1 令和4年2月24日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官令和3年(ワ)第3816号 特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日 令和3年12月14日判 決 5原 告 中外製薬株式会社 同訴訟代理人弁護士 末吉 剛同髙 橋 聖 史同訴訟代理人弁理士 寺地拓己10同補佐人弁理士 一宮維幸 被告 沢井製薬株式会社 被告 日医工株式会社15 上記両名訴訟代理人弁護士 森本 純同芳賀 彩 被告 日産化学株式会社20 同訴訟代理人弁護士 吉 澤 敬 夫同紺 野 昭 男同井 波 実主 文251 原告の請求をいずれも棄却する。 2 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求1 被告沢井製薬株式会社及び被告日産化学株式会社は、販売名を「エルデカルシトールカプセル0.5μg「サワイ」」とする医療用医薬品及び販売名を「エル5デカルシトールカプセル0.75μg「サワイ」」とする医療用医薬品の製造及び販売のために別紙被告原料目録記載の原料を製造し又は使用してはならない。 2 被告日医工株式会社及び被告日産化学株式会社は、販売名を「エルデカルシトールカプセル0.5μg「日医工」」とする医療用医薬品及び販売名を「エルデカルシトールカプセル0.75μg「日医工」」とする医療用医薬品の製造及 社及び被告日産化学株式会社は、販売名を「エルデカルシトールカプセル0.5μg「日医工」」とする医療用医薬品及び販売名を「エルデカルシトールカプセル0.75μg「日医工」」とする医療用医薬品の製造及び10販売のために別紙被告原料目録記載の原料を製造し又は使用してはならない。 3 被告沢井製薬株式会社、被告日医工株式会社及び被告日産化学株式会社は、別紙被告原料目録記載の原料を廃棄せよ。 4 被告沢井製薬株式会社及び被告日産化学株式会社は、原告に対し、連帯して5500万円及びこれに対する被告沢井製薬株式会社は令和3年3月20日(訴状15送達の日の翌日)、被告日産化学株式会社は同月12日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 5 被告日医工株式会社及び被告日産化学株式会社は、原告に対し、連帯して5500万円及びこれに対する被告日医工株式会社は令和3年3月20日(訴状送達の日の翌日)、被告日産化学株式会社は同月12日(訴状送達日の翌日)から支払20済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等1 事案の概要本件は、発明の名称を「ビタミンD誘導体結晶およびその製造方法」とする特許権を有する原告が、被告沢井製薬株式会社(以下「被告沢井」という。)及び被25告日医工株式会社(以下「被告日医工」という。)がそれぞれ被告日産化学株式会 3 社(以下「被告日産化学」という。)に製造を委託した医薬品の原料を被告日産化学が製造する過程で、同特許権に係る技術的範囲に属する物を製造しているとして、被告沢井及び被告日産化学に対して、特許法100条1項、2項に基づき、被告沢井が販売する医薬品に係る原料の製造及び使用の差止め並びに廃棄を請求し、民法719条1項前段及び特許法102条2項に基づき 、被告沢井及び被告日産化学に対して、特許法100条1項、2項に基づき、被告沢井が販売する医薬品に係る原料の製造及び使用の差止め並びに廃棄を請求し、民法719条1項前段及び特許法102条2項に基づき、連帯して、2億54200万円の一部である5500万円及び遅延損害金の支払を請求し、被告日医工及び被告日産化学に対して、特許法100条1項、2項に基づき、被告日医工が販売する医薬品に係る原料の製造及び使用の差止め並びに廃棄を請求し、民法719条1項前段及び特許法102条2項に基づき、連帯して、2億4200万円及びその一部である5500万円及び遅延損害金の支払を請求する事案で10ある。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠(明示しない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア 原告は医薬品の研究、開発、製造、販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)15イ 被告沢井及び被告日医工は、いずれも、日本及び外国における医薬品の製造、販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)ウ 被告日産化学は、工業薬品、試薬、医薬品等の製造、加工、売買及び輸出入等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)原告は、以下の特許権(以下「本件特許権」といい、本件特許に係る明細書及20び図面を「本件明細書」という。)を有している。本件特許権については、次のとおり2件の延長登録が認められている(以下、両延長登録を併せて「本件延長登録」という。)。(甲12~14)特許番号 特許第3429432号発明の名称 ビタミンD誘導体結晶およびその製造方法25出願日 平成9年6月12日 4 優先日 特許第3429432号発明の名称 ビタミンD誘導体結晶およびその製造方法25出願日 平成9年6月12日 4 優先日 平成8年7月1日優先権主張国 日本登録日 平成15年5月16日延長登録後の特許満了日 令和4年6月12日延長登録出願番号2011-700107延長登録出願の年月日平成23年4月20日延長登録の年月日平成24年7月27日延長の期間5年ア 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認イ 処分を特定する番号承認番号 22300AMX00416000ウ 処分の対象となった物エディロールカプセル0.5μg(販売名)エルデカルシトール(有効成分)エ 処分の対象となった物について特定された用途骨粗鬆症 5延長登録出願番号2011-700108延長登録出願の年月日平成23年4月20日延長登録の年月日平成24年7月27日延長の期間5年ア 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認 5 イ 処分を特定する番号承認番号 22300AMX00417000ウ 処分の対象となった物エディロールカプセル0.75μg(販売名)エルデカルシトール(有効成分)(以下、エディーロールカプセル0.5μgと併せて、「原告カプセル」という。)エ 処分の対象となった物について特定された用途骨粗鬆症原告は、平成24年3月30日、本件明細書につき請求項1と発明の詳細の説明にそれぞれ1か所ずつ記載されていた「 プセル」という。)エ 処分の対象となった物について特定された用途骨粗鬆症原告は、平成24年3月30日、本件明細書につき請求項1と発明の詳細の説明にそれぞれ1か所ずつ記載されていた「格子定数a=10.352(2)」との記載を「格子定数a=10.325(2)」に訂正する訂正審判の請求をし、同年5月17日に訂正を認める審決がされ、同審決は同月25日に確定した(以下「本件訂正」という。)。(甲12、14)5ア 本件特許に係る請求項1の特許請求の範囲は次のとおりである(以下、本件訂正後の請求項1に記載された発明を「本件発明」という。)(甲3、12、14)式(Ⅰ) 10で表される化合物の結晶であって、結晶構造解析において空間群P212121、格子定数a=10.325(2)、b=34.058(2)、c=8.231 6 (1)Å、Z=4である結晶。 イ 本件発明を分説すると次のとおりとなる。(以下、分説された構成要件の符号に従い、「構成要件A」などという。)A 式(Ⅰ) 5で表される化合物の結晶であって、B 結晶構造解析において空間群P212121、格子定数a=10.325(2)、b=34.058(2)、c=8.231(1)Å、Z=4(以下、この格子定数を「本件格子定数」ということがある。)である結晶。 ウ 上記で式(Ⅰ)で表される化合物の一般名はエルデカルシトールであり、本10件明細書では、ED-71と表記されている。 被告日産化学はエルデカルシトールの原薬(溶液の状態になっている)を被告日医工に販売、納品し、被告沢井は、被告日医工からエルデカルシトールの溶液が充填された軟カプセルの納品を受けている。(以下、被告日産化学が被告日医工に納品しているエルデカルシトールの原薬を「本件 告日医工に販売、納品し、被告沢井は、被告日医工からエルデカルシトールの溶液が充填された軟カプセルの納品を受けている。(以下、被告日産化学が被告日医工に納品しているエルデカルシトールの原薬を「本件原薬」という。)。被告沢井15は、本件原薬を原料として「エルデカルシトールカプセル0.5μg「サワイ」」及び「エルデカルシトールカプセル0.75μg「サワイ」」(以下、両医薬品を併せて、「被告カプセル(沢井)」という。)を製造して販売している。 被告日医工は、本件原薬を原料として「エルデカルシトールカプセル0.5μg「日医工」」及び「エルデカルシトールカプセル0.75μg「日医工」」(以下、20両医薬品を併せて「被告カプセル(日医工)」といい、被告カプセル(沢井)と併せて「被告カプセル」という。)を製造、販売している。被告カプセルの効能効果 7 は、骨粗鬆症とされている。被告カプセルの内容物は液体であり、エルデカルシトールは同液体に溶けて存在しており、結晶の態では存在していない。なお、原告カプセルも同様に内容物は、液体であり、エルデカルシトールは同液体に溶けて存在しており、結晶の状態では存在していない。(甲6、8、23、24、乙B3、弁論の全趣旨)53 争点被告日産化学が本件原薬を製造する過程で、本件発明の技術的範囲に属する結晶を製造しているか(争点1)本件延長登録の効果が、被告日産化学が本件原薬を製造する過程で製造する物質に及ぶか(争点2)10本件特許は、訂正要件違反を理由として無効とされるべきであるか(争点3)本件延長登録は無効とされるべきであるか(争点4)被告らにつき共同不法行為が成立するか(争点5)損害(争点6)4 争点に対する当事者の主張15被告日産化学が本件原薬 点3)本件延長登録は無効とされるべきであるか(争点4)被告らにつき共同不法行為が成立するか(争点5)損害(争点6)4 争点に対する当事者の主張15被告日産化学が本件原薬を製造する過程で、本件発明の技術的範囲に属する結晶を製造しているか(争点1)について(原告の主張)エルデカルシトールの固相としては、アモルファス形態と3種の結晶形態が知られているところ、アモルファス体を実用的に使用することは難しい。被告日産20化学は、エルデカルシトールを含む本件原薬を製造しているため、本件原薬の製造の過程で、3種の結晶形態のうちの少なくともいずれかを製造しているはずである。被告日産化学は、エルデカルシトールの結晶形2種及びその製造方法に関する特許を出願している(特願2017-160470号。優先権主張番号 特願2016-163069号 優先日平成28年8月23日)。この結晶形は本25件発明のものとは異なるものであるところ、これが被告日産化学が出願したエル 8 デカルシトールの結晶に関する唯一のものであるから、被告日産化学は、同出願に係る明細書(特開2018-30839号。甲1。以下「日産化学明細書」という。)に記載された2種の結晶形(B型結晶、C型結晶と称されている。なお、本件発明に係る結晶については、A型結晶と称されている。)のいずれかを製造していて、その製造方法は、日産化学明細書に記載された方法であると推認でき5る。 日産化学明細書によれば、まずエルデカルシトールを化学合成し、それをもとにB型結晶及びC型結晶を作成することとされていて、参考合成例にはエルデカルシトールを化学合成して単離する方法が記載されている。原告が、同合成方法に沿ってエルデカルシトールを化学合成して単離して得られた固 結晶及びC型結晶を作成することとされていて、参考合成例にはエルデカルシトールを化学合成して単離する方法が記載されている。原告が、同合成方法に沿ってエルデカルシトールを化学合成して単離して得られた固体(以下「参考10合成例原料」という。なお、日産化学明細書では、参考合成例原料を溶媒に溶かした後にB型結晶を析出させてB型結晶を得ている。)を粉末X線回折(以下「XRPD」という。)及びDSC(示差走査熱量計)で分析したところ、特徴的なピークを得られた。 日産化学明細書では、A型結晶のXRPDの特徴的な回折ピークが10本報告15されており、これらのいずれのピークについても参考合成例原料に係る上記特徴的ピークが0.2°の範囲内で存在していた。さらに、本件訂正後の本件発明に係る結晶の格子定数を基に、回折ピークの理論回折位置と参考合成例原料に係る上記特徴的なピークの位置(0°から40°の範囲における10本の強い回折ピーク及び20°以下での主要な回折ピーク)を比較したところ、いずれのピーク20も理論回折位置から0.2°の範囲内に存在した(上記XRPDの10本のピークを用いる解析方法は、第十八改正日本薬局方で規定されている有機結晶の相の同定方法に準拠している。)。よって、参考合成例原料には、本件発明に係る結晶を主要な成分として含むことがわかる。 また、被告日産化学は、本件原薬の合成プロセスを開示するようにとの求釈明25に対して、特許法104条の2に違反して応じない。以上の事実を総合すると、 9 被告日産化学は、本件原薬を製造する過程で、別紙被告原料目録記載の本件発明に係る結晶を主要な成分として含む参考合成例原料を製造しているといえる。 (被告日産化学の主張)原告の主張は争う。本件日産化学明細書に記載されている参考合成例 で、別紙被告原料目録記載の本件発明に係る結晶を主要な成分として含む参考合成例原料を製造しているといえる。 (被告日産化学の主張)原告の主張は争う。本件日産化学明細書に記載されている参考合成例はエルデカルシトールの製造方法の一つにすぎない。また、仮に被告日産化学が参考合成5例原料を製造していたとしても、本件発明は本件格子定数を有するエルデカルシトールの結晶についてのものであり、原告は、参考合成例原料に含まれる物質について、本件格子定数を有することについては何ら立証していない。 本件に関する原告の主張立証は、推測の上に推測を重ねたものであるだけでなく、特許権の侵害についての主張立証とはいえないものである。原告は、訴訟を10通じて、違法に被告日産化学の合成方法を探索しようとするものであり、被告日産化学が企業秘密に属するエルデカルシトールの合成方法の具体的態様を明示する必要は全くない。 (被告沢井及び被告日医工の主張)原告の主張は争う。仮に被告日産化学が参考合成例原料を製造していたとして15も、本件発明は本件格子定数を有するエルデカルシトールの結晶についてのものであり、原告は、参考合成例原料に含まれる物質について、本件格子定数を有することについては何ら立証していない。 原告は、当初参考合成例原料のXRPDによる測定結果と、これと一致するはずのない、原告の主張を前提にしても誤りである本件訂正前の格子定数に基づく20理論回折位置が一致したと主張していたのであるから、これは、XRPDによる回折パターンを確認しても、これだけでは本件発明が定める格子定数を有する結晶であることを特定することができないことを意味する。 本件延長登録の効果が、被告日産化学が本件原薬を製造する過程で製造する物質に及ぶか(争点2)について 本件発明が定める格子定数を有する結晶であることを特定することができないことを意味する。 本件延長登録の効果が、被告日産化学が本件原薬を製造する過程で製造する物質に及ぶか(争点2)について25(原告の主張) 10 ア 特許権の存続期間の延長登録の制度は、政令処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を回復することを目的としているのであるから、政令処分の対象となった物についての特許発明の実施行為とは、政令処分の対象となった物について、政令処分を受けるまで禁止されていた特許発明の実施行為全てを意味すると解するべきである。 5同政令処分には医薬品医療機器等法14条1項の医薬品の製造販売承認が含まれる(特許法施行令2条2項)。医薬品の製造販売承認の審査は、「品質、有効性及び安全性に関する事項」をも対象とし(医薬品医療機器等法14条2項3号柱書)、承認申請書には、原薬の製造方法の記載が求められ、製造方法に関しては出発物質及び中間体も示す必要があり、出発物質の管理基準及び試験10法、重要中間体及び最終中間体の管理基準及び管理方法も記載する必要がある。 製造方法欄に記載された事項は、既存の製造販売承認の下では変更することができず、その変更には一部変更承認申請又は軽微変更届出が必要である。そうすると、原告カプセルを製造するための中間物質として本件発明に係る結晶の製造及び使用には、原告カプセルの製造販売承認が必要であり、同製造販売承15認によって初めて原告カプセルについての本件発明の実施が解除されたといえる。したがって、本件延長により延長された特許権の効力は、原告カプセル及びそれと実質的に同一の物についての本件発明に係る結晶の製造及び使用に及ぶ。 被告らの主張は、延長された特許権 除されたといえる。したがって、本件延長により延長された特許権の効力は、原告カプセル及びそれと実質的に同一の物についての本件発明に係る結晶の製造及び使用に及ぶ。 被告らの主張は、延長された特許権の効力が政令処分対象物そのもの実施行20為にしか及ばないことを前提にしているが、特許法68条の2は、「延長された特許権の効力は政令処分対象物「についての」当該特許発明の実施に及ぶ」としており、延長された特許権の効力は、政令処分対象物そのものの実施行為に限定されるものではない。 イ 以上をふまえると、薬事法の製造販売承認の審査において、特許発明に関し25て「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」以外の事項が審査された場合、 11 特許法68条の2の「当該用途に使用される物」の特定には①「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」を用いるとの解釈(オキサリラティヌム事件大合議判決参照)及び②上記に加え、特許発明に関して審査された事項を用いるとの解釈があり得る。 ①の解釈は、オキサリプラティヌム事件大合議判決の規範を他の類型にも拡5張したものである。この場合、後発医薬品の先発医薬品との差異は、物の特定には反映されていない。そこで、実施行為の実質同一が問題となる。 その一方、製造販売承認によって特許発明の実施の禁止が解除されることを重視すると、②の解釈が合理的である。特許発明に関して審査された事項が物の特定に組み込まれているため、当該審査事項に関する後発医薬品の先発医薬10品との差異は、物の実質同一の問題となる。次に述べるように、①、②のいずれの解釈によっても、本件延長登録の効果は、本件原薬の製造過程で製造される物質に及ぶ。 ①「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」により特許法68条の2の「当該用途に使用される物」を特定 のいずれの解釈によっても、本件延長登録の効果は、本件原薬の製造過程で製造される物質に及ぶ。 ①「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」により特許法68条の2の「当該用途に使用される物」を特定するとの解釈15ⅰ 医薬品の「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」により特許法68条の2の「当該用途に使用される物」を特定する場合、エルデカルシトールの結晶形は、物の特定とは無関係である。被告カプセルにおいて被告原料に含まれる本件発明に係る結晶が別の結晶形に転換されているという事情は、実施行為の実質同一において考慮されうる(後述のⅱ)。原告カ20プセルと被告カプセルとは、用法、用量、効能及び効果の点で同一である。 エルデカルシトール以外の成分(添加物)に関し、その種類の一部に違いがあり、共通する添加物についても違いが生じうる。しかし、これらの違いは、本件発明の特徴及び作用効果(例えば、エルデカルシトールの純度の向上及び安定性の向上)とは無関係である。したがって、これらの違い25は、実質同一に影響を及ぼすものではない。 12 ⅱ 原告医薬品については、本件発明の実施行為として、本件発明に係る結晶形のエルデカルシトールが製造され、(他の結晶形又はアモルファスを経ることなく)溶媒に溶解される。それに対し、被告カプセルでは、参考合成例原料(本件発明に係る結晶を含む。)が製造され、薬液の調製にて溶媒へ溶解させる前に別の結晶形に変換される。 5被告カプセルについての本件発明の実施行為が、原告カプセルについての本件発明の実施行為と上記の点(溶媒へ溶解させる前に本件発明に係る結晶形とは別の結晶形に変換される点)で異なるとしても、実質同一なものである。被告カプセルについての実施行為も、本件発明に係る結晶を得ている以上、本件発明 記の点(溶媒へ溶解させる前に本件発明に係る結晶形とは別の結晶形に変換される点)で異なるとしても、実質同一なものである。被告カプセルについての実施行為も、本件発明に係る結晶を得ている以上、本件発明の特徴及び作用効果(例えば、純度の向上、安定性10の向上又は品質の安定化)を享受している。 ②特許発明に関して審査された事項を特許法68条の2の「当該用途に使用される物」の特定に用いる解釈ⅰ 原告医薬品に関する「当該用途に使用される物」は、成分、分量、用法、用量、効能及び効果に加え、さらに「エルデカルシトールとして本件発明15に係る結晶が使用された」によって特定される。 被告カプセルにおいても、参考合成例原料(本件発明に係る結晶を含む)が使用されている。そのため、この特定が加わっても、被告カプセルと原告カプセルに関する「当該用途に使用される物」との間に差異は生じない。 仮に、原告カプセルに関する「当該用途に使用される物」について「本20件発明に係る結晶のエルデカルシトールが(他の結晶形又はアモルファスを経ることなく)溶媒に溶解された」との特定が加わると解しても、被告カプセルは、「当該用途に使用される物」と実質同一なものである。その理由は、本件後発医薬品において、参考合成例原料(本件発明に係る結晶を含む。)が使用されている以上、本件発明の特徴及び作用効果(例えば、純25度の向上、安定性の向上又は品質の安定化)を享受しているためである。 13 第三者が、本件発明に係る結晶のエルデカルシトールを得ることによって本件発明の作用効果を利用しつつ、薬液の製造の前に別の結晶形に転換するという工程を付加することにより、特許権侵害を免れることができるとしたら、延長された特許権は骨抜きとされてしまい、衡平の理念に反する。 5 用効果を利用しつつ、薬液の製造の前に別の結晶形に転換するという工程を付加することにより、特許権侵害を免れることができるとしたら、延長された特許権は骨抜きとされてしまい、衡平の理念に反する。 5ⅱ 原告カプセルと被告カプセルとは、用法、用量、効能及び効果の点で同一である。エルデカルシトール以外の成分(添加物)に関し、その種類の一部に違いがあり、共通する添加物についても違いが生じうる。しかし、これらの違いは、本件発明の特徴及び作用効果(例えば、エルデカルシトールの純度の向上及び安定性の向上)とは無関係である。したが10って、これらの違いは、実質同一に影響を及ぼすものではない。 ⅲ 特許発明の実施に関する実質同一は、「当該用途に使用される物」の実質同一において既に検討したとおりであるため(前記ⅰ)、詳細は省略する。 (被告日産化学の主張)15原告の主張は争う。 で主張した通り、被告日産化学は、本件発明の技術的範囲に属する物を製造していないから、本件延長登録の効力が及ぶ余地はない。 また、延長登録によって効果が及ぶのは、「処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばない」20のであるから、本件延長登録が効果を及ぼす物は、構成要件A、Bに加えて、次の要件を満たす必要がある。 C 用途が骨粗鬆症であることD 有効成分がエルデカルシトールであることE 原告カプセルであること25一方、原告は、参考合成例原料を製造するための中間物質に本件延長の効力が 14 及ぶかを問題にしているところ、中間物質がC、Eを満たさないことは明らかである。 原告は、「当該用途に使用される物の 告は、参考合成例原料を製造するための中間物質に本件延長の効力が 14 及ぶかを問題にしているところ、中間物質がC、Eを満たさないことは明らかである。 原告は、「当該用途に使用される物の実施」に当たるか否かについて、「使用される」という語を「骨粗鬆症薬の生産に使用される」の意味にすり替えて論じようとしているが、明らかな誤りである。 5(被告沢井及び被告日医工の主張)ア 原告の主張は争う。原告は独自の解釈論を展開するものであり、理由がない。 イ 本件発明に係る結晶が含まれていない原告カプセルと被告日医工が本件原薬製造の過程で製造する物質が実質同一とされる余地はない。 10ウ 原薬の製造及び使用は、医療用医薬品以外の用途であれば、政令処分を受けなくても自由に行うことができる。当該医薬品の製造販売が禁止されていたことにより、当該医薬品を製造する限りにおいて、原薬の製造及び使用が事実上制限を受けていたというものでしかない。 本件特許は、訂正要件違反によって無効とされるべきであるか(争点3)15(被告日産化学の主張)原告は、本件訂正が特許法126条1項2号の誤記の訂正に当たると主張するが、「誤記の訂正」は、出願人の内心の意思がどうであるかではなく、「本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と20同一の意味を表示するものと客観的に認められるもの」(審判便覧38-03の3)である。 しかし、本件明細書には、訂正前の格子定数a=10.352が誤記であることをうかがわせるような記載はどこにも見当たらず、拒絶理由通知に対する意見書においても、格子定数a=10.352などを加える限定をしたことで25 15 格子定数a=10.352が誤記であることをうかがわせるような記載はどこにも見当たらず、拒絶理由通知に対する意見書においても、格子定数a=10.352などを加える限定をしたことで25 15 進歩性を主張しており、「訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる」事情は存在しない。 また、本件特許発明の結晶の格子定数がどのような値であるのかは、発明者自らが生成した結晶についてX線結晶構造解析により測定しなければ分からない数値であり、明細書を見た当業者にとってそれが誤記であるなどと客観的5に認識することはできない。 よって、本件訂正は、誤記の訂正には当たらない。 本件訂正は、本件明細書の記載に基づくものではないから、新規事項を追加する訂正であり、特許法123条1項8号によって無効とされるべきである。 (被告沢井及び被告日医工の主張)10原告は、特許法126条1項2号の誤記の訂正として本件訂正を行ったと主張するが、誤記の訂正とは、「本来その意であることが明細書、特許請求の範囲または図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるもの」(審判便覧38-03の3参照)である。 15格子定数は、特許請求の範囲における発明の構成に欠くことができない事項の一つであり、訂正前の記載は、それ自体、結晶構造を特定する数値として明瞭であり、明細書の他の記載を参酌することなく、記載内容を明確に理解することができる。また、訂正前の明細書では一貫して同じ数値が記載されていた。 訂正前の格子定数と訂正後の格子定数は明らかに結晶構造を異にする結晶を20規定している。その上、原告は、誤記の根拠として、一般に公 きる。また、訂正前の明細書では一貫して同じ数値が記載されていた。 訂正前の格子定数と訂正後の格子定数は明らかに結晶構造を異にする結晶を20規定している。その上、原告は、誤記の根拠として、一般に公開されていない社内報告書を提出するのみで、誤記であることを当業者が当然に理解するだけの技術常識もない。 仮に本件明細書に記載された合成方法によって結晶を得てX線構造解析を経て、本件明細書記載の格子定数と一致しないことが確認されたとしても、こ25れが誤記であるか否かは特許権者にしか判断できないことであり、当業者が当 16 然に誤記と認識できるようなものではない。 仮に追試によって誤記であることが認識できるとしても、追試をして解析しなければ誤記であることが確認できないような事項は「本来その意であることが明細書、特許請求の範囲または図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すこと」を超えている。 5そうすると、訂正前の明細書及び特許請求の範囲の記載に接した当業者において、これが客観的な誤記であると認識することは困難であり、このような訂正は、明細書及び特許請求の範囲の記載の公示の機能を害し、本件訂正前の特許請求の範囲の記載を信頼する第三者に不測の不利益を与えるものである。したがって、本件訂正が誤記の訂正と認められる余地はない。 10本件訂正は、結晶構造を異にする結晶に変更する、特許請求の範囲を実質的に変更する訂正であり、かつ、訂正前の明細書に記載されていない新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法126条1項但書、同条5項及び6項に違反するものであり、特許法123条1項8号の無効理由となるものであるから、特許法104条の3によって、原告は本件特許権に基づく権利の行使15をすることができない。 (原告 同条5項及び6項に違反するものであり、特許法123条1項8号の無効理由となるものであるから、特許法104条の3によって、原告は本件特許権に基づく権利の行使 をすることができない。 (原告の主張)本件明細書には、特定の結晶形を得るための合成方法が記載されており、特許請求の範囲に記載されたのは本件明細書の実施例2で得られる結晶形を指す。 平成8年1月29日作成の「実96 0021実験・研究報告書(概要)」と題された原告の社内報告書には、格子定数aは10.325(2)Åであることが記載されており、本件訂正前の本件明細書の実施例4の記載は、同報告書の記載を誤って転記したものである。本件訂正は、出願人の内心の意思と明細書又は図面の記載による表示の間の錯誤を解消するものである。し たがって、特許法126条1項ただし書2号(誤記又は誤訳の訂正)の目的 のために行われたものであり、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではない。 本件明細書には、実施例2に、本件発明に係る結晶を得るための具体的な条件が記載されている。したがって、当業者であれば、本件明細書に従って結晶を得て、X線構造解析を行うことにより、正しい格子定数aを認識し、 設定登録時の格子定数aが実際の値とは異なることを理解できた。 一つの化合物において自然界に存在する結晶形の数は限られており、結晶多形の間で結晶構造は互いに大きく異なる。したがって、第三者が、設定登録時の特許請求の範囲に記載された結晶構造を別の結晶形と誤解するおそれもなく、不利益を被るおそれもない。 本件訂正は、この結晶形を正確に表すためのものであり、出願当初の明細書及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものである。したがって、本件訂正は、特許法126条 利益を被るおそれもない。 10本件訂正は、この結晶形を正確に表すためのものであり、出願当初の明細書及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものである。したがって、本件訂正は、特許法126条5項の要件を満たす。 本件延長登録は無効とされるべきであるか(争点4)(被告日産化学の主張)15ア 特許権の延長登録は、「その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったとき」(特許法第67条4項)に認められる。 20本件延長登録の対象となった原告カプセルには、エルデカルシトールの結晶は含まれていない。そうすると、原告医薬品の製造、使用は、本件発明の実施ではない。すなわち、本件特許の物の発明としての結晶の製造でもなく、使用でもない。その結果、本件特許の延長登録の基礎となった処分のために、本件発明の実施は何ら制限されておらず、「その特許発明の実施をすること25ができない期間」があったとはいえない。 18 イ また、仮に何らかの結晶が本件延長登録に係る「処分」の対象になっていたとしても、原告は、延長登録出願の審査過程において、処分を受けるために実施が制限された物と、本件発明に係る結晶が同一であることを証明していないのであるから、「その延長登録がその特許発明の実施に特許法第67条第4項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められな5い場合の出願に対してされたとき」に該当し、特許法第125条の3第1項1号の規定により、その延長登録は無効とされるべきである。 ウ よって、本件延長登 を受けることが必要であつたとは認められな い場合の出願に対してされたとき」に該当し、特許法第125条の3第1項1号の規定により、その延長登録は無効とされるべきである。 ウよって、本件延長登録は無効とされるべきであり、その場合、本件特許権は出願から20年の経過を持って既に満了している。 (被告沢井及び被告日医工の主張) アで主張したとおり、本件延長登録は原告カプセルについてされたものであるところ、原告カプセルは本件発明の技術的範囲に属するものではないから、処分を受けるためにその特許発明の実施をすることができない期間があったときに当たらない。 イまた、原薬の製造については、「安全性の確保等を目的とする法律の規定 による許可その他の処分」(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づく承認)は必要とされていないので、原告の主張はその前提を欠く。 ウ本件延長登録は、平成28年法律第108号による改正前の特許法67条2項に違反してされたものであり、これは、特許法125条の2に定め る無効理由となるものであるから、原告は、特許法104条の3により、本件特許権に基づく権利の行使をすることができない。 (原告の主張)前記のとおり、特許発明の種類及び対象によっては、製造販売承認の対象である医薬品がその技術的範囲に属さない場合であっても、その医薬品につい ての特許発明の実施が製造販売承認まで禁止される場合がある。 原薬が特許発明の技術的範囲に属し、かつ品質、有効性及び安全性に関する事項の薬事審査の対象とされる場合、その原薬を用いた医薬品の製造販売承認まで、当該医薬品についての特許発明の実施は制限されている。 また、原告カプセルの治験につき原薬に用いられた試 安全性に関する事項の薬事審査の対象とされる場合、その原薬を用いた医薬品の製造販売承認まで、当該医薬品についての特許発明の実施は制限されている。 また、原告カプセルの治験につき原薬に用いられた試料をXRPDで解析したところ、同原薬が本件発明に係る結晶を主要な成分として含有することを確5認している。 被告らにつき共同不法行為が成立するか(争点5)(原告の主張)ア 被告日産化学と被告日医工及び被告沢井とは、あらかじめ計画された一連のプロセスを分担して実施しており、これらの行為は、エルデカルシトール10を有効成分とする被告カプセルの製造において一体をなしている。被告カプセルの製造にあたり、被告日産化学の行為と被告日医工及び被告沢井の行為とは、互いに他方を必要としており、一体性を有する。 したがって、被告日産化学の行為と、被告日医工及び被告沢井の行為との間に、客観的関連共同性が認められる。 15イ 被告日医工及び被告沢井は、後発医薬品メーカーとして、結晶形に細心の注意を払ってきた。そして、本件原薬の製造方法は、日産化学明細書によって公開されていた。そのため、被告日医工及び被告沢井は、本件原薬を製造するための中間物質として被告原料が製造されることも当然に認識していたし、日産化学明細書を基にした再現実験等によって被告原料に本件発明に20係る結晶が含まれていることは容易に確認でき、確認したはずである。 したがって、被告日医工及び被告沢井は、被告日産化学が本件発明に係る結晶を製造していると認識しているか、あるいは、容易に認識し得た。被告日医工及び被告沢井は、この認識の下、被告日産化学の行為を利用してきた。 被告日産化学は、参考合成例原料を経た本件原薬が被告日医工及び被告沢井25にて使用されることについて、積極的な営業 た。被告日医工及び被告沢井は、この認識の下、被告日産化学の行為を利用してきた。 被告日産化学は、参考合成例原料を経た本件原薬が被告日医工及び被告沢井 にて使用されることについて、積極的な営業活動を行った。 これらに前記アで述べた事情も考慮すれば、被告日医工及び被告沢井は、被告日産化学と共同の意思の下、被告カプセルの製造及び販売のため、本件発明に係る結晶を含む参考合成例原料を製造及び使用していることは明らかである。あるいは、被告日医工及び被告沢井は、本件後発医薬品の製造及び販売のため、被告日産化学を指揮監督の下で用いて、被告原料を製造及び 使用していることは明らかである。 (被告沢井及び被告日医工の主張)原告の主張は争う。被告沢井及び被告日医工は、本件発明に係るエルデカルシトールの結晶を含有する組成物を保有、使用していない。仮に被告日産化学が本件発明に係る結晶を製造していたとしても、被告日医工及び被告沢井製薬 の行為の間に客観的関連共同性はない。また、被告沢井及び被告日医工は、被告日産化学が中間物質として本件発明に係る結晶を製造しているとの認識を有していない。よって、被告日産化学と共同の意思を有している事実はなく、また、被告日医工及び被告沢井が被告日産化学をその指揮の下で用いている事実もない。 損害(争点6)(原告の主張)ア令和元年において、エルデカルシトールを有効成分とする医薬品は、原告医薬品及び原告医薬品と同一の名称、内容で大正製薬株式会社が販売していた医薬品のみであった(以下、これらの医薬品を総称して「エディロール」 という。)。エディロールの同年の売上げは720億円であった。 被告沢井製薬及び被告日医工は、令和2年8月、被告カプセルの販売を開始した。その結果、同 れらの医薬品を総称して「エディロール」20という。)。エディロールの同年の売上げは720億円であった。 被告沢井製薬及び被告日医工は、令和2年8月、被告カプセルの販売を開始した。その結果、同月から同年10月の3月間における原告カプセルの売上げは、前年の同じ時期と比較して、約45%減少した。そうすると、エディロール全体の売上げ減少は、次のとおり81億円を下らない。 25720億円×(3/12)×0.45=81億円 21 エディロールの売上げの減少は、被告カプセルの販売によるものであるといえ、エディロールの販売減少に対応するだけ、被告カプセルの売上げがあったといえるところ、原告及び大正製薬株式会社が販売する「エディロールカプセル0.75μg」及び「エディロールカプセル0.5μg」の薬価は98.20円/カプセル及び62.90円/カプセルであるのに対し、本件5後発医薬品のうち用量が0.75μgのタイプ及び0.5μgのタイプの薬価は、35.3円/カプセル及び24.90円であり、エディロールの売上げのうち、「エディロール®カプセル0.75μg」が、全体の約90%を占めることからすると、被告カプセルの売上げは、次のとおり29億円を下らない。 1081億円×0.9×(35.3/98.2)+81億円×0.1×(24.9/62.9)≒29億円被告沢井と被告日医工の売上げは同等である。また、両社は、いずれも、2社から被告カプセルの原薬を購入しており、被告沢井及び被告日医工が販売した被告カプセルのうち、被告日産化学から購入した原薬から製造された15被告カプセルは販売されたカプセルの半分であるといえる。被告沢井と被告日医工の利益率は30%を下らない。よって、被告沢井及び被告日医工が、本件原薬から製造した被告カプセルの販 から製造された15被告カプセルは販売されたカプセルの半分であるといえる。被告沢井と被告日医工の利益率は30%を下らない。よって、被告沢井及び被告日医工が、本件原薬から製造した被告カプセルの販売による利益は、次のとおり、それぞれ、2億2000万円を下らない。 29億円×0.3×(1/2)×(1/2)≒2.2億円20よって、特許法102条2項により、原告が被告日産化学が被告沢井に本件原薬を販売したことに係る損害及び被告日産化学が被告日医工に本件原薬を販売したことに係る損害は、それぞれ2億2000万円を下らないところ、原告は、その一部として、5000万円ずつを請求する。 イ 弁護士費用相当損害金は前記各2億2000万円の10%である各222500万円を下らないところ、その一部として、被告日産化学及び被告沢井、 22 被告日産化学及び被告日医工それぞれに対して、500万円ずつを請求する。 (被告日産化学の主張)争う。 (被告沢井及び被告日医工の主張)争う。 5第3 当裁判所の判断1 争点1(被告日産化学が本件原薬を製造する過程で、本件発明の技術的範囲に属する結晶を製造しているか)についてア 本件明細書には、以下の記載がある。(なお、二重下線部分が訂正部分であり、その後の括弧内に訂正前の内容を記載している)(甲12、14)10【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なビタミンD誘導体結晶、より詳細には、逆相系クロマトグラフィーで精製したビタミンD誘導体を有機溶媒で結晶化させて得られる新規なビタミンD誘導体結晶に関する。本発明はま15た、結晶化工程を含むビタミンD誘導体の精製方法に関する。 【0002】【従来技術】各種のビタミンD誘導体は有用な生 で結晶化させて得られる新規なビタミンD誘導体結晶に関する。本発明はま15た、結晶化工程を含むビタミンD誘導体の精製方法に関する。 【0002】【従来技術】各種のビタミンD誘導体は有用な生理活性を有することが知られている。例えば、特公平6-23185号には、下記一般式:【化12】20 [式中、R1はアミノ基又は式OR’(R’は水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、アシルアミノ基で置換されているか若しくは非置換の炭素数1~7の低級 23 アルキル基である)を意味し、R2は水素原子又は水酸基を意味する]で示される1α-ヒドロキシビタミンD3誘導体が記載されており、この誘導体がカルシウム代謝異常に基づく疾患の治療薬または抗腫瘍剤として有用であることが記載されている。また、上記一般式に属する化合物の1つである1α、25-ジヒドロキシ-2β-(3-ヒドロキシプロポキシ)ビタミンD3(E5D-71とも称される)は骨形成作用を有する活性型ビタミンD誘導体であり、骨粗鬆症治療剤として開発が進められている。 【0003】その一方で、活性化合物の治療用原体の製造においては、より高品質の原体を大量に安定的に製造する必要があり、そのためにできるだけ早い段階で原体の製造方法を確立することが要求されている。特に、ED-1071は従来アモルファスの形態でしか得られておらず、結晶の形態で得たという報告はない。 【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ビタミンD誘導体、特にはED-71の高純度精製物を大量的かつ安定的に供給するための方法を15確立することである。本発明の一つの目的は、未精製物または粗精製物を精製して得たビタミンD誘導体結晶を提供することである。本発明の別の目的は、結晶化工程を含むビタミンD誘導 するための方法を 確立することである。本発明の一つの目的は、未精製物または粗精製物を精製して得たビタミンD誘導体結晶を提供することである。本発明の別の目的は、結晶化工程を含むビタミンD誘導体の精製方法を提供することである。 本発明の別の目的は、結晶化工程を含むED-71のプレ体化合物の精製方法、並びに当該方法により得られた精製されたプレ体化合物を提供すること である。本発明のさらに別の目的は、ビタミンD誘導体の合成および精製中に副生する新規化合物を提供することである。 【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは、(1)ED-71のHPLC分取精製におけるプロビタミンD誘導体(プロ体)中の不純物の影響;(2)プ レビタミンD誘導体(プレ体)及びED-71の熱、光、酸素による安定性; および(3)微量高生理活性物質であるED-71の取扱い;および(4)結晶化による精製の可能性といった観点に留意して、プロ体からED-71までの合成精製工程を鋭意研究した。その結果、メタノールで再結晶したプロ体を使用し、低温で光反応を行い、熱異性化反応後、逆相系HPLCで精製し、濃縮し、酢酸エチルで結晶化することにより、ED-71結晶をグラ ムオーダーで得ることに成功し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、プロ体中および光反応での副生物の構造を解明し、新規な化合物をも同定した。 【0013】本明細書中において、「結晶」という用語はその最も広い意味において用いられ、結晶形態、結晶系などは特に限定されないものとする。 【0014】本発明の最も好ましいビタミンD誘導体であるED-71の結晶体は、上記の通り、その性質は特に限定されるものではないが、特に好ましくは以下の条件を充足するものである。 する。 【0014】本発明の最も好ましいビタミンD誘導体であるED-71の結晶体は、上記の通り、その性質は特に限定されるものではないが、特に好ましくは以下の条件を充足するものである。 (1)性状(外観):肉眼および蛍光顕微鏡により観察し白色の結晶性の粉末。 (2)溶状:1mg/mLエタノールで透明溶液となる。 (3)確認:IR法またはNMR法で構造を支持する。 (4)融点:DSCで測定して130℃以上を示す。 (5)吸光係数:40μg/mLエタノールで265nmのε を測定し、16000以上を示す。 (6)HPLC純度:HPLC(DIACHROMAODSN-20 5μm 4.6×250mm、45%アセトニトリル-水、流速1mL/分、220nm、1mg/mL10μL、4-90分)のピーク面積が97%以上である。 【0016】本明細書中において、「未精製物または粗精製物」とは、ビタミンD誘導体の合成反応直後の未精製のままの生成物、または慣用な精製方法 で粗精製した後のビタミンD誘導体生成物を意味し、それらは通常アモルフ ァス形態で存在している。 【0017】本明細書中においては、「逆相系クロマトグラフィー」とは、通常の意味と同じように、固定相の方が移動相より極性の小さい系でのクロマトグラフィーを意味する。逆相系クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で行うのが好ましい。目的とする物質を効率よく分離 するためには分離溶剤、充てん剤の種類およびカラムへの負荷量を適宜選択することが必要である。 【0018】分離溶剤の例としては、アセトニトリル/水系およびメタノール/アセトニトリル/水系などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、上記の溶剤を用いる場 することが必要である。 【0018】分離溶剤の例としては、アセトニトリル/水系およびメタノール/アセトニトリル/水系などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、上記の溶剤を用いる場合の混合比率は、精製目的物の種類、 充填剤の種類などに応じて最適な比率を選択すればよく、特には限定されない。それらの比率は、一般的には、アセトニトリル20~60重量部、メタノール0~40重量部、そして水0~80重量部である。充てん剤の種類は、粒径、ポアーサイズなどを指標にして、使用するカラムあるいは精製目的物との適合性などを考慮して適宜選択することができる。カラム負荷量はカラ ムの内径などに応じて調節することが必要であるが、例えば内径50mmの場合には、25μgから10g程度、好ましくは25μgから3g程度負荷することができる。 【0019】上記のクロマトグラフィーで得た画分は結晶化に先立って、単離することが必要である。単離法としては、エバポレーターによる濃縮、凍 結乾燥、抽出法、濾過法などが挙げられる。上記を含む単離法の中から目的精製物の性質などを考慮して適当なものを適宜選択すればよい。例えばED-71を精製する場合にはエバポレーターによる濃縮が操作上利点が大きく、再現性があり、またED-71が分解しないという理由により好都合である。 【0020】ビタミンD誘導体の結晶化のために用いる有機溶媒は、好まし くは、非プロトン性有機溶媒である。非プロトン性有機溶媒の例としては、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、あるいはアセトニトリル、またはこれらの混合溶媒などが挙げられ、特に好ましい有機溶媒は、酢酸エチル、アセトンまたはアセト ンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、あるいはアセトニトリル、またはこれらの混合溶媒などが挙げられ、特に好ましい有機溶媒は、酢酸エチル、アセトンまたはアセトニトリルあるいはこれらの混合溶媒である。晶析条件5は、目的精製物および晶析溶媒に応じて適宜選択する必要があり、一般的には、粗ビタミンD誘導体に対して、1倍から100倍、好ましくは5倍から10倍の溶媒を加えて、30℃以下、好ましくは-10℃以下で晶析させる。 【0027】実施例2:(1R、2R)-1、25-ジヒドロキシ-2-(3’-ヒドロキシプロポキシ)-コレカルシフェロール;2β-(3’-ヒドロキ10シプロポキシ)-(1α、3β、5Z、7E)-9、10-セココレスタ-5、7、10(19)-トリエン-1、3、25-トリオール(ED-71)の合成および精製【化28】 15 【0028】1L容器中で、実施例1で得た精製プロ体化合物2(6.02g)をTHF(1L)に溶解し、アルゴン脱気下、冷却状態(内温-13℃ 27 以下)で400W高圧水銀灯(Vycorフィルター使用)により150分間紫外線照射した。反応液を室温に戻し、THF(100mL)で共洗しつつ2L茄子型フラスコに移し、180分間加熱還流した。反応液を濃縮後、メタノール(80mL)に溶解し分離サンプルとした。分離サンプル20mL(Pro体換算1.5g量)を、分取用カラムクロマト装置(内径50×長5さ300mm;充てん剤名DIACHROMA ODS N-20、三菱加工機から入手;粒径5μm)に全量ポンプ注入した。45%アセトニトリル水溶液(60ml/分)で展開し、UV(220、305nm)でモニターして ED-71の分画を約2.4L(約130~170分 加工機から入手;粒径5μm)に全量ポンプ注入した。45%アセトニトリル水溶液(60ml/分)で展開し、UV(220、305nm)でモニターして ED-71の分画を約2.4L(約130~170分)を得た。同様の操作を3回繰り返し、計4回分のED-71の分取分画約9Lを10Lエバポ10レータで濃縮した。残査をエタノールに溶解し、再度濃縮乾固した。濃縮残査に酢酸エチル(20ml)を加えて溶解し、室温撹拌下、結晶を析出させ、更に-10℃以下に冷却し、15分間撹拌した。結晶を濾取し、冷却した酢酸エチル(6ml)で3回洗浄後、室温で一晩減圧乾燥し、ED-71(2. 17g;収率36.1%)を得た。 15【0039】実施例4:ED-71のX線結晶構造解析ED-71試料(実施例3で使用したED-71試料)より結晶を選出し、X線回折実験を行った。その結果、本結晶は斜方晶系に属し、空間群P212121、格子定数a=10.325(2)(本件訂正前は「格子定数a=10. 352(2)」)、b=34.058(2)、c=8.231(1)Å、Z=420であることが判明し、2520個の反射データを測定した。構造解析は以下のように行った。直接法(SHELXS86)により位相を求め、非水素原子位置をフーリエ合成により見いだした。炭素に結合した水素原子位置については炭素原子位置より算出した。酸素に結合した水素原子位置は他の原子の位置を求めた後、D合成により見いだした。 25【0051】以上の結果から、25℃での2Wまで、並びに40℃での2W 28 までにおいては、結晶体の方がアモルファス体より安定性が高いことが明らかに分かる。 【0052】【発明の効果】本発明のビタミンD誘導体結晶は、純度の向上、安定性の向上および品質の安定化などの利点 でにおいては、結晶体の方がアモルファス体より安定性が高いことが明らかに分かる。 【0052】【発明の効果】本発明のビタミンD誘導体結晶は、純度の向上、安定性の向上および品質の安定化などの利点をもたらし、当該ビタミンD誘導体を含む5医薬品などを製造する際に有用である。また、本発明のビタミンD誘導体の精製方法により、高品質のビタミンD誘導体を安定的かつ大量的に(グラムオーダーで)製造することが可能になる。また、本発明のED-71の類縁化合物であるタキ体およびED-71のプロ体の類縁化合物であるルミ体は新規化合物であり、ビタミンD誘導体の合成における試験または分析の際10などに有用である。 イ 上記の本件明細書の記載によれば、本件発明は、従来、アモルファス(非晶質)の形態でしか得られておらず、結晶の形態で得たという報告がないエルデカルシトールについて、結晶形態を得ることによって高純度精製物を提供することなどを課題とする。そして、本件発明は、メタノールで再結晶し15たプロ体を使用し、低温で光反応を行うなどした上でエルデカルシトールを合成し、精製、濃縮し、酢酸エチルで結晶化することにより得られた、本件格子定数のエルデカルシトール結晶である。 ア 日産化学明細書には、以下の記載がある。 【技術分野】20【0001】本発明は、ビタミンD3誘導体の新規な結晶形及びその製造方法に関する。 【背景技術】【0002】ビタミンD誘導体は、多様な生理活性を有しており、それらの化合物は医25薬品として開発されている。特に式(1) 29 【化1】 で表される1α、25-ジヒドロキシ-2β-(3-ヒドロキシプロポキシ)ビタミンD3(化合物(1))は、骨粗しょう症治療薬として開発されている(特許文 特に式(1) 29 【化1】 で表される1α、25-ジヒドロキシ-2β-(3-ヒドロキシプロポキシ)ビタミンD3(化合物(1))は、骨粗しょう症治療薬として開発されている(特許文献1、非特許文献1)。また、化合物(1)の形態としては、非晶質5および1つの結晶形(本明細書中A型結晶と呼ぶ)が知られている。1998年に報告されたA型結晶は、これまで報告された唯一の結晶形である(特許文献2)【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】10【0005】本発明は、ビタミンD3誘導体の新規な結晶形を提供する。また本発明は、その新規な結晶形の製造方法を提供する。 【課題を解決するための手段】【0006】15医薬品原薬の開発において、その結晶形態の重要性に注目が集まる中で、結晶多形の存在を確認し、またその特性を解析することが求められている。 化合物(1)についても、A型結晶以外の新たな結晶形の発明が求められていた。 上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、化合物(1)20の新規な結晶形(本明細書中、B型及びC型結晶と呼ぶ)及びその製造方法 30 を見出し、本発明を完成させた。 【発明を実施するための形態】【0010】以下に、本発明についてさらに詳しく説明する。 【0011】5本明細書中の「n-」はノルマルを、「i-」はイソを、「t-」はタ-シャリ-を、「Ph」はフェニルを、「TES」はトリエチルシリルを意味する。 【0012】まず、化合物(1)のB型結晶の製造方法について説明する。 【0013】10化合物(1)を加熱溶解させる溶媒には、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。有機溶媒は水と任意の割合 物(1)のB型結晶の製造方法について説明する。 【0013】10化合物(1)を加熱溶解させる溶媒には、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒を用いることができる。有機溶媒は水と任意の割合で溶解するものが好ましく、例えばアルコール溶媒、ニトリル溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒が挙げられる。 より好ましくは、アルコール溶媒はメタノール、エタノール、n-プロパ15ノール、i-プロパノール、t-ブタノール、ニトリル溶媒はアセトニトリル、エーテル溶媒はテトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、ケトン溶媒はアセトン、アミド溶媒はN、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、スルホキシド溶媒はジメチルスルホキシドである。 【0014】20これらの溶媒は単独で使用できるし、2種類以上を混合して使用することもできる。 【0015】水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、その含水率は、化合物(1)を一旦溶解することができる任意の含水率を選択することができる。使用する有25機溶媒として、好ましくはアルコール溶媒、ニトリル溶媒又はこれらの混合 31 溶媒であり、より好ましくはメタノール、エタノール又はアセトニトリルである。晶析効率と精製効果のバランスを考えると、有機溶媒と水の混合比は、好ましくは9:1乃至1:9、より好ましくは5:5乃至3:7である。 【0016】使用する有機溶媒の量は化合物(1)を溶解する量を任意に設定できるが、5好ましくは化合物(1)に対し1乃至100質量倍であり、より好ましくは5乃至50質量倍であり、更に好ましくは10乃至25質量倍である。 【0017】水と有機溶媒の混合溶媒を事前に調製し、これに化合物(1)を溶解した後、冷却又 00質量倍であり、より好ましくは5乃至50質量倍であり、更に好ましくは10乃至25質量倍である。 【0017】水と有機溶媒の混合溶媒を事前に調製し、これに化合物(1)を溶解した後、冷却又は濃縮することで結晶化させることもできるし、化合物(1)を10有機溶媒に溶解した後、水を加え、又は水に加えることで結晶化させることもできる。上記、水と有機溶媒の混合溶媒から析出させる方法、有機溶媒と水を混合させて析出させる方法は、両者とも冷却しても濃縮しても、冷却と濃縮の両方を組み合わせても結晶化することができる。 【0018】15本明細書中、急冷とは、化合物(1)を溶媒に60℃以上で加熱溶解させた状態から、10℃以下の状態まで15分以内に降下させることを意味する。 結晶が析出する温度は30℃以下であり、好ましくは-30℃乃至20℃であり、より好ましくは-10℃乃至10℃である。 【0019】20化合物(1)の溶液を濃縮して結晶化させる場合、任意の量の溶媒を残して結晶化させることもできるし、完全に除去して結晶化させることもできる。 【0020】なお、結晶化に際しては、種晶を使用することもできる。種晶は前述に記載の手法を、あらかじめ小スケールで実施することにより取得できる。 25【0021】 32 B型結晶は、次の(a)の物性値で特定される。 (a)Cu・Kα を線源とした粉末X線回折測定において、2θ=4.1°±0. 2°、5.0°±0.2°、7.5°±0.2°、9.3°±0.2°、10.0°±0. 2°、12.1°±0.2°、12.6°±0.2°、12.9°±0.2°、13.6°±0.2°、14.9°±0.2°、15.4°±0.2°、17.3°±0.2°、18. 57°±0.2°、19.0 2°、12.1°±0.2°、12.6°±0.2°、12.9°±0.2°、13.6°±0.2°、14.9°±0.2°、15.4°±0.2°、17.3°±0.2°、18. 57°±0.2°、19.0°±0.2°に特徴的なピークを有する。 【0022】次に、化合物(1)のC型結晶の製造方法について説明する。 【0023】C型結晶は、B型結晶を加熱することで製造することができる。加熱温度10は、好ましくは、30℃乃至90℃であり、より好ましくは60℃乃至80℃である。加熱時間は、好ましくは恒量に到達するまでであり、より好ましくは2時間以内である。 【0024】C型結晶は、次の(a)、(b)又は(c)のいずれかの物性値で特定するこ15とができる。 (a)粉末X線回折一つの様態として、C型結晶は、Cu・Kα を線源とした粉末X線回折測定における2θ=7.5°±0.2°、9.3°±0.2°、10.0°±0.2°、12.2°±0.2°、12.6°±0.2°、12.9°±0.2°、15.3°±0. 202°のいずれか3本以上のピークで特定することができる。 一つの様態として、C型結晶は、上記7本のピークのいずれか5本以上で特定することができる。 一つの様態として、C型結晶は、上記7本のピークで特定することができる。 25一つの様態として、C型結晶は、Cu・Kα を線源とした粉末X線回折測 33 定における2θ=5.0°±0.2°、7.5°±0.2°、9.3°±0.2°、10.0°±0.2°、12.2°±0.2°、12.6°±0.2°、12.9°±0. 2°、13.8°±0.2°、14.8°±0.2°、15.3°±0.2°、17.3°±0.2°、18.7°±0.2°、19.0°±0.2 、12.2°±0.2°、12.6°±0.2°、12.9°±0. 2°、13.8°±0.2°、14.8°±0.2°、15.3°±0.2°、17.3°±0.2°、18.7°±0.2°、19.0°±0.2°のいずれか3本以上のピークで特定することができる。 一つの様態として、C型結晶は、上記13本のピークのいずれか5本以上で特定することができる。 一つの様態として、C型結晶は、上記13本のピークのいずれか10本以上で特定することができる。 一つの様態として、C型結晶は、上記13本のピークで特定することがで きる。 (b)示差走査熱量測定において、特徴的なピークとして、85~93℃に吸熱ピーク、101~131℃に発熱ピーク、135~139℃に吸熱ピークを有する。 (c)結晶格子定数:空間群P21、格子定数a=17.71Å、b=7.6 3Å、c=11.70Å、β=93.43°【0025】粉末X線回折、示差走査熱量計の測定及び評価の技術常識については、例えば第十六改正日本薬局方などが参照できる。 粉末X線回折のピークは、回折角2θ(°)で表される。このピーク値は、通 常プラスマイナス0.2°の測定誤差を有しうる。 結晶格子定数の、算出および評価などの技術常識については、中井泉、泉富士夫編集、「粉末X線解析の実際(第2版)」、朝倉書店、2009年、197-201ページなどが参照できる。 【0026】 化合物(1)のB型結晶の製造の原料としては、化合物(1)の非晶質また はA型結晶もしくはその他の形態を用いることができる。それら化合物(1)の製造は、前述の特公平6-23185号や特開平10-72432号に記載の方法、またはそれらに準じた方法で製造することができる はA型結晶もしくはその他の形態を用いることができる。それら化合物(1)の製造は、前述の特公平6-23185号や特開平10-72432号に記載の方法、またはそれらに準じた方法で製造することができる。また、当業者は、ビタミンD3誘導体の製造方法として公知の方法を応用し、化合物(1)を製造することができる。 【0037】参考合成例2:化合物(1)の合成【化4】 フッ化テトラ-N-ブチルアンモニウム3水和物(6.13g、19.4 3mmoL)をテトラヒドロフラン(18.46g)へ溶解させた後、参考合成例1で合成した化合物(4)(3.07g、3.24mmoL)とテトラヒドロフラン(12.30g)の混液を25℃付近で加え、テトラヒドロフラン(9.30g)で洗い込み、25℃付近で15時間以上撹拌した。反応後、酢酸エチル(30.74g)及び精製水(24.57g)を加え、分液 操作により水層を分離した。分離した水層から酢酸エチル(15.37g、15.35g)で抽出を行い、さらに、全ての有機層を5%塩化ナトリウム水溶液(30.76g)で洗浄し、得られた有機層を減圧濃縮して、濃縮残渣(3.21g)を得た。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-(酢酸エチル)で精製し、濃縮乾固により、化合物(1)(1.41g、収率 89%)を白色固体として得た。 【0038】 LC純度:99.37%DSC(onset):135℃(endo)【0039】参考合成例3:化合物(1)のA型結晶の合成特開平10-72432号に記載の方法に準じて、目的化合物(0.56 g、収率81%)を白色結晶として得た。 【0040】LC-MS:491.37[M+H]1H NMR(400MHz、CDC 10-72432号に記載の方法に準じて、目的化合物(0.565g、収率81%)を白色結晶として得た。 【0040】LC-MS:491.37[M+H]1H NMR(400MHz、CDCl3)δ ppm 6.36(d、J=11.4Hz、1H)、6.04(d、J=11.4Hz、1H)、5.50(d、J=1.410Hz、1H)、5.08(t、J=2.1Hz、1H)、4.32(d、J=9.1Hz、1H)、4.26(d、J=2.3Hz、1H)、3.90-3.95(m、1H)、3.85(t、J=5.5Hz、2H)、3.70-3.75(m、1H)、3.25-3.28(m、1H)、2.80-2.83(m、1H)、2.40-2.44(m、3H)、1.82-2.05(m、5H)、1.21-1.69(m、23H)、151.05(q、J=9.9Hz、1H)、0.93(d、J=6.4Hz、3H)、0.55(s、3H)13C NMR(100MHz、CDCl3)δ ppm 144.2、143.1、132.2、125.0、117.3、111.9、85.5、77.3、71.6、71.2、68.3、66.6、61.3、56.6、56.4、46.0、44.5、2040.5、36.5、36.2、31.9、29.4、29.3、29.2、27.7、23.8、22.4、20.9、18.9、12.0LC純度:99.96%XRD:(特徴的なピーク)252θ=5.2°、11.9°、13.7°、14.0、14.9°、15.8°、1 36 7.2°、17.9°、18.9°、20.4°結果を図1に示す。 DSC(onset):139℃(endo)結果を図2に示す。 イ 上記の日産化学明細書の記載によれば、エルデカルシトール 7.2°、17.9°、18.9°、20.4°結果を図1に示す。 DSC(onset):139℃(endo)結果を図2に示す。 イ 上記の日産化学明細書の記載によれば、エルデカルシトールは、骨粗しょ5う症治療薬として開発されており、その形態としては、非晶質及び本件発明に係る結晶(日産化学明細書で「A型結晶」と呼ばれているもの。)が知られていたが、本件発明に係る結晶以外の結晶形の発明が求められていた。日産化学明細書記載の発明は、エルデカルシトールの新規な結晶であり、粉末X線解析測定における特徴的なピークにより特定されるB型結晶と呼ばれる10結晶(以下「B型結晶」という。)と、XRPD、示差走査熱量測定の特徴的なピーク及び結晶格子定数により特定されるC型結晶と呼ばれる結晶(以下「C型結晶」という。)である。 被告沢井は、平成28年頃、被告日産化学から、エルデカルシトールの新しい結晶形を開発することができたとして、エルデカルシトールの原薬について15営業活動を受け、新たな結晶形が開発されたのであれば、本件特許権に抵触することはないと判断し、被告日医工との共同開発により被告カプセルを開発した。(弁論の全趣旨)被告日産化学は、平成28年8月頃までに、日産化学明細書記載のエルデカルシトールの結晶であるB型結晶、C型結晶の発明を完成させた(甲1)。 20また、前記によれば、被告日産化学は、平成28年頃、本件発明に係る結晶以外の結晶の開発に成功したことを理由として挙げて、被告沢井にエルデカルシトールの販売を打診した。本件発明に係る結晶、B型結晶、C型結晶の3種の結晶の他に結晶形が知られていることをうかがわせる事情はない。 これらに、被告日産化学が、本件発明に係る結晶を直接使用して本件原薬を25 した。本件発明に係る結晶、B型結晶、C型結晶の3種の結晶の他に結晶形が知られていることをうかがわせる事情はない。 これらに、被告日産化学が、本件発明に係る結晶を直接使用して本件原薬を 製造していることをうかがわせる事情が全くないことも考慮すると、被告日産 化学は、B型結晶又はC型結晶を製造し、これを用いて本件原薬を製造しているものと一応推認することが合理的である。なお、B型結晶及びC型結晶が、いずれも本件発明の技術的範囲に属さないことについては争いがない。 原告は、日産化学明細書によれば、B型結晶及びC型結晶は、化学合成されたエルデカルシトールをもとに製造されているところ、日産化学明細書に参考 合成例2として記載されているエルデカルシトールの製造方法(日産化学明細書【0037】)の方法。以下「参考合成例方法」という。)に基づいてエルデカルシトールを合成して得られた白色固体をXRPDで分析したところ、同固体の主要な成分が本件発明に係る結晶であったと主張し、このことを根拠に、被告日産化学は、B型結晶又はC型結晶を製造するに当たって、本件発明に係 る結晶を中間物質として製造していると主張している。 しかし、被告日産化学が、B型結晶又はC型結晶を製造するに当たって、参考合成例方法によってエルデカルシトールを合成し、これを原料にB型結晶又はC型結晶を製造していることを直接裏付ける証拠はない。日産化学明細書の記載によれば、参考合成例方法を用いて合成されたエルデカルシトールを原料 にしてB型結晶、C型結晶を製造することができることは認められるものの、参考合成例方法以外の方法で製造したエルデカルシトールでは、B型結晶、C型結晶を製造することができない又は著しくこれが困難であることをうかがわせる事情はない することができることは認められるものの、参考合成例方法以外の方法で製造したエルデカルシトールでは、B型結晶、C型結晶を製造することができない又は著しくこれが困難であることをうかがわせる事情はない。 そもそも、日産化学明細書記載のB型結晶及びC型結晶の製造方法は、エル20デカルシトール合成後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、精製によって得られるエルデカルシトール溶液の溶媒である酢酸エチルを蒸発させて濃縮乾固して参考合成例原料を得(参考合成例方法。日産化学明細書【0037】)、参考合成例原料をアルコール溶媒(メタノール、エタノール等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル)等またはこれらと水の混合液(以下、これらの溶媒を併せ25て「B型用溶媒」という。)に溶解した後、水を加えたり、冷却や濃縮等するこ 38 とによってB型結晶を析出させ(日産化学明細書【0013】~【0021】)、得られたB型結晶を加熱してC型結晶を得る(日産化学明細書【0023】)というものである。 このような日産化学明細書記載の方法を前提にしても、B型結晶の製造方法は、エルデカルシトールのB型用溶媒溶液を製造し、これに上記の操作を加え5てB型結晶を析出させるというものなのであるから、エルデカルシトールのB型用溶媒溶液を得ることさえできれば、参考合成例原料を経由することなく、B型結晶を得ることができることは明らかである。 日産化学明細書にも、「化合物(1)(エルデカルシトール)のB型結晶の製造の原料としては、化合物(1)の非晶質(アモルファス)またはA型結晶も10しくはその他の形態を用いることできる。」と記載されており(日産化学明細書【0026】)、従前、エルデカルシトールはアモルファスの形態しか知られていなかったとされている(本件明細書【 結晶も10しくはその他の形態を用いることできる。」と記載されており(日産化学明細書【0026】)、従前、エルデカルシトールはアモルファスの形態しか知られていなかったとされている(本件明細書【0003】)ことからすると、エルデカルシトールのアモルファス形態を製造し(なお、再結晶が予定されているため、高純度が要求されるものでもない。)、これをB型用溶媒に溶かしてエルデ15カルシトールのB型用溶媒溶液を得ることに困難があるとは認められない。 以上のとおりであって、被告日産化学がB型結晶又はC型結晶を製造するに当たって参考合成例方法を採用していることを直接裏付ける証拠はない。かえって、本件明細書及び日産化学明細書の記載のみからですら、参考合成例原料を経由せずにB型結晶を得る手法が想定できる。そうすると、被告日産化学が、20原告が主張する本件原薬の製造方法を否認するのみで、参考合成例原料の製造方法の開示を拒んでいるといった事情等を考慮しても、被告日産化学が本件原薬を製造する過程において、参考合成例原料を製造していると認めるに足りないというべきである。その他、被告日産化学が本件発明の技術的範囲に属する結晶を製造していることを認めるに足りる証拠はない。 25第4 結論 39 よって、被告日産化学が本件発明の技術的範囲に属する結晶を製造しているとは認められないため、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部5 裁判長裁判官 柴 田 義 明 10裁判官 佐 伯 良 子 裁判官 仲 田 憲 史 15 裁判長裁判官 柴 田 義 明 10裁判官 佐 伯 良 子 裁判官 仲 田 憲 史 15 20 25 40 別紙被告原料目録(省略) 5
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