主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,株式会社ユーエフジェイ銀行に対し,連帯して,84億6194万9631円及びこれに対する被告A,被告B,被告C,被告D,被告Eは平成11年12月9日から,被告F,被告G,被告H,被告I,被告Jは平成11年12月10日から,被告Kは平成11年12月12日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,株式会社東海銀行(以下「東海銀行」という。)が,昭和63年ころから平成3年ころにかけて,顧客に対し実質的に利益保証をして仮装の有価証券取引に引き込みその投資資金名下に融資を繰り返すという方法の取引(以下「本件取引」という。)を行った結果,巨額の融資が返済不能となったが,そのような取引を主導して東海銀行に巨額の損害を被らせたのは同社の取締役であった被告らの責任であるとして,東海銀行の株主であった原告が被告らの責任を追及して提起した株主代表訴訟である。 1 争いのない事実(1) 原告は,証券業を営む株式会社であり,被告らに対する訴え提起の請求をした日である平成11年10月8日の6か月以上前から継続して東海銀行の普通株式71万0247株を所有していた株主であった。 被告らは,いずれも,別紙融資一覧表記載の融資の当時,東海銀行の取締役の地位にあった者である。 (2) 原告は,東海銀行の監査役らに対し,平成11年10月7日付内容証明郵便により,被告らの損害賠償責任を追及する訴訟を提起するよう請求し,同書面は同月8日に到達したが,上記監査役らは,書面到達の日より30日以内に上記訴訟を提起しなかった。 (3) 東海銀行,株式会社三和銀行(以下「三和銀行」という。)及び東洋信託銀行株式会社(以下「東洋信託」という。)は,平成12年1 査役らは,書面到達の日より30日以内に上記訴訟を提起しなかった。 (3) 東海銀行,株式会社三和銀行(以下「三和銀行」という。)及び東洋信託銀行株式会社(以下「東洋信託」という。)は,平成12年12月20日及び同月21日開催の各種類株主総会及び同月21日開催の臨時株主総会において,商法364条の規定に基づき,株式会社ユーエフジェイホールディングス(以下「ユーエフジェイホールディングス」という。)を設立することを決議し,平成13年4月1日をもって東海銀行,三和銀行及び東洋信託銀行の各株主の株式は,ユーエフジェイホールディングスに移転され(以下「本件株式移転」という。),同月2日,ユーエフジェイホールディングスが設立された。 (4) 原告は,上記株式移転により東海銀行の株主たる地位を喪失し,ユーエフジェイホールディングスの株主となった。 (5) ユーエフジェイホールディングスの完全子会社となった東海銀行と三和銀行は,平成13年9月26日の臨時株主総会及び各種類株主総会を経て,平成14年1月15日,三和銀行(同日,株式会社ユーエフジェイ銀行と商号変更)を存続会社とする合併をした。 2 当事者の主張(1) 本案についての原告の主張ア東海銀行は,次のとおり,自ら投資の対象となる有価証券について架空の本件取引を作出したが,本件取引は,利益保証を伴ったもので,公序良俗に反する違法なものであった。 本件取引は,東海銀行が顧客に融資し,顧客が,その融資金により,株式,ワラント債(新株引受権付社債),転換社債といった有価証券を購入したことにし,同時に,第三者がそれを一定期間経過後に特定の価格で買い取ることにして,有価証券の売買を仮装し,実質的に利益保証をする取引である。ただし,本件では,仮装した購入契約時には有価証券を買い取る第三者が確定しておらず,便 それを一定期間経過後に特定の価格で買い取ることにして,有価証券の売買を仮装し,実質的に利益保証をする取引である。ただし,本件では,仮装した購入契約時には有価証券を買い取る第三者が確定しておらず,便宜上,買主(アセットマネージメントサービス株式会社)を契約書に記載しておき,その期限までに,東海銀行が,買主を見つけてくることになっていた。本件取引は,形式的には有価証券の売買であるものの,その対象となっている有価証券の現物の存在は前提になっておらず,そのほとんどが現物の裏付けのない架空取引であった。したがって,当該有価証券が交付されることもなく,預り証が発行されることもなかった。しかも,本件取引の契約書に記載された有価証券の価格は,時価と大きく乖離しており,東海銀行から融資される金額に合わせて,総額と単価が適宜記載されているに過ぎないものであった。このように,本件取引は,東海銀行が,融資を実行するために,投資対象として有価証券売買の外形を作り上げた,あるいは仮装したものに過ぎず,売買契約としては不存在ないし無効の取引であった。 そして,本件取引においては,仮装の証券売買契約と同時に,一定期間後に他の顧客が特定の価格で当該有価証券を買い取る約定が外形上締結されるが,その価格は,東海銀行の貸付金利を上回るように設定されており,顧客は,売渡代金から融資元金及び金利を差し引いた金額を利益として得るという仕組みになっていた。したがって,顧客は,東海銀行から融資を受けて本件取引をすれば,何らの資金も労力も投下することなく,保証された利益を確実に得ることになるものであった。 東海銀行は,本件取引の買主となるように,顧客を勧誘しては,これに対して融資を実行することを繰り返し,取引の連鎖を維持した。 イところが,本件取引は,取引が続くに従って,仮装された売買 のであった。 東海銀行は,本件取引の買主となるように,顧客を勧誘しては,これに対して融資を実行することを繰り返し,取引の連鎖を維持した。 イところが,本件取引は,取引が続くに従って,仮装された売買価格が実際の有価証券の価格から一層乖離し,さらに高額になっていく。そのため,東海銀行が,買主に対する融資を繰り返して,本件取引を維持しようとしても,自転車操業に陥り,取引の連鎖が切れて破綻することが確実な構造になっており,高いリスクを内包しているものであった。しかも,取引が破綻すれば,融資金の回収も極めて困難になることは明らかである。仮装された有価証券取引と一体となった融資は,公序良俗に反する使途目的に対して行った融資というほかなく,回収不能となる危険性も高く,違法との評価を免れない。 また,東海銀行が,本件取引において,実質的に利益を保証したことは,証券取引秩序を害する損失保証ないし利益保証に該当するものであり,反社会性が強く,公序良俗に反して違法というべきである。 ウ東海銀行は,本件融資先であるL株式会社,株式会社M,株式会社N,O株式会社,P株式会社,Q株式会社,株式会社Rに対し,一連の本件取引の資金として,別紙融資一覧表記載のとおり,各融資(以下「本件各融資」という。)を行った。これらの融資とともに,東海銀行は,各融資先に対し,本件融資が有価証券購入資金に対するものであることを装うため,株式等有価証券の買入れと一定期間後に他の顧客にそれを転売する契約を作出した。これらは,いずれも実勢価格と著しく乖離した価格で,かつ,現物の受渡しも行われない証券取引を仮装した転がし取引であった。上記各融資先が,東海銀行の勧めにより行ったとされる本件取引の内容は別紙仮装取引一覧表・ないし・のとおりである。 エ被告らは,本件取引当時,本件取引の内容が違法 券取引を仮装した転がし取引であった。上記各融資先が,東海銀行の勧めにより行ったとされる本件取引の内容は別紙仮装取引一覧表・ないし・のとおりである。 エ被告らは,本件取引当時,本件取引の内容が違法,極めて異常なものであることを十分に認識していたにもかかわらず,融資の返済能力についての審査も十分に行わず,返済能力が必ずしも十分ではない上記ウの融資先らに対し,融資に見合う担保が存在しないのに,漫然と違法な本件各融資を決裁して実行せしめ,あるいは,本件取引の内容及び違法性を十分に認識していたか,容易に認識しうる立場にあったのに,取締役会等に諮って本件取引を中止させることなく,漫然と違法・異常な本件各融資を実行させたものであるから,被告らには,いずれも銀行業務という公益性を担う東海銀行の取締役としての重大な注意義務違反(善管注意義務ないしは忠実義務違反)がある。 その結果,被告らは,本件各融資について,別紙「融資一覧表」の回収不能金額欄記載のとおり合計84億6194万9631円の回収不能を生じさせ,もって同額の損害を東海銀行に与えたものである。 オよって,原告は,被告らに対し,被告らの東海銀行に対する債務不履行に基づく損害賠償として,合併により東海銀行の権利義務を承継した株式会社ユーエフジェイ銀行に対し,連帯して84億6194万9631円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告A,被告B,被告C,被告D,被告Eについては平成11年12月9日,被告F,被告G,被告H,被告I,被告Jについては同月10日,被告Kについては同月12日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。 (2) 被告らの本案前の主張アそもそも完全親会社の株主は完全子会社の取締役の責任追及訴訟を提起する権限を有しないと解されるから,これを前 所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。 (2) 被告らの本案前の主張アそもそも完全親会社の株主は完全子会社の取締役の責任追及訴訟を提起する権限を有しないと解されるから,これを前提とする以上,本件のように,ある会社の株主が,その会社の取締役に対する代表訴訟を提起・追行していたにもかかわらず,共同株式移転という組織法上の行為により法律上当然に株式が移転され,当該会社の完全親会社の株主となった場合には,完全子会社となった会社の株主たる地位を喪失した時点でその会社の代表訴訟の原告適格を喪失すると解するのが当然である。 イ平成9年の独占禁止法の改正を契機として整備が進められた持株会社制度は,子会社取締役に対する株主代表訴訟提起権を含めた子会社の管理・支配に関する管理処分権を親会社取締役又は代表取締役に委ね,親会社株主による介入を排除することにより,機動的な持株会社経営を可能にしようとする点に主眼があった。このことは,既に提起されていた株主代表訴訟についても同様であり,問題とされる子会社取締役の行為が株式移転による持株会社化以前のものであったとしても,今後の持株会社運営に対して事実上の影響を及ぼすことは明らかであるから,この場合に親会社の株主となった者に引き続き子会社の株主代表訴訟の原告適格を認めるとすれば,機動的な持株会社経営に支障が生ずるといわざるを得ない。 ウ仮に,唯一の株主である完全親会社の取締役が完全子会社の取締役の責任追及を適切に行わないような場合には,機動的かつ一貫した持株会社経営を可能たらしめるという商法の趣旨からすれば,そのような恐れが顕在化した場合には,完全親会社の取締役がその職責を全うしないものとして完全親会社の取締役に対して責任追及をすべきであるし,例外的な場合は,株式移転の無効確認の訴えを提起するこ れば,そのような恐れが顕在化した場合には,完全親会社の取締役がその職責を全うしないものとして完全親会社の取締役に対して責任追及をすべきであるし,例外的な場合は,株式移転の無効確認の訴えを提起することも可能である。 エ株式移転承認決議に反対する株主に対しては,株式買取請求権(商法371条3項,355条1項)が認められており,それでは株主の保護が不十分であると考えるとしても,法的安定性の配慮から立法的解決によるべきものであり,解釈論によって解決することには限界がある。 オ以上のとおり,株主代表訴訟係属中に株式移転の方法による完全親会社が設立され,完全子会社の従前の株主がその地位を失った場合には,完全親会社の株主となった者は,完全子会社の従前の代表訴訟の原告適格を喪失すると解するべきであり,これを肯定する見解は,立法論としてはともかく,現行商法の解釈としては採り得るものではない。 (3) 被告らの本案前の主張に対する原告の反論ア従来から,代表訴訟の原告適格は,訴訟提起時から口頭弁論終結時まで株主でなければならず,訴訟係属中に株式を譲渡したときは,原告適格を喪失するとの解するのが通説とされてきた。しかし,上記解釈は株式譲渡,善意取得さらには競売公売といった通常の株式の特定承継の場合にのみ該当する解釈論であり,平成11年改正法により新設された株式移転や株式交換という特殊の組織法上の行為により法律上当然に株式の移転が生ずる場合まで想定していないことは明らかである。 イ株式移転の場合,これまでの会社の戦略的部分を持株会社である完全親会社に分離し,これまでの会社は営業部門を担う完全子会社となるという会社の組織変更ないしは企業結合の一形態であり,完全子会社の株主から完全親会社の株主となった者は,従来と同様,完全子会社の財務状況の影響を直接受ける立 までの会社は営業部門を担う完全子会社となるという会社の組織変更ないしは企業結合の一形態であり,完全子会社の株主から完全親会社の株主となった者は,従来と同様,完全子会社の財務状況の影響を直接受ける立場にあることに何ら変わりはない。そして,代表訴訟において完全子会社の旧株主が勝訴して完全子会社に損害が填補されれば,完全子会社の株式の価値が増加し,完全子会社の株式を保有する完全親会社の株式の価値も増大することになるから,完全親会社の株主になったとしても,同様の利益を受けるのである。したがって,完全子会社の株主が完全親会社の株主になったとしても,代表訴訟を提起・追行する権限及び原告適格の維持を認めることには実質的な基礎があるといわねばならない。 ウ株式移転は組織変更行為にすぎず,持株会社である完全親会社と完全子会社となった会社とは,一体性を有する企業体であり,実質的な同一性が認められるから,唯一の株主である完全親会社が完全子会社の取締役に対して代表訴訟を改めて提起することはまず考えられない。そもそも,機動的かつ一貫した企業体の運営という持株会社の目的と,親会社株主による有効な監督是正権の行使は相矛盾するものではなく,しかも,本件で問題となっているのは,持株会社化以前の過去の完全子会社取締役の違法行為に対する責任ないしその是正であるから,機動的な持株会社の経営とはいっそう無関係というべきである。そして,現行商法は,株主代表訴訟の提起権を個々の株主が行使できる単独株主権として規定しており,他の株主には代表訴訟の提起を阻止する権限は与えられていないのであるから,代表訴訟の提起・追行において,他の株主の利益や持株比率の変動といったことも考慮する余地はない。 エ本件において,原告が株主代表訴訟の原告適格を喪失することになると,当該訴訟で勝訴するこ あるから,代表訴訟の提起・追行において,他の株主の利益や持株比率の変動といったことも考慮する余地はない。 エ本件において,原告が株主代表訴訟の原告適格を喪失することになると,当該訴訟で勝訴することにより完全子会社である株式会社ユーエフジェイ銀行に損害の填補が得られる可能性や,訴訟に必要な費用及び弁護士費用を同銀行に支払を請求する可能性を一拳に失うことになる。また,株主が株式移転承認決議に反対して株式買取請求権(商法371条3項,355条1項)を行使したとしても,代表訴訟に勝訴して取締役から得られるであろう損害賠償請求権が買取価格に反映されることはほとんど考えられず,株式買取請求制度は救済措置になり得ない。 オ以上のとおり,本件のような場合には,原告適格を維持させる実質的基礎があり,原告適格を認めても弊害は認められず,原告適格を否定した場合の代替的措置及び救済措置もないことから,商法267条1項の解釈として,完全親会社の株主となった者の原告適格が維持されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,原告は,東海銀行の株主としての地位を喪失したことにより本件訴訟における原告適格を喪失したため,本件訴えを却下すべきものと判断する。その理由は次の2以下において説示するとおりである。 2 平成13年4月2日,東海銀行,三和銀行及び東洋信託の持株会社として,共同株式移転の方法によりユーエフジェイホールディングスが設立され,原告がユーエフジェイホールディングスの株主となり,東海銀行の株主としての地位を喪失したことは当事者間に争いがない。 3 ところで,商法267条1項,2項は,株主代表訴訟を提起しうる株主の資格として,「六月前ヨリ引続キ株式ヲ有スル株主」であることを要するものと規定しているところ,その趣旨は,当該会社の取締役の責任を追及するこ ,商法267条1項,2項は,株主代表訴訟を提起しうる株主の資格として,「六月前ヨリ引続キ株式ヲ有スル株主」であることを要するものと規定しているところ,その趣旨は,当該会社の取締役の責任を追及することに利益を有するのは当該会社の実質的所有者である株主であることに基づくものであるから,この株式の保有は,訴訟提起の要件であるにとどまらず,訴訟の追行要件でもあり,したがって,当該訴訟の口頭弁論終結時まで継続して満たしている必要があると解される。 そうすると,係属中の株主代表訴訟の途中で株式の譲渡等により株主たる地位を喪失した者は,もはや当該会社の取締役の責任を追及することにつき利益を有せず,株主代表訴訟の原告適格を喪失することとなる。 4 原告らは,株式移転という特殊の組織上の行為により法律上当然に子会社の株式が親会社に移転し,そのために子会社の株主の地位を喪失した場合には,その株主が同地位に基づき提起して係属中の株主代表訴訟の原告適格を失わないと解すべきである旨主張するが,次の理由により採用できない。 (1) 株式移転により完全親会社が設立された場合において,その完全親会社の株主について,親会社株主の子会社の書類等の閲覧等請求権(商法244条4項,260条ノ4第4項,263条4項,282条3項)及び親会社少数株主の子会社の会計帳簿等の閲覧等請求権(同法293条ノ8)が認められることは明文上明らかである。これに対し,上記場合において,親会社株主が子会社取締役に対して代表訴訟提起権を有するか否かについては何の規定もない。 しかし,商法267条1項,2項は,単に「会社」と定めるのみであるところ,商法は,「親会社」「子会社」との用語を明確に定義し(同法211条ノ2),子会社と親会社との法律関係を規律する場合には,「親会社」,「子会社」という用語を用い 単に「会社」と定めるのみであるところ,商法は,「親会社」「子会社」との用語を明確に定義し(同法211条ノ2),子会社と親会社との法律関係を規律する場合には,「親会社」,「子会社」という用語を用いてその旨を明らかにしている(上記各法条のほか,監査役,会計監査人及び検査役の子会社調査権を定める同法274条ノ3,294条2項,商法特例法7条3項など)ことからすれば,商法267条1項,2項にいう「会社」とは,当該株主が属する会社のみを指すもので,その「子会社」は含まず,同様に同条項にいう「取締役」も当該株主が属する会社の取締役のみを指すものであることは明白である。したがって,現行法上は,親会社の株主が,子会社に対しその取締役の責任を追及する形態の株主代表訴訟(二重代表訴訟)を提起することは認められていないものというべきである。 そうであるとすると,通常の株主代表訴訟が適法に提起された後,株式移転により完全親会社が設立されたことにより株主の地位が変動した場合であっても,当該株主は被告とされていた取締役の属する会社の株主の地位を喪失したのであるから,これにより,当該株主は株主代表訴訟における原告適格を喪失するとするのが論理的な帰結である。 (2) 株式移転により完全親会社の株主となった者が,依然として完全子会社となった会社の経営が健全に行われることにつき利害関係を有していることは当然のことであるが,従来と全く同様に完全子会社の財務状況の影響を直接的に受ける立場にあるとはいえない上,本件のように複数の株式会社が株式移転によって完全親会社を設立した場合には,その完全子会社となった会社の経営を巡る利益状況にも当然変化が生じるのであるから,完全親会社の株主となった者が完全子会社の財務状況から受ける影響は一層間接的なものとならざるを得ない。 そのため,完 ,その完全子会社となった会社の経営を巡る利益状況にも当然変化が生じるのであるから,完全親会社の株主となった者が完全子会社の財務状況から受ける影響は一層間接的なものとならざるを得ない。 そのため,完全子会社の取締役に対する監督は,株主である完全親会社の取締役の総合的な判断によるものとし,仮に当該子会社の新たな株主である完全親会社が当該会社の取締役の責任追及を行わない場合であっても,それは株主である完全親会社の経営上の判断として合理的でないとはいえないのである。そして,仮に当該子会社の取締役の責任が明白であるにもかかわらず,なお完全親会社がその責任追及を行わないような場合には,完全親会社の株主は,完全親会社の取締役に対して株主代表訴訟を提起し,その任務懈怠責任を追及することによって対処すべきものであって,仮にこのような間接的な態様での当該子会社の取締役の責任追及が不十分なものに止まるものとしても,それは,親会社の株主に対して子会社の取締役の責任を追及する形態の株主代表訴訟(二重代表訴訟)の提起を認めていない現行商法が採用する立法上の裁量判断の結果にほかならないのである。 このように,そもそも,現行商法の認める,親会社株主の子会社に対する監督は,親会社取締役を通じた間接的なものでしかないのであるから,株主代表訴訟の係属中に株式移転が行われた場合に限って,そのことにより完全子会社の株主の地位を失って,親会社の株主になった者に対し,引き続き,完全子会社の取締役に対する直接的な監督を行わせることとするのは,親会社やその株主の完全子会社に対する監督の一般的な在り方と均衡を失するのみならず,理論的一貫性にも欠けるものである。 (3) また,株式移転によって完全親会社が設立された結果,適法に係属していた株主代表訴訟が終了することとなったとしても,株式移 な在り方と均衡を失するのみならず,理論的一貫性にも欠けるものである。 (3) また,株式移転によって完全親会社が設立された結果,適法に係属していた株主代表訴訟が終了することとなったとしても,株式移転には株主総会の特別決議を要するものとされているのであるから(商法353条4項,365条3項),上記訴訟の帰すうも株主総会の特別決議に基礎を置くものであると解される以上,やむをえないというべきである。 なお,株主代表訴訟の提起権は単独株主権であって,本来他の株主の意思によって左右されるものではないが,完全親会社が完全子会社の取締役の監督をどのような形態で行うことができるものとするかという問題はこれとは異なる次元に属する問題であり,株主代表訴訟の提起権が単独株主権であるということからは,完全親会社の株主となった者がなお株主代表訴訟によって完全子会社の取締役の責任を追及することができるとする結論が当然に導かれるものではない。 (4) 更に,商法は,株式移転に反対する株主の保護のために,株式買取請求権(371条2項,355条)を認め,株主が株式移転によって経済的損失を被ることに対する手当を用意しており,その場合の,「承認ノ決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」について,株主代表訴訟によって会社に回復されるべき賠償額を反映させることが困難であることは否定できないが,株式移転が株主代表訴訟の回避を目的として行われたようなごく例外的な場合においては,そのような株式移転は無効となり,株式移転無効確認の訴え(商法372条)を提起することによって是正する途が残されているのである。 仮にこれらの制度のみでは株主の保護には十分ではないとしても,不利益を受けるかも知れない株主にどのような保護を与えるかは立法政策の問題であって,株主の保護という観点のみから,必ずし ているのである。 仮にこれらの制度のみでは株主の保護には十分ではないとしても,不利益を受けるかも知れない株主にどのような保護を与えるかは立法政策の問題であって,株主の保護という観点のみから,必ずしも完全親会社の株主となった者の原告適格を肯定するという立法政策を採用しなければならないものではない。 (5) その他の原告の主張を考慮しても,現行法上,原告の原告適格が維持されているとすることのできる根拠は見い出し難い。 なお,株式移転によって完全親会社が設立され,その完全子会社となって会社の株主であった者がその地位を失って完全親会社の株主となった結果,それまでに完全子会社となった会社の株主として同会社の取締役の地位にあった者を相手として提起し,適法に係属していた株主代表者訴訟が,原告適格の喪失を理由として不適法却下となるものとした場合には,上記訴訟を原告として提起した者が,株主代表訴訟を提起した株主が同訴訟で勝訴したときに会社に対して弁護士費用等の償還を求めることができる旨定める商法268条の2第1項を適用を求めることは困難であるため,上記訴訟に関して同項所定の権利を行使することができないことになると解され,このことにつき適切な立法的措置を講ずるのが相当であるが,これは,商法が上記の場合に備えた適切な立法的措置を講じていないための付随的な事柄であり,このことを理由として,株式移転によって完全親会社が設立され,完全子会社となった会社の株主であった者がその地位を失っても,上記訴訟の原告適格を喪失しないとするのは,本末を転倒する見解であって,到底採用できない。 (6) 以上を要するに,株式移転によって完全親会社が設立され,その完全子会社となった会社の株主であった者がその地位を失って完全親会社の株主となった場合において,それまでに完全子会社となった会 い。 (6) 以上を要するに,株式移転によって完全親会社が設立され,その完全子会社となった会社の株主であった者がその地位を失って完全親会社の株主となった場合において,それまでに完全子会社となった会社の株主がその会社の取締役の地位にあった者を相手として提起し,適法に係属していた株主代表者訴訟について,同会社の株主であった者に例外的にそのまま原告適格を認めて,同訴訟の追行を許すとする制度を採用することも,立法的には,もとより可能であったのであるが,商法がそのような制度を採用しているものと認める根拠となる規定はなく,かつ,商法の定める親会社の子会社に対する監督の在り方等に照らすと,上記例外的な原告適格の存続を認めるのを相当とする実質的な根拠もないというほかないのである。 5 以上のとおりであるから,本件訴えを却下することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第5部裁判長裁判官長門栄吉裁判官濱口浩裁判官藤本ゆう子(別紙省略)
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