令和3年12月23日判決言渡令和2年(行ウ)第77号不当利得返還請求事件(第1事件)令和2年(行ウ)第78号不当利得返還請求事件(第2事件) 主文 1 被告は,原告に対し,160万5935円及びうち84万9796円に対する令和2年2月14日から,うち75万6139円に対する同月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余は原告 の負担とする。 4 この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件 被告は,原告に対し,1001万0611円及びうち931万6943円に対する令和2年2月14日から,うち69万3668円に対する同月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件被告は,原告に対し,410万4000円及びこれに対する令和2年2月1 4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要被告は,▲年▲月▲日に行われた大阪市会の議員の選挙(以下「本件選挙」という。)に当選(再選)したが,令和元年9月6日,大阪地方裁判所において,公職選挙法違反(公職の候補者による買収)の罪により有罪判決(以下「本件有罪 判決」という。)を受けた。本件選挙における被告の当選は,本件有罪判決が令和 2年2月13日に確定したことに伴い,公職選挙法251条により,無効とされた。 本件の第1事件は,原告(大阪市)が,被告は本件選挙における当選の無効により遡って大阪市会議員の職を失ったから,被告に支給した議員報酬及び期末手当の合計1191万1200円(以下「本件報酬等」という 本件の第1事件は,原告(大阪市)が,被告は本件選挙における当選の無効により遡って大阪市会議員の職を失ったから,被告に支給した議員報酬及び期末手当の合計1191万1200円(以下「本件報酬等」という。)は不当利得に当た るなどと主張して,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,本件報酬等のうち,原告が源泉徴収をした所得税額に相当する190万0589円を控除した後の合計額である1001万0611円の返還及びうち931万6943円(令和2年2月分の報酬額を除くもの)に対する本件有罪判決確定の日の翌日である同月14日から,うち69万3668円(同月分の報酬額)に対する受益の日(同 月分の報酬の支給日)である同月17日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による利息の支払を求める事案である。 本件の第2事件は,原告が,被告は本件選挙における当選の無効により遡って大阪市会議員の職を失ったから,被告が所属していた会派であるA(法人ではな く,また,その構成員は被告のみである。以下「本件会派」という。)に交付した政務活動費の合計410万4000円(以下「本件政務活動費」という。)は被告の不当利得に当たるなどと主張して,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,本件政務活動費の合計額である410万4000円の返還及びこれに対する本件有罪判決確定の日の翌日である令和2年2月14日から支払済みまで民法所定の 年5分の割合による利息の支払を求める事案である。 1 前提事実当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実は,次のとおりである。 ⑴ 被告 被告は,▲年▲月▲日に行われた本件選挙に当選(再選)したが,後記⑶ のと いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実は,次のとおりである。 ⑴ 被告 被告は,▲年▲月▲日に行われた本件選挙に当選(再選)したが,後記⑶ のとおり,当該当選が無効とされた者である。当該当選に伴う任期の開始日は,同月30日であった。(甲2,13の3,弁論の全趣旨)⑵ 本件有罪判決の確定に至る経緯被告は,令和元年5月17日,公職選挙法(221条3項1号,同条1項1号)違反(公職の候補者による買収)の被疑事実により逮捕され,その後, 勾留された。 被告は,令和元年6月5日に上記の公訴事実により起訴され,同月6日に保釈された。 被告は,令和元年9月6日,大阪地方裁判所において,懲役1年,執行猶予5年の有罪判決(本件有罪判決)を受けた。 被告は,大阪高等裁判所に控訴したが,令和元年11月21日,控訴棄却判決を受け,最高裁判所に上告したが,令和2年2月7日,上告棄却判決を受け,同月13日,本件有罪判決が確定した。(以上につき,甲1)⑶ 被告の当選無効本件選挙における被告の当選は,令和2年2月13日に本件有罪判決が確 定したことに伴い,公職選挙法251条により,無効とされた。 ⑷ 本件報酬等原告は,本件選挙における被告の当選後,被告に対し,大阪市会議員の報酬,費用弁償及び期末手当に関する条例(以下「本件報酬等条例」という。)2条及び5条並びに大阪市会議員の報酬,費用弁償及び期末手当に関する条 例の特例に関する条例に基づき,別紙1「議員報酬及び期末手当支払額一覧表」記載のとおり,令和元年5月分から令和2年2月分までの議員報酬並びに令和元年6月分及び同年12月分の期末手当として,合計1191万1200円(本件報酬等)を支給した(なお,本件報酬等の額から原告 表」記載のとおり,令和元年5月分から令和2年2月分までの議員報酬並びに令和元年6月分及び同年12月分の期末手当として,合計1191万1200円(本件報酬等)を支給した(なお,本件報酬等の額から原告が源泉徴収をした所得税額を控除した額は,合計1001万0611円である。また, 令和元年条例第4号による改正後の本件報酬等条例3条の2及び5条の2の 規定は,本件には適用されない〔附則2項参照〕。)。(甲2の1・2,3~14の各1~3)⑸ 本件政務活動費被告は,上記⑵の逮捕等を受けて,当時所属していた会派を離脱し,令和元年6月19日,A(本件会派)を結成し,大阪市会議長に会派結成届を提 出した。本件会派は法人ではなく,また,本件会派の構成員は被告のみであった。(甲19)原告は,本件会派の結成後,本件会派に対し,地方自治法100条14項から16項まで,大阪市会政務活動費の交付に関する条例(以下「本件政務活動費条例」という。)2条に基づき,別紙2「政務活動費支払額一覧表」記 載のとおり,令和元年7月分から令和2年2月分までの政務活動費として,合計410万4000円(本件政務活動費)を交付した(甲20~27の各1~3,28)。 普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究その他の活動(以下「調査研究等」という。)に資するため必要な経費の 一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務活動費を交付することができ(地方自治法100条14項),本件政務活動費条例5条は,本件政務活動費条例に基づいて交付された政務活動費の使途基準を定めている(費目としては,①調査研究費,②研修費,③会議費,④資料作成費,⑤資料購入費,⑥広報・広聴費,⑦人件費,⑧事務費,⑨事務所費,⑩要請・陳 情 づいて交付された政務活動費の使途基準を定めている(費目としては,①調査研究費,②研修費,③会議費,④資料作成費,⑤資料購入費,⑥広報・広聴費,⑦人件費,⑧事務費,⑨事務所費,⑩要請・陳 情活動費があり,それぞれその内容が定められている。)。被告による本件政務活動費の使途は,本件政務活動費条例が定める使途基準に適合するものであった。被告は,本件政務活動費のうち,84万9796円を使用しなかった。(甲28,乙4の1~8,5)⑹ 被告の議員活動 被告は,本件選挙における当選に伴う任期の開始日である平成31年4月 30日から本件有罪判決が確定した令和2年2月13日までの間,次のとおり,議員活動に従事した。 ア本会議,委員会の出席等被告は,令和元年9月19日,同年10月9日,同月25日,同年11月19日,同月28日,同月29日,同年12月12日,令和2年2月7 日,大阪市会の本会議に出席した。 また,被告は,令和元年10月1日,同年12月4日,大阪市会の民生保健委員会の定例会常任委員会に出席し,要支援・要介護の認定の制度に関する要望について発言するなどした(乙3の1・2)。 イその他の議員活動 被告は,平成31年4月30日から令和2年2月13日まで,市民からの陳情対応,地域の行事の出席等の議員活動を行った(乙1の1~10,2の1~25)。 ⑺ 第1事件及び第2事件に係る訴訟の提起原告は,令和2年6月22日,第1事件及び第2事件に係る訴訟を提起し た。 ⑻ 被告による相殺の意思表示被告は,令和3年6月29日の本件弁論準備手続期日において,原告に対し,①上記⑹の被告の議員活動により原告が受けた利益(第1事件に係る請求債権額と同額である。)は不当利得に当たると主張して,当該利益に係る不 和3年6月29日の本件弁論準備手続期日において,原告に対し,①上記⑹の被告の議員活動により原告が受けた利益(第1事件に係る請求債権額と同額である。)は不当利得に当たると主張して,当該利益に係る不 当利得返還請求権をもって,原告の第1事件に係る請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をし,また,②上記⑸の被告の調査研究等により原告が受けた利益(第2事件に係る請求債権額と同額である。)は不当利得に当たると主張して,当該利益に係る不当利得返還請求権をもって,原告の第2事件に係る請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。 2 争点⑴ 第1事件関係ア被告が法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたか否か(争点1)イ原告が法律上の原因なく被告の議員活動によって利益を受けたか否か (争点2)⑵ 第2事件関係ア被告が法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたか否か(争点3)イ原告が法律上の原因なく被告の調査研究等によって利益を受けたか否か (争点4) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(被告が法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたか否か)について(原告の主張) 被告は,公職選挙法251条により本件選挙における当選が無効とされたため,遡って大阪市会議員としての職を失った。 地方自治法203条1項,3項,4項及び同法204条の2並びに本件報酬等条例1条の規定に照らせば,大阪市会議員が議員報酬及び期末手当の各支払請求権を有するのは,法律上議員の身分を有することの効果にほかなら ないというべきである。そうすると,公職選挙法251条により当選が無効とされ,遡って失職した大阪市会議員の当選人が,議員報酬及び期末手当を取得する法律上 員の身分を有することの効果にほかなら ないというべきである。そうすると,公職選挙法251条により当選が無効とされ,遡って失職した大阪市会議員の当選人が,議員報酬及び期末手当を取得する法律上の根拠はない。 したがって,被告は,法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたといえる(そして,被告は,公職選挙法違反の有罪判決が確定した令和2年 2月13日,本件報酬等の支給に法律上の原因がないことを認識し,不当利 得について悪意の受益者となった。)。 (被告の主張)普通地方公共団体の議会の議員が議員報酬及び期末手当の支給を受けるのは,法律上議員の身分を有することの効果であるのみならず,一定の役務の対価として与えられる反対給付の側面を有する。 そして,被告は,公職選挙法違反の罪の被疑事実等により身柄拘束を受けていた期間である21日間を除き,相応の議員活動を実際に行ったのであるから,支給を受けた議員報酬及び期末手当と対価性のある議員活動を行ったというべきである。 したがって,被告は,法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けた ものではない。 ⑵ 争点2(原告が法律上の原因なく被告の議員活動によって利益を受けたか否か)について(被告の主張)被告は,身柄拘束を受けていた期間である21日間を除き,本件報酬等と 対価性のある議員活動を実際に行った。そのため,原告は,法律上の原因なく被告の議員活動によって利益を受けたといえる。 そして,被告は,令和3年6月29日の本件弁論準備手続期日において,原告に対し,被告の議員活動により原告が受けた利益に係る不当利得返還請求権をもって,原告の第1事件に係る請求債権とその対当額において相殺す るとの意思表示をした。 したがって,仮に,原告の被告に対する本件 告の議員活動により原告が受けた利益に係る不当利得返還請求権をもって,原告の第1事件に係る請求債権とその対当額において相殺す るとの意思表示をした。 したがって,仮に,原告の被告に対する本件報酬等に係る不当利得返還請求権が成立するとしても,当該請求権は,相殺により消滅した。 (原告の主張)議員活動は,選挙によって住民からの支持を得て有効に選出された議員が 議会に出席するなどして住民の意見を間接的に政治に反映させる点に価値 があるところ,選挙犯罪を行い自ら違法にわい曲した選挙によって選出された議員による議員活動を,適法に議員の身分を有する者の活動と同視することはできない。また,議員報酬は,議員の労務に対する対価という面よりも,法律上議員の身分にあることに対する対価という面が強く,公職選挙法251条は,当選を遡及的に無効とし,この場合に補欠選挙ではなく再選挙を実 施するように定めていることからすれば,同条によって遡及的に議員を失職する者が市政に関与して影響を及ぼすべきではない。これらの事情に鑑みると,同条により当選無効とされた議員による議員活動は,普通地方公共団体に利益をもたらすものではないというべきである。 したがって,原告は,法律上の原因なく被告の議員活動によって利益を受 けたことにはならない。被告の原告に対する不当利得返還請求権(自働債権)は発生しておらず,相殺に関する被告の主張は理由がない。 ⑶ 争点3(被告が法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたか否か)について(原告の主張) ア不当利得返還義務を負う者本件会派は,被告のみが構成員であるいわゆる一人会派であって,法人格がなく,権利能力のない社団にも該当しない。 したがって,被告は,本件会派と実体法上同一人格であり,本 不当利得返還義務を負う者本件会派は,被告のみが構成員であるいわゆる一人会派であって,法人格がなく,権利能力のない社団にも該当しない。 したがって,被告は,本件会派と実体法上同一人格であり,本件会派に対して交付された政務活動費について被告に返還を求めることは妨げら れない。 イ当選無効の効果の遡及効の有無,いわゆる一人会派が交付を受けた政務活動費と議員の当選無効地方自治法100条14項によれば,政務活動費は,地方公共団体の議会の議員の調査研究等に資するための経費の一部として交付されるもの であって,本件政務活動費条例3条1項においても,基準日において当該 会派に所属していた議員(基準日に失職した議員を除く。)の数に応じて算定されることが定められているから,公職選挙法251条による当選無効に伴い,遡って失職した当選人については,その交付の根拠もまた遡って失われる。 したがって,被告は,被告の当選無効に伴い,法律上の原因なく本件政 務活動費によって利益を受けたといえる。 ウ被告の利得被告は,法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたといえる(そして,被告は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日,本件政務活動費の交付に法律上の原因がないことを認識し,不当利得について 悪意の受益者となった。)。 (被告の主張)ア不当利得返還義務を負う者本件政務活動費は被告個人ではなく本件会派に交付されたものであるから,被告は,公職選挙法251条による本件選挙における被告の当選無効 により,法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたことにはならない。 イ当選無効の効果の遡及効の有無,いわゆる一人会派が交付を受けた政務活動費と議員の当選無効被告個人の当選無効による遡及的な 律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたことにはならない。 イ当選無効の効果の遡及効の有無,いわゆる一人会派が交付を受けた政務活動費と議員の当選無効被告個人の当選無効による遡及的な議員の地位の喪失に伴い,本件会派 に対する政務活動費の交付が遡って無効となるわけではないというべきである。 したがって,被告は,被告の当選無効に伴い,法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたことにはならない。 ウ被告の利得 本件政務活動費は,調査研究等と対価関係を有するところ,被告による 本件政務活動費の使途は本件政務活動費条例で定める政務活動費の使途の項目に該当するものであって,本来の目的のために適正に使用されたから,本件政務活動費が交付されたことにより被告個人又は本件会派に利得はない。 ⑷ 争点4(原告が法律上の原因なく被告の調査研究等によって利益を受けた か否か)について(被告の主張)被告は議員活動という正当な目的のために本件政務活動費を使用したから,原告は,法律上の原因なく,本件政務活動費を使用した被告の調査研究等によって利益を受けたといえる。 (原告の主張)選挙犯罪を行い自ら違法にわい曲した選挙によって選出された議員のみが所属する会派の調査研究等を,適法に議員の身分を有する者により構成される会派の活動と同視することはできないから,原告は,法律上の原因なく,本件政務活動費を使用した被告の調査研究等によって利益を受けたことには ならない。そもそも,政務活動費は議員による調査研究等と対価関係にあるものではないから,原告が本件政務活動費に相当する利益を受けたという関係にはない。 したがって,原告は,法律上の原因なく被告の調査研究等によって利益を受けたことにはならない。 究等と対価関係にあるものではないから,原告が本件政務活動費に相当する利益を受けたという関係にはない。 したがって,原告は,法律上の原因なく被告の調査研究等によって利益を受けたことにはならない。被告の原告に対する不当利得返還請求権(自働債 権)は発生しておらず,相殺に関する被告の主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(被告が法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたか否か)について⑴ 被告の公職選挙法251条による当選無効の効果は遡って生ずるか否か ア公職選挙法251条による本件選挙における被告の当選無効の効果は遡 って生ずるか否か公職選挙法251条は,当選人がその選挙に関し同法第16章に掲げる選挙犯罪(ただし,一部の罪を除く。)を犯し刑に処せられたときは,その当選人の当選は,無効とする旨規定する。他方で,同法251条の5は,いわゆる連座制として,選挙運動の総括主宰者,出納責任者等が一定の選 挙犯罪を犯し刑に処せられたときは,当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者であった者の当選は無効とされるところ,当選無効の効果は同法210条1項の規定による訴訟(総括主宰者,出納責任者等の選挙犯罪による公職の候補者であった者の当選の効力に関する訴訟)の判決が確定した時において生ずる旨規定する。このように,同法は,当選人の 選挙犯罪による当選は単に無効とする旨定める一方で,いわゆる連座制による当選の無効は同法210条1項の規定による訴訟の判決が確定した時において生ずる旨定めて,当選の無効の効果が生ずる時期について異なる定めをしている。 また,地方自治法128条は,普通地方公共団体の議会の議員の失職の 時期について,①公職選挙法202条1項,同条2項,同法203条による選 の効果が生ずる時期について異なる定めをしている。 また,地方自治法128条は,普通地方公共団体の議会の議員の失職の 時期について,①公職選挙法202条1項,同条2項,同法203条による選挙無効の異議の申出に対する決定,審査の申立て及び訴訟,②同法206条1項,同条2項,同法207条1項による当選無効の異議の申出,審査の申立て及び訴訟,並びに③同法211条による総括主宰者,出納責任者等の選挙犯罪による選挙無効の訴訟が確定するまでの間は,当該議員 は,その職を失わない旨規定する一方で,地方自治法128条は,当選人の選挙犯罪(公職選挙法第16章に掲げる罪)による訴訟の場合について,それが確定するまでの間はその職を失わない旨の定めを置いておらず,他にこのことを定めた法令の規定は見当たらない。 これらの規定の内容等に照らすと,公職選挙法251条による当選無効 の効果は遡って生じ,当該当選人は初めから当該当選に係る議員としての 地位を取得しなかったことになると解するのが相当である。 イ本件について前記前提事実⑴及び⑵によれば,被告は,▲年▲月▲日に本件選挙において当選したものの,令和元年9月6日に公職選挙法(221条3項1号,同条1項1号)違反(公職の候補者による買収)の罪(同法第16章に掲 げる罪であり,同法251条が除外する罪に当たらない。)により本件有罪判決を受け,本件有罪判決は令和2年2月13日に確定したことが認められる。そうすると,本件有罪判決の確定に伴い,公職選挙法251条により本件選挙における被告の当選無効の効果は遡って生じ,被告は,初めから当該当選に係る大阪市会議員としての地位を取得しなかったといえる。 ⑵ 被告は,公職選挙法251条による被告の当選無効に伴い,法律上の原因なく本件 選無効の効果は遡って生じ,被告は,初めから当該当選に係る大阪市会議員としての地位を取得しなかったといえる。 ⑵ 被告は,公職選挙法251条による被告の当選無効に伴い,法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたことになるか否かア大阪市会議員の当選人は,公職選挙法251条による当選無効に伴い,法律上の原因なく議員報酬及び期末手当によって利益を受けたことになるか否か 地方自治法203条1項は,普通地方公共団体は,その議会の議員に対し,議員報酬を支給しなければならない旨規定し,同条3項は,普通地方公共団体は,条例で,その議会の議員に対し,期末手当を支給することができる旨規定する。また,同法204条の2は,普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,こ れをその議会の議員等に支給することができない旨規定する。そして,本件報酬等条例1条は,本件報酬等条例が,地方自治法203条の規定に基づき,市会議員の報酬,費用弁償及び期末手当について必要な事項を定めることを目的とする旨規定し,本件報酬等条例5条は,6月1日又は12月1日にそれぞれ在職する大阪市会議員には,期末手当を支給する旨規定 する。 「報酬」,「手当」という文言等に照らせば,大阪市会議員に支給される議員報酬及び期末手当が議員活動に対する対価としての性質を有することは否定できないものの,上記の各規定内容に照らせば,大阪市会議員に支給される議員報酬及び期末手当は,基本的には,法律上議員の身分を有することの効果であるといえる。 そうすると,大阪市会議員の当選人が公職選挙法251条によりその当選が無効とされ,遡って議員の身分を失った場合には,当選人が支給を受けた議員報酬及び期末手当は,支給の法的根拠 あるといえる。 そうすると,大阪市会議員の当選人が公職選挙法251条によりその当選が無効とされ,遡って議員の身分を失った場合には,当選人が支給を受けた議員報酬及び期末手当は,支給の法的根拠を欠くこととなり,大阪市会議員の当選人は,公職選挙法251条による当選無効に伴い,法律上の原因なく議員報酬及び期末手当によって利益を受けたといえる。 イ本件についてこれを本件についてみると,被告は,本件有罪判決の確定により,遡って大阪市会議員の職を失ったのであるから,法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたといえる。 したがって,被告は,原告に対し,本件報酬等相当額である1191万 1200円の不当利得返還義務を負う。 そして,被告は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に法律上の原因がないことを確定的に知るに至ったといえるから,その時点で悪意の受益者になったといえる。 そうすると,被告は,原告に対し,不当利得金1191万1200円の 返還義務及びうち1113万7200円に対する本件有罪判決確定の日の翌日である令和2年2月14日から,うち77万4000円に対する受益の日(同月分の報酬の支給日)である同月17日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払義務を負う。 ウ被告の主張について これに対し,被告は,議員報酬及び期末手当は議員活動に対する対価 の性質を有するから,公職選挙法251条による当選無効に伴い,被告が法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたことにはならない旨主張する。 しかし,上記イで説示したとおり,大阪市会議員に支給される議員報酬及び期末手当は,議員活動に対する対価の性質を有するものの,上記 の地方自治法及び本件報酬等条例の規定内容に照らすと 主張する。 しかし,上記イで説示したとおり,大阪市会議員に支給される議員報酬及び期末手当は,議員活動に対する対価の性質を有するものの,上記 の地方自治法及び本件報酬等条例の規定内容に照らすと,基本的には法律上議員の身分を有することの効果であるから,公職選挙法251条による当選無効により遡って議員の身分を失った場合,当選人が法律上の原因なく議員報酬及び期末手当によって利益を受けたといえる。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 また,被告は,身柄拘束されていた期間である21日間を除き,支給を受けた議員報酬及び期末手当と対価性のある議員活動を行ったから,法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受けたことにはならない旨主張する。 しかし,被告は,原告から本件報酬等の支給を受けることにより,本 件報酬等の額について利益を受け,そのために原告に同額の損失を及ぼしたというべきであるから,公職選挙法251条による本件選挙における被告の当選無効により大阪市会議員の身分を失ったことに伴い,被告の本件報酬等に係る利得は法律上の原因を欠き,被告は原告に対して本件報酬等相当額の不当利得返還義務を負うというべきである。なお,原 告が被告の議員活動によって利益を受けたことは,原告の被告に対する不当利得返還義務の成否の検討(後記2)の中で考慮することとする。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 小括以上のとおり,被告は,法律上の原因なく本件報酬等によって利益を受け たといえる。 そして,被告は,原告に対し,不当利得金1191万1200円の返還義務及びうち1113万7200円に対する本件有罪判決確定の日の翌日である令和2年2月14日から,うち77万4000円に対する受益の日( して,被告は,原告に対し,不当利得金1191万1200円の返還義務及びうち1113万7200円に対する本件有罪判決確定の日の翌日である令和2年2月14日から,うち77万4000円に対する受益の日(同月分の報酬の支給日)である同月17日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払義務を負う。 2 争点2(原告が法律上の原因なく被告の議員活動によって利益を受けたか否か)⑴ 判断枠組み上記1⑵アのとおり,議員報酬及び期末手当は,議員活動に対する対価の性質をも有すること等に鑑みると,公職選挙法251条により当選が無効と された当選人が,当選が無効とされるまでに一定の議員活動を行っていた場合には,支給を受けた議員報酬及び期末手当と対価性のある議員活動を行ったといえる。したがって,当該議員活動を金銭的に評価した金額について普通地方公共団体が利益を受けたとして,普通地方公共団体は,当該当選人に対し,同額の不当利得返還義務を負うというべきである。 もっとも,議員活動は,議会における審議・討論にとどまるものではなく,政策形成のための調査研究活動や住民の意思を把握するための諸活動等,広範にわたるものであるものの,その定義,具体的内容について定めた法令の規定は存在しない上,そもそも議員活動は公益の実現を目的とした活動であって営利を図ることを目的とした活動ではないから,個々の議員活動により 普通地方公共団体が利益を受けたか否か,利益を受けたとしてこれを金銭的に評価すること(普通地方公共団体の利得を金銭に換算すること)は,その性質上極めて困難である。また,普通地方公共団体の議員による議員活動の当否は,最終的には当該普通地方公共団体の住民により選挙を通して評価・判断されるべきものであるが,第一次的には当該議員が所 ,その性質上極めて困難である。また,普通地方公共団体の議員による議員活動の当否は,最終的には当該普通地方公共団体の住民により選挙を通して評価・判断されるべきものであるが,第一次的には当該議員が所属する議会により その自律権に基づいて評価・判断されるべき性質の事柄であって,裁判所が 議員活動の当否を判断した上でこれを金銭的に評価すること(すなわち,裁判所が議員活動の当否に踏み込んで普通地方公共団体の利得の有無・内容を判断すること)は,議会の自律権との抵触のおそれもある。そこで,議員活動による普通地方公共団体の利得の有無・内容の認定・判断は,議員活動の当否の判断にわたらない限度,すなわち,議員活動が事実として存在したか 否か等に限るのが相当である。 そうすると,公職選挙法251条により当選が無効とされた当選人による議員活動について,当該当選人が議員活動を全く行わなかったなどの特段の事情がない限り,普通地方公共団体は,当該議員活動により当該当選人に支給された議員報酬及び期末手当と対価的に均衡する利益を受けたとみて,法 律上の原因なく議員報酬及び期末手当と同額の利益を受けたものと解するのが相当である(なお,東京高裁平成13年(行コ)第149号同年11月28日判決・判例時報1780号86頁及び行政実例〔昭和41年5月20日自治行第65号鳥取県総務部長宛行政課長回答。甲34〕も,これと同趣旨をいうものと解される。)。 ⑵ 検討これを本件についてみると,前記前提事実⑴及び⑵のとおり,被告は,平成31年4月30日に大阪市会議員としての任期を開始し,その後,令和元年5月17日に逮捕され,同日から同年6月6日に保釈されるまで身柄拘束を受けており,上記の期間においては議員活動を行うことができなかったの である 市会議員としての任期を開始し,その後,令和元年5月17日に逮捕され,同日から同年6月6日に保釈されるまで身柄拘束を受けており,上記の期間においては議員活動を行うことができなかったの であるから,①被告が身柄拘束を受けていた上記期間(令和元年5月17日から同年6月6日までの21日間)については,上記の特段の事情があると認められる。他方で,前記前提事実⑹によれば,②被告は,平成31年4月30日に大阪市会議員としての任期を開始してから令和2年2月13日に本件有罪判決が確定するまでの期間のうち,身柄拘束を受けていた上記期間を 除いた期間(平成31年4月30日から令和元年5月16日までの17日間 及び同年6月7日から令和2年2月12日までの251日間)については,大阪市会の本会議・委員会の出席,議員としての市民からの陳情対応,地域の行事の出席等の議員活動を行ってきたことが認められ,被告が議員活動を全く行わなかったなどの上記の特段の事情があると認めることはできない。 そうすると,原告は,法律上の原因なく,被告が身柄拘束を受けていた期 間(令和元年5月17日から同年6月6日までの21日間)を除いた期間における被告の議員活動によって利益を受けたといえる。 そして,本件報酬等のうち,被告が身柄拘束を受けていた期間(令和元年5月17日から同年6月6日までの21日間)に対応する部分の金額は,日割計算を行うと,次の計算式のとおり,75万5829円となるから,法律 上の原因なく被告の議員活動によって原告が受けた利益は,本件報酬等の合計額である1191万1200円から上記75万5829円を控除した1115万5371円であると認められる。したがって,原告は,被告に対し,被告の議員活動により受けた利益相当額である1115万5371円の である1191万1200円から上記75万5829円を控除した1115万5371円であると認められる。したがって,原告は,被告に対し,被告の議員活動により受けた利益相当額である1115万5371円の不当利得返還義務を負う。 (計算式)・令和元年5月分又は同年6月分の議員報酬の額である77万4000円について21日の日割計算をした金額 =77万4000円÷31日×21日=52万4322円(小数点以下の端数切捨て)・令和元年6月分の期末手当額である200万6400円について21日 の日割計算をした金額 200万6400円÷182日(平成30年12月1日から令和元年5月31日まで)×21日=23万1507円(小数点以下の端数切捨て)・合計金額 52万4322円+23万1507円=75万5829円⑶ 原告の主張について これに対し,原告は,選挙犯罪を行い自ら違法にわい曲した選挙によって 選出された議員による議員活動を,適法に議員の身分を有する者の活動と同視することはできないなどとして,原告は被告の議員活動によって利益を受けていない旨主張する。 しかし,公職選挙法251条により遡って議員の身分が失われた場合でも,当選が無効とされるまでに当選人が議員活動を行った事実が消滅するわけで はなく,当選が無効とされるまでの議員活動によって普通地方公共団体が事実として一定の利益を受けていることを否定することはできない。また,上記⑴で説示したとおり,議員活動は金銭的な評価がその性質上極めて困難なものであることや,議会の自律権との抵触のおそれがあることから,実際に行われた議員活動の評価をその当否の判断にわたらない限度で行うことが相 当である。さらに,本件に即してみても,被告は,前記前提事実⑹のとおり事実と 自律権との抵触のおそれがあることから,実際に行われた議員活動の評価をその当否の判断にわたらない限度で行うことが相 当である。さらに,本件に即してみても,被告は,前記前提事実⑹のとおり事実として各種の議員活動に従事しているところである。これらの事情に照らすと,公職選挙法251条により本件選挙における被告の当選が無効とされたことをもって,原告が被告の議員活動によって利益を受けていないということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括以上のとおり,原告は,法律上の原因なく,被告が身柄拘束を受けていた期間(令和元年5月17日から同年6月6日までの21日間)を除いた期間における被告の議員活動によって利益を受けたといえる。 そして,原告は,被告に対し,被告の議員活動により受けた利益相当額である1115万5371円の不当利得返還義務を負う。 3 争点3(被告が法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたか否か)について⑴ 不当利得返還義務を負う者 前記前提事実⑸のとおり,本件会派は法人ではなく,また,本件会派の構 成員は被告のみであるから,被告は,本件会派が原告から本件政務活動費の交付を受けたことにより,法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受け,そのために原告に同額の損失を及ぼしたというべきである。 ⑵ 被告の本件政務活動費に係る利得が法律上の原因を欠くか否かア被告の公職選挙法251条による当選無効の効果は遡って生ずるか否 か公職選挙法251条による当選無効の効果が遡って生じ,被告が初めから当該当選に係る議員の地位を取得しなかったことになることは,上記1⑴で説示したとおりである。 本件政務活動費条例に基づく政務活動費の交付を受けた会 による当選無効の効果が遡って生じ,被告が初めから当該当選に係る議員の地位を取得しなかったことになることは,上記1⑴で説示したとおりである。 本件政務活動費条例に基づく政務活動費の交付を受けた会派に所属 する議員(当選人)が1人であり,かつ,当該会派が法人でない場合において,公職選挙法251条により当該当選人の当選が無効とされ,当該当選人が遡って失職したときの法的効果地方自治法100条14項は,政務活動費は,議員の調査研究その他の活動に資するための必要な経費の一部として交付する旨規定し,本件 政務活動費条例1条は,大阪市会議員の市政に関する調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として政務活動費を交付する旨規定する。また,本件政務活動費条例2条は,政務活動費は,大阪市会における会派及び議員に対して交付するとし,交付の対象となる会派には,当該会派に所属する議員が1人の場合を含む旨規定する。これらの規定 内容等に照らせば,本件政務活動費条例に基づく政務活動費の交付対象である会派とは,法律上議員の身分を有する者が所属する会派をいうと解するのが相当である。 そうすると,本件政務活動費条例に基づく政務活動費の交付を受けた会派に所属する議員(当選人)が1人であり,かつ,当該会派が法人で ない場合において,公職選挙法251条により当該当選人の当選が無効 とされ,当該当選人が遡って失職したときは,当該当選人は,当該当選人が法律上の原因なく政務活動費によって利益を受けたものとして,普通地方公共団体に対し,同額の不当利得返還義務を負うというべきである。 イこれを本件についてみると,前記前提事実⑵,⑶及び⑸のとおり,本件 会派の構成員は被告のみであり,本件会派は法人ではないところ,被告は,本件有罪判 当利得返還義務を負うというべきである。 イこれを本件についてみると,前記前提事実⑵,⑶及び⑸のとおり,本件 会派の構成員は被告のみであり,本件会派は法人ではないところ,被告は,本件有罪判決の確定により,遡って大阪市会議員の身分を失ったのであるから,原告に対し,本件政務活動費相当額である410万4000円の不当利得返還義務を負う。 そして,被告は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に法律上 の原因がないことを確定的に知るに至ったといえるから,その時点で悪意の受益者になったといえる。 そうすると,被告は,原告に対し,不当利得金410万4000円の返還義務及びこれに対する本件有罪判決確定の日の翌日である令和2年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払義務を 負う。 ⑶ 被告の主張についてアこれに対し,被告は,本件政務活動費は,被告個人ではなく,本件会派に交付されたものであるから,本件選挙における被告の当選が無効とされたことにより,被告が,法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を 受けたことにはならない旨主張する。 しかし,上記⑵アのとおり,本件政務活動費条例に基づく政務活動費の交付を受けた会派に所属する議員(当選人)が1人であり,かつ,当該会派が法人でない場合において,公職選挙法251条により当該当選人の当選が無効とされ,当該当選人が遡って失職したときは,当該当選人は,普 通地方公共団体に対し,当該会派が交付を受けた政務活動費相当額の不当 利得返還義務を負うというべきであるところ,本件会派の構成員は被告のみであり,かつ,本件会派は法人ではないから,被告は,公職選挙法251条により本件選挙における当選が無効とされた以上,原告に対し,本件政務活動費相 うというべきであるところ,本件会派の構成員は被告のみであり,かつ,本件会派は法人ではないから,被告は,公職選挙法251条により本件選挙における当選が無効とされた以上,原告に対し,本件政務活動費相当額の不当利得返還義務を負うというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イまた,被告は,本件政務活動費の使途は,本件政務活動費条例で定める政務活動費の使途の項目に該当するものであって,本来の目的のために適正に使用されたから,被告個人又は本件会派に利得はない旨主張する。 しかし,本件において,本件会派(被告)が本件政務活動費の交付を受けたことはそれ自体が被告の利得であり,そのために原告に同額の損失を 及ぼしたというべきである。なお,原告が被告の調査研究等によって利益を受けたことは,原告の被告に対する不当利得返還義務の成否の検討(後記4)の中で考慮することとする。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括 以上のとおり,被告は,法律上の原因なく本件政務活動費によって利益を受けたといえる。 そして,被告は,原告に対し,不当利得金410万4000円の返還義務及びこれに対する本件有罪判決確定の日の翌日である令和2年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払義務を負う。 4 争点4(原告が法律上の原因なく被告の調査研究活動等によって利益を受けたか否か)について⑴ 判断枠組み普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行うことができ(地方自治法100条1項),普通地方公共団体は,条例の定 めるところにより,その議会の議員の調査研究その他の活動(調査研究等) に資するため必要な経費の一部として,その議会におけ ができ(地方自治法100条1項),普通地方公共団体は,条例の定 めるところにより,その議会の議員の調査研究その他の活動(調査研究等) に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し,政務活動費を交付することができる(同条14項)。これらの規定内容に照らすと,政務活動費は,普通地方公共団体の議会の調査権に基づく調査に資するものであるし,その「経費」としての性質を有するものと解される。 そうすると,公職選挙法251条により当選が無効とされた当選人が,当選 が無効とされるまでに一定の調査研究等を行っていた場合には,少なくとも交付を受けた政務活動費に相当する調査研究等を行っていたといえるから,当該調査研究等を金銭的に評価した金額について普通地方公共団体が利益を受けたとして,普通地方公共団体は,当該当選人に対し,同額の不当利得返還義務を負うというべきである。 もっとも,調査研究等は,議員報酬及び期末手当と同様に,これを金銭的に評価することは,その性質上極めて困難であり,また,実際に行われた調査研究等の当否についても,第一次的には議会がその自律権に基づいて評価・判断すべき性質の事柄であって,裁判所が調査研究等の当否を判断した上でこれを金銭的に評価することは議会の自律権との抵触のおそれもある。 そこで,調査研究等による普通地方公共団体の利得の有無・内容の認定・判断は,実際に行われた調査研究等の評価の当否の判断にわたらない限度,すなわち,調査研究等の存否,使途の適否等に限るのが相当である。 そうすると,公職選挙法251条により当選が無効とされた当選人による調査研究等について,当該当選人が調査研究等を全く行わなかった場合や, 政務活動費の使途が条例で定める基準に違反している場合等の特段の事情 公職選挙法251条により当選が無効とされた当選人による調査研究等について,当該当選人が調査研究等を全く行わなかった場合や, 政務活動費の使途が条例で定める基準に違反している場合等の特段の事情がない限り,普通地方公共団体は,当該調査研究等により当該当選人に交付された政務活動費に相当する利益を受けたとみて,法律上の原因なく政務活動費と同額の利益を受けたものと解するのが相当である。 ⑵ 検討 これを本件についてみると,本件記録によっても,被告が調査研究等を全 く行わなかったと認めることはできず,また,前記前提事実⑸のとおり,被告による本件政務活動費の使途は本件政務活動費条例に定める使途基準に適合しているから,原告は,少なくとも,被告が行った調査研究等により本件政務活動費に相当する利益を受けたといえる(なお,本件政務活動費は,令和元年7月分から令和2年2月分までのものであって,被告が身柄拘束を 受けていた令和元年5月17日から同年6月6日までよりも後のものであること〔前記前提事実⑵及び⑸〕に加えて,政務活動費は,議員報酬及び期末手当が議員活動に対する対価の性質を有する〔上記1⑵ア〕のと異なり,調査研究等の経費の一部として交付されるものであって〔上記⑵ア〕,日割計算になじまない性質のものであるから,被告が身柄拘束を受けていた期間に ついて日割計算を行わない。)。 そうすると,原告は,被告の調査研究等により,本件政務活動費に相当する額について,法律上の原因なく利益を受けたといえる。 もっとも,前記前提事実⑸のとおり,被告は本件政務活動費のうち84万9796円を使用しなかったというのであるから,この金額に相当する部分 については,被告が調査研究等を全く行わなかったものとして,上記特段の事情があるというべき 告は本件政務活動費のうち84万9796円を使用しなかったというのであるから,この金額に相当する部分 については,被告が調査研究等を全く行わなかったものとして,上記特段の事情があるというべきである。 したがって,原告は,被告に対し,被告の調査研究等により受けた利益相当額である325万4204円(410万4000円-84万9796円)の不当利得返還義務を負う。 ⑶ 原告の主張についてこれに対し,原告は,選挙犯罪を行い自ら違法にわい曲した選挙によって選出された議員のみが所属する会派の調査研究等を,適法に議員の身分を有する者により構成される会派の活動と同視することはできないから,原告は,法律上の原因なく,本件政務活動費を使用した被告の調査研究等によって利 益を受けたことにはならない旨主張する。 しかし,上記2⑶で説示したところに加えて,政務活動費が議員報酬及び期末手当と異なり日割計算になじまないものであるとはいえ,これに相当する普通地方公共団体の利益を観念することができる(上記⑵)。また,本件に即してみても,被告は,前記前提事実⑸のとおり,事実として本件政務活動費を本件政務活動費条例が定める使途基準に適合する使途に用いていると ころである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括以上のとおり,原告は,法律上の原因なく被告の調査研究活動等によって利益を受けたといえる。 そして,原告は,被告に対し,被告の調査研究等により受けた利益相当額である325万4204円の不当利得返還義務を負う。 5 相殺⑴ア上記1⑵イのとおり,原告は,被告に対し,本件報酬等の額である合計1191万1200円の返還請求権及びうち1113万7200円に対す る令和2年2月14日から, 務を負う。 5 相殺⑴ア上記1⑵イのとおり,原告は,被告に対し,本件報酬等の額である合計1191万1200円の返還請求権及びうち1113万7200円に対す る令和2年2月14日から,うち77万4000円に対する同月17日から各支払済みまでそれぞれ民法所定の年5分の割合による利息支払請求権を有する。 イ上記3⑵イのとおり,原告は,被告に対し,本件政務活動費の額である410万4000円の返還請求権及びこれに対する令和2年2月14日か ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息支払請求権を有する。 ウ上記2⑵のとおり,被告は,原告に対し,1115万5371円の不当利得返還請求権を有する。 エ上記4⑵のとおり,被告は,原告に対し,325万4204円の不当利得返還請求権を有する。 オ前記前提事実⑻のとおり,被告は,令和3年6月29日,原告に対し, ①上記ウの不当利得返還請求権をもって,上記アの債権とその対当額において相殺するとの意思表示をし,また,②上記エの不当利得返還請求権をもって,上記イの債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。 ⑵ア上記⑴ウ(自働債権)と上記⑴ア(受働債権)との相殺について受働債権についてみると,原告の被告に対する不当利得返還請求権のう ち,①令和元年5月分から令和2年1月分の議員報酬及び期末手当の令和元年6月分及び同年12月分に係る不当利得返還請求権(合計1113万7200円)は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に発生し,②令和2年2月分の議員報酬の不当利得返還請求権(77万4000円)は,同月17日に発生した。 他方で,自働債権についてみると,③令和元年5月分から令和2年1月分の議員報酬及び期末手当に対応する議員活動に係る 酬の不当利得返還請求権(77万4000円)は,同月17日に発生した。 他方で,自働債権についてみると,③令和元年5月分から令和2年1月分の議員報酬及び期末手当に対応する議員活動に係る不当利得返還請求権(合計1038万1371円)は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に発生し,④同月分の議員報酬に対応する議員活動に係る不当利得返還請求権(77万4000円)は,同月17日に発生した。 まず,上記①の受働債権と上記③の自働債権は,令和2年2月13日に相殺適状となっており,これらを対当額で相殺すると,上記①の受働債権は75万5829円残存し,上記③の自働債権は全て消滅する。 次に,上記①の残存する受働債権(残元金債権75万5829円とその法定利息債権310円〔令和2年2月14日から同月16日までに発生し たもの〕)及び上記②の受働債権と上記④の自働債権は,同月17日に相殺適状となっており,これらを対当額で相殺すると,第1に,上記①の受働債権のうち法定利息310円が上記④の自働債権に充当され(残額は77万3690円),第2に,上記①の受働債権のうち残元金75万5829円が上記④の残額の自働債権に充当され(残額は1万7861円),第3に, 上記②の受働債権が上記④の残額の自働債権に充当され,その結果,上記 ①の受働債権及び上記④の自働債権は全て消滅し,上記②の受働債権は75万6139円残存する(これに対する法定利息は同月17日から発生する。)。 イ上記⑴エ(自働債権)と上記⑴イ(受働債権)との相殺について受働債権についてみると,①本件政務活動費に係る不当利得返還請求権 (合計410万4000円)は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に発生した。 他方で,自働債権についてみ て受働債権についてみると,①本件政務活動費に係る不当利得返還請求権 (合計410万4000円)は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に発生した。 他方で,自働債権についてみると,②本件政務活動費に対応する調査研究等に係る不当利得返還請求権(合計325万4204円)は,本件有罪判決が確定した令和2年2月13日に発生した。 そこで,上記①の受働債権と上記②の自働債権は,令和2年2月13日に相殺適状となっており,これらを対当額で相殺すると,上記①の受働債権は84万9796円残存し(これに対する法定利息は同月14日から発生する。),上記②の自働債権は全て消滅する。 ⑶ まとめ 第1事件の関係では,被告は,原告に対し,75万6139円及びこれに対する令和2年2月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息を支払う義務がある。 第2事件の関係では,被告は,原告に対し,84万9796円及びこれに対する令和2年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息 を支払う義務がある。 したがって,被告は,原告に対し,160万5935円及びうち84万9796円に対する令和2年2月14日から,うち75万6139円に対する同月17日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息を支払う義務がある。 第4 結論よって,原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官新宮智之 裁判官山田慎悟 部 裁判長裁判官 山地修 裁判官 新宮智之 裁判官 山田慎悟 (別紙1及び同2省略)
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