平成27年2月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第28089号特許権侵害行為差止等請求事件(口頭弁論終結の日平成26年12月15日)判決名古屋市<以下略>原告有限会社宝石のエンジェル東京都豊島区<以下略>被告 A東京都台東区<以下略>被告石福ジュエリーパーツ株式会社 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求1(1) 被告Aは,別紙1「物件目録」記載の製品を製造し,又は販売してはならない。 (2) 被告Aは,上記(1)の製品及び同製品の金型を廃棄せよ。 2(1) 被告石福ジュエリーパーツ株式会社は,別紙1「物件目録」記載の製品を販売してはならない。 (2) 被告石福ジュエリーパーツ株式会社は,上記(1)の製品を廃棄せよ。 3 被告らは,原告に対し,2億1180万2595円(被告Aは1億6254万1595円,被告石福ジュエリーパーツ株式会社は4926万1000円)及びこれに対する平成27年2月23日(本判決言渡の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「装飾品鎖状端部の留め具」とする特許権の特許権者である原告が,被告A(以下「被告A」という。)の製造・販売し,被告石福ジュエリーパーツ株式会社(以下「被告石福ジュエリー」という。)の販売する別紙1「物件目録」記載の商品名の製品(以下「被告製品」とい る原告が,被告A(以下「被告A」という。)の製造・販売し,被告石福ジュエリーパーツ株式会社(以下「被告石福ジュエリー」という。)の販売する別紙1「物件目録」記載の商品名の製品(以下「被告製品」という。 なお,被告Aの製造・販売に係る被告製品の製品番号,被告石福ジュエリーの販売に係る被告製品の製品番号は,それぞれ,別紙2「被告製品の製品番号目録(各被告が製造又は販売する製品番号の対応)」の「被告A製品番号」欄,「被告石福ジュエリー製品番号」欄に記載のとおりであり,被告製品の製品番号は必ずしも各被告で共通しない。)が同特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,①特許法100条1項及び2項に基づき,被告Aに対しては,被告製品の製造及び販売の差止め並びに同製品及びその金型の廃棄を,被告石福ジュエリーに対しては,被告製品の販売の差止め及び廃棄を,それぞれ求めるとともに,②被告らに対し,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金(特許法102条1項による損害額)2億1180万2595円(被告Aは1億6254万1595円,被告石福ジュエリーは4926万1000円)及びこれに対する平成27年2月23日(第一審判決である本判決言渡しの日)から支払済みまでの年5分の割合による法定利息(原告は,損害賠償金に対する遅延損害金ではなく,法定利息の支払を求めているが〔平成26年6月26日付け準備書面7〕,その理由は明らかでない。)の支払を求めた事案である。 2 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者ア原告は,宝石及び貴金属の小売業を営む特例有限会社である。 イ被告石福ジュエリーは,宝飾品パーツ及び装身具の製造加工並びに売買等を業とする株式会社であり,被告Aは,Bの屋号で,宝飾品パーツ及び装身具の製造,販売業を営む者 売業を営む特例有限会社である。 イ被告石福ジュエリーは,宝飾品パーツ及び装身具の製造加工並びに売買等を業とする株式会社であり,被告Aは,Bの屋号で,宝飾品パーツ及び装身具の製造,販売業を営む者である。 (2) 原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)(甲1)。 特許番号特許第4044598号発明の名称装飾品鎖状端部の留め具出願番号特願2006-528955出願日平成17年6月30日国際出願番号PCT/JP2005/012535国際公開番号WO2006/006476国際公開日平成18年1月19日優先権主張番号特願2004-206769優先日平成16年7月14日優先権主張国日本国登録日平成19年11月22日(3) 本件特許に係る特許請求の範囲(以下,本件特許に係る明細書及び図面と併せて「本件明細書」といい,参照の便宜のため,本件特許に係る特許公報の写し〔甲1〕を本判決末尾に別添1として添付する。なお,本件明細書に係る記載を示す場合,同公報の頁数,行数で摘示することとする。)における請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,同請求項に記載の発明を「本件発明」という。)。 「装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって,前記ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に,互いに吸着する磁石の各一方を,あるいは磁石とこれに吸着される金属材を,それぞれ吸着部材として設けた装飾 留め具であって,前記ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に,互いに吸着する磁石の各一方を,あるいは磁石とこれに吸着される金属材を,それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において,前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり,前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止され る係止部材であり,かつ,前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着部材を設け,前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設けた装飾品鎖状端部の留め具。」(4) 本件発明の構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,それぞれ次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」などという。)。 A 装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーとB 他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって,C 前記ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に,互いに吸着する磁石の各一方を,あるいは磁石とこれに吸着される金属材を,それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において,D 前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり,E 前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり,F かつ,前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着部材を設け,G 前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設けた装飾品鎖状端部の留め具。 (5) 本件特許の出願経過ア本件特許に係る出願(特願2006-528955)は,平成17年6月30日(優先日:平成16年7月14日)にされたものであるが,特許庁審査官は,平成19年1 具。 (5) 本件特許の出願経過ア本件特許に係る出願(特願2006-528955)は,平成17年6月30日(優先日:平成16年7月14日)にされたものであるが,特許庁審査官は,平成19年10月11日(起案日)付け拒絶理由通知書(以下「本件拒絶理由通知書」という。乙27)により,出願人たる原告に対し,その出願前(優先日前)に頒布された刊行物である実用新案登録第 3000073号公報(以下「引用文献1」又は「文献1」という。乙14,乙31),特開平7-177916号公報(以下「引用文献2」又は「文献2」という。乙32)及び特開平10-262715号公報(以下「引用文献3」又は「文献3」という。乙28)を示して,出願当初の請求項1ないし6に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨通知した。 本件拒絶理由通知書の備考欄には,「文献1,2には,ホルダー(文献1,2ではそれぞれ,筒状本体,主部剤)とホルダー受け(筒状本体,従部材)とに吸着部材(磁石,磁石)を設け,正しい噛み合い位置に誘導するようにした装飾品鎖状端部の留め具(装身具用連結金具,磁石式留め具)の構成が記載されており,文献3には,吸着部材(本文献では磁石)を備えた鰐口クリップ(止め金具)の例が記載されている。」との記載(なお,「主部剤」は,「主部材」の誤記と考えられる。)がある。 イ出願人たる原告は,本件拒絶理由通知書を受けて,特許庁に,特許請求の範囲を補正する平成19年10月19日付け手続補正書(以下,同補正書による補正を「本件補正」という。)を提出するとともに,同日付け意見書(以下「本件意見書」という。乙29)を提出して,本件補正の結果,拒絶理由は解消し,本件発明は特許を受けることができる旨の意見を述べた。 本件意見書には,次の )を提出するとともに,同日付け意見書(以下「本件意見書」という。乙29)を提出して,本件補正の結果,拒絶理由は解消し,本件発明は特許を受けることができる旨の意見を述べた。 本件意見書には,次の記載がある。 (ア) 「2.上記の補正では,第1に,補正前の請求項2及び請求項3を削除してこれらの限定事項を請求項1に導入すると共に,補正前の請求項4以降の各請求項の項番号を順次繰り上げた。第2に,請求項3の限定事項を請求項1に導入するに当たり,請求項3に「鰐口クリップの内部に一方の吸着部材を設け」とあった規定を,明細書第4頁第17行の「鰐口クリップの内部(1対の顎部材間)に吸着部材を設け る・・・」の記載及び各図面の開示に基づき,「鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着部材を設け」と,下線部の限定を追加した。」(イ) 「3.従って,今回の補正後の請求項1に係る発明の内容は以下の通りであり(補正部分に下線を付与),その他の請求項も少なくとも請求項1を前提としている。 〔請求項1〕装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって,前記ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に,互いに吸着する磁石の各一方を,あるいは磁石とこれに吸着される金属材を,それぞれ吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具において,前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり,前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり,かつ,前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着部材を設け,前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設けた装飾品鎖状端部の留め 対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり,かつ,前記鰐口クリップの内部における1対の顎部材間に一方の吸着部材を設け,前記係止部材の先端に他方の吸着部材を設けた装飾品鎖状端部の留め具。」(ウ) 「4.引用文献1-3は,「ホルダーとホルダー受けを噛み合わせて係止させる装飾品鎖状端部の留め具で,その各一方に磁石や磁石吸着性金属材を設けたもの」である。しかし引用文献3に開示された止め金具は本発明の「鰐口クリップ」とは構成が本質的に異なり,本発明特有の効果を達成し得ないものである。」(エ) 「5.即ち,本発明は元々,明細書の第2頁第14行~16行に記載したように,「(ネックレスの場合等を考慮して)留め具を構成する1対の係止用部材が,目視や手探りに頼らずに相互に正しい位置に ロケーションされる」ようにすることを目的としている。 このような点から,本発明の「鰐口クリップ」は,「開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の1対の顎部材からなるホルダーの開口状態において,その開口した顎部材間にホルダー受けが嵌入して係止される」点に特徴がある。即ち本発明の鰐口クリップ方式においては,1対の顎部材がホルダー受けの挿入口を構成し,この挿入口がホルダー受けの挿入時に大きく拡径される構成でなければならない。さもなければ上記した本発明の目的は達成されず,鰐口クリップ方式とする意味も失われる。 引用文献3の図1,図2に示す止め金具において,1対の顎部材に相当するロックレバー8は,ホルダー受けに相当する雄側金具2を係止する役目を持つだけで,ホルダー受けの挿入口を構成せず,一方,ホルダー受けの挿入口は固定的な構成であって,開閉は不可能である。 即ち,一見本発明に類似した鰐口クリップ方式に見えるが,本質的に全く異なる。引用文献3の他の図に ルダー受けの挿入口を構成せず,一方,ホルダー受けの挿入口は固定的な構成であって,開閉は不可能である。 即ち,一見本発明に類似した鰐口クリップ方式に見えるが,本質的に全く異なる。引用文献3の他の図に示す止め金具は「鰐口クリップ」とは言い難い構成であり,やはりホルダー受けの挿入口は開閉機能を持たないし,ホルダー受けの挿入口を予め大径に構成するという対策は微小さが要求される装飾品留め具において優れた構成とは言えない。」(オ) 「6.又,引用文献1,2は,単に磁石吸着式の留め具を開示するだけで,本発明のような鰐口クリップ方式の留め具の構成及び効果は全く開示・示唆しないし,これらを引用文献3の止め金具と併せ勘案しても,本発明の装飾品鎖状部端部の留め具に容易に想到できないことは明らかである。」ウその後,本件補正後の特許請求の範囲記載の発明につき,特許査定がされ,本件特許権は登録に至った。 (6) 被告らの行為ア被告Aは,業として,被告製品の製造・販売をしており,被告石福ジュエリーは,卸売問屋として,小売店等に被告Aの製造に係る被告製品を販売している(甲2の1・2,3,弁論の全趣旨)。 なお,前記1のとおり,被告Aの製造・販売に係る被告製品の製品番号,被告石福ジュエリーの販売に係る被告製品の製品番号は,それぞれ,別紙2「被告製品の製品番号目録(各被告が製造又は販売する製品番号の対応)」の「被告A製品番号」欄,「被告石福ジュエリー製品番号」欄に記載のとおりである。 イ被告製品のうち,別紙2「被告製品の製品番号目録」番号1(MAG-CR302)(甲7),同番号7(MAG-CR304)(甲6),同番号10(MAG-CR305)(甲5)についての構成は,別紙3「被告製品の構成」に掲げた図面に記載のとおりである(争いがない) G-CR302)(甲7),同番号7(MAG-CR304)(甲6),同番号10(MAG-CR305)(甲5)についての構成は,別紙3「被告製品の構成」に掲げた図面に記載のとおりである(争いがない)。 なお,被告製品を構成する各部材の外観・形状は,製品番号によって若干異なる場合があるが,各部材の機能・構造は,実質的に異ならないことから,以下,被告製品を構成する各部材を,別紙3「被告製品の構成」記載の符号に従い,「部材ア」などという(同別紙記載の製品番号以外の被告製品についても,同別紙の例による。)。 3 争点(1) 被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)被告製品の各部材の外観・形状は,製品番号によって異なる場合があるが,各部材の機能・構造は,実質的に異ならない(前記前提事実(6)イ)から,被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かを判断するためには,別紙3「被告製品の構成」のうち,「①被告製品目録番号1(MAG-CR302)について」に記載された構成が,本件発明の構成要件を充足するか否かを検討すれば足りるというべきであり,被告製品の部材エが本件発明におけ る「ホルダー受け」に相当することは,争いがないから,以下の点が主要な争点である。 ア被告製品における部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カの集合体は,本件発明の「ホルダー」(構成要件A)といえるか(争点1-ア)イ被告製品は「噛合わせて係止する」(構成要件B)方式の留め具といえるか(争点1-イ)ウ被告製品の「ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に」(構成要件C)に磁石が吸着部材として設けられているか(争点1-ウ)エ被告製品において本件発明の「ホルダー」に該当する部分は,本件発明の「鰐口クリップ」(構成要 噛合い位置に誘導できる部位に」(構成要件C)に磁石が吸着部材として設けられているか(争点1-ウ)エ被告製品において本件発明の「ホルダー」に該当する部分は,本件発明の「鰐口クリップ」(構成要件D)といえるか(争点1-エ)オ被告製品のホルダー受け(部材エ)は,顎部材(部材ア及び部材イ)間の中に「嵌入して」,「係止される係止部材」(構成要件E)といえるか(争点1-オ)カ被告製品が適用される装飾品は「鎖状部」(構成要件A,B,C,G)を有するか(争点1-カ)(2) 原告の損害額(争点2)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 争点1-ア(被告製品における部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カの集合体は,本件発明の「ホルダー」(構成要件A)といえるか)について[原告の主張]ア本件発明にいう「ホルダー」は,本件明細書によれば,任意の形態の噛み合わせにより留め具の係止を行うと共に,その噛み合わせの解除により留め具の係止状態を開放する機構であり,鰐口クリップが特に好ましいと されている。 被告製品においては,部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カからなる集合体が本件発明の「ホルダー」(構成要件A)に当たり,部材エが「ホルダー受け」(構成要件A)に当たる。 イ被告は,顎部材(部材ア及び部材イ)は筐体であると主張するが,「ホルダー」の字義は,つなぐ物又は入れ物であり(甲9),顎部材(部材ア及び部材イ)はひっぱってもつながっている部材であって,ホルダー受け(部材エ)と合体する入れ物であるから「ホルダー」に当たり,被告製品は,構成要件Aを充足する。 [被告らの主張]ア部材カは軸であり,部材オはバネであって,部材ア,部材イ,部材ウ,部 ダー受け(部材エ)と合体する入れ物であるから「ホルダー」に当たり,被告製品は,構成要件Aを充足する。 [被告らの主張]ア部材カは軸であり,部材オはバネであって,部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カの集合体を本件発明の「ホルダー」ということはできない。 イ被告製品における部材ア及び部材イは,上蓋と下蓋をばねで開口,閉口する役割を有するが,「ホルダー」ではなく,単なる筐体である。被告製品において,本件発明にいう「ホルダー」に当たる構成は,磁石(部材エ)の入れ物としての部材ウである。 (2) 争点1-イ(被告製品は「噛合わせて係止する」(構成要件B)方式の留め具といえるか)について[原告の主張]ア 「噛み合う」とは,歯車などで,双方の凸凹の部分がぴったりと組み合わさることでもあるところ,歯車が「噛み合う」とは,Aの凹部分とBの凸部分の形状や大きさが同じことではなく,Bの凸がAに伝われば足りる。 本件発明でいえば,ホルダー受けの溝にホルダーの爪が引っかかれば足りる。また,「合う」の字義は,二つ以上のものが近寄って一つになることでもあり,本件発明でいえば,顎部材の中にホルダー受けが近寄って中に 収まり抜けない状態(=一つになること)である。「係止」とは,係わり止まる事を意味し,「止まる」は固定する意味のほか,動いている状態のものが動かない状態になることも含む。 本件明細書の記載からは,ホルダー受けは,係止するための凸凹があればよく,ホルダー受けのネック部とホルダーの爪が噛み合わせて係止すればよい。 イ被告製品は,ホルダー受け(部材エ)を引っ張っても,顎部材の爪(部材キ)がホルダー受けの溝に引っかかって抜けず,ホルダー受け(部材エ)の凸凹部分に噛み合って係止されているといえ,構成要件Bを充足する。 ウ ホルダー受け(部材エ)を引っ張っても,顎部材の爪(部材キ)がホルダー受けの溝に引っかかって抜けず,ホルダー受け(部材エ)の凸凹部分に噛み合って係止されているといえ,構成要件Bを充足する。 ウ被告らは,ホルダーとホルダー受けの間に隙間があり,接触していないので,噛み合っていないと主張するが,例えば,磁石の力よりロングネックレスの方が重いとき,又は,ロングネックレスを装着しているときに何かにひっかけてしまった場合,ホルダーとホルダー受けは,接触し,隙間はなくなるのであって,隙間がなくなることがある以上,権利侵害していないとはいえない。 [被告らの主張]ア原告も指摘するとおり,被告製品の磁石の入れ物(部材ウ)と筐体(部材ア及び部材イ)の開口部との間にはギャップがあり,ホルダー受け(部材エ)を強く引っ張ると,ホルダー受け(部材エ)がギャップの中を移動するのであって,被告製品は,「噛み合わせて係止」されていない。 イ 「噛む」とは,溝に爪が引っかかる状態をいい,本件明細書のホルダー受け4の全周には溝15がある。これに対し,被告製品では,閉口時の筐体(部材ア及び部材イ)の挿入口の面積を,ホルダー受け(部材エ)の断面積よりも小さくすることで抜けるのを防止するのであり,これを「噛み合う」ということはできない。 ウ被告製品は,磁石で吸着することを基本とし,その磁石同士が外れても,閉口状態の筐体で外れるのを防止するものであるから,ホルダー受けに溝を設ける必要がない。他方,本件発明は,予め爪で噛んでおくことで磁石の吸着状態を保つものであり,被告製品と本件発明とでは,磁石が意図しないときに外れるのを防止するための手段が異なる。本件発明では,ホルダーに爪を設けなければ磁石が外れてしまうため,爪の部分は必須の要件となるが,被告製品 あり,被告製品と本件発明とでは,磁石が意図しないときに外れるのを防止するための手段が異なる。本件発明では,ホルダーに爪を設けなければ磁石が外れてしまうため,爪の部分は必須の要件となるが,被告製品においては不要である。 なお,被告Aは,被告製品について特許出願し,下記のとおり,特許権の設定登録を受けている。 特許番号特許第4838911号発明の名称挿入式クラスプ出願日平成23年6月14日出願番号特願2011-527913登録日平成23年10月7日(3) 争点1-ウ(被告製品の「ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に」(構成要件C)に磁石が吸着部材として設けられているか)について[原告の主張]ア本件発明のホルダー受け(本件明細書における符号4)の凸凹が,ホルダー(同3)の爪(同14)と噛み合い係止できるように,ホルダー(同3)の内部とホルダー受け(同4)の先端に吸着部材が配置されていればよい。 イ被告製品におけるホルダー受け(部材エ)とホルダー(部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カ)は噛み合うように鰐口クリップの内部に磁石があり,ホルダー受け(部材エ)の先端にも磁石が内蔵されているから,構成要件Cを充足する。 [被告らの主張]被告製品の磁石は,パイプ状のホルダー(磁石の入れ物。部材ウ)に内蔵されており,パイプのガイドに沿って吸着するので誘導は不要である。 (4) 争点1-エ(被告製品において本件発明の「ホルダー」に該当する部分は,本件発明の「鰐口クリップ」(構成要件D)といえるか)について[原告の主張]ア被告製品において,本件発明の「ホルダー」に当たる部分は,前述のとおり, 本件発明の「ホルダー」に該当する部分は,本件発明の「鰐口クリップ」(構成要件D)といえるか)について[原告の主張]ア被告製品において,本件発明の「ホルダー」に当たる部分は,前述のとおり,部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カの集合体であって,そのうちの顎部材(部材ア及び部材イ)の軸(部材カ)を支点として,バネ(部材オ)の力により,後端部を閉じる動作をすることにより,先端が開口するから,ホルダーは,開口/閉口可能なバネ閉じ式の鰐口クリップであるといえる。 なお,鰐口クリップとは,本件明細書4頁44行目に通常の洗濯バサミのような基本構成と記載があり,また,同頁47行目から5頁3行目までの記載から鰐口の歯の形や本数まで限定していない。 イ(ア) 被告らは,被告製品のホルダーは,磁石の入れ物(部材ウ)であるから鰐口クリップではない,また,原告は,本件補正により,「ホルダー」が「鰐口クリップ」と補正しており,本件意見書の記載を前提とすると,被告製品が本件発明の技術的範囲に属すると主張するのは禁反言の原則により許されない旨主張する。 しかし,本件意見書に記載のとおり,本件拒絶理由通知書における引用文献3記載の発明は,開口機能がないため,被告製品とは全く異なる。 被告製品における挿入口の「口」とは,内側と外側の境になる所であり,部材アと部材イの先端であって,部材ウではない。部材ウは,部材アと部材イの中にあって外部には出ていない。引用文献3の【図1】の符号5筒体と被告製品の部材ウは同様の形状をしているが,配置や構造 により名称や役割が異なるものであり,引用文献3の【図1】の符号5筒体は挿入口といえるが,被告製品の部材ウは磁石を内蔵する支持部材である。 そして,本件発明においては,支持部材の形状まで限定していないのであり 割が異なるものであり,引用文献3の【図1】の符号5筒体は挿入口といえるが,被告製品の部材ウは磁石を内蔵する支持部材である。 そして,本件発明においては,支持部材の形状まで限定していないのであり,支持部材が筒状になっていても,被告製品における部材アと部材イの中に筒(部材ウ)がある限り,部材ア及び部材イの先端の中でホルダー受け(部材エ)の動きを制限して拘束でき,双方の磁石で誘導し合い,筒に触れることなく,確実に収納できるのであって,筒がないのと同じであるから,「鰐口クリップ」といえる。仮に,筒(部材ウ)が部材ア及び部材イの外に出ているのであれば,ホルダーの挿入口は,筒(部材ウ)の先端になり,部材ア及び部材イが開いても筒(部材ウ)の径の大きさは変わらないので収納しにくく,このようなホルダーを「鰐口クリップ」とはいえないとしても,被告製品は,そのようなものではなく,本件意見書において言及した引用文献3記載の発明とは異なるものである。 (イ) 被告製品においては,部材アと部材イの先端を挿入口にして大きな径とすることで,挿入口に入ったホルダー受け(部材エ)の動きを制限して拘束しやすくし,磁力によって必ず筒(部材ウ)の中にホルダー受け(部材エ)が収納される。つまり,被告製品は,部材アと部材イの中にホルダー受け(部材エ)が入れば,部材エの動きが制限されて鈍くなるので,囲いとしての部材ウがあっても無くても,磁石の性質上,必ず磁力により筒(部材ウ)の中に収納されるのであって,本件発明と同様,目視や手探りに頼らずに相互に正しい位置にロケーションされる構造になっている。 [被告らの主張]ア被告製品における磁石の入れ物(部材ウ)が本件発明の「ホルダー」に 当たるのであって,これは「鰐口クリップ」とはいえない。 また,被告製品における なっている。 [被告らの主張]ア被告製品における磁石の入れ物(部材ウ)が本件発明の「ホルダー」に 当たるのであって,これは「鰐口クリップ」とはいえない。 また,被告製品における筐体(部材ア及び部材イ)がクリップの構成を有しているとしても,「鰐口クリップ」とは,一般的な用語の意味として,端子やリード線を挟んで接続するための本体がむき出しになった形状のクリップで,外観が鰐の口に似ていることがからこの名称があるもので,ジュエリー業界においては一般的ではない。ジュエリー用語事典(乙22)には,「わに口」として「tieclip,・・・タイバーの下部のわにの口状の差込部・・」などとあり,歯があり,何かを噛み合わせる部分を備えるものであるのに対し,被告製品における筐体(部材ア及び部材イ)は「鰐口」を備えていない。 イ原告が,本件補正において補正した内容は,「前記ホルダーが」という主語に対して述語が「鰐口クリップ」であるから,この文言は厳格に解釈されなければならない。すなわち,原告は,本件拒絶理由書における引用文献3記載の発明と本件発明について,引用文献3記載の発明のホルダー受けの挿入口は固定的なので,本件発明とは別である旨を主張しているが,被告製品の挿入口も固定であり,引用文献3と同じ構成である。さらに,原告は,挿入口が大きく拡径される構成でなければならないとも主張するが,部材ウは開かない。被告製品における筐体は,引用文献3の【図1】の符号8ロックレバーと同じと考え,部材ウが引用文献3の【図1】の符号5筒体と考えれば,両者は同じである。 したがって,原告が,本件補正において,「ホルダー」イコール「鰐口クリップ」である旨補正し,本件意見書において,引用文献3記載の発明は本件発明とは異なると主張した一方で,被告製品が本件発 である。 したがって,原告が,本件補正において,「ホルダー」イコール「鰐口クリップ」である旨補正し,本件意見書において,引用文献3記載の発明は本件発明とは異なると主張した一方で,被告製品が本件発明の範囲に属すると主張するのは,自己矛盾であり,禁反言の原則により許されない。 (5) 争点1-オ(被告製品のホルダー受け(部材エ)は,顎部材(部材ア及び部材イ)間の中に「嵌入して」,「係止される係止部材」(構成要件E) といえるか)について[原告の主張]「嵌入」とははめ込むことであり,ぴったり入るとまでは限定していない。 本件発明において,ホルダー受けの形状は限定しておらず,係止するための凸凹があれば足りる。 [被告らの主張]本件明細書の記載によれば,係止部材はネック部で係止されなければならないところ,被告製品におけるホルダー受け(部材エ)にはネック部がなく,「係止される係止部材」とはいえない。また,「嵌入」とはぴったり嵌めることであるから,被告製品ではホルダー受け(部材エ)が嵌入するのは,磁石の入れ物(部材ウ)であり,顎部材間(部材ア及び部材イ)には嵌入していない。 (6) 争点1-カ(被告製品が適用される装飾品は「鎖状部」(構成要件A,B,C,G)を有するか)について[原告の主張]本件明細書には,装飾品としてネックレスが例示されており,「鎖状部」とは,全体として自由に屈曲できる細長い部材を意味し,通常の鎖状の部材に限定されない。 したがって,被告製品は「鎖状部」(構成要件A,B,C,G)を有する。 [被告らの主張]本件明細書においては,「鎖状部」は全体として自由に屈曲できる細長い部材を意味すると記載されているところ,被告製品においては,連接された複数の球状の真珠は自由に屈曲可能に形成されていない。 ]本件明細書においては,「鎖状部」は全体として自由に屈曲できる細長い部材を意味すると記載されているところ,被告製品においては,連接された複数の球状の真珠は自由に屈曲可能に形成されていない。 2 争点2(原告の損害額)について[原告の主張](1) 原告は,磁石入りのロック機能付きクラスプを製造販売し,一種類で毎 月約370個,30万円の利益を上げている(原告の利益単価は,824. 9円である。)。 一方,被告らは,原告が被告製品の販売を知った平成23年2月から現在に至るまで,同製品の製造販売を続けている。 (2) 被告Aについて原告の販売個数と被告製品の種類,一般の売上等から考えると,被告Aによる被告製品の製造販売個数は19万7044個と推認されるから,原告の利益単価を上記(1)のとおりとして,特許法102条1項に基づいて計算すると,1億6254万1595円が原告の被った損害額となる。 (計算式)197,044×824.9=162,541,595(3) 被告石福ジュエリーについて被告石福ジュエリーは問屋であるため,被告石福ジュエリーによる被告製品の販売個数は,被告Aの販売個数の半分である9万8522個と推認されるから,原告の利益単価を500円として,特許法102条1項に基づいて計算すると,4926万1000円が原告の被った損害額となる。 (計算式)98,522×500=49,261,000[被告らの主張]争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 争点1-イ(被告製品は「噛合わせて係止する」(構成要件B)方式の留め具といえるか)及び争点1-ウ(被告製品の「ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に」(構 (1) 争点1-イ(被告製品は「噛合わせて係止する」(構成要件B)方式の留め具といえるか)及び争点1-ウ(被告製品の「ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に」(構成要件C)に磁石が吸着部材として設けられているか)について ア本件明細書の記載本件発明の構成要件Bの「噛合わせて係止する」及び構成要件Cの「正しい噛合い位置」の意義を解釈するため,特許請求の範囲以外の本件明細書の記載を参酌する(特許法70条2項)。 まず,本件明細書によれば,本件発明は,「装飾品鎖状端部の留め具に関する」(2頁7行)ものであり,従来の鎖状部端部の留め具では,「正確な係止が面倒であることに加えて,係止用部材が正確に係止されたことの確認が難しい・・・結果,係止用部材が正確に係止されていない状態でネックレス等を装着してしまい,知らない間にネックレス等を紛失する場合も多かった」(同頁32ないし35行)ことを踏まえて,「鎖状の形態からなり,又は鎖状の形態部分を有する装飾品において,その鎖状部の端部の留め具を構成する1対の係止用部材が,目視や手探りに頼らずに相互に正しい係止位置にロケーションされるようにすること」(同頁37ないし39行)や「1対の係止用部材の正しい係止位置へのロケーションが信号音の発生により確認できるようにすること」(同頁39ないし41行)を目的として発明されたものである,とされている(甲1)。 また,本件明細書には,本件発明の構成及び作用効果に関し,以下の記載がある(甲1)。なお,本件発明は,発明の詳細な説明において「第3発明」と称されている発明(「第1発明」の構成に加えて,「第2発明」で付加された構成を有し,更に「第3発明」で付加された構成を有する。)に相当するものである(このことは,前記前提事 明において「第3発明」と称されている発明(「第1発明」の構成に加えて,「第2発明」で付加された構成を有し,更に「第3発明」で付加された構成を有する。)に相当するものである(このことは,前記前提事実(3),(4)及び(5)イからも,明らかである。)。 (ア) 「本願の第1発明は,装飾品の片方の鎖状部の端部に設けたホルダーと他方の鎖状部の端部に設けたホルダー受けとを噛合わせて係止する方式の留め具であって,前記ホルダーとホルダー受けには,これらを正しい噛合い位置に誘導できる部位に,互いに吸着する磁石の各一方を, あるいは磁石とこれに吸着される金属材とを吸着部材として設けた装飾品鎖状端部の留め具である。」(2頁42ないし46行)(イ) 「第1発明の装飾品鎖状端部の留め具においては,留め具を構成するホルダーとホルダー受けとを大まかに近接位置させるだけで,吸着部材のガイド作用によって,これらが正しい噛合い位置にロケーションされる。吸着部材は,上記ガイド作用に加え,互いに吸着した際に「カチッ」と言う接合音を発する。従って,この接合音を信号音として,ホルダーとホルダー受けとが正しい係止位置にロケーションされたことを確認できる。」(同頁47行ないし3頁1行)(ウ) 「本願の第2発明においては,第1発明に係るホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり,ホルダー受けが前記1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材である。」(同頁11ないし13行)(エ) 「一般的に,第2発明のような鰐口クリップ形式のホルダーは留め具の操作が容易である。例えばネックレスのように装着者の首の後ろで留め具を係止させる装飾品の場合にも,第1発明の効果に加え,ホルダーが鰐口クリップ形式であることに起因して,留め具 式のホルダーは留め具の操作が容易である。例えばネックレスのように装着者の首の後ろで留め具を係止させる装飾品の場合にも,第1発明の効果に加え,ホルダーが鰐口クリップ形式であることに起因して,留め具の係止及び係止解除の操作を一層簡単かつ確実に行うことができる。」(同頁14ないし17行)(オ) 「本願の第3発明においては,第2発明に係る鰐口クリップの内部に一方の吸着部材を設け,係止部材の先端に他方の吸着部材を設けている。 前記した第2発明の鰐口クリップ形式のホルダーにおいては,鰐口クリップを開口させ,そこにホルダー受けである係止部材を嵌入して係止させる。従って,鰐口クリップの内部に一方の吸着部材を設け,かつ係止部材の先端に他方の吸着部材を設ければ,吸着部材のガイド作用とホ ルダーの係止操作が緊密に一体化するため,特に使い勝手が良好である。」(同頁18ないし24行)(カ) 「前記した第3発明の鰐口クリップは,1対の顎部材をバネ閉じ式に開口/閉口させる機構であり,しかも鰐口クリップの内部(1対の顎部材間)に吸着部材を設ける構成である。従って,1対の顎部材の開口時に吸着部材が開口部から突出動作するようにリンク機構を構成すると,突出した吸着部材は係止部材側の吸着部材との吸着が一層容易になる。 そして,係止操作時における吸着部材のガイド作用が特に有効に発現される。」(同頁37ないし41行)(キ) 「ホルダー及びホルダー受けとしては,任意の形態の噛合わせにより留め具の係止を行うと共に,その噛合わせの解除により留め具の係止状態を開放する機構である限りにおいて,その種類及び構造を限定されない。ホルダー及びホルダー受けは,所定の正しい噛合い位置(又は噛合い状態)において留め具の確実な係止が可能なものである。ホルダー及びホルダー受け 機構である限りにおいて,その種類及び構造を限定されない。ホルダー及びホルダー受けは,所定の正しい噛合い位置(又は噛合い状態)において留め具の確実な係止が可能なものである。ホルダー及びホルダー受けには,後述する吸着部材の各一方が設けられる。」(4頁29ないし33行)。 (ク) 「バネ閉じ式の鰐口クリップ及び係止部材とは,少なくとも以下のような構成を備えるものを言う。 即ち,上記のバネ閉じ式の鰐口クリップには,1対の顎部材が基本的に平行に軸支される非交差式(通常の洗濯バサミのような基本構成)のものと,1対の顎部材が交差状に軸支される交差式(例えば,洋バサミのような基本構成)のものとが考えられるが,そのいずれもが本発明の鰐口クリップに包含される。 バネ閉じ式の鰐口クリップは,係止部材の係止用部分を挟着するための1対の顎部材を備える。1対の顎部材は支軸(通常は同一の支軸)によって回動可能に拘束され,これらの顎部材間に設けたバネ手段により 顎部材の先端部(係止部材に対する挟着部)同士が開いた状態から閉じた状態へ移行するように付勢されている。 1対の顎部材の先端部同士が閉じている状態,即ち鰐口クリップが閉口状態にあるとき,基本的に,前記の非交差式の鰐口クリップでは,バネ手段の付勢力に抗して1対の顎部材の後端部を閉じる動作を行わせることにより,鰐口クリップが開口状態となる。一方,前記の交差式の鰐口クリップでは,バネ手段の付勢力に抗して1対の顎部材の後端部を開く動作を行わせることにより,鰐口クリップが開口状態となる。 バネ閉じ式の鰐口クリップは,非交差式の鰐口クリップの例で言うと,顎部材のハンドル部分を手指で摘んで閉じる方向へ回動させることにより,鰐口クリップを開口状態にすることができる。この開口状態において,鰐口クリップを係止 ップは,非交差式の鰐口クリップの例で言うと,顎部材のハンドル部分を手指で摘んで閉じる方向へ回動させることにより,鰐口クリップを開口状態にすることができる。この開口状態において,鰐口クリップを係止部材に対する噛合い位置にロケーションさせた後,手指で摘んでいたハンドル部分を開放すると,鰐口クリップがバネ手段の付勢力によって係止部材に噛合い,留め具の止着がなされる。 係止部材は,開口状態にある鰐口クリップの顎部材間に嵌入可能である適宜な形状と,鰐口クリップの顎部材が確実に噛合うことができる形状の噛合い部分を備えていれば良い。噛合いの確実性を期するために,顎部材の先端部にも一定の適宜な噛合い形状を形成することができる。 なお,係止部材は,後述のように鰐口クリップ側の吸着部材に対応する吸着部材も備える必要があるので,係止部材における上記の噛合い形状部分と吸着部材の設定との関連では,種々の設計上の工夫があり得る。」(同頁41行ないし5頁16行)イ 「噛合わせて係止する」及び「正しい噛合い位置」の意義(ア) 「ホルダー」の字義が「繋ぐ物」,「入れ物」(甲9)であること,本件発明の目的が鎖状部の端部の留め具を構成する1対の係止用部材が,目視や手探りに頼らずに相互に正しい係止位置にロケーションされるよ うにすることであること(前記ア)のほか,本件明細書の前記ア(キ)の記載等を総合すれば,本件発明における「ホルダー」と「ホルダー受け」との「噛合わせ」については,その形態は任意であるが,「噛合わせ」ることにより留め具の「係止」を行い,「噛合わせ」の解除により留め具の「係止」状態を開放する機能を有するものでなければならないと解される。 (イ) 特許請求の範囲を含む本件明細書には「噛合わせて」や「噛合い」についての明確な定義は見当たらない の解除により留め具の「係止」状態を開放する機能を有するものでなければならないと解される。 (イ) 特許請求の範囲を含む本件明細書には「噛合わせて」や「噛合い」についての明確な定義は見当たらないところ,「噛み合う」の字義が「歯車などで,双方の凹凸の部分がぴったりと組み合わさる」(甲10)などとされていること,「装身具用連結金具」の考案に関する引用文献1(乙14,31)には,「係合片6,8の係合のための形状も直線的な波形のみならず曲線的な波形,波形と周方向の線との組み合わせ,その他両者が噛み合う形状であれば特に限定されるものではない。」(【考案の詳細な説明】の段落【0011】)と記載されていること,「装身具用留金」の発明に関する特開平10-179219号公報(乙15)には,「前記凸部及び前記凹部は,相互に噛み合う鍵状の形状であることを特徴とする」(特許請求の範囲の【請求項3】)発明が開示され,「これらの凸部及び凹部は,相互に噛み合う鍵状の形状とされている。」(【発明の詳細な説明】の段落【0010】)と記載されていること,「装身具用止め具」の発明に関する特許第5398386号公報(乙21)には,「また,本体3の長手方向の端部には,第2連結部材2の挿入部2aを挿入するための挿入凹部3bを切り欠き,この挿入凹部3b内には,上記第2連結部材2を挿入したときに,その係合溝2cにかみ合う係合突起3cを形成している。」(【発明の詳細な説明】の段落【0014】)と記載されていること,マグネットタイプのアクセサリーの留め金具を紹介するアクセサリー会社のウェブサイト(乙1 6)において,「マグネットの付いている面に凹凸があり,使用中は凹凸が噛み合うため外れにくい仕様になっています。」との説明がされていることなどからすると,本件発明の属する ブサイト(乙1 6)において,「マグネットの付いている面に凹凸があり,使用中は凹凸が噛み合うため外れにくい仕様になっています。」との説明がされていることなどからすると,本件発明の属する技術分野である装飾品の「留め具」において,「噛み合う」という用語は,通常,凸部とそれに対応する凹部との組合せからなる状態を示しているものと解することができる。 また,「係止」とは,「係わり止まること」であるとの原告の主張に対し,被告らは特に争っていない。 以上から,本件発明において,「噛合わせて係止」するとは,凸部とそれに対応する凹部との組合せからなる状態により係り合って止まることをもって,留め具として固定されることをいうものと解される。 (ウ) また,本件発明においては,本件発明の目的を達するために,ホルダーとホルダー受けとを「噛合わせて係止する方式」を採用し,ホルダーとホルダー受けを「正しい噛合い位置に誘導できる部位」に磁石を設けるという構成を採用したものであり(前記ア(ア)),ホルダーとホルダー受けが「その噛合わせの解除により留め具の係止状態を開放する機構である」とされていること(前記ア(キ))を踏まえると,両者の「正しい噛合い位置」というものが存在し,その位置において係止されることが前提となるものである。 そして,磁石により留め具を吸着する構成は,引用文献1(乙14,31)及び引用文献2(乙32)記載のとおり,装飾品の留め具の技術分野において,既に知られていた技術であったことを考慮すれば,本件発明における磁石の機能としては,ホルダーとホルダー受けとを「正しい噛合い位置に誘導」するとともに,その吸着音により,ホルダーとホルダー受けとが「正しい噛合い位置」にロケーションされたことを確認するために配置されているものとみるべきである ホルダー受けとを「正しい噛合い位置に誘導」するとともに,その吸着音により,ホルダーとホルダー受けとが「正しい噛合い位置」にロケーションされたことを確認するために配置されているものとみるべきである。 なお,本件明細書に掲載された実施例1の構成や作用においても,「第5図に示すように,鰐口クリップ3が閉じて係止部材4と噛み合ったときには,1対の顎部材6の上記止め部14が,ネック部15に食い込む」(7頁49ないし50行),「信号音を確認した後に,鰐口クリップ3のハンドル部分を回動させていた手の力を緩める。・・・その結果,係止部材4のネック部15に対して1対の顎部材6の止め部14が噛み合う。これによって,目視しなくても,ネックレスの鎖状部の端部間が簡単かつ確実に係止される。」(同8頁21ないし26行)と記載されており,止め部14の凸部とこれに対応する係止部材4に設けられたネック部15の凹部との関係を「噛み合う」と解し,止め部14の凸部とこれに対応するネック部15の凹部の係り合っている位置を正しく噛み合って係止する位置としている。 ウ被告製品との対比(ア) 前記前提事実(6)イのほか,証拠(乙8〔4枚目〕)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品は,別紙4「被告製品の動作図」に記載のとおり,被告製品を用いたネックレス等をつける場合は,同別紙の1-①図,2-①図,3の動作を行い,はずす場合は,同別紙の3,4,5の動作を行うものであることが認められる。 そうすると,被告製品は,部材エ(本件発明の「ホルダー受け」に相当することに争いがない。)にある磁石が部材ウの中にある磁石と吸着する構成であって,磁石同士が吸着している状態(同別紙の2-①図)で装身具が係止されるものであるといえるが,その際,部材エは,部材ウの中に完全に収納された( )にある磁石が部材ウの中にある磁石と吸着する構成であって,磁石同士が吸着している状態(同別紙の2-①図)で装身具が係止されるものであるといえるが,その際,部材エは,部材ウの中に完全に収納された(嵌入した)状態にあり,部材ア及び部材イとは接触していない。その後,部材ア及び部材イの開口部を閉じることにより装着が終了するが,この時点での留め具の内部の構造は,同別紙の2-a図のとおりであり,部材ア及び部材イは,部材エとは接触して いない。なお,部材ア及び部材イの開口部を閉じたまま,磁石同士が吸着しない状態にするには,部材ウから部材エを抜き出すことが必要であるが,抜き出した時の状態は,同別紙の2-b図のとおり,部材ア及び部材イの先端の略L字型部分が部材エの円柱肩部分に当たる段差部に引っ掛かることにより,部材エが部材ア及び部材イから抜け出ない構造となっている。 (イ) 上記(ア)で認定したところによれば,被告製品において,留め具としての機能及び効果を発揮する状態は,部材ウの中に部材エが完全に収まり(嵌入し),かつ,部材ア及び部材イの開口部が閉口した状態であるといえる。そして,部材ウの中に部材エが完全に収まっている(嵌入している)状態においては,部材ウ及び部材エは,それぞれの内部の磁石の吸着によって固定されているにすぎないし(部材ウ及び部材エ内の磁石の吸着がなければ留め具として係止することができないのは明らかである。),部材ア及び部材イは,部材エとは接触していないのであるから,仮に,原告の主張するように,被告製品における部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カを集合体として捉えて,本件発明の「ホルダー」に相当するものと考えたとしても(そのように考えることが相当でないことは,後記(2)のとおりである。),これらと部材エ(本件発明の 材ウ,部材オ及び部材カを集合体として捉えて,本件発明の「ホルダー」に相当するものと考えたとしても(そのように考えることが相当でないことは,後記(2)のとおりである。),これらと部材エ(本件発明の「ホルダー受け」に相当することに争いがない。)とが「噛合わせて係止」した状態にあるとみることはできない。 また,部材ウから部材エを抜き出し,部材ウの磁石及び部材エの中の磁石が非吸着となった状態においては,部材エが部材ア及び部材イの略L字状部分にかかって係止しているにすぎず,部材エと係わり合っている部材ア及び部材イとの関係を「噛合わせ」とみることは困難である(なお,原告は,部材ア及び部材イに設けられた部材キと部材エに設けられた段差部のような組合せも「噛合わせ」に該当する旨主張するが, 装飾品の技術分野において略L字型部分が段差部にひっかかる形を「噛合わせ」とした例など,そのように解すべき根拠を何ら示しておらず,採用することができない。)。仮に,「噛合わせ」に該当するか否かとの点をひとまず措くとしても,部材ア及び部材イと部材エとの上記の位置関係を「互いに吸着する磁石」によって「誘導できる」「正しい噛合い位置」とみることができないことは,明らかである。 (ウ) したがって,仮に,被告製品における部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カを集合体として捉えて,本件発明の「ホルダー」に相当するものと考えたとしても(そのように考えることが相当でないことは,後記(2)のとおりである。),被告製品は,「ホルダー」と「ホルダー受け」とを「噛合わせて係止」する方式を採用したとはいえず,また,これらを「正しい噛合い位置に誘導できる」部位に「互いに吸着する磁石」を「吸着部材」として設けたものとはいえないことに帰するから,被告製品は,構成要件B及びCを充 る方式を採用したとはいえず,また,これらを「正しい噛合い位置に誘導できる」部位に「互いに吸着する磁石」を「吸着部材」として設けたものとはいえないことに帰するから,被告製品は,構成要件B及びCを充足しないというべきである。 (2) 争点1-ア(被告製品における部材ア,部材イ,部材ウ,部材オ及び部材カの集合体は,本件発明の「ホルダー」(構成要件A)といえるか),争点1-エ(被告製品において本件発明の「ホルダー」に該当する部分は,本件発明の「鰐口クリップ」(構成要件D)といえるか)及び争点1-オ(被告製品のホルダー受け(部材エ)は,顎部材(部材ア及び部材イ)間の中に「嵌入して」,「係止される係止部材」(構成要件E)といえるか)についてア 「前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり」及び「前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり」の意義(ア) 本件明細書の前記(1)アの各記載によれば,本件発明は,「ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリッ プ」であることにより,「ホルダー受け」を「鰐口クリップ」である「ホルダー」の「開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材」として,「鰐口クリップを開口させ,そこにホルダー受けである係止部材を嵌入して係止させる」ものであり,顎部材のハンドル部分を手指で掴むと顎部材が開口し,手指で掴んでいたハンドル部分を離すと,バネ手段の付勢力によって係止部材に噛み合い,留め具が止着されるものということができる。そして,本件発明は,かかる構成を有することにより,留め具の操作が容易であり,留め具の係止及び係止解除の操作を一層簡単かつ確実に行うことができ,吸着部材のガイド作用とホルダーの係止操作が ができる。そして,本件発明は,かかる構成を有することにより,留め具の操作が容易であり,留め具の係止及び係止解除の操作を一層簡単かつ確実に行うことができ,吸着部材のガイド作用とホルダーの係止操作が緊密に一体化するため,特に使い勝手が良好であるとの作用効果を奏するとされている。 (イ) また,前記前提事実(5)によれば,原告は,本件拒絶理由通知書を受けて,本件補正をするとともに,本件意見書において,本件発明の「鰐口クリップ方式においては,1対の顎部材がホルダー受けの挿入口を構成し,この挿入口がホルダー受けの挿入時に大きく拡径される構成でなければならない。さもなければ上記した本発明の目的は達成されず,鰐口クリップ方式とする意味も失われる。」と主張したことが認められる。 ところで,本件拒絶理由通知書に言及された引用文献3(乙28)に開示された発明(以下「引用発明3」という。)は,「連結と分離操作が簡単な止め金具及びそれを用いた装飾用鎖を提供することを目的とする」(【発明の詳細な説明】の段落【0008】),「装飾用鎖等の一端に取り付けられる雌側金具と前記装飾用鎖等の他端に取り付けられる雄側金具とからなる止め金具であって,前記雌側金具は,筒体と,該筒体に設けられた底板とを備え,前記雄側金具は,該雄側金具と前記雌側金具とが互いに連結されるときに先端部が前記筒体内に挿入される連結体を備え,該連結体の先端部と前記底板のうち少なくとも一方は,他方 を磁力で吸着する磁石とされ,前記連結体の外周には突起が設けられ,前記筒体の外周には,軸を中心にばねで回動させられて係止部で前記突起を係止して前記雌側金具と雄側金具とを連結状態に保つロックレバーが設けられたことを特徴とする」(段落【0009】)ものであり,引用文献3の【図1】は,次のとおりである 回動させられて係止部で前記突起を係止して前記雌側金具と雄側金具とを連結状態に保つロックレバーが設けられたことを特徴とする」(段落【0009】)ものであり,引用文献3の【図1】は,次のとおりであるところ,原告は,引用発明3について,本件意見書において,「1対の顎部材に相当するロックレバー8は,ホルダー受けに相当する雄側金具2を係止する役目を持つだけで,ホルダー受けの挿入口を構成せず,一方,ホルダー受けの挿入口は固定的な構成であって,開閉は不可能である。即ち,一見本発明に類似した鰐口クリップ方式に見えるが,本質的に全く異なる。」と主張したことが認められる。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)を総合すると,本件発明は,「ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップ」であることにより,「ホルダー受け」を「鰐口クリップ」である「ホルダー」の「開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材」としたものであるところ,「鰐口クリップ」である「ホルダー」は,「1対の顎部材がホルダー受けの挿入口を構成し」,かつ,「この挿入口がホルダー受けの挿入時に大きく拡径される」というものであるといえる。そして,引 用発明3のように「ホルダー受けの挿入口」が「固定的な構成」であるものでは,本件発明の目的は達せられず,本件発明とは本質的に異なるものであって,本件発明の技術的範囲には含まれないということになる。 すなわち,本件発明の「前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり」との構成(構成要件D)及び「前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり」との構成(構成要件E)は,いずれも本件補正により付加された構成であるところ(甲1,前記前提事実(5),弁論の )及び「前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり」との構成(構成要件E)は,いずれも本件補正により付加された構成であるところ(甲1,前記前提事実(5),弁論の全趣旨),原告がそのような補正をしたのは,「ホルダー受けの挿入口」が「固定的な構成」であるものを本件発明の技術的範囲から除外する趣旨であったといわなければならない(少なくとも,外形的にはそのような趣旨であったと理解されてもやむを得ない。)。 換言すると,本件発明の「前記ホルダーが1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップであり」との構成(構成要件D)及び「前記ホルダー受けが1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材であり」との構成(構成要件E)の意義は,本件発明では,「ホルダー」は,あくまでも「1対の顎部材を開口/閉口可能に軸支したバネ閉じ式の鰐口クリップ」であって,「固定的な構成」の「ホルダー受けの挿入口」を更に有するものではなく,また,「ホルダー受け」は,あくまでも「1対の開口状態の顎部材間に嵌入して係止される」ものであって,「1対の開口状態の顎部材間に」更に設けられた「固定的な構成」の「ホルダー受けの挿入口」に陥入するものではないことを意味すると解するのが相当である。 イ被告製品との対比(ア) 前記前提事実(6)及び前記(1)ウで検討したところによれば,被告製品において,部材エ(本件発明の「ホルダー受け」に相当することに争 いがない。)が挿入されるのは,部材ウであるところ,その挿入口は,まさに「固定的な構成」であって,「この挿入口がホルダー受けの挿入時に大きく拡径される」ものではないことが認められる。 したがって,被告製品は,本件発明の構成要件D及びEを充足しないというべきである。 固定的な構成」であって,「この挿入口がホルダー受けの挿入時に大きく拡径される」ものではないことが認められる。 したがって,被告製品は,本件発明の構成要件D及びEを充足しないというべきである。 (イ) この点,原告は,ホルダー受け(部材エ)の挿入は,部材ア及び部材イが開口していることにより挿入する以上,開口部を有する本件発明と同様の効果を有する旨主張し,また,部材ウの挿入口が開口しないとしても,部材ア及び部材イが開口した径に挿入口が制限されることにより,部材ウへの挿入に支障はない旨を主張するようである。 しかし,構成要件Eによれば,「ホルダー受けが・・・開口状態の顎部材間に嵌入して係止される係止部材で」あることが必要であり,被告製品は,部材エにある磁石が部材ウの中にある磁石と吸着する構成であって,磁石同士が吸着している状態で装身具が係止されるものである(前記第4の1(1)ウ(ア))から,部材ア及び部材イが開口した状態で部材エを挿入しただけでは係止されず,部材ウに挿入することにより係止する構造となっている。そして,部材ウの挿入口は筒状になって開口しないものであることは明らかであるから,被告製品は,引用発明3と同様に,本件発明の目的を達することが期待できないとみるのが相当である。しかも,そもそも,ホルダー受けの挿入口として,部材ウの先端は,部材ア及び部材イの先端とほぼ同様の位置にあることが認められるところであって(前記前提事実(6),前記(1)ウ),原告自らホルダーの一部であると主張する部材ウの挿入口をあえて除外して考えるべき理由もない。 以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 2 結論 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却する 以上によれば,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 主文 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官嶋末和秀 裁判官鈴木千帆 裁判官本井修平 (本件特許公報省略)
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