平成14(行ウ)136 損害賠償(住民訴訟)請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年12月20日 東京地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文5,346 文字)

主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,清瀬市に対し,金815万6432円及びこれに対する平成13年9月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,清瀬市の住民である原告が,清瀬市長である被告は,清瀬市が東京都清瀬市α所在の都営清瀬αアパート(以下「本件建物」という。)の1階部分の一部(床面積405.64平方メートル。以下「本件建物部分」という。)について有する使用借権の管理を怠り,清瀬市に対し,本件建物部分の中央区画の使用料に相当する815万6432円の損害を被らせたと主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下,単に「法」という。)242条の2第1項4号前段に基づき,清瀬市に代位して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償の請求として815万6432円及びこれに対する不法行為の後である平成13年9月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 1 請求原因(1)原告は,清瀬市の住民である。被告は,平成7年4月から清瀬市長の職にある者である。 (2)清瀬市は,平成6年3月29日,東京都知事に対し,本件建物部分の使用許可を申請し,東京都知事は,同年5月26日,清瀬市に対し,使用期間平成6年6月15日から平成11年6月14日まで5年間使用料免除使用目的清瀬市は,本件建物部分を学童クラブとして使用しなければならない。 使用上の制限清瀬市は,第三者に本件建物部分を使用させてはならない。 損害賠償清瀬市は,この許可に定める義務を履行しなかったために東京都に損害を与えたときは,その損害を賠償しなければならない。 との許可条件(以下「本件許可条件」という。)によ 使用させてはならない。 損害賠償清瀬市は,この許可に定める義務を履行しなかったために東京都に損害を与えたときは,その損害を賠償しなければならない。 との許可条件(以下「本件許可条件」という。)により本件建物部分の使用許可(以下「本件使用許可」という。)をした。なお,本件使用許可は,平成11年6月14日付けで使用期間を同月15日から平成16年6月14日までの5年間として更新された。 (3)清瀬市長であった訴外亡Aは,清瀬わかば会に本件建物部分の中央区画及び東側区画を障害者通所施設として,β中央自治会に本件建物部分の西側区画を集会所としてそれぞれ無償で使用させた。 (4)被告は,平成7年4月に清瀬市長に就任したが,清瀬市が本件許可条件に違反して本件建物部分を使用していることを知りながら,これを放置し,本件建物部分の実態に即した使用許可を改めて申請するなど適切な措置を執らなかった。 (5)訴外Bは,平成13年1月30日,東京都知事について,清瀬市が本件許可条件に違反して本件建物部分を使用しているにもかかわらず,これを是正しておらず,財産の管理を怠る事実があるとして,東京都監査委員に対し,住民監査請求をし,必要な措置を講ずべきことを請求した。東京都監査委員は,監査を行い,平成13年3月29日,監査請求に理由がある旨の監査結果の通知をし,東京都知事に対し,本件使用許可の見直しを行うとともに,使用料相当損害金を補填するために必要な措置を講ずべきことを勧告した。 (6)東京都住宅局長は,平成13年8月1日,清瀬市に対し,平成8年8月1日から平成13年7月31日までの本件建物部分の中央区画(障害者授産施設として使用されていた区画)の使用料相当損害金として815万6432円の納付を請求し,清瀬市は,遅くとも平成13年9月28日までに,東京都に対し,815万 までの本件建物部分の中央区画(障害者授産施設として使用されていた区画)の使用料相当損害金として815万6432円の納付を請求し,清瀬市は,遅くとも平成13年9月28日までに,東京都に対し,815万6432円を支払った。 (7)被告は,清瀬市長として,清瀬市の財産を適正に管理する義務を負っていたにもかかわらず,清瀬市が本件建物部分について有する使用借権の管理を怠り,清瀬市に対し,815万6432円の損害を被らせたのであり,清瀬市に対し,これを賠償する義務を負うというべきである。 なお,使用借権であっても,その具体的内容から用益物権的性質を有していると認められ,財務会計上の観点から管理の適否を論ずる余地があるものは,法238条1項4号所定の地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利(以下,単に「地上権等に準ずる権利」という。)に当たるというべきところ,そもそも,普通地方公共団体が不動産を使用する場合,その権原が物権であるか,債権であるか,有償であるか,無償であるかにかかわらず,不動産の管理に問題があったときには,当該普通地方公共団体は,損害金債務を負担することとなるのであるから,財産管理の必要性が大きいこと,清瀬市が本件建物部分について有する使用借権は,一時的なものではなく,学童クラブという使用目的の範囲内で広く自由使用が許容されているのであり,その財産的価値は高く,財産として十分管理する必要があること,本件建物部分について道路のような行政処分に基づく管理をすることはできず,本件建物部分の管理の適否を財務会計上の観点から論ずる必要があること,清瀬市が本件建物部分について有する使用借権が地上権等に準ずる権利に当たらないとした場合には,清瀬市に発生した損害を填補する手段が一切なくなり,不当であることなどからすると,清瀬市が本件建物部分に 清瀬市が本件建物部分について有する使用借権が地上権等に準ずる権利に当たらないとした場合には,清瀬市に発生した損害を填補する手段が一切なくなり,不当であることなどからすると,清瀬市が本件建物部分について有する使用借権は,地上権等に準ずる権利に当たるというべきである。したがって,清瀬市が本件建物部分について有する使用借権の管理を怠る事実は,住民訴訟の対象たる財産の管理を怠る事実に当たるというべきである。 (8)原告は,平成13年12月26日,被告について,清瀬市が本件建物部分について有する使用借権の管理を怠る事実があるとして,清瀬市監査委員に対し,住民監査請求をし,必要な措置を講ずべきことを請求した。清瀬市監査委員は,監査を行い,平成14年2月21日,原告に対し,監査請求を棄却する旨の監査結果の通知をした。 2 本案前の主張本件建物は,東京都の行政財産であり,清瀬市は,本件使用許可により本件建物部分について使用権を取得したのであるから,清瀬市が本件建物部分について有する使用権は,使用借権ではなく,公法上の権利というべきである。そして,法238条1項4号に例示された権利は,すべて私法上の権利であることからすると,地上権等に準ずる権利は,私法上の権利に限られるというべきである。したがって,清瀬市が本件建物部分について有する使用権は,地上権等に準ずる権利に当たらないというべきであり,本件訴訟は,住民訴訟の類型に該当しない不適法な訴えというべきである。 3 請求原因に対する認否等(1)請求原因(1)の事実のうち,原告が清瀬市の住民であること,被告が清瀬市長の職にある者であることは認めるが,被告の清瀬市長就任日は否認する。 被告が清瀬市長に就任したのは,平成7年5月1日である。 (2)同(2)及び同(3)の各事実は認める。 (3)同(4)の事実 瀬市長の職にある者であることは認めるが,被告の清瀬市長就任日は否認する。 被告が清瀬市長に就任したのは,平成7年5月1日である。 (2)同(2)及び同(3)の各事実は認める。 (3)同(4)の事実のうち,被告が使用許可を改めて申請しなかったことは認めるが,その余の事実は否認する。 清瀬市との交渉に当たった東京都住宅局次長は,民間社会福祉事業団体である清瀬わかば会が本件建物部分の中央区画及び東側区画を障害者授産施設及び障害児学童クラブとして,β中央自治会が本件建物部分の西側区画を集会所としてそれぞれ使用することを了承していた。 (4)同(5)の事実は認める。 (5)同(6)の事実のうち,東京都住宅局長が平成13年8月1日に清瀬市に対して815万6432円の納付を請求し,清瀬市が遅くとも平成13年9月28日までに東京都に対して815万6432円を支払ったことは認めるが,その余の事実は否認する。 (6)同(7)の主張は争う。 清瀬わかば会は,清瀬市の委託を受けて障害者授産事業を行っていたのであり,同事業の主体は,実質的には清瀬市であったから,清瀬わかば会に本件建物部分の中央区画を使用させたことは,違法でなかった。仮に,清瀬わかば会に本件建物部分の中央区画を使用させたことが東京都との関係で違法であったとしても,清瀬わかば会に本件建物部分の中央区画を使用させ,障害者授産事業を行わせることは,清瀬市の方針であり,清瀬市にとって必要有益な事業であったから,清瀬市との関係では違法ではなかった。 また,東京都知事は,本件使用許可を見直すに当たり,平成13年8月1日付けで使用目的を障害者授産施設として本件建物部分の中央区画の使用許可をし,清瀬わかば会に本件建物部分の中央区画を使用させ,障害者授産事業を行わせることを追認したのであるから,違法性は治癒され 1日付けで使用目的を障害者授産施設として本件建物部分の中央区画の使用許可をし,清瀬わかば会に本件建物部分の中央区画を使用させ,障害者授産事業を行わせることを追認したのであるから,違法性は治癒されたというべきである。 さらに,仮に,清瀬市が当初から使用目的を障害者授産施設として本件建物部分の中央区画の使用許可を受けていたのであれば,清瀬市は,本件建物部分の使用料を支払う義務を負担したはずであるから,清瀬市が東京都に対して815万6432円を支払ったことは,当然の義務を事後的に履行したにすぎないから,清瀬市には損害が生じていないというべきである。 (7)同(8)の事実は認める。 第3 当裁判所の判断原告は,清瀬市は,本件建物部分について使用借権を有しており,同権利は,地上権等に準ずる権利に当たると主張する。そこで,この点について検討するに,甲第3号証によれば,清瀬市が本件建物部分について有する使用権は,東京都知事が平成6年5月26日に法238条の4第4項に基づいて清瀬市に対してした行政財産の使用許可(本件使用許可)により設定されたものであると認められるのであり,清瀬市が本件建物部分について有する使用権は,公法上の権利ないし地位にすぎず,使用借権ではないというべきである(なお,同条1項は,行政財産は,同条2項に定めるものを除くほか,これを貸し付けるなどし,又はこれに私権を設定することはできないと定め,同条3項は,同条1項に違反する行為は,これを無効とすると定めているのであるから,そもそも,東京都は,その行政財産である本件建物部分に使用借権を設定することができず,仮に,本件建物部分に使用借権を設定したとしても,効力を生ずるものではないことは明らかである。)。そして,法238条1項4号所定の地上権等に準ずる権利とは,同号に例示されている権利 することができず,仮に,本件建物部分に使用借権を設定したとしても,効力を生ずるものではないことは明らかである。)。そして,法238条1項4号所定の地上権等に準ずる権利とは,同号に例示されている権利の内容及び性質に照らし,法律上確立している用益物権又は用益物権的性格を有する権利のことをいうと解するのが相当であるところ,清瀬市が本件建物部分について有する使用権,すなわち,行政財産の使用許可により設定された公法上の権利ないし地位は,①行政財産の使用許可を受けた者に対し,当該行政財産を直接かつ排他的に支配する権原を付与する法令の規定が存在しないこと,②むしろ,法238条の4第6項が,公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき,又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは,その許可を取り消すことができると定めているなど,その目的物が行政財産であることに由来する制約が課されていることに照らし,法律上確立している用益物権又は用益物権的性格を有する権利すなわち,地上権等に準ずる権利に当たるものではないというべきであるから,清瀬市が本件建物部分について有する使用権の管理を怠る事実は,住民訴訟の対象となる財産の管理を怠る事実に当たるものではないというべきである。 第4 結論以上によれば,本件訴訟は,住民訴訟の類型に該当しない不適法な訴えであるからこれを却下することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官北澤晶裁判官内野俊夫裁判官村田一広

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