主文 1 原告が、被告らに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告Aは、原告に対し、961万6978円及びこれに対する令和2年7月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告に生じた費用の3分の2と、被告Bに生じた費用の5分の4を原告の負担とし、原告に生じた費用の3分の1と被告Aに生じた費用を被告Aの負担とし、被告Bに生じた費用の5分の1を被告Bの負担とする。 5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告らは、原告に対し、連帯して、1738万2979円及びこれに対する令和2年7月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、法律事務所を経営する被告らに雇用されていた原告が、①被告らにより休業期間満了を理由として解雇されたことについて、原告の休業は、被告Aからハラスメントを受けたことによってうつ病エピソードを発症し、さらに、このハラスメントについて被告Bに相談したにもかかわらず、被告Bが何ら防止措置を採らなかったため、うつ病が悪化したことによるものであるから、当該解雇は業務上の疾病によ る休業期間中になされたものであり無効であると主張して、被告らに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②被告らの上記各行為が共同不法行為又は安全配慮義務違反に該当すると主張して、被告らに対し、不法行為又は債務不履行の損害賠償請求権に基づき、1738万2979円及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年7月31日から支払済みまで民法所定の年3 務違反に該当すると主張して、被告らに対し、不法行為又は債務不履行の損害賠償請求権に基づき、1738万2979円及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年7月31日から支払済みまで民法所定の年3パー セントの割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(以下、証拠番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)(1)当事者についてア被告らについて被告Aと被告Bは、横浜市a 区でそれぞれ法律事務所を経営する弁護士である。被 告Aと被告Bは、親子(被告Aが父)の関係にあり、令和5年4月まで、同区b 町で法律事務所(以下「本件事務所」という。)を共同で経営していた。 イ原告について原告は、昭和50年10月16日生まれの女性であり、平成22年3月31日から本件事務所で事務員として就労していた。原告は、平成21年に離婚し、以後、二人 の子供を養育していた。(甲16、弁論の全趣旨)(2)労働契約の成立及び内容原告は、被告らとの間で、平成22年3月31日、労働契約を締結して就労を開始した。令和2年6月当時の原告の労働条件は、以下のとおりであった。(甲4、乙47、50) ア期間の定めなしイ業務内容法律事務所事務員ウ勤務時間午前9時00分から午後5時30分エ休日日曜・祭日・土曜日(ただし、1か月2日を限度として勤務を命じられることがある)、夏季4日・年末年始5日の特別休暇 オ基本給 25万5000円カ住居手当 1万5000円キ子供手当 5000円ク賃金支払時期当月末締め・当月25日払いケ賞与年間3.5か月(6月に1.5か月 オ基本給 25万5000円カ住居手当 1万5000円キ子供手当 5000円ク賃金支払時期当月末締め・当月25日払いケ賞与年間3.5か月(6月に1.5か月分、12月に2か月分を支 給する。) (3)原告の担当業務原告は、本件事務所で、主として被告Aの業務の補助を担当しており、被告Aが手書きで作成した原稿をパソコンで入力する等の業務に従事していた。 (4)うつ病の診断原告は、平成31年3月7日、Cクリニック(精神科)のD医師の診察を受け、う つ病エピソードと診断された(乙1の71頁)。 (5)解雇に至る経緯原告は、令和元年9月30日、被告B及び当時本件事務所で勤務していたE弁護士と面談し、被告Bから、休業期間を同年10月1日から同年12月31日までとする旨記載された休職通知書の交付を受け、同年10月1日から休業を開始した(甲5)。 その後、上記の休業期間は延長されたが、被告Bは、令和2年7月31日、原告に対し、休業期間は同日までであり、休業期間満了をもって原告を解雇する旨をメールで伝え、同日付けで原告を解雇した(以下「本件解雇」という。)(甲7)。 (6)原告のPTSDの診断D医師は、令和5年6月3日付けで、原告の病名を「うつ病・PTSD」とする診 断書を作成した。同診断書には、原告が、職場において原告にセクシャルハラスメントや暴行を加えていた人物と同世代の男性を目にしたり、職場の近くを歩いたりする程度でも外傷記憶が惹起されフラッシュバックを起こしてしまうため、障害としては重度でありPTSDの要素も十分存在するとも記載されている。(甲13) 3 争点及び当事者の主張 (1)争点1-被告Aによるハラスメントの有無及び不法行為の成否(原 うため、障害としては重度でありPTSDの要素も十分存在するとも記載されている。(甲13) 3 争点及び当事者の主張 (1)争点1-被告Aによるハラスメントの有無及び不法行為の成否(原告の主張)アうつ病エピソードの診断前の行為について被告Aの後記(ア)から(ウ)の各ハラスメント行為は、いずれも原告の人格権を侵害する行為であるから不法行為に該当する。 (ア)暴行について 被告Aは、平成23年頃から原告が休業する令和元年9月までの間、平均して月に3回から4回、仕事のミスなどを理由に、原告をげんこつで殴った。殴られた箇所は皮下血腫になって、2、3日痛みが残ることが何度もあった。 (イ)セクシャルハラスメントについて被告Aは、平成24年、原告をサンドイッチ屋に呼び出し、「あなたのことが好きで 仕方がないんだ」と言い、その後も何度も同じようなことを言った。 また、被告Aは、同年の夏頃又は秋頃、原告に対し、「奥さんがいなかったらあなたと結婚する」と言うなど、恋愛感情を持っていることを告げた。 さらに、被告Aは、平成30年9月10日、原告に対し、鎌倉の依頼者宅及び鎌倉簡易裁判所への同行を求め、その帰路、喫茶店で2人きりになった際、小説の一節を 読むように命じた。その一節は、40代の女性が裸で洗面所の鏡の前に立ち、自分の身体を眺めて、たるんだ腹やたれた胸、だらしない身体、などと記載されていた箇所であった。被告Aは、原告に対し、「あなたはどう思う」と尋ね、原告が答えに困っていると、「私は、あなたのことを書いてあると思っていつも読んでいるんだ」などと述べた。 その他、被告Aが、原告に対し、「40歳前後の女性は一番性欲が強くなる。そういう時はどうするんだ?」と尋ねることや、原告が付き合っている てあると思っていつも読んでいるんだ」などと述べた。 その他、被告Aが、原告に対し、「40歳前後の女性は一番性欲が強くなる。そういう時はどうするんだ?」と尋ねることや、原告が付き合っている男性と「ホテルに行くときどっちがお金を払うのか」、「付き合っている男性はどんな人か」と尋ねることなどがあった。 (ウ)暴言等について 原告は、平成30年12月、被告Aから指示され、被告Aが発送する宛名シールなどを作成し、これを年賀状に貼るなどの作業をして被告Aに渡した。しかし、後日、被告Aは、原告を呼び出し、「俺からの年賀状はいらないのか」「あっちへ行け。お前の顔なんて見たくない」と述べて、原告宛ての年賀状がないことを叱責した。原告宛ての年賀状がないのは被告Aの管理の問題であったはずで、理不尽な叱責であったが、 原告は身に覚えが無くても謝罪を繰り返すほかなく、気持ちの糸がきれてしまうよう な感情になった。 その他、被告Aは、機嫌の良し悪しで態度の差が激しく、機嫌が悪いときは、原告が挨拶や声がけをしても無視し、原告を内線で呼び出して原稿を投げ捨てるように渡すことなどもあった。また、被告Aは、原告がパソコンで入力した原稿にミスがあると、被告Aが作成した手書きの原稿にミスがあっても、原告に対して理不尽に当たり 散らし、怒りをぶつけた。 イうつ病エピソードの診断後の行為について(ア)原告は、令和元年9月27日、被告Aから、「10月以降の予定が書いていない。どうなっているんだ」と尋ねられ、同年10月から休業する旨伝えたところ、被告Aは、原告が休業すると知らされていなかったことに激怒した。原告は、その際の やり取りでパニック状態になり、事務所内で倒れ、その後、同月1日から休業を開始した。 (イ)被告Aは、同月1 被告Aは、原告が休業すると知らされていなかったことに激怒した。原告は、その際の やり取りでパニック状態になり、事務所内で倒れ、その後、同月1日から休業を開始した。 (イ)被告Aは、同月16日、原告の携帯電話に何十回も電話をかけ、原告の実家にも「何をしているのか?どこにいるのか?」と尋ねる電話をかけ、さらに、原告が病院から帰ってくるところを、原告の自宅近くで待ち伏せた。 その後も、被告Aは、原告の自宅に手紙やプレゼントを送付し、原告の携帯電話にも何度も電話をかけた。 また、原告は、同年11月29日、被告Bに休業中の状況報告をする際、医師からの「(被告Aの)電話や手紙、自宅近くまで来ること、実家へ電話をすることが治癒の妨げになっているから、止めて貰うように伝えなさい」という指示を被告Bに伝え、 被告Bから対応すると回答を受けたにもかかわらず、被告Aから、原告に対し、令和2年1月1日に年賀状が送られ、同年3月27日には品物(しらす)が届いた。 (ウ)被告Aの上記各行為は、既に精神疾患を発症している原告に対して無配慮なもので、使用者として負う安全配慮義務に違反するものであり、原告の人格権を侵害するものであるから不法行為に該当する。 (被告らの主張) アうつ病エピソードの診断前の行為について(ア)暴行について被告Aは、原告が仕事のミスをしたとき、冗談ぽくダメだぞという感じで原告の頭に軽くコツンと手を置くことはあったが、その態様は、殴るというようなものではなく、皮下血腫になって、2、3日痛みが残るような程度のものではなかった。また、 その回数も、原告の就労期間中で1、2回程度であり、平均して月に3回から4回などという頻度で行ったということはない。 (イ)セクシャルハラスメントについて原 程度のものではなかった。また、 その回数も、原告の就労期間中で1、2回程度であり、平均して月に3回から4回などという頻度で行ったということはない。 (イ)セクシャルハラスメントについて原告がセクシャルハラスメントとして主張する事実(前記(原告の主張)ア(イ))のうち、平成30年9月10日、被告Aが原告に対し鎌倉の依頼者宅及び鎌倉簡易裁 判所への同行を求めたこと及びその帰路に喫茶店に立ち寄ったことは認め、その余はいずれも否認する。 (ウ)暴言等平成30年12月に、被告Aが、年賀状の管理の問題で原告を叱責したことはあったが、その際、被告Aが、原告に対して、「俺からの年賀状はいらないのか」「あっち へ行け。お前の顔なんか見たくない」などと言ったという事実や原告が謝罪を繰り返したという事実はなく、その叱責は理不尽なものではなかった。 原告が暴言等として主張する事実(前記(原告の主張)ア(ウ))のうち、その余はいずれも否認する。 イうつ病エピソードの診断後の行為について (ア)被告Aが、令和元年9月27日、原告を怒鳴ったことは否認する。 (イ)被告Aは、同年10月16日、顧客が入所している特別養護老人ホームを訪れた際、近くに住んでいる原告の健康状態はどうかと気になり、原告に電話をかけたが、何十回もかけてはいない。また、被告Aは、原告の応答がなかったので、原告の実家にも電話をかけたが、電話に出た相手に対して「何をしているのか?どこにいるの か?」という言い方はしておらず、「医者に行っている」と聞いたので、「よろしく言 ってください」と言って電話を切り、そのまま事務所に帰った。原告を待ち伏せなどしていない。 その後、被告Aが、原告の自宅に手紙やプレゼントを送付し、原告の携帯電話にも何度も電話をか く言 ってください」と言って電話を切り、そのまま事務所に帰った。原告を待ち伏せなどしていない。 その後、被告Aが、原告の自宅に手紙やプレゼントを送付し、原告の携帯電話にも何度も電話をかけたという事実はない。 被告Aが令和2年1月1日に原告に対し年賀状を送付したことは知らない。年賀状 は、住所録に記載されている500名から600名程度の人数に対し事務局が宛名シールを印字して出しており、被告Aがいちいちチェックをしていない。 同年3月27日に原告の元に被告Aが送付した品物(しらす)が届いたことは事実であるが、被告Aは、毎年、この時期、世話になっている知人や事務所の人全員(20名以上)に漁が解禁となったしらすを送っており、原告だけに送ったわけではない。 (2)争点2-被告Bの安全配慮義務違反(不法行為、債務不履行)の有無(原告の主張)ア原告は、平成28年3月31日、被告Bに面談を申し込み、それまでに被告Aから受けたハラスメント(ただし、セクシャルハラスメントを除く。)について相談をしたが、被告Bは、使用者として果たすべきハラスメント防止の対策や被告Aへの指 導などの対策を採らなかった。そのため、それ以降も被告Aによるパワーハラスメント等は収まらなかった。 イ原告は、平成31年3月26日午後5時30分頃から午後6時頃までの約30分間、被告Bと面談し、当時の体調を伝えるとともに、「3ヶ月間の自宅療養を要する」と明記された同月14日付け診断書(以下「本件診断書」という。)を見せて、精 神科に通院していること、被告Aのハラスメントが原因であると医師から指摘されていること、神奈川県弁護士会のハラスメント相談室にも相談していることなどを告げた。 仮に、上記面談が実現していなかったとしても、そこからさほど日 被告Aのハラスメントが原因であると医師から指摘されていること、神奈川県弁護士会のハラスメント相談室にも相談していることなどを告げた。 仮に、上記面談が実現していなかったとしても、そこからさほど日を置かず、被告Bにより原告との面談が実施され、その面談時に、被告Bは原告から本件診断書の提 出を受けていたはずであるし、さらには、同月末までに面談が実現していなかったと しても、本件診断書の提出を受けて原告の健康状態を認識した以上、被告Bは、早期に面談を実施するなどして原告の健康状態を正確に把握すべきであった。 したがって、被告Bは、同月末の時点で、原告に対して、本件診断書に従って自宅療養(休業)を命じるべき安全配慮義務があり、仮に被告Bが自宅療養(休業)を命じない場合であったとしても、原告の健康状態に関する医師の判断を認識したのであ れば、少なくとも、①本件診断書には従わずに就労を継続させることになるが、原告の健康状態が就労可能であるか、②発症原因との関係で職場環境として配慮すべき事柄があるか(とりわけ、ストレス要因である被告Aの業務の補助を引き続き担当させてよいのか)を原告の主治医に問い合わせるなどして、使用者として労務管理上配慮すべき事柄がないか把握すべき安全配慮義務があった。 それにもかかわらず、被告Bは、令和元年6月19日まで何らの対処もせず、同日以降も、毎週水曜日を休みにする業務軽減を実施するにとどまり、ストレス要因である被告Aの下で原告を漫然と就労させ続けたのであるから、上記の安全配慮義務に違反する。 (被告Bの主張) ア被告Bは、平成28年3月31日頃、原告と面談し、被告Aの機嫌が悪い時の対応がよくないという相談を受けたが、被告Aの暴言や暴力、セクシャルハラスメントについての相談はなかっ Bの主張) ア被告Bは、平成28年3月31日頃、原告と面談し、被告Aの機嫌が悪い時の対応がよくないという相談を受けたが、被告Aの暴言や暴力、セクシャルハラスメントについての相談はなかった。被告Bは、被告Aに対し、機嫌が悪いときに他人に冷たく対応するのは良くないと注意し、被告Aもそれを聞き入れたこと、原告からはその後の相談もなく、他の事務員や弁護士からも被告Aの態度がよくないとの話も聞い ていなかったことから、被告Aの対応は改善したものと考えていた。 イ被告Bは、平成31年3月26日、原告と面談をするつもりではあったが、被告Bが事務次長を務めていた日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)の会議や内部打合せ等の業務が立て込み、同日午後5時30分頃から午後6時頃の間も日弁連の事務局とやりとりをしており、原告と本件事務所において面談した事実はない。 また、被告Bは、同月末までに、原告から本件診断書を示されていないし、原告が 休業するまでの間、原告の健康状態が被告Aによるものであるとも聞かされていなかった。 したがって、被告Bは、原告の主張する安全配慮義務を負っていない。 (3)争点3-被告Aの安全配慮義務違反(不法行為、債務不履行)の有無(原告の主張) ア原告は、平成31年3月末には、被告Aと共同で原告を雇用する被告Bに対して本件診断書を提出し、被告Aのハラスメントが原因でうつ病を発症し3か月間の自宅療養を要するとの診断を受けたことを伝えた。 原告は、主として被告Aの業務を担当していたのであり、使用者である被告Aは、共同の使用者である被告Bが原告の上記健康状態を把握した時点でその情報を把握 して、医師の指導に従った対処をすべき安全配慮義務があったが、これを怠った。 イまた、原告は、自 である被告Aは、共同の使用者である被告Bが原告の上記健康状態を把握した時点でその情報を把握 して、医師の指導に従った対処をすべき安全配慮義務があったが、これを怠った。 イまた、原告は、自身の健康状態への配慮を理由に、令和元年6月19日、同日以降、毎週水曜日を休みにする業務軽減をされていたのであるから、被告Aは、遅くともこの時点において、原告の健康状態に何らかの問題があることを把握できたのであり、原告や被告Bに確認をする等して、原告の健康状態を把握し、医師の指導に従 った対処をすべき安全配慮義務があったにもかかわらず、これを怠った。 (被告Aの主張)原告が主として被告Aの業務を担当していたこと、原告が令和元年6月19日以降毎週水曜日休みになっていたことを被告Aが認識していたことは認め、その余は否認し、争う。 (4)争点4-被告らの行為と原告の精神障害の発症との間の相当因果関係の有無(原告の主張)アうつ病エピソードの発症について原告は、平成31年3月上旬頃、うつ病エピソードを発症した。このうつ病エピソードの発症は、以下のとおり、被告Aによる前記(1)(原告の主張)アのハラスメン トとの相当因果関係が認められる。また、被告Bの前記(2)(原告の主張)の安全配 慮義務違反の行為、被告Aの前記(3)(原告の主張)の安全配慮義務違反の行為は、原告に対する心理的負荷を相乗的に増加させ、その結果、原告はうつ病エピソード及びPTSDを発症した。そのため、被告らには不法行為及び債務不履行が成立するし、被告らが原告の共同の使用者であることからすれば、共同不法行為が成立する。 (ア)暴行について 被告Aによる暴行(前記(1)(原告の主張)ア(ア))は、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の 原告の共同の使用者であることからすれば、共同不法行為が成立する。 (ア)暴行について 被告Aによる暴行(前記(1)(原告の主張)ア(ア))は、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に照らしても、心理的負荷の強度が「強」となる具体例である「上司等から、暴行等の身体攻撃を執拗に受けた場合」に該当する。 (イ)セクシャルハラスメントについて 被告Aによるセクシャルハラスメント(前記(1)(原告の主張)ア(イ))は、身体接触のない性的な発言のみのセクシャルハラスメントであるが、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に照らしても、心理的負荷の強度が「強」となる具体例である「発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた」場合に該当する。 (ウ)暴言及び平成30年12月のハラスメントについて被告Aによる暴言等(前記(1)(原告の主張)ア(ウ))は、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に照らしても、心理的負荷の強度が「強」となる具体例である、「人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃」、「必要以上に長時間にわたる 厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃」を「反復・継続するなどして執拗に受けた」場合に該当する。 (エ)以上のとおり、前記(1)(原告の主張)アのハラスメントは、いずれも単独で心理的負荷の強度が「強」と評価されるものであり、原告のうつ病エピソードの発症 との相当因果関係が認められる。 イうつ病エピソードの悪化について厚生労働省が定める「心理的負荷 心理的負荷の強度が「強」と評価されるものであり、原告のうつ病エピソードの発症 との相当因果関係が認められる。 イうつ病エピソードの悪化について厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準について」は、精神障害を発症して治療が必要な状態にある者について、「悪化の前に業務による強い心理的負荷が認められる場合には、当該業務による強い心理的負荷、本人の個体側要因(悪化前の精神障害の状況)と業務以外の心理的負荷、悪化の態様やこれに至る経緯(悪 化後の症状やその程度、出来事と悪化との近接性、発病から悪化までの期間など)等を十分に検討し、業務による強い心理的負荷によって精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したものと精神医学的に判断されるときには、悪化した部分について業務起因性を認める。」としている。 被告Aによるうつ病エピソード発症後の前記(1)(原告の主張)イ(ア)は、既に 精神障害を発症している原告に無配慮で、心理的負担を与えるものであるし、前記(1)(原告の主張)イ(イ)のつきまとい行為は、原告がこれを止めるように求めてもなお、執拗に私生活領域への介入を継続したものであり、心理的負荷の強度が「強」となる具体例である、「私的なことに過度に立ち入る個の侵害」を「反復・継続するなどして執拗に受けた」場合に該当する。 仮に、被告Aによる上記つきまとい行為自体の心理的負荷の強度が「中」にとどまるとしても、被告らは、原告から、上記つきまとい行為を止めるように依頼されてもなお、これを止めずに継続しており、このような事情も考慮すれば、心理的負荷の強度が「強」となる具体例である、「会社に相談しても又は会社がパワーハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった」場合に該当する。 な事情も考慮すれば、心理的負荷の強度が「強」となる具体例である、「会社に相談しても又は会社がパワーハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった」場合に該当する。 そして、原告は、被告Aによる上記つきまとい行為から、時間的に近接したタイミングで、フラッシュバックを起こしており、その症状は自然的経過を超えて著しく悪化したものと精神医学的に判断されている。 よって、被告Aによる上記つきまとい行為は、原告において既に発症していたうつ病エピソードの悪化との相当因果関係が認められる。 ウ他の原因による可能性について (ア)交際相手との関係について原告の交際相手であったF氏との関係が原告のうつ病エピソードの発症に影響しているという被告らの主張(後記(被告らの主張)ア)は争う。F氏の親が結婚に反対しているかという点は、原告とF氏との間で問題となっていない。 (イ)卵巣の腫瘍の治療及び更年期障害の発症 卵巣の腫瘍の治療及び更年期障害の発症が原告のうつ病エピソードの発症に影響しているという被告らの主張(後記(被告らの主張)イ)は争う。 (ウ)投薬状況について原告のうつ病エピソードの発症に投薬状況が影響しているという被告らの主張(後記(被告らの主張)ウ)は争う。原告の投薬状況は、大きな副作用が生じるような異 常なものではなかったし、投薬開始時期に原告の抑うつ状態が現れたなどの事情は一切なく、被告Aのハラスメントと原告のうつ病エピソードの発症との間の相当因果関係を否定するものではない。 (エ)その他の事情について原告が平成31年1月に「胃がんの疑い」、同年2月に「子宮頸がんの疑い」「子宮 体がんの疑い」「卵巣欠落症状」の診断を受けたことは認めるが、いずれも確定診断で 。 (エ)その他の事情について原告が平成31年1月に「胃がんの疑い」、同年2月に「子宮頸がんの疑い」「子宮 体がんの疑い」「卵巣欠落症状」の診断を受けたことは認めるが、いずれも確定診断ではなく、重篤ではない。 被告らが、うつ病エピソードの発症に影響を与えたと主張するその他の事情はいずれも、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準」に照らしても、心理的負荷の強度が「Ⅱ」(中程度)と評価されるにとどまるものであり、被告Aのハ ラスメントと原告のうつ病エピソードの発症との間の相当因果関係を否定するものではない。 (被告らの主張)原告には、以下のとおり、原告主張の被告Aのハラスメント以外にもうつ病の原因となる事象が多数存在するから、原告のうつ病エピソードの発症及び悪化と原告が主 張する被告Aのハラスメントとの相当因果関係、その他の被告らの行為との相当因果 関係は認められない。 ア交際相手との関係の影響原告は、結婚を前提として交際していた交際相手(F氏)がいたが、F氏の母親から、原告に離婚歴があり子どもが二人いることを理由に強く反対されて結婚ができないことなどを悩んでいた。また、原告とF氏は、平成30年末から平成31年1月頃 に一度別れている。 イ卵巣の腫瘍の治療及び更年期障害の発症の影響原告は、平成30年1月26日、卵巣腫瘍の診断を受け、同年2月1日、卵巣癌の疑いがあると診断され、以降通院しており、同月21日、薬による経過観察を選択して治療している。 卵巣腫瘍は卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが影響しており、薬による治療においてはエストロゲンの分泌を減少あるいは止めて偽閉経状態を作り出すことになるが、このエストロゲンが減少すると女性の精神状態に変調 泌されるエストロゲンという女性ホルモンが影響しており、薬による治療においてはエストロゲンの分泌を減少あるいは止めて偽閉経状態を作り出すことになるが、このエストロゲンが減少すると女性の精神状態に変調をきたし、女性は気分障害が起こりやすく、うつ病にもなりやすいとされている。 また、原告は、同年10月10日及び同年11月6日に更年期症候群と診断されて いるところ、卵巣腫瘍の投薬治療では偽閉経状態を作り出すので、更年期障害を発症している可能性が高い。更年期障害は、エストロゲンの分泌の減少・消滅により生ずるものであり、したがって、更年期障害を発症していた可能性が高い原告はうつ病にもなりやすい状況であった。 ウ投薬状況の影響 原告は、病歴に係る治療に際して、多くの投薬を受けており、その中には、セチリジン塩酸塩やジエノゲスト錠1ミリグラム、サインバルタカプセル20ミリグラムのように、副作用として、うつ状態そのもの、うつ状態に認められる倦怠感、不快感、不眠、不安、震え、錯乱などの症状、うつの原因となる更年期障害などを惹き起こすものがある一方で、ツムラ加味逍遥散エキス顆粒7.5グラムやクラシエ加味逍遥散 エキス細粒6グラムのように、うつの原因となる月経不順・月経困難・更年期障害に 対する治療薬やうつ病そのものに対する治療薬があり、平成31年3月7日にうつ病と診断されるまで、原告に対するこれらの処方投薬がいたちごっこのように繰り返されていた。 原告が主張するうつ病の症状は上記の投薬の副作用として生ずるものであり、その投薬状況を踏まえれば、原告は、平成30年12月頃より以前からうつ状態やうつ状 態にみられる心身の不調を惹起していた可能性が高い。 エその他の事情原告には、うつ病以外にも、適応障害、更年期障害など を踏まえれば、原告は、平成30年12月頃より以前からうつ状態やうつ状 態にみられる心身の不調を惹起していた可能性が高い。 エその他の事情原告には、うつ病以外にも、適応障害、更年期障害など精神疾患系の病気がある上、平成31年1月には胃がんの疑い、同年2月14日には子宮頸がんの疑い、子宮体がんの疑い、卵巣欠落症状と診断され、精神疾患以外にも頻繁に種々の病気を発症して 診療を受けており、原告に著しいストレスが生じていたことが容易に推測される。 また、原告の次男は「発達障害」の精神疾患を持っており、原告はそのことを悩んでいた。 さらに、原告は、機嫌がいいときとそうでないときとではその態度に差があるという気質があったし、その他、いとこが20年以上も精神的な病気で引きこもりの状態 であったこと、原告が平成23年頃からストレスによる難聴の徴候があったこと、平成29年1月5日及び同年3月7日に適応障害の疑いがあると診断されたことなど、精神疾患の素因と考え得る事情がある。 (5)争点5-損害の発生及びその額(原告の主張) ア精神障害の発症に起因する損害(ア)給与相当分の休業損害原告は、被告らの不法行為及び債務不履行によって、うつ病エピソード等を発症し、就労が継続できなくなった結果、令和2年7月1日以降、賃金の支払を受けていない。 原告は、被告らの不法行為及び債務不履行がなければ、被告らにおいて就労を継続 していたのであり、その場合に得られたであろう給与相当分の損害を被った。 ただし、原告は下記給付基礎日額の6割にあたる休業補償給付を受給している。 したがって、原告が被った給与相当分の休業損害の額は、原告の給付基礎日額9424円の4割に休業期間である令和2年7月1日から令和6年11月21日まで 礎日額の6割にあたる休業補償給付を受給している。 したがって、原告が被った給与相当分の休業損害の額は、原告の給付基礎日額9424円の4割に休業期間である令和2年7月1日から令和6年11月21日までの日数1605日を乗じた金額の605万0208円である。 (イ)賞与相当分の休業損害 原告は、令和元年10月1日の休業開始以降、賞与の支給を受けていないが、就労できていれば、1年当たり27万5000円の3.5か月分(6月に1.5か月分、12月に2か月分が支給される。)の賞与を確実に得られたはずである。 原告は、被告らの不法行為及び債務不履行がなければ、被告らにおいて就労を継続していたのであるから、その場合に得られたであろう賞与相当分481万2500円 (令和元年12月支給分から令和6年6月支給分までの合計)の損害を被った。 (ウ)住居手当及び子供手当相当分の損害原告は、令和元年10月1日の休業開始から、住居手当(1月当たり1万5000円)及び子供手当(1月当たり5000円)の支給を受けていない。 原告は、被告らの不法行為及び債務不履行がなければ、被告らにおいて就労を継続 していたのであり、その場合に得られたであろう住居手当及び子供手当相当分合計124万円(1月当たりの住居手当及び子供手当合計2万円に休業期間である同月から令和6年11月までの62か月を乗じた金額)の損害を被った。 (エ)通院慰謝料原告は、被告らの不法行為及び債務不履行によって、うつ病エピソードを発症し、 通院治療を継続することを強いられ、甚大な精神的苦痛を被った。その通院期間2087日(平成31年3月7日から令和6年11月21日まで)を踏まえれば、原告の精神的苦痛を慰謝するには270万円を下らない。 イ違法無効な解雇に伴う慰謝料原告のうつ を被った。その通院期間2087日(平成31年3月7日から令和6年11月21日まで)を踏まえれば、原告の精神的苦痛を慰謝するには270万円を下らない。 イ違法無効な解雇に伴う慰謝料原告のうつ病エピソードの発症は、被告らの加害行為に起因する業務上の疾病であ るところ、本件解雇は業務上疾病について療養のために休業期間中に行われたもので あり、労働基準法19条に違反する。 原告は、既に精神疾患を発症している状況であったのに、違法な本件解雇によって、原告はさらに将来に対する強い不安にさいなまれ、著しい精神的苦痛を被ったのであり、この精神的苦痛を慰謝するには100万円を下らない。 ウ弁護士費用 原告は、前記ア及びイの各損害について賠償請求するため弁護士に委任せざるを得なかったから、前記ア及びイの各損害の合計である1580万2708円の1割に相当する158万0271円の弁護士費用は、被告らの不法行為と相当因果関係がある損害である。 (被告らの主張) 否認し、争う。 被告らは、原告に対し、令和元年12月15日、同月分の賞与として51万円を、同年10月分から退職した日の属する月の前月である令和2年6月分まで、月額1万5000円の住宅手当及び月額5000円の子供手当を支払っている。 (6)争点6-原告の任意退職の意思表示の有無 (被告らの主張)原告は、令和5年10月25日頃、退職日として令和2年7月31日と記載された請求書をもって独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部(以下「中退共本部」という。)に中小企業退職金共済制度(以下「中退共制度」という。)に基づき退職金等の支払を請求し、令和5年12月7日、退職金等を受領したのであ るから、令和2年7月31日付けで原告が本件 本部」という。)に中小企業退職金共済制度(以下「中退共制度」という。)に基づき退職金等の支払を請求し、令和5年12月7日、退職金等を受領したのであ るから、令和2年7月31日付けで原告が本件事務所を退職したことを認めている。 したがって、原告の地位確認の請求と、同日以降の休業損害、賞与額相当分の損害、住居手当相当額の損害とこれらに対応する弁護士費用相当額、不当解雇を理由とする損害賠償請求には理由がない。 (原告の主張) 原告が、中退共制度に基づく退職金等を請求し、これを受領したことをもって、本 件事務所を退職することに同意したことにはならない。 (7)争点7-和解契約成立時までに生じた損害賠償債務の弁済の有無(被告らの主張)原告は、令和元年5月31日、被告Aを打合せ室に呼び出し、うつろな目をし、呂律が廻らないような声で「こんな身体になってしまった。先生には1000万円位払 ってもらいたいが、せめて500万円を払ってください」と涙ながらに訴えた。 被告Aは、同日300万円、同年6月5日200万円を原告が指定する口座に振り込んだが、上記の500万円の支払は、原告と被告Aとの間における、原告の身体の不調あるいは障害の争いについて500万円を支払うことで解決するという和解契約に基づく債務の弁済としてなされたものである。 したがって、和解契約成立時までの事情に基づく原告の損害賠償債務については、上記和解契約に基づく上記の弁済によって消滅した。 (原告の主張)原告は、令和元年5月31日、被告Aに対して、健康だけが取り柄だったのに体調が悪くて普通の生活もできないこと、線路のギリギリの所を歩いている感じでいつ線 路に飛び込んでしまうか分からないような健康状態であること、できれば健康を返して欲し 康だけが取り柄だったのに体調が悪くて普通の生活もできないこと、線路のギリギリの所を歩いている感じでいつ線 路に飛び込んでしまうか分からないような健康状態であること、できれば健康を返して欲しい、1000万円や2000万円をもらっても足りないくらいに辛い状態で悔しいことなどを伝えた。 すると、被告Aが、「俺の方がもっと辛い、じゃあ俺がそうしたというならいくら払えばいいんだ」などと繰り返し問いかけてきたので、原告が「それなら、500万」 と答え、被告Aが原告に対して500万円を払うことになった。 被告Aは、上記の金銭授受に際し、原告に対して、原告と被告らとの紛争を全て終了させるような法的効果を生じさせる和解契約の申込みをしておらず、原告に500万円を贈与したにすぎない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。 (1)被告Aによる継続的な暴行等原告は、平成23年頃から、被告Aが、機嫌が悪いときには原告に機嫌の悪さを示す態度をとると感じるようになり、理不尽であると思うようになった。また、被告A は、同年頃から原告が休業するまでの間、原告が、業務のミスをした際など、原告を本件事務所内の自席に呼び出し、頭を出せと述べて、げんこつで、痛みを感じさせる程度の強さで、その頭頂部を殴打するということを継続的に行っていた。 本件事務所は、面積約60㎡で、被告Aの本件事務所内の机は、被告Bや他の弁護士ら、原告ら事務員らとはパーティション(ただし、天井までの高さはない。)で仕切 られた別の区画にあったが、遮音設備はなかったし、被告Aと被告Bの椅子は3mほどしか離れていなかった。(以上、証人E、原告本人)。 (2)平成24年頃の だし、天井までの高さはない。)で仕切 られた別の区画にあったが、遮音設備はなかったし、被告Aと被告Bの椅子は3mほどしか離れていなかった。(以上、証人E、原告本人)。 (2)平成24年頃の被告Aの言動被告Aは、平成24年頃、横浜地方裁判所の付近のサンドイッチ屋で、原告に対し、「あなたのことが大好きで仕方がないんだ。」と述べ、以後、繰り返し原告に好意を告 げ、「奥さんがいなかったらあなたと結婚したい。」とも述べた(甲16、原告本人)。 (3)被告Bとの平成28年3月31日の面談について原告は、平成28年3月31日、被告Bに面談を申し込み、被告Aの機嫌が悪くて怖いことがあるとして、被告Aに話し掛けても返事をしてもらえないことや、書類を投げ渡されることがあるという内容の相談をした。これに対し、被告Bは、その話が 事実ならばハラスメントになるから、一旦この件を自分に対応させてほしい旨述べた。 被告Bが被告Aの様子を注意して見ていたところ、被告Aが時折不機嫌な態度を表に出す様子が見受けられたため、被告Bは、被告Aに対し、事務所内で不機嫌な態度を表に出すのはやめたほうがよいと注意した。その後、被告Bが見るところ、被告Aが不機嫌な態度をあらわにすることはなくなっていたため、被告Bは原告から相談を 受けたことは解決したと考えた。もっとも、被告Bは、原告に対し、被告Aを注意し たと報告したり、その後の原告に対する被告Aの態度を原告に確認したりすることはなかった。(以上、乙1の284頁、285頁、丙4、被告B)(4)被告Bの平成30年6月以降の稼働状況被告Bは、平成30年6月から令和2年5月まで、日弁連の事務次長に就任し、この間、平日に本件事務所に出勤することがほとんどなくなり、本件事務所の他の弁護 被告Bの平成30年6月以降の稼働状況被告Bは、平成30年6月から令和2年5月まで、日弁連の事務次長に就任し、この間、平日に本件事務所に出勤することがほとんどなくなり、本件事務所の他の弁護 士や事務員らとの連絡は、主にメールや電話で行うようになっていた(丙4、証人E、被告B本人)。 (5)原告のうつ病エピソード発症前の被告Aの言動ア被告Aは、平成30年9月10日、原告に対し、鎌倉簡易裁判所への同行を求めた際、その帰路に立ち寄った喫茶店で、小説のある頁で、女性が鏡に映る自分の裸 を見ると、とてもだらしない体で洋なしのように見えるという内容が記載された箇所を黙読するよう求め、さらに、あなたはどう思うかと尋ね、私はあなたのことを書いてあると思って読んでいるなどと述べた(甲16、原告本人)。 イ被告Aは、同月19日から同月27日頃までの間、複数回、原告を食事に誘い、2人で食事に行った際、「40歳前後の女性は一番性欲が強くなる。そういう時はど うするんだ」などと述べた(甲16、原告本人)。 ウ被告Aは、同年11月21日頃、原告が被告A作成の原稿をパソコンで入力した際、同原稿では「下記のように」となっていたものを「悪鬼のように」と誤変換していたことに立腹し、原告に対し、頭を出せと述べて、げんこつで、痛みを感じさせる程度の強さで、その頭頂部を殴打した(乙13の4、乙53の1、原告本人)。 エ原告は、同年12月頃、被告Aから、年賀状の送付先(職員宛てのものも含む。)のリストを作成するとともに、宛名シールを貼った年賀状を作成する業務を任されていた。被告Aは、原告に対し、他の職員宛ての年賀状は準備していたにもかかわらず、原告宛ての年賀状を準備していないことを指摘するとともに、「俺からの年賀状は要らないのか。お前の顔な する業務を任されていた。被告Aは、原告に対し、他の職員宛ての年賀状は準備していたにもかかわらず、原告宛ての年賀状を準備していないことを指摘するとともに、「俺からの年賀状は要らないのか。お前の顔なんか見たくないから、あっち行け。」と述べた(甲16、乙1 3の5、原告本人)。 (6)平成31年3月頃の原告と被告Bとの面談に関するやりとりア原告は、平成31年2月に、弁護士会の「ハラスメント相談」に相談に行った(甲16、17)。 イ原告は、同年3月7日、Cクリニックを受診し、D医師により「うつ病エピソード」と診断され、うつ病エピソードにて「通院加療中。状態不安定であり、3ヶ月 間の自宅療養を要するものと判断する。当院での通院加療は継続する。」と記載された同月14日付けの診断書(本件診断書)の交付を受けた(甲6の1、乙1の71頁)。 ウ原告は、同月25日、被告Bに対し、「今日も体調が悪くお休みさせてください」などと記載して欠勤の連絡をするメールを送信したところ、被告Bは、「明日の夕方、事務所へ寄ろうと思います。そのときに会えれば、話を聞かせてください。ただ し、無理はなさらず。」と返信した(甲15)。 被告Bは、同月26日、日弁連の事務次長の業務の都合で、本件事務所に立ち寄って原告と面談することができず、本件診断書も受領しなかった。被告Bは、同年4月19日以降、本件事務所内の被告Bの机上に本件診断書の写しが置かれているのを目にし、これを受領した。(丙4、被告B本人) エ原告は、同月11日に交通事故に遭って負傷し、同月18日まで仕事を休み、同月19日に職場復帰したが、翌週の同月22日には体調不良により早退し、同月23日も休んだ。 (7)原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受原告は、令和元年 て負傷し、同月18日まで仕事を休み、同月19日に職場復帰したが、翌週の同月22日には体調不良により早退し、同月23日も休んだ。 (7)原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受原告は、令和元年5月14日以降、体調不良を理由に頻繁に休むようになっており、 同月31日、被告Aに対し、健康を返してほしい、1000万円や2000万円もらっても足りないくらい辛いなどと述べたところ、被告Aから、いくら払えばよいかと尋ねられたため、500万円と答えた(甲16、原告本人)。 被告Aは、原告の口座に、同日、300万円を振り込み、さらに、同年6月5日、200万円を振り込んだ(乙16)。 (8)被告Bとの令和元年6月の面談 被告Bは、原告が令和元年5月14日以降、頻繁に休むようになっていたため、同年6月6日、E弁護士同席の下、原告と面談を行った。被告Bは、原告に対し、一定期間の休業を提案したが、原告は、生活のこともあり、休みたくない、被告Aのサポートをしたいなどと述べた。原告は、この場では、被告Aからハラスメントを受けているなどの話はしなかった。(丙2の4から8まで、証人E、被告B本人) 原告が収入が減ることを気にしていたこともあり、被告Bは、原告に対し、同月11日、E弁護士を通じて、週4日勤務とする、ただし、減給はしないとの提案をした。 原告は、E弁護士に対し、この提案は選択肢の一つであることは了解したが即答できない旨を述べた。(証人E、被告B本人)原告は、同月12日、E弁護士に対し、被告Bの提案どおり週4日勤務としたい旨 を回答し、被告Bは、原告の就労について①毎週水曜日を休みとすること(ただし、給与等は従来とおりとする。)、②最初の水曜日である同月19日から休みを実施すること、③同年7月24日ころに医師の を回答し、被告Bは、原告の就労について①毎週水曜日を休みとすること(ただし、給与等は従来とおりとする。)、②最初の水曜日である同月19日から休みを実施すること、③同年7月24日ころに医師の診断書を提出すること、④週4日勤務を延長するかどうかは医師の意見を踏まえて協議することを決めた(丙5、証人E)。 (9)原告が休業に至る経緯とその前後の被告Aの言動 ア原告は、令和元年6月19日以降、毎週水曜日以外の日に突然休むことはなかった。しかし、被告Bは、「原告のフルタイム勤務の希望は強いが、一定程度の勤務時間などへの配慮がなされることが好ましい」旨記載されたD医師作成の同年7月18日付け診断書を見て、原告をフルタイム勤務に戻すことはできないと考えた(甲6の2、丙4)。 その後も原告が毎週水曜日以外の日に突然休むことはなかったが、被告Bは、「就労は可能だが、今しばらく一定程度の勤務時間などへの配慮がなされることが望ましい」旨記載されたD医師作成の同年8月29日付け診断書を見て、原告を毎週水曜日だけ休業させることでよいのかと考え、同年9月6日に原告と面談することとした(甲6の3、丙4、被告B本人)。 イ原告は、同年9月6日、被告BとE弁護士との面談の際、医師からは休業した ほうがよいと言われているが、他の事務員の負担を考えたり、復帰したときにきちんと仕事ができるのか、自分の席がなくなってしまうのではないかなどと考えると休業しないほうがよいのではないかと思っていることや、被告Aとの約束があって休業できないなどを述べた。被告Bが、原告の休業は原告のみで判断できる問題ではなくなってきている旨を述べたところ、原告は、平成28年に被告Bに被告Aのパワーハラ スメントの話をしたのに、なぜ何もしてくれなかった を述べた。被告Bが、原告の休業は原告のみで判断できる問題ではなくなってきている旨を述べたところ、原告は、平成28年に被告Bに被告Aのパワーハラ スメントの話をしたのに、なぜ何もしてくれなかったのかなどと述べた。もっとも、同面談において、原告が、被告Aからハラスメントを受けており、それが原告の体調不良の原因であると明確に述べることはなかった。(乙1の281頁から288頁まで、丙4、被告B本人)ウ原告は、「3ヶ月間の自宅療養を要する」旨記載されたD医師作成の同年9月 26日付けの診断書を提出し、被告B及びE弁護士と相談の上、同年10月1日から休業することになった(甲6の4、丙4)。 エ被告Aは、同年9月27日、原告から休業に関する書類を示されたことにより同年10月以降休業することを知った。被告Aは、それまで原告の休業を知らされていなかったことに憤慨し、E弁護士と原告に対して、なぜ自分に何も相談しないのか、 誰が給与を払っていると思っているのだ、などと怒鳴った。そのため原告はパニック状態になって本件事務所内で倒れた。(丙5、証人E、原告本人、被告A)オ原告は、同月1日から、うつ病エピソードの療養のため、休業を開始した。 カ被告Aは、同月16日、原告の携帯電話に複数回、原告の実家に1回電話をかけた(甲17、原告本人)。 その後、被告Aは、同年11月6日、原告の自宅宛てに「体調は如何ですか。快復を心から祈っています。早く出てきて下さい。心から待っています。」などと記載した自筆の手紙とともに食品を送付し、同月7日、これらが原告の自宅に届いた(乙1の266頁)。 さらに、被告Aは、同月23日、原告の自宅宛てに食品を送付し、同月24日、こ れが原告の自宅に届いた(乙1の267頁)。 キ原告 れらが原告の自宅に届いた(乙1の266頁)。 さらに、被告Aは、同月23日、原告の自宅宛てに食品を送付し、同月24日、こ れが原告の自宅に届いた(乙1の267頁)。 キ原告は、同月29日、被告Bに対し、「10月のお休みをするようになってから、大先生から複数回の電話や、実家にまで電話があったり、自宅近くの駅で病院の帰りを待たれていたり、贈り物や手紙が複数回届いたり等しています。大先生のご好意かと思いますし、決して悪意ではないのは分かるのですが、病状は全く改善されず、今では病院への外出すらも怖くて出来なくなってしまっています。主治医から『治療 の妨げになるのでやめてほしい旨を伝えなさい』と言われています。」とのメールを送信し、被告Bに対処を求めた(乙1の255頁)。 これを受けて、被告Bは、原告に対し、上記メールを被告Aに示すことについて了承を得た上、被告Aに休業中の原告に対して直接接触することはやめるよう注意した(乙1の256頁、被告B)。 ク被告Aは、原告に対し、令和2年1月1日に年賀状を送り、同年3月26日には品物(しらす)を送付し、同月27日、これが原告の自宅に届いた(乙1の269頁、271頁)。 ケ原告は、同年5月28日付けで、労災保険給付の申請をし(以下、同日付けの労災保険給付申請の申立書を「本件申立書」という。)、D医師は、同年6月11日付 けで、原告のうつ病発症時を平成30年12月頃とする意見書を作成し、労働基準監督署に提出した(乙1の68頁、232頁)。 労働基準監督署は、令和3年3月、原告が、入社後、複数回にわたって上司からげんこつで殴られるという身体的攻撃を受けていたことを認定し、これが「上司から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(心理的負荷Ⅲ)に該 3月、原告が、入社後、複数回にわたって上司からげんこつで殴られるという身体的攻撃を受けていたことを認定し、これが「上司から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」(心理的負荷Ⅲ)に該当し、 その結果、原告は平成31年3月上旬頃にうつ病エピソードを発症したとして、労災認定をした(乙1の3頁、4頁)。 (10)中退共制度に基づく退職金等の請求及び受領被告らは、令和2年7月31日付けで、原告に対し、退職の手続を進める旨連絡するとともに、原告において中退共本部への必要書類の提出等をするよう求める旨記載 した送付書を送付した(乙1の280頁)。 原告は、令和3年12月15日、代理人弁護士を通じて、被告らに対し、「貴社へ復帰して就労する意思を失った訳ではありません」と留保を付した上で、中退共本部への書類提出を進める予定である旨記載した通知書を送付した(甲9の1)。 原告は、令和5年10月25日頃、中退共本部に対して、退職日を「令和2年7月31日」と記載した請求書をもって、中退共制度に基づく退職金等の支払を請求し、 令和5年12月7日、退職金等として100万1369円の支払を受けた(乙36、37)。 2 事実認定の補足説明(1)前記1(1)、(2)、(5)、(7)(うつ病エピソード発症前の被告Aの言動及び原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受に関する事実関係)について ア原告の供述の信用性について(ア)原告は、被告Aの暴行について、前記1(1)、(5)ウのとおり、被告Aのセクシャルハラスメントについて、前記1(2)、(5)ア、イのとおり、原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受について、前記1(7)のとおり供述する。 まず、被告Aの暴行については、原告の供述によれば、日常的に繰り返 ントについて、前記1(2)、(5)ア、イのとおり、原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受について、前記1(7)のとおり供述する。 まず、被告Aの暴行については、原告の供述によれば、日常的に繰り返されていた というのである以上、暴行に関する個々のエピソードについて、供述がある程度抽象的であることはやむを得ないところ、原告は、本人尋問において、前記1(1)の事実を基礎づける具体的なエピソードを、被告Aの暴行のきっかけとなった業務上のミスの内容とともに供述している。 他方で、原告は、それまで診察を受けた医師(平成29年3月のGメンタルクリニ ックの医師、平成31年3月7日以降のCクリニックのD医師)に、殴打について具体的に述べていないこと(乙1の71頁から77頁まで、81頁、82頁)、被告BやE弁護士との面談の際にも、被告Aからそのような多数にわたる頻度で頭部を殴打されたとは訴えていないこと(甲11)、本件申立書には被告Aから受けたパワーハラスメントの具体的な内容として暴行を受けたことを記載していないこと(乙1の23 2頁から247頁まで)が認められる。しかし、医師らに対しては、「80歳の弁護士 からの機嫌の良し悪しでのパワハラあり」「父親の弁護士が、気分屋。」などと述べ、本件申立書においては、暴行以外のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの様々な事情を指摘していることが認められる(乙1の71頁、82頁、232頁から247頁まで)。もともと原告は、被告Aの理不尽な扱いをパワーハラスメントと述べていたところ、労災認定が、被告Aによる暴行を原告のうつ病エピソードの発 症の原因と認定したものであり、労災認定を受ける前の原告が、日常的に繰り返されていた暴行(日常的であったことを示すため、原告は、平均して月 災認定が、被告Aによる暴行を原告のうつ病エピソードの発 症の原因と認定したものであり、労災認定を受ける前の原告が、日常的に繰り返されていた暴行(日常的であったことを示すため、原告は、平均して月に3回から4回と主張していると解される。)をひとくくりにしてパワーハラスメントと述べたり、本件申立書にパワーハラスメントと記載するにとどめることが不自然不合理であるとまではいえない。 また、被告Aのセクシャルハラスメントについて、原告は、本人尋問において、その時期や被告Aの発言内容についても具体的に供述している。 そして、原告が被告Aから前記1(1)、(5)ウの暴行や前記1(2)、(5)ア、イのセクシャルハラスメントを受けていたことを踏まえれば、被告Aが原告の訴えに応じて500万円もの支払をしたことも自然な経緯であるといえる。 原告の上記供述は、内容に不自然不合理な点もなく、具体性に欠けるところもないから信用できる。 なお、認定事実(前記1(8)、(9)イ)によれば、原告は、被告Bらとの面談の際、被告Aの仕事をサポートしたいなど述べていたことが認められるが、原告が休業することにより収入が減ることを気にしていたという事情を踏まえれば、原告は、収 入を確保するために、現在の業務を続けたいという意向を示したとも考えられるから、原告の上記の発言があるからといって被告Aによるハラスメントがなかったということもできない。 (イ)被告らは、原告が主張するような暴力が平均して月に3回から4回も行われていたのであれば、本件事務所の他の職員が気付かないはずがないが、本件が問題とな るまで、そのようなことを本件事務所の他の職員が問題としたことは一度もなかった として、被告Aの原告に対する暴行が存在しなかったことを主張する。 付かないはずがないが、本件が問題とな るまで、そのようなことを本件事務所の他の職員が問題としたことは一度もなかった として、被告Aの原告に対する暴行が存在しなかったことを主張する。 しかし、被告Aの暴行態様は、殴打時に打撃音が発生するようなものとまでは認められないし、原告の供述によれば暴行を受けた場所はパーティションによって仕切られている被告Aの自席であったというのである以上、本件事務所の他の職員がそのような事態に気付かないことがあり得ないものとはいえない。そもそも、被告Aの暴行 について、E弁護士や被告Bは知らなかった旨それぞれ証言し、供述するが、その他の職員が誰も気付かなかったとまで認めるに足りる証拠もない。被告らの上記主張は採用できない。 また、被告Aは、原告と被告Aは、原告の子供も含めて一緒に食事に行くなどの交流をしたり、書籍を紹介しあったり、原告が自ら音頭をとって、平成30年9月には、 被告Aの傘寿の祝いをしたり、交際関係にあったF氏との関係を話すなど、互いに信頼関係を基にした関係であり、原告が主張するような被告Aによる暴言や暴力などのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントは存在しないと主張する。 しかし、原告と被告Aは、使用者と労働者、弁護士と事務員という関係であり、原告が被告Aとの関係の悪化を避けるために、友好的な関係を築こうとすること自体、 不自然ではないから、被告Aの指摘することは、被告Aによるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを否定する根拠とすることはできない。 イ被告Aの供述の信用性について他方、被告Aは、うつ病エピソード発症前の被告Aの言動及び原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受に関する事実関係について、陳述書(乙53の1)及び本人 尋問において、 供述の信用性について他方、被告Aは、うつ病エピソード発症前の被告Aの言動及び原告と被告Aとの間の500万円の金銭授受に関する事実関係について、陳述書(乙53の1)及び本人 尋問において、①原告の頭を軽くこつんと叩いたことはある、②成人してから初めて人の頭を叩いた相手は原告である、③具体的にどのような場面で原告の頭を叩いたのか、はっきり記憶はないが、回数は1回か2回であり、うち1回は、原告が「下記のように」と記載された被告A作成の原稿をパソコンに入力し直す際に「悪鬼のように」と誤変換したことに怒ったときであったかもしれない、④原告がセクハラと主張する 行為はしていない、⑤原告に500万円を支払ったのは、「Eの仕事ばかりして」など と原告に申し向けたことや、原告の上記の誤変換に怒ったことなどを理由に「こんな身体になってしまった」と訴えてきたと理解し、トラブルを終わりにしたいという思いから支払ったものであるなどと供述する。 しかし、人の頭を叩くという行為は、仮に痛みを伴わない程度であったとしても、相手に屈辱感を与える行為であり、日常的にこのような行為に及んでいたというので なければ、このような行為に及ぶに当たっては躊躇を覚えるのが通常であり、それでもなおこのような行為に及んだというのであれば相応の事情があったはずである。 被告Aの上記②及び③の供述を前提とすれば、被告Aが、成人してから初めて人の頭を叩いた相手は原告で、原告を叩いた回数も1回か2回であるというのであるから、被告Aが原告を叩くに当たっては相応の事情があったはずであり、いかなる場面でそ のような行為に及んだのかというのは印象に残ってしかるべきである。しかし、被告Aは上記③のとおり、被告Aが原告を叩いた際の記憶は明確ではなく、その供述内容は不自然 ずであり、いかなる場面でそ のような行為に及んだのかというのは印象に残ってしかるべきである。しかし、被告Aは上記③のとおり、被告Aが原告を叩いた際の記憶は明確ではなく、その供述内容は不自然である。 また、被告Aが原告に500万円を支払った理由についても、被告Aの上記⑤の供述によれば、被告Aは従業員である原告との間の業務上のミスや不満を巡る単発的な いさかいを解決するためであったということになるが、このような理由のみで原告に支払っている年間の賃金額426万2500円を超えるほどの多額の金員の支払を決めたという点も極めて不自然である。 被告Aの上記供述は全体として不自然不合理であり、採用できない。 (2)前記1(3)、(6)(被告Bとの面談内容)について ア原告の供述の信用性について(ア)原告は、平成28年3月31日、被告Bと面談し、被告Aから殴られていることを伝えたと供述する。 この点、原告は、令和元年9月6日に被告Bと面談した際、平成28年3月31日の面談時のやりとりに関して、被告Bに対し、被告Aから受けた行為について、「話し かけても無視されて、書類も投げ渡されて、やってもいないのに私の責任になって、 記録袋に違うのが入っていると私のせいにされて、どうしてもそういうことが辛い」と説明した旨述べ、被告Aから暴行を受けていたことについても説明したとまでは述べていないことが認められる(甲11、乙1の281頁から288頁まで)。 また、前記(1)アのとおり、原告は、労災保険給付の申請に当たって、本件申立書を提出しているが、本件申立書に、パワーハラスメントの具体的な内容として被告 Aから暴行を受けていたことを記載していなかった。 こうした事情を踏まえると、原告は、被告Aの暴行について、日常的に 書を提出しているが、本件申立書に、パワーハラスメントの具体的な内容として被告 Aから暴行を受けていたことを記載していなかった。 こうした事情を踏まえると、原告は、被告Aの暴行について、日常的に行われていたことや、原告が自身にも非があると考えていたなどの理由で、平成28年3月31日の被告Bとの面談時において、殊更取り上げることをしなかった可能性が否定できない。 (イ)原告は、平成31年3月26日の午後5時半を過ぎた頃に被告Bと面談し、診断書を見せて、医師から、3か月休んだ方がよいが、どうしても休むことができないならば、せめて被告Aから離れるよう言われた旨伝えたと供述する。 しかし、原告は、上記面談時のやりとりについて、本人尋問において、それ以上具体的に述べておらず、上記のように伝えたことに対し、被告Bからどのような返答が あったのか明らかでない。 また、原告の同年4月4日の診断時のカルテには、原告が担当医に対して「頭痛で何日か休んだら、職場の先生にも相談して。」「診断書も出した。」などと述べたことが記載されていると認められる(乙1の71頁)が、「頭痛で何日か休んだら、職場の先生にも相談して。」との記載は、原告が同日までに職場の弁護士と相談したことを意 味するのか、今後、職場の弁護士に相談することを意味するのか判然とせず、「診断書も出した。」というのも誰にどのような方法で提出したのか判然とせず、このようなカルテの記載をもって原告の上記供述を裏付けるともいえない。 原告が同月11日に交通事故で負傷した後、被告Aが事故の遠因が自分にあると思えると記載した書面を送付していることが認められるが(乙1の250頁)、被告A がこのような記載をしたことが、原告が同年3月26日に被告Bに被告Aのハラスメ ントを が自分にあると思えると記載した書面を送付していることが認められるが(乙1の250頁)、被告A がこのような記載をしたことが、原告が同年3月26日に被告Bに被告Aのハラスメ ントを伝え、被告Bが被告Aにそのことを伝えたからであると直ちに認めることもできない。 (ウ)よって、原告の前記各供述は採用できない。 イ被告Bの供述の信用性について他方で、被告Bは、平成28年3月31日の面談時のやりとりについて、前記1(3) のとおり、平成31年3月の面談に関する経緯について、前記1(6)ウのとおり供述する。 まず、被告Bが供述する前記1(3)の内容は、前記ア(ア)で認定した、令和元年9月6日の面談時、原告が被告Bに対し、平成28年3月31日のやりとりとして説明した内容と整合する。 また、前記1(6)ウを内容とする供述に関し、被告Bは、本人尋問において、平成31年3月26日に原告と面談できなかった経緯について、午後5時過ぎ以降も日弁連の事務局の職員から決裁を求められたり、相談を受けたりするなど当日の日弁連の事務局の繁忙状況と併せて具体的に供述している。また、被告Bが、日弁連の事務局の職員宛てに午後5時39分と午後6時4分にメールを送信している事実が認め られるところ(丙3)、被告Bの上記供述はこの事実とも整合する。 さらに、被告Bは、同年4月19日以降に本件診断書を見たと考える理由について、本人尋問において、原告に交通事故で受傷して休暇を取ってもらうに当たり、メンタルの不調ということを考慮した記憶がない旨供述しているところ、この供述も争いのない事実として認定できる事実(前記1(6)エ)と整合し、不自然な点はない。 よって、被告Bの上記各供述は不自然不合理な点がなく信用できる。 3 争点1-被告A いるところ、この供述も争いのない事実として認定できる事実(前記1(6)エ)と整合し、不自然な点はない。 よって、被告Bの上記各供述は不自然不合理な点がなく信用できる。 3 争点1-被告Aによるハラスメントの有無及び不法行為の成否(1)暴行によるハラスメントの有無及び不法行為の成否認定事実(前記1(1)、(5)ウ)のとおり、被告Aは、原告に対し、原告の業務上のミスを受けて、原告を事務所内の自席に呼び出し、頭を出せと述べて、げんこつ で、痛みを感じさせる程度の強さで、その頭頂部を殴打するということを継続的に行 っていた。 被告Aの上記行為は、原告の使用者である被告Aによる、繰り返し行われる一連一体の暴行と評価でき、業務上の指導として社会通念上許される限度を明らかに逸脱する態様で行われたものであって、原告に強い屈辱感を与えるものといえるから、原告の人格権を侵害するものとして不法行為に該当する。 (2)セクシャルハラスメントの有無及び不法行為の成否認定事実(前記1(2)、(5)ア、イ)によれば、被告Aは、原告に対し、継続的に、異性として好意を持っていることを示すとともに、「40歳前後の女性は一番性欲が強くなる。そういう時はどうするんだ」などと女性が不快感を覚える性的言辞を述べるなどしていたものと認められる。 被告Aの上記行為は、原告と被告Aが弁護士事務所の事務員(被用者)と弁護士(使用者)という関係性に乗じてなされ、原告に無用な精神的苦痛を生じさせたものといえるから、原告の人格権を侵害するものとして不法行為に該当する。 (3)暴言等によるハラスメントの有無及び不法行為の成否原告は、被告Aが、原告に対し、平成30年12月、年賀状の作成業務について、 原告宛ての年賀状がないことを叱責したこ 行為に該当する。 (3)暴言等によるハラスメントの有無及び不法行為の成否原告は、被告Aが、原告に対し、平成30年12月、年賀状の作成業務について、 原告宛ての年賀状がないことを叱責したことや、このほか、被告Aが、機嫌が悪いときは、原告が挨拶や声がけをしても無視し、原告を内線で呼び出して原稿を投げ捨てるように渡すことなどしたこと、原告がパソコンに入力した原稿にミスがあると、原告に対して理不尽に当たり散らし、怒りをぶつけたことなどが、原告の人格権を侵害するものとして不法行為に該当すると主張する。 この点、上記の年賀状の作成業務に関し、認定事実(前記1(5)エ)のとおり、被告Aが原告に対して「俺からの年賀状は要らないのか。お前の顔なんか見たくないから、あっち行け。」と述べたことが認められる。このような被告Aの言動は、原告と被告Aが弁護士事務所の事務員(被用者)と弁護士(使用者)であり、かつ、原告が被告Aの業務の補助を担当していたという業務上密接な関係性を有するにもかかわ らず、業務上の注意を超えて、「お前の顔なんか見たくないから」とその関係に亀裂を 生じさせる趣旨を含む発言にまで及んだものであり、原告が被告Aの下で業務に従事するに当たって著しい支障を生じさせ、原告の職場環境を害するものであるといえるから、原告の人格権を侵害するものであると認められる。他方、その他暴言等によるハラスメントとして原告が主張する行為は、暴行の経緯として認められる認定事実(前記1(5)ウ)以外には、これを認めるに足りる的確な証拠はない。 (4)うつ病エピソードの診断後の被告Aの行為に係る不法行為の成否ア原告は、令和元年9月27日に被告Aが原告を怒鳴った行為や、被告Aが、原告の休業後に、原告に度々電話をかけ、手紙や品物を送付 (4)うつ病エピソードの診断後の被告Aの行為に係る不法行為の成否ア原告は、令和元年9月27日に被告Aが原告を怒鳴った行為や、被告Aが、原告の休業後に、原告に度々電話をかけ、手紙や品物を送付する等してつきまとった行為が、既に精神疾患を発症している原告に対して無配慮なもので、使用者として負う安全配慮義務に違反するものであり、原告の人格権を侵害するものであるから不法行 為に該当すると主張する。 イまず、認定事実(前記1(9)エ)のとおり、被告Aが原告に対しても怒鳴ったことが認められる(被告Aは、同日、原告に怒鳴ったことを否認し、E弁護士が作成した陳述書(丙4)には、被告Aの矛先は、原告ではなくE弁護士であったとの記載があるが、被告Aは本人尋問において、同日、怒った対象がE弁護士であることは 間違いないが、原告に対しても怒った趣旨があったことは認めているから、被告Aは、原告に対しても怒鳴ったと認めるのが相当である。)。これは、体調不良を理由に休業を予定していた原告に対する対応としては理不尽なものであるが、休業の予定を知らされていなかったことに対する不満をぶつけたにすぎず、この行為自体により、原告と被告Aの業務上の関係性を損なわせるとまでいえるものではないから、それが直ち に原告の何らかの権利又は利益を侵害する行為であると認めることはできない。 ウつきまとい行為については、認定事実(前記1(9)カからクまで)のとおり、被告Aが、原告がうつ病エピソードの療養のために休業を開始した後、原告に複数回電話をかけ、手紙や食品を送付するなどしたことは認められる。しかし、このような行為は、休業中の従業員に対する気遣いとも受け止められる言動であり、休業の原因 が被告Aによるハラスメントに起因するという点を考慮したとしても、社 るなどしたことは認められる。しかし、このような行為は、休業中の従業員に対する気遣いとも受け止められる言動であり、休業の原因 が被告Aによるハラスメントに起因するという点を考慮したとしても、社会通念上相 当な範囲を逸脱するような過度な接触行為とまではいえないから、原告の人格権を侵害するものとして不法行為に該当するとは認められず、原告の上記主張は採用できない(被告Aが同年11月16日に原告の自宅近くまで行ったと認めるに足りる証拠はない。)。 4 争点2-被告Bの安全配慮義務違反(不法行為、債務不履行)の有無 (1)原告は、被告Bが、原告から平成28年3月31日に被告Aのハラスメントについて相談を受けたにもかかわらず、使用者として果たすべき義務を果たさなかったと主張する。 しかし、認定事実(前記1(3))のとおり、原告は、同日に被告Bに対し、被告Aに話し掛けても返事をしてもらえないことや書類を投げ渡されることがあることを 相談し、被告Bは、被告Aに、事務所内で不機嫌な態度を表に出さないよう注意していることが認められ、被告Bが使用者として果たすべき義務を果たさなかったと認めることはできない。また、これを措いても、原告は、同日、被告Bに対し、被告Aの暴行、暴言、セクシャルハラスメントなどを前記認定を超えて、明示的に相談していたとは認められないから、被告Bの被告Aに対する注意等が不十分であったとしても、 原告のうつ病エピソードとの間に相当因果関係は認められない。 (2)ア原告は、本件診断書を受け取っていた被告Bは、平成31年3月末の時点で、原告に対して、自宅療養(休業)を命じたり、使用者として労務管理上配慮すべき事柄がないか把握すべき安全配慮義務があったにもかかわらず、それを怠ったと主張する。 し 成31年3月末の時点で、原告に対して、自宅療養(休業)を命じたり、使用者として労務管理上配慮すべき事柄がないか把握すべき安全配慮義務があったにもかかわらず、それを怠ったと主張する。 しかし、認定事実(前記1(6)ウ)のとおり、被告Bは、同月26日、原告と面談することができなかった。 原告は、仮に、上記面談が実現していなかったとしても、そこからさほど日を置かず、被告Bにより原告との面談が実施され、その面談時に、被告Bは原告から本件診断書の提出を受けていたはずであると主張するが、同月27日以降同月末までに原告 と被告Bが面談したと認めるに足りる証拠はない。 また、原告は、同月末までに面談が実現していなかったとしても、本件診断書の提出を受けて原告の健康状態を認識した以上、早期に面談を実施するなどして原告の健康状態を正確に把握すべきであったとも主張するが、認定事実(前記1(6)イ)のとおり、被告Bが本件診断書を受領したのも同年4月19日以降であるから、原告の上記主張は理由がない。 したがって、被告Bが、同年3月末までに、原告にとって被告Aがストレス要因であることや医師の指示を認識していたとはいえないから、被告Bが、原告が主張する上記の安全配慮義務に違反したとは認められない。 イまた、原告は、被告Bが同年6月19日以降も原告を漫然と被告Aの下で働かせたと主張するが、認定事実(前記1(8)、(9)イ)によれば、原告が同月6日及 び同年9月6日に被告Bと面談した際、原告の症状が被告Aのハラスメントによるものであると説明したと認めることはできないから、被告Bに原告主張の安全配慮義務違反を認めることはできない(原告は、本人尋問において同年6月11日にE弁護士に対し、医師からAと離れるよう言われていることを告 ると説明したと認めることはできないから、被告Bに原告主張の安全配慮義務違反を認めることはできない(原告は、本人尋問において同年6月11日にE弁護士に対し、医師からAと離れるよう言われていることを告げた旨供述するが、同月6日に、原告の使用者にも当たる被告Bがいる場で、上記のような医師の指示を伝えてい ないにもかかわらず、それに近接した同月11日にE弁護士に対して医師の指示を伝えたというのは不自然であり、この点の原告の供述を採用することはできない。)。 5 争点4-被告らの行為と原告の精神障害の発症との間の相当因果関係の有無(1)判断枠組み証拠(甲14)によれば、厚生労働省は、現在、労働者災害補償保険法における業 務起因性の有無の判断に用いる基準として令和5年9月1日付け厚生労働省労働基準局長・基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(以下「認定基準」という。)を作成していると認められるところ、その考え方は、本件においても、ハラスメントによる不法行為と精神障害の発症との相当因果関係を検討するに当たり、参照するのが相当というべきである。 認定基準は、対象疾病(ICD-10第5章「精神及び行動の障害」に分類される 精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを除く。)を発症していること(要件①)、対象疾病の発症前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること(要件②)、業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発症したとは認められないこと(要件③)をいずれも満たす対象疾病を業務上の疾病として取り扱うこととしているので、上記各要件を充足する場合には、ハラス メントによる不法行為と精神障害の発症との相当因果関係を認めるのが相当である。 本件では、被 満たす対象疾病を業務上の疾病として取り扱うこととしているので、上記各要件を充足する場合には、ハラス メントによる不法行為と精神障害の発症との相当因果関係を認めるのが相当である。 本件では、被告Aのハラスメント(不法行為)が認められるため、被告Aのハラスメントと原告の精神障害の発症との間の相当因果関係を検討する。 (2)判断ア要件①について 前提事実(前記第2・2(4))によれば、原告は、平成31年3月7日頃までに、うつ病エピソードを発症したと認められる。 そして、証拠(甲12、14)及び弁論の全趣旨によれば、うつ病エピソードはICD-10(第5章)のF32に分類される精神障害であり、器質性のもの及び有害物質に起因するものには当たらないことが認められる。したがって、原告は対象疾病 を発症したものと認められる。 イ要件②について(ア)原告は、被告Aから、うつ病エピソードの発症前6か月の間に、前記1(5)ウの暴行を受けたほか、前記3(1)のとおり、これと一連のものと評価できる継続的な暴行(前記1(1))を受けてきたものといえる。 認定基準において、ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものについては、「繰り返される出来事を一体のものとして評価することとなるので、発病の6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前おおむね6か月の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とする」こととされ、かつ、心理的負荷の強度が「強」となる具体例として「上司等から、暴行等の身体的 攻撃を反復・継続するなどして執拗に受けた」場合が挙げられていると認められる(甲 14)ところ、これらを踏まえれば、原告は、対象疾病の発症前おおむね6か月の間に、被告Aの上記一連の暴行に 攻撃を反復・継続するなどして執拗に受けた」場合が挙げられていると認められる(甲 14)ところ、これらを踏まえれば、原告は、対象疾病の発症前おおむね6か月の間に、被告Aの上記一連の暴行による不法行為によって強い心理的負荷を受けたものと認められる。 (イ)また、前記3(2)のとおり、原告は、被告Aから、対象疾病の発症前6か月の間に、前記1(5)ア、イのセクシャルハラスメントを受けたほか、これと一連の ものと評価できる継続的なセクシャルハラスメントを受けてきたものといえる。 認定基準において、ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものについては、「繰り返される出来事を一体のものとして評価することとなるので、発病の6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前おおむね6か月の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とする」こととされ、 かつ、心理的負荷の強度が「強」となる具体例として「身体接触のない性的な発言のみのセクシュアルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた」場合が挙げられていると認められるところ(甲14)、これらを踏まえれば、原告は、対象疾病の発症前おおむね6か月の間に、被告Aの上記一連のセクシャルハラスメントによる不法行為によって強い心理的負荷を受けたも のと認められる。 (ウ)以上に加え、原告が前記1(5)エのような暴言も受けたことも踏まえると原告には、対象疾病の発症前おおむね6か月の間に、業務(被告Aによる暴力、暴言及びセクシャルハラスメント)による強い心理的負荷が認められる。 ウ要件③について (ア)被告らは、原告が、F氏と結婚を前提として交際していたところ、F氏の母親から、原告に離婚歴があり子どもが クシャルハラスメント)による強い心理的負荷が認められる。 ウ要件③について (ア)被告らは、原告が、F氏と結婚を前提として交際していたところ、F氏の母親から、原告に離婚歴があり子どもが二人いることを理由に強く反対されて結婚ができないことを悩んでいたと主張する。しかし、認定基準において、「異性関係のもつれがあった」場合の心理的負荷の強度は「Ⅱ」(中程度)とされていることが認められ(甲14)、被告らが主張する上記の事情も「異性関係のもつれがあった」場合に類するも のといえるから、このような事情による心理的負荷の強度は「中」にすぎない。なお、 被告らは、原告とF氏は、平成30年12月から平成31年1月頃に別れているとも主張するが、証人Eは、当時、本件事務所に所属していた他の弁護士から、原告と他の事務員が原告とF氏が別れたというエピソードを話していたこと、原告がF氏と別れて本件事務所で号泣していたことを報告された旨証言するものであり、直ちに被告ら主張の事実を認めることはできない。 (イ)被告らは、原告が適応障害、更年期障害などの精神疾患系の病気や、精神疾患以外の種々の病気を発症して診療を受けていたことや、原告の気質、家族に関する事情等も精神疾患の素因と考え得るとも主張する。 この点、原告は、悪性卵巣腫瘍の疑いにより平成28年1月及び同年4月に各種検査を受けたこと、平成30年2月に大学付属病院で子宮体がんの疑い、卵巣がんの疑 いで各種検査を受け、子宮体がんの疑いで同年8月まで同病院に通院したことのほか、平成31年1月に胃がん疑いで通院して投薬を受けたこと、同年2月に上記大学付属病院で子宮頸がんの疑い、子宮体がんの疑いで各種検査を受けたことが認められるが、その後、原告がこれらのがんの疑いで通院したとの記録が 1月に胃がん疑いで通院して投薬を受けたこと、同年2月に上記大学付属病院で子宮頸がんの疑い、子宮体がんの疑いで各種検査を受けたことが認められるが、その後、原告がこれらのがんの疑いで通院したとの記録がないため、上記の各種がんの疑いの診断は、検査の結果等、その疑いは解消していると認められる(乙1の89 頁から161頁まで)。そして、認定基準において、心理的負荷の強度が「Ⅲ」(強)とされる具体例は、「自分が病気やケガをした」場合や「配偶者や子供が重い病気やケガをした」場合などであるとされていることが認められるところ(甲14)、原告にはこのような具体例に類する事情が存在するとは認められない。 また、原告の次男は、平成29年頃、軽い発達障害でADHDのグレーゾーンと診 断されていたことは認められるが、普通学級に通っていることも認められるため(乙1の48頁、82頁、原告本人)、この点の原告の心理的負荷が大きいものと認めることもできない。 さらに、原告が平成23年頃からストレスによる難聴の徴候があったり、平成29年に不安神経症と診断されたことは認められるが(乙1の6頁、81頁)、原告は、平 成23年頃から、被告Aが、機嫌が悪いときには原告に機嫌の悪さを示す態度をとる と感じるようになり、理不尽であると思うようになったり、げんこつで頭を殴打されたりしていたのであるから(前記1(1))、原告のこれらの症状が、原告の気質によるものであると直ちに認めることもできない。 (ウ)被告らは、卵巣の腫瘍の治療及び更年期障害の発症の影響により原告がうつ病になりやすい状況にあったと主張する。 この点、エストロゲンの減少が自律神経の乱れにつながり、その精神状態に影響を及ぼし得ることは認められるものの(乙20)、原告が卵巣腫瘍の治療に 告がうつ病になりやすい状況にあったと主張する。 この点、エストロゲンの減少が自律神経の乱れにつながり、その精神状態に影響を及ぼし得ることは認められるものの(乙20)、原告が卵巣腫瘍の治療に際し、うつ病の発症につながる程度にエストロゲンを減少させるような投薬がなされたことを認めるに足りる証拠はない。 また、原告が平成30年10月及び同年11月に更年期症候群と診断されたことは 認められるが(乙1の123頁、124頁)、仮に、更年期症候群の症状がうつ病を引き起こし得るという抽象的可能性があるとしても、原告の更年期症候群とうつ病エピソードの発症との具体的な関連性を認めるに足りる証拠はない。 (エ)被告らは、原告は、病歴に係る治療に際して、多くの投薬を受けており、原告が主張するうつ病の症状はその投薬の副作用として生ずるものであると主張する。 この点、セチリジン塩酸塩やジエノゲスト錠1ミリグラム、ランソプラゾールOD錠15ミリグラムが副作用としてうつ状態を惹起し得るものであり、原告がこれらの処方投薬を受けていたことが認められるが(乙1の162頁から217頁、乙25、26、32)、その処方投薬の状況が、現にうつ病の症状を惹起し得る程度のものであったことを認めるに足りる証拠はない。 (オ)したがって、原告が、被告Aによる不法行為以外の心理的負荷や同人の個体側要因によってうつ病エピソードを発症したと認めることはできず、被告らの上記各主張はいずれも採用できない。 エ小括前記アからウまでで検討したところによれば、原告は、被告Aによる不法行為によ って強い心理的負荷を受け、平成31年3月上旬頃に対象疾病であるうつ病エピソー ドを発症したものと認められ、その発症が不法行為以外の心理的負荷や同人の個体側要 Aによる不法行為によ って強い心理的負荷を受け、平成31年3月上旬頃に対象疾病であるうつ病エピソー ドを発症したものと認められ、その発症が不法行為以外の心理的負荷や同人の個体側要因によるものとは認められないから、被告Aの不法行為と原告のうつ病エピソードの発症との間の相当因果関係は認められる。 6 争点5-損害の発生及びその額(1)精神障害の発症及び増悪に起因する損害 ア前記5で説示したとおり、被告Aのハラスメントと原告の精神障害との間の相当因果関係が認められる。そして、この精神障害にり患しなければ、原告は、本件事務所において就労を継続していた。したがって、その場合に得られたであろう以下の給与等相当分合計1104万2708円が休業損害として認められる。 (ア)給与相当分の休業損害について 弁論の全趣旨によれば、原告の労働者災害補償保険法上の給付基礎日額は9424円であると認められる。 また、証拠(乙47)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告らから、令和2年6月25日に同月1日から同月30日までの労務の提供の対価としての給与27万5000円(基本給25万5000円、住宅手当1万5000円及び子供手当500 0円の合計)の支払を受けた後、給与の支払を受けていない(ただし、原告が給付基礎日額の6割を休業補償給付として受給している。)ことが認められる。 そうすると、原告が被告Aの不法行為によってうつ病エピソードを発症したことと相当因果関係のある給与相当分の休業損害は、給付基礎日額9424円の4割に1605日(令和2年7月1日から口頭弁論終結日である令和6年11月21日までの日 数)を乗じた額である605万0208円であると認められる。 (イ)賞与相当分の休業損害について前提事実(前記第2 日(令和2年7月1日から口頭弁論終結日である令和6年11月21日までの日 数)を乗じた額である605万0208円であると認められる。 (イ)賞与相当分の休業損害について前提事実(前記第2・2(2)ケ)及び証拠(乙47)によれば、原告が本件事務所において就労できていれば、原告には1年当たり基本給25万5000円の3.5か月分(6月に1.5か月分、12月に2か月分)の賞与が確実に支給されたであろ うと認められる。 しかし、証拠(乙38)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告らから、令和元年12月15日に賞与として51万円の支払を受けた後、賞与の支払を受けていない。 そうすると、原告が被告Aの不法行為によってうつ病エピソードを発症したことと相当因果関係のある賞与相当分の休業損害は、令和2年6月分から令和6年6月分までの賞与相当分395万2500円であると認められる。 原告は、令和元年12月分の賞与も受給していないと主張するが、証拠(乙38)によればこれを受給したものと認められ、原告の当該主張は採用できない。 また、原告は、1年当たり27万5000円(基本給25万5000円に住宅手当と子供手当の合計2万円を加えた金額)の3.5か月分(6月に1.5か月分、12月に2か月分)の賞与を確実に得られたはずであると主張するが、証拠(乙38、4 7)によれば、原告と被告間の労働契約においては、賞与の算定の基礎となるべき賃金は住宅手当と子供手当を含まない基本給部分のみとされていたと認めるのが相当であり、原告の当該主張は採用できない。 (ウ)住居手当及び子供手当相当分の休業損害について前提事実(前記第2・2(2)カ、キ)によれば、原告が本件事務所において就労 できていれば、原告には1月当たり住居手当1万500 きない。 (ウ)住居手当及び子供手当相当分の休業損害について前提事実(前記第2・2(2)カ、キ)によれば、原告が本件事務所において就労 できていれば、原告には1月当たり住居手当1万5000円及び子供手当5000円が確実に支給されたであろうと認められる。 しかし、前記(ア)で認定したとおり、原告は、被告らから、令和2年6月25日に同月1日から同月30日までの労務の提供の対価としての給与(住宅手当及び子供手当を含む。)の支払を受けた後、給与の支払を受けていない。 そうすると、原告が被告Aの不法行為によってうつ病エピソードを発症したことと相当因果関係のある住宅手当及び子供手当相当分の休業損害は、1月当たりの住宅手当及び子供手当合計2万円に同年7月から令和6年10月までの52か月を乗じた金額合計104万円と認められる。 原告は、住宅手当及び子供手当相当分の休業損害が1月当たりの住宅手当及び子供 手当合計2万円に令和元年10月から令和6年11月までの62か月を乗じた金額 である124万円であると主張する。しかし、証拠(乙39から乙47まで)によれば、原告は令和元年10月から令和2年6月までの間の月額1万5000円の住宅手当及び月額5000円の子供手当の支給を受けていると認められる。また、口頭弁論終結日である令和6年11月21日時点で同年11月分の住宅手当及び子供手当の支払期は到来していない。したがって、上記認定の限度を超えて住宅手当及び子供手 当相当分の休業損害が生じたとは認められず、原告の上記主張は採用できない。 イ通院慰謝料前提事実(前記第2・2(4))、証拠(甲6、13、21、22、乙1の131頁から159頁まで)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成31年3月7日にうつ病と診断され、以降口頭 イ通院慰謝料前提事実(前記第2・2(4))、証拠(甲6、13、21、22、乙1の131頁から159頁まで)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成31年3月7日にうつ病と診断され、以降口頭弁論終結日現在に至るまで2087日にわたり通院を継続し ているものと認められる。上記の通院日数に照らすと、原告が被告Aの不法行為によってうつ病エピソードを発症したことと相当因果関係のある通院慰謝料は270万円と認めるのが相当である。 ウまとめ以上のとおり、原告が被告Aの不法行為によってうつ病エピソードを発症したこと と相当因果関係のある損害として、休業損害1104万2708円(前記ア)及び通院慰謝料270万円(前記イ)の合計1374万2708円の損害が生じたと認められる。 (2)違法無効な解雇に伴う慰謝料について原告は、既に精神疾患を発症している状況であったのに、違法な本件解雇によって、 原告はさらに将来に対する強い不安にさいなまれることになり、著しい精神的苦痛を被り、この精神的苦痛を金銭で慰謝するには100万円を下らないと主張する。 しかし、解雇による精神的苦痛は、雇用契約上の地位が確認され、解雇後の未払賃金やこれに代わる休業損害の支払がされることによって慰謝されるのが通常である。 原告には雇用契約上の地位が認められ(後記8(1))、休業損害の請求が認められる (前記(1))のであり、本件に現れた全事情を勘案しても、これらによって慰謝され ない損害が生じたとまでは認められないから、原告の上記主張は採用できない。 (3)弁護士費用本件の事案の難易、認容額その他諸般の事情を勘案し、賠償の対象となる弁護士費用は、前記(1)の損害合計額1374万2708円から後記8で認める一部弁済額500万円を控除した 。 (3)弁護士費用本件の事案の難易、認容額その他諸般の事情を勘案し、賠償の対象となる弁護士費用は、前記(1)の損害合計額1374万2708円から後記8で認める一部弁済額500万円を控除した874万2708円の約1割である87万4270円と認め る。 (4)合計以上のとおり、原告には、被告Aの不法行為により、休業損害1104万2708円、通院慰謝料270万円及び弁護士費用87万4270円の合計1461万6978円の損害が生じたと認められる。 7 争点6-原告の任意退職の意思表示の有無被告らは、原告は、退職日として令和2年7月31日と記載された請求書をもって中退共本部に中退共制度に基づき退職金等の支払を請求し、令和5年12月7日、退職金等を受領したのであるから、令和2年7月31日付けで原告が本件事務所を退職したことを認めていると主張する。 しかし、認定事実(前記1(10))のとおり、原告は、令和3年12月15日時点で、中退共本部からの退職金受領の手続を進めるに当たり、「貴社へ復帰して就労する意思を失った訳ではありません」という留保を付していたのであり、現に中退共本部に退職金を請求した令和5年10月25日当時においても、本件訴訟において解雇の効力を争い、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めていたのであ るから、退職金を請求し、これを受領したという事実をもって、原告が、被告に対し、令和2年7月31日付けで原告が本件事務所を退職する旨の意思表示をしたとは到底認められない。 8 争点7-和解契約成立時までに生じた損害賠償債務の弁済の有無(1)認定事実(前記1(6)イ、(7))によれば、原告は、平成31年3月上旬頃 にうつ病エピソードを発症した後、健康を奪われた代償として500万円 成立時までに生じた損害賠償債務の弁済の有無(1)認定事実(前記1(6)イ、(7))によれば、原告は、平成31年3月上旬頃 にうつ病エピソードを発症した後、健康を奪われた代償として500万円の支払を求 め、被告Aは、自身の行為によって健康が害されたという原告の訴えを踏まえ、その支払に応じたものと認められる。 したがって、原告と被告Aとの間における令和元年5月31日のやりとりは、被告Aが、原告に対し、原告の健康を害したことによって同日までに生じた損害を賠償することとして500万円を支払う旨の一種の弁済合意を締結したものと認めるのが 相当である。 そうすると、認定事実(前記(7))のとおり、被告Aが、同日に300万円、同年6月5日に200万円を支払ったのは、上記合意に基づく損害賠償債務の弁済であると認められる。 (2)ア原告は、被告Aは、前記(1)の500万円の金銭授受に際し、原告に対 して、原告と被告らとの紛争を全て終了させるような法的効果を生じさせる和解契約の申込みをしておらず、原告に500万円を贈与したにすぎないと主張するが、前記1(5)、(7)で認定した事実関係を踏まえれば、当該金員の授受が原告のうつ病エピソードの発症により生じた損害とは無関係の単なる贈与であるとは認められず、原告の上記主張は採用できない。 イ被告らは、前記(1)の500万円の金銭授受について、原告と被告Aとの間における、原告の身体の不調あるいは障害の争いについて500万円を支払うことで解決するという和解契約の弁済としてなされたものであると主張するが、認定事実(前記1(7))によれば、原告と被告Aとの間で、令和元年5月31日、500万円の支払を受けることで、被告Aから受けたハラスメントに係る紛争を終了させる趣旨 の のであると主張するが、認定事実(前記1(7))によれば、原告と被告Aとの間で、令和元年5月31日、500万円の支払を受けることで、被告Aから受けたハラスメントに係る紛争を終了させる趣旨 の合意をしたとまでは認められず、被告らの上記主張は採用できない。 9 まとめ(1)地位確認請求の成否について前記3及び5によれば、原告が発症したうつ病エピソードは、使用者である被告Aのハラスメントによる不法行為と相当因果関係があるものといえ、労働基準法19条 にいう「業務上」の「疾病」に当たる。そして、原告の令和元年10月1日からの休 業は、このうつ病の療養のためのものである以上、その休業期間中に原告を解雇した本件解雇は労働基準法19条に反するものとして無効である。そして、前記7のとおり、本件解雇後に原告が任意退職の意思表示をしたとも認められない。 したがって、原告の被告らに対して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認の請求には理由がある。 (2)損害賠償請求の成否についてア前記3、5から8までによれば、原告の被告Aに対する損害賠償請求は、不法行為に基づく損害賠償金961万6978円(損害額合計1461万6978円から前記8で認めた一部弁済額500万円を控除した金額)を求める限度で理由があり、その余の請求にはいずれも理由がない。原告は、被告Aの安全配慮義務違反も主張す るが、仮に、被告Aの安全配慮義務違反が認められるとしても、その損害は、被告Aの不法行為に基づく損害を超えない額であると認められる。 イ他方で、前記4のとおり、原告の被告Bに対する損害賠償請求は、原告の主張する安全配慮義務違反が認められないから、不法行為に基づく請求についても、債務不履行に基づく請求についても、いずれも理由がない。 で、前記4のとおり、原告の被告Bに対する損害賠償請求は、原告の主張する安全配慮義務違反が認められないから、不法行為に基づく請求についても、債務不履行に基づく請求についても、いずれも理由がない。 第4 結論以上の次第で、原告の請求は、①被告らに対する雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、並びに②被告Aに対する不法行為に基づく損害賠償金961万6978円及びこれに対する不法行為の日の後である令和2年7月31日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求める限 度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、仮執行宣言については主文第1項には相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官 眞鍋美穂子 裁判官 横地由美 裁判官 楠本康太
▼ クリックして全文を表示