令和5年7月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 令和4年(ワ)第17015号意匠権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日令和5年5月29日判決 原告池田物産株式会社 同訴訟代理人弁護士細貝巌 同訴訟代理人弁理士吉井雅栄 被告株式会社カクセー 同訴訟代理人弁護士笠原基広 同野村信之 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告物件目録記載の物件を製造し、輸入し、販売し、または販売のために展示してはならない。 2 被告は前項の物件を廃棄せよ。 3 被告は、原告に対し、600万円及びこれに対する令和4年8月18日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで、年3分の割合による金員を支払え。 4 仮執行宣言 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、意匠に係る物品をスチーム調理用蓋付きトレーとする意匠登録第1616424号の意匠権(以下「本件意匠権」といい、本件意匠権に係る意匠を「本件意匠」という。)を有する原告が、被告に対し、被告が別紙被告物件目録記載のスチーム調理用蓋付きトレー(以下「被告製品」という。)を販売等することが本件意匠権を侵害すると主張し、意匠法37条1項に基づき被告製品の販売等の差止め、同条2項に基づき被告製品の廃棄、民法709条に基づき損害賠償金並びに遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨 告製品の販売等の差止め,同条2項に基づき被告製品の廃棄,民法709条に基づき損害賠償金並びに遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) 原告は、キッチンウェア等の金属加工品の企画設計・製造及び販売を目的とする株式会社である。(争いなし)被告は、キッチンウェア等の金属加工品の製造・輸入及び販売を目的とする株式会社である。(争いなし)原告は、次の内容の本件意匠権を有している。(争いなし) 出願日平成30年1月11日登録日平成30年9月28日登録番号第1616424号意匠に係る物品スチーム調理用蓋付きトレー本件意匠の内容別紙意匠広報の【図面】のとおり 被告は、遅くとも令和4年1月から現在に至るまで、別紙被告物件目録記載の被告製品を輸入し、販売し、販売の申出をしてきた。被告製品の写真は、別紙被告物件目録の図面のとおりである(以下、被告製品に係る意匠を「被告意匠」という。また、別紙対比図面は、本件意匠と被告意匠を対比したものである。)。(争いなし) 3 争点 本件意匠と被告意匠の類否(争点1)損害(争点2) 4 争点に対する当事者の主張本件意匠と被告意匠の類否(争点1)(原告の主張) ア本件意匠は以下のとおりである。 a 水(湯)を入れたフライパンや鍋の上部開口部に載せて蒸し器として使用するスチーム調理用蓋付きトレーであって、フライパンや鍋に載せるトレー状の台座部と、この台座部上に載せた蒸し調理材を覆う笠状の取手部付きの蓋部とからなる形態で、 b このトレー状の台座部は、平面視円形 調理用蓋付きトレーであって、フライパンや鍋に載せるトレー状の台座部と、この台座部上に載せた蒸し調理材を覆う笠状の取手部付きの蓋部とからなる形態で、 b このトレー状の台座部は、平面視円形で、中央部には前記調理材を載せる円形支承板面部を有するとともに、周縁部にはフライパンや鍋の上部開口部の周縁が裏側に当接する外広がり形状(ラッパ状)の傾斜鍔部を有し、この中央部の前記円形支承板面部及び傾斜鍔部の一部には多数(無数)の蒸気通過孔が形成されている形態であって、 c この台座部にかぶせる前記蓋部は、外縁全周の水平周縁フランジ部が前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部の上側に載置することでこの台座部の中央部の前記円形支承板面部を覆う円形ドーム状の蓋本体部の中央頂部に、この蓋部を取り上げるための前記取手部が設けられている形態であり、d 前記台座部及び前記蓋本体部は、強度、耐熱性、熱伝導性などを考慮し て光沢のある金属で形成されていて、蓋本体部の中央頂部の前記取手部及び蓋本体の取手部と接合する蓋本体中央部は、非熱伝導性、量産性などを考慮して金属部とは色や質感が異なる合成樹脂で形成されている形態であり、e 一般的なフライパンや鍋の上部開口部を塞ぐように載せる物品である ことから、台座部の直径はおよそ29cm程度、蓋部の直径はおよそ26 ㎝程度である形態であり、f 前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部は、外縁全周に水平フランジ部を有しかつ外径が外側程徐々に大きくなるラッパ状であるが、外広がり状の平坦傾斜面ではなく、この傾斜鍔部の基部すなわち前記円形支承板面部との境界部はほぼ垂直に近い急傾斜面に形成されていて、この急傾斜面から外 側に比較的緩やかな外広がり傾斜面が形成されていているとともに、この途中にも前記 傾斜鍔部の基部すなわち前記円形支承板面部との境界部はほぼ垂直に近い急傾斜面に形成されていて、この急傾斜面から外 側に比較的緩やかな外広がり傾斜面が形成されていているとともに、この途中にも前記急傾斜面に比べてわずかな範囲だけ垂直に近い急傾斜面が形成されている(この途中急傾斜面により傾斜面途中に段差が形成されている)形状で、この傾斜面途中の段差に蓋部の前記水平周縁フランジ部を係止させて(位置決めさせて)蓋部がかぶせられている形態で、この段差よ りも外側の傾斜面は蓋部をかぶせても蓋部の全周縁の外側に露出突出している形態で、g 前記台座部の蒸し調理材を載せる中央部の前記円形支承板面部は、水平板状で、h この円形支承板面部には、ほぼこの全面に直径3.5mm程度の前記蒸 気通過孔が多数散在形成されている形態であって、この蒸気通過孔の配列は、多数の同心円方向でかつ多数の放射線方向に間隔を置いて、中心になるほど通過孔が密集し、中心から離れるほど通過孔は散在して並んでいる形態で、i 前記蓋部のドーム状の前記蓋本体部は、外縁全周には前記水平フランジ 部を有するがその内側の周縁部は垂直に近い急傾斜状で、これより内側から中央頂部に至る範囲は緩やかな傾斜状に形成されている形態で、j 前記蓋本体部の中央頂部に設けられている前記取手部及び前記蓋本体部の中央頂部の一部は、黒色の合成樹脂製であって、前記取手部は上方に突出した円形部の上に笠状の把持部が付き指でつかんで持ち上げること ができる形態 イ被告意匠は以下のとおりである。 a 水(湯)を入れたフライパンや鍋の上部開口部に載せて蒸し器として使用するスチーム調理用蓋付きトレーであって、フライパンや鍋に載せるトレー状の台座部と、この台座部上に載せた蒸し調理 おりである。 a 水(湯)を入れたフライパンや鍋の上部開口部に載せて蒸し器として使用するスチーム調理用蓋付きトレーであって、フライパンや鍋に載せるトレー状の台座部と、この台座部上に載せた蒸し調理材を覆うハンドル状の取手部付きの蓋部とからなる形態で、 b このトレー状の台座部は、平面視円形で、中央部には前記調理材を載せる円形支承板面部を有するとともに、周縁部にはフライパンや鍋の上部開口部の周縁が裏側に当接する(外径の異なるフライパンや鍋に載せることが可能となる)外広がり形状(ラッパ状)の傾斜鍔部を有し、この中央部の前記円形支承板面部には、中心部に容易に鍋やフライパンからの持ち上げ や鍋やフライパンへの載置ができるように指が入る程度の大きな貫通孔が存し、その周囲には多数の蒸気通過孔が形成されている形態であって、c この台座部にかぶせる前記蓋部は、外縁全周の水平周縁フランジ部が前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部の上側に載置することでこの台座部の中央部の前記円形支承板面部を覆う蓋上部が水平となったボウル状の蓋 本体部の中央頂部に、この蓋部を取り上げるためのハンドル状の前記取手部が設けられている形態であり、d 前記台座部及び前記蓋本体部は、強度、耐熱性、熱伝導性などを考慮して光沢のある金属で形成されていて、蓋本体部の中央頂部の前記取手部は、非熱伝導性、量産性などを考慮して金属部とは色や質感が異なる合成樹脂 で形成されている形態であり、e 一般的なフライパンや鍋の上部開口部をふさぐように載せる物品であることから、台座部の直径はおよそ30.5cm、蓋部の直径はおよそ27.5㎝程度であり、f 前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部は、外縁全周に水平フランジ部を有 し且つ外径が外側程徐々に大きくなるラッパ状である の直径はおよそ30.5cm、蓋部の直径はおよそ27.5㎝程度であり、f 前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部は、外縁全周に水平フランジ部を有 し且つ外径が外側程徐々に大きくなるラッパ状であるが、外広がり状の平 坦傾斜面ではなく、この傾斜鍔部の基部すなわち前記円形支承板面部との境界部はほぼ垂直に近い急傾斜面に形成されていて、この急傾斜面から外側に比較的緩やかな外広がり傾斜面が形成されていているとともに、この途中にも前記急傾斜面に比べてわずかな範囲だけ垂直に近い急傾斜面が形成されている(この途中急傾斜面により傾斜面途中に段差が形成されて いる)形状で、この傾斜面途中の段差に蓋部の前記水平周縁フランジ部を係止させて(位置決めさせて)蓋部がかぶせられている形態で、この段差よりも外側の傾斜面は蓋部をかぶせても蓋部の全周縁の外側に露出突出している形態で、g 前記台座部の蒸し調理材を載せる中央部の前記円形支承板面部は、帯環 状に低くなっている帯環状段差面部を有している形態で、h この円形支承板面部には、ほぼこの全面に直径3.5㎜程度の前記蒸気通過孔が多数散在形成されている形態であって、中央部に2㎝程度の持ち上げや載置の際に指を通す貫通孔が設けられているとともに、前記蒸気通過孔の配列は、多数の同心円方向に間隔を置いて並んでいる形態で、 i 前記蓋部のボウル状の前記蓋本体部は、外縁全周には前記水平フランジ部を有するがその内側の周縁部は垂直に近い急傾斜状で、これより内側から中央に至る範囲は徐々に緩やかとなる傾斜状に形成されている形態であって、中央部は水平な平坦面に形成されているボウル状の形態で、j 前記蓋本体部の中央頂部(前記中央部の平坦面の中心部)に設けられて いるハンドル状の前記取手部は、黒色の合 されている形態であって、中央部は水平な平坦面に形成されているボウル状の形態で、j 前記蓋本体部の中央頂部(前記中央部の平坦面の中心部)に設けられて いるハンドル状の前記取手部は、黒色の合成樹脂製であって、中央の突出部に平長く中央に長孔が設けられている把持部が突設されていて、この把持部を設置することで、取り外した蓋部を縦置きできる形状(蓋部を立てかける機能を有するハンドル状)の取手部に構成されている形態である。 ウ本件意匠に先行する公知意匠のうち本件意匠に似たものは陶器製の容器 の意匠であって、本件意匠とは異なり、また、同公知意匠を踏まえても、本 件意匠の要部は、金属製のトレー上の台座部であって前記アf、g、h記載の具体的構成態様からなるデザインと、合成樹脂製の取手部付の金属製のドーム状蓋部であって同i、j記載の具体的構成態様のデザインの双方を組み合わせた全体デザインである。 本件意匠と被告意匠は、要部において類似し、全体として類似する。 本件意匠と被告意匠の差異は、意匠創作された全体デザインからみれば一部のデザインの微差にすぎず、全体観察から受ける美感への影響は少ない。 (被告の主張)ア本件意匠と被告意匠が、原告の主張ア、イの形状等を有するものであることは争わない。 イ本件意匠と被告意匠には、次の差異点がある。 蓋部の取手部の形状通気孔の配置部位、配列、間隔蓋部の形状蓋部における合成樹脂の利用の有無 台座部の円形支承板面部の形状台座部の大きさウ本件意匠のような台座部や蓋部の構造を有することは、製品の性質上当然のデザインといえ、本件意匠のような台座部、蓋部を保持する公知意匠の蒸し器が相当数あり、台座部と蓋部を保持するというデザイン部分につい 件意匠のような台座部や蓋部の構造を有することは、製品の性質上当然のデザインといえ、本件意匠のような台座部、蓋部を保持する公知意匠の蒸し器が相当数あり、台座部と蓋部を保持するというデザイン部分については、 注意を引かれる要部にはならない。台座部と蓋部を持つ蒸し器について、蒸し器の取引者が蒸し器を見たときに製品の中心に位置し、視覚的に目に入りやすい製品の最上部の取手部は、他の製品との差異となり得るものであり、要部である。従来の取手部を持つ蒸し器において、その形状は笠状であったところ、被告意匠はこれをハンドル状にしており、蒸し器の需要者・取引者 からすると、革新的なデザインの変化であり、本件意匠と被告意匠の取手部 の差異は、要部の差異である。また、その他の差異も、取引者・需要者に大きなデザインの違いがあると感得させるものである。 損害(原告の主張)被告製品の1個当たりの販売価格は2000円である。また、被告は、被告 製品を令和4年7月6日までの約6か月間で少なくとも1万5000個を販売した。被告製品の利益率は販売価格の20%を下らない。そうすると、被告が得た利益は、次のとおり600万円を下らない。 2000円×1万5000個×20%=600万円よって、原告は、被告に対し、意匠法39条2項に基づき原告の損害と推定 される600万円を請求する。 (被告の主張)否認ないし争う。販売価格、販売個数、利益率はいずれも過剰である。 第3 当裁判所の判断 1 本件意匠と被告意匠 本件意匠と被告意匠は、別紙意匠公報の【図面】及び別紙被告物件目録の図面のとおりであり、これらが前記第2の4の原告の主張ア、イのような形状等を有することは当事者間に争いがないところ、基本的構成態様は、 意匠と被告意匠は、別紙意匠公報の【図面】及び別紙被告物件目録の図面のとおりであり、これらが前記第2の4の原告の主張ア、イのような形状等を有することは当事者間に争いがないところ、基本的構成態様は、意匠を大づかみに捉えたものであること、用途や使用方法それ自体は直ちに意匠とはいえないこと、本件意匠において具体的な寸法は規定されていないこと、色彩の ほか、光沢や質感も需要者の美感に影響に与えるもので意匠となるとするのが相当であるが、材質そのものは意匠とはならないと解されることなどを考慮すると、それぞれの基本的構成態様、具体的構成態様は以下のとおりと認める。 本件意匠ア基本的構成態様 a トレー状の台座部と、取手部付きの蓋部とからなり、 b 前記台座部は、平面視円形で、円形支承板面部である中央部と周縁部を有し、周縁部には外広がり形状の傾斜鍔部を有し、中央部の前記円形支承板面部には相当数の小孔が形成され、c 前記蓋部の外縁部が前記台座部の周縁部の上側に載置されて、前記蓋部が前記台座部の中央部の前記円形支承板面部を覆い、円形ドーム状の蓋本 体部の中央頂部に前記取手部が設けられている。 イ具体的構成態様a 前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部は、外縁全周に水平フランジ部を有しかつ外径が外側に至る程大きくなるラッパ状であり、この傾斜鍔部の基部である前記円形支承板面部との境界部はほぼ垂直に近い急傾斜面に形 成されていて、この急傾斜面から外側に比較的緩やかな外広がり傾斜面が形成されていているとともに、この途中にも前記急傾斜面に比べてわずかな範囲だけ垂直に近い急傾斜面が形成され、その途中に段差が形成されている形状で、この傾斜面途中の段差に蓋部の前記水平周縁フランジ部を係止させて蓋部がかぶ もに、この途中にも前記急傾斜面に比べてわずかな範囲だけ垂直に近い急傾斜面が形成され、その途中に段差が形成されている形状で、この傾斜面途中の段差に蓋部の前記水平周縁フランジ部を係止させて蓋部がかぶせられ、この段差よりも外側の傾斜面は蓋部をかぶせ ても蓋部の全周縁の外側に突出し、前記台座部の周縁部の傾斜鍔部の下部には小孔が形成され、b 前記台座部の中央部の前記円形支承板面部は、水平板状で、c 前記円形支承板面部には、ほぼ全面に前記小孔が多数散在して形成されていて、この小孔は、多数の同心円方向でかつ多数の放射線方向に間隔を 置いて、中心になるほど小孔が密集し、中心から離れるほど小孔は散在して並んでおり、d 前記蓋部の本体部は、外縁全周には前記水平フランジ部を有するがその内側の周縁部は垂直に近い急傾斜状で、これより内側から中央頂部に至る範囲は緩やかな傾斜状に形成されていて、 e 前記蓋本体部の中央頂部に設けられている前記取手部は、台座部上笠状 で、前記取手部は、上方に突出した円形部の上に笠状の把持部が付いていてf 前記台座部並びに取手部及び中央頂部の一部を除く前記蓋部は銀白色で金属光沢を有して金属の質感を有し、前記取手部及び前記蓋本体部の中央頂部の一部は黒色である。 被告意匠ア基本的構成態様a トレー状の台座部と、取手部付きの蓋部とからなり、b 前記台座部は、平面視円形で、円形支承板面部である中央部と周縁部を有し、周縁部には外広がり形状の傾斜鍔部を有し、中央部の前記円形支承 板面部には、相当数の小孔が形成され、c 前記蓋部の外縁部が前記台座部の周縁部の上側に載置されて、前記蓋部が前記台座部の中央部の前記円形支承板面部を覆い、円形ドーム状の蓋本体部の中央頂部に前記 板面部には、相当数の小孔が形成され、c 前記蓋部の外縁部が前記台座部の周縁部の上側に載置されて、前記蓋部が前記台座部の中央部の前記円形支承板面部を覆い、円形ドーム状の蓋本体部の中央頂部に前記取手部が設けられている。 イ具体的構成態様 a 前記台座部の周縁部の前記傾斜鍔部は、外縁全周に水平フランジ部を有しかつ外径が外側に至る程大きくなるラッパ状であるが、外広がり状の平坦傾斜面ではなく、この傾斜鍔部の基部すなわち前記円形支承板面部との境界部はほぼ垂直に近い急傾斜面に形成されていて、この急傾斜面から外側に比較的緩やかな外広がり傾斜面が形成されていているとともに、この 途中にも前記急傾斜面に比べてわずかな範囲だけ垂直に近い急傾斜面が形成され、途中急傾斜面により傾斜面途中に段差が形成され、この傾斜面途中の段差に蓋部の前記水平周縁フランジ部を係止させて蓋部がかぶせられ、この段差よりも外側の傾斜面は蓋部をかぶせても蓋部の全周縁の外側に突出し、 b 前記台座部の蒸前記円形支承板面部は、帯環状に低くなっている帯環状 段差面部を有し、c この円形支承板面部には、ほぼ全面に直径3.5㎜程度の小孔が多数散在して形成され、中央部に2㎝程度の孔が設けられているとともに、小孔は、複数の同心円方向に間隔を置いて並んでおり、d 前記蓋部の本体部は、外縁全周には前記水平フランジ部を有するがその 内側の周縁部は垂直に近い急傾斜状で、これより内側から中央に至る範囲は徐々に緩やかとなる傾斜状に形成され、中央部は水平な平坦面に形成されていて、e 前記蓋本体部の中央頂部に設けられている前記取手部は、ハンドル状で、中央の突出部に平長く中央に長孔が設けられている把持部が突設されて いて、f 前記台座部及び取手部 成されていて、e 前記蓋本体部の中央頂部に設けられている前記取手部は、ハンドル状で、中央の突出部に平長く中央に長孔が設けられている把持部が突設されて いて、f 前記台座部及び取手部を除く前記蓋部は銀白色で金属光沢を有して金属の質感を有し、前記取手部は黒色である。 2 本件意匠と被告意匠の類否(争点1)について意匠権者は,業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を 専有している(意匠法23条本文)。登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものであり(同法24条2項),この類否の判断は,登録意匠に係る物品の性質,用途,使用態様を考慮し,更には公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の需要者の視覚を通じて最も注意を引くべき部分 である意匠の要部を把握し,この部分を中心に,両意匠の構成を全体的に観察・対比して認定された共通点と差異点を総合して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かによって判断するのが相当である。以上を前提に,本件意匠及び被告意匠が類似するといえるか否かについて検討する。 本件意匠の要部について ア本件意匠に係る物品は、スチーム調理用蓋付きトレーであり、この蓋付き トレーは、トレー状の台座の上に食品を乗せ、台座の上に蓋を乗せ、これを、水を張ったフライパン等に乗せて使用する調理器具である。そうすると、本件意匠の需要者は、個人消費者であると認められる。そして、個人消費者が蓋付きトレーの形態のスチーム調理器具を観察する場合には、主として、トレーと蓋が一体化した状態で、その全体について、上方又は斜め上方から視 認するといえる。また、トレーと蓋を分離した状態で、それぞれ きトレーの形態のスチーム調理器具を観察する場合には、主として、トレーと蓋が一体化した状態で、その全体について、上方又は斜め上方から視 認するといえる。また、トレーと蓋を分離した状態で、それぞれを上方又は斜め上方から視認することもあるといえる。 イ新規性及び創作非容易性という意匠の登録要件を充足して登録された意匠の保護範囲はその意匠の美感をもたらす意匠的形態の創作の実質的価値に相応するものとして考えなければならず、公知意匠を参酌して、登録意匠 の保護範囲を検討する必要がある。意匠登録第1219229号公報(乙2。 平成16年10月12日公報発行)に記載された意匠(以下「本件公知意匠」という。)は、本件意匠の登録出願前に公開された公知の意匠であり、別紙本件公知意匠公報の【図面】のとおりのものである。本件意匠も本件公知意匠も、食品蒸し器容器に係る意匠である。もっとも、本件意匠は、台座部及び 蓋部本体部が銀白色で金属光沢を有し蓋部取手部が黒色であるのに対し、本件公知意匠は、蓋部取手部の上部のほか蓋部本体部や台座部上部に円環上の着色があるほかは白色であり、また、金属光沢があるとは直ちには認められない。しかし、要部の認定に当たり公知意匠が参酌される理由に照らせば、上記の違いにより、本件意匠の要部の認定に当たって本件公知意匠の形状を 参酌することができなくなるとは認められない。 なお、当事者の主張中には、本件公知意匠が陶器製の物品の意匠であることを前提とする主張があるが、材質そのものが意匠となるものではないと解されるほか、別紙本件公知意匠公報の【図面】により示される本件公知意匠について、金属光沢を有するとは直ちには認められないものの、その【図面】 からは、その材質が陶器、磁器又は金属に釉薬をかぶせたもの(ホーロー 本件公知意匠公報の【図面】により示される本件公知意匠について、金属光沢を有するとは直ちには認められないものの、その【図面】 からは、その材質が陶器、磁器又は金属に釉薬をかぶせたもの(ホーロー) であるかが直ちには明らかとはいえない。 ウ本件意匠の基本的構成態様a からc の形状や、台座部の周縁部の傾斜面途中の段差に蓋部の水平周縁フランジ部を係止させて蓋部がかぶせられ、この段差よりも外側の傾斜面は蓋部をかぶせても蓋部の全周縁の外側に突出し、台座部の円形支承板面部の小孔に複数の同心円方向に間隔を置い て並んでいるものがあることは、本件公知意匠によって公知の形状であった。また、乙8,9によれば、一部に銀白色の金属光沢を有する食品蒸し器は本件意匠登録出願前に知られていたと認められる。 エ上記アないしウによれば、本件意匠の要部は、円形ドーム状を前提とする蓋部の各部位における曲率等の具体的な形状、蓋部の頂上に取手部が存在す ることを前提とする、取手部の具体的な形状等の具体的な構成態様であると認められる。 本件意匠と被告意匠の対比ア共通点前記本件意匠と被告意匠の基本的構成態様aからc、下記差異点を除いた 本件意匠と被告意匠の具体的態様a からfイ差異点取手部の差異(差異点1)本件意匠は、蓋部の取手部が笠状であるのに対し、被告意匠はハンドル状で、中央の突出部に平長く中央に長孔が設けられている把持部が突設さ れている(各具体的構成態様e)通気孔の配置部位、配列、間隔の差異(差異点2)本件意匠では、小孔が傾斜鍔部にも存在しているが、被告意匠には存在しない。(各具体的構成態様a)本件意匠では、台座部において小孔が同心円方向で、かつ、放射線方向 に並んでい 異点2)本件意匠では、小孔が傾斜鍔部にも存在しているが、被告意匠には存在しない。(各具体的構成態様a)本件意匠では、台座部において小孔が同心円方向で、かつ、放射線方向 に並んでいるが、被告意匠では、同心円方向で並んではいるものの、放射 線方向には並んでいない。(各具体的構成態様c)本件意匠では、小孔が同一の大きさであるのに対し、被告意匠では、中心部に他の小孔に比べて大きな孔が設けられている。(各具体的構成態様c)蓋部の形状の差異(差異点3) 本件意匠では、蓋部がドーム状で、中央頂部に至る範囲は緩やかな傾斜上に形成されていて蓋部全体が丸みを帯びているが、被告意匠では、蓋部の中央が水平な平坦面に形成されている。(各具体的構成態様d)蓋部における黒色の部分の差異(差異点4)本件意匠では、取手部及び蓋本体部の中央頂部の一部は黒色であるのに 対し、被告意匠では取手部のみが黒色である。(各具体的構成態様f)台座部の円形支承板面部の形状の差異(差異点5)本件意匠では、円形支承板面部が水平な板面となっているが、被告意匠の円形支承板面部は、帯環状に低くなっている帯環状段差面部を有している。(各具体的構成態様b) ウ共通点及び差異点の検討本件意匠と被告意匠は、いずれも、スチーム調理用蓋付きトレーであり、前記アで共通するところ、そのうち、基本的構成態様の形状については本件公知意匠があることから(前記イ)、需要者の注意を特に強く引くべき部分とまではいえない。そして、前記エのとおり、本件意匠について は、蓋部における円形ドーム状を前提とする蓋部の各部位における曲率等の具体的な形状、蓋部の頂上に取手部が存在することを前提とする、取手部の具体的な形状等の具体的な のとおり、本件意匠について は、蓋部における円形ドーム状を前提とする蓋部の各部位における曲率等の具体的な形状、蓋部の頂上に取手部が存在することを前提とする、取手部の具体的な形状等の具体的な構成態様が要部であると認められる。取手部について、本件意匠の取手部は笠状の把持部からなるのに対し、被告意匠のハンドル状の取手部は蓋本体部の大きさとの関係で相当の大きさを 有し、一方方向に伸びているため、蓋部の対称性が崩れるものであり、需 要者の美感に大きな影響を与えるといえる(差異点1)。また、蓋部について、本件意匠が中央頂部に至る範囲は緩やかな傾斜状に形成されているのに対し、被告意匠の中央部は水平な平坦面に形成されている。意匠に係る物品を主に上方又は上斜上方から見る需要者にとり、蓋部の全体的な形状の違いは異なった印象を与え得るものであるところ、本件公知意匠の形 状が公知であって前記のとおり蓋部における円形ドーム状を前提とする蓋部の各部位における曲率等の具体的な形状等が要部となる本件意匠において、この蓋部の差異は、需要者に異なる美感を生じさせるものといえる(差異点3)。その他、需要者は、トレーと蓋を分離した状態で、それぞれを上方又は斜め上方から視認することもあるといえるところ、この場 合、台座部の孔についても、被告意匠の中心部に他の孔よりも大きな孔がある点は、他の小孔と大きさが異なることで注意を引き、また、小孔の配置も、本件意匠は台座部の縁に近づくにつれてまばらになる印象を与えるが、被告意匠は台座部前面にわたって均一に配置されている印象を与え、本件意匠と被告意匠とで異なった美感を生じさせる(差異点2)。本件意 匠と被告意匠には、他に、蓋部における黒色の部分の差異(差異点4)や台座部の円形支承板面部の形状 配置されている印象を与え、本件意匠と被告意匠とで異なった美感を生じさせる(差異点2)。本件意 匠と被告意匠には、他に、蓋部における黒色の部分の差異(差異点4)や台座部の円形支承板面部の形状の差異(差異点5)がある。 以上によれば、本件意匠と被告意匠の共通点のうち基本的構成態様の形状は、需要者の注意を特に引くべき部分であるといえない。需要者の注意を特に引くべき部分のうち、特に取手部や蓋部の形状の差異は需要者に 異なった印象を与えるものである。そうすると、本件意匠及び被告意匠の全体を観察しても、両者は要部において顕著な差異があり、上記共通点を考慮しても、全体として差異点が共通点を凌駕しており、視覚を通じて起こさせる全体としての美感を異にするものであるというべきである。したがって、本件意匠と被告意匠は、全体として美感を共通にするものであ るとはいえず、類似するものとは認められない。 第4 結論よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官杉田時基 裁判官仲田憲史 (別紙意匠公報省略)(別紙本件公知意匠公報省略)
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