平成26年9月24日判決言渡平成26年(行コ)第145号,同年(行コ)第211号相続税更正処分取消請求控訴,同附帯控訴事件 主文 1 原告Aの本件控訴について(1) 原告Aの本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,原告Aの負担とする。 2 原告Cの本件附帯控訴について(1) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分に係る訴えを却下する。 (2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(当審における追加請求)を棄却する。 (3) 附帯控訴費用は,原告Cの負担とする。 3 被告の本件控訴について(1) 被告の本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,被告の負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告Aの控訴の趣旨(1) 原判決主文2項及び3項を次のとおり変更する。 (2) 奈良税務署長が原告Aに対し平成22年7月5日付けでした,被相続人Bの平成19年▲月▲日に開始した相続に係る原告Aの相続税についての更正処分のうち納付すべき税額6249万7100円を超える部分を取り消す。 2 原告Cの附帯控訴の趣旨(1) 主位的請求 ① 原判決主文1項を次のとおり変更する。 ② 奈良税務署長が原告Cに対し平成22年7月5日付けでした,被相続人Bの平成19年▲月▲日に開始した相続に係る原告Cの相続税についての更正処分のうち納付すべき税額16億8597万5300円を超える部分を取り消す(原告Cは,当審において,このように原審の請求を拡張し,これを主位的請求とした。)。 (2) 予備的請求被告は,原告Cに対し,2955万2100円を支払え(原告Cは,当審において,この請求を追加した。)。 のように原審の請求を拡張し,これを主位的請求とした。)。 (2) 予備的請求被告は,原告Cに対し,2955万2100円を支払え(原告Cは,当審において,この請求を追加した。)。 3 被告の控訴の趣旨(1) 原判決中被告敗訴部分を取り消す。 (2) 上記取消しに係る部分の原告らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要略語は,特に断らない限り,原判決と同一のものを用いる。 1(1) 原告らの父である亡Bは,平成16年9月9日,Dとの間で,原告Cを死亡給付金の受取人とする変額個人年金保険契約,及び,原告Aを死亡給付金の受取人とする変額個人年金保険契約(本件各保険契約)を締結し,払込保険料として各1億円を支払った。 その際,亡Bは,本件各保険申込書において,契約者が自ら受け取る年金について10年の据置期間経過後に15年間にわたって確定年金を受領する旨を記載し,死亡給付金についても「年金支払特約」欄の「付加する」に丸印を付したが,① 年金基金への充当額,② 年金の種類,及び③ 年金の支払期間については明示的な指定をしておらず,本件各保険申込書にはそれらを指定する欄も設けられていなかった。 Dは,亡Bに対し,本件各保険契約に係る保険証券を交付したが,その裏面の「適用条項・特約」欄には「年金支払特約」と記載されていた(甲1の 2,甲2の2)。 上記の「年金支払特約」に係る本件各特約(ご契約のしおり・約款〔甲7〕中の年金支払特約)によれば,① 本件各特約は,元保険契約申込みの際及び元保険契約継続中は保険契約者の申出により,保険金,死亡給付金等(保険金等)の支払事由発生後はその受取人の申出により締結され(1条),②保険金等の支払事由が発生した時(保険金受取人がこの特約を締結したときは締結時)に, 約者の申出により,保険金,死亡給付金等(保険金等)の支払事由発生後はその受取人の申出により締結され(1条),②保険金等の支払事由が発生した時(保険金受取人がこの特約を締結したときは締結時)に,保険金等の全部又は一部が年金基金に充当され(2条),③ 年金受取人は,年金支払請求書を提出して年金を請求することとされ(13条),④ 保険契約者は,元保険契約継続中に限り,年金種類その他年金支払の内容を変更することができるとされていた(16条1項)。 (2) 亡B(大正14年 ▲ 月 ▲ 日生。死亡当時81歳)は,前記の年金支払特約における年金の種類及び年金の支払期間について具体的な指定をしないまま,平成19年▲月▲日死亡した(甲3)。 (3)ア Dは,本件各保険契約に基づく本件各死亡給付金の受取人とされていた原告らに対し,「給付金支払請求書」(乙8の1・2)及び「年金支払特約のご案内」(乙7の1・2)を送付した。 イ原告Cは平成19年7月31日付けで「年金支払特約のご案内」を,原告Aは同年8月7日付けで「年金支払特約のご案内」をそれぞれDに対し返送し,いずれも,同書面の下段にある「□ 年金支払を希望します。」との欄の□にレ点を付した(乙7の1・2)。 ウ原告らは,Dに対し,平成19年8月7日付けの「給付金支払請求書」(乙8の1・2)を返送した。 エまた,原告らは,Dから送付を受けた「年金支払請求書年金保険用【年金支払特約(初回請求用)】」に,年金支払申込内容として,① 年金基金充当額の全部又は一部を選択する欄,② 年金の種類を選択する欄,③年金の支払期間を選択する欄があることを利用して,平成19年8月2 0日付けの本件各年金支払請求書(乙2の1・2)をもって,Dに対し,① 年金基金に充当する額を「保険金等(但し差 ,③年金の支払期間を選択する欄があることを利用して,平成19年8月2 0日付けの本件各年金支払請求書(乙2の1・2)をもって,Dに対し,① 年金基金に充当する額を「保険金等(但し差引支払額)の全額」と指定し,② 年金の種類を「確定年金」と指定し,③ 年金支払の期間を「36年」と指定した(以下「本件各指定」という。)。 (4) 原告らは,本件各死亡給付請求権は,相続税法24条1項に規定する定期金給付契約に関する権利であって,同項1号に規定する「有期定期金」で「残存期間が35年を超えるもの」に該当するから,その相続税に係る評価額は,原告らが受け取るべき死亡給付金の総額各1億4515万7076円に100分の20を乗じた2903万1415円であるとする前提に立って,亡Bの本件相続における原告らの相続税に係る平成20年4月8日付けの本件申告(甲3)及び平成21年11月4日付けの本件修正申告(甲4)をした。 (5) 奈良税務署長は,平成22年7月5日,原告らに対し,本件各死亡給付金請求権は,相続税法24条1項に規定する定期金給付契約には当たらず,その評価額は亡Bの保険会社への払込金額1億円であるとの前提に立って,亡Bの本件相続に係る原告らの相続税の各更正処分をした(甲5,6)。 (6) 補助参加人(平成26年7月1日,E生命保険株式会社からF生命保険株式会社へと商号を変更した。)は,平成24年5月31日,Dから保険契約の包括移転を受け,本件各保険契約における保険者の地位を承継した(丙2)。 (7) 本件は,原告らが,被告に対し,本件申告及び本件修正申告時と同様に,本件各死亡給付請求権は,相続税法24条1項に規定する定期金給付契約に関する権利であって,同項1号に規定する「有期定期金」で「残存期間が35年を超えるもの」に該 本件申告及び本件修正申告時と同様に,本件各死亡給付請求権は,相続税法24条1項に規定する定期金給付契約に関する権利であって,同項1号に規定する「有期定期金」で「残存期間が35年を超えるもの」に該当すると主張して,原告Cの相続税に係る本件更正処分1(原告Cの納付すべき税額17億2236万7000円)のうち納付すべき税額17億1552万7400円を超える部分(差額683万960 0円)の取消しを,原告Aの相続税に係る本件更正処分2(原告Aの納付すべき税額1億2013万8300円)のうち納付すべき税額6249万7100円を超える部分(差額5764万1200円)の取消しをそれぞれ求めた事案である。 2 その他の事案の要旨,関係法令等の定め,前提事実,本件各更正処分の適法性及びその価額の内訳に関する被告の主張,争点,争点に関する当事者の主張の要点は,当審における被告の補充主張を後記4に,当審における原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張を後記5に,当審における原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張に対する被告の反論を後記6にそれぞれ加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要等」の1~6に記載のとおりであるから(ただし,原告ら主張の端数調整法に係る主張〔原判決の「第2 事案の概要等」中の6(3)イ〕のうち,原告Cに係る部分を除く。),これを引用する。 3(1) 原審は,次のように判断して,「1 奈良税務署長が原告Cに対し平成22年7月5日付けでした,被相続人Bの平成19年▲月▲日に開始した相続に係る原告Cの相続税についての更正処分のうち納付すべき税額17億1552万7400円を超える部分を取り消す。2 奈良税務署長が原告Aに対し平成22年7月5日付けでした,被相続人Bの平成19年▲月▲日に開始した相続に係る原告Aの相続税 のうち納付すべき税額17億1552万7400円を超える部分を取り消す。2 奈良税務署長が原告Aに対し平成22年7月5日付けでした,被相続人Bの平成19年▲月▲日に開始した相続に係る原告Aの相続税についての更正処分のうち納付すべき税額8713万3900円を超える部分を取り消す。3 原告Aのその余の請求を棄却する。」との判決を言い渡した。 ア① 亡Bが,本件各保険申込書(乙1の1・2)の「年金支払特約」欄の「付加する」に丸印を付したことなどにより,Dとの間で本件各保険契約を締結した際に年金支払特約(本件各特約)を付加する合意をしたと認めることができる。 ② 年金基金への充当額の指定については,亡Bが本件各保険契約締結時に,本件各死亡給付金の全額を年金基金に充当するとの指定をしていた ものと評価することができる。 ③ 年金の種類については,相続開始後年金支払開始日(年金の支払の履行時期)までの間に,受取人である原告らが年金支払期間を36年の確定年金とする旨を指定している。 ④ 相続税法24条は,取得の時における定期金給付契約に関する権利の評価については,厳密にこれを行うことが困難であるとの前提に立って,同法22条にいう特別の定めとして,専ら同法24条が定める簡易な方法を用いて行う旨を定めた規定である。 ⑤ したがって,本件各死亡給付金請求権は,相続税法24条1項1号に規定する「有期定期金」で「残存期間が35年を超えるもの」に該当する。 イ相続税法17条に従い,本件相続人らそれぞれに係る相続税の課税価格を分子とし,本件相続人ら全員に係る課税価格の合計額を分母とする分数を本件相続人らそれぞれに係る按分割合の数値として,本件相続人らそれぞれに係る相続税額を計算するのが相当であり,原告ら主張の端数調整法を採用することはで ら全員に係る課税価格の合計額を分母とする分数を本件相続人らそれぞれに係る按分割合の数値として,本件相続人らそれぞれに係る相続税額を計算するのが相当であり,原告ら主張の端数調整法を採用することはできない。 ウそうすると,原告Cの相続税額は16億8597万5300円となり,原告Aの相続税額は8713万3900円となるところ,原告Cの相続税額は,本件更正処分1のうち原告Cが取消しを求める相続税額17億1552万7400円を超える部分を下回るから,原告Cの請求は全て理由があるものとして認容する。また,本件更正処分2のうち相続税額6249万7100円を超える部分の取消しを求める原告Aの請求は,相続税額8713万3900円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余の原告Aの請求は理由がないから棄却すべきである。 (2) これに対し,原告Aは,同原告敗訴部分(原判決主文3項。原審で認容さ れた相続税額8713万3900円を超える部分の取消請求と,相続税額6249万7100円を超える部分の取消請求の差額2463万6800円に係る取消請求の棄却部分)を不服として控訴を提起した。また,被告は,被告敗訴部分(本件各更正処分における原告Cに係る相続税額17億2236万7000円-原審で認められた原告Cの相続税額17億1552万7400円=683万9600円と,原告Aに係る相続税額1億2013万8300円-原審で認められた原告Aの相続税額8713万3900円=3300万4400円の合計3984万4000円に係る取消部分)を不服として控訴を提起した。さらに,原告Cは,本件更正処分1のうち取消請求の対象となる相続税額を「17億1552万7400円を超える部分」から「16億8597万5300円を超える部分」(上 分)を不服として控訴を提起した。さらに,原告Cは,本件更正処分1のうち取消請求の対象となる相続税額を「17億1552万7400円を超える部分」から「16億8597万5300円を超える部分」(上記各相続税額の差額2955万2100円に係る部分)へと原審の請求を拡張し(主位的請求),これが認容されない場合には,過大に納付した2955万2100円相当の不当利得の返還を求める請求(予備的請求)を追加する内容の本件附帯控訴を提起した。したがって,原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求については,当審における拡張請求部分のみが同附帯控訴に基づき当審における審判の対象となっている。 4 当審における被告の補充主張(1) 本件各特約を締結したのは原告らであって亡Bではないから,相続税法24条1項の適用はないことア亡Bは,本件各特約において,年金基金充当額,年金の種類,年金の支払期間など年金の重要な給付内容を何一つ決定しておらず,相続開始時には定期金給付契約が存在していなかったといえるから,本件各特約を締結したのは原告らである。 イ Dが,年金支払事由の発生後に,保険金等受取人に,本件各支払請求書(乙2の1・2)の「年金基金充当額」欄に記入をさせて年金基金充当額 を決定させていたことに照らせば,年金基金充当額を指定していない保険契約者である亡Bの合理的意思としては,専ら保険金等受取人に充当範囲の指定を委ねたものであると解するのが相当である。 ウ Dは,「年金支払特約のご案内」の返送を受けなければ,原告らに対し,死亡給付金を一時金で支払うこととしていたところ,原告らは,亡Bの相続開始後に,同書面(乙7の1・2)及び本件各支払請求書(乙2の1・2)により本件各指定をしたから,本件各特約を締結したのは原告らである。 エ 金で支払うこととしていたところ,原告らは,亡Bの相続開始後に,同書面(乙7の1・2)及び本件各支払請求書(乙2の1・2)により本件各指定をしたから,本件各特約を締結したのは原告らである。 エ仮に,亡Bが本件各特約を締結したとすると,本件特約条項2条(甲7の80頁)によれば,年金基金の設定は,保険金等の支払事由が発生した時となるから,亡Bが死亡した平成19年▲月▲日に年金基金が設定されたことになるところ,本件特約条項上,年金基金の設定後に年金の種類の変更をすることはできないから(本件特約条項16条1項〔甲7の82頁〕),保険金等の支払事由の発生後(亡Bの死亡後)に保険金等の受取人が年金の種類等を指定することは,本件各特約上は許されないはずである。そうであるのに,原告らが亡Bの死亡後に,年金の種類等を指定したというのは(乙2の1・2),保険金受取人である原告らが本件各特約の新たな締結者として年金の種類等を指定したものであると理解するほかない。 (2) 本件各特約が付された本件各保険契約は,「定期金給付契約」(相続税法24条1項柱書き)に該当しないことア平成2年法律第50号による改正前の相続税法(以下「旧相続税法」という。)24条1項は,「郵便年金契約その他の定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は左(注:同項1号ないし4号)に掲げる金額による」と規定し,定期金給付契約の代表的なものとして郵便年金契約を例示して いた。この点,郵便年金契約について規定していた郵便年金法は,平成2年法律第50号により廃止されたが,当該廃止直前の郵便年金法(以下「郵便年金法」という。)及び郵便年金約款によれば,郵便年金契約においては,年金の種類,支払期間が契約 定していた郵便年金法は,平成2年法律第50号により廃止されたが,当該廃止直前の郵便年金法(以下「郵便年金法」という。)及び郵便年金約款によれば,郵便年金契約においては,年金の種類,支払期間が契約締結時に当事者間で定められていた。その後,平成2年の相続税法の改正において,「郵便年金契約その他の」との文言が削除されたが,それは,簡易生命保険法の一部を改正する法律(平成2年法律第50号)により,郵便年金法が廃止され,郵便年金が簡易保険の中の年金保険という位置付けに改められたことに伴う形式的な改正であって,同項の趣旨や実質的内容が変更されたものではなかった。 イそして,相続税法24条1項は,定期金給付契約に関する権利を同項各号に掲げるものとして分類し,同項各号に当てはまらない権利については,何ら定めていない。 ウ他方,相続税法23条は,地上権の評価について存続期間の定めのないものについての規定を設けている。 エ以上ア~ウの諸事情を併せ考えれば,相続税法24条1項柱書きに規定する「定期金給付契約」とは,権利を取得した時点(相続開始時)において,年金の種類などの年金の給付内容が定まっている契約,すなわち,契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権であって,権利の取得時(相続開始時)までに毎期に給付すべき額が確定しているものをいうと解すべきであり,少なくとも年金の種類等,同項各号のいずれの類型に該当するかさえ定まっていない本件各保険契約はこれに当たらないというべきである。 (3) 本件相続開始後の本件各指定によって確定した年金の種類等を前提として,本件各死亡給付金請求権に相続税法24条1項各号を適用することはできないことア相続は,人(被相続人)の死亡によって開始し(民法882条),それ 確定した年金の種類等を前提として,本件各死亡給付金請求権に相続税法24条1項各号を適用することはできないことア相続は,人(被相続人)の死亡によって開始し(民法882条),それ と同時に相続財産に属する権利義務の一切が,相続人の知,不知又は事実的占有取得の有無を問わず,当然かつ包括的に相続人に移転承継するという実体的効果を生じさせるのであるから(同法896条),相続税の納税義務は,相続開始の時,すなわち相続等によって財産を取得した時に成立するのが原則である(国税通則法15条2項4号)。相続税法においても,相続財産の評価に当たって,相続財産を相続開始時点における時価により評価すべきであることが原則とされている(相続税法22条)。そうすると,明文の規定なくして,課税時期後に生じた事情を考慮することは許されないから,相続開始後に原告らが年金の種類を確定年金とし,年金の支払期間を36年とする旨の本件各指定をしたことを考慮することはできない。 イ(ア) 昭和23年7月7日法律第107号による改正前の相続税法(以下「昭和22年相続税法」という。)34条(現行の相続税法24条に相当)1項1号は「有期定期金については,相続開始の時の現況により,残存期間に受くべき給付金額に,その残存期間に応じ,左の割合を乗じて算出した金額。但し,1年間に受くべき金額の20倍を超えることができない。」と規定し,また,同項3号は「終身定期金については,相続開始の時の現況により,1年間に受くべき金額に,その目的とされた人の年齢に応じ,左の倍数を乗じて算出した金額」と規定し,有期定期金又は終身定期金の価額は,相続開始の時の現況により評価することが明記されていた(乙19の144頁・145頁)。 (イ) 昭和25年3月31日法律第73号による相続税法の 金額」と規定し,有期定期金又は終身定期金の価額は,相続開始の時の現況により評価することが明記されていた(乙19の144頁・145頁)。 (イ) 昭和25年3月31日法律第73号による相続税法の改正により,相続税法(昭和26年3月28日法律第40号による改正前のもの。以下「昭和25年相続税法」という。)24条1項1号は「有期定期金については,その残存期間に応じ,その残存期間に受けるべき給付金額の総額に,左に掲げる割合を乗じて計算した金額」と改正されて,「相続開始 の時の現況により」という文言が削除されるとともに,同条1項柱書きが,従前の「相続財産たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの価額は,左に掲げる金額による。」という規定から「郵便年金契約その他の定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は,左に掲げる金額による。」と改正された(乙20の197頁・198頁)。 (ウ) この点について,昭和25年相続法の税制改正を解説した「昭和の税制改正」(乙21)や当時の実務書であった「相続税富裕税の実務」(乙18)には,当該改正の趣旨について何ら触れられておらず,また,昭和22年相続税法における財産評価の原則的な考え方について変更があったとする記載もないことからすると,昭和22年相続税法における「相続開始の時の現況により」という文言は,いわば条文の形式的・技術的な改正によって削除されたと考えられ,昭和22年相続税法における同法34条の趣旨や実質的な内容,すなわち,相続開始の時の現況により定期金給付契約に関する権利の評価を行うべきことについては,昭和25年相続税法以降においても何ら変更がされていない。 ウ仮に,相続財産の取得時 旨や実質的な内容,すなわち,相続開始の時の現況により定期金給付契約に関する権利の評価を行うべきことについては,昭和25年相続税法以降においても何ら変更がされていない。 ウ仮に,相続財産の取得時点において,年金の種類等が確定していないことを理由に,その後の事情を考慮して相続財産の評価をすることを認めるならば,相続人である原告らの意思によって,みなし相続財産たる本件各死亡給付金請求権の評価額を本件相続開始後において自由に決定することを可能にし,納税者において相続税の負担を容易に回避することができる手段を与えることとなる上に,保険契約の申込時において年金の種類及び年金の支払期間が定められた他の保険商品に係る定期金の権利を取得した者との間における課税の公平性を著しく害するから,不当である。 5 当審における原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張 (1) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求(本件更正処分1の取消請求)の拡張請求について更正の請求の手続を経ずに申告に係る税額の減額の請求を認めることが,租税債務の安定的かつ可及的速やかな確定の要請を害さないといえる場合には,更正の請求の原則的排他性の趣旨には抵触しないから,その例外として,当該請求を認めるべきである。原告Cは,平成20年4月8日に本件申告をした後,平成21年11月4日に本件修正申告をし,一旦相続税額が確定したものの,平成22年7月5日に本件更正処分1が行われたため,それ以後,同処分に対する異議申立て手続及び審査請求手続を経て,本件訴訟に至っており,一連の争訟手続において,原告Cの相続税額が争点となっており,その税額が確定していない。そして,原判決の理由中において,原告Cの納付すべき相続税額が16億8597万5300円であることが明確に判示されている。 続において,原告Cの相続税額が争点となっており,その税額が確定していない。そして,原判決の理由中において,原告Cの納付すべき相続税額が16億8597万5300円であることが明確に判示されている。このような経過に照らせば,納付すべき相続税額16億8597万5300円を超える部分について,本件更正処分1の取消しを求める原告Cの本件附帯控訴に基づく拡張請求部分は,租税債務の安定的かつ可及的速やかな確定の要請を害さず,更正の請求の原則的排他性の趣旨には抵触しないといえるから,これを認めるべきである。 (2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)について課税処分そのものが取消し又は変更されなくても,国は,同処分に基づいて先に徴収した所得税額のうち正義公平の原則にもとる著しく不当な税額については,不当利得として納税者に返還する義務がある(最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁参照)。本件においても,本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分が認容されなければ,原告Cは,2955万2100円の相続税を過大に納付し,国は,法律に基づかない過大な利益を保持することになるから,同額の不当利得返還責任がある。 6 当審における原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張に対する被告の反論(1) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求について原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求は,本件修正申告において原告Cが納付すべき相続税額として自ら納税義務を確定させた,納付すべき税額17億1552万7400円を超えない部分の取消しを求めるものであるから,訴えの利益がなく,不適法なものとして,却下を免れない。 国税通則法及び相続税法が申告の過誤の是正 させた,納付すべき税額17億1552万7400円を超えない部分の取消しを求めるものであるから,訴えの利益がなく,不適法なものとして,却下を免れない。 国税通則法及び相続税法が申告の過誤の是正につき更正の請求(国税通則法23条,相続税法32条)という特別の規定を設けた趣旨は,課税標準等の決定については,最もその間の事情に通じている納税者自身の申告に基づくものとし,その過誤の是正は法律が特に認めた場合に限る建前とすることが,租税債務を可及的速やかに確定させるべき国家財政上の要請に応じるものであり,納税者に対しても過当な不利益を強いるおそれがないと認めたからである(最高裁昭和39年10月22日第一小法廷判決・民集18巻8号1762頁)。この趣旨からすれば,申告が過大であるとしてその内容を是正するについては,特段の事情がない限り,更正の請求という手続以外の方法でこれを主張することは許されない(最高裁昭和57年2月23日第三小法廷判決・民集36巻2号215頁)。そうすると,更正の請求という特別の手続を経ることなく,申告額を超えない部分についてまで取消しを求めることは,申告の錯誤が客観的に明白かつ重大であって,更正の請求以外に是正を許さなければ納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がない限り,申告額を超えない部分の取消しを求める訴えは,訴えの利益を欠き,不適法なものというべきである。本件においては,上記の特段の事情がないから,原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分に係る訴えは,不適法なものとして,却下されるべきである。 (2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)について 原告Cは,自らの責任と判断に基づき本件修正申告をし(甲4),これにより本件相 (2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)について 原告Cは,自らの責任と判断に基づき本件修正申告をし(甲4),これにより本件相続に係る相続税額は17億1552万7400円であることが有効に確定しているから,これを下回る部分について国に不当利得は生じていない。そして,更正の請求(国税通則法23条,相続税法32条)によらず,不当利得返還請求により更正の請求と同じ経済的利益を得ることは認められないから,原告Cの予備的請求は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,(1) 本件各死亡給付金請求権(基本権)について,相続税法24条1項が適用されることを前提とする原告Cの原審における請求は理由があるから全部認容し,原告Aの請求は原判決が認容した限度(原判決主文2項)で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,(2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分に係る訴えは,訴えの利益を欠き,不適法なものであるからこれを却下し,(3) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(当審における追加請求)は,被告に不当利得返還責任があるとはいえず,理由がないから棄却すべきであると判断する。 その理由は,次のとおり補正し,当審における被告の補充主張に対する判断を後記2のとおり,当審における原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張等に対する判断を後記3のとおりそれぞれ加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の1~3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決28頁23行目の「しかし,」の次に「亡Bが,年金基金への充当額を一部に限定する選択が可能であることをうかがわせる記載が全くない本件各保険申込書(乙1 あるから,これを引用する。 (1) 原判決28頁23行目の「しかし,」の次に「亡Bが,年金基金への充当額を一部に限定する選択が可能であることをうかがわせる記載が全くない本件各保険申込書(乙1の1・2)において,その『年金支払特約』の『付加する』欄に単純に丸印を付していたことに照らせば,本件各保険申込書の外形的記載からする限り,契約上の権利(死亡給付金請求権)の全体について『年 金支払特約』を付するものであって,本件各死亡給付金の全額を年金基金へ充当する趣旨であったと解するのが自然である。また,年金基金への充当額を一部に限定する選択が可能であるとする約款(本件特約条項2条)を考慮しても,」を加える。 (2) 原判決34頁13行目の「一般の社会通念に照らし,」を,15行目から16行目にかけての「租税に関する法令の解釈が一般の社会通念からかけ離れたものであってはならないことは論を待たないところであり,また,」を,及び,35頁2行目の「上記のような」から5行目末尾までをいずれも削る。 2 当審における被告の補充主張に対する判断(1) 本件各特約を締結したのは原告らであって亡Bではないから相続税法24条1項の適用はないとの被告の主張についてア被告は,「亡Bは,本件各特約において,年金基金充当額,年金の種類,年金の支払期間など年金の重要な給付内容を何一つ決定しておらず,相続開始時には定期金給付契約が存在していなかったといえるから,本件各特約を締結したのは原告らである。」旨主張する(前記第2の4(1)ア)。 しかし,前記第2の1(1)記載のとおり,亡Bは,本件各保険申込書(乙1の1・2)の「年金支払特約」欄の「付加する」に丸印を付し,保険証券の裏面の「適用条項・特約」欄には「年金支払特約」と記載されていた(甲1の 2の1(1)記載のとおり,亡Bは,本件各保険申込書(乙1の1・2)の「年金支払特約」欄の「付加する」に丸印を付し,保険証券の裏面の「適用条項・特約」欄には「年金支払特約」と記載されていた(甲1の2,甲2の2)。そして,民法上の「終身定期金契約」における「定期金」とは,例えば,毎年・毎月・毎週・盆・暮のように一定の時期に回帰的に給付がされることを内容とするものをいうと解され(丙5の197頁参照),民法上の終身定期金契約における「定期金」契約が成立するためには,その定期金の債務者が具体的な給付を行う上で確定する必要のある各期の支払額は,契約締結時までではなく,履行期までに確定し得べきものであればよいと解される(丙5の212頁参照)。そうすると,終身定期金と同様に,本件各死亡給付金の年金支払特約に係る毎期の定期 金も,契約締結時までではなく,その履行期(支払時期)までに確定されれば有効に定期金契約が成立したものというべきである。 これを本件についてみるに,本件各特約においては,第1回年金支払の履行期は,本件普通保険約款20条の規定によれば,原則として必要書類が当時のDの主たる店舗に到着してから5営業日以内の日であるとされているところ(甲7の66頁),原告らは,Dに対し,上記の「必要書類」の1つであると認められる平成19年8月20日付けの本件各支払請求書(乙2の1・2)を提出すると同時に年金の種類等に係る本件各指定をしたから,履行期までに年金の種類及び年金の支払額を確定させたものであるといえる。 そして,本件各特約条項においては,保険契約者のみならず,死亡給付金の支払事由発生後はその受取人の申出により年金支払特約を新たに締結することができ,この特約が締結されたときは,保険金等の支払事由が発生した時(保険金受取人がこの特約 保険契約者のみならず,死亡給付金の支払事由発生後はその受取人の申出により年金支払特約を新たに締結することができ,この特約が締結されたときは,保険金等の支払事由が発生した時(保険金受取人がこの特約を締結したときは締結時)に,保険金等の全部又は一部を年金基金に充当する旨が明記されている以上(1条,2条),保険契約者が年金支払特約を付する意思を明確にしている場合には,たとえ年金の種類及び年金の支払期間が指定されていなくとも,保険金受取人においてそれら(未定であった特約の一部)を履行期までに補充的に指定することを許容する趣旨であると解される。 そうすると,亡BとDとの間で定期金給付契約が有効に存在していたものというべきである。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 イまた,被告は,「Dが,年金支払事由の発生後に,保険金等受取人に,本件各支払請求書(乙2の1・2)の『年金基金充当額』欄に記入をさせて年金基金充当額を決定させていたことに照らせば,年金基金充当額を指定していない保険契約者である亡Bの合理的意思としては,専ら保険金等 受取人に充当範囲の指定を委ねたものであると解するのが相当である。」旨主張する(前記第2の4(1)イ)。 しかし,本件各保険契約締結後に記入した書類の記載内容をもって,亡Bの本件各保険契約締結当時の合理的意思を推測することはできない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 ウ被告は,「Dは,『年金支払特約のご案内』の返送を受けなければ,原告らに対し,死亡給付金を一時金で支払うこととしていたところ,原告らは,亡Bの相続開始後に,同書面(乙7の1・2)及び本件各支払請求書(乙2の1・2)により本件各指定をしたから,本件各特約を締結したのは原告らである。」旨主張する 支払うこととしていたところ,原告らは,亡Bの相続開始後に,同書面(乙7の1・2)及び本件各支払請求書(乙2の1・2)により本件各指定をしたから,本件各特約を締結したのは原告らである。」旨主張する(前記第2の4(1)ウ)。 しかし,Dが,「年金支払特約のご案内」の返送を受けなければ,死亡給付金を一時金で支払うこととしていると認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。また,本件各支払請求書や「年金支払特約のご案内」と題する書面は,年金の受取人が,既に亡Bとの間で有効に存在していた本件各特約の契約内容を確認し,本件特約条項1条,2条(甲7の80頁)の趣旨に従って未確定の年金の種類等を年金支払の履行期までに補充的に指定し,又は,特約の全部若しくは一部の解約をするものであると解されるから,それらの書面の存在・送付・返送をもって,本件各特約が亡Bとの間で存在していなかったとか,原告らが本件各特約の新たな当事者として締結したものであるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 エまた,被告は,「仮に,亡Bが本件各特約を締結したとすると,本件特約条項2条(甲7の80頁)によれば,年金基金の設定は,保険金等の支払事由が発生した時となるから,亡Bが死亡した平成19年▲月▲日に年金基金が設定されたことになるところ,本件特約条項上,年金基金の設定後に年金の種類の変更をすることはできないから(本件特約条項16条 1項〔甲7の82頁〕),保険金等の支払事由の発生後(亡Bの死亡後)に保険金等の受取人が年金の種類等を指定することは,本件各特約上は許されないはずである。そうであるのに,原告らが亡Bの死亡後に,年金の種類等を指定したというのは(乙2の1・2),保険金受取人である原告らが本件各特約の新たな締結者として年金 ことは,本件各特約上は許されないはずである。そうであるのに,原告らが亡Bの死亡後に,年金の種類等を指定したというのは(乙2の1・2),保険金受取人である原告らが本件各特約の新たな締結者として年金の種類等を指定したものであると理解するほかない。」旨主張する(前記第2の4(1)エ)。 しかし,本件特約条項16条1項(甲7の82頁)が,年金基金の設定後に年金の種類の変更をすることはできないと定めているのは,保険契約者が年金の種類等を指定した後に自らこれを変更することができないことを定めたものにすぎず,亡Bの死亡後に保険金等の受取人が年金の種類を指定することができないとするものではないと解される。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 (2) 本件各特約が付された本件各保険契約は,「定期金給付契約」(相続税法24条1項柱書き)に該当しないとの被告の主張について被告は,「① 旧相続税法24条1項は,『郵便年金契約その他の定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は左(注:同項1号ないし4号)に掲げる金額による』と規定し,定期金給付契約の代表的なものとして郵便年金契約を例示していたが,郵便年金契約においては,年金の種類,支払期間が契約締結時に当事者間で定められていた。その後,平成2年の相続税法の改正において,『郵便年金契約その他の』との文言が削除されたが,それは,郵便年金法が廃止されことに伴う形式的な改正であって,同項の趣旨や実質的内容が変更されたものではなかった。また,② 相続税法24条1項が,定期金給付契約に関する権利を同項各号に掲げるものとして分類し,同項各号に当てはまらない権利については,何ら定めていない。他方で,③ 相続税法23条は,地 なかった。また,② 相続税法24条1項が,定期金給付契約に関する権利を同項各号に掲げるものとして分類し,同項各号に当てはまらない権利については,何ら定めていない。他方で,③ 相続税法23条は,地上権の評価について存続期間の定めのないものについての規定を 設けている。これら①~③の諸事情を併せ考えれば,相続税法24条1項柱書きに規定する『定期金給付契約』とは,権利を取得した時点(相続開始時)において,年金の種類などの年金の給付内容が定まっている契約をいうと解すべきであり,年金の種類等,同項各号のいずれの類型に該当するかさえ定まっていない本件各保険契約はこれに当たらないというべきである。」旨主張する(前記第2の4(2))。 しかし,① 旧相続税法24条1項柱書きには「郵便年金契約その他の定期金給付契約」と規定されていたが,「その他の」という用語は,その後にある,より内容の広い意味を有する字句の例示として,その一部を成している場合に用いられることが多いから(丙22),「その他の」の後にある「定期金給付契約」は「郵便年金契約」と比べてより広い意味内容を有すると解釈するのが自然である。そうすると,例示されていた郵便年金契約の年金の種類等が契約締結時に定まっているものであったからといって,それと同様に契約締結時に年金の種類等が定まっている定期金給付契約についてのみ相続税法24条1項が適用されるべきであるとはいえない。また,② 確かに,相続税法24条1項各号は,有期定期金,無期定期金及び終身定期金の3種類のみを挙げ,「存続期間の定めのない」定期金についての評価規定をおいていないが,民法上,典型契約の1つである終身定期金契約における定期金には,有期定期金(終身定期金は有期定期金の一種としての不確定終期定期金である。)と無期定期金の 」定期金についての評価規定をおいていないが,民法上,典型契約の1つである終身定期金契約における定期金には,有期定期金(終身定期金は有期定期金の一種としての不確定終期定期金である。)と無期定期金の2種類があり,存続期間の定めのない定期金は一般に観念されていない上(丙23),年金の種類等が年金支払の履行期までに確定しないときは,その定期金給付契約は無効であるといえるから,「存続期間の定めのない」定期金契約について,相続税法でそれに対応した規定を設ける必要がないと考えられることに照らせば,存続期間の定めのない定期金契約について明示的な評価規定を設けていないことをもって,そのような契約について相続税法24条1項を一切適用しない趣旨であるとはいえない。さ らに,③ 存続期間の定めのない地上権については,設定行為後に,裁判所が当事者の請求によって20年以上50年以下の範囲内において存続期間を定めることができる旨が規定されているから(民法268条2項),相続税法23条がこれに対応した規定を設けたものと考えられること(丙24)に照らせば,同条が地上権の評価について存続期間の定めのないものについての規定を設けているのに対し,同法24条1項が存続期間の定めのない定期金給付契約に関する規定を設けていないことをもって,契約締結時に年金等の種類が定まっていない定期金給付契約について相続税法24条1項が適用されないとはいえない。以上の①~③によれば,契約締結時に年金等の種類が定まっていない定期金給付契約について相続税法24条1項が適用されるべきでないとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 (3) 本件相続開始後の本件各指定によって確定した年金の種類等を前提として,本件各死亡給付金請求権に相続税法24条1項各号を はいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 (3) 本件相続開始後の本件各指定によって確定した年金の種類等を前提として,本件各死亡給付金請求権に相続税法24条1項各号を適用することはできないとの被告の主張についてア被告は,「相続は,人(被相続人)の死亡によって開始し(民法882条),それと同時に相続財産に属する権利義務の一切が,相続人の知,不知又は事実的占有取得の有無を問わず,当然かつ包括的に相続人に移転承継するという実体的効果を生じさせるのであるから(同法896条),相続税の納税義務は,相続開始の時,すなわち相続等によって財産を取得した時に成立するのが原則である(国税通則法15条2項4号)。相続税法においても,相続財産の評価に当たって,相続財産を相続開始時点における時価により評価すべきであることが原則とされている(相続税法22条)。そうすると,明文の規定なくして,課税時期後に生じた事情を考慮することは許されないから,相続開始後に原告らが年金の種類を確定年金とし,年金の支払期間を36年とする確定年金とする旨の本件各指定をし たことを考慮することはできない。」旨主張する(前記第2の4(3)ア)。 しかし,「当該相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額をもって,相続税の課税価格とする。」旨規定している相続税法11条の2を適用するに当たり,確かに,本来の相続財産の場合には,相続人は,被相続人から,その死亡時に有していた財産を,その現況のまま承継取得することになるため,その取得時である死亡時(承継時・相続開始時)の現況に着目して,相続税法の評価を行うことになると考えられる。これに対し,本件各死亡給付金請求権は,「保険金」(相続税法3条1項1号)に該当するものとして,「相続又は遺 亡時(承継時・相続開始時)の現況に着目して,相続税法の評価を行うことになると考えられる。これに対し,本件各死亡給付金請求権は,「保険金」(相続税法3条1項1号)に該当するものとして,「相続又は遺贈により取得した財産」とみなされて,同法11条の2の適用を受けることになる「みなし相続財産」である。みなし相続財産の場合には,相続人は,みなし相続財産を被相続人から承継取得するのではないから,評価に当たって考慮すべき事情を相続開始時までの事情に限定する論理必然性はない。相続人は,財産取得の法律上の発生原因たる契約等に基づき原始的に取得し,その権利の具体的な内容はその法律上の発生原因たる契約等によって定められるものと解される。そうすると,相続税法24条1項は,「相続財産について,相続開始時点における時価により評価する」という「原則」を定める相続税法22条にいう「特別の定め」(例外規定)として,本件特約条項に従って相続開始後の履行期までの間に確定される年金の種類等(本件各指定)を考慮して本件各死亡給付金請求権(基本権)の評価をすることを許容する規定であると解するのが相当である。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 イ被告は,「昭和22年相続税法における『相続開始の時の現況により』という文言は,いわば条文の形式的・技術的な改正によって削除されたと考えられ,昭和22年相続税法における同法34条の趣旨や実質的な内容,すなわち,相続開始の時の現況により定期金給付契約に関する権利の評価を行うべきことについては,昭和25年相続税法以降においても何ら変更 がされていない。」旨主張する(前記第2の4(3)イ)。 しかし,相続税法は,明治38年の制定以来,「遺産課税方式」(遺産全体を課税物件とする方式)を採 降においても何ら変更 がされていない。」旨主張する(前記第2の4(3)イ)。 しかし,相続税法は,明治38年の制定以来,「遺産課税方式」(遺産全体を課税物件とする方式)を採っていたが,いわゆる「シャウプ勧告」を受けて行われた昭和25年法律第73号による改正により「遺産取得課税方式」(相続・遺贈により遺産を取得したものを納税義務者として,その者が取得した遺産を課税物件として課税する方式)に改められ,その後,昭和33年法律第100号による改正により,法定相続分を加味する課税方式に修正されたものの,基本的には,遺産取得課税方式により現在に至っている(乙21の227頁,丙25)。 遺産課税方式であった昭和22年相続税法においては,課税物件が「遺産」であった以上,その評価について,同法が,「相続開始時の現況により」と規定していたのは論理上当然である。これに対し,遺産取得課税方式である昭和25年相続税法においては,課税物件は納税義務者が「相続・遺贈により取得した財産」であり(同法2条),その取得の時期,取得した財産の内容は,私法上の取得原因(相続財産については相続,遺贈。みなし相続財産についてはその発生原因)によって定まるものであり,その評価について,「相続開始時の現況により」という要件が削除されたのは,相続方式を遺産課税方式から遺産取得課税方式に変更したことに伴うものであるといえる。このような課税方式の重大な変更に照らせば,昭和22年相続税法における同法34条の趣旨等(相続開始の時の現況により定期金給付契約に関する権利の評価を行うべきこと)に何ら変更がなかったとする被告の主張は,理由がない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 ウ被告は,「仮に,相続財産の取得時点において,年金 利の評価を行うべきこと)に何ら変更がなかったとする被告の主張は,理由がない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 ウ被告は,「仮に,相続財産の取得時点において,年金の種類等が確定していないことを理由に,その後の事情を考慮して相続財産の評価をすることを認めるならば,相続人である原告らの意思によって,みなし相続財産た る本件各死亡給付金請求権の評価額を本件相続開始後において自由に決定することを可能にし,納税者において相続税の負担を容易に回避することができる手段を与えることとなる上に,保険契約の申込時において年金の種類及び年金の支払期間が定められた他の保険商品に係る定期金の権利を取得した者との間における課税の公平性を著しく害することとなるから,不当である。」旨主張する(前記第2の4(3)ウ)。 しかし,相続財産取得時以降のどの時点までのどのような範囲の事情が考慮されるべきかについては,本件各死亡給付金請求権の発生原因である本件各保険契約(本件普通保険約款・本件特約条項)が客観的に定めていると解される以上,相続人である原告らの意思によって,みなし相続財産たる本件各死亡給付金請求権の評価額を本件相続開始後において自由に決定することを可能にし,課税の公平性を著しく害しているとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 エその他,被告がるる主張する諸事情を検討しても,当裁判所の前記認定判断を覆すべき事情及びそれを裏付けるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。 3 当審における原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張等に対する判断(1) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求(本件更正処分1の取消請求)の拡張請求について原告Cは,「平成20年4月8日に本件申告をした 原告Cの本件附帯控訴に係る補充主張等に対する判断(1) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求(本件更正処分1の取消請求)の拡張請求について原告Cは,「平成20年4月8日に本件申告をした後,平成21年11月4日に本件修正申告をし,一旦相続税額が確定したものの,平成22年7月5日に本件更正処分1が行われたため,それ以後,同処分に対する異議申立て手続及び審査請求手続を経て,本件訴訟に至っており,一連の争訟手続において,原告Cの相続税額が争点となっており,その税額が確定していない。 そして,原判決の理由中において,原告Cの納付すべき相続税額が16億8597万5300円であることが明確に判示されている。このような経過に 照らせば,納付すべき相続税額16億8597万5300円を超える部分について,本件更正処分1の取消しを求める原告Cの本件附帯控訴に基づく拡張請求部分は,租税債務の安定的かつ可及的速やかな確定の要請を害さず,更正の請求の原則的排他性の趣旨には抵触しないといえるから,これを認めるべきである。」旨主張する(前記第2の5(1))。 しかし,申告が過大であるとしてその内容を是正するについては,特段の事情がない限り,更正の請求という手続以外の方法でこれを主張することは許されない(最高裁昭和57年2月23日第三小法廷判決・民集36巻2号215頁)。そうすると,更正の請求という特別の手続を経ることなく,申告額を超えない部分についてまで取消しを求める訴えは,特段の事情がない限り,訴えの利益を欠き,不適法なものというべきである。本件において,原告Bは,本件修正申告により納付すべき税額17億1552万7400円を超えない部分の納税義務を自ら確定させ,その後も更正の請求をしなかったものであって,上記の特段の事情があるとはい 本件において,原告Bは,本件修正申告により納付すべき税額17億1552万7400円を超えない部分の納税義務を自ら確定させ,その後も更正の請求をしなかったものであって,上記の特段の事情があるとはいえず,他にこれを認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。 したがって,納付すべき税額16億8597万5300円を超える部分について本件更正処分1の取消しを求める原告Cの請求(本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分)は,訴えの利益がなく,不適法なものとして,却下すべきである。 (2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)について原告Cは,「本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分が認められなければ,原告Cは,2955万2100円の相続税を過大に納付し,国は,法律に基づかない過大な利益を保持することになるから,同額の不当利得返還責任がある。」旨主張する(前記第2の5(2))。 しかし,原告Cは,本件修正申告をしたこと(甲4)により本件相続に係 る相続税額を17億1552万7400円の範囲内で確定させているから,これを下回る部分についての国の徴税には法律上の原因があり,不当利得は成立しない。 したがって,原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)は,理由がない。 (3) 原告Aは,原告ら主張の端数調整法を採用すべきことを前提として,本件控訴を提起したものと解される。 しかし,補正の上引用した原判決の「第3 当裁判所の判断」中の2(1)及び(2)に説示したとおり,相続税法17条によれば,本件相続人らそれぞれに係る相続税の課税価格を分子とし,本件相続人ら全員に係る課税価格の合計額を分母とする分数を本件相続人らそれぞれに係 2(1)及び(2)に説示したとおり,相続税法17条によれば,本件相続人らそれぞれに係る相続税の課税価格を分子とし,本件相続人ら全員に係る課税価格の合計額を分母とする分数を本件相続人らそれぞれに係る按分割合の数値として,本件相続人らそれぞれに係る相続税額を計算するのが相当であり,原告ら主張の端数調整方法を採用することはできない。 したがって,原告ら主張の端数調整法を採用すべきことを前提とする原告Aの本件控訴は,理由がない。 (4) その他,原告らがるる主張する諸事情を検討しても,当裁判所の前記認定判断を覆すべき事情及びそれを裏付けるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。 第4 結論以上によれば,(1) 本件各死亡給付金請求権(基本権)について,相続税法24条1項が適用されることを前提とする原告Cの原審における請求は理由があるから全部認容し,原告Aの請求は原判決が認容した限度(原判決主文2項)で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。(2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分に係る訴えは,訴えの利益を欠き,不適法なものである。(3) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還 請求。当審における追加請求)は,被告に不当利得返還責任があるとはいえず,理由がない。 よって,(1) 原告Aの本件控訴及び被告の本件控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却し,(2) 原告Cの本件附帯控訴に基づく主位的請求の拡張請求部分に係る訴えは却下し,(3) 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)は棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部 裁判長裁判官 主文 原告Cの本件附帯控訴に基づく予備的請求(不当利得返還請求。当審における追加請求)は棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部 裁判長裁判官井上繁規 裁判官齊木教朗 裁判官宮永忠明
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