主文 岡山県警察本部長が平成18年9月20日付けでした別紙文書目録記載の文書の存否を明らかにしないで開示しないとの処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 請求の趣旨主文同旨 請求の趣旨に対する答弁(1)原告の請求を棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 第2事案の概要 本件は,原告が,岡山県行政情報公開条例(平成8年3月26日岡山県条例第3号,以下「本件条例」という。)6条に基づき,同条例2条所定の実施機関の一つである岡山県警察本部長(以下「県警本部長」という。)に対し,別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)の開示を請求した(以下「本件開示請求」という。)ところ,県警本部長が,本件文書が存在しているか否かを答えるだけで,非開示情報を開示することになるとして,本件条例10条により本件文書を非開示とする処分(以下「本件非開示処分」という。)をしたことから,原告が被告に対し,本件非開示処分は本件条例の解釈運用を誤った違法がある旨を主張し,その取消しを求めた事案である。 前提事実当事者間に争いがない事実及び証拠と弁論の全趣旨によれば,次の事実が容易に認められる。 (1)当事者 原告は,岡山市α347番地に主たる事務所を置く特定非営利活動法人である(記録中の原告の代表者事項証明書)。 被告は,普通地方公共団体であり,岡山県民の県政に対する理解と信頼を深め,県民参加による公正で開かれた県政を一層推進することを目的として本件条例(乙1)を定めている。本件文書は,県警本部長が保有する文書であり,本件条例2条1項により,同本部長が本件条例にいう実施機関となる。 (2)本件条例の規定本件条例のうち,本件に関係する規定は,別紙岡山県行政情報公開条例 本件文書は,県警本部長が保有する文書であり,本件条例2条1項により,同本部長が本件条例にいう実施機関となる。 (2)本件条例の規定本件条例のうち,本件に関係する規定は,別紙岡山県行政情報公開条例のとおりである(乙1)。 (3)本件開示請求及び本件非開示処分に至る経緯岡山東署に設けられた合同捜査本部は,平成▲年▲月▲日,報道機関に対し,同年3月,コーポなどからバッグなどを盗んだとして,岡山市β,無職A容疑者(49)を逮捕したことなどを発表した。なお,以下,公訴提起の前後を問わず,また,刑事判決確定の前後を問わず,上記容疑者を「本件容疑者」という。)次いで,上記合同捜査本部は,平成▲年▲月▲日,報道機関に対し,本件容疑者が,岡山県南で(略)の空き巣をしたと供述しており,同月13日にも同容疑で追送検することなどを発表した。 これを受けて,B新聞は,同日,「(略)」,「(略)」,「岡山県警追送検へ」等との見出しのもと,上記発表に係る記事のほか,「(略)」,本件容疑者は,「(略)から(略)にかけ,岡山,倉敷,玉野市などの民家や二階建てコーポを狙い,(略)を盗んだ疑い。」,「(略)」との内容の記事を掲載し,これを報道した(甲2)。 また,同新聞は,平成▲年▲月▲日,「窃盗重ねた被告」,「(略)求刑」,「地裁公判」との見出しのもと,「県南のコーポなどを狙い,(略)の空き巣を重ねたとして,窃盗罪などに問われた本件容疑者の論告求刑公判 が十九日,岡山地裁(馬渡香津子裁判官)であり」,検察側が(略)を求刑したとの内容の記事を掲載し,これを報道した(甲3)。 さらに,同新聞は,同年▲月▲日,「(略)」「被告の男に(略)」,「地裁判決」との見出しのもと,「県南のコーポなどを狙い,(略)空き巣を繰り返し,窃盗罪などに問われた本件容疑者の判決公判が▲日, 。 さらに,同新聞は,同年▲月▲日,「(略)」「被告の男に(略)」,「地裁判決」との見出しのもと,「県南のコーポなどを狙い,(略)空き巣を繰り返し,窃盗罪などに問われた本件容疑者の判決公判が▲日,岡山地裁であり」,馬渡香津子裁判官が(略)の刑を言い渡したとの内容の記事を掲載し,これを報道した(甲4)。なお,上記裁判官が宣告した上記事件(以下「本件窃盗事件」という。)に係る判決は,同月25日,確定した(記録上明らかである。)。 (4)本件開示請求原告は,本件容疑者に係る本件窃盗事件において,捜査費が適正に支出されたか否か,捜査費の支出と称して裏金作りが行われていないかなどを検証するため,平成18年9月12日,県警本部長に対し,本件条例6条に基づき,「平成17年3月中に,岡山東警察署が窃盗犯人として岡山市βの無職男性(49歳)を逮捕した事件に係る国費捜査費及び県費捜査費の執行状況が分かる領収書等を含めた捜査費証拠書類」(本件文書)の開示を請求した。 (5)県警本部長による本件非開示処分県警本部長は,平成18年9月20日付けで,本件条例10条により本件文書を開示しない旨の本件非開示処分をし,その旨の通知書(甲1)を原告に送付した。同通知書によれば,本件非開示処分の理由は,下記のとおりである。 記本件開示請求に係る「平成17年3月中に,岡山県東警察署が窃盗犯人として岡山市βの無職男性(49歳)を逮捕した事件」については,これを開示,一部開示又は非開示することにより特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができる ものを含む。)と認められ,又は,特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある。 また,「特定事件に関する捜査費証拠書類」 識別することができる ものを含む。)と認められ,又は,特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある。 また,「特定事件に関する捜査費証拠書類」については,これを開示,一部開示又は非開示することにより捜査費等執行の有無,継続捜査中の有無が判明し,事件に関する捜査動向が明らかとなり,被疑者等の事件関係者において,逃亡,証拠隠滅等の対抗措置を講じられるおそれや捜査協力者等への危害を加えるおそれがある。 以上により,本件開示請求については,本件文書が存在しているか否かを明らかにすること自体が,本件条例7条2号及び4号の非開示情報を開示することとなる。 (6)本件訴訟の提起原告は,平成19年2月28日,被告に対し,本件非開示処分を不服としてその取消しを求め,本件訴訟を提起した(記録上明らかである。)。 (7)捜査費及び捜査費証拠書類なお,被告は,捜査費及び捜査費証拠書類について,次のとおりの説明をしている。 ア捜査費捜査費とは,捜査に必要となる諸経費で,緊急性を要し又は秘匿性のあるものについて使用される諸経費である。具体的な使用例としては,大きく分けて次の4つがあると認められる。 第1が,日常的な捜査活動である聞込み,張込み,犯人の尾行等に伴うもので,捜査員が乗車するバスやタクシー代,駅の入場券代,捜査用車の駐車料金,捜査活動に緊急に必要な各種物品の購入代金等である。 第2が,捜査協力者等に対するもので,捜査協力者や情報提供者に対する謝礼及び捜査協力者等との接触に要する経費である。 第3が,捜査拠点の設置やその運営に伴うもので,例えば,秘匿を要す る捜査拠点の設置費用や県外での出張捜査の際のレンタカー借上げ費用である。 第4が,被害者対策に伴う費用である。被害者の診断書を始めとする捜 査拠点の設置やその運営に伴うもので,例えば,秘匿を要す る捜査拠点の設置費用や県外での出張捜査の際のレンタカー借上げ費用である。 第4が,被害者対策に伴う費用である。被害者の診断書を始めとする捜査に必要な書類等の入手費用や,被害者家族の身辺を保護する意味合い等からホテルの借り上げ費用等である。 イ捜査費証拠書類捜査費に関する証拠書類としては,現金出納簿と領収書,レシートその他の領収を示す書類が主要なものとして挙げられる。 現金出納簿は,現金経理である捜査費について,受入と支出の明細を明らかにするために発生順に記載した文書であり,警察本部各所属及び各警察署において,警察法等に定められた県費,国費の区分に従い作成しているものである。そして,「年月日」,「摘要」,「受入額」,「支出額」,「残額」の各欄から構成され,年月日欄には,受入及び支出の年月日が,摘要欄には支出理由及び捜査員の氏名等が,受入額欄,支出額欄及び残額欄にはそれぞれ該当金額及び繰越金額が記載されている。 領収書等は,捜査費の個別の執行の過程において作成,取得されたもので,いずれも支払事実を証明するものである。この中には,捜査員が日常の捜査活動の中で使用する交通費,飲食費,物品費等の諸経費の執行に際し,業者等が作成する領収書等のほか,捜査協力者等が謝礼金を受領した際に作成する領収書などがある。業者等が作成する領収書等には,年月日,領収金額,業者名・住所,具体的領収内容(例えば,駐車時間○○から○○までの駐車代金等)等の個別の執行に係る情報が記録されているものである。また,捜査協力者等が謝礼金を受領した場合における領収書には,執行理由のほか,領収額,領収年月日,住所,印影が記録される。捜査協力者等が領収書作成を拒否した場合には,領収書の代わりに捜査員が作成する支払報告書が 者等が謝礼金を受領した場合における領収書には,執行理由のほか,領収額,領収年月日,住所,印影が記録される。捜査協力者等が領収書作成を拒否した場合には,領収書の代わりに捜査員が作成する支払報告書があり,同報告書には,捜査員の氏名等のほか,「支払年 月日,支払場所,支払金額,捜査協力者,拒否理由等」が記載されている。 第3争点及び争点に関する当事者の主張 争点 本件文書が存在しているか否かを答えるだけで,非開示情報を開示することとなるか。 争点に関する被告の主張(1)本件文書の存否を明らかにすると,①「男性(49歳)が特定の窃盗事件により逮捕された事実の有無」,②「男性(49歳)にかかる特定の窃盗事件について捜査費を執行した事実の有無」という非開示情報が開示されることになる。 したがって,本件開示請求については,本件文書が存在しているか否かを明らかにすること自体が,本件条例7条2号及び4号の非開示情報を開示することとなるから,本件条例10条により本件文書を非開示とした本件非開示処分は適法である。 (2)①(男性(49歳)が特定の窃盗事件により逮捕された事実の有無)についてア「男性(49歳)が特定の窃盗事件により逮捕された事実」が開示された場合,その情報は,「男性(49歳)」にとって,個人識別可能な情報であり,本件条例7条2号本文前段の非開示情報を開示することになる。 また,同情報が開示された場合,被疑者の親族がいじめに遭うなどして地元に住みづらくなる事例があることからも理解されるように,この情報は「男性(49歳)の親族」にとっても他人に知られたくない情報である。 したがって,その開示は,本件条例7条2号本文後段の「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」という も他人に知られたくない情報である。 したがって,その開示は,本件条例7条2号本文後段の「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」という非開示情報を開示することにもなる。 イこれに対し,原告は,本件窃盗事件は,過去に新聞報道された事実であ り,公知の事実であると主張する。 しかし,上記の情報のうち,非開示情報より除外されるのは,本件条例7条2号ただし書イにより,「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とされているにとどまる。 そこで検討するに,まず,法令等により個人識別情報等の開示を命じた規定は見当たらない。 次に,「慣行として」というのは,「公にすることが慣習として行われていること」を意味するが,慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく,事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。そして,当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても,それが個別的な事例にとどまる限り,「慣行として」にはあたらないと解されている。 また,「公にされ」とは,現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り,現に公知(周知)の事実である必要はないが,過去に公にされたものであっても,時の経過により,開示請求の時点では公にされているとは見られない場合があり得る。さらに,ある情報が時間の経過とともに周知性を喪失し,一定期間が経過した後は,もはや公にされているとは認められない場合があり得るが,情報の周知性喪失期間に関しては,明確な判断基準はなく,行政庁の合理的な判断に委ねられていると解される。 そこで,本件の経過をみると,次のとおりである。 (ア)平成▲年▲月▲日被告側が報道側に対し,窃盗事件について本件容疑者を 明確な判断基準はなく,行政庁の合理的な判断に委ねられていると解される。 そこで,本件の経過をみると,次のとおりである。 (ア)平成▲年▲月▲日被告側が報道側に対し,窃盗事件について本件容疑者を逮捕したことを発表(イ)平成▲年▲月▲日被告側が報道側に対し,追送検をしたことを発表(ウ)平成▲年▲月▲日報道側が裁判所での論告求刑を新聞発表(エ)平成▲年▲月▲日報道側が裁判所での判決を新聞発表 (オ)平成18年9月12日原告より本件開示請求(カ)平成18年9月20日本件非開示処分通知この経過から,本件について,本件条例7条2号ただし書イに該当するか否かについて考察してみると,被告側から報道側に発表された情報(上記(ア)及び(イ))が,慣行として公にされた情報に該当するか否かについては異論があるかもしれないが,少なくとも,報道側の独自の取材による新聞報道(上記(ウ)及び(エ))は,それに該当しないと解される。 そして,仮に,被告側から報道側に発表された情報(上記の(ア)及び(イ))が慣行として公にされた情報に該当するとした場合であっても,時間の経過とともに,周知性を喪失していたといえることもあり,その判断は,前記のように,行政庁の合理的な判断に委ねられているところである。 この点については,被告側では,「岡山県公安委員会及び岡山県警察における岡山県行政情報公開条例審査基準」(乙2の160頁)で,被疑者(被告人)の個人情報の取り扱いについて,次のような運用基準を定めている。すなわち,被疑者(被告人)の氏名等が開示決定の時点において慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている場合とは,ⅰ警察白書等警察が発行する公刊物等において被疑者(被告人)の氏名等を記載している場合,ⅱ被疑者(被告人)の氏名等を冠して事件名が いて慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている場合とは,ⅰ警察白書等警察が発行する公刊物等において被疑者(被告人)の氏名等を記載している場合,ⅱ被疑者(被告人)の氏名等を冠して事件名が呼称されることが通例である場合,ⅲ開示請求から開示決定までの間において,マスコミにおいて頻繁に被疑者(被告人)が特定される内容の報道がなされている場合である。 被告は,本件においては,この運用基準に照らして,周知性を喪失しているものと判断したのであり,その判断は,実施機関として合理的な裁量の範囲内にあるといえる。 (3)②(男性(49歳)にかかる特定の窃盗事件について捜査費を執行した事実の有無)について 次に,「男性(49歳)にかかる特定の窃盗事件について捜査費を執行した事実」が開示された場合,捜査協力者(情報提供者)の存在が推知される。 捜査協力者は,協力者の存在が推知される僅かな資料も公表されないことを前提として協力しているものであり,協力者の存在を推知させる資料は,以後の捜査協力関係に重大な支障を及ぼす。そのため,捜査費を執行した事実を開示することは,本件条例7条4号にいう「公共の安全等に関する情報」という非開示情報を開示することになる。 また,特定事件について捜査費を執行するかしないかということは,捜査の一手法であり,捜査を強力に推進しているかしていないか,あるいは,重点的に捜査をしていないかしていたかなどの捜査手法の類型に関する情報となる。このことは,被疑者等の事件関係者にとって,将来の犯罪手口を考える場合の参考情報となるから,このような意味からも,捜査費の執行の有無を開示することは,本件条例7条4号にいう「公共の安全等に関する情報」という非開示情報を開示することになる。 原告の反論本件文書記載の情報は,以下のとおり公知の な意味からも,捜査費の執行の有無を開示することは,本件条例7条4号にいう「公共の安全等に関する情報」という非開示情報を開示することになる。 原告の反論本件文書記載の情報は,以下のとおり公知の事実であるから非開示情報ではない。したがって,本件非開示処分は違法である。また,本件条例10条に該当する事由がないことは,被告がそれにつき何ら主張していないことからも明らかである。 (1)本件窃盗事件については,岡山東警察署などの合同捜査本部において,犯人の氏名,住所地の町名及び犯行件数,手口,被害額等を報道機関に対して公表し,新聞に実名報道され,さらに,起訴後求刑時及び判決時に実名報道されている事実がある。したがって,「男性(49歳)」を被疑者とする捜査が行われたことは公知の事実である。 (2)本件窃盗事件につき,報道機関に対し,合同捜査本部が設置されていたこと,(略)ことが公表されており,このような事件について捜査費が使用さ れていないことはあり得ず,本件窃盗事件について捜査費が支出されたこともまた公知の事実というべきである。 第4当裁判所の判断 被告は,本件文書の存否を明らかにすると,①「男性(49歳)が特定の窃盗事件により逮捕された事実の有無」,②「男性(49歳)にかかる特定の窃盗事件について捜査費を執行した事実の有無」という非開示情報が開示されることになり,本件文書が存在しているか否かを明らかにすること自体が,本件条例7条2号及び4号の非開示情報を開示することとなると主張するので,以下,①,②について順次検討する。 まず,①(男性(49歳)が特定の窃盗事件により逮捕された事実の有無)について検討するに,本件文書は,「平成17年3月中に,岡山東警察署が窃盗犯人として岡山市βの無職男性(49歳)を逮捕した事件に係る国費捜 (男性(49歳)が特定の窃盗事件により逮捕された事実の有無)について検討するに,本件文書は,「平成17年3月中に,岡山東警察署が窃盗犯人として岡山市βの無職男性(49歳)を逮捕した事件に係る国費捜査費及び県費捜査費の執行状況が分かる領収書等を含めた捜査費証拠書類」,すなわち,窃盗犯人として本件容疑者を逮捕した本件窃盗事件に係る捜査費関係書類であり,その存否が明らかになることにより,本件容疑者である特定の個人が本件窃盗事件により岡山県警察に逮捕された事実の有無が判明することとなるから,本件文書には,本件条例7条2号所定の個人識別情報又は権利利益侵害情報が非開示情報として記載されているということができる。 そこで,上記個人識別情報等が本件条例7条2号ただし書イの除外規定に該当するか否かについて更に検討を加えるに,前記前提事実によれば,本件容疑者については,平成▲年▲月▲日,前記合同捜査本部が報道機関に対し,実名を明らかにして窃盗による逮捕の事実を公表し,次いで,平成▲年▲月▲日,同捜査本部が報道機関に対し,本件容疑者には(略)窃盗余罪があり,これを追送検する旨も公表していたこと,これを受けて,B新聞は,▲月▲日,同捜査本部が発表した事実関係に基づき,その旨の記事を掲載し,これをいわゆる実名報道したほか,本件容疑者が岡山地方裁判所に起訴された後も,その独自 の取材により,論告求刑公判(同年4月19日)において,(略)の求刑がされ,判決公判(▲年▲月▲日)において,同裁判所裁判官により(略)の刑に処する旨の判決が宣告された旨の記事をそれぞれその翌日に掲載し,これらの事実についても実名報道したこと,そして,本件容疑者については,既に同判決が同月25日に確定していることが認められる。 以上の事実によれば,前記合同捜査本部は,報道機関に対し,平 日に掲載し,これらの事実についても実名報道したこと,そして,本件容疑者については,既に同判決が同月25日に確定していることが認められる。 以上の事実によれば,前記合同捜査本部は,報道機関に対し,平成▲年▲月▲日と平成▲年▲月▲日の2回にわたって本件容疑者の逮捕と追送検の事実を公表し,B新聞がそれぞれその事実を実名報道したというのであり,しかも,捜査機関が報道機関に対し,現に捜査中の被疑者及び被疑事実等を公表し,これが報道機関により報道されることは,一般に,慣行として広く行われているところであり,かかる慣行が社会的にも定着し,許容されていることは公知の事実というべきである。そうすると,上記諸事情に照らして考える限り,本件容疑者に係る前記個人識別情報等は,既に「慣行として公にされた情報」と認めることができる。 これに対し,被告は,過去に公にされたものであっても,時間の経過とともに周知性を喪失し,一定期間が経過した後は,もはや公にされているとは認められない場合があり得るとして,その場合,情報の周知性喪失期間に関しては,行政庁の合理的な判断に委ねられており,岡山県警察においては,「岡山県公安委員会及び岡山県警察における岡山県行政情報公開条例審査基準」(乙2の160頁)により前記(9丁)ⅰないしⅲのとおりの運用基準を定めているが,本件容疑者については,この運用基準に照らして,周知性を喪失しているものと判断したのであり,その判断は,合理的な裁量の範囲内にあるといえると主張する。しかしながら,上記主張のうち,過去に公にされた情報が一定期間経過後に周知性を喪失する場合があることはそのとおりであるとしても,前記認定の事実によれば,本件容疑者と本件窃盗事件については,B新聞により,逮捕時,追送検時,論告求刑公判時及び判決公判時の4回にわたって実名報道が 喪失する場合があることはそのとおりであるとしても,前記認定の事実によれば,本件容疑者と本件窃盗事件については,B新聞により,逮捕時,追送検時,論告求刑公判時及び判決公判時の4回にわたって実名報道が されたばかりか,本件開示請求がされたのは,判決公判の報道がされた約4か月後にすぎないというのであるから,同事件は未だ世人に周知の事件というべきであるし,また,刑事確定訴訟記録法によれば,刑事被告事件に係る訴訟の記録は,訴訟終結後は,保管検察官が保管し,保管検察官は,請求があったときは,保管記録の保存等に支障があるとき及び同法4条2項1号ないし5号に規定する場合(なお,6号は未施行である。)を除き,保管記録を閲覧させなければならないとされているところ,同法4条2項2号によれば,事件終結後3年を経過したときは閲覧請求を拒絶できるものの,それまでは期間経過を理由として閲覧請求を拒絶できないとされているのであって,報道機関による報道がされなかった事件についてすら,たやすく周知性の喪失を認めず,3年間は閲覧を可としているところである。そうであれば,本件条例の運用上,周知性喪失を理由として,本件条例7条2号ただし書イの除外規定を適用する場合があり得るとしても,本件容疑者に関する限り,被告が被告主張の上記運用基準に従って周知性を喪失しているものと判断したことは,到底これが合理的な裁量の範囲内にあるということはできない。 したがって,本件容疑者に係る前記個人識別情報等は,本件条例7条2号の情報に該当するが,同条同号ただし書イにより,非開示情報ではないというべきであるから,本件文書の存否を明らかにすることによってこれが判明するとしても,本件条例10条によって応答拒否をすることはできない。 よって,被告の①に関する主張は,理由がない。 次に,②(男性( きであるから,本件文書の存否を明らかにすることによってこれが判明するとしても,本件条例10条によって応答拒否をすることはできない。 よって,被告の①に関する主張は,理由がない。 次に,②(男性(49歳)にかかる特定の窃盗事件について捜査費を執行した事実の有無)について検討するに,これについても,本件文書の性質上その存否が明らかになることにより,本件容疑者に係る本件窃盗事件について捜査費を支出し,その予算を執行した事実の有無が判明することになるが,この点,本件非開示処分の通知書には,そのような事実が判明することにより,「捜査費等執行の有無,継続捜査中の有無が判明し,事件に関する捜査動向が明らか となり,被疑者等の事件関係者において,逃亡,証拠隠滅等の対抗措置を講じられるおそれや捜査協力者等への危害を加えるおそれがある」として,本件文書が存在しているか否かを答えること自体が本件条例7条4号の非開示情報を開示することになるとの記載がある。しかしながら,本件窃盗事件については,既に捜査を終えて公訴が提起され,岡山地方裁判所において,本件容疑者を(略)の刑に処する旨の判決が宣告され,既にこれが確定しているのであるから,本件窃盗事件及び本件容疑者に関する限り,上記通知書中,捜査の継続を前提とする部分は全く理由がないというほかはないし,また,仮に,本件容疑者に係る本件窃盗事件以外の余罪について継続捜査中であったとしても,原告が開示を求める本件文書は,本件窃盗事件に係る捜査費証拠書類に限定されているのであって,本件文書の存否が明らかとなったとしても,上記余罪について継続捜査中であることが判明するわけではないから,上記のおそれがあるということもできない。 さらに,被告は,本件訴訟において,本件文書の存否を明らかにすることは,捜査協力者(情報提供 記余罪について継続捜査中であることが判明するわけではないから,上記のおそれがあるということもできない。 さらに,被告は,本件訴訟において,本件文書の存否を明らかにすることは,捜査協力者(情報提供者)の存在が推知され,また,被疑者等の事件関係者にとって,将来の犯罪手口を考える場合の参考情報となるとも主張するが,これらの事情は,本件文書の内容が開示された場合に懸念される事情ということはできるものの,本件文書の存否が明らかとなることによって判明する事情でないことは自明であるから,本件文書の存否を明らかにした上,本件条例4号により開示の許否を決する際の理由とするのは格別,およそ本件条例10条による応答拒否の理由となるものではない。 よって,被告の②に関する主張は,すべて理由がない。 第5 結論 以上の次第であって,原告の本訴請求は,理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第1民事部裁判長裁判官近下秀明裁判官篠原礼裁判官長尾洋子 (別紙)文書目録平成17年3月中に,岡山東警察署が窃盗犯人として岡山市βの無職男性(49歳)を逮捕した事件に係る国費捜査費及び県費捜査費の執行状況が分かる領収書等を含めた捜査費証拠書類以上
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