平成5(ネ)741 約束手形金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成5年11月19日 大阪高等裁判所
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判決文本文3,613 文字)

主文 一原判決及び京都地方裁判所平成四年(手ワ)第一三六号約束手形金請求事件の手形判決を取り消す。 二被控訴人は控訴人に対し、金二〇二五万円及びこれに対する平成四年六月二二日から支払い済みまで年六分の割合による金員を支払え。 三訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。 四この判決は、主文二項に限り、仮に執行することができる。 事実 第一当事者の申立て一控訴の趣旨 1 主文同旨 2 仮執行の宣言二控訴の趣旨に対する答弁 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 第二当事者の主張次に付加するほかは、原判決の事実摘示(第二当事者の主張)のとおりであるから、これを引用する。 一被控訴人の主張被控訴人は日吉商工に対し、満期を平成三年一一月二二日とし、振出日を白地のまま、本件各手形を振り出したところ、日吉商工が満期を平成四年六月二二日と変造し、また振出日が平成三年一一月二五日と補充された。 被控訴人は本件各手形について変造前の文言に従って責任を負うところ、振出日が同月二五日と補充された結果、本件各手形は変造前の満期が振出日より前になるという不合理な手形となった。 このような手形は無効である。 二控訴人の主張 1 抗弁に対する認否を次のとおり改める。 (一) 抗弁1は争う。 (二) 抗弁2は争う。 控訴人の前者である正木商店は平成三年一一月二五日、日吉商工から本件各手形の裏書譲渡を受け、控訴人は正木商店から同年一二月二日本件各手形の裏書譲渡を受けた。 ところで本件各手形の変造前の満期である同年一一月二二日の翌日は勤労感謝の日、その翌日は日曜日であっていずれも休日であるから、本件各手形の変造前の満期に 一二月二日本件各手形の裏書譲渡を受けた。 ところで本件各手形の変造前の満期である同年一一月二二日の翌日は勤労感謝の日、その翌日は日曜日であっていずれも休日であるから、本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は同月二六日までとなる。 そうすると、正木商店は、変造前の満期による支払呈示期間内に本件各手形の裏書譲渡を受けたので、期限後裏書ではなく、被控訴人の日吉商工に対する人的抗弁の対抗を受けない。 控訴人は本件各手形を正木商店から期限後裏書により取得したことになるが、正木商店の地位を承継したことは通常裏書をした場合と変わりがないから、被控訴人は控訴人に対し、被控訴人の日吉商工に対する人的抗弁を対抗することができない。 2 手形無効の主張は争う。 本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は平成三年一一月二六日までであるから、本件各手形の振出日である同月二五日の後にも支払呈示期間が存在する。 そうすると、本件各手形はその振出日後、変造前の満期による支払呈示期間内に支払呈示が可能である。 このような場合には、満期が振出日より前であっても、手形は無効にならないと解すべきである。 第三証拠関係(省略) 理由 一請求の原因について控訴人が裏書の連続する本件各手形を所持することは当事者間に争いがなく、被控訴人が本件各手形を満期平成三年一一月二二日、振出日及び受取人を白地で振出したことは被控訴人の認めるところである。 二抗弁1について抗弁1についての当裁判所の判断は、原判決の理由二のとおりであるから、これを引用する。 三抗弁2について 1 弁論の全趣旨により本件各手形の振出前の写であることが認められる乙第一号証の一ないし三及び原本の存在と成立について争いのない乙第九ないし第一五号証によると、次の 用する。 三抗弁2について 1 弁論の全趣旨により本件各手形の振出前の写であることが認められる乙第一号証の一ないし三及び原本の存在と成立について争いのない乙第九ないし第一五号証によると、次の事実を認めることができる。 (一) 被控訴人は、平成三年一〇月二四日、日吉商工に対し、満期を同年一一月二二日、振出日及び受取人を白地で、本件各手形を振り出した(乙第一〇号証の資料13)。 (二) 被控訴人は、本件各手形を満期に決済することができず、その延期を求めるため、同年一一月二二日、日吉商工に対し、原判決別紙手形目録四ないし六の新手形を振り出すとともに、延期分の利息を支払い、先に交付していた本件各手形の返還を求めたが、日吉商工が「後で返す」というので、その受戻しをしなかった(乙第一〇号証の資料14)。 (三) 日吉商工は、金策のため、本件各手形の満期を平成四年六月二二日と変造し、これを平成三年一一月二五日正木商店に対し、割引のため裏書譲渡した(乙第一一号証の資料1ないし3、乙第一五号証の資料18の「1」、「2」)。 2 ところで、手形が変造されたときは、振出人は変造前の文言に従って責任を負うところ(手形法六九条)、本件各手形の変造前の満期である同月二二日の翌日は勤労感謝の日、その翌日は日曜日であって、いずれも取引日でないから、本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は満期に次ぐ二取引日である同月二六日までとなる。 3 そうすると、正木商店は変造前の満期による支払呈示期間内に本件各手形の裏書譲渡を受けたので、期限後裏書ではなく、被控訴人の日吉商工に対する人的抗弁の対抗を受けない。 控訴人は本件各手形を正木商店から期限後裏書により取得したが、これは指名債権の譲渡の効力のみを有するものとして、正木商店の地位を承継したことになるから、被 商工に対する人的抗弁の対抗を受けない。 控訴人は本件各手形を正木商店から期限後裏書により取得したが、これは指名債権の譲渡の効力のみを有するものとして、正木商店の地位を承継したことになるから、被控訴人は控訴人に対し、被控訴人の日吉商工に対する人的抗弁を対抗することができない(最判昭和三七年九月七日・民集一六巻九号一八七〇頁参照)。 右によると、抗弁2は理由がない。 四被控訴人の手形無効の主張について 1 本件各手形の満期が変造され、振出日が平成三年一一月二五日と補充された結果、本件各手形の変造前の満期は振出日より前になるところ、満期は手形の呈示につき不能の日であってはならないとか、満期が振出日より前であることは不合理な日を記載した手形であるとして、満期が振出日より前の手形を無効とする見解もある。 2 しかし、手形が現実に振り出された日と振出日とが異なる場合、手形が発行された日は現実に振り出された日であるから、満期が振出日より前の手形も、未発行の手形について満期を定めたものとはいえず、必ずしも不合理な権利関係を表章するものとはいえないこと、振出日は、現実に手形を振り出した日を記載することが要求されていないから、満期が振出日より前の手形であっても、現実に振り出された日が満期及びこれに次ぐ二取引日以前であれば、手形の所持人は支払呈示期間内に支払呈示をすることができること、支払呈示期間内に支払呈示ができなくても、支払呈示期間後に主たる債務者に対し手形上の権利を行使できること、手形振出当時既に支払呈示期間が経過し、当初から遡求義務が発生しない場合であっても、手形法は裏書禁止手形を認めており(同法一一条二項)、当初から遡求義務が発生しない手形の存在を否定していないことなどからして、満期が振出日より前の手形を一律に無効とするのは相当でない。 であっても、手形法は裏書禁止手形を認めており(同法一一条二項)、当初から遡求義務が発生しない手形の存在を否定していないことなどからして、満期が振出日より前の手形を一律に無効とするのは相当でない。 <要旨>3 満期が振出日より前の手形であっても、振出日が支払呈示期間の末日以前であれば、支払呈示期間内の</要旨>支払呈示が可能であり、表示されている手形要件が不合理な権利関係を表章しているものとはいえない。 本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は、前示のとおり平成三年一一月二六日までであるから、本件各手形の振出日である同月二五日の後にも支払呈示期間が残存する。したがって、本件各手形は、振出日後、変造前の満期による支払呈示期間内に支払呈示が可能であり、表示されている手形要件が不合理な権利関係を表章しているものとはいえないから、本件各手形を無効とするいわれはない。 そうすると、被控訴人の右主張は理由がない。 五以上によると、控訴人の本訴請求は理由があるから、これを棄却した京都地方裁判所平成四年(手ワ)第一三六号約束手形金請求事件の手形判決及びこれを認可した原判決を取り消して、本訴請求を認容し、訴訟費用の負担について民訴法九六条、八九条、仮執行の宣言について同法一九六条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官志水義文裁判官高橋史朗裁判官三浦宏一)

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