主文 被告人を懲役9年に処する。 未決勾留日数中220日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年7月26日午後10時5分ころから午後10時25分ころまでの間,神戸市a区b通c丁目d番c号所在のeビル2階B興業事務所において,ソファで眠り込んだA(当時56歳)に対し,殺意をもって,ガラス製灰皿(重量約1267グラム。平成15年押第46号の1)をその顔面等めがけて数回投げおろし,これを同人の左前頭部及び左前額部等に命中させ,同人に頭蓋粉砕骨折による脳挫滅及び外傷性脳蜘蛛膜下出血の傷害を負わせ,さらに,同人の頸部に安全帯のロープ(同押号の2)を巻いて絞め付けるなどし,よって,そのころ,同所において,同人を窒息死させて殺害したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(補足説明)第1 争点の整理等 1 検察官は,当初本件被害者Aの死因を窒息死として訴因を設定していたのであるが,その後頭蓋粉砕骨折による脳挫滅及び外傷性脳蜘蛛膜下出血が死因である旨訴因を変更した。 2 被告人は,判示事実中外形的部分についてはこれを認め,また,被害者の首を絞めた(以下,「第2行為」という。)時点で被害者に対する殺意があったことも争わないが,被害者に判示灰皿(以下,「本件灰皿」という。)を投げ付けた(以下,「第1行為」という。)時点では,被害者に対する殺意はなかった旨主張し,弁護人も,灰皿を投げ付けるという凶器の用法などから,第1行為時には被告人には殺意がなかった旨主張する。 3 当裁判所は,1については,被害者の死因は窒息死であると認定すべきであり,そのように認定するにつき手続上の問題も生じな 凶器の用法などから,第1行為時には被告人には殺意がなかった旨主張する。 3 当裁判所は,1については,被害者の死因は窒息死であると認定すべきであり,そのように認定するにつき手続上の問題も生じない旨,2については,第1行為の時点から被告人には被害者に対する確定的殺意が認められる旨判断したのであるが,その理由について補足して説明する。 第2 前提事実関係各証拠によれば,次の事実が認められる(これらの事実は被告人も特に争っていない。)。 1 本件犯行に至る経緯等被告人は,平成11年夏ころから,被害者の経営するB興業で鉄筋工として稼動していたものであるが,被害者に対し,給与等金銭面の不満や不信感を募らせ,2度ほど,B興業を退職したいと被害者に申し出たが,その度に,被害者から食費等の不足分などとして法外な金員を請求されるなどしたため,これを果たせないでいた。 被告人は,平成14年7月24日,派遣先の建設現場で熱中症となり倒れ,そのことを被害者から叱責されたり,翌25日午前2時すぎころ自室で休んでいるにもかかわらず被害者から呼び出されるなどされたため,あらためて退職を強く決意した。 被告人は,同月26日午後7時ころ,判示B興業事務所に赴き,同所でテーブルを挟んでソファに被害者と対面して座り,被害者と退職に伴う借金や食費,出張費等の精算等について話し合ったが,その話し合いの際,被害者があまりに激しく被告人を怒鳴り付けるなどしたため,事務所にいた他の従業員は居づらくなり事務所から退出するほどであった。 その後被害者が被告人に対し,被告人ががかつて居住していたB興業の寮のリフォーム代として,100万円から200万円かかるとしてこれを支払うよう言い出し,被告人の母親にこれを支払う旨の念書を書かせ,ファックスで送らせ 告人に対し,被告人ががかつて居住していたB興業の寮のリフォーム代として,100万円から200万円かかるとしてこれを支払うよう言い出し,被告人の母親にこれを支払う旨の念書を書かせ,ファックスで送らせるよう執拗に迫り,やむなく被告人は母親に電話をしてその旨依頼したがこれを果たせなかった。そうこうするうち,被告人は,酒を飲んでいた被害者が眠り込んだ隙をみて前記事務所から逃げ出して警察に相談しようと考え,立ち上がって被害者の横を通ろうとしたのであるが,その際,前記ソファ(座面の高さ35センチメートル)上でその肘掛け部を枕にして,仰向けで上半身を同ソファに横たえ眠り込んでいる被害者の姿が目に入った。 2 犯行状況被告人は,被害者の眠り込んでいる姿を目にするや,自分をこのように追い詰めた被害者が平然と眠り込んでいることに激高し,咄嗟に,同ソファ横のテーブル上にあった本件灰皿を手に取って持ち上げ,被害者の頭を見下ろす位置の至近距離からこれを被害者に対して投げ付けてその頭部ないし顔面付近に命中させ,被害者の右肩付近に引っかかった同灰皿を拾い上げ,再び投げ付けて被害者の頭部ないし顔面付近に命中させ,その後もさらに,本件灰皿を拾い上げて被害者にこれを投げ付けたり,その顔面を手拳で殴り付けた。 被害者は血に染まって動かなくなり,被告人は被害者が死亡したものと思い,前記事務所内の洗面所で血で汚れた手を洗い終え事務所を出ようとしたところ,被害者がいびきをかいている音が聞こえた。被告人は,死亡したと思っていた被害者がまだ生きていると知るや,このままでは自分や周囲の者に被害者からどのような仕返しをされるかわからないとの恐怖感を抱き,被害者の息の根を完全に止めるため,事務所内にあった判示安全帯(工事用)を手にとり,そのロープ部分を被害者の首に1回巻き や周囲の者に被害者からどのような仕返しをされるかわからないとの恐怖感を抱き,被害者の息の根を完全に止めるため,事務所内にあった判示安全帯(工事用)を手にとり,そのロープ部分を被害者の首に1回巻き付けて,左右の手でロープの両端を思い切り引っ張ると,いびきがすぐに止まり,頭が1,2度かすかに動いた後はぴくりともしなくなったが,そのまま10分くらい被害者の首を絞め続けた。 3 凶器の性状・性能本件灰皿は,重量約1267グラム,直径約188.9ミリメートル,内径約149ミリメートル,高さ約58.3ミリメートル,底部厚約6.5ミリメートルのガラス製灰皿である。 4 創傷の部位,程度被害者が被った創傷は,①長さ2.0センチメートル,深さ0.7センチメートル,大きさ4.0センチメートル,4.5センチメートルの皮下出血を伴う左側頭部挫裂創,②左頭頂部から左前頭部の皮下出血,③前頭正中部に1か所,右側頭部に2か所,右耳介上部に1か所,左側頭後頭部に1か所,左側頭部に1か所の頭部皮下出血,④多数の皮膚破裂及び高度の皮下出血を伴う左前額部挫裂創,⑤鼻背正中部,左耳介前方,右眉毛上方に各1か所の顔面挫裂創,⑥左鼻翼上方表皮剥脱,⑦右上眼瞼右端,右上下眼瞼周囲,左口角部に各1か所の顔面皮下出血,⑧右側頸上部,前頸正中部,左下顎部に各1か所の表皮剥脱,⑨頸部索条痕,⑩左側頸部皮下出血及び表皮剥脱,⑪右胸鎖乳突筋出血,⑫左上腕内側面皮下出血,⑬右膝蓋部皮下出血,⑭頭皮下出血,⑮帽状腱膜下出血,⑯側頭筋肉内出血,⑰頭蓋骨折,⑱外傷性脳蜘蛛膜下出血,⑲脳挫滅,⑳脳挫傷である。 第3 被害者の死因について前掲鑑定書(検察官請求証拠番号6。検6。以下同じ)中には,被害者の死因として「頭蓋粉砕骨折による脳挫滅及び外傷性脳蜘蛛膜下出血」との記載があ 滅,⑳脳挫傷である。 第3 被害者の死因について前掲鑑定書(検察官請求証拠番号6。検6。以下同じ)中には,被害者の死因として「頭蓋粉砕骨折による脳挫滅及び外傷性脳蜘蛛膜下出血」との記載があり,前記変更後の訴因に沿うものとなっているが,他方,同鑑定書の作成者である医師Cに対する電話聴取書(検8)によれば,同医師は,被害者の死体の解剖所見のみから判断すると,脳の損傷状態が著しく,それのみで死に至ることが明らかであったので鑑定書に死因として前記記載をしたが,いびきをかいている被害者の首を絞めたというのであれば,脳の損傷により致死的状況に陥っていたとはいうものの,まだ呼吸のある被害者を絞頸したことにより被害者が窒息死したと考えてもよい,解剖所見に絞頸死の所見が乏しいことも被害者が瀕死の状況にあったことを前提にすれば十分説明がつく旨述べていることが認められ,この所見は専門家の合理的見解として首肯すべきものである。そうすると,被害者は,第1行為により頭蓋粉砕骨折による脳挫滅及び外傷性脳蜘蛛膜下出血の傷害を被って瀕死の状態に陥ったところに,さらに第2行為(絞頸)を受けて死亡したものと認められ,第1行為,第2行為の両者に死亡との因果関係が認められるが,直接死因は窒息死であると認めるのが相当である。 なお,本件では,前記のとおりの訴因変更がなされているところ,弁護人が第2行為も殺人の実行行為である旨の検察官の釈明に対し特に異議を述べず,また第2行為と死亡との因果関係についても争っていない本件においては,被告人に何ら実質的な不利益を負わせるものではないので,前記認定のため再度訴因変更の手続を経る必要はないものと解される。 第4 殺意発生時期について 1 前認定のとおり,被告人は眠っていた被害者に至近距離から本件灰皿を投げ下ろすようにして攻 ないので,前記認定のため再度訴因変更の手続を経る必要はないものと解される。 第4 殺意発生時期について 1 前認定のとおり,被告人は眠っていた被害者に至近距離から本件灰皿を投げ下ろすようにして攻撃を加えたものであって,被害者の頭部,顔面に創傷が集中していること等その創傷の部位程度に照らすと,被告人は被害者の頭部,顔面付近を狙って相当程度の力を込めて本件灰皿を投げ付けたものと認められるところ,本件灰皿は重くこれを凶器として用いれば殺傷力十分であって,これを凶器として用いて,無防備,無抵抗の人の頭部,顔面をこのような態様で攻撃すれば死亡する危険性が極めて高いことはいうまでもなく,しかも,被告人が被害者に対し最初に攻撃(以下,「第1打撃」という。)を加えた後2回目の攻撃(以下,「第2打撃」という。)を加える前に,犯行を中止しようとしたり,これをためらったり,あるいは手加減を加えるなど被害者の生命に対する何らかの配慮をした形跡は全く認められない。そして,前認定のとおり,被害者の被告人に対する第1行為に至る直前の言動は無関係の親にまで累を及ぼすとする理不尽で執拗なものであったところ,被告人は,自分を追い詰めておきながら飲酒して眠ってしまい寝息を立てている被害者の姿を見たことを契機に,被害者に対する憎しみの感情を一気に爆発させ,極度に興奮し,激情の赴くまま,咄嗟に第1行為に及んだものと認められるところ,その事情は殺意発生の動機として十分首肯しうるものである。以上によれば,被告人は,確定的殺意をもって第1行為に及んだと認めるに十分である。 2 ところで,第1行為時の殺意の点につき,被告人の捜査段階における各供述調書中には,要旨,「寝息をたてながら眠っている被害者を見て,それまでに被害者から受けた様々な仕打ちをも思い起こし,怒りを抑えきれなくなり ,第1行為時の殺意の点につき,被告人の捜査段階における各供述調書中には,要旨,「寝息をたてながら眠っている被害者を見て,それまでに被害者から受けた様々な仕打ちをも思い起こし,怒りを抑えきれなくなり,頭がカーッとして被害者を殺そうと思った。」との確定的殺意のあったことを自認する供述部分があるところ,被告人は,公判廷において,カーッとなって気が付いたら本件灰皿を握っており,体が勝手に動く様な感じで,持ち上げた本件灰皿を被害者めがけて投げ付けたなどと供述し,第1行為当時の記憶が乏しく,殊にその当時の心境を想起できないと主張し,第1行為当時の心境につき記憶がないにも拘わらず殺意を自認する供述調書が作成されているのは,検察官による弁解録取書(検51)については犯行直後で頭が混乱していたから,警察官調書(検39,40)については被告人に親身になってくれる警察官に対し調書の内容の訂正を申し出ることができなかったから,検察官調書(検43)については検察官が頭ごなしに決め付けるので何を言っても同じだと思ったからである旨供述するところ,被告人にはある程度第1行為,殊に第2打撃以後の状況や当時の心境について記憶を想起できない部分のあることは事実と認められ,被告人の捜査段階における各供述記載中には,部分的には,必ずしも明確ではない記憶を明確であるかのように記載された部分がないとはいえない。しかしながら,前記各供述記載中にも,被告人の記憶がある程度欠落していることは看取されるのであって,捜査官は,被告人にある程度の健忘のあることに留意しながら調書を作成したものと窺われること,犯行の2日後に作成された前記弁解録取書において被告人は前記殺意の点を含め概括的自白を内容とする調書作成に応じているのであるが,「犯行直後で頭が混乱していたから」というその理由は首肯し難 われること,犯行の2日後に作成された前記弁解録取書において被告人は前記殺意の点を含め概括的自白を内容とする調書作成に応じているのであるが,「犯行直後で頭が混乱していたから」というその理由は首肯し難いこと,第1行為時の心情(殺意)の点を除けば,被告人の捜査段階における供述調書は,犯行に至る経緯や犯行状況等につき具体的,詳細かつ迫真的で,客観的状況とも符合しており,その信用性は高いと認められること,特に弁解録取書は犯行直後というべき,記憶も比較的鮮明な時点での供述を録取したものでその信用性は高いといえること,殺意をもって被害者に攻撃を加えたか否かという点は,殺人被疑事件の被疑者の供述する犯行当時の心情としては最も重要なものというべきであり,通常人が被告人の述べるような理由で殺意を認めるとは容易には考え難いこと,公判供述においても,被告人はその当時の記憶が全くないわけではないことを自認しているなど,その供述態度や捜査段階における供述記載に照らし,被告人の主張する健忘にはかなりの誇張があるというべきであるが,極度の興奮状態で行為に及んだ情動に基づく発作的行為にあっては,行為者が興奮状態から覚めた後,その際の心情を含め,当時の記憶をある程度失っていることもありうることであり,被告人にそのような健忘があるとしても,そのこと自体は殺意がなかったことを示す資料となるものではないこと等を総合勘案すると,前記第1行為当時の被告人の心境に関する供述記載は,全体としては,概ね,第1行為当時及びその前後の断片的あるいは漠然と存在する記憶を含む被告人の記憶に基づき作成された供述記載であって,その意味で,被告人の記憶の有無,濃淡を反映して録取された信用性のある供述記載であると認められる。 3 なお,弁護人は,被告人は本件灰皿を手に持ったまま被害者を殴り付けたわ された供述記載であって,その意味で,被告人の記憶の有無,濃淡を反映して録取された信用性のある供述記載であると認められる。 3 なお,弁護人は,被告人は本件灰皿を手に持ったまま被害者を殴り付けたわけではなく,これを投げ付けるという方法で攻撃しているところ,後者は前者より被害者に与える衝撃の小さいものであるから,被告人による本件灰皿の用法はさほど危険なものとはいえず,ここから殺意を推認することはできないと主張するが,被告人は,前提事実で示したとおり,被害者の頭部のすぐ側に立ったまま,本件灰皿を持ち上げ,被害者に投げ下ろすようにしてその頭部にこれを打ち付けたもので,遠方からこれを放り投げたというわけではなく,被告人が本件灰皿を手に持ったまま被害者を殴り付ける行為と比較しても,その態様自体がさほど異なるものであったとまではいえない上,相手に与える衝撃はさほど変わらないものであったと認められるから,弁護人の前記主張は第1行為当時被告人に殺意がなかったことを疑わせる資料となるものではない。 また,弁護人は,被告人の捜査段階の供述調書において,第1打撃の動機について,被害者から逃げても居所を探されたり,交際相手や親戚に金銭要求がなされてしまうから,ここで被害者を殺害して関係を絶たなければならないと決意したと録取されているところ,そのような動機で被告人が殺意を抱くというのは不自然,不合理であると主張する。しかしながら,被告人の捜査段階の供述調書を率直にみると,犯行直前に被告人が抱いた犯行動機としては前記激高の点が主たるものとして録取されているというべきであり,弁護人主張のような動機は犯行前被告人が被害者と話し合っている段階で考えていたことが犯行当時にも念頭にあったという程度のものであるというべきで,犯行の主たる動機として録取されているとは到 べきであり,弁護人主張のような動機は犯行前被告人が被害者と話し合っている段階で考えていたことが犯行当時にも念頭にあったという程度のものであるというべきで,犯行の主たる動機として録取されているとは到底いえないから,弁護人の主張は理由がない。 4 以上のとおり,被告人が第1行為の犯行当初から確定的殺意を有していたものと優に認められる。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法199条に該当するので,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役9年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中220日をその刑に算入することとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が被害者の頭部等に灰皿を投げ付けるなどし,さらに,安全帯のロープで被害者の頸部を絞めて殺害した殺人の事案である。 本件犯行に至る経緯は,前述のとおりであって,被告人が被害者から多額の金銭支払いを迫られ,追い詰められていたとの事情は認められるものの,これが被害者の殺害を正当化する理由とならないことは明白であって,被害者の仕打ち等を思い起こすなどして激高して被害者を殺害するに至った動機に酌量の余地は乏しく,犯行態様は,睡眠中で無防備,無抵抗の被害者の頭部等に重い灰皿を複数回力いっぱい投げ付けるなどした上,被害者が生存していると知るや,既に瀕死の被害者に対し,ロープで首を絞めて確実に殺害を図るという残忍かつ執拗なものであった。被害者は,長年にわたりB興業を経営するとともに,内妻らと幸せな家庭生活を築いてきたのに,突如残忍な方法でその生命を絶たれたものであって,被害者本人の苦痛,無念は計り知れないし,被害者死亡後,B興業が廃業を余儀なくされたことも加わり,内妻ら被害者遺族の被害感情にも厳しいものがあるほか,B興業の従業員やその家族に与えた影響も無視できない。これらの点に, 念は計り知れないし,被害者死亡後,B興業が廃業を余儀なくされたことも加わり,内妻ら被害者遺族の被害感情にも厳しいものがあるほか,B興業の従業員やその家族に与えた影響も無視できない。これらの点に,被害弁償がなされていないことを併せ考慮すると,本件犯情は悪質で,被告人の刑事責任はまことに重大であるといわざるを得ない。 他方,被害者が日頃から被告人ら従業員に過酷な労働条件を課し,あるいは金銭面でも不当な要求をしていたことが窺われる上,本件直前における被害者の被告人に対するリフォーム代の請求は明らかに理不尽なものであり,熱中症で体力及び気力の衰えていた被告人がその支払いを強く迫られ,追い詰められた心境に陥っていたと認められること,本件犯行はそのような心境に至った被告人が被害者の眠っている姿をみて激高し,咄嗟に犯行に及んだ偶発的犯行であって計画的犯行ではないこと,被告人は,本件犯行後逃走することなく犯行現場に戻り,素直に逮捕に応じ,本件犯行を反省し,後悔していること,被告人に前科前歴はなく,実母が被告人の監督を誓約していることなど,被告人のために斟酌すべき事情も認められるので,これらの事情をも十分に考慮した上,主文掲記の刑に処するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年6月30日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森研二 裁判官橋本一 裁判官沖敦子 裁判官沖敦子
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