【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人岡部博の上告理由について 原審の適法に確定した事実関係によれば、
主文原判決を破棄する。 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。 理由上告代理人岡部博の上告理由について原審の適法に確定した事実関係によれば、(一) 訴外Eは、本件建物を所有していたが、昭和三二年春ごろ、かねて懇意の訴外Fから一二五万円を、利息の定めなく、弁済期二か月後と定めて借り受けたところ、期限に返済できなかつたので、同年五月ごろ期限の猶予を求めるとともに、右債権担保の趣旨で、本件建物につき、売買価額及び予約完結期間を定めず売買の予約をし、Fは、同年一〇月七日これを原因として所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。右仮登記経由当時の被担保債権の残元金は一〇五万円であつた。 (二) その後、被上告人は、Eに対し昭和四二年一二月中に一〇〇万円を貸与し、その担保として本件建物に元本極度額二〇〇万円の根抵当権を設定し、同月一九日その旨登記を経由し、更に、昭和四三年一月から三月にかけて一〇〇万円を貸与し、その担保として本件建物に元本極度額二〇〇万円の根抵当権を設定し、昭和四三年三月六日その旨登記を経由した。 (三) 上告人は、昭和四三年一〇月一五日ごろFに対しEの前記一〇五万円の債務のうち四〇万円を代位弁済したうえ、Fから前記売買予約上の権利を譲り受け(代位弁済された以外の被担保債権は譲り受けなかつた。)、同月二五日その旨所有権移転請求権移転の付記登記を経由し、間もなくEに対し売買予約を完結する旨の意思表示をした。その当時、上告人は、Eに対し、右四〇万円の立替金債権のほか、同人の訴外Gよりの借受金八〇万円の元利金を支払つたことによる求償金債権など合計三〇〇万円を下らない債権を有していた。右予約完結当時における本件建物の- 1 -価額は二三三万〇八七四円であり、訴外Eには本件建物以外にみ 金八〇万円の元利金を支払つたことによる求償金債権など合計三〇〇万円を下らない債権を有していた。右予約完結当時における本件建物の- 1 -価額は二三三万〇八七四円であり、訴外Eには本件建物以外にみるべき資産はなく、また、支払能力もなかつた。 というのである。 上告人の本訴請求は、上告人が右売買予約完結の意思表示によつて本件建物の所有権を取得したことに基づき、右建物の仮登記の本登記手続を得るにつき、右仮登記に劣後する前記各登記を有し、登記上の利害関係人である被上告人に対して不動産登記法一〇五条一項、一四六条一項の承諾を求めるものであるところ、原審は、右事実に基づき、EとFとの間に締結された本件建物の売買予約は、債権担保を目的とするものであり、債務の弁済がなかつた場合に本件建物の所有権を取得するのと同時に、その事実審口頭弁論終結時における評価額から債権者が優先弁済を受けるべき自己の債権額を控除した残額を清算金として債務者に支払うことを要する趣旨の債権担保契約と解すべきであり、上告人は、右予約を完結して担保の目的を実現することができるが、そのためには右仮登記に基づく本登記を経由する必要があり、その前提として登記上利害関係を有する後順位担保権者である被上告人の承諾を得なければならないが、上告人は、被上告人に対し、清算金として、本件建物の原審最終口頭弁論期日における評価額二三三万〇八七四円から、仮登記より先順位の根抵当権者である訴外Hに交付すべき極度額五〇万円及び上告人自身が優先弁済を受けることができる求償金債権四〇万円とこれに対する弁済期の翌日の昭和四三年一〇月一六日から原審最終口頭弁論期日である昭和四五年七月一三日までの年五分の損害金三万四八四九円、以上合計九三万四八四九円を控除した残金一三九万六〇二五円を支払う義務があり、被上告人は右清 四三年一〇月一六日から原審最終口頭弁論期日である昭和四五年七月一三日までの年五分の損害金三万四八四九円、以上合計九三万四八四九円を控除した残金一三九万六〇二五円を支払う義務があり、被上告人は右清算金の支払を受けるのと引換にのみEが上告人に対し仮登記の本登記手続をすることを承諾する義務があるものというべきであり、上告人のEに対する前記求償権以外の債権は、本件建物によつては担保されないのであるから、被上告人に優先して弁済を受けることはできないとして、- 2 -上告人のEに対する求償金債権以外の債権による本件建物の代金債務との相殺の主張を排斥している。 ところで、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その権利(いわゆる仮登記担保権)の内容は、当事者が別段の意思を表示し、かつ、それが諸般の事情に照らして合理的と認められる特別の場合を除いては、債務者に履行遅滞があつた場合に権利者が予約完結の意思を表示し、又は停止条件が成就したときは、権利者において目的不動産を処分する権能を取得し、これに基づいて、当該不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめること(特段の事情のないかぎり、この方法が原則的な形態であると解される。)又は相当の価格で第三者に売却等をすることによつて、これを換価処分し、その評価額又は売却代金等から自己の債権の弁済を得ることにあり、右評価額又は売却代金等の額が権利者の債権額を超えるときは、権利者は、右超過額を清算金として債務者に交付す によつて、これを換価処分し、その評価額又は売却代金等から自己の債権の弁済を得ることにあり、右評価額又は売却代金等の額が権利者の債権額を超えるときは、権利者は、右超過額を清算金として債務者に交付すべきものであるところ、いわゆる仮登記担保権者がかような清算金の支払義務を負うのは、債務者又は仮登記後に目的不動産の所有権を取得してその登記を経由した第三者に対してのみであつて、仮登記後に目的不動産を差し押えた債権者や、これにつき抵当権の設定を受けた第三者等は、仮登記担保権者と直接の清算上の権利義務の関係に立つものではない(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四七三頁参照)。 更に、仮登記担保権者が仮登記担保権によつて担保されない別個の債権をもつて債務者の清算金債権と相殺することができるかどうかを考えてみると、不動産につ- 3 -き金銭債権担保の目的で締結されるいわゆる仮登記担保契約は、債務者に債務不履行があつた場合に、債権者において目的不動産を換価処分し、その換価金から被担保債権の弁済にあてる権能を債権者に与える契約であるから、債権者が右換価金から弁済にあてることができるのは、右の被担保債権についてだけであつて、それ以外の債権の弁済にあてる権能を債権者が当然に有するわけのものではない。それ故、債権者は、仮登記担保権に基づいて不動産を換価処分した場合、その換価金額が被担保債権額を超えるときは、その差額を債務者に返還すべきものであり、このようにして返還されるべきいわゆる清算金は、当該不動産につき仮登記担保権者に劣後する後順位担保権者や差押債権者があるときは、これらの権利者において、右不動産の有する金銭的価値のうち、仮登記担保権者によつて先取された残余価値部分が実現したものとして、その優先順位に従つて に劣後する後順位担保権者や差押債権者があるときは、これらの権利者において、右不動産の有する金銭的価値のうち、仮登記担保権者によつて先取された残余価値部分が実現したものとして、その優先順位に従つて各自の債権の満足にあてうべき対象をなすものである(もつとも、これらの権利者が現実に自己の債権の満足にあてるためには、右の清算金がなお特定性を失わない間にこれを差し押える等しかるべき手続をとらなければならないことは、もちろんである。)。仮登記担保権者が債務者に返還すべき清算金が右のような性質のものであるとすれば、右担保権者は、当該債務者に対して被担保債権以外に別の金銭債権を有する場合でも、前述のように清算金から右債権の弁済を得ることができないのはもちろん、その債権をもつて自己の負担する清算金支払債務と対当額において相殺し、清算金から直接右債権の弁済にあてると同様の効果を生ぜしめることも許されないと解するのが、相当である。 けだし、もしそう解さないと、仮登記担保権者は、本来前記後順位担保権者や差押債権者らとの関係ではこれに優先して弁済を得ることのできないはずの被担保債権以外の債権についてこのような弁済を得られると同様の結果となり、これらの権利者の利益を不当に侵害することとなるからである。 本件において原審の確定した事実によれば、FはEに対し本件売買予約を原因と- 4 -する所有権移転請求権保全の仮登記を経由した当時一〇五万円及びこれに対する弁済期の翌日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の被担保債権を有していたところ、上告人はそのうち四〇万円を代位弁済してFから売買予約上の権利の譲渡を受けたというのであるから、上告人は、Eに対して有する債権につき前記Fの被担保債権額の範囲内において本件建物につき仮登記担保権を取得するが、その余の債権は本件仮 済してFから売買予約上の権利の譲渡を受けたというのであるから、上告人は、Eに対して有する債権につき前記Fの被担保債権額の範囲内において本件建物につき仮登記担保権を取得するが、その余の債権は本件仮登記担保権の被担保債権には属しないのであるから、これをもつて自己のEに対して負担する清算金支払債務と対当額で相殺することは、後順位根抵当権者である被上告人との関係においては、許されないものといわなければならない。 そうすると、これと異なる見解のもとに、上告人に被上告人自身に対する清算金の支払義務を認めた原審の判断は、法令の解釈適用を誤つた違法があり、また、上告人の相殺の主張を排斥した原審の判断は、前記被担保債権額を超える部分については正当であるが、その範囲内の部分については法令の解釈適用を誤つた違法があるものといわなければならず、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであつて、論旨は理由がある。 よつて、原判決を破棄し、相殺の意思表示の有無、その効果等について審理を尽させるため本件を原審に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官坂本吉勝裁判官関根小郷裁判官天野武一裁判官江里口清雄裁判官高辻正己- 5 -
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