平成19(あ)1571 殺人,殺人未遂,逮捕監禁致死,死体損壊,爆発物取締罰則違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成23年11月18日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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判決文本文2,445 文字)

- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人後藤貞人,同前田裕司,同渡邉良平の上告趣意のうち,憲法31条,36条違反をいう点は,死刑制度がその執行方法を含め憲法に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がなく,その余は,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論に鑑み,記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 付言すると,本件は,オウム真理教(教団)幹部の被告人が,いずれも他の教団幹部らと共謀の上,(1) 平成元年11月,教団の活動に関する被害対策弁護団の中心となり教団に対抗する活動をしていた弁護士とその妻及び長男の計3名を殺害したという殺人(いわゆる弁護士一家殺害事件),(2) 平成6年6月,化学兵器である神経剤のサリンの殺傷能力を試すとともに,教団に敵対するとみなした裁判官ら不特定多数の者を死亡させることを認識しながらあえて,長野県松本市内にある裁判所宿舎周辺においてサリンをひそかに噴霧し,サリン中毒により,付近住民7名を殺害するとともに,4名に重篤な傷害を負わせたという殺人,殺人未遂(いわゆる松本サリン事件),(3) 平成7年3月,警察による教団に対する強制捜査- 2 -を阻止,かく乱する目的で,不特定多数の乗客らを殺害しようと企て,朝の通勤時 を負わせたという殺人,殺人未遂(いわゆる松本サリン事件),(3) 平成7年3月,警察による教団に対する強制捜査- 2 -を阻止,かく乱する目的で,不特定多数の乗客らを殺害しようと企て,朝の通勤時間帯に東京都内の地下鉄車内等でサリンを発散させ,サリン中毒等により,乗客や地下鉄職員計12名を殺害するとともに,計14名に重篤な傷害を負わせたという殺人,殺人未遂(いわゆる地下鉄サリン事件)のほか,(4) ①平成6年1月,同年5月,同年12月(2件)及び平成7年1月に,それぞれ,教団の活動の妨げになるとみなした被害者らに対し,頸部にロープを巻いて絞め付けるなどしたり,サリンや化学兵器である神経剤のVXを吸入させたり,掛けたりするなどの方法で,2名を殺害し,3名を殺害しようとして遂げなかったという殺人,殺人未遂,②同年2月,教団から離脱するため身を隠した女性信者の実兄を不法に拉致監禁して死亡させ,同人の遺体を焼却したという逮捕監禁致死,死体損壊,③地下鉄サリン事件の捜査をかく乱し,教祖であるAことBの逮捕を阻止するために,同年5月,新宿駅地下街にある公衆便所内に致死性の毒ガスである青酸ガスの発生装置を仕掛けたが,青酸ガスを発生させるに至らなかったために殺害の目的を遂げず,また,爆発物1個を製造して東京都庁に郵送し,郵便物の点検作業をしていた東京都職員に傷害を負わせたが,殺害するに至らなかったという殺人未遂,爆発物取締罰則違反の事案である。 いずれの犯行も,教団の組織防衛等を目的とし,法治国家に対する挑戦として組織的かつ計画的に行われたものであり,それらの罪質は極めて反社会的で,人命軽視も甚だしい。特に,弁護士一家殺害事件では,正当な職務上の活動をしていた弁護士を家族共々殺害し,松本サリン事件及び地下鉄サリン事件では,殺傷能力の極めて高いサ れらの罪質は極めて反社会的で,人命軽視も甚だしい。特に,弁護士一家殺害事件では,正当な職務上の活動をしていた弁護士を家族共々殺害し,松本サリン事件及び地下鉄サリン事件では,殺傷能力の極めて高いサリンを広く散布して合計19名もの死者を出しており,残虐で非人道的な犯行態様と結果の重大性は他に比べるべき例がない。その他の犯行も,教団の独- 3 -善的な論理により理不尽に被害者らを殺害しあるいは死亡させ,又は殺害しようとしたものである。これら一連の犯行により命を失った被害者は合計25名に及んでおり,これら被害者らの遺族及び今なお深刻な健康被害に苦しんでいる負傷者らの被害感情は極めて厳しく,社会に与えた衝撃や不安も非常に大きいものであった。 被告人は,教団幹部の立場で,これら多数の犯行に関与し,いずれの犯行においても,その遂行のために重要な役割を果たしたものであるが,中でも,弁護士一家殺害事件では,自ら弁護士の妻及び子の頸部を絞めて窒息死させ,松本サリン事件では,サリンを取り扱う共犯者の医療役として現場に帯同し,地下鉄サリン事件では,共犯者と共にサリンを合成するなど,犯行の遂行のために不可欠で重要な役割を積極的に果たしており,その刑事責任は極めて重大である。 そうすると,被告人の本件各犯行は,(4)③を除きいずれもBの指示に従って行われたものであること,被害者や遺族らに対して真摯な謝罪の言葉を述べ,また謝罪の手紙を書いていること,証人日当を積み立てた中からサリン事件等共助基金にしょく罪寄附をしていること,前科等がないことなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主 き事情を十分考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。 よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 検察官榊原一夫公判出席(裁判長裁判官古田佑紀裁判官竹内行夫裁判官須藤正彦裁判官千葉勝美)

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