主文 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Aの項の配当実施額等437万4430円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Bの項の配当実施額等2157万4869円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Cの項の配当実施額等674万9964円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Dの項の配当実施額等2023万4458円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Eの項の配当実施額等2170万5313円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,亡Fの項の配当実施額等2010万5172円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Jの項の配当実施額等730万0089円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Kの項の配当実施額等916万0249円全額を取り消す。 月6日付けで作成された配当表のうち,被告Lの項の配当実施額等719万6686円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,被告Mの項の配当実施額等806万5849円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,被告Nの項の配当実施額等358万8085円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,被告Oの項の配当実施額等109万6849円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,被告Pの項の配当実施額等65万4218円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,被告亡F訴訟承継人らを除く各被告及び亡Fに係る配当手数料69 けで作成された配当表のうち,被告Pの項の配当実施額等65万4218円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,被告亡F訴訟承継人らを除く各被告及び亡Fに係る配当手数料6920円全額を取り消す。 9月6日付けで作成された配当表のうち,手続費用に係る配当実施額等670万0659円全額を取り消す。 16 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 本件は,別紙船舶目録記載の各船舶(以下「本件各船舶」という。)の各共有 持分100分の90をそれぞれ有する原告が,本件各船舶につきなされた広島地において作成された配当表につき,被告亡F訴訟承継人らを除く被告ら及び亡F(以下,併せて「本件船員被告ら」という。)について商法842条7号に規定する船舶先取特権を有しないにもかかわらず,これを有する債権者と認めた上で記載された各配当実施額等,配当要求手数料及び手続費用全額に異議があるとして,民事執行法90条1項(同法189条で準用する同法121条により準用)に基づき配当異議の訴えを提起した事案である。 これに対し,被告らは,船舶先取特権を有すると反論して,請求の棄却を求めた。 1 前提事実(末尾に証拠を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない。)当事者等ア原告は,独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法及び独立行政法人通則法に基づき,日本鉄道建設公団及び運輸施設整備事業団(以下「旧事業団」という。)の統合によって平成15年10月1日に成立した独立行政法人であり,旧事業団の業務を承継した(以下,統合の前後を通じて「原告」という。)。 訴外Q株式会社(以下「訴外Q」という。)は,船舶による荷客運送業 って平成15年10月1日に成立した独立行政法人であり,旧事業団の業務を承継した(以下,統合の前後を通じて「原告」という。)。 訴外Q株式会社(以下「訴外Q」という。)は,船舶による荷客運送業等を業とする海運事業者であった。 訴外Qについては,平成24年4月16日,広島地方裁判所において破産手続開始決定がなされ,破産管財人が選任されている。 原告は,共有建造業務(海運事業者と費用を分担して造船所へ船舶を共同発注し船舶建造を行い,竣工後は当該船舶を当該海運事業者と共有とした上で当該海運事業者に使用管理させ,共有期間満了まで当該海運事業者から当該船舶使用の対価として船舶使用料を徴収するという業務のこと。)の一環として,平成15年2月5日,別紙船舶目録1記載の 船舶(以下「本件船舶1」という。)を訴外Qと共同建造して,共有し(訴外Q持分100分の10,原告持分100分の90),平成17年3月5日,別紙船舶目録2記載の船舶(以下「本件船舶2」という。)を訴外Qと共同建造して,共有し(訴外Q持分100分の10,原告持分100分の90),本件各船舶を訴外Qに使用させ,船舶使用料を徴収していた。 ウ本件船員被告らは,訴外Qに雇用され,本件各船舶に乗り込んでいた船員であるが,平成24年3月31日付けで全員解雇された(乙9の1から9の13まで)。なお,訴外Qは,平成23年3月16日付けで,対象期間を平成23年4月1日から平成25年3月31日までの2年間として,本件各船舶につき,船員法施行規則22条に基づく一括届出の許可を受けていた(乙7,8)。 承継前被告である亡F(以下「亡F」という。)は,平成25年8月15日,死亡した。同人の相続人は,妻である被告G,子である被告H及び被告Iである。同人らは,亡Fの訴訟手続を承継した。 ,8)。 承継前被告である亡F(以下「亡F」という。)は,平成25年8月15日,死亡した。同人の相続人は,妻である被告G,子である被告H及び被告Iである。同人らは,亡Fの訴訟手続を承継した。 本件競売事件本件船員被告らは,平成24年3月29日,広島地方裁判所に対し,本件船員被告らが訴外Qに対して有する退職金債権,平成21年度ないし平成23年度の未払賃金(緊急対応額)に係る債権並びに未消化有給精算額及び未消化休日精算額に係る債権を被担保債権として,商法842条7号の船舶先取特権に基づき,原告持分を含む本件各船舶全体に対して船舶競売の申立てを行った。広島地方裁判所は,平成24年4月2日,船舶競売開始決定(以下「本件競売開始決定」という。)をした(本件競売事件)。 執行異議の申出及び競売手続の取消原告及び破産者訴外Q破産管財人は,平成24年6月8日,本件競売開始決定に対し,船舶先取特権の不存在等を理由として執行異議の申立てを行っ た。広島地方裁判所は,同年6月8日,上記執行異議申立事件についての裁判の効力が生ずるまでの間,本件競売事件を停止する旨の決定を行った。原告及び破産者訴外Q破産管財人は,同月19日,広島地方裁判所に対し,本件競売事件の取消しを申し立て,原告は,同年7月10日,民事執行法189条によって準用される同法117条1項に基づく保証を提供した。広島地方裁判所は,同月17日,本件競売事件の手続中,配当等の手続を除きこれを取り消す旨の決定を行った。 配当要求本件船員被告らは,破産者訴外Q破産管財人に対する,訴外Q及び本件船員被告らが所属する労働組合(全日本海員組合,以下「海員組合」という。)との平成24年2月28日付け協定書に基づく臨時手当(賞与)に係る債権の存在を主張して,平成24年5月9日,本 訴外Q及び本件船員被告らが所属する労働組合(全日本海員組合,以下「海員組合」という。)との平成24年2月28日付け協定書に基づく臨時手当(賞与)に係る債権の存在を主張して,平成24年5月9日,本件競売事件について広島地方裁判所に対し配当要求をした。 配当表の作成本件競売事件についての配当期日は,平成24年9月6日午後1時30分に開かれ,広島地方裁判所裁判所書記官により配当表(以下「本件配当表」という。)が作成された。本件配当表には,次のとおりの記載がある(甲89)。 ア被告A(以下「被告A」という。)の請求債権(A2)につき配当実施額等として384万7519円。 イ被告B(以下「被告B」という。)の請求債権(A3)につき配当実施額等として2104万9945円。 ウ被告C(以下「被告C」という。)の請求債権(A4)につき配当実施額等として626万7703円。 エ被告D(以下「被告D」という。)の請求債権(A5)につき配当実施額等として1974万8134円。 オ被告E(以下「被告E」という。)の請求債権(A6)につき配当実施額等として2117万6591円。 カ亡Fの請求債権(A7)につき配当実施額等として1961万4988円。 キ被告J(以下「被告J」という。)の請求債権(A8)につき配当実施額等として687万8458円。 ク被告K(以下「被告K」という。)の請求債権(A9)につき配当実施額等として870万4714円。 ケ被告L(以下「被告L」という。)の請求債権(B1)につき配当実施額等として674万5164円。 コ被告M(以下「被告M」という。)の請求債権(B2)につき配当実施額等として767万0589円。 サ被告N(以下「被告N」という。)の請求債権(B3)につき配当実施額等 74万5164円。 コ被告M(以下「被告M」という。)の請求債権(B2)につき配当実施額等として767万0589円。 サ被告N(以下「被告N」という。)の請求債権(B3)につき配当実施額等として322万8301円。 シ被告O(以下「被告O」という。)の請求債権(B4)につき配当実施額等として83万1476円。 ス被告P(以下「被告P」という。)の請求債権(B5)につき配当実施額等として39万0079円。 セ被告Aの請求債権(B6)につき配当実施額等として52万6911円。 ソ被告Bの請求債権(B7)につき配当実施額等として52万4924円。 タ被告Cの請求債権(B8)につき配当実施額等として48万2261円。 チ被告Dの請求債権(B9)につき配当実施額等として48万6324円。 ツ被告Eの請求債権(C1)につき配当実施額等として52万8722円。 テ亡Fの請求債権(C2)につき配当実施額等として49万0184円。 ト被告Jの請求債権(C3)につき配当実施額等として42万1631円。 ナ被告Kの請求債権(C4)につき配当実施額等として45万5535円。 ニ被告Lの請求債権(C5)につき配当実施額等として45万1522円。 ヌ被告Mの請求債権(C6)につき配当実施額等として39万5260円。 ネ被告Nの請求債権(C7)につき配当実施額等として35万9784円。 ノ被告Oの請求債権(C8)につき配当実施額等として26万5373円。 ハ被告Pの請求債権(C9)につき配当実施額等として26万4139円。 ヒ本件船員被告らの配当要求手数料(D1)につき配当実施額等として費用6920円。 フ本件船員被告らの手続費用(A1)につき配当実施額等として670万0659円。 配当期日における異議 ヒ本件船員被告らの配当要求手数料(D1)につき配当実施額等として費用6920円。 フ本件船員被告らの手続費用(A1)につき配当実施額等として670万0659円。 配当期日における異議原告代理人は,上記配当期日に出頭し,本件船員被告らに対する上記各配当はいずれもその全額について不当である旨異議申出をした。 本件訴訟の提起原告は,平成24年9月6日に本件訴訟を提起し,同月12日に訴えを追加的に変更し,第1回口頭弁論期日に出頭した。 本件各船舶について本件各船舶は,訴外Qの事務所所在地である広島県江田島市a町の三高港と広島市南区の広島港(宇品港)の間を結ぶ航路を往復していたカーフェリーであった(甲13ないし16)。 本件各船舶の上記航路は,船舶安全法施行規則1条6項に規定する平水区域に位置している(甲65,66)。 本件各船舶の船舶検査証書(船舶安全法9条1項)並びに訴外Qが中国運輸局長に提出した一括届出許可申請書及び船員名簿においても,本件船舶の航行区域は「平水区域」と定められている。 なお,上記一括届出許可申請書には,一括公認を受けようとする船舶について,本件各船舶に加えて,「R」と称する船舶の記載がある。(乙7,8)。 2 争点及びこれに対する当事者の主張 本件各船舶は,商法842条の「船舶」に該当するか(平水区域を航行する船が「航海の用に供するもの」(商法684条1項)に該当するか。)。 (被告らの主張)別紙「当事者の主張及び書証の整理」中,第2の2「本論点②に関して」の各【被告ら】記載のとおり。 (原告の主張)別紙「当事者の主張及び書証の整理」中,第2の2「本論点②に関して」の各【原告】記載のとおり。 退職金債権及び臨時手当(賞与)債権(以下 各【被告ら】記載のとおり。 (原告の主張)別紙「当事者の主張及び書証の整理」中,第2の2「本論点②に関して」の各【原告】記載のとおり。 退職金債権及び臨時手当(賞与)債権(以下「退職金債権等」という。)は,商法842条7号の債権に該当するか。 (被告らの主張)別紙「当事者の主張及び書証の整理」中,第2の1「本論点①に関して」の各【被告ら】記載のとおり。 (原告の主張)別紙「当事者の主張及び書証の整理」中,第2の2「本論点②に関して」の各【原告】記載のとおり。 本件船員被告らは,商法842条7号にいう「船長其他ノ船員」に該当するか。 (被告らの主張)商法842条7号の「船長其他ノ船員」は,船員法にいう船員(船長,海員及び予備船員)を意味することに疑問の余地はない。仮にそうではないとしても,本件船員被告らは,常に高度の危険を伴う航海上の労務に服している上,船舶を管理する者としての責任を果たす体制をとっており,実質的にも,同条の船員に該当する。 (原告の主張) 商法842条7号が「船長其他ノ船員」に対して,一般の労働者には与えられない極めて手厚い特別な保護を与えている理由は,主として船員の労務によってのみ船舶が航海中保全されるという実態に対して,危険な航海上の労務に服することによってのみ生計を維持している船員らの債権は概して少額であるという利益衡量にあると言わなければならない。 したがって,本件船員被告らが,同条の船員に該当するというためには,危険な航海上の労務に服することによってのみ生計を維持しているといえるような労働実態があり,かつ,船舶所有者の直接の管理下を離れ,船舶所有者自らが管理を及ぼすことができないという特殊な管理実 には,危険な航海上の労務に服することによってのみ生計を維持しているといえるような労働実態があり,かつ,船舶所有者の直接の管理下を離れ,船舶所有者自らが管理を及ぼすことができないという特殊な管理実態の双方が必要と言わなければならない。 本件船員被告らには,上記の労働実態や管理実態はないので,同条の船員には該当しない。 本件船員被告らが,船舶先取特権を主張することは権利の濫用となるか。 (原告の主張)仮に,本件船員被告らに船舶先取特権が成立するとしても,被告らの労働実態を考慮すれば,権利濫用であることは明らかである。 (被告らの主張)争う。 本件船員被告らが訴外Qに対して有する債権はいくらか。 (被告らの主張)ア退職金 通常退職金根拠規定本件船員被告らと訴外Qとの間に適用される労働協約として,「労働協約書」(乙1の1)があり,退職手当については第14章に規定がある。 退職金の計算方法通常退職金は,「基本給」×「合計支給率」として算出できる。 ③ 「基本給」について本件船員被告ら各人の解雇時の基本給は,別紙「退職手当計算表」の「退職時本給」欄記載のとおりである。 ④ 「合計支給率」について支給率については,労働協約書(乙1の1)111条1項に規定がある。 勤続5年以下の者は,勤続1年につき1.0か月分の支給率が加算され,勤続5年を超えて10年以下の者は,その5年を超えた部分の勤続1年につき,1.2か月分の支給率が加算され,勤続10年を超えて15年以下の者は,その10年を超えた部分の勤続1年につき,1.6か月分の支給率が加算される。 本件船員被告らの各合計支給率は,別紙「退職手当計算表」の「合計支給率」欄記載の えて15年以下の者は,その10年を超えた部分の勤続1年につき,1.6か月分の支給率が加算される。 本件船員被告らの各合計支給率は,別紙「退職手当計算表」の「合計支給率」欄記載のとおりとなる。 特別加算労働協約書114条が定めるとおり,a勤続年数10年以上で,かつ,b退職時の年齢が50歳以上の者については,退職手当に,以下の特別加算がなされる。 勤続年数10年以上15年未満の者退職時基本給の1か月分勤続年数15年以上20年未満の者同2か月分勤続年数20年以上の者同3か月分② よって,被告B,同D,同E及び亡Fには,特別加算として,基本給3か月分がそれぞれ加算されることとなる。 企業年金50歳以上で,勤続20年以上の者が,会社都合により退職した場合, 80万7503円の企業年金が支給される。 本件においては,被告B,同D,同E及び亡Fがその対象となる。 小括以上の退職手当,特別加算,企業年金の合計額は,別紙「退職手当計算表」の「合計額」欄記載のとおりとなる。 イ平成21年度未払賃金(緊急対応額) 根拠海員組合と訴外Q間の平成21年11月9日付け協定書(乙4の2)3条及び同「別紙-1」 上記協定書の締結に基づき本件船員被告らの平成21年度の賃金は,年間総収入額の15.4%減額された。この減額は,同年度の本件船員被告らの「臨時手当」を減額することによってなされた(同2条)。 しかしながら,同3条のとおり,訴外Qが「事業の廃止(任意整理),倒産等により事業継続を断念せざるを得ない事態が生じた場合」,同2条に基づく各人の臨時手当の削減額相当額を,「労働債権 しかしながら,同3条のとおり,訴外Qが「事業の廃止(任意整理),倒産等により事業継続を断念せざるを得ない事態が生じた場合」,同2条に基づく各人の臨時手当の削減額相当額を,「労働債権」として認定することとなる。 本件で,訴外Qは,事業廃止を決定し,本件船員被告らを解雇したのであるから,3条に基づき,2条記載の本件船員被告ら各人の削減額が,労働債権(未払債権)と認定されることとなる。 以上の未払賃金(緊急対応額)は,別紙「未払い賃金(緊急対応額)および未消化有給・休日精算額一覧表」の平成21年度の「未払い賃金(緊急対応額)」欄記載のとおりである。 ウ平成22年度未払賃金(緊急対応額) 根拠海員組合と訴外Q間の平成22年6月16日付け協定書(乙4の3)3条及び同「別紙-1」 上記イと同様に減額されたが,同様に認定されることとなる。 以上の未払賃金(緊急対応額)は,別紙「未払い賃金(緊急対応額)および未消化有給・休日精算額一覧表」の平成22年度の「未払い賃金(緊急対応額)」欄記載のとおりである。 エ平成23年度未払賃金(緊急対応額) 根拠海員組合と訴外Q間の平成23年7月22日付け協定書(乙4の4)3条及び同「別紙-1」 上記イと同様に(但し減額率は14.2%)減額されたが,同様に認定されることとなる。 以上の未払賃金(緊急対応額)は,別紙「未払い賃金(緊急対応額)および未消化有給・休日精算額一覧表」の平成23年度の「未払い賃金(緊急対応額)」欄記載のとおりである。 オ未消化有給精算額・未消化休日精算額本件船員被告らの各人ごとの平成24年3月31日現在の,未消化有給 覧表」の平成23年度の「未払い賃金(緊急対応額)」欄記載のとおりである。 オ未消化有給精算額・未消化休日精算額本件船員被告らの各人ごとの平成24年3月31日現在の,未消化有給精算額・未消化休日精算額は,別紙「未払い賃金(緊急対応額)および未消化有給・休日精算額一覧表」の「未消化有給精算額/未消化休日精算額」欄記載のとおりである。 カ平成24年度年間臨時手当(賞与)日割分(乙6) 訴外Qは,臨時手当(賞与)につき,その支給額・配分・支給方法・支給期日等について,毎年,労使交渉を行って労使協定を締結し,それに基づいてこれをその雇用する船員に対して支給してきた(乙5の1ないし4)。 すなわち,平成20年度から平成23年度までの間,訴外Qは,本件船員被告ら船員に対して年間臨時手当として算定基準額(基本給+乗船手当+職務手当+家族手当+執職手当)の4.3か月分を支給してきた (乙5の1ないし4)。 臨時手当の査定期間としては,夏季手当については,前年12月1日から当年5月31日まで,冬季手当については当年6月1日から当年11月30日までとされていた。 また,上記査定期間の中途で,「会社都合」により退職した者に対しては,「その期間に応じ日割り計算」により年間臨時手当を支給することとされていた。 平成24年度の臨時手当については,訴外Qが平成24年3月31日をもって本件船員被告ら船員を解雇する見込みとなった情勢を踏まえての労使協定の締結となった。 すなわち,訴外Qは,前記の従前の労使協定の内容に沿い,同日付けで本件船員被告らが会社都合退職した場合の年間臨時手当の日割支給額について確認する労使協定を締結した(乙6)。 すなわち,訴外Qは,前記の従前の労使協定の内容に沿い,同日付けで本件船員被告らが会社都合退職した場合の年間臨時手当の日割支給額について確認する労使協定を締結した(乙6)。 本件船員被告ら各人の平成24年度年間臨時手当日割分の具体的計算方法は,以下のとおりである。 本件船員被告らの平成24年度の「年間臨時手当の総額」は,従前の労使協定と同様,算定基準額(基本給+乗船手当+職務手当+家族手当+執職手当)の4.3か月分本件船員被告らの平成24年度の年間臨時手当における「在籍日数」は,本件船員被告らは平成24年3月31日付けで解雇されたため,122日(平成23年12月1日から平成24年3月31日まで)本件船員被告らの平成24年度の年間臨時手当における「年間勤務期間」は,従前の労使協定と同一の査定期間で365日(平成23年12月1日から平成24年11月30日まで) よって,本件船員被告らは,別紙「平成24年度年間臨時手当日割分」 各記載のとおりの債権を有している。 (原告の主張)ア退職金について 通常退職金について労働協約書14章に退職手当に関する規定があることは認めるが,本件船員被告ら及び訴外Qとの間に適用されることにつき不知。 仮に適用されるとしても,労働協約書108条(乙1の1)は,定年退職及び自己都合退職を規定しているものの,解雇された場合については規定していない。訴外Q及び海員組合は,平成22年6月16日付け協定書(乙4の3)において,「収入削減を事由として退職する者」について規律しているが,同規定も解雇について規定したものではない。 その他,退職金の計算方法,基本給,合計支給率は不知。 乙4の3)において,「収入削減を事由として退職する者」について規律しているが,同規定も解雇について規定したものではない。 その他,退職金の計算方法,基本給,合計支給率は不知。 特別加算について労働協約書(乙1の1)114条3項は,「企業整備,船舶の遭難,係船等により止むを得ず解雇する場合は,特別加算につき,会社と組合は協議して定める。」と規定しているのであって,訴外Qが事業を廃止し清算することも「企業整備」あるいはこれに準ずるものとして扱うべきことは明らかである。したがって,114条1項が適用される余地はない。 企業年金について否認ないし争う。 イ平成21年度,平成22年度,平成23年度各未払賃金(緊急対応額)について否認ないし争う。 ウ未消化有給精算額・未消化休日精算額について不知ないし争う。 エ平成24年度年間臨時手当(賞与)日割分(乙6)について不知ないし争う。 (被告らの反論)ア通常退職金について労働協約書の合理的意思解釈としては「解雇」についても退職金を支給する趣旨と解釈しなければならない。 イ特別加算について労働協約書の114条3項の協議は,会社整備を理由とする解雇の場合には,114条1項の特別加算を前提として,さらなる特別加算について労使協議を定めているものである。 本件船員被告らの有する債権が少額であることにより,本件競売手続が不当となる結果,執行費用についても配当受領資格を失うか。 (原告)仮に,被告らの主張する債権を被担保債権とする商法842条7号の先取特権が成立するとしても,本件競売手続はわずかな債権のために多額の執行費用を要する不当な執行手続である。したがって,本件競売手続において,本件船 主張する債権を被担保債権とする商法842条7号の先取特権が成立するとしても,本件競売手続はわずかな債権のために多額の執行費用を要する不当な執行手続である。したがって,本件競売手続において,本件船員被告らは執行費用についても配当を受ける資格を有しない。 (被告ら)争う。本件競売手続は不当な執行手続ではない。 第3 争点に対する判断 本件各船舶は,商法842条の「船舶」に該当しない。その理由は,次に述べるとおりである。 商法684条1項は,商法の適用を受ける船舶の要件として,「航海の用に供するもの」と定めている。一方,商法569条は,陸上運送の範囲を「陸上又は湖川,港湾」と定めているから,同範囲の航行は,上記「航海」に含 まれないと解するのが相当である。 次に,商法569条の「陸上又は湖川,港湾」の範囲については,商法施行法122条が国土交通省令に委任しているところ,この委任を受けた「商法施行法第122条ノ規定ニ依ル湖川,港湾及沿岸小航海ノ範囲ニ関スル件」(明治32年逓信省令第20号)の1項は「湖川,港湾ノ範囲ハ平水航路ノ区域ニ依ル」と定め,「平水航路」は,船舶安全法附則37条により,平水区域とされている。したがって,平水区域は,「湖川,港湾」に該当し,同区域を航行する船舶は,商法684条の船舶に該当せず,ひいては842条の船舶にも該当しない。 本件各船舶は,上記第2の1のとおり,航行区域が平水区域とされているから,商法842条の船舶に該当しない。 被告らは,商法684条の海は社会通念上の海で足り,本件各船舶は社会通念上の海を航路としていたから,商法上の船舶に当たる,また,仮に商法684条にいう船舶に該当しないとしても,個別の条文ごとに適用の有無を検討すべきであり,商法842条は適用されると 件各船舶は社会通念上の海を航路としていたから,商法上の船舶に当たる,また,仮に商法684条にいう船舶に該当しないとしても,個別の条文ごとに適用の有無を検討すべきであり,商法842条は適用されると主張する。 しかしながら,被告らの主張はいずれも採用できない。船舶先取特権は公示方法なくして船舶抵当権に優先するものとされているところ(商法849条),船舶先取特権を広く認めることは,船舶抵当権者の利益を害し,ひいては船舶所有者が金融を得るのを困難にするものであるから,商法842条の船舶先取特権が認められる範囲は厳格に解釈すべきと考えられ(最高裁昭和59年3月27日第三小法廷判決・裁判集民事141号435頁も同趣旨と解される。甲11),「社会通念上の海」という概念によって船舶先取特権の範囲を拡大することは相当ではないからである。 さらに,平水区域は,年間を通じて比較的静穏で,地理的には陸岸により囲まれていて,その開口は直接外海に面して大きく開いていないことなどの波や風の影響が少ない水域と認められるため(甲64),そのような船に関 する船員等の有する債権について,船舶先取特権により,一般の労働債権と比較して特別の保護を与える実質的な理由が認められないからである。 以上のとおりであり,本件船員被告らは,商法842条7号に規定する船舶先取特権を有しないので,これが存在することを前提とする本件競売事件において本件船員被告らが受領すべきとされた配当実施額等及び配当手数料の全額について,受領する資格を有しない。 上記1のとおり,本件各船舶は,商法842条の船舶に該当しないものの,本件の審理経過に鑑み,判断する。 退職金債権等は,商法842条7号の債権に該当すると認められる。その理由は次のとおりである。 ア退職金債権等の 舶は,商法842条の船舶に該当しないものの,本件の審理経過に鑑み,判断する。 退職金債権等は,商法842条7号の債権に該当すると認められる。その理由は次のとおりである。 ア退職金債権等の発生原因は,雇用契約であると認められるところ,商法842条7号は,船舶先取特権の被担保債権を「雇傭契約」によって生じた債権と明記しているから,その対象から退職金債権等を一般的に除くことは,条文の文言に反する解釈であると言わざるを得ない。 イ原告は,退職金債権等を除く趣旨で,商法842条7号の「雇傭契約」は,明治23年に制定された商法(明治23年法律第32号)849条1項5号が規定する「雇入契約」と同義であると主張する(甲31)。 しかしながら,「雇入契約」と「雇傭契約」の効果に上記のような違いがあるのであれば,明治32年の改正後の商法(明治32年法律第48号。 以下「旧商法」という。)680条7号(現在の商法842条7号と同じ。)において「雇傭契約」へと文言が変更されたことは,退職金債権等を含める趣旨との解釈を裏付けるものということができる。 原告は,①明治32年当時,船員の雇用の実態は雇入契約の形態しか存在しなかったこと,②旧商法への改正にあたって,「雇入契約」から「雇傭契約」へと文言を変更するための実質的な議論がされていないことから すると,商法842条7号にいう「雇傭契約」は「雇入契約」のことであって,一般の雇用契約と同義に解することは,立法者意思を逸脱する解釈であると主張する。 しかしながら,上記①及び②を前提とすると,旧商法への改正時に,立法者は「雇入契約」が「雇傭契約」に当たることを想定していたとはいえるものの,民法においては船員以外についても使用されていた「雇傭契約」という文言を使用したのであるから,立法者が民法 の改正時に,立法者は「雇入契約」が「雇傭契約」に当たることを想定していたとはいえるものの,民法においては船員以外についても使用されていた「雇傭契約」という文言を使用したのであるから,立法者が民法上の意味での「雇用契約」に基づく債権を排除する意思であったとまでは認められず,雇用契約と同義に解することが立法者意思の逸脱であるとはいえない。 ウそして,上記イのように,「雇傭契約」を民法上の雇用契約と同義に解する場合,賃金が商法842条7号の債権に該当することは明らかであるところ,退職金債権等が賃金の後払いとしての性質を有することは否定し難いから,退職金債権等を,商法842条7号の債権から一律に除外する理由があるとは認められない。この点,原告は,船員の退職金制度の沿革や国際条約との関係,船舶金融にもたらす影響等の観点から種々の主張をするが,賃金の後払いという退職金の性質を覆すものではなく,採用することはできない。 退職金債権等が一般的に商法842条7号の債権に該当するとしても,その範囲は,①船舶への乗船ないし航海に関する部分に限定され,さらに,②乗船ないし航海の中でも,先取特権の目的物となる特定の船舶に関する部分に限定されると解するのが相当である。その理由は次のとおりである。 ア商法842条7号の船舶先取特権は,債務者の全財産ではなく特定の物について成立する担保権であることから,被担保債権と目的物である船舶との牽連性が求められる。本号の発生原因として乗船ないし航海の事実は不可欠であると解されるところ,その趣旨からすれば,乗船ないし航海に関する部分ではない部分については,先取特権を認める理由を欠く。 イ旧商法において,「雇傭契約」へと文言が変更され,また,その際,「最後の雇入期間中」生じた債権とされていたのが単に「 関する部分ではない部分については,先取特権を認める理由を欠く。 イ旧商法において,「雇傭契約」へと文言が変更され,また,その際,「最後の雇入期間中」生じた債権とされていたのが単に「雇傭契約」により生じた債権となって時期の限定がなくなったが,その改正理由は,証拠(甲32)によれば,船舶先取特権の被担保債権を最後の航海より生じた債権に限定するのではなく,航海の前後を問わず航海より生じた債権につき拡大する趣旨であると認められる。そうであれば,航海と無関係に生じた債権にまで拡大する理由は見当たらない。 ウそして,が認められる範囲は厳格に解釈すべきであるから,特定の船舶への乗船ないし航海に関して発生したものではない債権を被担保債権とすることはできない。 本件の場合,本件船員被告らの主張する退職金債権等が仮に存在するとしても,次の理由により,特定の船舶についての乗船ないし航海に関する部分とそうではない部分とが区別できないので,商法842条7号に該当する被担保債権とは認められない。 ア本件船員被告らが船舶競売を申し立てた対象は,本件各船舶の計2隻であるから,本件船員被告らのそれぞれについて,船舶ごとに,具体的に乗船ないし航海を行ったことを明らかにする必要があるが,被告らはこれを明らかにしようとしない。この点,被告らは,船員法施行規則22条に基づき,本件各船舶について一括届出の許可を受けていることにより,船舶ごとの乗船ないし航海の事実について明らかにする必要がないと主張する。 しかしながら,上記許可自体は,具体的な乗船ないし航海の事実を何ら立証しないから,上記主張は失当である。 イ加えて,被告らの主張する退職金債権等のうち,本件各船舶の乗船ないし航海に関する部分をそれぞれ特定する必要があるが,雇用契約や就業規則上, の事実を何ら立証しないから,上記主張は失当である。 イ加えて,被告らの主張する退職金債権等のうち,本件各船舶の乗船ないし航海に関する部分をそれぞれ特定する必要があるが,雇用契約や就業規則上,退職金等の算定に当たって具体的な乗船ないし航海をどのように反映するか明らかではない。もっとも,上記算定方法が明らかではない場合 には,例えば,本件船員被告らのそれぞれについて,全労働時間に対する,本件各船舶のそれぞれへの乗船ないし航海した時間の割合を求め,これにより被担保債権部分を算出することが考えられるが,これを算出するに必要な時間も明らかではない。 3 結論以上のとおりであり,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は全部理由がある。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西洋 裁判官榎本康浩 裁判官内藤陽子
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