- 1 -主文一本件各控訴をいずれも棄却する。 二控訴費用は、第一審原告について生じた分は第一審原告の負担とし、第一審被告について生じた分は第一審被告の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一第一審原告(控訴の趣旨) 原判決中、第一審原告の敗訴部分を取り消す。 第一審被告が平成八年九月六日にした福井県空港建設調査事務所の平成八年一月一日から平成七年度末までの間の食糧費支出に関する一切の資料についての一部非公開決定のうち、相手方の表記及び行為の日に係る部分を除く部分を取り消す。 第一審被告が平成八年一〇月四日にした公文書公開決定に基づく公文書公開処分(公文書のコピーのコピーの交付)を取り消す。 第一審被告は第一審原告に対し、右一部非公開決定に係る公文書及び右公文書公開決定に係る公文書を閲覧させよ。 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。 (第一審被告の控訴の趣旨に対する答弁) 第一審被告の控訴を棄却する。 控訴費用は第一審被告の負担とする。 二第一審被告(控訴の趣旨) 原判決中、第一審被告の敗訴部分を取り消す。 第一審原告の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。 - 2 -(第一審原告の控訴の趣旨に対する答弁) 第一審原告の控訴を棄却する。 控訴費用は第一審原告の負担とする。 第二事案の概要一本件は、福井県民である第一審原告が福井県公文書公開条例に基づいてその実施機関である第一審被告に対し福井県空港建設調査事務所の食糧費支出(平成八年一月一日から平成七年度末までの支払分)に係る公文書の公開請求をしたところ、第一審被告が、右請求に係る公文書である食糧費の執行伺、食糧費の支出負担行為伺兼支出命令決議書、食糧費の支出負担行為伺及び食糧費 一日から平成七年度末までの支払分)に係る公文書の公開請求をしたところ、第一審被告が、右請求に係る公文書である食糧費の執行伺、食糧費の支出負担行為伺兼支出命令決議書、食糧費の支出負担行為伺及び食糧費の支出命令決議書(以下「本件文書」という)のうち、①本件文書中及びこれに。 添付された喫食者名簿中の相手方の表記(相手方の所属する集落名等、②喫)食者名簿中の相手方の氏名、③行為の日、④飲食業者の銀行口座情報について非公開決定をし、その余の部分について公開決定をし、また、右公開決定に係、、る公文書についての第一審原告の閲覧請求に対してその原本の閲覧を認めず、、写しの写しの交付しか認めなかったことから第一審原告が第一審被告に対し⑴右公文書一部非公開決定の取消し、⑵写しの写しを交付した公文書公開処分の取消し、⑶右公文書一部非公開決定及び公文書公開決定に係る公文書を第一審原告に閲覧させることを請求した事案である。 二原審は、第一審原告の⑴の請求については、第一審被告の公文書一部非公開決定のうち①の相手方の表記及び③の行為の日に係る部分の取消しを求める部分を認容し、その余の部分を棄却し、⑵及び⑶の請求に係る訴えはいずれも不適法であるとしてこれを却下する判決をした。そこで、第一審原告が原判決が請求を棄却した部分及び訴えを却下した部分を不服として控訴し、他方第一審被告も原判決が第一審原告の請求を認容した部分を不服として控訴した。 三当事者間に争いのない事実等は、原判決「第二事案の概要」中の「一争いのない事実及び弁論の全趣旨によって認められる事実」に記載のとおりであ- 3 -りただし原判決七頁九行目末行目八頁初行目及び二行目にそれぞれ食(、、、「料費」とあるのを「食糧費」と改める、争点及び争点に関する当事者双方の。 に記載のとおりであ- 3 -りただし原判決七頁九行目末行目八頁初行目及び二行目にそれぞれ食(、、、「料費」とあるのを「食糧費」と改める、争点及び争点に関する当事者双方の。)主張は、次のとおり当事者双方の当審における補充主張を付加するほか、原判決「第二事案の概要」中の「二争点」に記載のとおりであるから、これを引用する。 (第一審原告の当審における補充主張) 原判決は、相手方の氏名が条例七条一号本文の非公開事由(個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、または識別されうるもの)等に当たるとして、この部分の非公開決定の取消請求を棄却したが、相手方の氏名は右非公開事由に当たらない。すなわち、原判決は食糧費の支出を伴う打合せの相手方になるということは私的領域にあり、その出席者氏名はプライバシーに関するものとして保護されるべきであると判示しているが、食糧費の支出を伴う打合せの相手方になるということは行政事務、事業への関与にほかならず、このような打合せ参加自体に個人のプライバシーに属する事項があるとは考えられず、プライバシー保護の対象とみるのは根拠がない。 相手方の表記及び行為の日が条例所定の非公開事由に該当する旨の第一審被告の主張は争う。 (第一審被告の当審における補充主張) 原判決は、相手方の表記(集落名)は特定の個人が識別され、または識別されうる情報に当たらないから、条例七条一号本文の非公開事由に当たらないし、条例七条六号の非公開事由(公開することにより、当該もしくは同種の事務の目的が達成できなくなり、またはこれらの事務の公正もしくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの)にも当たらない旨判示するが、右判断は誤っている。すなわち、相手方の表記(集落名)が明らかにされれば、原審及び別訴で釈 たはこれらの事務の公正もしくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの)にも当たらない旨判示するが、右判断は誤っている。すなわち、相手方の表記(集落名)が明らかにされれば、原審及び別訴で釈明等により明らかにした会食の日時、場所、打合せの内容に加え、個人の集落内における役職、これまでの集落内での発言内- 4 -容、県との話合いの姿勢等の容易に知りうる情報を総合することにより、話合いの相手方が特定されうることになる。また、条例七条六号の該当性については、話合いの相手方が特定されるというだけでなく、どの集落の会食の回数が多いとか参加人数が多いとかいった事項が明らかになることによって、あらぬ誤解を受けて、行政事務の公正もしくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれが生じるのであるから、この点でも右非公開事由に該当することは明らかである。 行為の日についても、これが明らかにされると、原審及び別訴で釈明等により明らかにした会食の場所、打合せの内容に加え、個人の集落内における役職、これまでの集落内での発言内容、県との話合いの姿勢等の容易に知り、。 うる情報を総合することにより話合いの相手方が特定されうることになる 相手方の氏名等が条例所定の非公開事由に該当しない旨の第一審原告の主張は争う。 四証拠関係は、本件記録中の原審及び当審における書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。 第三当裁判所の判断一本件に対する当裁判所の判断は次のとおり付加・訂正するほか原判決第、、「三争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決三七頁一〇行目の「そうすると」から同頁末行目末尾までを削除、し、三八頁初行目から四〇頁八行目までを次のとおり改める。 「㈢もっとも、福井県空港建設調査事務所が本件食糧費の支出を する。 原判決三七頁一〇行目の「そうすると」から同頁末行目末尾までを削除、し、三八頁初行目から四〇頁八行目までを次のとおり改める。 「㈢もっとも、福井県空港建設調査事務所が本件食糧費の支出を伴って開催した地元集落の住民との話合いは、食糧費が行政事務、事業の執行上直接的に費消される経費であることに照らしても、福井県の行政事務、事業の執行と位置づけられるべきものであり、その話合いの相手方になるということは、当該住民にとって行政事務、事業への関与にほかならないことになる。そして、住民が行政事務、事業への関与をしたということ自体をも- 5 -って、前記(原判示)二2㈠に挙げたプライバシーに関連する個人情報に当たるものとすることはできない。しかしながら、前記(原判示)二1㈠ないし㈣認定のとおり、本件の話合いが重ねられるようになったのは、福井県が空港拡張整備事業を円滑に進めるために各集落の全住民に右事業内容や事業による影響、事業に付随する地域振興策につき理解を求め、集落の総論的な同意を得る目的であったところ、地元のα町では集落住民らに根強い空港拡張反対の意見があり、多数の住民らによってα町・β町のAが結成されていて、右Aが中心になって積極的な空港拡張反対運動を展開するとともに、住民らに対して県(調査事務所)の担当者との話合いの席に付かないように働き掛けていたのであり、このことに本件の各集落が古くから農業を中心とした相互扶助関係を基本とする生活共同体を営んでおり、集落内で誰が空港拡張に賛成の立場に回っているのかなどの憶測もなされ、反対派住民からの締め付けも強く、調査事務所との話合いに応じようという立場の住民は、明確にその立場を他に表明することに困難を感じる状況にあり、集落内の人間関係にも影響を及ぼしていること(乙七の1・2、弁論の全趣 の締め付けも強く、調査事務所との話合いに応じようという立場の住民は、明確にその立場を他に表明することに困難を感じる状況にあり、集落内の人間関係にも影響を及ぼしていること(乙七の1・2、弁論の全趣旨)を総合して考慮すると、右のような特殊な状況のもとで開催された話合いに私人として参加した住民にとっては、その参加の事実自体が他人に知られたくない情報であり、本件のような状況においては、右参加の事実は空港拡張問題に関する自己の信条にも関連する情報であるともいうべきであるから、県民の県政参加の観点及び県政の公正な運営の確保の観点よりこれを公開することの必要性を考慮しても、右参加の事実を端的に示す出席者氏名はプライバシーに関する情報(個人情報)として保護されると解するのが相当である。 ㈣そうすると、本件文書(添付された喫食者名簿)中の相手方の氏名は、条例七条一号本文所定の公文書非公開事由に該当するというべきである(なお、同号ただし書所定の非公開除外事由に該当する事情は認められな- 6 -い」)。 原判決四一頁五行目の後に行を改めて次のとおり付加する。 「第一審被告は、相手方の表記(集落名)が明らかにされれば、原審及び別訴で釈明等により明らかにした会食の日時、場所、打合せの内容に加え、個人の集落内における役職、これまでの集落内での発言内容、県との話合いの姿勢等の容易に知りうる情報を総合することにより、話合いの相手方が特定されうることになる旨主張する。しかしながら、原審及び別訴で釈明等により明らかにされた打合せの内容は極めて概括的、抽象的なものであり、これを手がかりに直ちに出席者が特定されるとは考えられず、会食の日時、場所を総合しても出席者が明確に特定されると認めることは困難である。また、住民らのこれまでの集落内での発言内容や県との話合 あり、これを手がかりに直ちに出席者が特定されるとは考えられず、会食の日時、場所を総合しても出席者が明確に特定されると認めることは困難である。また、住民らのこれまでの集落内での発言内容や県との話合いの姿勢等は、限られた一部の者にしか知られていない情報であり、話合いの相手方が特定されるか否かの認定・判断にこのような情報まで考慮に入れるのは相当でなく(これらや個人の集落内における役職を考慮に入れても、話合いの相手方が特定されるとは認めがたい、第一審被告の右主張は理由がない」。)。 原判決四五頁二行目から三行目にかけて「本件における話合いはいずれも内密の協議を目的とするものというべきであって」とあるのを「本件にお、ける話合いは右のとおり、福井空港拡張整備事業に対してさまざまな意見のある集落内の住民に対して、右事業内容や事業による影響、事業に付随する地域振興策につき理解を求め、集落の総論的な同意を得るため、複雑かつ困難な利害関係の調整を要するものであったというべきであり」と改める。 、 原判決四八頁二行目の後に行を改めて次のとおり付加する。 「第一審被告は、前記と同様に、相手方の表記(集落名)や行為の日が明らかにされれば、原審及び別訴で釈明等により明らかにした事項や個人の集落内におけるこれまでの発言内容等の容易に知りうる情報を総合することにより、話合いの相手方が特定されうることになる旨主張するが、右主張に理由- 7 -がないことは前記判示のとおりである。 また第一審被告は、どの集落の会食の回数が多いとか参加人数が多いとかいった事項が明らかになることによって、あらぬ誤解を受けて、行政事務の公正もしくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれが生じるのであるから、この点でも条例七条六号所定の非公開事由に該当することは明らかである旨主 らかになることによって、あらぬ誤解を受けて、行政事務の公正もしくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれが生じるのであるから、この点でも条例七条六号所定の非公開事由に該当することは明らかである旨主張する。しかしながら、第一審被告主張の事由によって行政事務の公正もしくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれが生じるとまで認めるに足りず、第一審被告の右主張は理由がない」。 二以上によれば、⑴本件公文書一部非公開決定の取消請求については相手方の表記(相手方の所属する集落名等)及び行為の日に係る部分の取消しを求める部分は理由があるから認容し、その余の部分は棄却すべきであり、⑵写しの写しを交付した公文書公開処分の取消請求並びに右公文書一部非公開決定及び公文書公開決定に係る公文書の閲覧請求にかかる訴えはいずれも不適法であるから却下すべきである。 三よって、右と同旨の原判決は相当であって、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第一部裁判長裁判官窪田季夫裁判官氣賀澤耕一裁判官本多俊雄
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