主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が原告X1に対して平成8年9月18日付けでなした労働者災害補償保険法に基づく葬祭料を支給しない旨の処分を取り消す。 2 被告が原告X2に対して平成8年9月18日付けでなした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。 3 被告が原告X3,同X4,同X5,同X6に対して平成8年9月18日付けでなした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分をいずれも取り消す。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,平成6年4月26日,名古屋空港で発生したいわゆる中華航空機事故により死亡した被災者らの遺族である原告らが,被災者らは,勤務先会社の業務としての研修旅行に参加中,業務災害により死亡したものであるとして,被告に対し,労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を申請したところ,被告がこれらを支給しない旨の処分をしたので,これらの処分の取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者らア原告らは,別紙被災者目録(略)記載の被災者らとそれぞれ同目録記載の身分関係にある遺族である。 イ原告X1は,被災者Z1の夫として葬祭を行う者であり,原告X2は,同被災者の子として,被災者の死亡当時,その収入によって生計を維持していた者である。 ウ原告X3,同X4,同X5及び同X6は,それぞれの被災者らの配偶者として,被災者らの死亡当時,その収入によって生計を維持していた者であり,各被災者らの葬祭を行う者である。 エ株式会社N製陶は,株式会社N建材工業を中心とした各種ハイセラミックタイルの製造・販売を目的とする企業グループ(N製陶,N建 によって生計を維持していた者であり,各被災者らの葬祭を行う者である。 エ株式会社N製陶は,株式会社N建材工業を中心とした各種ハイセラミックタイルの製造・販売を目的とする企業グループ(N製陶,N建材工業のほかに,T株式会社,株式会社Nセラミックス,株式会社M,株式会社K工業,R製陶株式会社がある。)傘下の会社であり,本件旅行当時の代表取締役はN(N社長,なお,同人はNセラミックス,N建材工業などの代表取締役も兼ねている。)である。 (2) 本訴に至る経緯ア被災者らは,N製陶に雇用され勤務していた者であるが,平成6年4月24日から2泊3日の日程で,同社が計画した「研修旅行」と称する別紙旅行日程表記載のとおりの台湾旅行(本件旅行)に参加し,同月26日,中華航空CI-140便に搭乗して帰国の途にあったところ,同日午後8時15分ころ,愛知県西春日井郡豊山町豊場の名古屋空港内において,搭乗していた同機が着陸に失敗し,墜落炎上したため,死亡するに至った(本件事故)。 イ原告らは,被災者らの遺族として,被告に対し,労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ,被告は,平成8年9月18日付けで前記各給付をしない旨の処分をした(本件各処分)。 原告らは,これを不服として,平成8年11月12日,岐阜労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたが,同審査官は,平成9年2月17日,これを棄却する旨の決定を行い,さらに,原告らは,平成9年4月11日,労働保険審査会に対し再審査請求をしたが,平成11年3月31日,同審査会はこれを棄却する旨の裁決を行い,同年4月20日,裁決書が原告ら代理人に到達した。 2 争点被災者らが本件旅行に参加したことに業務遂行性が認められるか(原告の主張)(1) 業務性の判断基準終身雇 を棄却する旨の裁決を行い,同年4月20日,裁決書が原告ら代理人に到達した。 2 争点被災者らが本件旅行に参加したことに業務遂行性が認められるか(原告の主張)(1) 業務性の判断基準終身雇用制を採用している企業が大半である我が国においては,事業主の事業運営の必要性と労働者の福利・厚生・レクリエーション等を兼ねて社内旅行が企画・実施されることが多いが,事業主が,事業運営上の必要性を重視する場合には,「社員研修旅行」といった名称を付けて,その意図するところを明らかにすることがあり,そのような場合には,労働者の側では,旅行の参加について明確な業務命令がない場合であっても,強い拘束感を持って「社員研修旅行」に参加することが多々認められるところである。 このような我が国の雇用関係の実情を踏まえた上で,労災保険制度が労働者あるいは労働者家族の生存権保障に基づく制度であるとの本質に照らして考えてみると,①研修旅行を事業主が主催し,または,事業主が費用負担,賃金支給等により関与していたこと,②研修旅行が事業の運営または労務管理上,必要,有益と認められること,③事業主の指示,要請等により,または参加者には出勤扱いとして賃金が支給される反面,不参加者には欠勤扱いとして賃金が不支給とされる等の不利益が課されることにより,労働者が研修旅行に事実上参加せざるを得なかったことの要件を満たす場合には,研修旅行には業務性が認められ,同旅行中に生じた災害は「業務上」災害と認定されるべきである。 慰安旅行等の社外行事は,仕事を離れて楽しむものであるが,事業主が主催ないし費用負担により関与して行う場合は,仕事を離れ労働者が一体となり共に楽しむこと自体が,事業主と労働者の一体意識を形成し,業務向上に役立つという日本的労務管理の上から必要・有益と見ているからであり, し費用負担により関与して行う場合は,仕事を離れ労働者が一体となり共に楽しむこと自体が,事業主と労働者の一体意識を形成し,業務向上に役立つという日本的労務管理の上から必要・有益と見ているからであり,通常事業主からの参加の要請があれば,労働者としては事実上参加せざるを得ないというのが日本の企業における実態であり,このような社外行事に参加中の災害は,被災者が当該行事の世話役であると否とを問わず,業務と合理的関連性があるとみて「業務上」災害と認めるべきである。 (2) 本件旅行の性格ア本件旅行の企画,立案,目的N製陶においては,当初,慰安旅行という形で年1回の社員旅行を行っていたが,昭和55年ころ以来,慰安旅行を改め,原則として従業員全員が参加し,自社製品である舗道用舗石タイルの施工状態及び品質の時間的経過状態の調査・視察をして,品質の向上を図ること,特に,タイル製造に従事している日給社員に,自社製品が施工されている場所を見学させることにより,愛社精神を持ってもらい,同時にチームワークを養ってもらうこと,研修旅行として,陶磁器やタイル等との関係の深い博物館や美術館を見学することにより,従業員が自分の従事している作業及びその周辺の知識・教養を高めること,これらを目的とする「研修旅行」として実施してきた。 本件旅行における研修先を台湾に決めた理由は,N建材工業と業務提携契約を締結し,Nグループ各社との間で技術員の相互派遣を行ってきた台湾のD磁器との相互交流を深め,技術交流を促進し,さらにはN製品が使用されている現場の見学をすることにあり,台湾への研修旅行は,Nセラミックスの工場長であったBを総括責任者とする担当者の打ち合わせにより決定され,N社長がその報告を受けて決裁したものである。 本件旅行は,J観光が企画した既成のパッケージツアーで 研修旅行は,Nセラミックスの工場長であったBを総括責任者とする担当者の打ち合わせにより決定され,N社長がその報告を受けて決裁したものである。 本件旅行は,J観光が企画した既成のパッケージツアーである「あったかランド台湾」旅行を利用し,これに「D磁器工場見学」等の研修課題を組み込んだもので,慰労の趣旨が含まれていたこと,見学先の主な場所が台湾の有名な観光地であったことは否定しないが,以下に述べるとおり,本件旅行は研修目的こそが主眼であった。 国立故宮博物院には国宝級の陶磁器等が多数展示されており,中華工芸館にも台湾の陶芸品が数多く展示されており,いずれも陶磁器を中心に十分に見学させ,従業員が知識,教養を養うことを期待して,国立故宮博物院にあってはJ観光のスケジュールが1時間30分であったのを3時間延長し,中華工芸館にあってはJ観光のスケジュールになかったものを追加している。 忠烈祠は,N製陶の製品であるNタイルが約2万㎡にわたって敷き詰められており,この施工現場を見学させることを目的として研修のコースに組み入れたものであるから,J観光のスケジュールでは30分であったのを60分に延長した。また,中正紀念堂は,他社の類似タイルが施工されているので,従業員にその現場を見学させ,Nグループの製品と比較させる意味で,研修コースに加えたものであるが,このような目的に絞って見学するので,J観光のスケジュールでは50分であったのを30分にした。 小人国においては,世界の有名建築のミニチュアを見学することも従業員の研修になると考えてコースに入れたが,J観光のスケジュールでは,40分であったのを30分とした。 また,本件旅行においては,前記のとおりN建材工業と業務提携契約を締結しているD磁器の新タイル工場が見学先に組み込まれているが,最新のプラント のスケジュールでは,40分であったのを30分とした。 また,本件旅行においては,前記のとおりN建材工業と業務提携契約を締結しているD磁器の新タイル工場が見学先に組み込まれているが,最新のプラントを見学することは,N製陶の従業員にとって有用な研修になることは明らかである。また,本件旅行2日目夜に,従業員らはD磁器主催のパーティーに招待されていることからも明らかなように,NグループとD磁器との業務提携関係は親密なものである。 これに加え,3日目には車窓から見るだけでも研修になると考え,新竹ハイテク工業団地をコースに組み入れた。 本件旅行は,前記のとおりJ観光のパッケージツアーをその土台として利用しているが,同ツアーを本件旅行の土台として選択した理由は,同ツアーに見学地として前記国立故宮博物院,忠烈祠,中正紀念堂等が組み込まれていたことから,たまたま本件旅行の研修目的に適合し,その土台として同ツアーを利用することが企画上便宜であったからにすぎない。そして,同ツアーを土台として中華工芸館とD磁器の新タイル工場の見学が新たに組み込まれ,旅行会社が強く希望した土産物店のうち2店(「芸祥」「滋和堂」)はいずれも予定から外し,残る1店(「フローレンス」)も訪問時間を1時間から20分に削り,他にも予定された2日目の夕食の放棄や見学時間の調整を行っている。 イ本件旅行の費用負担本件旅行の費用は,参加者1人あたり5万9800円であるところ,この費用はN製陶が全額負担することになっていた。この5万9800円には航空運賃,食事,宿泊費を始めとするツアー料金全額が含まれていた。 自己負担金3万円は,旅行費用とは別に,オプションとしての飲食代やショー見物の入場料等の個人的,遊興的な出費に充てるものとして,あらかじめ集金していたおいたものであり,旅行費用 額が含まれていた。 自己負担金3万円は,旅行費用とは別に,オプションとしての飲食代やショー見物の入場料等の個人的,遊興的な出費に充てるものとして,あらかじめ集金していたおいたものであり,旅行費用とは全く別個に本来的に個人で負担するのが当然の金員である。 自己負担金の返却について,従業員に配布した「1994年度N製陶研修旅行のお知らせ」に旅行代金と同様に記載したのは,会社としてオプションへの参加が突然キャンセルされることを防止するためにとった措置であって,自己負担金の使用目的が旅費の半額を参加者に負担させることにあったからではない。 ウ旅行への参加・不参加の自由,旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱い本件旅行の周知については,本件旅行の担当者の1人であるN製陶生産第三課長のA課長が朝礼の席上行い,また,朝礼やミーティングなどでは,各職場の上司から部下に対して,必ず本件旅行に参加するように指示がなされている。また,本件旅行の出欠の確認については,N製陶各課で行っている。 旅行参加者は,N建材工業のグループ企業の研修旅行であるとして会社からも個別に参加を指示されたため,これに参加しており,従業員の本件旅行への参加は,任意ではなく強制されていたことは明らかである。 旅行当日の賃金の扱いについて,1泊2日であった平成5年までは,月給社員については有休,日給社員については無休という扱いをしていたが,本件旅行は2泊3日になって従前より長期になった上,その日程に2日の平日が含まれるため,本件旅行に先立ち,N社長の指示により,月給社員,日給社員の区別なく,参加者には給料を支給することとした。そのため,本件旅行に参加した者は旅行当日出勤扱いとして賃金を支給された反面,不参加者は欠勤扱いとされて賃金が支給されなかった。 会社は,研修旅行については,従 加者には給料を支給することとした。そのため,本件旅行に参加した者は旅行当日出勤扱いとして賃金を支給された反面,不参加者は欠勤扱いとされて賃金が支給されなかった。 会社は,研修旅行については,従前から労務管理の一環として積極的に推進していた。そして,従業員は職場の上司でもあるこれら研修旅行担当者から参加を指示され,参加しない者は欠勤扱いとなるので昇級及びボーナス算定面で不利益を受ける扱いであった。したがって,慰安旅行として社員旅行が行われる場合と比べて,本件旅行については参加しない自由がより制約されていた。 (被告の主張)(1) 業務性の判断基準本件旅行への参加が業務行為と認められるか否かは,旅行の主催者,目的,内容,経過,参加方法,運営方法,費用の負担等について総合的に判断して決すべきものである。 業務遂行性にいう業務とは,あくまでも労働者が労働契約の本旨に従って事業主の支配下において従事する諸行為を対象とするものであり,労働者の従事すべき業務の範囲は労働契約等によっておのずから予定されているのであるから,通常予定される範囲を超えた行為については,事業主の業務命令があれば格別,それがない以上,業務遂行性を肯定する余地はない。労働契約等によって通常予定されていない行為について業務遂行性が認められるのは例外的な場合であるから,当該行為が事業運営上緊要なものと認められ,労働者に対して参加が強制されている場合に限り業務行為と認定すべきものと解すべきである。 原告が主張する緩和された判断要件を用いるならば,研修旅行と名乗ればほとんどの社員慰安旅行における災害が業務上災害となりうる結果となり,社員慰安旅行における災害が他の本来の業務上災害と同一内容の給付を受ける状況が発生することとなるが,このような不合理な扱いは到底社会的理解が得られる 旅行における災害が業務上災害となりうる結果となり,社員慰安旅行における災害が他の本来の業務上災害と同一内容の給付を受ける状況が発生することとなるが,このような不合理な扱いは到底社会的理解が得られるものではない。 (2) 本件旅行の性格ア本件旅行の企画,立案,目的平成5年12月上旬ころ,Nセラミックスの代表取締役でもあるN社長は,同社工場長であるBに対し,平成6年度の社員旅行について,所要日数3日間,予算額1人6万円くらいで計画するように指示をした。指示を受けたBは,J観光から取り寄せた資料により,他の担当者と検討した結果,行き先を台湾と決定し,N社長に報告した。 台湾への旅行は,J観光がツアー5周年を記念して企画した「あったかランド台湾」のスケジュールの一部にD磁器工場見学を組み込んだものである。 台湾への旅行は,当初Nセラミックスの旅行として計画されたが,その後,N社長は,N製陶の旅行も台湾が良いと判断するに至り,最終的に,Nグループ関連企業5社を2班に分け,N製陶の従業員は第一班として,平成6年4月24日から26日までの日程の本件旅行に参加することとなった。 本件旅行の目的は,参加者に海外旅行の楽しさ等を経験させること及びよい思い出を作る等,主に従業員の親睦を深めることを中心とし,加えてタイル工場の視察等の研修的な側面も含むものとして企画,立案されたものである。 本件旅行の日程と,純然たる観光旅行である「あったかランド台湾」のスケジュールを比較すると,主に日程2日目の夕食をD磁器主催の夕食会(所要時間約2時間30分)へ変更し,3日目のD磁器タイル工場の視察(所要時間約1時間20分)を加えたものであるにすぎない。 これらの他,最終スケジュールに追加されたものは,圓山大飯店,竜山寺,中華工芸館及び新竹ハイテク工業団地であるが 目のD磁器タイル工場の視察(所要時間約1時間20分)を加えたものであるにすぎない。 これらの他,最終スケジュールに追加されたものは,圓山大飯店,竜山寺,中華工芸館及び新竹ハイテク工業団地であるが,中華工芸館訪問の目的はショッピングとされており,新竹ハイテク工業団地は車窓からの見学にすぎないものである。 本件旅行の行程全体をみると,観光地の見学等の比重が圧倒的に高く,研修効果を期待した行程が一部組み入れられてはいるものの,それは付随的なものに過ぎないのであって,本件旅行の中心的な性格は観光旅行にすぎない。 イ本件旅行の費用負担本件旅行に関しては,参加者から自己負担金として3万円を徴収することとされていた。自己負担金の使用目的は,「1994年度N製陶研修旅行のお知らせ」に「30日前からキャンセル料金がかかりますので,自己負担金の3万円は出発日まで31日以上あるときは返しますが,30日以内の時は払い戻しはしません」と記載されていることからすれば,当該自己負担金はキャンセル料金のかかる旅行代金の一部を負担するものであり,それゆえキャンセルの場合の取扱いを上記「お知らせ」に記載したものと解するのが自然である。 原告が主張するように自己負担金が個人的,遊興的な出費に充てるものであるとするならば,キャンセル料としての取扱いをすることは不合理であり,むしろ,そうであるならば,参加者についても後日の精算が予定されなければならないが,そのような予定はなかった。 また,自己負担金3万円の他,パスポート取得のため必要な費用として1万1250円も個人負担となっている。 このように,参加者に相当額の負担金があることに照らしても,会社の業務としての旅行とは異なるものであった。 ウ旅行への参加・不参加の自由,旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱いN製陶では ている。 このように,参加者に相当額の負担金があることに照らしても,会社の業務としての旅行とは異なるものであった。 ウ旅行への参加・不参加の自由,旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱いN製陶では,A課長が平成6年1月下旬の朝礼で従業員に対し,4月ころ台湾に行く旨本件旅行の実施について説明し,「1994年度N製陶研修旅行のお知らせ」が各従業員に配布され,日程・行き先・負担金等の周知がされた。この「お知らせ」に,日程等の他,「締め切り2月10日」とする記載があるとおり,本件旅行への参加は,各従業員に出張命令としてなされたものではなく,旅行参加の募集ということで周知が図られたものである。 N製陶の従業員中,本件旅行の参加者は29名であり,不参加者は13名であった。不参加者が多数にのぼるのは平成4年,5年の旅行も同様である。不参加者の不参加の理由の中にはやむを得ない理由が認められない者もいる。 本件旅行に参加しなかった者は,従来から参加しないことにより会社から不利益な扱いを受けたことはなく,社員旅行に参加を強制されたこともなく,むしろ,本件旅行に関しては,旅費の一部負担があることから,参加については比較的自由であると思っていた旨述べている。 このように,本件と同様の社員旅行に参加するか否かは従来から比較的自由であったことや,本件旅行には,N製陶の従業員の約3分の1の者が参加していない事実からしても,参加が強制された旅行ではなかったというべきである。 本件旅行の旅行日について参加者は全て出勤扱いとされ,賃金も所定の額が支払われている体裁が整えられている。しかし,平成4年と5年の旅行についても,旅行期間は出勤表では出勤と扱われているにもかかわらず,給料台帳では賃金が支払われておらず,結局,旅行日は欠勤として扱われているのであり,本件旅行につい いる。しかし,平成4年と5年の旅行についても,旅行期間は出勤表では出勤と扱われているにもかかわらず,給料台帳では賃金が支払われておらず,結局,旅行日は欠勤として扱われているのであり,本件旅行についてあらかじめ過去の旅行の取扱いと異なる扱いをしたような事情も窺われないことなどからすれば,本件旅行について旅行参加者が出勤扱いされているのは,本件事故後にN社長が経理担当職員に指示したことによるものであり,本件事故がなければ特別の指示はなく,過去の旅行と同様欠勤として処理されたものと考えられる。 第3 争点に対する判断 1 本件旅行の企画,立案,目的について(1) 前記争いのない事実及び証拠(略)によれば,本件旅行は,J観光が企画した,既成の観光パッケージツアーである「あったかランド台湾」を土台として利用し,これに一定の変更を加えたものであり,本件旅行と別紙あったかランド台湾日程表のスケジュールを比較すると,「あったかランド台湾」から,2日目の「芸祥」(掛け軸・民芸品の店)「滋和堂」(中国漢方薬の店)が削除され,1日目に「圓山大飯店」(ホテル),2日目に「竜山寺」(台北市最古の中国寺)「中華工芸館」が,3日目に「D磁器工場見学」「新竹ハイテク工業団地」が追加されたほか,原告が前記争点欄において主張するとおり,いくつかの訪問先の時間が変更されていることが認められる。 (2) 原告は,上記のとおりの見学先や日程の変更等は,本件旅行が観光や慰安を主たる目的とするものではなく,研修を目的とすることを示すものである旨主張するので検討してみると,以下の問題点を指摘することができる。 ア証拠(略)によれば,本件旅行における訪問先は,「D磁器工場見学」と「新竹ハイテク工業団地」を除けば,いずれも「あったかランド台湾」以外の多くの観光ツアーにおいても訪問先に取 することができる。 ア証拠(略)によれば,本件旅行における訪問先は,「D磁器工場見学」と「新竹ハイテク工業団地」を除けば,いずれも「あったかランド台湾」以外の多くの観光ツアーにおいても訪問先に取り上げられており,これらは台湾における主要な観光場所であると認められる。 これらの観光場所に施工された自社製品の利用状況を見学させたり,陳列されている陶磁器の名品等を鑑賞させることにより,従業員の愛社精神を高揚させ,周辺知識や教養の向上を図ることは,観光や慰労という以上の効果をもたらすものではあるが,その程度の見学等をもって,直ちに業務性のある研修行為と評することは困難である。 イまた,原告が,研修を目的として新たに追加したと主張する「中華工芸館」の訪問目的についてみるに,平成6年3月4日付け「N製陶研修旅行予定表」(略)には,「中華工芸館(みやげ買物)」と記載され,また「研修旅行予定表」(略)には,「中華工芸館(ショッピング)」と記載されており,原告主張の研修目的は一切記載されておらず,むしろ土産物のショッピング先として記載されていることが認められる。そして,このように訪問先として追加された「中華工芸館」の訪問目的が買物であるとすれば,別に買物コースとして予定されていた「芸祥」「滋和堂」の訪問を取りやめ,免税店である「フローレンス」の訪問時間を削ったからといって,それが研修目的を重視する趣旨でなされたことを裏付けることには必ずしもならない。 ウ A課長が作成した本件旅行の計画書(略)によれば,本件旅行の目的は「1海外旅行の経験の無い人,または,少ない人ばかりなので,海外旅行の楽しさ,手軽さ,身近さを知ってもらい今後個人で家族で行けるようになればと思う 2D磁器の新しいタイル工場の視察 3海外でのNタイルの現場視察 4免税店でのショッピン ない人ばかりなので,海外旅行の楽しさ,手軽さ,身近さを知ってもらい今後個人で家族で行けるようになればと思う 2D磁器の新しいタイル工場の視察 3海外でのNタイルの現場視察 4免税店でのショッピング 5故宮博物館で中国4千年の文化見学」とあり,その中には研修目的に合致するものもある(上記2・3)が,同じくA課長が作成し,従業員に配布された平成6年2月2日付け「1994年度N製陶研修旅行のお知らせ」と題する書面(「お知らせ」)では,「海外旅行の,楽しさ・手軽さ・身近さを経験し,みんなで楽しく・よい思い出にしましょう。」と記載されているのみで,研修目的を窺わせる記載はなく,従業員に対して本件旅行が研修を主たる目的とする旨の説明がなされ,その周知が図られていたとは認められない。。 エ証拠(略)によれば,本件旅行の訪問先のうち,D磁器工場については,同社がN製陶などNグループの各会社と同じく食器・タイル製造を目的としており,N建材とは業務提携関係にあり,また,Nグループ各社との人材交流もあるのであって,N製陶の業務との関連性は強く,純粋に研修目的の訪問先であったと認められる。 しかしながら,全部で2泊3日の本件旅行の日程中,D磁器工場の訪問に割り振られた時間は,当初の計画では約1時間に過ぎず,実際に同工場に滞在した時間は2時間15分,また工場見学に要した時間は1時間20分から1時間50分程度と認められるが,本件旅行全体の日程の中ではそれほど長時間を占めたものではなく,他の観光地の訪問と比べて,これが本件旅行の中心的目的をなすものであったとは認められない。 また,新竹ハイテク工業団地訪問は,一応研修を目的とするものと解されるが,その内容は車窓から工業団地を見るにとどまるものであって,研修目的としても付随的なものといわざるを得ない。 オ証拠(略 い。 また,新竹ハイテク工業団地訪問は,一応研修を目的とするものと解されるが,その内容は車窓から工業団地を見るにとどまるものであって,研修目的としても付随的なものといわざるを得ない。 オ証拠(略)によれば,平成4年,5年の「研修旅行」は1泊2日の日程で国内(平成4年は高知,平成5年は奈良・大阪)で行われたことが認められるが,主な訪問先は,平成4年は観光地として龍河洞,桂浜,高知城,かずら橋,大歩危,現場視察は追手筋歩道と高知中央公園のタイル施工現場,平成5年は観光地として長谷寺,薬師寺,法隆寺,大阪城,吉本会館(吉本新喜劇),現場視察は大阪城ホール,クリスタルタワー,ツインタワーとされており,いずれの場合も,現場視察とされるものを考慮に入れてみても,一般の観光,慰安旅行の範ちゅうを出るものではないと解される。そして,これらに続き平成6年に企画された本件旅行に至って,従来の社員旅行の基本的な趣旨目的が変更されたことを窺わせるほどの事情は見当たらない。 (3) 以上,アないしオに指摘した諸点に照らしてみると,本件旅行の主たる目的は観光及び慰安にあると解され,研修を中心とした旅行であると認めるのは困難である。 2 本件旅行の費用負担について前記「お知らせ」及び弁論の全趣旨によれば,本件旅行においては,参加者から3万円を「自己負担金」として徴収していたこと,この自己負担金について,「お知らせ」には,「30日前からキャンセル料金がかかりますので自己負担金の30,000円は出発日まで31日以上あるときは返しますが,30日以内のときは払い戻しはしません。」と記載されていることが認められる。 原告は,上記の自己負担金を徴収した目的について,オプションとしての飲食費や,ショー見物の入場料等の個人的,遊興的な出費に充てるものであり,これらへの参加の 。」と記載されていることが認められる。 原告は,上記の自己負担金を徴収した目的について,オプションとしての飲食費や,ショー見物の入場料等の個人的,遊興的な出費に充てるものであり,これらへの参加のキャンセルを防止し,旅行後の精算を予定していたものであると主張する。 しかし,原告の上記主張の趣旨は「お知らせ」の文面上からは全く窺うことはできないうえ,旅行自体のキャンセルを防止するというのでもなく,オプション参加のキャンセル防止だけを図るというのも甚だ不自然であること,3万円はオプションのキャンセル料としてはいかにも高額に過ぎると解されること,また,それほどのキャンセル料によってオプション参加のキャンセルを防止しなければならない合理的な理由は見当たらないこと,これらの諸点に照らしてみれば,原告の上記の主張内容は不合理であって採用することが困難というべきである。 上記の検討に加え,証拠(略)によれば,平成4年,5年の旅行においては,旅行会社に支払われる旅行代金の他,諸雑費まで含めて全額を会社が福利厚生費として負担していたこと,本件旅行については,旅行開始日の前日から遡って30日前以降に旅行をキャンセルする場合には,J観光に対して規定のキャンセル料を支払わなければならない約定であることが認められ,参加を予定していた者が参加をキャンセルした場合に,自己負担金を会社が取得する合理的理由はないことからすれば,上記の自己負担金は,旅行代金,諸雑費の一部として徴収されたもので,参加予定者がキャンセルした場合には,この自己負担金をもって,旅行会社に支払うキャンセル料に充てられることになっていたものと推認するのが相当である。 3 旅行への参加・不参加の自由,旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱い(1) 旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱いについてこの点につい セル料に充てられることになっていたものと推認するのが相当である。 3 旅行への参加・不参加の自由,旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱い(1) 旅行日の出勤・欠勤及び賃金の取扱いについてこの点についてN製陶における従前の取扱いをみてみるに,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,同社の従業員には月給社員と日給社員が存在する(被災者Z4及びZ5は月給社員,被災者Z1,Z3及びZ6は日給社員)が,平成4年,5年の研修旅行の際には,日給社員に対しては,有給休暇取得者を除いて,旅行参加者に対して旅行日の賃金は支払われていないこと,月給社員については,旅行参加者は出勤扱いされる一方,不参加者は有給休暇を取得しない限り欠勤扱いとされたものと認められる。 これに対して,本件旅行日における賃金の取扱いについてみるに,N社長の陳述書には,日給社員,月給社員ともに参加者は出勤扱いをして賃金を支給した旨の原告の主張に沿う記載があり,また,出勤表や給料明細書によっても,旅行参加者について,日給社員,月給社員を区別せず,日曜日である4月24日も含めて全て出勤扱いとし,日給社員に対しては旅行日3日分の賃金が支払われていることが認められる。 しかしながら,上記の取扱いについて,N社長の前記陳述書では,旅行に先立って従前の取扱いを変更するよう経理課長に指示した旨の供述記載となっているが,一方,同社長は労働基準監督官に対しては,賃金の取扱いは従来どおりであると供述しており,また,証人尋問においては,曖昧な供述をするに止まっていること,旅行日が有給扱いになるのであれば,従前よりも旅行に参加しやすくなるのであるから,従業員に対してもその旨の周知がなされるものと考えられるところ,そのような周知がなされた経緯があるとは窺われないこと,従業員のCは,本件事故後にN社長の指示により 行に参加しやすくなるのであるから,従業員に対してもその旨の周知がなされるものと考えられるところ,そのような周知がなされた経緯があるとは窺われないこと,従業員のCは,本件事故後にN社長の指示により旅行参加者について有給扱いとしたと述べていること,これらによってみれば,N社長の前記陳述書の記載部分は信用することができず,旅行参加者について一律に出勤扱いとする措置がとられたのは,本件事故の後,同社長が指示したことによるものと認めるのが相当である。 (2) 旅行への参加・不参加の自由証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,本件旅行は,平成6年1月下旬の朝礼で,A課長から従業員に説明されるとともに前記「お知らせ」が配布されたこと,この「お知らせ」には,「締め切り 2月10日」との記載があるが,この記載は本件旅行への参加にあたって参加者が参加を申し込むための期限を記載したものと解するのが自然であること,本件旅行に参加した者はN製陶の従業員42名中29名で,不参加者の占める割合は約31%の高率にのぼり,平成4年,5年のそれも,給料台帳によって計算してみると,それぞれ不参加率が約39.6%と43. 75%であって,同様に高率であること,本件旅行に参加しなかった者の不参加理由は,必ずしもやむを得ない理由によるものではないこと,そして,不参加者に対する参加の働きかけが,研修旅行であることを理由として,可能な限り参加を促すような態様によって行われた形跡は見当たらず,従業員らも本件旅行への参加が強制的なものとは捉えていなかったと窺われること,以上の諸点が認められ,これらによれば,従業員らに対して,本件旅行が業務の一環としての研修旅行であって,参加を義務づけられるものであるとの周知,伝達はなされてはおらず,その参加,不参加は,従業員らの自由意思に任され,参加が強 によれば,従業員らに対して,本件旅行が業務の一環としての研修旅行であって,参加を義務づけられるものであるとの周知,伝達はなされてはおらず,その参加,不参加は,従業員らの自由意思に任され,参加が強制されていたものとは認められない。 4 以上に認定したように,①本件旅行の主たる目的は観光及び慰安にあること,②本件旅行においては1人あたり3万円の高額な自己負担金があること,③前年度までの社員旅行では,日給社員については旅行の参加,不参加にかかわらず無給の扱いをするものとされており,本件旅行についても旅行の時点では,その取扱いは変更されていなかったこと,④従業員中,不参加者の占める割合が相当高く,その中には不参加のやむを得ない理由が認められない者も少なくないこと,⑤本件旅行への参加,不参加は従業員に任されて,参加について特段の強制もなされていなかったこと,これらの諸事情を総合して勘案してみると,本件旅行はN製陶の業務として行われたものとは解し難く,従って,被災者らの本件旅行への参加については業務遂行性が認められず,同人らの本件事故による死亡を,労災保険法所定の業務上の事故による死亡と認めることはできない。 原告は,前記争点欄(原告の主張)(1)記載のとおり,我が国の雇用関係の実情からすれば,従業員は事業主の主催する社員旅行に事実上参加せざるを得ないのであるから,このような場合にも業務性を認めるべきであると主張するが,前判示のとおりの本件旅行の実態に鑑みると,これをも業務の範囲に含めて解することは困難というべきであって,労災保険事業の趣旨及びその運営基盤に照らしても,そのような解釈が相当であるとは解されない。 5 結論以上によれば,本件各処分は適法であって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき 基盤に照らしても,そのような解釈が相当であるとは解されない。 5 結論以上によれば,本件各処分は適法であって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第1部裁判長裁判官中村直文裁判官末永雅之裁判官加藤靖旅行日程表4月24日(日曜日)7:00観光バスでN製陶を出発8:00名古屋空港到着9:20中華航空CI-141便に搭乗11:20台湾中正国際空港着,専用車で台北市内観光13:30~14:30忠烈祠14:45~15:30圓山大飯店最上階15:50~16:30保安宮,孔子廟16:50中泰賓館(マグノリアホテル)着18:30~21:00夕食,フーバーショウ21:30~23:00中泰賓館 2次会4月25日(月曜日)7:00~8:00ホテルレストランにて朝食8:30専用車で台北市内観光総統府,竜山寺9:40~10:10中正紀念堂10:20~10:40フローレンス10:50~11:40中華工芸館12:00~13:00昼食(中華川菜レストラン)13:30~15:30故宮博物院16:30中泰賓館着18:15~20:00夕食(三徳ホテル3階)20:15~23:00中泰賓館 2次会4月26日(火曜日)8:00専用バスにてホテル出発9:30~10:30D磁器タイル工場視察11:00新竹ハイテク工業団地12:00~12:30小人国12:30~13:30昼食(飲茶レストラン)14:00中正国際空港14:30チェックイン16:20免税店ショッピング16:50中華航空CI-140便 12:00~12:30小人国12:30~13:30昼食(飲茶レストラン)14:00中正国際空港14:30チェックイン16:20免税店ショッピング16:50中華航空CI-140便出発20:20名古屋空港到着20:50入国観光バスで名古屋空港出発22:00N製陶着解散あったかランド台湾日程表1日目9:20中華航空CI-141便に搭乗11:50台湾中正国際空港着,専用車で台北市内観光14:00~14:45孔子廟,保安宮15:00~15:30忠烈祠ホテル着17:30ホテル発「東楽レストラン」で夕食ホテル着2日目9:00ホテルレストランで朝食車窓から総統府9:30~10:20中正紀念堂10:30~11:30フローレンス11:50~12:50昼食(中華川菜レストラン)13:10~14:20芸祥14:50~16:10故宮博物院16:40~17:30滋和堂ホテル着18:30~ホテル内「天然亭レストラン」で夕食3日目9:00ホテルレストランで朝食10:30~12:10小人国13:00~14:30昼食(禾家レストラン)・両替中正国際空港16:50中華航空CI-140便出発20:20名古屋空港到着
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