主文 本件控訴を棄却する 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要本件は,枚方市教育委員会が枚方市立小中学校の生徒を対象にして行った平成15年度及び平成16年度の各枚方市立小中学校学力診断テストのうち,中学校実施部分に関し,被控訴人が枚方市情報公開条例(平成9年枚方市条例第23号。 以下「本件条例」という。)に基づいて本件条例所定の実施機関の1つである枚方市教育委員会の委任を受けた枚方市教育委員会教育長(以下「教育長」という。)に対し,各年度の学力診断テストの学校別一覧に係る文書(以下「本件各文書」という。)に記録された情報の公開を請求(以下「本件各公開請求」という。)したところ,教育長が本件各文書に記録された情報の一部を公開とし,その余の部分を非公開する旨の部分公開決定処分(以下「本件各処分」)をしたため,被控訴人が,本件各処分のうち本件各文書に記録された情報の一部を非公開とした部分は違法であるとして,それらの取消しを求めている事案である。 原審裁判所は被控訴人の請求を認容した。これに対し,控訴人は控訴した。 前提事実(争いのない事実ないし顕著な事実か後掲証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)(1)本件条例の定め本件条例は,枚方市が保有する情報の公開について定めたものであり,以下の各規定がされている。 ア第1条(目的)この条例は,市の保有する情報を公開することにより,市政に関する市民の知る権利を保障し,市政に対する市民の理解と信頼を深め,市民の市政参加を促進し,もって地方自治の本旨に即した市政を推進することを目的とする。 の保有する情報を公開することにより,市政に関する市民の知る権利を保障し,市政に対する市民の理解と信頼を深め,市民の市政参加を促進し,もって地方自治の本旨に即した市政を推進することを目的とする。 イ第5条(情報の公開の請求)次に掲げるものは,実施機関に対し,情報の公開(中略)を請求することができる。 1号市内に住所を有する者(以下省略)ウ第6条(公開しないことができる情報)実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報については,当該情報の公開をしないことができる。 (1号から6号まで省略)7号市又は国等が行う取締り,監督,立入検査,入札,交渉,渉外,争訟,試験,人事その他の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められるもの(以下省略)(2)当事者等被控訴人は,枚方市内に住所を有する行政書士である(甲25)。 教育長は,本件条例2条3号の実施機関の1つである枚方市教育委員会から,情報公開事務その他の事務を委任されている(枚方市教育委員会事務委任規則2条。乙4)。 (3)被控訴人による本件各公開請求ア被控訴人は,平成16年9月14日,本件条例に基づいて,教育長に対 し,「平成15年度枚方市学力診断テストに係る自治体資料2学校別一覧(中学校)」の公開を請求した。 イ被控訴人は,平成17年9月2日,本件条例に基づいて,教育長に対し,「平成16年度枚方市立小中学校学力診断テスト自治体資料学校別一覧(中学校)」の公開を請求した。 ウ被控訴人は,本件各公開請求につき,「公平に教育が行われているか」,「各中学校間に極端な学力の差が生じていないか」,「特定の学校の特定の教科に学力上の問題はないか」などの点を考 公開を請求した。 ウ被控訴人は,本件各公開請求につき,「公平に教育が行われているか」,「各中学校間に極端な学力の差が生じていないか」,「特定の学校の特定の教科に学力上の問題はないか」などの点を考察・検討するための一つの資料を市民と共有するためにしたものであると述べている(甲25,乙3)。 (4)教育長による本件各処分ア教育長は,平成16年9月28日,上記(3)アの情報公開請求に対し,本件条例6条7号に該当するとして,後記非公開部分((5)イ)を非公開とし,その余を公開する部分公開決定(教学指第497号)を行った。 イ教育長は,平成17年9月16日,上記(3)イの情報公開請求に対し,本件条例6条7号に該当するとして,後記非公開部分((5)イ)を非公開とし,その余を公開する部分公開決定(教学指第441号)を行った。 (5)本件各文書の内容及び非公開部分等ア枚方市は,枚方市立小中学校の生徒を対象として,「枚方市立小中学校学力診断テスト」(以下「本件学力テスト」という。)を実施しているところ,本件各文書は,平成15年度及び平成16年度に実施された本件学力テストのうち,中学校実施部分(枚方市立中学校19校の1年及び2年の学力診断テスト)に関して作成された「学校別一覧(中学校)」等と題された書面である(乙1)。 本件各文書には,本件学力テストの結果をもとに,枚方市全体及び各中学校ごとに,国語,数学,英語,理科,社会の教科全体,観点別,領域別 (ただし,理科,社会については領域別の集計は行われていない。)の平均得点及び到達評価(評価Aと評価A+Bの各割合)が小数点第1位まで記録されている(乙1,3)。 イ本件各文書に記録された情報のうち,各中学校別の平均得点及び到達評価に係る情報(以下「本件情報」という。)が非公開とされた。 なお, +Bの各割合)が小数点第1位まで記録されている(乙1,3)。 イ本件各文書に記録された情報のうち,各中学校別の平均得点及び到達評価に係る情報(以下「本件情報」という。)が非公開とされた。 なお,本件情報については,児童生徒及び保護者に送付する取扱いにされておらず,枚方市教育委員会及び各学校校長が保有している(甲2)。 (6)不服申立て及び訴訟の提起被控訴人は,枚方市教育委員会に対し,平成16年11月25日,上記(4)アの部分公開決定を不服として,審査請求をした(甲5)。 被控訴人は,平成17年11月29日,本件各処分の取消しを求める訴えを提起した。 枚方市教育委員会は,平成18年3月13日,上記(4)アの部分公開決定に対する審査請求を棄却する裁決をした(乙5)。 (7)他府県の実情平成17年度までに2年おきあるいは3年おきに学力テストを実施しているものも含めた44都道府県を対象にしてみると,都道府県全体の調査結果を公表する自治体数が35,市区町村単位までの調査結果を公表する自治体数が8,学校単位までの調査結果を公表する自治体数が1となっている(乙8)。 争点 (1)本件情報が,「市又は国等が行う取締り,監督,立入検査,入札,交渉,渉外,争訟,試験,人事その他の事務事業に関する情報」(本件条例6条7号。以下「事務事業情報」という。)に該当するか否か。 (2)本件情報を「公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められ る」(本件条例6条7号)か否か。 争点に関する当事者の主張(1)争点1(本件情報の事務事業情報該当性)について(被控訴人の主張)ア本件学力テストは,枚方市教育委員会が実施する試験であり,その実施自体が本件条例6条7号にいう「試 に関する当事者の主張(1)争点1(本件情報の事務事業情報該当性)について(被控訴人の主張)ア本件学力テストは,枚方市教育委員会が実施する試験であり,その実施自体が本件条例6条7号にいう「試験」に該当する。 イまた,本件学力テストは,枚方市教育委員会の責務である学校の組織編成,学習指導,生徒指導及び職業指導といった教育行政の一環として行われたものであるから,本件条例6条7号にいう「その他の事務事業」に該当する。 (控訴人の主張)ア本件条例について枚方市が作成した「情報公開事務及び個人情報保護事務の手引」(以下「手引」という。乙7)によれば,本件条例6条7号の「試験」とは,資格試験,採用試験等のこととされ,「その他の事務」とは,許可・認可等の行政処分に係るもののこととされている。 イ本件学力テストは,枚方市教育委員会が学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにすること等を目的として行うものであるから,資格試験,採用試験等には該当しないし,許可・認可等の行政処分に係るものともいえない。 したがって,本件学力テストは,本件条例6条7号の「試験」にも「その他の事務事業」にも該当しない。 (2)争点2(本件情報の公開により,事務事業の目的が著しく失われたり,適正・公正な執行が著しく妨げられるか否か)について(控訴人の主張)本件学力テストは,学習指導要領に定められた多岐にわたる教育活動のうち,学力テストによって習得状況の把握が容易な国語,数学,英語,理科, 社会の5教科についてのみ実施され,この範囲で,各学校における習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,枚方市立小中学校児童生徒の学力の向上を図ること,学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにし,努力目標を示すことにより学習意欲を引き出すこと,及び各 学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,枚方市立小中学校児童生徒の学力の向上を図ること,学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにし,努力目標を示すことにより学習意欲を引き出すこと,及び各学校の評価の客観性や信頼性を高めることを目的とするものである。 しかるに,本件情報が公開されると,中学校の学習の習得状況を評価する指標の一つにすぎない本件学力テストの成績に基づいて各中学校のランク付けがなされてしまい,生徒,保護者及び市民等が当該成績の順位のみをもって各中学校を評価することになってしまうおそれがある。 そうすると,①下位順位の中学校に在籍している生徒は,たとえ本件学力テスト実施教科以外の教科,特別活動等に秀でていたとしても,何らかの劣等感を抱いたり,そのため,学習意欲や通学意欲を低下させたりし,逆に,上位順位の中学校に在籍している生徒は,本件学力テストの目的から逸脱した間違った優越感を抱くこと,②保護者が自己の子の在籍する中学校に対し,本件学力テストの成績向上のみを要望し,特定の教職員に対する不相当な働きかけを行うこと等の圧力をかけること,③この圧力を受けるなどした各中学校において意識的な本件学力テスト対策(学校の順位を上げるための学力テストに向けた取組)が行われ,本件学力テスト実施教科以外の教科等を含めて,適切な教育課程を編成するという目的に反する事態が生じるなどの弊害が容易に想定される。 このように,本件情報が公開されることにより,過度の競争や学校の序列化などの弊害が生じ,教育行政及びその一環である本件学力テストの目的を著しく失わせ,又はその適正若しくは公正な執行を著しく妨げることとなる。 (被控訴人の主張)ア本件学力テストが中学校の学習の習得状況を評価する指標の一つにすぎないのは控訴人主張のとおりであるが,枚方市教 失わせ,又はその適正若しくは公正な執行を著しく妨げることとなる。 (被控訴人の主張)ア本件学力テストが中学校の学習の習得状況を評価する指標の一つにすぎないのは控訴人主張のとおりであるが,枚方市教育委員会は,各中学校別 の平成16年度卒業生進路先一覧表(平成17年3月31日現在)(甲6,10)の情報公開をしたり,部活動の成果を記載した広報誌(甲7,12,15)を発行するなど随時広報活動を行っており,保護者らは,子どもたちの学力及びそれ以外の各中学校の情報についても触れる機会があるから,本件学力テストの成績のみで各中学校を評価するとは考えられない。 仮に,本件学力テストの成績の順位のみをもって各中学校が評価されることがあったとしても,下位の生徒が劣等感を抱いたり,上位の生徒が優越感を抱くとまでは考えられない。 また,仮に,保護者が特定の教職員に学力の向上を求める働きかけをしたとしても,それ自体は,学習指導要領に基づいた教育実施に向けた要望であるし,その要望が不適切であったとしても,枚方市教育委員会が適切に管理することが可能である。 イ和歌山県では,同県が実施する学力テストについて,学校ごとの正答率のデータを公表しているが,控訴人が主張するような弊害は生じていない。 また,枚方市教育委員会は,上記のとおり,平成16年度卒業生進路先一覧表(平成17年3月31日現在)を情報公開したところ,これをみれば,高偏差値である大阪府下の高校へ進学した人数が各中学校ごとに判明するのであるから,各中学校の学力が自ずと推測されることとなる。そういう意味では,上記一覧表から看取される情報は,本件情報と質的に差異がないが,上記一覧表を情報公開したことで控訴人が主張するような弊害は生じていない。 ウ控訴人は,全国的な学力調査により得られた調査データが,行政機関 覧表から看取される情報は,本件情報と質的に差異がないが,上記一覧表を情報公開したことで控訴人が主張するような弊害は生じていない。 ウ控訴人は,全国的な学力調査により得られた調査データが,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)5条6号イ・ハの不開示情報として取り扱うことが適当であるとした平成18年4月25日付け報告書(文部科学省の全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議)を援用するが,本件条例は,同法と異なり,事務事 業の目的を失わせ,あるいは執行を阻害する程度が「著し」いことを要件としているから,上記報告書の意見は本件に直ちに参考となるものではない。 第3当裁判所の判断 争点1(本件情報の事務事業情報該当性)について(1)本件条例6条7号は,事務事業の内容として,「市又は国等の機関が行う取締り,監督,立入検査,入札,交渉,渉外,争訟,試験,人事その他の事務」と規定し,これらに関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的を著しく失わせ,又はこれらの事務事業の適正若しくは公正な執行を著しく妨げると認められるものを非公開とすることができると規定している。 そして,本件条例は,その目的として市民の知る権利の保障を挙げ(1条),一定の非公開情報を限定的に列挙し,これに該当するときは当該情報を公開しないことができると規定し(6条),実施機関に対し市民の知る権利が十分に保障されるように本件条例を解釈し,運用する責務を課しているから(3条1項),非公開情報の定義は,知る権利の保障を没却しないように配慮して解釈すべきであり,これに該当しない限りはすべての情報を公開すべきである。 そして,本件条例の立法者である枚方市は,本件条例の解釈指針として手引(乙7)を作成しているから,この記載 いように配慮して解釈すべきであり,これに該当しない限りはすべての情報を公開すべきである。 そして,本件条例の立法者である枚方市は,本件条例の解釈指針として手引(乙7)を作成しているから,この記載内容も本件条例の解釈において参考とすべきである。 (2)まず,本件学力テストが,本件条例6条7号の「試験」又は「その他の事務事業」に該当するか否かを検討する。 ところで,本件学力テストは,学習指導要領に示された内容についての習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,小中学校児童生徒の学力の向上を図ることを目的として実施するものであり,枚 方市は,平成15年度及び平成16年度とも,小学生の3~6年生に国語と算数,中学生には国語,社会,数学,理科,英語を実施したものである(甲2,22の1・2,乙1,3)。 そして,本件各文書には,本件学力テストの結果をもとに,枚方市全体及び各中学校ごとに,国語,数学,英語,理科,社会の教科全体,観点別,領域別(ただし,理科,社会については領域別の集計は行われていない。)の平均得点及び到達評価(評価Aと評価A+Bの各割合)が小数点第1位まで記録されている(乙1,3)。 そうすると,本件学力テストは,学習指導要領に示された内容についての習得状況を把握するための試験というべきであるから,本件条例6条7号の「試験」に該当するというべきである。 なお,手引には,「試験」の定義として「資格試験,採用試験等をいう。」と記載されているところ,本件学力テストは,生徒の学力を測るために行うものであり,資格試験,採用試験とは性質を異にするが,手引の定義においても,資格試験や採用試験等と例示的に記載されており,資格試験や採用試験に限定されるものでないことが明らかであるから,手引によっても,本件学力テストが本件 試験とは性質を異にするが,手引の定義においても,資格試験や採用試験等と例示的に記載されており,資格試験や採用試験に限定されるものでないことが明らかであるから,手引によっても,本件学力テストが本件条例6条7号の試験に該当することを否定されるものではないというべきである。 争点2(本件情報の公開により,事務事業の目的が著しく失われたり,適正・公正な執行が著しく妨げられるか否か)について(1)前記のとおり,本件学力テストは,本件条例6条7号の「試験」に該当すると解されるので,本件情報を公開することが,「試験」としての本件学力テストの目的を著しく失わせ,又は,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げるか否かにつき,検討する。 (2)本件学力テストは,学習指導要領に示された内容についての習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,小中学校児童 生徒の学力の向上を図ること,学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにし,努力目標を示すことにより,学習意欲を引き出すこと,及び各学校の行う評価の客観性や信頼性を高めることを目的とするものである(甲2)。 そうすると,本件学力テストは,生徒が日ごろの学習内容をどのくらい理解できたかを測り,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立てることを主たる目的としており,生徒の成績を比較することを目的としていないから,本来,本件情報の公開により,事務事業の目的が著しく失われたり,適正・公正な執行が著しく妨げられるものではないはずである。 これに対し,控訴人は,本件情報が公開されると,中学校の学習の習得状況を評価する指標の一つにすぎない本件学力テストの成績に基づいて各中学校のランク付けがなされてしまい,生徒,保護者及び市民等が当該成績の順位のみをもって各中学校を評価することになってし 学習の習得状況を評価する指標の一つにすぎない本件学力テストの成績に基づいて各中学校のランク付けがなされてしまい,生徒,保護者及び市民等が当該成績の順位のみをもって各中学校を評価することになってしまうおそれがあると主張する。 確かに,本件各文書が,平成15年度及び平成16年度に実施された本件学力テストのうち,中学校実施部分(枚方市立中学校19校の1年及び2年の学力診断テスト)に関して作成された「学校別一覧(中学校)」等と題された書面であり(乙1),本件各文書には,本件学力テストの結果をもとに,枚方市全体及び各中学校ごとに,国語,数学,英語,理科,社会の教科全体,観点別,領域別(ただし,理科,社会については領域別の集計は行われていない。)の平均得点及び到達評価(評価Aと評価A+Bの各割合)が小数点第1位まで記載されており,本件学力テストの結果が,点数又はパーセントという形で計量化された情報であるため,本件情報が公開された場合,各中学校の平均得点等を比較したり,この得点を基に中学校の順位を付けることが可能となるから,このような順位付けがされるおそれを一概に否定できない。 しかしながら,上記の懸念は,本件学力テストの趣旨,目的(生徒の学力 を測ることを目的としており,各学校各学年の平均得点や到達評価がほば同程度になることが期待されているはずであり,少なくともある学校が他の学校より極端に高い平均得点や到達評価を得ることが期待されているとは考えられないこと)が,生徒,保護者及び市民等に理解されていないことを前提とするものと考えられるから,まず,その理解を得るよう努力し,その弊害を除去,減少すべきであって,このような懸念があることをもって,安易に本件情報の公開の障害事由と解すべきではないと考えられる。このことは,前記のとおり,本件学力テス の理解を得るよう努力し,その弊害を除去,減少すべきであって,このような懸念があることをもって,安易に本件情報の公開の障害事由と解すべきではないと考えられる。このことは,前記のとおり,本件学力テストが,学習指導要領に示された内容についての習得状況を把握し,各学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,小中学校児童生徒の学力の向上を図ることにとどまらず,学習の到達度を児童生徒や保護者等に明らかにし,努力目標を示すことにより,学習意欲を引き出すこと,及び各学校の行う評価の客観性や信頼性を高めることを目的とするものであるから,各学校の生徒の学力の差が生じた場合,その差を狭めるよう努力することが求められているはずであることからも,上記懸念は大きなものではないと考えられる。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 (3)さらに,控訴人は,本件情報の公開による弊害が生じることを詳細に主張するので,検討する。 ア控訴人は,本件情報の公開による,中学校の順位付けがなされることによって,下位順位の中学校に在籍している生徒は,たとえ本件学力テスト実施教科以外の教科,特別活動等に秀でていたとしても,何らかの劣等感を抱いたり,そのため,学習意欲や通学意欲を低下させたりし,逆に,上位順位の中学校に在籍している生徒は,本件学力テストの目的から逸脱した間違った優越感を抱くことになると主張する。 しかし,前記(2)の認定,判断によると,本件学力テストの趣旨,目的が正しく理解された場合,本件情報の公開により,必ずしも中学校の序列 化が行われたり,そのような認識を抱くとは限らないと認められる。また,本件学力テストを受験する中学生は,入学試験がなく,学校選択制も採用されていない枚方市立各中学校の生徒であり,受験した生徒は,本人及び市全体の各観点別評価等の分 抱くとは限らないと認められる。また,本件学力テストを受験する中学生は,入学試験がなく,学校選択制も採用されていない枚方市立各中学校の生徒であり,受験した生徒は,本人及び市全体の各観点別評価等の分析結果の送付を受け,自己の成績及び市全体における自己の相対的な順位(位置)を既に知っていることに照らせば,本件情報が公開され,自己が在籍する中学校全体の成績や他の市立中学校の成績と比較した相対的順位等を知ることになったとしても,そのことによって,生徒が劣等感を抱いて学習意欲や通学意欲を低下させたり,行きすぎた優越感を抱くことになるとは考えにくい。控訴人が主張する,本件学力テスト実施教科以外の教科や特別活動等に秀でている生徒が本件学力テストの結果に劣等感を持つという事態は,むしろ本人の成績が悪かった場合に生じ得るものであり,教職員は,このような場合,生徒に対し,実施教科についての学力の向上を働きかけるとともに,他の優れている教科や活動を積極的に評価するなど,生徒が過度の劣等感を持たないような指導を行う必要があり,そうすべきである。しかし,少なくとも,入学試験がなく,学校選択制もない枚方市立中学校に通う生徒について,本人の成績ではなく,その通う中学校の成績が悪かったことから,その生徒が劣等感を抱き,学習意欲等を低下させるまでの劣等感を抱くことは,通常,考え難い。また,本件学力テストの結果によって,行き過ぎた優越感を持つ生徒がいるとすれば,それは,本人の成績が良かった場合であり,本人の成績ではなく,その在籍する中学校の成績が良かったことから,その生徒が,教育上支障を来すほどの優越感を持つことになるとは,これまた,考え難い。 確かに,自己の在籍する中学校が成績下位校であることにより何らかの劣等感を感じたり,逆に成績上位校であることにより一定の優越 ,教育上支障を来すほどの優越感を持つことになるとは,これまた,考え難い。 確かに,自己の在籍する中学校が成績下位校であることにより何らかの劣等感を感じたり,逆に成績上位校であることにより一定の優越感を感じることを完全には否定できないが,これは,教職員や生徒の保護者が必要 に応じて指導や注意をすれば足りる程度の感情であって,本件学力テストの目的を著しく失わせたり,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げる要因になるものとはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 イさらに,控訴人は,保護者が自己の子の在籍する中学校に対し,本件学力テストの成績向上のみを要望し,特定の教職員に対する不相当な働きかけを行うこと等の圧力をかけることになり,この圧力を受けた各中学校において意識的な学力テスト対策(学校の順位を上げるための学力テストに向けた取組)が行われ,本件学力テスト対象教科以外の教科を含めて,適切な教育課程を編成するという目的に反することになると主張する。 しかし,本件学力テストは生徒の学力を測るものであり,各中学校ごとの本件学力テストの成績が,その在校生の高校入試の際に反映されるものではないはずであるから,本件学力テストの趣旨,目的が正しく認識されている限り,本件情報が公開されたことから,保護者が中学校に対し,本件学力テストの成績向上のみを要望したり,特定の教職員に対し,不相当な圧力をかけることになるとは考えにくい。もちろん,本件情報が公開された場合,保護者が,その結果を踏まえ,各中学校に対し質問をしたり,要望をしたりすることは予想できるところであり,平均得点や到達評価が他の学校に比べて低い科目等に関しては,その教育内容の改善を求めるということも予想できるが,それは,前記のとおり,本件学力テストの目的の一つが,同テスト結 想できるところであり,平均得点や到達評価が他の学校に比べて低い科目等に関しては,その教育内容の改善を求めるということも予想できるが,それは,前記のとおり,本件学力テストの目的の一つが,同テスト結果を各中学校における教育課程や指導方法の改善に役立て,生徒の学力の向上を図ることであること,枚方市においては学校選択制を採用しておらず,保護者は自己の子が通う市立中学校を選べないことに照らせば,保護者が,中学校に対し,上記のような質問をし,意見を述べる機会を持つこと,そして,中学校がその意見も参考にして,教育課程や指導方法の改善を図ることは,本件学力テストの前記目的にそうも のであって,決して反するものとはいえない。そして,仮に,本件学力テストの趣旨,目的を誤解するなどして,中学校や特定の教職員に対し不相当な圧力を加える保護者がいたとしても,それは,各中学校において,保護者の誤解を解き,あるいは指導方法の改善案を提示するなどによって対応することが十分可能というべきである。控訴人が主張するように,保護者からの圧力を受けて,本件学力テストにおける学校の順位を上げるためだけの取組(例えば,本件学力テストに向けた試験対策を念入りにするなど)を行うような見識に欠けた中学校が枚方市に存在することをうかがわせる証拠はなく,控訴人の上記主張は一般的な可能性ないし危惧を述べたものにすぎないというべきである。 このように,本件情報の公開によって,控訴人が主張する上記弊害が発生するとは認められず,本件学力テストの目的を著しく失わせたり,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げる事態が発生するともいえない。 控訴人の上記主張も採用できない。 (4)なお,文部科学省に設置された「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」の平成18年4月25日付け「全国的 しく妨げる事態が発生するともいえない。 控訴人の上記主張も採用できない。 (4)なお,文部科学省に設置された「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」の平成18年4月25日付け「全国的な学力調査の具体的応な実施方法等について(報告)」によれば,全国的な学力調査の公表の具体的方法について,個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度の競争のにつながるおそれがあるとして,公表する場合も,全国的な学力調査の結果に基づいて順位付けがなされることや過度の競争をあおらないよう細心の注意を払う必要があること,得られた調査データは,情報公開法5条6号イ又はハに該当するものとして取り扱うことが適当と考えられることなどが指摘されている(乙8)。 確かに,非常に多くの中学校生及びその両親らが本件情報に大きな関心を持っているはずであることを考えると,そのような指摘は十分理解できるところであるが,前記の検討のとおり,本件学力テストの本来の趣旨,目的に ついての正しい理解を求めるべきであり,そうすると,本件情報の公開による弊害は決して大きいとはいえないのであって,上記の指摘を不当に過大評価すべきでないものと考える。 また,情報公開法5条6号は,不開示情報として,事務事業の性質上,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものなどと規定しており,本件条例6条7号と比較した場合,事務支障の「おそれ」があれば足りるとしている点,事務支障の程度が「著し」いことを要件としていない点の2点において,不開示情報の範囲が広げられているのであるから,情報公開法上の不開示情報への該当可能性があることをもって,本件条例の非公開情報への該当性を基礎づけることはできない。 そうすると,上記専門家検討会議の意見を考慮したとしても,本件情報を非公開とする理由を基礎づけるに足りず への該当可能性があることをもって,本件条例の非公開情報への該当性を基礎づけることはできない。 そうすると,上記専門家検討会議の意見を考慮したとしても,本件情報を非公開とする理由を基礎づけるに足りず,本件情報を公開することにより,本件学力テストの目的を著しく失わせ,その適正若しくは公正な執行を著しく妨げるとは認められない。 (5)したがって,教育長のした本件情報を非公開とする本件各処分はいずれも違法である。 第4 結論 以上のとおり,被控訴人の請求にはいずれも理由があるから,これらを認容することとし,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部裁判長裁判官横田勝年 裁判官東畑良雄裁判官植屋伸一
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