平成16(行ウ)33 公文書部分開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年9月22日 津地方裁判所 情報公開
ファイル
hanrei-pdf-33369.txt

判決文本文12,555 文字)

- 1 -主文 被告が原告に対して平成16年9月16日付けで行った公文書部分開示決定(総検第1号)のうち,平成16年6月28日起案文書「工事成績評定による工事成績の書面による回答について(伺い)」添付資料「総括検査監聴き取り」につき,6月11日,6月24日,6月28日の各「役職」及び「評定者」欄を非開示とした部分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求める裁判 請求の趣旨主文同旨 請求の趣旨に対する答弁(1)原告の請求を棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,「①α地区の広域農道整備事業で平成15年9月から,平成16年3月にかけて,α県民局管内の業者が請け負った工事に関するすべての文書,②同上業者に対する評価点変更に関するすべての文書」について三重県情報公開条例に基づく開示請求をしたところ,被告において平成16年9月16日付けで公文書部分開示決定(以下「本件決定」という。)をしたが,同年6月28日起案にかかる「工事成績評定による工事成績の書面による回答について(伺い)」(以下「本件文書」という。)添付の「総括検査監聴き取り」に記載された6月11日,6月24日,6月28日の各「役職」及び「評定者」欄を非開示とした部分は,本件決定の通知書の記載に不備があり,また,同条例に規定された非開示情報に該当せず違法であるとして,その取消しを求めた事案である。 - 2 - 前提となる事実甲1の③,2の③,3の③,乙1,13及び弁論の全趣旨により認めることができる。 (1)三重県情報公開条例(以下「本件条例」という。)は,次のとおり規定している。 (目的)1条この条例は,県民の知る権利を尊重し,公文書の開示を請求する権利に 旨により認めることができる。 (1)三重県情報公開条例(以下「本件条例」という。)は,次のとおり規定している。 (目的)1条この条例は,県民の知る権利を尊重し,公文書の開示を請求する権利につき定めること等により,三重県(以下「県」という。)の保有する情報の一層の公開を図り,もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による参加の下,県民と県との協働により,公正で民主的な県政の推進に資することを目的とする。 (開示請求権)5条何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する公文書の開示を請求することができる。 (公文書の開示義務)7条実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報(以下「非開示情報」という。)が記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該公文書を開示しなければならない。 2号個人に関する情報(・・・公務員等(・・・地方公務員法・・・第2条に規定する地方公務員をいう。・・・)の職務に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもの,個人の事業に関する情報及び公務員等の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるもの・・・。ただし,次に掲げる情報を除く。 イ法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ,又- 3 -は公にすることが予定されている情報ロ人の生命,身体,健康,財産,生活又は環境を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報(開示請求に対する措置)12条実施機関は,開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示するときは,その旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨並びに開示をする日時及び場所を書面により通知しなければな (開示請求に対する措置)12条実施機関は,開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示するときは,その旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨並びに開示をする日時及び場所を書面により通知しなければならない。ただし,・・・2項実施機関は,開示請求に係る公文書の全部を開示しないとき(前条の・・・)は,開示をしない旨の決定をし,開示請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない。 (理由付記等)15条実施機関は,第12条各項の規定により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないときは,開示請求者に対し,同条各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合においては,開示しないこととする根拠規定を明らかにするとともに,当該規定を適用する根拠が当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。 (2)原告は,平成16年9月3日,被告に対し,本件条例5条に基づき,「①α地区の広域農道整備事業で平成15年9月から,平成16年3月にかけて,α県民局管内の業者が請け負った工事に関するすべての文書,②同上業者に対する評価点変更に関するすべての文書」につき,開示請求した(以下「本件開示請求」という。)。 (3)被告は,平成16年9月16日,本件開示請求の対象文書②につき4件を特定した上で,公文書部分開示決定である本件決定(総検第1号)を行った。 被告は,本件決定の通知書(甲2の③)において,同年6月28日起案に- 4 -かかる「工事成績評定による工事成績の書面による回答について(伺い)」(以下「本件文書」という。)につき,開示しない部分を「個人の氏名及び印影」,開示しない理由を「三重県情報公開条例第7条2号に該当対象公文書『③工事成績評定による工事成績に書面による回答について(起案日:16.6.28)』には き,開示しない部分を「個人の氏名及び印影」,開示しない理由を「三重県情報公開条例第7条2号に該当対象公文書『③工事成績評定による工事成績に書面による回答について(起案日:16.6.28)』には,個人の氏名,印影が記載されており,これらは開示することで特定の個人が認識され得る情報である。」と記載し,同月22日実施した公文書開示において,本件文書(甲3の③)添付の「総括検査監聴き取り」に記載された各評定者の役職及び氏名(以下「本件非開示部分」という。)を非開示とした。 (4)原告は,平成16年11月30日,本件訴えを当裁判所に提起した。 争点 (1)本件決定の通知書において,被告が開示しない部分として「役職」を明記していないことは違法か。 (原告の主張)ア被告が開示しない部分として「役職」を明記していないのは違法である。 被告は,本件決定の通知書において開示しない部分を「個人の氏名及び印影」と記載しながら,本件文書添付の「総括検査監聴き取り」に記載された評定者の氏名及び役職を非開示とした。本件文書において評定者の役職と氏名が記載されている部分は,役職欄と氏名欄とに区別されているし,「役職」と「氏名」は概念的にも異なる。本件決定の通知書において開示をしない部分を「氏名及び印影」と記載して「役職」と記載していないことは,被告担当者の恣意ないしは過誤に基づくもので,いずれにせよ違法である。 イ理由付記についての違法本件決定の通知書においては,「役職」を非開示とした理由はまったく記載されていない。被告は,「役職」の部分を非開示にしなければ本件決- 5 -定の目的は達し得ないので「役職」と「氏名」は不可分となっていると解し,「役職」については明記しなかったと主張するが,これは「役職」を非開示とする理由にはなっても,本件決定の通知書 件決- 5 -定の目的は達し得ないので「役職」と「氏名」は不可分となっていると解し,「役職」については明記しなかったと主張するが,これは「役職」を非開示とする理由にはなっても,本件決定の通知書に「役職」を非開示の対象部分として明記しなかった理由にはならない。したがって,本件決定は,本件条例12条,15条1項に違反して理由付記に不備があり違法である。 (被告の主張)ア被告は本件決定の通知書に,開示しない部分として「役職」を明記していないが適法である。 (ア)本件文書の概要等本件文書は,工事成績の評定に対する被評定者からの説明請求に対し,総括検査監が,調査のうえ,再評定した結果を当該被評定者に回答するための起案文書である。そして,本件非開示部分は,総括検査監が,再評定をするに当たり,平成16年6月11日,同月24日および同月28日に聴き取りを行った評定者のうち,同年3月31日付けで退職していた評定者(以下「当該各評定者」という。)の「役職」及び「氏名」の部分である。 (イ)本件決定の通知書では,開示をしない部分に「役職」を明記していないが,これは,本件文書において「役職」と「氏名」は同一の様式において併記されており,当該各評定者の「氏名」の部分のみを非開示としても「役職」の部分も非開示としなければ「役職」と他の情報等を組み合わせることにより容易に特定の個人名が識別され本件決定の目的は到底達し得ないものであるので,「役職」と「氏名」は不可分となっていると解し,「役職」については明記しなかったものである。 (ウ)一般に行政処分は,公定力,不可争力を有しているので,処分が無効となるような明らかな重大明白な瑕疵であるか,また処分を取り消さ- 6 -なければならないほどの違法性がある瑕疵でない限り当初の行政効力をそのまま維持する 力,不可争力を有しているので,処分が無効となるような明らかな重大明白な瑕疵であるか,また処分を取り消さ- 6 -なければならないほどの違法性がある瑕疵でない限り当初の行政効力をそのまま維持する方が法的安定性の見地からみて望ましく,また,行政経済に役立つものである。この見地からみて,仮に本件決定の通知書の記載方法に瑕疵が存在するとしても,処分を取り消さなければならないほどの瑕疵には到底当たらない。 イ理由付記の具備本件決定の通知書における「氏名」との記載に「役職」の趣旨が含まれていることは前記のとおりである。そして,本件決定における理由付記の記載は,本件条例の非開示事由規定条項への該当性を示すのみならず,概括的にその具体的内容をも説明しているので,原告はそれによりいかなる事由によって本件処分がなされたかを了知しうる。 したがって,被告が本件決定の通知書に開示しない部分として「役職」が明記していなくても理由付記の違法にはならず,本件決定の取消事由には当たらない。 (2)本件非開示部分が本件条例7条2号所定の非開示情報に当たるか。 (原告の主張)ア公務員の職務に関する情報の該当性元公務員であった者については,退職後でも,直ちに一般個人と同視することはできない。 本件文書において,当該各評定者は自分自身の行った評点変更に関する意見を制度にしたがって開陳したもので,公務員であったときの職務を補完するものであるから,たまたま聴き取りが退職後に実施されたものであっても,退職前の公務員の職務に関する情報ということができる。 イ本件条例7条2号ロの該当性本件文書は,三重県が発注した道路建設工事の成績評定の見直しに関するものであり,当該工事の出来具合を評価するものである。道路の公共性- 7 -を考えると,その出来,不出来は生活に直結する事 該当性本件文書は,三重県が発注した道路建設工事の成績評定の見直しに関するものであり,当該工事の出来具合を評価するものである。道路の公共性- 7 -を考えると,その出来,不出来は生活に直結する事柄であるから,本件非開示部分に係る情報は,「人の生命,身体,健康,財産,生活又は環境を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に該当する。 ウ以上のとおり,本件非開示部分は本件条例7条2号所定の非開示情報に当たらないから,本件決定は違法である。 (被告の主張)ア本件非開示部分は,本件条例7条2号の「個人に関する情報」に当たる。 (ア)本件文書の当該各評定者の「氏名」の部分については,特定の個人が識別され得るものであり,また「役職」の部分については,それを開示すると他の情報(例えば,三重県職員録等)と組み合わせることにより,容易に特定の個人が識別され得ることになる。 (イ)本件条例7条2号において「個人に関する情報」から除外されている「公務員等の職務に関する情報」の「公務員等」とは,国家公務員,地方公務員及び独立行政法人等の役職員を指すものであり,現職の公務員等のみが該当することが明らかである。これに退職後の元公務員をも包含する趣旨であれば,本条文中に「その職を退いた後も,また,同様とする」といったような文言がなければならないが,そのような文言はないから,本件条例の制定権者は,「公務員等」には退職後の元公務員等は含まれないと想定していたものと解釈できる。条例の定める公文書開示請求権は,条例が創設した権利であるから,その内容は条例の定めによって限界を画されるものであり,みだりに拡大解釈すべきものではない。 当該各評定者は,平成16年6月11日,同月24日及び同月28日に行われた総括検査監の当該各評定者に対する聴き取り時点に 定めによって限界を画されるものであり,みだりに拡大解釈すべきものではない。 当該各評定者は,平成16年6月11日,同月24日及び同月28日に行われた総括検査監の当該各評定者に対する聴き取り時点においては,既に同年3月31日時点で三重県を退職しており,本件条例7条2号に規定される「公務員等」に該当しない。 - 8 -当該各評定者は,かつて県に在職していたという立場に基づいて,総括検査監の聴き取りに任意に出席したものであるが,それは職務としてではなく,個人として行政に協力するという意図で出席したものであるし,総括検査監の聴き取りは,一般の公開の場では行われておらず,当該各評定者は,当日の聴き取りに出席したことや当日の発言等について,後日,公にされることは想定せずに出席したものと解される。よって,本件非開示部分に係る情報は,一般の公務員の職務の遂行に関する情報と同一視することはできず,当該各評定者の個人的な社会的活動に関わる情報である。 退職して公務員でなくなった者は,一私人にすぎないのであり,また「個人に関する情報」とは思想,信条,信仰,身分,地位,職歴,資格,学歴,所属団体,家族状況,収入,財産状況,心身の状況,健康状態,病歴等その他一切の個人に関する情報をいうのであるから,もはや公務員でない一私人が,再評定に当たり聴き取りに出席したかどうかは,まさに「個人に関する情報」に該当し,非開示となる情報である。 イ個人の私生活上の権利利益を害するおそれ仮に原告の主張するように,本件非開示部分に係る情報を公務員等の職務に関する情報とみなすとしても,本件文書に係る総括検査監の再評定の案件についてはマスコミに批判的に報道されており,当該各評定者の氏名が識別されると,当該各評定者に対する抗議等の個人攻撃により,当該各評定者の個人の私生活の権 も,本件文書に係る総括検査監の再評定の案件についてはマスコミに批判的に報道されており,当該各評定者の氏名が識別されると,当該各評定者に対する抗議等の個人攻撃により,当該各評定者の個人の私生活の権利利益を害するおそれがあるので,本件条例7条2号の非開示情報に該当する。 ウまた,本件非開示部分は,本件条例7条2号イに掲げる「法令若しくは他の条例の規定により又は慣行により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」や同条2号ロに掲げる「人の生命,身体,健康,財産,生活又は環境を保護するため,公にすることが必要であると認められる情- 9 -報」には該当しない。 エ以上のとおり,被告は,本件文書を開示するに当たり,当該各評定者の「役職」及び「氏名」の部分について,本件条例7条2号に該当し,非開示情報に当たると判断したものであり,本件決定は適法である。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件決定の通知書において,被告が開示しない部分として「役職」を明記していないことが違法か)について(1)ア前提となる事実と甲2の③,3の③及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件決定の通知書において「開示しない部分」の欄には「個人の氏名及び印影」と記載しているが,原告に対し,当該各評定者の氏名及び役職を黒く塗りつぶした本件文書を開示し,本件非開示部分を非開示としたこと,同通知書の「開示しない理由」の欄には,個人の氏名及び印影を開示しない理由のみが記載されていることが認められる。 イ本件訴訟において,被告は本件決定で非開示とされた「個人の氏名」には「役職」も含まれている旨を主張し,原告は「役職」の部分を非開示とする処分の取消しを求めているのであるから,本件決定により当該各評定者の「役職」を非開示とする処分がなされたこと自体は,原告被告双方が前提とす 含まれている旨を主張し,原告は「役職」の部分を非開示とする処分の取消しを求めているのであるから,本件決定により当該各評定者の「役職」を非開示とする処分がなされたこと自体は,原告被告双方が前提とするところである。そうであれば,実施機関たる被告は,本件条例12条により,開示請求に係る公文書の一部を開示するときはその旨の決定をしその旨を書面により通知すること,開示請求に係る公文書の全部を開示しないときは開示しない旨の決定をしその旨を書面により通知することを義務づけられているのであるから,原告に対し,当該各評定者の「役職」を非開示とした旨を書面により通知しなければならない。 ところが,被告は,前記のとおり本件決定の通知書において「開示しない部分」の欄に「個人の氏名及び印影」と記載して「役職」と記載していないのであり,「役職」は「個人の氏名及び印影」とは明らかに異なる概- 10 -念であって後者の記載に含まれると解することはできないから,本件決定の通知書の記載は,本件条例12条に違反するものと言わざるを得ない。 そして,開示しない部分の特定は,開示請求者が最大の利害関係を有する事項であるから,通知書においてその記載が欠如していた場合には,看過し難い瑕疵が存するものとして,当該部分を非開示とする処分の取消事由になると解するのが相当である。 したがって,本件決定のうち,「総括検査監聴き取り」の6月11日,同月24日及び同月28日の当該各評定者の役職を非開示とした部分は,本件条例12条に違反して違法である。 ウまた,本件決定の通知書における「開示しない理由」欄の記載も,個人の氏名及び印影に関する内容となっており,役職について開示しない理由は記載されていないから,本件決定のうち,「総括検査監聴き取り」の6月11日,同月24日及び同月28日の当該各評 」欄の記載も,個人の氏名及び印影に関する内容となっており,役職について開示しない理由は記載されていないから,本件決定のうち,「総括検査監聴き取り」の6月11日,同月24日及び同月28日の当該各評定者の役職を非開示とする部分は,その理由付記を欠き,本件条例15条に違反する。したがって,この点からも本件決定は違法である。 (2)これに対し,被告は,本件文書において「役職」と「氏名」は同一の様式において併記されており,当該各評定者の「氏名」の部分のみを非開示としても「役職」の部分も非開示としなければ「役職」と他の情報等を組み合わせることにより容易に特定の個人名が識別され本件決定の目的は到底達し得ないので,「役職」と「氏名」は不可分と解して「役職」につき明記しなかったもので,本件決定の通知書に開示しない部分として「役職」を明記していないが適法である旨主張する。しかし,前記のとおり「役職」と「氏名」は明らかに異なる概念であるし,甲3の③によれば,本件文書では,評定者の役職及び氏名が記載された部分は,役職欄と氏名欄とに明確に区分されていることが認められるから,「役職」と「氏名」を不可分として本件決定の通知書に「氏名」のみを記載する理由は全く存しない。また,本件決定- 11 -の目的を達するためにどの部分を非開示とするかということは,通知書において「開示しない部分」をどのように記載するかとは関係がない。したがって,被告の上記主張は採用できない。 その他,被告は,仮に本件決定の通知書の記載方法に瑕疵が存在するとしても処分を取り消さなければならないほどの瑕疵には当たらないなどと主張するが,前記(1)の説示に照らして,いずれも採用できない。 争点(2)(本件非開示部分が本件条例7条2号の非開示情報に該当するか)について(1)前提となる事実と 瑕疵には当たらないなどと主張するが,前記(1)の説示に照らして,いずれも採用できない。 争点(2)(本件非開示部分が本件条例7条2号の非開示情報に該当するか)について(1)前提となる事実と甲3の③,4ないし7,9の①②及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア三重県の行う工事の検査については,三重県建設工事検査規則(甲4,以下「検査規則」という。)が定められており,工事に係る完成検査及び出来高部分検査はすべて検査員が行うこと(3条1項),検査員は完成検査及び出来高部分検査については,別に定める採点基準により評定しなければならないこと(12条2項),検査員は検査を完了した場合には復命書に検査写真帳を添えて復命しなければならず,完成検査及び出来高検査に係るものにあっては工事成績調書を添えなければならないこと(15条)とされている。 また,工事成績通知要領(甲7,以下「通知要領」という。)により,検査規則12条に規定されたもののうち完成検査については,請負者に対し評定点を書面により通知すること(2条,3条),請負者は,評定について説明を求めることができること(4条),総括検査監は,説明請求を受けた場合には,請求を受けた日から起算して40日以内に書面により回答しなければならず(5条1項),回答にあたり工事成績評定者から意見を求めることができること(同条2項)が定められている。 イ株式会社Aが三重県から受注した工事(平成15年度広域農道事業第X- 12 -XXX-○x号α三期地区広域農道事業β工区道路その5工事)について,平成16年3月29日に完成検査が実施され,検査規則12条2項に基づく成績評定は60点とされた。 本件文書は,同成績評定に関して株式会社Aから通知要領に基づきなされた説明請求に対し書面による回答を ,平成16年3月29日に完成検査が実施され,検査規則12条2項に基づく成績評定は60点とされた。 本件文書は,同成績評定に関して株式会社Aから通知要領に基づきなされた説明請求に対し書面による回答をするための起案文書であり,添付文書である「総括検査監聴き取り」には,総括検査監が工事成績評定者から聴き取りを行った年月日,場所,各評定者の検査当時の役職及び氏名が記載されている。 ウ本件決定においてその役職及び氏名が非開示とされた当該各評定者は,前記工事の成績評定を行った時点では三重県職員であったが,平成16年3月31日付けで退職しており,総括検査監が聴き取りを行った同年6月11日,同月24日及び同月28日時点では,三重県職員ではなかった。 (2)個人に関する情報該当性についてア本件条例7条2号は,「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され得るもの」を非開示情報として定めるが,公務員等の職務に関する情報は「個人に関する情報」から除外している。これは,公務員等の職務に関する情報は,公益性が強いことから,「個人に関する情報」には含まないこととし,個人の私生活上の権利利益を害するおそれがある場合を除いて,当該情報の開示,非開示は同条4ないし6号に該当するかどうかによって判断することとしたものである。 ところで,前記(1)認定の事実からすれば,本件非開示部分に係る情報は,総括検査監が聴き取りを行った当該各評定者の当時の役職及び氏名であり,当該各評定者は聴き取りの時点で三重県職員ではなかったものの,総括検査監による聴き取りは,当該各評定者が三重県職員を退職してからいずれも3か月以内に,通知要領5条2項に基づき,当該各評定者の在職時の職務である工事成績評定に関して行われたものであり,当該各評定者- 13 -の在職時の職務のいわば延長として 員を退職してからいずれも3か月以内に,通知要領5条2項に基づき,当該各評定者の在職時の職務である工事成績評定に関して行われたものであり,当該各評定者- 13 -の在職時の職務のいわば延長として行われたものということができる。このことは,本件文書に当該各評定者の氏名のみならず検査当時の役職が記載されていることからも看取できる。 以上のとおり,公務員として在職していた時の職務に関連する事柄について,退職後相当期間内に,規則,要領等の法的根拠に基づいて意見を求められるなどして関与した場合には,当該公務員がその時点で退職していたとしても,当該情報は,公務員の職務に関する情報と同質のものであって,強い公益性が存することに変わりはない。したがって,かかる情報については,その公益性に鑑みると,公務員等の職務に関する情報に準ずるものとして「個人に関する情報」からは除外されると解するのが相当である。 イこれに対し,被告は,本件条例7条2号の「公務員等」は国家公務員,地方公務員及び独立行政法人等の役職員を指すものであり,条文中に「その職を退いた後も,また,同様とする」という趣旨の文言はないから,「公務員等」には退職後の元公務員等は含まれず,本件非開示情報に係る情報は公務員等の職務に関する情報には当たらない旨主張する。しかし,同条2号の「公務員等」に退職した公務員を含むとの規定がなくとも,当該情報が「公務員等の職務に関する情報」と同視できるものである場合には,これに準じて解釈できる。そして,本件条例が,1条で「この条例は,県民の知る権利を尊重し,県の保有する情報の一層の公開を図り,もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による参加の下,公正で民主的な県政の推進に資することを目的とする」と規定して,公正で民主的な県政 る情報の一層の公開を図り,もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による参加の下,公正で民主的な県政の推進に資することを目的とする」と規定して,公正で民主的な県政の推進のために県の保有する情報の一層の公開を図る目的を有していることからすると,この程度の拡大解釈は許されると解されるので,被告の上記主張は採用できない。 また,被告は,当該各評定者は,職務としてではなく,個人として行政- 14 -に協力するという意図で,総括検査監の聴き取りに任意に出席したものであることなどから本件非開示部分に係る情報は,あくまで当該各評定者の個人的な社会的活動に関わる情報であると主張する。しかし,通知要領の規定上,総括検査監は評定者からの意見聴取を行う権限を有するもので,評定者としても,自ら行った評定に関する聴き取りであるから,これに応ずる責務があるといえるから,単に個人的な社会的活動として行政に任意に協力したとみることはできない。したがって,この点に関する被告の主張も採用できない。 ウ以上からすれば,本件非開示部分に係る情報は,本件条例7条2号の「個人に関する情報」には当たらないものといえる。 (3)個人の私生活上の権利利益を害するおそれの有無について被告は,本件非開示部分に係る情報が公務員等の職務に関する情報に当たるとしても,本件文書に係る総括検査監の再評定の案件についてはマスコミに批判的に報道されており,当該各評定者の氏名が識別されると,当該各評定者に対する抗議等の個人攻撃により,当該各評定者の個人の私生活の権利利益を害するおそれがあるので,「公務員等の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるもの」として本件条例7条2号の非開示情報に該当すると主張する。 そこで検 害するおそれがあるので,「公務員等の職務に関する情報のうち公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるもの」として本件条例7条2号の非開示情報に該当すると主張する。 そこで検討するに,甲9の①②によると,B新聞が平成16年9月2日及び同月5日に本件文書に係る工事成績の再評定に関し批判的な記事を掲載した事実が認められる。しかし,批判的な新聞報道がなされたというだけで,当該各評定者に対する抗議等により個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあるとみることはできないし,その他この点に関する具体的な立証はなされていないから,本件非開示部分を公にすることにより当該各評定者の私生活上の権利利益を害するおそれがあると認めるには足りない。したがって,被告の上記主張は採用できない。 - 15 - 結論 以上の次第で,本件決定の通知書において,開示しない部分として「役職」を明記していないことは違法であり,また,当該各評定者の役職及び氏名(本件非開示部分)は,いずれも本件条例所定の非開示情報に該当するとは認められないから,被告が原告に対して平成16年9月16日付けで「公文書の表示実施機関が特定した公文書の件名③工事成績評定による工事成績の書面による回答について(起案日16.6.28)」につき「開示をしない部分個人の氏名、個人の印影」と記載する本件決定をして,平成16年6月28日起案文書「工事成績評定による工事成績の書面による回答について(伺い)」添付資料「総括検査監聴き取り」につき,6月11日,6月24日,6月28日の各「役職」及び「評定者」欄を非開示とした部分は,取消事由が存して違法である。 よって,原告の本件取消請求は理由があるから,主文第1項のとおり公文書部分開示決定処分を取消し,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条 定者」欄を非開示とした部分は,取消事由が存して違法である。 よって,原告の本件取消請求は理由があるから,主文第1項のとおり公文書部分開示決定処分を取消し,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第1部裁判長裁判官水谷正俊裁判官本山賢太郎裁判官薄井真由子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る