平成12(ワ)2674 不当利得返還請求

裁判年月日・裁判所
平成14年7月12日 神戸地方裁判所
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判決文本文20,652 文字)

判決平成14年7月12日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第2674号不当利得返還請求(損害賠償請求を択一的に追加請求)事件 主文 1 被告は,原告Aに対し,4241万6200円及びこれに対する平成12年7月15日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Aのその余の請求,原告Bの請求をいずれも棄却する。 3 原告Aと被告との間に生じた訴訟費用は被告の負担とし,原告Bと被告との間に生じた訴訟費用は同原告の負担とする。 4 この判決の1項は仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求める裁判 1 原告ら(請求の趣旨)(1) 次のア又はイの択一的請求ア不当利得返還請求a 被告は,原告Aに対し,不当利得金4241万6200円,及びこれに対する平成12年7月15日から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払え。 b 被告は,原告Bに対し,不当利得金3669万7000円,及びこれに対する平成12年7月15日から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払え。 イ損害賠償請求a 被告は,原告Aに対し,損害賠償金4241万6200円,及びこれに対する平成12年7月15日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払え。 b 被告は,原告Bに対し,損害賠償金3669万7000円,及びこれに対する平成12年7月15日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) この判決は仮に執行することができる。 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴 。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) この判決は仮に執行することができる。 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 原告ら(請求原因)原告らは,本訴の請求原因として,次の(1)又は(2)を択一的に主張する。 (1) 不当利得返還請求アリース契約及び売買契約の締結等(ア) 原告A関係a 本件リース契約1の締結原告Aは,平成6年2月20日,甲との間で,次のようなリース契約(以下「本件リース契約1」という。)を締結した(甲1)。 ・リース物件プレハブ用パネル釘打機ライン装置一式(以下「本件釘打機」という。)・リース期間  108か月・リース料月額127万2800円(別途月額3万8184円の消費税)・支払期日初回リース料は本件リース物件引渡時,2回目以降は本件釘打機引渡しの翌月から毎月1日b 本件売買契約1の締結等(a) 原告Aは,本件リース契約1に基づき,本件釘打機を購入することになった。本件釘打機の購入先は,当初は,甲の希望により乙とされていたが,その後,甲からの要望により,平成6年9月22日,被告から本件釘打機を購入するものと変更された(乙10)。 (b) そこで,原告Aは,平成6年9月下旬,被告との間で,次のとおりの売買契約(以下「本件売買契約1」という。)を締結した。 ・引渡日平成6年10月1日 そこで,原告Aは,平成6年9月下旬,被告との間で,次のとおりの売買契約(以下「本件売買契約1」という。)を締結した。 ・引渡日平成6年10月1日・目的物本件釘打機・引渡場所甲の西紀工場・代金額  1億0399万9100円(本体価格1億0097万円,消費税302万9100円)(c) 被告は,平成6年10月1日,甲に本件釘打機を引渡すことにより,原告に対する本件釘打機の引渡しを終えた。 (d) そこで,原告Aは,平成6年10月31日,被告に対し,本件釘打機の売買代金1億0399万9100円(本体価格1億0097万円,消費税302万9100円)を支払った(乙7の1)。 (イ) 原告B関係a 本件リース契約2の締結原告Bは,平成6年3月27日,甲との間で,次のようなリース契約(以下「本件リース契約2」という。)を締結した(甲5)。 ・リース物件本件釘打機・リース期間  108か月・リース料月額113万4000円・支払期日初回リース料は本件釘打機引渡時,2回目以降は本件釘打機引渡しの翌月から毎月11日b 本件売買契約2の締結等(a) 原告Bは,本件リース契約2に基づき,本件釘打機を購入することになった。本件釘打機の購入先は,当初は,甲の希望により乙とされていたが,その後,甲からの要望により,平成6年5月1日,被告から本件リース物件を購入するものと変更された(甲6)。 入することになった。本件釘打機の購入先は,当初は,甲の希望により乙とされていたが,その後,甲からの要望により,平成6年5月1日,被告から本件リース物件を購入するものと変更された(甲6)。 (b) そこで,原告Bは,平成6年7月20日,被告との間で,次のとおりの売買契約(以下「本件売買契約2」という。)を締結した。 ・引渡日平成6年7月20日・目的物本件釘打機・代金額  9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)・引渡場所甲の西紀工場(c) 被告は,平成6年7月20日,甲に本件釘打機を引渡すことにより,原告Bに対する本件釘打機の引渡しを終えた。 (d) そこで,原告Bは,平成6年7月29日,被告に対し,本件釘打機の売買代金9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)を支払った(乙2の2,乙3の3)。 イ被告の詐欺,原告らの契約解除・取消し等(ア) 被告の詐欺a 本件リース契約1・2,本件売買契約1・2の対象物件である本件釘打機は同一物件であり,本件リース契約1・2,本件売買契約1・2は,二重リース,二重売買に該当する。 b 甲と被告(担当者であるy部長)は,当初から,あるいは遅くとも平成6年5月1日までには,互いに通謀の上で,本件釘打機の二重リース,二重売買を行う意図ないしは計画を有していたのである。 c すなわち,被告(y部長)は,本件リース契約1・2,本件売買契約1・2は,甲との通謀によりなされた二重リース,二重売買であるにもかかわらず,あたかも 画を有していたのである。 c すなわち,被告(y部長)は,本件リース契約1・2,本件売買契約1・2は,甲との通謀によりなされた二重リース,二重売買であるにもかかわらず,あたかも正常なリース契約,売買契約であるかのように見せかけて原告らを欺き,そのように誤信した原告らをして,本件リース契約1・2,本件売買契約1・2を締結せしめたのである。 d したがって,本件売買契約は,被告(y部長)の詐欺によるものである。 (イ) 原告らの契約解除・取消等a 契約解除(a) 甲は,平成10年7月31日,大阪地方裁判所で破産宣告を受けた(甲10)。 (b) そこで,原告Bは平成10年8月5日付の内容証明郵便で,原告Aは平成同年8月7日付の内容証明郵便で,甲破産管財人に対し,本件リース契約1・2を解除する旨の意思表示をした(甲14,15)。 b 契約取消し(a) 原告らは,本件リース契約1・2,本件売買契約1・2の締結当時,同契約が甲及び被告の共謀による詐欺によるものであることを知らなかった。 (b) しかし,平成10年7月31日の甲の破産宣告を契機に,原告らが本件釘打機の調査・確認を行ったところ,平成10年9月ころに,前記(ア)の事実(甲及び被告の共謀による詐欺の事実)が判明するに至った。 (c) そこで,原告らは,平成12年7月13日付の内容証明郵便でもって,被告に対し,被告の詐欺を理由に本件売買契約1・2を取消す旨の意思表示をなし,同意思表示は同月14日被告に到達した(甲11,12)。 ウ原告らの売買代金返還請求権(ア) 本件釘打機の売却処分 告の詐欺を理由に本件売買契約1・2を取消す旨の意思表示をなし,同意思表示は同月14日被告に到達した(甲11,12)。 ウ原告らの売買代金返還請求権(ア) 本件釘打機の売却処分a 原告Aは,平成12年1月26日,甲の破産管財人の了解を得て本件釘打機の返還を受け,これを丁に1万円で売却した(甲16)。 b そして,原告らは,上記売却代金を折半して,各5000円を未払リース料残債権の支払に充当した。 (イ) 売買代金残額原告らの詐欺を理由とする本件売買契約1・2の取消しの意思表示により,原告らは,被告に対し,次のとおりの売買代金返還請求権を有している。 a 原告A売買代金額(本体価格)1億0097万円から回収済リース料5855万3800円(甲17)を控除した残額4241万6200円b 原告B売買代金額(本体価格)9000万円から回収済リース料5330万3000円(甲18)を控除した残額3669万7000円エ結論よって,原告らは,被告に対し,次の各金員の支払を求める。 (ア) 原告Aの請求不当利得金4241万6200円,及びこれに対する平成12年7月15日(本件売買契約1の取消しの翌日)から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(イ) 原告Bの請求不当利得金3669万7000円,及びこれに対する平成12年7月15日(本件売買契約2の取消しの翌日)から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(2) 損害賠償請求アリース契約及び売買契約の締結等 びこれに対する平成12年7月15日(本件売買契約2の取消しの翌日)から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(2) 損害賠償請求アリース契約及び売買契約の締結等前記1(1)アと同旨イ被告の不法行為(ア) 故意による不法行為前記(1)イ(ア)(被告の詐欺)と同旨(イ) 過失による不法行為仮に被告の詐欺が認められないとしても,被告(y部長)は,原告らに対し,短期間の間に本件釘打機を二重譲渡しており,被告(y部長)に過失があることは明らかである。 ウ原告らの損害(ア) 原告らは,被告の故意又は過失による不法行為により,本件売買契約1・2を締結させられ,本件釘打機の売買代金を支払った。そして,原告らは,甲がリース料の支払途中で破産宣告を受けたことにより,リース料の一部しか回収することができず,損害を被った。 (イ) そして,原告らは,前記(1)ウ(原告らの売買代金返還請求権)記載のとおり,甲からリース料の一部を回収しており,これを本件釘打機の売買代金(本体価格)から控除した残額は,原告Aが4241万6200円,原告Bが3669万7000円であって,原告らはそれぞれ同額の損害を被った。 エ結論よって,原告らは,被告に対し,次の各金員の支払を求める。 (ア) 原告Aの請求損害賠償金4241万6200円,及びこれに対する平成12年7月15日(本件売買契約1の取消しの翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金(イ) 原告Bの請求損害賠償金3669万70 に対する平成12年7月15日(本件売買契約1の取消しの翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金(イ) 原告Bの請求損害賠償金3669万7000円,及びこれに対する平成12年7月15日(本件売買契約2の取消しの翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金 2 被告(請求原因に対する認否,反論)(1) 請求原因(1)(不当利得返還請求)についてア請求原因(1)ア(リース契約及び売買契約の締結等)について(ア) 請求原因(1)ア(ア)(原告A関係)についてa 同(1)ア(ア)a(本件リース契約1の締結)は知らない。 b 同(1)ア(ア)b(本件売買契約1の締結等)について(a) 認否ⅰ 同(1)ア(ア)b(a)は知らない。 ⅱ 同(1)ア(ア)b(b)のうち,売買契約締結日,引渡日を否認し,その余は認める。 ⅲ 同(1)ア(ア)b(c)は否認する。 ⅳ 同(1)ア(ア)b(d)は認める。 (b) 反論被告(y部長)は,平成6年9月よりも前に,原告A及び甲から,乙の販売店である丙からリース物件を購入し,それを原告Aに売却したことにしてくれと頼まれ,それを承諾した。 すると,原告Aは,平成6年10月1日,被告に対し,リース物件の引渡しを受けたと報告し,甲の原告A宛のリース物件受領書(甲2)の写しを届けてくれた。 そして,原告Aは,平成6年10月31日,被告に対し,リース物件の売買代金1億0399万9100円(本体価格1億 原告A宛のリース物件受領書(甲2)の写しを届けてくれた。 そして,原告Aは,平成6年10月31日,被告に対し,リース物件の売買代金1億0399万9100円(本体価格1億0097万円,消費税302万9100円)を支払った(乙7の1)。 そこで,被告は,平成6年10月31日,丙に対し,リース物件の仕入れ代金1億0295万9109円を支払った(乙7の2)。 (イ) 請求原因(1)ア(イ)(原告B関係)についてa 同(1)ア(イ)a(本件リース契約2の締結)は知らない。 b 同(1)ア(イ)b(本件売買契約2の締結等)について(a) 認否ⅰ 同(1)ア(イ)b(a)は知らない。 ⅱ 同(1)ア(イ)b(b)のうち,売買契約締結日,引渡日を否認し,その余は認める。 ⅲ 同(1)ア(イ)b(c)は否認する。 ⅳ 同(1)ア(イ)b(d)は認める。 (b) 反論被告(y部長)は,平成6年5月ころ,甲及び原告Bから,丙からリース物件を購入し,それを原告Bに売却したことにしてくれと頼まれ,それを承諾した。 すると,原告Bは,平成6年7月20日,被告に対し,甲がリース物件の引渡しを受けたと報告し,甲の原告B宛のリース物件受領書(甲9)の写しを届けてくれた。 そして,原告Bは,平成6年7月29日,被告に対し,本件釘打機の売買代金9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)を支払った(乙2の2,乙3の3)。 そこで,被告は,平成6年10月31 29日,被告に対し,本件釘打機の売買代金9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)を支払った(乙2の2,乙3の3)。 そこで,被告は,平成6年10月31日,丙に対し,リース物件の仕入れ代金8740万円を支払った(乙4,5)。 イ請求原因(1)イ(被告らの詐欺,原告らの契約解除等)について(ア) 請求原因(1)イ(ア)(被告の詐欺)についてa 認否請求原因(1)イ(ア)aは認めるが,同bないしdは否認ないし争う。 b 反論(a) 被告(y部長)は,平成6年当時,本件売買契約1・2の対象が同一物件(同一の本件釘打機)であることは知らなかった。 (b) 被告(y部長)は,平成10年に甲が破産宣告を受けて倒産し,原告らからの報告により初めて,原告らに本件釘打機を二重譲渡していたことを知った。 (イ) 請求原因(1)イ(イ)(原告らの契約解除・取消等)についてa 同(1)イ(イ)a(契約解除)のうち,同(1)イ(イ)a(a)は認めるが,同(1)イ(イ)a(b)は知らない。 b 同(1)イ(イ)b(契約取消し)のうち,同(1)イ(イ)b(c)は認めるが,同(1)イ(イ)b(a)(b)は否認ないし争う。 ウ請求原因(1)ウ(原告らの売買代金返還請求権)について(ア) 同(1)ウ(ア)(本件釘打機の売却処分)は知らない。 (イ) 同(1)ウ(イ)(売買代金残額)は不知ないし争う。 (2) 請求原因(2)(損害賠償請求)についてア請求原因(2)ア(リース契約及び売買契約の締結等)について (イ) 同(1)ウ(イ)(売買代金残額)は不知ないし争う。 (2) 請求原因(2)(損害賠償請求)についてア請求原因(2)ア(リース契約及び売買契約の締結等)について請求原因(2)アについての認否は,前記2(1)アと同旨イ請求原因(2)イ(被告の不法行為)は否認ないし争う。 (ア) 本件売買契約1・2は,いずれも,原告らの都合により,事実上検収が売買に先行して行われ,被告に検収義務が免除されていた。したがって,本件釘打機の二重譲渡を回避することは,原告らの発注方法が改められない限り,被告にとっても避けることのできない不可抗力な事実であり,被告には故意も過失も存在しない。 (イ) 被告の原告らへの本件釘打機の二重譲渡について,仮に被告に何らかの過失責任があるとしても,本件売買契約1に先行する本件売買契約2は正常であり,被告には,原告Bに対する関係で二重譲渡の過失責任はない。 ウ請求原因(2)ウ(原告らの損害)は不知ないし争う。 3 被告(抗弁)(1) 消滅時効ア売買契約上の債権の消滅時効原告らの本件売買契約1・2上の被告に対する債権は,最後の取引が行われた平成6年11月8日から本件訴えの提起があった平成12年12月2日までに5年を経過している。したがって,原告らが被告に対し,本件売買契約1・2に関して何を主張しても,原告らの被告に対する債権(これは商事債権である)は時効で消滅している。 そこで,被告は,上記消滅時効を援用する。 イ不法行為による損害賠償債権の消滅時効不法行為による損害賠償債権は3年で消滅時効が完成する。被告の平成6年4月20日から11月8日までの取 記消滅時効を援用する。 イ不法行為による損害賠償債権の消滅時効不法行為による損害賠償債権は3年で消滅時効が完成する。被告の平成6年4月20日から11月8日までの取引のうち,どれが二重譲渡と主張されても,原告らの被告に対する不法行為による損害賠償債権は,時効により消滅した。 (2) 過失相殺原告らが,リース物件(本件釘打機)の二重譲渡の発生を売買の仕組みとして避けたいと思うなら,被告に対し,余裕をもって数日前に,メーカー(乙)からリース物件が届く日時と検収日を予告し,被告もメーカーからの入荷に立ち会って,甲がどのようなリース物件を納入したのか,チェックする機会を与えるべきである。 そうだとすると,二重譲渡の危険を避けるため,被告に上記チェックをする機会を与えなかった原告らの過失は大きく,仮に被告に何らかの過失による不法行為責任があったとすると,原告らの上記過失と相殺すべきである。 4 原告ら(抗弁に対する認否,反論)(1) 消滅時効について抗弁(1)ア(売買契約上の債権の消滅時効),同(1)イ(不法行為による損害賠償債権の消滅時効)はいずれも争う。 (2) 過失相殺について抗弁(2)(過失相殺)は争う。 原告らには,本件リース物件(釘打機)の引渡しについて,それが真に行われたか否かを調査すべき義務はなく,被告に対し,本件リース物件の検収を要請すべき義務もない。したがって,原告らには過失が認められず,本件において過失相殺の余地はない。 理由 第1 争いのない事実次の事実は,当事者間に争いがない。 1 請求原因(1)ア(ア)b(b)(本件売買契約1の締結-ただし,売買契約締結 。 理由 第1 争いのない事実次の事実は,当事者間に争いがない。 1 請求原因(1)ア(ア)b(b)(本件売買契約1の締結-ただし,売買契約締結日,引渡日を除く) 2 請求原因(1)ア(ア)b(d)(本件釘打機の売買代金の支払) 3 請求原因(1)ア(イ)b(b)(本件売買契約2の締結-ただし,売買契約締結日,引渡日を除く) 4 請求原因(1)ア(イ)b(d)(本件釘打機の売買代金の支払) 5 請求原因(1)イ(ア)a(二重リース,二重売買) 6 請求原因(1)イ(イ)a(a)(甲の破産宣告) 7 請求原因(1)イ(イ)b(c)(詐欺を理由とする本件売買契約1・2の取消し)第2 事実の認定前記第1の争いのない事実に,証拠(甲1~10,甲14~27〔枝番を含む〕,乙1~10〔枝番を含む〕,乙19の1・2,乙20の5,乙22,乙23,証人y)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 1 本件リース契約1・2の締結等(1) 原告A関係原告Aは,平成6年2月20日,甲との間で,次の内容の本件リース契約1を締結した(甲1)。 ・リース物件本件釘打機・リース期間  108か月・リース料月額127万2800円(別途月額3万8184円の消費税)・支払期日初回リース料は本件リース物件引渡時,2回目以降は本件釘打機引渡しの翌月から毎月1日(2) 原告B関係原告Bは,平成6年3月27日,甲との間で,次の内容の本件リース契約2を締結した(甲5)。 ・リース物件本件釘打機・リース期間  108か月・リース料月額113万4000円・支 の間で,次の内容の本件リース契約2を締結した(甲5)。 ・リース物件本件釘打機・リース期間  108か月・リース料月額113万4000円・支払期日初回リース料は本件釘打機引渡時,2回目以降は本件釘打機引渡しの翌月から毎月11日(3) 二重リース本件リース契約1・2のリース物件はいずれも同一の本件釘打機であり,本件リース契約1・2は二重リースである。 2 本件売買契約1・2の締結等(1) 原告B関係ア原告Bは,本件リース契約2に基づき,本件釘打機を購入することになった。本件釘打機の購入先は,当初は,甲の希望により乙とされていたが,その後,甲からの要望により,平成6年5月1日,被告から本件リース物件を購入するものと変更された(甲6)。 イそこで,原告Bは,平成6年7月20日,被告との間で,次のとおり本件売買契約2を締結した(甲7,甲8,乙2の1・2)。 ・目的物本件釘打機・代金額  9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)・引渡場所甲の西紀工場ウ甲は,平成6年7月20日,原告Bに対し,甲の西紀工場で本件釘打機の引渡しを受けたと報告し,本件釘打機の物件受領書(甲9)を差し入れた。その結果,本件リース契約2は,平成6年7月20日から発効した。その終期は平成15年7月19日である(甲5,甲9)。 エ原告Bの担当社員であったbは,平成6年7月26日,甲の西紀工場まで出向き,本件釘打機が同工場に納入されていることを確認し,本件釘打機の所有権が原告Bにあることを示すシールを本件釘打機に貼り付けたうえ,本件釘打機の写真(甲20)を撮影した(甲27) の西紀工場まで出向き,本件釘打機が同工場に納入されていることを確認し,本件釘打機の所有権が原告Bにあることを示すシールを本件釘打機に貼り付けたうえ,本件釘打機の写真(甲20)を撮影した(甲27)。 オ以上の経過を経て,原告Bは,平成6年7月29日,被告に対し,本件釘打機の売買代金9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)を支払った(乙2の2,乙3の3)。 (2) 原告A関係ア原告Aは,本件リース契約1に基づき,本件釘打機を購入することになった。本件釘打機の購入先は,当初は,甲の希望により乙とされていたが,その後,甲からの要望により,平成6年9月22日,被告から本件釘打機を購入するものと変更された(乙10)。 イそこで,原告Aは,平成6年9月下旬,被告との間で,次のとおり本件売買契約1を締結した(甲3,甲4,乙19の1・2)。 ・目的物本件釘打機・代金額  1億0399万9100円(本体価格1億0097万円,消費税302万9100円)・引渡場所甲の西紀工場ウ甲は,平成6年9月下旬,原告Bに対し,甲の西紀工場で本件釘打機の引渡しを受けたと報告し,本件釘打機の物件受領書(甲2)を差し入れた。その結果,本件リース契約2は,平成6年10月1日から発効した(甲2)。 エ原告Aの担当社員であったaは,平成6年10月1日,甲の西紀工場まで出向き,本件釘打機が同工場に納入されていることを確認した。原告Aが本件釘打機に貼り付けていたシールは,同日までに甲によって剥がされていた。 aは,本件釘打機の所有権が原告Aにあることを示すシールを本件釘打機に貼り付けたうえ,本件釘打機の写真(甲19)を撮影した。 貼り付けていたシールは,同日までに甲によって剥がされていた。 aは,本件釘打機の所有権が原告Aにあることを示すシールを本件釘打機に貼り付けたうえ,本件釘打機の写真(甲19)を撮影した。 オ以上の経過を経て,原告Aは,平成6年10月31日,被告に対し,本件釘打機の売買代金1億0399万9100円(本体価格1億0097万円,消費税302万9100円)を支払った(甲3,甲4,乙6,乙7の1)。 (3) 二重売買本件売買契約1・2の対象物はいずれも同一の本件釘打機であり,本件売買契約1・2は二重売買である。 被告は,同一の本件釘打機について,平成6年7月20日,原告Bとの間で本件売買契約2を締結し,同年7月29日,原告Bから売買代金9270万円を受領し,さらに,平成6年9月下旬,原告Aとの間で本件売買契約1を締結し,同年10月31日,原告Aから売買代金1億0399万9100円を受領しているのである。 3 甲の悪巧み,被告の巨額の利益(1) 甲の悪巧み甲は,平成6年,本件釘打機を乙から購入するに当たり,リース会社を騙して二重リースを組むことにより,リース会社から支払われる本件釘打機の購入代金の重複分を自社の資金繰りに充てようと企てた。そして,甲は,その具体的な方法として,次のアないしオのようなことを考えつき,被告の賛同も得て(ただし,被告に二重リース,二重売買の故意があったか否かは,後記第3で検討する。),それを実行に移した。 ア甲は,乙から本件釘打機を購入する。本件釘打機の購入には,原告らのリース(二重リース)を利用する。乙と原告らリース会社との売買には,その間に丙(乙9,甲のダミー会社)や被告を関与させる。 イ丙は,平成6年7月20日頃,乙から本件釘打機を購入した。 原告らのリース(二重リース)を利用する。乙と原告らリース会社との売買には,その間に丙(乙9,甲のダミー会社)や被告を関与させる。 イ丙は,平成6年7月20日頃,乙から本件釘打機を購入した。そして,平成6年7月20日頃及び同年9月下旬の二回にわたり,丙が被告に本件釘打機を売却し(二重売買),被告が原告B及び原告Aに本件釘打機を売却した(二重売買)。 ウ原告Bは,平成6年7月29日,被告に対し,本件釘打機の売買代金9270万円(本体価格9000万円,消費税270万円)を支払った(乙2の2,乙3の3)。その中から,被告は,平成6年9月25日,丙に対し,本件釘打機の仕入れ代金8740万円を支払った(乙4,乙5,乙20の5)。 エ原告Aは,平成6年10月31日,被告に対し,本件釘打機の売買代金1億0399万9100円(本体価格1億0097万円,消費税302万9100円)を支払った(乙6,乙7の1)。その中から,被告は,平成6年10月31日,丙に対し,本件釘打機の仕入れ代金1億0295万9109円を支払った(乙7の2,乙8の1・2)。 オ丙は,乙に対し,本件釘打機1台分の仕入れ代金を支払っただけである。したがって,丙(甲のダミー会社)の手元には,本件釘打機のもう1台分の売買代金が残り,甲はこれを自社の資金繰りに利用した。 (2) 被告の巨額の利益ア被告は,原告Bとの前記(1)ウの本件釘打機取引により,原告Bから受領した売買代金9270万円と,丙に支払った仕入れ代金8740万円との差額金530万円の利益をあげた。 さらに,被告は,原告Aとの前記(1)エの本件釘打機取引により,原告Aから受領した売買代金1億0399万9100円と,丙に支払った仕入れ代金1億0295万9109円との差額 利益をあげた。 さらに,被告は,原告Aとの前記(1)エの本件釘打機取引により,原告Aから受領した売買代金1億0399万9100円と,丙に支払った仕入れ代金1億0295万9109円との差額金103万9991円の利益をあげた。 イこのように,被告は,甲の求めに応じて,本件釘打機の売買取引に名前を貸すだけで,一瞬のうちに,633万9991円もの巨額な利益を労せずして取得したのである。 被告も,甲の企てに名前を貸しただけで,被告が633万9991円もの利益をあげた事実自体は認めている。 4 原告らの損害(1) 甲の倒産等ア甲は,平成10年7月31日,大阪地方裁判所で破産宣告を受けた(甲10)。そこで,原告Bは平成10年8月5日付の内容証明郵便(甲15)で,原告Aは同年8月7日付の内容証明郵便(甲14)で,甲の破産管財人に対し,本件リース契約1・2を解除する旨の意思表示をした。 イなお,原告らは,甲の破産宣告を契機として,本件リース物件(本件釘打機)の調査・確認を行った結果,平成10年9月ころ,前記1ないし3の二重リース,二重売買の事実を知るに至った(甲26,甲27)。 (2) 本件釘打機の売却処分原告Aは,平成12年1月26日,甲の破産管財人の了解を得て本件釘打機の返還を受け,これを丁に1万円で売却した(甲16)。そして,原告らは,上記売却代金を折半して,各5000円を未払リース料残債権の返済に充当した。 (3) 原告らの損害額ア原告Aの損害額は,売買代金額(本体価格)1億0097万円から回収済リース料5855万3800円(甲17)を控除した残額4241万6200円である。 イ原告Bの損害額は,売買代金額(本体価格)9000万円から回収済リース料5 格)1億0097万円から回収済リース料5855万3800円(甲17)を控除した残額4241万6200円である。 イ原告Bの損害額は,売買代金額(本体価格)9000万円から回収済リース料5330万3000円(甲18)を控除した残額3669万7000円である。 第3 被告の詐欺の検討 1 詐欺の疑い次の(1)ないし(3)の事実に照らせば,被告(y部長)は,遅くとも,原告Aとの間で本件売買契約1を締結した平成6年9月下旬の時点では,本件釘打機の売買が二重売買である事実を知っていたのではないか,すなわち,少なくとも本件売買契約1は被告(y部長)の詐欺によるものではないかとの疑いがある。 (1) 労せずに巨額の利益を取得被告は,甲の求めに応じて,本件釘打機の売買取引に名前を貸すだけで,一瞬のうちに,633万9991円もの巨額の利益を労せずして取得している(前記第2の3(2)イ)。 被告(y部長)は,本件売買契約1・2に名前を貸すだけで,一瞬のうちに,530万円と103万9991円の利益をあげることができるのであるから,甲が持ちかける話しには何かからくりはないかと疑い,この取引に問題はないかを確認するために,少なくとも関係書類を精査することが必要であり,場合によれば,売買目的物件(本件釘打機)の引渡しにも立ち会ったりするのが,本件釘打機の売主として当然に行うべきことであったといえる。 ところが,被告(y部長)は,これらの当然行うべき行動は何もとらず,甲から求められて,本件釘打機の売買取引にただ名前だけ貸して,合計633万9991円もの利益を労せずして取得している。 これでは,被告(y部長)が,甲から二重リース,二重売買という違法な取引への協力を求められ,二重リース,二重売買であることを知りな ,合計633万9991円もの利益を労せずして取得している。 これでは,被告(y部長)が,甲から二重リース,二重売買という違法な取引への協力を求められ,二重リース,二重売買であることを知りながら,被告の名前だけ貸してそれに協力し,その報酬として,被告は甲から高額の利益を取得したのではないか,と疑わざるを得ない。 (2) 購入者,仕入れ先,製造元等が同一の特殊な高額物件本件リース物件は,乙製のプレハブ用パネル釘打機ライン装置という極めて特殊な機械装置であり,頻繁にリースが利用されているありふれた機械装置ではない。しかも,その売買代金は,9270万円(原告B分),1億0399万9100円(原告A分)という巨額である。 被告(y部長)は,この特殊な高額物件について,わずか2か月余りの間に,2回にもわたって丙から仕入れて,原告B,原告Aに売却したのである。このように,本件釘打機が極めて特殊な機械装置であり,しかもその購入者,製造元,仕入れ先,引渡場所がいずれも同一である。 通常であれば,少なくとも2回目の売買契約(原告Aとの間の本件売買契約1)の時点で,「あ!,この売買物件(本件釘打機)は,先に原告Bに売却した物件(本件釘打機)と同一物ではないか!。」と気付く筈である。 ところが,被告(y部長)は,不思議なことに,甲が破産宣告を受け,原告らから報告を受けるまで,本件売買契約1・2の対象物が同一物であることに気付かなかったという。被告(y部長)の弁解どおりだとすると,誠に不可解な話しである。 (3) ほぼ同一内容の見積書の作成被告(y部長)は,平成6年7月20日頃,原告Bに対する本件釘打機の見積書(甲21,別紙(1))を作成してから,わずか3か月弱後の同年10月1 (3) ほぼ同一内容の見積書の作成被告(y部長)は,平成6年7月20日頃,原告Bに対する本件釘打機の見積書(甲21,別紙(1))を作成してから,わずか3か月弱後の同年10月10日頃にも,原告Aに対する見積書(甲3,別紙(2))を作成している(証人y)が,前記各見積書の記載内容は,別紙(1)(2)を比較検討すれば明らかなように,ほぼ同一のものとなっている。 このように,被告(y部長)は,わずか3か月弱の短期間内に,ほぼ同一内容の見積書を2回にわたり作成しており,このことは,被告(y部長)が,本件売買契約1・2の目的物(すなわち,本件釘打機)が同一物であることを知りながら,本件売買契約1・2を締結し,上記各見積書を作成したことを窺わせる有力な間接事実と評価できる。 2 詐欺の立証の不十分(1) 客観的な証拠不足しかし,被告(y部長)が,本件売買契約1・2の締結当時,本件売買契約1・2の対象物が同一物(同じ本件釘打機)であり,本件売買契約1・2は二重譲渡であることを知っていたとすると,被告(y部長)は,甲の担当者と共謀の上,高額詐欺という重大犯罪を敢行していたことになる。 ところで,被告は,平成6年当時も現在も,年間売上高が100億円から200億円で,従業員が130人から150人も擁する中堅企業であり,y部長は,平成6年当時も現在も,被告会社のナンバー3の地位にある人物である(証人y)。 確かに,前記1で検討したように,被告(y部長)が詐欺の共犯者である疑いがあることは間違いない。しかし,上記のような信用のある企業のトップクラスの地位にある人物(y部長)が,売買対象物が違法な二重譲渡であることを知りながら,本件売買契約1・2を締結し,高額詐欺という重大犯罪を敢行した いない。しかし,上記のような信用のある企業のトップクラスの地位にある人物(y部長)が,売買対象物が違法な二重譲渡であることを知りながら,本件売買契約1・2を締結し,高額詐欺という重大犯罪を敢行したと認めるには,前記1で検討した事実だけでは,いま一つ客観的な証拠不足の感が否めない。 (2) 多数の同種取引による注意の散漫ア y部長の証言等y部長は,次のとおり証言し,陳述(乙22,23)している。 (ア) y部長が,平成6年正月,甲を訪ねた際に,甲の社長から,「今年は,西紀工場を完成させ,多数の工場機械をリースで購入する。その際には,被告にも取引の中に入ってもらい,儲けてもらうつもりである。」と言われた。 (イ) 本件売買契約1・2もその一環である。被告(y部長)は,本件売買契約1・2以外にも,次の各取引に名前だけ加わり,労せずして多額の利益を得ている。 a 被告は,平成6年4月20日締めで,丙から低圧塗装ライン等を2470万5900円で仕入れ,それを原告Bに2547万円で売却した(乙13の1)。 b 被告は,平成6年4月20日締めで,丙から門型値クレーンを841万2810円で仕入れ,それを原告Bに867万3000円で売却した(乙13の2)。 c 被告は,平成6年4月20日締めで,丙から床パネル製作機を2877万9900円で仕入れ,それを原告Bに2967万円で売却した(乙13の3)。 d 被告は,平成6年5月20日締めで,丙からシャープカッター外を2539万4600円で仕入れ,それを原告Bに2618万円で売却した(乙14の1)。 e 被告は,平成6年5月20日締めで,丙から溶接装置を3395 めで,丙からシャープカッター外を2539万4600円で仕入れ,それを原告Bに2618万円で売却した(乙14の1)。 e 被告は,平成6年5月20日締めで,丙から溶接装置を3395万円で仕入れ,それを原告Bに3500万円で売却した(乙14の2)。 f 被告は,平成6年6月10日締めで,丙からフォークリフトを706万1600円で仕入れ,それを原告Bに728万円で売却した(乙14の3)。 g 被告は,平成6年6月10日締めで,丙から自動溝突き機を358万9000円で仕入れ,それを戊に370万円で売却した(乙15の1)。 h 被告は,平成6年6月10日締めで,丙からロータリーバンドリーを365万6900円で仕入れ,それを戊に377万円で売却した(乙15の2)。 i 被告は,平成6年7月18日締めで,丙から土台成型機外を4850万円で仕入れ,それを戊に5000万円で売却した(乙15の3)。 イ bの陳述b(原告Bの担当者)は,下記のとおり陳述している(甲27)。 記甲の社長は,平成6年4月,原告B(担当者,b)に対し,次の(ア)のとおり申し入れ,次の(イ)のとおり述べていた。 (ア) 本件釘打機の仕入れ先を,乙から被告に変更してほしい。 (イ) 被告は,建築資材の取引では,神戸を中心とした地域で有力な業者である。甲としては,被告をリース物件の取引に入れることで利潤を得させ,これをきっかけにして,被告を通じて甲の販路を拡大したい。 ウまとめ前記ア(y部長の証言等),イ(bの陳述)によると,次の(ア)の事実が認められ,次の ることで利潤を得させ,これをきっかけにして,被告を通じて甲の販路を拡大したい。 ウまとめ前記ア(y部長の証言等),イ(bの陳述)によると,次の(ア)の事実が認められ,次の(イ)のように考えることもできる。 (ア) 被告(y部長)は,平成6年当時,甲の社長から誘いを受け,甲の西紀工場に備え付ける工場機械のリース取引に被告にも入ってもらい,儲けてもらうと言われて,それを承諾した。その結果,被告は,本件売買契約1・2以外にも,丙とリース会社との多数の取引に名前だけ加わり,多額の利益をあげている。 (イ) そして,被告(y部長)は,平成6年当時,丙とリース会社との多数の取引に名前だけ加わっているので,各取引についての注意,関心が散漫となり,本件売買契約1・2の対象物が同一(本件釘打機)であることに気づかなかったとしても,必ずしも不自然,不合理なことではない。 (3) まとめ以上の(1)(客観的な証拠不足),(2)(多数の同種取引による注意散漫)の認定判断を総合すると,被告(y部長)には,本件売買契約1・2の対象物が同一物(本件釘打機)であること,すなわち,本件売買契約1・2が二重譲渡であることを予め知っており,被告(y部長)には詐欺の故意があったと認めるには,未だ立証が不十分であるといわざるを得ない。 3 小括以上の次第で,被告の詐欺が認められないので,原告ら主張の不当利得返還請求(請求原因(1)),同不法行為(請求原因(2))のうちの故意によるものは,その余について判断するまでもなく理由がない。 第4 被告の過失責任の検討 1 二重売買と不法行為責任,過失相殺売主が二人の買主に同一物件を二重に売買したところ,二重売買により後の買主が損害を被った場合 るまでもなく理由がない。 第4 被告の過失責任の検討 1 二重売買と不法行為責任,過失相殺売主が二人の買主に同一物件を二重に売買したところ,二重売買により後の買主が損害を被った場合,売主が二重売買をしたことに故意はないが過失がある場合には,売主は後の買主に対し,不法行為による損害賠償責任がある。 そして,後の買主が,売買契約当時,二重売買であることに気付かず,気付かなかったことに過失がある場合には,後の買主の売主に対する損害賠償額の認定に当たり,過失相殺が問題となる。 そこで,被告が原告Aに本件釘打機を二重譲渡したことについて,被告に過失があったか否か,原告Aが二重譲渡を見過ごしたことに過失があり,過失相殺をすべきかについて,以下検討する。 2 被告の過失責任の検討次の(1)(2)(3)の事実に照らせば,被告が原告Aとの間で本件売買契約1を締結し,同原告に対し本件釘打機を二重譲渡したことについて,被告には不法行為上の過失があったことは明らかである。 (1) 労せずに巨額の利益を取得(前記第3の1(1))(2) 購入者,仕入れ先,製造元等が同一の特殊な高額物件(前記第3の1(2))(3) ほぼ同一内容の見積書の作成(前記第3の1(3)) 3 過失相殺の検討(1) 本件リース取引の実情からの検討ア事実の認定証拠(甲2,甲9,甲19,甲20,甲26,甲27)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (ア) 一般的なリース取引の実情本件のような機械のリース取引においては,リース会社がリース物件の納入の場に立ち会うことは殆どない。 すなわち,リース物件は,通常,売主(本件では被告) の実情本件のような機械のリース取引においては,リース会社がリース物件の納入の場に立ち会うことは殆どない。 すなわち,リース物件は,通常,売主(本件では被告)から物件使用者(リース契約の賃借人,本件では甲)に直接納入され,使用者において機械の試運転や調整を行い,リース物件に問題がないと判った段階で,使用者からリース会社に「リース物件の検収をされたい」旨の連絡を行う。 しかる後に,リース会社の担当者がリース物件の納入先に赴いて,同物件の写真を撮ったり,同物件にリース会社の所有権を示すシールを貼ったりして,同物件の検収を行うものである。 (イ) 本件リース取引の実情原告らは,本件リース取引においても,次のとおり,甲から「リース物件の検収をされたい」旨の連絡を受け,本件釘打機の検収を行っている。 a 原告Bの場合甲は,平成6年7月20日,原告Bに対し,甲の西紀工場で本件釘打機の引渡しを受けたと報告し,本件釘打機の物件受領書(甲9)を差し入れた。 そこで,原告Bの担当社員(b)は,平成6年7月26日,甲の西紀工場まで出向き,本件釘打機が同工場に納入されていることを確認し,本件釘打機の所有権が原告Bにあることを示すシールを本件釘打機に貼り付けたうえ,本件釘打機の写真(甲20)を撮影した。 b 原告Aの場合甲は,平成6年9月下旬,原告Aに対し,甲の西紀工場で本件釘打機の引渡しを受けたと報告し,本件釘打機の物件受領書(甲2)を差し入れた。 そこで,原告Aの担当社員(a)は,平成6年10月1日,甲の西紀工場まで出向き,本件釘打機が同工場に納入されていることを確認した。 件釘打機の物件受領書(甲2)を差し入れた。 そこで,原告Aの担当社員(a)は,平成6年10月1日,甲の西紀工場まで出向き,本件釘打機が同工場に納入されていることを確認した。 ところで,原告Aが本件釘打機に貼り付けていたシールは,同日までに,甲によって剥がされていた。 そのため,aは,本件釘打機が原告B所有のリース物件であることに気付かず,本件釘打機の所有権が原告Aにあることを示すシールを本件釘打機に貼り付けたうえ,本件釘打機の写真(甲19)を撮影した。 イ検討(ア) 前記ア(ア)の認定事実によると,リース会社は,リース物件に瑕疵がないことが使用者の検査等により判明した後に,その旨の連絡を受けてからリース物件の検収をすれば足りるものであり,わざわざリース物件納入の現場に立ち会うまでの注意義務はない。 (イ) したがって,原告Aとしても,本件釘打機が誰から甲に引き渡されたかについては,知りうる立場にはない。原告Aは,甲から,本件釘打機の引渡しを受けたとの報告を受けたことから,現地まで出向いてそれを確認した上で,その報告をそのまま信頼していたにすぎない(前記ア(イ)b)。 しかも,原告Aの検収時には,原告Bが本件釘打機に貼付してたシールが剥がされており,本件釘打機が原告B所有のリース物件であることを知り得なかったものである(前記ア(イ)b)。 (ウ) 以上によると,原告Aが,被告に対し,本件釘打機が甲に引き渡される日時と検収日を予告し,被告も引渡しの場に立ち会って,どのような釘打機が納入されるかチェックする機会を与えなかったとしても,この点につき,原告Aには,過失相殺の対象となるような過失はない。 日を予告し,被告も引渡しの場に立ち会って,どのような釘打機が納入されるかチェックする機会を与えなかったとしても,この点につき,原告Aには,過失相殺の対象となるような過失はない。 また,原告Aが,本件リース契約1,本件売買契約1を締結した当時,本件リース契約1,本訴売買契約1が二重リース,二重売買であることを知らなかったことについても,過失相殺の対象となるような過失はない。 (2) 物件受領書の送付についてア被告は,原告Aが被告に物件受領書(甲2)の写しを送付したことから,被告が原告Aとの間の売買取引に売主として関与したのであり,原告Aが被告に物件受領書(甲2)の写しを送付したことについて,過失があったと主張する。 イしかし,リース会社は,リース物件の売主に対し,顧客(リース物件の賃借人)から受領した物件受領書の写しを交付することはない。物件受領書はリース契約上の書類であるから,リース会社は,何の理由もなく,第三者であるリース物件の売主に対し,物件受領書を交付することはないからである(甲26,甲27)。 本件でも,原告Aが被告に物件受領書(甲2)の写しを送付した事実は認められない。 ウしたがって,原告Aが被告に物件受領書(甲2)の写しを送付したことを前提に,原告Aにも過失があるという被告の前記アの主張も採用できない。 (3) まとめ以上によると,Aには,本件売買契約1に関して,過失相殺の対象となるのような過失があったものとは認められない。 第5 原告らの損害額以上の第1ないし第4の認定判断によると,次の事実が認められる。 1 原告Aは,被告の過失による不法行為により,本件売買契約1を締結させられ,被告に対し,本件釘打機の売買代金を らの損害額以上の第1ないし第4の認定判断によると,次の事実が認められる。 1 原告Aは,被告の過失による不法行為により,本件売買契約1を締結させられ,被告に対し,本件釘打機の売買代金を支払った。そして,原告Aは,甲がリース料の支払途中で破産宣告を受けたことにより,リース料の一部しか回収することができず,損害を被った。 2 それにより原告Aが被った損害額は,本件釘打機の売買代金(本体価格)1億0097万円から回収済リース料5855万3800円を控除した残額4241万6200円である。 第6 消滅時効の検討 1 売買契約上の債権の消滅時効について(1) 被告は,「原告Aの本件売買契約1上の被告に対する債権は,最後の取引が行われた平成6年11月8日から本件訴えの提起があった平成12年12月2日までに5年を経過している。したがって,原告Aが被告に対し本件売買契約1に関して何を主張しても,同原告の被告に対する債権(これは商事債権である。)は時効で消滅している。」と主張する。 (2) しかし,本件における原告Aの請求は,売買契約上の被告に対する債権ではなく,被告が故意又は過失により本件釘打機を二重譲渡したことが不法行為に当たることから発生する損害賠償請求権に基づくものである。 (3) したがって,原告Aが本訴で請求している損害賠償請求権が,売買契約上の債権の消滅時効に服するものではなく,被告の前記(1)の主張は理由がない。 2 不法行為による損害賠償債権の消滅時効について(1) 被告は,「不法行為による損害賠償債権は3年で消滅時効が完成する。被告の平成6年4月20日から11月8日までの取引のうち,どれが二重売りと主張されても,原告Aの被告に対する不法行為による損害賠償債権は,時効により消滅した。」と 償債権は3年で消滅時効が完成する。被告の平成6年4月20日から11月8日までの取引のうち,どれが二重売りと主張されても,原告Aの被告に対する不法行為による損害賠償債権は,時効により消滅した。」と主張する。 (2) しかし,原告Aが二重リース,二重売買による損害の発生及び加害者を知ったのは,甲の破産宣告後である平成10年9月ころであり(前記第2の4(1)イ),同原告は,その時点で初めて被告の不法行為による損害の発生を知ったのである。 (3) そうすると,民法724条により,被告の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,平成10年9月ころであり,原告Aは,それから消滅時効期間の3年以内である平成13年8月7日に,本件不法行為による損害賠償請求を追加して求める旨の訴え変更申立をしているのであるから,同原告の被告に対する不法行為による損害賠償債権は,未だ消滅時効にかかっていない。 第7 結論 1 以上によると,原告Aの本訴請求は,下記の限度で理由があるので,これを認容し,その余は理由がないので棄却することとし,原告Bの本訴請求は,いずれも理由がないので棄却する。 記不法行為による損害賠償金4241万6200円,及びこれに対する平成12年7月15日(不法行為よりも後の日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金 2 よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判官紙浦健二

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