令和5(わ)668 公契約関係競売入札妨害被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月18日 札幌地方裁判所
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判決文本文29,360 文字)

- 1 -令和6年4月18日宣告令和5年(わ)第668号判決被告人3名に対する公契約関係競売入札妨害被告事件について、当裁判所は、検察官園麻美、被告人Aの私選弁護人小野寺優剛、被告人Bの私選弁護人中野雅文(主任)、大野正裕及び河口直規並びに被告人Cの私選弁護人太田貴久(主任)、米屋佳史及び山形勝各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人Aを懲役1年に、被告人B及び被告人Cをそれぞれ懲役6月に処する。 この裁判確定の日から、被告人Aに対し3年間、被告人B及び被告人Cに対し2年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、KKR札幌医療センター(以下「医療センター」という。)の事務部長として医療センター敷地内保険調剤薬局整備運営事業(以下「本件事業」という。)に関する事務を統括していたもの、被告人Bは、調剤薬局の経営等を業とする株式会社DのE支店支店長として同支店の業務を統括していたもの、被告人Cは、同社の全株式を保有し、調剤薬局の経営等を業とする株式会社F(前記Dと併せて又は両者を区別せず以下「G」という。)の開発統括本部本部長として同社が参加する医療機関の敷地内保険調剤薬局整備運営事業の企画競争等に関する営業支援業務を統括していたものであるが、被告人3名は、医療センターが企画競争により本件事業に関する契約(以下「本件契約」という。)の優先交渉権者を決定するとしていたことに関し、前記Fを本件契約の企画競争(以下「本件企画競争」という。)における最優秀提案者とし、同社に本件契約の優先交渉権を得させようと考え、前記DE支店従業員Hと共謀の上、本件企画競争に参加する事業者は提案内容を記載- 2 -した企画提案書を令和2 という。)における最優秀提案者とし、同社に本件契約の優先交渉権を得させようと考え、前記DE支店従業員Hと共謀の上、本件企画競争に参加する事業者は提案内容を記載- 2 -した企画提案書を令和2年12月18日午後0時までに提出することとされており、前記Fは、それまでに、本件事業に必要な土地を医療センターから借り受けることに対する賃借料として、同センターに月額450万円を支払うなどと記載した企画提案書を提出していたところ、被告人Aが、企画提案書の提出期限を過ぎた同日午後、札幌市(住所省略)所在の医療センターにおいて、被告人Bに対し、前記F以外の事業者が前記Fより高い支払額を提案していることやその概算を教示した上、企画提案書の提出後の追加及び変更は認められないとされていたにもかかわらず、前記Fから提出された企画提案書を返還し、賃借料等の支払額を増額した企画提案書を再提出するよう持ちかけ、被告人B及び被告人Cが、土地の賃借料として医療センターに月額750万円、保証金として5億2000万円を支払うなどとする内容の企画提案書を再提出することを決定し、Hらに、その旨記載した企画提案書を作成させた上、同月23日、Hに、同企画提案書を医療センターに再提出させ、もって偽計を用いて公の入札で契約締結するためのものの公正を害すべき行為をした。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断)第1 争点本件の争点は、刑法96条の6第1項該当性に関し、①医療センターが「公の」入札等実施主体に該当するかどうか、②本件企画競争は同法所定の「入札」及び「契約を締結するためのもの」に該当し、また、判示の企画提案書の再提出が「公正を害すべき行為」に該当するかどうか、さらに、③被告人Cに関し、故意及び共謀が認められるかどうか、である。以下、順次検討する。 第2 本件 めのもの」に該当し、また、判示の企画提案書の再提出が「公正を害すべき行為」に該当するかどうか、さらに、③被告人Cに関し、故意及び共謀が認められるかどうか、である。以下、順次検討する。 第2 本件企画競争及び被告人らの行為の刑法96条の6第1項該当性 1 前提事実⑴ 被告人Aは、国家公務員共済組合連合会(KKR)の病院事務として採用され、令和2年(以下特段の記載がない限り令和2年は省略する。)4月に医療センターに事務部長として異動となる前の勤務先でDの被告人B及びHと知り合い、同人ら- 3 -が同じ高校の野球部の後輩ということもあり、特に被告人Bとは公私ともに付き合いがあった。 被告人Aは、被告人Bから敷地内薬局について説明を受けたことを契機にその開設に強い魅力を感じていた。医療センターへの異動後、被告人Aは、過去の実績があって経営状態も安定しており、被告人Bらの対応も信頼できるGに敷地内薬局の開設を依頼すれば、医療センターにとっても有益であると考えた。 被告人Aは、病院長に対して敷地内薬局の利点を重ねて説明し、本件事業実施の内諾を得た。そこで、病院長らが出席し医療センターの運営に係る重要事項を決定する場である管理者会議が複数回開かれ、被告人Aが参加者に対して敷地内薬局開設の利点を説明した。その際の質疑応答において、参加者から、「こうなんの杜」と呼ばれる緑化スペースを薬局開設候補地の1つとして挙げることへの懸念、薬局内に福利厚生スペース等を設けるといった要望等が示された。被告人Aは、後述のとおり、Gとの打合せの中でこれらの要望等に対応できることを聞いていたため、薬局側はこれらの要望等を実現できると言っているなどと伝えていた。 最終的に、管理者会議における賛成が得られ、本件事業の実施が決定した。事業者の選定は公募型企画競 対応できることを聞いていたため、薬局側はこれらの要望等を実現できると言っているなどと伝えていた。 最終的に、管理者会議における賛成が得られ、本件事業の実施が決定した。事業者の選定は公募型企画競争の方式によることとされ、病院長や被告人Aら7名を委員とした敷地内保険調剤薬局選定委員会が設置された。 ⑵ 他方、被告人Aは、管理者会議と並行してGとのみ打合せを行い、こうなんの杜移設や福利厚生スペース等の設置が要望されていることを伝え、Gから薬局2階に福利厚生等のスペースを設けるなどの提案を受けていた。 また、部下であるIに、Hらと連絡を取り合って本件企画競争の準備をするよう指示し、Iを通じ、Gに対し、こうなんの杜に敷地内薬局を開設した場合の緑化率や専門家による想定賃料の調査、他の病院で行われた企画競争の公募要領の収集等を依頼した。 被告人AとIは、Gから入手した公募要領等に基づき、本件企画競争の公募要領(以下「本件公募要領」という。)を作成するとともに、不動産鑑定によって算出- 4 -された月額賃借料をもとに予定価格を計算し、これらを病院長らが決裁した。 ⑶ 本件公募要領には、企画提案書として、以下の8項目を記載したものを提出することが記載されている。 ①事業者の概要・経営状況(薬局運営実績、同事業の対応実績等を含む)②本件薬局の建築基本方針(配置、面積、設計コンセプト、設備、パース、レイアウトイメージ等)③運営方針及び実施体制(営業日、営業時間、人的体制、在庫管理等)④危機管理及び災害・緊急時体制(薬品の応需体制、バックアップ体制等)⑤事業スケジュール(設計、工事から開局までのスケジュール)⑥収支計画(本事業の永続性及び安定性を示す事業計画)⑦月額賃借料(㎡単価、算定根拠)⑧その他自由提案( クアップ体制等)⑤事業スケジュール(設計、工事から開局までのスケジュール)⑥収支計画(本事業の永続性及び安定性を示す事業計画)⑦月額賃借料(㎡単価、算定根拠)⑧その他自由提案(本事業の目的を鑑み独自の提案があれば記載すること)また、提出書類について、提出された書類は返却せず部外秘とされ、提出後の追加及び変更は認めないが、審査に必要な書類の提出を求める場合があると記載されている。審査方法については、前記選定委員会において、提出書類及びプレゼンテーションによる審査を行い、応募提案の企画内容、事業者等の経験、過去の実績等について総合的に評価し、優先交渉権者を決定すると記載されている。選定後の手続については、優先交渉権者の決定後、病院運営と調整を図るため、薬局開設に伴う協議を行うが、提案内容は尊重しつつもこれに拘束されず、協議によって変更が生じる場合があるなどと記載されている。 ⑷ 採点方法については、前記選定委員会の各委員が、応募した事業者の企画提案書の内容、運営・実施体制、収支計画、応募者の運営実績等を総合的に審査し、企画提案内容について、本件公募要領記載の前記8審査項目に従って、それぞれ採点するものとされた。配点は非公表であり、①事業者の概要・経営状況5点、②本件薬局の建築基本方針10点、③運営方針及び実施体制5点、④危機管理及び災害・緊急時体制5点、⑤事業スケジュール5点、⑥収支計画20点、⑦月額賃借料等3- 5 -0点、⑧その他自由提案20点の合計100点満点とされた。 11月11日、本件企画競争は、紙面を病院内に掲示する形式で公告された。本件公募要領交付期限は同月20日までとされ、企画提案書の提出締切日時は12月18日午後0時、プレゼンテーションは同月24日に実施するとされた。 ⑸ 被告人Aは、本件 内に掲示する形式で公告された。本件公募要領交付期限は同月20日までとされ、企画提案書の提出締切日時は12月18日午後0時、プレゼンテーションは同月24日に実施するとされた。 ⑸ 被告人Aは、本件公募要領作成に当たって、Iから医療センターの希望事項やその事項を提案内容に盛り込むことを応募条件とする旨を記載する必要があるか確認されたが、その必要はない旨答えた。また、10月末頃、G以外の事業者から敷地内薬局の企画競争実施予定の有無を問われた際には、その検討はされていない旨事実と異なる回答をした。 さらに、公告後、本件公募要領を入手したG以外の事業者から病院の要望等を問われた際には、何ら要望等を伝えなかった。 ⑹ 本件企画競争には、12月21日午後0時の期限までに5社が応募し、うち1社は書類選考で不合格とされ、12月24日に4社がプレゼンテーションを実施し、前記選定委員会委員らによる採点の結果、Fが最優秀提案者に選出された。 2 医療センターは「公の」入札等実施主体に該当するか本件企画競争の実施主体である医療センターは、国家公務員共済組合連合会が設置する病院の1つである。 同連合会は、国家公務員の病気等に関して適切な給付を行い、国家公務員等の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに、公務の能率的運営に資するという国家公務員共済組合法の目的(同法1条)に従い、同法上同連合会の業務とされている福祉事業に関する業務(同法21条2項3号)の一環として病院を設置している。 そして、本件事業も、病院利用者の利便等に資する施設の整備事務であり、福祉事業に関する業務といえる。弁護人は、実際に行われる事業内容は民間企業によるものと相違ない旨主張するが、あくまで上記のような公務の能率的運営等との関係で実施されるものであるから、本件事業について公務性が に関する業務といえる。弁護人は、実際に行われる事業内容は民間企業によるものと相違ない旨主張するが、あくまで上記のような公務の能率的運営等との関係で実施されるものであるから、本件事業について公務性が認められる。 また、同連合会は国家公務員共済組合法に基づく法人であり(同法22条)、同- 6 -連合会職員は罰則の適用において公務員とみなされる(同法13条、36条)。そして、同連合会の事業計画及び予算は毎事業年度財務大臣の認可を受け(同法15条、36条)、業務執行や財産状況は財務大臣からの監督、監査を受け(同法116条)、理事長や一定の理事、幹事は財務大臣が任命するかその認可を受けて理事長が任命するとされており(同法29条)、事業内容、人事、財政面において国による相当程度の監督下に置かれている。 以上のような事業の公務性、同連合会の公法人該当性、職員の公務員性、国による監督の度合いからすれば、本件事業は、国・地方公共団体に準ずる団体が実施する公務性を有する事業といえるから、同事業に関する本件企画競争は「公の」入札等といえる。 3 本件企画競争は「入札」に該当するか⑴ 最高裁判所昭和33年4月25日第2小法廷判決(刑集12巻6号1180頁、以下「昭和33年判例」という。)は、昭和16年法律第61号による改正後の刑法(平成23年法律第74号等による改正前のもの、以下「旧刑法」という。)96条の3第1項(競売入札妨害罪)が保護対象とする「入札」の意義について、当該工事の施行者において落札者を決定するにあたり、入札の結果施行者に最も有利な条件を申し出たことを契約締結の唯一の要素とする場合のみでなく、そのことを重要の要素としつつこれにその他の条件を加味して落札者を決定することができる場合も、競争入札の実質を有するものであるから、同項にい を申し出たことを契約締結の唯一の要素とする場合のみでなく、そのことを重要の要素としつつこれにその他の条件を加味して落札者を決定することができる場合も、競争入札の実質を有するものであるから、同項にいう「入札」に含まれるとする。検察官は、昭和33年判例に基づき、本件企画競争のような会計法規上競争入札の形式でないものも、競争入札の実質を具備している場合には、入札に該当することを前提に、本件企画競争は競争入札の実質を有するものとして「入札」に該当する旨主張する。 これに対し、被告人B及び被告人C(以下「被告人両名」ということがある。)の各弁護人(以下「被告人両名の弁護人」ということがある。)は、昭和33年判例の射程は本件企画競争のような事案には及ばず、企画競争といった会計法、予算- 7 -決算及び会計令等所定の随意契約(本件企画競争も同令同様の省令に基づく随意契約である。)は、一般的に刑法96条の6第1項の「入札」には該当しない旨主張し、また、本件企画競争は競争入札の実質を有しない旨も主張しており、昭和33年判例を前提としても「入札」には該当しないというものと解される。 ⑵ 会計法等所定の随意契約の一種として行われる企画競争が刑法96条の6第1項の「入札」に該当し得るか旧刑法96条の3第1項制定時、会計法上、契約方式として、一般競争契約、指名競争契約、随意契約が規定されていた。 昭和36年、会計法改正により、一般競争又は指名競争入札における総合評価落札方式(価格と価格以外の要素を総合的に評価して発注者にとって最も有利な者を落札者とする方式)の根拠となる規定が設けられた(同法29条の6第2項)。 その後、不適切な随意契約等が指摘されるようになり、平成18年8月25日、「公共調達の適正化について」と題する財務大臣通知(財計第20 方式)の根拠となる規定が設けられた(同法29条の6第2項)。 その後、不適切な随意契約等が指摘されるようになり、平成18年8月25日、「公共調達の適正化について」と題する財務大臣通知(財計第2017号)が発せられ、従来、競争性のない随意契約を行ってきたものについては、一般競争入札(総合評価落札方式を含む。)又は企画競争(複数の者に企画書等の提出を求め、その内容について審査を行う方式)若しくは公募(どのような設備又は技術等が必要かを明らかにした上で参加者を募る方式)を行うこととされた。また、企画競争を行う場合には、特定の者が有利とならないよう、参加者を公募すること、業者選定に当たっては業務担当部局だけではなく契約担当部局も関与する必要があること、審査にあたってあらかじめ具体的に定めた複数の採点項目により採点を行うこと等により、競争性及び透明性を担保するものとされた。その後、国家公務員共済組合連合会に対しても同様の口頭指示がされた。企画競争の態様も様々あるが、現在、企画提案を公募した上、最も優れた企画提案を行った者を選定し、被選定者と交渉の上、契約を締結するという公募型企画競争も、会計法等所定の随意契約の一形態として広く実施されている。 以上のとおり、旧刑法96条の3第1項が定められた当時、総合評価落札方式の- 8 -競争入札や一定の競争性を担保した契約方式である企画競争は念頭に置かれていたわけではない。同項の「入札」に企画競争が含まれるかどうかは、解釈に委ねられているというべきである。 また、弁護人は、平成23年における旧刑法96条の3の改正に際して企画競争等に対する手当てがされなかったこと、平成14年に成立した入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下「官製談合防止 の3の改正に際して企画競争等に対する手当てがされなかったこと、平成14年に成立した入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下「官製談合防止法」という。)が、処罰対象として企画競争等を含み得る文言を設けたのに、刑法96条の6第1項において同様の手当てがされなかったことを理由に、企画競争は「入札」に該当しない旨主張する。 しかし、平成23年改正は、強制執行を妨害する犯罪等に対する罰則整備を目的とし、旧刑法96条の3のうち強制執行に関するものを96条の4として独立して規定したため、残余の部分をこれと区別するために「契約を締結するためのもの」という文言を加えたものであり、公の「入札」の範囲については、何ら変更されていないと理解すべきである。官製談合防止法との関係についても、既に昭和33年判例によって「入札」の範囲について、競争入札の実質を有するものも含むとする解釈が成立している以上、旧刑法96条の3について同様の文言の修正を行うかどうかは立法政策の問題であり、「入札」の意義を制限的に解する理由にはならないと考えられる。 そして、前記のとおり、会計法制定当時と比べ、競争契約又は随意契約という枠組みの中で行われる契約の方式も多様化しており、総合評価落札方式の入札と企画競争には相当程度の類似性がみられる。このような契約方式の相対化も踏まえれば、競争入札の実質を有する会計法上の随意契約が刑法96条の6第1項における「入札」に該当するとしても、罪刑法定主義に反するものではないと考えられる。 以上のとおり、会計法等所定の随意契約として実施された契約方式であっても、個別に検討した上、競争入札の実質を有するといえる場合には、刑法96条の6第1項の「入札」に該当すると解するのが相当である。 - とおり、会計法等所定の随意契約として実施された契約方式であっても、個別に検討した上、競争入札の実質を有するといえる場合には、刑法96条の6第1項の「入札」に該当すると解するのが相当である。 - 9 -⑶ そこで、本件企画競争が、競争入札の実質を有するかどうかについて、企画競争の一般的な特質や本件企画競争の特殊事情も考慮しつつ、検討することとする。 ア本件企画競争の内容面について検討する。 最低価格落札方式の競争入札においては、入札価格によって機械的に優劣が決定されることと比較すると、企画競争や総合評価落札方式の競争契約は、価格面以外の要素も考慮して判断するものであって、判断の客観性はある程度損なわれることになる。しかし、このことは、価格以外の条件を加味して評価することに伴う制約であって、直ちに単なる随意契約のような裁量性を意味することにはならず、できる限り公平で客観的な競争を志向することも可能である。 その中で、本件公募要領では、審査項目が8つに分けられ、さらに各項目内において審査される細項目もある程度列挙されているから、事業者はこれらの事項について他の事業者と優劣を競うことが求められているといえる。また、審査基準については、審査員の判断に委ねられる面は否めないが、各審査項目は、7名の委員がそれぞれ採点してそれらを合計することで最優秀提案者を決定するという方式によることで、判断の客観性、公平性を保っている。配点割合が3割とされている月額賃借料等については、1億円1点という客観的基準が定められている。さらに、採点結果については各委員のつけた点数も含めて病院内部における決裁に付され、国家公務員共済組合連合会契約監視委員会による点検等の対象ともなっている。このように、審査基準についても、相当程度の判断の客観性、公平性が図られてい のつけた点数も含めて病院内部における決裁に付され、国家公務員共済組合連合会契約監視委員会による点検等の対象ともなっている。このように、審査基準についても、相当程度の判断の客観性、公平性が図られていたといえる。 また、前記のとおり、本件企画競争については、医療センターに支払われる月額賃借料等(審査項目⑦)の配点割合が3割とされている。これに対し、その他自由提案(審査項目⑧)については、本事業の目的を鑑み独自の提案があれば記載することとされている。そして、医療センターは、こうなんの杜の移設や薬局2階への会議スペース等の設置を要望していたが、本件公募要領にはその旨記載されず、G以外にはそのような要望は明らかにされなかった。 - 10 -この点に関し、被告人両名の弁護人は、賃借料等の比重は低く、その採点方法も1億円を1点とするもので参加者間の差がつきづらいものであり、その他自由提案(同⑧)等が実際上重視されているから、発注者に対して支払われる金額以外の要素が補充的といえない程度に考慮されており、競争入札としての実質は失われている旨主張する。 しかし、こうなんの杜の移設等は、企画提案書に盛り込むことが必須の条件とはいえない。企画提案書にこうなんの杜の移設等を記載しなかった事業者にとっても、優先交渉権者として選定後に、交渉次第で要望に応じられる程度の非本質的な条件であると考えられる。また、この審査項目はあくまで自由に提案するということであり、事業者はそれぞれ医療センター側にとって有益な提案を創意工夫する競争が可能であった。実際、1名の採点者はGと他社を同じ得点としているし、医療センターが地域がん診療連携拠点に指定されていることに着目した提案に、より高い評価をつけた採点者もいた。そうすると、自由提案の項目があることやこうなんの杜移設等 Gと他社を同じ得点としているし、医療センターが地域がん診療連携拠点に指定されていることに着目した提案に、より高い評価をつけた採点者もいた。そうすると、自由提案の項目があることやこうなんの杜移設等が病院側において要望されていたことは、本件企画競争の競争入札の実質を失わせるほどの事情とはいえない。 また、月額賃借料等の配点割合からすれば、これ以外の要素を相当程度考慮していることは否定しがたいものの、月額賃借料等の配点割合は、各審査項目の中では最も高く、月額賃借料等を他の要素に比して重視していたことも指摘できる。また、本件の賃貸借契約の期間は20年間と長期間にわたるもので、収支計画(審査項目⑥、配点20点)が賃料の継続的な支払を担保する項目として考慮されていたのであるから、長期的視点で見た場合の医療センターが得られる経済的利益の期待値に関する配点割合が5割を占め、基本的考慮要素となっていたということもできる。 その他自由提案(同⑧)の配点も20点と比較的重視されているが、それ以外の審査項目を含め、長期的視点で見た場合の医療センターが得られる経済的利益の期待値に関する配点割合と比べれば、補充的な位置づけにとどまる。 そうすると、その他自由提案等の医療センターの経済的利益に必ずしも直結しな- 11 -い事項を相当程度考慮していることをもって、競争入札の実質が失われていたとはいえない。 また、被告人両名の弁護人は、配点が明らかにされていない参加者にとっては、いずれの項目が重視されているか不明であるから、審査基準の予想が困難であった旨主張する。 たしかに、本件企画競争において、審査基準や審査方法等が事業者に対して明示されず、本件公募要領の記載だけでは基準が不明確であることも否めない。しかし、本件公募要領は他の病院で行われた企画競 る。 たしかに、本件企画競争において、審査基準や審査方法等が事業者に対して明示されず、本件公募要領の記載だけでは基準が不明確であることも否めない。しかし、本件公募要領は他の病院で行われた企画競争の公募要領を参考に作成されたもので、殊更特殊な内容ではなく、実際、本件企画競争に参加した事業者も、各項目についてあげるべきポイントを踏まえて記載している。実際の配点も一般的に想定可能な程度の内容であると考えられる上、本件企画競争の主体が公法人であり、明示はされなくても、客観的で公平な審査が期待されていたと考えられる。これらを踏まえれば、事業者にとっても、一般的な病院内薬局の企画競争の審査基準、審査方法であるとして、十分予想できるものであったとうかがわれ、競争入札の実質を損なうほどの事情とはいえない。 以上のとおり、本件企画競争の内容は、審査項目についていずれも競争に付され、審査基準についても客観性、公平性が相当程度担保されており、発注者に対して支払われる金額の多寡を他の要素に比して重視するとともに、長期的視点で見た場合に得られる経済的利益の期待値に関する要素が基本的考慮要素になっており、それ以外の事項についても有益な提案を創意工夫させて、競争させるものであった。 イ本件企画競争の手続面について、検討する。 競争入札は、予定価格の作成、入札の公告、入札保証金の納付、入札、開札及び落札者の決定という手順を踏むことが会計法等によって規定されている。他方、随意契約については、予算決算及び会計令において、予定価格の作成が規定されている程度である。企画競争の方式は、前記財務大臣通知等に基づく運用に委ねられている。 - 12 -そこで、本件企画競争の手続の詳細を検討すると、あらかじめ非公表の予定価格を定める、不特定多数の参加者を公募し、そ 競争の方式は、前記財務大臣通知等に基づく運用に委ねられている。 - 12 -そこで、本件企画競争の手続の詳細を検討すると、あらかじめ非公表の予定価格を定める、不特定多数の参加者を公募し、その期間についても競争契約に関する法令上の規定に準じ10日間確保する、参加者は互いに他の者の提示内容を知らずに契約内容を提示する、発注者はあらかじめ定まった具体的基準に従い提示内容に順位をつけるといった点は、競争入札ほど厳格ではないにせよ、いずれも手続の競争性を担保する意義を有するものである。 また、競争入札においては、提出した入札書の引換え、変更等はできないとされており、定められた期間内に提出された入札書の内容の優劣で落札者を定めることで、競争の公平性を徹底する趣旨であると理解される。これに対し、本件企画競争では、競争契約における開札手続の公開主義に相当する手続は設けられていない。 提出後の追加及び変更は認めないが、審査に必要な書類の提出を求める場合があるとされている。 この点につき、被告人両名の弁護人は、本件企画競争においては、企画提案書提出後のプレゼンテーションにおいて、提案内容を変更することが許容されていた旨主張しており、そうだとすれば、競争入札との実質的な相違になるとも考えられなくはない。 しかし、本件企画競争についても、明確な規定はないものの、医療センター側においても、事業者においても、他の事業者の企画提案を見て企画案を修正するようなことは許容されないと認識されていたことが認められる。弁護人が主張の根拠とする事情は、あくまで、事業者側も変更は許容されていないと認識しているため、企画提案書の内容を補足する体裁で追加提案をプレゼンテーションに含めたというものであるから、本件企画競争の手続として、企画提案書提出後に内容を変更すること 変更は許容されていないと認識しているため、企画提案書の内容を補足する体裁で追加提案をプレゼンテーションに含めたというものであるから、本件企画競争の手続として、企画提案書提出後に内容を変更することが許容されていたとはいいがたい。また、医療センターから審査に必要な書類の提出を求める場合があるとされている点についても、変更等を認めるものではない旨の文言に引き続き記載されていることからして、提案内容の変更を認めるものではないことは文面から理解されるところであり、被告人Aですら自由提案内容等- 13 -が抽象的であった場合に具体的資料を求めることを想定していたにすぎないと供述している。さらに、本件企画競争は、前記のとおり審査基準等が定められ、採点結果については各委員のつけた点数も含めて病院内部における決裁に付され、国家公務員共済組合連合会契約監視委員会による点検等の対象ともなっていたのであるから、公平な競争の結果を踏まえた決定が予定されている。そうすると、本件企画競争では、提出した企画提案書の趣旨を明確にするなどのあくまで補充的な資料追加等が、求められて提出することがあり得ただけで、企画提案書の重要部分にわたるような変更、追加は許容されていなかったと認められる。 そうすると、本件企画競争は、提出期間内に提出された企画提案書の優劣で最優秀提案者を選出するものであって、その後に企画提案書の重要部分を変更して再提出するようなことは予定されていないというべきであり、徹底の度合いはともかくとしても、競争入札と同趣旨の公平な競争を志向する仕組みといえる。 他方、本件企画競争は、開札及び落札者の決定によって契約が成立する競争契約と異なり、最高順位となったとしても優先交渉権を獲得するのみであり、契約内容はその後の交渉によって変更され得る。この点につい 他方、本件企画競争は、開札及び落札者の決定によって契約が成立する競争契約と異なり、最高順位となったとしても優先交渉権を獲得するのみであり、契約内容はその後の交渉によって変更され得る。この点についての弁護人の指摘は、競争入札の実質を争う主張として解する余地もある。 この点について検討すると、優先交渉権を獲得した段階では、既に、比較的詳細な項目に沿って契約条件を提示し、複数の審査員による審査・採点も経ているから、これを変更するのは容易ではない。被告人Cも、合理的事情なく提案内容の変更を申し出れば信用に関わるため、一般的には提案したとおりの内容で契約に至っていた旨捜査段階で述べており、この供述は理由付けを含め合理的なものであって信用することができる。実際、Gと医療センターの契約はほぼ企画提案書のとおり締結されたことがうかがわれ、優先交渉権獲得後の交渉があっても、企画競争の結果は維持されていたといえる。他方で、検察官が主張するとおり、競争入札においても、最も有利な条件を付した者が契約の相手方に選定されない場合がある(会計法29条の6第1項ただし書)。 - 14 -したがって、競争入札において落札者が直ちに契約の相手方になることと、本件企画競争の結果が優先交渉権の獲得にとどまることとの差異は、程度が小さく、競争入札の実質を有するかどうかの判断に当たって重視すべき事情とはいえない。 ウ本件企画競争においては、Gにのみ医療センターの前記要望を教示したり、G以外の事業者からの企画競争実施予定の問合せに対して予定はない旨回答するなど、公平な競争とはいえない取扱いが認められる。そして、被告人Aにおいては、その供述するとおり、敷地内薬局の開設を発案した当初からGと契約することを希望しており、本件企画競争の立案、実施を通じてGに有利な取扱いをした いえない取扱いが認められる。そして、被告人Aにおいては、その供述するとおり、敷地内薬局の開設を発案した当初からGと契約することを希望しており、本件企画競争の立案、実施を通じてGに有利な取扱いをした末に、判示犯行に至ったことが認められる。このようなことから、競争入札の実質が失われるとの疑問があり得なくもない。 しかし、このような取扱いやGを契約相手としたいという意図はあくまで被告人A独自の考えによるものである。医療センターの病院長やそのほかの選定委員の供述を踏まえれば、医療センターとしては、あくまで、本件企画競争において、客観的に優れた提案をして高得点を獲得した事業者を優先交渉権者として選定し、そのために、参加した事業者間で公平な競争をさせるとの意図であったと認められる。 被告人A自身も、あくまで競争の結果契約相手を選定することになると考えており、それゆえGに企画提案書の再提出を持ちかけたともいえる。 したがって、本件企画競争において、前記の不公平な取扱いがあるからといって、競争入札の実質が失われているとはいえず、かえって、医療センターとしては、競争入札と同趣旨の目的で本件企画競争を実施していたというべきである。 エ以上を総合すると、本件企画競争は、競争入札との各種の相違点を踏まえても、その内容、手続及び目的等に照らして、単なる随意契約ではなく、競争入札の実質を具備していると評価できるのであって、刑法96条の6第1項の「入札」に該当すると認めるのが相当である。 4 本件企画競争は「契約を締結するためのもの」に該当するか被告人両名の弁護人は、最優秀提案者に選出されることによって獲得できるのは- 15 -優先交渉権であり、優先交渉権の結果契約が締結されるのであって、交渉の過程で契約内容が変更されることや契約に至らないこともあ 護人は、最優秀提案者に選出されることによって獲得できるのは- 15 -優先交渉権であり、優先交渉権の結果契約が締結されるのであって、交渉の過程で契約内容が変更されることや契約に至らないこともあるのであるから、本件企画競争が「契約を締結するためのもの」には該当しないと主張する。 しかし、本件企画競争が契約締結に向けた相手方選定手続であることは明らかであり、優先交渉権獲得後の交渉の経過によって契約内容等の変更がありうるとしても、あくまで優先交渉権獲得の過程における提案を踏まえた交渉が想定されているのであって、前記検討のとおり、競争入札との差異の程度は小さく、本件企画競争が契約締結に向けたものであることに疑いはない。そもそも「契約を締結するためのもの」との文言は、旧刑法96条の3のうち強制執行に関するものを96条の4として独立して規定した際、同条と保護対象を区別するために設けられた文言であって、その保護対象を制限する趣旨のものとは解されない。 結局、本件企画競争について、「契約を締結するためのもの」ではないとして刑法96条の6第1項該当性を否定することはできない。 5 企画提案書の再提出等は「公正を害すべき行為」に該当するか判示のとおり、被告人Aは、本件企画競争において月額賃借料として450万円を支払うなどとしたGの企画提案書について、G以外の事業者がGより高い支払額を提案していることやその概算を教示した上、提出書類についての提出後の追加及び変更は認めないとされていたにもかかわらず、提出期限後に、同企画提案書を返還し、支払額を増額した企画提案書を再提出するよう持ちかけ、被告人Bらは、これに応じ、月額賃借料として750万円などを支払うなどとした企画提案書を再提出した。 以上の行為は、競争対象項目について、互いに他の事業者の提案内 画提案書を再提出するよう持ちかけ、被告人Bらは、これに応じ、月額賃借料として750万円などを支払うなどとした企画提案書を再提出した。 以上の行為は、競争対象項目について、互いに他の事業者の提案内容を知らされずに提案して優劣を競い、期間内に提出された企画提案書の内容を公平に審査して最優秀提案者を定め、優先交渉権者とするという本件企画競争の趣旨に反する取扱いであり、特定の事業者にのみ再提出の機会が与えられる不公平な取扱いでもあることも考慮すれば、入札の公正を害する行為であることは明らかである。 - 16 -これに対し、被告人両名の弁護人は、企画提案書の再提出は「公正を害すべき行為」に当たらないと主張し、その根拠として、最優秀提案者が獲得できるのは優先交渉権であり、必ずしも契約締結に至るわけではないことを挙げる。しかし、既に検討したとおり、必ず契約締結に至るかどうかの差異は、競争入札の場合と比較しても小さな程度にすぎないから、弁護人の主張は、「公正を害すべき行為」に当たることを否定する理由とはならない。 なお、被告人Cの供述によっても、これまで企画競争でGが優先交渉権を獲得した事案で契約締結に至らなかった件数は1件のみであり、それもそもそも敷地内薬局を開設しないことになったという例外的な事情によるものである。また、本件公募要領においても、優先交渉権付与の決定を取り消す場合は、医療センターが求める営業条件等を満たせないと判断した場合とされており、あくまで例外的な場合を規定したにとどまる。いずれも、前記判断を動かす事情とはいえない。 6 結論したがって、判示のとおり、本件企画競争において他の事業者の提案内容を教示するなどした上で企画提案書を提出期限経過後に再提出させるなどした行為は、刑法96条の6第1項の「公の入札」で「契約を締 したがって、判示のとおり、本件企画競争において他の事業者の提案内容を教示するなどした上で企画提案書を提出期限経過後に再提出させるなどした行為は、刑法96条の6第1項の「公の入札」で「契約を締結するためのもの」の「公正を害すべき行為」に該当する。 第3 被告人Cの故意及び共謀 1 前提事実⑴ 平成28年に病院敷地内に薬局を開設することが可能となって以降、Gを含む調剤薬局運営事業者は、敷地内薬局の開設、運営に向けて積極的に活動していた。 敷地内薬局の事業者選定は企画競争によって行われるのが通常であり、概ね、病院側が公募によって参加する事業者を募り、各事業者が企画提案書を提出したりプレゼンテーションを実施したりした上、病院側が提案内容を審査して優先交渉権を獲得する事業者が決定され、同事業者との間で契約締結に向けた交渉が行われ、契約が締結されるというものであった。 - 17 -Gでは、各支店において病院等から情報収集を行い、Fの開発統括本部営業企画部営業企画課に情報を集約し、同課からも必要な情報を支店に提供していた。企画競争への参加方針が決定すると、提案内容の大まかな方針を決めるためのキックオフミーティングが開催され、基本的に、支店長及び営業担当者、Fの営業企画部担当者、開発統括本部長である被告人C等が参加していた。企画提案書等の資料は各支店が作成し、ソフトウェア上に作成されたグループでやり取りされ、営業企画課側で修正を加えるなどし、このようにして作成された企画提案書等を被告人Cが確認し、必要に応じて修正の指示をしていた。その後、被告人Cが了承した内容をもとに、同人や支店長等が出席してF代表取締役社長への「代表確認」が行われ、提案内容についての社長の了承を得ていた。プレゼンテーションは、全てではないものの多くの案件で被告人C 人Cが了承した内容をもとに、同人や支店長等が出席してF代表取締役社長への「代表確認」が行われ、提案内容についての社長の了承を得ていた。プレゼンテーションは、全てではないものの多くの案件で被告人Cが現地に出向いた上で、支店長らとともに行われていた。 プレゼンテーション資料は企画提案書の内容をもとに作成され、被告人Cや支店側等によるリハーサルも実施されていた。 ⑵ 被告人Bは、平成28年にDE支店支店長に就任した。E支店では、前記第2のとおり被告人Aと知り合った被告人BとHが中心となって、医療センターの敷地内薬局開設の情報収集等を行っていた。 医療センターに異動した被告人Aから敷地内薬局開設の意向を聞いた被告人Bらは、以後被告人Aと打合せを重ね、同人から、こうなんの杜の移設、薬局内への福利厚生スペースの設置等の病院側の要望を聞き、その具体的実現方法を提案するなどした。また、本件企画競争の準備のため、他の病院で行われた企画競争の公募要領を渡すなどした。 他方、6月頃、G内部でも、本件事業に関し、被告人両名らを含むグループが作成された。同グループの頭書部分には、医療センターが公募の意向を有していることやターゲットレベルが最重点先であること、上記企画提案書の提出締切日時及びプレゼンテーション日時を含む公募スケジュール、被告人Cが企画提案書を確認する日や代表確認を行う日、プレゼンテーションの練習の日時などを含む資料作成ス- 18 -ケジュール等が適宜加筆修正されていった。また、メッセージのやり取りとして、同グループ作成直後に、被告人Cから激戦区であることなどの認識が示されたほか、随時、Hから、医療センター側と打合せを実施しこうなんの杜移設の希望が出たことや、優先交渉権獲得に向けた強い意向が記載されたり、こうなんの杜を移設する場合の薬局 であることなどの認識が示されたほか、随時、Hから、医療センター側と打合せを実施しこうなんの杜移設の希望が出たことや、優先交渉権獲得に向けた強い意向が記載されたり、こうなんの杜を移設する場合の薬局の配置図案、公募スケジュール予定等がやり取りされるなどしていた。 被告人Cら役員等が参加する営業会議では、全国の企画競争や非公開指名型契約の状況が共有され、その中で本件企画競争は「取りに行こうと決めた11件」に位置づけられ、開発優先度ランクは8月以降最重点とされていた。 ⑶ 本件企画競争は11月11日に公示され、同月17日、被告人両名も参加してキックオフミーティングが開催され、E支店が立案した収支計画の妥当性や他社の参入動向が議論、共有された。 キックオフミーティング後、E支店と営業企画課で企画提案書案が作成され、その上で被告人Cから内容について承認を得、12月7日、薬局2階分の賃料月額50万円を差し引いた後の支払額を月額400万円(20年間で9億6000万円。 なお、企画提案書①に記載された賃借料について、公訴事実では差引き後である「月額400万円」とされているが、判示のとおり差引き前の土地賃借料の金額である月額450万円と認定するのが相当である。)とし、こうなんの杜の移設、薬局2階に福利厚生スペース等を設け医療センターに賃貸することなどを記載した案に基づき、被告人両名らによる代表確認が行われた。その後、グループ内で、企画提案書の若干の修正が行われるとともに、同月17日、Hから、グループ内に対し、企画提案書の印刷が終了したので同月18日午前11時30分に医療センターに提出する旨報告がされた。また、同日午前中に被告人Cを含めたプレゼンテーションの練習が行われ、同日午後0時28分、被告人Cからそれを踏まえたプレゼンテーション資料の修正指示が 30分に医療センターに提出する旨報告がされた。また、同日午前中に被告人Cを含めたプレゼンテーションの練習が行われ、同日午後0時28分、被告人Cからそれを踏まえたプレゼンテーション資料の修正指示がされ、同35分、修正後の確認を依頼する返信がされた。 同日午後1時3分、Hから企画提案書を提出した旨報告がされた(以下、この際に提出された企画提案書を「企画提案書①」という。)。 - 19 -⑷ 最終的に企画提案書を提出した5社のうち、2社が20年で総額20億円以上の賃借料等を提案している一方で、Fの提案が10億円に満たないことを認識した被告人Aは、自由提案内容が医療センターの意向に沿ったものであっても賃借料等が低い以上は良い評価を得られないと考え、Fを最優秀提案者とするため、提出後の追加変更は認めないとした本件公募要領の記載に反することは認識しながらも、同社が提出した企画提案書①を差し替えさせることとした。 被告人Aは、被告人Bを呼び出し、他社名を挙げ、概ね20億円以上の金額が提案されていることを伝え、賃借料等を再検討するよう促した。本件契約を是が非でも獲得したいと考えていた被告人Bは、被告人Aがチャンスを与えてくれたと思い、感謝の意を述べるとともに、全国の企画競争等に関する営業支援業務を統括する立場にあった被告人Cの了承を得る必要があると考え、検討する旨述べて回答を留保した。 E支店に戻った被告人Bは、被告人Cに電話をかけた。 同日午後4時4分、被告人両名らを含む「KKR札幌金額修正」との表題のグループが新たに作成され、特段の説明なく「金額修正しました」とのメッセージとともに、提出した企画提案書①のデータファイル名の末尾に「(金額修正)」と追記されたファイルが送信され、その後同日午後4時53分、午後6時3分にE支店側から立て続 金額修正しました」とのメッセージとともに、提出した企画提案書①のデータファイル名の末尾に「(金額修正)」と追記されたファイルが送信され、その後同日午後4時53分、午後6時3分にE支店側から立て続けに修正データが送信された。これらの修正後の企画提案書では、差引き後の賃借料は月額700万円と増額されるとともに、さらに保証金5億2000万円を支払う旨追記され、20年間で22億円支払うことになると記載されていた。 同月21日朝、Hは、この企画提案書を被告人Aに提出した(以下、この際に提出された企画提案書を「企画提案書②」という。)。 ⑸ 企画提案書②を受け取った被告人Aは、他社は支払総額24億円を提示しているが自由提案内容はGが優れているので十分Gに勝機があると思いながらも、賃借料700万円が薬局2階分の賃料を差し引いた後の金額であること、こうなんの杜の移設費用等Gが負担することとなる費用額の記載がないことに気づき、これらを- 20 -明記すれば、月額賃借料等の審査項目においてもGが他社を上回っているように見せることができるのではないかと考えた。 そこで、被告人Bに対し、薬局2階分の賃料を差し引かずに計算してほしい、こうなんの杜移設費用等も盛り込んで見せ方を工夫してほしいなどと伝えた。これに対し、被告人Bから、他社の提案額を聞かれ、被告人Aはこれを伝えた。被告人Bは、検討する旨述べた。 同日午後4時41分、同グループにおいて、Hから、営業企画課職員のJ宛に、企画提案書②を提出した際の報告として、「病院側からプレゼンテーション(スライド)に関しての要望を受け、提案スライド(P15-月額賃料・P-18自由提案)を修正しております。」「病院側からは「KとLを上回る金額提案だと一目でわかるようにスライドに盛り込んで欲しい」とのことにより に関しての要望を受け、提案スライド(P15-月額賃料・P-18自由提案)を修正しております。」「病院側からは「KとLを上回る金額提案だと一目でわかるようにスライドに盛り込んで欲しい」とのことにより、月額賃借料スライド(P15)へ病院収入の合計を記載、自由提案スライド(P18追加ページ)では、病院収入とかかる費用の合計金額を記載しています」などというメッセージが送られた。また、Hは、賃借料については薬局2階部分の賃借料50万円を差し引かない金額(月額750万円)をもとに計算し、医療センターの収入が20年間で23億2000万円となる旨記載した上、本件公募要領の審査項目⑧その他自由提案に関し、Gが負担することとなる費用額が合計2憶2700万円となることを明記したスライドを追加する修正をし、このプレゼンテーション資料の確認を依頼した。 これに対するJからの返信はなく、同日午後5時29分、被告人Cは、「今修正しています。」「750万支払って、50万もらう。しかし、750万差し上げることになっていますがこれでよいのですか?」とのメッセージを送るとともに、追加された自由提案に関するスライドについて、項目やレイアウトを整理する修正を行い、修正後のスライドを送信した。同日午後6時38分、Hは、「月額賃借料を修正いたしました。なお、見せ方の部分につきましては、病院側に確認することも可能です」などというメッセージを投稿し、差引き前の賃借料月額750万円とこれをもとにした医療センターの20年間の収入23億2000万円の記載は維持し- 21 -つつも、差引き後の同収入が22億円となることを追記し、当該部分のスライドを送信した。その後、このプレゼンテーション資料の内容に沿った企画提案書の修正が行われ、Jから被告人Cに確認依頼のメッセージが送られ、同月22日 同収入が22億円となることを追記し、当該部分のスライドを送信した。その後、このプレゼンテーション資料の内容に沿った企画提案書の修正が行われ、Jから被告人Cに確認依頼のメッセージが送られ、同月22日午後8時53分に被告人Cから了承した旨のメッセージが送られた。 Hは、同月23日朝、これらの修正を経た企画提案書を医療センターに提出した(以下、この際に提出された企画提案書を「企画提案書③」という。)。 2 争点検察官は、被告人Cは、被告人Bから報告を受けるなどして、企画提案書②や企画提案書③が提出期限経過後のものであることを認識して、これらの再提出の意思決定に関与しており、被告人A及び被告人Bと順次共謀したものであって、故意及び共謀が認められる旨主張する。被告人Cの弁護人は、被告人Cについて、企画提案書の再提出であることの認識・認容の証明が不十分であり、故意及び共謀は認められない旨主張する。 3 被告人Cの認識内容⑴ 企画提案書①から②への差替えの経緯に関し、前記1⑷のとおり、12月18日午後、被告人Bが、被告人Aから企画提案書の差替えを持ちかけられ、検討する旨回答し、E支店に戻り、被告人Cに電話をかけたことは認められるが、この際の通話内容等について争いがある。 ア被告人Bは、捜査段階当初において、被告人Cに電話をかけ、医療センター側からGの提案する賃借料が他社より低いと言われたこと、賃借料額を書き換えて提出し直すことを持ちかけられたことを伝えて意見を仰ぐと、被告人Cは、企画提案書の差替えを行うとした上で、賃借料をどの程度増額できるか検討する必要がある旨述べたので、一度電話を切り、HらE支店の他の職員に対し、賃借料等の額を修正することになった旨伝え、被告人Aに対しても電話で同旨の内容を伝えた、新たな賃借料の額は、被告人Cと か検討する必要がある旨述べたので、一度電話を切り、HらE支店の他の職員に対し、賃借料等の額を修正することになった旨伝え、被告人Aに対しても電話で同旨の内容を伝えた、新たな賃借料の額は、被告人Cと電話で話し合いながら、投資回収期間を当初想定していた約10年からどの程度まで延ばすか話をして決め、Hその他の職員に作業を指- 22 -示した旨供述する。被告人Cも、捜査段階において、明確な記憶はないとしつつ、賃料を上乗せして企画提案書を再提出することを被告人Bから報告を受けて承諾したであろうことを認める旨供述する。 これに対し、捜査が進展して以降公判段階を含めた被告人Bの供述内容は、電話の内容はあまり覚えていないものの、概要、賃借料を増額して企画提案書を差し替えること、具体的金額の話まではせず支店の方で金額を精査して算出する旨伝え、被告人Cから了承を得た、具体的な金額についてのやり取りをした記憶はないというものである。そして、公判廷において、一、二分の電話を1回しただけであったと供述する。被告人Cも、公判廷において、一、二分の電話を1回し、金額を変更するということを聞いて了承した、企画提案書が提出済みであるとの認識はなかったと供述する。 イそこで検討すると、Hは、この際の出来事について、被告人Bは誰かと電話をし、通話の途中又は通話終了後に、投資回収期間をある年数に仮定した場合の賃借料額を算定するようになどと指示をしてきた、指示に従って計算した結果を被告人Bに伝えると、被告人Bは通話し、再び賃借料の額を計算し直すなどし、他の支店職員らが企画提案書の記載を修正するといった作業を何度か行った、E支店とF営業企画課とのやり取りはグループ上で行ったと供述する。この供述は、被告人Bの捜査段階当初の供述によく沿うものであるとともに、被告人両名の公 案書の記載を修正するといった作業を何度か行った、E支店とF営業企画課とのやり取りはグループ上で行ったと供述する。この供述は、被告人Bの捜査段階当初の供述によく沿うものであるとともに、被告人両名の公判供述とは整合しない。 また、グループ上のメッセージのやり取りを見ると、12月18日夕方に企画提案書記載の提案金額を修正することを前提としたグループが作成されやり取りが始まっている。企画提案書の内容についてその了承を得ることが必要な被告人Cに対しては、グループ立上げの趣旨や修正の理由が別途共有されていると考えるのが自然であり、Gの提案する賃借料が他社より低いので再提出を持ちかけられたことも説明したという被告人Bの捜査段階当初の供述に沿う。 同様に、グループ上では、同日夕方、支店側から立て続けに3回にわたって金額- 23 -を修正した企画提案書が説明もなく送信され、その際から再提出の日である同月21日の朝まで営業企画課側からは何ら返信はされていない。これは、被告人Bが誰かと通話をしてそれを受けて賃借料額を修正するという作業を何度か行ったというH供述と整合するものであり、また、被告人Bの捜査が進展して以降の供述や被告人Cの供述によると、営業企画課職員や被告人Cから特段反応もなく賃借料額の修正が決まったことになるから、これらの供述には沿わない事情である。 さらに、前記1のとおり、本件企画競争は、最上位の重要度格付けがされている企画競争であった。その中で、本件で修正された内容は、賃借料等のGから医療センターに支払われる金額である。発注者への支払額は営利企業として重要視している事項であると考えられ、被告人Cも、提案内容について了承する立場であって、これまで、提案内容を検討する際、投資回収期間等からして提案する賃借料等が適切かについて注目し は営利企業として重要視している事項であると考えられ、被告人Cも、提案内容について了承する立場であって、これまで、提案内容を検討する際、投資回収期間等からして提案する賃借料等が適切かについて注目していた旨供述している。そして、本件では、最終的には当初の提案の2倍以上の金額を提示しており、収益性に大きな影響があり、経営判断に関わる変更といえる。変更段階も、事前に提出時間まで明確に認識していたとまでは言わずとも、代表説明を行い、プレゼンテーションの練習もしていた段階であった。 そうすると、賃借料等の変更について被告人Cに対してその根拠等を説明せず、簡単に了承を得るというのは不自然である。 ウそうすると、被告人Bが被告人Cに電話をかけた際の通話内容等については、被告人Bの捜査段階当初の供述及びH供述のとおりの事実が認められ、被告人Bから被告人Cに対し、医療センター側から、Gの提案する賃借料が他社より低いことを教えられ、賃借料額を修正して提出し直すことを持ちかけられたことが報告され、被告人両名の間で、投資回収期間を当初想定していた約10年よりも延ばすことによって賃借料を増額して医療センターの提案に応じることとし、具体的に賃借料をどの程度増額できるかを更に検討する旨合意したものと認められる。 ⑵ 次に、企画提案書②から③への差替えの経緯に関し、前記1⑸のとおり、12月21日夕方のHからJ宛の確認依頼メッセージに対して、被告人Cが確認、修正- 24 -するメッセージを送っていることは、前記前提事実も踏まえて検討すれば、被告人Cが、企画提案書の提出期間経過後であり、企画提案書の差替えであることを認識した上で、医療センターから、他の事業者の賃借料額を教えられ、これを上回るように見える企画提案の見せ方を要望されていること等を理解した上で、プレゼンテ 経過後であり、企画提案書の差替えであることを認識した上で、医療センターから、他の事業者の賃借料額を教えられ、これを上回るように見える企画提案の見せ方を要望されていること等を理解した上で、プレゼンテーション資料やその前提となる企画提案書③の作成に関与したことを推認させる事情である。 このメッセージについて、被告人Cは、Hのメッセージを見た記憶はなく、Jが資料を印刷して持って来たものを確認したのだと思うと公判で供述する。 しかし、被告人Cの送信したメッセージは、Hのメッセージに記載された事項を単に了承するものでなく、同メッセージに記載された医療センター側の意向に沿って修正を加えるものである。また、プレゼンテーションを担当する予定であるのは被告人Cであることも踏まえると、同人はHのメッセージに記載された内容をよく理解していたと考えるのが自然である。さらに、Jは、この際のやり取りは覚えていないものの、普段、自身が修正した内容を被告人Cに確認してもらう際には、二度手間にならないようプレゼンテーション資料であるパワーポイントファイルのスライド及びノート部分併せて変更した上で確認してもらっており、被告人Cが送信したプレゼンテーション資料はノート部分が未修正であるから、被告人C自身が修正したと思うと供述しており、実際に被告人Cが返信していることを含め客観証拠に整合するこの供述は、合理的で信用性が高い。他方、被告人Cは、企画提案書差替えの経緯について、捜査段階においては、企画提案書の再提出であることの認識を認める旨の供述をしており、供述が変遷している上、公判における供述は、前記メッセージの内容を合理的に説明するものとはいいがたい。 そうすると、被告人Cの前記公判供述は信用できず、前記メッセージ等による推認に疑いを容れない。 4 被告人Cらの故 判における供述は、前記メッセージの内容を合理的に説明するものとはいいがたい。 そうすると、被告人Cの前記公判供述は信用できず、前記メッセージ等による推認に疑いを容れない。 4 被告人Cらの故意及び共謀⑴ 前記のとおり、被告人Bは、企画提案書①を提出期限である午後0時前に提出- 25 -したその夕方頃、被告人Aから、G以外の事業者がGより高い支払額を提案していることやその概算を告げられ、これを増額した内容の企画提案書を再提出することを持ちかけられ、再提出の意向を形成したが、その時点では回答は留保した。そして、被告人Cに対し、医療センターから、G以外の事業者がGより高い支払額を提案していること、賃借料等を増額した内容の企画提案書を再提出することを持ちかけられたことを伝え、これらの事情を認識した被告人Cから賃料等の増額と再提出の了承を得て、被告人Aに再提出の意向を伝えた。また、被告人両名は、話し合って増額後の支払額を決め、提出期限の3日後に企画提案書②の提出に至った。 さらに、被告人Aは、被告人Bに対し、他の事業者の提案賃借料等を教え、企画提案書②の賃借料等の額の記載方法を修正してGの賃借料等がより高額に見える記載方法を提案した。この間、被告人Bは、被告人Cらにこの提案を伝えて、提案に応じる方針を合意した。被告人Cは、医療センターから、他の事業者の賃借料等の額を教えられ、これを上回るように見える企画提案の見せ方を要望されていること等の事情を理解した上で、企画提案書③に記載する賃借料等の額を了承するなどし、プレゼンテーションの担当者として、プレゼンテーション資料の作成に関与し、企画提案書③の提出に至った。 そうすると、被告人Bはもちろん、被告人Cも被告人Bを通じて、被告人Aの意向を受け、企画提案書①を提出した後であり、提出期 て、プレゼンテーション資料の作成に関与し、企画提案書③の提出に至った。 そうすると、被告人Bはもちろん、被告人Cも被告人Bを通じて、被告人Aの意向を受け、企画提案書①を提出した後であり、提出期限経過後であることを認識し、また、他の事業者の提案賃借料等の額を教えられ、これを上回る条件を提案することで最優秀提案者として選定されることが目的であると理解して、賃借料等を増額した内容の企画提案書②及び③を再提出する意思を形成し、担当者に再提出させたと認められる。 被告人Bは、DE支店支店長の地位にあり、企画提案書の提案内容の作成等の業務を統括する立場にあった。被告人CはFの開発統括本部本部長として、企画提案書の作成等の営業支援業務に従事し、企画提案書の内容や変更について権限を有する立場にあった(被告人Cの弁護人は、被告人Cにはこれらの権限がなかった旨主- 26 -張するが、関係証拠によれば疑いなく認定できる。)。前記前提事実のとおり、G内部において本件事業の獲得が重視されており、被告人両名が本件企画競争において優先交渉権者となることに強い動機を有していたことも明らかであるから、被告人Aからの提案には、捜査段階で供述するとおり、積極的に賛成したと認められる。 以上の事実関係は、被告人Bはもちろん、被告人Cについても、故意及び被告人Aとの共謀を十分基礎付ける事情であるといえる。 被告人Cの弁護人は、以上の認定に係る事実関係について、縷々争う旨の主張をするが、いずれも認定に疑いを容れるものとはいえず、採用できない。 ⑵ 被告人両名の捜査段階の供述について被告人Bは、捜査段階において、企画提案書の提出期限後の修正、差替えが違法かどうかについて、本件当時は何も考えていなかった、G側としては、医療センターの事務部長である被告人Aからの提 供述について被告人Bは、捜査段階において、企画提案書の提出期限後の修正、差替えが違法かどうかについて、本件当時は何も考えていなかった、G側としては、医療センターの事務部長である被告人Aからの提案に応じて企画提案書を差し替えたので、再提出は本件公募要領に記載された「審査に必要な書類の提出を求める場合」に当たるので不正な行為ではないとも考えている旨供述する。 また、被告人Cは、捜査段階の初期において、本件当時、企画提案書の提出期限後の差替えが犯罪になるとは思っていなかった、一度提出した企画提案書は原則として追加・訂正できないことは理解しており、明確な記憶はないが、被告人Bに問題とならないかどうかを確認したと思う、一度提出した企画提案書も例外的に資料を追加提出できると理解したと思うなどと供述する(被告人Cは、公判において、これらの捜査段階の供述が自らの記憶と異なるとして撤回する旨の供述をするが、企画提案書の再提出の了承等を認める前記捜査段階初期の供述は、関係各証拠と整合して信用性が認められる。)。 しかし、本件公募要領の「審査に必要な書類の提出を求める場合」は、前記検討のとおり、提出した企画提案書の趣旨を明確にする等のあくまで補充的な資料追加等が、求められて提出することがあり得ただけで、企画提案書の重要部分にわたるような変更、追加は許容されていなかった。被告人Bは、捜査段階において、本件- 27 -当時、一般論として企画競争において企画提案書の差替えが行われることはないと認識しており、本件の企画提案書の差替えが「審査に必要な書類の提出」に該当すると考えていたわけでもない旨供述しており、被告人Cも、前記のとおり、一度提出した企画提案書の追加・訂正ができないことは理解していた旨認めている。被告人Cが被告人Bから差替えの適法性の確認を 該当すると考えていたわけでもない旨供述しており、被告人Cも、前記のとおり、一度提出した企画提案書の追加・訂正ができないことは理解していた旨認めている。被告人Cが被告人Bから差替えの適法性の確認を得たかどうかについては、被告人Bはこれに沿う供述をしていないこと、被告人Aが被告人Bに対して企画提案書の差替えが適法である旨説明したとも認められないこと、被告人Cも具体的な記憶はない旨自認することからすれば、そのような事実はなかったと認められる。 次に、被告人両名において、企画提案書の差替えが違法ないし犯罪であると認識しなかった旨の供述について検討する。企画提案書の差替えや他の事業者の賃借料の教示がなされたことについては、被告人両名を含めたG側から被告人Aに対して、事前に、依頼や不当な働きかけ等がなされた形跡はうかがわれず、企画提案書の提出期限後に、被告人Aが一方的に発案し、被告人Bを呼び出して提案したものである。差替えの内容は、賃借料等を大幅に増額するものであり、G側にとっては、受注して敷地内薬局を開設した後の費用が増加する一方、医療センターにおいては、開設後の収益が増加するものであって、発注者の要望に応えるものという見方ができなくはなく、被告人Aが、個人的に私腹を肥やすものでもない。差替えを持ちかけた被告人Aは、医療センターの事務部長の地位にあり、本件企画競争の実施における重要人物と認識されていたと考えられ、被告人両名において、その提案に従うことはある意味で自然という見方もできる。Gが優先交渉権を得るために、被告人Aの提案に応えることを重視し、差替えの違法性を明確に意識しなかったということがあり得ないとはいえず、被告人両名の前記捜査段階の供述が事実関係の具体的な説明と併せてなされていることも考慮すれば、この限りではこれらの供述を排斥す 差替えの違法性を明確に意識しなかったということがあり得ないとはいえず、被告人両名の前記捜査段階の供述が事実関係の具体的な説明と併せてなされていることも考慮すれば、この限りではこれらの供述を排斥することはできない。 しかし、前記⑴の事情、特に、他の事業者の賃借料等の額を漏えいして提案額を増額させた上、見せ方の工夫までさせて、企画提案書を再提出させ、最優秀提案者- 28 -にするという異常な内容に着目すれば、被告人Aが独断で本件企画競争の趣旨から逸脱した提案をしており、これに応じることが許容されないものであることに思い至ることはできたはずと考えられ、被告人両名について、故意を阻却するものということはできない。 ⑶ したがって、被告人Bに加え、被告人Cについても、判示事実についての故意及び被告人Aとの共謀を認定することができる。 第4 結論以上の次第で、被告人両名について、判示のとおり、公契約関係競売入札妨害罪が成立する。 (法令の適用)被告人3名に共通罰条それぞれ刑法60条、96条の6第1項刑種の選択それぞれ懲役刑を選択刑の執行猶予それぞれ刑法25条1項(量刑の理由) 1 本件は、国家公務員共済組合連合会の病院において、敷地内に開設する予定の調剤薬局の整備運営事業者となる優先交渉権者を選定するための企画競争に際して行われた公正を害すべき行為であるが、公共性の高い施設の入札として公正さが求められることはもとより、判示の医療センターは大規模な病院である上、20年間にわたる調剤薬局の運営を任せられるものであり、競合する事業者の利害は大きいから、本件企画競争の公正を害することの悪質性は高い。本件の犯行態様は、特定の事業者に対し、最優秀提案者とさせる目的で、他の事業者が提案している賃借料 られるものであり、競合する事業者の利害は大きいから、本件企画競争の公正を害することの悪質性は高い。本件の犯行態様は、特定の事業者に対し、最優秀提案者とさせる目的で、他の事業者が提案している賃借料支払額の概算を教示するなどした上で、提出期限経過後、審査項目として重視される賃借料支払額を増額した企画提案書を再提出させるというものであり、20年間の支払総額(薬局2階部分の賃借料を差し引いた後のもの)を9億6000万円から22億円と大幅に増額している。公平な条件で競争させて優先交渉権者を選定す- 29 -る企画競争の趣旨に著しく反し、契約相手及び内容の決定過程をゆがめており、本件企画競争の公正さを害した程度も大きい。他方、主体である医療センターにとっては、優先交渉権者となった事業者の企画提案がより収益性の高い契約条件となり、必ずしも不利益な内容ではないという面もある。 2 被告人Aについては、発注者である医療センターの事務部長という立場にありながら、特定の事業者を優先交渉権者に選定することが望ましいとの独断に基づき、本件犯行を発案し、自ら他の事業者の提案内容を漏えいし、企画提案書の再提出等をもちかけるという積極的かつ主導的な役割を果たしている。犯行動機は、医療センターの経営改善を意図したというものであり、当該事業者と癒着して私腹を肥やしたような事情はないものの、当該特定の事業者を選定しなければならないとする十分な理由は認められず、本来公正な企画競争を運営すべき立場にある者として、酌量の余地は乏しく、厳しい非難は免れない。 他方で、被告人Aが、事実関係を素直に認めて詳細に供述し、謝罪するなど反省の態度を示していること、妻が今後の監督を誓約していること、前科がないことなども考慮すれば、刑の執行は猶予するのが相当である。 3 被告人両名は 事実関係を素直に認めて詳細に供述し、謝罪するなど反省の態度を示していること、妻が今後の監督を誓約していること、前科がないことなども考慮すれば、刑の執行は猶予するのが相当である。 3 被告人両名は、本件企画競争に参加した事業者側の責任者等として、被告人Aからの提案を受けて、賃借料等の増額を決定して企画提案書の再提出を実行させるなどし、当該事業者において優先交渉権者として選定されており、その果たした役割は重要であり、本件犯行による結果を享受している。他方、被告人両名において、本件犯行は当初から意図されたものではなく、本件証拠上、企画提案書の提出後に発案した被告人Aの働きかけにより犯意を誘発されたものと認められ、受動的な態様であった。また、明らかに不公平な取扱いをする提案に安易に乗じて本件企画競争の公正さを害したことは非難に値するが、参加する事業者として、事務部長である被告人Aの提案に応じることはある意味で自然とも考えられ、違法性を明確に認識していたとも断じがたいことは、酌量の余地がある。 その上で、被告人両名が、捜査段階において事実関係を供述し、公判においても- 30 -概要は認めており、本件犯行の影響について、反省の弁を述べていること、前科前歴がないこと等を考慮し、被告人両名に対し、主文の刑にとどめた上、その執行は猶予するのが相当である。 4 よって、主文のとおり判決する。 (求刑被告人Aにつき懲役1年、被告人B及び被告人Cにつきそれぞれ懲役10月)令和6年4月19日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判官加島一十 裁判官畑中胡春 裁判長裁判官井下田英樹は、転勤のため署名押印できない。 裁判官加島一十 十 裁判官畑中胡春 裁判長 裁判官井下田英樹は、転勤のため署名押印できない。 裁判官加島一十

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