平成18(わ)1085 詐欺(変更後の訴因 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反)被告事件

裁判年月日・裁判所
平成19年1月29日 大阪地方裁判所
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判決文本文13,085 文字)

主文 被告人Aを懲役2年8月に,被告人Bを懲役2年に,被告人Cを懲役1年6月に,被告人Dを懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中,被告人A及び被告人Bに対しては各70日を,被告人Cに対しては230日を,それぞれその刑に算入する。 被告人Dに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人4名は,大阪市内等の路上生活者の名義を用いて生活保護法による保護申請を行い,地方公共団体から生活保護費名目で金員を詐取するために集団を構成していたものであり,同集団は,前記詐取行為を行うことにより利益を図ることを共同の目的とする多数人の継続的結合体であって,被告人Aの指揮命令に基づいて,その構成員において,路上生活者の確保,保護申請手続及び詐取した金員の回収等のあらかじめ定められた任務の分担に従い,組織により前記詐取行為を反復して行っていた団体であるが,第1被告人4名は,前記集団の活動として, 大阪市から生活保護費名目で金員を詐取しようと企て,共謀の上,大阪市内で路上生活をしていたE(当時51歳)を,被告人らが管理する大阪市(中略)「a」b号室に居住させるなどした上,平成17年4月25日ころ,同市(以下略)所在の大阪市生野区保健福祉センターにおいて,同保健福祉センター支援運営課職員Fに対し,真実は,被告人らが,前記E名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人G住宅が同人との間で賃料を4万2000円とす る建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない同 けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人G住宅が同人との間で賃料を4万2000円とす る建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない同人をして,同人名義の生活保護開始(変更)申請書とともに,前記G住宅が同人に対し賃料4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽の賃貸借契約証書等を提出させ,さらに,同月26日ころ,真実は,同人がH土木及びI建設に対し求職活動を行った事実がないのに,その事実を記載した内容虚偽の求職活動状況申告書を被告人Dが提出するなどして,前記Eの保護を申請し,前記Fを介して,前記保健福祉センター支援運営課長代理Jらをして,その旨誤信させた上,前記Eに対してその申請どおりに生活保護費を支給する旨決定させ,よって,別表1記載のとおり,同年5月16日から同年12月26日までの間,9回にわたり,前記保健福祉センターにおいて,同センター職員Kから,現金合計100万6182円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ, 東大阪市から生活保護費名目で金員を詐取しようと企て,共謀の上,大阪市内で路上生活をしていたL(当時50歳)を,被告人らが管理する大阪府東大阪市(中略)「c」d号室に居住させるなどした上,同年6月28日ころ,同市(以下略)所在の東大阪市健康福祉局福祉部西福祉事務所において,同福祉事務所保護係職員Mに対し,真実は,被告人らが前記L名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人G住宅が同人との間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結 ないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人G住宅が同人との間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない同人をして,同人名義の保護申請書とともに,前記G住宅が同人に対し賃料を4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽の賃貸借契約証書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Mを介して,前記西福祉事務所長Nをして,その旨誤信させた上,前記Lに対してその申請どおりに生活保護費 を支給する旨決定させ,よって,別表2記載のとおり,同年7月14日から同年11月2日までの間,6回にわたり,前記西福祉事務所において,同事務所職員Oから,現金合計79万2867円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ,第2被告人A,同B及び同Cは,前記集団の活動として,東大阪市から生活保護費名目で金員を詐取しようと企て,共謀の上, 大阪市内で路上生活をしていたP(当時56歳)を,被告人らが管理する大阪府東大阪市(中略)「e」f号室に居住させるなどした上,同年7月19日ころ,同市(以下略)所在の東大阪市健康福祉局福祉部東福祉事務所において,同福祉事務所保護係職員Qに対し,真実は,被告人らが前記P名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人Rが前記Pとの間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない同人をして,同人名義の保護申請書とともに, うに装い,かつ,前記居室の賃貸人Rが前記Pとの間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない同人をして,同人名義の保護申請書とともに,前記Rが前記Pに対し賃料を4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽の賃貸借契約証書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Qを介して,前記東福祉事務所長Sをして,その旨誤信させた上,前記Pに対してその申請どおりに生活保護費を支給する旨決定させ,よって,別表3記載のとおり,同年8月10日から同年12月26日までの間,6回にわたり,前記東福祉事務所において,同事務所職員から,現金合計84万1333円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ, 大阪市内で路上生活をしていたT(当時52歳)を,被告人らが管理する大阪府東大阪市(中略)「g」h号室に居住させるなどした上,同年8月25日ころ,前記東大阪市健康福祉局福祉部西福祉事務所において,同福祉事務所保 護係職員Uに対し,真実は,被告人らが前記T名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人G住宅が同人との間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない前記Tをして,同人名義の保護申請書とともに,前記G住宅が同人に対し賃料を4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽の賃貸借契約証書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Uを介して,前記Nをして,その旨誤信させた上,前記Tに対してその申請どおりに生活保護費を支給す 2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽の賃貸借契約証書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Uを介して,前記Nをして,その旨誤信させた上,前記Tに対してその申請どおりに生活保護費を支給する旨決定させ,よって,別表4記載のとおり,同年9月6日から同年12月26日までの間,6回にわたり,前記西福祉事務所において,前記Oから,現金合計69万6728円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ 大阪市内で路上生活をしていたV(当時55歳)を,被告人らが管理する大阪府東大阪市(中略)「i」j号室に居住させるなどした上,同年8月29日ころ,前記東大阪市健康福祉局福祉部西福祉事務所において,同福祉事務所保護係職員Wに対し,真実は,被告人らが前記V名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人G住宅が同人との間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない前記Vをして,同人名義の保護申請書とともに,前記G住宅が同人に対し賃料を4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽の賃貸借契約証書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Wを介して,前記Nをして,その旨誤信させた上,前記Vに対してその申請どおりに生活保護費を支給する旨決定さ せ,よって,別表5記載のとおり,同年9月9日から同年12月26日までの間,6回にわたり,前記西福祉事務所において,前記Oから,現金合計66万8300円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ,第3被告人A,同B及び同Cは,前記集団の活 ら同年12月26日までの間,6回にわたり,前記西福祉事務所において,前記Oから,現金合計66万8300円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ,第3被告人A,同B及び同Cは,前記集団の活動として,東大阪市から生活保護費名目で金員を詐取しようと企て,Xと共謀の上, 大阪市内で路上生活をしていたY(当時67歳)を,被告人らが管理する前記「e」k号室に居住させるなどした上,同年10月18日ころ,前記東大阪市健康福祉局福祉部東福祉事務所において,前記Qに対し,真実は,被告人らが前記Y名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたかも同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人Rが前記Yとの間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない前記Yをして,同人名義の保護申請書とともに,前記Rが前記Yに対し賃料を4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽のマンション賃貸借契約書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Qを介して,前記Sをして,その旨誤信させた上,前記Yに対してその申請どおりに生活保護費を支給する旨決定させ,よって,別表6記載のとおり,同年11月2日から同年12月26日までの間,4回にわたり,前記東福祉事務所において,同事務所職員から,現金合計46万5956円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ, 大阪市内で路上生活をしていたZ(当時50歳)を,前記「e」l号室に居住させるなどした上,同年10月18日ころ,前記東大阪市健康福祉局福祉部東福祉事務所において,前記Qに対し,真実は,被告人らが前 大阪市内で路上生活をしていたZ(当時50歳)を,前記「e」l号室に居住させるなどした上,同年10月18日ころ,前記東大阪市健康福祉局福祉部東福祉事務所において,前記Qに対し,真実は,被告人らが前記Z名義を用い,生活保護法における保護の申請を行って,同人を介し,支給を受けた生活保護費を利得して,その一部を同人に交付するに過ぎないのにこれを秘し,あたか も同人自身が前記申請を行い,支給を受けた生活保護費全額を取得するかのように装い,かつ,前記居室の賃貸人Rが前記Zとの間で賃料を4万2000円とする建物賃貸借契約を締結した事実がないのに,これあるかのように装い,情を知らない前記Zをして,同人名義の保護申請書とともに,前記Rが前記Zに対し賃料を4万2000円として前記居室を賃貸した旨の内容虚偽のマンション賃貸借契約書等を提出させて,同人の保護を申請し,前記Qを介して,前記Sをして,その旨誤信させた上,前記Zに対してその申請どおりに生活保護費を支給する旨決定させ,よって,別表7記載のとおり,同年11月2日から同年12月26日までの間,4回にわたり,前記東福祉事務所において,同事務所職員から,現金合計47万3136円の交付を受けて,その利益を前記集団に帰属させ,もって,団体の活動として,詐欺の罪に当たる行為を実行するための組織により,人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 被告人Aの弁護人は,本件各犯行につき,被告人らにおいて,家賃に関して欺罔行為を行ったことを理由に詐欺罪が成立することは争っていないものの,生活保護法による保護の申請を行っていたのは路上生活者(被告人らが管理する民間アパートに居住するようになった者も含む。以下同じ。)自身というべきであるから,被告人らが路上生活者の名義を用 いものの,生活保護法による保護の申請を行っていたのは路上生活者(被告人らが管理する民間アパートに居住するようになった者も含む。以下同じ。)自身というべきであるから,被告人らが路上生活者の名義を用いてその申請を行ったとして詐欺の事実を構成することには無理があるし,路上生活者が現実に受給した金員を何に使うかは,その裁量に委ねられているから,被告人らが手数料を得ることを秘して保護の申請をすることを欺罔行為とみることもできない旨主張し,被告人Aもこれに沿う供述をしている。 また,被告人Bの弁護人は,被告人Aの弁護人の前記主張を援用すると共に, 支給された生活保護費のうち路上生活者が現実に費消した分については,被告人らに詐欺の故意ないし不法領得の意思は認められない旨主張し,被告人Bもこれに沿う供述をしている。 さらに,被告人Cは,自分は平成17年12月13日に自首しているので,同月26日交付の生活保護費のことは知らない旨供述している。 そこで,以上の主張等を踏まえ,当裁判所が被告人らに判示のとおりの各詐欺罪が成立すると認定した理由について補足して説明する。 関係各証拠によれば,被告人らが関与した生活保護費の申請手続,その管理・処分状況等の実態は,次のとおりであったと認められる。 (1)申請手続被告人らは,最終的には生活保護費の一部を自分たちの手元に残してこれを直接的な利益とすることを目的として,大阪市内等の路上生活者に対し,被告人らのほうから声をかけて生活保護費を受給する気がないか尋ね,これに応じた路上生活者については,被告人らが管理する民間アパートに居住させた上,大阪市等に生活保護の申請を行わせた。 そして,その申請にあたっては,被告人らにおいて,路上生活者を各社会福祉事務所の窓口まで連れて行き,路上生活者に代わって各手続書類を作成する ートに居住させた上,大阪市等に生活保護の申請を行わせた。 そして,その申請にあたっては,被告人らにおいて,路上生活者を各社会福祉事務所の窓口まで連れて行き,路上生活者に代わって各手続書類を作成するなどしていたほか,路上生活者が面接を受ける際,生活保護の受給を容易にさせる目的で,被告人らと知り合った経緯,家族関係,体調が悪いことや仕事が見つからないことなどについて虚偽の内容も織りまぜてアピールすることや,被告人らに手数料を払っているとは言わないことなどにつき,前もって詳細な指示を与えていた。 (2)管理・処分状況等生活保護費の交付に際し,その支給日毎に社会福祉事務所から直接生活保護費を受け取るのはその申請名義人となっていた路上生活者自身であったが,被告人らは,路上生活者らをその居住先アパートから社会福祉事務所まで車で連 れて行くなどした上,あらかじめ社会福祉事務所内又はその外で路上生活者を待ち受け,生活保護費を受給した路上生活者がそのまま逃走することがないよう監視し,その受給直後,路上生活者にいったん生活保護費を封筒ごと全額提出させた上,その中から被告人らが「小遣い」と称していた2万円ないし3万円の現金を路上生活者に手渡し,その余の残額はすべて被告人らで管理していた。前記の残額の中から,路上生活者の家賃や弁当代等の実費は支払われてはいたが,被告人らが用意する弁当は1日に2食(合計約600円)だけで,弁当を注文しない者に食費として渡された現金も月額2万円に過ぎず,毎月の生活保護費の3分の1程度にあたる3万円ないし4万円は,被告人らの純利益となっていた。 そして,前記のような路上生活者の「小遣い」や被告人らの純利益の金額は,被告人らにおいて一方的に決定したもので,被告人らと路上生活者との間でこれについての実質的な交渉が行われたことは なっていた。 そして,前記のような路上生活者の「小遣い」や被告人らの純利益の金額は,被告人らにおいて一方的に決定したもので,被告人らと路上生活者との間でこれについての実質的な交渉が行われたことはなく,経費の内訳等が路上生活者に報告されることもなかった。 さらに,被告人らは,前記のとおり路上生活者から生活保護費を封筒ごと全額提出させていたほか,封筒から勝手に生活保護費を抜いた路上生活者を居合わせた者の前で問いただしたり,あらかじめ路上生活者から生活保護費の受給証や印鑑を預かって保管したりし,さらには,路上生活者が被告人らに無断でアパートから出て行くことを阻止するため,定期的に各居室の見回りなどもしていた。 以上の実態からすると,形式的には,生活保護費の申請をし,その交付を受けていたのが路上生活者であるとはいえるとしても,路上生活者がその使途を決める間も全く与えられないうちに,その全額がいったん被告人らの支配下に置かれ,被告人ら自身が,その直後路上生活者らに手渡した少額の「小遣い」を除く生活保護費の大半を管理していた上,被告人らは,その「小遣い」を上回る純利益を得ていたもので,路上生活者名義による生活保護費の申請や前記「小遣い」の支 給も,被告人らがこのような利益を上げるための手段であったことは明らかであるから,被告人らこそが,まさに当該生活保護費を実質的に取得していたと見るのが相当である。 そして,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする生活保護法の趣旨に鑑みれば,生活保護の受給要件の調査を担当する社会福祉事務所がそのための正確な情報を把握することが不可欠であるのに,被告人らは,路上生活者にこれを偽るよう各種指示を与えて 目的とする生活保護法の趣旨に鑑みれば,生活保護の受給要件の調査を担当する社会福祉事務所がそのための正確な情報を把握することが不可欠であるのに,被告人らは,路上生活者にこれを偽るよう各種指示を与えて,虚偽の申告をさせていたものであり,とりわけ,受給者が生活保護費の大半を自由に処分できず,しかも,その額の3分の1程度が当初から受給者自身に帰属しないなどといった状況は,およそ社会福祉事務所側が容認する余地がなく,かかる正確な情報と実態を社会福祉事務所が把握していれば,たとえ家賃に関する欺罔行為がなかったとしても,本件各生活保護費が,その全額について交付されなかったことは明らかである。 さらに,このことは,本件犯行を計画した被告人Aはもとより,当該グループの経理担当者であり,同被告人に次ぐ地位にあった被告人B,同人らの下で本件に深く関与していた被告人C及び同Dも当然に認識していたはずであって,かかる被告人らにおいて,支給された生活保護費全額分につき,詐欺の故意や不法領得の意思がなかったとは到底考えられない。 以上によれば,被告人A及び同Bの各弁護人の前記1の主張はいずれも理由がない。 最後に,被告人Cの自首後における本件に関する刑責についてみるに,関係各証拠によれば,なるほど,被告人Cは,平成17年12月12日ころ,被告人Aらのグループから逃げ出し,同月13日に大阪府西警察署に出頭し,同月15日付けで自首調書が作成されており,その後にも本件生活保護費の一部が同様の形態で残っていた他の被告人らに渡っていたことは認められるが,他方,被告人C は,被告人Aらのグループから離れるにあたり,それまで自身が内容に虚偽を含む申請等に従事することによって,既に形成されていた生活保護費が違法に支給され続ける状態を自ら阻止するための具体的措置を何ら講じて 被告人Aらのグループから離れるにあたり,それまで自身が内容に虚偽を含む申請等に従事することによって,既に形成されていた生活保護費が違法に支給され続ける状態を自ら阻止するための具体的措置を何ら講じてはおらず(なお,前記自首はこれに該当しない),結局,被告人Cが本件に関与したことによる影響は,同被告人の自首後である同月26日の生活保護費交付の時点でも,何ら解消されることなく持続していたといえるから,共犯関係から離脱したといえない被告人Cが当該交付にかかる罪責を免れないことは明らかである。 (法令の適用)被告人A,同B及び同Cの判示第1の1,2,第2の1ないし3及び第3の1,2の各所為,被告人Dの判示第1の1,2の各所為はいずれも刑法60条,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条1項9号,刑法246条1項にそれぞれ該当するところ,それらは,被告人4名の各所為ごとにそれぞれ同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,被告人A,同B及び同Cについていずれも最も犯情の重い,被告人Dについては犯情の重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人Aを懲役2年8月に,被告人Bを懲役2年に,被告人Cを懲役1年6月に,被告人Dを懲役1年6月にそれぞれ処し,いずれも同法21条を適用して,未決勾留日数中,被告人A及び同Bに対しては各70日を,被告人Cに対しては230日を,それぞれその刑に算入し,被告人Dに対し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとし,被告人Cの訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 本件は,被告人Aを中心として,路上生活者に対し生活保護費の名目で支給される金員を詐取するた 訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 本件は,被告人Aを中心として,路上生活者に対し生活保護費の名目で支給される金員を詐取するための集団を形成していた被告人らが,その集団の活動として,大阪市の保険福祉センター等から金員を詐取したという組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の事案である。 被告人Aは,知り合いから生活保護費の詐取方法を教わったことを契機として,平成17年2月ころから,被告人Dとともに同様の活動を開始し,同年3月ころに被告人Bが,同年6月ころに被告人Dの後任者として被告人Cが,同年12月ころに被告人Cの後任者としてXがそれぞれ当該集団に加わったところ,被告人Aはその経営を担当する社長として,被告人Bは経理及び実務の責任者として,被告人D,同C及び前記Xは順次実働役として,集団全体として約1年間にわたり,生活保護費の中から多額の利益を上げることを目ざして組織的かつ継続的にその活動を行っていたものである。 その手口をみると,主に被告人C又は同Dが,夜の街中で,テントやリヤカーを持っておらず,すぐに誘いに応じそうな路上生活者を探し出し,ボランティア活動を装うなどしつつ「寒いやろ。」「寝る場所がないなら一緒に行こう。」などと言葉巧みに声をかけて信用させ,あらかじめ用意した家賃の安価なアパートに居住させた上,数日後にその路上生活者を伴って保険福祉センター等に出向き,申請書類に虚偽や誇張した内容の記載をしたり,路上生活者に対して,体の悪い部分を大げさにアピールすることや,多少の収入があってもゼロと回答することなど,生活保護の要否判断のための面接に向けての指導を行ったりしており,生活保護費申請手続を熟知した上,その支給要件の有無にかかわりなくこれ アピールすることや,多少の収入があってもゼロと回答することなど,生活保護の要否判断のための面接に向けての指導を行ったりしており,生活保護費申請手続を熟知した上,その支給要件の有無にかかわりなくこれを容易ならしめるよう工作された,非常に計画的かつ巧妙なものである。さらに,被告人らは,家主に無断で前記アパートの賃料額を住宅扶助の限度額一杯まで水増しした賃貸借契約書を申請のたびに作成していたほか,生活保護費の受領に必要な受給証と印鑑を路上生活者から預かったり,生活保護費支給日に路上生活者全員を集めて,被告人らが監視する中で生活保護費を受給させ,その直後に封筒ごとその全額を提出させたりするなどして,生活保護費を厳格に管理しており,確実により多くの利益を上げようとしていたことが窺われる。 本件各犯行は,長期にわたるかかる活動の一環として敢行されたものであり,その態様は手慣れた手口による常習的なもので相当に悪質といえるし,本件各犯 行による被害だけでも総額約494万円という多額にのぼっている上,生活保護用の市の予算が適正に使用されず,市の生活保護行政を大きく阻害した結果も重大である。 なるほど,路上生活者が生活保護の受給手続に疎いことなどからこれを受けることが必ずしも容易でなく,被告人らの本件活動によって,路上生活者が一定の恩恵を受けていたという側面があったことは否定できないものの,その実態を子細に見れば,その性質上支給される生活保護費は受給者にとって健康で文化的な生活を営むための必要最小限の額であるにもかかわらず,被告人らにおいて,その中から少なからぬ利益を得ており,路上生活者の中には,食費さえ相当切りつめざるを得ない者もいたのであって,かかる活動が憲法25条の生存権保障の理念にもとることは明らかである。 しかも,生活保護の制度は,国民の理 らぬ利益を得ており,路上生活者の中には,食費さえ相当切りつめざるを得ない者もいたのであって,かかる活動が憲法25条の生存権保障の理念にもとることは明らかである。 しかも,生活保護の制度は,国民の理解と少なからぬ税負担によって初めて実現されており,その支給が適正な手続にしたがって行われることもまた社会的に強く要請されるのであるから,被告人らの活動によって一部の路上生活者がある程度の恩恵を受けていたことが被告人らの刑責を積極的に軽減すべき理由とならないことは明らかである。 そして,被告人A,同B及び同Dにおいて,保険福祉センター等に損害賠償の申し出をしてはいるものの,これを拒否されており,未だその実現はなされていない。 そうすると,本件各犯行の犯情は誠に芳しからぬものといわざるを得ない。 そこで,以上のことを踏まえて,被告人ら各人の個別的事情をみるに,まず,被告人Aは,本件を計画し当該集団の活動全体を指揮命令する地位にあった上,共犯者の中で最も多く利益を得ており,本件各犯行の首謀者といえる。そして,被告人Aは,できるだけ楽をしながら多額の現金を手に入れたいとの思いから,犯罪になることを知りつつ本件各犯行を敢行したのであって,その動機に酌量の余地はない。また,被告人Aが相被告人らを次々と共犯者として引き込んだ責任 も軽視できない。さらに,被告人Aは,公判廷において,犯意の一部を否認すると共に,被告人らの活動が路上生活者らのためになっていたなどと強弁して,少しでも自己の行為を正当化して,その刑事責任を軽減しようとする態度がうかがわれ,本件各犯行を真摯に反省しているものとは認めがたい。そうすると,被告人Aの刑事責任は重いといわなければならない。 次に,被告人Bは,当該集団の経理を担当していたほか,被告人C及び同Dに指示を出して実務全体を取 を真摯に反省しているものとは認めがたい。そうすると,被告人Aの刑事責任は重いといわなければならない。 次に,被告人Bは,当該集団の経理を担当していたほか,被告人C及び同Dに指示を出して実務全体を取り仕切る主任的な役割を果たしており,首謀者である被告人Aからも信頼され,集団内で被告人Aに次ぐ地位にあったものである。そして,被告人Bは,その活動から相当の利益を得ていたものであるし,公判廷において,被告人Aと同様の供述態度がうかがわれる。そうすると,被告人Bの刑事責任は,被告人Aに特段劣るものではなく,相応に重いというべきである。 被告人Cは,当該集団の中では下位にあったものであるが,新たな路上生活者の探し出し,生活保護費の申請手続,アパートに居住させた路上生活者の監視等,その活動の実働部分をほぼ全面的に担当しており,その果たした役割はかなり大きい。そして,被告人Cは,平成14年7月に窃盗罪で懲役1年2月,3年間執行猶予の判決を受けながら,その刑の執行猶予期間中である平成17年6月ころから,金欲しさに安易に被告人Aの誘いに乗り,その活動に従事し,月々17万円程度の給料を得ていたものである。そうすると,被告人Cの刑事責任も軽視することは許されない。 被告人Dは,当該活動が開始された当初からの集団の構成員であり,被告人Cの前任者として,同被告人と同様の重要な役割を果たしていたものである。そして,被告人Dの公判廷における供述態度もまた,被告人A及び同Bに類するものといえ,真摯な反省態度がうかがわれない。そうすると,被告人Dの刑事責任にも軽視しがたいものがある。 他方において,被告人Cは,元妻のすすめもあって自首し,本件各犯行への関与は素直に認めており,被告人A,同B及び同Dについても,本件各犯行の客観 的な事実関係については大筋で認めていて る。 他方において,被告人Cは,元妻のすすめもあって自首し,本件各犯行への関与は素直に認めており,被告人A,同B及び同Dについても,本件各犯行の客観 的な事実関係については大筋で認めていて,各人がそれなりの反省の言葉は述べていること,被害弁償の原資として,被告人Aが約422万円,被告人B及び同Dがいずれも100万円を用意して各弁護人に預けていること,被告人A,同B及び同Dには前科がないこと,被告人Aはその父親が,被告人Bはその母親が,被告人Dはその内妻が,それぞれ各被告人の今後の監督を誓約していることなど,各被告人のためにそれぞれ酌むべき事情があり,さらに,被告人Cについては,現時点においては前刑の執行猶予期間が経過していること,被告人Dについては,同被告人が平成17年7月ころに当該集団を脱退し,起訴にかかる7件のうち関与していたのは2件にとどまることも酌むべき事情といえる。 そこで,これら諸般の事情を総合考慮すると,被告人A,同B及び同Cについては,主文の各実刑をもって臨むのが相当であり,被告人Dについては,一度社会内で自力更生をする機会を与えるのが相当と認められるから,主文の刑の執行を猶予することとした。 (求刑被告人Aについて懲役4年,被告人Bについて懲役3年,被告人Cについて懲役2年,被告人Dについて懲役2年)平成19年1月29日大阪地方裁判所第3刑事部裁判長裁判官樋口裕晃裁判官橋本健裁判官能宗美和

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