- 1 - 主文 1 糸島市消防本部消防長が平成29年3月3日付けで原告に対してした、平成29年3月3日から平成29年9月2日まで停職を命ずるとの懲戒処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、糸島市消防本部(以下、糸島市消防本部の前身である糸島地区消防厚生施設組合糸島消防本部を含めて、「消防本部」という。)の職員であった原告が、他の職員に対するハラスメント行為を行ったことなどを理由として、処分行政庁により、停職6月の懲戒処分(以下「本件処分」という。)を受けたところ、本件処分が違法であると主張して、被告に対し、本件処分の取消し を求める事案である。 2 前提事実(証拠を掲げたもののほかは当事者間に争いがない。)⑴ 原告は、平成14年4月1日、消防本部に採用され、平成20年4月1日、消防士長(概ね主任級)に昇任し、本件処分を受けた平成29年3月3日当時、消防本部警防課主任を務めていた(本件処分時39歳)(甲16、弁論 の全趣旨)。 ⑵ 被告の消防組織について(甲11、乙67、71ないし88)ア被告は、消防組織法に基づき、消防機関として、糸島市消防本部及び糸島市消防署(以下「消防署」という。)を設置し、消防署には、本署のほか、前原、志摩、二丈の各出張所が設けられている。 イ消防本部は、消防長を長とし、消防長を補佐する次長のほか、消防総務 - 2 -課、予防課、警防課を設けて、消防職員を配置している。消防署は、消防署長を長とし、第1から第3までの各警備課を設けて、消防職員を配置している。 ウ消防本部及び消防署に属する消防職員は、日勤(日中に勤務するもの)と当務(隔日で24 を配置している。消防署は、消防署長を長とし、第1から第3までの各警備課を設けて、消防職員を配置している。 ウ消防本部及び消防署に属する消防職員は、日勤(日中に勤務するもの)と当務(隔日で24時間勤務するもの)に分かれ、このうち当務の者によ って消防隊が編成され、火災等の現場における消火活動等に従事する。消防隊は、消防署長を長とし、1部から3部までの各中隊を編成し、各部(各中隊)には、部隊長及び中隊長からなる指揮隊、本署に第1小隊、第2小隊及び救急小隊を、前原、志摩、二丈の各出張所に各小隊をそれぞれ設置している。さらに、平成26年4月以降、各部(各中隊)に通信指令を設 置している。 ⑶ 消防本部及び消防署における勤務等の概要についてア消防本部及び消防署に属する消防職員のうち、日勤の者は、消防隊には編成されず、消防本部及び消防署における通常事務に従事し、当務の者は、平時は日勤と同様に事務に従事しつつ、火災等が生じた場合には、消防隊 として消火活動等に従事する(乙67、弁論の全趣旨)。 イ当務の標準的な勤務時間の割振は、次のとおりである(乙29、40)。 午前8時30分から午後0時まで正規の勤務午後0時から午後1時まで休憩午後1時から午後6時まで正規の勤務 午後6時から午後7時まで休憩午後7時から午後9時30分まで正規の勤務午後9時30分から翌午前7時まで正規の勤務(うち3時間)休憩(うち6時間30分)ただし、午後10時30分から翌午前6時30分までの間に交代で 通信指令室において、1~2時間の119番受信勤務をする。 - 3 -午前7時から午前8時30分まで正規の勤務⑷ 本件処分 0時30分から翌午前6時30分までの間に交代で 通信指令室において、1~2時間の119番受信勤務をする。 - 3 -午前7時から午前8時30分まで正規の勤務⑷ 本件処分について糸島市消防本部消防長(A)は、平成29年3月3日、原告に対し、別紙「処分に係る非違行為」記載の各行為(以下、これらの各行為をその番号に従い、「本件非違行為1」「本件非違行為3の第1」などと表記する。)が、 地方公務員法30条、33条及び糸島市ハラスメントの防止等に関する規程(以下「ハラスメント防止規程」という。)5条1項に反するものであり、地方公務員法29条1項1号、3号に基づき、平成29年3月3日から同年9月2日までの停職6月の懲戒処分に付した(甲1、2、12)。 ⑸ 不服申立てについて 原告は、平成29年4月3日、糸島市公平委員会に対し、本件処分の取消しを求める審査請求をしたが、糸島市公平委員会は、平成30年12月4日、上記審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲3の1ないし3)。 ⑹ 関係法令等の定めア地方公務員法 29条(懲戒) 1 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。 一この法律若しくは57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定め る規程に違反した場合二職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合三全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合30条(服務の根本基準)すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、 職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。 - 4 -33条 30条(服務の根本基準)すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、 職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。 - 4 -33条(信用失墜行為の禁止)職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 イ糸島市ハラスメントの防止等に関する規程(乙3。ハラスメント防止規程) 別紙「糸島市ハラスメントの防止等に関する規程」のとおりであり、主要な条項は次のとおりである。なお、ハラスメント防止規程は、平成22年1月1日、「セクシュアル・ハラスメントの防止に関する規程」(乙26の1)として制定され、その当時、パワー・ハラスメントに関する定め等はなかったところ、平成24年7月31日にパワー・ハラスメントに関 する定め等が追加され、現在に至っている(乙27の1)。 第1条(趣旨)この訓令は、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント及びその他のハラスメントの防止及び排除のための措置並びにハラスメントに起因する問題が生じた場合に適切に対応するための措置に関し必要 な事項を定めるものとする。 第2条(定義)この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 ⑴ セクシュアル・ハラスメント他の者を不快にさせる職場における 性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動をいう。 ⑵ パワー・ハラスメント他の職員に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体的苦痛を与える言動又は職場環境を悪化させる言動を いう。 - 5 -⑶ その他のハラスメント前2号に定める言動を 場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体的苦痛を与える言動又は職場環境を悪化させる言動を いう。 - 5 -⑶ その他のハラスメント前2号に定める言動を除くほか、他の職員に対して、言葉、態度、身振り、文書等により、職員の人格や尊厳を傷つけ、精神的若しくは身体的苦痛を与える言動又は職場環境を悪化させる言動をいう。 (以下、略) 第5条(職員の責務) 1 職員は、職員相互の人権を尊重し、ハラスメントをしてはならない。 なお、ウ糸島市職員の懲戒処分の基準に関する指針(乙5。以下「本件懲戒指針」という。) 別紙「糸島市職員の懲戒処分の基準に関する指針」のとおり。 本件懲戒指針によれば、職員の非違行為が、別表に掲げる非違行為に該当するときは、非違行為の動機、態様及び結果等の事項を総合的に考慮し、同表に掲げる懲戒処分の種類を決定するものとされ(第2条)、別表に掲げる非違行為に該当しないときは、別表に掲げる非違行為に対する懲戒処 分の取扱いに準じて当該行為に対する懲戒処分を決定するものとされている(第11条)。そして、職員が非違行為を2以上行ったとき(第3条)や、⑴非違行為の態様が極めて悪質であるとき、⑵非違行為が他の職員及び社会に与える影響が特に大きいとき(第4条)には、別表に掲げる懲戒処分の種類のうち最も重い懲戒処分よりも重い懲戒処分を行うことができ ると定められている。 3 争点⑴ 本件処分に係る懲戒事由該当性⑵ 本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したか⑶ 本件処分に係る手続の違法性の有無 4 争点に関する当事者の主張 - 6 -⑴ 本件処分に係る懲戒事由該当性(争点1)【原告の主張】ア本件処分においては を濫用したか⑶ 本件処分に係る手続の違法性の有無 4 争点に関する当事者の主張 - 6 -⑴ 本件処分に係る懲戒事由該当性(争点1)【原告の主張】ア本件処分においては、本件非違行為がハラスメント防止規程5条1項に反するとしているが、ハラスメント防止規程5条1項は、法規範性を有さず、これに反したとしても何らかの法的効果が生ずるものではない。それ にもかかわらず、ハラスメント防止規程5条1項に反することを理由に本件処分をしており、違法である。 一般的に「規程」は法規範性を有しておらず、地方自治法138条の4第2項所定の場合に法規範性を有するにすぎないが、ハラスメント防止規程は、そのように定められたものではない。また、ハラスメント防止規程 は、訓令の形式で発出されており、訓令は法規範性を有していない。ハラスメント防止規程5条1項、2項の内容についても、法規範というよりは努力目標を掲げたものであって、同条項に反することが何らかの法的効果を導くものではない。したがって、処分行政庁が法規範性を有しないハラスメント防止規程に反することに基づき不利益処分を課したことは、法の 根拠を欠くものであり、違法である。 イまた、ハラスメント防止規程は、平成24年7月以前には、セクシャル・ハラスメントを禁止する旨定めるにとどまっていたから、平成23年10月から平成24年3月までの間のパワー・ハラスメント行為をハラスメント規程5条1項違反とすることはできない。処分行政庁は、ハラスメント 防止規程を遡及的に原告に不利益に適用したものであり、法的根拠を欠く違法無効な処分である。 ウ本件非違行為1(いじめ)についてトレーニング室でのトレーニングは、消防職員個人の体力、精神力の向上のために、仲間と一緒に 利益に適用したものであり、法的根拠を欠く違法無効な処分である。 ウ本件非違行為1(いじめ)についてトレーニング室でのトレーニングは、消防職員個人の体力、精神力の向上のために、仲間と一緒に励ましあい、助け合って結束を強くするた め、災害出動がない限り、毎当務行っていた。原告は、Bの直属の上司 - 7 -であるC及びBと一緒に体力訓練、トレーニングを行っていたのであり、トレーニング室に来るように呼び出し、強要したことはなく、Bにロープを身体縛着させた状態で懸垂をするように命じたこともない。また、Bとは、平成23年10月から平成24年3月までの間の当務のうち少なくとも10回は一緒に勤務したことがなく、「毎当務」一緒にトレー ニングをしていたのではない。Bのような新人職員は、事務仕事や日直仕事が多くあるため、午後7時からトレーニングを開始することは著しく困難であり、また、本署では、午後9時までに入浴を済ませる必要があるため、概ね午後8時30分にはトレーニングを終えており、Bを午後9時ないし9時30分頃まで訓練させたことはなかった。 懸垂のトレーニングにおいて、自力では上がらなくなった後に最後の力を振り絞って1、2回、他の職員の補助を受けて懸垂を行うため、ロープを二重もやいでBの身体に縛着し、そのロープを鉄棒に通して補助者がそのロープを引く方法がある。救助に不可欠な技術である二重もやい身体縛着の結索訓練も兼ねていた。そして、懸垂中に力尽きた実施者 をロープで引くため、保持できる時間はせいぜい数秒であり、約30分間も宙吊りになどしていない。 雑巾掛けについては、障害突破訓練に役立つものとして、原告のみならず、消防職員において訓練の一環として実施されていた。Bにおいても、救助訓練に興味があるとのこと 分間も宙吊りになどしていない。 雑巾掛けについては、障害突破訓練に役立つものとして、原告のみならず、消防職員において訓練の一環として実施されていた。Bにおいても、救助訓練に興味があるとのことだったため、皆で雑巾掛けを行った ものであり、強制したものではなく、全員で和気藹々とした雰囲気で行い、笑いが出たことはあったが、Bに向けたものではなかった。誰が負けても、ジャンピングスクワットを10~30回、腕立て伏せを30~50回行っており、Bのみにさせたのではない。雑巾掛けの訓練は1当務しか行っていない。 エ本件非違行為2(暴力)について - 8 -当時、原告は、第2小隊に所属し、Bは第1小隊であったが、同じ部の部下で、更に新人であったため、教育の責任を感じていたところ、原告が、Bに対し、消防活動の基礎について何度注意しても聞かず、改善しようともせず、注意をしても身体を別の方向に向け、顔を背ける等したため、消防の職責、危険性、市民の命を預かっていることの重要性を理解させるた めに、大きな声等で注意をし、Bに注意を聴かせるためにBの肩を叩いて原告の方向に顔を向けさせたことがある。しかし、Bの頭を叩いたり、肩を突き飛ばしたり、身体を揺さぶったり、地面に倒れたBの頭を地面に押し付ける等、日常的に暴力を加えたことはない。 このような原告の行為が違法な有形力の行使と評価されるいわれはない。 オ本件非違行為3(いじめ、暴力、侮辱)について原告は、午後5時頃から1時間半にわたり、はしご車の誘導訓練を繰り返したことはなく、午後6時から食事、食事の前に日直業務があるため、午後5時45分ないし50分には訓練を終了していた。なお、原告の記憶では、はしご車の誘導訓練を実施したのは、平成24年1月20 日 ことはなく、午後6時から食事、食事の前に日直業務があるため、午後5時45分ないし50分には訓練を終了していた。なお、原告の記憶では、はしご車の誘導訓練を実施したのは、平成24年1月20 日前後であった。 原告は、はしご車の誘導訓練において、Bが集中せず注意も聞かなかったため、「やめろ、帰れ。」と言ったことがあり、Bが顔を背けていたため、原告の方に顔を向けさせたが、話を聞く態度ではなかったため、肩やヘルメットを掴んで話をしたことがあった。また、Bは、市民の税 金で購入した敷板を敷板収納庫に乱暴に投げ入れたので、はしご車の安全確認に不可欠な意味を持つアウトリガーの支えとなる敷板の重要性を認識させ、道具を大切にすることを意識させるために注意をしたところ、Bが謝罪したため、「敷板に謝れ。」と言った。しかし、「二度と消防に来るな。今すぐ帰れ。」などと怒鳴り、Bの肩や頭部を叩き、胸倉を 掴んで揺さぶり、突き飛ばした等の暴行を加えたことはない。 - 9 -これらは、通常の訓練や指導の範囲内であり、違法性はない。 カ本件非違行為4(いじめ、暴力)について原告は、ポンプ車の訓練において、Bに対し、指差し呼称ができていなければ何度もやり直させることを分からせるために、何度も口頭で注意することを繰り返し行った。しかし、Bは、口頭で何度注意をしても改善し ない、人の話を聞かない、話の途中で目を逸らすなどしたため、ヘルメットを掴んで原告側を向かせ、口頭での注意を繰り返した。また、口頭注意だけでなく、災害現場で市民が待つ苦しみ、辛さを少しでも共感し、Bの気持ちが向上していくように、腕立て伏せをさせた。原告は、これまで、消防学校の学校教官や職場の上司の指導で、自分のミスが市民や仲間、更 に自分の命を危険にさらす み、辛さを少しでも共感し、Bの気持ちが向上していくように、腕立て伏せをさせた。原告は、これまで、消防学校の学校教官や職場の上司の指導で、自分のミスが市民や仲間、更 に自分の命を危険にさらすことを認識し、もう二度とミスはしないと心に誓いながら、腕立て伏せを行っており、Bに対しても何度もこの原告の想いを伝えた。腕立て伏せをすることで、他の訓練ができなくなるような命じ方はしていない。罰としてBの頭部を手で数回殴打したことはなく、また、訓練中にBの声が裏返った記憶はなく、原告がそれを笑ったことはな い。 キ本件非違行為5(無視)について原告は、平成25年4月から糸島市役所本庁に出向しており、職場復帰後、消防本部消防総務課に所属していたD1に会う機会がなく、D1と会話をしたのは、原告が平成26年3月頃に骨折治療のために入院中に、D 1が訪ねてきたときのみであった。平成28年6月1日以降、原告とD1は、いずれも消防署庁舎内で勤務していたが、勤務場所は別々で、せいぜいトイレか廊下ですれ違う程度で、日常的に接触することはなかった。原告がD1から挨拶をされても挨拶を返すことなく、D1を日常的かつ継続的に無視したとする、具体的な事実を示す証拠はなく、D1を無視したこ とはない。 - 10 -ク本件非違行為6(暴言)について原告は、平成26年4月から平成28年3月までの間、通信指令室において、Eが係長、原告が主任として務め、人命救助に必死で、常にピリピリしていたが、EやFを威圧したり、怒ったり、八つ当たりしたことはなく、ましてや暴言や暴力などなかった。 原告は、「E司令補には能力がない。」などと言ったことはなく、自身やEには災害対応能力がまだないが、経験を積むために、3人で想定訓練を行い、反省 とはなく、ましてや暴言や暴力などなかった。 原告は、「E司令補には能力がない。」などと言ったことはなく、自身やEには災害対応能力がまだないが、経験を積むために、3人で想定訓練を行い、反省、検討を重ねることを提案し、さらに、通信指令室での運用を話し合うなどしており、時には強い口調になったかもしれないが、あくまで人命救助のために主任の仕事として行ったにすぎない。し かし、Eが、遅滞のない上司への報告及び説明、部下への説明、通信指令室運用の判断決断ができず、重要案件が滞ったり、業者対応が困難になったりしたため、原告とEとの間で、原告「係長の仕事をしましょう、今まで通りサポートします。市民のために、命のためにやりましょう。」、E「私では能力不足で、自信ありません。できません。」、原告「そん なことないです。サポートしますからやりましょう。」、E「無理です。 ごめん。」、原告「係長がそこまで言われるなら、係長のためにも、市民のためにも、係長を降任したり、早期退職も一つの選択肢かもしれないですね。」というやり取りがあったが、退職を迫った発言ではない。 原告がEに伝えた言辞の動機、内容とも、通信指令室の運用を適切に 行う一心から出たものであり、上司であるEの権限を超えたり、辞任を促したりしたものではない。原告の言辞が暴言に該当するとの評価は全くの誤りである。 ケ消防職員は、消防としての使命や役割の遂行を期待されており、厳正な規律保持や強固な団結力が求められ、更に強靭な体力と精神力の向上が強 く要請される。本件非違行為1ないし4のBに対する所為は、全て訓練時 - 11 -やトレーニング時に行われており、密接な業務関連性があり、はしご車及びポンプ車訓練時の指導内容は、指差し呼称、安全チェックに関するものや 1ないし4のBに対する所為は、全て訓練時 - 11 -やトレーニング時に行われており、密接な業務関連性があり、はしご車及びポンプ車訓練時の指導内容は、指差し呼称、安全チェックに関するものや敷板という資機材の取扱いに関するものであって消防業務に直結ないし密接な関連性がある。このように、原告のBに対する指導は正当な業務の一環としてなされたものであり、嫌がらせ目的ではない。本件非違行為6 のEに対する所為は、Eが消極的思考に取りつかれており、発奮を求めて対話した流れのものであって、積極的に降格や退職を迫ったものではない。 このように、本件非違行為はいずれも主観的・客観的に業務の範囲内にとどまり、特別に職場の秩序を乱すものではないから、本件処分には、事実誤認の違法がある。 【被告の主張】アハラスメント防止規程は訓令に当たるところ、行政機関により訓令が発せられると、当該行政機関を構成する公務員は訓令に拘束されるから、この限りにおいて、訓令は職務命令としての性質を有する。また、ハラスメント防止規程は、服務規律に反する行為であることを明確にしたにすぎず、 本件処分の法的根拠は地方公務員法29条1項1号及び3号である。 イまた、ハラスメント防止規程が平成24年7月31日に改正される前であっても、パワー・ハラスメントに該当する行為が正当な行為として許容されていたわけではなく、地方公務員法30条(服務の根本基準)、33条(信用失墜行為の禁止)に反するものとして懲戒事由となり得る。本件 懲戒指針には、本件非違行為当時から、職場内秩序を乱す行為として、他の職員に対する暴行や暴言が定められており、本件処分も本件懲戒指針に従って行われたものであるから、原告の遡及適用の主張は理由がない。 ウ本件非違行為1(いじめ)に 、職場内秩序を乱す行為として、他の職員に対する暴行や暴言が定められており、本件処分も本件懲戒指針に従って行われたものであるから、原告の遡及適用の主張は理由がない。 ウ本件非違行為1(いじめ)についてa 原告は、G、C及びBとの当務が重なったほぼ毎当務(46当務、 仮に前半のみとしても23当務、少なくとも20日程度)、力尽きて - 12 -懸垂器から手を放したBを宙吊りにする目的で(少なくとも宙吊りになることを予測し、それを容認しながら)、Bの身体をロープで縛着して懸垂させ、力尽きて手を放したBを、20日程度(少なくとも2日以上)、1日数回(1ないし3回)、1日合計30分程度宙吊りにした。 b 懸垂トレーニングの補助としては、足首を支える方法等により行うものであり、ロープを身体に縛着させるなど、通常あり得ない。ロープで縛着した状態で懸垂させるなどという行為は、懸垂補助の目的ではなく、懸垂者が力尽きて手を放してもロープで吊るし、降ろさせないこと以外に合理的に説明可能な目的は存在しない。Bが懸垂器具等 に足を置こうとしても、Cや原告から「足をつくな!」と一喝され、足を置いて休めない状況であった。 a 原告は、G及びCとともに、10日ないし15日程度、1日につき5、6回程度、新人で他の競争者より体力の劣るBをして、Bがほぼ必ず負けて罰ゲームとしてジャンピングスクワットなどをせざるを得 ないことを予測して、それを容認しながら、Bに雑巾掛け競争をさせ、負けたBにジャンピングスクワットなどの罰ゲームをさせたこと、しかも、力尽きたBを見て嘲笑したことがあった。 b 雑巾掛け競争については、Bと原告で競争をし、次いでBとCで競争することを繰り返し、Bは競争に参加し続けていたため、罰を与え られたのは基 かも、力尽きたBを見て嘲笑したことがあった。 b 雑巾掛け競争については、Bと原告で競争をし、次いでBとCで競争することを繰り返し、Bは競争に参加し続けていたため、罰を与え られたのは基本的にBのみであり、罰によって力尽き動けないBを笑う行為は、いじめに他ならない。Cにとっても、余りにきつくて笑うしかないというものであったにもかかわらず、原告らより体力が劣り、かつ新人で原告らに言われるままに競争や罰ゲームをせざるを得ないBをして、競争の都度ほぼ必ず罰ゲームをさせる行為は、許されるト レーニングの内容ではなく、いじめ(訓練・指導の目的が認められな - 13 -い)に該当する。 エ本件非違行為2(暴力)について原告は、平成23年10月から平成24年3月までの間、Bに対し、次の暴行を加えた。 累計して10回以上、ヘルメットの上から、手の平の下側で、ゴツッ、 バンッという感じで叩いた。 累計して10回以上、片方の肩を、手の平でドンと前から突き放すようにして叩いた。 累計して2、3回、胸倉を掴んで揺さぶった。 平成23年11月から12月頃、ポンプ車訓練において、Bにペナル ティとして腕立て伏せをさせた際に、Bの限界がきて腕を伸ばせなくなったときに、「はよ上がれ。」などと言いながら、1回、頭を地面に押し付けた。 オ本件非違行為3(いじめ、暴力、侮辱)について原告は、平成23年10月ないし11月頃の午後5時頃から午後6時頃 にかけて、はしご車の誘導訓練で、次の「いじめ」(訓練・指導の目的とは認められない。)、暴言や暴力を行った。 Bが対面で同訓練を行っている者より、大きな声を出しているにもかかわらず、「声が小さい。」と述べ、速やかに敷板を敷いているのにダメ出しをし、合理的理由 は認められない。)、暴言や暴力を行った。 Bが対面で同訓練を行っている者より、大きな声を出しているにもかかわらず、「声が小さい。」と述べ、速やかに敷板を敷いているのにダメ出しをし、合理的理由も説明しないまま、Bに敷板を敷く訓練を繰り 返し行わせた。 訳も分からないまま単純なことを長時間させられたBが不機嫌になって敷板を雑に扱ったところ、「はい、お前帰れ。」「二度と消防に来るな。」「今すぐ帰れ。」「消防署辞めて帰れ。」などと怒鳴りながら、Bの肩や頭部を叩いたり、胸倉を掴んで揺さぶったり、突き飛ばしたり するなどの暴行を加えた。 - 14 -Bが謝罪したにもかかわらず、敷板を両手に持って同人の前に差し出し、「敷板さん、ごめんなさい、と言え。」と命じ、Bが敷板に謝ると、「声が小さい。」と言って更に大きな声で謝るように命じ、3~4回、敷板に謝罪させた。 カ本件非違行為4(いじめ、暴力)について 原告は、平成23年11月ないし12月頃、ポンプ車の訓練をした際、Bに対し、次の「いじめ」(訓練・指導の目的とは認められない。)や暴力を行った。 Bが消防学校や他の訓練で教わったとおりの指差し呼称を行っているにもかかわらず、何度もダメ出しをし、合理的理由を説明しないまま、 消防学校や他の訓練で教わった以外の内容の指差し呼称を行うよう、繰り返し命じ、Bに行わせた。 何度も指差し呼称のやり直しを命じ、少なくとも15回、やり直しを命じるたびに、罰として腕立て伏せを約10回させ(他の者が一緒に腕立て伏せのペナルティをさせられたわけではない。)、Bが声の出し過 ぎで喉が潰れて声が裏返ると、そのことを嘲笑するなどして、いじめ行為をした。 キ本件非違行為5(無視)について原告は、D1が休職を余 ティをさせられたわけではない。)、Bが声の出し過 ぎで喉が潰れて声が裏返ると、そのことを嘲笑するなどして、いじめ行為をした。 キ本件非違行為5(無視)について原告は、D1が休職を余儀なくされ、ハラスメントを訴えたことに対し、反省・謝罪をするどころか、逆恨みし、報復としてD1を無視する に至った。原告がD1を無視しているのを目撃した職員は多数存在する。 D1への無視は、「隔離・仲間外し・無視」として明らかなハラスメントであり、しかも、ハラスメントの訴えを行ったD1に対する理不尽な報復的な無視であり、単なる無視以上に悪質であって、D1の様子を見て、報復をおそれて声を上げることができない職員がいた。このよう に、本件非違行為5は、被告のハラスメント申出に関するシステムや防 - 15 -止対策等を無に帰す組織破壊行為であり、その影響は極めて大きい。 ク本件非違行為6(暴言)について原告は、Eに対し、「係長を降りるか、仕事を辞めるか。」などと言い、複数回にわたって退職を迫る発言をした。具体的には、「早く辞めてくれ。降任してくれ。自分が係長級の仕事をしているんだから、そう すれば自分が係長の給料をもらうことができる。」「仕事ができないのであれば、降任するか、退職届を出すかだ。」「次は自分が一番に係長になる順番だから、1人辞めたら自分が係長になれる。」などと発言した。 Eが係長として不適格であると考えていたのは原告のみであり、実際 にEの職務遂行が問題視されたことはない。このように、本件非違行為6は、職場における地位や職務内容、力関係を背景にして行われたパワー・ハラスメント行為であり、到底許されない。 ケ消防職員に強靭な体力と精神力の向上が強く要請され、そのための訓練や指導が必要である は、職場における地位や職務内容、力関係を背景にして行われたパワー・ハラスメント行為であり、到底許されない。 ケ消防職員に強靭な体力と精神力の向上が強く要請され、そのための訓練や指導が必要であるとしても、訓練や指導の名の下に、いじめや暴力が許 されるものではなく、本件非違行為は、訓練や指導の名の下に行われたハラスメントである。すなわち、本件非違行為1ないし4のBに対する所為は、適正な業務(訓練、指導)の目的がそもそも伴っていない、単なるいじめ、暴力、侮辱行為であり、直接の暴力を伴うものであるから、悪質性が高い。本件非違行為5のD1に対する所為は、ハラスメントの訴えを行 ったD1に対する理不尽な報復的な無視であり、単なる無視以上に悪質である。また、本件非違行為6のEに対する所為は、原告がEに対して退職を迫り、Eは一旦早期退職願いの提出にまで踏み切っており、職場における地位や職務内容、力関係を背景にして行われたパワー・ハラスメントであり、到底許されない。 ⑵ 本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したか(争点2) - 16 -【原告の主張】ア非違行為から余りにも長期間が経過した後の懲戒処分は、公務員関係の秩序を維持するという懲戒処分の目的に照らして目的達成との関連性が乏しく、著しい裁量権の逸脱、濫用である。本件では、少なくとも、本件非違行為1~4については、相当の年数が経過しており、懲戒処分の対象と することは、裁量権の逸脱濫用であり、違法無効である。 イ懲戒処分は、原因となる行為について公務員の故意過失が要件となると解すべきところ、原告は、消防署配属時から本件非違行為に係る訓練を上回る訓練を徹底的に受けており、消防署で永年にわたり継続して行われ続けたものであって、組織的な慣行と評すべ の故意過失が要件となると解すべきところ、原告は、消防署配属時から本件非違行為に係る訓練を上回る訓練を徹底的に受けており、消防署で永年にわたり継続して行われ続けたものであって、組織的な慣行と評すべきであり、これに従っていた原 告の所為は故意過失を欠き、本件処分の要件を欠くものである。 ウ本件非違行為は、原告自身も体験し、相当と理解していた訓練を行ったものであり、Bの肉体的、精神的向上に資するものであった。BやEは現在も消防本部に在籍し、職場環境に特段の悪影響はなく、原告自身も本件処分時にハラスメントに対する理解を深めることができ、本件処分の直接 の効果ではないが、停職期間中、給与が全く支給されず、ボーナス、昇給等において不利益を被るなどした。さらに、同種事案の非違行為の内容と処分内容の均衡、程度等をも比較検討すれば、本件非違行為による本件処分内容は、余りに重すぎて裁量を著しく逸脱、濫用したものとして違法の評価を免れない。 【被告の主張】ア懲戒処分につき、数年前の非違行為をその対象とすることを禁じる法令はない。本件については、非違行為があるのではないかとの情報を了知した後、速やかに事実関係を調査し、調査結果に基づいて処分を行っており、手続の遅滞等はない。 イ消防本部において、本件非違行為のような行為が組織的な慣行として行 - 17 -われた事実はなく、本件非違行為は伝統的な訓練法に従っていたものではない。仮に原告が行き過ぎた訓練や指導を受けていたとしても、それによって原告が行き過ぎた訓練や指導を行うことが許容されるものではない。 本件非違行為は、その内容からして、いずれも故意に基づく行為である。 ウ本件懲戒指針上、本件非違行為1ないし4は、職場内秩序を乱す行為(暴 行)又はこれに準ず うことが許容されるものではない。 本件非違行為は、その内容からして、いずれも故意に基づく行為である。 ウ本件懲戒指針上、本件非違行為1ないし4は、職場内秩序を乱す行為(暴 行)又はこれに準ずる行為に該当し、停職又は減給と定められ、本件非違行為5及び6は、職場内秩序を乱す行為(暴言)又はこれに準ずる行為に該当し、減給又は戒告と定められている。そして、原告の過去における非違行為の有無、非違行為の動機、態様、被害者にもたらした結果、故意又は過失の度合い、原告の職責と非違行為との関係を総合考慮した上、非違 行為の数が6つに及んでいること、原告は平成23年にH1への暴言により訓告処分を受けたことがあるにもかかわらず、その後も非違行為を長期にわたって繰り返しており、反省の態度が全く見られないこと等を考慮し、停職6月と決定したものであり、その量定に不合理な点はない。 本件処分は、他の自治体の処分例や裁判例と比較しても、重きに失する ということはなく、妥当なものである。 したがって、本件処分につき、裁量権逸脱、濫用の違法はない。 ⑶ 本件処分に係る手続の違法性の有無(争点3)【原告の主張】アハラスメントに関しては、非公開性等、精細な諸事情があることから、 直ちに懲戒分限手続に乗せるのではなく、ハラスメント防止規程に基づく手続を先行させるべきであったのに、いきなり懲戒分限調査を行って本件処分に至ったから、手続違背があり、違法である。 イ糸島市職員懲戒分限審査委員会規則(以下「審査委員会規則」という。)においては、糸島市職員懲戒分限審査委員会(以下「審査委員会」という。) は、任命権者の諮問に応じて懲戒処分に該当するかを審査し、答申するも - 18 -のとされているところ、本件では、糸島市長の指揮下に 職員懲戒分限審査委員会(以下「審査委員会」という。) は、任命権者の諮問に応じて懲戒処分に該当するかを審査し、答申するも - 18 -のとされているところ、本件では、糸島市長の指揮下にある糸島市役所総務部総務課の職員が調査に当たり、消防職員の任命権者である消防庁の諮問ではなく、任命権のない市長の諮問によって懲戒処分に向けた手続が開始された。これは、実質的には権限のない糸島市長により、消防長の名前で形式的になされた行政処分であって、諮問機関に対する諮問を経ること を要求する趣旨(適正妥当と公正)、消防組織法及び審査委員会規則に反する重大な瑕疵があり、これを経てなされた本件処分は違法であって、無効又は取消しを免れない。 【被告の主張】アハラスメント防止規程の手続を懲戒処分に前置させるべき法的根拠はな い。苦情処理委員会を待たずして審査委員会が懲戒処分をしたとしても、何ら問題はなく、原告の主張は独自の見解である。 イ糸島市長は、直接の懲戒権者ではないものの、市町村の消防実施責任(消防組織法6条)、消防管理権限(同法7条)、消防職員任命への承認権限(同法15条)等を有しており、消防長は、市長の命により権限の委譲を 受け、消防職員を指揮監督しているのであって、市長の管理権限が消滅するものではない。審査委員会の構成員は、副市長、教育長、消防長等であって、消防長に代わって糸島市長が諮問を行ったとしても、審議内容及び答申の結果を左右することはなく、公正なものであり、審査委員会規則の趣旨に反しない。審査委員会の答申は、あくまで懲戒権者の決定において 参考とされるという補充的な意義及び機能しか有しておらず、仮に手続に瑕疵があったとしても、答申を踏まえて消防長が懲戒処分を行い、追認したといえるから、瑕疵は治癒 くまで懲戒権者の決定において 参考とされるという補充的な意義及び機能しか有しておらず、仮に手続に瑕疵があったとしても、答申を踏まえて消防長が懲戒処分を行い、追認したといえるから、瑕疵は治癒されている。したがって、市長が審査委員会への諮問を行い、審査委員会が市長に対して答申を行ったことは、諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法令違反があることにより、その 決定(答申)自体に法が諮問機関に対する諮問を要求した趣旨に反すると - 19 -認められるような瑕疵には当たらず、取消事由とはなり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 本件非違行為1ないし4について ア原告は、平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間、消防本部警防課救急救助係の主任、消防隊1部(1中隊)本署第2小隊の救助分隊長兼副機関員(消防士長)を務めていた(乙73、74)。 Gは、平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間、消防本部消防総務課企画教養係長、消防隊1部(1中隊)本署第2小隊の小 隊長(消防司令補)を務めており、Cは、同時期、消防署第1警備課本署第1係主任、消防隊1部(1中隊)本署第1小隊消防分隊の分隊長兼副機関員(消防司令補)を務めていた(乙73、74)。 Bは、平成20年4月から平成22年3月までの2年間、任期制隊員として陸上自衛隊の第一空挺団で務めた後、平成23年4月1日、消防 本部に採用されて消防本部消防総務課付となり、福岡県消防学校を経て、同年10月1日から平成24年3月31日までの間、消防本部予防課予防係の係員、Cが消防分隊長を務める消防隊1部(1中隊)本署第1小隊の隊員(消防士)を務めていた(乙 付となり、福岡県消防学校を経て、同年10月1日から平成24年3月31日までの間、消防本部予防課予防係の係員、Cが消防分隊長を務める消防隊1部(1中隊)本署第1小隊の隊員(消防士)を務めていた(乙13の1及び2、73、74)。 イ本件非違行為1関係 G、C及び原告は、平成23年10月頃から平成24年3月頃までの間、消防署本署で当務の日の夜に、Bに声を掛けて、本署トレーニング室でトレーニングをしたことがあった。G、C及び原告は、トレーニングの一環として懸垂を行う際に、Bの身体にロープを縛着させ、そのロープを懸垂用の鉄棒に引っ掛け、C及び原告がそのロープを保持した状 態で、Bに懸垂をさせたことがあった。Bは、懸垂を実施したが、やが - 20 -て力尽きて懸垂ができなくなり鉄棒から手を放して、C及び原告により身体縛着させたロープを保持されて宙吊り状態となったが、更に懸垂を行うように指示されたことが複数回あった。(甲13の1、19、乙13の1及び2、44、62、64、69、70)G、C及び原告は、平成23年10月頃から平成24年3月頃までの 間、消防署本署で当務の日の夜に、Bに声を掛けて、消防署本署の廊下等で雑巾掛け競争を行い、その競争に負けた場合には、ペナルティとしてジャンピングスクワットや腕立て伏せを行うこととし、Bが複数回、上記のペナルティをさせられたことがあった(甲13の1、18の1ないし4、19、乙13の1及び2、44、62、64、69、70、証 人B)。 ウ本件非違行為3関係原告は、平成23年10月から11月頃の午後5時頃、はしご車の誘導訓練(はしご車を誘導し、はしご車から張り出したアームの下に敷板を敷く等の訓練)を取り仕切った際に、この訓練に加わったBに対し、「声が 小 23年10月から11月頃の午後5時頃、はしご車の誘導訓練(はしご車を誘導し、はしご車から張り出したアームの下に敷板を敷く等の訓練)を取り仕切った際に、この訓練に加わったBに対し、「声が 小さい、動きが鈍い。」等と発言し、およそ1時間30分にわたって、訓練のやり直しをさせた。原告は、上記訓練を終える頃、Bが敷板を粗雑に扱ったところを見て、Bに対し、「お前帰れ。二度と消防に来るな。今すぐ帰れ。消防署辞めて帰れ。」等と発言し、Bの肩を叩き、ヘルメットの上から頭部を叩き、胸倉を掴んで揺さぶり、突き飛ばす等して、消防署の 敷地の外に押し出した。さらに、原告は、Bに対し、敷板を差し出して敷板に謝罪するように命じ、Bに、複数回、「敷板さん、ごめんなさい。」と謝罪をさせた。(甲13の1、乙13の1及び2、14の1及び2、証人B、原告本人)エ本件非違行為4関係 原告は、平成23年11月から12月頃、ポンプ車から降りて車両後方 - 21 -にまわり、ポンプ車の天井に積んであるはしごを降ろす訓練をした際に、この訓練に加わったBに対し、指差し呼称が不十分であるとして、十数回やり直しを命じ、やり直しの際には、ヘルメットの上から頭部を複数回叩き、ペナルティとして腕立て伏せを10回させるなどした。(乙13の1及び2、証人B) ⑵ 原告に対する文書訓告ア H1は、平成23年8月頃、被告に対し、原告、G等の複数の消防職員から、暴力や暴言等を受けたと申し出た(乙25)。 イ原告は、平成20年、平成23年6月及び7月頃、勤務時間を問わず、H1に対し、「目が死んでいる。」「仕事を辞めろ。」などという暴言を 吐く非違行為を発生させ、これらの行為が部下職員に対しての叱咤激励の意味での発言であったとしても人の心を傷つける乱 問わず、H1に対し、「目が死んでいる。」「仕事を辞めろ。」などという暴言を 吐く非違行為を発生させ、これらの行為が部下職員に対しての叱咤激励の意味での発言であったとしても人の心を傷つける乱暴な言動で絶対にあってはならない行為であり、ひいては公務員としての信用失墜行為にあたるとして、平成23年11月29日、糸島市長により、文書訓告(懲戒処分ではない。)を受けた(乙24)。 ⑶ 本件非違行為5関係についてア原告は、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間、消防署第2警備課前原第2係の主任、消防隊2部(2中隊)前原小隊の消防分隊長兼救急隊長兼副機関員(消防士長)を務め、前原出張所で勤務していた(乙76)。 D1は、平成24年10月1日、消防署第2警備課前原第2係の係員、消防隊2部(2中隊)前原小隊の隊員(消防士)となり、小隊長(消防司令補)のI、分隊長(消防士長)の原告、機関員(消防副士長)のJの下、前原出張所で勤務することとなった(乙16の1及び2、66、76)。 イ D1は、平成24年11月以降、うつ病により休職し、休職理由として、 - 22 -I、原告及びJからハラスメントを受けた旨を申し出て、平成25年4月11日、被告の人事課からの事情聴取に対し、I、原告及びJから、職務上のミス等について、繰り返し叱責等を受けたと申告した(乙9、16の1及び2、66、67)。 ウD1は、平成25年4月1日、消防本部消防総務課会計係の係員とし て復職した(乙77)。 原告は、平成25年4月1日、消防総務課付となり、糸島市役所内の危機管理部危機管理課危機管理係で勤務することとなった(甲16、乙77)。 エ D1の兄は、平成25年頃、原告が勤務する糸島市役所を訪れた際に、 年4月1日、消防総務課付となり、糸島市役所内の危機管理部危機管理課危機管理係で勤務することとなった(甲16、乙77)。 エ D1の兄は、平成25年頃、原告が勤務する糸島市役所を訪れた際に、 同職員に対し、原告が所在するか等を尋ねるなどし、その後、D1が原告に謝罪したことがあった(甲13の1、証人D1、原告本人)。 オ Cは、日々の業務や訓練の内容、私生活上の出来事等を日記に記載しており(乙89。以下、この日記を「C日記」という。)、C日記の平成25年4月22日の欄に「D1の件でK(原告)と話する、うーん・・・イ ラつくネ~」などと記載した(乙89・219頁)。 カ消防本部において、D1申出のハラスメントについての調査が実施されたが、I、原告及びJに対する処分は行われなかった(乙16の1及び2、66、67、弁論の全趣旨)。 キ Cは、C日記の平成25年11月27日~12月3日の目標(④情報) 欄に「H1おいこみ ←『積め』って話」、平成25年12月4日~12月10日の目標(④情報)欄に「D2、H2、おいこみ」、平成25年12月11日~12月17日の目標(④情報)欄に「H2の周辺おいこみ」、平成25年12月18日~12月24日の目標(④情報)欄に「今年中にくぎさし(D2、H2)」とそれぞれ記載した。なお、「D2」とはD1 を、「H2」とはH1を指す。(乙89・249~252頁)。 - 23 -ク Dは、平成25年頃、Gから、I、原告及びJに謝罪するように求められ、I及びJのほか、平成26年3月頃、入院中の原告の病院を訪ねて、原告に対し、謝罪をしたところ、原告は、Dに対し、消防署全体に迷惑を掛けているのだから、消防署全体に謝罪すべきではないか等と発言した(乙16の1及び2、66、証人D1、原告本人) 告の病院を訪ねて、原告に対し、謝罪をしたところ、原告は、Dに対し、消防署全体に迷惑を掛けているのだから、消防署全体に謝罪すべきではないか等と発言した(乙16の1及び2、66、証人D1、原告本人)。 ⑷ 本件非違行為6関係ア原告は、平成26年4月1日、消防本部警防課通信指令第1係、消防隊1部(1中隊)通信指令の主任(消防士長)となった。通信指令第1係、消防隊1部(1中隊)通信指令では、Eが第1係長、Fが主任であり、平成28年3月31日まで、同様の体制であった。(乙78ないし81) イ Eは、平成26年10月頃以降、しばしば、原告に対し、自身に能力がない旨を発言するようになり、これに対し、原告は、Eに対し、降格願を提出した方がよいのではないか、退職した方がよいのではないかなどと発言した(乙22の2)。 ウ原告は、平成27年12月頃及び平成28年4月から5月頃、Eと通信 指令室で一緒に勤務をしていた際に、Eに対し、「係長は仕事ができなければ、係長を降りるか、仕事を辞めるか。」などと複数回発言した(乙22の1及び3、証人E、原告本人)。 エ Eは、平成28年5月頃、被告に対し、早期退職願を提出したが、後に撤回した(証人E)。 オ原告は、本件処分を受けた後の平成29年3月4日、Eに対し、複数回電話をかけ、上記の事実関係の確認等を行ったのに対し、Eは、早期退職をした理由としては、自分に能力がないことのほか、原告から辞めた方がいい旨を言われたことも理由の一つである旨を回答した(乙22の2)。 カ Eは、令和3年3月31日、定年により消防本部を退職した(証人E)。 ⑸ 本件各処分に至った経緯 - 24 -ア被告は、平成23年度以降、毎年度、被告の職員に対し、職場環境に関するアンケートを 3月31日、定年により消防本部を退職した(証人E)。 ⑸ 本件各処分に至った経緯 - 24 -ア被告は、平成23年度以降、毎年度、被告の職員に対し、職場環境に関するアンケートを実施し、平成26年度以降、消防職員に対し、同アンケートの集計結果を公表していた(乙68、92、93)。 イ消防本部は、平成28年6月頃、全職員を対象として、職場環境改善に関するアンケートを実施した。そのアンケート結果のうち、現在の職場環 境について、「訓練中の暴力は、指導の一環と捉えるのは間違っているのではないか。」「高圧的な態度やグループで集まって、毎日のように誰かの悪口を言っており、職場の雰囲気が悪い。」「○○部の上司が部下に対する行き過ぎた指導、暴力、暴言が日常的に行われている。」「ここ数年で若手職員が3名退職しており、今の職場環境がその原因であり、数名の 職員の影響であると思われ、外部とかにより調査のうえ対処して頂きたい。」「職員の中には、平気で部下を物以下のように扱っている職員が見受けられる。」「訓練をする際、若手職員だけに実施させ、出来なかったら文句ばかり言われ、私生活のことに対しても文句を言われる。」「気に入らない職員には挨拶をしない上司がいる。」「陰で悪口や職員の批判を行い、 一人の職員を他の職員を利用して一方的に攻撃するといったやり方をする上司がある。」「罵声を浴びせられ、体力的に無理難題を突き付けられ、殴られたり、蹴られたりも何度もある。」「部下の指導が激しく、体調を崩したり、精神的に潰れていく若手が多く、訓練で体力を使い切り、災害出動の際に動けないのではないかと思う場合がある。」「離席時間が長い 職員がいる。職務怠慢である。」「特定の若手に厳しく、好き嫌いで判断している上司がいる。」「職場にパ で体力を使い切り、災害出動の際に動けないのではないかと思う場合がある。」「離席時間が長い 職員がいる。職務怠慢である。」「特定の若手に厳しく、好き嫌いで判断している上司がいる。」「職場にパワハラが蔓延化している。」などの意見があった。(乙7)ウ糸島市長、副市長及び糸島市の顧問弁護士は、平成28年7月6日頃、「勇士一同」名義で作成された文書を受け取った(甲26、乙8)。この 文書には、糸島市消防本部の職場環境は劣悪であり、ここ数年で若手6名 - 25 -が次々と退職し、3名の病休者(うつ病、不眠症等)が出ており、その原因は、消防本部内での暴行、暴言、しごき、いじめ等であること、消防本部では、数年前のパワハラ問題以降、定期的にアンケートが行われているが、アンケートに書いても何も変化がないこと、複数名の加害者の中にGの名も挙げられ、Gにつき、訓練の名を借りた、いじめ、しごきがあり、 暴言も度を超し、人の挨拶を無視すること、頻繁に仕事をサボること等があること、そのトップにいるのが警防課長補佐のLであること、暴言、暴行等の実態調査のため、調査委員会を立ち上げて欲しいこと等が記載されていた(乙8)。 エ糸島市長の指示を受けた糸島市役所総務部総務課の職員は、平成28年 7月中旬頃から同年12月初旬頃までの間、消防職員等合計35名から事情聴取を行い、ハラスメント行為の調査を行った。なお、原告については、事情聴取が行われなかった。(甲26、弁論の全趣旨)オ糸島市長は、平成28年12月5日、糸島副市長を委員長とし、教育長、市長事務部局の部長ら及び消防長等を委員とする本件審査委員会に対し、 審査委員会規則2条1項1号、2号に基づき、消防本部で実施した平成28年度「職場環境改善アンケート」の集約結果の公表内 長、市長事務部局の部長ら及び消防長等を委員とする本件審査委員会に対し、 審査委員会規則2条1項1号、2号に基づき、消防本部で実施した平成28年度「職場環境改善アンケート」の集約結果の公表内容に基づくパワー・ハラスメント事案及びその他服務規律違反等の事項による懲戒処分及び分限処分の適否について、諮問をした。諮問に当たって、審査対象者が多数に上ること、その行為内容も多岐にわたることから、消防本部における組 織全体の問題として、厳正に調査されるよう依頼した。(甲6、26)⑹ 審査委員会での審査についてア審査委員会は、上記諮問の日のほか、平成28年12月15日(第2回)、同月27日(第3回)、平成29年1月10日(第4回)、同月17日(第5回)、同年2月6日(第6回)、同月17日(第7回)、同月20日(第 8回)、消防本部におけるパワー・ハラスメント等の行為事案の内容等に - 26 -ついて、それぞれ審議を行った(甲25の1ないし7、26)。 イ原告は、平成29年2月24日、糸島市消防本部消防長から、同日から同年3月3日までの間、自宅待機を命ぜられた(甲13の2、15)。 ウ審査委員会は、平成29年2月25日午後3時25分頃から午後3時46分頃までの間、原告に対し、本件非違行為を記載した書面(ただし、乙 10であったかは当事者間に争いがある。)を示し、事実確認をした(甲13の1、乙11)。 エ審査委員会は、平成29年2月28日(第9回)、処分量定案に基づき、原告に対する懲戒処分を審査し、停職6か月を相当とする答申をすることとした(甲25の8、26)。 なお、審査対象の消防職員の中に、審査委員会の委員である消防本部消防長が含まれていたことから、委員長は、消防長の処分量定の審査に当たって する答申をすることとした(甲25の8、26)。 なお、審査対象の消防職員の中に、審査委員会の委員である消防本部消防長が含まれていたことから、委員長は、消防長の処分量定の審査に当たっては、消防長を退出させた(乙60)。 2 争点1(本件処分に係る懲戒事由該当性)について⑴ 本件非違行為1(いじめ)について ア前記認定事実⑴イによれば、G、C及び原告は、当務の日の夜に、消防署本署のトレーニング室において、Bに対し、身体にロープを縛着し、そのロープを鉄棒に引っ掛けた状態で懸垂を実施させ、Bが力尽きて懸垂できなくなると、主にCがBの身体に縛着したロープを引っ張って宙吊り状態とし、更に懸垂を実施させようとしたことが複数回あったものと認め られる。 イこのように、懸垂補助を目的としてロープを身体に縛着した状態で懸垂を行うというトレーニング方法については、G、C及び原告による場合を除いては、糸島市の消防本部のみならず、他の消防本部でも実践された実例が見当たらないこと(乙54ないし59)からして、通常採用されてい ない特異な方法であったといえる。 - 27 -そして、Bは、当時、消防職員として採用後、未だ1年を経過しておらず、上司や先輩に当たるG、C及び原告が囲んだような状態で、身体にロープを縛着されて懸垂をさせられ、自身の力では限界を迎えた後もロープを保持されて宙吊り状態となり、懸垂器具から下りることが許されず、更に懸垂を行うように促されており、ロープが身体に食い込み、痛みを生じ させるものであるとともに、心理的にも相当の圧迫を与えるものと評価せざるを得ない。そうすると、このような懸垂のトレーニング方法は、不適切、不相当な方法であったといわざるを得ない。 なお、この点は、原告等が、B るとともに、心理的にも相当の圧迫を与えるものと評価せざるを得ない。そうすると、このような懸垂のトレーニング方法は、不適切、不相当な方法であったといわざるを得ない。 なお、この点は、原告等が、Bと同様に、身体にロープを縛着した状態で懸垂のトレーニングを行ったことがあったとしても、このような懸垂の トレーニング方法が適切、相当な方法であったと評価することには繋がらない。 ウ原告は、救助に不可欠な技術である二重もやい身体縛着の結索訓練を兼ねていた旨を主張するが、懸垂のトレーニングに当たって、上記のように、ロープが食い込む痛みや心理的圧迫を与えるような特異な方法でロープの 結索を訓練する必要性、相当性を見出すことはできず、原告の上記主張をおよそ採用することはできない。 エ他方で、被告は、Bが懸垂で宙吊りになった時間や回数について、20日程度(少なくとも2日以上)、1日数回(1ないし3回)、1日合計30分程度であった旨を主張し、Bはこれに沿う供述をする。 しかし、Bは、糸島市総務課による「聴き取り内容」(乙13の1及び2)においては、長いときは30分くらい吊るされた旨を供述し、その後も30分くらい宙吊り状態にされた旨を供述していた(乙44)にもかかわらず、1回の宙吊りで最大で10分程度、1日数回、1日合計30分程度であった旨の供述に変遷しており(乙64)、かつ、その時間も体感で の時間感覚であって、宙吊り時間を計測や確認したものではない。 - 28 -そうすると、宙吊り時間については、Bの上記供述をにわかに採用することはできず、数分程度であった可能性が残るものといえる。 オ以上を踏まえると、Bが宙吊りにされた時間は30分程度にまでは及んでいなかったものの、Bの意に反して、ロープを身体に縛着し かに採用することはできず、数分程度であった可能性が残るものといえる。 オ以上を踏まえると、Bが宙吊りにされた時間は30分程度にまでは及んでいなかったものの、Bの意に反して、ロープを身体に縛着した状態で懸垂を行い、力尽きて手を放すとロープで宙吊りにされ、その状態で更に懸 垂をさせられるという不適切、不相当なトレーニング方法を強いたものというべきである。 カまた、前記認定事実⑴イによれば、G、C及び原告は、当務の日の夜に、Bとともに雑巾掛け競争を行い、競争に負けた場合に、ペナルティとしてジャンピングスクワットや腕立て伏せを行うこととし、Bが複数回、 上記のペナルティをさせられたことが認められる。 上記の雑巾掛け競争や競争に負けた場合のペナルティは、当務中に行われているところ、これらが当務中に行う自主的な訓練やトレーニングとして適当なものと評価し得るかは疑問があるといわざるを得ない。そして、Bは、上記の雑巾掛け競争や競争に負けた場合のペナルティについて、自 ら希望して参加したとは認め難く、上司や先輩に当たるG、C及び原告の誘いにより、やむを得ず参加していたものといえる。そうすると、雑巾掛け競争及び競争に負けた場合のペナルティについては、「いじめ」とまではいえないものの、当務中に行うには適当とはいえない自主的な訓練やトレーニングへの参加をBに強いたものというべきである。 キしたがって、本件非違行為1のうち、懸垂のトレーニングに関する部分、雑巾掛け競争及び競争に負けた場合のペナルティへの参加については、ハラスメント防止規程2条⑵のパワー・ハラスメントないし同条⑶のその他のハラスメントに該当するものといえるところ、ハラスメント防止規程の遡及適用に当たる旨の原告の主張を踏まえても、少なくとも地方公務員法 ント防止規程2条⑵のパワー・ハラスメントないし同条⑶のその他のハラスメントに該当するものといえるところ、ハラスメント防止規程の遡及適用に当たる旨の原告の主張を踏まえても、少なくとも地方公務員法 29条1項3号に定める非行に該当するものと認められる。 - 29 -⑵ 本件非違行為3(いじめ、暴力、侮辱)についてア前記認定事実⑴ウによれば、原告は、はしご車の誘導訓練において、Bに対し、何度もやり直しをさせ、Bが敷板を雑に扱ったところ、消防署辞めて帰れ等と発言して、肩やヘルメット越しに頭部を叩き、胸倉を掴んで揺さぶり、突き飛ばして消防署の敷地の外に押し出した上に、敷板に謝罪 するように命じて、複数回謝罪させたことが認められる。 イ原告の上記行為のうち、Bに何度も訓練のやり直しをさせたことについては、訓練での出来が不十分であれば、やり直しをさせることはあり得るところ、過剰な程度まで訓練を繰り返し行わせた場合には、訓練や指導等としての意味をなさないパワー・ハラスメントとなり得るものの、本件で は、その程度に至っていたとはいえない。もっとも、Bが敷板を粗雑に扱ったことが契機になったとはいえ、肩やヘルメットの上から頭部を叩き、胸倉を掴んで揺さぶり、突き飛ばして消防署の敷地の外に押し出したことについては、口頭での注意・指導等にとどまらず、有形力を行使する必要性、相当性を見出せず、訓練における注意・指導等を超えた暴力行為とい わざるを得ない。さらに、敷板に謝罪するように命じ、複数回、「敷板さん、ごめんなさい。」と謝罪させることについては、謝罪を命じられた者に屈辱的な感情を抱かせる程度が強く、注意・指導等といえるものではない。 ウしたがって、本件非違行為3のうち、原告が敷板を粗雑に扱ったBに対 し肩やヘ ることについては、謝罪を命じられた者に屈辱的な感情を抱かせる程度が強く、注意・指導等といえるものではない。 ウしたがって、本件非違行為3のうち、原告が敷板を粗雑に扱ったBに対 し肩やヘルメットの上から頭部を叩き、胸倉を掴んで揺さぶり、突き飛ばして消防署の敷地の外に押し出した上、敷板に謝罪するように命じて、複数回謝罪させた行為は、ハラスメント防止規程2条⑵のパワー・ハラスメントないし同条⑶のその他のハラスメントに該当するものといえるし、少なくとも地方公務員法29条1項3号に定める非行に該当するものと認め られる。 - 30 -⑶ 本件非違行為4(いじめ、暴力)についてア前記認定事実⑴エによれば、原告は、ポンプ車に関する訓練において、Bに対し、指差し呼称が不十分であるとして、十数回、やり直しを命じ、その際に、ヘルメットの上から頭部を複数回叩き、ペナルティとして腕立て伏せを10回させる等したことが認められる。 イ消防職員の訓練において、訓練内容を繰り返し、ペナルティとして腕立て伏せを行うことはあり得るとしても、ヘルメットの上からとはいえ、頭部を複数回叩くことは、訓練中においても、指導やペナルティを超えた暴力行為といわざるを得ず、訓練や指導等として許容されるものとはいえない。なお、過剰な程度まで訓練を繰り返し行わせたとすると、訓練や指導 等としての意味をなさないパワー・ハラスメントとなり得るものの、本件では、その程度に至っていたとはいえない。 ウしたがって、本件非違行為4のうち、原告がBに対しヘルメット越しに頭部を複数回叩いた行為は、暴力行為であって、ハラスメント防止規程2条⑵のパワー・ハラスメントないし同条⑶のその他のハラスメントに該当 するものといえるし、少なくとも地方公務員法29 ト越しに頭部を複数回叩いた行為は、暴力行為であって、ハラスメント防止規程2条⑵のパワー・ハラスメントないし同条⑶のその他のハラスメントに該当 するものといえるし、少なくとも地方公務員法29条1項3号に定める非行に該当するものと認められる。 ⑷ 本件非違行為2(暴力)についてア Bは、上記⑵及び⑶のほかに、本件非違行為2として、平成23年10月から平成24年3月までの間のトレーニングや訓練の際に、原告から、 声が小さい、安全確認ができていない等と言われ、複数回、ヘルメットの上から頭部を平手で叩かれる、肩を突き飛ばされる、胸倉を掴んで揺さぶられる等したほか、腕立て伏せで力尽きて地面に倒れた際に、頭部を地面に押さえ付けられたことがあった旨を供述する(乙13の1及び2、証人B)。 イしかし、上記アの暴力行為については、時期や場所等が具体的に特定さ - 31 -れておらず、その内容も本件非違行為3及び4と重複する部分が見受けられ、Bの上記供述のほかに、本件非違行為3及び4とは別に、上記アの暴力行為が行われたことを裏付ける的確な証拠は見当たらない。 原告自身も、訓練中にBを注意するに当たり、正対させるために肩を押し、胸倉を掴んで安全確認が不十分だと自分が死ぬ旨を注意したことはあ るが、頭部を叩いたことや地面に倒れたBの頭部を地面に押し付けたことはないと供述しており(甲13の1、原告本人)、有形力の行使を伴う注意・指導を伴う部分はあったものの、訓練中の指導等として通常の範囲や程度を超えるものとまではいえない。 ウこれらを踏まえると、本件非違行為3及び4とは別個の懲戒事由として、 本件非違行為2を認めることはできない。 ⑸ 本件非違行為5(無視)についてア被告は、原告が、ハラスメントを訴えた ウこれらを踏まえると、本件非違行為3及び4とは別個の懲戒事由として、 本件非違行為2を認めることはできない。 ⑸ 本件非違行為5(無視)についてア被告は、原告が、ハラスメントを訴えたD1を逆恨みし、報復として無視していた旨を主張し、D1は原告から無視されていたと感じていた旨を供述する(乙16の1及び2、証人D1)。 イ前記認定事実⑶によれば、原告は、D1からハラスメント被害を受けた旨を申告され、その調査結果が出る前に消防署から市役所に異動させられたと感じていた上、D1の兄がハラスメントの件で市役所に押し掛けてきたものと考え、D1を避けたい気持ちとともに、C日記をみると、D1に対する苛立ちを抱いていた可能性もうかがえる。 しかし、D1は、平成25年4月の復職時から平成26年3月までの間は消防総務課会計係、平成26年4月から平成28年3月までの間は予防課指導係、平成28年4月から本件処分(平成29年3月3日)までの間は第2警備課本署第2係で勤務していたのに対し、原告は、平成25年4月から平成26年3月までの間は糸島市役所で勤務し、平成26年4月か ら本件処分までの間は警防課通信指令第1係で勤務をしており(乙77な - 32 -いし81)、互いの職場が異なり、日常的に顔を合わせる機会があったとはいえない。また、D1が平成26年3月頃に入院中の原告を訪ね、原告に対し謝罪をしたのに対し、原告は、自らの思うところを述べており、D1を無視するような言動を取ったとはいえない。これらの他に、原告に近しいと思われる他の消防職員がD1に対する中傷等をメールで送信してい た(乙90、91)としても、これをもって原告がD1を無視していたとまではいえない。 ウそうすると、原告がD1との接触を避けたい思いを る他の消防職員がD1に対する中傷等をメールで送信してい た(乙90、91)としても、これをもって原告がD1を無視していたとまではいえない。 ウそうすると、原告がD1との接触を避けたい思いを抱いていたことはうかがわれるものの、D1から挨拶をされても挨拶を返すことなく、D1を日常的かつ継続的に無視したと認めるに足りる的確な証拠はなく、これを 認めることはできない。 ⑹ 本件非違行為6(暴言)についてア前記認定事実⑷によれば、原告は、当時の上司であったEに対し、複数回にわたって、係長は仕事ができなければ、係長を降りるか、仕事を辞めるか等と発言し、Eが早期退職願を提出するに至ったことが認められる。 イしかし、Eは、当時、通信指令の係長としての職務を初めて経験し、自己に能力がないと実感するようになり、原告に対しその旨を発言する等していたことから、原告の上記発言に繋がったものといえ、Eが早期退職願を提出した要因の一つに原告の上記発言があったものの、大きな要因はEが自身の能力不足を実感したところにあったといわざるを得ない。 ウそうすると、原告の上記発言を捉えて、Eに対する暴言であると評価するのは相当ではなく、パワー・ハラスメント行為であるとはいえない。 3 争点2(本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したか)について⑴ 地方公務員につき、地方公務員法所定の懲戒事由がある場合には、懲戒事 由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等の - 33 -ほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定す 行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合 に、違法となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁、最高裁平成23年(行ツ)第263号、同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁等参照)。 ⑵ア本件非違行為1、3及び4については、本件懲戒指針の別表のうち、職 場内秩序を乱す行為(他の職員に対する暴行により、職場の秩序を乱した職員)又はこれに準ずる行為に該当するものと解され、標準的な懲戒処分の種類は停職又は減給に相当するものといえる。 そこで、本件懲戒指針2条に定める懲戒処分の基準を踏まえて、本件懲戒指針に定める標準的な懲戒処分の中で最も重い停職を選択し、かつ停職 で最も重い6月を選択することが懲戒権者の裁量権の範囲内であるかを検討する。 イ原告は、本件非違行為1、3及び4が行われた平成23年当時、消防士長として消防隊の救助分隊長を務め、小隊長の下で、部下の消防隊員を指示・指導等し、訓練を適切に取り仕切るべき立場であったのに、採用され て1年未満の消防職員に対し、不適切、不相当なトレーニングを課し、肩やヘルメットの上から頭部を叩き、胸倉を掴んで揺さぶり、突き飛ばして消防署の敷地の外に押し出す等の暴力行為を加えており、訓練における注意・指導等を超えた有形力の行使を行ったほか、道具類へ複数回謝罪することを命じた点でも、当人に屈辱 倉を掴んで揺さぶり、突き飛ばして消防署の敷地の外に押し出す等の暴力行為を加えており、訓練における注意・指導等を超えた有形力の行使を行ったほか、道具類へ複数回謝罪することを命じた点でも、当人に屈辱感を抱かせ、注意・指導等とはいえない 不相当なものであったといわざるを得ない。原告は、自己の指導が厳しい - 34 -ものであると自覚し、消防の訓練において、指導やペナルティとして身体に刻み込む手段に合理性があるものと、ある種の誤った確信をもって指導等に臨んだことがうかがえ、今後も同様の非違行為に及ぶおそれもないとはいえない。被害を受けた職員は、暴力や宙吊り等により身体的苦痛を受けるにとどまらず、上記のとおりの屈辱感や精神的な苦痛をも受けたこと は想像に難くない。加えて、原告は、本件非違行為1、3及び4に及んだ頃である平成23年11月に、他の消防職員に対する暴言について、懲戒処分ではないものの、文書訓告を受けており、自身の言動を省みて特に注意等すべき状況であったのに、そのような様子はうかがえない。 ウもっとも、本件非違行為1については、Gが主に指示等をし、CがBの 身体に縛着したロープを保持することが多く、原告が主導的な役割を果たしたとはいえないし、懸垂補助の方法として不適切、不相当なものであるが、逸脱ないし過剰にわたった程度としては、特段大きいとまではいえない。また、本件非違行為3及び4については、厳しい指導等が度を超えた面があり、暴力等の内容や程度も著しいものとはいえず、被害を受けた職 員による軽率な言動が契機となった面もあった。そして、これらの暴力等を受けた職員が負傷するまでには至っていない。 このほか、原告は、上記のとおり、文書訓告を受けたことはあったものの、本件処分までに懲戒処分を受けたことがなく った面もあった。そして、これらの暴力等を受けた職員が負傷するまでには至っていない。 このほか、原告は、上記のとおり、文書訓告を受けたことはあったものの、本件処分までに懲戒処分を受けたことがなく、訓練やトレーニングにおける指導等が通常の範囲を超え、逸脱ないし過剰にわたることについて、 個別的に注意や指導を受けたとの事情も見当たらない。 エ以上の各事情のほか、本件懲戒指針2条に定める事情を総合的に考慮すると、本件非違行為は、部下の消防職員に対する暴行等の有形力の行使を伴うものであり、情状は芳しくないものの、上記ウの事情が見受けられることからして、処分行政庁(消防本部消防長)が、原告に対する懲戒処分 として、本件懲戒指針に定める標準的な懲戒処分の中で最も重い停職を選 - 35 -択し、かつ停職で最も重い6月とした判断は、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、本件処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法と評価せざるを得ない。 ⑶ 以上によれば、本件処分は、争点3(本件処分に係る手続の違法性の有無)について検討するまでもなく、裁量権の行使を誤った違法があるといわざる を得ず、取消しを免れない。 4 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官小野寺優子 裁判官有田浩規 裁判官大西優太は、転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官小野寺優子 - 36 -(別紙)原告処分に係る非違行為 1 いじめ原告 き署名押印することができない。 裁判長裁判官小野寺優子 - 36 -(別紙)原告処分に係る非違行為 1 いじめ原告警防課主任(以下「被処分者」という。)は、平成23年10月から平成 24年3月までの毎当務日午後7時(19時)から午後9時(21時)まで、G及びCとともに、Bを消防署本署トレーニング室に呼び出し、同所において、Bに対し、自らロープを身体縛着させ、その状態で懸垂するよう命じ、Bが力尽きて鉄棒から手を放すとロープを確保してBを約30分間宙吊りにしたり、被処分者自身又はCと雑巾掛け競争をするように命じて、Bが競争に勝つとBが負ける まで連続して雑巾掛け競争をさせ、Bが競争に負けると罰としてジャンピングスクワットや腕立て伏せをさせたり、力尽きて身体が思うように動かないBの様子を見て笑うなどした。 2 暴力被処分者は、平成23年10月から平成24年3月までの間の勤務中におい て、Bに対し、声が小さい、安全確認ができていない等の理由で、Bの頭部を叩いたり、肩を突き飛ばしたり、胸倉を掴んで身体を揺さぶったり、地面に倒れたBの頭を地面に押し付けるなど、日常的に暴力を加えた。 3 いじめ、暴力、侮辱被処分者は、 ① 平成23年10月から11月頃の午後5時(17時)頃、はしご車の誘導訓練(はしご車を誘導し、はしご車から張り出したアームの下に板(敷板)を敷くという訓練)をした際、Bに対し、同訓練を約1時間30分にわたって繰り返し行うよう命じ、② 上記①と同日18時30分頃、訳も分からないまま単純なことを長時間させ られたBが不機嫌になって敷板を雑に扱ったところ、「はい、お前帰れ。」 - 37 -「二度と消防に来 う命じ、② 上記①と同日18時30分頃、訳も分からないまま単純なことを長時間させ られたBが不機嫌になって敷板を雑に扱ったところ、「はい、お前帰れ。」 - 37 -「二度と消防に来るな。」「今すぐ帰れ。」「消防署辞めて帰れ。」などと怒鳴りながら、同人の肩を叩いたり、頭部を叩いたり、胸倉を掴んで揺さぶったり、突き飛ばしたりするなどの暴行を加え、③ 上記②と同時刻頃、Bが謝罪したにもかかわらず、敷板を両手に持ってBの前に差し出し、Bに対し、「敷板さんごめんなさい、と言え。」と命じ、Bが 敷板に謝ると、「声が小さい。」と言ってさらに大きな声で謝るよう命じ、3回から4回、敷板に謝罪をさせた。 4 いじめ、暴力被処分者は、平成23年11月から12月頃、ポンプ車の訓練(ポンプ車から降りて車両後方にまわり、はしごを降ろすという訓練)をした際、Bに対し、指 差し呼称を何度もやり直しを命じ、やり直しを命じるたびに、罰としてBの頭部を手で複数回殴打した上で腕立て伏せを10回させ、このような状態で、少なくとも約15回、Bに対し、罰を与えながら理由なく同じことを繰り返しするよう命じ、Bが声の出し過ぎで喉が潰れたBの声が裏返るとそのことを笑うなどして、「いじめ」行為をした。 5 無視被処分者は、平成25年4月1日から現在まで、D1から挨拶をされても挨拶を返すことなく、D1を日常的かつ継続的に無視した。 6 暴言被処分者は、平成27年12月頃及び平成28年4月から5月頃、Eに対し、 「係長は仕事ができなければ、係長を降りるか、仕事を辞めるか。」などと言い、複数回にわたって退職を迫る発言をした。 以上 係長を降りるか、仕事を辞めるか。」などと言い、複数回にわたって退職を迫る発言をした。
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