平成29(ワ)3605 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年7月20日 東京地方裁判所
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平成30年7月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第3605号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成30年5月30日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は,別紙被告侵害品目録記載の製品を製造し,販売し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告侵害品目録記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告株式会社吾妻製作所に対し,21万7218円及びこれ に対する平成29年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告株式会社産業資材センターに対し,21万7217円及びこれに対する平成29年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 7 この判決は,第1項,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録記載の製品及び半製品(別紙被告製品目録記載の構 造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。 3 被告は,原告株式会社吾妻製作所に対し,175万円及びこれに対する平成29年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告株式会社産業資材センターに対し,175万円及びこれに対する平成29年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 仮執行宣言 第2 事案の概要 1 本件は, 告は,原告株式会社産業資材センターに対し,175万円及びこれに対する平成29年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 仮執行宣言 第2 事案の概要 1 本件は,原告らが,被告は,原告らが共有する特許権に係る特許発明の技術的範囲に属する製品を製造販売等して原告らの特許権を侵害していると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく別紙被告製品目録記載の製品の製造,販売及び譲渡の申出の差止め,同条2項に基づく同製品及び半製品の廃棄を求め るとともに,特許法102条2項に基づき損害賠償金各150万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年2月9日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨 により認定することができる事実。なお,以下,本判決を通じ,特に断らない限り,摘示した証拠は枝番を含むものとする。)(1) 当事者ア原告吾妻製作所は,交通安全用品及び電子機器の開発・製作・販売を主たる業務とする株式会社であり,原告産業資材センターに,車道に設置する視 線誘導標に被せるカバー(ポストサイン,ポストウィング。以下「原告製品」という。)の製造を委託し,株式会社吾妻商会(以下「吾妻商会」という。)を販売店として,これを販売している。(甲1~4,36)イ被告は,道路保安機材の販売,賃貸及び輸出入を主たる業務とする株式会社である。 (2) 原告らの特許権 ア原告らは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)を,各2分の1の持分割合で共有している。(甲6) (2) 原告らの特許権 ア原告らは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)を,各2分の1の持分割合で共有している。(甲6)特許番号:特許第4599467号出願日:平成22年3月29日優先日:平成21年9月29日 優先権主張国:日本登録日:平成22年10月1日発明の名称:ポール式視線誘導標用カバーイ本件特許に係る出願については,平成22年8月18日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がされているところ,本件補正後の特許請求 の範囲請求項1(以下,単に「請求項1」といい,同請求項に係る発明を「本件発明」という。下線部は本件補正により補正された部分である。)は,次のとおりである(なお,以下,本件補正後の明細書及び図面等を併せて「本件明細書等」という。)。 「ポール式視線誘導標に装着されるポール式視線誘導標用カバーであって, 該カバーを,前記ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部と,該筒部の外周面から外方に延出し,前記ポール式視線誘導標の視認幅を拡張する少なくとも2枚の翼部とを備えて構成するにあたり,前記ポール式視線誘導標用カバーは,ポール式視線誘導標の外周面の上端から下端までを覆うものであり, 各翼部の外方への拡張は,カバー上端から下端に至るまで同じ視認幅を有したものであり,かつ,視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されていることを特徴とするポール式視線誘導標用カバー。」(3) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説す かつ,視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されていることを特徴とするポール式視線誘導標用カバー。」(3) 構成要件の分説 本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成 要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などという。)。 A ポール式視線誘導標に装着されるポール式視線誘導標用カバーであって,B1 該カバーを,前記ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部と,B2 該筒部の外周面から外方に延出し,前記ポール式視線誘導標の視認幅を 拡張する少なくとも2枚の翼部とを備えて構成するにあたり,C 前記ポール式視線誘導標用カバーは,ポール式視線誘導標の外周面の上端から下端までを覆うものであり,D 各翼部の外方への拡張は,カバー上端から下端に至るまで同じ視認幅を有したものであり, E かつ,視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されていることF を特徴とするポール式視線誘導標用カバー。 (4) 被告の行為被告は,ポストフレックスシリーズの一つとして,遅くとも平成28年5月 20日頃以降,別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を,製造,販売し,譲渡の申出をしている。なお,被告は,被告製品(カバー)とポストフレックス本体(以下,単に「ポストフレックス」という場合がある。)をセットにした商品を「ワイドカバータイプ」として販売している(以下,このセット商品を「本件商品」という。)。本件商品のカタログ掲載価格は3万 4500円であるが,実際の販売単価は●(省略)●円である。 被告が製造販売した被告製品には,少なくとも下記写真に撮影され 品を「本件商品」という。)。本件商品のカタログ掲載価格は3万 4500円であるが,実際の販売単価は●(省略)●円である。 被告が製造販売した被告製品には,少なくとも下記写真に撮影された製品が含まれる。(甲7) (5) 被告製品の構成被告製品は,少なくとも次の構成(以下「構成a」などという。)を有する。 a ポストフレックス(正面視でベース部分を含め縦幅80cm,横幅7. 7cm)に装着されるポストフレックス用カバーであって, b1 ターポリン製保護カバーと,フラットな表示板をポストフレックス前面に固定するためのトグラーと,b2 トグラーによって,ポストフレックス前面に固定されるプラスチック板,別のターポリン製保護カバー及び反射カバー(高輝度反射シート)からなる前記フラットな表示板とを備えて構成するに当たり, c ポストフレックスを上端から70cm挟み込み,d 前記フラットな表示板は,正面視で縦幅70cm,横幅20cmの長方形であり,e 文字が前記フラットな表示板のフラットな表示面に左右所定の余白を設けて施されている。 f ポストフレックス用カバー 3 争点被告製品が構成要件Dを充足することについては,当事者間に争いがない。ま た,構成要件Fの充足性について当事者間に争いがあるが,他の構成要件と争点が重複するので,本件の争点は次のとおりとなる。 (1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア被告製品が構成要件Aを充足するか(争点1-1)イ被告製品が構成要件B1を充足するか(争点1-2) ウ被告製品が構成要件B2を充足するか(争点1 するか(争点1)ア被告製品が構成要件Aを充足するか(争点1-1)イ被告製品が構成要件B1を充足するか(争点1-2) ウ被告製品が構成要件B2を充足するか(争点1-3)エ被告製品が構成要件Cを充足するか(争点1-4)オ被告製品が構成要件Eを充足するか(争点1-5)(2) 被告製品による均等侵害の成否(争点2)(3) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点 3)ア無効理由1(争点3-1)イ無効理由2(争点3-2)ウ無効理由3(争点3-3)エ無効理由4(争点3-4) オ無効理由5(争点3-5)カその他の無効理由(争点3-6)(4) 差止めの必要性(争点4)(5) 原告らの損害額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 争点1-1(被告製品が構成要件Aを充足するか)について(原告らの主張)アポストフレックスは,構成要件A(構成要件B1,B2,C,Fも同様)の「ポール」に該当する。 構成要件Aの「ポール式」とは,まっすぐで細長い形状のものを意味し(甲 22の1~3),断面が凸型のものも除外されない。ポストフレックスは,カバー(被告製品)を外した状態(下記写真左側参照)をみれば明らかなとおり,細長い棒状の「ポール式」である。請求項1や本件明細書等には「ポール式」が円柱状であるとの記載は存在しないので,本件発明の「ポール式」を円柱状に限定すべき理由はない。 イポストフレックスは,構成要 本件明細書等には「ポール式」が円柱状であるとの記載は存在しないので,本件発明の「ポール式」を円柱状に限定すべき理由はない。 イポストフレックスは,構成要件A(構成要件B1,C,Fも同様)の「視線誘導標」に該当する。 ポストフレックスは,被告のウェブサイト(甲9)に「視線誘導標ポストフレックス」との表記があるとおり,「視線誘導標」である。被告は,視線 誘導標は複数設置されることにより初めてその効果が発揮されると主張するが,請求項1は「視線誘導標」を複数に限定していない。 ウ以上のとおり,被告製品は「ポール式視線誘導標に装着されるポール式視線誘導標用カバー」であるから,構成要件Aを充足する。 (被告の主張) ア構成要件Aの「ポール式」とは,切断面が円形のものをいうところ,ポストフレックスの切断面は凸型なので,構成要件Aを充足しない。 本件明細書等の段落【0020】及び【図7】には「下側ほど径が大きいポール式視線誘導標」が記載されているから,本件発明の「ポール」は,辞書等に記載されている細長いまっすぐな形状をしたものではない。 また,本件明細書等の【図3】及び【図4】に描かれたポールの形状は円 柱状であり,段落【0020】には,「筒部」,「径が大きい」などの記載がある。 さらに,本件発明の効果に係る段落【0007】には,フラットな表示面の効果として,「曲面による視線誘導標の歪みを防止」することができる旨の記載がある。これは,ポール式視線誘導標が曲面で構成され,フラットな 表示面を有しないことを意味するものである。 そうすると,本件発明における「ポール式」は,切断面が円形のものを前提としていると解すべきである。ポストフレ 線誘導標が曲面で構成され,フラットな 表示面を有しないことを意味するものである。 そうすると,本件発明における「ポール式」は,切断面が円形のものを前提としていると解すべきである。ポストフレックスの切断面は凸型であって円形ではないので,構成要件Aの「ポール式」には当たらない。 イポストフレックスは,構成要件Aの「視線誘導標」に該当しない。 視線誘導標とは,道路上に一定間隔で複数設置され,道路の形状やセンターラインの位置を運転者に知らせるものである。視線誘導標は,複数設置されることによって初めて視線誘導の効果が発揮されるから,単体で運転者に「立入禁止」であることを知らせる注意喚起用のものなどは,単なる看板であって視線誘導標ではない。 ウこのように,ポストフレックスは「ポール式視線誘導標」ではないから,被告製品は構成要件Aを充足しない。 (2) 争点2(被告製品が構成要件B1を充足するか)について(原告らの主張)被告製品は,構成要件B1(構成要件B2,Eも同様)の「筒部」を備え, 当該「筒部」はポール式視線誘導標の外周面を覆っているので,構成要件B1を充足する。 構成要件B1の「筒部」とは,ポール式視線誘導標用カバーのうち,ポール式視線誘導標の外周面を覆う部分であって,細長くて中空になっているものを意味する。被告は,「筒」が,「円く細長くて中空になっているもの。」を意 味すると主張するが,筒には四角形状の「角筒」(甲23)や「三角筒」(甲 24)なども存在し,まるい筒を意味する「円筒」という用語もあるとおり,「筒」自体にはその形状を限定する意味はない。 被告製品においては,ターポリン製保護カバーがポストフレックスのフラットな表示 なども存在し,まるい筒を意味する「円筒」という用語もあるとおり,「筒」自体にはその形状を限定する意味はない。 被告製品においては,ターポリン製保護カバーがポストフレックスのフラットな表示面以外の外周面を覆い,フラットな表示面がポストフレックスの前方外周面を覆っているから,ポストフレックスは,ターポリン製保護カバー及び フラットな表示面によって外周面を覆われている(下記写真参照)。被告製品のターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は,ポストフレックスの外周面を覆い,かつ細長くて中空になっている形状であるから,「筒部」に該当する。 (被告の主張)被告製品は構成要件B1の「筒部」を備えていないので,構成要件B1を充足しない。 ア 「筒」とは,「円く細長くて中空になっているもの」を意味する(乙1)。 被告製品はフラットな表示板を有するところ,本件明細書等においてこれに 対応するのは【図9】である。同図に示されたカバーの構成は下記のとおりであり,「筒部」(2)(赤色部分)と「フラットな表示面」(13)(青色部分)によって囲まれている。 そして,【図9】では,背面視(E),側面視(B),(D)には「筒部」(2)が記載されているが,正面視(C)の「フラットな表示面」(13)には「筒部」(2)の記載はない。【図10】の(C)及び(D)も同様である。このような記載に照らすと,本件発明の筒部2は,視線誘導標を取り囲む構成のうち,フラットな 表示面以外の部分(上記赤色部分)である。 また,構成要件B1の文言上も,視線誘導標の外周面を覆う部分全域が「筒部」であると規定されているわけではない。 さらに,「ポ な 表示面以外の部分(上記赤色部分)である。 また,構成要件B1の文言上も,視線誘導標の外周面を覆う部分全域が「筒部」であると規定されているわけではない。 さらに,「ポール式視線誘導標」は切断面が円形であるから,その外周面を覆う「筒部」も曲面を有しなければならないが,フラットな表示面は曲面 ではないので,この点からも,フラットな表示面は「筒部」を構成しない。 イ本件明細書等の【図9】は,以下のとおり,カバーがΩ型の形状であり,視線誘導標の外周の大半を取り囲んでいるから,「円くて細長くて中空」の形状ということができる。 他方,被告製品のターポリン製保護カバーの形状は,以下のとおり,カバ ーは山型で裾が広がっているから,「円くて細長くて中空」の形状とはいえず,カバーは「筒部」を構成しない。 したがって,被告製品には構成要件B1の「ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部」は存在しない。 (3) 争点1-3(被告製品が構成要件B2を充足するか)について (原告らの主張)被告製品は「該筒部の外周面から外方に延出し,前記ポール式視線誘導標の視認幅を拡張する少なくとも2枚の翼部」を備えているので,構成要件B2を充足する。 被告は,被告製品は「2枚の翼部」を備えていないと主張するが,「翼」と は「建物などの左右に張り出した部分。」を意味する。構成要件B2の「2つの翼部」とは,実際に2枚のカバーが存在することではなく,筒部から左右に延出する形状となっていることを表現するにすぎないから,筒部から左右に延出する形状を備えていれば,「2枚の翼部」は存在する。 部」とは,実際に2枚のカバーが存在することではなく,筒部から左右に延出する形状となっていることを表現するにすぎないから,筒部から左右に延出する形状を備えていれば,「2枚の翼部」は存在する。 被告製品において,フラットな表示面のうち,ポストフレックスの外周面を 覆う部分から左右外方に延出した2つの部分は,下記写真のとおり,「外周面から外方に延出し」たものである。そして,円状の筒部に対し,長方形の形状をしていることにより,筒部から左右に張り出すこととなり,視認幅を拡張することができるから,「2枚の翼部」を構成するということができる。 したがって,被告製品は,構成要件B2を充足する。 (被告の主張)被告製品の翼部は「2枚」ではないから,同製品は構成要件B2を充足しない。 本件特許の請求項2において,フラットな表示面は,「一対の翼部が平面視で直線的に連続する」,「翼部が正面視で視認幅全域にわたる」とされているから,フラットな表示面は全域が翼部である。本件発明の「2枚の翼部」は,「筒部」から左右に「延出」して視線誘導標の視認幅を拡張することに特徴があるから,翼部が正面視で視認幅全域にわたってしまっては,もはや「2枚の 翼部」があるということはできない。 (4) 争点1-4(被告製品が構成要件Cを充足するか)について(原告らの主張)被告製品のカバーは,ポール式視線誘導標の外周面の上端から下端までを覆うものであるから,構成要件Cを充足する。 一般に,「下端」とは「物の下の方の外に近い所」を意味するのであり,構成要件Cは,ポール式視線誘導標の外周面の下の方の外に近い所までを覆うことを意味する。本件明細書等に 一般に,「下端」とは「物の下の方の外に近い所」を意味するのであり,構成要件Cは,ポール式視線誘導標の外周面の下の方の外に近い所までを覆うことを意味する。本件明細書等においても,ベース部とカバー部分の間に一切の露出がないと限定する記載はなく,本件明細書等の【図3】には,カバーとベース部との間に一定の隙間があることが示されている。これによれば,本件発 明は,ベース部とカバーとの間に露出部分が存在することを予定している。 【図3】(抜粋)さらに,本件発明の効果に係る本件明細書等の段落【0007】によれば,本件発明の技術的意義は,ポール式視線誘導標に新品時を超える視認性を付与することにある。このような技術的意義からすれば,本件発明の構成要件とし て,運転手等の視覚から外れるベース部分付近を露出なく覆うことは必須ではない。 被告製品は,「ベース部の上部5cmまで」を覆う構成であり,ベース部の上部約5cmはポストフレックスの外周面の下の方の外に近い所であるから,構成要件C(構成要件Dも同様)の「下端」に該当する。 したがって,被告製品は,構成要件Cを充足する。 (被告の主張)被告製品のカバーは,ポール式視線誘導標の外周面の「下端」までを覆うものではないので,構成要件Cを充足しない。 ポストフレックスのベース部を除いた長さは75cmであるところ,被告製 品のターポリン製保護カバーは,ポストフレックスの後ろ側の上端から70cmしか挟んでいない。一般的に,高さ75cmの製品において,下から5cm離れた位置を「下端」ということはできない。 被告製品の設計図面(甲8)を見ても,ベース部とカバーの 70cmしか挟んでいない。一般的に,高さ75cmの製品において,下から5cm離れた位置を「下端」ということはできない。 被告製品の設計図面(甲8)を見ても,ベース部とカバーの間に段差が設けられており,これは,本件図面の【図3】における一定の隙間とは全く異なる。 また,原告らは,審査段階において原告らが特許庁に提出した平成22年8月18日付け意見書(甲15。以下「本件意見書」という。)において,各翼部の外方への延出幅が上端から下端までを覆うものであり,もって新品時を超 える視認性が付与されると明確に述べているから,原告らの主張は禁反言の原則に抵触する。 さらに,新品時を超える視認性を付与するという本件発明の効果は,本件発明のカバーが,ポール式視線誘導標のポール部を上端から下端まで同じ視認幅で覆い,かつ,視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施 されて初めて達成される。 以上によれば,被告製品は,構成要件Cを充足しない。 (5) 争点1-5(被告製品が構成要件Eを充足するか)について(原告らの主張)被告製品には「視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して 施されている」ので,同製品は構成要件Eを充足する。 ア 「視線誘導するための模様」について本件明細書等の段落【0033】及び【0035】の記載からすれば,構成要件Eの「視線誘導するための模様」とは,縞模様に限定されず,文字や絵柄などを含む。仮に,「模様」に純粋な文字が含まれないとしても,装飾 的な文字は,模様に含まれる。 道路視線誘導標協会のウェブページ(甲14)の「製品一覧」にも「文章表示タイプ」の製品が掲載されており,文字を印字するタ 字が含まれないとしても,装飾 的な文字は,模様に含まれる。 道路視線誘導標協会のウェブページ(甲14)の「製品一覧」にも「文章表示タイプ」の製品が掲載されており,文字を印字するタイプの製品であっても「視線誘導標」であることが前提とされている。 また,色付けされた反射性の幾何学模様があることにより,カバーが目立 つようになり,視認性が向上し,これに接した看者の視線が誘導されること になるから,文字や記号の有無にかかわらず,当該模様のみでも「視線誘導するための模様」に当たる。 イ 「模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との構成について(ア) 被告製品には,以下のとおり,複数のパターンが存在している。 被告製品① 被告製品② 被告製品③ 被告製品④(イ) 上記被告製品①,③及び④のように,被告製品のフラットな表示面において,ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字及び/又は記号が記載されている場合,文字及び/又は記号が「筒部か ら翼部に至るよう連続して施されている」ことは明らかである。 (ウ) 被告製品②のように,被告製品のフラットな表示面において,文字及び/又は記号がポストフレックスの外周面を覆う部分の幅とほぼ同一に印字されている場合であっても,被告製品のターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されているから, 被告製品のうち筒部及び翼部に相当する構成には,全体的に色付けされた幾何学模様が施されているということができる。 したがって,「視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続し 被告製品のうち筒部及び翼部に相当する構成には,全体的に色付けされた幾何学模様が施されているということができる。 したがって,「視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」という構成要件Eを充足する。 仮に,幾何学模様が「視線誘導するための模様」に該当せず,文字が「筒 部から翼部に至るよう連続して施されてい」ないとしても,色付けされた幾何学模様の上に文字が記載されることにより,全体として異なる色の組み合わせからなる模様となり,色付けされた反射性の幾何学模様があることによって,カバーが目立つようになり,視認性が向上し,これに接した看者の視線が誘導されることになる。 したがって,文字と幾何学模様の組み合わせを全体としてみれば,「視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」という構成要件Eを充足する。 (被告の主張)被告製品は「視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施 されている」ものではないので,構成要件Eを充足しない。 ア 「視線誘導するための模様」について構成要件Eの「視線誘導するための模様」には「文字」や「絵柄」は含まれない。本件明細書等の段落【0013】,【0027】には「縞模様」についての記載があるのみで,「文字」や「絵柄」は記載されていない。 また,本件意見書においても,「文字や模様」と記載され,文字と模様が別のものであることが前提とされている。 さらに,一般的な用法としても,「模様」とは「織物・染物・彫刻などの装飾に施す種々のかたち」を意味し(乙1),装飾であってそれ自体の語義やメッセージを観念できないものをいうので,意義 。 さらに,一般的な用法としても,「模様」とは「織物・染物・彫刻などの装飾に施す種々のかたち」を意味し(乙1),装飾であってそれ自体の語義やメッセージを観念できないものをいうので,意義やメッセージを観念し得 る「文字」や「絵柄」は「模様」ではない。 イ 「模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との構成について仮に,構成要件Eの「視線誘導するための模様」に「文字」や「絵柄」が含まれるとしても,上記被告製品②は,その文字の幅に照らし,構成要件E の「模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との構成を充足 しない。 原告らは,ターポリン製保護カバー及びフラットな表示面に施されている幾何学模様も構成要件Eの「模様」であると主張するが,この幾何学模様は,これらの素材にもともと施されている地模様であり,視線誘導するための模様ではない。本件明細書等の段落【0015】,【0016】にも,EVA ターポリン等の素材の地模様が「視線誘導するための模様」であるとの記載はない。 また,上記の幾何学模様は視線誘導するための模様ではないので,文字及び/又は記号と組み合わせたとしても,「模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との構成を充足するものではない。 加えて,被告製品①,③及び④についても,左右に所定の余白があるから,「筒部から翼部に至るよう連続して施されている」とはいうことはできない。 2 争点2(被告製品による均等侵害の成否)について(原告らの主張)構成要件Cに関し,仮に,被告製品がポール式視線誘導標の外周面の上端から 最下端までは覆っておらず,かかる点に本件発明と被告製品との間に相違点があるとし ついて(原告らの主張)構成要件Cに関し,仮に,被告製品がポール式視線誘導標の外周面の上端から 最下端までは覆っておらず,かかる点に本件発明と被告製品との間に相違点があるとしても,被告製品には本件特許権に対する均等侵害が成立する。 (1) 本件明細書等の段落【0005】の記載によれば,従来のポール式視線誘導標用カバーの技術課題は,新品時を超える視認性をポール式視線誘導標に付与することであり,本件発明は,かかる課題を解決するため,「ポール式視線誘 導標の外周を覆う筒部と,該筒部の外周面から外方に延出し,ポール式視線誘導標の視認性を拡張する翼部」という構成を採用している。本件発明における特徴的部分は,上記構成であり,カバーにより視線誘導標を露出部分なく覆うことではないから,前記相違点は,本件発明の本質的部分ではない。 (2) 本件発明の構成要件Cを被告製品の構成c(「上記ポール式視線誘導標用カ バーは,ポール式視線誘導標の外周面の上端から,ベース部の上部約5cmま でを覆うものであり」)のとおり置換したとしても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏する。 (3) 視線誘導標を上端からベース部に至るまで隙間なく覆うことに特段の技術的意義はない以上,ベース部の上部に隙間を設けることは,当業者が容易に想到可能な設計事項にすぎない。 (4) 原告が本件意見書(甲15)によって本件発明の構成から除外したのは,単に筒状のカバーを被せる構成(甲16)と,中央の表示部と翼部とに各別の文字や模様を施す構成(甲17)であり,視線誘導標にカバーを被せた際に一定の露出部分が生じる構成を意識的に除外したことはない。 (被告の主張) 構成要件Cは,補正により追加され の文字や模様を施す構成(甲17)であり,視線誘導標にカバーを被せた際に一定の露出部分が生じる構成を意識的に除外したことはない。 (被告の主張) 構成要件Cは,補正により追加されたものであるが,特許出願の手続においてあえて限定した構成について,その技術的範囲を拡張する主張をすることは,包袋禁反言の原則により許されない。 原告らがした本件補正は,実願2007-6190公報(甲16。以下「甲16公報」という。)を認識した上でされたことが明らかであるから,客観的,外 形的にみて,出願時に容易想到であった構成cが減縮前の特許請求の範囲に包含されると認識しながら,あえて構成cを除いて減縮したといえる。構成cは意識的に除外されているから,原告ら主張の均等論は成立しない。 3 争点3(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について (1) 争点3-1(無効理由1)について(被告の主張)本件発明は,甲16公報に記載された発明に周知慣用技術(乙3~10)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア甲16公報には,「筒状に形成された表示部本体と,該表示部本体の外周 面に設けられた光反射体とから構成され,路面に立設された柱状の視線誘導標識に嵌挿されることを特徴とする視線誘導標」の考案(以下「甲16考案」という。)が記載されている。 甲16考案は,①筒状の視線誘導標に装着される筒状の視線誘導標用のカバーであり,②該カバーには,前記筒状の視線誘導標の外周面を覆う筒状の 部分がある,③筒状の視線誘導標用のカバーであるということができる。同①~③は,それぞれ構成 着される筒状の視線誘導標用のカバーであり,②該カバーには,前記筒状の視線誘導標の外周面を覆う筒状の 部分がある,③筒状の視線誘導標用のカバーであるということができる。同①~③は,それぞれ構成要件A,B1及びFに対応するから,本件発明と甲16考案は,構成要件A,B1及びFで一致し,構成要件B2,C,D及びEで相違する。 イ一致点及び相違点について (ア) 構成要件Cについては,原告ら自身が設計事項であると主張しており,この点で本件発明に進歩性が認められることはない。 (イ) 本件特許出願当時,下記写真(乙10)のように,①フラットな表示面を有し,②フラットな表示面の形状が正面視で長方形であり,③その表示面には文字が記載されている看板は周知慣用技術であった(甲17,乙3 ~10。以下,この周知慣用技術を「本件周知技術」という。)。上記①~③の構成は,それぞれ構成要件B2,D及びEに相当する。 ウ容易想到性についてポール状の視線誘導標のカバーである引用発明1に,フラットな表示面に 文字が書かれた看板である本件周知技術を組み合わせて相違点に係る各構成とすることは,その動機,示唆があり,自明の課題でもあるので,本件特許出願当時の当業者であれば容易に想到し得ることであった。 引用発明1は,車線誘導のために路面上に設置される視線誘導標であるところ,視線誘導標と看板は,いずれも視認性の向上を課題とするものであり, その技術分野は密接に関連している。本件明細書等の【図9】のフラットな表示面も,これを取り出してみると看板にほかならない。 また,例えば,特開2000-204524公報(乙7。以下「乙7公報」という は密接に関連している。本件明細書等の【図9】のフラットな表示面も,これを取り出してみると看板にほかならない。 また,例えば,特開2000-204524公報(乙7。以下「乙7公報」という。)の段落【0019】,【図14】及び【図15】には,視認性の向上という課題が示唆されるとともに,看板15をシート20に取り付けて, 一体としてカラーコーンに被せるカバーを形成するという構成が開示されている。このように,看板とカバーの作用,機能,効果は共通しており,技術分野は異ならない。 (原告らの主張)ア甲16考案の構成,並びに本件発明1と甲16考案との一致点及び相違点 については認める。 イ被告の主張する本件周知技術に関し,フラットな表示面を備え,当該表示面は正面視で長方形であり,当該表示面に文字が記載されている看板が,看板の技術分野において周知慣用技術であったことは認める。しかし,本件周知技術は,看板に関するもので,ポールの外周面を覆うカバーに関するもの ではないので,本件周知技術は前記各相違点に相当するものではない。周知技術は同一の技術分野において周知である場合に適用が肯定されるものであるところ,甲16考案と看板とは技術分野を異にすることから,本件周知技術は同発明に適用される基礎を欠く。 ウ被告の指摘する乙7公報の段落【0019】,【図14】等を根拠にして, 甲16考案に本件周知技術を組み合わせる動機があると主張するが,乙7の 看板付きシートは,看板とシートを区別しており,看板を含めてカバーを形成する発明は開示されていない。 (2) 争点3-2(無効理由2)について(被告の主張)本件発明は,甲16考案に特開2007-269055公報( 板を含めてカバーを形成する発明は開示されていない。 (2) 争点3-2(無効理由2)について(被告の主張)本件発明は,甲16考案に特開2007-269055公報(乙8。以下「乙 8公報」という。)に記載された発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア乙8公報の段落【0008】,【0026】,【0034】,【0040】,【0044】,【図1】,【図3】,【図5】及び【図7】によれば,同公 報には,①筒状の看板又は横風監視装置,②フラットな表示面の看板又は横風監視装置,③スリーブ部と,該スリーブ部の外周面から外方に延出する2つの羽根部を備え,各羽根部の外方への拡張は,スリーブ部の上端から下端に至るまで同じ視認幅を有している看板ないし横風監視装置の発明(以下「乙8発明」という。)が記載されている。 イ甲16考案に乙8発明を適用すると,スリーブ部(筒部)と,該スリーブ部の外周面から外方に延出する2つの羽根部(翼部)を備え,各羽根部の外方への拡張は,スリーブ部の上端から下端に至るまで同じ視認幅を有しており,視認誘導するための模様がスリーブ部から羽根部に至るように連続して施された表示のカバーが構成されることになる。これは,構成要件B2,D 及びEに対応するものである。 ウ乙8公報には,上記①ないし③の発明が一つの発明として記載され,上記①及び②の実施形態による表示を上記③の実施形態によっても表示できることが示されている。そうすると,同公報には,筒状の形態(上記①)から,羽根部が外方に拡張した形態(上記③)に置換し得ることが示唆されている ということができる。また,上記横風監視装 示できることが示されている。そうすると,同公報には,筒状の形態(上記①)から,羽根部が外方に拡張した形態(上記③)に置換し得ることが示唆されている ということができる。また,上記横風監視装置は,電柱Pの外周を覆うもの であるから,「カバー」である。 そして,甲16考案も乙8発明も,同じく走行中の運転者に注意喚起する発明であるから,技術分野は共通しており,本件特許出願当時,視線誘導標の視認性の向上は当業者にとって自明の課題であり,乙8発明に係る構成において視認性が向上することは自明である。 このように,甲16考案に乙8発明を適用することの示唆も動機付けもあるから,甲16考案に乙8発明を適用した上記の発明に想到することが当業者にとって容易であったことは明らかである。 (原告らの主張)ア乙8発明の内容に関する被告の主張は認めるが,乙8公報には,看板ない し横風監視装置の発明が記載されているのみであって,カバーの発明が記載されていないから,乙8発明は,本件発明と甲16考案の前記相違点に係る構成を備えておらず,甲16考案と乙8発明を組み合わせても,本件発明には至らない。 イ乙8発明は,沿線全域にわたって,走行中の鉄道車両が受ける横風を簡易 に監視することのできる看板ないし横風監視装置の発明であって,カバーの発明ではないから,本件発明及び甲16考案とは技術分野が異なり,作用,機能,効果も全て異なる。 さらに,甲16公報及び乙8公報には,本件発明の課題である「劣化などで低下したポール式視線誘導標の視認性を回復させること」,「新品時を超 える良好な視認性をポール式視線誘導標に付与する」ことが一切記載されていない。乙8発明の羽根部についても,横風 「劣化などで低下したポール式視線誘導標の視認性を回復させること」,「新品時を超 える良好な視認性をポール式視線誘導標に付与する」ことが一切記載されていない。乙8発明の羽根部についても,横風を受けて羽根部材を回転させるための部材であって,視認性とは何ら関係がない(乙8公報の段落【0001】)。 このように,甲16考案と乙8発明を組み合わせる動機付けは存在しない。 (3) 争点3-3(無効理由3)について (被告の主張)本件発明は,甲16考案に米国特許第4798017号明細書(乙12。以下「乙12明細書」という。)に記載された発明(以下「乙12発明」という。)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア乙12明細書には,正面視が長方形であるフラットな表示面を備え,その表示面には視線誘導のための模様が記載されている視線誘導標が開示されている。 イ甲16考案に乙12発明を組み合わせると本件発明に係る構成となる。乙12発明は交通方向看板に関するものであり,甲16考案と同様に視線誘導 標の技術分野の発明であるから,当業者であれば甲16考案に乙12発明を適用して本件発明に係る構成を容易に想到し得る。 (原告らの主張)ア乙12発明の内容に関する被告の主張は認めるが,乙12明細書には,カバーの発明が一切記載されていないから,本件発明と甲16考案の相違点に 係る構成を備えておらず,甲16考案と乙12発明を組み合わせても本件発明には至らない。 イ乙12発明は,カバーの発明ではないから,本件発明及び甲16考案と技術分野が異なる。また,甲16公報及び乙12明 えておらず,甲16考案と乙12発明を組み合わせても本件発明には至らない。 イ乙12発明は,カバーの発明ではないから,本件発明及び甲16考案と技術分野が異なる。また,甲16公報及び乙12明細書には,本件発明の課題である「劣化などで低下したポール式視線誘導標の視認性を回復させるこ と」,「新品時を超える良好な視認性をポール式視線誘導標に付与する」ことが一切記載されていないので,甲16考案に乙12発明を組み合わせる動機付けは存しない。 (4) 争点3-4(無効理由4)について(被告の主張) 本件発明は,乙12発明に乙8発明を組み合わせることにより,当業者が容 易に想到し得たものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア乙12発明に乙8発明を適用すると,スリーブ部(筒部)と,該スリーブ部の外周面から外方に延出する2つの羽根部(翼部)を備え,各羽根部の外方への拡張は,スリーブ部の上端から下端に至るまで同じ視認幅を有してお り,視線誘導するための模様がスリーブ部から羽根部に至るように連続して施された表示が構成されるが,これは,構成要件B2,D及びEに対応する。 したがって,乙12発明に乙8発明を適用しても,本件発明の特徴的な構成である構成要件Eを有する構成に至る。 イ乙8発明の横風監視装置は,前述のとおり,電柱Pの外周を覆うから,「カ バー」である。そして,乙8公報においては,円柱状の表示(【図1】)のみならず,フラットな表示面に施された表示(【図3】)を,羽根部を有する構成(【図5】等)に置き換える動機が示唆されている。 そうである以上,乙12発明の標示を乙8公報の【図5】等の標示と置き換え,乙8発明の筒部と羽根部に 表示(【図3】)を,羽根部を有する構成(【図5】等)に置き換える動機が示唆されている。 そうである以上,乙12発明の標示を乙8公報の【図5】等の標示と置き換え,乙8発明の筒部と羽根部にわたる視線誘導のための模様(乙12発明 の交通誘導看板に施された模様)を施すことも,容易に想到し得る。 (原告らの主張)本件発明がポール式視線誘導標用カバーに関するものであるのに対して,乙12発明は視線誘導標に関するものである点で異なっており,本件発明と乙12発明の一致点が全く存しない。 また,乙8公報において,【図3】の表示と【図5】の表示は,それぞれ別の発明として記載されており,置き換えるようなものではない。 以上のとおり,乙12発明に乙8発明を適用しても本件発明に至ることはなく,また,乙12に乙8を組み合わせることの動機付けもない。 (5) 争点3-5(無効理由5)について (被告の主張) 本件発明は,甲16考案に米国特許第5205236号明細書(乙15。以下「乙15明細書」という。)に記載された発明(以下「乙15発明」という。)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。 ア乙15明細書には,次の構成が開示されている。 ① 高速道路の車道の境界に設置されるマーカー(標識)を構成するポストであって,② 該ポストを,補強用芯材(stiffenercore 27)の外周面を覆うカバーとして機能する中央部(筒部)と該中央部(筒部)の外周面から外方に延出する2つの側部(翼部)とを備えて構成するにあたり, ③ 前記ポストは,マーカーの補強用芯材 の外周面を覆うカバーとして機能する中央部(筒部)と該中央部(筒部)の外周面から外方に延出する2つの側部(翼部)とを備えて構成するにあたり, ③ 前記ポストは,マーカーの補強用芯材(stiffenercore 27)の外周面の上端から下端までを覆うものであり,④ 各側部(翼部)の外方への拡張は,視線誘導標の上端から下端に至るまで同じ視認幅を有したものであることを⑤ 特徴とするマーカー(標識) イ次のとおり,甲16考案に乙15発明を組み合わせることで,構成要件B2,C,D,Eを備えることになる。 (ア) 構成要件B2甲16考案のカバーに上記ア②の構成を組み合わせることで,「中央部(筒部)と該中央部(筒部)の外周面から外方に延出する2つの側部(翼 部)」を備えることになる。そして,甲16考案の表示部分本体(カバー)は,視線誘導標識(視線誘導標)に嵌挿されているから,上記2つの翼部は,「ポール式視線誘導標の視認幅を拡張する」ことになり,構成要件B2を備える。 (イ) 構成要件D 甲16考案に上記ア④の構成を組み合わせることで,甲16考案の表示 部本体(カバー)は,構成要件Dを備える。 (ウ) 構成要件C甲16考案に上記ア③の構成を組み合わせることで,表示部全体(カバー)は,「ポール式視線誘導標の外周面の上端から下端までを覆う」ことになり,構成要件Cを備える。 (エ) 構成要件E甲16考案には,視線誘導するための模様が施されており(【図1】,段落【0015】),これに上記ア④を組み合わせると,「中央部(筒部)と該中央部(筒部)の外周面から外方に延出する2つの側部( 甲16考案には,視線誘導するための模様が施されており(【図1】,段落【0015】),これに上記ア④を組み合わせると,「中央部(筒部)と該中央部(筒部)の外周面から外方に延出する2つの側部(翼部)」が構成される。視線誘導標の視認性の維持を目的とする甲16考案において, 「2つの翼部」に上記模様を施すことは容易であるから,構成要件Eを備えることになる。 ウ甲16考案は視線誘導標のカバーに関するもので,乙15発明はマーカー(標識)に関するものであるから,両者の技術分野は同一である。そして,視線誘導標やマーカー(標識)において,視認性の向上は自明の課題である から,乙15発明を甲16考案に適用する動機付けがある。 原告らは,乙15発明には,本件発明の課題である視線誘導標の視認性の回復等の課題が開示されていないと主張する。しかし,本件発明の固有の課題は,視線誘導標のカバーの形状を限定した点にある。当業者であれば,視線誘導標のカバーの形状について,様々な交通誘導看板や視線誘導標の形状 を組み合わせるのは当然であるから,甲16考案に乙15発明を組み合わせるのに何らの障害はなく,むしろ組み合わせる動機が存在する。 また,乙15発明は,高速道路のマーカー(標識)用の芯材のみならず,それに被せてマーカー(標識)として使用するポストを開示している。マーカー(標識)は,運転者から視認されて初めてその役割を果たし得るのであ り,乙15発明においては,交換することでポール式視線誘導標の視認性が 回復され,かつ,芯材本体を超える視認性の付与がなされているから,本件発明と作用,機能,効果が同一である。 したがって,甲16考案に乙15発明を組み合わせることにより,当業者が本件発明の構 復され,かつ,芯材本体を超える視認性の付与がなされているから,本件発明と作用,機能,効果が同一である。 したがって,甲16考案に乙15発明を組み合わせることにより,当業者が本件発明の構成に想到するのは容易である。 エ無効理由5の主張及び証拠(乙15)が時機に後れたものであるとの原告 らの主張は争う。 (原告らの主張)ア被告による無効理由5に関する主張並びに証拠(乙15)の申出は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 イ乙15発明の内容は次のとおりである。 車線の境界を示すのに用いられるハイウェイの看板(サイン)又はマーカー(標識)11であって,該看板は,フレキシブル要素17で接続させたべースとポスト23からなり,前記ポスト23は,縦方向に全長にわたって延びる貫通穴25を有し, 前記貫通穴25は,ほぼ楕円形であり,短径よりも大きい長径を有し,補強用芯材(コア)27は,前記ポスト23の下端から上方に向かって前記貫通穴25内に延在し,前記補強用芯材(コア)27の上端は,前記ポスト23の上端よりも下の位置で終端し, 前記ポスト23及び前記補強用芯材(コア)は,その厚みよりも広い幅を有する車線の境界を示すのに用いられるハイウェイの看板(サイン)又はマーカー(標識)ウ乙15発明は,「車両のバンパーがポストに衝突すると,ポスト自体が損 傷し,フレキシブル要素以外の部分で曲がってしまう可能性がある」という 課題を解決するために,ポストに補強用芯材(コア)を設け,当該補強用芯材(コア)によって,車両が衝突した際に,エラストマー要素の部分でポス 素以外の部分で曲がってしまう可能性がある」という 課題を解決するために,ポストに補強用芯材(コア)を設け,当該補強用芯材(コア)によって,車両が衝突した際に,エラストマー要素の部分でポストを撓ませることができるようにした発明である。補強用芯材(コア)27は,ポスト23を補強するものにすぎず,「ポスト23」は,補強用芯材(コア)27のカバーとして機能するものではなく,ポスト本体そのもののこと であり,本件発明の「ポール式視線誘導標」に相当する構成である。 したがって,補強用芯材(コア)27は,ポスト本体とはいえないものであるから,「ポスト23」は,補強用芯材(コア)を覆うものであるとしても,ポスト本体を覆うカバーと呼べるものではなく,ポスト本体そのものである。 このように,乙15発明には,看板(サイン)又はマーカー(標識)の発明が記載されているのみであって,カバーの発明が一切記載されていないから,本件発明と甲16考案に係る構成を備えていない。 エ乙15明細書には,本件発明の課題である「劣化などで低下したポール式視線誘導標の視認性を回復させること」,「新品時を超える良好な視認性を ポール式視線誘導標に付与する」ことは,一切記載されていない。 また,本件発明がポール式視線誘導標用カバーに関するものであるのに対し,乙15発明は,車線の境界を示すのに用いられるハイウェイの看板(サイン)又はマーカー(標識)に関するものであるから,作用,機能,効果も全て異なる。 したがって,甲16考案に乙15明細書記載の発明を組み合わせる動機付けは存しない。 (6) 争点3-6(その他の無効理由)について(被告の主張)ア無効理由6-1 がって,甲16考案に乙15明細書記載の発明を組み合わせる動機付けは存しない。 (6) 争点3-6(その他の無効理由)について(被告の主張)ア無効理由6-1 仮に,本件発明に係るターポリン製カバーの地模様が構成要件Eの「模様」 に当たるとしても,看板にターポリン製のカバーを被せることが容易想到であることは明らかであるから(乙16の6枚目上側の写真にはブルーシートが交通標識の視認幅を広げていることが開示されている。),本件発明は,本件周知技術又は乙12発明に乙16で開示された上記構成を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。 イ無効理由6-2仮に,本件発明に係るターポリン製カバーの地模様が構成要件Eの「模様」に当たるとしても,乙12発明の看板にカバーを被せることは容易想到であり,視線誘導標にカバーを被せるという動機は甲16考案に記載されているから,本件発明は,乙12発明に甲16考案を適用することにより,当業者 が容易に想到し得たものである。 ウ無効理由6-3仮に,本件発明に係るターポリン製カバーの地模様が構成要件Eの「模様」に当たるとしても,乙15発明のマーカー(標識)にカバーを被せることは容易であり,甲16考案には,視線誘導標にカバーを被せるという動機が開 示されているから,本件発明は,乙15発明のマーカー(標識)に甲16考案を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。 エ無効理由6-1ないし6-3の主張及び証拠(乙15,16)の申出が時機に後れているとの原告らの主張は争う。 (原告らの主張) ア上記無効理由6-1ないし6-3は,時機に後れた攻撃防御方法である ないし6-3の主張及び証拠(乙15,16)の申出が時機に後れているとの原告らの主張は争う。 (原告らの主張) ア上記無効理由6-1ないし6-3は,時機に後れた攻撃防御方法であるから,同各主張及び証拠(乙15,16)の申出は,却下されるべきである。 イ無効理由6-1に関し,乙16には,ブルーシートが,交通標識の視認幅を広げていることは開示されておらず,これは,本件発明とは全く無関係である。また,ターポリン製カバーがブルーシートのように用いられるという 事実はなく,仮にそうした事実があったとしても,これを看板に被せること には結びつかない。 したがって,無効理由6-1の主張は理由がない。 ウ無効理由6-2に関し,甲16考案は,筒状の視線誘導標を,柱状の視線誘導標識に嵌挿する発明であって,乙12発明のような板状の看板にカバーを被せることなど一切記載されていないから,当業者が甲16考案の筒状の 視線誘導標を,乙12発明の板状の看板に被せることを考えるはずがなく,ましてや容易に想到することはあり得ない。 したがって,無効理由6-2の主張は理由がない。 エ無効理由6-3に関し,ターポリン製カバーはブルーシートのように日常的に使われるという事実はなく,仮にそのような事実があったとしても,乙 15明細書記載の発明のマーカー(標識)にカバーを被せることが当業者にとって容易であるとする理由が不明である。また,甲16公報には,乙15明細書記載の発明のマーカー(標識)にカバーを被せることなど開示されていない。 したがって,無効理由6-3の主張は理由がない。 4 争点4(差止めの必要性)について(原告らの主張)被告が被告製品の製造 ーを被せることなど開示されていない。 したがって,無効理由6-3の主張は理由がない。 4 争点4(差止めの必要性)について(原告らの主張)被告が被告製品の製造販売等に係る本件特許権侵害の成否を争っていること,被告が現時点においてもポール式視線誘導標用カバーを製造販売しており被告製品の製造販売能力を維持していることからすれば,仮に被告が設計変更をした 事実があったとしても,なお被告が本件特許権の侵害品である被告製品を製造販売等するおそれは認められる。 (被告の主張)争う。 5 争点5(原告らの損害額)について (原告らの主張) (1) 被告製品の単価一般的なポストフレックス本体のカタログ掲載上の販売単価は1万3600円であるが,実際の販売単価は約9000円と推定される。もっとも,被告製品が装着されるポストフレックス本体には縞模様が付されていないから(甲10の2),一般的なものよりも若干安価な約8400円相当と推定される。 そして,本件商品の販売単価は●(省略)●円であるから,被告製品の単価は,●(省略)●円(=●省略●円-8400円)となる。 (2) 被告製品の売上高被告製品が道路上に設置されているのを原告らが初めて発見したのは平成28年5月19日であったが(甲18),同日から平成29年1月頃までの約 8か月間の被告製品の製造販売数量は,500個を下らない。 そうすると,被告製品の販売開始から本訴提起時までの間の被告製品の売上高は,少なくとも約●(省略)●円(=約●(省略)●円×500個)となる。 (3) 被告の得た利益の額被告製品の利益率は●(省略)●%を下らないと考えられるから での間の被告製品の売上高は,少なくとも約●(省略)●円(=約●(省略)●円×500個)となる。 (3) 被告の得た利益の額被告製品の利益率は●(省略)●%を下らないと考えられるから,被告の得 た利益の額は,●(省略)●円(=●(省略)●)となる。 (4) 原告らの損害額ア原告吾妻製作所は,車道に設置する視線誘導標に被せるカバー(ポストサイン,ポストウィング)を原告産業資材センターに製造委託し,同原告がこれを製造して原告吾妻製作所に納入している。そして,原告吾妻製作所は, 吾妻商会を販売店として,これらの製品を販売している。これらの製品は,いずれも本件特許の実施品であり,被告製品と市場が競合する。そうすると,原告らは,被告による本件特許権の侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうといえるから,特許法102条2項に基づき,被告の得た利益の額を原告らの損害額として損害賠償請求することができる。 そして,原告らはそれぞれ本件特許権を2分の1ずつの持分割合で共有し ているから,原告らそれぞれに生じた損害額は,各175万円(=350万円÷2)となる。 イ被告製品のうち,被告製品②(文字がポストフレックスの外周面を覆う部分の幅とほぼ同一の幅を有するもの)を除いた被告製品の数量は,合計●省略)●本(甲27,乙21の1~9・13・14・16・18~21・23・ 25)である。 被告主張の●(省略)●については,仮に●(省略)●であったとしても,特許発明の実施行為たる譲渡に当たり,これによって被告は侵害品の販売を促進するという利益を得ていたのであるから,特許法102条2項の適用が否定される理由はない。 また,甲27に掲載された「ゾー 行為たる譲渡に当たり,これによって被告は侵害品の販売を促進するという利益を得ていたのであるから,特許法102条2項の適用が否定される理由はない。 また,甲27に掲載された「ゾーン30 速度注意」と表示されたカバー(●(省略)●本)については,特許法69条1項の「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に当たるということはできず,製造元である被告から横浜市又は神奈川県警に対し販売されたものと考えるのが自然である。仮にこれらのカバーが販売されたものでないとしても,被告は,横浜市及び神 奈川県警と共同で社会実験を行っていることを自らのニュース記事に乗せて,侵害品の宣伝広告に利用したのであるから,社会実験に提供した侵害品の相当販売価額について利益を受けていることになり,同法102条2項の侵害行為により受けた利益の算定に当たり,これを除くことはできない。 したがって,侵害品の数量を●(省略)●本とした場合の原告らの損害額 は,65万1000円(=(●(省略)●円-8400円)●(省略)●)と推定される。 さらに,被告の不法行為と相当因果関係が認められる弁護士・弁理士費用相当の損害額は,20万円を下らない。 よって,原告らの損害額は,少なくとも,それぞれ42万5500円(= (65万1000円+20万円)÷2)となる。 (被告の主張)(1) 被告製品の単価について本件商品のカタログ掲載価格は3万4500円であるが,ポストフレックス本体は,高強度ポリウレタンからなる「ポストフレックスEX」(高さ800mmのもの)が使用されており,そのカタログ掲載価格は2万2500円であ る。本件商品のポストフレックス本体には縞模様が付されていないから価格が タンからなる「ポストフレックスEX」(高さ800mmのもの)が使用されており,そのカタログ掲載価格は2万2500円であ る。本件商品のポストフレックス本体には縞模様が付されていないから価格が9000分の8400となるとする原告らの主張を前提としても,上記「ポストフレックスEX」のカタログ掲載価格相当額は約2万1000円となる。 そうすると,被告製品のカタログ掲載価格相当額は,1万3500円(=3万4500円-2万1000円)となる。 そして,本件商品の実際の販売価格は●(省略)●円であるから,被告製品の実際の販売価格は,●(省略)●円(=●(省略)●円。小数第3位切上げ)となる。 (2) 被告製品の売上高について被疑侵害品の販売数量は,合計●(省略)●本であるから,その売上高は, ●(省略)●円(=●(省略)●本)となる。 なお,他に●(省略)●した●(省略)●本があるが,これについては販売と異なり被告は利益を得ていないので,上記数量に含めていない。また,甲27に記載された上記カバー(●(省略)●本)は,本件商品が正式に販売される前の平成25年に社会実験で使用されたものであり,これが仮に本件発明の 技術的範囲に属するとしても,同法69条1項の「試験又は研究のためにする特許発明の実施」として,本件特許権の効力は及ばない。また,これらのカバーは販売されたものではなく,被告はこれによって利益を得ていないから,同法102条2項の適用もないので,上記数量には含まれない。 (3) 被告の得た利益の額について 被告は,被疑侵害品1本当たりの実際の販売価格が●(省略)●円であるこ とを前提として,利益率が●(省略)●%であること(1本当たりの利益額が● 告の得た利益の額について 被告は,被疑侵害品1本当たりの実際の販売価格が●(省略)●円であるこ とを前提として,利益率が●(省略)●%であること(1本当たりの利益額が●(省略)●円であること)を認める。 そうすると,被告の利益額は,●(省略)●円(=●(省略)●)となる。 (4) 原告の損害額について以下に述べるとおり,本件において,特許法102条2項の適用はない。 ア被告製品のうちの被疑侵害品は文字入れ看板であるが,原告製品には「フラットな表示面」がなく,文字が入れられないから,被疑侵害品の競合品とはいえない。 イ顧客は,視線誘導標としてのポストフレックスを使用し,これが優れていたという経験に基づき本件商品も購入しているのであり,被疑侵害品は,ポ ストフレックスに付随して売れたにすぎない。これに対し,原告製品は,視線誘導標に付随して販売されているわけではないから,被疑侵害品と競合しない。 ウなお,原告らのように委託製造関係のある場合,一般に両者が等しく利益を得ることはない。各原告が得た利益を主張しない場合は,販売者である権 利者に全損害額の2分の1の損害が生じていると推定するほかなく,市場に販売していない受託製造者は特許法102条2項に基づき逸失利益を請求することはできない。 エ以上のとおり,本件においては,同項は適用されないので,同項に基づく原告らの請求は棄却されるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の内容(1) 本件明細書等(甲6)には次の各記載がある(なお,本件明細書等の図面については,別紙「本件図面目録」参照)。 ア背景技術 「車線分離などの目的で道路に設置 (1) 本件明細書等(甲6)には次の各記載がある(なお,本件明細書等の図面については,別紙「本件図面目録」参照)。 ア背景技術 「車線分離などの目的で道路に設置されるポール式視線誘導標が知られて いる…。この種のポール式視線誘導標は,外周面に再帰性反射シートなどを貼着することにより,良好な視認性を確保しているが,長期に亘って設置すると,表面の汚れ,劣化,損傷などに起因し,視認性が低下するという問題がある。汚れを原因とする場合は,清掃作業により視認性を随時回復可能であるが,劣化や損傷を原因とする場合は,ポール式視線誘導標の本体を交換 しないと視認性の回復が難しいため,交換費用が嵩むという問題があった。」(段落【0002】)「そこで,ポール式視線誘導標に装着するポール式視線誘導標用カバーが提案されている…。この種のポール式視線誘導標用カバーは,新品時のポール式視線誘導標と同等の視認性を備えているので,ポール式視線誘導標に被 せるだけで,ポール式視線誘導標の視認性を回復することができ,その結果,ポール式視線誘導標を交換する場合に比して大幅なコストの削減が可能になる。」(段落【0003】)イ発明が解決しようとする課題「上記のようなポール式視線誘導標用カバーによれば,劣化などで低下し たポール式視線誘導標の視認性を新品時と同等なレベルまで回復させることが可能であるが,新品時を超えるような視認性をポール式視線誘導標に付与することは困難であった。」(段落【0005】)ウ課題を解決するための手段「本発明は,上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的と して創作されたものであって,請求項1の発明は,ポール式視線誘導 005】)ウ課題を解決するための手段「本発明は,上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的と して創作されたものであって,請求項1の発明は,ポール式視線誘導標に装着されるポール式視線誘導標用カバーであって,該カバーを,前記ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部と,該筒部の外周面から外方に延出し,前記ポール式視線誘導標の視認幅を拡張する少なくとも2枚の翼部とを備えて構成するにあたり,前記ポール式視線誘導標用カバーは,ポール式視線誘導 標の外周面の上端から下端までを覆うものであり,各翼部の外方への拡張は, カバー上端から下端に至るまで同じ視認幅を有したものであり,かつ,視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されていることを特徴とするポール式視線誘導標用カバーである。 請求項2の発明は,平面視で直線的に連続する一対の前記翼部を有し,該一対の前記翼部が正面視で視認幅全域にわたるフラットな表示面を形成す ることを特徴とする請求項1記載のポール式視線誘導標用カバーである。 (後略)」(段落【0006】)エ発明の効果「請求項1の発明によれば,ポール式視線誘導標用カバーは,ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部と,該筒部の外周面から外方に延出し,ポール 式視線誘導標の視認幅を拡張する翼部とを備えるので,劣化などで低下したポール式視線誘導標の視認性を回復させることができるだけでなく,新品時を超える良好な視認性をポール式視線誘導標に付与することができる。 また,請求項2の発明によれば,平面視で直線的に連続する一対の前記翼部を有し,該一対の前記翼部が正面視で視認幅全域にわたるフラットな表示 面を形成するので,フラットな表示面に る。 また,請求項2の発明によれば,平面視で直線的に連続する一対の前記翼部を有し,該一対の前記翼部が正面視で視認幅全域にわたるフラットな表示 面を形成するので,フラットな表示面において視認性の高い表示を行うことができる。例えば,フラットな表示面において視線誘導標を表示するようにした場合,曲面による視線誘導標の歪みを防止し,表示する視線誘導標の視認性を高めることができる。(後略)」(段落【0007】)オ発明を実施するための形態 「以下,本発明の実施の形態について,図面に基づいて説明する。図1~図4において,1はポール式視線誘導標用カバーであって,該ポール式視線誘導標用カバー1は,劣化などで視認性が低下したポール式視線誘導標Pに装着し,当該ポール式視線誘導標Pの視認性を回復させるためのものである。」(段落【0009】) 「本発明のポール式視線誘導標用カバー1は,図1~図4において明らか なように,ポール式視線誘導標Pの外周面の上端から下端までを覆う筒部2と,該筒部2の外周面から外方に延出し,ポール式視線誘導標Pの視認幅が上端から下端まで同じになるよう拡張する一対の翼部3とを備えている。このように構成されたポール式視線誘導標用カバー1によれば,劣化などで低下したポール式視線誘導標Pの視認性を回復させることができるだけでな く,翼部3による視認幅の拡張に基づいて,新品時を超える良好な視認性をポール式視線誘導標Pに付与することが可能になる。」(段落【0010】)「また,翼部3は,筒部2の外周面において上下方向に沿って連続的に形成されることが好ましい。その理由は,上下方向の全域においてポール式視線誘導標Pの視認幅を拡張することができるからである。」(段 「また,翼部3は,筒部2の外周面において上下方向に沿って連続的に形成されることが好ましい。その理由は,上下方向の全域においてポール式視線誘導標Pの視認幅を拡張することができるからである。」(段落【001 1】)「また,翼部3は,図5の(A)に示す参考例のように,1枚でも良いが,本発明は,筒部2の外周面において周方向に所定の間隔を存して少なくとも2枚以上である。その理由は,様々な視点においてポール式視線誘導標Pの視認幅を拡張することができるからである。(後略)」(段落【0012】) 「また,筒部2及び翼部3は,左右方向に沿い,かつ,上下方向に並列する複数の条列4からなる縞模様5を有する。例えば,白色の条列4と,オレンジ色の条列4を交互に並列させた縞模様5とする。このとき,条列4を筒部2から翼部3に至るよう連続して施され長さ方向に延長させる。その理由は,翼部3に至るまで連続して形成することにより縞模様5が強調され,ポ ール式視線誘導標Pの視認性がさらに向上するからである。」(段落【0013】)「図9に示すように,第二実施形態に係るポール式視線誘導標用カバー1Bは,前記実施形態と同様に,筒部2の外周面から外方に延出し,ポール式視線誘導標1Bの視認幅を拡張する翼部3を備えるものであるが,平面視で 直線的に連続する一対の翼部3を有し,該一対の翼部3が正面視で視認幅全 域にわたるフラットな表示面13を形成する点が前記実施形態と相違している。」(段落【0032】)「このような第二実施形態のポール式視線誘導標用カバー1Bによれば,平面視で直線的に連続する一対の翼部3を有し,該一対の翼部3が正面視で視認幅全域にわたるフラットな表示面13を形成するので,フラットな このような第二実施形態のポール式視線誘導標用カバー1Bによれば,平面視で直線的に連続する一対の翼部3を有し,該一対の翼部3が正面視で視認幅全域にわたるフラットな表示面13を形成するので,フラットな表示 面13において視認性の高い表示を行うことができる。例えば,フラットな表示面13において縞模様,絵柄,文字などを表示するようにした場合,曲面による縞模様,絵柄,文字などの視線誘導表の歪みを防止し,表示する視線誘導標の視認性を高めることができる。」(段落【0033】)(2) 本件発明の意義 本件特許の特許請求の範囲の記載及び前記(1)によれば,本件発明は,①ポール式視線誘導標用カバーを技術分野とするものであり,②ポール式視線誘導標を長期にわたって道路に設置すると,表面の汚れ等により視認性が低下するという問題を解決するため,③ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部と,当該筒部の外周面から外方に延出する少なくとも2枚の翼部を備え,(ⅰ)同カバ ーがポール式視線誘導標の外周面の上端から下端までを覆い,(ⅱ)各翼部の外方への拡張がカバー上端から下端に至るまで同じ視認幅を有し,(ⅲ)視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されているという構成とすることにより,④劣化などで低下したポール式視線誘導標の視認性を回復するのみならず,新品時を超える良好な視認性をポール式視線誘導標に付与す るとの効果を奏するものであるということができる。 2 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について(1) 争点1-1(被告製品が構成要件Aを充足するか否か)についてア 「ポール式」に当たるかどうかについて(ア) 被告は,構成要件Aの「ポール式」とは,切断面が円形のものをいうと (1) 争点1-1(被告製品が構成要件Aを充足するか否か)についてア 「ポール式」に当たるかどうかについて(ア) 被告は,構成要件Aの「ポール式」とは,切断面が円形のものをいうと ころ,ポストフレックスの切断面は凸型なので,構成要件Aを充足しない と主張する。 しかし,本件発明に係る「ポール」の形状については,特許請求の範囲及び本件明細書等において特に限定はされていない。そして,一般的な用語の意味としても,「ポール」とは「細長い棒」を意味し,「棒」とは「まっすぐで細長い木・竹や金属製のものなど」を意味し,「式」とは「ある 定まったやり方やかたち」を意味するにすぎず(甲22の1~3),その切断面が円柱状のものに限定すべき理由はない。そうすると,本件発明における「ポール式」とは,「形が細長い棒状のもの」を意味すると解するのが相当である。 被告製品は,ポストフレックス(正面視でベース部分を含め縦幅80c m,横幅7.7cm)に装着されるポストフレックス用カバーであるところ,証拠(甲7)によれば,ポストフレックスは,地面に設置されるベース部分から上方に設置される細長く断面がT字型の棒状のものであることが認められる。 したがって,被告製品は,構成要件A(構成要件B1,B2,C,Fも 同様)の「ポール式」に当たるというべきである。 (イ) これに対し,被告は,本件明細書等の段落【0020】及び【図7】には「下側ほど径が大きいポール式視線誘導標」が記載されていること,【図3】及び【図4】に描かれたポールの形状は円柱状であること,段落【0020】にも「筒部」,「径が大きい」などの記載があることなどを理由 に,本件発明に係るポール式視線誘導標の切 いること,【図3】及び【図4】に描かれたポールの形状は円柱状であること,段落【0020】にも「筒部」,「径が大きい」などの記載があることなどを理由 に,本件発明に係るポール式視線誘導標の切断面は円形であると主張する。 しかし,本件明細書等の段落【0020】には,「下側ほど径が大きいポール式視線誘導標…にもポール式視線誘導標用カバー1を装着することが可能になる。」と記載されているにすぎず,同記載から,本件発明に係る視線誘導標の断面が円形に限定されると解することはできない。 また,本件明細書等の【図3】及び【図4】に描かれたポール式視線誘 導標の切断面は円形であると認められるが,これは実施例を示すにすぎず,「径」や「筒」との記載から本件発明に係るポール式視線誘導標の切断面が円形に限定されると認めることもできない。 したがって,被告の主張は採用し得ない。 イ 「視線誘導標」に当たるかどうかについて 被告は,本件発明に係る視線誘導標は複数設置されることにより初めてその効果が発揮されるものであるから,ポストフレックスは,構成要件Aの「視線誘導標」に該当しないと主張する。 しかし,本件特許の特許請求の範囲の請求項7は「所定の間隔を存して立設される複数のポール式視線誘導標に装着される複数のポール式視線誘導 標用カバー」であるのに対し,請求項1においては,単に「ポール式視線誘導標に装着されるポール式視線誘導標用カバー」と記載されているにとどまり,ポール式視線誘導標の単複に言及されていない。そうすると,請求項1の「ポール式視線誘導標」は複数であることを要しないというべきである。 加えて,本件明細書等には,請求項1に係る「ポール式視線誘導標」 線誘導標の単複に言及されていない。そうすると,請求項1の「ポール式視線誘導標」は複数であることを要しないというべきである。 加えて,本件明細書等には,請求項1に係る「ポール式視線誘導標」が複 数であることを前提とする記載は存在せず,ポール式視線誘導標が複数でないと本件発明に係る効果が生じないということもできない。 したがって,ポストフレックスは,構成要件A(構成要件B1,C,Fも同様)の「視線誘導標」に該当する。 ウなお,被告は,被告製品のフラットな表示板は看板であってカバーではな いとも主張するが,被告製品のフラットな表示板は他の部分と一体となってポストフレックスに被せるものであるから(甲10),被告製品は構成要件Aの「カバー」に当たる。 エ以上のとおり,被告製品は請求項Aを充足する。 (2) 争点1-2(被告製品が構成要件B1を充足するか否か)について ア被告は,被告製品は構成要件B1の「筒部」を備えていないと主張する。 本件発明に係る「筒部」の意義や形状については,特許請求の範囲及び本件明細書等において特に明記はされていない。辞書等においては「筒状」とは「円く細長くて中空になっているもの」(乙1)をいうとされているが,「角筒」(甲23),「三角筒」(甲24),「円筒」などの用語もあることに照らすと,その断面形状は特に円形に限定されないというべきである。 そうすると,構成要件B1の「筒」は,「細長くて中空になっているもの」を意味するというべきである。 証拠(甲7~9,10)によれば,被告製品は,ターポリン製保護カバーによりポストフレックスのフラットな表示面以外の外周面が覆われ,フラットな表示面によりポストフレックスの前方外 である。 証拠(甲7~9,10)によれば,被告製品は,ターポリン製保護カバーによりポストフレックスのフラットな表示面以外の外周面が覆われ,フラットな表示面によりポストフレックスの前方外周面が覆われるものであり,こ れによりポストフレックスの外周面全体が覆われ,ポール状のポストフレックスに装着するための細長い中空部が形成されているものと認められる。 このように,被告製品は,ポストフレックスの外周面を覆う「細長くて中空になっているもの」であり,「筒部」の断面形状が円形に限定されないと解されることに照らすと,被告製品は,構成要件B1(構成要件B2,Eも 同様)の「筒部」を備えているということができる。 イこれに対し,被告は,本件明細書等の【図9】(A)のうち筒部2はフラットな表示面以外の部分であるとの理解に立った上で,Ω型の形状を示す上記図面と異なり,被告製品のカバーは山型で裾が広がっている形状であるから,構成要件B1の「筒部」には当たらないと主張する。 しかし,構成要件B1の「筒部」は「前記ポール状視線誘導標の外周面を覆う」ものであるから,被告製品のうちフラットな表示面が「筒部」を構成しないと解すべき理由はない。そうすると,ポストフレックスの外周面は,フラットな表示面以外の曲線部と,直線状のフラットな表示面により覆われることとなるが,前記のとおり,「筒部」の断面形状が円形に限定されない ことに照らすと,被告製品のカバーの曲線部が山型で裾が広がっているとし ても,「細長くて中空になっているもの」である以上,「筒部」に当たるというべきである。 したがって,被告の主張は採用し得ない。 ウ以上のとおり,被告製品は構成要件B1を充足する。 て中空になっているもの」である以上,「筒部」に当たるというべきである。 したがって,被告の主張は採用し得ない。 ウ以上のとおり,被告製品は構成要件B1を充足する。 (3) 争点1-3(被告製品が構成要件B2を充足するか否か)について 被告は,被告製品の翼部は「1枚」であって,「2枚」ではないから,同製品は構成要件B2を充足しないと主張する。 しかし,構成要件B2によれば,「翼部」は「該筒部の外周面から外方に延出」するものであるとされており,本件明細書等の段落【0012】の記載及び【図5】も参照すると,本件発明における「翼部」の数は,筒部から延出す る平面状の構成体の数をいうものであり,左右に延出した翼部がフラットな表示面を形成したとしても,翼部の数は2枚であると解するのが相当である。 また,請求項2は「平面視で直線的に連続する一つの前記翼部を有し,該一対の前記翼部が正面視で視認幅全域にわたるフラットな表示面を形成することを特徴とする請求項1記載のポール状視線誘導標用カバー」であるところ, 同請求項の記載は,一対の翼部がフラットな表示面を形成する場合であっても,翼部の枚数は請求項1に記載された「2枚」であることを前提としているものということができる。 そうすると,被告製品がフラットな表示面を有するとしても,その翼部の数は2枚であると認めるのが相当である。 したがって,被告製品は構成要件B2を充足する。 (4) 争点1-4(被告製品が構成要件Cを充足するか否か)についてア証拠(甲7,8)によれば,被告製品はその最下端からベース部まで5cmの隙間があることが認められるところ,被告は,被告製品のカバーはポール式視線誘導標の外周面 を充足するか否か)についてア証拠(甲7,8)によれば,被告製品はその最下端からベース部まで5cmの隙間があることが認められるところ,被告は,被告製品のカバーはポール式視線誘導標の外周面の「下端」までを覆うものではないので,構成要件 Cを充足しないと主張する。 構成要件C(構成要件Dも同様)の「下端」の意義については,本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書等には明記されていない。しかし,本件明細書等の段落【0010】には,「本発明のポール式視線誘導標用カバー1は,図1~図4において明らかなように,ポール式視線誘導標Pの外周面の上端から下端までを覆う筒部2と,該筒部2の外周面から外方に延出し,ポ ール式視線誘導標Pの視認幅が上端から下端まで同じになるよう拡張する一対の翼部3とを備えている。」と記載され,同段落で引用されている【図3】においては,カバーとベース部の上部に多少の隙間がある状況が図示されている。これによれば,本件発明は,ベース部とカバーとの間に露出部分が存在することを許容しているということができる。 また,本件発明の効果は,「劣化などで低下したポール状視線誘導標の視認性を回復させること」及び「新品時を超える良好な視認性をポール状視線誘導標に付与すること」にあるが(段落【0007】),運転者や歩行者等の目線を考慮すると,本件発明の効果を奏するためには,カバーがポール式視線誘導標の最下端(ベース部の最上端)まで達していることが必要である とは解し難い。 そうすると,構成要件C(構成要件Dも同様)の「下端」はポール式視線誘導標の最下端を意味するものではなく,視線誘導標用カバーがポール式視線誘導標の外周面の下方の最下端に近い部分までを覆っていれば足りると ると,構成要件C(構成要件Dも同様)の「下端」はポール式視線誘導標の最下端を意味するものではなく,視線誘導標用カバーがポール式視線誘導標の外周面の下方の最下端に近い部分までを覆っていれば足りると解すべきである。 被告製品についてみるに,被告製品は,ポストフレックスの上端からベース部までの高さ75cmのうち,上端からベース部の上部5cmまでの70cmを覆っているのであるから,ポストフレックスの外周面の下方の最下端に近い部分までを覆っているものと認められる。 したがって,被告製品はポール式視線誘導標用カバーの「下端までを覆う もの」であるということができる。 イ被告は,審査段階における本件意見書(甲15)において,各翼部の外方への延出幅が上端から下端までを覆うものであり,もって新品時を超える視認性が付与されることを明確に述べていると主張する。 しかし,原告らは,拒絶理由通知(乙11)を受けて,特許請求の範囲の請求項1につき,カバーがポール式視線誘導標の外周面の上端から下端まで を覆うなどの補正をしているものの,本件意見書において,原告らが構成要件Cの「下端」をポール式視線誘導標の最下端に特定したと認めるに足りる記載はない。 したがって,被告の主張は採用し得ない。 ウ以上のとおり,被告製品は構成要件Cを充足する。 (5) 争点1-5(被告製品が構成要件Eを充足するか否か)についてア 「文字」や「絵柄」が「模様」に含まれるかどうかについて被告は,構成要件Eの「視線誘導するための模様」には「文字」や「絵柄」は含まれないので,被告製品は構成要件Eを充足しないと主張する。 しかし,請求項1には「模様」と記載されてい 被告は,構成要件Eの「視線誘導するための模様」には「文字」や「絵柄」は含まれないので,被告製品は構成要件Eを充足しないと主張する。 しかし,請求項1には「模様」と記載されているのに対し,請求項3には 「前記視線誘導するための模様は,左右方向に沿い,かつ,上下方向に並列する複数の条列からなる縞模様であることを特徴とする」と記載されていることによれば,請求項1の「模様」が「縞模様」に限定されないことは明らかである。 そして,本件明細書等における第二実施形態に係る段落【0033】には 「フラットな表示面13において縞模様,絵柄,文字などを表示する」との記載があり,これによれば,請求項1の「模様」には「絵柄,文字」も含まれると解するのが相当である。 これに対して,被告は,本件意見書に「文字や模様」と記載されていることや「模様」の一般的用法に照らし,構成要件Eの「視線誘導するための模 様」には「文字」や「絵柄」は含まれないと主張する。しかし,本件意見書 の上記記載をもって,構成要件Eの「模様」から文字や絵柄を除外したと解することはできず,また,特許請求の範囲及び本件明細書等の記載に照らすと,同構成要件の「模様」が文字や絵柄を含むと解すべきことは,前記判示のとおりである。 したがって,構成要件Eの「視線誘導するための模様」は,「文字」や「絵 柄」を含むということができる。 イ 「模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との構成の充足性について(ア) 証拠(甲10の1・2,甲18,27,28の1~3,甲29,30,37~39)によれば,被告製品は,次の4種の構成を有するものに分類 することができるものと認められる。 (ア) 証拠(甲10の1・2,甲18,27,28の1~3,甲29,30,37~39)によれば,被告製品は,次の4種の構成を有するものに分類 することができるものと認められる。 ① 被告製品①ターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されており,前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を 有する文字が記載されている。 ② 被告製品②ターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されており,前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅とほぼ同一の幅 を有する文字が記載されている。 ③ 被告製品③ターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されており,前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を 有する文字及び記号が記載されている。 ④ 被告製品④前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字が記載されている。 被告製品① 被告製品② 被告製品③ 被告製品④(イ) 上記被告製品①から④までのうち,被告製品①,③及び④は,被告製品のフラットな表示面において,ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字及び/又は記号が記載されているので,構成要件Eの「筒部から翼部に至 うち,被告製品①,③及び④は,被告製品のフラットな表示面において,ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字及び/又は記号が記載されているので,構成要件Eの「筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との構成を充足 するということができる。 (ウ) 他方,被告製品②のように,被告製品のフラットな表示面において,文字がポストフレックスの外周面を覆う部分の幅とほぼ同一に印字されている場合に「筒部から翼部に至るよう連続して施されている」ということができるかどうかが問題となる。 この点について,本件明細書等の段落【0013】及び図1ないし4には,表示面がフラットではないポール式視線誘導標用カバーにおいて,縞模様5が筒部2から翼部3に至るよう連続して施され,長さ方向に延長された構成が開示され,その理由について,同段落には「翼部に至るまで連続して形成することにより縞模様5が強調され,ポール式視線誘導標Pの 視認性がさらに向上するからである。」と記載されている。 かかる趣旨に照らすと,【図9】に示されるような表示面がフラットなポール式視線誘導標用カバーにおいても,「模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されている」との要件を充足するには,フラットな表示面に施される模様の視認幅が,少なくとも筒部に相当する部分の左右幅を超え て,翼部に至るよう連続して形成されることを要するというべきである。 そうすると,被告製品②は,構成要件Eを充足しない。 (エ) これに対し,原告らは,仮に,被告製品②の文字部分が「筒部から翼部に至るよう連続して施されている」ということができないとしても,同製品に施された幾何学模様が「筒部から翼部に至るよう連続して施さ エ) これに対し,原告らは,仮に,被告製品②の文字部分が「筒部から翼部に至るよう連続して施されている」ということができないとしても,同製品に施された幾何学模様が「筒部から翼部に至るよう連続して施されてい る」のであるから,被告製品②は構成要件Eを充足すると主張する。 しかしながら,本件明細書等の段落【0014】から【0017】には,ポール式視線誘導標用カバー1の層構造(ベースシート6,反射シート7,表面フィルム8)について説明されているが,本件明細書等には,ポール式視線誘導標用カバーのシート等のデザインが「模様」となり得ることを うかがわせる記載は存在しない。 むしろ,前記のとおり,本件明細書等には,三層構造のシート体9からなる筒部2及び翼部3に「縞模様,絵柄,文字」などの「視認性の高い表示を行う」ことが記載され(段落【0033】),また,段落【0013】にも視認性の高い縞模様(オレンジ色と白色の縞模様)が例示されている ことに照らすと,本件発明においては,筒部及び翼部の下地に視線性の高い縞模様,絵柄,文字などの模様を付することが措定されているものというべきである。 被告製品のターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されていると認められるが,この幾何学模様 等は,これらの素材にもともと施されている地模様であり,視線誘導する ことを可能にするような高い視認性を有するものではなく,また,視線誘導を意図して付されたものと認めることもできない。 したがって,上記幾何学模様をもって,「視線誘導するための模様」に当たると解することはできない。 (オ) 原告らは,文字と幾何学模様とを組み合わせることにより,視認性が向 い。 したがって,上記幾何学模様をもって,「視線誘導するための模様」に当たると解することはできない。 (オ) 原告らは,文字と幾何学模様とを組み合わせることにより,視認性が向 上するのであるから,文字と幾何学模様は一体として「模様」と解すべきであると主張するが,筒部や翼部に文字等の模様が付された場合に高い視認性を有するのは当該文字等であり,筒部や翼部の下地のデザインによりその視認性が左右されるということはできないので,文字と幾何学模様とが一体として「模様」を構成すると解すべき理由はない。 (カ) なお,被告は,被告製品①,③及び④についても,左右に所定の余白があるから,「筒部から翼部に至るよう連続して施されている」ということはできないと主張するが,上記被告各製品に記載された文字や記号が筒部から翼部に至るように連続して施されていることは明らかであり,被告の主張は理由がない。 ウしたがって,被告製品のうち被告製品①,③及び④は構成要件Eを充足する。 (6) 小括以上によれば,被告製品①,③及び④(以下,これらを一括して「被告侵害品」という。)は,本件発明の技術的範囲に属すると認めることができる(な お,被告製品が構成要件Cを充足することから,争点2(被告製品による均等侵害の成否)の判断は要しない。)。 2 争点3(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否か)について(1) 争点3-1(無効理由1)について ア被告は,本件発明は,甲16考案に本件周知技術(乙3~10)を組み合 わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであると主張するところ,①甲16考案の内容,②本件発明と甲16考案との一致点 は,本件発明は,甲16考案に本件周知技術(乙3~10)を組み合 わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであると主張するところ,①甲16考案の内容,②本件発明と甲16考案との一致点(構成要件A,B1及びFに係る構成)及び相違点(構成要件B2,C,D及びEに係る構成)については,当事者間に争いがない。 イ甲16考案は,その明細書の段落【0009】によれば,「既存の可倒式 視線誘導標識柱を有効活用し,破損あるいは塵埃が付着した反射標識体を洗浄することなく短時間で取替えが可能な視線誘導標を提供することを目的とし,さらに,既存の可倒式視線誘導標に替えて表示部本体を挿通して保持する安価な柱状体とで構成することを目的とする」ものであり,新品時を超えるような視認性をポール式視線誘導標に付与することを目的とする本件 発明と,いずれも視線誘導標の視認性の向上という課題解決を目的とする点で類似する。 ウ他方,本件周知技術は看板に関する技術であり,本件特許出願当時,正面視で長方形のフラットな表示面を有し,その表示面には文字が記載されている看板が周知慣用技術であったことについては,当事者間に争いがない。 しかしながら,本件周知技術は,看板に関するものであり,カバーの筒部の外周面から外方に延出した翼部を備える構成(構成要件B2)や,カバーの筒部から翼部に至るまで視線誘導するための模様を施す構成(構成要件E)等が開示されているということはできない。そうすると,本件周知技術に上記相違点に係る構成が開示されているということはできない。 また,看板と視線誘導標用カバーとは,一般的には視認性の向上という点で共通の課題を有する面はあるものの,その技術分野は異なるというべきであり,また,本件 るということはできない。 また,看板と視線誘導標用カバーとは,一般的には視認性の向上という点で共通の課題を有する面はあるものの,その技術分野は異なるというべきであり,また,本件周知技術には,劣化などで低下した視線誘導標について新品時を超えるような視認性を付与するという本件発明の課題は示唆されていない。そうすると,甲16考案に本件周知技術を組み合わせる動機付けが あるということはできない。 エ以下,被告が本件周知技術の存在を示す文献として挙げる実願2007-5497公報(甲17。以下「甲17公報」という。),乙7公報及び乙12明細書に記載された技術について,更に検討する。 (ア) 甲17公報の請求項1記載の考案の内容は,「ベース部の中央に錘形のコア部が直立して形成される支持体と,この支持体の前記コア部に沿わせ て外嵌される表示体とで構成され,前記表示体は,前記コア部に被嵌される保持部と,この保持部から半径方向に張出される表示翼部とを備えるとともに,これら保持部と表示翼部とが連接する二枚のシート材で形成され,前記保持部で前記支持体のコア部を挟み付けるようにして表示翼部が重ね合わされることを特徴とする立体標識。」というものである。 そして,その明細書の考案の詳細な説明の記載によれば,甲17公報に係る考案は,屋外での工事現場や道路などで人の通行を規制するために注意を喚起する目的で使用されるコーンに関し,コーンを核としてその周囲に視認性を高めた表示翼部を両側に張り出して取付け,表示機能を向上させるとともに,この表示翼部の剛性を高めて複数のコーンを任意の間隔で 並べて区画を仕切るといった用途などに効果的に利用することのできる立体標識を提供することを目的とする 付け,表示機能を向上させるとともに,この表示翼部の剛性を高めて複数のコーンを任意の間隔で 並べて区画を仕切るといった用途などに効果的に利用することのできる立体標識を提供することを目的とするものである(段落【0002】~【0008】)。 上記考案は,2枚の翼部(表示翼部12)及び筒状部(保持部11)を備える表示体10をトラフィック・コーンに嵌装する点で本件発明に類似するものの,そこで開示されているのは,上図のような形態のものであって,少なくとも本件発明の構成要件D(各翼部の外方への拡張は,カバー上端から下端に至るまで同じ視認幅を有したものであり,)及びE(かつ, 視線誘導するための模様が筒部から翼部に至るよう連続して施されていること)に係る構成は開示又は示唆されていない。 そうすると,甲16考案に甲17公報に記載された技術を適用しても,本件発明に係る構成に至るものではないというべきである。 (イ) また,乙7公報の特許請求の範囲の請求項5には「略扇型の耐水性のシ ートに伝達事項・広告等の内容を表示し,この表示面を外側にして円筒に形成し,これをカラーコーンに被せて固定手段で固定したことを特徴とするカラーコーン。」の発明が記載され,次のような図面が記載されている。 【図14】 【図15】 【図16】 乙7公報の明細書の発明の詳細な説明には,乙7公報記載の発明は,古紙と廃プラスチックからカラーコーンを得ること,伝達事項・広告表示が簡単に行えるカラーコーンを得ることを目的とするものである旨(段落【0004】)の記載がある。 そして,【図14】,【図15】はシー ックからカラーコーンを得ること,伝達事項・広告表示が簡単に行えるカラーコーンを得ることを目的とするものである旨(段落【0004】)の記載がある。 そして,【図14】,【図15】はシート20に看板15を設け,遠く から見た場合の視認性をカラーコーン10に表示するよりはるかに良く した例であり,シート20と看板15は接着,鋲止め,縫製等で風に対する抵抗が大きいので強力に固定される旨,【図16】はこれらをポール16に応用した例であり,ここでは小さな看板15を表示したが,固定方法はカラーコーン10の場合と同様である旨(段落【0019】)などが記載されている。 しかしながら,【図14】ないし【図16】において,シート20を筒部と解し得るとしても,看板15はそれに別途接着等されるものであって,筒部の外周面から外方に延出して翼部を設けるものではないから,乙7公報のこうした記載内容から,筒部の外周面から外方に延出する翼部の構成(構成要件B2)を導き出すのは困難と考えられる。 (ウ) さらに,乙12明細書には,ベースプレート等に,様々な形状のパネルを取り付けた構成を基本構成とし,通行車両に対向して設置されて,「停止」,「徐行」,「通行止め」,「迂回」等の文字が施される交通誘導看板に関する発明が記載され,下記の図(図1)が記載されている。 しかしながら,これは上記のとおり交通誘導看板に関する発明であって,カバーに関するものではないから,筒部が存在せず,筒部の外周面から外方に延出する翼部の構成を導き出すのは同様に困難であるというべきである。 オ以上のとおり,本件発明は,甲16考案に本件周知技術を組み合わせることにより, ず,筒部の外周面から外方に延出する翼部の構成を導き出すのは同様に困難であるというべきである。 オ以上のとおり,本件発明は,甲16考案に本件周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 (2) 争点3-2(無効理由2)についてア被告は,本件発明は,甲16考案に乙8公報に記載された発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであると主張する。 イ乙8発明の内容が,①筒状の看板ないし横風監視装置,②フラットな表示面の看板ないし横風監視装置及び③スリーブ部と,該スリーブ部の外周面から外方に延出する2つの羽根部を備え,各羽根部の外方への拡張は,スリーブ部の上端から下端に至るまで同じ視認幅を有している看板ないし横風監視装置の発明であることは,当事者間に争いがない。 そして,①の例として下記【図1】,②の例として下記【図3】,③の例として下記【図5】及び【図7】が記載されている。 【図1】 【図3】 【図5】 【図7】乙8公報の明細書の発明の詳細な説明には,本発明が,沿線全域にわたって,走行中の鉄道車両が受ける横風を簡易に監視することのできる方法及び装置を提供することを目的とするものであり(段落【0005】),本発明 の簡易横風監視方法は,鉄道沿線の多数の地点において簡易に横風を監視する方法であって,軌道に沿って設置されている電線が横風を受けて変位する際の該電線の変位を警告・警報手段に伝えて同手段を作動させることを特徴とするものであること(段落【0006】)が記載 横風を監視する方法であって,軌道に沿って設置されている電線が横風を受けて変位する際の該電線の変位を警告・警報手段に伝えて同手段を作動させることを特徴とするものであること(段落【0006】)が記載されている。 ウこのように,乙8発明は,本件発明の構成要件B2,Dに相当する構成を 備えたものではあるが,同発明は鉄道沿線における横風監視装置に関するものであり,その技術分野及び課題は甲16考案とは異なる上,前記イ③のスリーブ部の外周面から外方に延出する2つの羽根部も横風を受けて回転するためのものであって,甲16考案の目的とは異なるものであるということができる。このような,技術分野,課題,効果等の差違を考慮すると,甲1 6考案に乙8公報記載の発明を適用する動機付けがあるということはできない。 エこれに対し,被告は,甲16考案も乙8発明も,同じく走行中の運転者に注意喚起する発明であるから,技術分野は共通していると主張するが,前記判示のとおり,乙8発明は鉄道沿線における横風監視装置に関するものであり,道路上に設置される視線誘導標に関する甲16考案とはその技術分野及び課題が異なるというべきである。 オしたがって,本件発明は,甲16考案に乙8発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 (3) 争点3-3(無効理由3)についてア被告は,本件発明は,甲16考案に乙12発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであると主張する。 イ乙12明細書に,正面視が長方形であるフラットな表示面を備え,その表示面には視線誘導のための模様が記載されている視線誘導標が開示されていることについては,当事者間に争いがない。 イ乙12明細書に,正面視が長方形であるフラットな表示面を備え,その表示面には視線誘導のための模様が記載されている視線誘導標が開示されていることについては,当事者間に争いがない。 しかし,乙12発明は,カバーに関する発明ではなく,筒部に該当する構成がなく,筒部の外周面から外方に延出する翼部の構成も有しないので,乙 12発明に前記相違点に係る構成が開示されているということはできない。 ウしたがって,本件発明は,甲16考案に乙12発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 (4) 争点3-4(無効理由4)についてア被告は,本件発明は,乙12発明に乙8発明を組み合わせることにより, 当業者が容易に想到し得たものであると主張する。 イしかし,乙12発明は,交通誘導看板に関する発明であって,カバーに関するものではないから,本件発明の全ての構成要件が相違点となる。そして,乙8発明は,本件発明の全ての構成を備えたものではなく,また,横風監視装置に関するものであるから,乙12発明とは技術分野が異なる ので,乙12発明に乙8発明を組み合わせることについての動機付けがあ るということもできない。 そうすると,本件発明は,乙12発明に乙8発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 (5) 争点3-5(無効理由5)についてア被告は,本件発明は,甲16考案に乙15発明を組み合わせることにより, 当業者が容易に想到し得たものであると主張する。 イ乙15発明は,車線の境界を示すのに用いられるハイウェイマーカー用の補強用芯材(コア)に関するもので,同発 を組み合わせることにより, 当業者が容易に想到し得たものであると主張する。 イ乙15発明は,車線の境界を示すのに用いられるハイウェイマーカー用の補強用芯材(コア)に関するもので,同発明においては,下図のとおり,マーカー(標識)11は,フレキシブル要素17で接続させたベース13とポスト23を有し,ポスト23は,縦方向にそれ自身を貫く貫通穴25を有し, 補強用芯材(コア)27は,ポスト23の下端から上方に向かって貫通穴25を貫通し,その上端は,ポスト23の上端よりも下の位置で終端し,ポスト23は,その厚みよりも広い幅を有し,ポスト23の全長にわたって延びる貫通穴25は,ほぼ楕円形であり,短径よりも大きい長径を有し,補強用芯材(コア)27は,その厚みよりも大きい幅を有し,ベース13の心棒1 5の上端と,一定のクリアランスで離間して配置されている。 そして,このマーカー(標識)11は,その幅又は大きい方の面,すなわちポストの広い側(正面)が交通の流れの方向に対して垂直をなすように設置され,車両47のバンパー45がポスト23に衝突した場合,補強用芯材(コア)27の上端44よりも下方の点でぶつかる結果,完全に水平になる までエラストマー要素の部分で撓むことで,車両への損傷のみならず,ポスト自体の損傷も防ぐことができるという効果を有するものである。 このように,乙15発明はカバーに関するものではなく,前記相違点に係る構成が開示されていると認めることはできない上,その目的もマーカー(標識)に車両が衝突した際に車両及びマーカー(標識)の損傷を防止する というものであるから,甲16考案とはその技術分野や課題が異なるというべきであり,乙15発明に甲16考案を組み もマーカー(標識)に車両が衝突した際に車両及びマーカー(標識)の損傷を防止する というものであるから,甲16考案とはその技術分野や課題が異なるというべきであり,乙15発明に甲16考案を組み合わせる動機付けが存在するということもできない。 したがって,本件発明は,甲16考案に乙15発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。 ウなお,原告は,上記各主張及びこれを立証するための証拠の提出が時機に 後れた攻撃防御方法であるとして,却下するよう申し立てているが,これらの主張や書証の提出により,訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められないから,原告らの上記申立ては理由がない。 (6) 争点3-6(その他の無効理由)について無効理由6-1ないし6-3は,本件発明に係るターポリン製カバーの地模 様が構成要件Eの「模様」に当たることを前提とするものであるところ,被告製品のターポリン製カバー等の幾何学模様が構成要件Eの「模様」に当たらないのは前記のとおりであるから,上記各無効理由は判断を要しない。 なお,上記各主張及びこれを立証するための証拠の提出が時機に後れた攻撃防御方法に当たらないことは,上記(5)ウと同様である。 4 争点4(差止めの必要性)について(1) 被告侵害品(被告製品①,③及び④)は,本件発明の技術的範囲に属するところ,被告が被告侵害品の製造,販売及び譲渡の申出を取り止めたことを認めるに足りる証拠はないから,少なくとも被告がこうした侵害行為を行うおそれがあると認められる。 したがって,被告侵害品の製造,販売及び譲渡の申出の差止め及びその廃棄を求める原告らの請求は理由がある。 なくとも被告がこうした侵害行為を行うおそれがあると認められる。 したがって,被告侵害品の製造,販売及び譲渡の申出の差止め及びその廃棄を求める原告らの請求は理由がある。 他方,被告製品②は,本件発明の技術的範囲に属すると認められないから,その差止めや廃棄を求める原告らの請求は理由がない。 (2) また,原告らは,半製品(別紙被告製品目録記載の構造を具備しているが製 品として完成するに至らないもの)についての廃棄を求めているが,被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かは,フラットな表示面に記載される文字等の大小によることになることからすると,廃棄の対象物を上記のように特定するだけでは過剰差止めのおそれがある。このことに鑑みると,上記半製品の廃棄の必要を認めるには足りないというべきである。 したがって,上記半製品についての廃棄を求める原告らの請求は,理由がな い。 5 争点5(原告らの損害額)について(1) 原告は,特許法102条2項に基づく損害賠償を請求しているところ,証拠(乙18の1~11・13,乙21の1~9・13・14・16・18~21・23・25)及び弁論の全趣旨を総合すると,被告は,平成27年3月 頃から平成29年1月頃までの間に,被告侵害品を合計●(省略)●本販売したことが認められる。この点について,原告らは,平成29年1月頃までの被告侵害品の販売数量が500本を下らないと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,上記●(省略)●本に加え,●(省略)●本と,被告が横 浜市及び神奈川県警と共同で行う社会実験で使用する●(省略)●本(甲27)も被告の得た利益の額を算出するための被告侵害品の数量に加えるべき旨の (省略)●本に加え,●(省略)●本と,被告が横 浜市及び神奈川県警と共同で行う社会実験で使用する●(省略)●本(甲27)も被告の得た利益の額を算出するための被告侵害品の数量に加えるべき旨の主張をする。 しかしながら,特許法102条2項は,特許権等の侵害者が「その侵害の行為により利益を受けているとき」に「その利益の額」を特許権者等が受けた損 害の額と推定するものであるところ,上記●(省略)●本や社会実験で使用する●(省略)●本により被告が利益を受けたことを示す証拠はないので,これらを上記算出のための数量に加えることはできない。 (2) 本件商品の1本当たりのカタログ掲載価格が3万4500円であり,販売価格が●(省略)●。 本件商品にはポストフレックス本体部分が含まれるから,被告製品の販売価格は,本件商品の販売価格からポストフレックス本体の販売価格を控除した金額となるところ,原告らは,一般的なポストフレックス本体の販売単価は約9000円であり,被告製品が装着されるポストフレックス本体には縞模様が付されていないことを考慮して1本当たり8400円であると主張する。 他方,被告は,①本件商品には「ポストフレックスEX」(高さ800mm のもの)が使用されており,このカタログ掲載価格2万2500円に,縞模様が付されていないことに基づく原告ら主張の上記比率(9000分の8400)を乗じた約2万1000円が「ポストフレックスEX」のカタログ掲載価格となるから,被告製品のカタログ販売価格は1万3500円となる,②本件商品の実際の販売価格は●(省略)●円であるから,これに基づいて被告製品の販 売価格に計算すると,●(省略)●円(=●(省略)●円。小数第3位切上げ)となると主張する 万3500円となる,②本件商品の実際の販売価格は●(省略)●円であるから,これに基づいて被告製品の販 売価格に計算すると,●(省略)●円(=●(省略)●円。小数第3位切上げ)となると主張する。 そこで検討するに,カタログ(甲7の11頁)上,ポストフレックスEXについて,従来のゴムウレタン製品より高い引裂強度を発揮しており,従来製品の1.7倍である130N/mmの強度を有する旨が記載されている。また, 仕様書(乙22の1・2)上の試験成績においても,「ポストフレックス」のポスト部分の引裂き強さが112N/mm,引張強さが36.2MPaであるのに対し,「ポストフレックスEX」は前者が130N/mm,後者が40. 9MPaとされている。さらに,本件商品の仕様書(乙22の3)においても,被告商品(ワイドカバー)の「ポスト」の「引裂強さ」及び「引張強さ」はポ ストフレックスEXと同じ値であることが記載されている。これによると,本件商品には「ポストフレックスEX」が使用されていると認めるのが相当である。 そうすると,被告製品1本当たりの販売価格は,●(省略)●円となる。 (3) 利益率については,原告らは●(省略)●%と主張し,被告は,●(省略) ●として,●(省略)●ことからすると●(省略)●%と認めるのが相当である。 (4) 以上によれば,被告の侵害行為により被告が得た利益の額は,被告の主張するとおり,39万4435円となる。 (5) 原告らの特許権の共有割合が2分の1ずつであるところ(前記前提事実(2) ア),前記前提事実(1)アのとおり,原告吾妻製作所は原告産業資材センターに 車道に設置する視線誘導標に被せるカバー(ポストサイン,ポストウィング)の製造を委託して,吾妻 実(2) ア),前記前提事実(1)アのとおり,原告吾妻製作所は原告産業資材センターに 車道に設置する視線誘導標に被せるカバー(ポストサイン,ポストウィング)の製造を委託して,吾妻商会を通じてこれを販売していることに照らすと,原告らは,それぞれ,被告による本件特許権の侵害行為がなかったならば利益が得られたものと認められる。原告らは,上記被告が得た利益額39万4435円の2分の1ずつの損害を受けたと推定するのが相当である。 これに対し,被告は,原告らのように委託製造関係にある場合,両者が等しく利益を得ることはなく,販売者である原告吾妻製作所に全損害額の2分の1の損害が生じており,市場に販売していない受託製造者である被告産業資材センターについて特許法102条2項の損害の推定はされないと主張する。 しかしながら,前述のとおり,原告産業資材センターについても,被告によ る本件特許権の侵害行為がなかったならば利益(原告吾妻製作所に対する販売利益)が得られたものと認められるのであるから,原告産業資材センターに同項の推定が働かない旨の被告主張は採用し難い(知財高裁平成25年2月1日判決・判時2179号36頁参照)。 したがって,原告吾妻製作所の損害額は,39万4435円の2分の1であ る19万7218円(端数調整のため円未満切上げ),原告産業資材センターの損害額は,同じく2分の1である19万7217円と認める。 (6) 原告らが請求する弁護士・弁理士費用相当損害金については,本件事案の難易,請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告の侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士・弁理士費用相当損害金としてそれぞれ2万円を認めるの が相当である。 (7) なお,被告は,①特許法1 求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告の侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士・弁理士費用相当損害金としてそれぞれ2万円を認めるの が相当である。 (7) なお,被告は,①特許法102条2項の適用を受けるには,特許権者がその特許権を実施していなければならない,②原告製品には「フラットな表示面」がなく,文字が入れられないから,被疑侵害品の競合品とはいえない,③被疑侵害品は,ポストフレックスに付随して売れたにすぎないなどとして,原告製 品は被疑侵害品と競合しないと主張する。 しかし,原告製品は,被告製品と同様,道路上に設置されるポール式視線誘導標用カバーであることから競合品であるというべきであり,原告製品には文字入りカバーも含まれると認められる(甲1)。また,被疑侵害品がポストフレックスに付随することにより販売し得るものであると認めるに足りる証拠はなく,また,特許法102条2項を適用するためには,市場における競合品 であることは要するものの,侵害に係る特許権の実施品であることを要するものではない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 (8) したがって,結局,原告吾妻製作所の損害額は,合計21万7218円,原告産業資材センターの損害額は,合計21万7217円となる。 6 以上のとおり,原告らの請求は,被告侵害品の製造,販売及び譲渡の申出の差止め及び廃棄並びに原告吾妻製作所につき損害賠償金21万7218円及びこれに対する不法行為の後である平成29年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告産業資材センターにつき損害賠償金21万7217円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求め る限度で理由があるが,その余は理由がな 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告産業資材センターにつき損害賠償金21万7217円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。よって,原告らの請求を上記の限度で認容し,その余を棄却することとし,主文第2項に係る仮執行宣言の申立ては相当ではないのでこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 今野智紀 別紙当事者目録 原告株式会社吾妻製作所 原告株式会社産業資材センター 上記両名訴訟代理人弁護士・弁理士小林幸夫 同訴訟代理人弁護士弓削田博河 部康弘藤沼光太神田秀斗 平田慎二 同補佐人弁理士廣瀬哲夫鈴木佑子廣瀬郁夫被 同補佐人弁理士廣瀬哲夫鈴木佑子廣瀬郁夫被告保安道路企画株式会社 同訴訟代理人弁護士中道 徹同訴訟復代理人弁護士亀井文也 別紙被告侵害品目録 「PFWC-800」と称するポストフレックスカバー(ワイドカバータイプ)のうち,次の構成を有するもの。 1 下記写真1のように,ターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されており,前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字が記載されている。 2 下記写真2のように,ターポリン製保護カバー及びフラットな表示面は色付けされ,幾何学模様が全体的に施されており,前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字及び記号が記載されている。 3 下記写真3のように,前記フラットな表示板のフラットな表示面には,前記ポストフレックスの外周面を覆う部分の幅よりも広い幅を有する文字が記載されている。 1 2 3 別紙被告製品目録 第1 被告製品の名称「PFWC-800」と称するポストフレックスカバー(ワイドカバータイプ) 第2 被告製品の構成 aポール式視線誘導標(ベース部含め縦幅80cm,横幅7. 第1 被告製品の名称「PFWC-800」と称するポストフレックスカバー(ワイドカバータイプ) 第2 被告製品の構成 aポール式視線誘導標(ベース部含め縦幅80cm,横幅7.7cm)に装着される縦幅70cm,横幅20cm の長方形状ポール式視線誘導標用カバーであって,b1a のカバーは,上記ポール式視線誘導標の外周面を覆う筒部と,b2b1 の筒部の外周面から左右外方に延出する形状を備えており,c上記ポール式視線誘導標用カバーは,ポール式視線誘導標の外周面の上端から,ベース部の上部5cm までを覆うものであり,d筒部から外方への拡張は,カバーの上端から下端に至るまで同じ視認幅を有したものであり,eかつ,文字及び記号が筒部から左右外方に至るよう連続して施されていることfを特徴とするポール式視線誘導標用カバー。 第3 被告製品の設計図面 第4 被告製品の使用例 第5 被告製品の文字入れ例 別紙本件図面目録 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図9】 【図10】 【図11】 【図7】 【図9】 【図10】 【図11】

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