主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 原告らの請求名古屋市に対し, 1 被告自由民主党名古屋市会議員団は1億9745万円及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を, 2 被告民主党名古屋市会議員団は2億2880万円及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を, 3 被告公明党名古屋市会議員団は1億0725万円及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を, 4 被告市民クラブは825万円及びこれに対する平成12年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を,それぞれ支払え。 第2 事案の概要本件は,名古屋市の住民である原告らが,市政に関する調査研究を行う目的で交付される調査研究費(以下「研究費」という。)が,本来の用途に使用されていないなどと主張して,その交付を受け,管理の主体とされている名古屋市議会における4つの会派(以下,総称して「被告各会派」という。)に対し,名古屋市に代位して交付を受けた研究費を不当利得として返還するよう求めた住民訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 当事者原告らは,いずれも名古屋市の住民である。 被告各会派は,いずれも法人格を有しないが,共通の政治目的を達成するために名古屋市会議員が結合し,個人の活動から独立した社会活動を営む団体であって,代表者の定めを有している。 (2) 名古屋市における調査研究費の交付制度名古屋市は,名古屋市会における各会派の市政に関する調査研究の推進を図るため,所属議員数に応じた金額の研究費を交付する制度を,遅くとも昭和45年8月1日から設けている。 その交付について必要な事項を定めた「名古屋市 屋市会における各会派の市政に関する調査研究の推進を図るため,所属議員数に応じた金額の研究費を交付する制度を,遅くとも昭和45年8月1日から設けている。 その交付について必要な事項を定めた「名古屋市会調査研究費交付要綱(甲2。以下「要綱」という。)」には,研究費の交付を受けようとする各会派の代表者は,所要の事項を記載した会派届を市長に提出すること(2条1項),研究費は,議員個人ではなく,各会派に交付されること(3条),研究費は,毎月,各会派の所属議員数(毎月1日現在)の数に1人当たり55万円(平成8年4月1日以降)以内の額を乗じた金額とすること(4条,5条1項),研究費は,市政に関する調査研究の目的を達成するために使用しなければならないこと(8条),各会派の経理責任者は,当該会派に交付された研究費の経理を明確に行わなければならないこと(9条),各会派の代表者は,研究費の交付を受けた場合は,当該年度に交付を受けた研究費に係る決算書を作成し,当該年度終了後,速やかに市長に提出すること(10条)などが定められている。 また,要綱に基づいて細目的な事項を定めた「名古屋市会調査研究費交付取扱要領(甲3,6。以下「要領」という。)」には,研究費の支出できる経費は,おおむね別表1に掲げる経費とし,別表2の経費については支出できないこと,本来支出できない経費に研究費が使用されたときは,その支出額を返還すべきこと(第7),経理責任者は,研究費の出納については金銭出納簿を調製し,収支状況を明らかにすべきこと,研究費の支出に当たっては,原則として領収書を徴するものとすること,領収書を徴し得ないものについては,支出額,期日,支払の相手方を記載した会派の代表者の支払証明書を付すること(第8),各会派は,研究費の適正な執行に務めるとともに,報告書,帳票等を作成し すること,領収書を徴し得ないものについては,支出額,期日,支払の相手方を記載した会派の代表者の支払証明書を付すること(第8),各会派は,研究費の適正な執行に務めるとともに,報告書,帳票等を作成し,これらを保管すること(第9),要綱10条に基づく決算書は,当該年度終了後,速やかに提出するものとし,交付を受けた研究費に剰余金を生じたときは,各会派の代表者は,決算書提出後,速やかに市長に返還すべきこと(第10),要綱及び要領に定める書類並びに保管が義務付けられている証票類等は,市会事務局文書規程22条2項の定める文書保存期間の例により保存しなければならないこと(第13)などが定められている。 (3) 住民監査請求原告らは,平成12年8月10日,名古屋市監査委員に対し,過去1年間に交付された研究費の返還ないし賠償と,今後の研究費の交付の差止めを求める住民監査請求をしたところ,同委員は,同年10月6日付けで,研究費は,公益上必要と認められる補助金に該当し,支出行為は違法とはいえないなどの理由をもって,同請求を棄却した(甲1。なお,原告Aの請求については,請求書の名下に拇印が押されていたことを理由に,却下されている。)。 (4) 被告各会派に対する研究費の交付名古屋市会における被告各会派の所属議員数とこれに対して交付された研究費の金額は,以下のとおりである(丙5ないし11)。 ア平成11年8月から平成12年3月までの期間(ア) 被告自由民主党名古屋市会議員団(以下「被告自民市議団」という。)24名1億0560万円(イ) 被告民主クラブ名古屋市会議員団(平成14年4月22日,民主党名古屋市会議員団に名称変更。以下「被告民主市議団」という。)28名1億2320万円(ウ) 被告公明党名古屋市会議員団(以下「被告公明市議団」という。)13名 員団(平成14年4月22日,民主党名古屋市会議員団に名称変更。以下「被告民主市議団」という。)28名1億2320万円(ウ) 被告公明党名古屋市会議員団(以下「被告公明市議団」という。)13名5720万円(エ) 被告名古屋市会自由党(平成12年4月28日,市民クラブに名称変更。以下「被告市民市議団」という。)1名440万円イ平成12年4月から平成12年10月までの期間(ア) 被告自民市議団24名(同年4月ないし6月),23名(同年7月),24名(同年8月ないし10月)9185万円(イ) 被告民主市議団28名(同年4月ないし6月),27名(同年7月ないし10月)1億0560万円(ウ) 被告公明市議団13名5005万円(エ) 被告市民市議団1名(同年4月ないし9月),2名(同年10月)440万円(5) 収支決算書被告各会派から提出された平成11,12年度研究費の収支決算書の項目別内訳は,別表3,4のとおりである(甲7ないし10,14)。 2 争点及びこれに対する当事者の主張被告各会派に対する不当利得返還請求権の有無(被告各会派による研究費の目的外使用の有無)(原告らの主張)(1) 目的外使用の主張立証責任について研究費は,地方自治法232条の2の「補助」に該当し,議員の歳費とは区別されているから,公共目的に使用されなければならないのは当然であるが,要綱8条や要領第7によれば,政党本来の活動に属する経費,議員の私的活動に属する経費,私的生活などのために研究費を使用することは禁じられており,目的外の使途に使われた研究費は,速やかに市長に返還されなければならないから,行政がその権限で使途を限定し,支出する補助金である。 ところで,要綱9条,要領第9,10が,会派に対し,研究費に関する金銭出納簿,報告書,帳票等 究費は,速やかに市長に返還されなければならないから,行政がその権限で使途を限定し,支出する補助金である。 ところで,要綱9条,要領第9,10が,会派に対し,研究費に関する金銭出納簿,報告書,帳票等の関係資料を作成・保管し,経理を明確にすることを求めていることに照らすと,会派は,行政の求めに応じて,いつでも証拠をもってその使途を説明する義務を負っていると考えられるところ,被告各会派が提出した収支決算書は,その摘要欄の記載自体抽象的である上,摘要欄に記載されていない支出が記載されている支出より多額であり,特に被告自民市議団と同民主市議団のそれは,機関紙費用を支出の大きな部分に掲げて使途の不明を覆い隠そうとするもので,かえって支出の正当性に対する疑問を深めるものというべきであるから,到底,研究費の正当な支出を担保するものとはいえない。したがって,被告各会派は,上記説明義務の内容として,名古屋市に対して金銭出納簿,報告書,帳票等の提出義務を負い,名古屋市に代位して本件訴えを提起した原告らの求めに応じて,これらの原資料を提出する義務を有しているというべきである。 この点につき,被告各会派は,市会議員の議会活動の自由,執行機関に対する牽制の確保,会派間の競争における優位性の確保などを根拠に,上記原資料の提出を拒み続けたが,仮に使途を説明することで議会活動の独立性が害されるのであれば,研究費の交付を受けなければよいのであって,交付を受けた以上は,行政による監督を受けることを了承したというべきであるから,上記説明義務を果たさないことの理由にはならない。 これに加えて,使途に関する情報は被告各会派が握っていることをも考慮すると,研究費の交付を受けた被告各会派が具体的な使途を立証すべき責任を負担するというべきであり,特段の正当な理由もなく,説明資料の提出 に加えて,使途に関する情報は被告各会派が握っていることをも考慮すると,研究費の交付を受けた被告各会派が具体的な使途を立証すべき責任を負担するというべきであり,特段の正当な理由もなく,説明資料の提出を拒む以上,目的外の使途に使用されたことを事実上推定すべきであって,被告各会派が主張するように,不当利得返還請求が認められるためには,原告らが,個人的用途などの目的外使用の具体的な事実を特定して主張立証しなければならないと解すべきではない。 (2) 被告各会派による目的外使用の事実について研究費は,毎月10日,名古屋市から所属議員1名当たり55万円の金額が各会派の銀行口座に振り込まれ,その後,各会派担当の市職員によって引き出される仕組みとなっているところ,被告各会派は,名古屋市より交付を受けた研究費をその所属する議員らに1名当たり55万円の割合で支給し,各議員は,以下のとおり,本来の目的である会派自体の調査研究活動とは区別される政党本来の活動,選挙活動,議員の私的活動及び議員個人の後援会活動などにその全額を使用している(上記のとおり,被告各会派が研究費の具体的使途を立証しない以上,本来の目的以外に研究費が使用されたことが推定される。)から,被告各会派は,交付された研究費を不当利得として返還しなければならない。 ア被告自民市議団について(ア) 被告自民市議団は,所属の議員個人に毎月50万円を直接支給し,残りの5万円を共通経費として留保しており,会派として研究費を管理している実体はなく,議員個人は,これを個人の政治活動や私的生活に消費している。そして,研究費は,その使途がチェックされないまま,機械的に支払われているのが実情である。 上記共通経費の使途について,被告自民市議団は,諸会議の経費,執行部による党本部,政令指定都市等での政策,調査の打合 究費は,その使途がチェックされないまま,機械的に支払われているのが実情である。 上記共通経費の使途について,被告自民市議団は,諸会議の経費,執行部による党本部,政令指定都市等での政策,調査の打合せ経費,コピー機等のリース代,「自由市民」の取材,編集経費等に充てられていると主張するが,その内容は明確ではなく,どのようなチェックを受けているのかも明らかになっていない。 (イ) 被告自民市議団の提出した収支決算書では,資料作成費として,機関紙「自由市民」の発行を掲げているが,そのうち,全区版については,ほとんど名古屋市の公報や新聞記事をそのまま切り張りして掲載したお粗末なもので,一般に配布できる代物ではないし,被告自民市議団の主張のとおり,数十部しか発行していないのであれば,第三種郵便として扱われることはないから,結局,「自由市民」は,その発行の実体を有せず,研究費の正当な使用を仮装する目的で使われているにすぎない。 また,各区版についても,所属議員の個人的機関紙として発行されていること,内容も,議員の公約,議員事務所の紹介,議員個人の後援会活動の紹介,後援会員の拡大の呼びかけ,選挙支援の要請など,主として議員個人の政治活動の宣伝となっていること,機関紙は選挙時期を中心に発行されていること,配布先も,議員個人の支持者あるいは支持を求めようとする者となっていることなどに照らせば,要領第7で使用が禁止されている政党本来の活動に属する経費,選挙活動に伴う経費又は議員の私的活動に属する経費に該当するというべきであるし,少なくとも,各議員から提出された領収書が各区版の発行費用に当たるのか,あるいは発行された各区版が研究費の趣旨に沿うものであるかなどの審査は行われていない。 なお,機関紙以外の資料作成費として掲げられている市政報告会諸会議に際しての資料 が各区版の発行費用に当たるのか,あるいは発行された各区版が研究費の趣旨に沿うものであるかなどの審査は行われていない。 なお,機関紙以外の資料作成費として掲げられている市政報告会諸会議に際しての資料は,実際に発行されたのか,いくら使われたのかが明らかでなく,結局,各所属議員の一般的活動を羅列したにすぎないというべきである。 (ウ) また,被告自民市議団の収支決算書では,「自由市民」編集発行人であるBらに対して支払われた4727万8852円(平成11年度),3742万2024円(平成12年度)を人件費として掲げているが,Bは自由民主党の専従スタッフであり,実際の編集は議員個人に委ねられているし,会派の事務についても市職員が派遣され,担当しているから,上記金員は別の用途に使用されたというほかない。 仮にBに「自由市民」の取材,編集費用が支払われていたとしても,被告自民市議団の報告書によれば,全区版作成のための金額は毎月15万円,年間180万円であり,その他の費用を最大限見積もっても416万8000円にすぎないのに,その差額の使途は明らかとなっていない。そして,会派及び個々の議員らによって延べ91名を雇用したとの主張も,これを具体的に明らかにするものは存しない。 (エ) 被告自民市議団の収支決算書では,事務費中,通信費・事務用品代等として2506万8733円(平成11年度),1549万2935円(平成12年度)を掲げているが,事務用品代だけでこのような多額の金額になることは考え難く,大部分は通信費であるところ,これは議員個人の政治活動のために使用されている。 (オ) 調査費の中には私的旅行の費用が含まれている。また,所属の議員らは,議会が開催されていない時期に,議会費を使って多数回の国内・国外出張を繰り返しており,この外に研究費を使って出張を行う る。 (オ) 調査費の中には私的旅行の費用が含まれている。また,所属の議員らは,議会が開催されていない時期に,議会費を使って多数回の国内・国外出張を繰り返しており,この外に研究費を使って出張を行うことは不可能であるから,調査・出張等の旅費とされている研究費は,実際は目的外に使用され,若しくは使用されずにプールされているというべきである。 また,会議費については,控室内での会議に費用は要しないし,外部会場での会議は例外的であり,会派や議員個人主催の会議,地域や団体主催の会議についても,その詳細は不明であり,後援会活動や個人の政治活動との区別も明確でない。 そして,資料購入費も,六法全書と新聞以外は具体的内容が明確でなく,所属議員が各自購入,廃棄しているのであれば,個人に研究費が与えられているのと同じである。 イ被告民主市議団について(ア) 被告民主市議団は,所属の議員個人に毎月50万円を直接支給し,残りの5万円を共通経費として留保しているのであって,会派として研究費を管理している実体はない。 議員個人は,毎月28日を「調研の日」と呼んでいることからうかがわれるように,研究費を歳費であるかのように受け取り,これを個人の政治活動や私的生活に消費しており,個別に領収書等がチェックされることはない。 このように,被告民主市議団においては,研究費は議員個人に帰属する金員という意識が支配的であり,平成11,12年度に732万円,658万円余が返還されたのも,C議員と副議長となったD議員が使用しなかった金額を返還した結果にすぎない。 (イ) 被告民主市議団の収支決算書では,資料作成費として機関紙「民主」の発行費用を掲げているが,これは,所属議員の個人的機関紙として発行されていること,内容も,議員の公約,議員事務所の紹介,議員個人の後援会活動の紹介,後援 支決算書では,資料作成費として機関紙「民主」の発行費用を掲げているが,これは,所属議員の個人的機関紙として発行されていること,内容も,議員の公約,議員事務所の紹介,議員個人の後援会活動の紹介,後援会員の拡大の呼びかけ,選挙支援の要請など,主として議員個人の政治活動の宣伝ないし後援会ニュースの類となっていること,機関紙は選挙時期を中心に発行されていること,配布先も,議員個人の支持者あるいは支持を求めようとする者となっていること,「民主」は国会議員,県会議員,市会議員のそれぞれについて発行されていることなどに照らせば,要領第7で使用が禁止されている政党本来の活動に属する経費,選挙活動に伴う経費又は議員の私的活動に属する経費に該当する。 各種アンケートについても,どの程度実施されたのか,真実費用を要したのか,会派として実施されたのか等について明らかにされていない。 (ウ) 被告民主市議団の収支決算書では,819万0595円(平成11年度),1072万0569円(平成12年度)を人件費として掲げているが,人件費は,所属議員が毎月5万円支払っている会費によって賄われており,研究費が人件費として使用されることはない。また,会派控室内で雇われているEは民主党の候補者であり,被告民主市議団の活動は個人の活動に依存しているので,同人が実際にどのような活動をしているのか明確でなく,このような者に人件費として研究費を支払うことは疑問である。 (エ) 被告民主市議団は,事務費中,通信費・事務用品代等として3300万5251円(平成11年度),2699万9603円(平成12年度)を掲げているが,事務用品代だけでこのような多額の金額になることは考え難く,大部分は通信費であるところ,これは議員個人の政治活動のために使用されている。 (オ) その他,調査費の中には私的旅 2年度)を掲げているが,事務用品代だけでこのような多額の金額になることは考え難く,大部分は通信費であるところ,これは議員個人の政治活動のために使用されている。 (オ) その他,調査費の中には私的旅行の費用が含まれているし,具体的な金銭の流れが明らかにされていない以上,いくら活動項目が掲げれていても,本来の使途に使われたとはいえない。議会費からの調査・出張旅費との二重計上については,被告自民市議団と同様である。 会議費,資料購入費も,ア(オ)で被告自民市議団について述べたのと同様,本来の目的に使用されていない。 ウ被告公明市議団について(ア) 被告公明市議団は,所属の議員個人に毎月55万円を直接支給し,会派として研究費を管理している実体はない。議員によっては領収書類を提出しない者もおり,また,領収書の内容は問わないことが会派内のルールとなっている。議員個人は,これを個人の政治活動や私的生活に消費している。 (イ) 被告公明市議団は,その事務を行うための人員を配置しておらず,市職員がこれを行っているから,人件費として研究費を使用することはあり得ない。 (ウ) その他,調査費の中には私的旅行の費用が含まれているし,調査・出張旅費は議会費によるものと二重計上されている。同様に会議費,資料購入費も本来の目的に使用されていない。 エ被告市民市議団について(ア) 被告市民市議団は,Fのみによって構成される個人会派であったところ,個人に手渡された研究費は,個人の政治活動や私的生活に消費されている。 (イ) 被告市民市議団は,資料作成費を掲げているが,これは後援会活動,政治活動であって,要領第7で使用が禁止されている政党本来の活動に属する経費,選挙活動に伴う経費又は議員の私的活動に属する経費に該当する。 (ウ) その他,調査費の中には私的旅行の費用が含ま 会活動,政治活動であって,要領第7で使用が禁止されている政党本来の活動に属する経費,選挙活動に伴う経費又は議員の私的活動に属する経費に該当する。 (ウ) その他,調査費の中には私的旅行の費用が含まれているし,調査・出張旅費は議会費によるものと二重計上されている。同様に会議費,資料購入費も本来の目的に使用されていない。 (被告各会派の主張)(1) 目的外使用の主張立証責任について原告らの主張(1)は争う。 住民訴訟制度は,住民が違法な財務会計上の行為を防止し又は回復させることによって地方行財政の公正な運営を確保しようとするものであるから,地方自治法242条の2第1項1号ないし4号(平成14年法律第4号による改正前のもの。 以下同じ)の各請求の要件事実の主張立証責任は,当該財務会計行為の違法を主張する原告である住民が負担するとされている。したがって,本件のような不当利得返還請求(4号請求)についても,原告らが研究費の具体的な目的外使用の事実を主張立証しなければならない。 ところで,現代の議会においては,現に会派が存在し,議員の意思はすべて会派を単位として集約され,これに基づいて各会派間で協議が行われることにより,議会の運営に関する事項が決定され,各種の議会活動が行われるなど,会派が重要な役割を担っている。そして,会派は,所属議員を通じて様々な情報を収集し,分析・検討し,会派としての意思決定を行っているが,そのためには所属議員による様々な市民ニーズの把握などの調査研究活動が不可欠であることはいうまでなく,そのような高い公益性に着目し,地方自治法232条の2の補助金として,研究費の交付制度が設けられている。しかるところ,会派は政治的存在であり,その活動は,基本的人権としての結社の自由,言論の自由,さらにそこから導かれるところの政 地方自治法232条の2の補助金として,研究費の交付制度が設けられている。しかるところ,会派は政治的存在であり,その活動は,基本的人権としての結社の自由,言論の自由,さらにそこから導かれるところの政治活動の自由に密接に関わりを有するので,透明性の確保の観点から,収支決算書の提出は義務付けられているものの,上記の自由を制限するおそれのある領収書等の提出は義務付けられていない。このことは,執行機関に対する牽制作用の確保及び会派間における独自性,優位性確保の観点からも基礎付けられる。この点,原告らは,利得受領の正当性を被告各会派が立証すべきであると主張して,目的外使用の事実を特定することなく,研究費の交付額全額の返還請求に固執するが,仮に,原告らが研究費の使途に疑いがあると述べさえすれば,被告各会派が目的に沿った使用をしていることを主張立証しなければならないとすると,住民に一般的な調査・監督権限を与えるに等しく,上記の地方自治法や要綱,要領の趣旨に反するというべきである。 なお,本件においては,被告各会派は,要綱,要領に従い,市長に対して研究費の収支決算書を提出したところ,市長はこれを正当と認めて変更しないことに確定したから,目的に沿った使用の事実が市長によって認定されたというべきである。 (2) 被告各会派による目的外使用の事実について原告らの主張(2)は否認する。 ア被告自民市議団について(ア) 被告自民市議団は,研究費を会派で一括管理している。すなわち,毎年度,団会議において,要綱,要領によって定められている支出可能な経費と不可能なそれとの区別を周知徹底するとともに,実際の支出に当たっては,後払方式を採用し,各議員は,月額50万円を上限として領収書と研究の目的,内容,使途などを詳細に記載した報告書を団長あてに提出し,そのチェックを の区別を周知徹底するとともに,実際の支出に当たっては,後払方式を採用し,各議員は,月額50万円を上限として領収書と研究の目的,内容,使途などを詳細に記載した報告書を団長あてに提出し,そのチェックを受けなければ研究費の支給を受けられないことになっている。また,被告自民市議団は,研究費の使途についても,毎年度,「調査研究活動実施方針」を定め,これに従って会派としての調査研究活動を行うなど,主体的に責任をもって執行している。具体的には,提出された領収書等の集計作業は,会計責任者である財務委員長が中心となって担当し,その過程で,その使途が要綱,要領に沿っているか否かをチェックし,適切でない場合は是正を依頼し,判断の微妙なものは団長の指示を求めるなどしている。 共通経費として会派に留保した5万円についても,諸会議の経費,執行部による党本部,政令指定都市等での政策,調査の打合せ経費,コピー機等のリース代,「自由市民」の取材,編集経費等に充てられている。 なお,調査研究活動は広い意味での政治活動に含まれるから,研究費を一部の政治活動のために使用しているが,私的生活には使用されていない。 (イ) 平成12年度における資料作成費の内訳は,機関紙「自由市民」の作成・発行費が約180万円,予算要望書その他の作成費が66万円余り,その他各所属議員が作成した,市政報告会等諸会議に際しての資料作成費,アンケートなど各種印刷物の作成に要した経費が約1550万円となっており,平成11年度についてもほぼ同様である。 「自由市民」は,市・区政に関する会派としての広報広聴活動の一環として発行されており,会派が発行するものが大半であるが,一部には議員個人が発行するものもあるところ,前者の主たる内容は,介護保険,ごみ減量,市財政など市政が当面する諸問題を市民に広報するものであり して発行されており,会派が発行するものが大半であるが,一部には議員個人が発行するものもあるところ,前者の主たる内容は,介護保険,ごみ減量,市財政など市政が当面する諸問題を市民に広報するものであり,後者についても,研究費の支出は,議員1名当たり年15万円を限度として許されているにすぎず,選挙に際して発行されるものについては,研究費は支出されていない。なお,配布先は後援会に限定されていない。 (ウ) Bは,会派として発行している「自由市民」の専属編集人であり,自由民主党の専従スタッフではない。人件費は,Bの取材活動・編集活動費として支払われる月額15万円のほか,会派や個々の議員が調査活動を行ったり,市民からの意見,要望等を調査するために雇用した者に対して支払われた費用である。ちなみに,雇用された者の月延べ人数と支払われた研究費の金額は,平成11年度が91人,約4547万円,平成12年度は68人,約3562万円である。 (エ) 通信費は,政治活動の一部(主として市政に関する広報広聴活動に使用される範囲において)に使用されており,大部分は「自由市民」の配布に要した郵便料金である。なお,事務費には,通信費の外に事務用品代や機器借上代などが含まれている。 (オ) 調査費の中に私的旅行の費用が含まれていることはないし,会議費,資料購入費も本来の目的に使用されている。調査・出張旅費の二重計上の主張は否認する。 イ被告民主市議団について(ア) 被告民主市議団は,毎年,次年度の当初予算編成に対する要望書を取りまとめており,そこに盛り込まれた事項を各年度における所属議員共通の調査研究課題とする一方,各議員の所属する委員会の所管事項や選出されている行政区の懸案事項等の個別テーマについても調査研究活動として認めている。そして,研究費の支出については原則とし 所属議員共通の調査研究課題とする一方,各議員の所属する委員会の所管事項や選出されている行政区の懸案事項等の個別テーマについても調査研究活動として認めている。そして,研究費の支出については原則として後払方式を採用し,各議員は,月額50万円を上限として領収書等を提出し,これと引換えに研究費の交付を受けている。その管理は会派が行い,要綱,要領上,研究費として支出できる経費とそうでないものを団会議等で周知させるとともに,領収書等の内容をチェックしている。これらの経理事務は,会計責任者である財務委員長が中心となって担当している。 なお,調査研究活動は広い意味での政治活動に含まれるから,研究費を一部の政治活動のために使用しているが,私的生活には使用されていない。 (イ) 被告民主市議団の機関紙は,会派で発行するものはなく,各議員にその発行が委ねられているので,様々な形態の広報誌が存在する。いずれも会派ないし所属議員の広報広聴活動のために発行されており,その内容は,市政報告,行政区の事業関係,各議員の提言や活動報告等であって,選挙活動用の機関紙に研究費は支出されていない。配布先は,多くの場合,不特定多数の一般市民を対象としている。 なお,「民主」は民主党が発行する機関紙であり,会派の機関紙ではない。 (ウ) 人件費は,会派控室における事務処理のためのアルバイト代(平成11年度は370万0400円,平成12年度は186万4200円)のほか,個々の議員によるアンケート調査やその整理の補助,調査研究資料の作成,整理の補助としてのアルバイト代(月延べ人数及び支払われた研究費の金額は,平成11年度が65人,449万0195円,平成12年度が136人,885万6369円)として支出されている。 (エ) 通信費は,政治活動の一部(主として市政に関する広報広聴活動に使用 究費の金額は,平成11年度が65人,449万0195円,平成12年度が136人,885万6369円)として支出されている。 (エ) 通信費は,政治活動の一部(主として市政に関する広報広聴活動に使用される範囲において)に使用されており,選挙活動のための通信に使用されたことはない。ほとんどの議員が機関紙を発行し,これらの郵送費用に支出されているため,事務費に占める通信費の割合が高くなっているが,このほかに事務用品代が含まれている。 (オ) 調査費の中に私的旅行の費用が含まれていることはないし,会議費,資料購入費も本来の目的に使用されている。調査・出張旅費の二重計上の主張は否認する。 ウ被告公明市議団について(ア) 被告公明市議団は,経理責任者である財務委員長が研究費の管理を行っている。年度初めに,所属議員に対し,研究費として支出可能な経費と不可能な経費との区別を周知徹底しており,支出に当たっては財務委員長が領収書等を提出させ,内容をチェックしている。 また,被告公明市議団は,平成10年4月に「公明党名古屋市会市議団調査研究活動実施要領」を策定し,これを基に毎年度,最初の団会議において,調査研究課題を議論し,調査研究計画を立案している。 なお,調査研究活動は広い意味での政治活動に含まれるから,研究費を一部の政治活動のために使用しているが,私的生活には使用されていない。 (イ) 人件費は,会派控室に配置されている職員に対して支払われたものではなく,調査研究活動のアルバイト代である。具体的には,地域におけるアンケート調査などの資料の整理,現地調査の補助に対して支出されている。 (ウ) 調査費の中に私的旅行の費用が含まれていることはないし,会議費,資料購入費も本来の目的に使用されている。調査・出張旅費の二重計上の主張は否認する。 エ被告市民市議 に対して支出されている。 (ウ) 調査費の中に私的旅行の費用が含まれていることはないし,会議費,資料購入費も本来の目的に使用されている。調査・出張旅費の二重計上の主張は否認する。 エ被告市民市議団について(ア) 被告市民市議団は,平成12年10月にG議員が加入し,2名会派となっている。同団においては,F議員が経理責任者の立場で,要綱,要領に定められた使途に合致しているか否かをチェックし,後払方式で支出している。 なお,調査研究活動は広い意味での政治活動に含まれるから,研究費を一部の政治活動のために使用しているが,私的生活には使用されていない。 (イ) 後援会には各界各層の市民,団体が加入しており,市政に関する諸問題についての広報広聴活動の場として活用されている。そうした活動のための費用を研究費から支出することは要綱が認めるところである。なお,資料作成費は,市政報告会等に使用される資料や政策要求一覧等の作成に使用されており,選挙活動や私的活動のために作成されるものには支出されていない。 (ウ) 調査費の使途は,政令指定都市はじめ他都市への調査(東京,大阪市,札幌市,仙台市,神戸市,福岡市などに出張し,ホーム転落事故防止,バリアフリー,復興都市作り,介護保険,交通問題,商店街振興対策,いじめ不登校などの問題の調査を行った。)や市内の調査などであり,私的旅行の費用が含まれていることはない。調査・出張旅費の二重計上の主張は否認する。会議費は,政策研修会や月2,3回開かれる講演会などの費用であり,資料作成費は,市政報告会等に使用される資料や政策要求一覧等の作成費用(例えば,平成12年度予算編成に対する要望書は4000部,平成13年度のそれは1500部が作成された。)などである。 第3 当裁判所の判断 1 争点に対する判断に先立ち,被告各会派は, の作成費用(例えば,平成12年度予算編成に対する要望書は4000部,平成13年度のそれは1500部が作成された。)などである。 第3 当裁判所の判断 1 争点に対する判断に先立ち,被告各会派は,原告らによる住民監査請求においては,研究費が目的外使用された具体的事実の特定をしていないから,目的外使用されたことに基づいて研究費の返還請求を求める本訴は,住民監査請求前置の要件を満たさず,不適法である旨主張する(被告第2準備書面)ので,これについて判断するに,住民監査請求の対象となる財務会計行為は,他の事項と区別して特定認識できる程度に個別的,具体的に特定,摘示されることを要する(最高裁判所平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁参照)ところ,本件の住民監査請求により怠る事実の対象とされた返還請求権と,本訴で代位行使されている返還請求権は,その摘示ないし主張に照らすと,いずれも名古屋市が要綱等に基づいて被告各会派に研究費として交付し,それが本来の目的に使用されなかったことを発生原因とする不当利得返還請求権であると認められ,いずれの請求権も特定に欠けることがなく,かつ両者の同一性を十分に肯定できると判断できるから,被告の上記主張は採用できない。 2 そこで,争点について判断するに,まず,研究費が本来の目的に沿った使途に使われなかった事実の主張立証責任の所在について判断する。 (1) 本件は,名古屋市の住民である原告らが,被告各会派に対して交付された研究費が,要綱,要領で定められた本来の使途に使われなかったと主張し,不当利得に基づき,同金額の返還を求めた住民訴訟である。したがって,原告らの請求が認められるためには,その前提として,名古屋市が被告各会派に対して不当利得返還請求権を有していることが肯認されることが必要となる。 とこ 額の返還を求めた住民訴訟である。したがって,原告らの請求が認められるためには,その前提として,名古屋市が被告各会派に対して不当利得返還請求権を有していることが肯認されることが必要となる。 ところで,研究費の交付は,現在は政務調査費として地方自治法100条12,13項に規定されている(平成12年法律第89号により新設。現13,14項)が,本件訴訟で対象とされている平成11,12年度のように,その施行前においては法令上の根拠がなく,同法232条の2に規定する補助金の交付に該当すると解される。その法的性質については,公法上の単独行為と解する立場もあり得るが,要綱,要領は,交付手続が適正に行われるように内部的な事務手続を定めたものにすぎず,交付の根拠法令とはいえないから,使途を限定した金銭の贈与と解するのが相当である。 そうすると,研究費について定めた要綱,要領は,贈与の内容を構成すると考えられるところ,要領第7第3項が「前項に規定する経費に研究費が使用されたときは,その支出した研究費を返還しなければならない。」と,同第10第2項が「・・・交付を受けた研究費に剰余金を生じたときは,・・・速やかに市長に返還しなければならない。」と各規定していることに照らすと,原告らが本訴で主張する請求権は,要領に基づく返還請求権であって,地方自治法242条の2第1項4号所定の「不当利得返還の請求」には当たらないとする見解も考えられる。 しかしながら,その使途が限定された上で交付された金員が,これに沿って使われず,その目的を達しなかった場合,当該金員を返還すべきことは当然のことであって,かつその請求権が不当利得返還請求権の性質を有することは明らかというべきところ,要領第7第3項,第10第2項は,この当然の事理を確認したものにすぎないから,これが存在することによ 然のことであって,かつその請求権が不当利得返還請求権の性質を有することは明らかというべきところ,要領第7第3項,第10第2項は,この当然の事理を確認したものにすぎないから,これが存在することによって上記請求権が不当利得返還請求権の性質を失うとは考え難く,原告らの本件請求が4号請求の要件を逸脱するものとはいえない。 (2) そこで,不当利得返還請求訴訟における主張立証の所在について判断するに,一般論としては,それが同請求権の発生要件とされている以上,その返還を求める者において,利得者が「法律上ノ原因ナクシテ」当該利得をしたとの事実を主張立証すべきである(最高裁判所昭和39年4月7日第三小法廷判決・集民73号35頁,最高裁判所昭和59年12月21日第二小法廷判決・集民143号503頁参照)。もっとも,不当利得の返還を求める者が「法律上ノ原因ナクシテ」の事実の主張立証責任を負うといっても,およそ考えられる一切の法律上の原因の不存在を主張立証しなければならないものではなく,その類型や証拠との距離を考慮しつつ,当該事案において通常考えられる程度に財貨移転の正当化原因が存在しないことを主張立証した場合には,相手方においてこれを正当化する具体的事情につき反証する必要を生ずるというべきである。 これを本件についてみると,原告らが,名古屋市の有する不当利得返還請求権を代位行使すると主張する以上,研究費が本来の目的に使用されなかった事実は,原告らにおいて主張立証すべきものであるが,研究費の具体的使途に関する領収書等の証拠を被告各会派が保有すべきものとされている(要領第8,9,13)ことに照らすと,原告らとしては,交付された研究費の具体的使途を特定して主張立証し,それが本来の目的の範囲に属さないことを明らかにするまでの必要はなく,例えば,被告各会派が研 (要領第8,9,13)ことに照らすと,原告らとしては,交付された研究費の具体的使途を特定して主張立証し,それが本来の目的の範囲に属さないことを明らかにするまでの必要はなく,例えば,被告各会派が研究費を支給するに際し,所属議員から領収書等を徴せず,その使途についての管理を一切行っていないなど,研究費が本来の目的以外に使われたことを推認させる一般的,外形的な事実を主張立証した場合には,被告各会派において,その推認を妨げるべく,本来の趣旨に沿った具体的な使途を明らかにする必要があるというべきである。 (3) この点につき,原告らは,要綱9条,要領第9,10などの規定によれば,研究費の交付を受けた会派は,名古屋市に対して,いつでも証拠をもって使途の正当性を明らかにすべき説明義務,具体的には,金銭出納簿,報告書,帳票等の提出義務を課せられており,被告各会派は,名古屋市に代位して本件訴えを提起した原告らに対し,これらの原資料を明らかにすべき義務があったにもかかわらず,正当な理由なくこれを果たしていないから,研究費が目的外の使途に使用されたことを事実上推定すべきである旨主張する。 なるほど,証拠(甲23,25,26)によれば,地方自治法100条12項所定の政務調査費を交付している愛知県内の26市のうち,使途に関する領収書等を公開していないのは,名古屋市ほか1市のみであること(平成13年3月14日現在),また,政務調査費に関する条例を制定し,あるいは制定を予定している全国の646市のうち,領収書を収支決算書に添付することを義務付けていないのは276市であること(平成13年9月現在),以上の事実が認められ,これによれば,研究費と共通の性格を有する政務調査費を交付している市のうち,領収書を収支報告書に添付し,これを公開するなどの手続を設けている市は,そ こと(平成13年9月現在),以上の事実が認められ,これによれば,研究費と共通の性格を有する政務調査費を交付している市のうち,領収書を収支報告書に添付し,これを公開するなどの手続を設けている市は,そうでない市よりも多数であるから,領収書等の公開が,会派の政治活動の自由,執行機関に対する牽制作用の確保及び会派間における独自性,優位性確保を損なうおそれがある旨の被告各会派の主張は,必ずしも一般的,普遍的なものではないといわざるを得ず,これに研究費が公費によって賄われていることをも考慮すると,領収書を公開するなどしてその使途を明らかにする制度を設けることは,公費支出における透明性確保の観点からみて,十分検討に値するとも考えられる(被告自民市議団に所属する証人Hは,個人的意見の留保付きながら,この考えに賛意を示し,無所属の同Cも,支給額の半分程度は領収書の添付を義務付けるべきとの意見を述べる。)。 しかしながら,前掲各証拠によれば,上記のような手続を設けているのは,規模が中小であって,政務調査費の交付額も低額な市が多く,現に,交付額が高額(年間1人当たり100万円以上)な都道府県,政令指定都市,県庁所在市などにおいては,領収書を収支報告書に添付することが義務付けられていないことが認められるから,少なくとも現時点においては,研究費の被交付者がその具体的使途を明らかにする義務を負うのが常態であるとは認め難い上,前記のとおり,そもそも研究費について定めた名古屋市の要綱,要領においても,各会派の代表者ないし会計担当者が,研究費に係る収支決算書,金銭出納簿を作成し,また研究費の支出に当たり,領収書ないしこれに代わる会派の代表者の支払証明書を徴集し,これらを保管することなどは定められているものの,領収書等の証票類を収支決算書に添付して提出すべきこと自体は し,また研究費の支出に当たり,領収書ないしこれに代わる会派の代表者の支払証明書を徴集し,これらを保管することなどは定められているものの,領収書等の証票類を収支決算書に添付して提出すべきこと自体は要求されておらず(まして,これを公開することは予定されていない。),制度的には,研究費が本来の目的に沿って使われるべきことの保証は,基本的に各会派の自主的なチェックに委ねられていると考えられる。 そうすると,本訴において,被告各会派は,原告らが求める領収書等の説明資料を提出しないが,これをもって,研究費が本来の目的以外の使途に使われたことを事実上推認することができるとの経験則の存在は認め難いから,原告らの前記主張を採用することはできない。 3 そこで,次に,本件証拠上,研究費が本来の目的以外に使われたことを推認させる一般的,外形的な事実が立証されているか否かについて判断する。 (1) 被告自民市議団についてア被告自民市議団は,別表3,4のとおり,平成11年度において,総額1億5840万円の研究費の交付を受け,①資料作成費に1985万2016円,②資料購入費に162万0701円,③会議費に2660万6021円,④人件費に4727万8852円,⑤調査費に3797万3677円,⑥事務費に2506万8733円を支出した旨の収支決算書を提出したこと,平成12年度において,総額1億5675万円の研究費の交付を受け,①資料作成費に1798万8209円,②資料購入費に164万3855円,③会議費に2885万6359円,④人件費に3742万2024円,⑤調査費に5534万6618円,⑥事務費に1549万2935円を支出した旨の収支決算書を提出したこと,その結果,両年度において,返還すべき剰余金はなかったこと,以上の事実が明らかである。 イ原告らは,月額55 4万6618円,⑥事務費に1549万2935円を支出した旨の収支決算書を提出したこと,その結果,両年度において,返還すべき剰余金はなかったこと,以上の事実が明らかである。 イ原告らは,月額55万円の研究費のうち,5万円を控除した残額が議員個人に直接支給され,会派としての管理の実体がない旨主張するところ,証拠(乙ロ4の1及び2,19,証人H)によれば,なるほど被告自民市議団においては,所属の各議員は50万円ずつ袋詰めにされた封筒を手渡され,研究費の支給が50万円単位で行われている事実が認められるものの,同時に,被告自民市議団においては,年度直前に当該年度の「調査研究活動実施方針」を策定し,そこに記載された活動目標に重点を置いて研究費を使用する旨の共通認識の形成に努めていたこと,上記封筒の交付は,50万円分以上の領収書及びその使途を説明した報告書の提出と引替えになされており,支給担当者がその合計金額を確認した後,会派の財務委員長がその内容をチェックし(疑問のある場合は団長と協議し),後援会あてに発行されたものや,飲食のみを目的としたものなど,使途不相当と判断された場合は,他の領収書との差替えを求めるなどして,研究費から排除する措置を講じていたこと,以上の事実が認められ,これによれば,会派として研究費の管理をしていなかったとの原告らの上記主張を採用することはできない。 ウ次に,原告らは,機関誌「自由市民」のうち,全区版については,その内容や発行部数に照らすと,発行の実体はなく,各区版も,その発行主体や内容に照らせば,研究費の対象となるものではない旨主張するところ,証拠(乙ロ1,2,3の1ないし3の81,5,6,7及び8の各1及び2,9,10の1ないし10の3,11ないし13の各1及び2,14,15の1及び2,16ないし19,証人H) ない旨主張するところ,証拠(乙ロ1,2,3の1ないし3の81,5,6,7及び8の各1及び2,9,10の1ないし10の3,11ないし13の各1及び2,14,15の1及び2,16ないし19,証人H)によれば,被告自民市議団においては,会派自体の予算要望書(乙ロ1,2)のほか,「自由市民」の名称で発行された機関誌(乙ロ3の1ないし3の81。なお,甲15ないし19は,いずれも本訴の対象となっている研究費支給期間外に発行されたものである。),所属の各議員の議会報告,市政報告等の資料(乙ロ5,6,7及び8の各1及び2,9,10の1ないし10の3,11ないし13の各1及び2,14,15の1及び2,16ないし18)の作成費用に研究費が使用されていること,「自由市民」の全区版は,Bが編集人となって毎月8,18,28日に発行されており,市政全体に関する記事を中心として掲載していること,記事の中には,新聞記事や名古屋市の作成した資料を引用したものが含まれていること,発行部数は約50部であり,各議員や名古屋市の各部局等に配布されていること,各議員は,これを利用して印刷し,配布することがあること,全区版の製作に要する費用は,1回当たり約8000円であること,また,各区版は,各議員がBに製作・発行を依頼する場合と,各人が独自に製作・発行する場合とがあるが,前者については,2頁,5000部の発行に約15万円の費用を要すること,各区版には,議員活動の紹介,市政の報告,市政に対する意見表明などと並んで後援会の行事日程等が掲載されているものも存すること,各区版を議員個人が発行する場合,数十万円の費用を要するのが通常であるが,研究費は15万円を上限として充てることとしていたこと,以上の事実が認められ,これらを総合すると,「自由市民」全区版の発行の実体がないとは認めるこ 行する場合,数十万円の費用を要するのが通常であるが,研究費は15万円を上限として充てることとしていたこと,以上の事実が認められ,これらを総合すると,「自由市民」全区版の発行の実体がないとは認めることができないし,また,各区版の記事のうち,後援会の行事日程等が掲載されているものが存する点については,別表1,2に示された基準からは,研究費の使用対象とすることに疑問がないわけではないが,上記後援会関連記事は紙面全体の一部にとどまり,その主要部分は市政関連の記事で占められている上,その発行費用に研究費を充てることができる上限が設定されていることをも考慮すると,各区版に後援会関連の記事等が掲載されているものが存することをもって,直ちに研究費が目的外に使用されたとは認め難い。よって,「自由市民」の発行に研究費を充てることをもって目的外使用であるとする原告らの上記主張を採用することはできない。 エ原告らは,さらに,人件費,事務費,調査費,会議費,資料購入費などが本来の目的に使用された実体はないとして,るる主張するが,いずれも推測に基づく主張ないし被告自民市議団が使途を明らかにすべき義務があるとの前提に立った主張であり,証拠上もこれを認めるに足りるものはないから採用できない。 (2) 被告民主市議団についてア被告民主市議団は,別表3,4のとおり,平成11年度において,総額1億6995万円の研究費の交付を受け,①資料作成費に5236万2834円,②資料購入費に532万5268円,③会議費に1552万6912円,④人件費に819万0595円,⑤調査費に4822万0172円,⑥事務費に3300万5251円を支出した旨の収支決算書を提出したこと,平成12年度において,総額1億7930万円の研究費の交付を受け,①資料作成費に6157万6958円,②資料購 2万0172円,⑥事務費に3300万5251円を支出した旨の収支決算書を提出したこと,平成12年度において,総額1億7930万円の研究費の交付を受け,①資料作成費に6157万6958円,②資料購入費に743万3772円,③会議費に1670万2788円,④人件費に1072万0569円,⑤調査費に4928万6516円,⑥事務費に2699万9603円を支出した旨の収支決算書を提出したこと,その結果,平成11年度においては732万0747円,平成12年度においては658万6875円を返還したこと,以上の事実が明らかである。 イ原告らは,月額55万円の研究費のうち,5万円を控除した残額が議員個人に直接支給され,議員個人は支給日を「調研(調査研究費)の日」と呼ぶなど,会派としての管理実体がない旨主張するところ,証拠(甲23,証人C)によると,①事務所経費の半分を研究費によって賄っている議員がいるとの噂が存在したこと,②また,議員の一部には,研究費を選挙費用に充てていた者が存在し,C議員もその経験があること,③名古屋市から被告各会派に研究費が銀行口座に振り込まれる毎月10日を「調研の日」と呼ぶ議員がおり,現に,C議員ほか1名の議員を除いては,被告民主市議団所属の各議員は,1か月50万円(研究費として支給される55万円から,会派の共通経費5万円を控除した金額)全額の支給を受けていたこと,以上の事実が認められる。 しかしながら,反面,証拠(乙ハ16,証人C)によれば,①研究費を事務所経費の半分に充てていたとの噂が事実であることを証する証拠はなく,また,仮にそれが事実であるとしても,事務所経費の中には,研究費の本来の目的と区別困難な性質を有するものを含む場合があり得ること,②研究費を選挙費用に充てていたのは,約11年前のことであって,本訴の対象とな それが事実であるとしても,事務所経費の中には,研究費の本来の目的と区別困難な性質を有するものを含む場合があり得ること,②研究費を選挙費用に充てていたのは,約11年前のことであって,本訴の対象となっている平成11年8月以降の話ではないこと,③「調研の日」と呼ぶ議員がいたのは,7,8年前のことであり,少なくとも,被告民主市議団が結成された平成11年4月以降,研究費は,各議員から提出された領収書等と引替えに支給されており,団長,幹事長及び財務委員長の役員らが,その内容についてチェックしていたこと,以上の事実が認められ,これによれば,前記認定事実をもって,研究費が本来の目的以外に使用されたことを推認することはできない。 ウ次に,原告らは,被告民主市議団の機関誌「民主」の発行主体,内容,発行時期などに照らすと,この発行費用に研究費を充てることは,本来の目的に沿った使用ではない旨主張するところ,証拠(乙ハ1ないし9,10の1及び2,11ないし16)によれば,被告民主市議団においては,会派自体の予算要望書(乙ハ1ないし4)のほか,各議員の事務所や後援会名で発行した機関誌(乙ハ5ないし9),アンケート(乙ハ10の1及び2),各種報告資料(乙ハ11ないし14),さらにはホームページ(乙ハ15)の開設・維持費用に研究費を使用しているところ,そこには議員活動の紹介,市政の報告,市政に対する意見表明などと並んで後援会の行事日程なども掲載されている事実が認められ(本訴の対象期間外に発行された甲22にも,市政報告と並んで後援会の行事日程等が記載されている。),別表1,2に示された基準に照らすと,研究費の使途として疑問がないわけではない。しかしながら,上記後援会関連記事は紙面全体の一部にすぎず,大部分は市政関連の記事で占められていることに照らすと,上記事実 1,2に示された基準に照らすと,研究費の使途として疑問がないわけではない。しかしながら,上記後援会関連記事は紙面全体の一部にすぎず,大部分は市政関連の記事で占められていることに照らすと,上記事実をもって,直ちに研究費の目的外使用であるとまでは断じ難い上,この部分に要した費用がいくらかを明らかにする証拠もない。 エ原告らは,さらに,人件費,事務費,調査費,会議費,資料購入費などが本来の目的に使用された実体はないとして,るる主張するが,証拠(証人C)によれば,かつては,選挙対策や忘年会の趣旨でホテルや料理屋で開催される被告民主市議団総会の費用が,研究費から月額5万円を差し引いて徴集された会費から支弁されていたものの,平成9年に現行の要綱,要領に改正された後は,会費は研究費からでなく議員歳費から控除されるように改められたことが認められ,これによれば,本訴で問題とされている期間の会議費が本来の目的に使用されていないとの事実を認めることはできない。そして,その余の費目に関する主張についても,(1)エと同様,いずれも推測に基づく主張ないし被告民主市議団が使途を明らかにすべき義務があるとの前提に立った主張であり,証拠上もこれを認めるに足りるものはないから,採用することはできない。 (3) 被告公明市議団及び同市民市議団について原告らは,上記各会派による研究費の管理の実体はないこと,人件費,調査費,会議費,資料購入費などは本来の目的に使われていないなどと主張するところ,証拠(乙ニ1ないし3,4の1ないし4の20,5の1ないし5の3,6,7の1及び2,8,乙ホ1ないし3)によれば,被告公明市議団においては,平成10年4月以降,従前は口頭で確認されていた調査研究活動の方針を明文化して各議員に配布していること,所属の各議員は,報告書に領収書(支払証明書 乙ホ1ないし3)によれば,被告公明市議団においては,平成10年4月以降,従前は口頭で確認されていた調査研究活動の方針を明文化して各議員に配布していること,所属の各議員は,報告書に領収書(支払証明書で代用することもある。)を添付して月末までに財務委員長に提出し,団長の決裁があった研究費が支払われること,会派自体の予算要望書(乙ニ1ないし3)3000部のほか,「公明党市議団ニュース」の名称で発行した機関誌(乙ニ4の1ないし4の20),アンケート(乙ニ5の1ないし5の3)の作成などに研究費を使用していること,また,被告市民市議団においても,会派自体の予算要望書(乙ホ1,2)の作成などに研究費が使用されていること,以上の事実が認められ,これによれば,原告らの上記主張は採用できない。 もっとも,上記「公明党市議団ニュース」の一部には,国政あるいは県政レベルの公明党関連記事が掲載されているものが見受けられ(乙ニ4の7,4の11,4の20),別表1,2に示された基準に照らすと,研究費の使途として疑問がないわけではないが,発行主体は「公明党名古屋市会市議団」であり,市政が国政ないし県政と無関係であるとまではいえないことに照らすと,上記機関誌等に研究費を充てることが,本来の趣旨に反するとまでは断じ難い上,この部分に要した費用がいくらかを明らかにする証拠もない。 (4) 上記の検討結果によれば,被告各会派が,その交付された研究費を本来の目的に使用していないことを推認させる一般的,外形的事実が立証されたといえないことが明らかであるので,被告各会派の反証を待つまでもなく,不当利得返還請求権の発生を肯認できない。 4 以上の次第で,原告らの本訴請求は,その余について判断するまでもなく理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条,65条1 もなく,不当利得返還請求権の発生を肯認できない。 4 以上の次第で,原告らの本訴請求は,その余について判断するまでもなく理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官小嶋宏幸(別表は添付省略)
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