平成15年6月27日判決言渡平成14年(ワ)第16458号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成15年5月23日判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,金2000万円及びこれに対する平成12年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告B及び同Cに対し,それぞれ金800万円及びこれに対する平成12年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告Aの夫であり,原告B及び同Cの父である亡Dが被告が設置する被告病院において入院加療中に死亡したことについて,被告病院担当医師に過失があったとして,使用者責任に基づき,原告らが,被告に対し,慰謝料としての損害賠償及び遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 争いのない事実等・ア原告Aは,亡Dの妻であり,原告B及び同Cは,亡Dの子である(原告A,弁論の全趣旨)。 イ被告は,被告病院を設置しており,E及びFは,亡Dの入通院加療中,被告病院に勤務していた医師であり,G(旧姓H)は,被告病院に勤務していた看護師である(争いのない事実,弁論の全趣旨)。 ・別紙診療経過一覧表中「診療経過」及び「検査・処置」欄のうち,原告が「原告の反論」欄で指摘する事項以外は争いがなく,その争いのない事実及び以下の証拠によれば,亡Dが死亡するに至った経過について,以下のとおり認められる。 ア亡Dは,平成5年に,I病院において大腸がんの手術を受け,平成11年9月9日,被告病院において進行性肝門部胆管がんにより肝門部肝臓切除を伴う胆管切除術を受けた。 イ亡Dは,平成12年4月初旬ころから,黄疸が出現したため,同月13日,被告病院に入院し,胆管がんの再 月9日,被告病院において進行性肝門部胆管がんにより肝門部肝臓切除を伴う胆管切除術を受けた。 イ亡Dは,平成12年4月初旬ころから,黄疸が出現したため,同月13日,被告病院に入院し,胆管がんの再発が疑われ,肝門部の胆管閉塞の改善を目的に胆管にステントを挿入する手術を受けた。 ウ亡Dは,同年8月8日,吐血したため,被告病院に入院した。被告病院において緊急内視鏡検査を行ったところ,胃角部前壁に拍動性の出血を伴う潰瘍を認めたため,内視鏡下で止血措置を行った。亡Dに対する内視鏡検査,CT検査等により,胃下部及び十二指腸上部に狭窄が認められ,十二指腸へのがんの浸潤が疑われ,がん性腹膜炎状態と診断された。 エ亡Dは,その後,被告病院において,輸血等の治療を受け,体温も安定し,再出血も認められなかったため,同年9月1日,自宅で静養することが望ましいと判断され,被告病院を退院した。 オ亡Dは,同年10月3日10時30分,吐血を訴えて被告病院を受診し入院となり,被告病院において,亡Dに対し,同日11時12分に胃管を挿入したところ,約900ミリリットルの黒色の胃内容物の排泄があり,上部内視鏡検査の結果では胃内に黒灰色の貯留液が大量に存していたが,明らかな新鮮出血は認められなかった。 カ亡Dに対し,同日15時から酸素投与と輸血を開始したが,輸血の滴下不良のため,同日18時30分ころ加圧パックを装着し,同日19時ころ,針をハッピー20Gに変更し,左前腕から右前腕にルートを変更した(乙A1,証人E,同G)。 キ同日19時50分ころ,亡Dの返答が鈍く,低血糖が認められたため,同日20時10分ころ,50パーセントブドウ糖液を静脈内注入した。さらに,同日20時30分,低血糖のため,50パーセントブドウ糖液を静脈内注入するが,前腕が腫脹し滴下が不良であり,同 められたため,同日20時10分ころ,50パーセントブドウ糖液を静脈内注入した。さらに,同日20時30分,低血糖のため,50パーセントブドウ糖液を静脈内注入するが,前腕が腫脹し滴下が不良であり,同日20時40分ころから呼名反応が鈍くなり,同日21時45分ころ,呼名に対し徐々に反応がみられてきたが,同日22時20分,呼吸停止が起こり,気管内挿管を行ったが心停止となり,心臓マッサージを行うも回復せず,同月4日0時28分,死亡した。 2 争点・被告病院に,平成12年4月13日,亡Dに発生した胆管がんに対し,化学療法を行わなかった過失があるか。 ・被告病院に,平成12年10月3日の入院時に,亡Dの著しい肝障害及び肝不全に対し,適切な治療を行わなかった過失があるか。 ・被告病院に,亡Dに対する輸血の滴下不良を放置した過失があるか。 ・被告病院の過失と亡Dの死亡との因果関係・損害額(判断の必要がなかった。) 3 争点に対する当事者の主張・被告病院に,平成12年4月13日,亡Dに発生した胆管がんに対し,化学療法を行わなかった過失があるか。 (原告らの主張)亡Dは,平成12年4月13日,腫瘍マーカーの著明な上昇が認められ,胆管がんの再発が疑われたのであるから,被告病院は,亡Dに対し,この時点で化学療法等の積極的な治療を行うべきであった。しかるに,被告病院は,亡Dに対し,何らの積極的な治療を行わなかったのであり,これは,被告病院の過失である。 (被告の主張)争う。 ・被告病院に,平成12年10月3日の入院時に,亡Dの著しい肝障害及び肝不全に対し,適切な治療を行わなかった過失があるか。 (原告らの主張)ア平成12年10月3日の入院時の亡Dに対する血液検査によれば,血清アルブミン値の減少,ビリルビン値の上昇,トランスアミナーゼ酵素の増 し,適切な治療を行わなかった過失があるか。 (原告らの主張)ア平成12年10月3日の入院時の亡Dに対する血液検査によれば,血清アルブミン値の減少,ビリルビン値の上昇,トランスアミナーゼ酵素の増加,乳酸脱水素酵素の増加,コリンエステラーゼ値の減少及び血糖値の減少がみられ,亡Dには,著しい肝障害及び肝不全の徴候が認められた。 イ被告病院は,亡Dの肝障害及び肝不全に対し,適切な治療を行うべきであったが,被告病院は,亡Dの状態をステーブル(安定した状態)と判断し,積極的な治療を何ら行わずに,漫然と放置した。これは,被告病院の過失である。 (被告の主張)争う。 ・被告病院に,亡Dに対する輸血の滴下不良を放置した過失があるか。 (原告らの主張)ア亡Dは,平成12年10月3日の朝,被告病院を受診して,胃内に出血の疑いが認められ,再出血や急激な病状の変化もあり得ると判断された。 そのため,被告病院では,亡Dに対し,同日14時30分ころから輸血を開始したが,針が細すぎて滴下不良及び輸血不能の状態であった。原告Aは,輸血ができていないこと及び亡Dの様子がおかしいことを再三看護師に訴えたが,被告病院は,輸血の滴下不良を6時間ないし7時間放置し適切な処置を行わず,また,担当医師は,亡Dが呼吸停止状態になり,手遅れになるまで診察に来ることすらなかった。 イ被告病院は,亡Dには再出血や急激な症状の変化もあり得ると判断しておきながら,輸血の滴下不良及び輸血不能を6時間ないし7時間にわたり放置していた。 これは被告病院の過失である。 (被告の主張)ア亡Dは,平成12年10月3日の朝,被告病院を受診した際,上部消化管出血が疑われたが,明らかな新鮮出血は認められなかった。抗がん剤治療を行うことは全身状態から困難であり,再出血の可能性もあり,がんそのもの ,平成12年10月3日の朝,被告病院を受診した際,上部消化管出血が疑われたが,明らかな新鮮出血は認められなかった。抗がん剤治療を行うことは全身状態から困難であり,再出血の可能性もあり,がんそのものからの出血であるため止血は困難であることを原告Aに説明の上,止血剤及び輸血投与による保存的治療を選択し,経過観察とした。 イ被告病院は,亡Dに対し,同日15時ころから輸血を開始し,同日18時30分ころ,滴下不良のためルートの差し替えと針の変更を行い,同日19時50分ころには,滴下を点検し手の向きを変え,ブドウ糖の輸液の滴下が良好であることを確認し,同日20時30分ころから滴下が不良となったため,同日20時50分ころ,ルートを差し替え,同日21時20分ころには,中心静脈カテーテルのルートの確保を行ったが,右鼠径部及び鎖骨下とも針が入らず,左鼠径部からのルートによりさらに輸液の投与を行うなどした。 ウこのように,被告病院は,その都度,輸血等が適切に行われるように処置を行っており,輸血の滴下不良を放置した事実はない。滴下が時々不良になったのは,亡Dの血管の状態が極めて悪かったためである。 また,輸血量についても,亡Dに対しては,同日の輸血開始から死亡時までに合計600ミリリットルの輸血が行われており,輸血が不能であったわけでもない。 エ以上のとおり,被告病院には,輸血の滴下不良及び輸血不能を放置した過失はない。 ・被告病院の過失と亡Dの死亡との因果関係(原告らの主張)ア輸血は,急激な病状の悪化も予測できた亡Dにおける出血に対処するために行われたにもかかわらず,6時間ないし7時間も滴下不良及び輸血不能であったのだから,これが亡Dが死亡するに至った最大の原因である。 イ亡Dに対する輸血が正常に行われており,また,被告病院医師において,亡D たにもかかわらず,6時間ないし7時間も滴下不良及び輸血不能であったのだから,これが亡Dが死亡するに至った最大の原因である。 イ亡Dに対する輸血が正常に行われており,また,被告病院医師において,亡Dの病状に対し,前記・・(原告らの主張)記載の適切な治療が行われていれば,平成12年10月4日0時28分の時点で亡Dが死亡に至ることはなかった。 (被告の主張)ア亡Dの来院時のヘモグロビンの数値は,7.9であり,低値であるが,同年9月12日の外来時の数値である8.0と比較しても悪化はしていなかった。また,同年10月3日の上部消化管内視鏡検査では胃内に明らかな出血は認められていなかった。 イ以上の事実からすれば,亡Dの死因が輸血の滴下不良,輸血不能によるものだとは認められない。亡Dは,積極的な治療を行うことができない肝門部胆管がん末期の進行した状態にあり,亡Dの死亡は,輸血の滴下不良によるものではなく,末期がんのやむを得ない進行によるものである。 ・損害額(原告らの主張)ア患者は,最高水準の治療を受けられるという期待とこれでだめなら仕方がないという諦めを持って大学病院を受診するのであり,その期待を裏切って十分な治療を行わず,亡Dを放置した被告病院は,かかる患者の期待権を侵害したものであり,その損害は,2000万円を下らない。 イ被告病院は,亡Dに対し,何らの治療も施すことなく,死に至らしめたのは不法行為であり,その損害はやはり2000万円を下らない。 ウ原告Aは,亡Dの妻であり,原告B及び同Cは,いずれも亡Dの子であるが,亡Dには別に認知した子が一人いるため,亡Dの前記アイの損害のうち,原告Aが2000万円を,原告B及び同Cが800万円ずつを相続し請求する。 (被告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点・(被告病院に,平 子が一人いるため,亡Dの前記アイの損害のうち,原告Aが2000万円を,原告B及び同Cが800万円ずつを相続し請求する。 (被告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点・(被告病院に,平成12年4月13日,亡Dに発生した胆管がんに対し,化学療法を行わなかった過失があるか。)について・原告らは,平成12年4月13日,亡Dには腫瘍マーカーの著明な上昇が認められ,胆管がんの再発が疑われたのであるから,被告病院は,亡Dに対し,化学療法等の積極的な治療を行うべきであったと主張する。 前記第2,1・アイの事実及び証拠(乙A4,5,証人E)によれば,亡Dは,平成11年9月9日,進行性肝門部胆管がんにより肝門部肝臓切除を伴う胆管切除術を受けたこと,病理検査によればがんの進行度はステージ3で,5年生存率は15ないし20パーセント程度であると考えられていたこと,亡Dは,平成12年4月初旬ころから,黄疸が出現したため,同月13日,被告病院に入院したこと,亡Dの腫瘍マーカーは3540と著明な上昇を認め,胆管がんの再発が疑われたこと,被告病院において,亡Dの病状等から判断して亡Dの予後は厳しく1年以内に死亡するとも予想されたが,同病院外科から再手術は困難であるとの見解が示されたため,早期に亡Dを退院させ自宅での生活時間を長くさせたいとの考えの下,肝門部の胆管閉塞の改善を目的に胆管にステントを挿入する手術を行ったことが認められる。 ・証拠(甲B5)によれば,J医師(専門小児科)は,被告病院が亡Dに対し腫瘍マーカーの著明な上昇を認め,がんの再発を認知した段階で,積極的に化学療法を試みるべきであったという見解を有していることが認められる。 ・一方,証拠(乙A7,証人E)によれば,胆管がんには化学療法が効きにくく,その効果についてはエビデンス した段階で,積極的に化学療法を試みるべきであったという見解を有していることが認められる。 ・一方,証拠(乙A7,証人E)によれば,胆管がんには化学療法が効きにくく,その効果についてはエビデンスが得られていない状況にあること,化学療法によって副作用も生じ,手術後のライフクオリティの維持に支障をもたらす場合もあること,亡Dの手術後の全身状態の改善が十分ではないことなどを考慮し,被告病院においては,化学療法を行うことなく,肝門部の胆管閉塞の改善を目的に胆管にステントを挿入する手術を行って,亡Dの早期の退院を図ったことが認められる。 ・本件全証拠によるも,胆管がんの手術後において,化学療法を行うことが有効であり,あるいは,必須であると認めるに足りる証拠はなく,そうすると,亡Dに対し,平成12年4月13日の時点で化学療法を行うか否かは,医師の裁量に属する事項であると考えられ,被告病院において,亡Dに対し,化学療法を行わなかったことが過失であると認めることはできない。 2 争点・(被告病院に,平成12年10月3日の入院時に,亡Dの著しい肝障害及び肝不全に対し,適切な治療を行わなかった過失があるか。)について・原告らは,平成12年10月3日の入院時の亡Dに対する血液検査によれば,血清アルブミン値の減少,ビリルビン値の上昇,トランスアミナーゼ酵素の増加,乳酸脱水素酵素の増加,コリンエステラーゼ値の減少及び血糖値の減少がみられ,亡Dには,著しい肝障害及び肝不全の徴候が認められたのに,被告病院は,積極的な治療を何ら行わずに,漫然と放置したと主張する。 ・証拠(甲B5,乙A1,7,証人E)によれば,平成12年10月3日の入院時の亡Dに対する血液検査によれば,亡Dの肝機能の悪化を示す血清アルブミン値の減少,ビリルビン値の上昇,トランスアミナーゼ酵 ・証拠(甲B5,乙A1,7,証人E)によれば,平成12年10月3日の入院時の亡Dに対する血液検査によれば,亡Dの肝機能の悪化を示す血清アルブミン値の減少,ビリルビン値の上昇,トランスアミナーゼ酵素の増加,乳酸脱水素酵素の増加,コリンエステラーゼ値の減少がみられたとともに,血糖値が58と低下していたこと,肝機能の悪化は,亡Dの肝門部に存在していたがんが再発したことによるものであって,これに対する根本的な治療を行うことはできないため,被告病院は,亡Dに対し,入院後まもなく亡Dに対し肝臓庇護剤である強力ネオミノファーゲンC及びタチオンを投与したこと,また,低血糖に対する治療としては,ブドウ糖入り輸液を点滴していたことが認められる。 ・以上によれば,被告病院において,亡Dの肝障害及び肝不全の徴候並びに低血糖に対する積極的な治療を何ら行わずに,漫然と放置したとの事実を認めることができず,原告らの主張は認められない。 3 争点・(被告病院に,亡Dに対する輸血の滴下不良を放置した過失があるか。)について・原告らは,被告病院において,亡Dに対し,平成12年10月3日14時30分ころから輸血を開始したが,滴下不良及び輸血不能の状態のまま6時間ないし7時間にわたり放置して適切な処置を行わなかったと主張する。 ・前記第2,1・カキの事実及び証拠(乙A1,5,6,証人E,同G)によれば,被告病院は,亡Dに対し,同日15時ころから輸血を開始したが,同日18時まで140ミリリットル,同日18時30分まで170ミリリットル,同日18時50分まで200ミリリットル,同日22時まで300ミリリットル(いずれも累計量)の輸血が行われたこと,同日18時30分ころ,滴下不良になったため,加圧パックを装着し,同日19時ころには,針を太い針であるハッピー20Gに変 ル,同日22時まで300ミリリットル(いずれも累計量)の輸血が行われたこと,同日18時30分ころ,滴下不良になったため,加圧パックを装着し,同日19時ころには,針を太い針であるハッピー20Gに変更し,ルートも左前腕から右前腕に変更したこと,同日20時30分ころ亡Dの前腕が腫脹し滴下が不良になったことが認められる。 ・また,証拠(甲B3,乙A1,5,証人E,同G)によれば,亡Dは,同日10時30分,被告病院を受診したとき,胃出血が疑われ,入院後である同日13時30分には,上部内視鏡検査により胃内に黒灰色の貯留液が大量に存しており,がんからの出血と認められたため,被告病院は,亡Dに対し,輸血を行ったが,亡Dには上部内視鏡検査によるも明らかな新鮮出血は認められず,また,受診直後の亡Dに対する血液検査の結果ヘモグロビンの数値は7.9であって,同年9月12日の外来時の検査結果の数値8とほぼ変わりがなく,貧血の著明な進行があるとも考えられなかったから,亡Dに対し短時間に大量の輸血を行う必要は認められず,同年10月3日の入院時の輸血も300ミリリットルを5時間程度かけて輸血をするという予定で実施されたものであったことが認められる。 ・以上によれば,亡Dに対する輸血は,同日15時ころ開始され,同日18時30分ころまでは170ミリリットルが輸血され,同時刻ころ,滴下不良になったため,加圧パックを装着し,さらには,同日19時ころには滴下不良を解消するために,針や輸血ルートを変更し,同日22時までに合計300ミリリットルの輸血が行われたことが認められるのであって,被告病院において,亡Dを輸血の滴下不良及び輸血不能の状態のまま6時間ないし7時間にわたり放置したという原告らの主張する事実は認められないばかりか,被告病院は,滴下が不良になったときはそれ あって,被告病院において,亡Dを輸血の滴下不良及び輸血不能の状態のまま6時間ないし7時間にわたり放置したという原告らの主張する事実は認められないばかりか,被告病院は,滴下が不良になったときはそれを解消する措置をとっていたと認めることができる。また,亡Dに対し,同日22時までに300ミリリットルの輸血を行った措置が不十分であったとすることもできない。 ・よって,原告らの主張は認められない。 4 争点・(被告病院の過失と亡Dの死亡との因果関係)について・原告らは,6時間ないし7時間の輸血の滴下不良及び輸血不能が亡Dが死亡するに至った最大の原因であると主張する。 ・しかしながら,本件全証拠によるも,亡Dが死亡するに至ったのは,亡Dに対する輸血の滴下不良及び輸血不能が原因であると認めることはできない。 かえって,前記3・のとおり,亡Dには,入院後に行った上部内視鏡検査によるも明らかな新鮮出血は認められず,また,受診直後の亡Dに対する血液検査の結果ヘモグロビンの数値は7.9であって,同年9月12日の外来時の検査結果の数値8とほぼ変わりがなく,貧血の著明な進行があったとは認められないこと,本件全証拠によるも,亡Dがその後消化管出血を起こしたとは認められないことなどからすると,亡Dの死亡の原因は,輸血の滴下不良及び輸血不能ではないと認められ,そして,証拠(甲B3ないし5,乙A1,5,証人E)によれば,亡Dは,胆管がんとがん性腹膜炎によって肝不全になり,血圧の急激な低下,呼吸不全等の全身状態の悪化によって死亡したと認められる。 ・よって,原告らの主張は認められない。 5 以上によれば,原告らの本訴請求は,いずれの観点からも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官前田順司裁判官 張は認められない。 5 以上によれば,原告らの本訴請求は,いずれの観点からも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官前田順司裁判官浅井憲裁判官熊代雅音・
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