平成26(ワ)4 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年4月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文31,383 文字)

- 1 -平成27年4月28日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第4号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年1月30日判決 原告株式会社日研工作所 同訴訟代理人弁護士三山峻司同清原直己同訴訟代理人弁理士伊藤英彦同竹内直樹 被告津田駒工業株式会社 同訴訟代理人弁護士黒田健二同笹倉興基同門松慎治主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の装置を製造,販売,販売の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録記載の装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,金3億8590万円及び内金7570万円に対する- 2 -平成18年12月1日から,内金6050万円に対する平成19年12月1日から,内金6200万円に対する平成20年12月1日から,内金2370万円に対する平成21年12月1日から,内金3110万円に対する平成22年12月1日から,内金4390万円に対する平成23年12月1日から,内金5530万円に対する平成24年12月1日から,内金3370万円に対する平成25年9月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金 から,内金4390万円に対する平成23年12月1日から,内金5530万円に対する平成24年12月1日から,内金3370万円に対する平成25年9月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,別紙被告製品目録記載の装置(以下「被告製品」という。)が原告の有する特許権を侵害するとして,特許法100条1項,2項に基づき,被告製品の販売等の差止め,廃棄を求めるとともに,同法102条2項により,被告が受けた利益を原告の受けた損害と推定し,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償の支払を求めた事案である。 2 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨より前提として認められる事実。証拠の記載のないものは,争いがないか弁論の全趣旨より認められる。)(1) 当事者ア原告は,工具保持具,切削工具および治工具並びに工作機械周辺機器およびその付属品の製造販売などを目的とする株式会社である(甲1)。 イ被告は,工作機械ならびに工作機械完成部品の製造販売などを目的とする株式会社である(甲2)。 (2) 原告の特許権(甲3,4,5)ア原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件特許発明」という。また,本件特許の審決公報による訂正後の特許請求の範囲を以下単に「本件特許請求の範囲」,その明細書及び図面をあわせて「本件明細書」という。)に係る特許権(本件特許権)を有- 3 -している。 特許番号第3713190号発明の名称円テーブル装置出願日平成12年7月11日(特願2000-209970)登録日平成17年8月26日訂正審判請求日平成22年4月1日審判番号訂正20 円テーブル装置出願日平成12年7月11日(特願2000-209970)登録日平成17年8月26日訂正審判請求日平成22年4月1日審判番号訂正2010-390030訂正の審決平成22年5月7日審決確定日平成22年5月17日特許請求の範囲(訂正後のもの,下線部は訂正部分)【請求項1】回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部を備え,駆動機構により回転軸(5)を回転させ,クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において,前記駆動機構は,回転軸(5)に設けたウォームホイール(11)と該ウォームホイール(11)に噛み合うウォーム軸(12)により構成されると共に,ウォーム軸(12)とウォームホイール(11)はオイルバス内に収納され,前記クランプ機構は,前記ウォームホイール(11)に固着されたブレーキディスク(15)と,該ブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材(20)及び可動側クランプ部材(21)と,可動側クランプ部材(21)を軸方向の固定側クランプ部材(20)側に加圧する流体圧ピストン(25)と,前記流体圧ピストン(25)を軸方向移動可能に嵌合させているシリンダ形成部材(31)と,該流体圧ピストン(25)と前記可動側クランプ部材(2- 4 -1)と前記シリンダ形成部材(31)との間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能なボール(26)とカム面(28,29,40)よりなる増力機構とを,備え,前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,前記増力機構は,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している流体圧ピス クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,前記増力機構は,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用による第1段増力部と,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有することを特徴とする円テーブル装置。 【請求項2】前記流体圧ピストンは,回転軸を取り囲む環状に形成されている請求項1記載の円テーブル装置。 イ本件特許発明は,次のとおり構成要件に分説することができる(以下「構成要件A」などという。)。 【請求項1】A 回転軸(5)の軸方向一端にワーク取付部を備え,駆動機構により回転軸(5)を回転させ,クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において,B 前記駆動機構は,回転軸(5)に設けたウォームホイール(11)と該ウォームホイール(11)に噛み合うウォーム軸(12)により構成されると共に,ウォーム軸(12)とウォームホイール(11)はオイルバス内に収納され,C 前記クランプ機構は,- 5 -C1 前記ウォームホイール(11)に固着されたブレーキディスク(15)と,C2 該ブレーキディスク(15)を軸方向の両側から解除可能に挟圧する固定側クランプ部材(20)及び可動側クランプ部材(21)と,C3 可動側クランプ部材(21)を軸方向の固定側クランプ部材(20)側に加圧する流体圧ピストン(25)と,C4 前記流体圧ピストン(25)を軸方向移動可能に嵌合させているシリンダ形成部材(31)と,C5 該 プ部材(21)を軸方向の固定側クランプ部材(20)側に加圧する流体圧ピストン(25)と,C4 前記流体圧ピストン(25)を軸方向移動可能に嵌合させているシリンダ形成部材(31)と,C5 該流体圧ピストン(25)と前記可動側クランプ部材(21)と前記シリンダ形成部材(31)との間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能なボール(26)とカム面(28,29,40)よりなる増力機構とを,備え,D 前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,E 前記増力機構は,E1 ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)のカム作用による第1段増力部と,E2 ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有するF ことを特徴とする円テーブル装置。 【請求項2】G 前記流体圧ピストンは,回転軸を取り囲む環状に形成されている請求項1記載の円テーブル装置。 - 6 -(3) 被告の行為被告は,遅くとも平成19年8月ころから(開始時期については当事者間で争いがある。),被告製品の製造,販売及び販売の申出をしている。 3 原告の請求原告は,被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するとして,特許法100条1項,2項に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め及び被告製品の廃棄を求め,また,同法102条2項の推定により,被告製品の売上高は128億7900万円を下らず,被告の利益等から考え,原告は金3億8590万円を下らない損害を蒙っているとして,前記第1の3記載の金員 棄を求め,また,同法102条2項の推定により,被告製品の売上高は128億7900万円を下らず,被告の利益等から考え,原告は金3億8590万円を下らない損害を蒙っているとして,前記第1の3記載の金員の支払を求めた。 4 争点(1) 被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか(構成要件D及びE2の充足。争点1)(2) 本件特許発明につき無効理由が存するか(争点2)(3) 原告の損害(争点3)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) 被告製品の構成ア被告製品は,次の構成を有する。 (請求項1に係る発明との対比)a 回転軸の軸方向一端にワーク取付部を備え,駆動機構により回転軸を回転させ,クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において,b 前記駆動機構は,回転軸に設けたウォームホイールと該ウォームホイールに噛み合うウォーム軸により構成されると共に,ウォーム軸と- 7 -ウォームホイールはオイルバス内に収納され,c 前記クランプ機構は,c1 前記ウォームホイールに固着されたクランプディスクと,c2 該クランプディスクを軸方向の両側から解除可能に挟圧するフレーム及びクランプリングと,c3 クランプリングを軸方向のフレーム側に加圧するクランクピストンと,c4 前記クランクピストンを軸方向移動可能に嵌合させているクランプシリンダと,c5 該クランプピストンと前記クランプリングと前記クランプシリンダとの間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能な鋼球とカム面よりなる増力機構とを,備え,d 前記クランプリングは,板ばねにより,軸方向のアンクランプ側に付勢され,e 前 クランプシリンダとの間に介在すると共に軸方向及び径方向に移動可能な鋼球とカム面よりなる増力機構とを,備え,d 前記クランプリングは,板ばねにより,軸方向のアンクランプ側に付勢され,e 前記増力機構は,e1 鋼球を介してクランプシリンダのテーパー面に対向しているクランプピストンの第1段用テーパーカム面のカム作用による第1段増力部と,e2 鋼球を介してクランプシリンダのテーパー面に対向しているクランプリングの第2段用テーパーカム面のカム作用による第2段増力部を有するf ことを特徴とする円テーブル装置。 (請求項2に係る発明との対比)g 前記クランプピストンは,回転軸を取り囲む環状に形成されている。 イ対比被告製品の構造は,下記図のとおりであり,図内の符号は次のものを- 8 -指し,括弧内に記載された本件特許発明の部分と対応する。 【図】 符号1 回転軸同2 ワーク取付部同3 ウォームホイール同4 駆動用ウォーム軸同5 オイルバス同6 クランプディスク(ブレーキディスク)同7 フレーム(固定側のクランプ部材)同8 クランプリング(可動側のクランプ部材)同9 クランプピストン(流体圧ピストン)同10 鋼球(ボール)同11 板ばね(リターンばね)同12 クランプシリンダ(シリンダ形成部材)- 9 -ウ構成要件充足性構成要件AないしGは,それぞれ被告製品の構成aないしgに相当し,被告製品の構成aないしgが,本件特許発明の構成要件AないしGを充足することは明らかである。 以上により,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するものである。 エ作用効果被告製品は,本件特許発明と同一の作用効果を奏する。 ( することは明らかである。 以上により,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するものである。 エ作用効果被告製品は,本件特許発明と同一の作用効果を奏する。 (2) 構成要件Dについてアリターンばね(ア) 「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,」との特許請求の範囲の記載(構成要件D)によれば,可動クランプ部材(被告製品のクランプリング)が,「リターンばね」の手段・方法により,軸方向のアンクランプ側に付勢されることが要件となっている。 (イ) 構成要件Dの構成は,回転位置決め精度及び駆動機構の耐久性の向上(本件明細書【0030】)に寄与している。 クランプ状態となった後,空気圧を減圧してクランプを解除しても,クランプシリンダ(シリンダ形成部材)とクランプリング(可動側クランプ部材)によって形成されるカム面に増力された力で強く押し込まれたボールは,空気圧を減圧しクランプピストン(流体圧ピストン)を戻しただけでは抜けないまま,押し込まれた状態でクランプ状態が保持されてしまう。このような状態が生じると,過負荷により装置が停止するという事態に陥る。このような状態は,駆動機構の耐久性に悪影響を及ぼす。 また,アンクランプ時にピストン25をアンクランプ側に後退させ- 10 -ても,くさび状に対向面に食い込んだボール26は食い込み状態のままで停止しており,可動側クランプ部材は依然としてブレーキディスクに圧力を付与した状態のままとなり,円滑に作動せず,「回転位置決め精度」が大きく落ちる。 そこで,長期間にわたり継続的に安定したクランプ動作及びアンクランプ動作を行うようにするためには,アンクランプ 力を付与した状態のままとなり,円滑に作動せず,「回転位置決め精度」が大きく落ちる。 そこで,長期間にわたり継続的に安定したクランプ動作及びアンクランプ動作を行うようにするためには,アンクランプ時にピストン25をアンクランプ側に後退させるだけでは不十分で,「リターンばね」30の付勢力によって可動側クランプ部材21を強制的にアンクランプ側に後退させることが必要となる。 したがって,「リターンばね」は,「クランプ状態を解除する際に,すなわち,クランプからアンクランプ動作に入る時に,可動側クランプ部材を軸方向のアンクランプ側に付勢して,可動クランプ部材がブレーキディスクをクランプしているのを確実に解除するもの」である。 (ウ) このような「リターンばね」について,クランプ機構に関するという点が記載されているだけで,設置場所や形状についての限定はされていない。 イ被告製品の構成部材11(板ばね)は,クランプリング8とクランプシリンダ12の間に設置され,板ばね(平板状の形状のもので力がかかって曲げられたり撓ませられたりすると,元の平板状の形態に戻る弾性力を発揮する。)を二枚重ねた円環状の平板状ディスクである。部材11上には,穴が複数空いている。それらの穴に互い違いにクランプリング8とクランプシリンダ12とを結合させているので,クランプ時及びアンクランプ時には図示すれば,それぞれ次のようになる。 (ア) クランプ時鋼球10の動きでクランプリング8が回転軸芯方向の正面部に前進- 11 -し,クランプシリンダ12との間に隙間ができて,板ばね11が広がる(下記右図の8側にあるは,通し穴でボルトがこの中を通り,12側にあるは,ボルトの頭が入る穴が開けられており,は雌ネジがきってあるねじ穴を示す)。 ( 間に隙間ができて,板ばね11が広がる(下記右図の8側にあるは,通し穴でボルトがこの中を通り,12側にあるは,ボルトの頭が入る穴が開けられており,は雌ネジがきってあるねじ穴を示す)。 (イ) アンクランプ時板ばね11が復元力をもって元の平板な状態に戻ろうとし,クランプリング8が回転軸芯方向の背面部に後退する。 ウ被告製品の構成要件充足性- 12 -可動側クランプ材に相当するクランプリング8が回転軸芯方向に移動する結果,シリンダ形成部材に相当するクランプシリンダ12と離れてしまうところ,部材11(板ばね)の一部は,可動側クランプ材に相当するクランプリング8にねじ止めされているために,可動側クランプ材に相当するクランプリング8と共に回転軸芯方向に移動する。 他方,シリンダ形成部材に相当するクランプシリンダ12は移動しないので,シリンダ形成部材に相当するクランプシリンダ12とねじ止めされている部材11(板ばね)の一部はシリンダ形成部材に相当するクランプシリンダ12と結合された状態のままとなる。それゆえ,部材11(板ばね)は,元の平坦な円環状ディスクに戻ろうとする力が働く。 すなわち,アンクランプ側に力が働くこととなる。 よって,部材11(板ばね)は,クランプ時に可動側クランプ部材に相当するクランプリング8をアンクランプの状態に戻そうとする力を,可動側クランプ部材に相当するクランプリング8にかけている。クランプ力を増大する目的のものではないことは明らかである。 以上から,被告製品の「クランプリングは,クランプリングとクランプシリンダの間に位置し,クランプリングの軸方向下面部にネジ通し穴を通じてネジ止めされると共にクランプシリンダ軸方向上面部にもネジ通し穴を通じて交互にネジ止めされた板ばねにより,軸方向のアンクラ プシリンダの間に位置し,クランプリングの軸方向下面部にネジ通し穴を通じてネジ止めされると共にクランプシリンダ軸方向上面部にもネジ通し穴を通じて交互にネジ止めされた板ばねにより,軸方向のアンクランプ側に付勢され」(被告製品の構成d)ているので,「可動側クランプ部材に相当するクランプリングは,部材11(板ばね)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され」ているという構成要件Dを満たす。 エ被告の主張に対する反論被告は,「リターンばね」がアンクランプ時に付勢によりボール26と第1段用テーパーカム面28が当接した状態を保つものに限る旨主張する。 - 13 -本件明細書【0025】は,クランプ解除時,リターンばねが可動側クランプ部材を軸方向のアンクランプ側に付勢し,アンクランプ方向に力を働かせることで可動側クランプ部材がブレーキディスクをクランプしているのを確実に解除することを説明した記載であり,実施例を示したものである。確実に解除すると,ボールがフリーになり,クランプピストンに当接する結果となる。ボールはロック状態からフリーになることに意味があり,クランプピストンに当接しているか当接していないかということ自体は問題ではない。被告は,当接する場合の技術的意義を述べるが,構成要件Dの技術的意義は上記のとおりクランプの確実な解除(アンクランプの確実な実現)にあり,被告の主張は構成要件Dの充足性とは無関係である。 (3) 構成要件E2についてア 「テーパーカム面」の意義(ア) 構成要件E2における「テーパーカム面(29)」は,「テーパー」を付加して限定したものではなく,不可分一体の用語である。「テーパーカム面」とは,力の伝達を介する面を指しており,シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになる,カム 29)」は,「テーパー」を付加して限定したものではなく,不可分一体の用語である。「テーパーカム面」とは,力の伝達を介する面を指しており,シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになる,カム作用を生じさせる面であり,入力面ないし出力面である。可動側クランプ部材のテーパーカム面29に傾斜角度がつけられていることは必須ではない(特許請求の範囲には,その傾斜角度の記載はない。)。 可動側クランプ部材のテーパーカム面29とシリンダ形成部材のテーパー面40は,ボール26を介して上記の両面の距離が一定でない周辺の対向面を形成しており,その両面によってボール26に作用することをカム作用と称しているものである。 (イ) 本件明細書において,シリンダ形成部材31に形成されたボール26と接する面については「テーパー面(40)」と記載されている(【0- 14 -017】【0021】)のに対し,ピストン側のボールが接する面あるいは可動側クランプ部材のボールが接する面については,「カム面(28,29)」(【0007】【0013】【0027】)及び「テーパーカム面」(【0016】~【0018】,【0022】,【0023】,【0029】)と記載されており,明確に書き分けられている。 このことから,ボールが当接する3面のうち,①ピストン側のボールが接する面(28)及び可動側クランプ部材のボールが接する面(29)と,②シリンダ形成部材31に形成されたボール26と接する面(40)とは,別のカテゴリーに属することが分かる。本件特許発明における増力機構は,上記①②における3つの面(28,29,40)とボールによって増力される仕組みとなっているところ,ピストン側の面(28)を,押圧力を入力する「第1段用テーパーカム面」,出力側で における増力機構は,上記①②における3つの面(28,29,40)とボールによって増力される仕組みとなっているところ,ピストン側の面(28)を,押圧力を入力する「第1段用テーパーカム面」,出力側である可動側クランプ部材に形成された面(29)が「第2段用テーパーカム面」と指称されている。これによれば,「テーパーカム面」とは,3つの面を用いた増力機構において,シリンダ形成部材のテーパー面とカム作用を利用した入力面及び出力面を表現したものであり,「シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになる,カム作用を生じさせる面」ということになる。 したがって,「テーパーカム面」は,回転軸芯と垂直のものであったとしても,上記カム作用を生じさせるもので,これを排除するものではない。 イ 「テーパー」の意義(ア) 本件特許発明における「テーパー」とは,ピストン側のボールと接する面及び可動側クランプ部材の面がシリンダ形成部材とセットになって第1段増力部,第2段増力部として勾配が形成されていることを- 15 -示している。 これを図示すると,下記の図のように,左のものは,被告製品と同等のものであり,右のものは本件特許の実施例である図面と同等のものである。可動側クランプ部材のボールと当接する面が,傾斜を有する場合であっても回転軸と垂直であっても,第2段増力部は,シリンダ形成部材「テーパー面」とセットとなり,2面間で勾配を形成している。 【図】 (イ) 本件明細書【0018】に基づく主張【0018】の記載は,実施例にすぎず,本件特許発明の技術的範囲が【0018】で開示された内容に限定されるものではない。 構成要件C5及びEの記載,前記ア(イ)に記載の増力機構の技術的意義に照らせば,ピス 8】の記載は,実施例にすぎず,本件特許発明の技術的範囲が【0018】で開示された内容に限定されるものではない。 構成要件C5及びEの記載,前記ア(イ)に記載の増力機構の技術的意義に照らせば,ピストンに形成された面(28)は,シリンダ形成部材に形成されたテーパー面(40)とボールによって増力作用を生じさせるような傾斜を有することが必要不可欠であるから,面(28)におけるα1の角度が0°ということはあり得ない。他方,可動側クランプ部材のテーパーカム面(29)におけるα3については,0°でもカム作用を受けることが可能であるばかりか,0°の場合にF3- 16 -が最大となる。これは,【0018】においてα1のみ「テーパー角」の記載もあることからすれば,α3について0°を排斥するものではない。 (ウ) 当業者である被告の認識理解被告は,平成20年2月1日に,発明の名称を「インデックステーブルのクランプ装置の増力装置」とする特許を出願し(特許第5093805号,以下「被告特許」という。),その中で本件特許発明を引用文献として記載している(【0011】)。 被告特許の特許公報中図9は,本件特許の増力装置を示しているところ,明らかに本件特許の可動側クランプ部材とボールとの当接面を回転軸芯方向に垂直な面として記載している。 よって,本件特許発明における「第2段用テーパーカム面」は回転軸芯に直角な面を含むと解釈するのが,技術常識に照らしても普通の解釈であるといえる。 (エ) 被告主張の不自然さ本件特許発明における増力は,α1ないし3が可変数であるが,構成要件E2中の「テーパーカム面」が「テーパー」状であるか否かに影響を与えるのは,α3のみである。 α3について検討する の不自然さ本件特許発明における増力は,α1ないし3が可変数であるが,構成要件E2中の「テーパーカム面」が「テーパー」状であるか否かに影響を与えるのは,α3のみである。 α3について検討すると,0°付近において最大に増力された力は連続的に変化するもので,α3の角度の変化に対して,増力比は連続的に変化しており,α3が少しでも角度を有すると,回転軸芯に対して垂直にはならないが,その場合の増力率はα3が0°の場合とほとんど違いがない。外観的にも差異がなく,技術的にも等価である。それにもかかわらず,α3が0°である場合の1点のみを排除する解釈は「自然法則を利用した技術的思想」を示した特許発明の解釈としては不自然きわまりない。 - 17 -また,本件明細書【0018】には,α3について「傾斜角度」と記載されているところ,当業者において「傾斜角度」とは,0°を含む概念として通常使用されている。 したがって,「傾斜角度」α3に0°も含まれると考えることが技術常識であり,当業者は「第2段用テーパーカム面」には回転軸芯に対して垂直な面を含むものと解釈することが技術常識に適う。 ウ被告製品の構成要件E2の充足性構成要件E2における「テーパーカム面」は,上記アのとおりであるから,被告製品の可動側クランプ部材に相当するクランプリング8の鋼球10に接する面が回転軸芯と直角な面であっても,被告製品の「鋼球を介して回転軸芯と直角な面に対して約25度の傾斜角度を有するクランプシリンダのテーパー面に対向している回転軸芯と直角のクランプリングのカム作用による第2段増力部を有する」(被告製品の構成e-2)は,「ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面 ム作用による第2段増力部を有する」(被告製品の構成e-2)は,「ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有する」の構成要件E2を充足する。 【被告の主張】(1) 被告製品の構成要件充足性等被告製品の構成が,構成要件D及びE2を充足することは否認ないし争う。被告製品は,原告の主張する本件特許発明の作用効果を得るために必要とされる構成の一部を欠き,同一の作用効果を奏するとはいえないから,本件特許の技術的範囲に属しない。 (2) 構成要件Dについて被告製品は,構成要件Dを充足しない。 ア構成要件Dの内容- 18 -本件明細書の記載(【0014】,【0019】~【0025】),図1等によれば,「リターンばね」は,クランプ部材20,21の間に縮設され,縮設された反発力により,可動側クランプ部材21をアンクランプ側に押した状態とするばねを指すものと解される。 イ被告製品に「リターンばね」がないこと(ア) 原告の主張する被告製品の構造によれば,本件特許発明の固定側クランプ部材20に対応するフレーム7と,本件特許発明の可動側クランプ部材21に対応するクランプリング8との間には,ブレーキディスクに対応するクランプディスク6があるのみであり,縮設されてアンクランプ側にクランプリング8を押した状態とする部材は全く存在しない。 原告が被告製品において「リターンばね」に当たると主張しているのは,クランプ部材20,21の間に縮設されたリターンばね30に相当するものではなく,可動側クランプ部材21に相当する「クランプリング」8と,シリンダ形成部材31に相当す ね」に当たると主張しているのは,クランプ部材20,21の間に縮設されたリターンばね30に相当するものではなく,可動側クランプ部材21に相当する「クランプリング」8と,シリンダ形成部材31に相当するクランプシリンダ12との間にある部材11である。 - 19 -部材11は,平坦な円環状のディスクであり,原告の主張するような波打ったばね様の曲面形状を有するものではない。部材11は,クランプ力を増大させる目的でねじ止めされているもので,形状が平坦である以上縮設もされておらず,縮設により「クランプリング」8を付勢しているものでもない。 (イ) 本件明細書の記載(【0025】)によれば,「リターンばね(30)」は,アンクランプ時において,可動側クランプ部材21をアンクランプ方向に付勢し,ボール26が「第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つ」作用を有するものである。 「当接した状態を保つ」ことは,発明の「作用」欄(本件明細書【0019】~【0025】)に含まれる【0025】に記載されていることから,単なる一実施例ではなく,「リターンばね(30)」は,「当接した状態を保つ」作用を果たすものであり,「付勢」の態様としては「当接した状態を保つ」ように常時付勢するものであると理解できる。 (ウ) しかし,部材11は,少なくともアンクランプ時には本来の形状に戻った安定状態にあり,何ら付勢力を持たないから,上記「リターンばね(30)」の作用を実現することができないものである。 本件特許発明においては,可動側クランプ部材のテーパーという特殊な構成を持つため,リターンばねが常時付勢し「当接した状態を保つ」ものでない限り,可動側クランプ部材の変位(流体圧ピストンの面28と可動側クランプ部材の面29との距離(相対 部材のテーパーという特殊な構成を持つため,リターンばねが常時付勢し「当接した状態を保つ」ものでない限り,可動側クランプ部材の変位(流体圧ピストンの面28と可動側クランプ部材の面29との距離(相対位置関係)が全周にわたって同じ状態とならない場合)が生じ,クランプによっても押圧力が全周において均一とならず,結果として「強固かつ確実な」固定という,本件発明の効果(本件明細書【0027】)を得ることができないおそれがあることになる。 - 20 -したがって,常時付勢するリターンばねには,均一なクランプができるという重要な技術的意義があるもので,構成要件Dの権利範囲の解釈としても,リターンばねは,常時付勢のものとして理解されるべきである。 ウよって,被告製品は,「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され」を充足しない。 (3) 構成要件E2について被告製品は,構成要件E2を充足しない。 ア 「テーパーカム面(29)」「テーパーカム面」は,それ自体が,回転軸芯と直角な面に対して30°以下の緩やかな傾斜角度(α3)を有する面であって,「シリンダ形成部材テーパー面(40)と対向してセットになる,カム作用を生じさせる面」という意味で,不可分一体の用語であるとする原告の主張は争う。 (ア) カム機構カム機構の一般的な特徴は,次のとおりである。 ① 特定の輪郭曲線を持つ原動節,単純な形状の従動節及びその両者を回転対偶または直進対偶で支持する静止節からなる。 ② 原動節のことを「カム」といい,その形状を「カム輪郭」などという。 ③ 原動節の所定の周期での回転運動又は直線運動を,従動節の各種の運動に変換する役割を有する。 ④ 原動節と従動 らなる。 ② 原動節のことを「カム」といい,その形状を「カム輪郭」などという。 ③ 原動節の所定の周期での回転運動又は直線運動を,従動節の各種の運動に変換する役割を有する。 ④ 原動節と従動節とは,常に直接接触している。 ⑤ 一般的なカム機構が(請求項に現れている)「増力」という効果をもたらすとの説明は,必ずしも見当たらない。 - 21 -(イ) 「テーパー」の意義a 「テーパー」とは,円錐状に先細りになっていること,また,その先細りの勾配をいうところ,本件特許のような回転軸芯を中心とした円テーブルの構造が問題となっているものである以上,下記本件特許の図2のような断面図において,回転軸芯方向を基準としてα1の角度を有することや,回転軸芯と直角な面を基準としてα2及びα3といった傾斜角度を有することである。 回転軸芯に対してα1の角度を持つテーパー面28は,ピストン25の円錐状の凸部を形成する。回転軸芯と直角な面に対してα2の角度を有するテーパー面40及びα3の角度を有するテーパー面29は,円錐の凹部を形成する。このように,テーパー面は,立体的に見れば,まさに回転軸芯を中心とした円錐状の形状を持つことになる。 以上のとおり,テーパーとは,基準となる面に対して一定の実質的な傾斜を持つことであり,α3が0°であるような平坦な円上の面は「テーパー」とはいえない。また,本件明細書【0018】には,「30°以下の緩やかな傾斜角度」という説明があるとおり,「傾斜」が0°を含まないことは自明である。「第1段用テーパーカム面(28)」と「第2段用テーパーカム面(29)」とは,本件特許請求の範囲及び本件明細書を通じて一貫して同様に記載されていることから,α3を,0°を含まないα1と同様に解することは,用語の普通の意味から 8)」と「第2段用テーパーカム面(29)」とは,本件特許請求の範囲及び本件明細書を通じて一貫して同様に記載されていることから,α3を,0°を含まないα1と同様に解することは,用語の普通の意味から考えて自然である。仮にα3が実質的に0°も含むのであれば,同様のα1についても0°であることがありうることになるが,そうすると,ピストンの動きや力をボールに伝えることが不可能となることからも,実質的に0°を含まないことは明らかである。 - 22 -【図2】 b 特許法の規定(36条6項4号,特許法施行規則24条の4及び「様式第29の2」)に基づき,「テーパー」という用語につき,特に定義がない以上,その有する普通の意味で使用されたものと考えるべきであるから,「テーパーカム面」は,「カム面」あるいは「面」に「テーパー」という用語を付加することにより限定したものということができる。E2における「テーパーカム面(29)」は構成要件C5においては単に「カム面」と記載されていること等からも,原告の主張するような「テーパーカム面」という不可分一体の語ということはできない。 c 訂正前の特許請求の範囲等から把握される「増力部」の意義からしても,α3=0°が技術的範囲に含まれないことが明らかである。 すなわち,本件訂正前明細書等に基づく「第2増力部」は,面29とボール26との接点P2において,横方向への押圧力F2を受け取り,それとは直角の方向である上方向の押圧力F3とい- 23 -うF2より強い力に力を増して伝達するものであるところ,α3が0°の場合,P2において横方向への押圧力F2を受け取ることができないため,「第2増力部」の意義を充たすことができず,訂正前の権利範囲には含まれない。そして,訂正により権利範囲が拡 ところ,α3が0°の場合,P2において横方向への押圧力F2を受け取ることができないため,「第2増力部」の意義を充たすことができず,訂正前の権利範囲には含まれない。そして,訂正により権利範囲が拡がることはないため(特許法126条6項),訂正後の本件特許発明の構成要件Dにおいても,α3に0°は含まれない。 d さらに,原告は,本件特許の出願経過における平成17年2月7日付け拒絶理由通知書に対する同年7月14日付け手続補正書(方式)において,「構成要件Eのうち,クランプ機構の構成部材である可動側クランプ部材の端面を,増力機構のカム面として利用する構成は具備していない。」旨記載し,可動側クランプ部材の端面(ボールと接する面)がテーパーでないものは,訂正前の構成要件E2′における「第2段用のテーパーカム面(29)」には当たらないと明示していた。 また,原告の被告に対する通知書においても,「クランプ時にクランプリングが傾斜することは明らかであり,本件特許の技術的範囲に含まれる」旨の記載をしており,クランプリング8にはもともと「傾斜」がないことを認めた上で,クランプ時にはクランプリング8が鋼球10を介してクランプピストン9に押されて「傾斜」し,このクランプ時の「傾斜」があるために被告製品(当時)は本件特許の技術的範囲に含まれると主張していたといえ,原告自身も「テーパー」とは一定の円錐状の「傾斜」を有するものであることを前提としていたことが明白である。 イ被告製品の構成原告は,被告製品のクランプリング8における鋼球10に接する面が,構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」にあたると主張す- 24 -るが,クランプリング8の前記部分は,回転軸芯と直角な面として形成され,傾斜角度を有しない設計となっている。 ウ対比 要件E2の「第2段用テーパーカム面(29)」にあたると主張す- 24 -るが,クランプリング8の前記部分は,回転軸芯と直角な面として形成され,傾斜角度を有しない設計となっている。 ウ対比両者を比較すると,被告製品のクランプリング8における鋼球10に接する面は「テーパー」ではないから,被告製品には,構成要件E2の「第2段用テーパーカム面」がないことになる。 エ結論以上から,被告製品は本件特許の構成要件E2を充足しない。 2 争点2(本件特許発明につき無効理由が存するか)について【被告の主張】(1) 無効理由1(新規性欠如1)ア本件特許発明は,本件特許の出願日(平成12年7月11日)前の公知刊行物(乙16,以下「乙16文献」という。)に記載された発明と同一であり,特許法29条1項3号の規定に該当し,特許無効審判により無効とされるべきものであるから(同法123条1項2号),本件特許権に基づく権利行使は許されない(同法104条の3)。 イ乙16文献(ア) 公開日乙16文献は,ドイツの特許公報であり,1991年(平成3年)9月26日に公開されたものである。 (イ) 技術分野乙16文献に開示された発明(以下「乙16発明」という。)が対象としているものは,「ロータリインデックステーブル」であり,本件特許発明が対象としている円テーブルの一形態である。 (ウ) 乙16発明の内容乙16文献が開示している内容は,以下のとおりである(括弧内「」- 25 -の記載は,本件特許において相当する部分である。)。 a スピンドル12(「回転軸(5)」)の軸方向一端に作業テーブル13(「ワーク取付部」)を備え,ウォームホイール15及びウォーム16(「駆動機構」)によりスピンドル12を回転させ, である。)。 a スピンドル12(「回転軸(5)」)の軸方向一端に作業テーブル13(「ワーク取付部」)を備え,ウォームホイール15及びウォーム16(「駆動機構」)によりスピンドル12を回転させ,クランプ機構により各位置決め工程後に作業テーブル13(及びスピンドル12)を固定するロータリインデックステーブル10(「円テーブル装置」)において,b 前記駆動機構は,スピンドル12に設けたウォームホイール15(「ウォームホイール11」)と,該ウォームホイール15にかみ合うウォーム16(「ウォーム軸12」)により構成されると共に,ウォーム16とウォームホイール15はオイルバス内に収納され,c 前記クランプ機構は,c-1 前記ウォームホイール15と相対回転不能に接続された制動ディスク17(「ブレーキディスク15」)と,c-2 制動ディスク17を回転軸線方向の両側から挟む環状支持部42(「固定側クランプ部材20」)並びに環状ディスク31及び締付けディスク27の縁部(「可動側クランプ部材21」)と,c-3 環状ディスク31及び締付けディスク27の縁部を回転軸線方向の環状支持部42側に押し付ける環状ピストン24(「流体圧ピストン25」と,c-4 環状ピストン24を回転軸線方向移動可能に嵌合させている支持カバー26(「シリンダ形成部材31」)と,c-5 環状ピストン24と環状ディスク31及び締付けディスク27の縁部と支持カバー26の間に介在するとともに回転軸線方向及び径方向に移動可能な球体30(「ボール26」)と押圧- 26 -斜面43,44及び環状ディスク31の面(「カム面28,29,40」)よりなる増力機構とを,備え,d 環状ディスク31及び締付けディスク27の縁部は,締付けディスク27(縁部を除いた部分,「リタ 斜面43,44及び環状ディスク31の面(「カム面28,29,40」)よりなる増力機構とを,備え,d 環状ディスク31及び締付けディスク27の縁部は,締付けディスク27(縁部を除いた部分,「リターンばね30」)により,回転軸方向のアンクランプ側に付勢され,e-1 球体30を介して支持カバー26の押圧斜面44(「テーパー面40」)に対向している環状ピストン24の押圧斜面43(「第1段用テーパーカム面28」)による増力部と,e-2 球体30を介して押圧斜面44に対向している環状ディスク31の面(「第2段用テーパーカム面29」)のカム作用による第2段増力部を有するf ことを特徴とするロータリインデックステーブル10。 g 環状ピストン24は,回転軸を取り囲む環状に形成されているロータリインデックステーブル10。 ウ結論以上のとおり,乙16発明のaないしgは,本件特許発明の構成要件AないしGに相当するため(e-2については,原告が構成要件E-2に相当すると主張する構成を開示している。),乙16文献は本件特許発明と同一の構成を開示しているといえる。したがって,本件特許発明は,特許法29条1項3号の規定に該当し,特許無効審判により無効にされるべきである。 (2) 無効理由2(進歩性欠如1)ア仮に,原告が主張するとおり,乙16文献に,構成要件B「オイルバス」又は構成要件D「リターンばね(30)」について,相当する構成が開示されていないとしても,下記のとおり,本件発明は,乙16発明に周知技術を適用するか,適宜設計変更をすることにより,当業者であ- 27 -れば容易に想到可能であり,本件特許には進歩性欠如の無効理由があり,本件特許権に基づく権利行使は許されない(特許法104条の3)。 イ構成要件Bにおける「オ ことにより,当業者であ- 27 -れば容易に想到可能であり,本件特許には進歩性欠如の無効理由があり,本件特許権に基づく権利行使は許されない(特許法104条の3)。 イ構成要件Bにおける「オイルバス」の構成(ア) 公然実施品本件特許の出願日(平成12年7月11日)よりも前に公然と販売されていた被告製の円テーブル製品「TRNC-151」において,ウォーム軸13とウォームホイール12がオイルバス内に収納される構成が備えられていた。他にも,本件特許の出願日よりも前の他社製円テーブル製品において,オイルバスが備えられており,また,オイルバスを備えた円テーブルを開示した公知文献が多数存在した。 (イ) 容易想到性ウォーム駆動方式の円テーブル装置において,ウォーム軸とウォームホイールの潤滑のためにオイルバスを用いることは,前記(ア)のとおり,当業者の技術常識であり,少なくとも,周知技術である。 したがって,乙16発明における給油栓と廃油栓を開示した図1の記載に触れた当業者が,かかる技術常識に基づき,オイルバスが開示されているものと理解するのは当然のことではあるが,仮にそれが明示的といえなくとも,乙16発明の構成において,ウォーム軸とウォームホイールを潤滑することは必須であり,技術常識ないし周知技術であるオイルバスを適用することについては,何らの阻害要因もなく,少なくともかかる構成に至ることは当業者にとって容易である。 ウ構成要件Dにおける「リターンばね(30)」乙16文献において,本件特許発明にいうリターンばねに相当する構成は開示されている。仮に,乙16発明の構成がリターンばねと相違する可能性があるとしても,単なる設計変更の範疇にすぎない。 仮に乙16発明の にいうリターンばねに相当する構成は開示されている。仮に,乙16発明の構成がリターンばねと相違する可能性があるとしても,単なる設計変更の範疇にすぎない。 仮に乙16発明の締付けディスク27の縁部以外の部分が,アンクラ- 28 -ンプ側に付勢するものではないという理由で本件特許発明のリターンばね(30)と相違する可能性があるとしても,リターンばねは技術常識ないし周知技術であり,また,乙16発明にこれを適用することに阻害要因がないばかりか,当業者にとってこれを試みることは当然であるという動機付けが存在したといえるから,かかる構成に至ることは当業者にとって極めて容易である。 エ結論以上から,本件特許発明の全ての構成が乙16文献に明確に開示されていないとしても,本件特許の出願日前において,乙16発明及び周知技術に基づいて本件特許発明に想到することは,当業者にとって容易である。 (3) 無効理由3(新規性欠如2)ア本件特許発明は,本件特許の出願日前に公然実施された発明と同一であるから,特許法29条1項2号の規定に該当し,特許無効審判により無効とされるべきものであるから(同法123条1項2号),本件特許権に基づく権利行使は許されない(同法104条の3)。 イ公然実施被告は,前記(2)イ(ア)の「TRNC-151」(以下「公然実施品」という。)を,平成4年ころから製造し,購入者に対し,メンテナンスのために機械を分解して内部構造を見ることを禁止せず,また,何らの秘密保持義務を課さないまま販売しており,遅くとも平成12年2月には,何らの秘密保持義務を負わない顧客(荻野工業株式会社)が購入していることから,当該機械の内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれ 保持義務を課さないまま販売しており,遅くとも平成12年2月には,何らの秘密保持義務を負わない顧客(荻野工業株式会社)が購入していることから,当該機械の内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況で実施されている。 ウ公然実施品の構成等(ア) 公然実施品の構成は,下記のとおりである(括弧内「」の記載は,- 29 -本件特許において相当する部分である。)。 a 回転軸10の軸方向一端にテーブル面11(「ワーク取付部」)を備え,ウォームホイール12+ウォーム軸13(「駆動機構」)により回転軸10(「回転軸(5)」)を回転させ,クランプ機構により所定回転角度で回転軸を固定する円テーブル装置において,b 前記駆動機構は,回転軸10に設けられたウォームホイール12(「ウォームホイール(11)」)と該ウォームホイール12に噛み合うウォーム軸13(「ウォーム軸(12)」)により構成されると共に,ウォーム軸13とウォームホイール12はオイルバス内に収納され,c 前記クランプ機構は,c-1 前記ウォームホイール12に固着されたクランプディスク14(「ブレーキディスク(15)」)と,c-2 該クランプディスク14を回転軸芯方向の両側から解除可能に挟圧するフレーム15(「固定側クランプ部材(20)」)及びクランプリング16(「可動側クランプ部材(21)」)と,c-3 クランプリング16を回転軸芯方向のフレーム15側に加圧するクランプピストン17(「流体圧ピストン(25)」)と,c-4 前記クランプピストン17を回転軸芯方向に移動可能に嵌合させているクランプシリンダ23(「シリンダ形成部材(31)」)と,c-5 該クランプ ストン(25)」)と,c-4 前記クランプピストン17を回転軸芯方向に移動可能に嵌合させているクランプシリンダ23(「シリンダ形成部材(31)」)と,c-5 該クランプピストン17と前記クランプリング16と前記クランプシリンダ23との間に介在すると共に回転軸芯方向及び径方向に移動可能な鋼球21(「ボール(26)」)とクランプピストン17のテーパー面,クランプリング16の鋼球21との当接面,及びクランプシリンダ23のテーパー面(「カム面(28,29,- 30 -40))よりなる増力機構とを,備え,d 前記クランプリング16は,リターンスプリング22(「リターンばね(30)」)により,回転軸芯方向のアンクランプ側に付勢され,e 前記増力機構は,e-1 鋼球21を介してクランプシリンダ23の鋼球21との当接面(「テーパー面(40)」)に対向しているクランクピストン17の鋼球との当接面(「第1段用テーパーカム面(28)」)のカム作用による増力部と,e-2 鋼球21を介してクランプシリンダ23の鋼球21との当接面に対向しているクランプリング16の鋼球21との当接面(「第2段用テーパーカム面(29)」)のカム作用による第2段増力部を有するf ことを特徴とする円テーブル装置。 g 前記流体圧ピストンは,回転軸を取り囲む環状に形成されている請求項1記載の円テーブル装置。 (イ) 上記(ア)aないしgの構成は,本件特許発明の構成要件AないしGに相当する(eないしe-2については,原告が構成要件Eに相当すると主張する構成を開示しており,乙16発明と同様の増力機構を有しているといえる。)。 ウ結論以上のとおり,公然実施品の構成aないしgは,本 -2については,原告が構成要件Eに相当すると主張する構成を開示しており,乙16発明と同様の増力機構を有しているといえる。)。 ウ結論以上のとおり,公然実施品の構成aないしgは,本件特許発明の構成要件AないしGに相当するため,乙16文献は本件特許発明と同一の構成を開示しているといえる。したがって,本件特許発明は,特許法29条1項3号の規定に該当し,特許無効審判により無効にされるべきである。 - 31 -(4) 無効理由4(進歩性欠如2)ア前記(3)の公然実施品において,リターンスプリング22が本件特許発明のリターンばね(30)と形状や設置場所その他何らかの点で相違する可能性があると仮定しても,両者の違いは設計変更の範疇にすぎないし,上記の当業者の技術常識等からすれば,いずれにせよ,本件特許の出願時において公然実施品に基づき,本件発明に想到することは容易である。 イよって,本件特許発明は,進歩性を欠き無効である。 【原告の主張】(1) 無効理由1(新規性欠如1)についてア乙16文献の記載内容(ア) 乙16文献が本件特許発明の構成要件A,E,F及びGを開示していることは認める。 (イ) 構成要件B乙16文献には,「前記駆動機構は,回転軸5に設けたウォームホイール11と該ウォームホイール11に噛み合うウォーム軸12により構成される」ことの開示はあるが,「ウォーム軸12とウォームホイール11はオイルバス内に収納され」ることは開示されていない(「オイルバス」の開示はない。)。 したがって,本件特許発明における構成要件Bを開示していない。 (ウ) 構成要件C乙16の「環状ディスク31+締付けディスク27の縁部」が本件特許発明の可動側クラ い。)。 したがって,本件特許発明における構成要件Bを開示していない。 (ウ) 構成要件C乙16の「環状ディスク31+締付けディスク27の縁部」が本件特許発明の可動側クランプ21に対応する旨主張するが,可動側クランプ21に対応するのは,「環状ディスク31+締付けディスク27」である。 (エ) 構成要件D- 32 -乙16は,可動側クランプ部材(環状ディスク31+締付けディスク27)を軸方向のアンクランプ側に付勢する「リターンばね」を開示していない。 イ本件特許発明の新規性乙16文献には,「オイルバス」,「リターンばね」が開示されておらず,乙16発明は,本件特許発明の構成要件B,Dを欠くもので,特許法29条1項3号に該当せず,特許無効理由を有さない。 (2) 無効理由2(進歩性欠如1)についてア乙16文献には,リターンばねを設けることの示唆・動機付けがない。 イ流体圧で動作する円テーブル装置のクランプ機構にボールとカム面とによる増力機構を組み込んで安定した動作を行うとともに高いクランプ力を得るため,アンクランプ時にピストンをアンクランプ側に後退させるだけでなく,リターンばねの付勢力により可動側クランプ部材を強制的にアンクランプ側に後退させることが必要であり,リターンばねを備えることで,その効果が奏される。 ウ被告が引用する公知文献(乙28ないし34)に開示された技術のうち,円テーブル装置を示しているのは乙第28号証のみであり,その外の文献は,円テーブル装置とは全く異なる分野のものである。いずれの引用文献における発明の課題も,本件特許発明の課題との共通性はなく,これを解決するための技術思想も異なるものである。したがって,これらの公知文献 テーブル装置とは全く異なる分野のものである。いずれの引用文献における発明の課題も,本件特許発明の課題との共通性はなく,これを解決するための技術思想も異なるものである。したがって,これらの公知文献を考慮しても,乙16発明に,可動側クランプ部材を軸方向のアンクランプ側に付勢するリターンばねを付加することについての動機付けはなく,当業者は本件特許発明を容易に想到することができない。 (3) 無効理由3(新規性欠如2)についてア被告の主張する公然実施品の構成については,被告が提出する書証(乙- 33 -35ないし39)によっては立証がされていない。 イ上記の点を措いても,公然実施品と称するものは,その図面上,可動側クランプ部材を軸方向のアンクランプ側に付勢するリターンばねを備えておらず,本件特許発明と同一とはいえないから,特許法29条1項2号の規定に該当しない。 (4) 無効理由4(進歩性欠如2)についてア被告の主張する公然実施品は,本件特許発明におけるリターンばねを備えていない点で相違する。 イ両者の違いは,その作用効果においても大きな影響を及ぼすもので,単なる設計変更の範疇ではない。被告が提出した書証(乙28ないし34)には,ばねが開示されているが,流体圧で動作する円テーブル装置の増力機構の可動側クランプ部材の付勢に適用することへの示唆・動機付けはない。 したがって,公然実施品において,クランプピストン17(流体圧ピストン)を付勢するリターンスプリング22に加えて,クランプリング16(可動側クランプ部材)を軸方向のアンクランプ側に付勢するためのリターンばねを設けることは,当業者が容易に想到しうるものではない。 3 争点3(原告の損害)について【原告の主張 】 グ16(可動側クランプ部材)を軸方向のアンクランプ側に付勢するためのリターンばねを設けることは,当業者が容易に想到しうるものではない。 3 争点3(原告の損害)について【原告の主張 】被告は,遅くとも,平成17年9月ころから平成25年8月末まで侵害を継続しているところ,被告の事業規模等を考慮すれば,これまでの被告製品の売上高は,128億7900万円を下らない。被告製品の販売による利益等を考慮し,被告の侵害行為により原告が被った損害は,極めて控えめに見積もって3億8590万円を下らない。 【被告の主張】- 34 -否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について被告は,被告製品が構成要件A,B,C1〜5,E1,F及びGを充足することについて争うことを明らかにせず,構成要件D及びE2の充足性についてこれを争うことから,まずこの点について検討する。 (1) 構成要件D(「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,」)についてア原告は,被告製品の部材11がリターンばねに相当する旨主張し,被告は,被告製品にはリターンばねが存在しないとして争っているため,「リターンばね(30)」の意義について検討する。 イ本件明細書には,次の記載がある(甲4,5,下線部は訂正による変更部分)。 【0005】【発明が解決しようとする課題】しかし上記のように高い作動圧の油圧ピストンを備えた構造では,油漏れ対策のため,高圧用のシール機構及びシール部材が必要となり,部品コストがかかると共に,メンテナンスにも手間がかかる。 【0006】【発明の目的】本願発明は,円テーブル装置において,空気圧の れ対策のため,高圧用のシール機構及びシール部材が必要となり,部品コストがかかると共に,メンテナンスにも手間がかかる。 【0006】【発明の目的】本願発明は,円テーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも,充分に回転軸をクランプできると共に,部品コスト及びメンテナンスコストが節約できるクランプ機構を提供することを目的としている。 【0014】ブレーキディスク15は1対の取付リング16間に挟持され,ボルト2- 35 -7によりウォームホイール11に固着されている。上記1対のクランプ部材20,21のうち,一方のクランプ部材20は装置本体1と一体に形成され,軸方向移動不能となっており,他方のクランプ部材21は,装置本体1の内周面に軸方向移動可能に嵌合し,可動側クランプ部材となっている。両クランプ部材20,21間にはリターンばね30が縮設され,可動側クランプ部材21をアンクランプ側(矢印A2側)に付勢している。 【0025】アンクランプする場合は,図1のアンクランプ用空気室33に空気を圧入すると共に,クランプ用空気室32から排出することにとより,ピストン25を矢印A2方向に移動し,クランプ部材21,20によるクランプを解除する。その時,可動側クランプ部材21はばね30により矢印A2方向に押され,ボール25は回転軸芯側へ戻り,第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つ。 【0027】【発明の効果】以上説明したように本願発明によると,(1)円テーブル装置において,クランプ機構として,回転軸に一体的に設けられたブレーキディスクと,該ブレーキディスクを挟圧するクランプ部材と,該クランプ部材を加圧する流体圧ピストンと,該流体圧ピストンを嵌合させているシリンダ形成部材とを備えると共に,流体圧 体的に設けられたブレーキディスクと,該ブレーキディスクを挟圧するクランプ部材と,該クランプ部材を加圧する流体圧ピストンと,該流体圧ピストンを嵌合させているシリンダ形成部材とを備えると共に,流体圧ピストンとシリンダ形成部材と可動側クランプ部材との間に,軸方向及び径方向に移動可能なボールとカム面よりなる増力機構を介在させているので,低い作動圧でも,強固にかつ確実に,回転軸を所定回転角度で固定することができ,ワーク等の保持機能が向上すると共に,高圧用のシール機構及びシール部材が必要なくなることにより,部品コストの低減- 36 -及びメンテナンスの容易化も達成できる。 【0029】(3)増力機構として,ボールを介してシリンダ形成部材のテーパー面に対向している流体圧ピストンの第1段用テーパーカム面のカム作用による第1段増力部と,ボールを介してシリンダ形成部材のテーパー面に対向している可動側クランプ部材の第2段用テーパーカム面のカム作用による第2段増力部を有していると,増力機構のコンパクト性を維持しながらも,回転軸の保持力が一層向上する。 【0030】(4)駆動機構を,回転軸に設けたウォームホイールと該ウォームホイールに噛み合うウォーム軸により構成すると共に,ウォーム軸とウォームホイールを,オイルバス内に収納していると,駆動機構のコンパクト性を保ちながら,回転位置決め精度及び耐久性が向上する。 【0031】なお,ウォーム軸を超硬等硬い材質で形成し,ウォームホイールを焼き入れされた硬い材質で形成すると,耐久性がさらに向上する。 ウ 「リターンばね(30)」の意義(ア) 本件特許請求の範囲の記載「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,」(構成要件D)からす ウ 「リターンばね(30)」の意義(ア) 本件特許請求の範囲の記載「前記可動側クランプ部材(21)は,リターンばね(30)により,軸方向のアンクランプ側に付勢され,」(構成要件D)からすれば,リターンばねは,可動側クランプ部材21を軸方向のアンクランプ側に付勢する作用を有するものと解される。 (イ) 被告は,さらに,明細書(【0014】,【0025】)の記載から,「リターンばね」は,クランプ部材20,21の間に縮設され,その反発力により可動側クランプ部材21をアンクランプ側に押した状態とするばねであり,「面28に当接した状態を保つ」ようにアンクランプ時において可動側クランプ部材21を,アンクランプ側に付- 37 -勢し続けるものでなければならない旨主張する。 (ウ) 本件明細書にはクランプ部材20,21の間に縮設されている旨の記載があるが(【0014】),同記載は,【発明の実施の形態】(段落【0011】以下)として本件明細書図1の説明をしているものである(甲4,5)。本件特許発明の内容が当該実施形態のみに限定されるものではないこと,本件特許請求の範囲において,リターンばねについて場所の限定もないことからすれば,クランプ部材20,21の間に縮設されたものとの限定があるとまで解することはできない。 (エ) また,本件明細書には,【0019】から【0025】段落に【作用】として図1による円テーブル装置の具体的な稼働状況が記載されており(甲4,5),クランプを解除した際,「可動側クランプ部材21はばね30により矢印A2方向に押され,ボール25が回転軸芯側へ戻り,第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つ。」(【0025】)との記載がある。被告は,ボール25が面28に当接した状態にない場合,「強固にかつ確実に」回 押され,ボール25が回転軸芯側へ戻り,第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つ。」(【0025】)との記載がある。被告は,ボール25が面28に当接した状態にない場合,「強固にかつ確実に」回転軸を固定し,ワーク等の保持機能が向上するという効果を奏することができなくなるおそれがあるなどと主張する。 この点,本件特許発明は,これまでの油圧ピストンを備えた構造によると,高圧用のシール機構及びシール部材が必要となりコスト,メンテナンスの手間がかかることから(【0005】【発明が解決しようとする課題】),空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回転軸をクランプできると共に,部品コスト及びメンテナンスコストが節約できるクランプ機構を提供することが目的とされている(【0006】)。流体圧ピストンとクランプ部材との間に,軸方向及び径方向に移動可能なボールとカム面よりなる増力機構を介在させていることにより,低い作動圧でも強固にかつ確実に,固定するこ- 38 -とができるという本件特許発明の効果は(【0027】【発明の効果】),低圧で使用する流体圧ピストンによる2段の増力機構によるものである。このような軸方向及び径方向に移動可能なボールとカム面からなる増力機構が適切に動作するためには,クランプ後,ボールが移動可能となるように,クランプが確実に解除されることが必要であるといえるものの,上記本件明細書に記載されている課題,目的及び奏する効果からすれば,それ以上に,解除後のボールが可動側クランプ部材に常に当接していることが,当然に求められているとまでは認められない。 また,本件特許請求の範囲に常に付勢することが明示されていない以上,「面28と当接した状態を保つ」という本件明細書の記載により,リターンばねが常に付勢していなければな いるとまでは認められない。 また,本件特許請求の範囲に常に付勢することが明示されていない以上,「面28と当接した状態を保つ」という本件明細書の記載により,リターンばねが常に付勢していなければならないとまで解することはできない。 (オ) したがって,構成要件Dの「リターンばね(30)」は,可動側クランプ部材21を軸方向のアンクランプ側に付勢する作用を有すれば足り,構成要件Dの意味内容として,リターンばねの付勢により,ボール26が第1段用テーパーカム面28に当接した状態を保つことまでは必要でないと解される。 エ被告製品の構成要件D充足性(ア) 被告製品の構成証拠(甲15,17,弁論の全趣旨)によれば,次の事実が認められる。 a 被告製品は,クランプ機構を有する円テーブル装置であり,クランプピストンの回転軸芯方向力を機械的な増力機構で増力してクランプディスクを挟圧し,円テーブル装置の回転軸を停止保持させる装置である。その増力機構は,クランクピストン9,クランプシリ- 39 -ンダ12及びクランプリング8との間にボール10を介在させて構成されている。 被告製品には,クランプリング8とクランプシリンダ12との間に,円環状の平板状の金属製ディスク(2枚重ね)である部材11が設置されており,部材11は,クランプリング8の軸方向下面部及びクランプシリンダ12の軸方向上面部に,ネジ通し穴を通じて交互にネジ止めされている。 b クランプ時には,クランプピストン9が軸方向に前進し,鋼球10の動きにより,クランプシリンダ12に対向するクランプリング8が回転軸芯方向の正面部に前進して,フレーム7との間で主軸と一体的に回転するクランプディスク6を挟圧し,その回転を停止するが,前進するクランプリング8と動かない リンダ12に対向するクランプリング8が回転軸芯方向の正面部に前進して,フレーム7との間で主軸と一体的に回転するクランプディスク6を挟圧し,その回転を停止するが,前進するクランプリング8と動かないクランプシリンダ12との間に隙間ができる。 そうすると,クランプリング8と結合している部材11は,ネジ止めしている部分が引っ張られる状態となるが,クランプシリンダ12とネジ止めされている部分はクランプシリンダ12に結合されたままの状態となるため,部材11は交互に引っ張られて拡がる状態となり,金属の弾性により復元力が働く。 c アンクランプ時には,クランプピストン9が後退し,鋼球10による加圧がなくなれば,部材11が元の平板な状態に戻ろうとする復元力によって,クランプリング8が回転軸芯方向の背面部に後退し,クランプディスク6が挟圧より解放され,回転可能な状態となる。 クランプディスク6の後退に伴って鋼球10も後退するが,部材11が平板な状態に復元し,クランプリング8と部材11,部材11とクランプシリンダ12がそれぞれ当接すれば,クランプピスト- 40 -ン9がそれ以上に後退した場合に,鋼球10をクランプピストン9に当接させる力は働かない。 (イ) 充足性の判断上記のような被告製品の構成からすれば,部材11は,アンクランプ時に,クランプリング8を軸方向のアンクランプ側に付勢することから,構成要件Dの「リターンばね(30)」に相当するものといえ,「可動側クランプ部材に相当するクランプリング8は,リターンばねに相当する部材11により,軸方向のアンクランプ側に付勢され」ているということができるから,被告製品は,構成要件Dを充足する。 前記ウで検討したところによれば,被告製品が,アンクランプ時に,鋼球10がクランプピス 1により,軸方向のアンクランプ側に付勢され」ているということができるから,被告製品は,構成要件Dを充足する。 前記ウで検討したところによれば,被告製品が,アンクランプ時に,鋼球10がクランプピストン9に当接する状態を保つものでないことは,上記判断を左右するものではない。 (2) 構成要件E2(「ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)のカム作用による第2段増力部を有する」)についてア原告は,被告製品におけるクランプリング8の鋼球10に接する面が,「可動側クランプ部材21」の「テーパーカム面(29)」に相当する旨主張するが,被告がこれを争うため,「テーパーカム面」の意義について検討する。 イ後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件明細書には,次の記載がある(甲4,5)。 【0018】シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動側クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して,30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3となっており,また,ピストン25の- 41 -テーパーカム面28のテーパー角α1も,30°以下の緩やかな傾斜角となっている。 (イ) 「テーパー」とは,「円錐状に直径が次第に減少している状態。また,その勾配」であり,「カム」とは,「回転軸からの距離が一定でない周辺を有し,回転しながらその周辺で他の部材に種々の運動を与える装置」である(甲13,14)。 ウ 「テーパーカム面(29)」の意義(ア) 「テーパーカム面」の意義について,本件特許請求の範囲や本件明細書に具体的な記載はないところ,原告は,「テーパーカム面」は ある(甲13,14)。 ウ 「テーパーカム面(29)」の意義(ア) 「テーパーカム面」の意義について,本件特許請求の範囲や本件明細書に具体的な記載はないところ,原告は,「テーパーカム面」は,不可分一体の用語であり,シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになるカム作用を生じさせる面であり,傾斜角度がつけられていることは必須ではない旨主張するのに対し,被告は,「テーパー」で限定された「面」あるいは「カム面」である旨主張する。 (イ) 原告は,本件明細書において,「テーパー面(40)」と,「カム面(28,29)」及び「テーパーカム面」は明確に書き分けられていると指摘し,「カム面」を,カム作用を生じさせる面であるとして,前記のとおり主張する。 しかし,構成要件C5は,「カム面(28,29,40)よりなる増力機構」と記載し(「40」は,訂正により加えられている。),ボールを介した増力機構における面40,面28及び面29を「カム面」として同列に記載していることからすれば,原告が主張するような明確な書き分けがされているとまではいえない。 また,本件明細書において,面28,29及び40については「カム面」との用語を使用しながら,構成要件E2において「テーパーカム面(29)」との用語を使用しているということは,当該面それ自体が,「カム」としての性格または機能と「テーパー」としての性格- 42 -または機能を有する趣旨と解するのが自然である。 (ウ) 原告は,「テーパー」の意味として,ピストン側のボールと接する面(28)及び可動側クランプ部材の面(29)と,シリンダ形成部材との各2両面で勾配を形成していることのように主張する。 しかし,本件明細書には,回転軸芯と面28とのなす角度α1を「テーパー角」,「シリンダ形成部材31の ンプ部材の面(29)と,シリンダ形成部材との各2両面で勾配を形成していることのように主張する。 しかし,本件明細書には,回転軸芯と面28とのなす角度α1を「テーパー角」,「シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3」となっている旨の記載があり(【0018】),ボール26を囲む面の有する勾配については,回転軸芯ないしは回転軸芯と直角な面に対する勾配であることを前提としていることが認められるものの,複数の面の相関関係によって円錐状の勾配が形成されるとの意味で「テーパー」が用いられていると解し得る記載は存しない。 そして,本件特許は回転軸芯を中心とした円テーブル装置であり,その構造に関する本件特許請求の範囲の記載を解釈するものであることをあわせ考慮すれば,「テーパー」とは,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として,傾斜角度を有することと解するのが相当である。 この点,原告は,面29の回転軸芯と直角な面に対する角度(α3)が0°の場合も含む旨主張し,当業者の認識理解や,α3が0°の場合のみ除くのは不自然であることなどを指摘するが,上記「テーパー」の意義からすれば,原告の上記主張は採用できないというべきである。 (エ) 前述のとおり,構成要件E2の「テーパーカム面」は,面29それ自体が,「テーパー」としての性格または機能と「カム」としての性格または機能を有すべきところ,前記イ(イ)によれば,「カム」の典型的機能は,回転運動を直線運動に変換することであるから,広義では,- 43 -方向等を変換しつつ力を伝達する部材と解する余地がある。 また,上記検討したところによれば,「テーパー」は,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な に変換することであるから,広義では,- 43 -方向等を変換しつつ力を伝達する部材と解する余地がある。 また,上記検討したところによれば,「テーパー」は,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として傾斜角度(0°を含まない。)を有するとの意味になる。 ウ被告製品の構成要件E2充足性以上を前提に,被告製品が,構成要件E2を充足するかにつき検討するに,前記認定によれば,クランプリング8の鋼球10と当接する面は,増力機構の一部として,鋼球10を介し,クランプピストン9の前進による力をクランプリング8に伝達するのであるから,カム面としての性質を有しているということはできる。 しかしながら, 被告製品において,クランプリング8の鋼球10と当接する面が回転軸芯と直角であること(α3=0°)は争いがなく(原告は,この面が傾斜している旨を主張するものではなく,この面の傾斜角度が0°であっても,テーパーカム面に該当する旨を主張する。),「テーパー」について前記イのとおり解する以上,この面は「テーパーカム面」に該当せず,結局,被告製品は構成要件E2を充足しない。 (3) よって,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に含まれず,被告製品の製造等が本件特許権の侵害にあたるとの原告の主張は理由がない。 第5 結論以上検討したところによれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 - 44 - 裁判官 田原 21民事部 裁判官 田原美奈子 裁判官 松阿彌隆 裁判長裁判官 谷有恒は,転補のため署名押印することができない。 別紙被告製品目録 スタンダードタイプRNA-160RNA-200 RNA-250 RNA-320 モーター後方取付タイプRNA-160R,B RNA-200R,B RNA-250R,B RNA-320R,B

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