甲51文献」という。)並びに大阪大学の大村悦二教授(以下「大村教授」ということが ある。)及び原告の研究員(福満憲志,熊谷正芳,森田英毅)による論文(「ナノ秒レーザによる単結晶シリコンの内部改質層形成機構の解析」日本機械学会論文集(C編)74巻738号(2008-2)212-218(甲27)。以下「甲27文献」という。)に記載されたシミュレーションによれば,被告製品によるレーザ加工領域の温度は,シ リコンの常圧時の融点である1687K(ケルビン)を超える。 したがって,被告製品によるレーザ加工領域において,当然シリコンウェハは溶融する。 b 甲51文献について甲51文献においては,同文献の「FIG.4.(b)」の赤い部分において シリコンウェハの融点を超えることが示されており,融点を超える領域の外縁については「FIG.4.(c)」に示されている。そして,被告製品によるレーザ加工領域は,「FIG.4.(c)」の領域を含むものである。したがって,甲51文献から,被告製品によるレーザ加工領域において,シリコンウェハの融点を超える温度になり,溶融が生じることは明ら かである。 c 甲27文献について甲27文献の「Fig.9(a)」及び「Fig.9(b)」においては,レーザ照射方向とは反対側に向けてシリコンウェハの融点より高い2000Kを超えた高温領域が広がっていることが示されて 献について甲27文献の「Fig.9(a)」及び「Fig.9(b)」においては,レーザ照射方向とは反対側に向けてシリコンウェハの融点より高い2000Kを超えた高温領域が広がっていることが示されている。また,同文献の「Fig.10」においては,シリコンウェハの融点を超える領域の分布 が時間経過とともに示されている。したがって,甲27文献から,被告製品によって形成される,同様のレーザ加工領域において,シリコンウェハの融点を超える温度になり,溶融が生じることは明らかである。 d 甲51文献及び甲27文献に対する被告の主張について 被告は,甲51及び甲27のシミュレーションが正確ではないから,被告製品によるレーザ加工領域において融点を超えるとは限らない旨の主張をするが,以下のとおり,レーザ加工領域が融点を超えないことを示す証拠を何ら提出しておらず,単に抽象的な主張をしているにすぎないから,同主張は理由がない。 (a) 甲51文献における仮説について被告は,甲51文献に示される知見が仮説であることを強調するが,科学論文における新たな知見は常に仮説であり,仮説に基づくシミュレーションと現実が整合していることを検証することにより仮説の正当性を確かめるのが理論研究である。 甲51文献は仮説に基づくシミュレーションにより仮説の正当性を検証したものであり,仮説であることを強調するのは意味がない。 (b) 被告製品における加工と,甲51文献及び甲27文献のシミュレーションにおける加工条件の違いについて被告は,パルス幅にレーザ光スポット断面積を乗じた値でパルス エネルギーの値を除することによってレーザ強度(ピークパワー密 度)を算出し,被告製品の実際のレーザ強度は甲51文献及び甲27文献のシミュレ ーザ光スポット断面積を乗じた値でパルス エネルギーの値を除することによってレーザ強度(ピークパワー密 度)を算出し,被告製品の実際のレーザ強度は甲51文献及び甲27文献のシミュレーションよりも低いから,被告製品では温度が融点を超えない旨の主張をする。 しかしながら,パルスエネルギーはむしろ被告製品の方が大きい。 また,レーザ光スポット断面積は集光半径に基づき算出されるとこ ろ,集光半径は焦点での大きさであり,それが問題となるのは加工の最初の瞬間だけである。温度上昇が始まって以降は,レーザ光源に近い方に吸収場所が移動し,焦点での集光半径よりもずっと大きな領域で吸収することになるから,被告が主張する程度の焦点での集光半径の大きさの違いは,高温領域が拡大する光吸収プロセスに おいて大きな相違にはならない。 加えて,シリコンウェハの内部加工をするに当たっては,一定以上のエネルギー密度を有するレーザ光を照射する必要があるが,被告製品も,加工できている以上は,当然,この必要エネルギー密度を超えるレーザ光を用いているはずである。 したがって,甲51文献及び甲27文献のシミュレーション結果と被告製品の実際の加工結果がかけ離れているわけではなく,被告の上記主張は理由がない。 (c) 甲51文献の計算機シミュレーションの計算式や計算モデルの誤りについて 被告は,甲51文献では,シリコンのバンドギャップエネルギーの式に誤りがあると指摘するが,この点は記述上の脱字にすぎず,シミュレーション自体は正しい式を入力して実施されている。 また,被告は甲51文献の計算のモデルが誤っていると主張するが,科学におけるシミュレーションで重要な物理現象のモデリング においては,「解析しようとする物理現象に対して相対的 施されている。 また,被告は甲51文献の計算のモデルが誤っていると主張するが,科学におけるシミュレーションで重要な物理現象のモデリング においては,「解析しようとする物理現象に対して相対的に寄与が小 さく,解析結果への影響が少ない要素を,如何に切り捨ててモデルを簡略化するか」が腕の見せ所である。被告の主張の多くは,甲51文献の著者が「解析結果に影響を与えない」と判断し,簡略化のためにあえて切り捨てた要素に係るものであり,甲51文献は合理的なモデリングをもとにシミュレーションをしたものである。 したがって,被告の上記主張はいずれも理由がない。 e 融点を超えても溶融したとはいえないとの主張について被告は,レーザ加工領域の温度が融点を超えても溶融しない旨主張するが,シリコンにレーザ照射した場合に,融点を超えれば,昇華ではなく溶融することは技術常識であり,被告の同主張は理由がない。 また,固体のシリコン内部で体積が減少する余地がないから溶融しないとの被告の主張については,空間があるから体積が減るのではなく,体積が減って空間ができるのであるから,溶融を否定する根拠とはならない。なお,シリコンが溶融して体積が減少したことにより形成された空間には,真空ないし気体が存在すると考えられる。 さらに,被告は,仮に固体シリコン内部が溶融したとすれば,2種類の界面(液体シリコンと固体シリコンとの界面及び体積減少分の空間と液体シリコンとの界面)が形成される必要があるから,そのような2つの界面を形成するエネルギーを要しない,固体のままであり続ける可能性があるとして,シリコンの融点に達したとしても,当該箇 所が溶融すると直ちにはいえないと主張するが,そのような現象がステルスダイシング加工において生ずることの い,固体のままであり続ける可能性があるとして,シリコンの融点に達したとしても,当該箇 所が溶融すると直ちにはいえないと主張するが,そのような現象がステルスダイシング加工において生ずることの証拠は何も示されておらず,同主張は理由がない。 (ウ) ② 被告製品は,熱的加工が特徴のナノ秒レーザを用いていること本件明細書1及び2における実施例で用いられるレーザも,被告製品 において用いられるレーザも,パルス幅がナノ秒オーダー(桁)の「ナ ノ秒レーザ」と呼ばれるレーザである(本件明細書1の【0021】及び本件明細書2の【0019】にそれぞれ「パルス幅:30ns」との記載がある。また,被告は,被告製品は,100nsのオーダー(桁)であると主張している。)。 そして,一般的に微細加工に用いられるレーザのパルス幅としては, ナノ秒,ピコ秒,フェムト秒があり,1ナノ秒は10-9 秒,1ピコ秒は10- 12 秒,1フェムト秒は10-15 秒である(甲68)。ナノ秒とフェムト秒では6桁も異なり,フェムト秒レーザの場合,パルス幅が極めて短いため,短い時間に大きなエネルギーを与える特性を持つ。このようなパルス幅の違いに起因して,フェムト秒レーザが非熱加工であるのに対し,ナノ 秒レーザによる加工は熱的加工であって,材料を溶融させることが特徴であることが広く知られている(甲53ないし55,69)。 この点からも,被告製品のナノ秒レーザを用いて形成されたレーザ加工領域において,溶融が生じることは明らかである。 (エ) ③ レーザ加工領域を撮影したSEM(走査型電子顕微鏡)写真にお いて溶融痕が観察されること「SD加工メカニズム,SD層の実態」と題するパワーポイント資料(甲23)のスライド6には,1064nmないし15 域を撮影したSEM(走査型電子顕微鏡)写真にお いて溶融痕が観察されること「SD加工メカニズム,SD層の実態」と題するパワーポイント資料(甲23)のスライド6には,1064nmないし1550nmの各波長のレーザを用いたシリコンのレーザ加工領域の加工痕の写真が掲載されている。いずれの写真においても,液体状のシリコンが凝固したと見 るべき形状の加工痕が示されており,被告製品による加工結果を示す写真(写真④)においても,ボイドよりも上方に位置する領域(以下「ボイド上方領域」という。)に液体の噴出痕が分かりやすく形成されている。 (オ) ④ 溶融が生ずることを示すステルスダイシングの技術文献が数多く存在すること a 被告製品による加工を含むシリコンのステルスダイシング加工にお いて,レーザ加工領域に溶融,再凝固が生じていることを支持する文献は,数多く存在している。 それらのうち,甲51文献及び甲27文献のほか,オランダTwente大学Verburg 教授他共著による「シリコンにおけるレーザにより誘起される内部改質領域における結晶構造」と題する論文(「Crystal structureoflaser-inducedsubsurfacemodificationsinSi」 Appl.Phys. A(2015)120:683-691(甲29)。以下「甲29文献」という。)並びに熊本大学下村教授,大村教授及び原告の研究員奥間らの共著論文「ステルスダイシングにおけるシリコンウェハの内部のボイド形成の分子動力学研究」(「Molecular-DynamicsStudyofVoid-Formation insideSiliconWafersinStealthDicing」 201 動力学研究」(「Molecular-DynamicsStudyofVoid-Formation insideSiliconWafersinStealthDicing」 2012 J. Phys.: Conf.Ser. 402 012044(甲70)。以下「甲70文献」という。)では,いずれも,レーザ加工領域において加熱による溶融と再凝固が生じるという説明が合理的であると考察されている。 b 他方で,前記aの一連の研究とは異なるような,溶融を否定するこ とを主題とした研究論文は,被告から提出されていない。 被告は,「ElectronmicroscopyofvoidsinSiformedbypermeablepulselaserirradiation」と題する論文(Microscopy(2017).66:328-336(乙96)。以下「乙96文献」という。)において,アモルファスシリコンや多結晶シリコンの存在については何ら言及がないと主 張する。しかしながら,同じ著者により,同じ研究に基づいて,翌年に同じ学会誌に発表された論文があり(Microscopy(2018).67:30-36(甲59)。以下「甲59文献」という。),そこでは,多結晶及び非晶質の存在についての考察がある。乙96文献は,上記文献と主題が違うことから,アモルファスシリコンや多結晶シリコンの存在につい て言及がなかったものである。 また,被告は,甲59文献の一連の研究論文(PhilosophicalMagazine(2019).99:1849-1865(乙107)。以下「乙107文献」という。)において,レーザ照射中はシリコンの結晶性が保たれていた旨の記載がされていると主張する。しかしながら, agazine(2019).99:1849-1865(乙107)。以下「乙107文献」という。)において,レーザ照射中はシリコンの結晶性が保たれていた旨の記載がされていると主張する。しかしながら,乙107文献の「Figure 1.」において示される「④heavilycompressedregion(DS)」 領域周辺には多結晶構造及びアモルファス構造が存することが,甲59文献において示されている。これは,溶融の痕跡であり,乙107文献は,レーザ加工領域における溶融を否定するものではない。なお,乙107文献におけるボイド上方領域に関する記載は同文献の主眼ではないから,ボイド上方領域の分析について,同文献の証拠価値は低 い。 (カ) ⑤ レーザ加工領域においてアモルファス及び多結晶が存在すること(ラマン分光分析)a レーザ照射により溶融,再凝固したシリコンの領域においては,多結晶又はアモルファスが形成される場合があることが知られており, レーザ加工領域において多結晶又はアモルファスが存在することが確認されれば,同領域周辺において溶融,再凝固が生じたことの有力な根拠となる。 そして,多結晶又はアモルファスの存否を確認する方法としては,ラマン分光分析が適切である。ラマン分光分析とは,物質に光を照射 することにより発生する散乱光のうち,ラマン散乱光という物質の構造情報を含んだ光を調べることにより,結晶構造を特定することができる分析方法である。 原告は,レーザ加工領域について,自らラマン分光分析を実施し,その結果は,「多結晶が存在する」,「アモルファスの存在が示唆される」 というものであった(甲32。以下,この分析を「原告によるラマン 分光分析」ということがある。)。さらに,原告は,第三者機関 「多結晶が存在する」,「アモルファスの存在が示唆される」 というものであった(甲32。以下,この分析を「原告によるラマン 分光分析」ということがある。)。さらに,原告は,第三者機関である株式会社東レリサーチセンター(以下「東レリサーチセンター」という。)に依頼して,2回目のラマン分光分析を実施し,東レリサーチセンターからは,アモルファスが存在することが報告された(甲36。 以下,この分析を「東レリサーチセンターによるラマン分光分析」と いうことがある。)。 このように多結晶及びアモルファスが確認されたことは,レーザ加工領域において溶融,再凝固が生じた有力な根拠である。 b 被告は,東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果について,アモルファスが存在したとしてもごく微量であると指摘するが, 母材が単結晶シリコンであり,また,溶融後のシリコンの大部分が単結晶になるのだから,単結晶シリコンと比べてアモルファスシリコンが微量なのは当然であり,意味のない指摘である。 シリコンは,アモルファス化することが非常に難しい物質であり,レーザ照射を用いた極端に高速の冷却速度でようやくアモルファス化 できる物質であることが知られており(甲58),単結晶シリコンにレーザ照射した場合に溶融,再凝固した領域が単結晶として結晶化すること(エピタキシャル成長)も知られている。したがって,レーザ加工領域において,アモルファスが一部に存在することは,溶融後再凝固した領域の特徴そのものである。 c 被告は,機械的な研削等,溶融以外の原因によってもアモルファスシリコンが形成されると主張する。 しかしながら,原告は,東レリサーチセンターに対し,研磨によるアモルファスが生じないように,研磨しない試料の分析を依頼したものであ 外の原因によってもアモルファスシリコンが形成されると主張する。 しかしながら,原告は,東レリサーチセンターに対し,研磨によるアモルファスが生じないように,研磨しない試料の分析を依頼したものである。 また,被告が溶融以外の原因の根拠として示す文献(乙72)は, 圧力誘起構造転移という現象についてのものであって,ステルスダイシングどころか,レーザ加工についての文献ですらない。ステルスダイシング加工における改質領域又は被告製品によるレーザ加工領域におけるアモルファスが圧力誘起構造転移という現象により形成されたという文献上の根拠は皆無である。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (キ) レーザ加工領域において単結晶性が保たれているとの被告の主張についてaEBSD(ElectronBackScatterDiffraction,電子線後方散乱回折。以下「EBSD」という。)の 観察結果について被告は,EBSDのIPFマップ(逆極点図方位マップ)(乙46の2,乙101)において,レーザ加工領域が略同色であることを根拠に,同領域において多結晶又はアモルファスが存在しない旨主張する。 しかしながら,ステルスダイシング加工した試料においては,試料 表面に凹凸が形成されているところ,試料表面に凹凸がある場合,凹凸の部分はIPFマップ上では黒く表示され,信号が得られないことがある。 また,EBSDは,試料が結晶構造を有することを前提に,結晶方位の違いを評価するための分析手法であるため,結晶構造を持たない ゆえに結晶方位のデータを取得できない非晶質(アモルファス)の箇所も,IPFマップ上では黒く表示される。 被告が提出するEBSDのIPFマップ(乙46の2,101)では,黒く表示された い ゆえに結晶方位のデータを取得できない非晶質(アモルファス)の箇所も,IPFマップ上では黒く表示される。 被告が提出するEBSDのIPFマップ(乙46の2,101)では,黒く表示された部分があり,当該部分の多結晶又はアモルファスの存在は否定されない。 したがって,本件においてEBSDのIPFマップを用いることに は根本的な問題があり,被告の上記主張は理由がない。 b 電子線回折の観察結果について被告は,電子線回折の観察(乙46の1)により,ボイド及びボイド上方領域のそれぞれ「3箇所」について,結晶性が保たれていることを確認したと主張するが,単に「3箇所」を選んで測定してみたら そこは単結晶だったという結果を示すにすぎず,溶融を否定する根拠とはならない。 c 単結晶の存在が溶融を否定する根拠とならないこと被告製品により形成されるレーザ加工領域は,周囲をシリコン単結晶で囲まれる領域において溶融,再凝固するものである。そして,単 結晶と接する領域が溶融,再凝固する場合において,隣接する単結晶シリコンを種結晶として同じ構造の単結晶が成長する性質が広く知られている。 このように,単結晶シリコンにレーザ照射した場合に溶融,再凝固した領域が,上記現象により単結晶として結晶化すること(エピタキ シャル成長)は,技術常識ともいうべきであって,レーザ加工領域において単結晶が確認されたことをもって,溶融を否定する根拠とはならない。 なお,被告は,「(単結晶から)単結晶に復元」した領域は,本件各発明の「改質領域」(「溶融処理領域」)には当たらないと主張するが, このような領域も,①溶融後再固化した領域及び②相変化した領域(本件明細書1の【0025】及び本件明細書2の【0017】)であるから 質領域」(「溶融処理領域」)には当たらないと主張するが, このような領域も,①溶融後再固化した領域及び②相変化した領域(本件明細書1の【0025】及び本件明細書2の【0017】)であるから,本件各発明における「改質領域」ないし「改質スポット」に該当することは明らかである。 (ク) 被告の主張する「溶融」によらない加工メカニズムについて a そもそも,被告は,被告製品においてレーザ加工領域が形成される メカニズムについて,被告が想定するメカニズムこそが正しいとまで主張する趣旨ではないと主張している。これは,正しいメカニズムは分からないというものであるから,根拠のない主張であり,被告は,溶融以外の合理的なメカニズムを示せていない。 b 被告は,大村教授の「レーザによる熱加工」と題する論文 (J.HTSJ.Vol.45, No.193(2006)43-48(乙41)。以下「乙41文献」という。)を根拠として,「溶融」によらないメカニズムを主張するとしているが,そもそも乙41文献は溶融を否定するものではない。 すなわち,乙41文献は,加工対象物の溶融を否定することを目的とした研究ではなく,レーザによる熱加工に関し,熱伝導や熱応力, 熱流体などの解析・シミュレーションにより,加工現象を理解し,現象を支配する主要因や制御因子を究明するという研究の一部を紹介するものであって,従前の研究と異なることを主張する趣旨の文献ではない。 そして,乙41文献で参考文献として挙げられている,大村教授と 原告従業員の共著による「ナノ秒レーザによるシリコンへの内部改質層の形成メカニズム」と題する論文(J. Achiev. Mater. Manuf. Eng.,17(2006), 381-384.(甲56)。以下「甲5 る「ナノ秒レーザによるシリコンへの内部改質層の形成メカニズム」と題する論文(J. Achiev. Mater. Manuf. Eng.,17(2006), 381-384.(甲56)。以下「甲56文献」という。)及び大村教授と原告従業員の共著による「ステルスダイシングにおける内部改質層形成機構の解析」と題する論文(第66回レーザ加工学会講演 論文集,(2006)19-22.(甲57)。以下「甲57文献」という。)では,それぞれ乙41文献とほぼ同じ分析が記載されており,改質層において溶融,再凝固が生ずるという考察が行われている。 なお,シリコンは圧力が大きいほど融点が下がるため,甲56文献及び甲57文献における考察中の「加熱中は強い圧縮応力のために (溶融が)抑制される」という事項は誤りであると考えられるが,そ の点を除けば,甲56文献,甲57文献の考察に不合理な点はない。 また,大村教授らによる甲27文献は乙41文献より後に発表された論文であるが,両者は同じ研究に基づく論文であり,改質層においてシリコンの融点を超えることが示され,溶融,再凝固が生ずるという考察が行われている。 したがって,乙41文献は,甲56文献,甲57文献及び甲27文献と同じ現象を「溶融」という言葉を使わずに説明しているにすぎず,溶融を否定するものではない。 c 被告は,乙41文献の「熱衝撃波」という文言について,これが溶融を伴わない衝撃波であるかのような主張をする。 しかしながら,乙41文献を含む前記bの大村教授執筆に係る各論文で用いられている「熱衝撃波」は,高温領域がレーザ入射側に移動していく現象のことを意味しており,甲27文献では,「熱衝撃波」が高温領域であることが明示的に定義されている。 したがって,乙41文献 文で用いられている「熱衝撃波」は,高温領域がレーザ入射側に移動していく現象のことを意味しており,甲27文献では,「熱衝撃波」が高温領域であることが明示的に定義されている。 したがって,乙41文献の「熱衝撃波」という文言は,溶融を伴わ ない衝撃波を指すものではない。乙41文献の「Fig.2」では,改質層の温度がシリコンの融点を超える2000K超となることが示されているが,この高温領域を「熱衝撃波」と呼んでいるのである。すなわち,熱衝撃波が通過する領域は,2000Kを超える高温となり,シリコンの融点を超えるから,当然溶融するものであり,被告の上記主 張は理由がない。 d 被告は,E. G. Gamaly 他による「Generationofhighenergydensitybyfs-laser-inducedconfinedmicroexplosion(フェムト秒レーザが誘起した,閉じ込められたマイクロ爆発による,高エネルギー密度の生成)」と題する論文(NewJ. Phys. 15(2013)025018(乙70)。 以下「乙70文献」という。)を引用して,ボイドがマイクロ爆発によ って形成されると主張する。 しかしながら,乙70文献は,タイトルからも明らかなように,フェムト秒レーザに関する論文であって,フェムト秒レーザを透明材料であるシリカに対して照射することが記載されており,被告製品のようなナノ秒レーザによるシリコンの加工とは何の関係もない別用途の 加工について説明されているものである。 前記(ウ)のとおり,フェムト秒レーザを用いた加工は非熱加工に特徴があるため,それにより溶融が生じないことは当たり前である。そもそも,フェムト秒レーザでマイクロ爆発を生じさせるならば,非熱加工であ 前記(ウ)のとおり,フェムト秒レーザを用いた加工は非熱加工に特徴があるため,それにより溶融が生じないことは当たり前である。そもそも,フェムト秒レーザでマイクロ爆発を生じさせるならば,非熱加工であるため,被告が主張する前記cの「熱衝撃波」は生じない。 また,甲51文献のとおり,レーザ照射によるボイドとボイド上方領域の形成は,パルスレーザの照射中に,温度上昇によってシリコンの吸収係数が増大し,溶融領域が拡大・移動するからこそ説明可能である。これに対し,フェムト秒のパルスレーザによるマイクロ爆発が生じたとしても,被告の主張する加工メカニズムによっては,その後 にボイドとボイド上方領域が形成されることについての説明がつかない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 e 被告は,自らの社内実験結果(乙98)を用いて,原告の主張するメカニズムが誤りであると主張するが,社内実験のみに基づいて文献 上の根拠がない知見を創作するものであって,その主張は不合理である。 また,被告は,上記社内実験結果のボイドがウェハ下端近傍に形成された事例について,ボイドはウェハ下端に通ずるため,ボイド内にあったシリコン原子は下端から放出されるはずであると主張する。し かしながら,レーザ加工領域が形成される場合において,甲51文献 に示されるメカニズムによれば,溶融領域は徐々にレーザ光が入射する表面の方向に移動していき,このときレーザ入射側に広がる溶融領域の体積が小さくなるため,レーザ入射側にシリコンが縮むことにより,シリコン原子がレーザ入射側に引き込まれる。したがって,シリコンは,むしろレーザ入射側に引き上げられるのであり,下端に放出 されるという説明は不合理である。この場合,極めて質量の小さな領域での現象であるた がレーザ入射側に引き込まれる。したがって,シリコンは,むしろレーザ入射側に引き上げられるのであり,下端に放出 されるという説明は不合理である。この場合,極めて質量の小さな領域での現象であるため重力の影響は無視できるし,また,液体シリコンには表面張力が働くことから,シリコンが下端に放出されるとは考えられない。 以上のとおり,被告の上記主張は,いずれも理由がない。 ウ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」及び「改質スポット」に該当すること(ア) 被告製品によるレーザ加工領域が「溶融処理領域」に該当すること前記イのとおり,被告製品によるレーザ加工領域においては溶融が生じているから,同領域は,前記ア(ア)の①「一旦溶融後再固化した領域, 溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも一つ」に該当する。 また,前記イで検討したところからすれば,被告製品によるレーザ加工領域が,前記ア(ア)の②「相変化した領域や結晶構造が変化した領域」及び③「単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別 な構造に変化した領域」,「例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域」にも該当することも明らかである。 したがって,被告製品によるレーザ加工領域は,前記ア(ア)の「溶融処 理領域」であり,本件発明1の「改質領域」及び「改質スポット」に該 当する。 (イ) 「改質領域」ないし「改質スポット」の形成過程における多光子吸収の寄与についてa 前記ア(イ)のとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は多光子吸収が支配的に寄与して形成されるも 「改質領域」ないし「改質スポット」の形成過程における多光子吸収の寄与についてa 前記ア(イ)のとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない から,被告製品においてレーザ加工領域が多光子吸収の支配的寄与によって形成されるかどうかは,前記(ア)の結論に影響しない。 b 仮に,「改質領域が多光子吸収により形成される」等の本件明細書1の記載を参酌し,「改質領域」ないし「改質スポット」に何らかの限定解釈をするとしても,以下のとおり,被告製品によるレーザ加工領域 は「改質領域」ないし「改質スポット」に該当する。 (a) 本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」を「多光子吸収が支配的に寄与して形成されるもの」と解釈するのは相当でなく,本件明細書1の実施形態が除外されないような解釈を採るべきであって,例えば,「多光子吸収(2光子吸収)が初期吸収において集光 点で有意に発生する条件でレーザ照射した結果,形成される改質領域(溶融処理領域)」又は「多光子吸収(2光子吸収)が初期吸収において集光点で有意に発生した結果,形成される改質領域(溶融処理領域)」であれば足りると解釈すべきである。 そうすると,被告製品によるレーザ加工領域は,初期吸収におい て集光点で本件明細書1に記載された実施形態よりも多くの2光子吸収が発生しているから(甲50),「改質領域」ないし「改質スポット」に該当する。 (b) 被告製品によるレーザ加工領域が本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」に該当するかどうかについては,本件明細書1 の記載と出願時の技術水準に基づき判断されるべきである。 そして,本件発明1の実施形態の波長1064nmのレーザ照射(本件 質スポット」に該当するかどうかについては,本件明細書1 の記載と出願時の技術水準に基づき判断されるべきである。 そして,本件発明1の実施形態の波長1064nmのレーザ照射(本件明細書1の【0027】)は,シリコンウェハの表面を透過し,内部の集光点付近のレーザ強度の強い領域を溶融することから,本件発明1の出願時の技術水準に基づき,多光子吸収により溶融処理領域が形成されるものと理論的に分析されていた。被告製品で使用 する波長1100nmのレーザ照射は,上記実施形態の1064nmよりシリコンウェハを透過する割合の大きい波長を有するものであるから,上記実施形態におけるのと同等以上に,シリコンウェハの表面を透過し,内部の集光点付近のレーザ強度の強い領域を溶融する。したがって,本件発明1の出願時の技術水準によれば,被告 製品においては,多光子吸収によりレーザ加工領域が形成されると推認されることになる。 そうすると,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」について,「改質領域が多光子吸収により形成される」等の限定解釈をしたとしても,本件発明1の実施形態と実質的に同じ条件で被告 製品により形成されるレーザ加工領域は,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」に該当する。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について前記ア(ウ)のとおり,本件発明1において,ボイドは「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれ,また,「改質領域」ないし「改質スポット」 はボイドを形成しないものに限定されないから,被告製品によるレーザ加工領域は,ボイドも含めて「改質領域」ないし「改質スポット」に該当する。 (2) 構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズについて ア 告製品によるレーザ加工領域は,ボイドも含めて「改質領域」ないし「改質スポット」に該当する。 (2) 構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズについて ア 「集光点の位置で改質スポットを形成させる」の意義 構成要件1Dの「集光点」とは,レンズの焦点ではなく「レーザ光が集光した箇所」であるところ(本件明細書1の【0079】),この集光点は,光子の吸収係数の温度依存性のために,実際には当初の位置から時間とともにレーザ光が入射する表面の方向にミクロン単位で移動するものである(甲51文献の「FIG.2」)。 本件明細書1に記載されるとおり,本件発明1は,シリコンウェハの表面を削ったり溶かしたりするのではなく,シリコンウェハの内部の集光点の位置において改質領域を形成し,この改質領域を切断の起点とするという点がその技術的な特徴である。このような本件発明1の技術的特徴を考えれば,「集光点の位置で」とは,シリコンウェハの表面ではなく,シリコ ンウェハの内部における「集光点の位置において」という意味であり,その「位置において」とは,ミクロン単位の点ではなく,シリコンウェハ全体から見た特定の位置(ミクロン単位でみた場合は,集光点近傍の領域)を意味すると解される。 イ被告製品が「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズ を備えること被告は,被告製品によるレーザ加工領域の構造を示した原告作成に係る資料(甲23のスライド5)において,加工の開始点である「狭義の集光点」と示された点がボイド及びボイド上方領域の下方に示されているとして,被告製品の集光用レンズが「集光点の位置で前記改質領域を形成させ」 ない旨主張する。 しかしながら,上記資料において,ボイドは数μm 点がボイド及びボイド上方領域の下方に示されているとして,被告製品の集光用レンズが「集光点の位置で前記改質領域を形成させ」 ない旨主張する。 しかしながら,上記資料において,ボイドは数μm の長さ,ボイド上方領域は約20μm ほどの長さであるところ,「狭義の集光点」として示されている位置は,ボイドの下部から数μm しか離れていない位置にある。 前記アのとおり,本件発明1の「集光点」は,レンズの焦点ではなく, 実際には当初の位置から時間とともにレーザ光が入射する表面の方向に移 動するものであることを踏まえると,被告製品における「改質スポット」であるボイド及びボイド上方領域は集光点の位置に形成されたものといえる。 したがって,被告製品は「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズを備えるものであり,被告の上記主張は理由がない。 (3) 構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」についてア 「切断の起点となる改質領域」の意義(ア) 「起点」とは,「ものごとの始めるところ」を意味する(甲19。広辞苑第5版)。そして,本件発明1は,改質領域から割れを生じさせることによりシリコンウェハを切断するものであるから,「切断の起点となる 改質領域」とは,「改質領域」を「起点」として割れを発生させ,これにより「切断」することを指すものである。 (イ) 本件明細書1の記載(【0024】,【0031】)から明らかなとおり,本件発明1における「切断」は,「改質領域形成」,「割れの発生」,「表面への割れの到達」という,一連の割れの進展を含む工程のことをいう。 被告は,この一連の工程を,第1段階の工程である「割れの発生」と第2段階の工程である「切断」とに分けて,第2段階の工程のみが本件発明1の「切断」に 一連の割れの進展を含む工程のことをいう。 被告は,この一連の工程を,第1段階の工程である「割れの発生」と第2段階の工程である「切断」とに分けて,第2段階の工程のみが本件発明1の「切断」に当たると主張するが,そのような理解は本件明細書1において説明されていないから,同主張は誤りである。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「切断の起点と なる改質領域」に該当すること被告製品は,シリコンウェハの内部にレーザ加工領域を形成し,レーザ加工領域を起点として生ずる亀裂によりシリコンウェハを切断するレーザ加工装置である。すなわち,被告製品において,レーザ加工領域がなければ,前記ア(イ)の一連の工程である「切断」は始まらないのであるから,レ ーザ加工領域は当然「切断の起点」となるものである。 したがって,シリコンウェハをチップに分割する前にレーザ加工領域を除去しているかどうかにかかわらず,被告製品により形成されるレーザ加工領域は「切断の起点となる改質領域」に該当する。 (4) 構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部についてア 「集光点を」「移動させる」の意義 (ア) 本件発明1-1の構成要件1E及び本件発明1-2の構成要件1Hによれば,「パルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部」(構成要件1E)は,「前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」(構成要件1H)ものとして規定されていると理解できる。 そして,構成要件1Hの「少なくとも1つの」という文言から明らかなとおり,載置台と集光用レンズの移動に関して,次の3つの態様のいずれもが,構成要件1Eの「切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる」に なくとも1つの」という文言から明らかなとおり,載置台と集光用レンズの移動に関して,次の3つの態様のいずれもが,構成要件1Eの「切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる」に含まれる。 ① 載置台のみを移動させ,集光用レンズを移動させない。 ② 集光用レンズのみを移動させ,載置台を移動させない。 ③ 載置台及び集光用レンズの双方を移動させる。 (イ) 構成要件1Eの「切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる」が,前記①の載置台のみを移動させ,集光用レンズを移動させない構成を含むことは,集光点の移動に関する本件明細書 1の記載(【0009】,【0015】,【0042】,【0047】,【0048】及び【0071】)からも明らかである。 イ被告製品が「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部を備えること被告製品は,ほぼ一定の速度で,カッティングテーブル(構成要件1Bの「載置台」に相当)をX軸方向に移動させることにより,レーザ集光点 を,シリコンウェハの内部に位置させた状態で,切断予定ラインに沿って 移動させる。そして,一方向の加工ラインの加工を全て終了した後,θ軸方向にカッティングテーブルを90度回転させ,更にレーザ加工を行う(構成⑪参照)。 したがって,被告製品は,載置台のみを移動させ,集光用レンズを移動させない方法(前記ア(ア)の①)により,「切断予定ラインに沿ってパルス レーザ光の集光点を直線的に移動させる」ものであり,構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部を備えるものである。 (5) 小括前記(1)ないし(4)によれば,被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張)記載の構成を備えるものであって,本件発明1-1の構成要 させる」機能を有する制御部を備えるものである。 (5) 小括前記(1)ないし(4)によれば,被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張)記載の構成を備えるものであって,本件発明1-1の構成要件1A, 1D,及び1Eをいずれも充足する。 そして,前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が本件発明1-1のその余の構成要件を充足することは争いがないから,被告製品は本件発明1-1の技術的範囲に属する。 (被告の主張) (1) 構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」についてア 「改質領域」及び「改質スポット」の意義(ア) 「改質領域」及び「改質スポット」が「溶融処理領域」及び「溶融処理スポット」を意味すること 本件明細書1によれば,加工対象物がシリコンウェハの場合の「改質領域」とは,「溶融処理領域」である。また,「改質スポット」が集まったものが「改質領域」である以上,「改質スポット」は,「溶融処理スポット」である。 そして,本件明細書1の記載によれば,「溶融処理領域」とは,「一旦 溶融後再固化した領域」,「溶融状態中の領域」及び「溶融から再固化す る状態中の領域」のうち少なくともいずれか一つを意味するということは明白である(【0025】)。 (イ) 「改質領域」ないし「改質スポット」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されること以下のとおり,本件明細書1の記載から,本件発明1の「改質領域」 ないし「改質スポット」は,多光子吸収によって形成されるもの,すなわち,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定される。 a 本件明細書1等の記載に基づく解釈について原告は,「溶融処理領域」の定義が本件明細書1の【0025】に記載されていると主 すなわち,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定される。 a 本件明細書1等の記載に基づく解釈について原告は,「溶融処理領域」の定義が本件明細書1の【0025】に記載されていると主張するが,当該段落には「加工対象物の内部は多光 子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。」との記載がある。したがって,本件明細書1における溶融処理領域の定義上,「溶融処理領域」は多光子吸収によって形成されるものに限定される。 他方で,本件明細書1には,「単光子」,「1光子」の語は一度も登場 しない。このことからも,「溶融処理領域」が多光子吸収によって形成されること及び「溶融処理領域」が単光子吸収(1光子吸収)によって形成されるものではないことは明白である。 本件明細書1の実施例において,「溶融処理領域」は,「多光子吸収により形成」されるものとして明示されている(【0018】,【003 0】)。さらに,本件明細書1の実験の記載(【0026】ないし【0031】)は,特許第3408805号に係る乙43公報の実験の記載(【0038】ないし【0042】)と実質的に等しいところ,特許第3408805号の現在の請求項1では「前記加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成し」との記載がされている。したがっ て,これらの記載に基づいても,「溶融処理領域」(「改質領域」)は 「多光子吸収により」形成されるものと解される。 b 溶融処理領域の形成過程に関する技術常識について多光子吸収は古くから知られている現象であり,多光子吸収に関する当業者の理解に関し,本件特許1の出願時と現在との間において,原告の主張するような変遷はない。したがって,この点に技術常識の 変遷 多光子吸収は古くから知られている現象であり,多光子吸収に関する当業者の理解に関し,本件特許1の出願時と現在との間において,原告の主張するような変遷はない。したがって,この点に技術常識の 変遷があったことを前提とする原告の主張は失当である。 また,仮に原告の主張に従ったとしても,本件発明1の出願時においては,本件発明1の溶融処理領域の形成が多光子吸収による現象と説明されてきたというのであるから,本件明細書1に記載された溶融処理領域が意味するところについては,出願時にされていた説明に基 づき,多光子吸収により形成されたものと解釈されるべきである。 c 出願経過の参酌(包袋禁反言)について(a) 本件先行特許は,原告が出願した特許群の中で基本特許に位置付けられているものである(乙51)。 一方の特許と他方の特許とが密接な関係にある場合には,その技 術思想は基本的に共通するものと考えられるところ,少なくとも両者に共通する発明の基本的部分については,一方の特許で生じた禁反言の影響が,他方の特許の権利範囲解釈に影響を及ぼすものといえる。 本件先行特許の審査過程や無効審判事件において,原告は,意見 書等により,本件先行特許に係る発明と先行技術との重要な相違点として,本件先行特許に係る発明においては加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成することを述べていた。 このように,原告が,本件先行特許の審査経過等において,加工対象物の内部に形成される改質領域が多光子吸収によらないものを 否定し,多光子吸収によるものと主張した以上,禁反言の原則によ り,多光子吸収によらないものは本件先行特許の権利範囲には含まれず,改質領域は多光子吸収によるものに限定解釈されるのが相当である。 そして,本件発明1の権 張した以上,禁反言の原則によ り,多光子吸収によらないものは本件先行特許の権利範囲には含まれず,改質領域は多光子吸収によるものに限定解釈されるのが相当である。 そして,本件発明1の権利範囲解釈に当たっては,上記のとおり,本件先行特許の審査経過等が考慮されるべきであり,少なくとも発 明の基本的部分に関しては,本件先行特許で生じた禁反言の効力が及ぶと解される。 したがって,本件発明1の「改質領域」は,禁反言の効力により,多光子吸収によるものに限定解釈されるべきである。 (b) 本件発明1の審査過程において原告が提出した一覧表(乙51) には,「要点」として各特許出願の重要な点が記載されており,本件先行特許に係る発明については,「SDに関する基本特許出願(※無効審判において半導体ウエハに限定)」と記載されていた。 原告は,本件先行特許に係る発明について,あえて「無効審判において半導体ウエハに限定」と説明していることから明らかなよう に,他の構成要件,例えば「改質領域」については,本件発明1と何ら異ならないものとして説明しているといえる。 そうすると,本件先行特許に係る発明の改質領域が「多光子吸収によるもの」に限定されている以上,本件特許1の改質領域も当然に「多光子吸収によるもの」に限定されると説明していると理解さ れる。 また,原告は,上記一覧表において本件先行特許を「基本特許」と記載することにより,本件先行特許に係る発明が最も広い権利範囲を有すると説明していたのであり,その最も広い権利範囲の発明ですら,「改質領域」が「多光子吸収によるもの」に限定されている 以上,原告は,本件発明1における「改質領域」についても「多光 子吸収によるもの」に限定されると説明していると理解される。 ,「改質領域」が「多光子吸収によるもの」に限定されている 以上,原告は,本件発明1における「改質領域」についても「多光 子吸収によるもの」に限定されると説明していると理解される。 このように,原告が,審査官をして,本件発明1の「改質領域」が「多光子吸収によるもの」に限定されるかのように思わせる言動をした以上,包袋禁反言の法理により,本件発明1の「改質領域」は,多光子吸収によって形成されるものに限定されるべきである。 あるいは,原告の本件発明1の審査過程における上記の対応は,「改質領域」について単光子吸収を含むものに拡張したことやその理由について説明しないまま,審査官を欺いて特許を得たものであるといえる。このような原告の対応に鑑みれば,本件発明1に基づく原告の権利行使は,権利の濫用として,認められるべきではない。 (ウ) ボイドは「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれず,「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されること以下のとおり,本件発明1はボイドを形成しないものを対象としているのは明らかであり,また,ボイドは「改質領域」ないし「改質スポッ ト」には含まれない。 a ボイドは「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれないことレーザ加工領域のボイドは,シリコンが存在しない空隙であり,仮にシリコンが内部に存在したとしても,気相のシリコンである。よって,ボイドは,前記(ア)の「一旦溶融後再固化した領域」,「溶融状態中 の領域」及び「溶融から再固化する状態中の領域」のいずれにも当たらないから,「溶融処理領域」に該当せず,「改質領域」ないし「改質スポット」には含まれない。 b 本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定される いずれにも当たらないから,「溶融処理領域」に該当せず,「改質領域」ないし「改質スポット」には含まれない。 b 本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されること (a) 原告は,乙62出願の過程において,本件明細書1と内容が同一 である乙63公報を根拠に,同公報により開示された乙63発明ではボイドが形成されず,この点が乙62発明と乙63発明との相違点である旨を主張していたものである。 (b) 原告は,本件発明1の審査過程で,本件発明1と原告が出願する他の類似特許群との違いを説明するために,一覧表(乙51)を提 出し,当該一覧表において,乙62発明の特徴を「ウエハ内部に改質領域として溶融処理領域と微小空洞を形成する」と記載していた。 この記載から,原告は,本件発明1の審査過程において,溶融処理領域と微小空洞(ボイド)は別物であると説明していたといえる。 また,上記一覧表の記載内容からは,乙62発明と対比される本 件発明1はボイドを形成しない発明であると理解される。 (c) 以上の経過によれば,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,ボイドを形成しないものに限定して解釈されるべきである。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域において「溶融」 が生じていないこと(ア) 原告が溶融の根拠として主張する5点(前記(原告の主張)(1)イ(ア)の①ないし⑤)は,後記(イ)ないし(カ)のとおり,溶融を示すものではなく,また,レーザ加工領域における溶融のメカニズムに係る原告の主張は誤りである。 さらに,後記(キ)のとおり,被告製品によるレーザ加工領域においては単結晶性が保たれていることが明らかであるから,同領域において「溶融」が生じて メカニズムに係る原告の主張は誤りである。 さらに,後記(キ)のとおり,被告製品によるレーザ加工領域においては単結晶性が保たれていることが明らかであるから,同領域において「溶融」が生じているとは認められない。 (イ) ① レーザ加工領域の温度がシリコンの融点を超えるから溶融するとの主張について a 原告は,溶融の根拠として「レーザ加工領域の温度が融点を超える こと」を主張するが,それは計算機シミュレーションの結果(甲51文献及び甲27文献)に基づくものにすぎず,実際にレーザ加工が行われている途中のシリコンウェハ内部の温度を測定したわけではなく,融点を越える昇温を実証していない。 b 以下のとおり,甲51文献及び甲27文献が溶融の根拠とならない ことは明らかである。 (a) 甲51文献及び甲27文献における仮定甲51文献においては,シリコンウェハ内部が溶融することが「仮定」された上で,計算機シミュレーションが行われており,そのような計算結果から溶融したとの結論が導かれないことは,具体 的な計算の当否を問うまでもなく,論理的に明白である。 甲27文献では,甲51文献とは異なり,計算された温度が融点を超えた場所でも物性値のパラメータを固体の値から液体の値に変えて計算しておらず,熱衝撃波が通過する間もシリコンは固体のままであり続けるというモデルが用いられており,そのような甲27 文献に基づいて溶融が生じたと認めることはできない。 (b) 被告製品における加工と甲51文献及び甲27文献のシミュレーションにおける加工との条件の違い甲51文献及び甲27文献のシミュレーションで用いる加工条件は,いずれも,被告製品のそれと大きく異なり,エネルギー密度が 被告製品よりも高いため,それらの文 ションにおける加工との条件の違い甲51文献及び甲27文献のシミュレーションで用いる加工条件は,いずれも,被告製品のそれと大きく異なり,エネルギー密度が 被告製品よりも高いため,それらの文献に基づき,被告製品による加工でレーザ加工領域の温度が融点に到達したとは認められない。 (c) 甲51文献の計算機シミュレーションの計算式や計算モデルの誤り甲51文献では,光吸収の計算に密接に関わる,シリコンのバン ドギャップエネルギーの式に重大な誤りがある。この点につき,原 告は,記述上の誤りであり,実際には正しく計算されている旨主張するが,その根拠は,甲51文献の共著者の一人である原告従業員の陳述書(甲72,78)のみである。 また,甲51文献の計算は,様々な点で物理現象を適切に記述していない,誤ったモデルに基づいている。したがって,その計算結 果は,被告製品による加工時にレーザ加工領域に生じる温度を適切に求めるものとなっておらず,甲51文献に記載された値が上記温度に近似する値であると評価するに足りる科学的合理的根拠もない。 特に,甲51文献の計算モデルでは,融点を超えた領域が全て液体であると扱われており,シリコンが異常液体であること(溶融した とすれば体積が減少すること)が適切に表現されておらず,その計算結果は物理的に無意味である。この点について,原告は,解析結果への影響が少ない要素である等と主張するが,その理由については説明をしていない。 さらに,原告の説明によれば,甲51文献の計算は,温度700 K程度まで単光子吸収は生じないという前提で行われたものであり,被告製品(波長約1.1μm)のように,室温(300K=27℃)においてもエネルギーギャップを越える単光子吸収が生じる場合には,甲51文 程度まで単光子吸収は生じないという前提で行われたものであり,被告製品(波長約1.1μm)のように,室温(300K=27℃)においてもエネルギーギャップを越える単光子吸収が生じる場合には,甲51文献の計算を適用することはできない。 c 融点を超えても溶融したとはいえないこと (a) 被告製品によるレーザ加工は,極めて短時間内の現象であり,物質の状態変化が常に平衡状態を経由し続けるわけではないことに鑑みれば,仮に融点を超えていたとしても,平衡状態の液体ではなく,非平衡状態の固体のままでいる状態を経由する可能性があるから,直ちに溶融したとはいえない。 (b) 被告製品による加工が固体のシリコン内部の加工であり,シリコ ンが異常液体である(固体から液体になると体積が減少する)ことを考慮すれば,シリコン固体内部のある箇所がシリコンの融点に達したとしても,当該箇所が溶融するとは直ちにはいえない。 すなわち,固体シリコン内部のある箇所が溶融したとすれば,体積が減少するはずであり,その結果,減少分の空間が生じるはずで あるが,固体内部は外界と通じていないため,減少分の空間が生じる余地はない。 また,仮に,固体シリコン内部のある箇所が溶融したとすれば,当該箇所の多くを占める液体シリコンとその周囲の固体シリコンとの界面のみならず,当該箇所に更に形成される体積減少分の空間と 上記液体シリコンとの界面も形成されなくてはならない。その場合,2種類の界面を形成するためのエネルギーが必要とされるため,そもそも,液体シリコンと空間の両方が形成される状態が最も安定な状態ではない(したがって,そのような状態へは相変化しない)可能性がある。仮に最も安定な状態であったとしても,固体内部のあ る箇所の温度が上昇して融点に達 間の両方が形成される状態が最も安定な状態ではない(したがって,そのような状態へは相変化しない)可能性がある。仮に最も安定な状態であったとしても,固体内部のあ る箇所の温度が上昇して融点に達した後も,2つの界面を形成するエネルギーを要しない,固体のままであり続ける(融点を超えても,2つの界面を形成しなくて済む「準」安定の状態である,固体のままの状態をとる)可能性がある。 (ウ) ② 被告製品が熱的加工を特徴とするナノ秒レーザを用いているとの 主張について「ナノ秒レーザ」であっても,そのパルス幅の如何によって加工条件が異なり,さらに,それ以外の波長等の加工条件も考慮して,溶融するか否かを検討すべきである。原告の主張は,科学技術的な検討を欠いており,「ナノ秒レーザ」,「加熱加工」といったレッテル貼りであるにすぎ ない。 また,原告が提出する文献(甲53ないし55,69)における,「ナノ秒レーザ」が「加熱加工」であり,「フェムト秒レーザ」が「非熱加工」であるといった説明は,シリコン表面のレーザ加工に関するものであるから,「ナノ秒レーザ」によるシリコン表面のレーザ加工で溶融が生じたとしても,被告製品のようなシリコン内部の加工において溶融が生じる ことの根拠にはならない。 (エ) ③ レーザ加工領域を撮影したSEM(走査型電子顕微鏡)写真において溶融痕が観察されるとの主張について原告が根拠とするレーザ加工領域を撮影したSEM(走査型電子顕微鏡)写真(甲23のスライド6)のうち,写真④以外は,被告製品によ る加工の結果を観察したものではない。 また,上記写真の観察結果についての原告の説明(甲23のスライド5)は,EBSDデータ等の客観的な根拠に基づくものではなく,原告の主観が示されているにす る加工の結果を観察したものではない。 また,上記写真の観察結果についての原告の説明(甲23のスライド5)は,EBSDデータ等の客観的な根拠に基づくものではなく,原告の主観が示されているにすぎない。 (オ) ④ 溶融が生ずることを示すステルスダイシングの技術文献が数多く 存在するとの主張についてa 前記(イ)のとおり,甲51文献及び甲27文献のシミュレーションには誤りが存在している。 b 甲70文献に示される溶融のメカニズムは,レーザ加工領域においてボイドに近い部分でアモルファスシリコンが観察されず(甲36に おける観測点D点の観測結果),レーザ加工領域のその他の部分でアモルファスシリコンが存在するとしてもごく微量である(甲36における観測点AないしC点の観測結果)という,ラマン分光分析の結果と矛盾するものである。 また,甲70文献の溶融のメカニズムによれば,溶融凝固領域の中 心部は圧縮応力を受けるはずであるが,この点もラマン分光分析(甲 36)の結果と矛盾している。 c 甲29文献は,使用しているパルス幅が被告製品よりも短いなど,被告製品とは加工条件が異なり,しかも,シリコンウェハ表面近くへの加工を観察しているに留まる。 また,甲29文献によるボイド形成についての考察が誤りであるこ とは,甲59文献にも示されている。なお,甲59文献は,原告の主張するような,多結晶及びアモルファスの存在を積極的に示す文献ではない。 d 乙107文献には,ボイド上方領域において「結晶性が保たれていた」との記載があり,溶融が生じていないことを示すものである。 原告は,ボイド上方領域の分析についての乙107文献の証拠価値は低いなどと述べるが,ボイド上方領域で「結晶性が保たれていた」旨の上記の記載 があり,溶融が生じていないことを示すものである。 原告は,ボイド上方領域の分析についての乙107文献の証拠価値は低いなどと述べるが,ボイド上方領域で「結晶性が保たれていた」旨の上記の記載は,同文献の「Introduction」(イントロダクション)に存在しており,同文献においては,ボイド上方領域で「結晶性が保たれていた」ことが,既に知られた確固たる事実として記載されてい るのである。 また,乙107文献においては,「ボイドの箇所に存在したSi原子がどこにいったのか」が明らかでないと述べられており,この結論は,ボイドにあったシリコン原子が上方に移動したなどという,原告が主張する溶融によるメカニズムが成り立たないことを示唆している。 また,原告は,乙107文献の図1の「④heavilycompressedregion(DS)」に多結晶構造及びアモルファス構造があり,これが「溶融の痕跡」であると主張するが,多結晶構造やアモルファス構造は,溶融のみによって形成されるわけではないのであるから,これらの構造の存在からは,溶融したことは直ちには導かれない。むしろ,当該 領域が「heavilycompressedregion」(高圧縮領域)と命名されている とおり,これらの多結晶構造及びアモルファス構造は,溶融ではなく,圧力誘起構造転移によって形成されたものと考えられる。 (カ) ⑤ レーザ加工領域においてアモルファス及び多結晶が存在する(ラマン分光分析)との主張についてa 多結晶及びアモルファスが生じたとはいえないこと 原告によるラマン分光分析の結果(甲32)からは,多結晶及びアモルファスが生じたとはいえず,同結果に基づく原告主張は,東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果(甲36 とはいえないこと 原告によるラマン分光分析の結果(甲32)からは,多結晶及びアモルファスが生じたとはいえず,同結果に基づく原告主張は,東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果(甲36)と矛盾する。 これらのラマン分光分析の結果の間に矛盾があることについて,原告は,原告によるラマン分光分析(甲32)のデータは規格化されて いるが,東レリサーチセンターによるラマン分光分析(甲36)のデータは規格化されておらず,それぞれ異なるアプローチに基づいて,異なるデータ処理がされているから,両者の比較は無意味であるなどと説明するが,東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果(甲36)自体を見ても,多結晶及びアモルファスの存在は認められ ない。 すなわち,東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果では,アモルファスが存在すると原告が主張する位置においてすら,なお単結晶が元と同様に多く存在しており,アモルファスは存在したとしてもごく微量にすぎないことが明白である。したがって,一旦溶融した 領域全体が再固化してアモルファス化したなどという現象が起きたとは考えられない。 b 溶融によらずともアモルファス化が起きることラマン分光分析によって,ごく微量であれ,アモルファスが存在すると認められたとしても,シリコンにおいて結晶構造が変化する原因 は溶融に限られず,圧力によって誘起される結晶構造の転移(圧力誘 起構造転移)という,溶融によらないアモルファス化が知られている以上,直ちに溶融が生じたとはいえない。 むしろ,東レリサーチセンターによるラマン分光分析(甲36)は,複数のラマン線が観測された原因を「応力の不均一な分布」に帰属させており,被告の主張する,熱衝撃波に起因する応力によって亀裂が むしろ,東レリサーチセンターによるラマン分光分析(甲36)は,複数のラマン線が観測された原因を「応力の不均一な分布」に帰属させており,被告の主張する,熱衝撃波に起因する応力によって亀裂が 形成されるという,溶融によらないメカニズムを支持しているといえる。 この点に関し,被告が,機械的な研削等,他の原因によってもアモルファスシリコンが形成されると指摘したのに対し,原告は,東レリサーチセンターによるラマン分光分析においては,試料は研磨してい ないため,研磨によりアモルファスが生ずることはないなどと主張する。しかしながら,研磨工程そのものでなくとも,物理的に研磨と同等の効果が試料に及ぼされるような作用(例えば,熱衝撃波に起因する機械的な歪み)が働けば,溶融せずに単結晶からアモルファスへ変化することに変わりはないから,原告の上記主張は,本質的な反論足 り得ていない。 (キ) レーザ加工領域において単結晶性が保たれていることaEBSDの観察結果EBSDは,現在,結晶方位を同定することが可能な信頼できる手法として,当業者の間で広く用いられている。そのようなEBSDの 観察結果(乙46の2)から,被告製品により加工したシリコンウェハの「集光点」やレーザ加工領域を含むレーザ光軸に略平行な断面では,元のシリコンウェハと同じ結晶性(単結晶)が保たれていることが明白である。 b 電子線回折の観察結果 被告製品によって加工したシリコンウェハでは,レーザ光軸に略垂 直な断面の結晶性についても,電子線回折(TEM/ED)(乙46の1)の結果から,元のシリコンウェハと同じ結晶性(単結晶)が保たれていることが明白である。 c 「エピタキシャル成長」が起きていないこと(a) 原告は,被告製品によるレーザ M/ED)(乙46の1)の結果から,元のシリコンウェハと同じ結晶性(単結晶)が保たれていることが明白である。 c 「エピタキシャル成長」が起きていないこと(a) 原告は,被告製品によるレーザ加工領域で単結晶性が保たれてい ることに関し,溶融したウェハ内部のシリコンが再固化する際にエピタキシャル成長して単結晶に戻る旨の主張をする。 しかしながら,第三者分析機関(株式会社日産アーク)の報告書(乙100,119)記載のとおり,被告製品により加工したシリコンウェハの観察結果は,原告が主張するような,「一度溶融しエピ タキシャル成長するような場合」には生じ得ないものであった。すなわち,被告製品により加工したシリコンウェハは,全体として単結晶性は保たれているが,割れや,その近傍のわずかな結晶方位のずれも観察されていたところ,一度溶融しエピタキシャル成長するような場合には,固相(ここでは溶融していない周囲の単結晶Si) と結晶方位が同一となるように結晶化していくため,上記のような方位の乱れは見られないと考えられる。 また,原告が主張するメカニズムによると,溶融処理領域では圧縮応力が生じるもののようであるが,そのような環境下でエピタキシャル成長が生じることについては,立証されていない。そもそも, エピタキシャル成長が生じる領域で,同時に不規則に割れが残る領域も生成されるという結果を,科学的合理性をもって説明することは不可能である。 さらに,エピタキシャル成長について原告の挙げる証拠(甲62,63)は,特殊な条件下で実現する現象を説明するものであり,被 告製品によるシリコンウェハ内部の極めて短時間でのレーザ加工に 当てはまるものではない。むしろ,特殊な条件設定の工夫を行わない,一般の場合には,溶融し 現象を説明するものであり,被 告製品によるシリコンウェハ内部の極めて短時間でのレーザ加工に 当てはまるものではない。むしろ,特殊な条件設定の工夫を行わない,一般の場合には,溶融したシリコンが再固化すれば多結晶になる。 (b) 仮に,原告の主張するようなエピタキシャル成長が生じたとしても,「(単結晶から)単結晶に復元」した領域は,本件各発明の「改 質領域」(「溶融処理領域」)には当たらないと解すべきである。 すなわち,単結晶性が完全に保たれている領域はもちろん,単結晶性が保たれていない構造(アモルファス等)がごく微量しか検出されない領域であっても,原告が本件各発明における「溶融処理領域」の作用効果であると説明する「溶融後再固化による割れ現象」 は生じ得ないから,「溶融処理領域」には当たらない。 (ク) 被告の想定する「溶融」によらない加工メカニズムa レーザ加工領域において「溶融」が生じる根拠として原告が主張する加工メカニズムは,前記(ア)ないし(カ)のとおり,各種実験観察結果とも合致せず,正しいとはいえない。 そして,被告製品により形成されるレーザ加工領域については,以下のとおり,「溶融」によらないメカニズムによって十分に説明することができる。 なお,溶融が生じることの立証責任は原告にあり,被告は,自らの想定するメカニズムこそが正しいとまで主張する趣旨ではないが,仮 に被告の想定するメカニズムが正しくないとしても,そのことをもって,原告の主張する溶融によるメカニズムが正しいということにはならない。 b 溶融によらない圧縮応力によるメカニズム被告が想定するメカニズムは,基本的に大村教授による乙41文献 で述べられているメカニズムであり,その概要は,以下のとおりであ らない。 b 溶融によらない圧縮応力によるメカニズム被告が想定するメカニズムは,基本的に大村教授による乙41文献 で述べられているメカニズムであり,その概要は,以下のとおりであ る。 ① 集光点近傍で,レーザ光吸収が生じる(これは単光子吸収で足りる。)。 ② レーザ光により,局所的に高密度のエネルギーを与えられた集光点付近で,「microexplosion」(マイクロ爆発)(乙70文献)が生じ, ボイドが形成される。 ③ 熱衝撃波が,レーザ照射面に向けて伝播する。 ④ 熱衝撃波先端で,非常に高い圧縮応力が生じ,高転位密度層が形成される。 ⑤ 先行するレーザパルスで形成された高転位密度層を次のレーザパ ルスで形成された熱衝撃波が通過する際,高転位密度層内の転位が核となって亀裂が生成する。 c 溶融によらないメカニズムがEBSD及び電子線回折による実験観察結果に合致すること前記bの溶融によらないメカニズムによれば,レーザ加工領域にお いて溶融は生じず,これによる多結晶化もアモルファス化も生じないことになるところ,前記(キ)のとおり,EBSD及び電子線回折による実験観察結果は,被告製品によるレーザ加工領域において基本的に単結晶構造が保たれていることを支持しており,同メカニズムに合致する。 また,前記bのメカニズムにおいては,熱衝撃波によって高転移密度層が形成されれば,ボイド上方領域が形成されるから,ボイド上方領域の形成にはボイドの形成は必須ではない。そして,被告製品によるレーザ加工領域については,ボイドが形成されずともボイド上方領域が形成されること及びボイドがウェハ下端近傍に形成されてもボイ ド上方領域が形成されることが観察されている(乙98)ところ,前 記bの ついては,ボイドが形成されずともボイド上方領域が形成されること及びボイドがウェハ下端近傍に形成されてもボイ ド上方領域が形成されることが観察されている(乙98)ところ,前 記bのメカニズムは,この観察結果と矛盾しない。 他方で,原告の主張する溶融によるメカニズムにおいては,ボイド部分にあったシリコン原子が溶融してボイド上方領域に移動することで過充填になり,凝固時の体積変化による応力の蓄積により亀裂が生じるとの過程を経ることになるから,ボイド上方領域の形成にはボイ ド形成が不可欠のはずであるが,これは上記の観察結果(乙98)と合致しない。 したがって,原告の主張する溶融によるメカニズムよりも,前記bの溶融によらないメカニズムの方が,実験観察結果と合致しており,原告の主張するメカニズムが正しいと判断する根拠はない。 ウ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」及び「改質スポット」に該当しないこと(ア) 「溶融処理領域」に該当しないこと前記イのとおり,被告製品によるレーザ加工領域においては「溶融」は生じていない。 したがって,被告製品によるレーザ加工領域は,前記ア(ア)の「一旦溶融後再固化した領域」,「溶融状態中の領域」及び「溶融から再固化する状態中の領域」のいずれにも該当しないから「溶融処理領域」に該当せず,本件発明1の「改質領域」及び「改質スポット」に該当しない。 (イ) 「改質領域」ないし「改質スポット」の形成過程における多光子吸収 の寄与についてa 前記ア(イ)のとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,多光子吸収によって形成されるもの,すなわち,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるところ,被告製品によるレーザ加工領 )のとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,多光子吸収によって形成されるもの,すなわち,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるところ,被告製品によるレーザ加工領域は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるも のではない。 したがって,被告製品によるレーザ加工領域は「改質領域」ないし「改質スポット」に該当しない。 なお,原告は,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」が「多光子吸収が支配的な寄与をして形成される溶融処理領域」との解釈が採られた場合に被告製品が本件発明1の技術的範囲を充足しな いことについて,争っていない。 b 原告は,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」について,本件明細書1に記載される実施形態が除外されないように解釈されるべきと主張するが,そのような解釈をすべき法的根拠はない。 また,原告は,「改質領域」を「多光子吸収により形成される」との 実施形態の記載に基づいて限定解釈するとしても,例えば,「多光子吸収(2光子吸収)が初期吸収において集光点で有意に発生する条件でレーザ照射した結果,形成される改質領域(溶融処理領域)」あるいは「多光子吸収(2光子吸収)が初期吸収において集光点で有意に発生した結果,形成される改質領域(溶融処理領域)」であれば足りると解 釈すべきと主張するが,このような解釈は,「初期吸収」という本件明細書1に記載のない用語によるものであり,相当でない。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について前記ア(ウ)のとおり,ボイドは本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれず,また,本件発明1の「改質領域」ないし「改質 スポット」はボイドを形成しないものに限定されるところ,被告製品によるレ とおり,ボイドは本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれず,また,本件発明1の「改質領域」ないし「改質 スポット」はボイドを形成しないものに限定されるところ,被告製品によるレーザ加工領域にはボイドが存在するため,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」には該当しない。 (2) 構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズについて ア 「集光点の位置で改質スポットを形成させる」の意義 「集光点の位置で改質スポットを形成させる」の意義についての原告の主張は争う。 イ被告製品が「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズを備えないこと被告製品による加工を示したとする原告作成の資料(甲23のスライド 5)においては,「狭義の集光点」と示された集光点がボイドの下方に存在する。 このように,被告製品によるレーザ加工においては,集光点の上方にボイドが形成され,ボイド上方領域はボイドの更に上方に形成される。 したがって,レーザ加工領域のうち,ボイド及びボイド上方領域が「溶 融処理領域」に当たるとした場合も,「溶融処理領域」が少なくとも集光点の位置に形成されないことになるから,被告製品は,構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズを備えない。 (3) 構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」についてア 「切断の起点となる改質領域」の意義 (ア) 構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」とは,改質領域が切断の起点となることを規定していると解釈すべきである。 そして,「切断の起点」とは,切断する際の起点,すなわち,切断が始まる箇所と解釈されるから,切断する際に改質領域が存在する必要がある。さもないと,切断を始め ことを規定していると解釈すべきである。 そして,「切断の起点」とは,切断する際の起点,すなわち,切断が始まる箇所と解釈されるから,切断する際に改質領域が存在する必要がある。さもないと,切断を始めることができないからである。 また,本件明細書1の記載(【0007】,【0016】,【0017】及び【0031】)においては,改質領域が切断する際に起点となることが開示されており,これらの記載は上記の解釈と整合する。 (イ) 原告は,「切断の起点となる改質領域」に関し,改質領域を起点として割れを発生させ,これにより加工対象物を切断する意味である旨主張 する。 しかしながら,原告の主張する上記の工程は,第1段階の工程である「割れの発生」と第2段階の工程である「切断」とを含むところ,上記の工程においては,「切断の起点」すなわち第2段階の工程である「切断」が始まる箇所となっているのは「割れ」であり,「改質領域」はあくまで,その前段階である「割れの発生」の「起点」であるにすぎない。このよ うに,通常の意味での「切断の起点」に該当する「割れ」が存在するにもかかわらず,これと異なる「改質領域」を「切断の起点」と呼称するためには,「起点」が通常の意味とは異なる特殊な意味を有する旨,明細書に記載があってしかるべきであるが,本件明細書1にはそのような特記はない。そうすると,原告のいう「改質領域を起点として割れを発生 させ,これにより加工対象物を切断する」との工程において,「改質領域」は「切断の起点」たり得ないことになる。 したがって,「切断の起点」についての原告の解釈は誤っており,原告の上記主張は理由がない。 イ被告製品におけるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「切断の起点 となる改質領域」に該当しないこと がって,「切断の起点」についての原告の解釈は誤っており,原告の上記主張は理由がない。 イ被告製品におけるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「切断の起点 となる改質領域」に該当しないこと被告製品には,シリコンウェハをチップに分割する前の工程までに,レーザ加工領域を除去する態様で用いられるものもある(以下,このような態様で用いられる被告製品のことを,「被告製品(除去)」と呼び,それ以外の態様で用いられる被告製品のことを,「被告製品(非除去)」と呼ぶ。)。 被告製品(非除去)による工程では,レーザ加工領域はシリコンウェハをチップに分割する際の切断の起点の一部となる。 一方で,被告製品(除去)による工程では,シリコンウェハをチップに分割する前に,すなわちシリコンウェハを切断する前に,レーザ加工領域を除去している。 このように,被告製品(除去)では,切断する際にレーザ加工領域が存 在しないのであるから,レーザ加工領域は切断する際の起点とはならず,切断の起点となるのはボイドの下亀裂のみである。 したがって,仮に被告製品(除去)のレーザ加工領域が「改質領域」に該当するとしても,「切断の起点となる改質領域」には該当しない。 (4) 構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部について ア 「集光点を」「移動させる」の意義本件発明1-1の構成要件1Eでは,「集光点を」「移動させる」と規定している。これは,文字どおり,「集光点」が移動することを規定していると解釈すべきであり,加工対象物が移動することを含むべきではない。 本件明細書1の【0042】においては,①加工対象物を移動させる場 合と,②集光点を移動させる場合とを区別して記載しており,さらに,③どちらも含むものとして「 動することを含むべきではない。 本件明細書1の【0042】においては,①加工対象物を移動させる場 合と,②集光点を移動させる場合とを区別して記載しており,さらに,③どちらも含むものとして「集光点の相対的移動」という表現を用いている。 明細書ではこのように区別しているにかかわらず,特許請求の範囲において,あえて「集光点を」「移動させる」との表現を用いており,加工対象物を移動させる又は相対的移動といった表現をしていないことからすれば, 構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」という文言は,まさに「集光点」が移動することを規定しているものと理解される。 イ被告製品が「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部を備えないこと被告製品では,「集光点」が移動することはなく,加工対象物であるシリ コンウェハが移動することから,構成要件1Eの「集光点」を「移動させる」機能を有する制御部を備えない。 なお,構成要件1Eの「集光点の移動速度を略一定にして」の部分は,集光点自体の移動速度を一定にすることを意味すると解釈されるところ,上記と同様の理由で,被告製品は,この点も充足しない。 (5) 小括 前記(1)ないし(4)によれば,被告製品は,本件発明1-1の構成要件1A,1D及び1Eをいずれも充足しない。 したがって,被告製品は本件発明1-1の技術的範囲に属しない。 2 争点1-2(被告製品が本件発明1-2の技術的範囲に属するか(構成要件1Hの充足性))について (原告の主張)(1) 構成要件1Hの「改質スポット」の意義及び被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質スポット」に該当することは,前記1(原告の主張)(1)のとおりである。 (2) 被告製品では,構成⑧のとおり,加工を 質スポット」の意義及び被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質スポット」に該当することは,前記1(原告の主張)(1)のとおりである。 (2) 被告製品では,構成⑧のとおり,加工を制御するために,ユーザーは加工 前にあらかじめタッチパネルの操作を通して加工条件を割り当てる。かかる操作により,パルスレーザ光の繰り返し周波数及び集光点の移動速度を調節可能である。集光点の移動速度の調整は,X軸方向に移動するカッティングテーブルの移動速度を調整することにより実現することができる。また,これによりレーザ加工領域間の距離を制御することができる。 したがって,被告製品の制御部は「前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポット間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」機能を有するため,構成要件1Hを充足する。 (3) 前記1(原告の主張)のとおり,被告製品は本件発明1-1(請求項1に係る発明)の技術的範囲に属するものであり,前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が構成要件1Iのその余の部分を充足することは争いがなく,被告製品は本件発明1-2の技術的範囲に属する。 (被告の主張) (1) 構成要件1Hの「改質スポット」の意義及び被告製品によるシリコンウェ ハ内部のレーザ加工領域が「改質スポット」に該当しないことは,前記1(被告の主張)(1)のとおりである。 (2) また,被告製品は,本件発明1-1の技術的範囲に属さない以上,構成要件1Iを充足しない。 (3) したがって,被告製品は本件発明1-2の技術的範囲に属しない。 3 争点2-1(被告製品が本件発明2 被告製品は,本件発明1-1の技術的範囲に属さない以上,構成要件1Iを充足しない。 (3) したがって,被告製品は本件発明1-2の技術的範囲に属しない。 3 争点2-1(被告製品が本件発明2-1の技術的範囲に属するか(構成要件2A,2Dないし2Hの充足性))について(原告の主張)(1) 構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」についてア 「改質領域」の意義 (ア) 「改質領域」に該当するための要件本件発明2においても,「改質領域」は「溶融処理領域」である(本件明細書2の【0016】)。 「溶融処理領域」の定義は,本件明細書2の【0017】に記載されるとおり,①「一旦溶融後再固化した領域や,まさに溶融状態の領域や, 溶融状態から再固化する状態の領域」,②「相変化した領域や結晶構造が変化した領域」,又は,③「単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別の構造に変化した領域」,「例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域」 であり,これは,本件明細書1の【0025】における定義(前記1(原告の主張)(1)ア(ア))と実質的に同じである。 したがって,上記の①ないし③のいずれかに該当するものは,本件発明2の「改質領域」に該当する。 (イ) 「改質領域」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限 定されないこと 前記1(原告の主張)(1)ア(イ)で検討した各点は,本件発明2の特許請求の範囲及び本件明細書2の記載並びに本件特許2の出願経過についても同様に当てはまり,本件発明2の「改質領域」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない。 は,本件発明2の特許請求の範囲及び本件明細書2の記載並びに本件特許2の出願経過についても同様に当てはまり,本件発明2の「改質領域」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない。 すなわち,本件発明2の目的は,「例えば半導体基板上に複数の機能素 子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止して,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にするレーザ加工装置を提供すること」であり(本件明細書2の【0005】),その課題解決手段は,請求項1及び2記載の構成であって,その特許請求の範囲の記載には,「多光子吸収により改質領域を形成する」との限定 はない。また,本件明細書2における発明の背景技術及び課題解決手段並びに発明の効果の記載にも,多光子吸収により改質領域を形成するとの記載はない。 また,本件明細書2の発明の詳細な説明にも,本件明細書1と同様に,「改質領域」が多光子吸収により形成されるとの記載があるが,これは, 本件発明2の実施形態についての記載にすぎず,本件発明2の技術的範囲の解釈に影響を与えるものではない。なお,本件明細書2の【0019】においては,本件明細書1の【0027】と同様の条件(波長1064nmのレーザ光照射)による実施例の記載がされている。 さらに,本件発明2の「改質領域」の解釈についても,本件発明1に おける解釈と同様に,本件先行特許の審査経過を参酌する理由はない。 原告は,本件発明2の審査過程で,審査官からの通知(乙50)に対し,本件発明1の審査で提出したものと同様の説明の一覧表(乙52)を提出したものの,審査官が,当該一覧表の記載をもって,本件発明2の「改質領域」が本件先行特許における「改質領域」と同様であると理解 したり,「多光子吸収に ものと同様の説明の一覧表(乙52)を提出したものの,審査官が,当該一覧表の記載をもって,本件発明2の「改質領域」が本件先行特許における「改質領域」と同様であると理解 したり,「多光子吸収によるもの」に限定されると理解することはあり得 ず,本件発明2による権利行使が権利濫用に当たることもない。 (ウ) ボイドは「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれ,また,「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されないこと前記1(原告の主張)(1)ア(ウ)で検討した各点は,本件発明2の特許 請求の範囲及び本件明細書2の記載並びに本件発明2の出願経過についても同様に当てはまり,本件発明2の「改質領域」はボイドを形成しないものに限られず,また,ボイドは本件発明2の「改質領域」に含まれるものである。 すなわち,ボイドは,本件明細書2に記載された「溶融後再固化した 領域」の一部であるから,溶融処理領域に当たり,本件発明2の「改質領域」に含まれるものである。 また,本件発明2は,ボイドの存否を特許請求の範囲として規定しておらず,本件明細書2の記載においても,ボイドの存否について記載はないから,本件発明2の「改質領域」がボイドを形成しないものに限定 解釈される理由はない。 さらに,本件発明2の技術的範囲を定めるに当たり,後願である乙62出願の出願経過を参酌すべき理由はない。原告は,本件発明2の審査過程で,審査官からの通知(乙50)に対する説明の一覧表(乙52)に,乙62発明の特徴を「改質領域として溶融処理領域と微小空洞を形 成する」と記載したが,この記載により本件発明2が微小空洞を形成しない発明と理解される理由はない。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」 処理領域と微小空洞を形 成する」と記載したが,この記載により本件発明2が微小空洞を形成しない発明と理解される理由はない。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」に該当すること(ア) 前記1(原告の主張)(1)イのとおり,被告製品によるシリコンウェ ハ内部のレーザ加工領域においては「溶融」が生じており,被告製品に よるレーザ加工領域は,前記ア(ア)の①ないし③のいずれにも該当するので,「溶融処理領域」であり,本件発明2の「改質領域」に該当する。 (イ) 「改質領域」ないし「改質スポット」の形成過程における多光子吸収の寄与についてa 前記ア(イ)のとおり,本件発明2の「改質領域」は多光子吸収が支配 的に寄与して形成されるものに限定されないから,被告製品において,レーザ加工領域が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるかどうかは,前記(ア)の結論に影響しない。 b 仮に,「改質領域が多光子吸収により形成される」等の本件明細書2の記載を参酌し,「改質領域」に何らかの限定解釈をするとしても,前 記1(原告の主張)(1)ウ(イ)bと同様に,本件明細書2の実施形態が除外されないような解釈を採るべきである。 そして,被告製品によるレーザ加工領域は,初期吸収において,集光点で本件明細書2に記載された実施形態よりも多くの2光子吸収が発生しているから(甲50),被告製品による「レーザ加工領域」は 「改質領域」に該当する。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について前記ア(ウ)のとおり,ボイドは「改質領域」に含まれ,また,「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されないから,被告製品によるレーザ加工領域は,ボイドも含めて本件発明2の 「改 のとおり,ボイドは「改質領域」に含まれ,また,「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されないから,被告製品によるレーザ加工領域は,ボイドも含めて本件発明2の 「改質領域」に該当する。 (2) 構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズについて構成要件2Dの「集光点」とは,レンズの焦点ではなく,「レーザ光Lが集光した箇所」であり(本件明細書2の【0012】),本件発明2の技術的特 徴及び本件明細書2の記載からは,「集光点の位置で前記改質領域を形成させ る」集光用レンズについても,前記1(原告の主張)(2)アの構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズと同じ解釈が妥当するといえる。 そして,前記1(原告の主張)(2)イのとおり,被告製品における「改質スポット」は集光点の位置に形成されたものであるから,被告製品は構成要件 2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズを備える。 (3) 構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」について本件明細書2の記載(【0007】,【0017】及び【0023】)を踏まえれば,構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」についても,前記1(原告の主張)(3)の構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」と同じ解 釈が妥当し,被告製品により形成されるレーザ加工領域は構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」に該当する。 (4) 構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部について本件発明2-1の構成要件2E及び本件発明2-2の構成要件2Nの「前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御 部」は,構成要件2Rにおける「前記載置台及び前記集光用レンズ 明2-1の構成要件2E及び本件発明2-2の構成要件2Nの「前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御 部」は,構成要件2Rにおける「前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」との記載及び本件明細書2の集光点の移動に関する記載(【0030】,【0019】,【0028】及び【0047】)から,前記1(原告の主張)(4)の構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」と同じ解釈が妥当し,載置台のみを移動させ,集光用レンズを移動させない構成 を含むから,被告製品は,構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部を備える。 なお,本件明細書2には,被告がその主張の根拠として指摘する本件明細書1の【0042】に相当する記載はない。 (5) 構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」について ア 「赤外透過照明」の意義 (ア) 構成要件2F及び2Gの文言からは,構成要件2Fは赤外線の光源(赤外透過照明)を備えることを規定し,構成要件2Gは当該光源から照射された赤外線により照明された箇所を撮像するための撮像素子を備えることを規定するものと理解できる。すなわち,構成要件2F及び2Gの記載からすれば,構成要件2Fは,半導体基板を赤外線で照明する 光源について記載し,構成要件2Gは,当該照明により照明された改質領域を撮像する撮像素子について記載したものと理解するのが合理的である。 したがって,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」は,照明対象である媒質を「透過」する赤外光を照明する光源を意味する。 (イ) 被告は,構成要件2F及び2Gの「透過照明」について,照明光源と撮像素子が対象物を基準として反対側に配置されているものを指す旨主張する。 しかしながら,構成要件2F を意味する。 (イ) 被告は,構成要件2F及び2Gの「透過照明」について,照明光源と撮像素子が対象物を基準として反対側に配置されているものを指す旨主張する。 しかしながら,構成要件2Fが赤外線の光源と撮像素子の配置まで規定するものではないことは文言上明らかである。また,「透過」という文 言自体も,対象物に照射された光が反対側に通り抜けるという意味に限られるものではない。 仮に,被告の主張のように,構成要件2Fの「赤外透過照明」という文言のみをもって,赤外線の光源の他に撮像素子を備えること及びそれらの配置関係まで定義するものであると解釈してしまうと,構成要件2 Gが別途設けられていることと明らかに矛盾する。 また,本件明細書2の明細書中及び図面のいずれにおいても,「赤外透過照明」は,物を表すものとして用いられているのであって,何らかの照明方法を表すものとして用いられてはいない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 イ被告製品が「赤外透過照明」を備えること 被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張)の構成⑥に示されるように,シリコンウェハを赤外線で照明する赤外線照明及び撮像素子を備える。 そして,上記赤外線照明及び撮像素子は,いずれもシリコンウェハのレーザ光の入射面側に配置されており,上記赤外線照明から照射される赤外 光は,シリコンウェハを透過し,レーザ光の入射面とは逆側の面で反射され,反射された赤外光が上記撮像素子に入射する。 したがって,構成⑥の赤外線照明は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明」(構成要件2F),「前記赤外透過照明」(構成要件2G)に当たる。 また,構成⑥の撮像素子は,「前記赤外透過照明により赤外線で照明され 置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明」(構成要件2F),「前記赤外透過照明」(構成要件2G)に当たる。 また,構成⑥の撮像素子は,「前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子」(構成要件2G)に当たる。 (6) 構成要件2Hの「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」切断予定ラインについて ア 「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」の意義(ア) 構成要件2Hでいう「外縁部」については,構成要件2H自体の記載及び本件明細書2の記載(【0054】,【0062】及び【図15】)から,「半導体基板の外側の縁に沿った部分」であって「「内側部分」以外の部分」を指すと理解できる。 それを踏まえれば,構成要件2Hの「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」とは,「半導体基板の「内側部分」と「外側の縁に沿った部分」との境界付近に切断予定ラインの始点及び終点が位置する」こと,換言すれば「切断予定ラインの始点及び終点が位置する場所が半導体基板の「内側 部分」と「外側の縁に沿った部分」との境界付近であること」を意味し ていることは明らかである。 (イ) 被告は,別件訴訟における別件特許(特許第4509578号)に関する原告の説明によれば,「半導体基板の端部とは,半導体基板の端から数cm以上離れた部分までを指す」と主張するが,原告の上記説明は本件訴訟とは無関係であり,別件特許に係る発明の「加工対象物の端部」 という用語と本件発明2-1の「半導体基板の外縁部」という用語とを同じ意味に解すべき理由はない。 イ被告製品による半導体基板の切断予定ラインが「内側 別件特許に係る発明の「加工対象物の端部」 という用語と本件発明2-1の「半導体基板の外縁部」という用語とを同じ意味に解すべき理由はない。 イ被告製品による半導体基板の切断予定ラインが「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」こと別紙2被告製品の構成(原告の主張)の構成⑨のとおり,被告製品はシ リコンウェハのエッジ部分をレーザ加工しないように設定することができる。これにより,シリコンウェハの切断予定ラインの始点及び終点を,シリコンウェハの内側部分と外縁部との境界付近に位置させることができる。 そして,被告の主張によっても,被告製品においては,半導体基板の端から数mmの位置に切断予定ラインの始点及び終点が位置するというので あるから,その半導体基板上の切断予定ラインの「始点」及び「終点」の外側が構成要件2Hでいう「外縁部」に該当することは明らかである。 したがって,被告製品による半導体基板の切断予定ラインは「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」(構成要件2H)といえる。 (7) 小括前記(1)ないし(6)によれば,被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張)記載の構成を備えるものであって,本件発明2-1の構成要件2A,2Dないし2Hをいずれも充足する。 そして,前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が本件発明2-1のその余 の構成要件を充足することは争いがないから,被告製品は本件発明2-1の 技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」についてア 「改質領域」の意義(ア) 「改質領域」が「溶融処理領域」を意味すること 本件明細書2によれば,加工対象物がシリコンウェハの場合の「改質領域」と ,2E及び2Gの「改質領域」についてア 「改質領域」の意義(ア) 「改質領域」が「溶融処理領域」を意味すること 本件明細書2によれば,加工対象物がシリコンウェハの場合の「改質領域」とは「溶融処理領域」であり,「溶融処理領域」とは,「一旦溶融後再固化した領域」,「溶融状態中の領域」及び「溶融から再固化する状態中の領域」のうち少なくともいずれか一つを意味することが明白である(【0017】)。 (イ) 「改質領域」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されること本件明細書2の記載(【0017】,【0016】,【0018】ないし【0023】)についても,前記1(被告の主張)(1)ア(イ)aの本件明細書1の記載に対する指摘が同様に当てはまる。したがって,本件明細書 2の記載から,本件発明2-1の「改質領域」は,多光子吸収によって形成されるもの,すなわち,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定される。 また,前記1(被告の主張)(1)ア(イ)cの本件先行特許との関係及び本件発明1の出願経過に関する包袋禁反言及び権利濫用に係る主張は, 本件発明2の出願経過についても同様に当てはまる。 (ウ) ボイドは「改質領域」に含まれず,また,「改質領域」はボイドを形成しないものに限定されることa 本件発明1に係る前記1(被告の主張)(1)ア(ウ)aの主張は,本件発明2にも同様に当てはまり,ボイドは本件発明2の「改質領域」に も含まれない。 b 前記1(被告の主張)(1)ア(ウ)bの乙62出願の際の説明内容及び本件発明1の出願経過に関する主張は,本件発明2の出願経過についても同様に当てはまる(なお,本件明細書2にも,乙63公報と同一の実験条件の記載がある。)。 したがって 乙62出願の際の説明内容及び本件発明1の出願経過に関する主張は,本件発明2の出願経過についても同様に当てはまる(なお,本件明細書2にも,乙63公報と同一の実験条件の記載がある。)。 したがって,本件発明1の「改質領域」と同様に,本件発明2の 「改質領域」についても,ボイドを形成しないものに限定される。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」に該当しないこと(ア) 「溶融処理領域」に該当しないこと前記1(被告の主張)(1)イのとおり,被告製品によるシリコンウェハ 内部のレーザ加工領域においては「溶融」が生じていない。 したがって,被告製品によるレーザ加工領域は,前記ア(ア)の「一旦溶融後再固化した領域」,「溶融状態中の領域」及び「溶融から再固化する状態中の領域」のいずれにも該当しないから「溶融処理領域」に該当せず,本件発明2の「改質領域」に該当しない。 (イ) 「改質領域」の形成過程における多光子吸収の寄与についてa 前記ア(イ)のとおり,本件発明2の「改質領域」は多光子吸収によって形成されるもの,すなわち,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるところ,前記1(被告の主張)(1)ウ(イ)aのとおり,被告製品により加工されたレーザ加工領域は,多光子吸収が支 配的に寄与して形成されるものではないから,本件発明2の「改質領域」に該当しない。 b 本件明細書2の記載に照らして,前記(原告の主張)(1)イ(イ)bの原告の主張が相当でないことは,前記1(被告の主張)(1)ウ(イ)bと同様である。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について 前記ア(ウ)のとおり,ボイドは本件発明2の「改質領域」に含まれず,また本件発明2の「改質領域」は (イ)bと同様である。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について 前記ア(ウ)のとおり,ボイドは本件発明2の「改質領域」に含まれず,また本件発明2の「改質領域」はボイドを形成しないものに限定されるところ,前記1(被告の主張)(1)ウ(ウ)のとおり,被告製品によるレーザ加工領域にはボイドが存在するため,本件発明2の「改質領域」には該当しない。 (2) 構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズについて構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズについても,前記1(被告の主張)(2)の構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズと同じ解釈が妥当し,被告製品は 構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズを備えない。 (3) 構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」について構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」についても,前記1(被告の主張)(3)の構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」と同じ解釈が妥 当する。なお,原告が指摘する本件明細書2の記載は,何を切断の起点としているかを示すものではない。 したがって,仮に被告製品(除去)のレーザ加工領域が「改質領域」に該当するとしても,構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」には該当しない。 (4) 構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部について本件発明2-2の構成要件2Rは,複数の態様を含む集光点の相対的移動について規定しているが,構成要件2E及び2Nでは,相対的移動ではなく,「集光点」が移動することが規定されている。そして,本件明細書2においては,本件明細書1の【0042】に相当する記載はないが,「移動」と 規定しているが,構成要件2E及び2Nでは,相対的移動ではなく,「集光点」が移動することが規定されている。そして,本件明細書2においては,本件明細書1の【0042】に相当する記載はないが,「移動」と「相 対的」な「移動」は区別して用いられている(【0013】)。 したがって,構成要件2Eの「集光点を移動させる」についても,前記1(被告の主張)(4)の本件発明1-1の構成要件1Eと同様に,文字どおり,「集光点」が移動することを規定していると解釈すべきであり,加工対象物が移動することを含むものと解釈すべきではないから,被告製品は構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部を備えない。 (5) 構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」についてア 「赤外透過照明」の意義「透過照明」との用語は,技術用語として確立しており,照明された光が対象物を透過するものをいい,具体的には,照明光源と撮像素子が,対象物を基準として反対側に配置されているものをいう(乙35)。 また,「透過」という用語は,その通常の用例からも,対象の一方の側から,当該対象の他方の側へと通り抜けることであると解される。 さらに,本件明細書2の【図9】等においても,「透過照明」は同様の趣旨で用いられている。 イ被告製品が「赤外透過照明」を備えないこと (ア) 被告製品では,照明光源と撮像素子が,加工対象物であるシリコンウェハを基準として同じ側に配置されている。 したがって,被告製品では,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」を備えない。 (イ) なお,照明光源と撮像素子が加工対象物であるシリコンウェハを基準 として反対側に配置される場合と,同じ側に配置されている場合(被告製品)とでは,対象物(例えば,下面の一部に,金属薄膜の電極 ) なお,照明光源と撮像素子が加工対象物であるシリコンウェハを基準 として反対側に配置される場合と,同じ側に配置されている場合(被告製品)とでは,対象物(例えば,下面の一部に,金属薄膜の電極パタンを設けたウェハ)を観察した結果得られる像の見え方も異なる。 前者では,撮像素子が,対象物を透過した照明光を捉えるところ,透過した照明光によっては,対象物の表面にある金属薄膜の裏側となる部 分の状況(例えば対象物内部の傷)は見ることができない。他方,後者 では,撮像素子が,金属薄膜の表面で反射した照明光を捉えるため,捉えられる照明光によっては,対象物の内部の状況(例えば対象物内部の傷)を見ることができる。このように,両者の構成の違いは単なる設計事項に留まるものではない点に留意すべきである。 (6) 構成要件2Hの「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置す る」切断予定ラインについてア 「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」の意義(ア) 原告は,本件発明2-1と同じ技術分野に属する発明に係る特許である特許第4509578号に基づいて,被告に対し,別途訴訟を提起しており,この別件訴訟では,「加工対象物の端部」の解釈が争いの一つと なっている。なお,「加工対象物」とは,具体的には半導体基板のことである。 そして,上記別件訴訟において,特許権者である原告は,「加工対象物の端部」は「加工対象物の端から「レンズを初期位置に保持する機構を有しない従来技術によると集光点のずれが生じうる範囲」までを含む部 分である」と主張し,具体的には数cm以上になる旨主張する。すなわち,原告の説明によれば,半導体基板の端部とは,半導体基板の端から数cm以上離れた部分までを指す。 そして,上記の「加 む部 分である」と主張し,具体的には数cm以上になる旨主張する。すなわち,原告の説明によれば,半導体基板の端部とは,半導体基板の端から数cm以上離れた部分までを指す。 そして,上記の「加工対象物の端部」という用語と構成要件2Hの「半導体基板の外縁部」との用語が同様の意味を有することは,文言か らして明らかである。 したがって,上記別件訴訟の原告の主張によれば,本件発明2-1の構成要件2Hの半導体基板の「内側部分と外縁部との境界」も同様に半導体基板の端から数cm以上離れた部分を指すと理解される。 (イ) 原告は,構成要件2Hの「外縁部」は「半導体基板の外側の縁に沿っ た部分」を指すと主張するが,「外側の縁」の意味内容は不明であり,ま た,「沿った部分」という表現も,縁からどれくらいの距離までが,「沿った部分」になるのか不明である。さらに,「「内側部分」以外の部分」との説明も曖昧である。 原告は,前記(ア)の別件訴訟における「半導体基板の端部」の解釈については本件と関係ない旨主張するが,用語として,「端部」と「外縁部」 は,同じ意味に理解するのが自然である。また,本件特許2も前記(ア)の別件訴訟における特許も,明細書において端部や外縁部について何ら定義していないから,それぞれ当業者の理解に基づいて解釈すべきところ,片方は数mmのことを指し,もう片方は数cmのことを指すというのでは,両者の差が大きすぎる。 イ被告製品による半導体基板の切断予定ラインが「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置」しないこと被告製品では,半導体基板の端から数cm以上離れた位置には切断予定ラインの始点及び終点が位置することはなく,半導体基板の端から数mmの位置に切断予定ラインの始点及び終点が位置する。 置」しないこと被告製品では,半導体基板の端から数cm以上離れた位置には切断予定ラインの始点及び終点が位置することはなく,半導体基板の端から数mmの位置に切断予定ラインの始点及び終点が位置する。 なお,被告製品の使用態様によっては,端から切断することもあり,その場合は,そもそも始点及び終点が存在しない。 したがって,被告製品における半導体基板の切断予定ラインは「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置」しない。 (7) 小括 前記(1)ないし(6)によれば,被告製品は,本件発明2-1の構成要件2A,2Dないし2Hをいずれも充足しない。 したがって,被告製品は本件発明2-1の技術的範囲に属しない。 4 争点2-2(被告製品が本件発明2-2の技術的範囲に属するか(構成要件2J,2Mないし2Pの充足性))について (原告の主張) 本件発明2-2の構成要件2J,2Mないし2Pは,本件発明2-1の構成要件2A,2Dないし2Gとそれぞれ同一である。 前記3(原告の主張)のとおり,被告製品は,構成要件2A,2Dないし2Gをいずれも充足するから,同様に,構成要件2J,2Mないし2Pをいずれも充足する。 前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が本件発明2-2のその余の構成要件を充足することは争いがないから,被告製品は本件発明2-2の技術的範囲に属する。 (被告の主張)前記3(被告の主張)のとおり,被告製品は,構成要件2A,2Dないし2 Gをいずれも充足しないから,同様に,構成要件2J,2Mないし2Pについても,いずれも充足しない。 したがって,被告製品は本件発明2-2の技術的範囲に属しない。 5 争点3-1(本件発明1の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-1))に ないし2Pについても,いずれも充足しない。 したがって,被告製品は本件発明2-2の技術的範囲に属しない。 5 争点3-1(本件発明1の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-1))について (被告の主張)(1) 本件発明1の進歩性判断の基準日ア本件出願1について,優先権主張の根拠となる基礎出願(特願2000-278306号)の明細書(乙30)には,シリコンウェハについて何ら記載されていない。 したがって,上記基礎出願に基づく優先権主張は認められず,本件発明1の進歩性判断は,原出願日(平成13年9月13日)を基準に考えるべきである。 イ基礎出願において開示されている技術は,「光透過性材料」の切断方法に係る発明であり,半導体デバイス基板(又は半導体素子ウェハ)について 言及はあるが「シリコンウェハ」について記載はない。また,実施形態で は圧電素子ウェハが用いられて説明されており,それも多光子吸収による改質については言及がなく,形成される領域も溶融処理領域ではなくクラック領域である。 一方で,本件発明1は,本件明細書1を参酌すれば明らかなように,加工対象物がシリコンウェハであるが故に,多光子吸収による改質領域を形 成することができ,かつ,当該改質領域が溶融処理領域になることを特徴とした発明である。 このように,基礎出願に記載された「半導体デバイス基板」と,本件発明1の「シリコンウェハ」とでは,加工のメカニズム及び形成される領域の性質が全く異なるのであるから,本件発明1が基礎出願に記載されてい たとはいえない。 (2) 乙24公報に記載された発明乙24公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙24発明1」という。) 載されてい たとはいえない。 (2) 乙24公報に記載された発明乙24公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙24発明1」という。)。 構成1a:加工対象物である半導体ウエハーの内部に,分離の起点となる 加工変質層であるスクライブ・ラインを形成するレーザー加工機であって,構成1b:前記加工対象物である半導体ウエハーが載置されるステージと,構成1c:レーザー光を出射するレーザー光源と,構成1d:前記ステージに載置された前記加工対象物である半導体ウエハ ーの内部に,前記レーザー光源から出射されたレーザー光を集光し,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成させる集光用レンズと,構成1e:前記加工対象物である半導体ウエハーの分離予定ラインに沿って形成された前記加工変質層であるスクライブ・ラインを形成 するために,レーザ光の焦点を前記加工対象物である半導体ウ エハーの内部に位置させた状態で,前記分離予定ラインに沿って前記加工対象物である半導体ウエハーを載置したステージを直線的に移動させる処理部と,を備え,構成1f:前記加工対象物は半導体ウエハーであること構成1g:を特徴とするレーザー加工機。 (3) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙24発明1との対比本件発明1-1と乙24発明1とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点) 本件発明1-1と乙24発明1が,共に「ウェハ状の加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源 内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光する集光用レンズと,前記加工対象物の切断予定ラ インに沿って前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態」で作用する「制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射す るのに対し,乙24発明1は,パルスに限定されていない「レーザ光」を照射している点。 (相違点2)本件発明1-1は,「1パルスのパルスレーザ光の照射により」,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形 成しているのに対し,乙24発明1は,「改質スポット」に相当するものを 有しているのか記載されておらず,また改質領域が「複数のスポットによって」形成されているのか記載されていない点。 (相違点3)本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点 の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙24発明1では,ステージを移動させている点。 (相違点4)本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙24発明1では,改質領域がどのようにして形成され, どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点5)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し, 改質領域がどのようにして形成され, どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点5)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙24発明1では,加工対象物が「半導体ウエハー」であり,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1(相違点B)について乙24発明1ではレーザ光としてどのようなものを用いるかは限定されていないが,レーザ光にパルス波と連続波の2通りが存在していることは周知であり,乙24発明1を具体的に実施するに当たっては,いず れかを選択する必要があるから,パルス波を選択することは当業者が当然想到することである。そして,本件発明1-1において,パルス波に限定することによって得られる顕著な作用効果は,本件明細書1には記載されておらず,また技術常識からしても,そのようなものは存在しない。 また,本件発明1-1では,パルス幅を1μs以下としているものの, パルスレーザ光を採用した場合,どのようなパルス幅とするかは具体的技術の実施において当業者が適宜設計すべき事項である。そして,本件明細書1を参酌しても,上記のようなパルス幅にすることに,特に顕著な効果があるとは認められないので,当該パルス幅とすることも,当業者が容易に想到できることである。 しかも,乙24公報には,エキシマ・レーザーを用いることが開示されており(【0064】),エキシマ・レーザーはパルス波のレーザ光を用いるものであるから,乙24発明1においてパルス波を用いることは,乙24公報で示唆されている。 したがって,乙24発明1において,レーザ光としてパルス波を選択 し,パルス幅を1μs以下とすること ものであるから,乙24発明1においてパルス波を用いることは,乙24公報で示唆されている。 したがって,乙24発明1において,レーザ光としてパルス波を選択 し,パルス幅を1μs以下とすることは,当業者が適宜設計すべき事項であり,上記相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Bに係る構成についても同様である。 (イ) 相違点2(相違点C)について 本件発明1-1は,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成しているところ,本件明細書1の【0033】の記載からは,「改質スポット」とは,パルスレーザ光の1パルスのショットで形成される部分を指すと理解できる。そして,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成するとの表現は,改質領域が 1パルスのパルスレーザ光で形成された改質スポットが複数集まって形成されていることを指しているにすぎないと理解できる。 すなわち,パルスレーザ光を照射して改質領域を形成する際には,必ず,改質スポットが形成され,それが集まって改質領域が形成されていると理解されるから,乙24発明1において,レーザ光としてパルスレ ーザ光を選択した場合,乙24発明1の「加工変質層であるスクライ ブ・ライン」(本件発明1-1の「改質領域」に対応)は,複数の改質スポットから構成されることとなる。 したがって,乙24発明1において,レーザ光としてパルスレーザ光を選択した場合は,当然に相違点2に係る本件発明1-1の構成を有していることとなり,相違点2に係る本件発明1-1の構成の容易想到性 は,結局のところ,レーザ光としてパルスレーザ光を選択すること,すなわち,相違点1に係る本件発明1-1の構成の容易想到 成を有していることとなり,相違点2に係る本件発明1-1の構成の容易想到性 は,結局のところ,レーザ光としてパルスレーザ光を選択すること,すなわち,相違点1に係る本件発明1-1の構成の容易想到性に帰着する。 そして,相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が乙24発明1をもとに設計事項として容易に想到できるので,相違点2に係る本件発明1-1の構成も,当業者が容易に想到できる。 以上は,原告主張の相違点Cに係る構成についても同様である。 (ウ) 相違点3(相違点D)について乙24発明1では,ステージを移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成しているところ,レーザ光の焦点によって形成する改質領域を,加工対象物の内部において連続的に形成しようと考え た場合,加工対象物を移動させるか,レーザ光の集光点を移動させるか(又はその両方か)しかなく,これらは当業者が具体的技術の適用において適宜設計すべき事項である。 他方,本件発明1-1は,充足論において説明したように,レーザ光の集光点を移動させる発明であるが,このような構成によって得られる 作用効果については,本件明細書1には記載も示唆もされていない。 したがって,乙24発明1をもとに,ステージを移動させるのではなく,レーザ光の焦点を移動させるようにすることは,当業者が容易に想到できることである。 そして,焦点を移動させる際には,その移動速度を一定にするのは当 業者が当然に想到すべき事項であり,また,パルスレーザ光を採用した 場合,その繰り返し周波数を一定にすることも当業者が当然に想到すべき事項である。さらに,改質スポット間の距離を一定にすることも,精密加工を行う上では当然に当業者が想到する事項といえる。 以上からすると,上記相 り返し周波数を一定にすることも当業者が当然に想到すべき事項である。さらに,改質スポット間の距離を一定にすることも,精密加工を行う上では当然に当業者が想到する事項といえる。 以上からすると,上記相違点3に係る本件発明1-1の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 以上は,原告主張の相違点Dに係る構成についても同様である(エ) 相違点4についてa 乙25公報に記載された発明乙25公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙25発明A」という。)。 「加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより,加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法において,改質領域を多光子吸収によって形成するレーザ加工方法。」乙25発明Aは,加工対象物を複雑な形状に切断加工することを課題としており,その課題を解決するために多光子吸収による加工という構 成を採用し,その結果,自由な形状に加工できるという効果を奏する発明である(乙25公報3頁右上欄16行から左下欄2行まで)。 b 乙24発明1と乙25発明Aの組合せについて乙24発明1及び乙25発明Aは,加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより加工対象物の内部に改質領域を 形成している点で,技術分野が同一である。 また,乙25発明Aは,加工対象物を複雑な形状に切断加工することを課題とした発明であるところ,乙24発明1も,レーザ加工方法に関する発明である以上,自明の課題として複雑な形状に切断加工するという課題を有しており,課題も共通している。 一方で,乙24発明1に乙25発明Aを組み合わせることに格別な 困難性もない。 よって,乙24発明1をもとに乙25発明Aを組 工するという課題を有しており,課題も共通している。 一方で,乙24発明1に乙25発明Aを組み合わせることに格別な 困難性もない。 よって,乙24発明1をもとに乙25発明Aを組み合わせることで,改質領域を多光子吸収によって形成すること,すなわち,相違点4に係る本件発明1-1の構成を想到することは,当業者にとって容易なことである。 (オ) 相違点5(相違点E)についてa 乙24発明1では,加工対象物は「半導体ウエハー」であり,シリコンウェハであるとの限定はない。 しかしながら,レーザ加工によってシリコンウェハを切断することは周知慣用技術であり,また,レーザ加工によってシリコンウェハの 内部に集光点を位置させてマーキングをする技術も周知技術である。 そして,レーザ加工において加工対象物をシリコンウェハとした場合に条件次第でシリコンウェハを溶融可能であることも周知技術である。 一方で,本件発明1-1において,加工対象物をシリコンウェハとし,かつ,改質領域を溶融処理領域としたがゆえに得られる作用効果 については,本件明細書には記載も示唆もされていない。 したがって,乙24発明1をもとに,加工対象物をシリコンウェハとし,改質領域を溶融処理領域とすることは,当業者が適宜設計すべき事項であり,上記相違点5に係る本件発明1-1の構成は乙24発明1に基づいて容易に想到できる事項といえる。 b 原告が乙24公報に記載された本件発明1に最も近接した発明として主張する発明(以下「乙24発明1’」という。)は,乙24公報の【0049】の記載から,レーザの焦点がサファイア基板内部で結ばれていることにより,テーブル若しくは粘着性シートを損傷することなく,加工くずの発生もないという作用効果を奏する発明だといえる 4公報の【0049】の記載から,レーザの焦点がサファイア基板内部で結ばれていることにより,テーブル若しくは粘着性シートを損傷することなく,加工くずの発生もないという作用効果を奏する発明だといえる。 この作用効果に係る課題は,シリコンウェハにも妥当する課題であり, 「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を「シリコンウェハ」に換えると課題自体が存在しなくなるというものではない。 また,原告が指摘するように,本件特許1の原出願当時,シリコンウェハをレーザ光を照射して切断する技術においては,レーザ加熱に よって生じる溶融物の飛散による汚染等の問題があったところ,乙24発明1’は,このような加工くずの発生を防止するという課題のもとになされた発明であり,課題の点からも,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を「シリコンウェハ」に換えようとする動機付けがある。 そもそも,本件発明1-1の「シリコンウェハ」も,乙24発明1’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」も,共に「半導体材料からなるウェハ状のもの」であり,加工対象物として極めて類似したものであるから,これらを置換することは,当業者であれば当然想到することである。 したがって,原告主張の相違点Eに係る構成についても容易に想到できる事項といえる。 ウ原告主張の相違点Aについて(ア) 原告は,本件発明1-1と乙24公報に記載された発明(乙24発明1’)を対比すると,前記アのほかに相違点A(本件発明1-1は,「切 断の起点となる改質領域」を形成するレーザ加工装置であるのに対し,乙24発明1’は,「加工変質層であるスクライブ・ライン」を形成するものであって,「切断の に相違点A(本件発明1-1は,「切 断の起点となる改質領域」を形成するレーザ加工装置であるのに対し,乙24発明1’は,「加工変質層であるスクライブ・ライン」を形成するものであって,「切断の起点となる改質領域」を形成するものではない点)があると主張するが,以下のとおり,乙24公報には,加工変質層が切断の起点になることが開示されているので,原告主張の相違点Aは相違 点とならない。 (イ) 乙24公報には,「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となることが開示されていること乙24公報の【0049】及び【図2】には,レーザによって形成されたスクライブ・ラインに沿って分割することが記載されている。ここでレーザによって形成されたスクライブ・ラインとは,レーザによって 形成された「加工変質層であるスクライブ・ライン」を指すのは明らかであるから,乙24公報には,「加工変質層であるスクライブ・ライン」が分割の起点となること,すなわち切断の起点となることが開示されているといえる。 (ウ) 「加工変質層であるスクライブ・ライン」(スクライブ・ライン20 6)が切断の起点となることa 乙24公報の【0049】では「基板表裏両面にスクライブ・ラインを形成する」と記載されており,「基板表裏両面」と記載されている以上,スクライブ・ライン206とスクライブ・ライン207の両方を指しているのは明らかであるから,乙24公報には,明確にスクラ イブ・ライン206を切断の起点とすることが記載されている。 b 乙24発明1のようなスクライブ・ラインを形成し,スクライブ・ラインに沿って半導体ウエハーを分離する技術は,スクライブする工程と,スクライブ工程で形成されたクラックを進展させて切断(分離)する工程とからな 明1のようなスクライブ・ラインを形成し,スクライブ・ラインに沿って半導体ウエハーを分離する技術は,スクライブする工程と,スクライブ工程で形成されたクラックを進展させて切断(分離)する工程とからなり,乙24公報では,スクライブする工程でクラッ クすなわちスクライブ・ラインを形成し,ローラーによって荷重をかけることで,このクラックを厚さ方向に進展させて,半導体ウエハーを切断(分離)している。したがって,乙24発明1におけるスクライブ・ラインは,これが厚さ方向に進展することで切断(分離)する以上,切断(分離)の起点といえるから,スクライブ・ライン206 は分離の起点といえる。 乙24発明1において,スクライブ・ライン206のほかにスクライブ・ライン207が形成されていたとしても,両方が切断(分離)の起点になっていると理解すれば足りる。 なお,原告の主張するように,スクライブ・ライン207の上部からローラーを押圧して切断する場合には,上部から切断されることに なるが,その場合も,少なくともスクライブ・ライン206が起点となってその下部に亀裂が形成されるのは明らかであるから,スクライブ・ライン206が切断の起点になる。 c 乙24公報の請求項4に係る発明は,スクライブ・ライン207を必須とせず,スクライブ・ライン206しか有しないものも想定して おり,この点からもスクライブ・ライン206が切断の起点となるといえる。 エ小括以上より,本件発明1-1と乙24発明1との相違点に係る構成は,乙24発明1に,乙25発明A及び周知技術を適用することにより,当業者 が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (4) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙24発明1との対比乙 5発明A及び周知技術を適用することにより,当業者 が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (4) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙24発明1との対比乙24公報には,ステージを移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成することが開示されているが,それ以上に本件発明1 -2の構成要件1Hの内容については開示されていない。 したがって,本件発明1-2と乙24発明1とを対比すると,両者は,相違点1ないし5に加えて,次の点で相違する。 (相違点6)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波 数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節す ることで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」のに対し,乙24発明1は,ステージ(載置台)を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する点。 イ相違点(相違点6及び相違点F)に係る構成の容易想到性 (ア) 相違点3について述べたように,乙24発明1をもとに,ステージを移動させるのではなく,レーザ光の焦点を移動させるようにすることは,当業者が容易に想到できることである。 そして,焦点を移動させる際には,その移動速度を調節するのは当業者が当然に想到すべき事項であり,また,パルスレーザ光を採用した場 合,その繰り返し周波数を調節することも当業者が当然に想到すべき事項である。さらに,改質スポット間の距離を一定にすることも,精密加工を行う上では,当然に当業者が想到することといえる。 したがって,相違点6に係る本件発明1-2の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項 ット間の距離を一定にすることも,精密加工を行う上では,当然に当業者が想到することといえる。 したがって,相違点6に係る本件発明1-2の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 (イ) 原告は,本件発明1-2の「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることは容易でないと主張するが,改質スポットの間の距離は,パルスレーザ光のパルス間隔と,ステージの移動速度を適宜調節することで,必然的に制御されるものである。 そして,パルスレーザ光のパルス間隔も,ステージの移動速度も,精 密加工の分野においては,当業者が当然に制御するものであるから,「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることは,当業者にとって容易に想到できることである。 したがって,原告主張の相違点Fに係る本件発明1-2の構成を想到することについても,当業者にとって容易なことである。 ウ小括 以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙24発明1との相違点1ないし6に係る構成は,乙24発明1に,乙25発明A及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張) (1) 本件発明1の進歩性判断の基準日ア基礎出願(特願2000-278306号)の明細書には,「シリコンウェハ」という文言こそないものの,「シリコンウェハ」が代表例であることが当業者に明らかな「半導体デバイス基板」を加工対象物とする旨の記載がある(【0001】等)。 したがって,当該明細書に接した当業者は,当該「半導体デバイス基板」の代表例として「シリコンウェハ」を当然に想起するから,当該明細書には「シリコンウェハ」を加工対象物とし 0001】等)。 したがって,当該明細書に接した当業者は,当該「半導体デバイス基板」の代表例として「シリコンウェハ」を当然に想起するから,当該明細書には「シリコンウェハ」を加工対象物とした発明も記載されていたといえるから,上記基礎出願に基づく優先権主張は認められるべきである。 イもっとも,被告は,公知日が本件特許1の原出願日と優先日の間にある 証拠を提出していないから,本件発明1が優先権の利益を享受できるか否かは本件発明1の進歩性には影響しない。 (2) 乙24公報に記載された発明乙24公報には,本件発明1と対比すべき発明として,被告が主張する乙24発明1は記載されていない。 乙24公報に記載された本件発明1に最も近接した発明は,以下の構成要素を有する乙24発明1’である(被告主張に係る乙24発明1と相違する構成要素には「構成1a’」のように,「’」を付し,相違する部分に下線を付す。)。 構成1a’: 加工対象物である,サファイア基板に窒化物半導体を積層さ せた窒化物半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスク ライブ・ラインを形成するレーザー加工機であって,構成1b’: 前記加工対象物であるサファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーが載置されるステージと,構成1c’: レーザー光を出射するレーザー光源と,構成1d’: 前記ステージに載置された前記加工対象物であるサファイア 基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,前記レーザー光源から出射されたレーザー光を集光し,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成させる集光用レンズと,構成1e’: 前記加工対象物であるサファイア基板に窒化物半導体を積層 させた窒化物半導体ウエハーの分離 レーザー光を集光し,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成させる集光用レンズと,構成1e’: 前記加工対象物であるサファイア基板に窒化物半導体を積層 させた窒化物半導体ウエハーの分離予定ラインに沿って形成された前記加工変質層であるスクライブ・ラインを形成するために,レーザ光の焦点を前記加工対象物である半導体ウエハーの内部に位置させた状態で,前記分離予定ラインに沿って前記加工対象物であるサファイア基板に窒化物半導体を積 層させた窒化物半導体ウエハーを載置したステージを直線的に移動させる処理部と,を備え,構成1f’: 前記加工対象物はサファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーであること構成1g’: を特徴とするレーザー加工機。 (3) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙24発明1’との対比本件発明1-1と上記乙24発明1’との間の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「ウェハ状の加工対象物の内部に,改質領域を形成するレーザ加工装置 であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光する集光用レンズと,レーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,レーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部と,を備えるレーザ加工装置」であ る点。 (相違点A)本件発明1-1は,「切断の起点となる改質領域」を形成するレーザ加工装置であるのに対し,乙24発明1’は,「加工変質層であるスクライブ・ライン」を形成するものであって,「切断の起点となる改質領域」を形成す るものではない点。 (相違点B)本 レーザ加工装置であるのに対し,乙24発明1’は,「加工変質層であるスクライブ・ライン」を形成するものであって,「切断の起点となる改質領域」を形成す るものではない点。 (相違点B)本件発明1-1の「レーザ光源」は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を出射するものであるのに対し,乙24発明1’の「レーザ光源」は,「パルスレーザ光」を出射するものとはされていない点。 (相違点C)本件発明1-1の「集光用レンズ」は,「レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる」ように作用するものであるのに対し,乙24発明1’の「集光用レンズ」はそのように作 用するものではない点。 (相違点D)本件発明1-1の「制御部」は,「隣り合う改質スポット間の距離が略一定となるように加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の改質スポットによって改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点 を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し 周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる」機能を有するのに対し,乙24発明1’の「制御部」は,そのような機能を有するものではない点。 (相違点E) 本件発明1-1の「加工対象物」は,「シリコンウェハ」であるのに対し,乙24発明1’の「加工対象物」は,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」である点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点1(相違点B)について 被告主張の相違点1は,正しくは前記アの相 基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」である点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点1(相違点B)について 被告主張の相違点1は,正しくは前記アの相違点Bのように特定されるべきものである。 そして,乙24発明1’から相違点Bに係る本件発明1-1の構成に到達することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 すなわち,本件特許1の原出願前においては,シリコンウェハの内部 に集光点を有するレーザ光を照射することで,シリコンウェハの分割加工に好適な分割の起点を形成することができること自体が知られていなかったのであり,当然に,そのレーザ光としてパルス光が適しているのか,連続光が適しているのかといった知見や,パルス光とした場合に,どの程度のパルス幅が適しているのか,といった知見は当業者の間には 全くなかったものである。乙24公報にも当然にそのような知見は示されていない。 そのような状況の中で,乙24発明1’から相違点Bに係る本件発明1-1の構成に到達するためには,多大な試行錯誤が必要であることは明らかであるから,相違点Bに係る本件発明1-1の構成は,当業者が 適宜設計すべき事項とはいえない。 なお,被告は,乙24公報にエキシマ・レーザーを用いることが開示されていると指摘するが,乙24発明1’は,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成する」ことを前提とした発明であり,エキシマ・レーザーの波長は,シリコンを透過しない紫外領域である。したが って,乙24公報でエキシマ・レーザーが好適であるとされているからといって,乙24発明1’のレーザ加工機を「シリコンウェハの内部に切断の起点となる改質 リコンを透過しない紫外領域である。したが って,乙24公報でエキシマ・レーザーが好適であるとされているからといって,乙24発明1’のレーザ加工機を「シリコンウェハの内部に切断の起点となる改質領域を形成する」ものに改変した場合に,当業者が「パルス波を選択すること」を容易に想到し得たとはいえない。 また,相違点Bに係る本件発明1-1の構成は,シリコンウェハの切 断加工に適した「切断の起点となる改質領域」を形成できるという,従来技術では得ることができなかった極めて顕著な効果をもたらすものである。 (イ) 相違点2(相違点C)について被告主張の相違点2は,前記アの相違点Cに相当するものと解される。 そして,前記(ア)のとおり,乙24発明1’から相違点Bに係る本件発明1-1の構成に到達することは,当業者が容易に想到し得たものではない。そうである以上,乙24発明1’から相違点Cに係る本件発明1-1の構成に到達することも,当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ) 相違点3(相違点D)について a 本件発明1-1における「集光点を移動させる」という構成は,「ステージを移動させる」ことを除外していないから,被告主張の相違点3のうち,集光点を移動させるかステージを移動させるかという点は,本件発明1-1と乙24発明1’との間の相違点ではない。 したがって,その点に係る容易想到性の主張は,本件発明1-1の 進歩性の有無とは無関係である。 b また,相違点3の容易想到性に関する被告のその他の主張は,パルスレーザ光を採用することの容易想到性が肯定されて初めて成り立つものであり,相違点1について述べたとおり,上記の容易想到性は肯定されないから,被告の上記主張は前提を欠く。 なお,同様の理由で,相違点D ーザ光を採用することの容易想到性が肯定されて初めて成り立つものであり,相違点1について述べたとおり,上記の容易想到性は肯定されないから,被告の上記主張は前提を欠く。 なお,同様の理由で,相違点Dに係る本件発明1-1の構成に到達 することが容易想到であったともいえない。 (エ) 相違点4について「改質領域」が「多光子吸収によって形成された領域」であることは,本件発明1-1の要件ではないから,被告主張の相違点4は,本件発明1-1と乙24発明1’との相違点ではない。 したがって,その点に係る容易想到性の主張は,本件発明1-1の進歩性の有無とは無関係である。 (オ) 相違点5(相違点E)について被告主張の相違点5に対応するものとして,本件発明1-1と乙24発明1’との間には,少なくとも前記アの相違点Eが存在している。 すなわち,乙24公報の実施例2についての記載から把握されるレーザー加工機の発明は,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を加工対象とする発明のみであり,同記載から「半導体ウエハー」全般を加工対象とし得る加工機の発明を把握することはできない。 そして,乙24発明1’から相違点Eに係る本件発明1-1の構成に到達することは,以下のとおり,当業者が容易に想到し得たものではない。 a 乙24公報の【0001】ないし【0013】には,乙24公報に記載された発明が,「サファイア基板やスピネル基板上に窒化物半導体 を積層した窒化物半導体ウエハー」の加工に係る特有の課題を解決し ようとしたものである旨の記載がある。一方,乙24公報のいずれの箇所にも,「半導体ウエハー」全般の加工に係る課題の解決に係る記載はない。 そうすると,乙24公報に接した当業者が,乙24 ようとしたものである旨の記載がある。一方,乙24公報のいずれの箇所にも,「半導体ウエハー」全般の加工に係る課題の解決に係る記載はない。 そうすると,乙24公報に接した当業者が,乙24発明1’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を 「シリコンウェハ」に換えようとする動機付けはないというべきである。なぜならば,「シリコンウェハ」と「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」とを比較すると,両者は,結晶構造が相違し,光の透過率,屈折率等の光学特性,劈開性,硬度等の機械特性といったレーザ加工に関係する種々の物性が相互に大きく 相違するため,乙24発明1’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を「シリコンウェハ」に置き換えた場合には,乙24発明1’の課題自体が存在しないことになり,その意義が失われてしまうからである。 b 本件特許1の原出願前においては,乙24発明1’の「サファイア 基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に集光点を有するレーザ光を照射してスクライブ・ラインを形成する」技術がシリコンウェハに対する切断の起点の形成にも使用できるという知見自体がなかったものである。そのような状況においては,乙24発明1’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体 ウエハー」を「シリコンウェハ」に換えようとする動機付けはない。 なお,「レーザ加工によってシリコンウェハを切断すること」は,本件特許1の原出願前に慣用されていた技術でもない。その時点において,「レーザ加工によってシリコンウェハを切断すること」について記載した文献は存在していたものの,レーザー加熱によって生じる溶融 物の飛散による汚染等 用されていた技術でもない。その時点において,「レーザ加工によってシリコンウェハを切断すること」について記載した文献は存在していたものの,レーザー加熱によって生じる溶融 物の飛散による汚染等の問題を克服することができなかったため,実 用に供されることすらなかった。 仮に,乙24発明1’について,被告が主張するように乙24公報の【0049】から「加工くずの発生を防止する」という課題を把握できるとしても,その課題は,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」の「裏面側にスクライブ・ラインを設 ける」ことに限っての課題であって,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」以外の加工対象物についても該当することが示されている課題ではないし,「加工対象物の切断」に当てはまる課題でもない。 特に,「加工対象物の切断」に当てはまる課題でないことについては, 乙24公報の実施例2において,加工対象物の切断に際しては,溝部の表面にスクライブ・ライン207が形成されることとされており,加工くずの発生防止がされていないことからも,明らかである。 (カ) 相違点Aについてa 本件発明1-1と乙24発明1’との間に相違点Aが存在すること (a) 被告が主張する乙24発明1の「加工変質層」を,「分離の起点となる加工変質層」ということはできず,前記アのとおり,本件発明1-1と乙24発明1’との間には相違点Aが存在している。 なぜならば,乙24公報には,当該「加工変質層」が「分離の起点となる加工変質層」である旨の記載は一切ない上,乙24発明1 の実施例2を表している【図2】(c)や【0046】ないし【0047】の記載に照らせば,乙24発明1の実施例2において「分離の起点」と る加工変質層」である旨の記載は一切ない上,乙24発明1 の実施例2を表している【図2】(c)や【0046】ないし【0047】の記載に照らせば,乙24発明1の実施例2において「分離の起点」となるのは,同【図2】(c)に示される「加工変質層206」ではなく「スクライブ・ライン207」とみるのが自然だからである。 (b) 乙24公報には,スクライブ・ライン206が分離の起点となる ことを示す記載はなく,スクライブ・ライン206は「分離ガイド」(【0022】)というべき役割を担うものであって,分離の起点ではないと解するのが妥当である。 また,乙24公報の【0047】で「溝部(スクライブ・ライン)に沿ってローラーによって加重をかけ」るというのは,切断対象物 の表面に設けられたスクライブ溝に,当該スクライブ溝を拡大する方向の力が作用するように,外力を付加すると考えるのが自然であり,乙24公報の【図2】(C)で見れば,切断対象物の下側の面のスクライブ・ライン207に対向する部分をローラーで押すことを意味していると解するのが自然である。そして,そのように外力を 加えた場合,作用点に位置するスクライブ・ライン207は分離の起点となり得るが,支点近傍に位置するスクライブ・ライン206が分離の起点とならないことは明らかである。 これに対し,被告は,乙24公報の請求項4に係る発明の発明者は,スクライブ・ライン207を必須とせず,スクライブ・ライン 206しか有しないものも想定していた旨主張するが,【0009】,【0010】及び【0067】を含む乙24公報の記載全体を考慮すれば,当業者が,そのような発明を乙24公報から抽出することはできないというべきである。 b 相違点Aに係る構成の容易想到性について 10】及び【0067】を含む乙24公報の記載全体を考慮すれば,当業者が,そのような発明を乙24公報から抽出することはできないというべきである。 b 相違点Aに係る構成の容易想到性について 乙24発明1’の「加工変質層であるスクライブ・ライン」を「切断の起点となる改質領域」に変更することが容易であったことを示す証拠はないし,乙24発明1’をそのように変更する動機付けもない。 したがって,乙24発明1’において,その相違点Aに係る本件発明1-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たもので はない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙25公報の存在に関わらず,乙24公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 本件発明1-2の進歩性 ア本件発明1-2と乙24発明1’との対比本件発明1-2は,相違点6における「ステージ(載置台)を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する」という構成を除外していないから,被告主張の相違点6は,相違点の特定として相当でない。 そこで,本件発明1-2と乙24発明1’との間の相違点(相違点AないしEに加えての相違点)は,正しくは次のように特定されるべきである。 (相違点F)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節す ることで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙24発明1’は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について 載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙24発明1’は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について (ア) 被告主張の相違点6のうち,集光点を移動させるかステージを移動させるかという点は,本件発明1-2と乙24発明1との間の相違点ではないから,その点に係る容易想到性の主張は,本件発明1-2の進歩性の有無とは無関係である。 (イ) 相違点6の容易想到性に関する被告のその他の主張は,パルスレーザ 光を採用することの容易想到性が肯定されて初めて成り立つものである ところ,相違点1について述べたとおり,乙24発明1’においてパルスレーザ光を採用することの容易想到性は肯定されない。また,乙24発明1’において本件発明1-2の「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることが容易であったことを示す証拠もない。 なお,同様の理由で,相違点Fに係る本件発明1-2の構成に到達す ることが容易想到であったともいえない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙25公報の存在に関わらず,乙24公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 争点3-2(本件発明1の乙26公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-2))について(被告の主張)(1) 乙26公報に記載された発明乙26公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載 されている(以下,この発明を「乙26発明1」という。)。 構成1a:加工対象物であるガラス物体の内部に,分離の起点となる破断点を形成するレーザー加工装置であって,構成1b:前記加工対象物であるガラス物体が載置され の発明を「乙26発明1」という。)。 構成1a:加工対象物であるガラス物体の内部に,分離の起点となる破断点を形成するレーザー加工装置であって,構成1b:前記加工対象物であるガラス物体が載置されるローラーと,構成1c:パルス時間約10nsのパルスレーザ光を出射するレーザ光源 と,構成1d:前記ローラーに載置された前記加工対象物であるガラス物体の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で微小亀裂を形成させるレーザーレンズと, 構成1e:隣り合う前記微小亀裂間の距離が1mm間隔となるように前記 加工対象物であるガラス物体の分割線に沿って形成された複数の前記微小亀裂によって前記破断点を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物であるガラス物体の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を10Hzとし,パルスレーザ光の集光点がガラス物体に対して相対的 に移動する速度を,破断点が1mm間隔で形成されるような速度として,ガラス物体を回転させることで,前記分割線に沿ってパルスレーザ光の集光点を加工対象物であるガラス物体に対し相対移動させる機能を有するローラーの制御部と,を備え,構成1f:前記加工対象物がガラス物体である 構成1g:ことを特徴とするレーザー加工装置。 構成1h:前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の相対的に移動する速度を調節することで,隣り合う前記微小亀裂間の距離を制御し,前記ローラーの移動を制御すること (2) 乙26公報の引用例適格性について原告は,乙26公報の実施例が実施不可能であるとして,引用例としての適格性を欠く旨主張す 亀裂間の距離を制御し,前記ローラーの移動を制御すること (2) 乙26公報の引用例適格性について原告は,乙26公報の実施例が実施不可能であるとして,引用例としての適格性を欠く旨主張するが,引用文献は,そこに一定の技術的思想が開示されていれば,引用例としての適格性を有し,当該引用文献記載の発明が実施可能なものであるか否かは,引用例適格性を認める上で問題とならないと解 すべきである。 そして,乙26公報には,ガラス物体を破断ないし分離するために適切な破断点を形成する方法において,微小亀裂をガラス壁又はガラス板の内部に形成するとの技術的思想が開示されていると認められる。したがって,乙26公報は,引用例としての適格性を有し,仮に,乙26公報の引用例適格性 が問題とされた無効2005-80166号事件の審決(甲21)において 認定されたように,乙26公報に記載された実施例の条件では実施が不可能であったとしても,そのことは,進歩性判断における引用例としての適格性を認める妨げとならない。 (3) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙26発明1との対比 本件発明1-1と乙26発明1とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明1-1と乙26発明1は,共に「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物 が載置される載置台と,パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集光用レンズと,隣り合う前記改質 象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集光用レンズと,隣り合う前記改質スポット間の距離が略一 定となるように前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点が加工対象物に対して相対的に移動する速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルス レーザ光の集光点を加工対象物に対して相対的に移動させる機能を有する制御部と,を備えることを特徴とする」である点。 (相違点1)本件発明1-1の「加工対象物」は,「ウェハ状の加工対象物」であるのに対し,乙26発明1の「加工対象物」は,「ローラー」で回転される形状 の「ガラス物体」(アンプル)である点。 (相違点2)本件発明1-1の「集光点」は「移動」するのに対し,乙26発明1の「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)に対し相対移動」させられる点。 (相違点3)本件発明1-1の「集光点」は「直線的に」「移動」するのに対し,乙2 6発明1の「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)を回転させることで,…加工対象物(ガラス物体)に対し相対移動」させられる点。 (相違点4)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成された溶融処理領域であるのに対し,乙26発 明1では,加工対象物が「ガラス物体」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成されたか否か,及び,溶融しているか否かが明確ではない点。 イ 形成された溶融処理領域であるのに対し,乙26発 明1では,加工対象物が「ガラス物体」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成されたか否か,及び,溶融しているか否かが明確ではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1及び3について乙26公報の【0013】ないし【0016】,【0037】には,乙 26公報の実施例にあるアンプルのほかに,「ガラス板」の内部に微小亀裂を設けて破断点を形成することが記載されているから,乙26公報に接した当業者は,「加工対象物」である「ガラス物体」(アンプル)を「ローラー」で回転する構成に代えて,「ウェハ状」である「ガラス板」を「加工対象物」とする構成を用いること,及び,「ウェハ状の加工対象 物」である「ガラス板」の内部を「集光点」が「直線的」に移動する構成を用いることにつき,示唆を受けるといえる。 (イ) 相違点2について「集光点」自体を移動させる構成とするか,「加工対象物」を動かして,「集光点」が「加工対象物」に対し相対的に移動する構成とするかは, 当業者が適宜設計可能な事項である。 (ウ) 相違点4(相違点A)について本件発明1-1と乙24発明1との相違点4について述べたように,乙25発明Aは,改質領域を多光子吸収によって形成するレーザ加工方法である。 そうすると,乙26発明1及び乙25発明Aは,共に加工対象物であ るガラス物体の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより加工対象物の内部に改質領域を形成している点で,技術分野が同一である。また,乙25発明Aは,加工対象物を複雑な形状に切断加工することを課題とした発明であるところ,乙26発明1もレーザ加工方法に関する発明である以上,自明の課題として複雑な形状に切断加工する 一である。また,乙25発明Aは,加工対象物を複雑な形状に切断加工することを課題とした発明であるところ,乙26発明1もレーザ加工方法に関する発明である以上,自明の課題として複雑な形状に切断加工するとい う課題を有しており,課題も共通している。一方で,乙26発明1に乙25発明Aを組み合わせることに格別な困難性もない。よって,乙26発明1をもとに乙25発明Aを組み合わせることで改質領域を多光子吸収によって形成することは,当業者にとって容易に想到できるといえる。 また,本件発明1-1と乙24発明1との相違点5について述べたよ うに,レーザ加工によってシリコンウェハを切断することは周知慣用技術であり,また,レーザ加工によってシリコンウェハの内部に集光点を位置させてマーキングをする技術も周知技術である。そして,レーザ加工において,加工対象物をシリコンウェハとした場合,条件次第でシリコンウェハを溶融可能であることも周知技術である。 原告は,乙26発明1の課題や目的の特殊性を考慮すると,乙26発明1には,加工対象物たるガラス物体をシリコンウェハに置換することに対して阻害要因があると主張するが,乙26発明1を過度に狭くとらえており,妥当ではない。 ウ小括 以上より,本件発明1-1と乙26発明1との相違点に係る構成は,乙 26発明1に,乙25発明Aを組み合わせ,かつ,周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (4) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙26発明1との対比 本件発明1-2と乙26発明1とを対比すると,両者には,相違点1ないし4のほか,構成要件1Hと乙26発明1の構成1hとの間における次の相違点が存在する。 (相違点 2と乙26発明1との対比 本件発明1-2と乙26発明1とを対比すると,両者には,相違点1ないし4のほか,構成要件1Hと乙26発明1の構成1hとの間における次の相違点が存在する。 (相違点5)本件発明1-2と乙24発明1との相違点6と同様の相違点 イ相違点(相違点5及び相違点B)に係る構成の容易想到性相違点5及び原告主張の相違点Bに係る本件発明1-2の構成については,本件発明1-2と乙24発明1との相違点6及び相違点Fと同様に,当業者が容易に想到できる事項といえる。 ウ小括 以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙26発明1との相違点1ないし5に係る構成は,乙26発明1に,乙25発明Aを組み合わせ,かつ,周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張) (1) 乙26公報に記載された発明乙26公報には,レーザー加工装置がパルスレーザ光の繰り返し周波数とパルスレーザ光の集光点の相対的に移動する速度を調節する機能や,微小亀裂間の距離を制御する機能を有する旨の記載は一切ない。 したがって,被告が主張する乙26発明1の構成1hについては,これを 具備する乙26発明1が乙26公報に記載されているとはいえない。 (2) 乙26公報の引用例適格性について乙26公報は,それに記載される実施例が実施不可能であるとして,無効2005-80166号事件の審決(甲21)により引用例としての適格性が否定された文献であり,本件発明1の原出願時の技術常識に照らして当業者が実施可能であるように記載されていないものである。 したがって,乙26公報は,引用例としての適格性を欠く。 (3) 本件発 定された文献であり,本件発明1の原出願時の技術常識に照らして当業者が実施可能であるように記載されていないものである。 したがって,乙26公報は,引用例としての適格性を欠く。 (3) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙26発明1との対比本件発明1-1と乙26発明1との間の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点)被告主張の一致点と同じ。 (相違点1,3)被告主張の相違点1及び3と同じ。 (相違点A) 本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であるのに対し,乙26発明1では,加工対象物が「ガラス物体」である点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点1及び3について当業者が乙26公報の記載から被告主張に係る示唆を受けることは, 特に争わない。 (イ) 相違点2について本件発明1-1における「集光点を移動させる」という構成は「加工対象物を移動させる」ことを除外していないから,被告主張の相違点2は,本件発明1-1と乙26発明1との間の相違点ではない。 (ウ) 相違点4(相違点A)について a 「改質領域」が「多光子吸収によって形成された領域」であることは,本件発明1-1の要件ではないから,その部分は,本件発明1-1と乙26発明1との間の相違点ではない。 ただし,被告主張の相違点4に対応するものとして,本件発明1-1と乙26発明1との間には,少なくとも相違点Aが存在している b 相違点Aについて本件特許の原出願前においては,乙26公報に示される「ガラス物体の内部に微小亀裂を形成する」技術がシリコンウェハに対する切断の起点の形成にも使用できるという知見自体がなかったのであり,そのような状況においては,乙26公 いては,乙26公報に示される「ガラス物体の内部に微小亀裂を形成する」技術がシリコンウェハに対する切断の起点の形成にも使用できるという知見自体がなかったのであり,そのような状況においては,乙26公報に記載される発明の「ガラス物 体」を「シリコンウェハ」に置換する動機付けはない。 乙26公報の「本発明の目的は,破断開封アンプルを再現できかつ安全に開口する方法で破断開封アンプルの破断領域に所定の破断点を形成することにある。特に,破断開封が困難なアンプルを開封するときに生ずる傷の発生を避け,かつ,アンプルの開封で生ずるアンプル 内の医薬品の損傷を妨げることを意図する。」(【0013】)という記載等によれば,乙26発明1は,ガラス物体,特に,破断開封アンプル特有の課題を解決しようとした発明であることが明らかである。そのような乙26発明1の課題や目的の特殊性を考慮すると,同発明には,加工対象物たるガラス物体をシリコンウェハに置換することに対 して阻害要因があるというべきである。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙25公報の存在に関わらず,乙26公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 本件発明1-2の進歩性 ア本件発明1-2と乙26発明1との対比前記(1)のとおり,乙26公報には,被告が主張する乙26発明1の構成1hは記載されていない。 したがって,本件発明1-2と乙26発明1との間の相違点(相違点1,3及びAに加えての相違点)は,正しくは次のように特定されるべきであ る。 (相違点B)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調 ,正しくは次のように特定されるべきであ る。 (相違点B)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置 台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」,という構成を有しているのに対し,乙26発明1は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性乙26発明1において,改質スポット間の距離を制御することの必要性 を示す証拠はなく,「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることが容易であったことを示す証拠もないから,相違点Bに係る構成は,当業者が容易に想到し得た事項ではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙25公報の存在に関わ らず,乙26公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 7 争点3-3(本件発明1の乙57公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-3))について(被告の主張) (1) 乙57公報に記載された発明 ア乙57公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙57発明1」という。)。 構成a:ウェハ状の加工対象物の内部に,分割の起点となるスクライブ溝を形成するレーザ加工装置であって,構成b:前記加工対象物を移動させる装置と, 構成c:レーザ光を出射するレーザ光源と,構成d:前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,スクライブ溝を形成させる集光用レンズと,構成e:前記加工対象物の分割予定ラインに沿って形成された前記スク 光源と,構成d:前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,スクライブ溝を形成させる集光用レンズと,構成e:前記加工対象物の分割予定ラインに沿って形成された前記スクライブ溝を形成するために,レーザ光の焦点を前記加工対象物 の内部に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直線的に移動させる機能を有する処理部と,を備え,構成f:前記加工対象物はGaP単結晶基板に電極が積層されたものであること 構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 イ構成aについての補足説明乙57公報の実施例1においては,GaP単結晶基板の裏面にオーム性電極15及び金16が積層されているところ,当該実施例では,GaP結晶を透過するレーザ光を用いており,このレーザ光は少なくともオーム性 電極15を透過することはないため,焦点が加工対象物の内部に形成されると考えられる。 また,乙57公報の特許請求の範囲の文言上も,「裏面近傍に焦点を結」ぶとしており,裏面に焦点を結ぶとしていない以上,内部に焦点が結ばれていると考えるのが妥当である。 したがって,構成aのとおり,分割の起点が加工対象物の内部に形成さ れると認定するのが相当である。 (2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙57発明1との対比本件発明1-1と乙57発明1とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 なお,主位的には,相違点として以下の1ないし7を主張するが,仮に,乙57発明1において,分割の起点が加工対象物の内部ではなく加工対象物の裏面側に形成されていると認定されるならば,これらに加えて,相違点8が存在することとなる。 (一致点) 本件発明1-1と乙57発明1 いて,分割の起点が加工対象物の内部ではなく加工対象物の裏面側に形成されていると認定されるならば,これらに加えて,相違点8が存在することとなる。 (一致点) 本件発明1-1と乙57発明1が,共に「ウェハ状の加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光する集光用レンズと,前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記改質領域を形成するた めに,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態」で作用する「制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射す るのに対し,乙57発明1は,パルスに限定されていない「レーザ光」を照射している点。 (相違点2)本件発明1-1は,「1パルスのパルスレーザ光の照射により」,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形 成しているのに対し,乙57発明1は,「改質スポット」に相当するものを 有しているのか記載されておらず,また,改質領域が「複数のスポットによって」形成されているのか記載されていない点。 (相違点3)本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点 の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙57発明1では,加工対象物を移動させている点。 (相違点4)本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙57発明1では 「集光点を移動させる」のに対し,乙57発明1では,加工対象物を移動させている点。 (相違点4)本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙57発明1では,改質領域がどのようにして形成され, どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点5)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であるが,乙57発明1では,加工対象物がGaP単結晶基板に電極が積層されたものである点。 (相違点6)本件発明1-1は,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙57発明1は,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点。 (相違点7)本件発明1-1は,「加工対象物が載置される載置台」を備えるのに対し, 乙57発明1では,加工対象物を移動させる装置は備えているが,それが載置台か否か明確ではない点。 (相違点8)(予備的な相違点)本件発明1-1は,加工対象物の内部に改質領域を形成するのに対し,乙57発明1は,加工対象物の裏面にスクライブ溝(改質領域に相当)を 形成する点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1について乙57発明1では,レーザ光としてどのようなものを用いるかは限定されていないが,レーザ光にパルス波と連続波の2通りが存在していることは周知であり,乙57発明1を具体的に実施するに当たっては,い ずれかを選択する必要があり,パルス波を選択することは当業者が当然想到することである。 また,乙57発明1のように,レーザによってスクライブを形成するレーザスクライブ法において,パルスレーザ光を照射することは周知慣用技術である(特開平9-45636号公報(以下「乙61公報」とい う。)の【0002】参照)。 一方で, クライブを形成するレーザスクライブ法において,パルスレーザ光を照射することは周知慣用技術である(特開平9-45636号公報(以下「乙61公報」とい う。)の【0002】参照)。 一方で,本件発明1-1において,パルス波に限定することによって得られる顕著な作用効果については,本件明細書1に記載されておらず,技術常識からしても,そのようなものはない。 しかも,相違点1に示したように,本件発明1-1では,パルス幅を 1μs以下としているものの,パルスレーザ光を採用した場合,どのようなパルス幅とするかは具体的技術の実施において当業者が適宜設計すべき事項である。そして,本件明細書1を参酌しても,相違点1に示すようなパルス幅にすることに,特に顕著な効果があるとは認められないので,当該パルス幅とすることも,当業者が容易に想到できることであ る。 したがって,乙57発明1において,レーザ光としてパルス波を選択し,パルス幅を1μs以下とすることは当業者が適宜設計すべき事項であり,相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が容易に想到できるものである。 (イ) 相違点2について 本件発明1-1は,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成している。 ここで「複数の改質スポットによって」改質領域を形成するとの表現は,改質領域が1パルスのパルスレーザ光で形成された改質スポットが複数集まって形成されていることを指しているにすぎないと理解できる。 すなわち,パルスレーザ光を照射して改質領域を形成する際には,必ず改質スポットが形成され,それが集まって改質領域が形成されていると理解される。そうすると,乙57発明1において,レーザ光としてパルスレーザ光を選択した場合,乙5 射して改質領域を形成する際には,必ず改質スポットが形成され,それが集まって改質領域が形成されていると理解される。そうすると,乙57発明1において,レーザ光としてパルスレーザ光を選択した場合,乙57発明1の「スクライブ溝」(本件発明1-1の「改質領域」に対応)は,複数の改質スポットから構成され ることとなる。 したがって,乙57発明1において,レーザ光としてパルスレーザ光を選択した場合は,当然に相違点2に係る本件発明1-1の構成を有していることとなり,相違点2に係る本件発明1-1の構成の容易想到性は,結局のところ,レーザ光としてパルスレーザ光を選択すること,す なわち,相違点1に係る本件発明1-1の構成の容易想到性に帰着する。 そして,相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が乙57発明1をもとに設計事項として容易に想到できるので,相違点2に係る本件発明1-1の構成も,当業者が容易に想到できる。 (ウ) 相違点3について 相違点3に係る本件発明1-1の構成は,本件発明1-1と乙24発明1との相違点3と同様の理由により,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 (エ) 相違点4について相違点4に係る本件発明1-1の構成は,本件発明1-1と乙24発 明1との相違点4と同様の理由により,乙57発明1に乙25発明Aを 組み合わせることで容易に想到できる事項といえる。 (オ) 相違点5について乙57発明1の加工対象物は,GaP単結晶基板に電極が積層されたものであり,シリコンウェハではない。 しかしながら,乙57公報には,「将来さらに波長エネルギーの小さい レーザー光の加工機が得られれば,さらにエネルギー禁止帯幅の小さい半導体結晶にも適用できる」と記載されており( ェハではない。 しかしながら,乙57公報には,「将来さらに波長エネルギーの小さい レーザー光の加工機が得られれば,さらにエネルギー禁止帯幅の小さい半導体結晶にも適用できる」と記載されており(3頁左上欄10行ないし13行),GaP単結晶基板以外に適用することが示唆されている。 また,乙60公報には「およそ1.1μmからほぼ5μmの波長まで実質的に透明なシリコンの場合,波長1.9μmでパルスを出射するレ ーザが,この実施例の方法を実装するのには適している」と記載されており(13頁10行ないし12行),波長エネルギーの小さいレーザ光によって,シリコンウェハを加工することが開示されている。 これらの記載からすれば,当業者であれば,乙57発明1においてシリコンウェハを加工対象物とすることを容易に想到できる。 加えて,レーザ加工によってシリコンウェハを切断することは周知慣用技術であり,また,レーザ加工によってシリコンウェハの内部に集光点を位置させてマーキングをする技術も周知技術である。 一方で,本件明細書1では,加工対象物をシリコンウェハとする際の加工条件と,加工対象物をパイレックスガラスとする際の加工条件とで, 特段の差もない。このことは,加工対象物をどのようなものとするかは,設計事項にすぎないことを裏付けている。また,本件明細書1には,加工対象物をシリコンウェハにすることによる作用効果について何ら言及されていない。 なお,加工対象物をシリコンウェハに限定する訂正は,下位概念への 限定的減縮であるから認められたにすぎず,進歩性判断が改めてされた わけではない。こうした審査経過に鑑みても,加工対象物がシリコンウェハであるか否かは,設計事項にすぎない。 したがって,乙57発明1をもとに,加工対象物 ぎず,進歩性判断が改めてされた わけではない。こうした審査経過に鑑みても,加工対象物がシリコンウェハであるか否かは,設計事項にすぎない。 したがって,乙57発明1をもとに,加工対象物をシリコンウェハとすることは,当業者が容易に想到できることであり,相違点5に係る本件発明1-1の構成は,乙60公報の記載を参照することで,又は,周 知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想到できる事項といえる。 (カ) 相違点6について乙57発明1では,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない。 しかしながら,改質領域が溶融しているか否かは,加工対象物の材料の特性によって副次的に決まることであり,当業者がどのような加工 対象物を選択するかによって決まる設計事項である。 そして,相違点5で検討したとおり,レーザ加工において,加工対象物をシリコンウェハとすることは当業者が容易に想到できることであり,また,レーザ照射の条件次第でシリコンウェハを溶融させることも可能であると考えられる。また,本件明細書1には,改質領域を溶融処理領 域とすることによる特段の作用効果について,何ら言及されていない。 したがって,乙57発明1をもとに,改質領域を溶融処理領域とすることは,当業者が容易に想到できることであり,相違点6に係る本件発明1-1の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 (キ) 相違点7について乙57発明1では,加工対象物を移動させる装置を備えてはいるものの,その装置が載置台であるかは不明であるが,ウェハ状の加工対象物を移動させる際に載置台を用いることは周知慣用技術である。 したがって,相違点7に係る本件発明1-1の構成は,乙57発明1 をもとに周知慣用技術を適用するこ 不明であるが,ウェハ状の加工対象物を移動させる際に載置台を用いることは周知慣用技術である。 したがって,相違点7に係る本件発明1-1の構成は,乙57発明1 をもとに周知慣用技術を適用することで当業者が容易に想到できる事項 といえる。 (ク) 相違点8(相違点A)についてa 相違点8(相違点A)が存在しないこと構成aのとおり,乙57発明1においては,分割の起点が加工対象物の内部に形成される。 そして,乙57公報の実施例1においては,GaP単結晶基板の裏面にオーム性電極15及び金16が積層されているところ,当該実施例では,GaP結晶を透過するレーザ光を用いており,このレーザ光が少なくともオーム性電極15を透過することはないため,焦点が加工対象物の内部に形成されると認定できる。また,特許請求の範囲の 文言上も,「裏面近傍に焦点を結」ぶとしており,裏面に焦点を結ぶとしていない以上,乙57発明1においては,内部に焦点が結ばれていると考えるのが相当である。 したがって,相違点8ないし相違点Aは存在しない。 b 相違点8(相違点A)に係る構成が容易に想到し得ること 仮に,相違点8ないし相違点Aが存在する場合でも,以下のとおり,当該相違点に係る構成は容易に想到し得る。 (a) 乙24公報に記載された発明乙24公報には,実施例1として,加工対象物の裏面にスクライブ・ラインを形成する技術が記載されており(【図1】),実施例2と して,加工対象物の内部にスクライブ・ラインを形成する技術が記載されている(【図2】)。 そして,乙24公報には,加工対象物の内部にスクライブ・ラインを形成することによる作用効果として,「レーザー照射による加工くずの発生もない」と記載されているから,乙24公報には,レ (【図2】)。 そして,乙24公報には,加工対象物の内部にスクライブ・ラインを形成することによる作用効果として,「レーザー照射による加工くずの発生もない」と記載されているから,乙24公報には,レー ザ照射による加工くずの発生の防止を目的とした次の発明が記載さ れている(以下,この発明を「乙24発明A」という。)。 「加工対象物である半導体ウェハの裏面にスクライブ・ラインを形成する代わりに,加工対象物の内部にスクライブ・ラインを形成するレーザ加工機。」(b) 乙57発明1と乙24発明Aの組合せについて 乙57発明1のように,レーザー照射によって表面又は裏面にスクライブ溝を形成するレーザスクライブ法においては,レーザ照射による加工くずの発生が従来から課題として知られていた(乙61公報の【0002】参照)。 そうすると,乙57発明1において,レーザ照射による加工くず の発生の防止を目的として,乙24発明Aを適用することは,当業者が容易に想到できることである。また,乙57発明1と乙24発明Aは,共にレーザスクライブ法に関する技術であり,技術分野も同一である。一方で,乙57発明1と乙24発明Aを組み合わせることを阻害するような事情もない。 以上によれば,乙57発明1をもとに,乙24発明Aを組み合わせることは,当業者が容易に想到できることであり,相違点8ないし相違点Aに係る本件発明1-1の構成は,乙57発明1をもとに乙24発明Aを組み合わせることで当業者が容易に想到できる事項といえる。 原告は,乙57発明1を裏面ではなく内部を加工するものとすることに対しては阻害要因がある旨主張するが,乙57公報に記載された発明は,その特許請求の範囲の記載から明らかなように,基板の表面側からレーザ光を ,乙57発明1を裏面ではなく内部を加工するものとすることに対しては阻害要因がある旨主張するが,乙57公報に記載された発明は,その特許請求の範囲の記載から明らかなように,基板の表面側からレーザ光を照射し,基板を透過させて,基板の裏面側に焦点を合わせる点に特徴のある発明である。さらに,特許請求の 範囲の文言において,焦点をあえて「裏面近傍」に結ぶとしている ことからも明らかなように,焦点を半導体基板の厚さ方向に一定の幅の範囲内で合わせることが明らかにされており,裏面内という2次元の平面の内部に焦点が合わせられることを要件としていない。 したがって,裏面側を加工するのであれば,内部を加工するものとしたとしても,乙57公報に記載された発明の目的と矛盾せず,乙 57発明1において内部を加工するものとすることに阻害要因はない。 ウ小括以上より,本件発明1-1と乙57発明1との相違点に係る構成は,相違点8の有無にかかわらず,乙57発明1に,乙25公報,乙60公報及 び乙24公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙57発明1との対比 乙57公報には,加工対象物を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成することが開示されているが,それ以上に本件発明1-2の構成要件1Hの内容については開示されていない。 したがって,本件発明1-2と乙57発明1とを対比すると,両者は,相違点1ないし7(予備的には相違点1ないし8)に加えて,次の点で相 違する。 (相違点9)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記 比すると,両者は,相違点1ないし7(予備的には相違点1ないし8)に加えて,次の点で相 違する。 (相違点9)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置 台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」のに対し, 乙57発明1は,ステージ(載置台)を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する点。 イ相違点(相違点9ないし相違点B)に係る構成の容易想到性相違点3について述べたように,乙57発明1をもとに,加工対象物を移動させるのではなく,レーザ光の焦点を移動させるようにすることは, 当業者が容易に想到できることである。 そして,焦点を移動させる際には,その移動速度を調節するのは当業者が当然に想到すべき事項であり,またパルスレーザ光を採用した場合,その繰り返し周波数を調節することも当業者が当然に想到すべき事項である。 更に,改質スポット間の距離を一定にすることも,精密加工を行う上では 当然に当業者が想到することといえる。 そして,繰り返し周波数又は集光点の移動速度を適宜設計すれば,当然これに伴って改質スポット間の距離が制御されることとなる。 したがって,相違点9に係る本件発明1-2の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 以上は,原告主張の相違点Bについても同様である。 ウ小括以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙57発明1との相違点に係る構成は,相違点8の有無にかかわらず,乙57発明1に,乙25公報,乙60公報及び乙24公報に記載 以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙57発明1との相違点に係る構成は,相違点8の有無にかかわらず,乙57発明1に,乙25公報,乙60公報及び乙24公報に記載さ れた発明を組み合わせ,かつ,周知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 乙57公報に記載された発明乙57公報には「ウェハ状の加工対象物の内部に,分割の起点となるスク ライブ溝を形成する」機能を有するレーザ加工装置の発明が記載されている とはいえず,被告主張に係る乙57発明1は,少なくとも構成aを次の構成a’のように修正して特定すべきである(以下,構成aを構成a’に修正した乙57発明1を,「乙57発明1’」という。)。 構成a’:ウェハ状の加工対象物の裏面に,分割の起点となるスクライブ溝を形成するレーザ加工装置であって, (2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙57発明1’との対比本件発明1-1と乙57発明1’との間の一致点は,正しくは次のように特定されるべきであるし,本件発明1-1と乙57発明1’との間には,少なくとも次の相違点Aも存在している。 (一致点)本件発明1-1と乙57発明1’とが,共に「ウェハ状の加工対象物に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レン ズと,レーザ光の集光点が前記加工対象物の切断予定ラインに沿って移動するように,前記加工対象物の厚さ方向と直交する方向に前記加工対象物を移動させる機能を有する制御部と,を備える る集光用レン ズと,レーザ光の集光点が前記加工対象物の切断予定ラインに沿って移動するように,前記加工対象物の厚さ方向と直交する方向に前記加工対象物を移動させる機能を有する制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点A) 本件発明1-1のレーザ加工装置は,「加工対象物の内部に改質領域を形成」するものであるのに対し,乙57発明1’のレーザ加工装置は,「加工対象物の裏面に改質領域を形成」するものである点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点1について 本件特許1の原出願前においては,シリコンウェハの内部に集光点を 有するレーザ光を照射することで,シリコンウェハの分割加工に好適な分割の起点を形成することができること自体が知られていなかったのであり,当然に,そのレーザ光としてパルス光が適しているのか連続光が適しているのかといった知見や,パルス光とした場合にどの程度のパルス幅が適しているのかといった知見は,当業者の間になかった。そのよ うな状況の中で,乙57発明1’から相違点1に係る本件発明1の構成に到達するためには,①乙57発明1’の「GaP単結晶基板に電極が積層されたウェハ状の加工対象物の裏面に,分割の起点となるスクライブ溝を形成する」という構成を「シリコンウェハの内部に切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換できることを見いだすステ ップと,②「シリコンウェハの内部に切断の起点となる改質領域を形成する」ためにはどのような種類のレーザ光が適しているかを探索するステップとが必要であることが明らかであるが,そのいずれのステップにも予測性はなく,多大な試行錯誤が必要である。 したがって,そのような多大な試行錯誤の後に初めて到達し得るも 適しているかを探索するステップとが必要であることが明らかであるが,そのいずれのステップにも予測性はなく,多大な試行錯誤が必要である。 したがって,そのような多大な試行錯誤の後に初めて到達し得るもの である以上,乙57発明1’において相違点1に係る本件発明1-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ) 相違点2について前記(ア)のとおり,乙57発明1’において相違点1に係る本件発明1-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 そうである以上,乙57発明1’において相違点2に係る本件発明1-1の構成を採用することも,当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ) 相違点3ないし7について相違点3ないし7については,相違点の特定を含め,被告の主張を認めるものではないが,これらの相違点の容易想到性の有無にかかわらず, その他の相違点により本件発明1-1が進歩性を有するとの結論に至る。 (エ) 相違点8(相違点A)についてa 相違点8(相違点A)が存在すること乙57公報には,「加工対象物の内部に,分割の起点となるスクライブ溝を形成する」ことに相当する技術的事項の記載はない。被告が分割の起点であると主張する乙57公報の実施例1における「スクライ ブ溝」(第2図の(b))は,「加工対象物(GaP単結晶基板の裏面にオーム性電極15及び金16が積層された半導体結晶ウェーハ)の裏面に形成される溝」であると理解されるものであって「加工対象物の内部」に形成されるものと理解されるものではない。 したがって,前記アのとおり,本件発明1-1と乙57発明1’と の間には相違点Aが存在しているというべきである。なお,相違点Aは被告主張の相違点8と実質的に るものと理解されるものではない。 したがって,前記アのとおり,本件発明1-1と乙57発明1’と の間には相違点Aが存在しているというべきである。なお,相違点Aは被告主張の相違点8と実質的に同じである。 b 相違点8(相違点A)に係る構成が容易に想到し得る事項でないこと乙57公報にも,他の証拠にも,乙57発明1’の「加工対象物の 裏面に改質領域を形成」するという構成を,本件発明1-1の「加工対象物の内部に改質領域を形成」するという構成に置換することに対する動機付けを示す記載はない。 乙57発明1’は,「裏面全体に金属電極を付加した半導体結晶ウェーハをペレットに分割する場合,表面からの加工法によるスクライブ では裏面電極が切断されないため,半導体結晶は分離できても電極が連った複合ペレットが多く発生する欠点がある。」という課題(乙57公報の1頁右下欄7行ないし12行)を踏まえ,「裏面を加工する方法」を実現するための装置を提供することを目的とした発明(乙57公報の1頁右下欄19行ないし2頁左上欄1行)であるから,この発明を 裏面ではなく内部を加工するものに変更することに対しては阻害要因 がある。 したがって,乙57発明1’について,相違点8(相違点A)に係る構成を採用し,乙57公報に記載された発明を「加工対象物の内部」に改質領域を形成するものに改変することは,当業者が容易に想到し得ることではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙57公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙57発明1’との対比 相違点9における「ステージ(載置台)を移動させることによって,加 が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙57発明1’との対比 相違点9における「ステージ(載置台)を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する」との構成(「加工対象物を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する」との趣旨と理解した。)は,本件発明1-2の構成と対立する構成ではない。したがって,被告主張の相違点9は,相違点の特定として相当でない。 そこで,本件発明1-2と乙57発明1’との間の相違点(本件発明1-1と乙57発明1’との相違点に加えての相違点)は,正しくは次のように特定されるべきである。 (相違点B)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波 数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙57発明1’は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について 乙57発明1’は,そもそもパルスレーザ光を使用することさえ特定されていない発明であること,乙57公報にも,他の証拠にも,乙57発明1’に「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることの動機付けを示す記載はないことを考慮すれば,乙57発明1’において相違点Bに係る本件発明1-2の構成を採用することが,当業者が容易に想到し得 たことでないことは明らかである。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙57公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではな が容易に想到し得 たことでないことは明らかである。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙57公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 8 争点3-4(本件発明1の乙58公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理 由1-4))について(被告の主張)(1) 乙58公報に記載された発明乙58公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙58発明1」という。)。 構成a:半導体基板である加工対象物の裏面に,分割の起点となる溝を形成するレーザスクライブ装置であって,構成b:前記加工対象物が載置されるテーブルと,構成c:レーザ光を出射するレーザ光源と,構成d:前記テーブルに載置された前記加工対象物の裏面に,前記レーザ 光源から出射されたレーザ光を集光し,溝を形成させる凸レンズと,構成e:前記加工対象物の分割予定ラインに沿って形成された前記溝を形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物の裏面に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直 線的に移動させる機能を有する処理部と,を備え, 構成f:前記加工対象物はサファイアの半導体基板であること構成g:を特徴とするレーザスクライブ装置。 (2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙58発明1との対比本件発明1-1と乙58発明1とを対比すると,その一致点及び相違点 は以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明1-1と乙58発明1が,共に「ウェハ状の加工対象物に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と, 点)本件発明1-1と乙58発明1が,共に「ウェハ状の加工対象物に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置 台に載置された前記加工対象物に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光する集光用レンズと,前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記改質領域を形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物に位置させた状態」で作用する「制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射するのに対し,乙58発明1は,パルスに限定されていない「レーザ光」を照射している点。 (相違点2) 本件発明1-1は,「1パルスのパルスレーザ光の照射により」,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成しているのに対し,乙58発明1は,「改質スポット」に相当するものを有しているのか記載されておらず,また,改質領域が「複数のスポットによって」形成されているのか記載されていない点。 (相違点3) 本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙58発明1では,加工対象物を移動させている点。 (相違点4) 本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙58発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点5)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」で によって形成された領域であるのに対し,乙58発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点5)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であるのに対し, 乙58発明1では,加工対象物がサファイアの半導体基板に電極が積層されたものである点。 (相違点6)本件発明1-1は,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙58発明1では,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点。 (相違点7)本件発明1-1は,「加工対象物の内部に」改質領域を形成するのに対し,乙58発明1では,加工対象物の裏面に改質領域を形成している点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1(相違点B)について 相違点1に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点1と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Bについても同様である。 (イ) 相違点2(相違点C)について 本件発明1-1と乙57発明1との相違点2で述べたのと同様に,乙 58発明1において,レーザ光としてパルスレーザ光を選択した場合,乙58発明1の「溝」(本件発明1-1の「改質領域」に対応)は,複数の改質スポットから構成されることとなる。 したがって,乙58発明1において,レーザ光としてパルスレーザ光を選択した場合は,乙58発明1も当然に相違点2に係る本件発明1- 1の構成を有していることとなり,相違点2に係る本件発明1-1の構成の容易想到性は,結局のところレーザ光としてパルスレーザ光を選択すること,すなわち,相違点1に係る本件発明1-1の構成の容易想到性に帰着する。 そして,相違点1に係る本件発明1-1 明1-1の構成の容易想到性は,結局のところレーザ光としてパルスレーザ光を選択すること,すなわち,相違点1に係る本件発明1-1の構成の容易想到性に帰着する。 そして,相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が乙58発 明1をもとに設計事項として容易に想到できるので,相違点2に係る本件発明1-1の構成も,当業者が容易に想到できる。 以上は,原告主張の相違点Cについても同様である。 (ウ) 相違点3(相違点D)について相違点3に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と 乙24発明1との相違点3と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Dについても同様である。 (エ) 相違点4について相違点4に係る本件発明1-1の構成は,本件発明1-1と乙24発 明1との相違点4と同様の理由により,乙58発明1に乙25発明Aを組み合わせることで容易に想到できる事項といえる。 (オ) 相違点5について乙58発明1では,加工対象物はサファイアの半導体基板であり,シリコンウェハではない。 乙58公報には,「本発明の一実施例としてサファイヤの半導体基板に ついて述べたが,このように被加工体がレーザ光線に対し透過性を有するものに対して効果的にスクライブできるものである」と記載されており(3頁左下欄6行ないし9行),サファイアの半導体基板以外に適用することが示唆されている。 その他,本件発明1-1と乙57発明1との相違点5と同様の理由に より,相違点5に係る本件発明1-1の構成は,当業者が容易に想到できる事項といえる。 (カ) 相違点6について相違点6に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点6と同様の理由により 件発明1-1の構成は,当業者が容易に想到できる事項といえる。 (カ) 相違点6について相違点6に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点6と同様の理由により,当業者が容易に想到で きるものである。 (キ) 相違点7(相違点A)について本件発明1-1と乙57発明1との相違点8と同様の理由により,乙58発明1において,レーザ照射による加工くずの発生の防止を目的として,乙24発明Aを適用することは,当業者が容易に想到できること である。よって,相違点7に係る本件発明1-1の構成は,乙58発明1をもとに乙24発明Aを組み合わせることで当業者が容易に想到できる事項といえる。 原告は,原告が乙58公報に記載された本件発明1に最も近接した発明として主張する発明(以下「乙58発明1’」という。)は「加工対象 物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」という構成を課題解決手段としているところ,その構成を「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換することには阻害要因がある旨主張する。 しかしながら,乙58発明1’は,その特許請求の範囲の記載から明 らかなように,基板の表面側からレーザ光を照射し,基板を透過させて 焦点を移動させ,基板の裏面側に焦点を合わせる点に特徴のある発明である。そうすると,加工対象物内において集光点を移動させて加工するものであれば,その加工箇所が基板の内部であったとしても,乙58発明1’の目的と矛盾するところはない。よって,乙58発明1’において内部を加工するものとすることに阻害要因はない。 以上は,原告主張の相違点Aについても同様である。 ウ小括以上よ 8発明1’の目的と矛盾するところはない。よって,乙58発明1’において内部を加工するものとすることに阻害要因はない。 以上は,原告主張の相違点Aについても同様である。 ウ小括以上より,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に係る構成は,乙58発明1に,乙25公報,乙60公報及び乙24公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想 到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙58発明1との対比乙58公報には,加工対象物を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成することが開示されているが,それ以上に本件発明 1-2の構成要件Hの内容については開示されていない。 したがって,本件発明1-2と乙58発明1とを対比すると,両者は,相違点1ないし7に加えて,次の点で相違する。 (相違点8)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波 数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」のに対し,乙58発明1は,テーブル(載置台)を移動させることによって,加工対象物の裏面に改質領域を形成する点。 イ相違点(相違点8ないし相違点E)に係る構成の容易想到性 相違点8に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点9と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Eについても同様である。 ウ小括 以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発 7発明1との相違点9と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Eについても同様である。 ウ小括 以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙58発明1との相違点に係る構成は,乙58発明1に,乙25公報,乙60公報及び乙24公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣用技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 乙58公報に記載された発明乙58公報には,本件発明1と対比すべき発明として,被告が主張する乙58発明1は記載されていない。 乙58公報に記載された本件発明1と対比するに足りる発明は,以下の構 成を有する乙58発明1’である(被告主張に係る乙58発明1と相違する構成要素には「構成a’」のように,「’」を付し,相違する部分に下線を付す。)。 構成a’: 半導体基板である加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成 するレーザスクライブ装置であって,構成b : 前記加工対象物が載置されるテーブルと,構成c : レーザ光を出射するレーザ光源と,構成d’: 前記テーブルに載置された前記加工対象物の表面及び裏面に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,前記相互に 対向する溝(15及び16)を形成させる凸レンズと, 構成e’: 前記加工対象物の分割予定ラインに沿って形成された前記溝(15及び16)を形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物の表面及び裏面に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直線的に移動させる機能を有する処理部と,を備え, (15及び16)を形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物の表面及び裏面に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直線的に移動させる機能を有する処理部と,を備え, 構成f: 前記加工対象物はサファイアの半導体基板であること構成g: を特徴とするレーザスクライブ装置。 (2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙58発明1’との対比本件発明1-1と乙58発明1’との間において,被告が主張する本件 発明1-1と乙58発明1の一致点と同様の一致点があることについては争わないが,本件発明1-1の進歩性に影響する構成上の相違点として,少なくとも次の相違点があるというべきである。 (相違点A)本件発明1-1のレーザ加工装置は,「加工対象物の内部に,切断の起点 となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙58発明1’のレーザ加工装置(レーザスクライブ装置)は,「加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」ものであって,「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点。 (相違点B)本件発明1-1の「レーザ光源」は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を出射するものであるのに対し,乙58発明1’の「レーザ光源」は,「パルスレーザ光」を出射するものとはされていない点。 (相違点C) 本件発明1-1の「集光用レンズ」は,「レーザ光源から出射されたパル スレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる」ように作用するものであるのに対し,乙58発明1’の「集光用レンズ」はそのように作用するもので し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる」ように作用するものであるのに対し,乙58発明1’の「集光用レンズ」はそのように作用するものではない点。 (相違点D) 本件発明1-1の「制御部」は,「隣り合う改質スポット間の距離が略一定となるように加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の改質スポットによって改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,前記切断 予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させる」機能を有するのに対し,乙58発明1’の「制御部」は,そのような機能を有するものではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点1(相違点B)について 相違点Bは,被告主張の相違点1に対応するものである。 乙58公報に記載された発明から相違点Bに係る本件発明1の構成に到達するためには,①乙58に記載された発明の「サファイアの半導体基板である加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」という構成を「シ リコンウェハの内部に切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換できることを見いだすステップと,②「シリコンウェハの内部に切断の起点となる改質領域を形成する」ためにはどのような種類のレーザ光が適しているかを探索するステップとが必要であることが明らかであるが,本件発明1-1と乙57発明1’との相違点1と同様の理由 により,乙58発明1’において相違点1に係る本件発明1-1の構成 を採用することは,当 が必要であることが明らかであるが,本件発明1-1と乙57発明1’との相違点1と同様の理由 により,乙58発明1’において相違点1に係る本件発明1-1の構成 を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ) 相違点2(相違点C)について相違点Cは,被告主張の相違点2に対応するものである。 前記(ア)のとおり,乙58発明1’において相違点1に係る本件発明1-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 そうである以上,乙58発明1’において相違点2に係る本件発明1-1の構成を採用することも,当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ) 相違点3(相違点D)について相違点Dは,被告主張の相違点3に対応するものである。 前記(ア)のとおり,乙58発明1’において相違点1に係る本件発明1 -1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 そうである以上,乙58発明1’から相違点3に係る本件発明1-1の構成を採用することも当業者が容易に想到し得たことではない。 (エ) 相違点4ないし6についてこれらの相違点の容易想到性の有無にかかわらず,その他の相違点に より本件発明1-1が進歩性を有するとの結論に至る。 (オ) 相違点7(相違点A)について乙58公報にも,他の証拠にも,乙58発明1’の「加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」という構成(乙58公報の第2図(b)参照) を本件発明1-1の「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換することに対する動機付けを示す記載はない。 乙58発明1’は,「従来の方法のごとく半導体基板の表面にレーザ光線を -1の「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換することに対する動機付けを示す記載はない。 乙58発明1’は,「従来の方法のごとく半導体基板の表面にレーザ光線を集光して溝をつけ,つまりスクライブして半導体基板を分割する方 法ではサフアイヤがレーザ光線に対して透過性を有するため,レーザ光 線を透過しない被加工体に比べ溝が浅くなり,分割する場合に不規則に割れ,半導体基板上の回路・素子を破壊もしくは損傷するという欠点があった。」(乙58公報の1頁右下欄10ないし17行)という課題を踏まえ,「集光点を被加工体の集光光学系の面に一致させ,その後その反対側の面に合わせ,被加工体を加工し得るレーザスクライブ装置」(同2頁 左上欄15ないし18行)という構成を採用することで,「このように半導体基板5の両面に対向してスクライブした後に分割すれば,第2図(b)の点線17より割れ,その分割面は,ほぼ直線状に割れる。」(同3頁左上欄17~19行)という作用効果を得ることができたというものである。したがって,乙58発明1’は,「加工対象物の表面及び裏面 に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」という構成を課題解決手段とした発明であるということができ,その構成を,本件発明1-1のように「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換すると,乙58発明1’の課題解決手段がもはや機能しなくなるから,そのような置換 については阻害要因がある。 したがって,乙58発明1’について,相違点7(相違点A)に係る構成を採用し,乙58公報に示される「加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を したがって,乙58発明1’について,相違点7(相違点A)に係る構成を採用し,乙58公報に示される「加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」という構成を,「加工対象物の内部」に改質領域を形成するも のに改変することは,当業者が容易に想到し得ることではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙58公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明1-2の進歩性 ア本件発明1-2と乙58発明1’との対比 相違点8における「ステージ(載置台)を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する」との構成は,本件発明1-2の構成と対立する構成ではない。したがって,被告主張の相違点8は,相違点の特定として相当でない。 そこで,本件発明1-2と乙58発明1’との間の相違点(本件発明1 -1と乙58発明1’との相違点に加えての相違点)は,正しくは次のように特定されるべきである。 (相違点E)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節す ることで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙58発明1’は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について 乙58発明1’は,そもそもパルスレーザ光を使用することさえ特定されていない発明であること,乙58公報にも,他の証拠にも,乙58公報に記載された発明に「改質スポットの間の距離を制御する て 乙58発明1’は,そもそもパルスレーザ光を使用することさえ特定されていない発明であること,乙58公報にも,他の証拠にも,乙58公報に記載された発明に「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることの動機付けを示す記載はないことを考慮すれば,乙58発明1’において相違点Eに係る本件発明1-2の構成を採用することが,当業者が容 易に想到し得たことでないことは明らかである。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙58公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 9 争点3-5(本件発明1の乙25公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理 由1-5))について (被告の主張)(1) 乙25公報に記載された発明乙25公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙25発明1」という。)。 構成a:厚板の合成石英ガラスである加工対象物の内部に,切断の起点と なる連続的なクラックを形成するレーザ加工装置であって,構成b:前記加工対象物が載置される載置台と,構成c:パルスレーザ光を出射するレーザ光源と,構成d:前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレ ーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で微小なクラックを形成させるレンズと,構成e:隣り合う前記微小なクラック間の距離が略一定となるように前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記微小なクラックによって前記連続的なクラックを形成するために,前 記パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光 の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記微小なクラックによって前記連続的なクラックを形成するために,前 記パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を150Hzとし,加工対象物の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を回転させる機能を有する処理部と,を備え,構成f:前記加工対象物は厚板の合成石英ガラスであること 構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 (2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙25発明1との対比本件発明1-1と乙25発明1とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点) 本件発明1-1と乙25発明1が,共に「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,パルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そ のパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集光用レンズと,隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を略 一定にして,前記切断予定ラインに沿って」作用する「機能を有する制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射するのに対し,乙25発明1 て」作用する「機能を有する制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射するのに対し,乙25発明1は,パルス幅が不明なパルスレーザ光を照射し ている点。 (相違点2)本件発明1-1は,パルスレーザ光の集光点を「直線的に移動させる」のに対し,乙25発明1では,加工対象物を回転させている点。 (相違点3) 本件発明1-1は,加工対象物が「ウェハ状の」「シリコンウェハ」であるのに対し,乙25発明1では,加工対象物が厚板の合成石英ガラスである点。 (相違点4)本件発明1-1は,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙25 発明1の「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1について乙25発明1では,パルスレーザ光を照射しているものの,パルス幅の値については明示されていない。 もっとも,パルスレーザ光を用いる場合,どのようなパルス幅とする かは具体的技術の実施において当業者が適宜設計すべき事項である。そして,本件明細書1を参酌しても,相違点1に示すようなパルス幅にすることに,特に顕著な効果があるとは認められない。 以上からすると,乙25発明1において,パルス幅を1μs以下とすることは,当業者が適宜設計すべき事項であり,相違点1に係る本件発 明1-1の構成は,当業者が容易に想到できるものである。 (イ) 相違点2について乙25発明1では,加工対象物を回転させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成している。 もっとも,乙25発明1は,透明材料を複雑な形状に切断加工するこ とを目的とした発明であり(乙25公報の では,加工対象物を回転させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成している。 もっとも,乙25発明1は,透明材料を複雑な形状に切断加工するこ とを目的とした発明であり(乙25公報の3頁右上欄16行ないし左下欄2行参照),当業者であれば,曲線的な加工のみならず,直線的に加工することも想定していると理解する。 そして,加工対象物の内部に直線的に改質領域を形成しようと考えた場合,加工対象物を移動させるか,レーザ光の集光点を移動させるか (又はその両方か)しかなく,これらは当業者が具体的技術の適用において適宜設計すべき事項である。 したがって,乙25発明1をもとに,加工対象物を回転させるのではなく,レーザ光の集光点を移動させるようにすることは,当業者が容易に想到できることであり,相違点2に係る本件発明1-1の構成は,当 業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 (ウ) 相違点3(相違点A)についてa 乙25発明1の加工対象物は,厚板の合成石英ガラスであり,ウェハ状のものでもなければ,シリコンウェハでもない。 もっとも,レーザ加工によってシリコンウェハを切断することは周知慣用技術であり,レーザ加工によってシリコンウェハの内部に集光 点を位置させてマーキングをする技術も周知技術である。また,本件明細書1において,加工対象物をシリコンウェハにすることによる作用効果については,何ら言及されていない。 したがって,乙25発明1をもとに,加工対象物をシリコンウェハとすることは,当業者が容易に想到できることであり,相違点3に係 る本件発明1-1の構成は,周知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想到できる事項といえる。 b 原告主張の相違点Aについて原告は,乙25公報 易に想到できることであり,相違点3に係 る本件発明1-1の構成は,周知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想到できる事項といえる。 b 原告主張の相違点Aについて原告は,乙25公報に記載された発明が,「厚板の合成石英ガラスの内部に,底面(レーザ光入射面とは反対側の面)から上面(レーザ光 入射面)に亘って連続的なクラックを形成することによって,前記加工対象物を切断する」ものであって「シリコンウェハの内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点で,本件発明1-1と相違すると主張するが,以下のとおり,同主張は理由がない。 (a) まず,乙25公報に記載された発明において,クラックは切断面 に連続的に形成されてはいるが,切断面の全体にわたって形成されるものではない。したがって,前記(1)の構成aのとおり,上記発明は「切断の起点となる連続的なクラックを形成する」ものといえるから,「切断の起点となる連続的なクラックを形成する」という点は相違点には含まれない。 (b) そして,加工対象物についての原告の主張も,乙25公報に記載 された発明を過度に狭くとらえたものであり,妥当でない。 すなわち,乙25公報の「【発明が解決しようとする課題】」の記載(1頁右下10行ないし2頁左上5行)から,上記発明は,10mm程度以上の厚さを有する厚板状の加工対象物に対して好適であると理解されるものの,当業者は,厚さ10mm以下のものを加工 できないとは考えない。実際,乙25公報の特許請求の範囲には,加工対象物が厚板であるとの限定はされておらず,上記発明は,厚さ10mm以下のものも対象としている。 また,上記発明は,「直線状あるいは円筒形」以外の複雑な形状に加工することも可能なだけであり,直線状又 象物が厚板であるとの限定はされておらず,上記発明は,厚さ10mm以下のものも対象としている。 また,上記発明は,「直線状あるいは円筒形」以外の複雑な形状に加工することも可能なだけであり,直線状又は円筒形に加工するこ とが排除されているわけではない。そもそも,乙25公報の唯一の実施例(3頁左上10行ないし左下7行)では,円筒形に加工する例が開示されている。したがって,上記発明は,直線状又は円筒形に加工することも対象としている。 (c) したがって,相違点Aについての原告の主張には理由がない。 (エ) 相違点4について乙25発明1では,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない。 しかしながら,改質領域が溶融しているか否かは,加工対象物の材料の特性によって副次的に決まることであり,当業者がどのような加工対象物を選択するかによって決まる設計事項である。 相違点3について説明したように,乙25発明1において,加工対象物をシリコンウェハとすることは当業者が容易に想到できることであり,レーザ照射の条件次第でシリコンウェハを溶融させることも可能であると考えられる。また,本件明細書には,改質領域を溶融処理領域とすることによる特段の作用効果についての記載はない。 したがって,乙25発明1をもとに,改質領域を溶融処理領域とする ことは,当業者が容易に想到できることであり,相違点4に係る本件発明1-1の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 ウ小括以上より,本件発明1-1と乙25発明1との相違点に係る構成は,周 知慣用技術を適用することで当業者が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙 と乙25発明1との相違点に係る構成は,周 知慣用技術を適用することで当業者が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙25発明1との対比乙25公報には,加工対象物を回転させることによって,加工対象物の 内部に改質領域を形成することが開示されているが,それ以上に本件発明1-2の構成要件Hの内容については開示されていない。 したがって,本件発明1-2と乙25発明1とを対比すると,両者は,相違点1ないし4に加えて,次の点で相違する。 (相違点5) 本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」のに対し,乙25発明は,載置台を回転させることによって,加工対象物の内部に改 質領域を形成する点。 イ相違点(相違点5ないし相違点B)に係る構成の容易想到性相違点5に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点9と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Bについても同様である。 ウ小括以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙25発明1との相違点に係る構成は,周知慣用技術を適用することで当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 乙25公報に記載された発明乙25公報には,少なくとも,「加工対象物の内部に形成する連続的なクラックが,切断の起点となる(構成 件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 乙25公報に記載された発明乙25公報には,少なくとも,「加工対象物の内部に形成する連続的なクラックが,切断の起点となる(構成a)」旨の記載はない。 したがって,被告主張に係る乙25発明1については,構成aを以下の構 成a’(構成aと相違する部分に下線を付す。)のように修正して特定すべきである(以下,構成aを構成a’に修正した乙25発明1を発明を「乙25発明1’」という。)。 構成a’:厚板の合成石英ガラスの内部に,底面(レーザ光入射面とは反対側の面)から上面(レーザ光入射面)に亘る連続的なクラックを 形成することによって,前記加工対象物を切断するレーザ加工装置であって,(2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙25発明1’との対比本件発明1-1と乙25発明1’との間の一致点は,以下のように特定 するのが相当である。 また,被告主張に係る相違点の特定も正確ではなく,本件発明1-1と乙25発明1’との間には,本件発明1-1の進歩性に影響するものとして,少なくとも次の相違点Aがあるというべきである。 (一致点) 本件発明1-1と乙25発明1’が,共に「加工対象物の内部に,改質 領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記集光用レンズを移動させ,前記載置台を移動させる機能を有する制御 部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点A)本件発明1-1のレーザ加 成させる集光用レンズと,前記集光用レンズを移動させ,前記載置台を移動させる機能を有する制御 部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点A)本件発明1-1のレーザ加工装置は,「シリコンウェハの内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙25発明1’のレーザ加工装置は,「厚板の合成石英ガラスの内部に,底面(レーザ光入射 面とは反対側の面)から上面(レーザ光入射面)に亘って連続的なクラックを形成することによって,前記加工対象物を切断する」もの(構成a’を採用したもの)であって,「シリコンウェハの内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について (ア) 乙25公報には,加工対象物の内部に形成する連続的なクラックが,切断の起点となる旨の記載はない。 そして,「本発明は,石英ガラスなどの透明材料を複雑な形状に切断加工することを目的とし,被加工物の厚味に影響を受けず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている。」(乙25公報の 2頁左上欄2ないし5行),「高エネルギービームの照射位置を移動させて,透明材料に連続的なクラックを発生させることによって透明材料を切断加工する。」(同2頁左下欄2ないし5行),「切断に当っては,焦点位置は,ワークの底面から上方向に移動させた。」(同3頁右上欄14ないし15行),「微細なクラックが透明材料の内部に発生する。これを連 続させることによって透明材料を複雑な形状に切断加工できる。」(同3 頁右上欄20行ないし左下欄2行)等の記載に照らせば,乙25公報でいう「連続的なクラック」は,それ自体で切断が行われるもの,換言すれば,それ自体が切断面を構成するも 工できる。」(同3 頁右上欄20行ないし左下欄2行)等の記載に照らせば,乙25公報でいう「連続的なクラック」は,それ自体で切断が行われるもの,換言すれば,それ自体が切断面を構成するものと解するのが自然である。 (イ) 乙25発明1’における,「加工対象物」が「厚板の合成石英ガラス」であるという構成は,同発明における課題解決のための技術的手段では なく,課題が生じる前提となる構成である。したがって,それを乙25発明1’が想定していたものとは別のものに置換するということは,課題が生じる前提をなくするということであり,他の文献に記載された技術を組み合わせることが容易か否かにかかわらず,当業者が容易に想到し得ることではない。乙25公報の「[発明が解決しようとする課題]」 の欄の記載(1頁右下10行ないし2頁左上5行)によれば,乙25公報に接した当業者がその加工対象物として想到し得る範囲は,10mm程度以上の厚さを有する厚板状の透明な加工対象物であって,「直線状あるいは円筒形」以外の複雑な形状に加工することに対するニーズを有する加工対象物の範囲である。これに対し,「シリコンウェハ」は,通常, 厚さが数百μm以下であり,直線状以外の複雑な形状に切断するニーズを有することが知られていたものでもない。よって,乙25公報に接した当業者は,その加工対象物を「シリコンウェハ」に換えることには想到しない。 (ウ) 乙25公報のほか,いずれの文献にも,乙25公報に記載された発明 の「厚板の合成ガラスの内部に,底面(レーザ光入射面とは反対側)から上面(レーザ光入射面)に亘って連続的なクラックを形成することによって,前記加工対象物を切断する」という構成(乙25公報の第1図参照)に換えて,本件発明1-1の「シリコンウェハの内 とは反対側)から上面(レーザ光入射面)に亘って連続的なクラックを形成することによって,前記加工対象物を切断する」という構成(乙25公報の第1図参照)に換えて,本件発明1-1の「シリコンウェハの内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」という構成を採用することに対する動 機付けを示す記載はない。 (エ) 以上の点からは,乙25発明1’において相違点Aに係る本件発明1-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙25公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙25発明1’との対比相違点5における「載置台を回転させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する」との構成は,本件発明1-2の構成と対立する構成ではない。したがって,被告主張の相違点5は,相違点の特定として 相当でない。 そこで,本件発明1-2と乙25発明1’との間の相違点(本件発明1-1と乙25発明1’との相違点に加えての相違点)は,正しくは次のように特定されるべきである。 (相違点B) 本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙25発明1’は,それに相当する構成を有しな い点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について乙25公報にも,他の証拠にも,乙25発明1’に「改質スポットの間の距離を制御 いるのに対し,乙25発明1’は,それに相当する構成を有しな い点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について乙25公報にも,他の証拠にも,乙25発明1’に「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることの動機付けを示す記載はないことを考慮すれば,乙25発明1’において相違点Bに係る本件発明1-2の構 成を採用することが,当業者が容易に想到し得たことでないことは明らか である。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙25公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 争点3-6(本件発明1の乙59公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理 由1-6))について(被告の主張)(1) 乙59公報に記載された発明乙59公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙59発明1」という。)。 構成a:シリコン基板である加工対象物の内部に,マーキングとなる微小亀裂群を形成するレーザ加工装置であって,構成b:前記加工対象物が載置される保持台と,構成c:パルス幅が1ns以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,構成d:前記保持台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光 源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で微小亀裂を形成させる集光光学系と,構成e:前記加工対象物のマーキングラインに沿って形成された複数の前記微小亀裂によって前記微小亀裂群を形成するために,パルスレ ーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記マーキング予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能 記微小亀裂によって前記微小亀裂群を形成するために,パルスレ ーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記マーキング予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と,構成f:前記加工対象物はシリコン基板であること構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 (2) 本件発明1-1の進歩性 ア本件発明1-1と乙59発明1との対比本件発明1-1と乙59発明1とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明1-1と乙59発明1が,共に「ウェハ状の加工対象物の内部 に,改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる 集光用レンズと,前記加工対象物の予定ラインに沿って前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と,前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は切断する技術に関するものであるのに対し,乙59発明1はマーキングに関する技術である点。 (相違点2)本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となる ように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,集光点を直線的に移動させるの 件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となる ように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,集光点を直線的に移動させるのに対し,乙59発明1では,集光点を移動させるのみで,そのほかは不明である点。 (相違点3)本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域で あるのに対し,乙59発明1では,改質領域がどのようにして形成され, どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点4)本件発明1-1は,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙59発明1では,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性 (ア) 相違点1(相違点A)についてa レーザ加工の一般的な分類によれば,レーザ加工は,除去,接合及び表面改質の3つに大別され,除去という分類の下に,切断(金属,非金属の薄板切断)及びマーキング(工具,半導体など)が挙げられる。 レーザ加工のうち,切断とマーキングは,同じ除去という大分類に属しており,近縁の技術分野である。したがって,当業者にとっては,マーキングに係る発明を切断に適用することは,適宜設計可能な事項の範囲内であり,容易に想到できることである。 このように,一般に切断とマーキングとが近接した技術分野である 点に加えて,本件発明1-1の切断方法は,加工対象物に内部から表面まで達するクラック等を形成して直ちに切断を行うものではなく,むしろ,表面に不必要な割れが発生することにより,半導体チップが損傷するとの課題を解決すべく,加工対象物の内部に切断の起点を設け,表面に不必要な割れを発生しないようにするというものである。 かかる本件発明1-1の具体 が発生することにより,半導体チップが損傷するとの課題を解決すべく,加工対象物の内部に切断の起点を設け,表面に不必要な割れを発生しないようにするというものである。 かかる本件発明1-1の具体的内容に照らせば,加工対象物の内部に設けた改質領域を,本件発明1-1の切断に供するか,マーキングに供するかは,当業者にとっては,設計事項の範囲内に属し,これら用途を適宜選択すれば足りることである。 このように,相違点1は,そもそも実質的な相違点ではなく,当業 者の適宜設計可能な事項の範囲内であるにすぎない。 b 原告は,原告が乙59公報に記載されていると主張する発明(以下「乙59発明1’」という。)における「マーキングとなる光学的損傷を形成する」という構成を本件発明1-1の「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換した場合には,マーキングという目的を達成することができなくなることが明らかであるとして,その ような構成を採用することに阻害要因があると主張する。 しかしながら,切断の技術とマーキングの技術の類似性に鑑みれば,切断の技術を模索している当業者が乙59発明1’に接した場合,乙59発明1’の「マーキング」に代えて「切断」をしようと容易に想到できる。また,マーキングも切断も,共に亀裂を形成するという課 題を有しているから,亀裂を形成するという課題を解決するための技術の具体的適用に伴って,マーキングとするか切断とするかは,まさに設計事項である。 このように,マーキングから切断への置換には阻害要因はないから,原告の上記主張は理由がない。 c 以上により,相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 以上は,原告主張の相違点Aについ ら,原告の上記主張は理由がない。 c 以上により,相違点1に係る本件発明1-1の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 以上は,原告主張の相違点Aについても同様である。 (イ) 相違点2について乙59発明1では,集光点を移動させているが,それが直線的かどう か,また,速度やパルス幅が一定であるか不明である。 もっとも,レーザ光を集光させて,集光点によってマーキングする技術においては,マーキングする部分が直線的なものであれば,当然,集光点も直線的に移動することとなり,マーキングする部分を直線的にするか否かは,当業者が適宜設計すべき事項である。 そして,集光点を直線的に移動させるに当たって速度を一定にするこ とは,精密加工の分野において,当然に当業者が想到することである。 また,パルス幅を変更させる理由がない以上,パルス幅を一定にすることも,精密加工の分野において,当然に当業者が想到することである。 そうすると,その場合において,隣り合う改質スポット間の距離は当然に一定となる。 以上により,相違点2に係る本件発明1-1の構成は,当業者が適宜設計すべき事項として容易に想到できる事項といえる。 (ウ) 相違点3について相違点3に係る本件発明1-1の構成は,本件発明1-1と乙24発明1との相違点4と同様の理由により,乙59発明1に乙25発明Aを 組み合わせることで容易に想到できる事項といえる。 (エ) 相違点4について相違点4に係る本件発明1-1の構成については,乙59発明1の加工対象物がシリコンウェハであり,レーザ照射の条件次第でシリコンウェハを溶融させることは可能であると考えられることに加え,本件発明 1-1と乙57発明1との相違点6と同様 は,乙59発明1の加工対象物がシリコンウェハであり,レーザ照射の条件次第でシリコンウェハを溶融させることは可能であると考えられることに加え,本件発明 1-1と乙57発明1との相違点6と同様の理由が当てはまるから,当業者が容易に想到できるものである。 ウ小括以上より,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に係る構成は,乙59発明1に,乙25公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣 用技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙59発明1との対比乙59公報には,集光点を移動させることによって,加工対象物の内部 に改質領域を形成することが開示されているが,それ以上に本件発明1- 2の構成要件Hの内容については開示されていない。 したがって,乙59発明1と本件発明1-2を対比すると,両者は,相違点1ないし4に加えて,次の点で相違する。 (相違点5)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波 数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」のに対し,乙59発明1は,集光点を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する点。 イ相違点に係る構成の容易想到性相違点5に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点9と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Bについても同様である。 ウ小括以上より,本件発明1-1に従属 明1-1と乙57発明1との相違点9と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Bについても同様である。 ウ小括以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙59発明1との相違点に係る構成は,乙59発明1に,乙25公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣用技術を適用することで,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 乙59公報に記載された発明乙59公報には,被告が主張する乙59発明1の構成のうち,少なくとも,「微小亀裂群を形成するレーザ加工装置」,「微小亀裂を形成させる集光光学系」に相当する各構成は記載されていない。被告が「微小亀裂」と称してい るものは,乙59公報の請求項の記載に依拠するのであれば「変質領域」の ような表現が相当であるし,【0022】の記載に依拠するのであれば,「光学的損傷」のような表現が相当である。 したがって,乙59公報に記載された本件発明1と対比すべき発明は,以下に示す乙59発明1’(被告主張に係る乙59発明1と相違する部分に下線を付す。)として特定すべきである。 構成a’:シリコン基板である加工対象物の内部に,マーキングとなる光学的損傷群を形成するレーザ加工装置であって,構成b:前記加工対象物が載置される保持台と,構成c:パルス幅が1ns以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,構成d’:前記保持台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光 源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1 パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で光学的損傷を形成させる集光光学系と,構成e’:前記加工対 前記レーザ光 源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1 パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で光学的損傷を形成させる集光光学系と,構成e’:前記加工対象物のマーキングラインに沿って形成された複数の前記光学的損傷によって前記光学的損傷群を形成するために,パル スレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記マーキング予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と,構成f:前記加工対象物はシリコン基板であること構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 (2) 本件発明1-1の進歩性ア本件発明1-1と乙59発明1’との対比被告主張に係る相違点は,本件発明1-1に係るレーザ加工装置と乙59発明1’に係るレーザ加工装置との間の構成上の相違点として正確ではない。 本件発明1-1と乙59発明1’との間には,本件発明1-1の進歩性 に影響する構成上の相違点として,少なくとも次の相違点があるというべきである。 (相違点A)本件発明1-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙59発明1’のレー ザ加工装置は,加工対象物の内部に,「マーキングとなる光学的損傷を形成する」ものであって,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について乙59公報にも,その他の文献にも,乙59発明1’における「マーキ ングとなる光学的損傷を形成する」という構成(乙59公報の【図1】(A)参照)を本件発明1-1の「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換することに対する動機付けを示す記載はない。 しかも,乙 る光学的損傷を形成する」という構成(乙59公報の【図1】(A)参照)を本件発明1-1の「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成に置換することに対する動機付けを示す記載はない。 しかも,乙59発明1’における「マーキングとなる光学的損傷を形成する」という構成を本件発明1-1の「切断の起点となる改質領域を形成 する」という構成に置換した場合には,マーキングという乙59公報に記載された発明の本来の目的を達成することができなくなることが明らかであるから,乙59発明1’には,本件発明1-1の「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成を採用することに対する阻害要因がある。 したがって,乙59発明1’から,相違点Aに係る本件発明1-1の構 成に到達することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙59公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明1-2の進歩性 ア本件発明1-2と乙59発明1’との対比 相違点5における「集光点を移動させることによって,加工対象物の内部に改質領域を形成する」との構成は,本件発明1-2の構成と対立する構成ではない。したがって,被告主張の相違点5は,相違点の特定として相当でない。 そこで,本件発明1-2と乙59発明1’との間の相違点(本件発明1 -1と乙59発明1’との相違点に加えての相違点)は,正しくは次のように特定されるべきである。 (相違点B)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節す ることで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前 発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節す ることで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙59発明1’は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について 乙59公報にも,他の証拠にも,乙59発明1’に「改質スポットの間の距離を制御する機能」を設けることの動機付けを示す記載がないことを考慮すれば,乙59発明1’において相違点Bに係る本件発明1-2の構成を採用することが,当業者が容易に想到し得たことでないことは明らかである。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙59公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 11 争点3-7(本件発明1の乙60公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由1-7))について (被告の主張) (1) 乙60公報に記載された発明乙60公報には,本件発明1と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙60発明1」という。)。 構成a:ウェハ状の加工対象物の内部に切断の起点となる光学破壊群を形成するレーザ加工装置であって, 構成b:前記加工対象物はレーザ光に対して,相対移動可能であり,構成c:パルス幅が10ps以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と構成d:前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そ のパルスレーザ光の集光点の位置で光学破壊を形成させる対物レンズと 成d:前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そ のパルスレーザ光の集光点の位置で光学破壊を形成させる対物レンズと,構成e:前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の光学破壊によって光学破壊群を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記切断予定 ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を相対移動させる機能を有する制御部と,構成f:前記加工対象物はシリコンウェハであること構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 (2) 本件発明1-1の進歩性 ア本件発明1-1と乙60発明1との対比本件発明1-1と乙60発明1とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明1-1と乙60発明1が,共に「ウェハ状の加工対象物の内部 に,改質領域を形成するレーザ加工装置であって,パルス幅が1μs以下 のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集光用レンズと,前記加工対象物の予定ラインに沿って前記改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点 を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と,前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となる ように」,「パルスレーザ光の繰り返 象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となる ように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙60発明1では,パルスレーザ光の集光点を相対移動させている点。 (相違点2)本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域で あるのに対し,乙60発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点。 (相違点3)本件発明1-1は,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙60発明1では,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点。 (相違点4)本件発明1-1は,「加工対象物が載置される載置台」を備えるのに対し,乙60発明1では,加工対象物はレーザ光に対して相対移動している点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1について 乙60発明1では,パルスレーザ光の集光点を相対移動させることに よって,加工対象物の内部に改質領域を形成しているが,パルスレーザ光の集光点を加工対象物に対して相対移動させる場合,加工対象物を移動させるか,レーザ光の集光点を移動させるか(又はその両方か)しかなく,これらは当業者が具体的技術の適用において適宜設計すべき事項である。 したがって,相違点1に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙24発明1との相違点3と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 (イ) 相違点2について相違点2に係る本件発明1-1の構成は,本件発明1-1と乙24発 明1との相違点4と同様の理由 の相違点3と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 (イ) 相違点2について相違点2に係る本件発明1-1の構成は,本件発明1-1と乙24発 明1との相違点4と同様の理由により,乙60発明1に乙25発明Aを組み合わせることで容易に想到できる事項といえる。 (ウ) 相違点3について相違点3に係る本件発明1-1の構成については,乙60発明1の加工対象物がシリコンウェハであり,レーザ照射の条件次第でシリコンウ ェハを溶融させることは可能であると考えられることに加え,本件発明1-1と乙57発明1との相違点6と同様の理由が当てはまるから,当業者が容易に想到できるものである。 (エ) 相違点4について乙60発明1では,加工対象物はレーザ光に対して相対移動している が,載置台を有するか否かは明確ではない。 もっとも,レーザ加工を行う際に,加工対象物を載置する載置台を設けることは,当業者にとって周知慣用技術である。一方で,本件発明1-1において,載置台を設けることの有利な作用効果については,本件明細書において記載も示唆もなされていない。 よって,相違点4に係る本件発明1-1の構成は,乙60発明1をも とに周知慣用技術を適用することで当業者が容易に想到できる事項といえる。 ウ原告主張の相違点Aについて(ア) 原告は,乙60公報に記載された乙60発明1は,切断ではなくマーキングに関する技術として認定すべきである旨主張する(以下,原告が 乙60公報に記載されていると主張する発明を「乙60発明1’」という。)が,乙60公報の特許請求の範囲には,請求項3及び4において,それぞれ,乙60公報に記載された発明による方法が,マーキング方法としても,切断方法としても利用可能である旨が記載 0発明1’」という。)が,乙60公報の特許請求の範囲には,請求項3及び4において,それぞれ,乙60公報に記載された発明による方法が,マーキング方法としても,切断方法としても利用可能である旨が記載されている。 よって,乙60公報に記載された発明について認定する際には,マー キングに関する技術として認定する必要はなく,切断に関する技術として認定すべきである。また,乙60公報には,「切断対象物の内部に光学破壊群を形成すること」及び「切断すること」が記載されているから,当業者にとっては,明示的に「切断の起点」という表現がないとしても,光学破壊群を切断の起点として切断することは自明である。 したがって,原告主張の相違点Aは存在しない。 (イ) 仮に,乙60公報に記載された発明がマーキングに関する発明(原告主張の乙60発明1’)であったとしても,本件発明1-1と乙59発明1との相違点1について述べたように,切断の技術とマーキングの技術の類似性に鑑みれば,切断の技術を模索している当業者が乙60発明1’ に接した場合,乙60発明1’の「マーキング」に代えて「切断」をしようと容易に想到できる。したがって,原告主張の相違点Aに係る本件発明1-1の構成は,当業者が容易に想到できる事項といえる。 エ小括以上より,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に係る構成は,乙 60発明1に,乙25公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣 用技術を適用することで,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙60発明1との対比乙60公報には,加工対象物を相対移動させることによって,加工対象 物の内部に改質領域を形成することが開示され い。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙60発明1との対比乙60公報には,加工対象物を相対移動させることによって,加工対象 物の内部に改質領域を形成することが開示されているが,それ以上に本件発明1-2の構成要件Hの内容については開示されていない。 したがって,乙60発明1と本件発明1-2を対比すると,両者は,相違点1ないし4に加えて,次の点で相違する。 (相違点5) 本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」のに対し,乙60発明1は,加工対象物を相対移動させることによって,加工対象物 の内部に改質領域を形成する点。 イ相違点に係る構成の容易想到性相違点5に係る本件発明1-1の構成については,本件発明1-1と乙57発明1との相違点9と同様の理由により,当業者が容易に想到できるものである。 以上は,原告主張の相違点Bについても同様である。 ウ小括以上より,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明である本件発明1-2と乙60発明1との相違点に係る構成は,乙60発明1に,乙25公報に記載された発明を組み合わせ,かつ,周知慣用技術を適用すること で,当業者が容易に想到できるので,本件発明1-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 乙60公報に記載された発明乙60公報には,少なくとも,「シリコンウェハの内部に切断の起点となる光学破壊群を形成するレーザ加工装置」の発明は記載されてはいない。 したがって,被告主張に係る乙60発明1については された発明乙60公報には,少なくとも,「シリコンウェハの内部に切断の起点となる光学破壊群を形成するレーザ加工装置」の発明は記載されてはいない。 したがって,被告主張に係る乙60発明1については,構成aを以下の構 成a’(構成aと相違する部分に下線を付す。)のように修正した乙60発明1’として特定するのが相当である。 構成a’:ウェハ状の加工対象物の内部にマーキングとなる光学破壊群を形成するレーザ加工装置であって,(2) 本件発明1-1の進歩性 ア本件発明1-1と乙60発明1’との対比本件発明1-1と乙60発明1’との間には,本件発明1-1の進歩性に影響する構成上の相違点として,少なくとも次の相違点があるというべきである。 (相違点A) 本件発明1-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙60発明1’のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「マーキングとなる光学的損傷を形成する」ものであって,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点Aが存在することa 乙60公報において,被告が指摘する記載箇所のうち,加工対象物の「切断」に関する記載があるいずれの箇所にも,シリコン又はその上位概念としての半導体についての記載があるいずれの箇所にも,「シ リコンを切断対象とすること」や切断対象物の内部に形成する光学破 壊群が「切断の起点」となることは記載されていない。 したがって,被告が,構成c(パルス幅が10ps以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源)と構成f(前記加工対象物はシリコンウェハであること)とを具備する発明を乙60発明1として特定してい い。 したがって,被告が,構成c(パルス幅が10ps以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源)と構成f(前記加工対象物はシリコンウェハであること)とを具備する発明を乙60発明1として特定していることを考慮して,本件発明1―1と対比し得る乙60公報に記載 された発明を特定するとすれば,本件発明1―1の構成要件1Aに対応する構成は,「ウェハ状の加工対象物の内部にマーキングとなる光学破壊群を形成するレーザ加工装置であって,」という構成にしかならない。 b 被告は,乙60公報の請求項3及び4にマーキング方法についての 記載と切断方法についての記載があることを根拠に,乙60公報に記載された発明を切断に関する技術に係るものとして認定すべき旨主張する。 しかしながら,特許法29条1項3号でいう「刊行物に記載された発明」は当該刊行物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなけ ればならないから,乙60公報の請求項4に含まれる事項であっても,乙60公報の記載全体から当業者が具体的な技術的思想として抽出できない事項は,引用発明として認定できないというべきである。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (イ) 相違点Aに係る構成の容易想到性について 本件発明1-1と乙60発明1’との相違点Aは,本件発明1-1と乙59発明1’との相違点Aと実質的に同じである。 したがって,本件発明1-1と乙59発明1’との相違点Aと同様の理由により,乙60発明1’から相違点Aに係る本件発明1-1の構成に到達することは,当業者が容易に想到し得たことではないといえる。 ウ小括 以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙60公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3 ことではないといえる。 ウ小括 以上のとおりであるから,本件発明1-1は,乙60公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明1-2の進歩性ア本件発明1-2と乙60発明1’との対比相違点5における「加工対象物を相対移動させることによって,加工対 象物の内部に改質領域を形成する」との構成は,本件発明1-2の構成と対立する構成ではない。したがって,被告主張の相違点5は,相違点の特定として相当でない。 そこで,本件発明1-2と乙60発明1’との間の相違点(本件発明1-1と乙60発明1’との相違点に加えての相違点)は,正しくは次のよ うに特定されるべきである。 (相違点B)本件発明1-2は,「前記制御部は,前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポットの間の距離を制御する機能を有し,前記載置 台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」という構成を有しているのに対し,乙60発明1’は,それに相当する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について乙60公報にも,他の証拠にも,乙60発明1’に「改質スポットの間 の距離を制御する機能」を設けることの動機付けを示す記載はないことを考慮すれば,乙60発明1’において相違点Bに係る本件発明1-2の構成を採用することが,当業者が容易に想到し得たことでないことは明らかである。 ウ小括 以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙60公報に記載された 発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 12 争点3-8(本件発明1の明確性要件違 以上のとおりであるから,本件発明1-2は,乙60公報に記載された 発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 12 争点3-8(本件発明1の明確性要件違反(無効理由1-8))について(被告の主張)(1) 本件発明1-1についてア本件発明1-1には,「改質領域」及び「改質スポット」との用語が用い られているところ,充足論において述べたとおり,「改質領域」及び「改質スポット」は,技術的な定義がされている用語ではなく,本件明細書1を参酌すると,多光子吸収によって形成されたものと理解される。 他方で,原告は,同じく本件明細書1を根拠に,被告とは異なる定義をしている。 イ本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,そして,充足論において議論したとおり,加工対象物がシリコンウェハの場合,「改質領域」及び「改質スポット」は,本件明細書1を参酌すると,溶融処理領域であると理解される。 他方で,原告は,同じく本件明細書1を根拠に,被告とは異なる定義を している。 ウこのように,「改質領域」及び「改質スポット」の意義について,多光子吸収によって形成されたものに限定されるか否か,溶融処理領域に限定されるか否かといった点で,多義的に解する余地がある以上,権利として不明確と言わざるをえず,本件発明1-1は,特許法36条6項2号の明確 性要件に違反する。 (2) 本件発明1-2について本件発明1-2は,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明であるから,前記(1)と同様の理由で,特許法36条6項2号の明確性要件に違反する。 (原告の主張) 充足論において述べたとおり,本件発明1-1及び本件発明1-2の「改 質領域」及び「改質スポット」は 同様の理由で,特許法36条6項2号の明確性要件に違反する。 (原告の主張) 充足論において述べたとおり,本件発明1-1及び本件発明1-2の「改 質領域」及び「改質スポット」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されないものとして明確である。 また,本件発明1-1及び本件発明1-2のように加工対象物がシリコンウェハの場合に「改質領域」及び「改質スポット」を「溶融処理領域」と解すべきことは原告も認めるに至っているから,これらが「溶融処理領域」に 限定されることは明確である。 したがって,本件発明1の「改質領域」及び「改質スポット」に係る被告の明確性要件違反の主張は理由がない。 13 争点3-9(本件発明1のサポート要件違反(無効理由1-9))について(被告の主張) (1) 本件発明1-1についてア 「改質領域」及び「改質スポット」が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない点本件発明1-1に係る特許請求の範囲の記載においては,「改質領域」及び「改質スポット」との用語が用いられているが,充足論において述べた とおり,本件明細書1には,「改質領域」及び「改質スポット」について,多光子吸収によって形成することしか開示されておらず,他の方法によって形成されるものについては開示されていない。 にもかかわらず,原告は,本件発明1-1の「改質領域」及び「改質スポット」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されな いと主張している。 したがって,原告の上記解釈を前提とすれば,「改質領域」及び「改質スポット」について,本件明細書1には多光子吸収によって形成されるものしか開示されていないところ,本件発明1-1は多光子吸収が支配的に寄与して形成されるもの以 を前提とすれば,「改質領域」及び「改質スポット」について,本件明細書1には多光子吸収によって形成されるものしか開示されていないところ,本件発明1-1は多光子吸収が支配的に寄与して形成されるもの以外を含むことになるから,特許請求の範囲の記載 が明細書で開示された範囲を超えているといえ,特許法36条6項1号の サポート要件を満たさない。 イ 「改質領域」及び「改質スポット」が「溶融処理領域」に限定されない点本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であるところ,本件明細書1には,加工対象物がシリコンウェハの場合,「改質領域」及び 「改質スポット」は溶融処理領域であることしか開示されておらず,他の状態になることについては一切開示されていない。 原告は,本件発明1-1の「改質領域」及び「改質スポット」は,溶融処理領域に限定されないと主張するが,そうであるとすれば,「改質領域」及び「改質スポット」について,本件明細書1には溶融処理領域であるこ としか記載されていないにもかかわらず,本件発明1-1は,溶融処理領域以外のものを含むことになる。 したがって,原告の上記解釈を前提とすれば,本件発明1-1は,特許請求の範囲の記載が明細書で開示された範囲を超えているといえ,特許法36条6項1号のサポート要件を満たさない。 (2) 本件発明1-2について本件発明1-2は,本件発明1-1に従属する請求項に係る発明であり,前記(1)と同様の理由で,特許法36条6項1号のサポート要件を満たさない。 (原告の主張)(1) 本件発明1-1について ア 「改質領域」及び「改質スポット」が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない点本件明細書1の発明の詳細な説明の記載から,「改質領域」が (1) 本件発明1-1について ア 「改質領域」及び「改質スポット」が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない点本件明細書1の発明の詳細な説明の記載から,「改質領域」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものであるか否かに関わらず本件発明1-1の課題を解決できることを当業者が認識できることは,充足論で述べ たところから明らかである。 したがって,本件発明1-1において,この点のサポート要件違反はない。 イ 「改質領域」及び「改質スポット」が「溶融処理領域」に限定されない点原告は,加工対象物がシリコンウェハの場合には「改質領域」及び「改 質スポット」に「溶融処理領域」以外のものを含むとの主張をしていないから,本件発明1-1には,この点のサポート要件違反もない。 (2) 本件発明1-2について前記(1)と同様の理由により,本件発明1-2についても,被告の主張するサポート要件違反はない。 14 争点3-10(本件発明1の実施可能要件違反(無効理由1-10))について(被告の主張)充足論において述べたとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定される。 そして,原告の説明によれば,本件明細書1に開示された実験条件では,多光子吸収ではなく,単光子吸収の方が支配的である。 したがって,本件明細書1の記載に基づいて,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」を形成することはできないから,本件発明1-1及び本件発明1-2は,いずれも特許法36条4項1号の実施可能要件を満たさない ものである。 (原告の主張)充足論において述べたとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は 及び本件発明1-2は,いずれも特許法36条4項1号の実施可能要件を満たさない ものである。 (原告の主張)充足論において述べたとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない。 そして,本件明細書1に開示された実験条件で「切断の起点となる改質領域」 が形成されること自体に疑いはないから,当業者が本件明細書1の記載に基づ いて本件発明1を実施可能であることは明らかである。 また,「切断の起点となる改質領域」が形成される原理に関し,本件明細書1において「多光子吸収により形成された」と説明されていたからといって,本件発明1が実施できない理由とはならない。 したがって,本件発明1-1及び本件発明1-2は,いずれも特許法36条 4項1号の実施可能要件を満たす。 争点3-11(本件発明1の分割要件違反による新規性欠如(無効理由1-11))について(被告の主張)原告は,本件明細書1の【0007】及び【0008】から,「改質領域」の 意義につき,多光子吸収によって形成されるもの以外の定義が導かれると主張している。 しかしながら,本件特許1に係る原出願(特願2001-278707号)の出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,これらを併せて「原出願の当初明細書等1」という。)(乙36)には,本件明細書1の【0007】 及び【0008】に対応する内容は記載されていない。そうすると,原出願の当初明細書等1には,「改質領域」の意義につき,多光子吸収によって形成されるものしか記載されていないといえる。 そうすると,本件明細書1の【0007】及び【0008】は,改質領域の定義につき,原出願の当初明細書等1に記載されていない新た つき,多光子吸収によって形成されるものしか記載されていないといえる。 そうすると,本件明細書1の【0007】及び【0008】は,改質領域の定義につき,原出願の当初明細書等1に記載されていない新たな技術的事項を 導入するものであり,本件出願1は適法な分割出願とはいえず,その結果,本件出願1は,現実の出願日である平成18年3月14日にされたものとなる。 そして,本件発明1-1及び本件発明1-2は,「改質領域」の定義が広がっただけの発明であるから,明らかに上記原出願に係る公開公報である特開2002-192368号公報(乙37。以下「乙37公報」という。)に記載され た発明を含む発明であるといえる。 したがって,本件発明1-1及び本件発明1-2は,乙37公報に記載された発明であり,新規性を欠くものである(特許法29条1項3号)。 (原告の主張)前記1(原告の主張)(1)アの「改質領域」の意義は,原出願の当初明細書等1(乙36)の記載のみに依拠したとしても成立するものであるから,原出願 の当初明細書等1に記載された発明においても,「改質領域」は「多光子吸収により形成される改質領域に限定されない改質領域」をいうものであった。 このように,本件明細書1の【0007】及び【0008】でいう「改質領域」が「多光子吸収により形成される改質領域に限定されない改質領域」になっていることは,何ら新たな技術的事項を導入したものではない。 したがって,本件出願1について分割要件の違反はないから,本件発明1-1及び本件発明1-2が乙37公報により新規性を欠くとの被告の主張は理由がない。 16 争点4-1(本件発明2の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-1))について (被告の主張)(1) 本 が乙37公報により新規性を欠くとの被告の主張は理由がない。 16 争点4-1(本件発明2の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-1))について (被告の主張)(1) 本件発明2の進歩性判断の基準日について本件出願2について,優先権主張の根拠となる基礎出願(特願2002-67348号)の願書に添付した明細書(乙31)には,「切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」 ことについて何ら記載されていない。 したがって,上記基礎出願に基づく優先権主張は認められず,本件発明1の進歩性判断は,本件出願2に係る原出願(特願2003-574373号)の出願日(平成15年3月11日)を基準に考えるべきである。 (2) 乙24公報に記載された発明 乙24公報には,本件発明2と対比すべき発明として,以下の発明が記載 されている(以下,この発明を「乙24発明2」という。)。 構成2a:窒化物半導体ウエハーの内部に,切断の起点となる加工変質層を形成するレーザ加工装置であって,構成2b:前記窒化物半導体ウエハーが載置される載置台と,構成2c:レーザ光を出射するレーザ光源と, 構成2d:前記載置台に載置された前記窒化物半導体ウエハーの内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記加工変質層を形成される集光用レンズと,構成2e:前記加工変質層を前記窒化物半導体ウエハーの内部に形成する ために,レーザ光の集光点を前記窒化物半導体ウエハーの内部に位置させた状態で,前記窒化物半導体ウエハーの切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,構成2h:を備えることを特徴とするレーザ加工装置。 を前記窒化物半導体ウエハーの内部に位置させた状態で,前記窒化物半導体ウエハーの切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,構成2h:を備えることを特徴とするレーザ加工装置。 (3) 本件発明2-1の進歩性 ア本件発明2-1と乙24発明2との対比本件発明2-1と乙24発明2とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明2-1と乙24発明2は,共に「半導体基板の内部に,切断の 起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記半導体基板が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために, レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導 体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1)本件発明2-1は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前 記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,」を備えるのに対し,乙24発明2は,このような構成を備えない点。 (相違点2)本件発明2-1は,「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」のに対し,乙24発明 2は,このような構成を備えない点。 (相違点3)本件発明2-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し の境界付近に始点及び終点が位置する」のに対し,乙24発明 2は,このような構成を備えない点。 (相違点3)本件発明2-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙24発明2では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1(相違点B)についてa 特開平8-220008号公報(乙27。以下「乙27公報」という。)に記載された発明乙27公報には,以下の発明が記載されている(【0001】,【00 27】。以下,この発明を「乙27発明」という。)。 「半導体基板を赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照射された前記半導体基板における内部の組成の乱れを撮像可能な赤外線カメラを備える検査装置。」そして,乙27発明は,相違点1に係る本件発明2-1の構成と同 一である。 b 乙24発明2と乙27発明の組み合わせについて乙24発明2における「加工改質層」は,半導体基板の内部における組成の乱れに該当し,また,当業者であれば,当然,このような内部の組成の乱れを測定したいという課題に直面している。 そして,乙27公報に接した当業者であれば,半導体基板の内部に 生じた組成の乱れを測定するという上記の課題を解決するために,乙27公報に記載された技術を適用することを容易に想到することができる。 また,相違点1に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は存在しない。 したがって,乙24発明2に乙27発明を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (イ) 相違点2(相違点C)についてa 特開平11-224864号公報(乙28。以下「乙28公報」という。)に 4発明2に乙27発明を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (イ) 相違点2(相違点C)についてa 特開平11-224864号公報(乙28。以下「乙28公報」という。)に記載された発明 乙28公報には,以下の発明が記載されている(【0023】ないし【0029】,【図1】。以下,この発明を「乙28発明」という。)。 「半導体ウエハをレーザ光を照射することで切断する際に,切断の起点について,加工対象物の外縁に到達しない端部を有する直線状に形成するレーザ加工装置。」 したがって,乙28公報には,切断予定ラインが,半導体ウェハの内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置すること,すなわち,相違点2に係る本件発明2-1の構成が開示されている。 b 乙24発明2と乙28発明との組合せについて乙24発明2と乙28発明とは,共に半導体ウエハをレーザ光を照 射することで切断する技術に関する発明であり,技術分野を同じくす る。 また,乙28発明は,何か特別の技術思想に基づくものではなく,単に切断の際の便宜のために用いられている技術に係る発明であり,それは,特別な動機付け等がなければ採用し得ない技術ではなく,当業者が適宜設計事項として採用する技術とすらいえる。 加えて,乙24発明2において,乙28発明を採用することに阻害要因となる事情もない。 そして,本件明細書2には,相違点2に係る本件発明2-1の構成を採用するが故に得られる有利な効果について,記載も示唆もなされていない。 したがって,乙24発明2に乙28発明を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (ウ) 相違点3について相違点3は,本件発明1-1と乙24発明1との相違点4と同様の相違点 したがって,乙24発明2に乙28発明を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (ウ) 相違点3について相違点3は,本件発明1-1と乙24発明1との相違点4と同様の相違点である。 したがって,この相違点4と同様の理由で,上記相違点3に係る本件発明2-1の構成は,乙25発明Aに基づき,当業者が容易に想到することができる。 ウ原告主張の相違点Aについて(ア) 本件発明1-1と乙24発明1’との相違点Aに関して述べたように, 乙24公報には「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となることについて記載されているから,本件発明2-1と乙24公報に記載された発明との間において,原告が主張するような相違点は存在しない。 (イ) また,本件発明1-1と乙24発明1との相違点5(相違点E)に関 して述べたのと同様の理由により,原告が乙24公報に記載されている と主張する発明(以下「乙24発明2’」という。)において,当業者が加工対象物を「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」から「シリコンウェハ」に置き換える動機付けはあるから,当然,「シリコンウェハ」の上位概念である「半導体基板」に置き換える動機付けもある。 そもそも,乙24発明2’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」は,「半導体基板」と呼べるものであるし,仮にそう呼ばないとしても,本件発明2-1の「半導体基板」も,乙24発明2’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」も,共に「半導体ウェハ」であり,加工対象物として極め て類似したものであるから,これらを置換することは,当業者であれば当然想到することである。 (ウ) 以上から せた窒化物半導体ウエハー」も,共に「半導体ウェハ」であり,加工対象物として極め て類似したものであるから,これらを置換することは,当業者であれば当然想到することである。 (ウ) 以上から,原告主張の相違点Aは存在せず,仮に存在するとしても当業者が容易に想到し得るものである。 エ小括 以上より,本件発明2-1と乙24発明2との相違点に係る構成は,乙24発明2に,乙27発明,乙28発明,乙25発明A及び周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (4) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙24発明2との対比本件発明2-2は,本件発明2-1から構成要件2Hを取り除き,これに構成要件2Q及び2Rを加えた発明である。 そして,乙24発明2では,載置台の移動を制御する技術が開示されているので,構成要件2Rは,本件発明2-2と乙24発明2との一致点と なる。 したがって,本件発明2-2と乙24発明2とを対比すると,一致点及び相違点は,以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明2-2と乙24発明2は,共に「半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記半導体基板 が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導 体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,を備え,前記制御部は,前 基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導 体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,を備え,前記制御部は,前記載置台の移動を制御することを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点4)本件発明2-2は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で 照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,」を備えるのに対し,乙24発明2は,このような構成を備えない点。 (相違点5)本件発明2-2は,加工対象物が「シリコン基板」であり,「改質領域」 が多光子吸収によって形成された溶融処理領域であるのに対し,乙24発明2では,加工対象物が「半導体ウエハー」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成されたか否か,及び,溶融しているか否か明確ではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性 (ア) 相違点4(相違点E)について 相違点4は,相違点1と同様の相違点である。 したがって,この相違点1と同様の理由で,相違点4に係る本件発明2-2の構成は,乙27発明に基づき,当業者が容易に想到することができる。 以上は,原告主張の相違点Eについても同様である。 (イ) 相違点5(相違点F)について相違点5は,本件発明1-1と乙24発明1との相違点5(相違点E)及び本件発明1-1と乙26発明1との相違点4(相違点A)と同様の相違点である。 したがって,これらの相違点と同様の理由で,相違点5に係る本件発 明2-2の構成は,当業者が容易に想到することができる。 以上は,原告主張の相違点Fについても同様である。 ウ原告主張の相違点 たがって,これらの相違点と同様の理由で,相違点5に係る本件発 明2-2の構成は,当業者が容易に想到することができる。 以上は,原告主張の相違点Fについても同様である。 ウ原告主張の相違点Dについて原告主張の相違点Dは,前記(3)ウの相違点Aと同様の相違点であるから,この相違点Aと同様の理由で,当業者が容易に想到することができる。 エ小括以上より,本件発明2-2と乙24発明2との相違点4及び相違点5に係る構成は,乙27発明及び乙25発明Aを組み合わせて,かつ,周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2の進歩性判断の基準日について本件発明1と同様に,被告は,本件発明2についても,公知日が本件特許2の原出願日と優先日の間にある証拠を提出していないから,本件発明2が優先権の利益を享受できるか否かは本件発明2の進歩性には影響しない。 (2) 乙24公報に記載された発明 乙24公報には,本件発明2と対比すべき発明として,被告が主張する乙24発明2は記載されていない。 乙24公報に記載された本件発明2に最も近接した発明は,以下の構成を有する乙24発明2’である(被告主張に係る乙24発明2と相違する構成要素には「構成2a’」のように,「’」を付し,相違する部分に下線を付す。)。 構成2a’: サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成するレーザ加工機であって,構成2b’: 前記サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーが載置される載置台と, 構成2c’: レーザ光を出射するレーザ光源と,構成2 するレーザ加工機であって,構成2b’: 前記サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーが載置される載置台と, 構成2c’: レーザ光を出射するレーザ光源と,構成2d’: 前記載置台に載置された前記サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記加工変質層であるスクライブ・ラインを形成さ せる集光用レンズと,構成2e’: 前記加工変質層であるスクライブ・ラインを前記サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部 に位置させた状態で,前記サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,構成2h’: を備えることを特徴とするレーザ加工装置。 (3) 本件発明2-1の進歩性 ア本件発明2-1と乙24発明2’との対比 本件発明2-1と上記乙24発明2’との間の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点)「ウェハ状の加工対象物の内部に,改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記ウェハ状の加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を 出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記ウェハ状の加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記ウェハ状の加工対象物の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記ウェハ状の加工対象物の内部に位置させた状態で,前記 ザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記ウェハ状の加工対象物の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記ウェハ状の加工対象物の内部に位置させた状態で,前記ウェ ハ状の加工対象物の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点A)本件発明2-1は,「ウェハ状の加工対象物」が「半導体基板」であり,「半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものであ るのに対し,乙24発明2’は,「ウェハ状の加工対象物」が「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」であり,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成する」ものである点。 (相違点B) 本件発明2-1は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,」を備えるのに対し,乙24発明2’は,それに対応する構成を備えない点。 (相違点C) 本件発明2-1は,「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分 と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」という構成を有するのに対し,乙24発明2’は,それに対応する構成を有しない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1(相違点B)について被告主張の相違点1と原告主張の相違点Bは同一である。 まず,乙24公報には,乙24発明2’の加工変質層であるスクライブ・ラインを観察することに対するニーズがあったことを示唆する記載は一切ない。 そして,乙 と原告主張の相違点Bは同一である。 まず,乙24公報には,乙24発明2’の加工変質層であるスクライブ・ラインを観察することに対するニーズがあったことを示唆する記載は一切ない。 そして,乙27公報は,【0001】の記載からも明らかなように,「半導体ウエハや光検出素子の欠陥,ならびに液晶パネルなどの被検体 の欠陥を検査する装置」に関する発明を開示した文献であり,乙24発明2’の加工変質層であるスクライブ・ラインに相当するものを観察することに関する技術を開示する文献ではない。そのため,当業者が乙27公報に接したとしても,乙24発明2’の加工変質層であるスクライブ・ラインを観察しようとの発想には至らない。 また,乙27公報に記載された発明は,【0004】記載の課題解決のための発明,すなわち,半導体ウエハ等が製造プロセスに投入される前に行われる検査のための発明である。よって,仮に,乙24発明2’に乙27公報に記載される技術を適用する場合であっても,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成する前のサファイア基板中の欠陥の検査 をしようとするはずであり,当業者において,加工変質層であるスクライブ・ラインを観察することには想到しない。 さらに,乙27公報に記載された発明は,乙27公報の【0004】の記載から明らかなように,目視又は可視カメラによる検査の不都合を赤外光を利用することで解消したものであるから,内部の欠陥の検査に 赤外光を利用する必要がないものに適用すべき動機付けはない。一方, 乙24発明2’の基板はサファイア基板であって,内部の欠陥の検査をしようとする場合であっても,赤外光を利用する必要がないものである。 よって,この面からも,乙24発明2’には乙27公報に記載された発明を適用すべき動機 板はサファイア基板であって,内部の欠陥の検査をしようとする場合であっても,赤外光を利用する必要がないものである。 よって,この面からも,乙24発明2’には乙27公報に記載された発明を適用すべき動機付けがないといえる。 なお,相違点1に係る本件発明2-1の構成が,乙24発明2’では 全く想定されていなかった格別の作用効果を奏することは,その構成自体から明らかである。 したがって,乙24発明2’においてその相違点1に係る構成を採用することは,乙27公報の存在を考慮しても,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (イ) 相違点2(相違点C)について被告主張の相違点2と原告主張の相違点Cは実質的に同じである。 しかしながら,乙28公報には,被告主張の乙28発明は記載されておらず,乙28公報に記載されているのは,半導体ウエハ上に形成した多数の半導体回路などの機能素子のうちの必要な機能素子のみを各チッ プに切り出して分離することができるようにするために,切り出すべきチップの周囲に切開孔(スクライブ孔)を形成する方法に関する発明であって,切断の起点を形成する方法に関する発明ではない。 そして,乙24発明2’は,溝部底面にスクライブ・ライン207を形成した上で,ローラーにより荷重をかけてウェハを切断することを前 提に,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成する」ようにしたものである(乙24公報【0046】,【0047】)。そのため,乙24発明2’において,切り出すべきチップの周囲に切開孔を形成する乙28公報に記載された発明を適用すべき部分は存在しない。 したがって,乙24発明2’においてその相違点2に係る構成を採用 す おいて,切り出すべきチップの周囲に切開孔を形成する乙28公報に記載された発明を適用すべき部分は存在しない。 したがって,乙24発明2’においてその相違点2に係る構成を採用 することは,乙28公報の存在を考慮しても,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ) 相違点3について「改質領域」が「多光子吸収によって形成された領域」であることは,本件発明2-1の要件ではないから,被告主張の相違点3は,本件発明 2-1と乙24発明2’との相違点ではない。 したがって,その点に係る容易想到性の主張は,本件発明2-1の進歩性の有無とは無関係である。 (エ) 相違点Aについてa 本件発明2-1と乙24発明2’との間に相違点Aが存在すること 被告は,乙24発明2の「窒化物半導体ウエハー」及び「加工変質層」は,本件発明2-1の「半導体基板」及び「改質領域」に相当する旨主張するが,以下のとおり,乙24発明2’の「窒化物半導体ウエハー」は,本件発明2-1の「半導体基板」には相当しないし,乙24発明2’の「加工変質層」は,本件発明2-1の「改質領域」に は相当しないから,両発明の間には相違点Aが存在する。 (a) 乙24発明2’の「窒化物半導体ウエハー」は,具体的には「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」であって,基板部分は絶縁物であるサファイアであるから,「半導体製の基板」ではない。 これに対し,本件発明2-1でいう「半導体基板」は,「半導体製の基板」である。 したがって,乙24発明2’の「窒化物半導体ウエハー」は本件発明の「半導体基板」には相当しない。 (b) 乙24発明2’の「加工変質層」は,具体的には「スクライブ・ ラインとして機能する加工変質層」で ,乙24発明2’の「窒化物半導体ウエハー」は本件発明の「半導体基板」には相当しない。 (b) 乙24発明2’の「加工変質層」は,具体的には「スクライブ・ ラインとして機能する加工変質層」であって,「切断の起点となる改 質領域」ではない。 したがって,乙24発明2’の「加工変質層」は本件発明の「改質領域」には相当しない。 b 相違点Aに係る構成の容易想到性について本件発明1-1と乙24発明1’との相違点Aの容易想到性と同様 の理由のほか,以下の点からも,相違点Aは容易想到ではない。 本件発明2-1の「半導体基板」と乙24発明2’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」とが,共に「半導体ウェハ」と呼称され得るからといって,両者の加工対象物が相互に類似したものであることにはならない。むしろ,乙24発明2’ の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」は,乙24公報の課題に関する記載から把握されるとおり,「窒化物半導体とサファイア基板との格子定数不整が大きい」,「サファイア基板はへき開性を有していない」,「サファイア,窒化物半導体とも非常に硬い」といった,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒 化物半導体ウエハー」特有の間題に起因する課題を有する物であるのに対し,本件発明2-1の「半導体基板」は,そのような課題を有する物ではなく,レーザにより好適な切断が可能か否かが不明であるという課題を有していた物であるから,両者は,切断加工という視点でみると,類似したものとはいえない。 したがって,乙24発明2’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を本件発明2-1の「半導体基板」に置換することは,当業者が容易に想到し得 たものとはいえない。 したがって,乙24発明2’の「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」を本件発明2-1の「半導体基板」に置換することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明2-1は,乙25公報,乙27公報 及び乙28公報の存在に関わらず,乙24公報に記載された発明に基づい て,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙24発明2との対比本件発明2-2と乙24発明2’との間の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点)「ウェハ状の加工対象物の内部に,改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記ウェハ状の加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記ウェハ状の加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレー ザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記ウェハ状の加工対象物の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記ウェハ状の加工対象物の内部に位置させた状態で,前記ウェハ状の加工対象物の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,を備え,前記制御部は,前記載置台及び前記集光用レンズの 少なくとも1つの移動を制御することを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点D)本件発明2-2は,「ウェハ状の加工対象物」が「半導体基板」であり,「半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものであ るのに対し,乙24発明2’は,「ウェハ状の加工対象物」が「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半 基板」であり,「半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものであ るのに対し,乙24発明2’は,「ウェハ状の加工対象物」が「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」であり,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成する」ものである点。 (相違点E) 本件発明2-2は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で 照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,」を備えるのに対し,乙24発明2’は,それに対応する構成を備えない点。 (相違点F)本件発明2-2の「ウェハ状の加工対象物」は,「半導体基板」であり, より具体的には「シリコン基板」であるのに対し,乙24発明2’の「ウェハ状の加工対象物」は,「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」である点。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点4(相違点E)について 被告主張の相違点4は原告主張の相違点Eと同一である。 そして,相違点4(相違点E)は,相違点1ないし相違点Bと同様の理由により,当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ) 相違点5(相違点F)について被告主張の相違点5は,正しくは原告主張の相違点Fのように特定さ れるべきである。 そして,相違点Fは,本件発明1-1と乙24発明1’との相違点Eと同様の相違点であり,当該相違点と同様の理由により,乙24発明2’において相違点Fに係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ) 相違点Dについて相違点Aと同様の 相違点であり,当該相違点と同様の理由により,乙24発明2’において相違点Fに係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ) 相違点Dについて相違点Aと同様の理由により,相違点Dに係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明2-2は,乙25公報,乙27公報及 び乙28公報の存在に関わらず,乙24公報に記載された発明に基づいて, 当業者が容易に発明をすることができたものではない。 17 争点4-2(本件発明2の乙26公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-2))について(被告の主張)(1) 乙26公報に記載された発明及び乙26公報の引用例適格性 前記6(被告の主張)(2)で主張したとおり,乙26公報は引用例適格性を有する。 そして,乙26公報には,本件発明2と対比すべき発明として,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙26発明2」という。)。 構成2a:加工対象物であるガラス物体の内部に,分離の起点となる破断 点を形成するレーザー加工装置であって,構成2b:前記加工対象物であるガラス物体が載置されるローラーと,構成2c:レーザ光を出射するレーザ光源と,構成2d:前記ローラーに載置された前記加工対象物であるガラス物体の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そ のレーザ光の集光点の位置で前記破断点を形成させるレーザーレンズと,構成2e:前記破断点を前記加工対象物であるガラス物体の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物であるガラス物体の内部に位置させた状態で,ガラス物体を回転させることで, 前記加工対象物であるガラス物体の分割線に 物であるガラス物体の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物であるガラス物体の内部に位置させた状態で,ガラス物体を回転させることで, 前記加工対象物であるガラス物体の分割線に沿ってレーザ光の集光点を前記加工対象物であるガラス物体に対し相対移動させる機能を有するローラーの制御部と,を備え,構成2f:前記加工対象物がガラス物体である構成2g:ことを特徴とするレーザー加工装置。 (2) 本件発明2-1の進歩性 ア本件発明2-1と乙26発明2との対比本件発明2-1と乙26発明2とを対比すると,その一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明2-1と乙26発明2は,共に「加工対象物の内部に,切断の 起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記加工対象物の内部に形成するために, レーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記加工対象物の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を前記加工対象物に対して相対的に移動させる機能を有する制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点1) 本件発明2-1の「加工対象物」は,「半導体基板」であるのに対し,乙26発明2の「加工対象物」は,「ローラー」で回転される形状の「ガラス物体」(アンプル)である点。 (相違点2)本件発明2-1の「集光点」は,「移動」するのに対し,乙26発明2の 「集光点」は,「加工対象物(ガラス ,「ローラー」で回転される形状の「ガラス物体」(アンプル)である点。 (相違点2)本件発明2-1の「集光点」は,「移動」するのに対し,乙26発明2の 「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)に対し相対移動」させられる点。 (相違点3)本件発明2-1の「集光点」は,「半導体基板の切断予定ラインに沿って」「移動」するのに対し,乙26発明2の「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)を回転させることで,…加工対象物(ガラス物体)に対し相対移 動」させられる点。 (相違点4)本件発明2-1は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,」を備えるのに対し,乙26発明2は,このような構成を備えない点。 (相違点5)本件発明2-1は,「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」のに対し,乙26発明2は,このような構成を備えない点。 (相違点6) 本件発明2-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙26発明2では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点1及び3について 本件発明1-1と乙26発明1との相違点1及び3と同様に,乙26公報に接した当業者は,「加工対象物」である「ガラス物体」(アンプル)を「ローラー」で回転する構成に代えて,ウェハ状である「ガラス板」を「加工対象物」とする構成を用いること,及び,ウェハ状の加工対象物である「ガラス板」の内部を,「集光点」が「切断予定ラインに沿って」 ーラー」で回転する構成に代えて,ウェハ状である「ガラス板」を「加工対象物」とする構成を用いること,及び,ウェハ状の加工対象物である「ガラス板」の内部を,「集光点」が「切断予定ラインに沿って」 移動する構成を用いることにつき,示唆を受けるといえる。 また,本件発明1-1と乙26発明1との相違点4と同様に,周知技術を適用することで,加工対象物をシリコンウェハ(半導体基板)とすることも容易想到である。 (イ) 相違点2について 本件発明1-1と乙26発明1との相違点2と同様に,「集光点」自体 を移動させる構成とするか,「加工対象物」を動かして,「集光点」が「加工対象物」に対し相対的に移動する構成とするかは,当業者が適宜設計可能な事項である。 (ウ) 相違点4について本件発明2-1と乙24発明2との相違点1について主張したとおり, 乙27公報には相違点4に係る構成が記載されている。 そして,乙26発明2に当該構成を組み合わせることの容易性について検討すると,乙26発明2における「破断点」はガラス物体内部の「微小亀裂」により形成されるものである(乙26公報【0021】)。 このような「破断点」を適切に形成するためには,「微小亀裂」の「長さ や幾何学的な配列などの形成及び促進を調節」する必要があり(乙26公報【0028】),特に,「ガラス表面に垂直な亀裂の大きさは,ガラス壁厚の約0.5倍を越えるべきではない」ことが要求される(乙26公報【0030】)。したがって,当業者であれば,当然このようなガラス物体内部の「微小亀裂」を観測したいという課題に直面している。 そうすると,乙27公報に接した当業者であれば,上記課題を解決するために,ガラス物体内部に生じた「微小亀裂」を観測するために,乙27公報 「微小亀裂」を観測したいという課題に直面している。 そうすると,乙27公報に接した当業者であれば,上記課題を解決するために,ガラス物体内部に生じた「微小亀裂」を観測するために,乙27公報に記載された技術を適用することを容易に想到することができる。 また,相違点4に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は存 在しない。 したがって,乙26発明2に乙27公報に記載された相違点4に係る構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (エ) 相違点5について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2について主張したとおり, 乙28公報には相違点5に係る本件発明2-1の構成が記載されている。 そして,乙26発明2に上記構成を組み合わせることの容易想到性について検討すると,本件発明2-1と乙24発明2との相違点2と同様の理由が本件発明2-1と乙26発明2との相違点5にも当てはまる。 したがって,乙26発明2に上記構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (オ) 相違点6について本件発明1-1と乙26発明1との相違点4と同様に,乙26発明2に乙25発明Aを組み合わせることで,改質領域を多光子吸収によって形成することは,当業者が容易に想到することができる。 また,上記相違点に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果も 認められない。 したがって,乙26発明2において,乙25発明Aを組み合わせ,相違点6に係る本件発明2-1の構成を想到することは,当業者にとって容易なことである。 ウ小括 以上より,本件発明2-1と乙26発明2との相違点に係る構成は,乙26発明2に,乙27発明,乙28発明及び乙25発明Aを組み合わせ,かつ,周知技術を適用 て容易なことである。 ウ小括 以上より,本件発明2-1と乙26発明2との相違点に係る構成は,乙26発明2に,乙27発明,乙28発明及び乙25発明Aを組み合わせ,かつ,周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到できるので,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (3) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙26発明2との対比本件発明2-2は,本件発明2-1から,構成要件2Hを取り除き,これに構成要件2Q及び2Rを加えた発明である。 そして,乙26発明2では,「載置台」に相当する「ローラー」の移動(回転)を制御する技術が開示されているので,構成要件2Rは,本件発 明2-2と乙26発明2との一致点となる。 したがって,本件発明2-2と乙26発明2とを対比すると,一致点及び相違点は,以下のとおりとなる。 (一致点)本件発明2-2と乙26発明2は,共に「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物 が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと,前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導 体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,を備え,前記制御部は,前記載置台の移動を制御することを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点7)本件発明2-2の「加工対象物」は,「シリコン基板」であるのに対し, 乙26発明2の「加工対象物」は,「ローラー」で回転 を制御することを特徴とするレーザ加工装置」である点。 (相違点7)本件発明2-2の「加工対象物」は,「シリコン基板」であるのに対し, 乙26発明2の「加工対象物」は,「ローラー」で回転される形状の「ガラス物体」(アンプル)である点。 (相違点8)本件発明2-2の「集光点」は,「移動」するのに対し,乙26発明2の「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)に対し相対移動」させられる点。 (相違点9)本件発明2-2の「集光点」は,「半導体基板の切断予定ラインに沿って」「移動」するのに対し,乙26発明2の「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)を回転させることで,…加工対象物(ガラス物体)に対し相対移動」させられる点。 (相違点10) 本件発明2-2は,「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,」を備えるのに対し,乙26発明2は,このような構成を備えない点。 (相違点11) 本件発明2-2は,加工対象物が「シリコン基板」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成された溶融処理領域であるのに対し,乙26発明2では,加工対象物が「ガラス物体」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成されたか否か,及び,溶融しているか否か明確ではない点。 イ相違点に係る構成の容易想到性 (ア) 相違点7ないし10について相違点7ないし10は,相違点1ないし4と同様の相違点である。 したがって,これらの相違点と同様の理由で,相違点7ないし10に係る本件発明2-2の構成は,当業者が容易に想到することができる。 (イ) 相違点11について 相違点11は,本 点である。 したがって,これらの相違点と同様の理由で,相違点7ないし10に係る本件発明2-2の構成は,当業者が容易に想到することができる。 (イ) 相違点11について 相違点11は,本件発明1-1と乙26発明1との相違点4と同様の相違点である。 したがって,この相違点4と同様の理由で,相違点11に係る本件発明2-2の構成は,当業者が容易に想到することができる。 ウ小括 以上より,本件発明2-2と乙26発明2を対比すると,相違点7ないし11において相違するが,当該相違点に係る構成は,乙26発明2に,乙27発明及び乙25発明Aを組み合わせ,かつ,周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができるので,本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張) (1) 乙26公報の引用例適格性について前記6(原告の主張)(2)のとおり,乙26公報は引用例適格性を有しない。 (2) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙26発明2との対比(ア) 被告が主張する一致点については争わない。 (イ) 相違点1,相違点3ないし5が存在することについては争わない。 被告主張の相違点2及び6は,いずれも本件発明2-1と乙26発明2の相違点ではない。 イ相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 相違点1及び3について 当業者が乙26公報の記載から被告主張に係る示唆を受けることは争わない。 相違点1について,本件発明1-1と乙26発明1との相違点4(相違点A)と同様に,「加工対象物であるガラス物体」を「半導体基板」に変更することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ) 相違点2について本件発明2-1でいう「集光点を移動させる」は,「集光点を 「加工対象物であるガラス物体」を「半導体基板」に変更することは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (イ) 相違点2について本件発明2-1でいう「集光点を移動させる」は,「集光点を加工対象物に対して相対的に移動させる」の意味であるから,被告主張の相違点2は,本件発明2-1と乙26発明2との間の相違点ではない。 (ウ) 相違点4について 乙26公報には,乙26発明2の改質領域(破断点)を観察することに対するニーズがあったことを示唆する記載はない。乙27公報も,乙26発明2の改質領域(破断点)に相当するものの観察に関する技術を開示する文献ではないから,当業者は,乙27公報に接したとしても,乙26の改質領域(破断点)を観察しようとの発想には至らない。 乙27公報の【0004】から明らかなように,乙27公報に記載さ れた発明は,目視又は可視カメラによる検査の不都合を赤外光を利用することで解消したものであるから,内部の欠陥の検査に赤外光を利用する必要がないものに適用すべき動機付けはない。一方,乙26発明2の加工対象物はガラス物体であって,内部の欠陥の検査をしようとする場合であっても,赤外光を利用する必要がないものである。よって,この 面からも,乙26発明2には乙27公報に記載された発明を適用すべき動機付けがないといえる。 なお,相違点4に係る本件発明2-1の構成が,乙26発明2では全く想定されていなかった格別の作用効果を奏することは,その構成自体から明らかである。 したがって,乙26発明2においてその相違点1に係る構成を採用することは,乙27公報の存在を考慮しても,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (エ) 相違点5について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2につ においてその相違点1に係る構成を採用することは,乙27公報の存在を考慮しても,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (エ) 相違点5について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2について述べたように, 乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開孔(貫通孔と解される)を形成する方法の発明であって,ローラーで回転される形状のガラス物体(アンプル)を加工対象物とする乙26発明2に適用すべき部分が存在する発明ではない。 したがって,乙26発明2においてその相違点2に係る構成を採用す ることは,乙28公報の存在を考慮しても,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (オ) 相違点6について本件発明2-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であることを要件としてないから,被告主張の相違点6は,本件発明2 -1と乙26発明2との間の相違点ではない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明2-1は,乙26公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙26発明2との対比 (ア) 被告が主張する一致点については争わない。 (イ) 相違点7,相違点9,相違点10が存在することについては争わない。 しかしながら,被告主張の相違点8は,本件発明2-2と乙26発明2との間の相違点ではない。 また,被告主張の相違点11のうち,加工対象物がシリコン基板かガ ラス物体かに係る部分は,相違点7で取り上げられているので,重ねて取り上げる必要はない。さらに,相違点11のうち,「改質領域」が「多光子吸収によって形成された」か否かに係る部分は,本件発明2-2と乙26発明2との間 分は,相違点7で取り上げられているので,重ねて取り上げる必要はない。さらに,相違点11のうち,「改質領域」が「多光子吸収によって形成された」か否かに係る部分は,本件発明2-2と乙26発明2との間の相違点ではない。 イ相違点に係る構成の容易想到性について (ア) 相違点7ないし10について相違点1,3及び4と同様に,相違点7,9及び10は,当業者が容易に想到し得たものではない。 なお,相違点8は,本件発明2-2と乙26発明2との間の相違点ではない。 (イ) 相違点11について前記ア(イ)によれば,被告が相違点11として主張する点は,本件発明2-2の進歩性の有無に影響しない。 ウ小括以上のとおりであるから,本件発明2-2は,乙26公報に記載された 発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 18 争点4-3(本件発明2の乙57公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-3))について(被告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点 本件発明2-1は,本件発明1-1と対比すると,本件発明1-1を以下の2点で限定している点で特徴があり,また,これらの2点は本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点(本件発明1-1と乙57発明1との相違点に加えての相違点)ともなる(これは,本件発明2-1と乙58公報,乙25公報,乙59公報及び乙60公報に記載された各 発明との相違点についても同様である。)。 そこで,本件発明2-1の進歩性については,前記7(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙57発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①及び相違点②に係る構成の容易想到性に 。 そこで,本件発明2-1の進歩性については,前記7(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙57発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①及び相違点②に係る構成の容易想到性について更に主張する。 (相違点①)本件発明2-1は,「前記載置台と載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子」を備える点。 (相違点②) 本件発明2-1は,「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」点。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27公報に記載された発明(乙27発明)について 本件発明2-1と乙24発明2との相違点1に関して述べたように, 相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27公報に記載された発明(乙27発明)において開示されている。 b 乙57公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙57公報記載の「スクライブ溝」は,半導体基板の内部における組成の乱れに該当し,当業者であれば,当然に,このような内部の組 成の乱れを測定したいという課題に直面している。 そして,乙27公報に接した当業者であれば,半導体基板の内部に生じた組成の乱れを測定するという上記課題を解決するために,乙27発明を乙57公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は存在しない。 したがって,当業者は,乙57公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,相違点①に係る本件発明2-1の構成を容易に想到で 係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は存在しない。 したがって,当業者は,乙57公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,相違点①に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 なお,仮に,乙57公報の「スクライブ溝」が裏面に露出したものであったとしても,乙57公報に記載された発明に乙24発明A(「加工対象物である半導体ウェハの裏面にスクライブ・ラインを形成する代わりに,加工対象物の内部にスクライブ・ラインを形成するレーザ加工機。」)を組み合わせた場合「スクライブ溝」は半導体結晶ウェー ハの内部に形成される構成となり,その場合は,乙57公報に記載された発明に乙27発明を組み合わせることに何ら支障はない。 (イ) 相違点②についてa 乙28公報に記載された発明(乙28発明)について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2に関して述べたように, 相違点②に係る本件発明2-1の構成については,乙28公報に記載 された発明(乙28発明)において開示されている。 b 乙57公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙57公報に記載された発明と乙28発明とは,共に半導体ウェハをレーザ光を照射することで切断する技術であり,技術分野を同じくする。そして,乙28発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発 明ではなく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発明に係る技術は,特別な動機付け等がなければ採用し得ない技術ではないから,当業者において,適宜設計事項として採用する技術とすらいえる。加えて,乙57公報に記載された発明においては,この乙28発明を採用することについて阻害要因となる事情もない。 また,本件明細書2には,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採 すらいえる。加えて,乙57公報に記載された発明においては,この乙28発明を採用することについて阻害要因となる事情もない。 また,本件明細書2には,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用するが故に得られる有利な効果について,記載も示唆もなされていない。 したがって,当業者は,乙57公報に記載された発明と乙28発明を組み合わせることにより,相違点②に係る本件発明2-1の構成を 容易に想到することができる。 ウ小括以上より,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙57発明1との相違点に加えて相違点①及び相違点②が存在するが,相違点①及び相違点②に係る本件発明2-1の構成は, 乙27発明及び乙28発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (2) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙57公報に記載された発明との相違点本件発明2-2は,本件発明1-1と対比すると,本件発明1-1を前 記(1)アの相違点①で限定している点で特徴があり,また,この点が本件発 明2-2と乙57公報に記載された発明との相違点(本件発明1-1と乙57公報に記載された発明との相違点に加えての相違点)ともなる(本件発明2-2と乙58公報,乙25公報,乙59公報及び乙60公報に記載された発明との相違点についても同様である。)。 そこで,本件発明2-2の進歩性については,前記7(被告の主張)(2) で主張した本件発明1-1と乙57公報に記載された発明との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,相違点①に係る本 公報に記載された発明との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙5 7公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができる。 ウ小括以上より,本件発明2-2と乙57公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙57発明1との相違点に加えて,相違点①におい て相違するが,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙27公報に記載された発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性 ア本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙57公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙57発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①及び相違点②が存在することは,争わない。 ただし,相違点①でいう「前記改質領域」は,「半導体基板の内部に形成 される切断の起点となる改質領域」であり,また,相違点②でいう「切断 予定ライン」は,集光点がそれに沿って移動するラインであって,「切断の起点となる改質領域が形成されるライン」であるから,それらの相違点①及び②は,いずれも,本件発明1-1と乙57発明1との相違点Aと関連した相違点であり,相違点①及び②の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について相違点①に係る本件発明2-1の構成が乙27発明に記載されてい 違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について相違点①に係る本件発明2-1の構成が乙27発明に記載されていることは争わない。 ただし,被告がいう乙27発明における「半導体基板における内部の組成の乱れ」は,「半導体製造プロセスに投入される前に半導体基板に発生している可能性のあるクラック等の欠陥であり,目視または可視カメラなどでは正確な検出が困難であった欠陥」に限られている(乙27公報【0004】等)。 b 乙57公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙57公報の「スクライブ溝」は,半導体結晶ウェーハ52の裏面に露出した溝であると解されるものであって,乙27公報に記載された発明が観察しようとした「半導体基板の内部における組成の乱れ」には該当しない。 したがって,乙57公報に記載された発明には,乙27発明を適用すべき部分はなく,乙57公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 (イ) 相違点②について a 乙28発明について 乙28公報には,被告がいう乙28発明は記載されておらず,乙28公報に記載されているのは,半導体ウェハ上に形成した多数の半導体回路などの機能素子のうちの必要な機能素子のみを各チップに切り出して分離することができるようにするために,切り出すべきチップの周囲に切開孔(スクライブ孔)を形成する方法に関する発明であっ て,切断の起点を形成する方法に関する発明ではない。 b 乙57公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開 する発明であっ て,切断の起点を形成する方法に関する発明ではない。 b 乙57公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開孔(貫通孔と解される)を形成する方法の発明であるから,「ウェハ状の加工対象物の裏面に,分割の起点となるスクライブ溝を形成するレ ーザ加工装置」の発明である乙57に記載された発明に適用すべき部分は存在しない。 仮に,乙57公報に記載された発明に乙28公報に記載された発明を適用したとしても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成は導出されないから,相違点 ②に係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」という構成も導出されない。 したがって,乙58公報に記載された発明において,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得 ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙57発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-1は,乙57公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙57公報に記載された発明との相違点本件発明2-2と乙57公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙57発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただし,相違点①は,本件発明1-1と乙57発明1との相違点Aと関 連した相違点であり,その構成の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構 し,相違点①は,本件発明1-1と乙57発明1との相違点Aと関 連した相違点であり,その構成の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,乙57公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し 得ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙57発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-2についても,乙57公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 19 争点4-4(本件発明2の乙58公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-4))について(被告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙58公報に記載された発明との相違点 本件発明2-1と乙58公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に加えて,前記18(被告の主張)(1)アの相違点①及び相違点②が存在する。 そこで,本件発明2-1の進歩性については,前記8(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙58発明1との相違点に係る構成の容易想 到性に加え,相違点①及び相違点②に係る構成の容易想到性について更に 主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点1に関して述べたように, 相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27発明において開示されている。 b 乙58公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙58公報に記載された発明に乙24発明Aを , 相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27発明において開示されている。 b 乙58公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙58公報に記載された発明に乙24発明Aを適用した場合,乙58公報の分割の起点となる「溝」は,半導体基板の内部における組成 の乱れに該当し,また,当業者であれば,当然このような内部の組成の乱れを測定したいという課題に直面している。なお,主引用発明に副引用発明を組み合わせた上に,更に副引用発明を組み合わせることも,動機付けがある限り許される。 そして,乙27公報に接した当業者であれば,半導体基板の内部に 生じた組成の乱れを測定するという上記課題を解決するために,乙27発明を乙58公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果など存在しない。 したがって,乙58公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることは,当業者が容易に想到することができる。 (イ) 相違点②についてa 乙28発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2に関して述べたように, 相違点②に係る本件発明2-1の構成については,乙28公報に記載 された発明(乙28発明)において開示されている。 b 乙58公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙58公報に記載された発明と乙28発明とは,共に半導体ウェハをレーザ光の照射により切断する技術であり,技術分野を同じくする。 そして,乙28発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発明では なく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発明に係る技術は,特別な動機付け等がなければ採用し得ない技術ではないから,当業者において 発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発明では なく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発明に係る技術は,特別な動機付け等がなければ採用し得ない技術ではないから,当業者においては,適宜設計事項として採用する技術とすらいえる。 加えて,乙58公報に記載された発明においては,この乙28発明を採用することについて阻害要因となる事情もない。 また,本件明細書2には,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用するが故に得られる有利な効果について,記載も示唆もなされていない。 したがって,当業者は,乙58公報に記載された発明と乙28発明を組み合わせることにより,相違点②に係る本件発明2-1の構成を 容易に想到できる。 ウ小括以上より,本件発明2-1と乙58公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に加えて相違点①及び相違点②が存在するが,相違点①及び相違点②に係る本件発明2-1の構成は, 乙27発明及び乙28発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (2) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙58公報に記載された発明との相違点前記18(被告の主張)(2)のとおり,本件発明2-2と乙58公報に記 載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に 加えて,前記(1)の相違点①が存在する。 そこで,本件発明2-2の進歩性については,前記8(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙58公報に記載された発明との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり, 1と乙58公報に記載された発明との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙58公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できる。 ウ小括 以上より,本件発明2-2と乙58公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に加えて,相違点①において相違するが,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙27公報に記載された発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙58公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙58公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①及び 相違点②が存在することは,争わない。 それらの相違点①及び②は,いずれも,本件発明1-1と乙58発明1との相違点Aと関連した相違点であり,相違点①及び②の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性 (ア) 相違点①について a 乙27発明について乙27発明の認定については,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点①について述べたとおりである。 b 乙58公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙58公報に記載された発明の「溝」を半導体基板の内部における 組成の乱れとすること自体,当業者が容易に想到し得たことではない。 しか 乙58公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙58公報に記載された発明の「溝」を半導体基板の内部における 組成の乱れとすること自体,当業者が容易に想到し得たことではない。 しかも,被告の主張は,乙58公報に記載された発明に乙24発明Aを適用した上で,更に乙27公報に記載された発明を適用するというもので,いわゆる「容易の容易」という多段階の適用が容易想到であるというものであり,後知恵である。乙58公報に記載された発明 の「溝」を半導体基板の内部における組成の乱れとした場合に,それを測定したいという課題に直面するとの主張は,根拠を欠いている。 したがって,乙57公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 (イ) 相違点②についてa 乙28発明について乙28公報に記載された発明の認定については,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点②について述べたとおりである。 b 乙58公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開孔(貫通孔と解される)を形成する方法の発明であるから,「半導体基板である加工対象物の表面及び裏面に,そのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成するレーザスクライブ 装置」の発明である乙58公報に記載された発明に適用すべき部分は 存在しない。 仮に,乙58公報に記載された発明に乙28公報に記載された発明を適用したとしても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成は導出されないから,相違点②に係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側 報に記載された発明を適用したとしても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成は導出されないから,相違点②に係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁 部との境界付近に始点及び終点が位置する」という構成も導出されない。 したがって,乙58公報に記載された発明において,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙58発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-1は,乙58公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙58公報に記載された発明との相違点本件発明2-2と乙58公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙58発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただし,相違点①は,本件発明1-1と乙58発明1との相違点Aと関 連した相違点であり,その構成の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,乙58公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し 得ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙58発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-2についても,乙58公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 争点4-5(本件発明2の乙25公報を主引用例とする進歩 ところからすれば,本件発明2-2についても,乙58公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 争点4-5(本件発明2の乙25公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理 由2-5))について(被告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙25公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙25公報に記載された発明を対比すると,本件発明 1-1と乙25発明1との相違点に加えて,前記18(被告の主張)(1)アの相違点①及び相違点②が存在する。 そこで,本件発明2-1の進歩性については,前記9(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙25発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①及び相違点②に係る構成の容易想到性について更に 主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点1に関して述べたように, 相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27公報に記載された発明(乙27発明)において開示されている。 b 乙25公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙25公報記載の切断の起点となる「クラック」は,基板の内部における組成の乱れに該当し,当業者であれば,当然に,このような内 部の組成の乱れを測定したいという課題に直面している。 そして,乙27公報に接した当業者であれば,半導体基板の内部に生じた組成の乱れを測定するという上記課題を解決するために,乙27発明を乙25公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は 存在しな るという上記課題を解決するために,乙27発明を乙25公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は 存在しない。 したがって,当業者は,乙25公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,相違点①に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 (イ) 相違点②について a 乙28発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2に関して述べたように,相違点②に係る本件発明2-1の構成については,乙28公報に記載された発明(乙28発明)において開示されている。 b 乙25公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて 乙25公報に記載された発明と乙28発明とは,共に基板をレーザ光の照射により切断する技術であり,技術分野を同じくする。そして,乙28発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発明ではなく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発明に係る技術は,特別な動機付け等がなければ採用し得ない技術ではないから,当業者 においては,適宜設計事項として採用する技術とすらいえる。加えて,乙25公報に記載された発明においては,この乙28発明を採用することについて阻害要因となる事情もない。 また,本件明細書2には,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用するが故に得られる有利な効果について,記載も示唆もなされて いない。 したがって,当業者は,乙25公報に記載された発明と乙28発明を組み合わせることにより,相違点②に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 ウ小括以上より,本件発明2-1と乙25公報に記載された発明とを対比する と,本件発明1-1と乙25発明1との相違 せることにより,相違点②に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 ウ小括以上より,本件発明2-1と乙25公報に記載された発明とを対比する と,本件発明1-1と乙25発明1との相違点に加えて相違点①及び相違点②が存在するが,相違点①及び相違点②に係る本件発明2-1の構成は,乙27発明及び乙28発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (2) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙25公報に記載された発明との相違点前記18(被告の主張)(2)のとおり,本件発明2-2と乙25公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙25発明1との相違点に加えて,前記(1)の相違点①が存在する。 そこで,本件発明2-2の進歩性については,前記9(被告の主張)(2) で主張した本件発明1-1と乙25発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加えて,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙25公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,当業者 が容易に想到できる。 ウ小括以上より,本件発明2-2と乙25公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙25発明1との相違点に加えて,相違点①において相違するが,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙27公報に記 載された発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから, 本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙25公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙 とができるから, 本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙25公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙25公報に記載された発明を対比すると,本件発明 1-1と乙25発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①及び相違点②が存在することは,争わない。 それらの相違点①及び②は,いずれも,本件発明1-1と乙25発明1との相違点Aと関連した相違点であり,相違点①及び②の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について乙27発明の認定については,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点①について述べたとおりである。 b 乙25公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙25公報には「切断の起点となるクラック」は記載されていないし,乙25公報でいう「連続的なクラック」は,乙27発明が観察しようとした「半導体基板の内部における組成の乱れ」には該当しない。 よって,乙25公報に記載された発明には乙27発明を適用すべき部 分はない。 したがって,乙25公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 (イ) 相違点②について a 乙28発明について 乙28公報に記載された発明の認定については,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点②について述べたとおりである。 b 乙25公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に 2-1と乙57公報に記載された発明との相違点②について述べたとおりである。 b 乙25公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開 孔(貫通孔と解される)を形成する方法の発明であるから,「厚板の合成石英ガラスの内部に,底面(レーザ光入射面とは反対側の面)から上面(レーザ光入射面)に亘る連続的なクラックを形成することによって,前記加工対象物を切断するレーザ加工装置」の発明である乙25公報に記載された発明に適用すべき部分は存在しない。 仮に,乙25公報に記載された発明に乙28公報に記載された発明を適用したとしても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成は導出されないから,相違点②に係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」という構成も導出されな い。 したがって,乙25公報に記載された発明において,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 ウ小括 以上のほか,本件発明1-1と乙25発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-1は,乙25公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙25公報に記載された発明との相違点 本件発明2-2と乙25公報に記載された発明を対比すると,本件発明 1-1と乙25発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただし,相違点①は,本件発明1-1と乙25発明1との相違点Aと関連した相違点であり,その構 1-1と乙25発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただし,相違点①は,本件発明1-1と乙25発明1との相違点Aと関連した相違点であり,その構成の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,乙25公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ない。 ウ小括 以上のほか,本件発明1-1と乙25発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-2についても,乙25公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 21 争点4-6(本件発明2の乙59公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理由2-6))について (被告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙59公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙59公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に加えての相違点として,前記18(被 告の主張)(1)アの相違点①及び相違点②が存在する。 そこで,本件発明2-1の進歩性については,前記10(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙59発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①及び相違点②に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性 (ア) 相違点①についてa 乙27発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点1に関して述べたように,相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27公報に記載された発明(乙 (ア) 相違点①についてa 乙27発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点1に関して述べたように,相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27公報に記載された発明(乙27発明)において開示されている。 b 乙59公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙59公報記載の「微小亀裂群」は,半導体基板の内部における組成の乱れに該当し,当業者であれば,当然に,このような内部の組成の乱れを測定したいという課題に直面している。 そして,乙27公報に接した当業者であれば,半導体基板の内部に 生じた組成の乱れを測定するという上記課題を解決するために,乙27発明を乙59公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は存在しない。 したがって,当業者は,乙59公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,相違点①に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 (イ) 相違点②についてa 乙28発明について 本件発明2-1と乙24発明2との相違点2に関して述べたように,相違点②に係る本件発明2-1の構成については,乙28公報に記載された発明(乙28発明)において開示されている。 b 乙59公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙59公報に記載された発明は,切断に転用することができるもの である。 それを前提とすると,乙59公報に記載された発明と乙28発明とは,共に半導体ウェハをレーザ光の照射により切断する技術であり,技術分野を同じくする。そして,乙28発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発明ではなく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発 に半導体ウェハをレーザ光の照射により切断する技術であり,技術分野を同じくする。そして,乙28発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発明ではなく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発明に係る技術は,特別な動機付け等がなければ採用し 得ない技術ではなく,当業者は,適宜設計事項として採用する技術とすらいえる。加えて,乙59公報に記載された発明においては,この乙28発明を採用することについて阻害要因となる事情もない。 また,本件明細書2には,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用するが故に得られる有利な効果について,記載も示唆もなされて いない。 したがって,当業者は,乙59公報に記載された発明と乙28発明を組み合わせることにより,相違点②に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 ウ小括 以上より,本件発明2-1と乙59公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に加えて相違点①及び相違点②が存在するが,相違点①及び相違点②に係る本件発明2-1の構成は,乙27発明及び乙28発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (2) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙59公報に記載された発明との相違点前記18(被告の主張)(2)のとおり,本件発明2-2と乙59公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に加えて,前記(1)の相違点①が存在する。 そこで,本件発明2-2の進歩性については,前記10(被告の主張)(2) で主張した本件発明1-1と乙59発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ 進歩性については,前記10(被告の主張)(2) で主張した本件発明1-1と乙59発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙59公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,当業者 が容易に想到できる。 ウ小括以上より,本件発明2-2と乙59公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に加えて,相違点①において相違するが,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙27公報に記 載された発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙59公報に記載された発明との相違点 本件発明2-1と乙59公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①及び相違点②が存在することは,争わない。 それらの相違点①及び②は,いずれも,本件発明1-1と乙59発明1との相違点Aと関連した相違点であり,相違点①及び②の容易想到性を検 討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について乙27発明の認定については,本件発明2-1と乙57公報に記載 された発明との相違点①について述べたとおりである。 b 乙59公報に記載された発明と乙27発明の組み合わせについてたとえ乙59公報に記載された発明においてマーキングとなる「光学的損 れた発明との相違点①について述べたとおりである。 b 乙59公報に記載された発明と乙27発明の組み合わせについてたとえ乙59公報に記載された発明においてマーキングとなる「光学的損傷群」を観察したいという要求があったとしても,そのことは,本件発明2-1における「切断の起点となる改質領域」を観察したいという要求があることを意味しない。 そして,本件発明2-1の原出願前には,半導体基板の内部に切断の起点となる改質領域を形成すること自体が知られていなかったのであるから,その改質領域を観察したいという要求があることも,当然に本件発明2-1の原出願前には知られていなかったものである。 したがって,乙59公報に記載された発明において,相違点①に係 る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 (イ) 相違点②についてa 乙28発明について乙28公報に記載された発明の認定については,本件発明2-1と 乙57公報に記載された発明との相違点②について述べたとおりである。 b 乙59公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28公報に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開孔(貫通孔と解される)を形成する方法の発明であるから,「シリコン 基板である加工対象物の内部に,マーキングとなる光学的損傷群を形成するレーザ加工装置」の発明である乙59公報に記載された発明に適用すべき部分は存在しない。 仮に,乙59公報に記載された発明に乙28に記載された発明を適用したとしても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点とな る改質領域を形成する」という構成は導出されないから,相違点②に 係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁 しても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点とな る改質領域を形成する」という構成は導出されないから,相違点②に 係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」という構成も導出されない。 したがって,乙59公報に記載された発明において,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙59発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-1は,乙59公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙59公報に記載された発明との相違点本件発明2-2と乙59公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙59発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただし,相違点①は,本件発明1-1と乙59発明1との相違点Aと関 連した相違点であり,その構成の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,乙59公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し 得ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙59発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-2についても,乙59公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 22 争点4-7(本件発明2の乙60公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理 についても,乙59公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 22 争点4-7(本件発明2の乙60公報を主引用例とする進歩性欠如(無効理 由2-7))について(被告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙60公報に記載された発明との相違点本件発明2-1と乙60公報に記載された発明を対比すると,本件発明 1-1と乙60発明1との相違点に加えて,前記18(被告の主張)(1)アの相違点①及び相違点②が存在する。 そこで,本件発明2-1の進歩性については,前記11(被告の主張)(2)で主張した本件発明1-1と乙60発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加え,相違点①及び相違点②に係る構成の容易想到性について更に 主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点1に関して述べたように, 相違点①に係る本件発明2-1の構成については,乙27公報に記載された発明(乙27発明)において開示されている。 b 乙60公報に記載された発明と乙27発明の組合せについて乙60公報記載の「光学破壊群」は,半導体基板の内部における組成の乱れに該当し,当業者であれば,当然このような内部の組成の乱 れを測定したいという課題に直面している。 そして,乙27公報に接した当業者であれば,半導体基板の内部に生じた組成の乱れを測定するという上記課題を解決するために,乙27発明を乙60公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は 存在しない。 したがって,当業者は 明を乙60公報に記載された発明に適用しようと,容易に想到することができる。 また,相違点①に係る本件発明2-1の構成に,格別な作用効果は 存在しない。 したがって,当業者は,乙60公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,相違点①に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 (イ) 相違点②について a 乙28発明について本件発明2-1と乙24発明2との相違点2に関して述べたように,相違点②に係る本件発明2-1の構成については,乙28公報に記載された発明(乙28発明)において開示されている。 b 乙60公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて 乙60公報に記載された発明と乙28発明とは,共に半導体ウェハをレーザ光の照射により切断する技術であり,技術分野を同じくする。 そして,乙28発明は,何か特別の技術思想のもとにされた発明ではなく,単に切断の際の便宜のためにされた発明であり,同発明に係る技術は,特別な動機付け等がなければ採用し得ない技術ではないから, 当業者においては,適宜設計事項として採用する技術とすらいえる。 加えて,乙60公報に記載された発明においては,この乙28発明を採用することについて阻害要因となる事情もない。 また,本件明細書2には,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用するが故に得られる有利な効果について,記載も示唆もなされて いない。 したがって,当業者は,乙60公報に記載された発明と乙28発明を組み合わせることにより,相違点②に係る本件発明2-1の構成を容易に想到できる。 ウ小括 以上より,本件発明2-1と乙60公報に記載された発明とを対比する と,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に加えて相違点①及 明2-1の構成を容易に想到できる。 ウ小括 以上より,本件発明2-1と乙60公報に記載された発明とを対比する と,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に加えて相違点①及び相違点②が存在するが,相違点①及び相違点②に係る本件発明2-1の構成は,乙27発明及び乙28発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-1は進歩性を有しない。 (2) 本件発明2-2の進歩性 ア本件発明2-2と乙60公報に記載された発明との相違点前記18(被告の主張)(2)のとおり,本件発明2-2と乙60公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に加えて,前記(1)の相違点①が存在する。 そこで,本件発明2-2の進歩性については,前記11(被告の主張)(2) で主張した本件発明1-1と乙60発明1との相違点に係る構成の容易想到性に加えて,相違点①に係る構成の容易想到性について更に主張する。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙60公報に記載された発明と乙27発明を組み合わせることにより,当業者 が容易に想到できる。 ウ小括以上より,本件発明2-2と乙60公報に記載された発明とを対比すると,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に加えて,相違点①において相違するが,相違点①に係る本件発明2-2の構成は,乙27公報に記 載された発明を適用することで当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙60公報に記載された発明との相違点 本件発明2-1と乙60公報に記載された発明を 件発明2-2は進歩性を有しない。 (原告の主張)(1) 本件発明2-1の進歩性ア本件発明2-1と乙60公報に記載された発明との相違点 本件発明2-1と乙60公報に記載された発明を対比すると,本件発明 1-1と乙60発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①及び相違点②が存在することは,争わない。 それらの相違点①及び②は,いずれも,本件発明1-1と乙60発明1との相違点Aと関連した相違点であり,相違点①及び②の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性(ア) 相違点①についてa 乙27発明について乙27発明の認定については,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点①について述べたとおりである。 b 乙60公報に記載された発明と乙27発明の組合せについてたとえ乙60公報に記載された発明においてマーキングとなる「光学的損傷群」を観察したいという要求があったとしても,そのことは,本件発明2-1における「切断の起点となる改質領域」を観察したいという要求があることを何ら意味しない。 そして,本件発明2-1の原出願前には,半導体基板の内部に切断の起点となる改質領域を形成すること自体が知られていなかったのであるから,その改質領域を観察したいという要求があることも,当然に本件発明2-1の原出願前には知られていなかったものである。 したがって,乙60公報に記載された発明において,相違点①に係 る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 (イ) 相違点②についてa 乙28発明について乙28公報に記載された発明の認定については,本件発明2-1と 発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得ないことである。 (イ) 相違点②についてa 乙28発明について乙28公報に記載された発明の認定については,本件発明2-1と 乙57公報に記載された発明との相違点②について述べたとおりであ る。 b 乙60公報に記載された発明と乙28発明の組合せについて乙28に記載された発明は,切り出すべきチップの周囲に切開孔(貫通孔と解される)を形成する方法の発明であるから,「ウェハ状の加工対象物の内部にマーキングとなる光学破壊群を形成するレーザ加 工装置」の発明である乙60に記載された発明に適用すべき部分は存在しない。 仮に,乙60公報に記載された発明に乙28公報に記載された発明を適用したとしても,構成要件2Hの前提となっている「切断の起点となる改質領域を形成する」という構成は導出されないから,上記相 違点②に係る「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」という構成も導出されない。 したがって,乙60公報に記載された発明において,相違点②に係る本件発明2-1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得 ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙60発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-1は,乙60公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件発明2-2の進歩性ア本件発明2-2と乙60公報に記載された発明との相違点本件発明2-2と乙60公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただ 載された発明との相違点本件発明2-2と乙60公報に記載された発明を対比すると,本件発明1-1と乙60発明1との相違点に加えての相違点として,相違点①が存在することは,争わない。 ただし,相違点①は,本件発明1-1と乙60発明1との相違点Aと関 連した相違点であり,その構成の容易想到性を検討するに際しては,上記相違点Aを踏まえた上で検討する必要がある。 イ相違点に係る構成の容易想到性前記(1)イ(ア)のとおり,乙60公報に記載された発明において,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,当業者が容易に想到し 得ないことである。 ウ小括以上のほか,本件発明1-1と乙60発明1との相違点について述べたところからすれば,本件発明2-2についても,乙60公報に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 23 争点4-8(本件発明2の明確性要件違反(無効理由2-8))について(被告の主張)(1) 「改質領域」についてア本件発明2-1について本件発明2-1には「改質領域」との用語が用いられているところ,充 足論において述べたとおり,「改質領域」は,技術的な定義がされている用語ではなく,本件明細書2を参酌すると,多光子吸収によって形成されたものと理解される。 他方で,原告は,同じく本件明細書2を根拠に,被告とは異なる定義をしている。 したがって,本件発明1についての前記12(被告の主張)と同様の理由で,「改質領域」の意義について,多光子吸収によって形成されたものに限定されるか否か,多義的に解する余地があるといえるから,本件発明2-1は,特許法36条6項2号の明確性要件に違反する。 イ本件発明2-2について 本件発 子吸収によって形成されたものに限定されるか否か,多義的に解する余地があるといえるから,本件発明2-1は,特許法36条6項2号の明確性要件に違反する。 イ本件発明2-2について 本件発明2-2にも「改質領域」との用語が用いられており,加工対象 物である「シリコン基板」は,「シリコンウェハ」と同様にシリコンを原料とする。 したがって,本件発明1についての前記12(被告の主張)と同様の理由で,「改質領域」の意義について,多光子吸収によって形成されたものに限定されるか否か,溶融処理領域に限定されるか否か,多義的に解する余 地があるといえるから,本件発明2-2は,特許法36条6項2号の明確性要件に違反する。 (2) 構成要件2Hについて構成要件2Hの「前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」との意味内容は,曖昧であり,特許権者が説明した内 容を待たねば権利範囲が確定するものではない以上,本件発明2-1は特許法36条6項2号に違反する。 そして,原告の説明によっても,構成要件2Hの「外縁部」は,内側や外側といった表現を用いずに定量的又は定性的に説明をすることができないので,曖昧な表現であり,不明確である。 (原告の主張)(1) 「改質領域」について充足論について述べたとおり,本件発明2-1及び本件発明2-2の「改質領域」及び「改質スポット」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されないものとして,明確である。 また,本件発明2-2について,加工対象物がシリコンウェハの場合には,「改質領域」及び「改質スポット」を「溶融処理領域」と解すべきことは原告も認めている。 したがって,本件発明1についての前記12(原告の主張)において述べたのと 対象物がシリコンウェハの場合には,「改質領域」及び「改質スポット」を「溶融処理領域」と解すべきことは原告も認めている。 したがって,本件発明1についての前記12(原告の主張)において述べたのと同様に,本件発明2の「改質領域」に係る被告の明確性要件違反の主 張は理由がない。 (2) 構成要件2Hについて構成要件2Hの「前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」について,前記3(原告の主張)(6)アのとおり解釈すべきことは明らかであり,そこに曖昧な点はない。 したがって,本件発明2-1の構成要件2Hについて,被告の明確性要件 違反の主張は理由がない。 24 争点4-9(本件発明2のサポート要件違反(無効理由2-9))について(被告の主張)(1) 本件発明2-1について本件発明2-1に係る特許請求の範囲の記載においては,「改質領域」との 用語が用いられているが,充足論において述べたとおり,本件明細書2には,「改質領域」について,多光子吸収によって形成することしか開示されておらず,他の方法によって形成されるものについては開示されていない。 したがって,「改質領域」に多光子吸収が支配的に寄与して形成されるもの以外を含むとの原告の解釈を前提とすれば,前記13(被告の主張)(1)アの 本件発明1-1と同様の理由で,本件発明2-1についても,特許法36条6項1号のサポート要件を満たさない。 (2) 本件発明2-2についてア 「改質領域」が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない点 本件発明2-2に係る特許請求の範囲の記載においても「改質領域」との用語が用いられており,前記(1)と同様に,原告の解釈を前提とすれば,特許法36条6項1号のサポ るものに限定されない点 本件発明2-2に係る特許請求の範囲の記載においても「改質領域」との用語が用いられており,前記(1)と同様に,原告の解釈を前提とすれば,特許法36条6項1号のサポート要件を満たさない。 イ 「改質領域」が「溶融処理領域」に限定されない点本件発明2-2は,加工対象物が「シリコン基板」であるところ,本件 明細書2には,加工対象物がシリコンウェハの場合,「改質領域」は溶融処 理領域であることしか開示されていない。 したがって,本件発明2-2の「改質領域」が溶融処理領域以外のものを含むことになると,特許請求の範囲の記載が明細書で開示された範囲を超えているといえ,特許法36条6項1号のサポート要件を満たさない。 (原告の主張) 充足論で述べたところからすれば,本件発明2についても,前記13(原告の主張)の本件発明1と同様の理由が当てはまるから,本件発明2-1及び2-2のいずれについても,被告が主張するサポート要件違反は認められない。 争点4-10(本件発明2の実施可能要件違反(無効理由2-10))について (被告の主張)原告の説明によれば,本件明細書2に開示された実験条件では,多光子吸収ではなく,単光子吸収の方が支配的であるとのことである。 したがって,前記14(被告の主張)における本件発明1の実施可能要件違反と同様の理由で,本件発明2-1及び本件発明2-2は,いずれも特許法3 6条4項1号の実施可能要件を満たさないものである。 (原告の主張)前記14(原告の主張)の本件発明1の実施可能要件違反と同様の理由で,本件発明2-1及び本件発明2-2は,いずれも特許法36条4項1号の実施可能要件を満たす。 26 争点5(本件各発明についての原告による 主張)の本件発明1の実施可能要件違反と同様の理由で,本件発明2-1及び本件発明2-2は,いずれも特許法36条4項1号の実施可能要件を満たす。 26 争点5(本件各発明についての原告による実施許諾の有無)について(被告の主張)(1) 原告と被告との間では,以下のとおり,本件各発明の実施について,平成26年10月8日に実施許諾契約(以下「本件実施許諾契約」という。)が成立しており,被告による被告製品の製造,譲渡,輸出又は譲渡の申出は,当 該契約による許諾の範囲内である。 ●(省略)●ウ以上により,原告は,被告に対し,本件各特許権を含むステルスダイシング技術に関する全ての特許権の実施を,被告が開発するレーザエンジンを搭載したレーザダイシング装置を対象として許諾したものである。 ● (省略)● (2) 原告の主張について●(省略)●(原告の主張)本件実施許諾契約の成立は否認する。以下のとおり,被告による被告製品の製造,譲渡,輸出又は譲渡の申出について,原告の許諾があったとは認められ ない。 ●(省略)● 27 争点6(差止請求及び廃棄請求の当否)について(原告の主張)被告製品は,いずれも本件各発明の技術的範囲に属するものであるから,被 告が,業として被告製品を製造し,譲渡し,輸出し,又は譲渡の申出をする行為は,本件各特許権を侵害する行為である。また,被告の行為態様及び態度からすれば,被告は,今後,業として被告製品を使用し,貸し渡し,又は貸渡しの申出をするおそれがある。 したがって,原告は,被告に対し,特許法100条1項に基づき,上記各行 為の差止めを請求する権利を有し,また,これらの侵害行為を組成した被告製品の廃棄を求める権利を有する。 なお,別紙1 したがって,原告は,被告に対し,特許法100条1項に基づき,上記各行 為の差止めを請求する権利を有し,また,これらの侵害行為を組成した被告製品の廃棄を求める権利を有する。 なお,別紙1被告製品目録に記載した,被告製品1(ML300シリーズ)及び被告製品2(ML200シリーズ)の具体的な型番は例示列挙にすぎず,原告が製造して被告に販売したステルスダイシングエンジンを搭載したレーザ ダイシングマシンについては,そもそも被告製品には含まれていない。 また,被告が,現在,製造販売していない型番についても,直ちに侵害のおそれがないとはいえない。 (被告の主張)原告の主張は否認ないし争う。 被告製品として記載されている型番のうち,次のものは,いずれも,原告が 製造して被告に販売したステルスダイシングエンジンを搭載したものであり,差止め及び廃棄の対象から除外されるべきである。 被告製品1のうち ML300,ML300Plus,ML300PlusⅡ,ML300PlusⅢ,ML300PlusⅤ被告製品2のうち ML200,ML200Plus,ML200Plus Ⅱ,ML200PlusⅢ,ML200Plusまた,これらのうち,ML300,ML300Plus及びML300PlusⅡ並びにML200,ML200Plus及びML200PlusⅡの型番の製品は,現在製造販売等していないので,その意味でも差止め及び廃棄の対象から除外されるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書1の記載事項等(1) 本件明細書1(甲1の2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する【図1】ないし【図6】,【図8】ないし【図13】,【図17】,【図23】並びに【図24】については,別紙3「本件明細書1 ) 本件明細書1(甲1の2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する【図1】ないし【図6】,【図8】ないし【図13】,【図17】,【図23】並びに【図24】については,別紙3「本件明細書1の図面」参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,半導体材料基板,圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工装置に関する。 イ 【背景技術】 【0002】 レーザ応用の一つに切断があり,レーザによる一般的な切断は次の通りである。例えば半導体ウェハやガラス基板のような加工対象物の切断する箇所に,加工対象物が吸収する波長のレーザ光を照射し,レーザ光の吸収により切断する箇所において加工対象物の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物を切断する。しかし,この方法では加工対象物の 表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融される。よって,加工対象物が半導体ウェハの場合,半導体ウェハの表面に形成された半導体素子のうち,上記領域付近に位置する半導体素子が溶融する恐れがある。 【0003】加工対象物の表面の溶融を防止する方法として,例えば,下記の特許文 献1や特許文献2に開示されたレーザによる切断方法がある。これらの文献に開示された切断方法では,加工対象物の切断する箇所をレーザ光により加熱し,そして加工対象物を冷却することにより,加工対象物の切断する箇所に熱衝撃を生じさせて加工対象物を切断する。 ウ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】しかし,これらの文献に開示された切断方法では,加工対象物に生じる熱衝撃が大きいと,加工対象物の表面に,切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射していない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生することがある。 の文献に開示された切断方法では,加工対象物に生じる熱衝撃が大きいと,加工対象物の表面に,切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射していない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生することがある。よって,これらの切断方法では精密切断をすることができな い。特に,加工対象物が半導体ウェハ,液晶表示装置が形成されたガラス基板,電極パターンが形成されたガラス基板の場合,この不必要な割れにより半導体チップ,液晶表示装置,電極パターンが損傷することがある。 また,これらの切断方法では平均入力エネルギーが大きいので,半導体チップ等に与える熱的ダメージも大きい。 【0005】 本発明の目的は,加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供することである。 エ 【課題を解決するための手段】【0006】本発明に係るレーザ加工装置は,ウェハ状の加工対象物の内部に,切断 の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,加工対象物が載置される載置台と,パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,載置台に載置された加工対象物の内部に,レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集 光用レンズと,隣り合う改質スポット間の距離が略一定となるように加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の改質スポットによって改質領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,切断予定ラインに沿ってパルスレ ーザ光の集光点を直線的に移動させる 点を加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,切断予定ラインに沿ってパルスレ ーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部と,を備えることを特徴とする。 【0007】本発明に係るレーザ加工装置においては,ウェハ状の加工対象物の内部に集光点を合わせてパルスレーザ光を照射することにより,切断予定ライ ンに沿って加工対象物の内部に改質領域を形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。本発明に係るレーザ加工装置によれば,改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより,加工対象物を切断することができる。よって,比較的小さな力で加工対象 物を切断することができるので,加工対象物の表面に切断予定ラインから 外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。 【0008】また,本発明に係るレーザ加工装置においては,加工対象物の内部に局所的に改質領域を形成している。よって,加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので,加工対象物の表面が溶融することはない。 【0009】なお,制御部は,載置台及び集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御することが好ましい。これにより,切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させることが可能となる。 オ 【発明の効果】 【0010】本発明に係るレーザ加工装置によれば,加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく,加工対象物を切断することができる。よって,加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば,半 るレーザ加工装置によれば,加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく,加工対象物を切断することができる。よって,加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば,半導体チップ,圧電デバイスチップ,液晶等の表示装置)の歩留ま りや生産性を向上させることができる。 カ 【発明を実施するための最良の形態】【0011】以下,本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態に係るレーザ加工方法は,多光子吸収により改質領域を形成している。 多光子吸収はレーザ光の強度を非常に大きくした場合に発生する現象である。まず,多光子吸収について簡単に説明する。 【0012】材料の吸収のバンドギャップEGよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって,材料に吸収が生じる条件はhν>EGである。 しかし,光学的に透明でも,レーザ光の強度を非常に大きくするとnhν >EGの条件(n=2,3,4,・・・である)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収という。パルス波の場合,レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり,例えばピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は,(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー) ÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また,連続波の場合,レーザ光の強度はレーザ光の集光点の電界強度(W/cm2)で決まる。 【0014】図1及び図2に示すように,加工対象物1の表面3には切断予定ライン 5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレーザ加工は,多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の 図1及び図2に示すように,加工対象物1の表面3には切断予定ライン 5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレーザ加工は,多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して改質領域7を形成する。なお,集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである。 【0015】 レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち矢印A方向に沿って)相対的に移動させることにより,集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより,図3~図5に示すように改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部にのみ形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は,加工対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工 対象物1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。加工対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって,加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので,加工対象物1の表面3が溶融することはない。 【0016】 加工対象物1の切断において,切断する箇所に起点があると加工対象物 1はその起点から割れるので,図6に示すように比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。よって,加工対象物1の表面3に不必要な割れを発生させることなく加工対象物1の切断が可能となる。 【0017】なお,改質領域を起点とした加工対象物の切断は,次の二通りが考えら れる。一つは,改質領域形成後,加工対象物に人為的な力が印加されることにより,改質領域を起点として加工対象物が割れ,加工対象物が切断される場合である。これは,例えば加工対象物の厚みが大きい場合の切断である。人為的な力 域形成後,加工対象物に人為的な力が印加されることにより,改質領域を起点として加工対象物が割れ,加工対象物が切断される場合である。これは,例えば加工対象物の厚みが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは,例えば,加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物に曲げ応力やせん断応力を加えたり,加工対象物に 温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の一つは,改質領域を形成することにより,改質領域を起点として加工対象物の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ,結果的に加工対象物が切断される場合である。これは,例えば加工対象物の厚みが小さい場合,厚さ方向に改質領域が1つでも可能であり,加工対象物の厚みが大きい場合, 厚さ方向に複数の改質領域を形成することで可能となる。なお,この自然に割れる場合も,切断する箇所の表面上において,改質領域が形成されていない部分まで割れが先走ることがなく,改質部を形成した部分のみを割断することができるので,割断を制御よくすることができる。近年,シリコンウェハ等の半導体ウェハの厚さは薄くなる傾向にあるので,このよう な制御性のよい割断方法は大変有効である。 【0018】さて,本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域として,次の(1)~(3)がある。 【0019】 (1)改質領域が一つ又は複数のクラックを含むクラック領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばガラスやLiTaO3からなる圧電材料)の内部に集光点を合わせて,集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1μs以下の条件で照射する。このパルス幅の大きさは,多光子吸収を生じさせつつ加工対象物表面に余計なダメージを与えずに,加工対象物の内部にのみクラ 強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1μs以下の条件で照射する。このパルス幅の大きさは,多光子吸収を生じさせつつ加工対象物表面に余計なダメージを与えずに,加工対象物の内部にのみクラック領域を形成できる条件である。 これにより,加工対象物の内部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生する。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみが誘起され,これにより加工対象物の内部にクラック領域が形成される。…【0020】本発明者は,電界強度とクラックの大きさとの関係を実験により求めた。 実験条件は次ぎの通りである。 【0021】(A)加工対象物:パイレックス(登録商標)ガラス(厚さ700μm)(B)レーザ光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ 波長:1064nmレーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2発振形態:Qスイッチパルス繰り返し周波数:100kHzパルス幅:30ns 出力:出力<1mJ/パルスレーザ光品質:TEM00偏光特性:直線偏光(C)集光用レンズレーザ光波長に対する透過率:60パーセント (D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒 【0024】次に,本実施形態に係るレーザ加工において,クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニズムについて図8~図11を用いて説明する。 図8に示すように,多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して切断予定ラインに沿 って内部にクラック領域9を形成する。クラック領域9は一つ又は複数のクラックを含む領域である。図9に示すようにクラック領域9を起点としてクラックがさらに成長し,図10に示すようにクラック に沿 って内部にクラック領域9を形成する。クラック領域9は一つ又は複数のクラックを含む領域である。図9に示すようにクラック領域9を起点としてクラックがさらに成長し,図10に示すようにクラックが加工対象物1の表面3と裏面21に到達し,図11に示すように加工対象物1が割れることにより加工対象物1が切断される。加工対象物の表面と裏面に到達す るクラックは自然に成長する場合もあるし,加工対象物に力が印加されることにより成長する場合もある。 【0025】(2)改質領域が溶融処理領域の場合レーザ光を加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に 集光点を合わせて,集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1μs以下の条件で照射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域の うち少なくともいずれか一つを意味する。また,溶融処理領域は一旦溶融後再固化した領域であり,相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また,溶融処理領域とは単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。 つまり,例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造 から多結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構 造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。なお,電界強度の上限値としては,例えば1×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns~20 意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。なお,電界強度の上限値としては,例えば1×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns~200nsが好ましい。 【0026】 本発明者は,シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した。実験条件は次ぎの通りである。 【0027】(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ350μm,外径4インチ)(B)レーザ 光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ波長:1064nmレーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2発振形態:Qスイッチパルス繰り返し周波数:100kHz パルス幅:30ns出力:20μJ/パルスレーザ光品質:TEM00偏光特性:直線偏光(C)集光用レンズ 倍率:50倍NA:0.55レーザ光波長に対する透過率:60パーセント(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒【0028】 図12は上記条件でのレーザ加工により切断されたシリコンウェハの一 部における断面の写真を表した図である。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形成されている。なお,上記条件により形成された溶融処理領域の厚さ方向の大きさは100μm程度である。 【0029】溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを説明する。図1 3は,レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。ただし,シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し,内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚みtが50μm,100μm,200μm,500μm,1000μmの各々について上記関係を示した リコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し,内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚みtが50μm,100μm,200μm,500μm,1000μmの各々について上記関係を示した。 【0030】例えば,Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて,シリコン基板の厚みが500μm以下の場合,シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11の厚さは350μmであるので,多光子吸収による溶融処理領域はシリコ ンウェハの中心付近,つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は,厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると,90%以上なので,レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり,ほとんどが透過する。このことは,シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて,溶融処理領域がシリコンウェハ11の内部に 形成(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形成)されたものではなく,溶融処理領域が多光子吸収により形成されたことを意味する。 多光子吸収による溶融処理領域の形成は,例えば,溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁~第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。 【0031】 なお,シリコンウェハは,溶融処理領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ,その割れがシリコンウェハの表面と裏面に到達することにより,結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし,加工対象物に力が印加されることにより成長する場合もある。なお,溶融処理領域からシリコンウェハの 表面と裏面に割れが自然に成長す ェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし,加工対象物に力が印加されることにより成長する場合もある。なお,溶融処理領域からシリコンウェハの 表面と裏面に割れが自然に成長するのは,一旦溶融後再固化した状態となった領域から割れが成長する場合,溶融状態の領域から割れが成長する場合及び溶融から再固化する状態の領域から割れが成長する場合のうち少なくともいずれか一つである。いずれの場合も切断後の切断面は図12に示すように内部にのみ溶融処理領域が形成される。加工対象物の内部に溶融 処理領域を形成する場合,割断時,切断予定ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので,割断制御が容易となる。 【0032】(3)改質領域が屈折率変化領域の場合レーザ光を加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点を合わせて,集 光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1ns以下の条件で照射する。パルス幅を極めて短くして,多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると,多光子吸収によるエネルギーが熱エネルギーに転化せずに,加工対象物の内部にはイオン価数変化,結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。 …【0033】以上のように本実施形態によれば,改質領域を多光子吸収により形成している。そして,本実施形態は,パルスレーザ光の繰り返し周波数の大きさやパルスレーザ光の集光点の相対的移動速度の大きさを調節することに より,1パルスのパルスレーザ光で形成される改質スポットと次の1パル スのパルスレーザ光で形成される改質スポットとの距離を制御している。 つまり隣り合う改質スポット間の距離を制御している。以下この距離をピッチpとして説明をする。ピッチpの制御 次の1パル スのパルスレーザ光で形成される改質スポットとの距離を制御している。 つまり隣り合う改質スポット間の距離を制御している。以下この距離をピッチpとして説明をする。ピッチpの制御についてクラック領域を例に説明する。 【0036】 よって,パルスレーザ光の繰り返し周波数の大きさ及びパルスレーザ光の集光点の相対的移動速度の大きさのうち少なくともいずれかを調節すれば,ピッチpを制御することができる。すなわち,繰り返し周波数をf(Hz)を大きくすることやステージの移動速度をv(mm/sec)を小さくすることにより,ピッチpを小さく制御できる。逆に,繰り返し周 波数をf(Hz)を小さくすることやステージの移動速度をv(mm/sec)を大きくすることにより,ピッチpを大きく制御できる。 【0041】以上説明したように,本実施形態によれば,パルスレーザ光の繰り返し周波数の大きさやパルスレーザ光の集光点の相対的移動速度の大きさを調 節することにより,ピッチpを制御することができる。これにより,加工対象物の厚さや材質等を考慮してピッチpを変えることにより,加工対象物に応じたレーザ加工が可能となる。 【0042】なお,ピッチpの制御ができることについて,クラックスポットの場合 で説明したが,溶融処理スポットや屈折率変化スポットでも同様のことが言える。但し,溶融処理スポットや屈折率変化スポットについてはすでに形成された溶融処理スポットや屈折率変化スポットとの重なりが生じても問題はない。また,パルスレーザ光の集光点の相対的移動とは,パルスレーザ光の集光点を固定して加工対象物を移動させる場合でもよいし,加工 対象物を固定してパルスレーザ光の集光点を移動させる場合でもよいし, 加工対象物 光点の相対的移動とは,パルスレーザ光の集光点を固定して加工対象物を移動させる場合でもよいし,加工 対象物を固定してパルスレーザ光の集光点を移動させる場合でもよいし, 加工対象物とパルスレーザ光の集光点とを互いに逆方向に移動させる場合でもよいし,加工対象物とパルスレーザ光の集光点とを速度を異ならせかつ同じ方向に移動させる場合でもよい。 【0043】次に,本実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図17はこ のレーザ加工装置100の概略構成図である。レーザ加工装置100は,レーザ光Lを発生するレーザ光源101と,レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と,レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と,ダイクロイックミ ラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レンズ105と,集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1が載置される載置台107と,載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と,載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と,載置台107をX軸及びY軸方向に 直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と,これら三つのステージ109,111,113の移動を制御するステージ制御部115と,を備える。 【0044】レーザ光源101はパルスレーザ光を発生するNd:YAGレーザであ る。レーザ光源101に用いることができるレーザとして,この他,Nd:YVO4レーザやNd:YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。 クラック領域や溶融処理領域を形成する場合,Nd:YAGレーザ,N レーザ光源101に用いることができるレーザとして,この他,Nd:YVO4レーザやNd:YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。 クラック領域や溶融処理領域を形成する場合,Nd:YAGレーザ,Nd:YVO4レーザ,Nd:YLFレーザを用いるのが好適である。屈折率変化領域を形成する場合,チタンサファイアレーザを用いるのが好適であ る。 【0047】レーザ加工中,加工対象物1をX軸方向やY軸方向に移動させることにより,切断予定ラインに沿って改質領域を形成する。よって,例えば,X軸方向に改質領域を形成する場合,X軸ステージ109の移動速度を調節することにより,パルスレーザ光の集光点の相対的移動の速度を調節する ことができる。また,Y軸方向に改質領域を形成する場合,Y軸ステージ111の移動速度を調節することにより,パルスレーザ光の集光点の相対的移動の速度を調節することができる。これらのステージの移動速度の調節はステージ制御部115により制御される。ステージ制御部115は速度調節手段の一例となる。…なお,集光点Pを移動可能とし,その移動速 度を調節することにより,パルスレーザ光の集光点の相対的移動の速度を調節することもできる。 【0048】Z軸方向は加工対象物1の表面3と直交する方向なので,加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦点深度の方向となる。よって,Z軸ステージ1 13をZ軸方向に移動させることにより,加工対象物1の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。また,この集光点PのX(Y)軸方向の移動は,加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。X(Y)軸ステージ109(111)が移動手段の一例となる。 【0064】次に の移動は,加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。X(Y)軸ステージ109(111)が移動手段の一例となる。 【0064】次に,図17及び図23を用いて,本実施形態に係るレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法を説明する。図23は,このレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。加工対象物1はシリコンウェハである。 【0070】 次に,レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて,レーザ光Lを加 工対象物1の表面3の切断予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので,溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。そして,切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて,溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。そ して,加工対象物1を切断予定ライン5に沿って曲げることにより,加工対象物1を切断する(S115)。これにより,加工対象物1をシリコンチップに分割する。 【0071】本実施形態の効果を説明する。これによれば,多光子吸収を起こさせる 条件でかつ加工対象物1の内部に集光点Pを合わせて,パルスレーザ光Lを切断予定ライン5に照射している。そして,X軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させることにより,集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させている。これにより,改質領域(例えばクラック領域,溶融処理領域,屈折率変化領域)を切断予定ライン5に沿うように加工対象 物1の内部に形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。よって,改質領域 )を切断予定ライン5に沿うように加工対象 物1の内部に形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。よって,改質領域を起点として切断予定ライン5に沿って加工対象物1を割ることにより,比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。 これにより,加工対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要 な割れを発生させることなく加工対象物1を切断することができる。 【0072】また,本実施形態によれば,加工対象物1に多光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部に集光点Pを合わせて,パルスレーザ光Lを切断予定ライン5に照射している。よって,パルスレーザ光Lは加工対象 物1を透過し,加工対象物1の表面3ではパルスレーザ光Lがほとんど吸 収されないので,改質領域形成が原因で表面3が溶融等のダメージを受けることはない。 【0073】以上説明したように本実施形態によれば,加工対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要な割れや溶融が生じることなく,加工対象 物1を切断することができる。よって,加工対象物1が例えば半導体ウェハの場合,半導体チップに切断予定ラインから外れた不必要な割れや溶融が生じることなく,半導体チップを半導体ウェハから切り出すことができる。表面に電極パターンが形成されている加工対象物や,圧電素子ウェハや液晶等の表示装置が形成されたガラス基板のように表面に電子デバイス が形成されている加工対象物についても同様である。よって,本実施形態によれば,加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば半導体チップ,圧電デバイスチップ,液晶等の表示装置)の歩留まりを向上させることができる。 【0074】 様である。よって,本実施形態によれば,加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば半導体チップ,圧電デバイスチップ,液晶等の表示装置)の歩留まりを向上させることができる。 【0074】 また,本実施形態によれば,加工対象物1の表面3の切断予定ライン5は溶融しないので,切断予定ライン5の幅(この幅は,例えば半導体ウェハの場合,半導体チップとなる領域同士の間隔である。)を小さくできる。 これにより,一枚の加工対象物1から作製される製品の数が増え,製品の生産性を向上させることができる。 【0075】また,本実施形態によれば,加工対象物1の切断加工にレーザ光を用いるので,ダイヤモンドカッタを用いたダイシングよりも複雑な加工が可能となる。例えば,図24に示すように切断予定ライン5が複雑な形状であっても,本実施形態によれば切断加工が可能となる。これらの効果は後に 説明する例でも同様である。 【0076】また,本実施形態によれば,パルスレーザ光の繰り返し周波数の大きさの調節や,X軸ステージ109,Y軸ステージ111の移動速度の大きさの調節により,隣合う溶融処理スポットの距離を制御できる。加工対象物1の厚さや材質等を考慮して距離の大きさを変えることにより,目的に応 じた加工が可能となる。 【0077】なお,本発明に係るレーザ加工装置は,以下の通りである。 【0079】本発明に係るレーザ加工装置によれば,加工対象物の内部に集光点を合 わせてレーザ光を照射しかつ多光子吸収という現象を利用することにより,加工対象物の内部に改質領域を形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。本発明に係るレーザ加工装置によれ することにより,加工対象物の内部に改質領域を形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。本発明に係るレーザ加工装置によれば,改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより,加工対象物 を切断することができる。よって,比較的小さな力で加工対象物を切断することができるので,加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。なお,集光点とはレーザ光が集光した箇所のことである。切断予定ラインは加工対象物の表面や内部に実際に引かれた線でもよいし,仮想の線でもよい。 【0080】また,本発明に係るレーザ加工装置によれば,加工対象物の内部に局所的に多光子吸収を発生させて改質領域を形成している。よって,加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので,加工対象物の表面が溶融することはない。以上のことはこれから説明するレーザ加工装置につ いても言えることである。 【0081】また,本発明者によれば,パルスレーザ光の集光点の相対的移動速度が一定の場合,パルスレーザ光の繰り返し周波数を小さくすると,1パルスのパルスレーザ光で形成される改質部分(改質スポットという)と次の1パルスのパルスレーザ光で形成される改質スポットとの距離が大きくなる ように制御できることが分かった。逆に,パルスレーザ光の繰り返し周波数を大きくするとこの距離が小さくなるように制御できることが分かった。 なお,本明細書ではこの距離を隣り合う改質スポット間の距離又はピッチと表現する。 【0082】 よって,パルスレーザ光の繰り返し周波数を大きく又は小さくする調節を行うことによ 分かった。 なお,本明細書ではこの距離を隣り合う改質スポット間の距離又はピッチと表現する。 【0082】 よって,パルスレーザ光の繰り返し周波数を大きく又は小さくする調節を行うことにより,隣り合う改質スポット間の距離を制御できる。加工対象物の種類や厚さ等に応じてこの距離を変えることにより,加工対象物に応じた切断加工が可能となる。なお,切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に複数の改質スポットが形成されることにより改質領域が規定され る。 【0083】また,本発明に係るレーザ加工装置によれば,入力された周波数の大きさに基づいて隣り合う改質スポット間の距離を演算し,演算された距離を表示している。よって,レーザ加工装置に入力された周波数の大きさに基 づいて形成される改質スポットについて,レーザ加工前に隣り合う改質スポット間の距離を知ることができる。 【0099】上記のすべての本発明に係るレーザ加工装置により,切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に複数の改質スポットを形成することができる。 これらの改質スポットにより改質領域が規定される。改質領域は加工対象 物の内部においてクラックが発生した領域であるクラック領域,加工対象物の内部において溶融処理した領域である溶融処理領域及び加工対象物の内部において屈折率が変化した領域である屈折率変化領域のうち少なくともいずれか一つを含む。 【0100】 上記のすべての本発明に係るレーザ加工装置によれば,隣り合う改質スポット間の距離を調節できるので,改質領域を切断予定ラインに沿って連続的に形成したり断続的に形成したりすることができる。改質領域を連続的に形成すると,連続的に形成しない場合と比べて改質領域を起点とした加工対象物の切断が容易となる。改 領域を切断予定ラインに沿って連続的に形成したり断続的に形成したりすることができる。改質領域を連続的に形成すると,連続的に形成しない場合と比べて改質領域を起点とした加工対象物の切断が容易となる。改質領域を断続的に形成すると,改質領 域が切断予定ラインに沿って連続していないので,切断予定ラインの箇所はある程度の強度を保持している。 (2) 前記(1)の記載事項及び本件発明1に係る特許請求の範囲(前記前提事実(3)ア)によれば,本件明細書1には,本件発明1に関し,次のとおりの開示があることが認められる。 アレーザによる一般的な切断には,加工対象物が吸収する波長のレーザ光を照射して,加工対象物の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて切断する方法があるが,加工対象物の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融されるため,加工対象物が半導体ウェハの場合,切断箇所付近の半導体素子が溶融する恐れがあった(【0002】)。このような表面の溶融 を防止する方法として,切断箇所をレーザ光により加熱した後に,加工対象物を冷却することで,切断箇所に熱衝撃を生じさせて切断する方法もあるが,熱衝撃が大きいと,切断を予定しない箇所での不必要な割れを生じることがあり,精密な切断ができなかった(【0003】,【0004】)。 イ 「本発明」は,前記アの従来技術の課題を解決するため,加工対象物の 表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレー ザ加工装置を提供することを目的とするものであり,「本発明」に係るレーザ加工装置は,ウェハ状の加工対象物であるシリコンウェハの内部にパルスレーザ光を集光させることによって,1パルスのパルスレーザ光で加工対象物の内部に改質スポットが形成され,パルスレーザ光の集光点を加工 加工装置は,ウェハ状の加工対象物であるシリコンウェハの内部にパルスレーザ光を集光させることによって,1パルスのパルスレーザ光で加工対象物の内部に改質スポットが形成され,パルスレーザ光の集光点を加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及び パルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にし,加工対象物の切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させるように制御することで,切断予定ラインに沿った複数の改質スポットによって加工対象物の切断の起点となる改質領域を形成するものである(【0005】,【0006】)。 「本発明」に係るレーザ加工装置は,このような構成を採ることにより,加工対象物の内部に形成された改質領域を切断の起点として,加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物の切断を可能とし,また,加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので,加工対象物の表面を溶融させずに切断を可能とす る(【0007】,【0008】)。 その結果,「本発明」に係るレーザ加工装置は,加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく,加工対象物を切断することができ,もって,各対象物を切断することにより作製される製品の歩留まりや生産性を向上させるという効果を奏する(【0010】)。 2 争点1-1(被告製品が本件発明1-1の技術的範囲に属するか(構成要件1A,1D及び1Eの充足性))について(1) 構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」についてア 「改質領域」及び「改質スポット」の意義 (ア) 特許請求の範囲の記載について 本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)において 領域」ないし「改質スポット」についてア 「改質領域」及び「改質スポット」の意義 (ア) 特許請求の範囲の記載について 本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)においては,「ウェハ状の加工対象物の内部に」「改質領域を形成する」(構成要件1A),「前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる」(構成要件1D),「複数の 前記改質スポットによって前記改質領域を形成する」(構成要件1E),「前記加工対象物がシリコンウェハである」(構成要件1F)との記載がある。 これらの記載から,構成要件1D及び1Eの「改質スポット」は,1パルスのパルスレーザ光の照射により,シリコンウェハ内部のパルスレ ーザ光の集光点の位置で形成されるものであり,構成要件1A及び1Eの「改質領域」は,複数の「改質スポット」により形成される領域であるものと理解できる。 (イ) 本件明細書1の記載について本件明細書1の「【発明を実施するための最良の形態】」においては, 「本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域として」(【0018】),「クラック領域」(【0019】),「溶融処理領域」(【0025】)及び「屈折率変化領域」(【0032】)の3種類が挙げられており,「改質領域が溶融処理領域の場合」として,「レーザ光を加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて…照 射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。」と記載されている(【0025】)。 さらに,本件明細書1の【 射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。」と記載されている(【0025】)。 さらに,本件明細書1の【0025】では,上記の記載に続けて,「溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融 から再固化する状態中の領域のうち少なくともいずれか一つを意味する。 また,溶融処理領域は一旦溶融後再固化した領域であり,相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また,溶融処理領域とは単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり,例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領 域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。」との記載がされている。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書1の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件1A及び1Eの「改質領域」とは,パルス レーザ光の照射によってシリコンウェハ内部に形成された「溶融処理領域」であり,それは,シリコンウェハが「一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくともいずれか一つ」であること,言い換えれば,「一旦溶融後再固化した領域であり,相変化した領域や結晶構造が変化した領域」又は「単結晶構 造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別の構造に変化した領域。例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶 「単結晶構 造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別の構造に変化した領域。例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造」であると理解できる。 そして,構成要件1D及び1Eの「改質スポット」とは,複数集まって「改質領域」を形成するものであり,1パルスのパルスレーザ光の照射により形成された上記「溶融処理領域」をいうものと理解できる。 (エ) 「改質領域」ないし「改質スポット」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるか否か 被告は,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質ス ポット」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されると主張するので,以下,検討する。 a 特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載について(a) 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1及び2)には,「多光子吸収」との文言はなく,これを定義する記載もない。 また,請求項1には,本件発明1に係る「レーザ加工装置」が,「ウェハ状のウェハ状の加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものであり(構成要件1A),「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源」を備え(構成要件1C),「前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射された パルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる」こと(構成要件1D),そして,「前記加工対象物はシリコンウェハであること」(構成要件1F)の記載はあるものの,こ レーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる」こと(構成要件1D),そして,「前記加工対象物はシリコンウェハであること」(構成要件1F)の記載はあるものの,このような本件発明1の構成において「改質スポット」ないし「改質領域」がいか なる現象によって形成されるものかを特定する記載はない。 (b) 本件明細書1には,本件発明1の課題解決手段について,前記1(1)のとおり,「精密切断をすることができない」,「不必要な割れにより半導体チップ,液晶表示装置,電極パターンが損傷することがある」,「半導体チップ等に与える熱的ダメージも大きい」といった 従来技術(【0002】,【0003】)の課題(【0004】)を解決するため,「加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供する」(【0005】)ことを目的として,加工対象物であるシリコンウェハの内部にパルスレーザ光を集光させて加工対象物の内部に切断の起点となる改質 領域を形成するとの請求項1に規定された構成を採用した(【000 6】ないし【0009】)との記載がある。 これらの記載からは,本件発明1の課題の解決のために必要なのは,レーザ光を加工対象物の内部に集光させて切断の起点となる「改質領域」を内部に形成することであると理解でき,そのような課題解決の手段について,「改質領域」の形成が「多光子吸収」とい う現象によらなければならないとの限定がされているとはいえない。 (c) 他方,本件明細書1の「【発明を実施するための最良の形態】」においては,「本発明の好適な実施形態…に係るレーザ加工方法は,多光子吸収により改質領域を形成している。多光子吸収はレーザ光の強度を非常に大きくし 件明細書1の「【発明を実施するための最良の形態】」においては,「本発明の好適な実施形態…に係るレーザ加工方法は,多光子吸収により改質領域を形成している。多光子吸収はレーザ光の強度を非常に大きくした場合に発生する現象である。」(【0011】) との記載,「多光子吸収」が生じる条件等(【0012】)に係る記載,「加工対象物」が「シリコンウェハのような半導体材料」の場合について,「加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。」(【0025】)との記載及び特定の条件(【0027】)での実験に おいて「溶融処理領域13が多光子吸収により形成された」(【0029】)との記載がある。 これらの記載は,実施例としての実験において生じた現象について,本件出願1及びその原出願当時における特許出願人の理解を説明したにすぎないものと考えられる。そうすると,前記(b)の課題解 決手段に係る記載に照らし,上記の実施例に係る記載をもって,本件明細書1における「改質領域」が「多光子吸収が支配的に寄与して形成されたもの」に限定されているとはいえない。 (d) 被告は,前記(c)の「加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領 域が形成される。」(【0025】)との記載により,本件明細書1に おける定義上,「溶融処理領域」が多光子吸収によって形成されるものに限定されていると主張する。 しかしながら,上記記載部分に続く,「溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくともいずれか一つを意味する。」,「溶融処理 領域とは一旦溶融後再固化した領域, 続く,「溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくともいずれか一つを意味する。」,「溶融処理 領域とは一旦溶融後再固化した領域,溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくともいずれか一つを意味する。」,「溶融処理領域は一旦溶融後再固化した領域であり,相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。」,「溶融処理領域とは単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造 が別の構造に変化した領域ということもできる。」,「加工対象物がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。」といった記載部分においては,種々の観点から「溶融処理領域」が定義されているものの,溶融処理領域が多光子吸収によって形成されたものであるという観点からの定義はされていない。 これらの記載部分に照らせば,被告が指摘する上記記載部分は,「多光子吸収」によって「溶融処理領域」が形成され得るという意味にとどまり,「溶融処理領域」が必ず多光子吸収によって形成されるものであると定義したものではないと理解できる。そうすると,被告が指摘する上記記載部分を考慮しても,本件明細書1における定義 上,「溶融処理領域」が多光子吸収によって形成されるものに限定されていると認めることはできない。 なお,甲51文献及び弁論の全趣旨によれば,現在においては,レーザ光照射によってシリコンウェハの内部が溶融する現象について,多光子吸収が支配的な役割を果たしている場合とそうでない場 合があるとの見解が示されていることが認められる。 しかしながら,前記(b)のとおり,本件明細書1の記載から,本件発明1の課題の解決のために,「改質領域」 る場合とそうでない場 合があるとの見解が示されていることが認められる。 しかしながら,前記(b)のとおり,本件明細書1の記載から,本件発明1の課題の解決のために,「改質領域」である「溶融処理領域」が「多光子吸収」によって形成される必要があるとの理解は導かれないし,その他,改質領域の形成に多光子吸収が支配的な役割を果たしている場合でなければ,上記の課題が解決できないことを認め るに足りる証拠はない。したがって,上記のような見解が存在することを考慮するとしても,本件発明1の構成における「改質領域」ないし「改質スポット」について,多光子吸収が支配的に寄与して形成されたものに限定して解釈すべき理由とはならない。 (e) 以上のとおり,本件発明1の特許請求の範囲の記載及び本件明細 書1の記載からは,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」について,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定すべきとはいえない。 b 出願経過の参酌(包袋禁反言)について(a) 本件先行特許に係る出願経過等 証拠(乙43,44,54,55,73)及び弁論の全趣旨によれば,本件先行特許に係る出願経過等について以下の事実が認められる。 原告は,平成13年9月13日に,本件先行特許に係る出願を行い,平成15年3月14日に,乙43公報に記載された「切断起点 領域形成方法及び加工対象物切断方法」との名称の発明について特許権の設定の登録がされた。その特許請求の範囲においては,複数の請求項において,レーザ光の照射により「改質領域」を形成することが規定されているが,それらの改質領域について「多光子吸収による」との限定が付されているもの(請求項1及び23)と,そ のような限定がないものとが存 ザ光の照射により「改質領域」を形成することが規定されているが,それらの改質領域について「多光子吸収による」との限定が付されているもの(請求項1及び23)と,そ のような限定がないものとが存在した。 上記出願に係る審査過程において,原告は,平成15年1月14日付け意見書(乙44)及び同日付け手続補正書(乙73)を提出した。 また,本件先行特許に係る無効審判請求事件(無効2005-80166号)において,原告は,平成17年8月15日付けで訂正 請求をするとともに,同日付けの審判事件答弁書(乙54)を提出した。上記無効審判請求事件において,平成18月3月3日,「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」との審決がされ,当該審決は同年4月14日に確定した(乙55)。 (b) 本件出願1の出願経過等 本件特許1の特許出願(本件出願1)の経過等は,前記前提事実(2)アのとおりであるが,証拠(乙49,51)及び弁論の全趣旨によれば,その出願経過等について,更に以下の事実が認められる。 原告は,本件出願1の審査において,審査官から,平成18年5月1日付け通知書により,原告によって本件出願1と類似した内容 の出願が多数されており,請求項数及び明細書の分量が膨大であって,明らかでない点があるとして,「分割出願と原出願との記載の比較」,「分割出願群のみならず,すべての案件において,特許請求の範囲の記載の比較」等を簡潔にまとめた文書を提出し,上記の点を説明するよう求められた(乙49)。 そこで,原告は,審査官に対し,同年7月10日,審査官から説明を求められた各出願について記載した一覧表(乙51)を提出した。この一覧表においては,本件先行特許に係る出願について,その「要点」の欄に「SDに関する基本 査官に対し,同年7月10日,審査官から説明を求められた各出願について記載した一覧表(乙51)を提出した。この一覧表においては,本件先行特許に係る出願について,その「要点」の欄に「SDに関する基本出願(※無効審判において半導体ウエハに限定)」との記載がされていたが,それ以上に,当該出 願に係る発明の内容に関する説明はされていなかった。 (c) 被告は,前記(a)の本件先行特許に係る出願経過等を本件発明1の特許請求の範囲の記載の解釈において参酌すべきであり,本件発明1の「改質領域」は,禁反言の効力により,多光子吸収によるものに限定解釈されるべきであると主張する。 しかしながら,本件出願1ないしその原出願と本件先行特許に係 る出願とは別個の出願であるから,前記(b)のとおり,原告が,本件出願1の審査の際に提出した一覧表(乙51)において,本件先行特許に係る出願を「基本出願」と記載していたことを考慮しても,本件発明1の解釈において本件先行特許に係る出願経過等を当然に参酌すべきとはいえない。 また,前記(a)のとおり,本件先行特許に係る発明においては,その特許請求の範囲に「多光子吸収による改質領域」との限定がされたものがあったが,本件先行特許の審査の際の意見書(乙44)における原告の主張は,引用文献にも多光子吸収による改質領域の記載があることを前提とした上で,多光子吸収によるという点以外の 点において本件先行特許に係る発明と引用文献との相違点を主張していたものと認められる。そして,前記(a)の審決(乙55)も,多光子吸収による改質領域であるか否かの相違点によって本件先行特許に係る発明の進歩性を肯定する判断をしたものではないと認められる。そうすると,本件先行特許について,改質領域が形成される も,多光子吸収による改質領域であるか否かの相違点によって本件先行特許に係る発明の進歩性を肯定する判断をしたものではないと認められる。そうすると,本件先行特許について,改質領域が形成される 原理を多光子吸収という現象によるものに限定したことによって,特許要件を満たすものとなったとはいえないから,仮に,本件発明1の解釈において,本件先行特許に係る出願経過等を参酌するとしても,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」を多光子吸収によるものに限定すべきという結論には至ら ない。 したがって,被告の上記主張は理由がないというべきである。 (d) 被告は,原告が,前記(b)の本件出願1の審査において提出した一覧表(乙51)により,審査官に対し,「改質領域」については本件先行特許に係る発明と本件発明1とで何ら異ならないものと説明しているから,禁反言の法理により,本件発明1の「改質領域」に ついても,本件先行特許に係る発明と同様に,多光子吸収によって形成されるものに限定されるべきであり,そのような原告の対応に考えれば,本件発明1に基づく原告の権利行使は,権利の濫用として認められるべきではないと主張する。 しかしながら,上記一覧表においては,本件先行特許についての 説明として,「要点」の欄に「SDに関する基本出願(※無効審判において半導体ウエハに限定)」との記載があるにとどまるものであり,このような記載をもって,「要点」欄記載の事項以外には他の特許との相違点がないとの表示がされているとはいえない。 したがって,上記一覧表を提出したとの本件出願1の出願経過か ら,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」を多光子吸収によるものに限定すべき理由はないというべき い。 したがって,上記一覧表を提出したとの本件出願1の出願経過か ら,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」を多光子吸収によるものに限定すべき理由はないというべきである。 また,上記の本件出願1の審査における原告の対応について,審査官を欺いて特許権を取得したということはできず,他に権利濫用 を基礎付けるような事情も認められないから,本件特許権1の行使が権利の濫用に当たるとの被告の主張も理由がない。 (e) 以上によれば,本件先行特許及び本件特許1に係る出願経過等の参酌により,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」を多光子吸収によって形成されたものと限定して 解釈することはできず,また,原告の本件発明1に基づく権利行使 が権利の濫用に当たるとも認められないというべきである。 (オ) ボイドは「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれるか,また,「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されるか被告は,ボイドは構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし 「改質スポット」に含まれず,また,「改質領域」ないし「改質スポット」はボイドを形成しないものに限定されると主張するところ,加工対象物がシリコンウェハの場合,ボイドとはシリコンの存在しない空隙であり,仮にシリコンが存在したとしても気相のシリコンであると説明する。 そして,原告も,ボイドの形成について,シリコンが溶融し,気化し て,上部に移動して固化し,もともとシリコン原子が存在していた領域が空隙として取り残されて固定化される旨を説明する。 そうすると,このような双方当事者の主張によれば,本件における「ボイド」とは,加工対象物内部において固体ないし液体が存在しない「 在していた領域が空隙として取り残されて固定化される旨を説明する。 そうすると,このような双方当事者の主張によれば,本件における「ボイド」とは,加工対象物内部において固体ないし液体が存在しない「空隙」を指すものと理解するのが相当であるから,この理解を前提に して,以下,検討する。 a 特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載について本件発明1の特許請求の範囲(請求項1及び2)の記載には,「ボイド」ないし「空隙」といった文言はない。また,本件明細書1においても,「改質領域」ないし「改質スポット」の内部又は周辺における 「ボイド」ないし「空隙」についての記載はない。 したがって,本件発明1の特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載からは,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」について,その内部又は周辺にボイドが形成されないものに限定すべきとの解釈は導かれない。 b 出願経過の参酌(包袋禁反言)について (a) 乙62出願の出願経過等証拠(乙62ないし67)及び弁論の全趣旨によれば,乙62出願の出願経過等について以下の事実が認められる。 原告は,平成16年7月20日に,乙62出願を行い,平成23年3月18日に,乙62公報に記載された「切断方法」との名称の 発明について特許権の設定の登録がされた。その特許請求の範囲の請求項1においては「前記切断予定ラインに沿って相互に離隔するように複数の微小空洞を形成する工程」を備えること,「前記溶融処理領域と前記微小空洞とからなる改質領域を起点として割れを発生させ」ることが規定されていた。 そして,原告は,乙62出願に係る審査過程において,平成22年7月26日付け意見書(乙65)を提出し,また,乙62出願に対する拒絶 域を起点として割れを発生させ」ることが規定されていた。 そして,原告は,乙62出願に係る審査過程において,平成22年7月26日付け意見書(乙65)を提出し,また,乙62出願に対する拒絶査定に対し,平成23年2月9日付けの審判請求書(乙67)を提出して,拒絶査定不服審判を請求した。 (b) 本件出願1の出願経過等 前記(エ)b(b)のとおり,本件出願1の審査において,原告は,平成18年7月10日,他の出願との比較等を記載した一覧表(乙51)を審査官に提出した。 この一覧表においては,乙62出願の「要点」欄に「ウエハ内部に改質領域として溶融処理領域と微小空洞を形成する」との記載が されていた(乙51)。 (c) 被告は,前記(a)の乙62出願の出願経過等を本件発明1の特許請求の範囲の記載の解釈において参酌すべきであり,本件発明1の「改質領域」は,禁反言の効力により,ボイドが形成されないものに限定解釈されるべきであると主張するが,本件出願1及びその原 出願と乙62出願とは別個の出願であり,乙62出願は本件出願1 よりも後にされたものであるから,本件発明1の解釈において乙62出願に係る出願経過等を考慮する理由はない。 なお,乙62出願について,原告は,前記(a)の平成22年7月26日付け意見書(乙65)及び平成23年2月9日付けの審判請求書(乙67)において,本件明細書1の【0027】と同一の実験条 件である乙63公報の【0029】の条件ではボイドは形成されていないと主張しており,その理由について,当該実験におけるパルス幅及びパルスピッチの条件のためであると説明していた。しかしながら,乙62出願に係る発明の特許請求の範囲においては,「前記パルスレーザ光のパルスピッチは2.00μm~6. て,当該実験におけるパルス幅及びパルスピッチの条件のためであると説明していた。しかしながら,乙62出願に係る発明の特許請求の範囲においては,「前記パルスレーザ光のパルスピッチは2.00μm~6.00μmであ る」との記載があるのに対し,本件発明1の特許請求の範囲においては,パルスピッチは特定されていないから,原告が,本件出願1の後願である乙62出願の審査において,本件明細書1に記載されたものと同一の実験条件ではボイドが形成されない旨説明したことをもって,本件発明1における改質領域全般においてボイドが形成 されないと表示したということはできない。 そして,上記のとおり,乙62出願が本件出願1の後にされた別個の出願であることに照らせば,前記(b)の本件出願1の審査の際に原告が提出した一覧表(乙51)において,乙62出願の「要点」欄に「ウエハ内部に改質領域として溶融処理領域と微小空洞を形成 する」との記載があることをもって,原告が本件発明1における改質領域をボイドが形成されないものに限定するとの表示をしたということはできない。 したがって,前記(a)及び(b)のいずれの出願経過等によっても,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」 について,ボイドを形成しないものに限定すべき理由はない。 c 以上によれば,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」ないし「改質スポット」は,その内部又は周辺にボイドを形成しないものに限定されるものではない。 また,「ボイド」自体も,前記(ウ)の「溶融処理領域」の定義に当てはまる限り,「改質領域」ないし「改質スポット」に該当するものとい うべきである。 イ被告製品によって形成されたシリコンウェハ内部のレーザ加工領域において「溶融」が生 処理領域」の定義に当てはまる限り,「改質領域」ないし「改質スポット」に該当するものとい うべきである。 イ被告製品によって形成されたシリコンウェハ内部のレーザ加工領域において「溶融」が生じているか(ア) 「溶融」が生じているか否かを検討する必要性について前記前提事実(6)のとおり,被告製品は,シリコンウェハの内部に,レ ーザ加工領域を形成するレーザ加工装置であり(構成①の第1文),1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源を備え(構成③),レーザ光源から出射されたレーザ光は,集光レンズを通過し,シリコンウェハの内部に集光される(構成④の第1文)。 そして,前記アのとおり,構成要件1A,1D及び1Eの「改質領域」 ないし「改質スポット」とは,パルスレーザ光の照射によってシリコンウェハ内部に形成された「溶融処理領域」を意味する。 そこで,被告製品によって形成されるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」及び「改質スポット」に該当するかを検討する前提として,当該レーザ加工領域において「溶融」が生じているかを検討 する。 (イ) シリコンの融点について証拠(甲52,乙72)及び弁論の全趣旨によれば,シリコンの融点は,常圧時において1687K(1414℃)であり,圧力が上がると低くなるものと認められる。 なお,シリコンは,溶融して固体から液体となると,その体積が小さ くなる性質を有する(甲71,乙108)。 (ウ) 被告製品によるレーザ加工領域のSEM(走査型電子顕微鏡)写真について証拠(甲23)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品によって加工したシリコンウェハの断面をSEMで観察すると,レーザ加工領域におい て,ボイドが存在することが確認でき,また,ボイド上方領 ついて証拠(甲23)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品によって加工したシリコンウェハの断面をSEMで観察すると,レーザ加工領域におい て,ボイドが存在することが確認でき,また,ボイド上方領域にレーザ加工領域でない部分の像とは異なる像が写し出されたことが認められる。 さらに,原告は,上記の被告製品によって形成されたレーザ加工領域の写真(甲23の6頁の写真④)から,ボイド上方領域に液体の噴出痕が分かりやすく形成されていることが確認できると主張するが,同写真 を検討しても,直ちに噴出痕の存在を確認することはできず,そもそも,SEMによる観察のみから,液体の噴出の有無を確認できるのか明らかではないから,同主張を採用することはできない。 (エ) ナノ秒レーザによる加工の特徴について証拠(甲53ないし55,68,69)及び弁論の全趣旨によれば, パルス幅がナノ秒(10-9秒)単位のナノ秒レーザは,パルス幅がフェムト秒(10-15秒)単位のフェムト秒レーザと比較して,加工対象物への熱影響が大きく,熱的加工を行うという特徴があることが認められる。 そして,被告製品におけるパルス幅について,被告は,「100nsのオーダー(桁)である」,「約300ns」などと説明しているから,弁 論の全趣旨により,被告製品においてはナノ秒パルスレーザが使用されていると認められる。 ただし,ナノ秒パルスレーザが用いられていることから,直ちに,被告製品によって形成されるレーザ加工領域において,シリコンの融点を超える加熱が行われているとはいえない。 (オ) 数値シミュレーションによるレーザ加工領域の温度上昇について a 甲51文献及び甲27文献の記載内容甲51文献においては,ナノ秒パルスレーザの照射による単結晶シリ (オ) 数値シミュレーションによるレーザ加工領域の温度上昇について a 甲51文献及び甲27文献の記載内容甲51文献においては,ナノ秒パルスレーザの照射による単結晶シリコン中の温度変化について数値シミュレーションがされ,同文献の「Fig.4.(b)」においては,シリコン中にその融点を超える温度に達する領域が生じることが示されている。 また,甲27文献においては,ナノ秒パルスレーザの照射による単結晶シリコン中の温度変化について数値シミュレーションがされ,同文献の「Fig.9(a)」及び「Fig.9(b)」において,焦点位置(深さ60μm)に近接した深さ59μm付近において,急激な熱吸収が始まり,瞬間的に2万K程度まで温度上昇すること,及び,その点からレーザ が入射する表面の方向に向かって,2000Kを超える高温領域が広がっていることが示されている。 b 甲51文献及び甲27文献を溶融の根拠にできないとの主張について(a) 被告は,甲51文献において,溶融することが「仮定」された上 で,計算機シミュレーションが行われているとして,同文献の計算結果からシリコンウェハ内部が溶融したとの結論を導くことはできないと主張する。 しかしながら,仮説に基づく検証がされた文献であることをもって,その内容を被告製品の加工領域の溶融の有無の判断に用いるこ とができないとはいえないから,被告の上記主張は採用することができない。 (b) また,被告は,甲27文献における数値シミュレーションが,融点を超えた部分について,物性値のパラメータを固体の値から液体の値に変えて計算していないと指摘し,同文献には,シリコンが融 点を超えても固体のままであり続けるというモデルが示されている から 分について,物性値のパラメータを固体の値から液体の値に変えて計算していないと指摘し,同文献には,シリコンが融 点を超えても固体のままであり続けるというモデルが示されている から,同文献を溶融の根拠として用いることはできない旨も主張する。 しかしながら,甲27文献においては,パルスレーザの照射条件として,「Pulsewidth」(パルス幅)を「150ns」(150ナノ秒)とした解析が行われ,その結果,「熱衝撃波が進行した後の冷却時に部 分的に溶融と再凝固による多結晶化が生じる」との結論が得られたと記載されていることから,シリコンがナノ秒パルスレーザの照射による加熱によって溶融する旨の記載がされていることは明らかである。そうすると,甲27文献において,シリコンが融点を超えても固体のままであり続けるというモデルが示されているとはいえな いから,被告の上記主張は採用できない。 c 甲51文献の計算機シミュレーションの計算式や計算モデルの誤りの指摘について(a) 被告は,甲51文献において,光吸収の計算に密接に関わる,シリコンのバンドギャップエネルギーの式に重大な誤りがあると指摘 する。 しかしながら,甲51文献の共著者である原告従業員清田大樹は,陳述書(甲72,78)において,被告が誤りとして指摘する点は記述上の誤りであり,実際には正しい式で計算されていると説明しており,その説明に不自然な点はない。そうすると,令和3年1月 25日の時点においても甲51文献の訂正がされていないこと(乙121,弁論の全趣旨)を考慮しても,被告が指摘する点は記述上の誤りにすぎないと認めるのが相当である。 (b) また,被告は,甲51文献の計算が,融点を超えた領域が全て液体であると扱われており,シリコンが異常 の全趣旨)を考慮しても,被告が指摘する点は記述上の誤りにすぎないと認めるのが相当である。 (b) また,被告は,甲51文献の計算が,融点を超えた領域が全て液体であると扱われており,シリコンが異常液体であること(溶融し たとすれば体積が減少すること)が適切に表現されていないなど, 様々な点で物理現象を適切に記述していない,誤ったモデルに基づくものであると主張する。 しかしながら,被告の上記指摘は,甲51文献のシミュレーションの条件ではシリコンの融点に達しないとの結論に直結するものでない。また,甲51文献の共著者である清田大樹は,陳述書(甲7 5)において,被告が指摘する点は,いずれも,解析しようとする物理現象に対して相対的に寄与が小さく,解析結果への影響が小さいことなどから,切り捨てられた要素である旨を説明している。そうすると,被告の指摘は,ナノ秒パルスレーザの照射によって単結晶シリコン中のシリコンの融点を超える温度に達する領域が生じる との上記シミュレーションの結果を覆すものとはいえない。 したがって,甲51文献の計算が誤ったモデルに基づくとの被告の上記主張は採用することができない。 d 被告製品との加工条件の違いについてパルス波の照射によるピークパワー密度は,本件明細書1の【00 12】のとおり,「(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)」により求められるところ,被告は,甲51文献及び甲27文献における数値シミュレーションと被告製品とは加工条件が大きく異なり,具体的には,パルスエネルギー,パルス幅及び集光半径の違いによって,被告製品 による加工のエネルギー密度(ピークパワー密度)は,甲51文献の加工条件の25分の1未満, 加工条件が大きく異なり,具体的には,パルスエネルギー,パルス幅及び集光半径の違いによって,被告製品 による加工のエネルギー密度(ピークパワー密度)は,甲51文献の加工条件の25分の1未満,甲27文献の8分の1未満となるため,それらの文献を根拠に,被告製品による加工でレーザ加工領域の温度が融点に到達したとはいえないと主張する。 この点,甲51文献において,パルスレーザの照射によってシリコ ン内が最大でどの程度の温度に達するかを示す記載は認められないが, 甲27文献においては,前記aのとおり,レーザの焦点位置付近においては,2万K程度というシリコンの融点を大幅に上回る温度に達するとの記載がされており,焦点位置付近からレーザが入射する表面の方向に2000Kを超えた高温領域が広がっていることも記載されている。また,被告の主張する加工条件を前提としても,被告製品にお いて,シリコンに照射されて温度上昇のもととなる1パルス当たりのエネルギー(パルスエネルギー)は5.0μジュールであり,甲27文献のシミュレーションにおけるパルスエネルギー(4.45μジュール)を上回っている。そうすると,上記の焦点におけるエネルギー密度の違いを考慮しても,甲51文献及び甲27文献における数値シ ミュレーションは,被告製品によって形成されるレーザ加工領域において融点を超える温度の上昇が生じることを裏付ける証拠となり得るというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (カ) シリコン内部の温度が融点を超えた場合に溶融が生じるかについて a 甲51文献及び甲27文献には,前記(オ)aのとおり,加熱によってシリコンの内部の温度が融点を超える旨の記載があるが,この記載に加えて,融点を超えた箇所のシリ に溶融が生じるかについて a 甲51文献及び甲27文献には,前記(オ)aのとおり,加熱によってシリコンの内部の温度が融点を超える旨の記載があるが,この記載に加えて,融点を超えた箇所のシリコンが溶融し,その後再凝固する旨の記載がある。 また,甲70文献には,レーザ照射による結晶シリコン中の急激な 温度上昇によって,レーザ照射領域が溶融する旨の記載があり,甲29文献にも,シリコンにおけるレーザによる表面下改質技術について,シリコンの溶融と再凝固が生じることを前提とした記載がある。 b 他方で,シリコンの温度が融点を超えた場合にも溶融しない場合があることや,シリコンが固体から液体を経ずに気体に昇華することを 認めるに足りる証拠はない。 なお,被告が溶融によらないレーザ加工領域形成のメカニズムの根拠として指摘する乙41文献においては,「瞬時に10000Kを超えるような領域は一気に気化し,ボイドが形成されると推定される」との記載がされており,シリコンウェハが溶融する旨の記載はされていない。しかしながら,乙41文献に参考文献として示されている甲5 6文献及び甲57文献,そして,乙41文献より後に発表された甲27文献では,同様に,「一気に気化し,ボイドが形成される」旨の記載がされた部分があるものの,いずれの文献においても,別の部分では,シリコンウェハが溶融,再凝固する旨の記載がされている。これらの記載並びに甲56文献,甲57文献及び甲27文献の共著者に乙41 文献の著者である大村教授が含まれていることを踏まえれば,乙41文献の「一気に気化し」との記載部分は,シリコンが固体から液体を経ずに気体へと昇華することを指すものとはいえず,単に,ごく短時間で固体から液体を経て気体に変化する態様を説明したもの まえれば,乙41文献の「一気に気化し」との記載部分は,シリコンが固体から液体を経ずに気体へと昇華することを指すものとはいえず,単に,ごく短時間で固体から液体を経て気体に変化する態様を説明したものと理解するのが自然である。 また,被告は,乙107文献にはボイド上方領域において結晶性が保たれていたと旨の記載があるから,同文献は溶融が生じていないことを示すものであると主張するが,同文献の共著者と同じ共著者らによる甲59文献においては,乙107文献の図と同様の図の説明として,多結晶及び非晶質(アモルファス)が生じるとの記載があるから, 乙107文献についても,溶融を否定するものであったとは認められない。 c 被告は,被告製品による加工は極めて短時間内の現象であるから,融点を超えたとしても,平衡状態の液体ではなく,非平衡状態の固体のまま存在する可能性があると主張するが,被告製品による加工にお いて,被告が主張するような現象が実際に生じることを認めるに足り る証拠はない。 また,被告は,固体のシリコン内部は外界と通じていないため,溶融による体積減少分の空間が生じる余地がないから,シリコン内部は溶融しない旨や,シリコンの表面の溶融と異なり,その固体内部での溶融では,2種類の界面(液体シリコンと周囲の固体シリコンとの界 面のほか,液体シリコンと体積減少分の空間との界面)を形成するためのエネルギーが必要となるから,シリコン内部の温度が融点に達した後も,溶融することなく固体であり続ける可能性がある旨を主張するが,これらの主張に係る現象についても,シリコン内部において実際に生じることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 d 以上によれば,シリコン れらの主張に係る現象についても,シリコン内部において実際に生じることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 d 以上によれば,シリコンウェハの内部において,加熱により融点を超える温度に達した場合には,シリコンは溶融すると認めるのが相当である。 (キ) レーザ加工領域におけるアモルファス及び多結晶の存在について(ラ マン分光分析について)a ラマン分光分析の意義証拠(甲58,64ないし67,71,乙111)及び弁論の全趣旨によれば,単結晶シリコンが溶融後,再固化する際に,多結晶又はアモルファス(非晶質)となることがあること,ラマン分光分析とは, 物質に光を照射したときのラマン散乱光を分析することにより,物質の分子構造や結晶構造を分析する方法であり,シリコンにおける多結晶又はアモルファスの存否を確認する方法としても用いられることが認められる。 b 原告によるラマン分光分析の結果 証拠(甲32,71)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告製 品によるレーザ加工領域について,自らラマン分光分析(原告によるラマン分光分析)を実施したことが認められる。 被告製品によって加工した2つのシリコンウェハの加工サンプルにおいて,それぞれボイドとボイド上方領域周辺で各4箇所(原告によるラマン分光分析の結果を記載したスライド資料(甲32)において 「改質領域」と記載された概ねボイドの直上に当たる部分で各2箇所,同スライド資料において「非改質領域」と記載されたボイドの直上からずれた部分で各2箇所)でラマン分光分析を行った。 上記スライド資料では,2種類の加工サンプルについて,上記の「改質領域」と名付けられた2箇所と「非改質領域」と名付けられた たボイドの直上からずれた部分で各2箇所)でラマン分光分析を行った。 上記スライド資料では,2種類の加工サンプルについて,上記の「改質領域」と名付けられた2箇所と「非改質領域」と名付けられた 2箇所において,それぞれ,ラマンスペクトルの形状の比較がされ,「改質領域」のラマンスペクトルでは,「非改質領域」のラマンスペクトルと比較して,①ピークの広がりを示す半値全幅(FWHM)が広いことから,結晶性の低下が示され,②ピークの形状が低端数側にテールを引いた非対称なものであることから,多結晶の存在が示され, ③300cm-1付近に幅広のピークがあることから,アモルファスの存在が示されているとの分析がされている。そして,これらの分析結果から,「改質領域」には,多結晶シリコンが存在し,多結晶シリコンと共にアモルファスシリコンの存在が示唆される箇所もあるとの結論が出されている。 c 東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果証拠(甲36,71)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告製品によって形成されたレーザ加工領域について,東レリサーチセンターに依頼してラマン分光分析(東レリサーチセンターによるラマン分光分析)を実施したことが認められる。 東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果報告書(甲36) では,レーザ加工サンプルにおけるボイド上方領域のラマンスペクトルの分析を行ったこと,ボイド上方領域の4点(A点ないしD点)とレーザ加工痕から離れた単結晶シリコン部のラマンスペクトルとの比較により,A点とC点において,単結晶シリコン部には見られない100cm-1から200cm-1の間のピーク(TAフォノン線)が観測 され(「Fig.3-2(a)」),これが当該箇所におけるアモルファスシリコン C点において,単結晶シリコン部には見られない100cm-1から200cm-1の間のピーク(TAフォノン線)が観測 され(「Fig.3-2(a)」),これが当該箇所におけるアモルファスシリコンの存在を示すものであること,ボイド上方領域の上下12μm,左右10μm四方の領域において525点の測定を行い,上記のTAフォノン線の強度分布を確認すると,上記A点周辺など一部の箇所で強度が強くなっていることが確認でき(Fig.3-1(b)),この結果は当該箇所 におけるアモルファスシリコンの存在を示すものであることなどが記載されている。 他方で,上記報告書では,上記の測定箇所のいずれについても単結晶シリコンのラマン線が観測されたこと,また,多結晶シリコンの存否については,粒形の小さい多結晶シリコンが存在する場合,ラマン 線は低波数側へシフトするが,「本測定」では,応力によるピークシフトと多結晶シリコンによるピークシフトが重複している可能性があり,それぞれの影響によるピークシフトを詳細に区別することはできないことについての記載もされている。 d ラマン分光分析の結果の評価について 被告は,前記bの原告によるラマン分光分析の結果と前記cの東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果とが矛盾すると指摘する。 確かに,東レリサーチセンターの分析結果においては,応力によるピークシフトと多結晶シリコンによるピークシフトを詳細に区別でき ないとして,多結晶シリコンが存在するとの分析まではされておらず, 原告によるラマン分光分析において,アモルファスの存在を示すものとして着目されていた300cm-1付近のピークについてはアモルファスの存在を示す根拠とされていない。 しかしながら,このような被告が指摘する点を考 ン分光分析において,アモルファスの存在を示すものとして着目されていた300cm-1付近のピークについてはアモルファスの存在を示す根拠とされていない。 しかしながら,このような被告が指摘する点を考慮しても,東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果は,ボイド上方領域にお ける多結晶の存在を否定するものではなく,また,その分析結果からは,少なくとも,レーザ加工領域のボイド上方領域において単結晶シリコンとは異なるアモルファスが生じていることが認められるというべきである。 (ク) レーザ加工領域における単結晶の存在について a ラマン分光分析の結果について前記(キ)cの東レリサーチセンターによるラマン分光分析の結果からは,被告製品によって形成されたレーザ加工領域のボイド上方領域において,アモルファス化している部分は一部にとどまり,単結晶シリコンが多く存在していることが認められる。 bEBSDの結果について証拠(甲60,61,71,乙46の2,101,108,112ないし115)及び弁論の全趣旨によれば,EBSDは,結晶の方位を測定する方法として用いられること,被告製品によって形成されたレーザ加工領域について,被告が,自らあるいは外部機関に依頼して EBSDを行ったことが認められる。 上記のEBSDの結果が記載された「加工断面EBSD分析」と題する社内向け資料(乙46の2)及び「結果報告」と題する報告書(乙101)のIPFマップでは,いずれも,ボイド上方領域において,単結晶の領域と同じ色として表示されている領域が存在すること が確認できるが,他方で,色が黒く表示されている部分も確認できる。 そして,証拠(甲60,61,71)及び弁論の全趣旨によれば,EBSDによる分析は分析対 る領域が存在すること が確認できるが,他方で,色が黒く表示されている部分も確認できる。 そして,証拠(甲60,61,71)及び弁論の全趣旨によれば,EBSDによる分析は分析対象の表面の凹凸の影響を大きく受け,結晶方向の方位付けができない部分については黒く表示されることが認められるから,上記のEBSDの結果をもって,被告製品によって形成されたボイド上方領域が全て単結晶であるということはできず,ア モルファス及び多結晶の存在が否定されるものではない。 c 電子線回折の観察結果について証拠(甲31,71,乙46の1,95,108)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告製品によって形成されたレーザ加工領域について,そのボイドとボイド上方領域の位置で切断した断面を電子線 回折(TEM/ED)によって観察したこと,その際,ボイドの位置及びボイド上方領域の位置の各3点において観察した結果,いずれも単結晶と見られる像が観察できたことが認められる。 しかしながら,上記の観察結果によって,観察した点以外での多結晶やアモルファスの存在が否定されるものではないというべきである。 d 前記aないしcの観察結果の評価等について(a) 前記aないしcの観察結果によれば,被告製品によって形成されたレーザ加工領域のボイド周辺ないしボイド上方領域においては,単結晶の領域が広く存在していることを示すものと認められるが,他方で,これらの観察結果は,いずれも,ボイド周辺ないしボイド 上方領域の一部に多結晶又はアモルファスの部分が存在することを否定するものではない。 (b) また,証拠(甲29,62,63,71)及び弁論の全趣旨によれば,シリコンが溶融して再凝固する際には,隣接する単結晶シリコンを種結晶として,同じ構造 存在することを否定するものではない。 (b) また,証拠(甲29,62,63,71)及び弁論の全趣旨によれば,シリコンが溶融して再凝固する際には,隣接する単結晶シリコンを種結晶として,同じ構造の単結晶が成長するとの現象(エピ タキシャル成長)が生じ得ることが認められる。 そして,被告製品によるレーザ加工は,単結晶であるシリコンウェハの内部で行われるものであるから,ボイド及びボイド上方領域において溶融したシリコンが再凝固する際には,上記現象によって,その周辺の単結晶シリコンと同様に単結晶として結晶化する可能性があるというべきである。 そうすると,レーザ加工領域のボイド周辺及びボイド上方領域において単結晶のシリコンが確認されることは,これらの領域において溶融が生じたことと矛盾するものとはいえない。 これに対し,被告は,一般的には溶融したシリコンが再固化すれば多結晶になると主張するところ,確かに,シリコン全体を溶かし て鋳型に入れて固めるような場合には,多結晶のシリコンとなることが認められるものの(乙111),上記のとおり,被告製品におけるボイド及びボイド上方領域の周囲には単結晶のシリコンが存在しているから,被告の指摘する例が被告製品によるシリコンの溶融後再固化に当てはまるとはいえない。 また,被告は,被告製品によるシリコンウェハ内部の極めて短時間内のレーザ加工において,エピタキシャル成長が生じることについては,文献等による裏付けがないと主張する。しかしながら,清野俊明他共著による「パワー半導体IGBTの深い活性化のためのトップフラットビーム・ハイブリッドレーザアニール装置の開発」 と題する論文(日本製鋼所技報No.69(2018.11)76-81。甲63。以下「甲63文献」という GBTの深い活性化のためのトップフラットビーム・ハイブリッドレーザアニール装置の開発」 と題する論文(日本製鋼所技報No.69(2018.11)76-81。甲63。以下「甲63文献」という。)には,シリコン表面においてレーザによる溶融と急冷却がされた場合に,溶融部がその下の単結晶シリコンからエピタキシャル成長によって単結晶シリコンとして再結晶化することが記載されている。そして,甲29文献にも,シリコン内部に おけるレーザによる溶融と再凝固において,エピタキシャル成長が 生じる旨の記載がされている。これらの記載は,被告製品によるシリコンウェハの加工の過程で,レーザ加工領域においてエピタキシャル成長が生じる可能性を裏付けるものといえる。 さらに,被告は,株式会社日産アークの分析結果報告書の記載(乙100,102,119)に基づき,被告製品により加工した シリコンウェハの観察結果では,被告製品により加工したシリコンウェハのレーザ加工領域は,全体として単結晶性は保たれているが,割れや歪みが生じ,その近傍のわずかな結晶方位のずれも観察されており,これに対して,一度溶融しエピタキシャル成長するような場合には,このような現象は生じないと考えられると主張する。し かしながら,上記分析結果報告書においては,一度溶融し,エピタキシャル成長する場合には割れ等や結晶方位のずれが生じないと考えられる理由について,チョクラルスキー法によって単結晶を作成する場合のように非常に緩やかな温度勾配,長い凝固時間を前提として説明をしているものであって,これらの条件は,被告製品によ り加工したシリコンウェハのレーザ加工領域にあてはまるようなものではない。また,甲63文献に記載されたシリコン表面においてレーザによる溶融と急冷却 ものであって,これらの条件は,被告製品によ り加工したシリコンウェハのレーザ加工領域にあてはまるようなものではない。また,甲63文献に記載されたシリコン表面においてレーザによる溶融と急冷却がされた場合のように,チョクラルスキー法のような条件以外でエピタキシャル成長が生じた場合にも,割れ等や結晶方位のずれが生じないことについて,上記分析結果報告 書に実験等に基づく具体的な説明がされているわけではなく,この点を裏付けるに足りる他の証拠もない。したがって,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における上記の割れ等やわずかな結晶方位のずれの存在により,当該加工領域においてエピタキシャル成長が生じる可能性が直ちに否定されるものとは認められない。 (ケ) 被告の主張する「溶融」によらない加工メカニズムについて a 被告が主張する加工メカニズムについて被告は,乙41文献に以下の加工メカニズムが記載されているとして,被告製品においては,同メカニズムによってレーザ加工を行っているから,その過程において溶融は生じないと主張する。 ① 集光点近傍で,レーザ光吸収が生じる(これは単光子吸収で足り る。)。 ② レーザ光により,局所的に高密度のエネルギーを与えられた集光点付近で,マイクロ爆発(乙70文献)が生じ,ボイドが形成される。 ③ 熱衝撃波が,レーザ照射面に向けて伝播する。 ④ 熱衝撃波先端で,非常に高い圧縮応力が生じ,高転位密度層が形成される。 ⑤ 先行するレーザパルスで形成された高転位密度層を,次のレーザパルスで形成された熱衝撃波が通過する際,高転位密度層内の転位が核となって亀裂が生成する。 b 乙41文献の記載内容について乙41文献は,甲27文献の共著者である大村教授による のレーザパルスで形成された熱衝撃波が通過する際,高転位密度層内の転位が核となって亀裂が生成する。 b 乙41文献の記載内容について乙41文献は,甲27文献の共著者である大村教授によるものであり,前記(オ)aの甲27文献の「Fig.9(a)」と同様の図である「Fig.2」が掲載され,甲27文献と同様に,シリコン内部において急激な熱吸収が始まり瞬間的に2万K程度まで温度上昇することが記載されてお り,そもそも,シリコン内部が融点を超える温度に達することを否定しているものではない。 また,乙41文献には,シリコンウェハのレーザ加工領域について,「瞬時に10000Kを超えるような領域は一気に気化し,ボイドが形成されると推定される。以降は,図3に例示するように,熱衝撃波 として表面方向に急速に高温部が伸びていく。」との記載がある。この うち,「10000Kを超えるような領域は一気に気化し」との部分については,前記(カ)bのとおり,大村教授を共著者とする甲56文献,甲57文献及び甲27文献の記載からすれば,単に,短時間に固体から液体を経て気体に変化する旨を記載したものと理解するのが自然であり,溶融を否定する趣旨とはいえない。また,「熱衝撃波」との文言 についても,同様の記載がある甲27文献においては,「この高温領域のことをここでは熱衝撃波と呼ぶ」との記載がされていることから,「高温領域」を意味するものと理解すべきであって,被告が主張するような溶融を伴わない亀裂の発生に結びつくものとはいえない。 c 乙70文献の記載内容について 乙70文献は,「Generationofhighenergydensitybyfs-laser-inducedconfinedmicroexplosi 献の記載内容について 乙70文献は,「Generationofhighenergydensitybyfs-laser-inducedconfinedmicroexplosion(フェムト秒レーザが誘起した,閉じ込められたマイクロ爆発による,高エネルギー密度の生成)」と題する論文であるから,そこで論じられているのはフェムト秒レーザにおける現象であり,被告製品におけるようなナノ秒レーザにおける加工 現象に直ちに当てはまるものではない。 d 以上によれば,乙41文献において被告が主張するようなメカニズムの記載がされているとはいえず,他に,被告製品によるシリコンウェハの加工が被告主張のメカニズムによるものであると認めるに足りる証拠はない。 この点,被告は,社内実験の結果,被告製品によって形成されるレーザ加工領域については,①ボイドが形成されずともボイド上方領域が形成されること及び②ボイドがウェハ下端近傍に形成されてもボイド上方領域が形成されることが観察されており(乙98),このような実験観察結果は,溶融によらない被告主張のメカニズムに合致し,溶 融による原告主張のメカニズムには合致しないと主張する。 しかしながら,上記の実験では,①どのような理由でボイドが確認できなかったのかが明らかではないし,また,②ボイドがウェハ下端近傍に形成された場合に,ボイド部分に存在したシリコンが実際にウェハ下端から流出したことの実証はされていない上,そのようなシリコンの下部からの流出によってボイド部分の上部が融点を超える温度 に達することが妨げられるとも認められない。したがって,被告の指摘する実験結果は,被告製品によるレーザ加工領域において,甲51文献に記載されたメカニズム(パルスレーザの照射中 融点を超える温度 に達することが妨げられるとも認められない。したがって,被告の指摘する実験結果は,被告製品によるレーザ加工領域において,甲51文献に記載されたメカニズム(パルスレーザの照射中に,温度上昇によってシリコンの吸収係数が増大し,溶融領域がレーザの入射する表面の方向に拡大・移動していき,その際,ボイドのシリコン原子は固 体領域に移動して凝固するというメカニズム)と直ちに矛盾するものとまでは認められず,レーザ加工領域における溶融を否定するものともいえない。 (コ) 小括以上検討したところからすれば,前記(オ)の数値シミュレーションに基 づき,被告製品によって形成されるレーザ加工領域において,その温度が融点を超えるものと認定することができ,前記(カ)のとおり,シリコンウェハの内部において,加熱により融点を超える温度に達した場合には,シリコンは溶融すると認めるのが相当であって,前記(ウ)のとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域においては,SEM写真上,ボ イドの存在を確認することができ,前記(キ)のとおり,ラマン分光分析によれば,レーザ加工領域のボイド上方領域において単結晶シリコンとは異なるアモルファスが生じていることが認められる。これらの点を総合すれば,被告製品によって形成されるレーザ加工領域においては,ボイド及びボイド上方領域付近で,シリコンの溶融と再固化が生じているも のと認めるのが相当である。 そして,前記(ク)のとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域において,単結晶の領域が広く存在していることは,溶融が生じたことと矛盾するものではなく,また,被告が主張する溶融によらない加工メカニズムは,十分な裏付けに欠けるものとして,直ちには採用できないから,これ ,単結晶の領域が広く存在していることは,溶融が生じたことと矛盾するものではなく,また,被告が主張する溶融によらない加工メカニズムは,十分な裏付けに欠けるものとして,直ちには採用できないから,これらの点は,いずれも,溶融が生じているとの上記の認定を 左右するものではなく,その他,上記の認定を覆すに足りる証拠はない。 ウ被告製品によって形成されるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」及び「改質スポット」に該当するかについて(ア) 「溶融処理領域」に該当するかa 前記イのとおり,被告製品によって形成されるレーザ加工領域にお いては,ボイド及びボイド上方領域において,シリコンの溶融と再固化が生じているものと認めるのが相当である。 したがって,被告製品によって形成されたレーザ加工領域において,このような溶融と再固化が生じた部分については,前記ア(ウ)のシリコンウェハが「一旦溶融後再固化した領域」であるといえるから,「溶融 処理領域」に該当するものと認められる。 b 前記イ(ケ)のとおり,被告製品によって形成されるボイド上方領域においては,溶融後再固化する際に単結晶となっている部分が存在し,アモルファスが生じている部分は一部にとどまることが認められるところ,被告は,溶融した領域でも,単結晶に復元した領域やアモルフ ァス等がごく微量しか検出されない領域は,本件発明1の「溶融処理領域」には当たらないと解すべきであると主張する。 しかしながら,アモルファスがわずかしか含まれないとしても,シリコンウェハが溶融後再固化している以上,その領域全体について,前記ア(ウ)の「一旦溶融後再固化した領域」であるということができ, また,「単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化し た領域 している以上,その領域全体について,前記ア(ウ)の「一旦溶融後再固化した領域」であるということができ, また,「単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化し た領域」ということができるから,当然に「溶融処理領域」に該当すると解すべきである。 また,前記イで検討したところからすれば,ボイドの部分に存在していたシリコンは,ボイド上方領域のシリコンと同様に,同じ1パルスのレーザ照射によって溶融し,その後,これらの溶融したシリコン がボイドを残したまま再固化していると認められるから,ボイドの部分も,上記のシリコンウェハが溶融後再固化した領域の一部に含まれると解するのが相当である。 (イ) 「改質領域」ないし「改質スポット」の形成過程における多光子吸収の寄与について 弁論の全趣旨によれば,前記(ア)の被告製品によるシリコンウェハの溶融加工において多光子吸収が全く生じないわけではないが,前記(ア)aの溶融処理領域は多光子吸収が支配的に寄与して形成されたものではないと認められる。 しかしながら,前記ア(エ)のとおり,本件発明1の「改質領域」及び 「改質スポット」は多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されないから,被告製品によって形成されたレーザ加工領域が多光子吸収が支配的に寄与して形成されたものでないとしても,「改質スポット」及び「改質領域」に該当するか否かの結論には影響しない。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について 前記イのとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域においてはボイドが形成されるところ,前記ア(オ)のとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,その内部又は周辺にボイドが形成されないものに限定されないから,ボイドの存在は, 加工領域においてはボイドが形成されるところ,前記ア(オ)のとおり,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」は,その内部又は周辺にボイドが形成されないものに限定されないから,ボイドの存在は,「改質スポット」及び「改質領域」に該当するか否かの結論には影響しない。 また,前記(ア)bのとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領 域におけるボイドは「溶融処理領域」の一部として,「改質領域」ないし「改質スポット」に含まれるものである。 (エ) 小括以上によれば,被告製品によるレーザ加工において,1パルスのパルスレーザ光の照射によりボイド及びボイド上方領域に形成された前記(ア) aの「溶融処理領域」は,構成要件1D及び1Eの「改質スポット」に該当する。 そして,証拠(甲23,32,36,乙46の1,98)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品によるレーザ加工では,上記の「改質スポット」が連続的に形成されると認められるから,そのようにして形成され た複数の「改質スポット」から成る前記(ア)aの「溶融処理領域」は,構成要件1A及び1Eの「改質領域」に該当する。 (2) 構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズについてア 「集光点の位置で改質スポットを形成させる」の意義 (ア) 特許請求の範囲の記載について構成要件1Dにおいては,「前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質スポットを形成させる集光用レンズ」と規定されている。 この記載からは,構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」とは,「集光用レンズ」で「加工対象物の内部に」「パ 位置で改質スポットを形成させる集光用レンズ」と規定されている。 この記載からは,構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」とは,「集光用レンズ」で「加工対象物の内部に」「パルスレーザ光を集光」することによって「パルスレーザ光の集光点」を作り,その「パルスレーザ光の集光点の位置」で「パルスレーザ光の照射」による「改質スポットを形成」することを意味するものと理解できる。 (イ) 本件明細書1の記載について 本件明細書1には,【0014】において,「本実施形態に係るレーザ加工は…加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して改質領域7を形成する。なお,集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである。」との記載があり,【図2】において,「集光点P」,「レーザ光L」及び「改質領域7」が図示されている。ま た,【0012】には,「レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり…ピークパワー密度は,(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。」との記載がある。そして,【0026】及び【0027】には,「溶融処理領域が形成されることを 実験により確認した」際の「実験条件」として,「レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2」との記載があり,【0028】には,「上記条件により形成された溶融処理領域の厚さ方向の大きさは100μm程度である。」との記載がある。 これらの記載から,「集光点」の定義については,これを示すものは 【0014】以外にないから,「集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである」(【0014】)とのみ理解することができ,また,「集光点P から,「集光点」の定義については,これを示すものは 【0014】以外にないから,「集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである」(【0014】)とのみ理解することができ,また,「集光点P」は,1つの点のように図示されているものの(【図2】),「レーザ光のビームスポット断面積」(【0012】)及び「レーザ光スポット断面積」(【0027】)との記載から,レーザ光の焦点であるビームスポット自 体も一定の断面積を有するものであると理解でき,また,レーザ光が集光した箇所である「集光点」として,どの程度の断面積まで集光される必要があるかについての特定はされていないものと理解できる。また,改質スポットはある程度の大きさを持ったものであり(【図2】),「溶融処理領域」を形成する実験の「実験条件」として(【0026】),「レー ザ光スポット断面積」が「3.14×10-8cm2」であるとされている ことから(【0027】),集光半径が1μm程度と考えられるのに対し,「溶融処理領域」は「厚さ方向」に「100μm」とされているから(【0028】),本件発明1の「改質スポット」である「溶融処理領域」がレーザ光の焦点である「レーザ光のビームスポット」よりも広い範囲に及ぶことも示されているものと理解できる。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書1の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」とは,集光用レンズによって加工対象物の内部にパルスレーザ光が集光された箇所を形成し,その位置でパルスレーザ光の照射による改質スポットを形成することを指し,パルスレーザ光の照射によって 改質スポットが形成されるのであれば,パルスレーザ光の集光点としてどの程度の断面積 形成し,その位置でパルスレーザ光の照射による改質スポットを形成することを指し,パルスレーザ光の照射によって 改質スポットが形成されるのであれば,パルスレーザ光の集光点としてどの程度の断面積まで集光されるかは限定されず,また,改質スポットが,レーザ光の焦点である「レーザ光のビームスポット」よりも広い範囲まで及ぶことも許容されていると解するのが相当である。 イ被告製品が「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズ を備えるかについて証拠(甲23)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品によって形成されたレーザ加工領域においては,シリコンウェハ内部の集光用レンズによるレーザの焦点(「SD加工メカニズム,SD層の実態」と題するパワーポイント資料(甲23)において「狭義の集光点:「1.初期吸収」による加工 の開始点」と記載された箇所)から数μm上方に上下10μmに満たない長さのボイドが形成されており,そのさらに上方に上下20μm程度のボイド上方領域が形成されていることが認められる。 そして,前記(1)ウからすれば,このレーザ加工領域において,構成要件1Dの「改質スポット」は上記のボイド及びボイド上方領域の位置に存在 しており,これはパルスレーザ光の照射によって形成されたものであると いえる。 そうすると,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における「改質スポット」は,レーザ光の焦点からは数μmから20μm程度レーザ光が入射する表面の方向に近い位置に存在するものであるが,前記アのとおり,構成要件1Dにおいて,パルスレーザ光の照射によって改質スポット が形成されるのであれば,「集光点」の断面積の限定はされていないから,当該位置についても,パルスレーザ光の照射によって改質スポットが形成され において,パルスレーザ光の照射によって改質スポット が形成されるのであれば,「集光点」の断面積の限定はされていないから,当該位置についても,パルスレーザ光の照射によって改質スポットが形成されるのであれば,レーザ光が集光した箇所として,構成要件1Dの「集光点」に該当するといえる。また,前記アのとおり,構成要件1Dにおいては,改質スポットがレーザ光の焦点よりも広い範囲まで及ぶことも許容 されていると解されるから,この点も考慮すれば,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における「改質スポット」は,「集光点の位置」において形成されたものと認めるのが相当である。 したがって,被告製品は,構成要件1Dの「集光点の位置で改質スポットを形成させる」集光用レンズを備えるものと認められる。 (3) 構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」についてア 「切断の起点となる改質領域」の意義(ア) 特許請求の範囲の記載について構成要件1Aにおいては「ウェハ状の加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」と規定され,構成要件1Dにおいては 「前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記改質スポットによって前記改質領域を形成する」と規定されている。 これらの記載からは,「改質領域」が,切断予定ラインに沿って形成された複数の改質スポットによって加工対象物の内部に形成され,加工対象物の切断の起点となることが理解できるものの,「改質領域」が起点と なることで「切断」がどのように行われるのかは明らかでない。 (イ) 本件明細書1の記載について本件明細書1には,「加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。…改質領域を起点と (イ) 本件明細書1の記載について本件明細書1には,「加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。…改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより,加工対象物を切断することができる。」(【0007】),「なお,改 質領域を起点とした加工対象物の切断は,次の二通りが考えられる。一つは,改質領域形成後,加工対象物に人為的な力が印加されることにより,改質領域を起点として加工対象物が割れ,加工対象物が切断される場合である。…他の一つは,改質領域を形成することにより,改質領域を起点として加工対象物の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ, 結果的に加工対象物が切断される場合である。」(【0017】),「溶融処理領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ,その割れがシリコンウェハの表面と裏面に到達することにより,結果的に切断される。 シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし,加工対象物に力が印加されることにより成長する場合もある。 なお,溶融処理領域からシリコンウェハの表面と裏面に割れが自然に成長するのは,一旦溶融後再固化した状態となった領域から割れが成長する場合,溶融状態の領域から割れが成長する場合及び溶融から再固化する状態の領域から割れが成長する場合のうち少なくともいずれか一つである。」(【0031】)との記載がある。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書1の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件1Aの「改質領域」が「切断の起点となる」とは,改質領域を起点として割れが発生し,割れが加工対象物の表面ないし裏面に達することで,結果的に切断がされることをいう 求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件1Aの「改質領域」が「切断の起点となる」とは,改質領域を起点として割れが発生し,割れが加工対象物の表面ないし裏面に達することで,結果的に切断がされることをいうと解すべきである。また,上記の割れは自然に成長しても,力を印加することにす ることによって成長させてもよいものと解される。 被告は,前記(イ)の本件明細書1に記載された切断の機序について,「改質領域からの割れの発生」と「切断」とに分断され,後者のみが構成要件1Aの「切断」に当たると主張する。しかしながら,本件明細書1において「割れを発生させ,その割れがシリコンウェハの表面と裏面に到達することにより,結果的に切断される」(【0031】)と記載され ているとおり,構成要件1Aの「切断」とは,発生した割れが加工対象物の表面ないし裏面に達する一連の過程を指すものであるから,「割れの発生」と「切断」を分断することはできず,被告の上記主張は採用することができない。 イ被告製品によるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「切断の起点と なる改質領域」に該当するかについて前記(1)ウのとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域のボイド及びボイド上方領域には「改質領域」が存在しており,被告は,被告製品のうち,シリコンウェハをチップに分割する前の工程までに,レーザ加工領域を除去する態様で用いないもの(被告製品(非除去))について,レ ーザ加工領域がシリコンウェハを分割する際の切断の起点となることを認めている。 他方で,被告は,被告製品のうち,シリコンウェハをチップに分割する前の工程までに,レーザ加工領域を除去する態様で用いるもの(被告製品(除去))については,チップへの分割がされる際には,レーザ加工領域 被告は,被告製品のうち,シリコンウェハをチップに分割する前の工程までに,レーザ加工領域を除去する態様で用いるもの(被告製品(除去))については,チップへの分割がされる際には,レーザ加工領域 (ボイド及びボイド上方領域)は存在していないから,レーザ加工領域は切断する際の起点とはならず,切断の起点となるのはボイドの下亀裂のみであると主張する。 被告の上記主張も,ボイドから下亀裂が発生し,下亀裂がシリコンウェハの表面に達してチップが分割されることは前提としている解されるとこ ろ,前記ア(ウ)のとおり,構成要件1Aの「切断」とは,改質領域を起点と して割れが発生し,割れが加工対象物の表面ないし裏面に達する一連の過程を指すから,改質領域に含まれるボイドから発生した割れである下亀裂がシリコンウェハの表面に達してチップが分割されるのであれば,その時点において改質領域がシリコンウェハから除去されていても,改質領域が「切断の起点」であるというべきである。 したがって,被告の上記主張を前提としても,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における改質領域は,シリコンウェハをチップに分割する前の工程までにこれが除去されるか否かにかかわらず,構成要件1Aの「切断の起点となる改質領域」に該当すると認められる。 (4) 構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部について ア 「集光点を」「移動させる」の意義(ア) 特許請求の範囲の記載について構成要件1Eにおいては,「パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,…パルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直 線的に移動させる機能を有する制御部」と規定されているところ, の内部に位置させた状態で,…パルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直 線的に移動させる機能を有する制御部」と規定されているところ,本件発明1-1に従属する請求項に係る本件発明1-2の構成要件1Hにおいては,「前記制御部は,…前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御すること」と規定されている。 これらの記載から,構成要件1Hに規定された「前記載置台及び前記 集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」制御部には,①載置台の移動のみを制御し,集光用レンズの移動を制御しないもの,②集光用レンズの移動のみを制御し,載置台の移動を制御しないもの,③載置台及び集光用レンズの双方の移動を制御するものがあると考えられるところ,①ないし③のいずれもが,構成要件1Eの「集光点を」「移動させ る」機能を有する制御部に含まれ得るものと理解できる。 (イ) 本件明細書1の記載について本件明細書1には,「なお,制御部は,載置台及び集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御することが好ましい。これにより,切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を直線的に移動させることが可能となる。」(【0009】),「レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って…相 対的に移動させることにより,集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。」(【0015】),「パルスレーザ光の集光点の相対的移動とは,パルスレーザ光の集光点を固定して加工対象物を移動させる場合でもよいし,加工対象物を固定してパルスレーザ光の集光点を移動させる場合でもよいし,加工対象物とパルスレーザ光の集光点とを互いに逆方向に 移動させる場合でもよいし,加工対象物とパルスレーザ光の集光点とを速 工対象物を固定してパルスレーザ光の集光点を移動させる場合でもよいし,加工対象物とパルスレーザ光の集光点とを互いに逆方向に 移動させる場合でもよいし,加工対象物とパルスレーザ光の集光点とを速度を異ならせかつ同じ方向に移動させる場合でもよい。」(【0042】),「X軸方向に改質領域を形成する場合,X軸ステージ109の移動速度を調節することにより,パルスレーザ光の集光点の相対的移動の速度を調節することができる。また,Y軸方向に改質領域を形成する場合,Y 軸ステージ111の移動速度を調節することにより,パルスレーザ光の集光点の相対的移動の速度を調節することができる。」(【0047】),「この集光点PのX(Y)軸方向の移動は,加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。」(【0048】)との記載がある。 これらの記載から,集光点の「移動」とは,加工対象物との関係で相対的なものであると理解できる。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書1の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部とは,集光用レンズや加工対象物の載置台を移動させること で,集光点を加工対象物の中で相対的に移動させる機能を有するものを 指し,加工対象物の位置を固定したままで,集光点を移動させるものに限定されないと解するのが相当である。 被告は,本件明細書1では「集光点の相対的移動」(【0042】)という表現を用いて,相対的な移動について記載しているところ,構成要件1Eには,単に「移動」と記載されていることから,構成要件1Eの 「移動」は相対的な移動ではない旨を主張する。しかしながら,前記(ア)のとおり,特許請求の範 について記載しているところ,構成要件1Eには,単に「移動」と記載されていることから,構成要件1Eの 「移動」は相対的な移動ではない旨を主張する。しかしながら,前記(ア)のとおり,特許請求の範囲の記載自体から,構成要件1Eの「移動」が相対的な移動を指すことは示されているといえるし,前記(イ)のとおり,本件明細書1においても相対的な移動を単に「移動」と記載している箇所(【0009】,【0015】,【0048】)が存在していることから, 被告の上記主張は採用することができない。 イ被告製品が「集光点を」「移動させる」機能を有する制御部を備えるかについて証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張)記載の構成⑤に係る制御部を備え,この制御部は, 加工対象物が載置される載置台(カッティングテーブル)を移動させることで,レーザ集光点を,シリコンウェハの内部に位置させた状態で,ほぼ一定の速度で,切断予定ラインに沿って直線的に相対的に移動させる機能を有するものと認められる。 したがって,被告製品は,構成要件1Eの「集光点を」「移動させる」機 能を有する制御部を備えるものと認められる。 なお,被告は,構成要件1Eについて,「集光点の移動速度を略一定にして」の部分について,ここでいう移動が相対的移動でないとの解釈を前提として,その充足性を争うが,前記アのとおり,構成要件1Eの集光点の「移動」は相対的移動を指すものであり,上記のとおり,被告製品は,集 光点をほぼ一定の速度で相対的に移動させる機能を有するから,被告製品 の制御部は「集光点の移動速度を略一定にして」集光点を移動させる機能を備えるものである。 (5) 小括前記(1)ないし(4)で検討した点に加え,前 させる機能を有するから,被告製品 の制御部は「集光点の移動速度を略一定にして」集光点を移動させる機能を備えるものである。 (5) 小括前記(1)ないし(4)で検討した点に加え,前記前提事実(6)イの被告製品の構成からすれば,被告製品は,本件発明1-1の構成要件1A,1D及び1E をいずれも充足するものと認められる。 そして,前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が本件発明1-1のその余の構成要件を充足することは争いがないから,被告製品は本件発明1-1の技術的範囲に属する。 3 争点1-2(被告製品が本件発明1-2の技術的範囲に属するか(構成要件 1Hの充足性)について(1) 構成要件1Hの充足性についてア構成要件1Hの「前記改質スポット」とは,構成要件1Eの「改質スポット」を指すものと解するのが相当であるところ,前記2(1)のとおり,被告製品によって形成されるレーザ加工領域においては,この「改質スポッ ト」が存在するものと認められる。 イ被告製品では,前記前提事実(6)イの構成⑧のとおり,パルスレーザ光の繰り返し周波数及び集光点の移動速度を調節可能であり,弁論の全趣旨によれば,この調節によって,改質スポットに該当するレーザ加工領域間の距離を制御することができるものと認められる。 また,前記2(4)イのとおり,被告製品の制御部は,加工対象物が載置される載置台(カッティングテーブル)を制御する機能を有する。 ウしたがって,被告製品は,「前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポット間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集 光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」「制御部」を備えるから 光の集光点の移動速度との少なくとも一方を調節することで,前記改質スポット間の距離を制御する機能を有し,前記載置台及び前記集 光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」「制御部」を備えるから, 構成要件1Hを充足するものと認められる。 (2) 構成要件1Iの充足性について前記2(5)のとおり,被告製品は本件発明1-1(請求項1に係る発明)の技術的範囲に属するものであり,前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が構成要件1Iのその余の部分を充足することは争いがないから,構成要件1I を充足する。 (3) 小括以上によれば,被告製品は本件発明1-2の技術的範囲に属する。 4 本件明細書2の記載事項等(1) 本件明細書2(甲2の1)には,次のような記載がある(下記記載中に引 用する【図1】ないし【図12】,【図15】【図16】については,別紙4「本件明細書2の図面」参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,半導体基板を切断予定ラインに沿って切断するためのレーザ 加工装置及びレーザ加工方法に関する。 イ 【背景技術】【0002】半導体デバイスの製造工程においては,シリコンウェハ等の半導体基板上に複数の機能素子を形成した後に,ダイヤモンドブレードにより半導体 基板を機能素子毎に切断し(切削加工),半導体チップを得るのが一般的である…【0003】また,上記ダイヤモンドブレードによる切断に代えて,半導体基板に対して吸収性を有するレーザ光を半導体基板に照射し,加熱溶融により半導 体基板を切断することもある(加熱溶融加工)… ウ 【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら,上述した切削加工や加熱溶融加工による半導体基板の切断は,半導 体基板を切断することもある(加熱溶融加工)… ウ 【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら,上述した切削加工や加熱溶融加工による半導体基板の切断は,半導体基板上に機能素子を形成した後に行われるため,例えば切断時に発生する熱を原因として機能素子が破壊されるおそれがある。 【0005】そこで,本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,例えば半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止して,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にするレーザ加工装置を提供することを目的とする。 エ 【課題を解決するための手段】【0006】上記目的を達成するために,本発明に係るレーザ加工装置は,半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,半導体基板が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と, 載置台に載置された半導体基板の内部に,レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で改質領域を形成させる集光用レンズと,改質領域を半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を半導体基板の内部に位置させた状態で,半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部と,載置台に載置され た半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,赤外透過照明により赤外線で照明された半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子と,を備えることを特徴とする。 【0007】これらのレーザ加工装置によれば,レーザ光の照射により改質領域が半 導体基板の内部に形成されるが,このようなレーザ光の照射においては, 半導体基板の表面ではレ 。 【0007】これらのレーザ加工装置によれば,レーザ光の照射により改質領域が半 導体基板の内部に形成されるが,このようなレーザ光の照射においては, 半導体基板の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないため,半導体基板の表面が溶融することはない。したがって,例えば半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止することが可能となる。さらに,これらのレーザ加工装置及びレーザ加工方法よれば,改質領域が半導体基板の内部に形成される。半導体基板の内部に 改質領域が形成されると,改質領域を起点として比較的小さな力で半導体基板に割れが発生するため,切断予定ラインに沿って高い精度で半導体基板を割って切断することができる。したがって,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することが可能となる。 オ 【発明の効果】 【0008】本発明に係るレーザ加工装置は,例えば半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止して,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にする。 カ 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】以下,図面と共に本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る半導体基板及び半導体チップを構成するに際しては,半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し,半導体基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成する,というレーザ加工方法を使用する。 そこで,このレーザ加工方法,特に多光子吸収について最初に説明する。 【0010】材料の吸収のバンドギャップEGよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって,材料に吸収が生じる条件はhν>EGである。 しか に多光子吸収について最初に説明する。 【0010】材料の吸収のバンドギャップEGよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって,材料に吸収が生じる条件はhν>EGである。 しかし,光学的に透明でも,レーザ光の強度を非常に大きくするとnhν >EGの条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる。この現象 を多光子吸収という。パルス波の場合,レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり,例えばピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は,(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また,連 続波の場合,レーザ光の強度はレーザ光の集光点の電界強度(W/cm2)で決まる。 【0011】このような多光子吸収を利用する本実施形態に係るレーザ加工の原理について,図1~図6を参照して説明する。図1はレーザ加工中の半導体基 板1の平面図であり,図2は図1に示す半導体基板1のII-II 線に沿った断面図であり,図3はレーザ加工後の半導体基板1の平面図であり,図4は図3に示す半導体基板1のIV-IV 線に沿った断面図であり,図5は図3に示す半導体基板1のV-V 線に沿った断面図であり,図6は切断された半導体基板1の平面図である。 【0012】図1及び図2に示すように,半導体基板1の表面3には,半導体基板1を切断すべき所望の切断予定ライン5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である(半導体基板1に実際に線を引いて切断予定ライン5としてもよい)。本実施形態に係るレーザ加工は,多光子吸収が生じる条 件で半導体基板1の内部に集光 切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である(半導体基板1に実際に線を引いて切断予定ライン5としてもよい)。本実施形態に係るレーザ加工は,多光子吸収が生じる条 件で半導体基板1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを半導体基板1に照射して改質領域7を形成する。なお,集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである。 【0013】レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち矢印A方向に沿って) 相対的に移動させることにより,集光点Pを切断予定ライン5に沿って移 動させる。これにより,図3~図5に示すように改質領域7が切断予定ライン5に沿って半導体基板1の内部にのみ形成され,この改質領域7でもって切断起点領域(切断予定部)9が形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は,半導体基板1がレーザ光Lを吸収することにより半導体基板1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。半導体基板1にレー ザ光Lを透過させ半導体基板1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって,半導体基板1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので,半導体基板1の表面3が溶融することはない。 【0014】半導体基板1の切断において,切断する箇所に起点があると半導体基板 1はその起点から割れるので,図6に示すように比較的小さな力で半導体基板1を切断することができる。よって,半導体基板1の表面3に不必要な割れを発生させることなく半導体基板1の切断が可能となる。 【0015】なお,切断起点領域を起点とした半導体基板の切断には,次の2通りが 考えられる。1つは,切断起点領域形成後,半導体基板に人為的な力が印加されることにより,切断起点領域を起点として半導体基板が割れ,半導体基板が切断される場合である。 の切断には,次の2通りが 考えられる。1つは,切断起点領域形成後,半導体基板に人為的な力が印加されることにより,切断起点領域を起点として半導体基板が割れ,半導体基板が切断される場合である。これは,例えば半導体基板の厚さが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは,例えば,半導体基板の切断起点領域に沿って半導体基板に曲げ応力やせん断応力を加えたり, 半導体基板に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の1つは,切断起点領域を形成することにより,切断起点領域を起点として半導体基板の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ,結果的に半導体基板が切断される場合である。これは,例えば半導体基板の厚さが小さい場合には,1列の改質領域により切断起点領域が形成される ことで可能となり,半導体基板の厚さが大きい場合には,厚さ方向に複数 列形成された改質領域により切断起点領域が形成されることで可能となる。 なお,この自然に割れる場合も,切断する箇所において,切断起点領域が形成されていない部位に対応する部分の表面上にまで割れが先走ることがなく,切断起点領域を形成した部位に対応する部分のみを割断することができるので,割断を制御よくすることができる。近年,シリコンウェハ等 の半導体基板の厚さは薄くなる傾向にあるので,このような制御性のよい割断方法は大変有効である。 【0016】さて,本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域としては,次に説明する溶融処理領域がある。 【0017】半導体基板の内部に集光点を合わせて,集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。これにより半導体基板の内部は多光子吸収によって局所 半導体基板の内部に集光点を合わせて,集光点における電界強度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。これにより半導体基板の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により半導体基板の内部に溶融処理領域が形成される。 溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域や,まさに溶融状態の領域や,溶融状態から再固化する状態の領域であり,相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また,溶融処理領域とは単結晶構造,非晶質構造,多結晶構造において,ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり,例えば,単結晶構造から非晶質構造に変化し た領域,単結晶構造から多結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。半導体基板がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。電界強度の上限値としては,例えば1×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns~200nsが好ましい。 【0018】 本発明者は,シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した。実験条件は次の通りである。 【0019】(A)半導体基板:シリコンウェハ(厚さ350μm,外径4インチ)(B)レーザ 光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ波長:1064nmレーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2発振形態:Qスイッチパルス繰り返し周波数:100kHz パルス幅:30ns出力:20μJ/パルスレーザ光品質:TEM00偏光特性:直線偏光(C)集光用レンズ 倍率:50倍N.A.:0.55レーザ光波長に対する z パルス幅:30ns出力:20μJ/パルスレーザ光品質:TEM00偏光特性:直線偏光(C)集光用レンズ 倍率:50倍N.A.:0.55レーザ光波長に対する透過率:60パーセント(D)半導体基板が載置される載置台の移動速度:100mm/秒【0020】 図7は,上記条件でのレーザ加工により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形成されている。なお,上記条件により形成された溶融処理領域13の厚さ方向の大きさは100μm程度である。 【0021】 溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを説明する。図8 は,レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。ただし,シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し,内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm,100μm,200μm,500μm,1000μmの各々について上記関係を示した。 【0022】例えば,Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて,シリコン基板の厚さが500μm以下の場合,シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透過することが分かる。図7に示すシリコンウェハ11の厚さは350μmであるので,多光子吸収による溶融処理領域13はシリ コンウェハの中心付近,つまり表面から175μmの部分に形成される。 この場合の透過率は,厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると,90%以上なので,レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり,ほとんどが透過する。このことは,シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて,溶融処理領域13がシリコンウェ と,90%以上なので,レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり,ほとんどが透過する。このことは,シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて,溶融処理領域13がシリコンウェハ11の 内部に形成(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形成)されたものではなく,溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融処理領域の形成は,例えば,溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁~第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。 【0023】なお,シリコンウェハは,溶融処理領域でもって形成される切断起点領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ,その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより,結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もある し,シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。な お,切断起点領域からシリコンウェハの表面と裏面とに割れが自然に成長する場合には,切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から割れが成長する場合と,切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。 ただし,どちらの場合も溶融処理領域はシリコンウェハの内部のみに形成 され,切断後の切断面には,図7のように内部にのみ溶融処理領域が形成されている。半導体基板の内部に溶融処理領域でもって切断起点領域を形成すると,割断時,切断起点領域ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので,割断制御が容易となる。 【0024】 以上,多光子吸収により形成される改質領域として でもって切断起点領域を形成すると,割断時,切断起点領域ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので,割断制御が容易となる。 【0024】 以上,多光子吸収により形成される改質領域として溶融処理領域の場合を説明したが,半導体基板の結晶構造やその劈開性などを考慮して切断起点領域を次のように形成すれば,その切断起点領域を起点として,より一層小さな力で,しかも精度良く半導体基板を切断することが可能になる。 【0025】 すなわち,シリコンなどのダイヤモンド構造の単結晶半導体からなる基板の場合は,(111)面(第1劈開面)や(110)面(第2劈開面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。また,GaAsなどの閃亜鉛鉱型構造のIII-V 族化合物半導体からなる基板の場合は,(110)面に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。 【0027】上述したレーザ加工方法に使用されるレーザ加工装置について,図9を参照して説明する。図9はレーザ加工装置100の概略構成図である。 【0028】レーザ加工装置100は,レーザ光Lを発生するレーザ光源101と, レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御 するレーザ光源制御部102と,レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と,ダイクロイックミラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レンズ105と,集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される半導体基板1が載置される載置台107と,載置台107を回 転させるためのθステージ108と,載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と,載置台107をX軸方向に直交するY軸方 導体基板1が載置される載置台107と,載置台107を回 転させるためのθステージ108と,載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と,載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と,載置台107をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と,これら4つのステージ108,109,111,113の移動を制御する ステージ制御部115とを備える。 【0029】載置台107は,半導体基板1を赤外線で照明するために赤外線を発生する赤外透過照明116と,半導体基板1が赤外透過照明116による赤外線で照明されるよう,半導体基板1を赤外透過照明116上に支持する 支持部107aとを有している。 【0030】なお,Z軸方向は半導体基板1の表面3と直交する方向なので,半導体基板1に入射するレーザ光Lの焦点深度の方向となる。よって,Z軸ステージ113をZ軸方向に移動させることにより,半導体基板1の表面3や 内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。また,この集光点PのX(Y)軸方向の移動は,半導体基板1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。 【0031】レーザ光源101はパルスレーザ光を発生するNd:YAGレーザであ る。レーザ光源101に用いることができるレーザとして,この他,N d:YVO4レーザ,Nd:YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。 溶融処理領域を形成する場合には,Nd:YAGレーザ,Nd:YVO4レーザ,Nd:YLFレーザを用いるのが好適である。本実施形態では,半導体基板1の加工にパルスレーザ光を用いているが,多光子吸収を起こさせることができるなら連 は,Nd:YAGレーザ,Nd:YVO4レーザ,Nd:YLFレーザを用いるのが好適である。本実施形態では,半導体基板1の加工にパルスレーザ光を用いているが,多光子吸収を起こさせることができるなら連続波レーザ光でもよい。 【0033】レーザ加工装置100はさらに,ビームスプリッタ119,ダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子121及び結像レンズ123を備える。撮像素子121としては例えばCCDカメラがある。切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視 光線の反射光は,集光用レンズ105,ダイクロイックミラー103,ビームスプリッタ119を透過し,結像レンズ123で結像されて撮像素子121で撮像され,撮像データとなる。なお,半導体基板1を赤外透過照明116による赤外線で照明すると共に,後述する撮像データ処理部125により結像レンズ123及び撮像素子121の観察面を半導体基板1の 内部に合わせれば,半導体基板1の内部を撮像して半導体基板1の内部の撮像データを取得することもできる。 【0037】[半導体基板の実施例1]本発明に係る半導体基板の実施例1について,… 【0038】実施例1に係る半導体基板1は,厚さ350μm,外径4インチの円板状のシリコンウェハであり,図10に示すように,半導体基板1の周縁部の一部が直線となるよう切り欠かれてオリエンテーションフラット(以下「OF」という)15が形成されている。 【0039】 図11に示すように,半導体基板1の内部には,OF15に平行な方向に延びる切断起点領域9aが,半導体基板1の内部における外径の中心(以下「基準原点」という)から所定の間隔毎に複数形成されている。また,半導体基板1の内部 導体基板1の内部には,OF15に平行な方向に延びる切断起点領域9aが,半導体基板1の内部における外径の中心(以下「基準原点」という)から所定の間隔毎に複数形成されている。また,半導体基板1の内部には,OF15に垂直な方向に延びる切断起点領域9bが基準原点から所定の間隔毎に複数形成されている。切断起点領域 9aは,図12に示すように,半導体基板1の内部にのみ形成され,半導体基板1の表面3及び裏面17には達していない。このことは,切断起点領域9bについても同様である。切断起点領域9a及び切断起点領域9bのそれぞれは,半導体基板1の内部に1列となるよう形成された溶融処理領域でもって形成されている。 【0047】続いて,レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて,レーザ光Lを半導体基板1に照射する。レーザ光Lの集光点Pは半導体基板1の内部に位置しているので,溶融処理領域は半導体基板1の内部にのみ形成される。 そして,X軸ステージ109やY軸ステージ111により半導体基板1を 移動させて,半導体基板1の内部に,OF15に平行な方向に延びる切断起点領域9a及びOF15に垂直な方向に延びる切断起点領域9bのそれぞれを,基準原点から所定の間隔毎に複数形成し(S119),実施例1に係る半導体基板1が製造される。 【0048】 なお,半導体基板1を赤外透過照明116による赤外線で照明すると共に,撮像データ処理部125により結像レンズ123及び撮像素子121の観察面を半導体基板1の内部に合わせれば,半導体基板1の内部に形成された切断起点領域9a及び切断起点領域9bを撮像して撮像データを取得し,モニタ129に表示させることもできる。 【0049】 以上説明したように,実施例1に係る半導体基板1は,半 切断起点領域9a及び切断起点領域9bを撮像して撮像データを取得し,モニタ129に表示させることもできる。 【0049】 以上説明したように,実施例1に係る半導体基板1は,半導体基板1の内部に集光点Pが合わされ,集光点Pにおけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光Lが照射されることで,半導体基板1 の内部に多光子吸収による溶融処理領域が形成されている。この多光子吸収を発生し得るレーザ光Lの照射において は,半導体基板1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないため,半導体基板1の表面3が溶融することはない。したがって,半導体デバイスの製造工程においては,従来通りの工程によって,半導体基板1の表面3に機能素子を形成することができる。なお,半導体基板1の裏面17も溶融されることはないので,半導体基板1の裏面17を半導体基板1の表 面3と同様に扱うことができるのは勿論である。 【0050】また,実施例1に係る半導体基板1は,溶融処理領域でもって切断起点領域9a及び切断起点領域9bが半導体基板1の内部に形成されている。 半導体基板1の内部に溶融処理領域が形成されていると,溶融処理領域を 起点として比較的小さな力で半導体基板1に割れが発生するため,切断起点領域9a及び切断起点領域9bに沿って高い精度で半導体基板1を割って切断することができる。よって,半導体デバイスの製造工程においては,従来のような機能素子形成後の切削加工や加熱溶融加工が不要となり,例えば,切断起点領域9a及び切断起点領域9bに沿うよう半導体基板1の 裏面17にナイフエッジを当てるだけで半導体基板1を切断することができる。したがって,機能素子形成後の半導体基板1の切断による機能 切断起点領域9a及び切断起点領域9bに沿うよう半導体基板1の 裏面17にナイフエッジを当てるだけで半導体基板1を切断することができる。したがって,機能素子形成後の半導体基板1の切断による機能素子の破壊を防止することができる。 【0052】なお,半導体基板1の内部に溶融処理領域が形成されると,意識的に外 力を印加しなくても,溶融処理領域を起点として(すなわち,切断起点領 域9a及び切断起点領域9bに沿って),半導体基板1の内部に割れが発生する場合がある。この割れが半導体基板1の表面3及び裏面17に到達するか否かは,半導体基板1の厚さ方向における溶融処理領域の位置や,半導体基板1の厚さに対する溶融処理領域の大きさ等に関係する。したがって,半導体基板1の内部に形成する溶融処理領域の位置や大きさ等を調節 することによって,半導体デバイスの製造工程において半導体基板1がハンドリングされたりヒートサイクルを経たりすることで,半導体基板1の表面3及び裏面17に割れが到達しないよう,或いは切断直前に半導体基板1の表面3及び裏面17に割れが到達するよう,種々の制御を行うことができる。 【0053】[半導体基板の実施例2]…実施例2に係る半導体基板1は,厚さ350μm,外径4インチの円板状のGaAsウェハであり,図15に示すように,半導体基板1の周縁部の一部が直線となるよう切り欠かれてOF15が形成されている。 【0054】この半導体基板1は,外縁に沿った外縁部31(図15の2点鎖線の外側部分)を有し,この外縁部31の内側部分32(図15の2点鎖線の内側部分)の内部には,実施例1に係る半導体基板1と同様に,OF15と平行な方向に延びる複数本の切断起点領域9aと,OF15に垂直な方向 し,この外縁部31の内側部分32(図15の2点鎖線の内側部分)の内部には,実施例1に係る半導体基板1と同様に,OF15と平行な方向に延びる複数本の切断起点領域9aと,OF15に垂直な方向 に延びる複数本の切断起点領域9bとが形成されている。このように,内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが格子状に形成されることで,内側部分32は多数の矩形状の区画部33に仕切られる。 【0055】半導体デバイスの製造工程においては,この区画部33毎に機能素子が 形成され,その後,切断起点領域9a,9bに沿って半導体基板1が切断 されて,各区画部33が個々の半導体チップに対応することとなる。 【0056】そして,図16に示すように,多数の区画部33のうち,外縁部31側に位置する区画部33の外縁部31側の角部分33aにおいては,切断起点領域9aと切断起点領域9bが交差して形成されている。すなわち,角 部分33aにおいて,切断起点領域9aは切断起点領域9bを超えて終端しており,切断起点領域9bは切断起点領域9aを超えて終端している。 なお,「多数の区画部33のうち,外縁部31側に位置する区画部33」とは,換言すれば「多数の区画部33のうち,外縁部31に隣接して形成された区画部33」ということもできる。 【0060】なお,マスク36を用いずに,半導体基板1の内側部分32と外縁部31との境界付近に各切断予定ライン5の始点5a及び終点5bを位置させて,各切断予定ライン5に沿ってレーザ光の照射を行うことにより,内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bを形成することも可能である。 【0062】しかも,半導体基板1の内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが形成され,外縁部31には切断起点領域9a, 32の内部に切断起点領域9a,9bを形成することも可能である。 【0062】しかも,半導体基板1の内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが形成され,外縁部31には切断起点領域9a,9bが形成されていないことから,半導体基板1全体としての機械的強度が向上することになる。 したがって,半導体基板1の搬送工程や機能素子形成のための加熱工程等 において,半導体基板1が不測の下に切断されてしまうという事態を防止することができる。 【0063】また,外縁部31側に位置する区画部33の角部分33aにおいては,切断起点領域9a,9bが交差して形成されているため,角部分33aに おいても,当該区画部33の他の部分と同様に切断起点領域9a,9bの 形成が確実且つ良好なものとなる。したがって,半導体基板1を切断した際に当該区画部33に対応する半導体チップにチッピングやクラッキングが発生するのを防止することができる。 (2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書2には,本件発明2に関し,次のとおりの開示があることが認められる。 ア半導体デバイスの製造工程において半導体基板を切断する方法には,ダイヤモンドブレードにより半導体基板を機能素子毎に切断する方法(切削加工)や半導体基板に対して吸収性を有するレーザ光を半導体基板に照射し,加熱溶融により半導体基板を切断する方法(加熱溶融加工)があるが,これらの方法による場合には,切断時に発生する熱を原因として半導体基 板上に形成された機能素子が破壊されるおそれがあった。(【0002】ないし【0004】)。 イ 「本発明」は,前記アの従来技術の課題を解決するため,半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止して,半導体 た。(【0002】ないし【0004】)。 イ 「本発明」は,前記アの従来技術の課題を解決するため,半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止して,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを 可能にするレーザ加工装置を提供することを目的とするものであり,「本発明」に係るレーザ加工装置は,半導体基板の内部にレーザ光を集光させ,レーザ光の集光点を加工対象物の内部に位置させた状態で,半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させるように制御することで,切断予定ラインに沿って半導体基板内部に半導体基板の切断の起点 となる改質領域を形成し,また,その半導体基板内部における改質領域を赤外線で照明して撮像可能とするものである(【0005】,【0006】)。 「本発明」に係るレーザ加工装置は,このような構成を採ることにより,半導体基板の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので,半導体基板の表面を溶融させず,半導体基板上の機能素子が破壊されることを防止し ながら,半導体基板を切断することを可能とし,また,半導体基板を切断 予定ラインに沿って精度良く切断することを可能とするという効果を奏する(【0007】,【0008】)。 5 争点2-1(被告製品が本件発明2-1の技術的範囲に属するか(構成要件2A,2Dないし2Hの充足性))について(1) 構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」について ア 「改質領域」の意義(ア) 特許請求の範囲の記載について構成要件2Dにおいては,「前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる」と規定されている。 この記 ついて構成要件2Dにおいては,「前記半導体基板の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる」と規定されている。 この記載から,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」が,レーザ光の照射により,半導体基板内部のレーザ光の集光点の位置で形成されることが理解できる。 (イ) 本件明細書2の記載について本件明細書2の「【発明を実施するための最良の形態】」においては, 実施形態において形成される改質領域として「溶融処理領域がある」(【0016】),「半導体基板の内部に集光点を合わせて,…レーザ光を照射する。これにより半導体基板の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により半導体基板の内部に溶融処理領域が形成される。」(【0017】)との記載がある。 そして,上記【0017】では,溶融処理領域の意義について,本件明細書1の【0025】と同様の記載があり,本件明細書2の【0018】においては,「シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した」との記載がある。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書2の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の 記載を解釈すれば,構成要件2Dの「改質領域」とは,レーザ光の照射 によって半導体基板内に形成されるものであり,その具体例としては「溶融処理領域」が挙げられ,これは,「一旦溶融後再固化した領域や,まさに溶融状態の領域や,溶融状態から再固化する状態の領域」であり,言い換えれば,「相変化した領域や結晶構造が変化した領域」であって,例えば,「単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多 結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を えれば,「相変化した領域や結晶構造が変化した領域」であって,例えば,「単結晶構造から非晶質構造に変化した領域,単結晶構造から多 結晶構造に変化した領域,単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域」であり,「半導体基板がシリコン単結晶構造の場合,溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造」であると理解できる。 (エ) 「改質領域」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるか否か a 特許請求の範囲の記載及び本件明細書2の記載について(a) 本件発明2の特許請求の範囲(請求項1及び2)には,「多光子吸収」との文言やこれを定義する記載はなく,「改質領域」がいかなる現象によって形成されるのかを特定する記載もない。 (b) 本件明細書2には,本件発明2の課題解決手段について,前記4 (1)のとおり,「切断時に発生する熱を原因として半導体基板上に形成された機能素子が破壊されるおそれがある」という従来技術(【0002】,【0003】)の課題(【0004】)を解決するため,「半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子が破壊されるのを防止して,半導体基板を切断予定ラインに沿って 精度良く切断することを可能にするレーザ加工装置を提供する」(【0005】)ことを目的として,半導体基板の内部にレーザ光を集光させて半導体基板の内部に切断の起点となる改質領域を形成するとの請求項1に規定された構成を採用した(【0006】ないし【0008】)との記載がある。 これらの記載からは,本件発明2の課題の解決のために必要なの は,レーザ光を加工対象物の内部に集光させて切断の起点となる「改質領域」を内部に形成することであると理解でき,そのような課題解決の手段についてため 件発明2の課題の解決のために必要なの は,レーザ光を加工対象物の内部に集光させて切断の起点となる「改質領域」を内部に形成することであると理解でき,そのような課題解決の手段についてために,「改質領域」の形成が「多光子吸収」という現象によらなければならないとの限定がされているとはいえない。 (c) 他方,本件明細書2の「【発明を実施するための最良の形態】」においては,「本発明の好適な実施形態…に係る半導体基板及び半導体チップを構成するに際しては,…半導体基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成する,というレーザ加工方法を使用する。」(【0009】)との記載,「多光子吸収」が生じる条件等(【0010】) に係る記載,「本実施形態において多光子吸収により形成される改質領域としては,次に説明する溶融処理領域がある。」(【0016】)との記載及び「半導体基板の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により半導体基板の内部に溶融処理領域が形成される。」(【0017】)との記載,特定の条件(【0019】)での 実験において「溶融処理領域13が多光子吸収により形成された」(【0021】)との記載がある。 これらの記載は,実施例としての実験において生じた現象について,その実験が行われた当時における発明者の理解を説明したにすぎないものと考えられる。そうすると,前記(b)の課題解決手段に係 る記載に照らし,上記の実施例に係る記載をもって,本件明細書2における「改質領域」が「多光子吸収が支配的に寄与して形成されたもの」に限定されているとはいえない。 (d) 被告は,前記(c)の「加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領 域が形成される。 たもの」に限定されているとはいえない。 (d) 被告は,前記(c)の「加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領 域が形成される。」(【0017】)との記載により,本件明細書2に おける定義上,「溶融処理領域」が多光子吸収によって形成されるものに限定されていると主張する。 しかしながら,上記記載部分に続く,「溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域や,まさに溶融状態の領域や,溶融状態から再固化する状態の領域であり…半導体基板がシリコン単結晶構造の場合, 溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。」との記載部分においては,溶融処理領域が多光子吸収によって形成されたものであるという観点からの定義はされていない。これらの記載部分に照らせば,被告が指摘する上記記載部分は,「多光子吸収」によって「溶融処理領域」が形成されることがあるという意味にとどまり,「溶融 処理領域」が必ず多光子吸収によって形成されるものであると定義したものではないと理解できる。そうすると,被告が指摘する上記記載部分を考慮しても,本件明細書2における定義上,「溶融処理領域」が多光子吸収によって形成されるものに限定されていると認めることはできない。 そのほか,本件発明1について検討したのと同様に,多光子吸収が支配的な役割を果たしている場合でなければ,前記(b)の本件発明2の課題が解決できないことを認めるに足りる証拠はないから,本件発明2の構成における「改質領域」ないし「改質スポット」について,多光子吸収が支配的に寄与して形成されたものに限定して解 釈すべき理由はない。 (e) 以上のとおり,本件発明2の特許請求の範囲の記載及び本件明細書2の記載からは,構成要件2 ト」について,多光子吸収が支配的に寄与して形成されたものに限定して解 釈すべき理由はない。 (e) 以上のとおり,本件発明2の特許請求の範囲の記載及び本件明細書2の記載からは,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」について,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定すべきとはいえない。 b 出願経過の参酌(包袋禁反言)について 本件先行特許に係る出願経過等については,前記2(1)ア(エ)bで認定したとおりであり,本件特許2の特許出願(本件出願2)ないしその原出願と本件先行特許に係る出願とは別個の出願である。 また,本件出願2の経過等は,前記前提事実(2)イのとおりであるが,原告は,その審査において,本件特許1に係る審査と同様に,審査官 から,平成18年5月1日付け通知書によって,原告による他の出願との特許請求の範囲の記載の比較等を簡潔にまとめた文書の提出を求められ(乙50),同年7月10日,審査官から説明を求められた各出願を記載した一覧表(乙52)を提出しており,当該一覧表においては,本件先行特許について,本件発明1の審査において提出した一覧 表(乙51)と同様の記載がされていた。 被告は,本件先行特許に係る出願経過及び上記の本件出願2の出願経過を本件発明2の特許請求の範囲の記載の解釈において参酌すべきであり,本件発明2の「改質領域」は,禁反言の効力により,多光子吸収によるものに限定解釈されるべきであると主張する。しかしなが ら,前記2(1)ア(エ)bにおいて,本件発明1について検討したのと同様の理由で,上記の出願経過から,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」について,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定すべきとは理由はなく,本件出願2の審 いて検討したのと同様の理由で,上記の出願経過から,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」について,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定すべきとは理由はなく,本件出願2の審査における原告の対応について,審査官を欺いて特許権を取得したとの事情も認め られないから,原告の本件特許権2の行使が権利の濫用に当たるとの被告の主張も理由がない。 (オ) ボイドは「改質領域」に含まれるか,また,「改質領域」はボイドを形成しないものに限定されるか「ボイド」について,本件明細書2にも記載がないが,本件発明1と 同様に,「ボイド」とは加工対象物内部において固体ないし液体が存在し ない「空隙」を指すものとして,以下,検討する。 a 特許請求の範囲の記載及び本件明細書2の記載について本件発明2の特許請求の範囲(請求項1及び2)の記載には「ボイド」ないし「空隙」といった文言はない。また,本件明細書2においても,改質領域の内部又は周辺における「ボイド」ないし「空隙」に ついての記載はない。 したがって,本件発明2の特許請求の範囲の記載及び本件明細書2の記載からは,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」について,その内部又は周辺にボイドが形成されないものに限定すべきとの解釈は導かれない。 b 出願経過の参酌(包袋禁反言)について乙62出願に係る出願経過等については,前記2(1)ア(オ)bのとおりであり,本件出願2及びその原出願と乙62出願とは別個の出願である。 また,本件出願2の審査において原告が提出した前記(エ)bの一覧表 (乙52)においては,乙62出願について,本件出願1の審査において提出した一覧表(乙51)と同様の記載がされていた。 被告は,乙62出願に係る出願経 いて原告が提出した前記(エ)bの一覧表 (乙52)においては,乙62出願について,本件出願1の審査において提出した一覧表(乙51)と同様の記載がされていた。 被告は,乙62出願に係る出願経過及び上記の本件出願2の出願経過を本件発明2の特許請求の範囲の記載の解釈において参酌すべきあり,本件発明1の「改質領域」は,禁反言の効力により,ボイドが形 成されないものに限定解釈されるべきであると主張するが,前記2(1)ア(オ)bにおいて,本件発明1について検討したのと同様の理由で,これらの出願経過から,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」について,ボイドを形成しないものに限定すべき理由はない。 c 以上によれば,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」 は,その内部又は周辺にボイドが形成されないものに限定されるもの ではない。 また,「ボイド」自体も,前記(ウ)の「溶融処理領域」の定義に当てはまる限り,「改質領域」に該当するものというべきである。 イ被告製品によって形成されるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「改質領域」に該当するかについて (ア) 前記2(1)イのとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域においては,ボイド及びボイド上方領域において,シリコンの「溶融」と再固化が生じているものと認めるのが相当である。 したがって,被告製品によって形成されたレーザ加工領域において,このような溶融と再固化が生じた部分については,前記ア(ウ)の半導体基 板であるシリコンウェハが「一旦溶融後再固化した領域」に該当するから,「溶融処理領域」に該当するものと認められる。 なお,被告製品におけるボイド上方領域においては,溶融後再固化する際に単結晶となっている部分が存在し,アモルファス 融後再固化した領域」に該当するから,「溶融処理領域」に該当するものと認められる。 なお,被告製品におけるボイド上方領域においては,溶融後再固化する際に単結晶となっている部分が存在し,アモルファスが生じている部分は一部にとどまることが認められるところ,アモルファスがわずかし か含まれないとしても,シリコンウェハが溶融後再固化した領域であれば,その全体が,前記ア(ウ)の「一旦溶融後再固化した領域」に含まれ,また,「単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域」に該当するものとして「溶融処理領域」に該当すると解するのが相当である。 また,ボイドの部分に存在していたシリコンは,ボイド上方領域のシリコンと同様に,レーザ照射によって溶融し,これらの溶融したシリコンがボイドを残したままその後再固化したものと認められるから,ボイドの部分も,上記のシリコンウェハが溶融後再固化した領域の一部に含まれると解するのが相当である。 (イ) 「改質領域」の形成過程における多光子吸収の寄与について 前記ア(エ)のとおり,本件発明2の「改質領域」は多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されないから,被告製品によって形成されたレーザ加工領域が多光子吸収が支配的に寄与して形成されたものでないとしても,前記(ア)の結論に影響しない。 (ウ) レーザ加工領域におけるボイドの存在について 前記ア(オ)のとおり,本件発明2の「改質領域」は,その内部又は周辺にボイドが形成されないものに限定されないから,ボイドの存在は,前記(ア)の結論に影響しない。 また,前記(ア)のとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域におけるボイドは,ボイド上方領域とともに溶融と再固化が生じた「溶 融処理領域」の 存在は,前記(ア)の結論に影響しない。 また,前記(ア)のとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域におけるボイドは,ボイド上方領域とともに溶融と再固化が生じた「溶 融処理領域」の一部として,「改質領域」に含まれるものである。 (エ) 小括以上によれば,被告製品によって形成されるシリコンウェハ内部のレーザ加工領域は,構成要件2A,2D,2E及び2Gの「改質領域」に該当する。 (2) 構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズについてア 「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」の意義(ア) 特許請求の範囲の記載について構成要件2Dにおいては,集光用レンズによって,「前記半導体基板の 内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる」と規定されている。 (イ) 本件明細書2の記載について本件明細書2には,【0012】において,「本実施形態に係るレーザ加工は…半導体基板1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを半導体 基板1に照射して改質領域7を形成する。なお,集光点とはレーザ光L が集光した箇所のことである。」との記載があり,【図2】において,「集光点P」,「レーザ光L」及び「改質領域7」が図示されている。また,【0010】には,「レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり…ピークパワー密度は,(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット 断面積×パルス幅)により求められる。」との記載がある。そして,【0018】及び【0019】には,「溶融処理領域が形成されることを実験により確認した」際の「実験条件」として,「レーザ光 ポット 断面積×パルス幅)により求められる。」との記載がある。そして,【0018】及び【0019】には,「溶融処理領域が形成されることを実験により確認した」際の「実験条件」として,「レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2」との記載があり,【0020】には,「上記条件により形成された溶融処理領域13の厚さ方向の大きさは100μm程 度である。」との記載がある。 これらの記載は,前記2(2)ア(イ)の本件明細書1における集光点に関する記載と概ね同様である。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書2の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形 成させる」とは,集光用レンズによって半導体基板の内部にレーザ光を集光された箇所が形成され,その位置でレーザ光の照射による改質領域を形成することを指し,レーザ光の照射によって改質領域が形成されるのであれば,レーザ光の集光点の断面積は限定されず,また,改質領域がレーザ光の焦点よりも広い範囲まで及ぶことも許容されていると解す るのが相当である。 イ被告製品が「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズを備えるかについて前記2(2)イのとおり,被告製品によって形成されたレーザ加工領域においては,シリコンウェハ内部の集光用レンズによるレーザの焦点から数μ m上方に上下10μmに満たない長さのボイドが形成されており,そのさ らに上方に上下20μm程度のボイド上方領域が形成されていることが認められる。 そして,前記(1)イからすれば,このレーザ加工領域において,構成要件2Dの「改質領域」は,上記のボイド及びボイド上方領域の位置に存在しており,これはレーザ光の照射によって形成されたもので れる。 そして,前記(1)イからすれば,このレーザ加工領域において,構成要件2Dの「改質領域」は,上記のボイド及びボイド上方領域の位置に存在しており,これはレーザ光の照射によって形成されたものであるといえる。 そうすると,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における「改質領域」は,レーザ光の焦点からは数μmから20μm程度レーザ光が入射する表面の方向に近い位置に存在するものであるが,前記2(2)イで構成要件1Dについて説示したのと同様の理由で,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における「改質領域」は,「集光点の位置」において形成 されたものと認めるのが相当である。 したがって,被告製品は,構成要件2Dの「集光点の位置で前記改質領域を形成させる」集光用レンズを備えるものと認められる。 (3) 構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」についてア 「切断の起点となる改質領域」の意義 (ア) 特許請求の範囲の記載について構成要件2Aにおいては「半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」と規定され,構成要件2Dにおいては「レーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる」,構成要件2Eにおいては「前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動さ せる」と規定されている。 これらの記載からは,「改質領域」が,切断予定ラインに沿って半導体基板の内部に形成され,半導体基板の切断の起点となることが理解できるものの,「改質領域」が起点となることで「切断」がどのように行われるのかは明らかでない。 (イ) 本件明細書2の記載について 本件明細書2には,「半導体基板の内部に改質領域が形成されると,改質領域を起点として比較的小さな力で半導体基板に割れが発生する かでない。 (イ) 本件明細書2の記載について 本件明細書2には,「半導体基板の内部に改質領域が形成されると,改質領域を起点として比較的小さな力で半導体基板に割れが発生するため,切断予定ラインに沿って高い精度で半導体基板を割って切断することができる。」(【0007】),「改質領域7が切断予定ライン5に沿って半導体基板1の内部にのみ形成され,この改質領域7でもって切断起点領域 (切断予定部)9が形成される。」(【0013】),「なお,切断起点領域を起点とした半導体基板の切断には,次の2通りが考えられる。1つは,切断起点領域形成後,半導体基板に人為的な力が印加されることにより,切断起点領域を起点として半導体基板が割れ,半導体基板が切断される場合である。…他の1つは,切断起点領域を形成することにより,切断 起点領域を起点として半導体基板の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ,結果的に半導体基板が切断される場合である。」(【0015】),「なお,シリコンウェハは,溶融処理領域でもって形成される切断起点領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ,その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより,結果的に切断される。 シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし,シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。なお,切断起点領域からシリコンウェハの表面と裏面とに割れが自然に成長する場合には,切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から割れが成長する場合と,切断起点領域を形成する溶融 処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。」(【0023】)との記載がある。 (ウ) 前記(イ)の本件明細 成長する場合と,切断起点領域を形成する溶融 処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。」(【0023】)との記載がある。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書2の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件2Aの「改質領域」が「切断の起点となる」とは,切断予定ラインに沿って形成された改質領域を起点として割れが 発生し,割れが半導体基板の表面ないし裏面に達することで,結果的に 切断がされることをいうと解すべきである。また,上記の割れは自然に成長しても,力を印加することにすることによって成長させてもよいものと解される。 被告は,前記(イ)の本件明細書2に記載された切断の機序について,「改質領域からの割れの発生」と「切断」とに分断され,後者のみが構 成要件2Aの「切断」に当たると主張する。しかしながら,本件明細書2において「割れを発生させ,その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより,結果的に切断される」(【0023】)と記載されているとおり,構成要件2Aの「切断」とは,発生した割れが半導体基板の表面ないし裏面に達する一連の過程を指すものであるから,「割れ の発生」と「切断」を分断することはできず,被告の上記主張は採用することができない。 イ被告製品によって形成されたシリコンウェハ内部のレーザ加工領域が「切断の起点となる改質領域」に該当するかについて被告は,被告製品のうち,シリコンウェハをチップに分割する前の工程 までに,レーザ加工領域を除去する態様で用いるもの(被告製品(除去))については,レーザ加工領域は切断する際の起点とはならないと主張するが,構成要件2Aの「切断」とは,改質領域を起点として割れが発生し,割れが加 加工領域を除去する態様で用いるもの(被告製品(除去))については,レーザ加工領域は切断する際の起点とはならないと主張するが,構成要件2Aの「切断」とは,改質領域を起点として割れが発生し,割れが加工対象物の表面ないし裏面に達する一連の過程を指すところ,改質領域に含まれるボイドから発生した割れである下亀裂がシリコンウェハ の表面に達してチップが分割されるのであれば,その時点において改質領域がシリコンウェハから除去されていても,改質領域が「切断の起点」であるというべきである。 したがって,前記2(3)イと同様に,被告の主張を前提としても,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における改質領域は,シリコンウェ ハをチップに分割する前の工程までにこれが除去されるか否かにかかわら ず,構成要件2Aの「切断の起点となる改質領域」に該当すると認められる。 (4) 構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部についてア 「集光点を移動させる」の意義(ア) 特許請求の範囲の記載について 本件発明2-1(請求項1)に係る構成要件2Eにおいては,「レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる制御部」と規定されている。 一方,本件発明2-2(請求項2)に係る構成要件2Nは,構成要件 2Eと同一の文言であるところ,構成要件2Nと同じ本件発明2-2に係る構成要件2Rにおいては,「前記制御部は,前記載置台及び前記集光用レンズの少なくとも1つの移動を制御する」と規定されており,ここにいう「制御部」には,①載置台の移動のみを制御し,集光用レンズの移動を制御しないもの,②集光用レンズの移動のみを制御し,載置台の 移動を制御しないもの,③ を制御する」と規定されており,ここにいう「制御部」には,①載置台の移動のみを制御し,集光用レンズの移動を制御しないもの,②集光用レンズの移動のみを制御し,載置台の 移動を制御しないもの,③載置台及び集光用レンズの双方の移動を制御するものがあると考えられるから,構成要件2Nの「レーザ光の集光点を移動させる制御部」には,①ないし③のいずれもが含まれ得るものと理解できる。 そして,本件発明1とは異なり,本件発明2の特許請求の範囲の記載 においては,請求項1と請求項2とが独立項ではあるものの,それらの各請求項に係る発明は,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと本件発明2-2の2Jないし2P及び2Sとが同一であり,本件発明2-1が構成要件2Hを備えるのに対して,本件発明2-2が構成要件2Q及び2Rを備える点で相違するのみであって,同一の文言で規 定される本件発明2-1の構成要件2Eと本件発明2-2の構成要件2 Nとで「レーザ光の集光点を移動させる制御部」を別異に解すべき根拠となる記載は存在しない。 そうすると,構成要件2Nと同様に,上記①ないし③のいずれもが構成要件2Eの「レーザ光の集光点を移動させる制御部」に含まれると理解する余地がある。 (イ) 本件明細書2の記載について本件明細書2においては,「レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って…相対的に移動させることにより,集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。」(【0013】),「また,この集光点PのX(Y)軸方向の移動は,半導体基板1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX (Y)軸方向に移動させることにより行う。」(【0030】)との記載がある。 これらの記載から,集光点の「移動」とは,加工対象物との関係で相対的なも Y)軸ステージ109(111)によりX (Y)軸方向に移動させることにより行う。」(【0030】)との記載がある。 これらの記載から,集光点の「移動」とは,加工対象物との関係で相対的なものであると理解できる。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書2の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の 記載を解釈すれば,構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部とは,半導体基板を移動させることで,集光点を半導体基板の中で相対的に移動させるものを指し,半導体基板の位置を固定したままで,集光点を移動させるものに限定されないと解するのが相当である。 被告は,本件明細書2において,【0013】で「移動」と「相対的」 な「移動」が区別して用いられているとして,構成要件2Eには単に「移動」と記載があるから,構成要件2Eの移動は相対的な移動ではない旨を主張する。しかしながら,上記の【0013】では,「集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。」として,むしろ,相対的な移動を単に「移動」と記載しているものであり,【0030】でも,同様に, 相対的な移動を単に「移動」と記載している。これらの点に加えて,前 記(ア)のとおり,特許請求の範囲の記載自体から,構成要件2Eの「移動」が相対的な移動を指すと理解する余地があることも考慮すれば,被告の上記主張は採用することができないというべきである。 イ被告製品が「集光点を移動させる」制御部を備えるかについて前記2(4)イのとおり,被告製品は,別紙2被告製品の構成(原告の主張) 記載の構成⑤に係る制御部を備え,この制御部は,半導体基板であるシリコンウェハが載置される載置台(カッティングテーブル)を移動させることで,レーザ集光点を,半導体基板であるシリコンウェハの内部に位置さ の構成⑤に係る制御部を備え,この制御部は,半導体基板であるシリコンウェハが載置される載置台(カッティングテーブル)を移動させることで,レーザ集光点を,半導体基板であるシリコンウェハの内部に位置させた状態で,切断予定ラインに沿って直線的に相対的に移動させる機能を有するものと認められる。 したがって,被告製品は,構成要件2Eの「集光点を移動させる」制御部を備えるものと認められる。 (5) 構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」についてア 「赤外透過照明」の意義(ア) 特許請求の範囲の記載について 構成要件2Fにおいては,レーザ加工装置が「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明」を備えることが,構成要件2Gにおいては,レーザ加工装置が「前記赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域を撮像可能な撮像素子」を備えることが,それぞれ規定されている。 これらの記載からは,「赤外透過照明」は「前記載置台に載置された前記半導体基板を赤外線で照明する」ものであること及び「赤外透過照明により赤外線で照明された前記半導体基板における前記改質領域」は「撮像素子」で撮像可能であることが理解できる。 他方で,本件発明2-1の特許請求の範囲において,「赤外透過照明」 と「撮像素子」との位置関係について規定する記載はない。 (イ) 本件明細書2の記載について本件明細書2には,「本発明に係るレーザ加工装置は,半導体基板の内部に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって…載置台に載置された半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,赤外透過照明により赤外線で照明された半導体基板における前記改質領域 を撮像可能な撮像素子と,を備える」(【 ーザ加工装置であって…載置台に載置された半導体基板を赤外線で照明する赤外透過照明と,赤外透過照明により赤外線で照明された半導体基板における前記改質領域 を撮像可能な撮像素子と,を備える」(【0006】),「載置台107は,半導体基板1を赤外線で照明するために赤外線を発生する赤外透過照明116と,半導体基板1が赤外透過照明116による赤外線で照明されるよう,半導体基板1を赤外透過照明116上に支持する支持部107aとを有している。」(【0029】),「なお,半導体基板1を赤外透過照 明116による赤外線で照明すると共に,後述する撮像データ処理部125により結像レンズ123及び撮像素子121の観察面を半導体基板1の内部に合わせれば,半導体基板1の内部を撮像して半導体基板1の内部の撮像データを取得することもできる。」(【0033】),「なお,半導体基板1を赤外透過照明116による赤外線で照明すると共に,撮像 データ処理部125により結像レンズ123及び撮像素子121の観察面を半導体基板1の内部に合わせれば,半導体基板1の内部に形成された切断起点領域9a及び切断起点領域9bを撮像して撮像データを取得し,モニタ129に表示させることもできる。」(【0048】)との記載があり,【図9】において,「赤外透過照明116」が「半導体基板1」 の下方に記載され,「撮像素子121」が「半導体基板1」の上方に記載されている。 これらの記載からは,「赤外透過照明」は,半導体基板内部の改質領域を照明するための赤外線を発生する照明光源であり,発生した赤外線が半導体基板を透過すること,「撮像素子」は,「赤外透過照明」から発生 した赤外線により照明された半導体基板内部の改質領域を撮像するもの であることが理解できる。 生した赤外線が半導体基板を透過すること,「撮像素子」は,「赤外透過照明」から発生 した赤外線により照明された半導体基板内部の改質領域を撮像するもの であることが理解できる。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書2の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の記載を解釈すれば,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」とは半導体基板を透過する赤外線を発生する照明光源を指すものと解するのが相当である。 (エ) 被告は,「透過照明」について,照明光源と撮像素子が対象物を基準として反対側に配置されているものを指すことが技術用語として確立しており,また,「透過」という用語の通常の用例からも,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」とは,照明光源と撮像素子とが対象物を基準として反対側に配置されている場合に限定される旨主張する。 この点,井上勤監修「新版顕微鏡観察シリーズ① 顕微鏡観察の基本」(1998年株式会社地人書館)(乙35)には,「透過照明法とは,透明あるいは半透明の標本に光を照射し,透過した光を観察する方法です。」との記載があり,また透過照明法の例として「明視野中心照明」や「偏射照明」との方法があることが記載されているが,この記載のほか には,「赤外透過照明」という文言が一定の意義を持つ技術用語として確立していることを認めるに足りる証拠はない。 また,「透過照明」という文言が「透過照明法」を指すものとして使用され得るとしても,本件発明2-1においては,構成要件2Gにおいて「赤外透過照明」とは別に「撮像素子」が規定されているから,構成要 件2F及び2Gの「赤外透過照明」は,「撮像素子」をその要素として含まないと解すべきである。そうすると,上記「赤外透過照明」は,光の照射と観察の両方を含んだ照明法を指 されているから,構成要 件2F及び2Gの「赤外透過照明」は,「撮像素子」をその要素として含まないと解すべきである。そうすると,上記「赤外透過照明」は,光の照射と観察の両方を含んだ照明法を指すものではなく,前記(ウ)のとおり,照明光源として解するのが相当である。 そして,前記(ア)のとおり,本件発明2-1の特許請求の範囲において, 「赤外透過照明」と「撮像素子」との位置関係を規定する記載はなく, また「透過」という文言自体から,当然に,照明光源と撮像素子とが対象物を基準として反対側に配置されていることを指すとも認められないことからすれば,前記(イ)のとおり,本件明細書2の【図9】では,実施形態に係るレーザ加工装置について,「赤外透過照明116」と「撮像素子121」が「半導体基板1」を基準として反対側に図示されているこ とを考慮しても,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」について,撮像素子と対象物を基準として反対側に配置されているものに限定すべきとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イ被告製品が「赤外透過照明」を備えるかについて 証拠(甲13)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,赤外光を発生する照明光源を備えており,当該照明光源は,シリコンウェハを基準としてレーザ光源側(以下,単に「レーザ光源側」という。)に配置され,当該照明光源から照射される赤外光は,レーザ光源側からシリコンウェハ内に入り,シリコンウェハ内を通って,シリコンウェハの逆側の表面で反射さ れ,反射された赤外光が,シリコンウェハ内を通ってレーザ光源側に出て,レーザ光源側に配置された撮像素子に入射することが認められる。 そうすると,上記照明光源は,シリコンウェハを透過する赤外線を発生する照 射された赤外光が,シリコンウェハ内を通ってレーザ光源側に出て,レーザ光源側に配置された撮像素子に入射することが認められる。 そうすると,上記照明光源は,シリコンウェハを透過する赤外線を発生する照明光源であるから,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」に該当するというべきであり,上記の撮像素子は,構成要件2Gの「撮像素子」 に該当するというべきである。 なお,被告製品における上記照明光源と上記撮像素子は,対象物を基準として,いずれもレーザ光源側に配置されているが,前記ア(エ)のとおり,構成要件2F及び2Gの「赤外透過照明」は撮像素子と対象物を基準として反対側に配置されているものに限定されないから,この点は上記認定を 妨げるものではない。 (6) 構成要件2Hの「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」切断予定ラインについてア 「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」切断予定ラインの意義(ア) 特許請求の範囲の記載について 構成要件2Eにおいては,制御部が「前記改質領域を前記半導体基板の内部に形成するために,レーザ光の集光点を前記半導体基板の内部に位置させた状態で,前記半導体基板の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる」と規定され,構成要件2Hにおいては「前記切断予定ラインは,前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付近に始 点及び終点が位置する」と規定されている。 他方,本件発明2-1の特許請求の範囲において,「内側部分」と「外縁部」の範囲を特定する記載はない。 (イ) 本件明細書2の記載について本件明細書2には,「改質領域7が切断予定ライン5に沿って半導体基 板1の内部にのみ形成され,この改質領域7でもって切断起点領域(切断予定部 載はない。 (イ) 本件明細書2の記載について本件明細書2には,「改質領域7が切断予定ライン5に沿って半導体基 板1の内部にのみ形成され,この改質領域7でもって切断起点領域(切断予定部)9が形成される」(【0013】),「この半導体基板1は,外縁に沿った外縁部31(図15の2点鎖線の外側部分)を有し,この外縁部31の内側部分32(図15の2点鎖線の内側部分)の内部には,実施例1に係る半導体基板1と同様に,OF15と平行な方向に延びる複 数本の切断起点領域9aと,OF15に垂直な方向に延びる複数本の切断起点領域9bとが形成されている。このように,内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが格子状に形成されることで,内側部分32は多数の矩形状の区画部33に仕切られる。」(【0054】),「半導体基板1の内側部分32と外縁部31との境界付近に各切断予定ライン5の 始点5a及び終点5bを位置させて,各切断予定ライン5に沿ってレー ザ光の照射を行うことにより,内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bを形成することも可能である。」(【0060】),「しかも,半導体基板1の内側部分32の内部に切断起点領域9a,9bが形成され,外縁部31には切断起点領域9a,9bが形成されていないことから,半導体基板1全体としての機械的強度が向上することになる。したがって, 半導体基板1の搬送工程や機能素子形成のための加熱工程等において,半導体基板1が不測の下に切断されてしまうという事態を防止することができる。」(【0062】)との記載があり,【図15】及び【図16】において,半導体基板における「外縁部31」及び「内側部分32」並びに「切断起点領域9a」及び「切断起点領域9b」の位置関係が図示さ れている。 これ の記載があり,【図15】及び【図16】において,半導体基板における「外縁部31」及び「内側部分32」並びに「切断起点領域9a」及び「切断起点領域9b」の位置関係が図示さ れている。 これらの記載からは,半導体基板は「外縁部」と「内側部分」に区分でき,「外縁部」が,半導体基板の外縁に沿った部分,すなわち,半導体基板の端の一定の幅をもった部分であり,「内側部分」が,半導体基板の外縁部以外の部分であること,「切断予定ライン」に沿って形成された 「改質領域」によって「切断起点領域」が形成されるところ,「切断予定ライン」の始点及び終点を,「内側部分」と「外縁部」の境界付近に位置させてレーザ光の照射を行うことにより,内側部分の内部に「切断起点領域」を形成することが可能であることが理解できる。 他方,本件明細書2には,半導体基板の外縁部の幅又は内側部分の大 きさを特定する記載はないが,【0053】ないし【0056】,【図15】及び【図16】においては,実施例として,外径が4インチ(約10cm)である半導体基板1(【0053】)に外縁部31を設け,その内側部分32を半導体チップに対応する多数の矩形状の区画部33に仕切ることが記載されている。 (ウ) 前記(イ)の本件明細書2の記載に照らし,前記(ア)の特許請求の範囲の 記載を解釈すれば,構成要件2Hの「切断予定ライン」が「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」とは,半導体基板の外縁に沿った部分,すなわち,半導体基板の端の一定の幅をもった部分を「外縁部」とし,半導体基板の外縁部以外の部分を「内側部分」とした上で,「外縁部」に切断予定ラインがかからないように,「外縁部」と 「内側部分」の境界付近に「切断予定ライン」の始点及び終点を位置させ 部」とし,半導体基板の外縁部以外の部分を「内側部分」とした上で,「外縁部」に切断予定ラインがかからないように,「外縁部」と 「内側部分」の境界付近に「切断予定ライン」の始点及び終点を位置させることによって,「内側部分」の内部に「切断予定ライン」が設定されるようにすることをいうものと解するのが相当である。 イ被告製品による半導体基板の切断予定ラインが「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」か。 (ア) 前記前提事実(6)イのとおり,被告製品はシリコンウェハのエッジ部分をレーザ加工しないようにすることができる(構成⑨)ものであり,弁論の全趣旨によれば,被告製品において,そのような機能を用いる場合には,切断予定ラインの始点及び終点は,半導体基板の端からそれぞれ数mm内側に位置するものであり,それによって,半導体基板の端か ら数mmの幅の部分には切断予定ラインが及ばないことが認められる。 そうすると,上記の被告製品の構成は,半導体基板の端から数mmの幅を持つ「外縁部」と,半導体基板の外縁部以外の「内側部分」との境界付近に切断予定ラインの始点及び終点を位置させて,「内側部分」の内部に「切断予定ライン」が設定されるようにするものと認められるから, 被告製品によって形成される半導体基板の切断予定ラインは,「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」ものと認められる。 (イ) 被告は,特許第4509578号に係る特許発明に基づく別の訴訟における「加工対象物の端部」との文言についての原告の主張を根拠に,本件発明2-1の構成要件2Hにおける「内側部分と外縁部との境界」 は半導体基板の端から数cm以上離れた部分を指すと解すべきであり, 前記(ア)の半導体基板の端から数mmの位置に 本件発明2-1の構成要件2Hにおける「内側部分と外縁部との境界」 は半導体基板の端から数cm以上離れた部分を指すと解すべきであり, 前記(ア)の半導体基板の端から数mmの位置にある切断予定ラインの始点及び終点は「内側部分と外縁部との境界」に位置するものではないと主張する。 しかしながら,本件発明2-1と被告が根拠とする別の特許発明とが技術的意義を同じくするものか否かについては明らかでないから,別件 訴訟での原告の主張を参酌すべき理由はない。また,前記アのとおり,構成要件2Dの「外縁部」の幅について,本件発明2-1の特許請求の範囲及び本件明細書2には特定する記載はなく,かえって,実施例としては,外径4インチ(約10cm)の半導体基板1において,外縁部31を設け,内側部分32を半導体チップに対応する多数の矩形状の区画 部33に仕切ることが開示されており(【0053】ないし【0056】),基板全体の大きさと対比しても,当該実施例において外縁部31の幅が数cmとなることは想定されていないと理解できるから,「外縁部」を数cm以上の幅を有するものに限定すべき理由もない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (7) 小括前記(1)ないし(6)で検討した点に加え,前記前提事実(6)イの被告製品の構成からすれば,被告製品は,本件発明2-1の構成要件2A,2Dないし2Hをいずれも充足する。 前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が本件発明2-1のその余の構成要 件を充足することは争いがないから,被告製品は本件発明2-1の技術的範囲に属する。 6 争点2-2(被告製品が本件発明2-2の技術的範囲に属するか(構成要件2J,2Mないし2Pの充足性)について本件発明2-2の構成要件を本 ら,被告製品は本件発明2-1の技術的範囲に属する。 6 争点2-2(被告製品が本件発明2-2の技術的範囲に属するか(構成要件2J,2Mないし2Pの充足性)について本件発明2-2の構成要件を本件発明2-1の構成要件と比較すると,本件 発明2-2では,本件発明2-1の構成要件2Hに当たる要件が存在せず,本 件発明2-1では要件となっていない構成要件2Q及び2Rが要件として設けられているが,それ以外の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同じ文言が用いられている。 したがって,本件発明2-2の構成要件2J,2Mないし2Pは,本件発明2-1の構成要件2A,2Dないし2Gとそれぞれ同一と解するのが相当であ るところ,前記5のとおり,被告製品は,構成要件2A,2Dないし2Gをいずれも充足するから,同様に,構成要件2J,2Mないし2Pをいずれも充足する。 前記前提事実(6)ウのとおり,被告製品が本件発明2-2のその余の構成要件を充足することは争いがないから,被告製品は本件発明2-2の技術的範囲に 属する。 7 争点3-1(本件発明1の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 乙24公報の記載事項等ア本件出願1の原出願の出願日(平成13年9月13日。以下「本件特許 1の原出願日」という。)及びその優先日(平成12年9月13日。以下「本件特許1の優先日」という。)より前に頒布された刊行物である乙24公報には次のような記載がある(下記記載中に引用する【図1】,【図2】及び【図5】については,別紙5引用文献の図面等参照)。 (ア) 【特許請求の範囲】 【請求項1】基板(101)上に窒化物半導体(102)が形成された半導体ウエハー(100) 】,【図2】及び【図5】については,別紙5引用文献の図面等参照)。 (ア) 【特許請求の範囲】 【請求項1】基板(101)上に窒化物半導体(102)が形成された半導体ウエハー(100)を窒化物半導体素子(110)に分割する窒化物半導体素子(110)の製造方法であって,前記半導体ウエハー(100)は第1及び第2の主面を有し該第1の主面(111)側及び/又は第2の主面(121)側からレーザーを前記半導体ウエハ ー(100)を介して照射し少なくとも前記基板(101)の第2の主面(121)側及 び/又は前記基板(101)の第1の主面(111)側に形成された焦点にスクライブ・ライン(103)を形成する工程と,前記スクライブ・ラインに沿って半導体ウエハーを分離する工程とを有することを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。 【請求項3】前記スクライブ・ラインは基板露出面に形成された凹部 (103)である請求項1に記載された窒化物半導体素子の製造方法。 【請求項4】前記スクライブ・ラインは基板内部に形成された加工変質層(206)である請求項1に記載された窒化物半導体素子の製造方法。 (イ) 【発明の詳細な説明】a 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は紫外域から橙色まで発光可能な発光ダイオードやレーザーダイオード,更には高温においても駆動可能な3-5族半導体素子の製造方法に係わり,特に,基板上に形成された窒化物半導体素子の製造方法に関する。 【0002】 【従来技術】今日,高エネルギーバンドギャップを有する窒化物半導体(InXGaYAl1-X-YN,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)を利用した半導体素子が開発されつつある。窒化物半導体を利用したデバイス例として,青色,緑色や紫外がそれ ンドギャップを有する窒化物半導体(InXGaYAl1-X-YN,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)を利用した半導体素子が開発されつつある。窒化物半導体を利用したデバイス例として,青色,緑色や紫外がそれぞれ発光可能な発光ダイオードや青紫光が発光可能な半導体レーザが報告されている。更には高温におい ても安定駆動可能且つ機械的強度が高い各種半導体素子などが挙げられる。 【0003】通常,GaAs,GaPやInGaAlAsなどの半導体材料が積層された半導体ウエハーは,チップ状に切り出され赤色,橙色,黄色などが発光可能なLEDチップなどの半導体素子として利 用される。半導体ウエハーからチップ状に切り出す方法としては,ダ イサー,やダイヤモンドスクライバーが用いられる。ダイサーとは刃先をダイヤモンドとする円盤の回転運動によりウエハーをフルカットするか,又は刃先巾よりも広い巾の溝を切り込んだ後(ハーフカット),外力によりカットする装置である。一方,ダイヤモンドスクライバーとは同じく先端をダイヤモンドとする針などにより半導体ウエハーに 極めて細い線(スクライブ・ライン)を例えば碁盤目状に引いた後,外力によってカットする装置である。GaPやGaAs等のせん亜鉛構造の結晶は,へき開性が「110」方向にある。そのため,この性質を利用してGaAs,GaAlAs,GaPなどの半導体ウエハーを比較的簡単に所望形状に分離することができる。 【0004】しかしながら,窒化物半導体を利用した半導体素子は,GaP,GaAlAsやGaAs半導体基板上に形成させたGaAsP,GaPやInGaAlAsなどの半導体素子とは異なり単結晶を形成させることが難しい。結晶性の良い窒化物半導体の単結晶膜を得るためには,MOCVD法やHDVPE法など 体基板上に形成させたGaAsP,GaPやInGaAlAsなどの半導体素子とは異なり単結晶を形成させることが難しい。結晶性の良い窒化物半導体の単結晶膜を得るためには,MOCVD法やHDVPE法などを用いサファイアやス ピネル基板など上にバッファー層を介して形成させることが行われている。サファイア基板などの上に形成された窒化物半導体層を所望の大きさに切断分離することによりLEDチップなど半導体素子を形成させなければならない。 【0005】サファイアやスピネルなどに積層される窒化物半導体は ヘテロエピ構造である。窒化物半導体はサファイア基板などとは格子定数不整が大きい。また,サファイア基板は六方晶系という結晶構造を有しており,その性質上へき開性を有していない。さらに,サファイア,窒化物半導体ともモース硬度がほぼ9と非常に硬い物質である。 【0006】したがって,ダイヤモンドスクライバーで切断すること は困難であった。また,ダイサーでフルカットすると,その切断面に クラック,チッピングが発生しやすく綺麗に切断できなかった。また,場合によっては基板から窒化物半導体層が部分的に剥離する場合があった。 【0007】窒化物半導体の結晶性を損傷することなく半導体ウエハーを正確にチップ状に分離することができれば,半導体素子の電気特 性や効率を向上させることができる。しかも,1枚の半導体ウエハーから多くの半導体チップを得ることができるため生産性をも向上させられる。 【0008】そのため窒化物半導体ウエハーはダイヤモンドスクライバーやダイサーを組み合わせて所望のチップごとに分離することが行 われている。チップごとの分離方法として特開平8-274371号などに記載されている。具体的一例として,図5(A)から図 クライバーやダイサーを組み合わせて所望のチップごとに分離することが行 われている。チップごとの分離方法として特開平8-274371号などに記載されている。具体的一例として,図5(A)から図5(D)に窒化物半導体素子の製造方法を示す。サファイア基板(501)上に窒化物半導体層(502)が形成された半導体ウエハー(500)を図5(A)に示している。サファイア基板下面側から窒化物半導体層に達しない深さ でダイサー(不示図)による溝部(509)を形成する工程を図5(B)に示している。溝部(509)にスクライブ・ライン(507)を形成する工程を図5(C)に示してある。スクライブ工程の後半導体ウエハー(500)をチップ状の半導体発光素子(510)に分離する分離工程を図5(D)に示してある。これにより,切断面のクラック,チッピングが発生するこ となく比較的綺麗に切断することができるとされている。 b 【0009】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,半導体ウエハーの一方のみにスクライブ・ラインなどを形成させると分離時に他方の切断面にクラック,チッピングが発生しやすい傾向にある。分離された窒 化物半導体素子の一表面形状は揃えることが可能であるが,窒化物半 導体素子の他方の表面形状ではバラツキが発生し,半導体ウエハーにクラックやチッピングが生じやすい。したがって,半導体ウエハーを分離するときに,スクライブ・ライン形成面側から形成されていない半導体ウエハー面側への割れかたを制御し完全に窒化物半導体素子の形状を揃えて切断することは極めて難しいという問題を有する。 【0010】他方,半導体ウエハーの両面にスクライブ・ラインを形成させ窒化物半導体ウエハーの割れ方を制御することは可能である。 しかし,窒化 えて切断することは極めて難しいという問題を有する。 【0010】他方,半導体ウエハーの両面にスクライブ・ラインを形成させ窒化物半導体ウエハーの割れ方を制御することは可能である。 しかし,窒化物半導体ウエハーの両主面にスクライブ・ラインを形成するには半導体ウエハーをゴミの付着などを防止しつつ,ひっくり返し再度固定する工程が必要となり極めて量産性が悪くなる。また,サ ファイア基板上に形成された窒化物半導体の半導体ウエハー硬度は極めて高くダイヤモンドスクライバーのカッター刃先などの消耗,劣化が多くなり加工精度のバラツキ,刃先交換の為の製造コストが発生する。さらには,ダイヤモンドスクライバーでスクライブ・ラインを形成させると刃先の磨耗に応じてダイヤモンドスクライバーの加重を変 えなければならない。また,ダイヤモンドスクライバーによりスクライブ・ラインを形成させるためにはそのダイヤモンドの刃先ごとに適した角度で接触させなければならず極めて量産性が悪いという問題を有する。 【0011】より小さい窒化物半導体素子を正確に量産性よく形成さ せることが望まれる今日においては上記切断方法においては十分ではなく,より優れた窒化物半導体素子の製造方法が求められている。 【0012】特に,窒化物半導体の結晶性を損傷することなく半導体ウエハーを正確にチップ状に分離することができれば,半導体素子の電気特性や効率を向上させることができる。しかも,1枚のウエハー から多くの窒化物半導体素子を得ることができるため生産性をも向上 させられる。 【0013】したがって,本発明は窒化物半導体ウエハーをチップ状に分離するに際し,切断面のクラック,チッピングの発生をより少なくする。また,窒化物半導体の結晶性を損なうことなく,かつ歩 せられる。 【0013】したがって,本発明は窒化物半導体ウエハーをチップ状に分離するに際し,切断面のクラック,チッピングの発生をより少なくする。また,窒化物半導体の結晶性を損なうことなく,かつ歩留まりよく所望の形,サイズに分離された窒化物半導体素子を量産性良く 形成する製造方法を提供することを目的とするものである。 c 【発明の実施の形態】本発明者らは種々実験の結果,窒化物半導体素子を製造する場合において半導体ウエハーの特定箇所に特定方向からレーザーを照射することにより,半導体特性を損傷することなく量産性に優れた窒化物半導体素子を製造することができることを見いだ し本発明を成すに到った。 【0022】即ち,本発明の方法により窒化物半導体素子の分離ガイドとなるスクライブ・ラインを窒化物半導体層を損傷することなく窒化物半導体ウエハーを透過してレーザー照射面側以外の任意の点に形成することができる。特に,同一面側から窒化物半導体素子に悪影響 を引き起こすことなく半導体ウエハーの両面を比較的簡単に加工することができる。以下,本発明の製造方法について詳述する。 【0023】半導体ウエハーとして,LD(laserdiode)となる構成の窒化物半導体層をスピネル基板上に形成させた。具体的には,スピネル基板上に,GaNのバッファー層,n型GaNのコンタクト層, n型AlGaNのクラッド層,n型GaNの光ガイド層,SiをドープしInの組成を変化させた多重量子井戸構造となるInGaNの活性層,p型AlGaNのキャップ層,p型GaNの光ガイド層,p型AlGaNのクラッド層及びp型GaNのコンタクト層が積層されている。この半導体ウエハーのスピネル基板側からCO2 レーザーを照射 して窒化物半導体層とスピネル基板の界面に加 光ガイド層,p型AlGaNのクラッド層及びp型GaNのコンタクト層が積層されている。この半導体ウエハーのスピネル基板側からCO2 レーザーを照射 して窒化物半導体層とスピネル基板の界面に加工変質層をスクライ ブ・ラインとして形成させた。スクライブ・ラインと略平行にダイサーによりスピネル基板上に溝を形成させる。ローラーにより溝に沿って加圧することで窒化物半導体素子を形成させた。分離された窒化物半導体素子は何れも端面が綺麗に形成されている。以下,本発明の工程に用いられる装置などについて詳述する。 【0024】(窒化物半導体ウエハー100,200,300,400)窒化物半導体ウエハー100,200,300,400としては,基板101上に窒化物半導体102が形成されたものである。窒化物半導体102の基板101としては,サファイア,スピネル,炭化珪素,酸化亜鉛や窒化ガリウム単結晶など種々のものが挙げられるが量産性 よく結晶性の良い窒化物半導体層を形成させるためにはサファイア基板,スピネル基板などが好適に用いられる。サファイア基板などは劈開性がなく極めて硬いため本発明が特に有効に働くこととなる。窒化物半導体は基板の一方に形成させても良いし両面に形成させることもできる。 【0030】なお,レーザーが照射された窒化物半導体ウエハーは,その焦点となる照射部が選択的に飛翔した凹部103,403或いは微視的なマイクロ・クロックの集合である加工変質層206,308になると考えられる。また,第1の主面側,第2の主面側とは加工分離される半導体ウエハーの総膜厚を基準として,総膜厚の半分からそ の第1の主面或いは第2の主面に向けての任意の位置を言う。したがって,半導体ウエハーの表面でも良いし内部でも良い。さらに, 工分離される半導体ウエハーの総膜厚を基準として,総膜厚の半分からそ の第1の主面或いは第2の主面に向けての任意の位置を言う。したがって,半導体ウエハーの表面でも良いし内部でも良い。さらに,本発明は第1の主面側及び/又は第2の主面側のレーザー加工に加えて半導体ウエハーの総膜厚の中心をレーザー加工させても良い。 【0031】(レーザー加工機)本発明に用いられるレーザー加工機と しては,窒化物半導体ウエハーが分離可能な溝,加工変質層などが形 成可能なものであればよい。具体的には,CO2 レーザー,YAGレーザーやエキシマ・レーザーなどが好適に用いられる。 【0032】レーザー加工機によって照射されるレーザーはレンズなどの光学系により所望により種々に焦点を調節させることができる。 したがって,同一方向からのレーザー照射により半導体ウエハーの任 意の焦点に窒化物半導体を損傷させることなく溝,加工変質層などを形成させることができる。また,レーザーの照射面は,フィルターを通すことなどにより真円状,楕円状や矩形状など所望の形状に調節させることもできる。 【0033】レーザー加工機によるスクライブ・ラインの形成にはレ ーザー照射装置自体を移動させても良いし照射されるレーザーのみミラーなどで走査して形成させることもできる。さらには,半導体ウエハーを保持するステージを上下,左右,90度回転など種々駆動させることにより所望のスクライブ・ラインを形成することもできる。以下,本発明の実施例について詳述するが実施例のみに限定されるもの でないことは言うまでもない。 【0034】【実施例】(実施例1)厚さ200μmであり洗浄されたサファイアを基板としてMOCVD法を利用して窒化物半導体を積層させ窒化物半導体ウエハ の でないことは言うまでもない。 【0034】【実施例】(実施例1)厚さ200μmであり洗浄されたサファイアを基板としてMOCVD法を利用して窒化物半導体を積層させ窒化物半導体ウエハーを形成させた。窒化物半導体は基板を分離した後に発光 素子とすることが可能なよう多層膜として成膜させた。…【0038】…こうして形成された半導体ウエハー100を形成された窒化物半導体102が上になるように上下・左右の平面方向に自由に駆動可能なテーブル上に固定させた。レーザー光線(波長356nm)をサファイア基板101上に形成された窒化物半導体102側か ら照射し,焦点がサファイア基板101の略底面に結ばれるようにレ ーザーの光学系を調整した。調整したレーザーを16J/cm2 で照射させながらステージを移動させることによりサファイア基板101の底面に深さ約4μmのスクライブ・ライン103を縦横に形成する。 形成されたスクライブ・ライン103は,窒化物半導体ウエハー100の主面から見るとそれぞれがその後に窒化物半導体素子110とな る約350μm角の大きさに形成させてある(図1(B))。 【0039】次に,レーザー加工機のレーザー照射部のみダイシングソーと入れ替え窒化物半導体ウエハーの固定を維持したままダイサーにより,半導体ウエハー100に窒化物半導体102の上面からサファイア基板101に達する溝部104を形成する。ダイサーにより形 成された溝部104は,レーザー照射により形成されたスクライブ・ライン103と半導体ウエハー100を介して平行に形成されており,溝部104底面とサファイア基板101側の底面との間隔が,100μmでほぼ均一にさせた(図1(C))。 【0040】スクライブ・ライン103に沿って,不示 エハー100を介して平行に形成されており,溝部104底面とサファイア基板101側の底面との間隔が,100μmでほぼ均一にさせた(図1(C))。 【0040】スクライブ・ライン103に沿って,不示図のローラー により荷重を作用させ,窒化物半導体ウエハーを切断分離することができる。分離された端面はいずれもチッピングやクラックのない窒化物半導体素子110を形成することができる(図1(D))。 【0041】実施例1ではレーザーが照射される窒化物半導体102が形成された半導体ウエハー100の表面側ではなく窒化物半導体1 02及びサファイア基板101を透過した半導体ウエハー100の裏面側となるサファイア基板101底面で集光されたレーザーによりスクライブ・ライン103が形成される。 【0042】半導体ウエハー100の窒化物半導体102が形成された主面側(レーザー照射側)からサファイアなどの基板101に達す る溝部104を形成することで,容易にかつ正確にスクライブ・ライ ン104に沿って窒化物半導体素子110を分割することができる。 【0044】(実施例2)実施例1と同様にして形成させた半導体ウエハーに,RIE(ReactiveIonEtching)によって窒化物半導体表面側から溝が形成されるサファイア基板との境界面が露出するまでエッチングさせ複数の島状窒化物半導体層205が形成された半導体ウエハ ーを用いる。なお,エッチング時にpn各半導体が露出するようマスクを形成させエッチング後除去させてある。また,pn各半導体層には,電極220がスパッタリング法により形成されている(図2(A))。 【0045】この半導体ウエハー200を実施例1と同様のレーザー 加工機に固定配置させた。実施例2においてもレー 体層には,電極220がスパッタリング法により形成されている(図2(A))。 【0045】この半導体ウエハー200を実施例1と同様のレーザー 加工機に固定配置させた。実施例2においてもレーザー加工機からのレーザーを窒化物半導体ウエハーの窒化物半導体205側から照射し,焦点がサファイア基板201の底面から20μm のサファイア基板内部に結ばれるようにレーザー光学系を調整する。調整したレーザー光線を16J/cm2 で照射させながらステージを移動させることによりサ ファイア基板の底面付近の基板内部に加工変質層206となるスクライブ・ラインを形成する(図2(B))。 【0046】次に,レーザー光学系(不示図)を調整し直し,焦点がエッチングにより露出されたサファイア基板201の上面(窒化物半導体の形成面側)に結ばれるように調整した。調整したレーザーを照 射させながらステージを移動させることにより,半導体ウエハーに窒化物半導体層側の上面からサファイア基板に達する溝部を形成する。 形成された溝部204は,加工変質層206とサファイア基板201を介して略平行に形成させてある。なお,レーザー照射により形成されたサファイア基板201上の溝部204は,溝部の底面とサファイ ア基板の底面との間隔が,約100μmで,ほぼ均一になるように調 整してある。さらに,レーザー光学系を調節し直し,焦点がサファイア基板201に設けられた溝部底面に結ばれるよう調節した。調節したレーザーを14J/cm2 で照射させながらステージを移動させることにより,窒化物半導体が形成されたサファイア基板の露出面に設けられた溝部204の底面に深さ約3μmのスクライブ・ライン207 を形成する(図2(C))。 【0047】続いて,溝部(スクライブ とにより,窒化物半導体が形成されたサファイア基板の露出面に設けられた溝部204の底面に深さ約3μmのスクライブ・ライン207 を形成する(図2(C))。 【0047】続いて,溝部(スクライブ・ライン)に沿ってローラーによって荷重をかけ半導体ウエハーを切断し,LEDチップ210を分離させた(図2(D))。 【0048】こうして形成されたLEDチップに電力を供給したとこ ろいずれも発光可能であると共に切断端面にはチッピングが生じているものはほとんどなかった。歩留まりは98%以上であった。 【0049】実施例2では半導体ウエハーの片面側からレーザーにより基板表裏両面にスクライブ・ラインを形成することで,厚みがある窒化物半導体ウエハーでもスクライブ・ラインに沿って簡単に窒化物 半導体素子を分割するることが可能となる。また,溝の形成される部分が,サファイア基板までエッチングされているため,溝形成による窒化物半導体への損傷がより少なく分離させた後の窒化物半導体素子の信頼性を向上させることが可能である。特に,スクライブ・ラインが形成されるとき,レーザーの焦点がサファイア基板内部で結ばれて いることから,半導体ウエハーを固定している,テーブル若しくは粘着性シートを損傷することなく加工が実現できる。また,レーザー照射による加工くずの発生もない。なお,全てをレーザー加工でなく溝の形成をダイサーで行っても本発明と同様に量産性良く窒化物半導体素子を形成することができる。 【0064】(実施例5)実施例1のYAGレーザーの照射の代わりに エキシマ・レーザーを用いた以外は実施例1と同様にして半導体ウエハーを分離してLEDチップを形成させた。実施例1と同様半導体ウエハーを分離させるときに半導体ウエハーを裏返すこと わりに エキシマ・レーザーを用いた以外は実施例1と同様にして半導体ウエハーを分離してLEDチップを形成させた。実施例1と同様半導体ウエハーを分離させるときに半導体ウエハーを裏返すことなく分離することができる。また,形成されたLEDチップの分離端面はいずれも発光可能でありチッピングやクラックのない綺麗な面を有している。 d 【0066】【発明の効果】本発明の窒化物半導体素子の製造方法では,レーザー源から照射したレーザーをレンズなどの光学系で集光することにより,所望の焦点付近でエネルギーを集中させることができる。このエネルギー密度が非常に高くなった焦点でワークの加工がなされる。特に, 窒化物半導体ウエハーを透過したレーザーの焦点を利用する。不要な分離部となる窒化物半導体ウエハーに光学系で調整したレーザーを照射し,必要な窒化物半導体層の損傷をすることなく窒化物半導体ウエハーのレーザー照射面に対して半導体ウエハーの反対側の面まで自由に加工を行うことが可能となる。 【0067】したがって,本発明は窒化物半導体ウエハーを透過した所望の焦点での加工を利用することにより,窒化物半導体ウエハーを両面側から加工する必要がなく,片側からのみの加工で窒化物半導体ウエハーの表裏両面から加工したのと同じ効果を得ることができる。 したがってより歩留まりを向上させ,且つ形状にバラツキが少ない窒 化物半導体素子及びその量産性の良い製造方法を提供することができる。 イ前記アの記載事項によれば,乙24公報には,次のような開示があることが認められる。 (ア) 窒化物半導体を利用した半導体素子はサファイアやスピネル基板など 上に形成させることが行われているが,このような半導体ウエハーにつ いては,サファイ ことが認められる。 (ア) 窒化物半導体を利用した半導体素子はサファイアやスピネル基板など 上に形成させることが行われているが,このような半導体ウエハーにつ いては,サファイア,窒化物半導体ともモース硬度がほぼ9と非常に硬い物質であることなど,窒化物半導体の性質や基板であるサファイアの性質から,ダイヤモンドスクライバーで切断することは困難であること,ダイサーでフルカットするとその切断面にクラック,チッピングが発生しやすいこと,場合によっては基板から窒化物半導体層が部分的に剥離 する場合があることなどの課題がある。 そのため,従来から,切断面のクラック,チッピングが発生することなく比較的綺麗に切断する方法として,ダイヤモンドスクライバーやダイサーを組み合わせて窒化物半導体ウエハーを所望のチップごとに分離することが行われており,具体的一例として,【図5】のとおり,ダイサ ーによって溝部(509)を形成した上で,溝部(509)にスクライブ・ライン(507)を形成し,その後半導体ウエハーをチップ状の半導体発光素子(510)に分離する方法があった(【0003】ないし【0008】)。 しかしながら,【図5】の方法のように,半導体ウエハーの一方のみにスクライブ・ラインなどを形成させると分離時に他方の切断面にクラッ ク,チッピングが発生しやすい傾向にある。他方,半導体ウエハーの両面にスクライブ・ラインを形成させ窒化物半導体ウエハーの割れ方を制御することは可能であるが,窒化物半導体ウエハーの両主面にダイアモンドスクライバーでスクライブ・ラインを形成するには半導体ウエハーをゴミの付着などを防止しつつ,ひっくり返し再度固定する工程が必要 となるなど,極めて量産性が悪くなる(【0009】,【0010】)。 し バーでスクライブ・ラインを形成するには半導体ウエハーをゴミの付着などを防止しつつ,ひっくり返し再度固定する工程が必要 となるなど,極めて量産性が悪くなる(【0009】,【0010】)。 したがって,窒化物半導体ウエハーをチップ状に分離するに際し,切断面のクラック,チッピングの発生をより少なくし,また,窒化物半導体の結晶性を損なうことなく,かつ歩留まりよく所望の形,サイズに分離された窒化物半導体素子を量産性良く形成する製造方法が求められて いる(【0011】ないし【0013】)。 (イ) 「本発明」は,前記(ア)のような事情を考慮してなされたものであり,窒化物半導体素子の分離ガイドとなるスクライブ・ラインを窒化物半導体層を損傷することなく窒化物半導体ウエハーを透過してレーザー照射面側以外の任意の点に形成し,同一面側から窒化物半導体素子に悪影響を引き起こすことなく窒化物半導体ウエハーの両面を比較的簡単に加工 することができるようにするものであり,これによって,片側からのみの加工で窒化物半導体ウエハーの表裏両面から加工したのと同じ効果を得ることができ,したがってより歩留まりを向上させ,且つ形状にバラツキが少ない窒化物半導体素子及びその量産性の良い製造方法を提供することができるとの効果を得られる(【0022】,【0066】,【006 7】)。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙24公報に記載された発明前記(1)によれば,乙24公報には,次のような発明が記載されていることが認められる(以下,「乙24発明1’’」といい,被告主張に係る乙24 発明1及び原告主張に係る乙24発明1’と相違する構成には「構成1a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成1a’’:加工対象物である基板上 24発明1’’」といい,被告主張に係る乙24 発明1及び原告主張に係る乙24発明1’と相違する構成には「構成1a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成1a’’:加工対象物である基板上に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハーの内部に,加工変質層であるスクライブ・ラインを形成するレーザー加工機であって, 構成1b’’:前記加工対象物である基板上に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハーが載置されるステージと,構成1c:レーザー光を出射するレーザー光源と,構成1d’’:前記ステージに載置された前記加工対象物である基板上に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハーの内部に,前記レーザ ー光源から出射されたレーザー光を集光し,加工変質層である スクライブ・ラインを形成させる集光用レンズと,構成1e’’:前記加工対象物である基板上に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハーの分離予定ラインに沿って形成された前記加工変質層であるスクライブ・ラインを形成するために,レーザ光の焦点を前記加工対象物である基板上に窒化物半導体を積層させ た半導体ウエハーの内部に位置させた状態で,前記分離予定ラインに沿って前記加工対象物である基板上に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハーを載置したステージを直線的に移動させる処理部と,を備え,構成1f’’:前記加工対象物は基板上に窒化物半導体を積層させた半導体 ウエハーであること構成1g:を特徴とするレーザー加工機。 イ乙24発明1’’の認定についての補足説明(ア) 加工対象物について乙24公報に記載された発明の加工対象物について,被告は「半導体 ウエハー」であると主張し,これに対して,原告は「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエ 加工対象物について乙24公報に記載された発明の加工対象物について,被告は「半導体 ウエハー」であると主張し,これに対して,原告は「サファイア基板に窒化物半導体を積層させた窒化物半導体ウエハー」に限定されると主張する。 乙24公報において,特許請求の範囲では,「基板(101)上に窒化物半導体(102)が形成された半導体ウエハー(100)」(【請求項1】)と規定され ており,発明の詳細な説明には,「サファイアやスピネルなどに積層される窒化物半導体」(【0005】),「半導体ウエハーとして,LD(laserdiode)となる構成の窒化物半導体層をスピネル基板上に形成させた。」(【0023】),「窒化物半導体102の基板101としては,サファイア,スピネル,炭化珪素,酸化亜鉛や窒化ガリウム単結晶など種々のも のが挙げられるが量産性よく結晶性の良い窒化物半導体層を形成させる ためにはサファイア基板,スピネル基板などが好適に用いられる。」(【0024】)との記載があるが,「基板上に窒化物半導体を積層」させていない「半導体ウエハー」の加工についての具体的な記載はない。 これらの記載によれば,乙24公報に記載された発明において,加工対象物は,サファイア基板に限定されるものではないが,「半導体ウエハ ー」全般を指すものとはいえず,「基板上に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハー」と特定されると認めるのが相当である。 したがって,被告及び原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (イ) 「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となるかにつ いてa 被告は,乙24公報には,「加工変質層であるスクライブ・ライン」(スクライブ・ライン206)が切断の起点となることが記載されていると主 クライブ・ライン」が切断の起点となるかにつ いてa 被告は,乙24公報には,「加工変質層であるスクライブ・ライン」(スクライブ・ライン206)が切断の起点となることが記載されていると主張する。 しかしながら,前記(1)のとおり,乙24公報に記載された実施例2 においては,サファイア基板の底面付近の基板内部に形成された加工変質層であるスクライブ・ライン206のほかに,半導体基板の上面から形成された溝部204の底面に形成されたスクライブライン207が存在しており,「溝部(スクライブ・ライン)に沿ってローラーによって荷重をかけ半導体ウエハーを切断し」(【0047】)との記載か らすれば,溝部に存在するスクライブ・ラインであるスクライブライン207が切断の起点となると考えられる。また,同公報における「基板表裏両面にスクライブ・ラインを形成することで,厚みがある窒化物半導体ウエハーでもスクライブ・ラインに沿って簡単に窒化物半導体素子を分割することが可能となる」(【0049】)との記載があ ることを考慮しても,必ずしもスクライブ・ライン206が切断の起 点となるものとは認められない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 b 被告は,スクライブ・ライン207の上部からローラーを押圧して切断する場合には,上部から切断されることになるが,その場合も,少なくともスクライブ・ライン206が起点となってその下部に亀裂 が形成されるのは明らかであるから,スクライブ・ライン206が切断の起点になると主張する。 しかしながら,スクライブ・ライン206から下部に亀裂が形成されることをもって,加工対象物である半導体ウエハーの切断がスクライブ・ライン206から開始されるとはいえないから,スクライブ・ 張する。 しかしながら,スクライブ・ライン206から下部に亀裂が形成されることをもって,加工対象物である半導体ウエハーの切断がスクライブ・ライン206から開始されるとはいえないから,スクライブ・ ライン206が加工対象物の切断の起点となるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 c 被告は,乙24公報の請求項4に係る発明は,加工対象物の表面に露出したスクライブ・ライン207を必須とせず,加工変質層であるスクライブ・ライン206しか有しないものも想定していると主張す る。 しかしながら,前記(1)のとおり,乙24公報の実施例2では,スクライブ・ライン206のほかに,加工対象物の上面から溝部204及びスクライブ・ライン207を形成するとされている。また,乙24公報の発明の詳細な説明及び図面における他の記載をみても,加工対 象物の表面にスクライブ・ラインを形成することなく,表面に露出しないスクライブ・ラインのみを形成することの記載があるとは認められない。そうすると,乙24公報の請求項4が,その文言上,スクライブ・ラインが「基板内部に形成された加工変質層(206)」であると規定し,それ以外のスクライブ・ラインの有無について規定していない ことを考慮しても,乙24公報において,基板内部にのみスクライ ブ・ラインを形成することが開示されているとは認められない。 したがって,乙24公報において,スクライブ・ライン207を必須とせず,スクライブ・ライン206しか有しない発明が開示されており,その場合に,切断の起点となるのはスクライブ・ライン206である旨の被告の主張は,採用することができない。 d 以上のとおり,被告の前記aないしcの主張はいずれも採用することができず, おり,その場合に,切断の起点となるのはスクライブ・ライン206である旨の被告の主張は,採用することができない。 d 以上のとおり,被告の前記aないしcの主張はいずれも採用することができず,乙24公報に「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となる発明が記載されているとは認められない。 ウ本件発明1-1と乙24発明1’’との対比(ア) 一致点 本件発明1-1と乙24発明1’’を対比すると,共に「ウェハ状の加工対象物の内部に,改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光する集光用レンズと,前記加工対象物の切断 予定ラインに沿って前記改質領域を形成するために,レーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で前記切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を直線的に移動させる機能を有する制御部と,を備えるレーザ加工装置」である点で一致する。 (イ) 相違点 本件発明1-1と前記(2)の乙24発明1’’を対比すると,以下の各点で相違すると認められる。 なお,相違点①は原告主張の相違点Aに,相違点②は被告主張の相違点1及び原告主張の相違点Bに,相違点③は被告主張の相違点2及び原告主張の相違点Cに,相違点④は被告主張の相違点3及び原告主張の相 違点Dに,相違点⑤は被告主張の相違点5及び原告主張の相違点Eに, それぞれ対応するものである。 (相違点①)本件発明1-1では「改質領域」が「切断の起点となる」のに対し,乙24発明1’’では「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となるか明らかでない点。 (相違点 。 (相違点①)本件発明1-1では「改質領域」が「切断の起点となる」のに対し,乙24発明1’’では「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となるか明らかでない点。 (相違点②)本件発明1-1の「レーザ光源」は「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射するのに対し,乙24発明1’’の「レーザ光源」は,パルスレーザ光に限定されていない「レーザ光」を照射している点。 (相違点③) 本件発明1-1は,「1パルスのパルスレーザ光の照射により」,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成しているのに対し,乙24発明1’’は,「改質スポット」に相当するものを有しているのか明らかでなく,また改質領域が「複数のスポットによって」形成されているのか明らかでない点。 (相違点④)本件発明1-1の「制御部」は「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」機能を有するのに対し,乙24発明1’’では,そのような機能を有する か明らかでない点。 (相違点⑤)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙24発明1’’では,加工対象物が「基板に窒化物半導体を積層させた半導体ウエハー」であり,「改質領 域」が溶融処理領域であるか明らかでない点。 (ウ) 相違点の認定についての補足説明a 被告は,本件発明1-1と乙24公報に記載された発明(被告主張の乙24発明1)との間には,相違点3(本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ a 被告は,本件発明1-1と乙24公報に記載された発明(被告主張の乙24発明1)との間には,相違点3(本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定 にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙24発明1では,ステージを移動させている点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(4)アのとおり,本件発明1-1における「集光点を」「移動させる」こととは,集光用レンズや加工対象物の載置台を移動させることで,集光点を加工対象物の中で相対的に移動させる ことをいうから,集光点を移動させるために,ステージを移動させているか否かという点は,本件発明1-1と乙24公報に記載された発明との相違点とはならない。 したがって,被告主張の相違点3に対応する相違点としては,相違点④のように認定するのが相当である。 b 被告は,本件発明1-1と乙24公報に記載された発明(被告主張の乙24発明1)との間には,相違点4(本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙24発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないので,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるか否かが本件発明1-1と乙24公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえない。 したがって,被告主張の相違点4が存在するとはいえず,被告の上 記主張は採用することができない。 が本件発明1-1と乙24公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえない。 したがって,被告主張の相違点4が存在するとはいえず,被告の上 記主張は採用することができない。 エ小括以上によれば,本件発明1-1と乙24発明1’’との間には相違点①が存在し,この相違点に係る構成について,被告は容易想到性を具体的に主張,立証するものではない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙24発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明1-1について,乙24公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (3) 本件発明1-2の進歩性について本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定したものであるから,乙24発明1’’と本件発明1-2を対比すると,少なくとも,前記(2)の相違点①が存在していると認められる。 そして,前記(2)エと同様に,被告は,相違点①に係る構成について,容易 想到性を具体的に主張,立証するものではない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙24発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明1-2について,乙24公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 8 争点3-2(本件発明1の乙26公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 乙26公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙26公報には,「発明の詳細な説明」において,次のような記載 がある(下 て(1) 乙26公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙26公報には,「発明の詳細な説明」において,次のような記載 がある(下記記載中に引用する【図1】については,別紙5引用文献の図 面等参照)。 (ア) 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,破断領域に微小亀裂を発生させることにより,ガラス物体,特に破断開封用アンプルまたは管のガラス壁を破断するため,またはガラス板を分離するために適切な破断点を形成 (produce)する方法に関する。 (イ) 【0013】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,破断開封アンプルを再現できかつ安全に開口する方法で破断開封アンプルの破断領域に所定の破断点を形成することにある。特に,破断開封が困難なアンプルを開 封するときに生ずる傷の発生を避け,かつ,アンプルの開封で生ずるアンプル内の医薬品の損傷を妨げることを意図する。 (ウ) 【0014】【課題を解決するための手段】本発明の目的は,破断領域に微小亀裂を発生させることにより,ガラス物体,特に破断開封用アンプルまたは管 のガラス壁を破断するため,またはガラス板を分離するために適切な破断点を形成する方法において,前記微小亀裂を前記ガラス壁またはガラス板の内部に形成することを特徴とする破断点を形成する方法により達成される。 【0015】前記微小亀裂はレーザー照射により形成することが好まし い。 【0016】前記使用されるレーザー放射線はガラスが透明または少なくとも半透明の波長を有し,かつ,レーザーパルス時間は<1ms,特に<100nsであることが好ましい。 (エ) 【0021】 【発明の実施の形態】本発明によれば, はガラスが透明または少なくとも半透明の波長を有し,かつ,レーザーパルス時間は<1ms,特に<100nsであることが好ましい。 (エ) 【0021】 【発明の実施の形態】本発明によれば,適切な破断点は,微小亀裂が制 御された方法でアンプルのガラス壁内部に形成されるという事実によって作られる。最初に述べた従来の技術であって,それぞれの場合にガラス壁がガラス表面からの微小亀裂により弱くなる技術に対して,問題の表面は本発明の方法を使用するときに損傷を受けない。 【0028】好都合なことに,本発明に従う微小亀裂は集中レーザー照 射手段により形成される;アンプルの場合,従来技術から公知であるが,アンプルの首領域で生ずる。直径<100μmのレーザービームをガラス壁の中心に収束することが有益であることが証明された。このことを実施するために,ガラスが透明でありまたは少なくとも半透明である波長を備えるレーザー放射を利用することが必要なことは明らかである。 レーザーパラメーターを好適に選択することにより,当業者は,制御された方法で微小亀裂の長さや幾何学的な配列などの形成及び促進を調節することができる。これを実施するための適切なパラメーターを見つけだすことは進歩性を要求せず,これらは当業者によって,例えば適切な通常の実験に基づいて容易に決定できる。上記から明らかなように,ガ ラス物体(例えば,アンプル)の種々の幾何学性に関するプロセスパラメーターを採用することは容易である。微小亀裂は,約10~1000Hzの繰り返し周波数を備える単一レーザーパルスまたは一連のレーザーパルスを利用して形成できる。 【0030】相対的に長期保存及び輸送中でさえアンプルの安定性を保 証するために,ガラス表面に垂直な亀裂の大きさは, 備える単一レーザーパルスまたは一連のレーザーパルスを利用して形成できる。 【0030】相対的に長期保存及び輸送中でさえアンプルの安定性を保 証するために,ガラス表面に垂直な亀裂の大きさは,ガラス壁厚の約0. 5倍を越えるべきではない。 【0032】1)適切な破断点は,例えば適切な分割線に沿って周囲方向に配列した一若しくはそれ以上の微小亀裂領域によって,アンプル締め付け部の周囲の点に形成してよい。この方法(ワンポイントカット) では,破断開封するときにアンプルを配列又は調整するために適切な破 断点をマークすることが必要である。 【0033】2)さらに,適切な破断点は,アンプルの首周りを走るように適切な分割線に沿って形成してよい(いわゆる破断リングアンプルに類似する方法)。この場合,アンプルは予め配列又は調整することなく破断開封できる。破断の適切な方向にマークをつける必要はない。… 【0035】使用されたレーザー放射源は,Q-スイッチまたはモードロックNdソリッドステートレーザーであることが好都合である。短焦点距離を備える適切な光システムは,必要により広いビーム断面を有するレーザービームを<0.1mmのスポット直径に収束する。大きい湾曲面を有すると,例えば,円柱または屈折の光システム(従来技術)に より付加的な形状を備えるビームを提供する必要がある。非ガウスレーザービームプロファイルを用いると,破断方向に微小亀裂の付加的な配向を達成することが可能である。短いレーザーパルス時間のため,必要により,アンプル輸送の間適切な破断点を適用することができるが,これは壁の焦点位置を0.1mmよりも精度よく維持するために,多くの 支出が必要である。プロセスコントロールは,例えば,プラズマ形成の光電子的観察 送の間適切な破断点を適用することができるが,これは壁の焦点位置を0.1mmよりも精度よく維持するために,多くの 支出が必要である。プロセスコントロールは,例えば,プラズマ形成の光電子的観察及びレーザーパラメーターの再調整によって実施してよい。 【0036】当然,本発明の方法は,適切な破断点をアンプルに適用するために好適であるばかりではない。この方法は,例えばガラス管を切断する等の多くの適用に対し,高品質,再現性を有する初期亀裂を得る ために使用してよい。 【0037】この方法は,フラットガラスの分野において特殊な切断プロセスに用いてもよい(例えば,適切な形状(時計皿)のガラス片をガラス板から切断する)。 【0038】 【実施例】本発明の実験的実施態様は図面を用いて示し,下記により詳 細に記述する。 【0040】図1において,適切な破断点はアンプルの首2(締め付け)の領域においてホウケイ酸ガラス製の2mlアンプル1に形成する。 【0041】締め付けは,アンプルの製造方法において二次成形用具(formingtool)を用いてタレット装置上で直径6.5mm,壁厚0. 8mmに予め形成された。適切な破断点は図1で図式された更なるプロセスラインで適用され,ここで,アンプル1はチェインコンベヤーから,リフト装置3を使用してストップローラー4に対して持ち上げられる。 アンプル1は,ローラー6が二次成形用具を追跡するような方法でローラー(rollertable)5及び6上に置く。 【0042】パルス時間約10ns,パルスエネルギー25mJのQ-スイッチNd:YAGレーザー7を使用して適切な破断点を作る。レーザービームは,焦点距離50mmのレーザーレンズ8を使用してガラス壁の中心に収束させる:直 約10ns,パルスエネルギー25mJのQ-スイッチNd:YAGレーザー7を使用して適切な破断点を作る。レーザービームは,焦点距離50mmのレーザーレンズ8を使用してガラス壁の中心に収束させる:直径は約0.1mmである。適切な破断点がガラス壁の中心に形成されるように,アンプルの首2(締め付け)の直径 は大きくて0.1mmの公差を有する。10Hzのレーザー繰り返し周波数を用いると,3つの適切な破断点は周囲方向に沿って1mm間隔でアンプルの首に適用される。これを達成するために必要なアンプルの回転はローラー4の駆動によって行われる。 【0043】3つの適切な破断点は顕微鏡で見ることが可能で,アンプ ルを明確にかつ物理的に破断できる。 イ前記アの記載事項によれば,乙26公報には,次のような開示があることが認められる。 ガラス物体である破断開封アンプルには,破断開封が困難なアンプルを開封するときに生ずる傷の発生を避け,かつ,アンプルの開封で生ずるア ンプル内の医薬品の損傷を妨げる必要があり,破断開封アンプルを再現で きかつ安全に開口する方法で破断開封アンプルの破断領域に所定の破断点を形成するという課題が存在するところ,この課題を解決するため,「本発明」は,レーザ照射等を用いて,破断開封用アンプル等のガラス物体の内部の破断領域に微小亀裂を発生させることにより,破断ないし分離のための適切な破断点を形成する方法をとったものである(【0013】ないし 【0016】)。 (2) 乙26公報の引用例適格性について原告は,乙26公報は,本件発明1の原出願時の技術常識に照らして当業者が実施可能であるように記載されていないから,引用例として適格性を欠くと主張する。 原告が指摘するように,無効2005-801 ,乙26公報は,本件発明1の原出願時の技術常識に照らして当業者が実施可能であるように記載されていないから,引用例として適格性を欠くと主張する。 原告が指摘するように,無効2005-80166号事件の審決(甲21)においては,乙26公報の実施例(【0040】ないし【0042】)について,そこに記載された実験条件から計算されるレーザの収束の程度(集光半角)では,ガラス内部の所望の集光点に達する以前に,ガラス表面で多光子吸収が発生するほどのエネルギー密度となってしまい,ガラスの内部にのみ 多光子吸収による微小亀裂を作ることは不可能であるから,乙26公報記載の発明は完成しているとはいえないとして,乙26公報は進歩性を判断する際の引用例として考慮できないとされたものである。 しかしながら,前記(1)のとおり,乙26公報には,レーザ照射等を用いて,破断開封用アンプル等のガラス物体の内部の破断領域に微小亀裂を発生させ ることにより,破断ないし分離のための適切な破断点を分割線に沿って形成するとの技術思想が開示され(【0001】,【0013】,【0014】,【0032】,【0033】),微少亀裂を発生させるレーザーのパラメータ等についても,レーザパルス時間を1msより短くすること,集光点の直径を100μmより小さくすること,約10~1000Hzの繰り返し周波数を備える 単一レーザーパルス又は一連のレーザーパルスを利用することが望ましいこ とが開示されており(【0016】,【0028】,【0035】),しかも,「これを実施するための適切なパラメーターを見つけだすことは進歩性を要求せず,これらは当業者によって,例えば適切な通常の実験に基づいて容易に決定できる。」(【0028】)との記載もある。このような乙26公報の 施するための適切なパラメーターを見つけだすことは進歩性を要求せず,これらは当業者によって,例えば適切な通常の実験に基づいて容易に決定できる。」(【0028】)との記載もある。このような乙26公報の記載事項からすれば,仮に,実施例として開示されていた実験条件が,ガラスの内 部にのみ微少亀裂を作ることができないものであったとしても,乙26公報には本件発明1と対比可能な程度に具体的な技術思想が開示されているから,乙26公報に記載された発明は,特許法29条1項3号に規定する「刊行物に記載された発明」に該当するというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 本件発明1-1の進歩性についてア乙26公報に記載された発明前記(1)によれば,乙26公報には,本件発明1と対比すべき構成として,被告が主張する乙26発明1が記載されていると認められる。 イ乙26発明1の認定についての補足説明 原告は,乙26公報には構成1hの「前記パルスレーザ光の繰り返し周波数と前記パルスレーザ光の集光点の相対的に移動する速度を調節することで,隣り合う前記微小亀裂間の距離を制御し,前記ローラーの移動を制御すること」が記載されていないと主張する。 しかしながら,乙26公報の【0042】の記載によれば,乙26発明 1のレーザ加工装置が構成1eの「隣り合う前記微小亀裂間の距離が1mm間隔となるように前記加工対象物であるガラス物体の分割線に沿って形成された複数の前記微小亀裂によって前記破断点を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物であるガラス物体の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を10Hzとし,パルスレー ザ光の集光点がガラス物体に対して相対的に移動する速度を,破断 ーザ光の集光点を前記加工対象物であるガラス物体の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を10Hzとし,パルスレー ザ光の集光点がガラス物体に対して相対的に移動する速度を,破断点が1 mm間隔で形成されるような速度として,ガラス物体を回転させることで,前記分割線に沿ってパルスレーザ光の集光点を加工対象物であるガラス物体に対し相対移動させる機能を有するローラーの制御部と,を備え,」るものといえ,これは,パルスレーザ光の繰り返し周波数とパルスレーザ光の集光点の相対的に移動する速度を一定に調節することで,隣り合う微小亀 裂間の距離が一定になるように制御することが開示されているものといえるから,乙26発明1のレーザ加工装置は構成1hを備えるものといえる。 ウ本件発明1-1と乙26発明1との対比(ア) 一致点本件発明1-1と乙26公報に記載された発明(乙26発明1)を対 比すると,第3の6(被告の主張)(3)アの一致点が存在するものと認められ,この点については当事者間に争いがない。 (イ) 相違点本件発明1-1と乙26発明1を対比すると,以下の各点で相違すると認められる。 なお,相違点①は被告主張の相違点1に,相違点②は被告主張の相違点3に,相違点③は被告主張の相違点4及び原告主張の相違点Aにそれぞれ対応するものである。 (相違点①)本件発明1-1の加工対象物の形状は「ウェハ状」であるのに対し, 乙26発明1の加工対象物の形状は「ローラーで回転される形状の物体(アンプル)」である点。 (相違点②)本件発明1-1の「集光点」は「直線的に」移動するのに対し,乙26発明1の「集光点」は,「加工対象物(アンプル)を回転させることで」 移動する点。 ある点。 (相違点②)本件発明1-1の「集光点」は「直線的に」移動するのに対し,乙26発明1の「集光点」は,「加工対象物(アンプル)を回転させることで」 移動する点。 (相違点③)本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙26発明1では,加工対象物が「ガラス物体」であり,「改質領域」が溶融処理領域であるか明らかでない点。 (ウ) 相違点の認定についての補足説明a 被告は,本件発明1-1と乙26発明1との間には,相違点2(本件発明1-1の「集光点」は「移動」するのに対し,乙26発明1の「集光点」は,「加工対象物(ガラス物体)に対し相対移動」させられる点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(4)アのとおり,本件発明1-1における「集光点を」「移動させる」こととは,集光点を加工対象物の中で相対的に移動させることをいうから,被告主張の相違点2は,本件発明1-1と乙26発明1の相違点とはならない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 b 被告は,本件発明1-1と乙26発明1との間には,相違点4(本件発明1-1は,加工対象物が「シリコンウェハ」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成された溶融処理領域であるのに対し,乙26発明1では,加工対象物が「ガラス物体」であり,「改質領域」が多光子吸収によって形成されたか否か,及び,溶融しているか否かが明 確ではない点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないので,被告主張の相違点4のうち,「改質領域」が多 前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないので,被告主張の相違点4のうち,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるか否かは本 件発明1と乙26公報に記載された発明との間の相違点とはならない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ相違点③に係る構成の容易想到性について事案に鑑み,相違点③から判断する。 乙26発明1の課題は「破断開封アンプルを再現できかつ安全に開口する方法で破断開封アンプルの破断領域に所定の破断点を形成することにあ る。特に,破断開封が困難なアンプルを開封するときに生ずる傷の発生を避け,かつ,アンプルの開封で生ずるアンプル内の医薬品の損傷を妨げることを意図する」(【0013】)にあり,その他,前記(1)の乙26公報の記載事項からも,乙26発明1の加工対象物は,破断開封用アンプル等のガラス物体であると認められる。 このようなガラス物体と本件発明1-1の加工対象物であるシリコンウェハとでは加工対象物としての性質が異なることは明らかであるといえるから,乙26発明1に接した当業者において,乙26発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換えることを直ちに動機付けられるとはいえない。 乙26公報の【0014】,【0037】及び【0038】の記載からは, 乙26発明1において,その加工装置を破断開封用アンプル以外にガラス管やガラス板の切断に適用し得ることについては開示があるといえるものの,これらの記載において,乙26発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換える動機付けとなる示唆があるとはいえず,その他,そのような動機付けとなり得る事情も認められない。 は開示があるといえるものの,これらの記載において,乙26発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換える動機付けとなる示唆があるとはいえず,その他,そのような動機付けとなり得る事情も認められない。 これに対し,被告は,レーザ加工によってシリコンウェハを切断することは周知慣用技術であると主張するが,仮にそうであるとしても,当該周知慣用技術を乙26発明1に適用し,乙26発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換えることの動機付けについては,別途検討されるべきであって,周知慣用技術であるからといって,直ちにそのような動機付けが 認められるものではない。 したがって,相違点③に係る本件発明1-1の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1- 1は,乙26発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明1-1について,乙26公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (4) 本件発明1-2の進歩性について 本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定したものであるから,乙26発明1と本件発明1-2を対比すると,少なくとも,前記(3)の相違点③が存在していると認められる。 そして,前記(3)エで説示したとおり,相違点③に係る本件発明1-2の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に 想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙26発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず 日当時において,当業者が容易に 想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙26発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙26公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 9 争点3-3(本件発明1の乙57公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 乙57公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙57公報には次のような記載がある(下記記載中に引用する表 1,表2,第1図及び第2図については,別紙5引用文献の図面等参照)。 (ア) 特許請求の範囲「半導体結晶ウェーハの表面方向からレーザー光を照射し,半導体結晶ウェーハの裏面近傍に焦点を結び,半導体結晶ウェーハの裏面を加工することを特徴とする半導体ウェーハの加工法。」(1頁左下欄6行ないし9行) (イ) 発明の詳細な説明a 「又裏面全体に金属電極を付加した半導体結晶ウェーハをペレットに分割する場合,表面からの加工法によるスクライブでは裏面電極が切断されないため,半導体結晶は分離できても電極が連った複合ペレットが多く発生する欠点がある。」(1頁右下欄7行ないし12行) b 「本発明の目的は半導体結晶の表面・電極パターンに従い裏面を加工する方法を提供するものである。本発明の他の目的はレーザースクライブにおけるペレット分割の歩留りを向上させることにある。」(1頁右下欄19行ないし2頁左上欄3行)c 「本発明の方法はレーザー光のエネルギーよりもエネルギー禁止帯 幅が大きい半導体結晶ではレーザー光がほとんど吸収されずに裏面に ることにある。」(1頁右下欄19行ないし2頁左上欄3行)c 「本発明の方法はレーザー光のエネルギーよりもエネルギー禁止帯 幅が大きい半導体結晶ではレーザー光がほとんど吸収されずに裏面に到達することを用い,レーザー光の焦点を半導体結晶ウェーハの裏面近傍に結ぶことにより半導体結晶ウェーハの裏面を表面からのレーザー光照射で加工することである。」(2頁左上欄4行ないし10行)d 実施例1 「本発明の実施例に用いられた半導体結晶はGaPであり,レーザー光はYAGレーザーである。GaPのエネルギー禁止帯幅は3.1eVであり,YAGレーザーの発振波長1.06μに相当するエネルギー約1.2eVよりも充分大きく,従ってレーザー光はほとんど吸収されずGaP結晶を透過する。GaP結晶ウェーハは第1図に断面が 示されている。」(2頁左上欄13行ないし19行) 「(111)面GaP単結晶基板11上にN型層12およびP型層13を形成したP-N接合をもったGaP結晶ウェーハに電極として表面に150μφの金,亜鉛,ニッケルから成るオーム性電極14を0. 4mmの間隔で付加し,裏面には金とシリコン(2%)から成るオーム性電極15 3000Åを付加し,その上に金16を約1μ付加し てある。GaP結晶ウェーハの厚さは160μ±10μである。」(2頁左上欄20行ないし右上欄7行)「第2図に光学レンズ51によって焦点を結ぶときの半導体結晶ウェーハ52とレーザー光焦点53の位置が示されている。第2図(a)は従来通常行なわれている表面からの加工における焦点位置であり, 焦点は半導体結晶表面の近傍にある。第2図(b)は本発明の方法におけるレーザー光焦点53の位置であり,GaPの屈折率3.3を考慮し,半導体結晶ウェーハを約4 らの加工における焦点位置であり, 焦点は半導体結晶表面の近傍にある。第2図(b)は本発明の方法におけるレーザー光焦点53の位置であり,GaPの屈折率3.3を考慮し,半導体結晶ウェーハを約400μレンズに近づけて設定した。 レーザー光の出力および半導体結晶ウェーハの移動速度を一定として,スクライブ溝を入れたときの溝の形状を調べた結果を表1に示す。」 (2頁右上欄8行ないし18行)「上記(a),(b)の各方法でスクライブ溝を入れたウェーハをローラー式のブレーキング装置を用い,条件を一定にしてペレットに分割したとき,連ったペレットの割合は表2のように裏面からスクライブ溝を入れた(b)で少ない。(a)の方法で連ったペレットの多くはG aP結晶は割れており,裏面電極が連っていることが認められた。」(2ページ左下欄5行ないし11行)e 実施例2「実施例1と同様な半導体結晶ウェーハを用い,先づ第2図(b)の焦点位置に設定し,レーザー光の出力を下げるとともにGaP結晶ウ ェーハの移動速度を3倍にして裏面をスクライブした後,第2図(a) の焦点位置に設定し,実施例1と同じ条件で表面からスクライブしてペレットに分割した。この両面からスクライブすることによりほとんど100%連ったペレットを無くすることができた。」(2頁右下欄13行ないし3頁左上欄1行)f 「本発明の実施例としてYAGレーザーを用い,GaP結晶ウェー ハのペレットに分割するためのスクライブ溝を入れることを例として説明したが,本発明の特長を活かしさらに複雑な加工にも適用可能であることはいうまでもない。半導体結晶ウェーハとしてはYAGレーザーを用いる場合でもレーザ光の波長エネルギーよりも大きな禁止帯幅をもつ半導体結晶および多元素化合物半導 さらに複雑な加工にも適用可能であることはいうまでもない。半導体結晶ウェーハとしてはYAGレーザーを用いる場合でもレーザ光の波長エネルギーよりも大きな禁止帯幅をもつ半導体結晶および多元素化合物半導体結晶の全てに適用でき る。将来さらに波長エネルギーの小さいレーザー光の加工機が得られれば,さらにエネルギー禁止帯幅の小さい半導体結晶にも適用できる。」(3頁左上欄2行ないし13行)「本発明の方法によれば裏面に表面電極パターンとの対応した電極や位置指定することなく表面電極のパターンに従って簡単にかつ正確に 裏面の加工ができる。」(3頁左上欄17行ないし20行)イ前記アの記載事項によれば,乙57公報には,次のような開示があることが認められる。 「裏面全体に金属電極を付加した半導体結晶ウェーハをペレットに分割する場合,表面からの加工法によるスクライブでは裏面電極が切断されな いため,半導体結晶は分離できても電極が連った複合ペレットが多く発生する欠点がある」との課題が存在するところ,「本発明」は,このような従来の加工法による課題を解決するため,「半導体結晶ウェーハの裏面を表面からのレーザー光照射で加工する方法」で「半導体結晶の表面・電極パターンに従い裏面を加工する方法を提供することを目的とする」ものである (前記ア(イ)aないしc)。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙57公報に記載された発明前記(1)によれば,乙57公報には,次のような発明が記載されていることが認められる(以下,「乙57発明1’’」といい,被告主張に係る乙57発明1及び原告主張に係る乙57発明1’と相違する構成要素には「構成 a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成a’ :ウェハ状の加工対象物の裏面に, 明1’’」といい,被告主張に係る乙57発明1及び原告主張に係る乙57発明1’と相違する構成要素には「構成 a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成a’ :ウェハ状の加工対象物の裏面に,分割の起点となるスクライブ溝を形成するレーザ加工装置であって,構成b :前記加工対象物を移動させる装置と,構成c :レーザ光を出射するレーザ光源と, 構成d’’:前記加工対象物の裏面近傍に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,スクライブ溝を形成させる集光用レンズと,構成e’’:前記加工対象物の分割予定ラインに沿って形成された前記スクライブ溝を形成するために,レーザ光の焦点を前記加工対 象物の裏面近傍に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直線的に移動させる機能を有する処理部と,を備え,構成f: 前記加工対象物はGaP単結晶基板に電極が積層されたものであること 構成g: を特徴とするレーザ加工装置。 イ乙57発明1’’の認定についての補足説明被告は,構成a’について,乙57公報に記載された発明においては,分割の起点である「スクライブ溝」が加工対象物の内部に形成されると主張する。 しかしながら,乙57公報において,「本発明の目的は半導体結晶の表 面・電極パターンに従い裏面を加工する方法を提供するものである。」との記載があること(前記(1)ア(イ)b)に加え,「スクライブ溝」との文言自体からも,加工対象物の内部に設けられたものではなく,外部に接した面のくぼんだ部分を指すと考えるのが自然である。 さらに,乙57公報に記載された実施例1においては,GaP結晶ウェ ーハの厚さが160μm±10μmであるのに対して,裏面スクライブの深さが最大50μmと だ部分を指すと考えるのが自然である。 さらに,乙57公報に記載された実施例1においては,GaP結晶ウェ ーハの厚さが160μm±10μmであるのに対して,裏面スクライブの深さが最大50μmとされており,また,GaP結晶ウェーハの裏面に積層されているオーム性電極15の厚さは3000Å(0.3μm),その上に積層されている金16の厚さは約1μmであって,上記のスクライブの深さに比べて薄いものであることが示されており,表2には,裏面にスク ライブ溝を設けることによって,裏面電極が連なっているペレットの割合が少なくなったことが記載されている(前記(1)ア(イ)d)。これらに照らせば,特許請求の範囲において,「裏面近傍」に焦点を結んで加工する旨の記載があることや,上記実施例1において,GaP単結晶基板の裏面にオーム性電極15及び金16が積層されていることを考慮しても,形成される 「スクライブ溝」は加工対象物の内部に留まるものではなく,裏面に形成されるものと認められる。 したがって,被告の上記主張は採用することができず,構成a’及び関連する構成d’’及びe’’については,それぞれ,前記アのとおり認定するのが相当である。 ウ本件発明1-1と乙57発明1’’との対比(ア) 一致点本件発明1-1と乙57発明1’’を対比すると,共に「ウェハ状の加工対象物に,切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって,レーザ光を出射するレーザ光源と,前記レーザ光源から出射され たレーザ光を集光し,そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形 成させる集光用レンズと,レーザ光の集光点が前記加工対象物の切断予定ラインに沿って直線的に移動するように,前記加工対象物を移動させる機能を有する制御部と,を備えるこ で前記改質領域を形 成させる集光用レンズと,レーザ光の集光点が前記加工対象物の切断予定ラインに沿って直線的に移動するように,前記加工対象物を移動させる機能を有する制御部と,を備えることを特徴とするレーザ加工装置」である点で一致する。 (イ) 相違点 本件発明1-1と乙57発明1’’を対比すると,以下の各点で相違すると認められる。 なお,相違点①は被告主張の相違点1に,相違点②は被告主張の相違点2に,相違点③は被告主張の相違点3に,相違点④は被告主張の相違点5に,相違点⑤は被告主張の相違点6に,相違点⑥は被告主張の相違 点7に,相違点⑦は被告主張の相違点8及び原告主張の相違点Aにそれぞれ対応するものである。 (相違点①)本件発明1-1では,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射するのに対し,乙57発明1’’では,パルスレーザ光に限定されてい ない「レーザ光」を照射している点。 (相違点②)本件発明1-1では,「1パルスのパルスレーザ光の照射により」,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成しているのに対し,乙57発明1’’では,「改質スポット」に 相当するものを有しているのか明らかでなく,また改質領域が「複数のスポットによって」形成されているのか明らかでない点。 (相違点③)本件発明1-1では,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の 集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し, 乙57発明1’’では,そのような構成を有するか明らかでない点。 (相違点④)本件発明1-1では,加工対象物が「シリコンウェハ」であるが,乙 ,「集光点を移動させる」のに対し, 乙57発明1’’では,そのような構成を有するか明らかでない点。 (相違点④)本件発明1-1では,加工対象物が「シリコンウェハ」であるが,乙57発明1’’では,加工対象物がGaP単結晶基板に電極が積層されたものである点。 (相違点⑤)本件発明1-1では,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙57発明1では,「改質領域」が溶融処理領域であるか明らかでない点。 (相違点⑥)本件発明1-1は,「加工対象物が載置される載置台」を備えるのに対 し,乙57発明1’’では,加工対象物を移動させる装置は備えているが,それが載置台か否か明らかでない点。 (相違点⑦)本件発明1-1は,加工対象物の内部に改質領域を形成するのに対し,乙57発明1’’は,加工対象物の裏面に改質領域に相当するスクライブ 溝を形成する点。 (ウ) 相違点についての補足説明a 被告は,本件発明1-1と乙57公報に記載された発明(被告主張の乙57発明1)との間には,相違点3(本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ 光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙57発明1では,加工対象物を移動させている点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(4)アのとおり,本件発明1-1における「集光点を」「移動させる」こととは,集光用レンズや加工対象物の載置台 を移動させることで,集光点を加工対象物の中で相対的に移動させる ことをいうから,乙57公報に記載された発明において,集光点を移動させるために,加工対象物を移動させている点は,本件発明1-1との相違点とは 集光点を加工対象物の中で相対的に移動させる ことをいうから,乙57公報に記載された発明において,集光点を移動させるために,加工対象物を移動させている点は,本件発明1-1との相違点とはならない。 したがって,被告主張の相違点3に対応する相違点としては,相違点③のように認定するのが相当である。 b 被告は,本件発明1-1と乙57公報に記載された発明(被告主張の乙57発明1)との間には,相違点4(本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙57発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないので,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるか否かが本件発明1-1と乙57公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえず,相違点4が存在する とはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ相違点⑦に係る構成の容易想到性について事案に鑑み,相違点⑦から判断する。 被告は,乙24公報には,「加工対象物である半導体ウェハの裏面にスク ライブ・ラインを形成する代わりに,加工対象物の内部にスクライブ・ラインを形成するレーザ加工機。」の発明(被告主張の乙24発明A)が記載されており,この発明を,乙57発明1’’に組み合わせることで,加工対象物の内部に改質領域を形成する構成にすることは,当業者が容易に想到できると主張する。 しかしながら,前記7(2)イ(イ)で検討したところからすれば,乙24公 報に で,加工対象物の内部に改質領域を形成する構成にすることは,当業者が容易に想到できると主張する。 しかしながら,前記7(2)イ(イ)で検討したところからすれば,乙24公 報において,裏面にスクライブ溝を設けずに基板内部にのみスクライブ・ラインを形成することが開示されているとは認められないから,乙24公報に被告主張の乙24発明Aが記載されているとは認められない。 さらに,乙57発明1’’は,前記(1)イのとおり,従来の加工法による課題を解決するため,「半導体結晶ウェーハの裏面を表面からのレーザー光 照射で加工する」方法で「半導体結晶の表面・電極パターンに従い裏面を加工する方法を提供する」ことを目的とするものであり,乙57公報の「実施例1」においても,裏面にスクライブ溝を設けることによって,裏面電極が連なっているペレットの割合が少なくなったことが記載されていることから(前記(1)ア(イ)d),裏面を加工することにその技術的意義があ るものと認められる。そうすると,仮に,乙24公報から,被告が主張するような裏面にスクライブ溝を設けずに加工対象物の内部にのみ改質領域を形成させる乙24発明Aを認定できるとしても,上記のような乙57発明1’’に乙24発明Aに係る構成を組み合わせることは,乙57発明1’’の技術的意義を損なうものであり,当業者において,そのような組合せを する動機付けがあるとはいえない。 また,被告は,レーザ照射によって表面又は裏面にスクライブ溝を形成するレーザスクライブ法においては,レーザ照射による加工くずの発生が従来から課題として知られていたから,その加工くずの発生の防止を目的として乙24発明Aを適用することは,当業者が容易に想到できたことで あるとも主張する。 しかしながら,仮 加工くずの発生が従来から課題として知られていたから,その加工くずの発生の防止を目的として乙24発明Aを適用することは,当業者が容易に想到できたことで あるとも主張する。 しかしながら,仮にそのような課題が周知であったとしても,上記のとおり,乙57発明1’’は裏面を加工すること自体に技術的意義を有するものであるから,これに裏面を加工しない発明を組み合わせる動機付けがあるとはいえない。 したがって,相違点⑦に係る本件1-1の構成を採用することは,本件 特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙57発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとは いえないから,本件発明1-1について,乙57公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (3) 本件発明1-2の進歩性について本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定した ものであるから,乙57発明1’’と本件発明1-2を対比すると,少なくとも,前記(2)の相違点⑦が存在していると認められる。そして,前記(2)エで説示したとおり,相違点⑦に係る本件発明1-2の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2 は,乙57発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙57公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 争点3-4(本件発明1の乙 明をすることができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙57公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 争点3-4(本件発明1の乙58公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 乙58公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙58公報には次のような記載がある(下記記載中に引用する第1図及び第2図については,別紙5引用文献の図面等参照)。 (ア) 特許請求の範囲 「レーザ発振器と,このレーザ発振器から照射されるレーザ光線を集光 し被加工体に照射する集光光学系とを有し,被加工体内でレーザ光線の集光点を移動でき,被加工体を加工し得ることを特徴とするレーザスクライブ装置。」(1頁左下欄4行ないし8行)(イ) 発明の詳細な説明a「本発明はレーザスクライブ装置に係り,特に透明な被加工体を容易 に加工し得るレーザスクライブ装置に関する。」(1頁左下欄10行ないし12行)b「そこで,サフアイヤ等の半導体基板を分割するためにレーザ光線を使用して従来の方法のごとく半導体基板の表面にレーザ光線を集光して溝をつけ,つまりスクライブして半導体基板を分割する方法ではサ フアイヤがレーザ光線に対して透過性を有するため,レーザ光線を透過しない被加工体に比べ溝が浅くなり,分割する場合に不規則に割れ,半導体基板上の回路・素子を破壊もしくは損傷するという欠点があつた。そこで基板に溝をより深くつけるようにスクライブすると半導体基板表面にレーザ光線を長時間照射しなくてはならず能率が悪く,ま た半導体基板上の回路・素子を熱等により破壊したり損傷したり,また寿命を短くする等の悪影響をもたらす欠点 スクライブすると半導体基板表面にレーザ光線を長時間照射しなくてはならず能率が悪く,ま た半導体基板上の回路・素子を熱等により破壊したり損傷したり,また寿命を短くする等の悪影響をもたらす欠点があつた。 本発明の目的はこれらの欠点を除去し,被加工体例えばレーザ光線に対して透過性を有する物体をスクライブして分割するに際し容易に分割することができるレーザスクライブ装置を提供することにある。 本発明においては,これらの目的を達成するため被加工体例えばサフアイヤ等のレーザ光線に対し透過性を有する物質内でレーザ光線の焦点を移動できることに注目し,レーザ発振器と,このレーザ発振器から照射されるレーザ光線を集光し被加工体に照射する集光光学系を備えており,前記集光光学系により集光された集光点を前記被加工体 内で移動して,例えば集光点を被加工体の集光光学系の面に一致させ, その後その反対側の面に合わせ,被加工体を加工し得るレーザスクライブ装置を提供する。」(1頁右下欄9行ないし2頁左上欄下から3行)c 実施例「以下本発明の被加工体としてサフアイヤで形成された半導体基板を用いてスクライブする装置の一実施例を図を参照しなから説明する。 第1図は本発明の前記一実施例の一部を拡大した構成図で,レーザ発振器1のレーザ光線照射方向にレーザ光線が直角に曲るように,レーザ光線を反射し,可視光を透過するようなダイクロイツクミラー2を設ける。このダイクロイツクミラー2で反射したレーザ光線の光軸に合うように光軸を一致させ,このレーザ光線を集光させる集光光学系 例えば凸レンズ3を設ける。この凸レンズ3をダイクロイツクミラー2で反射されたレーザ光線の光軸方向に移動するため光学系駆動装置4を設ける。凸レンズ3で集光されたレーザ光 集光させる集光光学系 例えば凸レンズ3を設ける。この凸レンズ3をダイクロイツクミラー2で反射されたレーザ光線の光軸方向に移動するため光学系駆動装置4を設ける。凸レンズ3で集光されたレーザ光線の焦点が照射されるようにサフアイヤの半導体基板5を設ける。この半導体基板5は移動装置6によつて移動される。この移動装置6はテーブル7とテーブル 移動装置8を有しており,テーブル7の上には半導体基板5の回路,素子等が形成されていない面(以下裏面9と呼び,形成されている面を表面10と呼ぶ)がテーブル7の面に接するように載置され,このテーブル7はテーブル移動装置8により凸レンズ3の光軸と垂直方向に移動される。」(2頁左上欄下から2行ないし左下欄1行) 「その後,テーブル移動装置8によつてテーブル7を移動させ半導体基板5の表面10の所望位置に前記焦点を設定する。従って,レーザ発振器1より照射されたレーザ光線はダイクロイツクミラー2で反射され,凸レンズ3に導びかれ半導体基板5の表面10の前記の位置に集光する。そしてテーブル7が所望方向に移動できるようにテーブル 移動装置8を可動させると,第2図(a)に示した溝15が半導体基 板5の表面10に形成される。その後,半導体基板5がレーザ光線を透過することを利用し,レーザ光線の集光点を半導体基板5の裏面9の前記した溝15の下の所望の位置に設定する。例えばまず,光学系駆動装置4によって凸レンズ3を駆動し,凸レンズ3の焦点を半導体基板5の裏面9に一致させ,その後テーブル移動装置8を移動し半導 体基板5の裏面の前記溝15の下の所望位置に設定する。この状態でレーザ光線をレーザ発振器より照射すれば前記のように裏面9にレーザ光線が集光する。その後テーブル7をテーブル駆動装置8を駆 し半導 体基板5の裏面の前記溝15の下の所望位置に設定する。この状態でレーザ光線をレーザ発振器より照射すれば前記のように裏面9にレーザ光線が集光する。その後テーブル7をテーブル駆動装置8を駆動して所望方向に移動すると第2図(b)に示すように表面10の溝15に合わせて裏面9をスクライブすることになり,溝16は溝15の下 で半導体基板5の裏面9に形成される。」(2頁左下欄下から1行ないし3頁左上欄3行)「このように半導体基板5の両面に対向してスクライブした後に分割すれば第2図(b)の点線17より割れ,その分割面は,ほぼ直線状に割れる。」(3頁左上欄下から4行ないし下から2行) 「また被加工体面をスクライブするのに本一実施例ではテーブル駆動装置でテーブルを移動しているが,集光光学系をレーザ光線の照射方向に対して垂直に移動し,レーザ光線の集光点を移動してスクライブをしてもよい。」(3頁右上欄4行ないし8行)「また本発明の一実施例としてサフアイヤの半導体基板について述べ たが,このように被加工体がレーザ光線に対し透過性を有するものに対して効果的にスクライブできるものである。」(3頁左下欄6行ないし9行)イ前記アの記載事項によれば,乙58公報には,次のような開示があることが認められる。 サファイア等のレーザ光線を透過する材料を用いた半導体基板を分割す る方法については,半導体基板の表面にレーザ光線を集光してスクライブ溝を形成する方法では,溝が浅くなるために分割する場合に不規則に割れる等の欠点があり,基板表面に溝をより深くつけるようにスクライブすると能率が悪く,また半導体基板上の回路・素子に熱等による悪影響をもたらす欠点があったところ,「本発明」は,このような従来の加工法による課 があり,基板表面に溝をより深くつけるようにスクライブすると能率が悪く,また半導体基板上の回路・素子に熱等による悪影響をもたらす欠点があったところ,「本発明」は,このような従来の加工法による課 題を解決するため,被加工体をスクライブして分割するに際し容易に分割することができるレーザスクライブ装置を提供することを目的とするものであり,具体的には集光点を被加工体の一つの面に一致させて加工し,集光点を前記被加工体内で移動して,その反対側の面に合わせて加工するレーザスクライブ装置を提供するものである(前記ア(イ)a及びb)。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙58公報に記載された発明前記(1)によれば,乙58公報には,次のような発明が記載されていることが認められる(以下,「乙58発明1’’」といい,被告主張に係る乙58発明1及び原告主張に係る乙58発明1’と相違する構成要素には「構成 a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成a’’:半導体基板である加工対象物の表面及び裏面に,少なくともそのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成するレーザスクライブ装置であって,構成b :前記加工対象物が載置されるテーブルと, 構成c :レーザ光を出射するレーザ光源と,構成d’ :前記テーブルに載置された前記加工対象物の表面及び裏面に,前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し,前記相互に対向する溝(15及び16)を形成させる凸レンズと,構成e’ :前記加工対象物の分割予定ラインに沿って形成された前記溝 (15及び16)を形成するために,レーザ光の集光点を前 記加工対象物の表面及び裏面に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直線的に移動 て形成された前記溝 (15及び16)を形成するために,レーザ光の集光点を前 記加工対象物の表面及び裏面に位置させた状態で,前記分割予定ラインに沿って前記加工対象物を直線的に移動させる機能を有する処理部と,を備え,構成f :前記加工対象物はサファイアの半導体基板であること構成g :を特徴とするレーザスクライブ装置。 イ乙58発明1’’の認定についての補足説明被告が主張する乙58発明1においては,構成aにおいて,裏面に分割の起点となる溝が形成されると特定されているが,前記(1)によれば,乙58公報には,表面10と裏面9の2箇所に溝15及び16を対向して設けることを必須の構成とし,それらの溝のいずれか又は双方が加工対象物の 分割の起点となる発明が記載されているというべきであり,裏面のみに分割の起点となる溝を形成する発明が記載されているとはいえない。 したがって,構成a’’及び関連する構成d’及びe’については,それぞれ,前記アのとおり認定するのが相当である。 ウ本件発明1-1と乙58発明1’’との対比 (ア) 一致点本件発明1-1と乙58公報に記載された発明(乙58発明1’’)を対比すると,第3の8(被告の主張)(2)アの一致点が存在するものと認められ,この点については当事者間に争いがない。 (イ) 相違点 本件発明1-1と乙58発明1’’を対比すると,以下の各点で相違すると認められる。 なお,相違点①は被告主張の相違点1及び原告主張の相違点Bに,相違点②は被告主張の相違点2及び原告主張の相違点Cに,相違点③は被告主張の相違点3及び原告主張の相違点Dに,相違点④は被告主張の相 違点5に,相違点⑤は被告主張の相違点6に,相違点⑥は被告主張の相 違点7及 び原告主張の相違点Cに,相違点③は被告主張の相違点3及び原告主張の相違点Dに,相違点④は被告主張の相 違点5に,相違点⑤は被告主張の相違点6に,相違点⑥は被告主張の相 違点7及び原告主張の相違点Aにそれぞれ対応するものである。 (相違点①)本件発明1-1では,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照射するのに対し,乙58発明1’’では,パルスレーザ光に限定されていない「レーザ光」を照射している点。 (相違点②)本件発明1-1では,「1パルスのパルスレーザ光の照射により」,「改質スポット」を「複数」形成し,「複数の改質スポットによって」改質領域を形成しているのに対し,乙58発明1’’では,「改質スポット」に相当するものを形成しているのか明らかでなく,また,改質領域が「複 数のスポットによって」形成されているのか明らかでない点。 (相違点③)本件発明1-1では,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し, 乙58発明1’’では,そのような構成を有するか明らかでない点。 (相違点④)本件発明1-1では,加工対象物が「シリコンウェハ」であるのに対し,乙58発明1’’では,加工対象物がサファイアの半導体基板に電極が積層されたものである点。 (相違点⑤)本件発明1-1では,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙58発明1’’では,「改質領域」が溶融処理領域であるか明らかでない点。 (相違点⑥) 本件発明1-1のレーザ加工装置は,「加工対象物の内部に,切断の起 点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙58発明 処理領域であるか明らかでない点。 (相違点⑥) 本件発明1-1のレーザ加工装置は,「加工対象物の内部に,切断の起 点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙58発明1’’のレーザ加工装置(レーザスクライブ装置)は,「加工対象物の表面及び裏面に,少なくともそのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」ものであり,「加工対象物の内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点。 (ウ) 相違点についての補足説明a 被告は,本件発明1-1と乙58公報に記載された発明(被告主張の乙58発明1)との間には,相違点3(本件発明1-1は,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定 にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙58発明1では,加工対象物を移動させている点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(4)アのとおり,本件発明1-1における「集光点を」「移動させる」こととは,集光用レンズや加工対象物の載置台を移動させることで,集光点を加工対象物の中で相対的に移動させる ことをいうから,乙58公報に記載された発明において,集光点を移動させるために,加工対象物を移動させている点は,本件発明1-1との相違点とはならない。 したがって,被告主張の相違点3に対応する相違点としては,相違点③のように認定するのが相当である。 b 被告は,本件発明1-1と乙58公報に記載された発明(被告主張の乙58発明1)との間には,相違点4(本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙58発明1では,改質領域がどのようにして形成され に記載された発明(被告主張の乙58発明1)との間には,相違点4(本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙58発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質 領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないので,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるか否かが本件発明1-1と乙58公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえず,相違点4が存在するとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ相違点⑥について事案に鑑み,相違点⑥から判断する。 被告は,本件発明1-1と乙57発明1’’との相違点⑦についての主張と同様に,乙58発明1において,レーザ照射による加工くずの発生の防 止を目的として乙24公報に記載された発明(被告主張の乙24発明A)を適用することは,当業者が容易に想到できると主張する。 しかしながら,前記9(2)エのとおり,乙24公報に被告主張の乙24発明Aが開示されているとは認められない。また,前記イのとおり,乙58公報には表面10と裏面9の2箇所に溝15及び16を対向して設けるこ とを必須の構成とする発明が記載されているというべきである。そうすると,仮に,乙24公報から,被告が主張するような裏面にスクライブ溝を設けずに加工対象物の内部にのみ改質領域を形成させる乙24発明Aを認定できるとしても,当業者において,上記のような乙58発明1’’に乙24発明Aに係る構成を組み合わせる動機付けがあるとはいえない。 したがって, 部にのみ改質領域を形成させる乙24発明Aを認定できるとしても,当業者において,上記のような乙58発明1’’に乙24発明Aに係る構成を組み合わせる動機付けがあるとはいえない。 したがって,相違点⑥に係る本件発明1-1の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1- 1は,乙58発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとは いえないから,本件発明1-1について,乙58公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (3) 本件発明1-2の進歩性について本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定した ものであるから,乙58発明1’’と本件発明1-2を対比すると,少なくとも,前記(2)の相違点⑥が存在していると認められる。そして,前記(2)エで説示したとおり,相違点⑥に係る本件発明1-2の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2 は,乙58発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙58公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 11 争点3-5(本件発明1の乙25公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 乙25公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙25公報には次のような記載がある(「本発明の概念図」 進歩性欠如)について (1) 乙25公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙25公報には次のような記載がある(「本発明の概念図」として記載されている第1図については,別紙5引用文献の図面等参照)。 (ア) 特許請求の範囲 「(1)透明材料に吸収されない高エネルギービームを透明材料内部に焦点を結ばせて照射することを特徴とする透明材料の切断加工方法。 (2)特許請求の範囲第1項において,透明材料の下側に高エネルギービームの焦点を合せ,次に,上方に焦点を移動させる透明材料の切断加工方法。 (3)特許請求の範囲第1項ないし第2項のいずれかにおいて,透明材 料は石英ガラスである透明材料の切断加工方法。 (4)特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかにおいて,高エネルギービームはエキシマレーザである透明材料の切断加工方法。」(イ) 発明の詳細な説明a 従来の技術 「従来,石英ガラスなどの種々の透明材料を切断加工する方法として,バンドソーや内周刃などの直線的な切断機や,コアドリル,円筒研削機などの円形の加工機械が使用され直線状または,円筒状の加工がおこなわれている。 また,不定形の切断加工には炭酸ガスレーザを使用したレーザ加工 機等が使用されている。」(1頁右下欄3行ないし9行)b 発明が解決しようとする課題「従来の切断加工機械のバンドソーや,内周刃などでは直線的な切断加工のみであり,また,コアドリル,円筒研削機などの円形の加工機械は,円筒形の切断のみであり,複雑な加工には使用できなかった。 炭酸ガスレーザを利用したレーザ切断機では,炭酸ガスレーザビームの波長はガラスを透過しないため,材料表面部に集光し表面より溶 機械は,円筒形の切断のみであり,複雑な加工には使用できなかった。 炭酸ガスレーザを利用したレーザ切断機では,炭酸ガスレーザビームの波長はガラスを透過しないため,材料表面部に集光し表面より溶断して行くが,この場合溶断表面より内部へ進行するに従って,溶断面のピットによりレーザビームがさえぎられるので,溶断する厚さに対し限度があり,現状では10mm程度が限界である。 本発明は,石英ガラスなどの透明材料を複雑な形状に切断加工することを目的とし,被加工物の厚味に影響を受けず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている。」(1頁右下欄11行ないし2頁左上欄5行)c 課題を解決するための手段 「そこで,本発明は,石英ガラスなどの透明材料に吸収されない高エ ネルギービームを透明材料内部に焦点を結ばせて照射し,透明材料内部に微小なクラックを発生させることによって透明材料を切断加工しようとするものである。 透明材料としては,例えば,光学ガラス,石英ガラスなどの無機ガラス,アクリル樹脂などの透明樹脂等が挙げられる。 高エネルギービームとしては,XeF(351nm),XeCl(308nm),KrF(248nm),ArF(193nm)等のエキシマレーザーや,YAGレーザ及びその高調波等が挙げられる。 透明材料の高エネルギービームに対する吸収特性に応じて,適切な高エネルギービームを選択する必要がある。 高エネルギービームは,100Hz以上の高くりかえし周波数の方が効率的である。」(2頁左上欄7行ないし2頁右上欄4行)「焦点の移動は,光学的に焦点位置を移動させても,また,ワークを移動させても良く,操作しやすい方法を適宜選択できる。 焦点は,最初ワークの下側にあわせ,それから上方に移 7行ないし2頁右上欄4行)「焦点の移動は,光学的に焦点位置を移動させても,また,ワークを移動させても良く,操作しやすい方法を適宜選択できる。 焦点は,最初ワークの下側にあわせ,それから上方に移動させるの が効率的である。最初に,ワークの上方に焦点を合せると,切断部分により高エネルギービームが部分的に切断されてしまい作業効率が悪くなるからである。」(2頁右上欄5行ないし12行)d 作用「透明材料に吸収されない高エネルギービームを,レンズやミラーか ら構成される光学系を介して透明材料の内部に焦点を合せ,高エネルギービームを透明材料内部に照射する。すると,高エネルギービームの照射された個所に数十ミクロン以下の微小なクラックが発生する。 高エネルギービームの照射位置を移動させて,透明材料に連続的なクラックを発生させることによって透明材料を切断加工する。」(2頁右 上欄17行ないし2頁左下欄5行) 「クラックの発生について更に詳しく説明する。 固体中では,荷電子のエネルギー準位は帯状のいわゆるバンド構造をとっている。絶縁体ではバンドギャップ以下のフォトンエネルギーのフォトン,すなわち,長波長の光は吸収しない。 しかし,バンドギャップよりも低エネルギーの光でも,レンズで集 光するなどしてフォトン密度を極端に高くすると,2個あるいは,それ以上のフォトンを同時に吸収することにより,電子が充満帯(エネルギーギャップよりエネルギーの低いエネルギーバンド)から伝導帯(エネルギーギャップよりエネルギーが高く,通常の状態では電子の存在しないエネルギーバンド)に励起される。 このように,フォトンを同時に2個吸収することを2光子吸収,さらに一般に複数個吸収することを多光子吸収という。」(2頁左下欄6行な 態では電子の存在しないエネルギーバンド)に励起される。 このように,フォトンを同時に2個吸収することを2光子吸収,さらに一般に複数個吸収することを多光子吸収という。」(2頁左下欄6行ないし2頁右下欄1行)「この発明においては,多光子吸収を利用して,バンドギャップよりエネルギーが低く,本来,吸収の起こらない波長の光を透明材料に吸 収させることにより,透明材料の結合ボンドを切断したり,あるいは,発熱を利用して微小なクラックを透明材料内部に発生させるのである。」(2頁右下欄2行ないし7行)e 実施例「実施例1 透明材料として150×150×150mmの合成石英ガラス(OH 1300ppm含有)を使用し,高エネルギービームとしては,不安定共振器を用いたエキシマレーザ(KrF 248nmエネルギー密度50mJ/cm2・パルス,くり返し周波数150Hz)を使用し,焦点距離500mmのレンズで集光し,ミラーで反射させ,上面 を予め研磨したワークである厚板の合成石英ガラスの内部にエキシマ レーザビームの焦点を合せエキシマレーザをワークの上面から照射し,ワークを3r.p.mの回転数で回転させながら,焦点の位置を3mm/minの速さでワーク底面より引き上げることにより,直径30mmの円筒形の孔を開けた。 このとき,ワーク内部におけるエキシマレーザのビームの垂直方向 の焦点位置は,レンズの位置を移動させることによって変化させた。 また,ワーク内部での焦点位置の水平方向の移動は,ワーク自体を水平方向に移動させることによっておこなった。 切断に当っては,焦点位置は,ワークの底面から上方向に移動させた。」(3頁左上欄13行ないし3頁右上欄15行) f 効果「以上,述べてきたように,透明 動させることによっておこなった。 切断に当っては,焦点位置は,ワークの底面から上方向に移動させた。」(3頁左上欄13行ないし3頁右上欄15行) f 効果「以上,述べてきたように,透明材料の内部に焦点をあわせ,透明材料に対し吸収の無い高エネルギービーム,例えば,石英ガラスに対しエキシマレーザを照射すると,微細なクラックが透明材料の内部に発生する。これを連続させることによって透明材料を複雑な形状に切断 加工できる。 焦点をワークの内部に結ばせているのでワークの厚味に影響を受けず,自由な形状に加工できる。 焦点の移動をコンピュタにプログラムしておくことによって,円錐形,ひょうたん型など,その形状は制約を受けないといってよいもの である。」(3頁右上欄16行ないし3頁左下欄7行)イ前記アの記載事項によれば,乙25公報には,次のような開示があることが認められる。 石英ガラスなどの種々の透明材料を切断加工するための従来技術においては,直線状又は,円筒状の加工がおこなわれており,不定形の切断加工 には炭酸ガスレーザを使用したレーザ加工機等が使用されていたが,従来 技術においては,レーザ加工機等以外では複雑な加工ができなかったこと,レーザを使用した切断機においても溶断する厚さが「10mm程度」が限度であったとの課題が存在していた(前記(1)ア(イ)a及びb)。 「本発明」は,これらの課題を解決するために,「石英ガラスなどの透明材料を複雑な形状に切断加工することを目的とし,被加工物の厚味に影響 を受けず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている。」ものであり(前記(1)ア(イ)b),「透明材料の内部に焦点をあわせ,透明材料に対し吸収の無い高エネルギービーム」を照射することに ず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている。」ものであり(前記(1)ア(イ)b),「透明材料の内部に焦点をあわせ,透明材料に対し吸収の無い高エネルギービーム」を照射することによって,「微細なクラックが透明材料の内部に発生」し,「これを連続させることによって透明材料を複雑な形状に切断加工できる。」(前記(1)ア(イ)f)よう にするものである。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙25公報に記載された発明前記(1)によれば,乙25公報には次のような発明が記載されていることが認められる(以下,「乙25発明1’’」といい,被告主張に係る乙25発 明1及び原告主張に係る乙25発明1’と相違する構成要素には「構成a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成a’’:厚板の合成石英ガラスである加工対象物の内部に連続的なクラックを形成することによって,加工対象物を切断加工するレーザ加工装置であって, 構成b:前記加工対象物が載置される載置台と,構成c:パルスレーザ光を出射するレーザ光源と,構成d:前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置 で微小なクラックを形成させるレンズと, 構成e:隣り合う前記微小なクラック間の距離が略一定となるように前記加工対象物の切断予定ラインに沿って形成された複数の前記微小なクラックによって前記連続的なクラックを形成するために,前記パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を150H zとし,加工対象物の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿っ るために,前記パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数を150H zとし,加工対象物の移動速度を略一定にして,前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を回転させる機能を有する処理部と,を備え,構成f:前記加工対象物は厚板の合成石英ガラスであること構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 イ乙25発明1’’の認定についての補足説明被告は,乙25公報には,加工対象物の内部に「切断の起点となる連続的なクラックを形成する」構成が記載されていると主張する。 しかしながら,乙25公報には,「作用」として,「高エネルギービームの照射された個所に数十ミクロン以下の微小なクラックが発生する。高エ ネルギービームの照射位置を移動させて,透明材料に連続的なクラックを発生させることによって透明材料を切断加工する。」(前記(1)ア(イ)d),「効果」として,「透明材料の内部に焦点をあわせ,透明材料に対し吸収の無い高エネルギービーム…を照射すると,微細なクラックが透明材料の内部に発生する。これを連続させることによって透明材料を複雑な形状に切 断加工できる。」(前記(1)ア(イ)f)との記載がある。これらの記載からは,連続的なクラックを形成することによって切断加工を行うものと理解できるが,それ以上に,連続的なクラックを形成することによって切断加工がされる具体的な機序の説明はなく,連続的なクラックが進展してさらに大きなクラックが形成されることによって切断加工が実現されるといった記 載もない。 そうすると,前記(1)ア(イ)eの実施例において,「透明材料として150×150×150mmの合成石英ガラス(OH 1300ppm含有)」を加工対象物として,エキシ 載もない。 そうすると,前記(1)ア(イ)eの実施例において,「透明材料として150×150×150mmの合成石英ガラス(OH 1300ppm含有)」を加工対象物として,エキシマレーザを使用し,合成石英ガラスの内部にエキシマレーザビームの焦点を合せエキシマレーザをワークの上面から照射し,ワークを3r.p.mの回転数で回転させながら,焦点の位置を3m m/minの速さでワーク底面より引き上げることにより,直径30mmの円筒形の孔を開けたとの記載があることを考慮しても,乙25公報に記載された発明において,連続的なクラックの形成自体によって切断がされるのか,形成された連続的なクラックが起点となって切断がされるのかが明らかとはいえない。 したがって,乙25公報に記載された発明において,加工対象物の内部に「切断の起点となる連続的なクラックを形成する」構成が開示されているとはいえないから,構成a’’については,前記アのとおり認定するのが相当である。 ウ本件発明1-1と乙25発明1’’との対比 (ア) 一致点本件発明1-1と乙25発明1’’を対比すると,共に「加工対象物の内部に,改質領域を形成するレーザ加工装置であって,前記加工対象物が載置される載置台と,パルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射 されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で改質領域を形成させる集光用レンズと,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,加工対象物の切断予定ラインに沿って集 光点を ルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして,加工対象物の切断予定ラインに沿って集 光点を移動させる機能を有する制御部と,を備えることを特徴とするレ ーザ加工装置」である点で一致する。 (イ) 相違点本件発明1-1と乙25発明1’’を対比すると,以下の各点で相違すると認められる。 なお,相違点①は被告主張の相違点1に,相違点②は被告主張の相違 点2に,相違点③は被告主張の相違点3及び原告主張の相違点Aの一部に,相違点④は被告主張の相違点4に,相違点⑤は原告主張の相違点Aの一部に,それぞれ対応するものである。 (相違点①)本件発明1-1では,「パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光」を照 射するのに対し,乙25発明1’’は,パルス幅が不明なパルスレーザ光を照射している点。 (相違点②)本件発明1-1では,パルスレーザ光の集光点を「直線的に移動させる」のに対し,乙25発明1’’では,パルスレーザ光の集光点を「加工 対象物を回転させる」ことで移動させる点。 (相違点③)本件発明1-1では,加工対象物が「ウェハ状の」「シリコンウェハ」であるのに対し,乙25発明1’’では,加工対象物が「厚板の合成石英ガラス」である点。 (相違点④)本件発明1-1では,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙25発明1’’では「改質領域」が溶融処理領域であるか明らかでない点。 (相違点⑤)本件発明1-1では,加工対象物の内部の「改質領域」が「切断の起 点となる」のに対し,乙25発明1’’では,加工対象物の内部の「改質 領域」が「切断の起点となる」かどうかが不明である点。 -1では,加工対象物の内部の「改質領域」が「切断の起 点となる」のに対し,乙25発明1’’では,加工対象物の内部の「改質 領域」が「切断の起点となる」かどうかが不明である点。 エ相違点③に係る構成の容易想到性について事案に鑑み相違点③から判断する。 乙25公報に記載された発明は,従来の「石英ガラスなどの種々の透明材料を切断加工する方法」は,「複雑な加工には使用でき」ず「溶断する厚 さに対し限度があり」,「10mm程度が限界」であったとの課題を解決するために,「石英ガラスなどの透明材料を複雑な形状に切断加工することを目的とし,被加工物の厚味に影響を受けず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている。」ものであるが(前記(1)ア(イ)b),これに対して,シリコンウェハは,一般的に薄く,厚板から複雑な形状に 加工する必要があるものとは認められないから(弁論の全趣旨),乙25発明1’’が解決しようとした課題が当てはまらない。 そうすると,乙25公報の特許請求の範囲の記載において,加工対象物の厚みや切断の形状が特定されていないことを考慮しても(前記(1)ア(イ)a),乙25公報には,乙25発明1’’の加工対象物である「石英ガラス などの種々の透明材料」をシリコンウェハに置き換える動機付けとなり得るような記載はないというべきであり,その他,動機付けとなり得るような事情もうかがわれない。 したがって,相違点③に係る本件発明1-1の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは 認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙25発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはい 易に想到できた事項とは 認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙25発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明1-1について,乙25公報を主引用例とする進 歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められ ない。 (3) 本件発明1-2の進歩性について本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定したものであるから,乙25発明1’’と本件発明1-2を対比すると,少なくとも,前記(2)の相違点③が存在していると認められる。 そして,前記(2)エで説示したとおり,相違点③に係る本件発明1-2の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙25発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙25公報を主引用例 とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 12 争点3-6(本件発明1の乙59公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 乙59公報の記載事項等 ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙59公報には次のような記載がある(下記記載中に引用する【図1】及び【図2】については,別紙5引用文献の図面等参照)。 (ア) 【特許請求の範囲】【請求項1】 レーザ光源から出射したレーザビームを複数のレーザビ ームに分割する工程と,分割された複数のレーザビームを被加工部材の内部のある微小領域に集光することにより,前記被 求の範囲】【請求項1】 レーザ光源から出射したレーザビームを複数のレーザビ ームに分割する工程と,分割された複数のレーザビームを被加工部材の内部のある微小領域に集光することにより,前記被加工部材の集光部分を変質させてマーキングする工程とを有するマーキング方法。 【請求項2】 複数のレーザビームを得る工程と,前記複数のレーザビームのうち一部のレーザビームを,表と裏とを有する板状部材に,その 表側から入射させ,他のレーザビームを該板状部材に,その裏側から入 射させ,該板状部材の内部のある微小領域に集光することにより,前記被加工部材の集光部分を変質させてマーキングする工程とを有するマーキング方法。 【請求項3】 光軸に垂直な仮想平面上において,中心から遠ざかるに従って光強度が増大するような光強度分布を有するレーザビームを,被 加工部材の内部に集光し,前記被加工部材の集光部分を変質させてマーキングするマーキング方法。 【請求項4】 光軸に垂直な断面形状が円環状になるようなレーザビームを,被加工部材の内部に集光し,前記被加工部材の集光部分を変質させてマーキングするマーキング方法。 (イ) 【発明の詳細な説明】a 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,レーザを用いたマーキング方法及びマーキング装置に関し,特に薄板状の被加工部材にマーキングを行うのに適したマーキング方法及びマーキング装置に関する。 b 【0002】【従来の技術】レーザ光によるアブレーションを利用して,例えば透明ガラス基板等の被加工部材の表面にマーキングする方法が知られている。この方法によると,被加工部材の表面に微細な割れが発生し,その破片が製造ラインに混入する場合がある。また,マーキングされ た位置の 基板等の被加工部材の表面にマーキングする方法が知られている。この方法によると,被加工部材の表面に微細な割れが発生し,その破片が製造ラインに混入する場合がある。また,マーキングされ た位置の近傍に「デブリ」と称される付着物が堆積するため,この付着物を除去するための洗浄を行う必要がある。 【0003】被加工部材の表面に損傷を与えることなく,その内部にレーザ光を集光し,被加工部材の内部にマーキングを行う方法が,特開平3-124486号公報に開示されている。この方法によると, 被加工部材の表面が損傷を受けないため,微細な割れの発生,及びデ ブリの付着を防止できる。 c 【0004】【発明が解決しようとする課題】上述の特開平3-124486号公報に開示された方法によると,被加工部材の表面から0.5~2.5mm程度の深さの位置にマーキングを行うことができる。この方法を 用いて,例えば厚さ1mm以下の薄板状の被加工部材にマーキングすると,内部に発生したクラックが表面まで到達する場合がある。表面まで達したクラックは,微細なパーティクル発生の原因になる。 【0005】本発明の目的は,薄板状の被加工部材にマーキングする際にも,表面まで達するクラックの発生を抑制することができるマー キング方法及びマーキング装置を提供することである。 d 【0006】【課題を解決するための手段】本発明の一観点によると,レーザ光源から出射したレーザビームを複数のレーザビームに分割する工程と,分割された複数のレーザビームを被加工部材の内部のある微小領域に 集光することにより,前記被加工部材の集光部分を変質させてマーキングする工程とを有するマーキング方法が提供される。 e 【0020】【発明の実施の形態】図1(A)は,本 のある微小領域に 集光することにより,前記被加工部材の集光部分を変質させてマーキングする工程とを有するマーキング方法が提供される。 e 【0020】【発明の実施の形態】図1(A)は,本発明の第1の実施例によるマーキング装置の動作原理図を示す。 【0021】レーザ光源1から,1本のレーザビーム11が出射する。 レーザビーム11は,ビーム分割手段2に入射する。ビーム分割手段2は,レーザビーム11を2つの部分ビーム12Aと12Bとに分割する。分割された部分ビーム12Aと12Bは,集光光学系3に入射する。なお,部分ビーム12Aと12Bとの総エネルギの和が,レー ザビーム11のエネルギにほぼ等しくなり,エネルギロスの生じない ように分割することが好ましい。 【0022】集光光学系3に対向するように,保持台4が配置されている。保持台4の上に被加工部材10が載置される。集光光学系3は,部分ビーム12Aと12Bとを,被加工部材10の内部の微小領域13に集光する。微小領域13及びその近傍においてレーザ光の密度が 高くなる。このレーザ光の密度が,あるしきい値よりも高くなると,光学的非線型現象による吸収が起こると考えられる。この吸収に基づき,光学的損傷(OpticalDamage)あるいは光学的絶縁破壊(OpticalBreakdown)が生じ,被加工部材10の微小領域13が変質し,外部から視認し得るようになる。このようにして,被加工部材10の内部に マーキングすることができる。 【0023】微小領域13から発生する光が,光検出器5により観測される。光検出器5の観測結果が位置調節手段6に通知される。一般的に,被加工部材10の表面でアブレーションが生ずると,その内部で光学的損傷あるいは光学的絶縁破壊が 発生する光が,光検出器5により観測される。光検出器5の観測結果が位置調節手段6に通知される。一般的に,被加工部材10の表面でアブレーションが生ずると,その内部で光学的損傷あるいは光学的絶縁破壊が起きている場合に比べて,発 光強度が大きくなる。位置調節手段6は,光検出器5から得られた発光強度情報に基づいて,被加工部材10の表面でアブレーションが生じないように,集光光学系3と保持台4とのレーザビームの光軸方向に関する相対位置を調節する。このようにして,被加工部材10の表面に損傷を与えることなく,その内部にマーキングすることが可能に なる。 【0024】また,ビーム分割手段2と集光光学系3とを被加工部材10の表面に平行な面内で移動させることにより,面内の所望の位置にマーキングすることができる。 【0025】また,2本の部分ビーム12Aと12Bとに分割して微 小領域13に集光するため,1本のレーザビーム11をそのまま集光 する場合に比べて,被加工部材10の深さ方向に関するレーザ光の密度を,より微小な領域に集中させることができる。このため,変質する領域の深さ方向の長さを短くすることができ,変質領域が被加工部材10の表面まで達することを抑制することが可能になる。 【0026】被加工部材10の深さ方向に関して,より微小な領域に レーザビームを集光させるためには,集光光学系3の対物レンズとして,なるべく開口数の大きなレンズを用いることが好ましい。 【0027】なお,使用するレーザ光としては,被加工部材10との組み合わせにより適当なものを選択する。例えば,石英ガラスにマーキングする場合には,石英ガラスに対して透明な波長領域,すなわち 赤外線領域,可視光線領域,もしくは紫外線領域の波長を有するレーザ光を わせにより適当なものを選択する。例えば,石英ガラスにマーキングする場合には,石英ガラスに対して透明な波長領域,すなわち 赤外線領域,可視光線領域,もしくは紫外線領域の波長を有するレーザ光を使用することができる。また,一般的な板ガラスにマーキングする場合には,板ガラスに対して透明な波長領域,すなわち赤外線領域もしくは可視光線領域の波長を有するレーザ光を使用することができる。また,ガラス以外にも,例えばシリコン基板等にマーキングし たい場合には,シリコン基板に対して透明な波長領域のレーザ光を用いればよい。 【0028】レーザ光源1としては,例えばYAGレーザ,YLFレーザ等の固体レーザ装置を用いるのが便利であろう。例えば,赤外線領域の波長を有するレーザ光を出力するYAGレーザ装置を用いた場 合,波長変換器を用いて波長を2倍にすれば可視光線領域の波長を有するレーザ光を得ることができる。また,4倍波とすれば,紫外線領域の波長を有するレーザ光を得ることができる。使用するレーザ光の波長が短くなるほど,マーキングすべき位置の空間的解像度を高くすることができる。 【0029】さらに,レーザ光源1として,パルスレーザ装置を用い ることにより,被加工部材10のマーキング部近傍の温度上昇を抑制することができる。このため,温度上昇による悪影響を回避し,マーキングされる深さ方向の位置を均一に揃えることが可能になる。なお,パルス幅の短いものを使用することが好ましい。これは,熱的効果の大きさがパルス幅の平方根に比例するためである。具体的には,1ナ ノ秒以下のパルス幅で発振するレーザ光源を用いることが好ましい。 【0036】次に,図2を参照して,第2の実施例について説明する。 図2(A)に示すように,第2の実施例にお る。具体的には,1ナ ノ秒以下のパルス幅で発振するレーザ光源を用いることが好ましい。 【0036】次に,図2を参照して,第2の実施例について説明する。 図2(A)に示すように,第2の実施例においては,図1(A)のビーム分割手段2の代わりに,ビーム整形手段20を使用している。その他の構成は図1(A)の場合と同様である。 【0039】レーザビーム11をそのまま集光すると,光軸方向に関して比較的長い領域において,その光軸近傍の光強度がしきい値を超える。一方,レーザビーム21のように,その光軸近傍において光強度の弱いビームを集光する場合には,光軸方向に関してより短い領域でのみしきい値を超えるように制御することが容易になる。 【0040】このため,被加工部材10の厚さ方向に関して,より短い領域にのみマーキングすることができ,クラックの表面への到達を抑制することが可能になる。 【0041】被加工部材10の深さ方向に関して,より微小な領域にレーザビームを集光させるためには,集光光学系3の対物レンズとし て,なるべく開口数の大きなレンズを用いることが好ましい。 f 【0071】【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,被加工部材の内部に局所的にマーキングすることができる。マーキングによるクラックの発生が表面まで到達しないようにできるため,被加工部材の破 片等が原因となるゴミの発生を抑制することができる。 イ前記アの記載事項によれば,乙59公報には,次のような開示があることが認められる。 マーキングに関する従来の技術では,被加工部材の表面に損傷を生じる問題があり,レーザ光を被加工部材の内部に集光してその内部にマーキングを行う方法においても,薄板状の被加工部材にマーキングをすると内部 キングに関する従来の技術では,被加工部材の表面に損傷を生じる問題があり,レーザ光を被加工部材の内部に集光してその内部にマーキングを行う方法においても,薄板状の被加工部材にマーキングをすると内部 に発生したクラックが表面まで到達してしまうといった問題があった(【0002】ないし【0004】)。 「本発明」は,この課題を解決するために,「薄板状の被加工部材にマーキングする際にも,表面まで達するクラックの発生を制御することができるマーキング方法及びマーキング装置を提供すること」を目的とするもの である(【0005】)。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙59公報に記載された発明前記(1)によれば,乙59公報には原告が主張する乙59発明1’が記載されている(ただし,構成e’については,その末尾に「を備え,」を加え る。)と認められる。 イ乙59発明1’の認定についての補足説明被告は,乙59公報には,パルスレーザ光の照射によって,パルスレーザ光の集光点の位置で,マーキングとなる「微少亀裂」を形成させることが開示されていると主張し,また,この「微少亀裂」が本件発明1の「改 質領域」に相当する旨主張する。 乙59公報においては,「集光光学系3は,部分ビーム12Aと12Bとを,被加工部材10の内部の微小領域13に集光する。微小領域13及びその近傍においてレーザ光の密度が高くなる。このレーザ光の密度が,あるしきい値よりも高くなると,光学的非線型現象による吸収が起こると考 えられる。この吸収に基づき,光学的損傷(OpticalDamage)あるいは光学 的絶縁破壊(OpticalBreakdown)が生じ,被加工部材10の微小領域13が変質し,外部から視認し得るようになる。このように 損傷(OpticalDamage)あるいは光学 的絶縁破壊(OpticalBreakdown)が生じ,被加工部材10の微小領域13が変質し,外部から視認し得るようになる。このようにして,被加工部材10の内部にマーキングすることができる。」(【0022】)との記載があり,その他にも,「集光部分を変質されてマーキングする」との記載(特許請求の範囲の【請求項1】ないし【請求項4】)や「変質領域」との記載(【0 025】)がある。これらの記載からは,レーザ光の照射によって,集光点の微小領域を「光学的損傷」ないし「光学的絶縁破壊」によって「変質」するとの加工を行うことが開示されていると理解できる。 そして,乙59公報には,「被加工部材10の厚さ方向に関して,より短い領域にのみマーキングすることができ,クラックの表面への到達を抑制 することが可能になる。」(【0040】),「マーキングによるクラックの発生が表面まで到達しないようにできる」(【0071】)との記載があり,これらの記載からは,乙59公報に記載された方法によるマーキングの過程で加工対象物の内部にクラック(亀裂)が生じることがうかがわれるものの,上記の「変質」した領域が「微小亀裂」であることを直接的に示す記 載はない。 したがって,乙59公報に記載された発明において,パルスレーザ光の照射によって,パルスレーザ光の集光点の位置で,マーキングとなる「微少亀裂」を形成させることが開示されているはいえないから,構成a’,d’及びe’については,原告が主張する乙59発明1’のとおり認定するの が相当である。 ウ本件発明1-1と乙59発明1’との対比(ア) 一致点本件発明1-1と乙59発明1’を対比すると,共に「ウェハ状の加工対象物の内部に,加工 1’のとおり認定するの が相当である。 ウ本件発明1-1と乙59発明1’との対比(ア) 一致点本件発明1-1と乙59発明1’を対比すると,共に「ウェハ状の加工対象物の内部に,加工領域を形成するレーザ加工装置であって,前記 加工対象物が載置される載置台と,パルス幅が1μs以下のパルスレー ザ光を出射するレーザ光源と,前記載置台に載置された前記加工対象物に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で加工領域を形成させる集光用レンズと,前記加工対象物の予定ラインに沿って前記加工領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記 加工対象物の内部に位置させた状態で,前記予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と,を備え,前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置」である点で一致する。 (イ) 相違点 本件発明1-1と乙59発明1’を対比すると,以下の各点で相違すると認められる。 なお,相違点①は被告主張の相違点1及び4並びに原告主張の相違点Aに,相違点②は被告主張の相違点2に,それぞれ対応するものである。 (相違点①) 本件発明1-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に「切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙59発明1’のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に「マーキングとなる光学的損傷を形成する」ものである点。 (相違点②) 本件発明1-1では,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,集光点を直線的に移動させる 本件発明1-1では,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,集光点を直線的に移動させるのに対し,乙59発明1’では,そのように集光点を移動させる構成を備えるか明らかでない点。 (ウ) 相違点についての補足説明 被告は,本件発明1-1と乙59公報に記載された発明(被告主張の乙59発明1)との間には,相違点3(本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙59発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないので,レーザによる加工領域が多光子吸収によって形成された領域である否かが,本件発明1-1と乙59公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえず,相違点3が存在する とはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ相違点①に係る構成の容易想到性について被告は,相違点①について,一般に切断とマーキングとが近接した技術分野であり,本件発明1-1の切断方法が,加工対象物の内部に切断の起 点を設け,表面に不必要な割れを発生しないようにするという点で,乙59発明1’のマーキング方法と共通する部分があるから,当業者の適宜設計可能な事項の範囲内にあるものとして,乙59発明1’に接した当業者は,乙59発明1’の「マーキング」に代えて本件発明1-1の「切断」をしようと容易に想到できると主張する。 しかしながら 計可能な事項の範囲内にあるものとして,乙59発明1’に接した当業者は,乙59発明1’の「マーキング」に代えて本件発明1-1の「切断」をしようと容易に想到できると主張する。 しかしながら,前記(1)のとおり,乙59発明1’は,マーキングに関する従来の技術では,被加工部材の表面に損傷を生じる問題があり,レーザ光を被加工部材の内部に集光してその内部にマーキングを行う方法においても,薄板状の被加工部材にマーキングをすると内部に発生したクラックが表面まで到達してしまうといった課題があること(【0002】ないし 【0004】)を踏まえ,この課題を解決するために,「薄板状の被加工部 材にマーキングする際にも,表面まで達するクラックの発生を制御することができるマーキング方法及びマーキング装置を提供すること」を目的とするものである(【0005】)。そして,乙59発明1’の実施の形態としても,レーザ光の照射による被加工部材内部の「変質」した領域ないし「クラック」が被加工部材の表面まで達することを避けるための構成が示 されており(【0023】,【0025】,【0026】,【0029】,【0040】,【0041】),発明の効果としても,マーキングによるクラックの発生が表面まで到達しないことが示されている(【0071】)。 このように,乙59発明1’は,マーキングを目的としたものであって,被加工部材を切断することを前提としておらず,むしろ,変質領域ないし クラックが被加工部材の表面まで達することを避けるという,被加工部材を切断するのとは逆方向の技術的思想を有するものということができる。 そうすると,被告が指摘する上記の点を考慮しても,乙59発明1’に接した当業者が,被加工部材のマーキングに用いられていた乙59発明1’の するのとは逆方向の技術的思想を有するものということができる。 そうすると,被告が指摘する上記の点を考慮しても,乙59発明1’に接した当業者が,被加工部材のマーキングに用いられていた乙59発明1’の方法を被加工部材の切断に転用することが動機付けられるものではない というべきであり,その他,このような動機付けとなり得る事情はうかがわれないから,乙59発明1’のマーキングとなる光学的損傷を形成する構成を変更して本件発明1-1の切断を行うような構成を採用するということが設計事項であるということはできない。 したがって,相違点①に係る本件発明1-1の構成を採用することは, 本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙59発明1’に基づいて容易に発明をすることができたものとは いえないから,本件発明1-1について,乙59公報を主引用例とする進 歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (3) 本件発明1-2の進歩性について本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に,限定したものであるから,乙59発明1’と本件発明1-2を対比すると,少なく とも,前記(2)の相違点①と同様の相違点が存在していると認められる。 そして,前記(2)エで説示したとおり,相違点①に係る本件発明1-2の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙59発明1’に基づいて容易に発明をすること ができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙59 到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙59発明1’に基づいて容易に発明をすること ができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙59公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 13 争点3-7(本件発明1の乙60公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 乙60公報の記載事項等ア本件特許1の原出願日及び本件特許1の優先日より前に頒布された刊行物である乙60公報には次のような記載がある(日本語訳のみを掲記する。 頁数等は乙60公報原文の本文(乙60公報の3枚目から始まるもの)における頁数等である。)。 (ア) 発明の背景「出願人が知る限りでは,マーキングやイメージ形成技術とは対照的に,切断や穿孔といった産業への応用に用いられている真のマテリアルプロセシング技術において,内部光学破壊を用いることを記載した先行技術はない。ここでいう「マテリアルプロセシング」という用語の定義は, 産業用レーザの用語法(溶接も含む。)において通常用いられており,本 特許出願の全体にわたって前提とされている。したがって,適当な物質における,光学的な内部破壊現象を,産業その他へ応用するために,新しい方法が深刻に求められている。」(3頁11行ないし18行)(イ) 発明の要旨a「本発明は,光学的に透明な物質の内部光学破壊現象を用いた,マテ リアルプロセシングの新しい方法を提供する。この現象は,オーダー(桁)が10 ピコ秒又はより短い,超短パルスを出射するレーザからのビームの焦点が,高品質の対物レンズを用いて,加工される物質の内部に合わせられ,その結果,レーザ波長の回折限界に近い焦点スポット (桁)が10 ピコ秒又はより短い,超短パルスを出射するレーザからのビームの焦点が,高品質の対物レンズを用いて,加工される物質の内部に合わせられ,その結果,レーザ波長の回折限界に近い焦点スポットが物質内で得られたときに起こる。そのように短く高いピーク強度 のパルスは,例えば時間方向に圧縮された後方誘導ブリユアン散乱(SBS)Nd:YAG レーザで得られる。オーダー(桁)が1013 watts/cm2のように高いパワー密度では,パワーに対する線形応答の透過限界が物質内で超えられて,物質がレーザ光を強く吸収するため,物質は光学破壊を受ける。パワー強度が著しく高いため,物質の原子及び分子の 結合は分断され,物質はほぼ瞬時に,その最も基礎的な要素に,一般には非常にイオン化された構成原子に分解する。」(3頁23行ないし4頁10行)b「光学的な内部破壊現象を用いることにより,従来利用可能だった方式では実行できなかった,数々のプロセシング技術が可能となる。 したがって,本発明の好適な実施形態によれば,超微細解像度のマーキング又は像形成を,透明な試料の内部に適用できる方法が提供される。マーキング若しくは像は,物質内部の,ある平面内で形成することも,真の3次元的な効果を伴って設けることも可能である。例えば,R.M.Clement らの米国特許5,206,496 号に記載されているような, 従来利用可能であった技術で用いられている,オーダー(桁)10ナ ノ秒といった,より長いパルス長を用いると,付随的に,集光点において物質が局所的に微小加熱されることから,マイクロクラックが生じる。したがって,マークの大きさは,これに応じて大きくなる。本発明の方法によれば,パルスの持続時間が非常に短い(好ましくは2~3桁短い て物質が局所的に微小加熱されることから,マイクロクラックが生じる。したがって,マークの大きさは,これに応じて大きくなる。本発明の方法によれば,パルスの持続時間が非常に短い(好ましくは2~3桁短い)ため,1パルス当たりの総エネルギーは大幅に減少し, 物質に作用する唯一の物理的効果は,光学的内部破壊となる。この結果,回折限界の集光点のサイズと比べて,さほど大きくないマークサイズが得られる。したがって,本発明の方法は,マーキングが肉眼では見えないことが重要である,ダイヤモンドのマーキングにおいて特に有利である。」(4頁11行ないし29行) c「本発明のまた別の好適な実施形態によれば,透明物質に超微細孔を穿孔する方法がさらに提供される。平行孔を穿孔するための従来技術の方法は…ウェハの遠い側から近い側に向かって(遠い,近いは,レーザビームの照射面に対して)逆向きに穿孔することで,わずかしかテーパが作られない状態で穿孔できる。…。 本発明の好適な方法によれば,穿孔する物質の内部光学破壊効果を用いて,逆穿孔により,非常に微細な,レーザ穿孔ビームの集光点と同じオーダー(桁)の大きさの直径を有する孔を形成することが可能になる。さらに,本発明の方法を用い,蛇行経路のような非直線的な孔を含む,任意の方向に向かう孔や溝を,穿孔することが可能である。」 (6頁4行ないし23行)d「本発明のまた別の好適な実施例によれば,さらに透明な物質の超微細切断のための方法が提供される。この方法は,上で挙げた穿孔の実施例に記述された方法に類似してよいが,互いに緊密に離間した複数の孔を穿孔することで,連続的な切れ目の溝を形成する,さらなるス テップを含む。 別のやり方として,好ましくは,集光されたレーザビームが作られて いが,互いに緊密に離間した複数の孔を穿孔することで,連続的な切れ目の溝を形成する,さらなるス テップを含む。 別のやり方として,好ましくは,集光されたレーザビームが作られて,切断する材料を多数回横断する。最初の横断は材料の表面で行われる。そして,集光されたレーザビームは,少しずつ材料内部へと降りて,鋸運動を行う。その結果,完全に切れた溝ができる。所望であれば,この溝は,まっすぐ厚さ方向に延長して材料を貫通することも 可能である。 本発明のまた別の好適な実施例によれば,レーザ光に対して実質的に透明な物質にマテリアルプロセシングを行う方法が提供される。この方法は,レーザ光の複数のパルス(この複数のパルスは,物質が光学破壊を受けるようなものである)の焦点を,物質の内部に合わせる ステップと,レーザ光の複数のパルスの焦点を,予め決められた経路に沿って物質に対し相対移動させるステップと,を含む。」(6頁24行ないし7頁10行)e「本発明のまた別の好適な実施例によれば,上述の方法において,物質がガラス,プラスチック,宝石,または半導体であるような方法が 提供される。」(7頁21行ないし23行)f「本発明のまた別の好適な実施例によれば,上述の方法において,レーザ光の複数のパルスの焦点の,予め決められた経路に沿った物質に対する相対移動が,レーザ光の複数のパルスの出射と,予め決められたやり方で同期される。」(7頁30行ないし8頁4行) g「さらに,本発明のまた別の好適な実施例によれば,レーザ光に対して実質的に透明な物質の試料を貫通する孔を穿孔する方法が提供され,該方法は,レーザ光のパルスを,物質内部の,レーザ照射面から遠い側の試料表面に近い場所に集光させるステップと(該パルスは,幅が100ピ 実質的に透明な物質の試料を貫通する孔を穿孔する方法が提供され,該方法は,レーザ光のパルスを,物質内部の,レーザ照射面から遠い側の試料表面に近い場所に集光させるステップと(該パルスは,幅が100ピコ秒より短く,試料の物質が光学破壊されることにより,試 料の厚さより短く,レーザ照射面から遠い側の試料表面に開口する第 一の孔が形成されるようなものである。),レーザ光のパルスの集光点を,予め決められた距離だけレーザ照射面に向かって逆向きに移動させて,物質の光学破壊により第二の孔を形成するステップ(予め決められた距離は,第二の孔が第一の孔にぎりぎり入り込むようにとる。)と,前のステップを繰り返すことにより,第一及び第二の孔が,試料 を厚さ方向に貫通する,一つの連続的な孔を形成するようにするステップの,複数のステップからなる。 本発明のまた別の好適な実施例によれば,上述の方法において,物質がガラス,プラスチック,半導体,又は宝石であるような方法が提供される。」(9頁20行ないし10頁8行) (ウ) 好適な実施形態の説明a 「本発明のまた別の好適な実施形態によれば,可視光に対して不透明であるが近赤外においては透明な物質の内部に,近赤外光線を用いて読み取ることができる非常に高い解像度の識別マークを用いてマークすることができる方法が記述される。この方法は,先の実施形態の 方法に記載したような超短パルス幅レーザを,マークする試料の内部に集光するステップと,これに引き続く,試料とレーザビームとを同期させてレーザーパルスレートで移動させ,所望のマークを形成するステップとからなる。 この方法は特に半導体産業で有用である。半導体産業では,シリコ ンやヒ化ガリウムのウェハに,非常に高分解能の識別マークを付し, レートで移動させ,所望のマークを形成するステップとからなる。 この方法は特に半導体産業で有用である。半導体産業では,シリコ ンやヒ化ガリウムのウェハに,非常に高分解能の識別マークを付し,かつ,このマークを,ウェハ表面には付さないことが必要である。ウェハ表面だと,表面にマークするプロセスが,多くのウェハプロセス段階で要求される清浄度のレベルにとって有害となるからである。フォトレジストとエッチング手順を用いる通常のマイクロリソグラフィ 法でマークを設けることはできるが,内部レーザマーキング法はきわ めて高速であり,マイクロリソグラフィ法とは異なり,単純な1段階のプロセスである。さらに本発明のこの実施形態で説明したような内部マーキング方法を用いれば,ウェハの表面が余分な形状で乱されることがなくなる。本発明の本実施形態のこの利点は,マーキングをウェハレベルではなくチップレベルで設けなければならない場合に,さ らに重要になる。チップ面積は,非常に高価な産物であるからである。 およそ1.1μmからほぼ5μmの波長まで実質的に透明なシリコンの場合,波長1.9μmでパルスを出射するレーザが,この実施例の方法を実装するには適している。」(12頁18行ないし13頁12行)b 「本発明のまた別の好適な実施例によるさらなる方法は,内部光学 破壊効果を用いて,極めて平行な複数の超微細孔を,逆向きに穿孔する手順によって,透明物質試料に穿孔する方法である。この方法は,まず上述の第一の好適な実施例に記述したような超短パルス幅レーザの焦点を,穿孔される試料の,遠い方の表面より内側に合わせるステップ,及び所定数のパルスを打つステップからなる。発生した内部光 学破壊により,狭いボイドまたは孔が穿孔され,デブリが前方に,ビー 焦点を,穿孔される試料の,遠い方の表面より内側に合わせるステップ,及び所定数のパルスを打つステップからなる。発生した内部光 学破壊により,狭いボイドまたは孔が穿孔され,デブリが前方に,ビーム方向に,試料から離れて排出される。…次のステップでは,焦点の位置が,物質によるが,0.1 - 10μm の距離だけ後方に移動され,次の一連のパルスが打たれる。これによりボイドが,既に存在するボイドと結合されるように拡張される。このようにして,光学破壊相互 作用によって試料に完全な孔が穿孔される。」(13頁13行ないし13頁30行)c 「本発明のまた別の好適な実施形態によれば,そのような透明物質の微視的切断方法が提供され,これにより,多数の孔が互いに十分に緊密に離間して穿孔され,隣接する孔は互いに入り込み,その結果, 所定の経路に沿った連続切断溝が形成される。 別のやり方として,好ましくは,集光されたレーザビームが作られて,予め決められた経路に沿って,切断する材料を多数回横断する。 最初の横断は材料の表面で行われる。そして,集光されたレーザビームは,少しずつ材料内部へと降りて,鋸運動を行う。その結果,完全に切れた溝ができる。所望であれば,この溝は,まっすぐ厚さ方向に 延長して材料を貫通することも可能である。 別のやり方として,試料の遠い側の表面で切断を開始し,鋸運動で形成する溝を,試料を縦断するよう,レーザ照射面に向かって上昇させることもできる。本発明によるこれらの切断方法は,除去される材料を最小限にする,ダイヤモンドのプロセシングや,極めて微細で滑 らかな切れ目を切り出す必要のある,半導体産業において,特に利点を有する。これらの方法を使用すると,0.2mmの厚さのガラスで10μm未満の幅の滑らかな ンドのプロセシングや,極めて微細で滑 らかな切れ目を切り出す必要のある,半導体産業において,特に利点を有する。これらの方法を使用すると,0.2mmの厚さのガラスで10μm未満の幅の滑らかな切断が可能になる。」(14頁21行ないし15頁8行)(エ) 特許請求の範囲 「【請求項1】 レーザー光に対し実質的に透明な物質にマテリアルプロセシングを行う方法であって,前記レーザ光のパルスを前記物質の内部に集光し,前記パルスは,該物質が光学破壊を起こすものであるステップと,前記レーザ光の前記パルスの,予め決められた経路に沿った,前記物質 に対する相対移動を行うステップと,を含む方法。 【請求項2】前記マテリアルプロセシングは穿孔プロセスである,請求項1に記載の方法。 【請求項3】前記マテリアルプロセシングはマーキングプロセスである, 請求項1に記載の方法。 【請求項4】前記マテリアルプロセシングは切断プロセスである,請求項1に記載の方法。 …」イ前記アの記載事項によれば,乙60公報には,次のような開示があることが認められる。 「本発明」は,光学的に透明な物質の内部光学破壊現象を用いた,マテリアルプロセシングの新しい方法を提供するものであり,この現象は,オーダー(桁)が10 ピコ秒又はより短い,超短パルスを出射するレーザからのビームの焦点が,高品質の対物レンズを用いて,加工される物質の内部に合わせられ,焦点スポットが物質内で得られたときに起こるものであり, マテリアルプロセシングの方法としては,マーキングプロセス,穿孔プロセス,切断プロセスが存在する(前記ア(ア),(イ)a,(エ)請求項1ないし4)。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙60公報に記載され グの方法としては,マーキングプロセス,穿孔プロセス,切断プロセスが存在する(前記ア(ア),(イ)a,(エ)請求項1ないし4)。 (2) 本件発明1-1の進歩性についてア乙60公報に記載された発明 前記(1)によれば,乙60公報には,本件発明1と対比すべき構成として,次のような開示があることが認められる(以下,「乙60発明1’’」といい,被告主張に係る乙60発明1及び原告主張の乙60発明1’と相違する構成要素には「構成a’’」のように,「’’」を付した。)。 構成a’:ウェハ状の加工対象物の内部にマーキングとなる光学破壊群を形 成するレーザ加工装置であって,構成b:前記加工対象物はレーザ光に対して,相対移動可能であり,構成c:パルス幅が10ps以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と構成d:前記加工対象物の内部に,前記レーザ光源から出射されたパルス レーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そ のパルスレーザ光の集光点の位置で光学破壊を形成させる対物レンズと,構成e’’:前記加工対象物の予め決められた経路に沿って形成された複数の光学破壊によって光学破壊群を形成するために,パルスレーザ光の集光点を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記予 め決められた経路に沿ってパルスレーザ光の集光点を相対移動させる機能を有する制御部と,構成f:前記加工対象物はシリコンウェハであること構成g:を特徴とするレーザ加工装置。 イ乙60発明1’’の認定についての補足説明 被告は,乙60公報には,加工対象物の内部に「切断の起点となる光学破壊群を形成する」ことが開示されていると主張する。 前記(1)のとおり,乙60公報には,パルスレーザによる内部光学破壊現象を用いた 被告は,乙60公報には,加工対象物の内部に「切断の起点となる光学破壊群を形成する」ことが開示されていると主張する。 前記(1)のとおり,乙60公報には,パルスレーザによる内部光学破壊現象を用いたマテリアルプロセシングに関する複数の発明が開示されており,加工対象物の表面ではなく内部を加工する方法として,パルスレーザ光に よって透明試料の内部に超微細解像度のマーキングをする方法(前記(1)ア(イ)b,同(ウ)a)が開示されているが,これは,加工対象物の内部に「切断の起点」を設けるものとはいえない。 他方で,乙60公報においてパルスレーザによる加工対象物の「切断」加工として具体的に開示されている内容は,集光されたレーザビームを予 め決められた経路に沿って切断する材料を多数回横断させ,レーザ照射によって試料の表面に設けた溝を鋸運動によって少しずつ物質内部に進ませることで,透明な物質の超微細切断をする方法(前記(1)ア(イ)d,同(ウ)c)であるが,これは,レーザ加工によって加工対象物の内部に切断の起点を設けるものとはいえない。また,乙60公報において,パルスレーザによ る「穿孔」加工として具体的に開示されている内容は,逆穿孔の方法で, 透明試料にレーザから遠い方の表面から近い方の表面まで超微細孔を穿孔する方法(前記(1)ア(イ)c,同(ウ)b)であるが,これは,レーザ加工によって生じるボイドを連続的に結合させることで,試料に孔を穿孔するものであり,これについても,レーザ加工によって加工対象物の内部に切断の起点を設けるものとはいえない。 したがって,乙60公報に,加工対象物の内部に「切断の起点となる光学破壊群を形成する」ことが開示されているとは認められず,よって,乙60公報には,被告が主張する乙60発明 ものとはいえない。 したがって,乙60公報に,加工対象物の内部に「切断の起点となる光学破壊群を形成する」ことが開示されているとは認められず,よって,乙60公報には,被告が主張する乙60発明1が開示されているとはいえないから,乙60公報に開示されている発明のうち,パルスレーザ光によって表面ではなく内部を加工する発明としては,前記アの乙60発明1’’を 認定するのが相当である。 ウ本件発明1-1と乙60発明1’’との対比(ア) 一致点本件発明1-1と乙60発明1’’を対比すると,共に「ウェハ状の加工対象物の内部に,加工領域を形成するレーザ加工装置であって,パル ス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,前記加工対象物に,前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光を集光し,1パルスのパルスレーザ光の照射により,そのパルスレーザ光の集光点の位置で加工領域を形成させる集光用レンズと,前記加工対象物の予定ラインに沿って前記加工領域を形成するために,パルスレーザ光の集光点 を前記加工対象物の内部に位置させた状態で,前記予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と,を備え,前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置」である点で一致する。 (イ) 相違点 本件発明1-1と乙60発明1’’を対比すると,以下の各点で相違す ると認められる。 なお,相違点①は被告主張の相違点1に,相違点②は被告主張の相違点3及び原告主張の相違点Aに,相違点③は被告主張の相違点4にそれぞれ対応するものである。 (相違点①) 本件発明1-1では,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパル ③は被告主張の相違点4にそれぞれ対応するものである。 (相違点①) 本件発明1-1では,「隣り合う前記改質スポット間の距離が略一定となるように」,「パルスレーザ光の繰り返し周波数及びパルスレーザ光の集光点の移動速度を略一定にして」,「集光点を移動させる」のに対し,乙60発明1’’では,そのようにパルスレーザ光の集光点を移動させる構成を備えるか明らかでない点。 (相違点②)本件発明1-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙60発明1’’のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「マーキングとなる光学破壊群を形成する」ものである点。 (相違点③)本件発明1-1は,「加工対象物が載置される載置台」を備えるのに対し,乙60発明1’’では,そのような構成を備えるか明らかでない点。 (ウ) 相違点についての補足説明a 被告は,本件発明1-1と乙60公報に記載された発明(被告主張 の乙60発明1)との間に相違点2(本件発明1-1は,「改質領域」が多光子吸収によって形成された領域であるのに対し,乙60発明1では,改質領域がどのようにして形成され,どのような形状なのか明らかでない点)が存在すると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質 領域」ないし「改質スポット」とは,「多光子吸収が支配的に寄与して 形成される」ものに限定されないので,レーザによる加工領域が多光子吸収によって形成された領域である否かが,本件発明1-1と乙60公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえず,相違点2が存在するとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 b 被告は,本件発 かが,本件発明1-1と乙60公報に記載された発明との間の相違点となるとはいえず,相違点2が存在するとはいえない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 b 被告は,本件発明1-1と乙60公報に記載された発明(被告主張の乙60発明1)との間に相違点3(本件発明1-1は,「改質領域」が溶融処理領域であるのに対し,乙60発明1では,「改質領域」が溶融しているか否か明確ではない点)が存在すると主張するところ,乙60発明1’’の「マーキングとなる光学的損傷」は,被告が主張する とおり,溶融処理領域であるかは明らかでなく,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」に相当するものであるかも明らかではない。 したがって,原告主張の相違点A(本件発明1-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「切断の起点となる改質領域を形成する」 ものであるのに対し,乙60発明1’のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「マーキングとなる光学的損傷を形成する」ものであって,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点)と併せて,相違点②のように認定するのが相当である。 エ相違点②に係る構成の容易想到性について 事案に鑑み相違点②から判断する。 被告は,乙60公報の特許請求の範囲には,請求項3及び4において,乙60公報に記載された発明が,マーキング方法としても,切断方法としても利用可能である旨が記載されているから,切断の技術とマーキングの技術の類似性に鑑みれば,切断の技術を模索している当業者が乙60公報 に接した場合,乙60発明1の「マーキング」に代えて「切断」をしよう と容易に想到できると主張する。 前記イのとおり,乙60公報には,パルスレーザによる内部光学破壊現象を用いたマテリ に接した場合,乙60発明1の「マーキング」に代えて「切断」をしよう と容易に想到できると主張する。 前記イのとおり,乙60公報には,パルスレーザによる内部光学破壊現象を用いたマテリアルプロセシングに関する複数の発明が開示されており,「マーキング」のほか,「切断」及び「穿孔」の加工をする具体的な発明が開示されている。 しかしながら,そこで開示されている「切断」ないし「穿孔」に関する発明の加工方法は,それぞれ,レーザ照射によって試料の表面に設けた溝を鋸運動によって少しずつ物質内部に進ませることで,透明な物質の超微細切断をする方法(前記(1)ア(イ)d,同(ウ)c),及び,逆穿孔の方法で,透明試料にレーザから遠い方の表面から近い方の表面まで超微細孔を穿孔 する方法(前記(1)ア(イ)c,同(ウ)b)であり,加工対象物の内部に「切断の起点」を設けるものではなく,乙60発明1’’として認定した加工対象物の内部に「マーキング」をする発明とは大きく構成が異なるというべきである。 そうすると,乙60公報に接した当業者が,乙60公報の記載から,乙 60発明1’’を加工対象物の内部に「切断の起点」を設ける発明に変更しようと動機付けられるとはいえず,このような変更をすることにつき,設計事項として容易に想到できるものともいえない。 したがって,相違点②に係る本件発明1-1の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは 認められない。 オ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙60発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明1-1について,乙60公報を主引用例とする進 歩性欠如の無効理由( 判断するまでもなく,本件発明1-1は,乙60発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明1-1について,乙60公報を主引用例とする進 歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められ ない。 (3) 本件発明1-2の進歩性について本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定したものであるから,乙60発明1’’と本件発明1-2を対比すると,少なくとも,前記(2)の相違点②が存在していると認められる。 そして,前記(2)エで説示したとおり,相違点②に係る本件発明1-2の構成を採用することは,本件特許1の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-2は,乙60発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明1-2について,乙60公報を主引用例 とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 14 争点3-8(本件発明1の明確性要件違反)について被告は,本件発明1-1(本件特許1の請求項1)における「改質領域」及び「改質スポット」との記載について,多光子吸収によって形成されたものに 限定されるか否か,溶融処理領域に限定されるか否かが,それぞれ不明確であると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(ウ)及び(エ)のとおり,本件発明1の特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載からは,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」は「溶融処理領域」を指し,「多光子吸収が支配的に寄与し て形成される」ものに限定されないことは明確であるから,この点の記載に明確性要件違反の無効理由(特許法1 質領域」ないし「改質スポット」は「溶融処理領域」を指し,「多光子吸収が支配的に寄与し て形成される」ものに限定されないことは明確であるから,この点の記載に明確性要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項2号)は認められない。 同様に,請求項1を引用する本件発明1-2についても,明確性要件違反の無効理由は認められない。 争点3-9(本件発明1のサポート要件違反)について (1) 本件発明1-1についてア 「改質領域」及び「改質スポット」が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない点について(ア) 本件明細書1に記載された本件発明1-1の課題は,前記1(2)アのとおり,「加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつそ の表面が溶融しないレーザ加工装置を提供する」(【0005】)ことにある。 (イ) 本件明細書1には,この課題を解決する手段として,前記1(2)イのとおり,本件発明1-1に相当する構成を採用することで,ウェハ状の加工対象物であるシリコンウェハの内部に切断予定ラインに沿った複数 の改質スポットによって加工対象物の切断の起点となる改質領域を形成すること(【0006】),加工対象物の内部に形成された改質領域を切断の起点として,加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れや,溶融を発生させずに切断を可能とするとの効果を有すること(【0007】ないし【0010】)が記載されており,また,改質領域 の形成実験として,加工対象物であるシリコンウェハの内部に改質領域である溶融処理領域が形成されたことが記載されている(【0025】ないし【0028】)。 そうすると,本件明細書1に接した当業者は,上記の記載に基づいて,本件発明1-1の ンウェハの内部に改質領域である溶融処理領域が形成されたことが記載されている(【0025】ないし【0028】)。 そうすると,本件明細書1に接した当業者は,上記の記載に基づいて,本件発明1-1の構成を採用することにより,前記(ア)の課題が解決でき ると認識できると認められる。 (ウ) 前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」は「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないところ,被告は,本件明細書1には,「改質領域」及び「改質スポット」として,多光子吸収によって形成されるものしか開示されて いないから,本件発明1-1は,本件明細書1の発明の詳細な説明に記 載された発明の範囲を超えたものであると主張する。 本件明細書1においては,【発明を実施するための最良の形態】においては,好適な実施形態におけるレーザ加工方法は,前記(ア)の改質領域の形成実験を含めて,多光子吸収によって改質領域ないし溶融処理領域が形成されているとの説明がされており(【0011】,【0012】,【00 25】,【0029】),多光子吸収が支配的に寄与しなくても,改質領域ないし溶融処理領域が形成できる旨の記載はない。 しかしながら,前記(イ)の本件明細書1の記載からすれば,前記(ア)の課題については,ウェハ状の加工対象物であるシリコンウェハの内部に切断予定ラインに沿った複数の改質スポットによって加工対象物の切断 の起点となる改質領域を形成することによって解決されるものと理解される。他方,本件明細書1の記載から,課題の解決のために,改質領域が「多光子吸収」という現象によって形成されたものである必要があるとの理解は導かれないし,改質領域の形成に多光子吸収が支配的な役割を果たしている 本件明細書1の記載から,課題の解決のために,改質領域が「多光子吸収」という現象によって形成されたものである必要があるとの理解は導かれないし,改質領域の形成に多光子吸収が支配的な役割を果たしている場合でなければ,前記(ア)の本件発明1-1の課題が解決 できないことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件明細書1では,「改質領域」及び「改質スポット」として,多光子吸収によって形成されるものしか開示されていないことをもって,本件発明1-1が,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものとはいえない。 (エ) 以上によれば,被告が主張する前記(ウ)のサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項1号)は認められない。 イ 「改質領域」及び「改質スポット」が「溶融処理領域」に限定されないとの点について被告は,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」が「溶 融処理領域」に限定されないと仮定した上で,加工対象物がシリコンウェ ハの場合に「改質領域」及び「改質スポット」に「溶融処理領域」以外のものを含むことは本件明細書1に記載されていないとして,この点にサポート要件違反があると主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(ウ)のとおり,本件発明1の特許請求の範囲の記載及び本件明細書1の記載からは,加工対象物をシリコンウェハとす る本件発明1-1における「改質領域」ないし「改質スポット」は「溶融処理領域」に限定されると解されるから,被告の上記主張は前提を欠くものである。 そして,本件明細書1には,加工対象物をシリコンウェハとして,「改質領域」ないし「改質スポット」として「溶融処理領域」を形成する発明が 開示されている(本件明細 張は前提を欠くものである。 そして,本件明細書1には,加工対象物をシリコンウェハとして,「改質領域」ないし「改質スポット」として「溶融処理領域」を形成する発明が 開示されている(本件明細書1の【0025】ないし【0031】参照)から,本件発明1-1について,被告が主張する上記のサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項1号)は認められない。 (2) 本件発明1-2について被告は,本件発明1-2についても,本件発明1-1と同様の点において サポート要件に違反すると主張するが,本件発明1-2の構成は,本件発明1-1の構成に含まれ,更に限定したものであるから,前記(1)と同様の理由により,被告が主張するサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項1号)は認められない。 16 争点3-10(本件発明1の実施可能要件違反)について 被告は,本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるとの主張を前提とした上で,本件明細書1に開示された実験条件では,多光子吸収ではなく,単光子吸収の方が支配的であるから,本件明細書1の記載に基づいて本件発明1の「改質領域」ないし「改質スポット」を形成することはできず,本件発明1-1及び本 件発明1-2は,この点で,いずれも実施可能要件を満たさないと主張する。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1-1の「改質領域」ないし「改質スポット」は「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されない。そして,前記1(2)イのとおり,本件明細書1に開示された改質領域の形成実験においては,波長1064nmのレーザを用いた実験条件(【0027】)において,加工対象 て形成される」ものに限定されない。そして,前記1(2)イのとおり,本件明細書1に開示された改質領域の形成実験においては,波長1064nmのレーザを用いた実験条件(【0027】)において,加工対象物をシリコンウェハとして,加工対象物の内部に 改質領域である溶融処理領域が形成されたとされている(【0025】ないし【0028】)。 したがって,上記の実験条件において形成された改質領域が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものであるか否かにかかわらず,当業者は,本件明細書1における上記の改質領域の形成方法の記載に基づいて,過度の試行錯 誤を要することなく,本件発明1における「改質領域」ないし「改質スポット」を形成することができるといえるから,本件発明1-1及び本件1-2について,被告が主張する上記の実施可能要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条4項1号)は認められない。 17 争点3-11(本件発明1の分割要件違反による新規性欠如)について (1) 被告は,原出願の当初明細書等1(乙36)には,「改質領域」の意義につき,多光子吸収によって形成されるものしか記載されていなかったと主張し,本件明細書1は,原出願の当初明細書等1には記載のない,【0007】及び【0008】の内容を追加することによって,改質領域が多光子吸収によって形成されるものに限定されないとの,新たな技術的事項を導入するも のであり,分割要件を満たさない旨主張するので,以下検討する。 (2) 原出願の当初明細書等1(乙36)の記載内容は,次のとおりである。 ア原出願の当初明細書等1に記載された発明の「特許請求の範囲」には,「多光子吸収」との文言はなく,加工対象物の内部に形成される「改質領域」ないし「改質スポット」が,いかなる現象によっ りである。 ア原出願の当初明細書等1に記載された発明の「特許請求の範囲」には,「多光子吸収」との文言はなく,加工対象物の内部に形成される「改質領域」ないし「改質スポット」が,いかなる現象によって形成されるものか を特定する記載はない。 イ原出願の当初明細書等1の「発明の詳細な説明」では,【0001】ないし【0005】において,「技術分野」,「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」として,本件明細書1の【0001】ないし【0005】と同内容の記載がされ,その後に,【0006】ないし【0008】において,「課題を解決するための手段」として,以下の記載がされている。 「【0006】【課題を解決するための手段】本発明に係るレーザ加工装置は,パルス幅が1μs 以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源と,周波数の大きさの入力に基づいてレーザ光源から出射されるパルスレーザ光の繰り返し周波数の大きさを調節する周波数 調節手段と,レーザ光源から出射されたパルスレーザ光の集光点のピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上になるようにパルスレーザ光を集光する集光手段と,集光手段により集光されたパルスレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせる手段と,加工対象物の切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を相対的に移動させる移動手段と,を備え,加工対 象物の内部に集光点を合わせて1パルスのパルスレーザ光を加工対象物に照射することにより加工対象物の内部に1つの改質スポットが形成され,加工対象物の内部に集光点を合わせかつ切断予定ラインに沿って集光点を相対的に移動させて複数パルスのパルスレーザ光を加工対象物に照射することにより,切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に複数の改質スポ ットが形 光点を合わせかつ切断予定ラインに沿って集光点を相対的に移動させて複数パルスのパルスレーザ光を加工対象物に照射することにより,切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に複数の改質スポ ットが形成され,入力された周波数の大きさに基づいて隣り合う改質スポット間の距離を演算する距離演算手段と,距離演算手段により演算された距離を表示する距離表示手段と,を備えることを特徴とする。 【0007】本発明に係るレーザ加工装置によれば,加工対象物の内部に集光点を合 わせてレーザ光を照射しかつ多光子吸収という現象を利用することにより, 加工対象物の内部に改質領域を形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると,加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。本発明に係るレーザ加工装置によれば,改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより,加工対象物を切断することができる。よって,比較的小さな力で加工対象物を切断す ることができるので,加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。なお,集光点とはレーザ光が集光した箇所のことである。切断予定ラインは加工対象物の表面や内部に実際に引かれた線でもよいし,仮想の線でもよい。 【0008】 また,本発明に係るレーザ加工装置によれば,加工対象物の内部に局所的に多光子吸収を発生させて改質領域を形成している。よって,加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので,加工対象物の表面が溶融することはない。以上のことはこれから説明するレーザ加工装置についても言えることである。」 ウ原出願の当初明細書等1の「発明の詳細な説明」では,「発明の実施の形態」として,【0 面が溶融することはない。以上のことはこれから説明するレーザ加工装置についても言えることである。」 ウ原出願の当初明細書等1の「発明の詳細な説明」では,「発明の実施の形態」として,【0029】ないし【0047】において,実施形態において形成される改質領域の種類やその形成方法について,本件明細書1の【0011】ないし【0033】と同様の記載がされている。 (3) 前記(2)のとおり,原出願の当初明細書等1の【0007】及び【000 8】においては,本件明細書1の【0007】及び【0008】とは異なり,「改質領域」が「多光子吸収」という現象によって形成される旨が記載されている。 しかしながら,前記2(1)ア(エ)のとおり,本件発明1における「改質領域」ないし「改質スポット」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるもの に限定されないことは,本件明細書1の【0007】及び【0008】に 「多光子吸収」との記載がされていないことのみを根拠とするものではない。 そして,前記(2)アのとおり,原出願の当初明細書等1に記載された発明の「特許請求の範囲」には,「改質領域」ないし「改質スポット」が,いかなる現象によって形成されるものかを特定する記載はなく,また,前記(2)イの本件明細書1の記載からすれば,本件発明1と同様に,原出願の当初明細書等 1に記載された発明の課題解決手段についても,「加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供する」(【0005】)との課題を解決するために,加工対象物であるシリコンウェハの内部にパルスレーザ光を集光させて加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成することを主たる原理とするものと理解できるもの である(【00 決するために,加工対象物であるシリコンウェハの内部にパルスレーザ光を集光させて加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成することを主たる原理とするものと理解できるもの である(【0006】ないし【0008】)。そうすると,原出願の当初明細書等1の【0007】及び【0008】における「多光子吸収」によって「改質領域」が形成されるとの記載を考慮しても,上記の課題が,改質領域の形成が多光子吸収という現象によるものでなければ解決できないことが,原出願の当初明細書等1に記載されているとはいえない。 したがって,原出願の当初明細書等1に記載された発明が,多光子吸収という現象によって「改質領域」ないし「改質スポット」を形成するものに限定されていたとはいえないから,本件明細書1の【0007】及び【0008】において「多光子吸収」との文言を使用していないことをもって,本件明細書1が,原出願の当初明細書等1に新たな技術的事項を導入するものと は認められず,被告の分割要件違反の主張は採用することができない。 (4) 被告は,本件出願1に分割要件違反があることを前提として,平成14年7月10日に公開された乙37公報を引用例とする新規性欠如の主張をするが,前記のとおり,本件出願1に分割要件違反があるとはいえず,乙37公報は本件特許1の原出願日又は本件特許1の優先日より前に頒布された刊行 物ではないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明1-1 及び本件発明1-2について,乙37公報を引用例とする新規性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条1項3号)は認められない。 18 争点4-1(本件発明2の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 本件発明2-1の進歩性について ア 理由(特許法123条1項2号,29条1項3号)は認められない。 18 争点4-1(本件発明2の乙24公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 本件発明2-1の進歩性について ア本件発明2-1と乙24公報に記載された発明との相違点前提事実(3)の本件各特許の特許請求の範囲,前記1及び4の本件明細書1及び本件明細書2の記載内容並びに前記2(3)及び前記5(3)における構成要件1A及び2Aの意義によれば,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレー ザ加工装置の発明であり,構成要件1Aと構成要件2Aにおける改質領域が,加工対象物の「切断の起点となる」とは,いずれも改質領域を起点として割れが発生し,割れが加工対象物の表面ないし裏面に達する一連の過程を指す点で共通している。 そして,前記7(2)のとおり,本件出願2の原出願の出願日(平成15年 3月11日。以下「本件特許2の原出願日」という。)及びその優先日(平成14年3月12日。以下「本件特許2の優先日」という。)より前に頒布された刊行物である乙24公報には乙24発明1’’が開示されており,乙24公報に「加工変質層であるスクライブ・ライン」が切断の起点となることが記載されているとは認められない。 そうすると,本件発明2-1と乙24公報に記載された発明との間には,少なくとも,本件発明1-1と乙24発明1’’との相違点①と同様の次の相違点①が存在していると認められる。 (相違点①)本件発明2-1では「改質領域」が「切断の起点となる」のに対し,乙 24公報に記載された発明では「加工変質層であるスクライブ・ライン」 が切断の起点となるか明らかでない点。 イ相違点①の容易想到性 改質領域」が「切断の起点となる」のに対し,乙 24公報に記載された発明では「加工変質層であるスクライブ・ライン」 が切断の起点となるか明らかでない点。 イ相違点①の容易想到性について前記7(2)エで検討したところからすれば,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙24公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙24公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項) は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性について前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一であるから,本件発明2-2と乙24公報に記載された発明との間にも,少なくとも,前記(1) アの相違点①が存在していると認められる。 そして,前記(1)イと同様に,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,乙24公報に記載された発明に基づいて容易に発明をする ことができたものとはいえず,本件発明2-2について,乙24公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 19 争点4-2(本件発明2の乙26公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 本件発明2-1の進歩性について 無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 19 争点4-2(本件発明2の乙26公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 本件発明2-1の進歩性について ア本件発明2-1と乙26公報に記載された発明との対比前記8(2)によれば,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優先日より前に頒布された刊行物である乙26公報に記載された発明は,本件特許2の関係でも,特許法29条1項3号に規定する「刊行物に記載された発明」に該当するというべきである。 前記8(1)によれば,乙26公報には,本件発明2と対比すべき構成として,被告が主張する乙26発明2が開示されていると認められる。 そして,本件発明2-1と乙26発明2を対比すると,前記第3の17(被告の主張)(2)アの一致点が存在するものと認められ,この点については当事者間に争いがない。 そして,本件発明2-1と乙26発明2との間には,少なくとも,加工対象物の違いに関して,次の相違点①(被告主張の相違点1と同内容)が存在していると認められ,当該相違点が存在することについては当事者間に争いがない。 (相違点①) 本件発明2-1の加工対象物は,「半導体基板」であるのに対し,乙26発明2の加工対象物は,「ローラー」で回転される形状の「ガラス物体」(アンプル)である点。 イ相違点①の容易想到性について本件発明2-1の「加工対象物」は「半導体基板」であり,本件明細書 2の記載からは,その代表的なものは「シリコンウェハ」であると認められる(本件明細書2の【0002】,【0015】,【0017】ないし【0025】)。 これに対して,前記8(3)エで検討したように,乙26公報における課題等の記載からは,乙26発明2の加 と認められる(本件明細書2の【0002】,【0015】,【0017】ないし【0025】)。 これに対して,前記8(3)エで検討したように,乙26公報における課題等の記載からは,乙26発明2の加工対象物は破断開封用アンプル等のガ ラス物体であると認められる。 このようなガラス物体と本件発明2-1の加工対象物である半導体基板とでは加工対象物としての性質が異なることは明らかであるといえるから,乙26発明2に接した当業者において,加工対象物をガラス物体から半導体基板に変更することが直ちに動機付けられるとはいえない。 また,乙26公報の記載(【0014】,【0037】及び【0038】) からは,乙26発明2について,破断開封用アンプル以外にガラス管やガラス板の切断にも適用し得ることについての開示があるとはいえるものの,これらは半導体基板に乙26発明2を適用する動機付けとなる記載とはいえず,その他,そのような動機付けとなり得る事情もうかがわれない。 したがって,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは, 本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙26発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはい えないから,本件発明2-1について,乙26公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性についてア本件発明2-2と乙26公報に記載された発明との対比 前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一である。本 ア本件発明2-2と乙26公報に記載された発明との対比 前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一である。本件発明2-2では,本件発明2-1の構成要件2Hに当たる要件が存在せず,本件発明2-1では要件となっていない構成要件2Q及び2Rが要件として設けられており,構成要件2Qによって,本件発明2-2では加工対象 物である半導体基板がシリコン基板に特定されている。 したがって,本件発明2-2と乙26発明2とを対比すると,少なくとも,本件発明2-1と乙26発明2との相違点①に相当する次の相違点②(被告主張の相違点7と同内容)が存在しており,当該相違点が存在することについては当事者間に争いがない。 (相違点②) 本件発明2-2の加工対象物は,「シリコン基板」であるのに対し,乙26発明2の加工対象物は,「ローラー」で回転される形状の「ガラス物体」(アンプル)である点。 イ相違点②の容易想到性について前記(1)イと同様に,相違点②に係る本件発明2-2の構成を採用するこ とは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,乙26発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはい えないから,本件発明2-2について,乙26公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 争点4-3(本件発明2の乙57公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 本件発明2-1の進歩性についてア本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との められない。 争点4-3(本件発明2の乙57公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 本件発明2-1の進歩性についてア本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との相違点前記18(1)アのとおり,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置の発明である。 そして,前記9(2)のとおり,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優 先日より前に頒布された刊行物である乙57公報には,「ウェハ状の加工対象物の裏面に,分割の起点となるスクライブ溝を形成するレーザ加工装置」の発明である乙57発明1’’が開示されており,乙57公報において,分割の起点であるスクライブ溝が加工対象物の内部に形成されることが記載されているとは認められない。 そうすると,本件発明2-1と乙57公報に記載された発明との間には,少なくとも,本件発明1-1と乙57発明1’’との相違点⑦と同様の次の相違点①が存在していると認められる。 (相違点①)本件発明2-1では,加工対象物の内部に改質領域を形成するのに対し, 乙57公報に記載された発明では,加工対象物の裏面に改質領域に相当するスクライブ溝を形成する点。 イ相違点①の容易想到性について前記9(2)エで検討したところからすれば,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者 が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙57公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙57公報を主引 用例とす 余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙57公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙57公報を主引 用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性について前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一であるから,本件 発明2-1と乙57公報に記載された発明との間にも,少なくとも,前記(1) アの相違点①が存在していると認められる。 そして,前記(1)イと同様に,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,本件特許2の原出願日前に乙57公報に記載された発明に 基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明2-2について,乙57公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 21 争点4-4(本件発明2の乙58公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 本件発明2-1の進歩性についてア本件発明2-1と乙58公報に記載された発明との相違点前記18(1)アのとおり,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置の発明である。 そして,前記10(2)のとおり,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優先日より前に頒布された刊行物である乙58公報には「半導体基板である加工対象物の表面及び裏面に,そ 置の発明である。 そして,前記10(2)のとおり,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優先日より前に頒布された刊行物である乙58公報には「半導体基板である加工対象物の表面及び裏面に,その少なくともいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成するレーザスクライブ装置」の発明である乙58発明1’’が開示されており,「加工対象物の内部に, 切断の起点となる改質領域を形成する」ことが開示されているとは認められない。 そうすると,本件発明2-1と乙58公報に記載された発明との間には,少なくとも,本件発明1-1と乙58発明1’’との相違点⑥と同様の次の相違点①が存在していると認められる。 (相違点①) 本件発明2-1のレーザ加工装置は,加工対象物の「内部に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙58公報に記載された発明のレーザ加工装置(レーザスクライブ装置)は,加工対象物の「表面及び裏面に,少なくともそのいずれかが分割の起点となる相互に対向する溝(15及び16)を形成する」ものであり,加工対象物の「内部 に,切断の起点となる改質領域を形成する」ものではない点。 イ相違点①の容易想到性について前記10(2)エで検討したところからすれば,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙58公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙58公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項) 公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙58公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項) は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性について前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一であるから,本件発明2-1と乙58公報に記載された発明との間にも,少なくとも,前記(1) アの相違点①が存在していると認められる。 そして,前記(1)イと同様に,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,乙58公報に記載された発明に基づいて容易に発明をする ことができたものとはいえず,本件発明2-2について,乙58公報を主引 用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 22 争点4-5(本件発明2の乙25公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 本件発明2-1の進歩性について ア本件発明2-1と乙25公報に記載された発明との相違点前記18(1)アのとおり,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置の発明である。 そして,前提事実(3)の本件各特許の特許請求の範囲の記載からは,その 加工対象物は,本件発明1-1が「シリコンウェハ」であるのに対して,本件発明2-1が「半導体基板」であることが認められ,また,本件明細書2の記載からは,本件発明2-1の「半導体基板」 ,その 加工対象物は,本件発明1-1が「シリコンウェハ」であるのに対して,本件発明2-1が「半導体基板」であることが認められ,また,本件明細書2の記載からは,本件発明2-1の「半導体基板」の代表的なものは「シリコンウェハ」であると認められる(本件明細書2の【0002】,【0015】,【0017】ないし【0025】)。 そして,前記11(2)のとおり,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優先日より前に頒布された刊行物である乙25公報には「加工対象物の内部に連続的なクラックを形成することによって,加工対象物を切断加工するレーザ加工装置」の発明である乙25発明1’’が開示されていることが認められるところ,本件発明2-1と乙25公報に記載された発明との間 には,少なくとも,加工対象物について,本件発明1-1と乙25発明1’’との相違点③とおおむね同様の,次の相違点①が存在していると認められる。 (相違点①)本件発明2-1では,加工対象物が「半導体基板」であるのに対し,乙 25公報に記載された発明では,加工対象物が「厚板の合成石英ガラス」 である点。 イ相違点①の容易想到性について前記11(2)エで検討したとおり,乙25公報に記載された発明は,従来の「石英ガラスなどの種々の透明材料を切断加工する方法」が,「複雑な加工には使用でき」ず,「溶断する厚さに対し限度があり」,「10mm程度が 限界」であったとの課題を解決するために,「石英ガラスなどの透明材料を複雑な形状に切断加工することを目的とし,被加工物の厚味に影響を受けず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている」ものである(前記11(1)ア(イ)b)。 これに対して,本件発明2-1の「半導体基板」については,その代表 工物の厚味に影響を受けず,厚板であっても自由な切断加工を可能とすることを目的としている」ものである(前記11(1)ア(イ)b)。 これに対して,本件発明2-1の「半導体基板」については,その代表 的なものであるシリコンウェハは,一般的に,薄いものであり,厚板から複雑な形状に加工する必要があるものではない(弁論の全趣旨)。本件明細書2においても,「近年,シリコンウェハ等の半導体基板の厚さは薄くなる傾向」との記載があり(【0015】),発明の実施例としては厚さ350μmの半導体基板(シリコンウェハ)を加工することが記載されている(【0 019】)。 したがって,前記11(2)エと同様の理由で,乙25発明1’’の加工対象物を石英ガラスなどの透明材料から半導体基板に変更することが動機付けられるとはいえず,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事 項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙25公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙25公報を主引 用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項) は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性についてア本件発明2-2と乙25公報に記載された発明との対比前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一である。本件発 明2-2では,本件発明2-1の構成要件2Hに当たる要件が存在せず,本件発明2-1では要件となっていない構成要件2Q及び2Rが要件として設け 構成要件2Aないし2G及び2Iと同一である。本件発 明2-2では,本件発明2-1の構成要件2Hに当たる要件が存在せず,本件発明2-1では要件となっていない構成要件2Q及び2Rが要件として設けられており,構成要件2Qによって,本件発明2-2では加工対象物である半導体基板がシリコン基板に特定されている。 したがって,本件発明2-2と乙25公報に記載された発明とを対比す ると,本件発明2-2と乙25公報に記載された発明との間には,少なくとも,加工対象物について,相違点①と同様の,次の相違点②が存在していると認められる。 (相違点②)本件発明2-1では,加工対象物が「シリコン基板である半導体基板」 であるのに対し,乙25公報に記載された発明では,加工対象物が「厚板の合成石英ガラス」である点。 イ相違点②の容易想到性について前記(1)イと同様に,相違点②に係る本件発明2-2の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事 項とは認められない。 ウ小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,乙25発明1’’に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-2について,乙25公報を主引用例とする進 歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められ ない。 23 争点4-6(本件発明2の乙59公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 本件発明2-1の進歩性についてア本件発明2-1と乙59公報に記載された発明との相違点 前記18(1)アのとおり,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置の発明である 1と乙59公報に記載された発明との相違点 前記18(1)アのとおり,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置の発明である。 そして,前記12(2)のとおり,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優先日より前に頒布された刊行物である乙59公報には,「加工対象物の内 部に,マーキングとなる光学的損傷を形成するレーザ加工装置」の発明である乙59発明1’が開示されている。 そうすると,本件発明2-1と乙59公報に記載された発明との間には,少なくとも,本件発明1-1と乙59発明1’との相違点①と同様の次の相違点①が存在していると認められる。 (相違点①)本件発明2-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に「切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙59公報に記載された発明のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に「マーキングとなる光学的損傷を形成する」ものである点。 イ相違点①の容易想到性について前記12(2)エで検討したところからすれば,相違点①に係る本件発明2-1の構成を採用することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2- 1は,乙59公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙59公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性について 前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aな 法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性について 前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一であるから,本件発明2-1と乙59公報に記載された発明との間にも,少なくとも,前記(1)アの相違点①が存在していると認められる。 そして,前記(1)イと同様に,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用 することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,乙59公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明2-2について,乙59公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項) は認められない。 24 争点4-7(本件発明2の乙60公報を主引用例とする進歩性欠如)について(1) 本件発明2-1の進歩性についてア本件発明2-1と乙60公報に記載された発明との相違点 前記18(1)アのとおり,本件発明2-1は,本件発明1-1と同様に,加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置の発明である。 そして,前記13(2)のとおり,本件特許2の原出願日及び本件特許2の優先日より前に頒布された刊行物である乙60公報には,「加工対象物の内 部にマーキングとなる光学破壊群を形成するレーザ加工装置」の発明であ る乙60発明1’’が開示されており,乙60公報において,加工対象物の内部に「切断の起点となる光学破壊群を形成する」ことが開示されているとは認められない。 そうすると,本件発明2-1と乙60公報に記載さ 0発明1’’が開示されており,乙60公報において,加工対象物の内部に「切断の起点となる光学破壊群を形成する」ことが開示されているとは認められない。 そうすると,本件発明2-1と乙60公報に記載された発明との間には,少なくとも,本件発明1-1と乙60発明1’’との相違点②と同様の次の 相違点①が存在していると認められる。 (相違点①)本件発明2-1のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「切断の起点となる改質領域を形成する」ものであるのに対し,乙60公報に記載された発明のレーザ加工装置は,加工対象物の内部に,「マーキングとなる光学 破壊群を形成する」ものである点。 イ相違点①の容易想到性について前記13(2)エで検討したところからすれば,相違点①は,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。 ウ小括 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-1は,乙60公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件発明2-1について,乙60公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項)は認められない。 (2) 本件発明2-2の進歩性について前記6のとおり,本件発明2-2の構成要件2Jないし2P及び2Sは,本件発明2-1の構成要件2Aないし2G及び2Iと同一であるから,本件発明2-1と乙60公報に記載された発明との間にも,少なくとも,前記(1)アの相違点①が存在していると認められる。 そして,前記(1)イと同様に,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用 することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の そして,前記(1)イと同様に,相違点①に係る本件発明2-2の構成を採用 することは,本件特許2の原出願日当時において,当業者が容易に想到できた事項とは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,本件発明2-2は,乙60公報に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえず,本件発明2-2について,乙60公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由(特許法123条1項2号,29条2項) は認められない。 争点4-8(本件発明2の明確性要件違反)について(1) 「改質領域」との記載について被告は,本件発明2-1及び本件発明2-2における「改質領域」との記載について,いずれも,多光子吸収によって形成されたものに限定されるか 否か,が不明確であり,また,本件発明2-2における「改質領域」については,それが溶融処理領域に限定されるか否かについても不明確であると主張する。 しかしながら,本件発明2の特許請求の範囲の記載及び本件明細書2の記載からは,前記5(1)ア(エ)及び6のとおり,本件発明2-1及び本件発明2 -2における「改質領域」が「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないことは明確である。 また,本件発明2-2では加工対象物がシリコン基板に特定されており(構成要件2Q),このような特許請求の範囲の記載及び前記5(1)ア(イ)の本件明細書2の記載からすれば,本件発明2-2における「改質領域」が「溶 融処理領域」を指すことも明確である。 したがって,本件発明2-1及び本件発明2-2における「改質領域」との記載について,明確性要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項2号)は認められない。 (2) 構成要件2Hの記載について ,本件発明2-1及び本件発明2-2における「改質領域」との記載について,明確性要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項2号)は認められない。 (2) 構成要件2Hの記載について 被告は,構成要件2Hの「前記半導体基板の内側部分と外縁部との境界付 近に始点及び終点が位置する」との意味内容は曖昧であり,本件発明2-1はこの点で明確性要件に違反すると主張する。 しかしながら,前記5(6)ア(ウ)のとおり,本件発明2-1の特許請求の範囲と本件明細書2の記載からは,構成要件2Hにおいて,「外縁部」とは「半導体基板の外縁に沿った部分,すなわち,半導体基板の端の一定の幅をもっ た部分」を指し,「内側部分」とは「半導体基板の外縁部以外の部分」を指し,「切断予定ライン」が「内側部分と外縁部との境界付近に始点及び終点が位置する」とは,外縁部に切断予定ラインがかからないように,外縁部と内側部分の境界付近に切断予定ラインの始点及び終点を位置させて,内側部分に切断予定ラインを設定されるようにすることをいうものと明確に解すること ができる。 したがって,このような構成要件2Hの記載については,「外縁部」の範囲が「半導体基板の端の一定の幅をもった部分」という以上に特定されていないことを考慮しても,不明確であるとはいえないから,本件発明2-1における構成要件2Hの記載について,明確性要件違反の無効理由(特許法12 3条1項4号,36条6項2号)は認められない。 26 争点4-9(本件発明2のサポート要件違反)について(1) 本件発明2-1についてア本件明細書2に記載された本件発明2-1の課題は,前記4(2)アのとおり,「半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子 が破壊される (1) 本件発明2-1についてア本件明細書2に記載された本件発明2-1の課題は,前記4(2)アのとおり,「半導体基板上に複数の機能素子が形成されていたとしても,機能素子 が破壊されるのを防止して,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能にするレーザ加工装置を提供する」(【0005】)ことにある。 イ本件明細書2には,この課題を解決する手段として,前記4(2)イのとおり,本件発明2-1に相当する構成を採ることで,半導体基板の内部に切 断予定ラインに沿って半導体基板の切断の起点となる改質領域を形成し, また,その半導体基板内部における改質領域を赤外線で照明して撮像可能とすること(【0006】),このような構成を採ることによって,半導体基板の表面を溶融させず,半導体基板上の機能素子が破壊されることを防止しながら,半導体基板を切断することを可能とし,また,半導体基板を切断予定ラインに沿って精度良く切断することを可能とするとの効果を有す ること(【0007】,【0008】)が記載されており,また,改質領域の形成実験として,加工対象物を半導体基板であるシリコンウェハとして,加工対象物の内部に改質領域である溶融処理領域が形成されたことが開示されている((【0016】ないし【0020】)。 そうすると,本件明細書2に接した当業者は,これに基づいて,本件発 明2-1の構成を採用することによって,前記アの課題が解決できると認識できると認められる。 ウ前記5(1)ア(エ)のとおり,本件発明2-1の「改質領域」は「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないところ,被告は,本件明細書2には,「改質領域」として,多光子吸収によって形成されるも のしか開示されていないから の「改質領域」は「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されないところ,被告は,本件明細書2には,「改質領域」として,多光子吸収によって形成されるも のしか開示されていないから,本件発明2-1については,本件明細書2で開示された発明の範囲を超えていると主張する。 本件明細書2では,【発明を実施するための最良の形態】において,好適な実施形態におけるレーザ加工方法は,前記アの改質領域の形成実験を含めて,多光子吸収によって改質領域を形成するとの説明がされており(【0 009】,【0010】,【0017】,【0021】),多光子吸収が支配的に寄与しなくても,改質領域ないし溶融処理領域が形成できる旨の記載はない。 しかしながら,前記イの本件明細書2の記載からすれば,前記アの課題については,半導体基板の内部に切断予定ラインに沿って半導体基板の切 断の起点となる改質領域を形成することを主な原理として解決されるもの と理解される。そうすると,本件明細書2の記載から,課題の解決のために,改質領域が「多光子吸収」という現象によって形成されたものである必要があるとはいえないし,改質領域の形成に多光子吸収が支配的な役割を果たしている場合でなければ,前記アの本件発明2-1の課題が解決できないことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件明細書2において,多光子吸収が支配的に寄与しなくても,改質領域ないし溶融処理領域が形成できる旨の記載がされていないことをもって,本件発明2-1が,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものとはいえない。 エ以上によれば,本件発明2-1について,被告が主張する前記のサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4 者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものとはいえない。 エ以上によれば,本件発明2-1について,被告が主張する前記のサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項1号)は認められない。 (2) 本件発明2-2についてア 「改質領域」が多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定さ れない点について被告は,本件発明2-2についても,本件発明2-1と同様の点においてサポート要件に違反すると主張する。 前記5(1)ア(エ)及び6のとおり,本件発明2-2の「改質領域」についても「多光子吸収が支配的に寄与して形成される」ものに限定されるもの ではなく,また,前記(1)で指摘した本件明細書2における発明の課題とその解決原理の記載は,本件発明2-2についても同様に当てはまる。 したがって,前記(1)と同様の理由により,本件発明2-2についても,被告が主張するこの点のサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項1号)は認められない。 イ 「改質領域」が「溶融処理領域」に限定されないとの点について 被告は,本件発明2-2の「改質領域」が「溶融処理領域」に限定されないと仮定した上で,加工対象物がシリコンウェハの場合に「改質領域」に「溶融処理領域」以外のものを含むことは本件明細書2に記載されていないとして,この点にサポート要件違反があると主張する。 しかしながら,前記25(1)のとおり,本件発明2-2の特許請求の範囲 の記載及び本件明細書2の記載からは,加工対象物をシリコン基板とする本件発明2-2における「改質領域」は「溶融処理領域」に限定されると解されるから,被告の上記主張は前提を欠くものである。 そして,本件明細書2には,加工対象物 からは,加工対象物をシリコン基板とする本件発明2-2における「改質領域」は「溶融処理領域」に限定されると解されるから,被告の上記主張は前提を欠くものである。 そして,本件明細書2には,加工対象物をシリコン基板として,「改質領域」として「溶融処理領域」を形成する発明が開示されている(本件明細 書2の【0016】ないし【0023】参照)から,本件発明2-2について,被告が主張する上記のサポート要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条6項1号)は認められない。 27 争点4-10(本件発明2の実施可能要件違反)について被告は,本件発明2の「改質領域」が,多光子吸収が支配的に寄与して形成 されるものに限定されるとの主張を前提とした上で,本件明細書2に開示された実験条件では,多光子吸収ではなく,単光子吸収の方が支配的であるから,本件明細書2の記載に基づいて本件発明2-1及び本件発明2-2の「改質領域」を形成することはできず,本件発明2-1及び本件発明2-2は,この点で,いずれも実施可能要件を満たさないと主張する。 しかしながら,前記5(1)ア(エ)及び6のとおり,本件発明2-1及び本件発明2-2における「改質領域」は,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されない。 そして,前記4(2)のとおり,本件明細書2に開示された改質領域の形成実験においては,波長1064nmのレーザを用いた実験条件(【0019】)にお いて,加工対象物をシリコンウェハとして,加工対象物の内部に改質領域であ る溶融処理領域が形成されたことが開示されている(【0016】ないし【0020】)。 したがって,上記の実験条件において形成された改質領域が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものであるか否かにかか 処理領域が形成されたことが開示されている(【0016】ないし【0020】)。 したがって,上記の実験条件において形成された改質領域が,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものであるか否かにかかわらず,当業者は,本件明細書2における上記の改質領域の形成方法の記載に基づいて,過度の試行錯 誤を要することなく,本件発明2-1及び本件発明2-2における「改質領域」を形成することができるといえるから,本件発明2-1及び本件2-2について,被告が主張する上記の実施可能要件違反の無効理由(特許法123条1項4号,36条4項1号)は認められない。 28 争点5(本件各発明についての原告による実施許諾の有無)について (1) 原告と被告との業務提携関係に関する事実経過等証拠(甲5ないし9,39ないし46,76,乙1ないし23,75ないし94,117,118)及び弁論の全趣旨によれば,原告と被告との間の業務提携に関して,以下の事実が認められる。 ●(省略)● オ ●(省略)●その当時,原告の代表取締役副社長を務めていたAとSDエンジンの製造開発部門の部長を務めていたBは,同年10月8日,被告を訪問し,被告の代表取締役副社長を務めていたC及び被告の顧問であったDと面談した。●(省略)● カ被告は,遅くとも,平成27年から,被告が開発したレーザエンジンを搭載したダイシング装置を販売するようになった。 ●(省略)●(2) 本件実施許諾契約の成否についてア被告は,前記(1)オの平成26年10月8日の打合せの際に,本件各発明 の実施についての実施許諾契約(本件実施許諾契約)が成立したと主張し, ●(省略)●オ以上によれば,原告と被告との間において,本件実施許諾契約が成立したとは認 ,本件各発明 の実施についての実施許諾契約(本件実施許諾契約)が成立したと主張し, ●(省略)●オ以上によれば,原告と被告との間において,本件実施許諾契約が成立したとは認められず,他にその成立を認めるに足りる証拠はない。 (3) よって,その余の点について判断するまでもなく,被告による本件各発明の実施について,本件実施許諾契約に基づく抗弁は理由がない。 29 争点6(差止請求及び廃棄請求の当否)について(1) 差止め及び廃棄の必要性について前記前提事実(5)のとおり,被告は,業として,被告製品を製造し,譲渡し,輸出し,及び譲渡の申出をしており,弁論の全趣旨によれば,これらに関連して,業として,被告製品を使用し,貸し渡し,又は貸渡しの申出をするお それもあると認められるから,原告が,本件各特許権に基づいて,上記各行為についての差止め及び被告製品の廃棄を求める必要性があると認められる。 (2) 差止等の対象となる被告製品の特定について原告は,被告製品の特定として,別紙1被告製品目録のとおり,具体的な型番を例示した上で,被告製品1をその型番中に「ML300」を含むML 300シリーズのレーザダイシングマシン,被告製品2をその型番中に「ML200」を含むML200シリーズのレーザダイシングマシンとして特定し,また,筐体表面に同目録記載の原告SDEマークが付されたものを除外しているところ,被告は,同目録に記載されている型番のうち,ML300,ML200等は,原告が製造して被告に販売したステルスダイシングエンジ ンを搭載したものであり,差止め及び廃棄の対象から外されるべきであると主張する。 しかしながら,弁論の全趣旨によれば,原告が製造して被告に販売したステルスダイシングエンジンを搭載 グエンジ ンを搭載したものであり,差止め及び廃棄の対象から外されるべきであると主張する。 しかしながら,弁論の全趣旨によれば,原告が製造して被告に販売したステルスダイシングエンジンを搭載したものについては,上記の原告SDEマークが付されていると認められるから,差止め及び廃棄請求の対象となって おらず,それ以上に,被告製品の特定として,同目録の記載から被告が指摘 する各型番を除外する必要はない。 また,被告は,同目録に記載された型番の製品のうち,ML300,ML200等は現在製造販売等していないから,差止め及び廃棄の対象から外されるべきと主張するが,上記の特定方法からすれば,ML300シリーズ及びML200シリーズの中から,現在製造販売等していない型番を特定して, 同目録から除外する必要はない。 文書提出命令の申立てについて(1) 文書提出命令の申立て被告は,原告に対して,令和2年6月2日付け文書提出命令申立書によって,民事訴訟法220条4号柱書及び特許法105条1項に基づき,別紙6 提出文書目録記載の各文書について文書提出命令の申立て(当庁令和2年(モ)第1397号)を行った。 (2) 別紙6提出文書目録記載1ないし8の文書について別紙6提出文書目録記載1の文書は本件出願1についての,同目録記載2の文書は本件出願1の原出願についての,同目録記載3の文書は本件出願1 の原出願の優先権主張の基礎となる出願についての,同目録記載4の文書は本件出願2についての,同目録記載5の文書は本件出願2の原出願についての,同目録記載6の文書は本件出願2の原出願の優先権主張の基礎となる出願についての,出願及び審査の過程において,原告が,当該出願を代理する弁理士(当該弁理士の指揮監督に服する者を 2の原出願についての,同目録記載6の文書は本件出願2の原出願の優先権主張の基礎となる出願についての,出願及び審査の過程において,原告が,当該出願を代理する弁理士(当該弁理士の指揮監督に服する者を含む)に対して提示した,発明 提案書その他の一切の書類(メールを含む)である。また,同目録記載7は本件出願2に際して,同目録記載8は本件出願1に際して,原告従業員が特許庁審査官と面談した際に作成したメモである。 被告は,これらの文書について,本件各発明の「改質領域」との用語が,単光子吸収によるものでなく,多光子吸収によって形成されるものであるこ との立証のために取調べが必要である,すなわち,本件各発明の技術的範囲 を示す間接事実として,原告が上記のように認識していたことを立証するため,また,同目録記載1ないし6については,包袋禁反言の主張に関連して,原告の審査官に対する説明内容を明らかにするために取調べの必要があると主張する。 前記2(1)ア(エ)において,本件発明1における「改質領域」及び「改質ス ポット」について,前記5(1)ア(エ)において,本件発明2における「改質領域」について,それぞれ,多光子吸収が支配的に寄与して形成されるものに限定されるか否かを出願経過についての被告の主張を含めて検討したところ,当該争点に係る本件各発明の技術的範囲を審理するために,そこで検討した証拠に加えて,出願経過を示す資料として開示されるものではない同目録記 載記載1ないし8の各文書を取り調べる必要性があるとは認められない。 (3) 別紙6提出文書目録記載9の文書について被告は,被告製品を用いて加工したシリコンウェハのレーザ加工領域において,溶融が生じていないことを原告が認識していたことを立証するために,原告が,被告 3) 別紙6提出文書目録記載9の文書について被告は,被告製品を用いて加工したシリコンウェハのレーザ加工領域において,溶融が生じていないことを原告が認識していたことを立証するために,原告が,被告製品を用いて加工したシリコンウェハのレーザ加工領域を測定 したEBSDデータの取調べが必要であると主張する。 証拠(甲47ないし49)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告製品を用いて加工したシリコンウェハのレーザ加工領域についてのEBSDを,東レリサーチセンターに依頼したものの,表面凹凸で影になってしまう部分はデータが得られず,表面の凹凸の影響を切り分けた考察が難しいとの東レ リサーチセンターからの回答を受けて,分析依頼をキャンセルしたこと,その過程で分析の可否を判断するための暫定的なEBSDデータを東レリサーチセンターから受領したが,正式な分析結果の報告書は受領していないことが認められる。 このような経緯に加え,被告製品を用いて加工したシリコンウェハのレー ザ加工領域についてのEBSDについては,被告が,自らあるいは外部機関 に依頼して行った分析結果(乙46の2,101)を書証として提出していることからすれば,原告が受領した上記の暫定的なEBSDデータを含めても,別紙6提出文書目録記載9の文書について,被告製品によって形成されたレーザ加工領域における溶融の有無を立証するために証拠調べの必要があるとは認められない。 (4) 以上によれば,現時点において,被告の上記文書提出命令の申立てに係る文書の証拠調べの必要性はないと認められるから,当該申立てについては却下する 31 結論(1) 前記2,3,5及び6のとおり,被告製品は,本件各発明の技術的範囲に 属するものであり,被告が,業として,被告製 性はないと認められるから,当該申立てについては却下する 31 結論(1) 前記2,3,5及び6のとおり,被告製品は,本件各発明の技術的範囲に 属するものであり,被告が,業として,被告製品の製造,譲渡,輸出及び譲渡の申出等をすることは,本件各発明の実施に当たる。 そして,前記7ないし27のとおり,本件各特許についての無効の抗弁はいずれも理由がなく,前記28のとおり,本件各発明についての本件実施許諾契約に基づく抗弁は認められない。 さらに,前記29のとおり,原告は,本件各特許権に基づいて,上記実施行為の差止め及び被告製品の廃棄を求める必要性があると認められるから,原告の被告に対する請求はいずれも理由がある。 (2) 仮執行宣言及び仮執行免脱宣言について本件事案の内容等に照らし,主文第1項については,原告の申立てにより 仮執行宣言を付した上で,被告の申立てにより被告に担保を立てさせて仮執行免脱の宣言をするのが相当である。また,主文第2項については,仮執行宣言を付するのは相当でないから,これを付さないこととする。 (3) よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 矢野紀夫 別紙一覧 別紙1 被告製品目録 裁判官 矢野紀夫 別紙一覧 別紙1 被告製品目録別紙2 被告製品の構成(原告の主張)別紙3 本件明細書1の図面 別紙4 本件明細書2の図面別紙5 引用文献の図面等別紙6 提出文書目録 (省略) 別紙1 被告製品目録 次の型番のレーザダイシングマシン(下記の原告SDEマークが筐体表面に付されたものを除く。) 1 ML300シリーズ(「ML300」,「ML300EX」,「ML300EXWH」,「ML300PlusWH」,「ML300PlusXWH」など,その型番中に「ML300」を含むもの。) 2 ML200シリーズ(「ML200」,「ML200EX」,「ML200EXWH」,「ML200PlusXWH」など,その型番中に「ML200」を含むもの。) 記 【原告SDEマーク】 別紙2 被告製品の構成(原告の主張) 構成① シリコンウェハの内部に,レーザ加工領域を形成するレーザ加工装置である。レーザ加工領域は,シリコンウェハをチップに分割する際の切断の起点となる。 構成② カッティングテーブルは,真空吸着によりフレーム及びシリコンウェハを保持する。これにより,カッティングテーブルの上にシリコンウェハを固定する。 構成③ 1μs以下のパルスレーザ光を出射するレーザ光源を備える。 構成④ レーザ光源から出射されたレーザ光は,集光レンズを通過し,シリコンウ ェハの内部に集光される。集光点の位置においてレーザ加工領域が形成される。 構成⑤ 制御部は,レーザ光の集光 。 構成④ レーザ光源から出射されたレーザ光は,集光レンズを通過し,シリコンウ ェハの内部に集光される。集光点の位置においてレーザ加工領域が形成される。 構成⑤ 制御部は,レーザ光の集光点をシリコンウェハの内部に位置させた状態で,レーザ光の集光点を移動させ,レーザ加工領域を線状に形成する。 構成⑥ シリコンウェハを赤外線で照明する赤外線照明,及び,赤外線対応カメラ を備えている。赤外線照明と赤外線対応カメラは,いずれもシリコンウェハのレーザ光の入射面側に配置されており,赤外線照明から照射される赤外光は,シリコンウェハを透過し,レーザ光の入射面とは逆側の面で反射され,反射された赤外光が赤外線対応カメラに入射する。 構成⑦ 赤外線照明により照明されたレーザ加工領域を,赤外線対応カメラを用い て撮像する機能を有する。 構成⑧ 加工を制御するために,ユーザーは加工前にあらかじめタッチパネルの操作を通して加工条件を割り当てる。これにより,パルスレーザ光の繰り返し周波数及び集光点の移動速度を調節可能である。 構成⑨ シリコンウェハのエッジ部分をレーザ加工しないようにすることができる。 構成⑩ レーザ加工前に,レーザ加工エンジンユニットをZ軸方向に移動させ,レ ーザ加工エンジンユニットの高さを調整する。 構成⑪ レーザ加工時においては,レーザ加工エンジンユニットをY軸方向に移動させて加工ラインに合わせ,カッティングテーブルをX軸方向に移動させることにより,レーザ加工を行う。一方向の加工が終了したのち,θ軸方向にカッティングテーブルを90度回転させ,レーザ加工を行う。レーザ加工中 のカッティングテーブル(X軸方向)の移動速度はほぼ一定である。 別紙3 本件明細書1の図面【図1 カッティングテーブルを90度回転させ,レーザ加工を行う。レーザ加工中のカッティングテーブル(X軸方向)の移動速度はほぼ一定である。 別紙3 本件明細書1の図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図8】 【図9】 【図10】 【図11】 【図12】 【図13】 【図17】 【図23】 【図24】 別紙4 本件明細書2の図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図8】 【図9】 【図10】 【図11】 【図12】 【図15】 【図16】 別紙5 引用文献の図面等 1 乙24公報 【図1】 【図2】 【図5】 2 乙26公報 【図1】 3 乙57公報表1 表2 第1図 第2図 4 乙58公報第1図 第2図 5 乙25公報第1図 6 乙59公報 【図1】 【図2】 別紙6 提出文書目録 (省略) 別紙6 提出文書目録 (省略)
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