- 1 - 主文 1 原判決中、110万円及びこれに対する平成31年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求に関する部分を破棄する。 2 前項の部分につき、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人塩見卓也の上告受理申立て理由について 1 本件は、被上告人に雇用されていた上告人が、被上告人から、職種及び業務内容の変更を伴う配置転換命令を受けたため、同命令は上告人と被上告人との間でされた上告人の職種等を限定する旨の合意に反するなどとして、被上告人に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求(以下「本件損害賠償請求」という。)等をする事案である。 2 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 公の施設である滋賀県立長寿社会福祉センターの一部である滋賀県福祉用具センター(以下、単に「福祉用具センター」という。)においては、福祉用具について、その展示及び普及、利用者からの相談に基づく改造及び製作並びに技術の開発等の業務を行うものとされており、福祉用具センターが開設されてから平成15年3月までは財団法人滋賀県レイカディア振興財団が、同年4月以降は上記財団法人の権利義務を承継した被上告人が、指定管理者等として上記業務を行っていた。 上告人は、平成13年3月、上記財団法人に、福祉用具センターにおける上記の改造及び製作並びに技術の開発(以下、併せて「本件業務」という。)に係る技術職として雇用されて以降、上記技術職として勤務していた。上告人と被上告人令和5年(受)第604号損害賠償等請求事件 令和6年4月26日第二小法廷判決- 2 -との間には、上告人の 技術職として雇用されて以降、上記技術職として勤務していた。上告人と被上告人令和5年(受)第604号損害賠償等請求事件 令和6年4月26日第二小法廷判決- 2 -との間には、上告人の職種及び業務内容を上記技術職に限定する旨の合意(以下「本件合意」という。)があった。 被上告人は、上告人に対し、その同意を得ることなく、平成31年4月1日付けでの総務課施設管理担当への配置転換を命じた(以下、この命令を「本件配転命令」という。)。 3 原審は、上記事実関係等の下において、本件配転命令は配置転換命令権の濫用に当たらず、違法であるとはいえないと判断し、本件損害賠償請求を棄却すべきものとした。 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解される。上記事実関係等によれば、上告人と被上告人との間には、上告人の職種及び業務内容を本件業務に係る技術職に限定する旨の本件合意があったというのであるから、被上告人は、上告人に対し、その同意を得ることなく総務課施設管理担当への配置転換を命ずる権限をそもそも有していなかったものというほかない。 そうすると、被上告人が上告人に対してその同意を得ることなくした本件配転命令につき、被上告人が本件配転命令をする権限を有していたことを前提として、その濫用に当たらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 5 以上によれば、この点に関する論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文 判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 5 以上によれば、この点に関する論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分(本件損害賠償請求に係る部分)は破棄を免れない。そして、本件配転命令について不法行為を構成すると認めるに足りる事情の有無や、被上告人が上告人の配置転換に関し上告人に対して負う雇用契約上の債務の内容及びその不履行の有無等に- 3 -ついて更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官草野耕一裁判官三浦守裁判官岡村和美裁判官尾島明)
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