主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人が控訴人に対して平成12年6月26日付けでした公文書非開示決定(文学第183号)は,これを取り消す。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要本件は,控訴人が平成12年6月16日栃木県情報公開条例(平成11年栃木県条例第32号。平成13年3月改正(同年10月1日施行)前のもの。以下「本件条例」という。)5条に基づき,被控訴人に対し,平成11年10月1日から同12年3月31日までに支出した栃木県警察本部総務課職員の出張旅費と食糧費に関する一切の資料(復命書も含む)の開示を請求したところ,被控訴人が開示請求に係る公文書は保有していないという理由で平成12年6月26日付けで公文書非開示決定をしたので,控訴人が,その取消しを求める事件である。 1 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない。)次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「1 争いのない事実等」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁2行目「そして,」の次に以下のとおり加える。 「本件条例2条1項は「この条例において,「実施機関」とは,知事(被控訴人),地方公営企業の管理者,教育委員会,選挙管理委員会,人事委員会,監査委員,地方労働委員会,収用委員会及び内水面漁場管理委員会をいう。」と定めている。また,」(2) 同4頁3行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「 なお,本件文書のうち食糧費に関する予算執行伺,請求書及び支出負担行為兼支出 及び内水面漁場管理委員会をいう。」と定めている。また,」(2) 同4頁3行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「 なお,本件文書のうち食糧費に関する予算執行伺,請求書及び支出負担行為兼支出決議書は,総務課において平成11年10月1日から同12年3月31日までの間食糧費を支出していないので存在しない。」(3) 同頁9行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「(6) 控訴人が被控訴人に対し,平成12年8月25日付けで,本件決定に対する異議の申立てをしたので,被控訴人は,本件条例19条に基づいて栃木県情報公開審査会に諮問したところ,被控訴人は,栃木県情報公開審査会に対し,本件文書については平成11年10月1日から同12年3月31日までに支出した栃木県警察本部総務課職員の,出張旅費に関する,①旅費受取委任状,②旅行命令書,③復命書,④旅費請求書,⑤支出負担行為兼支出決議書及び⑥旅費口座振替通知書並びに食糧費に関する ⑦予算執行伺,⑧請求書及び⑨支出負担行為兼支出決議書であるが,本件文書を保有していないと主張するとともに,本件文書のうち⑦ないし⑨の文書は平成11年10月1日から同12年3月31日までの間同総務課が食糧費を支出していないため存在しないと主張した(乙7,弁論の全趣旨)。 (7) 栃木県情報公開審査会は,被控訴人に対し,平成14年3月27日付けで,本件文書の開示請求に対して当該公文書を保有していないという理由で非開示決定したことは妥当である旨の答申をした(乙7,弁論の全趣旨)。 (8) 被控訴人は,栃木県情報公開審査会の前項の答申を受けた上,平成14年3月29日付けで,控訴人の本件決定に対する平成12年8月25日付け異議の申立てを棄却する決定をした(乙8,弁論の全趣旨)。 (9) なお,平成13年3月の本件条例改正により,本件条 た上,平成14年3月29日付けで,控訴人の本件決定に対する平成12年8月25日付け異議の申立てを棄却する決定をした(乙8,弁論の全趣旨)。 (9) なお,平成13年3月の本件条例改正により,本件条例2条1項につき公安委員会及び警察本部長が実施機関に加わり,同年10月1日からその改正条例が施行された(乙7,弁論の全趣旨)。」 2 争点及び当事者の主張次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「2 争点及び当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決6頁6行目冒頭から同7頁2行目末尾までを,以下のとおり改める。 「ア(ア) 本件条例の立法目的は,住民が地方自治の主人公であるとの地方自治の本旨に則り,一方で住民に対しては特別の支障のない限り県の有している情報を開示請求する権利を認め,他方で県に対して県政に対する説明義務の履行として情報公開を義務づけたものである(本件条例1条)。そして,本件条例2条2項が規定する「保有」の用語は,情報公開の対象文書となる要件として使用されているから,「保有」の用語を狭く解釈すると情報公開の対象文書がそれだけ制限されることになるので,これは本件条例の立法目的に反することになる。 なお,本件条例の改正前の旧条例においては「管理」という用語が用いられていたところ,その立法目的には,「県民の公文書の開示を求める権利」には触れられていたが,県の説明義務は無視され,しかもそれらがよって立つ根源的な根拠が「地方自治の本旨」にあることにも目がふさがれていた(旧条例1条)。したがって,このような旧条例に比べると,本件条例の立法目的は格段に進歩しており,このように立法目的が進化するにともない「管理」が「保有」に改定された。 (イ) 本件条例において「保有」の用語が )。したがって,このような旧条例に比べると,本件条例の立法目的は格段に進歩しており,このように立法目的が進化するにともない「管理」が「保有」に改定された。 (イ) 本件条例において「保有」の用語が必要とされる理由は,仮に実施機関が保有していない文書でも「実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した」ものであれば対象文書になるとすると,一旦「作成・取得」された以上,廃棄等によって物理的に存在しない文書についても,開示要件に該当することにより抽象的には開示義務が発生してしまい,あるいは国や他の自治体への権限の委譲等によって法律的に不可能になっても開示義務だけは残るような不自然・不合理な結果が発生することになるので,このような不自然で不合理な結果を排除するために「保有」の要件が加えられたものである。 このような不合理の排除は「保有」の用語に限らず,「管理」の用語でも達成することができるが,「管理」なる用語は,一定の権限に基づいて対象物を排他的に支配するとの法律的に明確な概念が成立しているから,それに該当する文書でない限り開示対象文書にならないことになるので,住民が開示請求し得る対象文書の範囲も狭く限定されざるを得ない。 本件条例は,このような対象文書が狭くなることを嫌って立法目的が進歩したことに対応して,「管理」などの用語でなく「保有」の用語を用いたものである。したがって,「保有」の用語に与えられた,不自然・不合理な結果を排除するとの機能・役割を越えて,「保有」の概念に行政側の事務手続の便宜等の理由により開示可能な「公文書」から排除させる機能・役割をもたせることは違法である。 (ウ) 被控訴人は,「保有」の意味につき「実施機関がそれぞれに定めている文書取扱規程等の規定するところにより,公的に支配している状態にあるものをいう。」と主張し,さら をもたせることは違法である。 (ウ) 被控訴人は,「保有」の意味につき「実施機関がそれぞれに定めている文書取扱規程等の規定するところにより,公的に支配している状態にあるものをいう。」と主張し,さらに具体的には「他の機関等に同意,承認等を求めたり,その意見を聞くようなことをせず,また,他の機関等に当該文書の引渡しや提示を請求したり,これを要請するようなこともしないで,実施機関だけの意思により閲覧,写しの交付等の方法により開示の実施という事実行為を行う」ことのできる状態であると主張する。 しかし,このような解釈によれば,第1に,実施機関が直接に「所持」していない文書は開示の実施ができないことになり,第2に,実施機関が文書取扱規程を変更すれば自由に開示対象文書の範囲を操作できることになるから,住民の開示請求権の実質は容易に侵害され得ることになる。そして,このような解釈は,旧条例における「管理」よりも狭いことにならざるを得ず,立法目的が改正され,かつあえて「保有」という用語を用いた意義を没却するものというべきである。 イ(ア) 本件条例上の「保有」は,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)上の「保有」と同様に,他者の「保有」を排斥する排他的概念ではなく,複数の「保有」が重複し得る概念である。 すなわち,「保有」の定義においては,「実施機関が直接には所持していないが,法律上又は事実上何らかの支配権を失っていない場合」を「保有」概念に含むか否かの点は,本件事案を判断するに避けて通れない問題であるところ,自賠法2条3項の「保有者」とは,「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で,自己のために自動車を運行の用に供するもの」であり,具体的には,所有者・賃借権者・使用貸借権者・受任者・その他いかなる法律関係かを問わず正当なる権限に基 有者その他自動車を使用する権利を有する者で,自己のために自動車を運行の用に供するもの」であり,具体的には,所有者・賃借権者・使用貸借権者・受任者・その他いかなる法律関係かを問わず正当なる権限に基づく使用権を有する者を意味するから,一台の自動車に複数の「保有者」が存在するのが常態である。むしろ,上記規定の「保有者」概念は,社会公平の見地からみて,自動車事故における究極的な責任の主体としても最も妥当と思われる一団の人々を総称した用語として立案されたものである。このように「保有」なる語彙は,極めて広い概念を意味するものであり,そのことを当然の前提として立法に用いられている。 (イ) そして,本件条例2条2項によれば,公文書であるためには第1に「実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書」であること,第2に「当該実施機関が保有していること」の2要件を充足する必要があるところ,地方自治法138条の4が定める執行機関の多元主義から考えると,知事の権限から除外されている事務を司る委員会等を実施機関として列挙しなければ,それら委員会等に係る事務に関する文書は当然に公文書から除外されてしまうから,これら委員会等の作成する文書を開示対象とするためには,必然的にこれら委員会等を実施機関として列挙しなければならないのである。このように制度上当然に本件条例では実施機関が細分化されている。 本件条例上の被控訴人の「保有」の及ぶ範囲を地方自治法149条所定の各権限の範囲に準じて解するとしても,同法138条の4が存在するので,栃木県で取り扱われる公文書の大半が被控訴人の「保有」に属する事態にはならず,仮にそうであったとしても不当ではない。また,「公文書」たる要件は「保有」に限られるのではなく,「作成・取得」も重要な要件であるから,各実施機関が「作成・取得」し の「保有」に属する事態にはならず,仮にそうであったとしても不当ではない。また,「公文書」たる要件は「保有」に限られるのではなく,「作成・取得」も重要な要件であるから,各実施機関が「作成・取得」したため当該実施機関に対して開示請求すべき文書を,知事が開示決定できるようなことにはならない。 ウ以上により,本件条例2条2項にいう「保有」の意義は,実施機関において「管理」「所有」「占有」「所持」はもちろんのこと,何らかの法的権限が及んでいることにより法律上又は事実上文書に対する支配が可能な状態をいうと解すべきである。 このように解すれば,上記(イ)のような不自然・不合理な状態を排除できる上,対象文書の範囲を可能な限り広げることによって,本件条例の立法目的に沿うよう,地方自治の本旨に則り,住民の情報公開請求権を尊重し,県の説明義務の履行にかなうことになる。 エまた,被控訴人は,「証書及び公文書類を保管する」権限を有する(地方自治法149条8号)から,本件各旅費関係文書が警察本部の建物内にあったとしても,それは便宜上の処置にすぎず,被控訴人の上記保管権限を排除するものではない。 オそして,知事(被控訴人)は,予算の調整権,執行権を有する者(地方自治法149条2号)として,予算執行が終了した後にも,監査・決算の業務を行い,これらの問題を含む予算執行一般に関連して議会答弁を行い,さらに職員の賠償責任の有無の判断や履行請求を行い,また住民監査請求や住民訴訟に対しては適切な対処が求められる。そして,仮に知事が本件文書を一旦返却したとしても,その権限を適正に行使するために,文書の作成名義人として,これらの場合に当該文書を取り寄せて閲覧・使用できることは明らかである。 よって,知事は,仮に本件文書を一旦返却したとしても,文書の閲覧・使用が可能である に行使するために,文書の作成名義人として,これらの場合に当該文書を取り寄せて閲覧・使用できることは明らかである。 よって,知事は,仮に本件文書を一旦返却したとしても,文書の閲覧・使用が可能であるので,法律上又は事実上文書に対する支配を失っていないから,情報公開の場合についてのみ文書を「保有(現実には所持)」していないとの理由で公開対象から排除するのは,本件条例の立法目的を無視し,条例の解釈を誤ったものである。」(2) 同7頁3行目「エ」を「カ」に改める。 (3) 同頁9行目「オ」を「キ」に改める。 (4) 同頁19行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「 ところで,本件条例に基づく公文書の開示・非開示の決定に当たっては当該文書に記録された情報の内容に応じて他の機関,団体,個人等の意見を聞くこともあるが,開示決定をした後は,他の機関等に同意,承認等を求めたり,その意見を聞くことをせず,また他の機関等に当該文書の引渡しや提示を請求したり,これを要請するようなこともせずに,実施機関だけの意思により閲覧,写しの交付等の方法による開示の実施という事実行為を行うことになる(本件条例16条1項)。これは,実施機関が,当該文書について,他の機関等の判断を介在させることなく,上記のような事実行為を行うことができることを当然の前提としているものであり,本件条例2条2項の「保有」とはそのことを意味する。 したがって,「知事(被控訴人)が保有しているもの」とは,知事が自ら当該文書を公的かつ適法に所持するか,又はその行政組織内部における公的な上命下服関係に基づき,文書取扱規程等の内規あるいは個々の指揮監督を通じて,当該文書を適法かつ有効に支配しており,知事又はその所属職員が他の機関等の干渉や援助等を受けることなしに上記のような事実行為を行うことができる状 ,文書取扱規程等の内規あるいは個々の指揮監督を通じて,当該文書を適法かつ有効に支配しており,知事又はその所属職員が他の機関等の干渉や援助等を受けることなしに上記のような事実行為を行うことができる状態にあることをいう。」(5) 同8頁4行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「 すなわち,本件各旅費関係文書のうち,②旅行命令書,③復命書及び⑥旅費口座振替通知書は総務課長が,また①旅費受取委任状,④旅費請求書及び⑤支出負担行為兼支出決議書は会計課長がそれぞれ警察本部長など上司の指揮監督のもとで保管しているが,総務課長及び会計課長は,所属長の承認なしにこれらの文書の内容を部外者に知らせたりあるいは文書を庁外に持ち出してはならないという警察組織内部における服務上の義務を負っている。そして,知事がその行政組織内部の上命下服関係に基づき,総務課長や会計課長に対しこのような服務規範を排除したり,部外者に閲覧させること等の承認を要求する権限を有していると認めうる法令上の根拠はない。 また,本件条例2条2項の「保有」とは,開示請求を受け,開示・非開示の決定を行う段階における保有であるから,「知事の保有」の有無は予算執行の問題ではなく,予算執行とは全く別個の情報公開制度に基づく文書開示事務の執行上の問題である。本件条例に基づく文書開示事務における,知事の保有を前提要件とする開示の実行行為に関して,知事の予算執行権やそれに基づく補助執行関係及び指揮監督関係などを援用するのは基本的に誤っている。 なお,総務課長は,予算執行事務の補助執行者ではなく,また,会計課長は,あくまで警察本部の職員として予算執行に関する事案の決定,支出命令等の事務を執行するものであり,知事を頂点とする指揮監督関係のもとで当該予算執行事務に従事することが警察本部職員としての当該職 長は,あくまで警察本部の職員として予算執行に関する事案の決定,支出命令等の事務を執行するものであり,知事を頂点とする指揮監督関係のもとで当該予算執行事務に従事することが警察本部職員としての当該職員の職務内容になっているものであるから,形式的にも実質的にも,会計課長が本件条例2条2項における実施機関たる知事の職員と解することはできない。」(6) 同頁5行目冒頭から同6行目末尾までを,以下のとおり改める。 「ウ本件条例2条2項に「保有」という文言が使用されたのは,行政機関の保有に関する情報公開に関する法律(平成11年法律第42号)2条2項の用語に合わせたにすぎない。 すなわち,旧条例2条2項の「管理」に関する実施機関の解釈・運用は,「実施機関がそれぞれ定めている文書取扱規程等の規定するところにより,公的に支配している状態にあるものをいう」というものであったところ(乙2の11頁),本件条例2条2項の解釈・運用についても「それぞれ」が「それぞれに」と変わったほかに1字1句の違いもないから,旧条例における「管理」と本件条例における「保有」とに特段に違いはないのであって,行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項が「保有」の用語を使ったことに倣い,本件条例においても「保有」の用語を選択したにすぎない。 なお,自賠法は本件条例とは立法目的を全く異にするから,自賠法における「保有者」の定義規定及びその解釈を本件条例の解釈に援用することはできない。」(7) 同頁10行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「(4) 被控訴人は,本件決定当時,本件コンピュータ記録を「保有」していたか。 (控訴人の主張)ア被控訴人は,本件決定当時,本件文書のうち,少なくとも出張旅費に関する執行伺のほか,②旅行命令書,④旅費請求書,⑤支出行為兼支出議決書及び ンピュータ記録を「保有」していたか。 (控訴人の主張)ア被控訴人は,本件決定当時,本件文書のうち,少なくとも出張旅費に関する執行伺のほか,②旅行命令書,④旅費請求書,⑤支出行為兼支出議決書及び⑥旅費口座振替通知書を本件コンピュータ記録として保有していた。 すなわち,被控訴人は,ホストコンピュータを直接占有・管理しているので,ホストコンピュータを操作すれば,その中にある情報はIDカードやパスワードを使用しなくとも抽出することができる(なお,この当時の電磁的情報は,通常の動作環境によりそのまま再現・抽出できる状態であった。)。そして,被控訴人は,予算執行権・会計監督権等を保持していて本件文書に関わる権限を有しているから,これらの情報を使用する権限も有している。 イ以上のとおり,被控訴人は,本件決定当時,本件コンピュータ記録を保有していたにもかかわらず,これを「保有していない」との理由で本件決定をしたから,本件決定は違法である。 (被控訴人の主張)ア栃木県の財務会計システムにおいては,個別具体的な予算執行情報の入力,出力及び照会は,予算執行機関である各課室等が,その端末機により,IDカードとパスワードを使用して行う仕組みとなっている(乙9,10)。 そして,財務会計システムの全体的な運用・管理は出納局で行っているが,出納局が,その本来の業務(出納業務及び財務会計システムの運用・管理業務)から離れて,本件条例に基づく公文書開示等のために各課室等の予算執行情報を照会するというようなことは,制度上予定されていない。予算執行情報に係る開示請求があった場合,通常は各課室等に保存されている文書を開示すれば足りるのであるが,仮にホストコンピュータ上のデータを開示する必要がある場合には,各課室等において当該予算執行情報の照会を行い,その結果を出力 った場合,通常は各課室等に保存されている文書を開示すれば足りるのであるが,仮にホストコンピュータ上のデータを開示する必要がある場合には,各課室等において当該予算執行情報の照会を行い,その結果を出力して閲覧等に供することになる。 イ警察本部の予算執行については,その執行の入力,出力及び照会は,会計課が,同課の端末機により,同課のIDカードとパスワードを使用して行うことになっている。 そして,本件条例は,平成13年3月に改正され(同年10月1日施行),公安委員会及び警察本部長が実施機関に加わったから,現在では,警察本部の予算執行情報に関しては,会計課においてその保存文書を開示し,必要な場合には同課においてホストコンピュータへの照会を行うこととなる。したがって,警察本部長が実施機関となっていない場合に,出納局が会計課に代わって当該照会を行うというような制度論は成り立たない。 ホストコンピュータの記憶装置の中にあるデータのうち,警察本部の個別具体的な予算執行に係るデータは,警察本部長(会計課)が保有しているものであり,この点において,端末機から出力され,所定の手続を経て保管されている支出負担行為兼支出決議書等の文書と異なるものではない。 ウしたがって,本件決定当時,本件開示請求に係る予算執行情報を収めたコンピュータデータは,いまだホストコンピュータの記憶装置の中にあり,端末機からこれを照会する機能も停止していなかったものであるが,当該コンピュータデータは警察本部長の保有下にあり,被控訴人はこれを保有していなかった。 なお,知事が警察本部の個別具体的な予算執行に係るデータを「保有」しているか否かは,予算執行や会計監督上の問題ではなく,本件条例に基づく公文書開示事務の執行権が当該データに及ぶかどうかという問題であり,予算執行権等を援用して 体的な予算執行に係るデータを「保有」しているか否かは,予算執行や会計監督上の問題ではなく,本件条例に基づく公文書開示事務の執行権が当該データに及ぶかどうかという問題であり,予算執行権等を援用して被控訴人が当該データを「保有」していたとする控訴人の主張は失当である。」(8) 同頁11行目「(4)」を「(5)」と改める。 (9) 同頁15行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「イ(ア) 本件条例2条2項は,電磁的記録も「公文書」としているが,その開示とは,実施機関にある装置等(映写機,ビデオデッキ,コンピュータ等のハードウエア及びソフトウエア)を使って請求者が視覚,聴覚等により内容を認識できるようにすること,又はその電磁的記録の複製物を供与することである(本件条例16条1項,本件条例施行規則8条)。 ところが,本件テープ記録については,出納局のホストコンピュータによっても当該年度における総務課扱いの旅費及び食糧費に関する有意な情報を,事務に支障を来すことなく,かつ,多大な費用をかけずに請求者に認識できるようにすることは,そのようなシステムが設計されていないので不可能であり,また本件テープ記録から当該部分の複製物を作成することも不可能である。このように,その開示が社会通念上不可能と認められるようなものは,本件条例2条2項にいう「公文書」に該当しないというべきである。 (イ) 本件テープ記録は,現在では出納局に保管されているが,栃木県の財務会計事務においては,あくまでも出力された帳票類が正規の財務会計書類等として扱われ,財務システムは,いわばこのような帳票類を作成するための道具である。上記のような帳票類を作り終えて年度も替わった後に上記のような有意なデータを読みとり,これをプリンターやディスプレイに再出力するようなことは予定していない。 ような帳票類を作成するための道具である。上記のような帳票類を作り終えて年度も替わった後に上記のような有意なデータを読みとり,これをプリンターやディスプレイに再出力するようなことは予定していない。 (ウ) 以上のとおり,本件テープ記録は,本件条例2条2項所定の電磁的記録に該当しない。 なお,栃木県がどのようなコンピュータシステムを構築し,そのコンピュータデータをどのように作り,活用し,保存するかは,行政上の判断に属する事柄であるから,本件条例において,電磁的記録を保有する実施機関がその再現プログラムも保有することが当然の前提となっているものではない。」(10) 同頁16行目「イ」を「ウ」に改める。 (11) 同9頁15行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「イ(ア) 上記(4)(控訴人の主張)アと同旨。 (イ) よって,被控訴人は,本件決定当時,本件コンピュータ記録を保有していたにもかかわらず,これと同一物である本件テープ記録を「保有していない」との理由で本件決定をしたから,本件決定は違法である。 ウ(ア) 本件条例16条1項は,その標題に「(公文書の開示の実施)」とあるように,開示方法に関する規定であって,開示義務の存否に関する規定ではない。 本件条例7条による公文書開示義務の存在を前提として,開示の方法が恣意的にならないよう本件条例16条1項により開示方法を指定したものである。 (イ) また,本件条例施行規則8条4号は,本件条例16条1項の委任を受けて,開示方法を具体的かつ詳細に規定したものである。したがって,本件施行規則も,開示義務の存否を規定したものではない。すなわち,本件条例16条1項や本件条例施行規則8条4号を根拠として開示義務の存否を論ずるのは失当である。 本件条例施行規則8条4号は,開示義務を負っている知事の開示方法を具 を規定したものではない。すなわち,本件条例16条1項や本件条例施行規則8条4号を根拠として開示義務の存否を論ずるのは失当である。 本件条例施行規則8条4号は,開示義務を負っている知事の開示方法を具体的に定めるに当たって,知事が現に保有しているプログラムにより開示できる方法の中から,開示請求者に具体的方法を選択させる趣旨であって,開示請求者の要求に従って知事が現に保有しているプログラム以外に新たなプログラムを取得する必要のないことを規定したものである。したがって,同号は,開示義務の存在を当然の前提としているので,知事が開示のための一定のプログラムを保有していることも当然の前提としている。そこで,これを「現に備えられ又は通常備えられるべき設備,技術等により,その実質的な情報内容を,一般人の知覚により認識できる形で提示することが可能なものに限られる。」と解釈し,あたかも設備・技術等を備えていない場合には開示しなくてもよい趣旨と解することは,本件条例施行規則に基づく上記開示義務の解除を認めることになるから許されない。 なお,情報公開法施行令9条3項は,開示義務の存在を前提として,開示方法を特定するための規定であって,一般的には多数存在する多様な開示方法の中から実行可能な方法を具体的な開示方法として定めることを認めたものであり,情報公開法に根拠を有する開示義務を施行令によって解除する趣旨には理解されていない。 エ(ア) 本件条例には除外規定が設けられていないから,本件条例施行規則8条4号を,知事がプログラムを保有していないのであれば公開する必要はないと解釈することはできないので,技術開発によってより優れたプログラムが開発されていたとしても,知事は現に保有しているプログラムによって行えば足りるものと解される。 (イ) 電磁的情報が存在しながら,そ 釈することはできないので,技術開発によってより優れたプログラムが開発されていたとしても,知事は現に保有しているプログラムによって行えば足りるものと解される。 (イ) 電磁的情報が存在しながら,その再生等のプログラムが存在せず,またその作成に相当程度の費用と労力が必要であったとしても,そのことが情報公開を否定する理由にはならない。すなわち,電磁的記録は,その再生等のプログラムと対になって初めて存在意義を有するから,本件条例が電磁的記録を公開の対象としている以上,本件条例2条2項に該当する電磁的記録を保有している実施機関は,公開請求を待つまでもなく,あらかじめ再生等のためのプログラムを保有していなければならない(本件条例施行規則8条4号)。 (ウ) したがって,本件テープ記録を本件条例2条2項所定の「電磁的記録」から除外することは許されない。」(12) 同頁16行目「イ」を「オ」と改める。 第3 当裁判所の判断当裁判所の判断は,次のとおり付加・補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決10頁14行目「と称する総務部長・出納局長通知において,」を「との総務部長・出納局長通知第74条第6項において,」に改める。 2 同11頁5行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「(1) ①本件条例2条2項にいう「保有」は,同条1項に掲げられた各実施機関がその主体であると構成されており,②本件条例2条2項は,公文書の定義として,実施機関の職員が職務上作成した文書等であって,「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。」と定めているから,正しく当該実施機関の職員が組織的な業務上の必要性から利用・保存するものとして「保有」していることが要件と 職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。」と定めているから,正しく当該実施機関の職員が組織的な業務上の必要性から利用・保存するものとして「保有」していることが要件とされており,③本件条例に基づく公文書の開示請求がなされた場合,本件条例7条に基づき,非開示情報の有無について判断がなされなければならないが,このような判断は,当該公文書を組織的な業務に利用している実施機関において最も的確に行うことができ,④本件条例に基づく公文書の開示は,情報公開制度に基づく文書開示事務の執行として行われるものであるから,たまたま当該公文書を一時的,臨時的に所持しているにすぎない機関が,このような事務の執行義務を負うと解するのは妥当でなく,⑤本件条例に基づく公文書の開示に際しては,他の機関等の判断を介在させることなく当該実施機関だけの意思により閲覧,写しの交付等の方法による開示の実施という事実行為を行うことになるから(本件条例16条参照),公文書を「保有」するとは,当該職員が他の機関等の干渉や援助等を受けることなしにこのような事実行為を行うことができる状態にあることを意味すると解され,⑥本件条例31条において,実施機関は,公文書を適正に管理するとともに公文書の分類,作成,保存及び廃棄に関する基準その他の公文書の管理に関する定めを設けるものとされているが,このような公文書の管理及び管理等に関する定めの決定は,当該公文書を組織的な業務の必要から「保有」する実施機関において行うことが必要かつ適切であるから,以上のような事実によれば,本件条例2条2項の「保有」とは,特定の実施機関が文書取扱規程等により,公的かつ現実に支配,管理している状態をいうと解するのが相当である。 なお,地方自治法149条8号は,当該地方公共団体のすべての証書及 2条2項の「保有」とは,特定の実施機関が文書取扱規程等により,公的かつ現実に支配,管理している状態をいうと解するのが相当である。 なお,地方自治法149条8号は,当該地方公共団体のすべての証書及び公文書類の総括的な責任と権限を有する者が長であることを明らかにしたものにすぎず,本件条例のように個別具体的な法規が定める公文書の保有や管理等の意味は,当該具体的規定の立法趣旨に従い,合理的解釈によって確定すべきであり,また,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件条例2条2項において「保有」という用語が使用されたのは,行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項の文言に倣ったにすぎず,その意味は,旧条例における用語である「管理」と特段異なるものではないと認められる。さらに,自賠法2条3項には「保有者」についての規定があるが,自動車交通事故の損害賠償に関して定める自賠法と本件条例とは立法目的を全く異にするから,自賠法における「保有者」の解釈を本件条例の解釈に援用することは相当でない。 以上のとおりであって,控訴人は,本件条例2条2項の「保有」の意味につき,実施機関において「管理」「所有」「占有」「所持」はもちろんのこと,予算執行権限などの何らかの法的権限が及んでいることにより法律上又は事実上の文書に対する支配が可能な状態をいうと主張するけれども,同主張を採用することはできない。」 3 同頁6行目「(1)」を削り,「本件決定当時」の前に「そこで,」を加える。 4 同14頁10行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「 そして,弁論の全趣旨によると,総務課長は,上記②旅行命令書,③復命書及び⑥旅費口座振替通知書について,また会計課長は,上記①旅費受取委任状,④旅費請求書及び⑤支出負担行為兼支出決議書について,それぞれ警察本部長の承認な ると,総務課長は,上記②旅行命令書,③復命書及び⑥旅費口座振替通知書について,また会計課長は,上記①旅費受取委任状,④旅費請求書及び⑤支出負担行為兼支出決議書について,それぞれ警察本部長の承認なしにこれらの文書の内容を部外者に知らせたり文書を庁外に持ち出すことはできないという警察組織内部における服務上の義務を負っていることが認められる。しかし,本件全証拠よっても,被控訴人が知事として総務課長や会計課長に対し,その行政組織内部の上命下服関係に基づいて上記服務規範を排除して本件各旅費関係文書の情報公開を命じることができると解しうるような法令上の根拠を見出すことはできない。」 5 同15頁9行目全部を次のとおり改める。 「3 争点(4)(被控訴人が本件コンピュータ記録を保有していたかどうか)について(1) 証拠(乙9,10)及び弁論の全趣旨によると,警察本部の予算執行については,本件決定当時,その執行情報の入力,出力及び照会につき,会計課において同課の端末機によりそのIDカードとパスワードを使用して行うことになっていたことが認められる。 そうすると,ホストコンピュータの記憶装置の中にあるデータのうち,警察本部の個別具体的な予算執行に係るデータは,警察本部長(会計課)が保有していたものと認められるから,本件コンピュータ記録は,上記端末機から出力され,所定の手続を経て保管されている支出負担行為兼支出決議書等の文書と異なるものではないというべきである。 (2) したがって,本件コンピュータ記録も,本件決定当時,警察本部長の保有下にあり,被控訴人はこれを保有していなかったものと認められる。 4 争点(5)(被控訴人は,本件条例上,本件テープ記録について開示義務を負うか)について(1) 上記3のとおり,被控訴人は,本件決定当時本件コンピュータ記録を 保有していなかったものと認められる。 4 争点(5)(被控訴人は,本件条例上,本件テープ記録について開示義務を負うか)について(1) 上記3のとおり,被控訴人は,本件決定当時本件コンピュータ記録を保有していなかったと認められるから,本件テープ記録について,本件条例に基づく開示義務を負わないものと認められる。」 6 同頁10行目「(1)」を削り,「本件条例は」の前に「ちなみに,」を加える。 7 同16頁9行目の次に行を改めて,以下のとおり加える。 「(2) もっとも,控訴人は,本件条例16条1項,本件条例施行規則8条4号等は,開示義務の存在を当然の前提としているので,被控訴人は開示のためのプログラムを備えていなければならないから,本件テープ記録を本件条例2条2項所定の「電磁的記録」から除外できない旨主張する。 しかし,本件条例16条1項,本件条例施行規則8条等に照らすと,本件条例2条2項所定の電磁的記録の開示とは,実施機関にある装置等(映写機,ビデオデッキ,コンピュータ等のハードウエア及びソフトウエア)を使用して請求者が視覚,聴覚等により内容を認識できるようにすること,又はその電磁的記録の複製物を供与するものであると解するのが相当である。」 8 同頁10行目「(2)」を削る。 9 同17頁14行目冒頭から17行目末尾までを次のとおり改める。 「5 本件決定当時本件文書等のうち食糧費に関するものが存在しなかったことは,前記「1 争いのない事実等」に記載のとおりである。」第4 結論よって,控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきであって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,控訴費用の負担について,行訴法7条,民訴法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事 と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,控訴費用の負担について,行訴法7条,民訴法67条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部裁判長裁判官大喜多啓光裁判官水谷正俊裁判官河野清孝
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