昭和57(う)293 業務上失火被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和61年9月30日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を全部破棄する。      被告人A1、同B1を各罰金七万円に処する。      被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、金二〇〇 〇円を一日に換算した期

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主文 原判決を全部破棄する。 被告人A1、同B1を各罰金七万円に処する。 被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。 原審及び当審における訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人両名について弁護人中村亀雄が作成した控訴趣意書に記載されているとおりであるから、これを引用する。 一控訴趣意中、訴訟手続の法令違反の主張について所論は、要するに、原裁判所は、梁の焼け残り一本(津簡易裁判所昭和五六年押第五号の一・当庁昭和五七年押第九四号の一)が証拠能力を具備しているとして、右梁の焼け残り一本を証拠物として採用して証拠調(領置)をし、原判示の罪となるべき事実の認定の用に供しているけれども、原判示の火災、すなわち、昭和五二年一〇月一一日午後三時ころ三重県久居市甲町乙番地所在の料理旅館「C1」ことD1方木造二階建家屋一棟が焼燬したという火災の出火原因が、右火災の出火直前において原判示の食堂拡張工事現場で被告人両名が電気溶接機を用いて行つていた溶接作業によつて発生した火花にあるということ(右火花がこの梁に着火し、そのため右火災が生じたということ)を科学的に説明しうる根拠がないのに、捜査機関は、右梁が右溶接作業の対象物件(原判示のH鋼梁及びこれを支えるH鋼間柱)に近接して存在していた燃えやすい物体であると判断し、右梁に前記火花が着火したことが前記火災の出火原因であるという予断を抱き、右予断に合わせて右梁の焼け残り一本を本件被告事件で証拠物として提出しただけのことであり、したがつて、右焼け残り一本には証拠能力がないのであるから、原裁判所の前記措置には判決に影響を及ぼすことの 、右予断に合わせて右梁の焼け残り一本を本件被告事件で証拠物として提出しただけのことであり、したがつて、右焼け残り一本には証拠能力がないのであるから、原裁判所の前記措置には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある、というのである。 所論にかんがみ、原審記録と原判決とを検討してみるに、原判決が認定した「罪となるべき事実」は別紙(一)記載のとおりであり、したがつて、原判決は、原判示の火災の出火原因は被告人両名の原判示の溶接作業の際発生した火花が原判示の「木の梁」に着火したことにある旨認定判示しているところ、原裁判所が、梁の焼け残り一本(津簡易裁判所昭和五六年押第五号の一・当庁昭和五七年押第九四号の一)を証拠物として採用して証拠調(領置)をし右認定の用に供していることは、所論のとおりであるけれども、原審で取り調べられた各証拠によると、昭和五二年一〇月一一日午後三時過ぎから三重県久居市甲町乙番地所在の料理旅館「C1」ことD1方建物のうち、敷地内西側にある木造二階建建物床面積合計約一一三〇平方メートル(以下「旧館」という。)と同建物の東側にある鉄筋コンクリート地上三階地下一階の建物(以下「新館」という。)との接続部北側に位置する食堂拡張工事現場(旧館が独立して一個の建造物をなしていたか、それとも、旧館と新館とが一個の建造物をなしていたかということは証拠上明らかではないが、ことを被告人両名の利益に考えて、検察官の主張に従い、旧館が一個独立の建造物であるものとして取り扱う。)において、被告人両名が電気溶接機を用いて右拡張建築物の天井部にあるH鋼梁とこれを支えるH鋼間柱の上部とを溶接して固定する作業(以下「本件溶接作業」という。)をしたこと、本件溶接作業は旧館一階東端の客室「E1」の間の東側外壁の一部を削り取つた跡に垂直にはめ込まれて H鋼梁とこれを支えるH鋼間柱の上部とを溶接して固定する作業(以下「本件溶接作業」という。)をしたこと、本件溶接作業は旧館一階東端の客室「E1」の間の東側外壁の一部を削り取つた跡に垂直にはめ込まれている右H鋼間柱の上部とこれに水平に接着している(ただし右H鋼間柱の上端に取り付けられている四角形鉄板との間に正確には僅かではあるが(約一センチメートルの)間隙があるという状態で近接している)右H鋼梁との溶接作業であり、この作業は、別紙(二)の図面(b)のとおり、極めて近接したところに木製梁があるという箇所の溶接であつたこと、本件溶接作業終了後間もない同日午後三時二五分ころ、旧館付近から煙が立ち昇り始めたのを発見した前記「C1」従業員らは、この煙が右「E1」の間の真上に当たる旧館二階の客室「F1」の間の付近から出ており、また、右「F1」の間の洗面所の付近から炎が出ているのを目撃したこと、右火災(以下「本件火災」という。)の原因捜査のため現場に赴いた警察官が関係者から以上の事情を聴取し、翌一二日午前九時ころから同日午後二時ころまでの間、司法警察員が現場(旧館の焼跡など)の実況見分をしたところ、前記H鋼梁のそばに、これと並行して存在する木製梁(以下「本件梁」という。)が(その一部が炭化している状態で)焼け残つているのを発見し、右焼け残りの梁の一部(右炭化部分を含む。)を切り取つて領置したこと、この領置物が前記の証拠物(梁の焼け残り一本)に該当すること、本件火災につき被告人両名に対し右両名の業務上の過失を根拠として公訴が提起された(この起訴状記載の公訴事実は「作業に約二〇分間要したものであるが、」を除くほか、原判決の「罪となるべき事実」(別紙(一))と全く同じである。)こと、及び、右領置とこれに続く右領置物の処理とに何ら違法不当のかどのなかつたこと 「作業に約二〇分間要したものであるが、」を除くほか、原判決の「罪となるべき事実」(別紙(一))と全く同じである。)こと、及び、右領置とこれに続く右領置物の処理とに何ら違法不当のかどのなかつたことが明らかであり、以上認定の事実によると、本件溶接作業による火花(スパツタ)が本件梁に着火したことにより本件火災が生じたとの捜査官の判断に基づき右領置がなされたもので、この判断はもつともであると考えられ、更に、右領置物について検察官が原裁判所に証拠調の請求をし、これに基づき原裁判所が右領置物の証拠調をして罪となるべき事実の認定の用に供したことを違法視すべき点はない。それ故所論の原裁判所の措置に訴訟手続の法令違反の点はなく、論旨は理由がない。 なお、職権をもつて調査すると、原審で取り調べられた各証拠のうち、(1) 三重県久居市長及び同県安芸郡美里町長作成の各身上調査照会回答書(被告人両名の身上)並びに検察事務官作成の前科調書(被告人A1の処罰歴)は、原審訴訟手続中、起訴状記載の公訴事実(前記のとおり、原判示の罪となるべき事実とほぼ同旨)についての証拠として本件火災発生当時(昭和五二年一〇月一一日午後三時二〇分ころ)の気温、風向、風速、湿度及び実効湿度を記載した電話聴取書一通が被告人両名の関係で取り調べられたに過ぎない段階において、それぞれその被告人に対する関係で取り調べられていることが原審記録によつて明らかであり、このことは証拠調の順序として不適切であるというべきであろうが、これが判決に影響を及ぼすことの明らかな瑕疵に当たるとまではいえないし、(2) 司法警察員作成の領置調書は、刑訴法三二六条の同意がないのに、その採用決定及び証拠調が行われていることが原審記録によつて明らかであるが、右調書の存否が罪となるべき事実の認定に影響を及ぼすものでは ) 司法警察員作成の領置調書は、刑訴法三二六条の同意がないのに、その採用決定及び証拠調が行われていることが原審記録によつて明らかであるが、右調書の存否が罪となるべき事実の認定に影響を及ぼすものではないと判断されるし(ただし、今後の判断においては、右調書を判断の資料とすることは差し控える。)、(3) 被告人両名の捜査官(司法警察員及び検察官)に対する各供述調書は、いずれも、原審検察官が被告人両名に対する関係で「自白及び相互補強」という立証趣旨の下に証拠調の請求をし、右請求に対し被告人両名から「任意性のない証拠の提出は違法である。」という意見が述べられていたにもかかわらず、原裁判所は、根拠法規も示さずに、右各調書をすべて、被告人両名に対する関係で右立証趣旨の下に採用して取り調べたうえ、被告人両名に対する関係で原判示の罪となるべき事実の認定の用に供していることが、原審記録と原判決とに徴して明らかであるところ、(イ) 被告人両名の司法警察員に対する各供述調書が、その供述者である被告人に対する関係では刑訴法三二二条一項の自白調書としての証拠能力を備えていることは原審記録によつて肯認することができるものの、非供述者たる相被告人に対する関係で証拠能力を具備していることを肯認するに足りる資料が原審記録に全くないから、原裁判所が右各調書をそれぞれ相被告人(非供述者)に対する関係でも、採用して取り調べ原判示の罪となるべき事実の認定の用に供したのは違法であるといわざるを得ないけれども、後述のとおり、当裁判所は事実誤認の理由により原判決を破棄するものであるから、右の違法が原判決に影響を及ぼすことが明らかであるといえるか否かについてまでの判断を職権で行う要はないと考えられるし(ただし、今後の当裁判所の判断において右各調書を非供述者たる相被告人に対する ら、右の違法が原判決に影響を及ぼすことが明らかであるといえるか否かについてまでの判断を職権で行う要はないと考えられるし(ただし、今後の当裁判所の判断において右各調書を非供述者たる相被告人に対する関係で資料とすることは、これを差し控えることとする。)、(ロ) 被告人両名の検察官に対する各供述調書については、原審記録によると、前述の証拠調の請求がまだ行われていない段階で被告人両名に対し、被告人両名各出頭の原審公判期日において、右各調書の任意性や特信性に関する被告人質問が行われ、更に、以上の質問に基づく被告人両名の各供述が右各調書に記載されている供述と異なるものであつたため、原裁判所は右供述に任意性や特信性の存在を認めて、供述者たる被告人に対する関係では刑訴法三二二条一項により、非供述着たる相被告人に対する関係では同法三二一条一項二号後段により、右各調書を取り調べて被告人両名に対する関係で罪となるべき事実の認定の用に供したものであることが原審記録によつて認められ、原裁判所の右措置(任意性及び特信性ないし相反性の肯認など)は正当であると判断されるから、結局原裁判所のこの措置には瑕疵がないというべきである。 二控訴趣意中、事実誤認の主張について所論は、要するに、原判示の日時ころ旧館の焼燬という本件火災が発生し、また、その直前ころ被告人両名が原判示の場所で原判示のとおりの方法で本件溶接作業をしていたことがあるにしても、本件火災の出火場所は右作業現場(旧館東側)ではなく旧館西側部分であり、また、原判示のように、本件溶接作業の際発生した火花が本件梁に着火したとすれば、これが短時間で燃え広がることは到底ありえないのであるから、結局本件火災は本件溶接作業によるものではなく、例えば漏電等の原因によるものであるという合理的疑惑があるにもかかわらず、 に着火したとすれば、これが短時間で燃え広がることは到底ありえないのであるから、結局本件火災は本件溶接作業によるものではなく、例えば漏電等の原因によるものであるという合理的疑惑があるにもかかわらず、本件溶接作業による火花が右作業現場付近にあつた本件梁に着火したことにより本件火災が生じたと認定判示した原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。 所論にかんがみ検討するに、原判決が認定判示した「罪となるべき事実」は別紙(一)記載のとおりであり、これによると、原判決は、昭和五二年一〇月一一日午後三時ころ三重県久居市甲町乙番地所在の料理旅館「C1」ことD1方木造二階建家屋一棟(旧館)が火災により焼燬したこと(本件火災が発生したこと)、同日午後三時ころ右「C1」食堂拡張工事現場において、旧館一階「E1」の間の東側壁の一部とその上部の「木の梁」(本件梁)の一部とを削り取つた跡にはめ込まれたH鋼間柱とこれによつて支えられるH鋼梁とを電気溶接機を用いて溶接して固定する作業(本件溶接作業)を被告人両名が行つたこと、本件火災は本件溶接作業により発生した火花(本件梁のうち削られた部位付近に飛散した火花)が本件梁に着火したことが原因となつて発生したものであること、及び、本件火災は被告人両名が本件溶接作業終了後もばけつ一杯の水を右溶接箇所に掛けたのみで異常の有無の確認をせずにその場を離れたという点や右火花の飛散防止措置をしなかつたという点などから成る被告人両名のそれぞれの過失行為によつて生じたものであることを認定判示しているところ、原審で取り調べられた各証拠によると、昭和五二年一〇月一一日午後三時過ぎから同日午後三時一五分ころまでの間三重県久居市甲町乙番地所在の料理旅館「C1」ことD1方の食堂拡張工事現場において旧館一階東端の 審で取り調べられた各証拠によると、昭和五二年一〇月一一日午後三時過ぎから同日午後三時一五分ころまでの間三重県久居市甲町乙番地所在の料理旅館「C1」ことD1方の食堂拡張工事現場において旧館一階東端の客室「E1」の間の東側外壁の一部とその上部の本件梁の一部とを削り取つた跡にH鋼間柱を垂直にはめ込んだうえ、この間柱の上部とその上方のH鋼梁とを電気溶接機を用いて溶接して固定する作業(本件溶接作業)を被告人両名が行つたこと、その後旧館の焼燬という事態(本件火災)が発生したが、その最初の発見は本件溶接作業終了後間もなく旧館から出始めた煙が同日午後三時二五分ころ目撃されたことによるものであつたこと、本件火災は本件溶接作業により発生したものであること、及び、被告人両名が本件溶接作業開始前右作業の際の火花が可燃物に達しないようにするための遮へい措置をしないまま本件溶接作業を始めたのであるが、もし右遮へい措置がなされていたならば本件火災の発生を回避しえたことなどは、いずれも肯認することができるけれども、以下の事実は原審で取り調べられた全証拠をもつてしても、これを肯認することができない。 すなわち、まず原判決は、被告人両名が各自その負担していた原判示の注意義務をそれぞれ怠つたため本件火災が生じたこと(被告人両名の各過失と本件火災との間に因果関係があること)、換言すれば、本件火災という具体的結果の発生を回避するために被告人両名がそれぞれ原判示の注意義務を負つているところ、それぞれ右注意義務に違反したことを認定判示しているのである(なお、原判決は、被告人両名が溶接と監視とを分担し「その分担を交互に交替し共同して」本件溶接作業をしたと認定しているけれども、その法令の適用において刑法六〇条を適用してはいないし、他に過失の共同正犯を認めたとうかがうに足りる摘示をし 監視とを分担し「その分担を交互に交替し共同して」本件溶接作業をしたと認定しているけれども、その法令の適用において刑法六〇条を適用してはいないし、他に過失の共同正犯を認めたとうかがうに足りる摘示をしていないのみならず、原審における審理を通じ過失の共同正犯の成否を問題とした形跡が全くないのであるから、原判決は被告人両名の各自の過失行為による本件火災の発生すなわち過失の同時犯を、本文記載のとおり認定判示したものというべきである。)が、原審で取り調べられた全証拠を検討しても、本件火災が被告人両名のいずれの溶接作業に起因するものであるかという点を明らかにし得る資料は見当たらないのであるから、仮に被告人両名が各自原判示のような注意義務を(抽象的に)負つているとしても、これと本件火災との間に因果関係があること、換言すれば本件火災の発生を回避するために被告人両名が各自原判示のような具体的注意義務を負つていることの証明がないといわざるを得ない。更に、原判決は、本件溶接作業により飛散した火花(スパツタ)が本件梁(そのうちH鋼間柱をはめ込むために削られた部位付近)に着火したことにより本件火災が生じた旨認定判示しているけれども、原審で取り調べられた各証拠によれば、本件溶接作業の際発生した熱又は火花(スパツタ)などのため右溶接箇所周辺の可燃物が燃え出したことにより本件火災が生じたことの認められることは後述のとおりであるが、それ以上にこの発火が火花から可燃物への着火であることとか右着火が本件梁への着火であることとか本件梁への着火が本件火災の発端であることとかの諸点(したがつて、スパツタが本件梁に着火することのないように遮へい措置をしなければならないという業務上の注意義務が―そしてこれのみが―あること)はいずれもこれを認めるに足りる証拠がない。最後に、原判決は、 がつて、スパツタが本件梁に着火することのないように遮へい措置をしなければならないという業務上の注意義務が―そしてこれのみが―あること)はいずれもこれを認めるに足りる証拠がない。最後に、原判決は、被告人両名の各過失の一つとして(いわゆる段階的過失論によれば、これのみが過失を構成するものとして)、被告人両名が本件溶接作業終了後も「ばけつ一杯の水を右溶接箇所に掛けたのみで異常の有無を何ら確認することなくその場を離れた過失により」本件火災が生じた旨認定判示しているけれども、前記各証拠によれば、当裁判所の後記認定のとおり燃え出した前記可燃物が被告人両名からは視認できない場所にあり、しかも、右発火後の火の回りが極めて早かつたことが認められ、したがって仮に被告人両名が各自原判示のような「監視」や「確認」を十分にしていたとしても、被告人両名が「異常」に気付いたときには本件火災の発生(旧館焼燬)を回避しえなかつたという合理的疑惑をぬぐい切れない。 以上の当裁判所の判断は、当審における事実の取調べの結果によつても左右されず、そうすると、原判決は以上説示の諸点で事実を誤認しているといわざるを得ず、この誤認が判決に影響を及ぼすことの明らかであることは、いうまでもない。 この点において論旨は理由がある。 三結論及び自判以上の理由により刑訴法三九七条一項、三八二条により原判決を全部破棄し、同法四〇〇条但書により当裁判所において更に判決することとするが、本位的訴因(起訴状記載の公訴事実で、これが原判決とほぼ同じ内容であることは既述のとおり。)はこれを認めるに足りる証拠がないことは既に明らかなところであるから、当審で予備的に追加された訴因(昭和六一年三月二四日付訴因・罰条の予備的変更請求書記載の訴因)の範囲内で、次のとおり判決する。 (罪となるべき事実) 拠がないことは既に明らかなところであるから、当審で予備的に追加された訴因(昭和六一年三月二四日付訴因・罰条の予備的変更請求書記載の訴因)の範囲内で、次のとおり判決する。 (罪となるべき事実)被告人両名は、鉄骨組立業を営む有限会社G1鉄工所の従業員として、いずれも電気溶接機を用いて行う鋼材溶接作業などの業務に従事していた者であるが、同会社が請け負つた三重県久居市甲町乙番地所在の料理旅館「C1」ことD1方の食堂拡張工事に関連して、旧館東側(旧館と新館との接続部北側)の同工事現場において、昭和五二年一〇月一一日午後三時過ぎから相協力して、同工事によりほぼ骨組の完成した建築物(食堂)の天井部のH鋼梁(旧館東側外壁に沿つたH鋼梁)にこれを支えるH鋼間柱(上部)を電気溶接機を用いて溶接して固定するという作業を行うに当たり、右作業(溶接それ自体は右接続部から張り出した庇の上で行う。)は、あらかじめ同旅館従業員H1において旧館一階客室「E1」の間の東側モルタル外壁中土台部分と上方一階木製梁(本件梁)付近との間の部分を約三〇センチメートル幅で壊し、更に旧館東側外壁中本件梁の上部のモルタルが剥離している箇所に当てられていたベニヤ板の部分を約二〇センチメートル幅(左右の幅)で切り取つたうえ、本件梁をはつり、その一部をえぐり取るなどして準備しておいた跡に右H鋼間柱を垂直に(右H鋼に取り付けられている四角形鉄板―フランジ―を上にして)はめ込み、その上部を、上方のH鋼梁に溶接して固定するというものであり、右溶接箇所周辺には、この箇所に接着して、若しくは接着に近い状態で近接して、前記ベニヤ板残存部、その裏側のモルタルが剥離して露出している下地(フエルト)、乾燥した木ずりなどの可燃物が存在し、しかも、右可燃物は溶接者や監視者からは視認できない場所にも存在してい で近接して、前記ベニヤ板残存部、その裏側のモルタルが剥離して露出している下地(フエルト)、乾燥した木ずりなどの可燃物が存在し、しかも、右可燃物は溶接者や監視者からは視認できない場所にも存在していた(別紙(二)の各図面参照)のであるから、かかる状況下で本件溶接作業を行うときには、電気溶接の際発生する熱(溶接時、そのアーク炎の温度は、摂氏四〇〇〇度から五〇〇〇度に達する。)の輻射又は火花(スパツタ)などによつて右可燃物(しかも前述のとおり視認不能の場所にある可燃物)が発火し燃焼し始め、その火が回つて旧館が炎上して建物焼燬に至る危険があり、これを回避するには、以上の輻射熱やスパツタなどが右可燃物に達したりしないように、被告人両名とも、あらかじめ、薄鉄板などの不燃物で右可燃物を溶接箇所から遮へいするという措置をしなければならない(換言すれば右措置をしたうえでなければ本件溶接作業をしてはならない)という業務上の注意義務があるのに、これを怠り、右措置をしないまま本件溶接作業を始めても(作業中に、一人が溶接し、他方がこれを監視し、更に作業後に溶接部位にばけつ一杯の水を掛けさえすれば)前記可燃物の発火を防止しうるから本件溶接作業にとりかかろうという考えを抱き(かかる心理状態についての相互の意思連絡を被告人両名の間で成立させ)、この考えの下に、そのまま(以上の遮へい措置をしないまま)本件溶接作業にとりかかり、被告人両名のうち一方が庇の上で溶接し、その間他方が地上でスパツタの飛散状況を監視する(そして、これを途中で交替した。)という方法で、かつ、被告人両名が以上の意思連絡の下に、更に、本件火災発生防止対策上も相互に相手の行為を利用し補充し合うという共同実行意思の下に、共同して本件溶接作業を遂行したという業務上過失行為をしたため、右作業中に電気溶接により 上の意思連絡の下に、更に、本件火災発生防止対策上も相互に相手の行為を利用し補充し合うという共同実行意思の下に、共同して本件溶接作業を遂行したという業務上過失行為をしたため、右作業中に電気溶接により発生した熱の輻射又はスパツタなどによつて前記可燃物(前述の視認不能の場所にある可燃物)が発火して燃焼し始め、その火が急速に回つて旧館が炎上し、もつて前記D1らが現に旅館客室などに使用する建造物を焼燬したものである。 (証拠の標目)(省略)(補足説明)一本件火災の出火原因について(1) 証拠標目欄掲記の各証拠によると、被告人両名は、旧館と新館との前記接続部(新館に通ずる旧館一階手洗場兼廊下)から食堂拡張工事現場に張り出していた庇(トタン屋根)の上において、右庇の上方には右拡張工事により構築された建築物の屋根があり、その空間の高さは庇の基部で約六〇センチメートル、庇の先端部で約一メートルであつたため、身をかがめ又は腰を落とし、半ば仰向きに近い状態で、かつ溶接用手持面のため視野が限定されている状況で、電気溶接機を用いてH鋼梁にH鋼間柱を垂直に固定するという本件溶接作業を行つたこと、被告人両名が交替して行つた本件溶接作業はH鋼梁とH鋼間柱上部鉄板との隙間(約一センチメートル)の向かつて右側部分と向かつて左側部分及び正面向かつて右半分の三箇所に対して行われ、前の二箇所はいずれも後記丸棒をあてがつて溶接固定し、残りの一箇所はH鋼梁とH鋼間柱の上部鉄板とを直接溶接固定したものであること、本件溶接作業は、アーク溶接といわれる作業であり、アーク溶接棒を電極としてアーク溶接棒と溶接対象物(H鋼梁、丸棒及びH鋼間柱上部鉄板)との間にアーク炎を発生させ、その高温(本件溶接作業では直径三・二ミリメートルのアーク溶接棒を用い、一〇〇アンペアないし一一〇アン としてアーク溶接棒と溶接対象物(H鋼梁、丸棒及びH鋼間柱上部鉄板)との間にアーク炎を発生させ、その高温(本件溶接作業では直径三・二ミリメートルのアーク溶接棒を用い、一〇〇アンペアないし一一〇アンペアの電流が流されたが、この場合アーク炎の温度は摂氏四〇〇〇度から五〇〇〇度位に達し、四囲に輻射熱を放射し、また、アーク炎により前記溶接対象物の温度も摂氏二〇〇〇度位になる。)によりアーク溶接棒それ自体を溶融して溶着金属を溶接対象物上に滴下させ、これを溶加材とし、右高温により溶かされた溶接対象物(溶接部)を接着固定するというもので、右溶接の際、火花(スパツタ)が周囲に飛散することが認められる。また、前記各証拠によると、前記溶接箇所とその周辺の前記可燃物との位置関係などはおおむね別紙(二)の各図面のとおりであることが認められる。すなわち、前記H鋼間柱の幅は約一〇センチメートルで、この間柱の上部に四角形の鉄板(幅約一七センチメートル、奥行約二〇センチメートル、厚さ約一センチメートルのフランジ)が取り付けられ、右鉄板と前記H鋼梁との溶接は、右鉄板と右H鋼梁との間の約一センチメートルの間隙に異形鉄筋の丸棒二本を(左右に)別紙図面(二)の図面(a)のとおり添えて溶接したものであり、右各丸棒はその太さが約一センチメートルであり、右溶接箇所と前記ベニヤ板との左右の間隔については、前述のとおりベニヤ板を切り開いた幅(左右)約二〇センチメートルから右鉄板の幅約一七センチメートルと右丸棒二本の太さ(そのうち若干部分)とを加えたものを差し引いたものが更に右鉄板の左右に分けられるという関係にあり、したがつて、右鉄板の左右にある右各丸棒と右ベニヤ板開口部の左右各側線との各間隔がいずれも極めて小さかつたし、また、右溶接箇所と右ベニヤ板端部との前後の間隔については、本件 られるという関係にあり、したがつて、右鉄板の左右にある右各丸棒と右ベニヤ板開口部の左右各側線との各間隔がいずれも極めて小さかつたし、また、右溶接箇所と右ベニヤ板端部との前後の間隔については、本件火災発生の翌日に行われた前記実況見分の際の計測による右間隙の幅(奥行約一五センチメートルの右H鋼梁と本件梁との前後関係)約三・七センチメートルを基礎とすれば、右溶接の際添えられた左右の前記丸棒の長さが、右側のものは約一六セソチメートルで左側のものが約一八センチメートルであり前記H鋼梁後端より本件梁に向かつて前記各丸棒がそれぞれ若干(右側で約一・三センチメートル、左側で約二・五センチメートル)はみ出していたから、右ベニヤ板は右各丸棒に接着し、若しくは、これに近い状態にあつたと考えられる。しかも当審(公判期日及び公判期日外)における証人D1の各供述や同人が作成した本件焼失家屋の模型一個(当庁昭和五七年押第九四号の九)及び検察事務官作成の写真帳作成報告書添付の写真(A―一六、A―一八など)などを総合すると、右ベニャ板の裏側にもフエルトや木ずりなどの可燃物が存在していたことが明らかである。 (2) I1作成の鑑定書、同追補及び同人の当審公判廷における供述や右各証拠によつて認められる実験結果(同人が、溶接箇所とベニヤ板端部及びフエルトとの横方向並びに縦(前後)方向の間隔を〇から四センチメートルまでとつて行つた実験の結果)などに照らすと、溶接箇所とベニヤ板やフエルトなどの可燃物との関係が前記(1)のとおりの状態(横方向も縦方向も、少なくとも接着に近い状態)にある場合、前述の本件溶接作業(被告人両名は、前記(1)で認定したその作業環境と作業状態に照らし、通常の場合に比して作業時間が長くなり、それに伴い溶接に際して発生する火花や輻射熱なども多くなつたと認めら 場合、前述の本件溶接作業(被告人両名は、前記(1)で認定したその作業環境と作業状態に照らし、通常の場合に比して作業時間が長くなり、それに伴い溶接に際して発生する火花や輻射熱なども多くなつたと認められる。)を行つた本件においては、この溶接箇所の周辺に存在するベニヤ板やフエルトなどの前記可燃物が発火して燃え出したという蓋然性が極めて高いものと認められる(なお、溶接箇所と前記ベニヤ板とその他の前記可燃物との前記位置関係に照らすと、右ベニヤ板のごく僅かな隙間から前記アーク炎が右ベニヤ板の裏側の前記フエルトなどの可燃物に直接吹きかけられ、そのため右可燃物が燃え出すとか、右溶接の際の高温のため溶接箇所周辺の可燃物が熱せられその着火性ないし発火性が高められたときに前記スパツタが、短時間とはいえ、相当量集中的に飛来して右可燃物に着火したという蓋然性も高いと考えられる。)。以上のことがらに証拠の標目欄記載の各証拠によつて認められる本件火災の初期の目撃状況(旧館二階東端の「F1」の間付近から煙などの出ているのが見受けられた。)、本件梁及び旧館一階の東側壁面の焼損状況、前記ベニヤ板の焼失状況(別紙(二)の図面(a)参照)などを加えて考察すると、右溶接箇所付近で被告人両名や後記J1からは視認不能の場所にあつた前記可燃物が本件火災の出火点であり、更に被告人両名の本件溶接作業の状況、これと出火との時間的近接などを加えれば、右出火が被告人両名の本件溶接作業に起因していることは明らかであるといわざるを得ない。 そして、右各証拠に徴し、被告人両名の本件溶接作業中、前記のベニヤ板、フエルトなどに着火したとすれば、その火は裏側の木ずり及び本件梁などに移る一方、前記「F1」の間東側壁とこれに続く天井裏ないし屋根裏とが一種の煙突状態をなしていたから、この中のフエルトなどの急 板、フエルトなどに着火したとすれば、その火は裏側の木ずり及び本件梁などに移る一方、前記「F1」の間東側壁とこれに続く天井裏ないし屋根裏とが一種の煙突状態をなしていたから、この中のフエルトなどの急速な燃焼により本件梁と右ベニヤ板との間の間隙を伝わつて本件梁上部の二階の壁間に入り、この壁間を上昇して短時間のうちに前記「F1」の間の天井裏などに及ぶものと推論することができる。 (3) その他の出火原因の有無について本件火災が本件溶接作業以外の原因により発生した可能性はなかつたものと認められる。すなわち、証拠の標目欄掲記の各証拠によると、昭和五二年一〇月一一日、「C1」においては、前日の宿泊客は遅くとも右一一日午前一〇時ころまでには全員チエツクアウトを完了して退出し、同日午後三時ころには、昼食にきた男性客二人が昼食をすませて新館○偕○□□号室で休憩中であつたほかは客は皆無であつたこと、同日午後三時前後ころ「C1」敷地内におつた「C1」の従業員その他の者は、被告人両名と本件溶接作業を地上で見守つていたJ1との三名は別として、前記H1(前記の作業を終えてのち物置小屋で休憩中であつた。)、K1、L1、前記D1の息子で「C1」の支配人であるM1及びその妻、右K1とともに新館○偕の事務所にいたN1、L1とともに新館□偕炊事室にいたO1及び臨時の女中のP1並びに財団法人Q1保安協会の職員(検査員)R1だけであつたこと、M1は同日午後二時ころ外出先から帰宅して自室にいたときベルの音で本件火災の発生を知つたものであること、R1は、同日午後三時一〇分ころ、前記保安協会と「C1」との間の委託契約に基づく電気系統の一〇月期月次点検で「C1」を訪れ、旧館と新館との建物の外部において新館西側の動力分電盤、冷凍機動力分電盤、地上変台の変圧器等を順次点検し、旧館と新 協会と「C1」との間の委託契約に基づく電気系統の一〇月期月次点検で「C1」を訪れ、旧館と新館との建物の外部において新館西側の動力分電盤、冷凍機動力分電盤、地上変台の変圧器等を順次点検し、旧館と新館とにおける電灯・動力の漏電の有無を調査するため地上変台の第二種接地線の電流の測定もしたうえ、外部の点検のほぼ最後として新館北側の川沿いにある濾過機の動力分電盤を点検しようとしたところ、黒煙が流れてくるのを目撃して新館内の事務所に引き返したものであること、同人の右点検では特に異常は発見されず、また右第二種接地線の電流測定の結果、計器の数値は電灯・動力とも漏電なしの場合にあたる零を示していたこと、なお、「C1」は九月期の月次点検も同人により行われたが、旧館一階売店横の電灯分電盤のメインスイツチが接触不良であつたほかは、建物の内、外部とも特に異常は発見されておらず、その後前記一〇月期の月次点検まで、同人は異常があつたとの連絡に接していなかつたこと、また、事件当日は前記M1の妻も館内を見回つたが、特に異常を発見しておらず、旧館一階売店横に設置されていた動力分電盤のメインスイツチである漏電ブレーカー(本件火災の三日前に保安協会の指示に基づき従前の刃物スイツチから漏電ブレーカーに取り替えられたばかりで、そのときのテストでは正常に作動した。)は、漏電があれば作動してオフになり電気を遮断するはずであるのに、本件火災の前後を通じてオンのままで作動していなかつたこと、電気工事請負業者であるS1は、本件火災の一週間前「C1」から新館のクーラーに電気漏れがあるとの知らせで同所に赴き、シーズン外であつたので、クーラーのメインスイツチを切り、動力線を切断し、更にその後新館ベランダの手すりの部分に電気漏れがあるとの連絡を受けた同人が測定したところ漏電は認められなかつた 同所に赴き、シーズン外であつたので、クーラーのメインスイツチを切り、動力線を切断し、更にその後新館ベランダの手すりの部分に電気漏れがあるとの連絡を受けた同人が測定したところ漏電は認められなかつたこと、以上の事実が認められる。(なお、証人T1は、当審第七回公判期日において、「C1」では絶縁抵抗値が〇MΩ(ゼロメガオーム)のところなどがあつて漏電の危険性があつた旨供述し、証人U1も、当裁判所の昭和六〇年三月二〇日付尋問調書中において、五系統の回路のうち二か所が〇MΩとなつており、絶縁抵抗値が非常に低下していたから、コードやソケツトの中でシヨートしていた可能性がある旨供述するが、右の箇所はいずれも新館の電気系統に属する川原の水銀灯・誘が灯、新館内の浴室・ホールの電灯、同廊下のコンセントに関するものであるから、右各供述は前記の認定を何ら左右しない。)。 以上(1)から(3)までの事実に更に証拠の標目欄掲記の各証拠を加えて考察すると、本件火災は、「C1」の宿泊客や従業員らの煙草などの火の不始末あるいは旧館の電気系統の故障などによる漏電等から発生したものではなく、電気溶接機を用いてなした被告人両名の本件溶接作業により、溶接箇所周辺にこれと接着し若しくは接着に近い状態で存在していたベニヤ板、フエルトなどの前記可燃物に電気溶接機から発生する熱の輻射又はスパツタなどが作用したことにより可燃物が発火し燃焼するに至つたことが原因であると結論することができる。 被告人両名の原審及び当審公判廷における各供述などのうち、以上の認定に牴触する部分は措信することができず、また、当審証人U1の供述(二回)及び同人作成の各書面中には、なるほど被告人両名の弁解に沿う部分があるけれども、これらは、その前提とする事実において当裁判所の認定する事実と異なる点などがあり、採用 また、当審証人U1の供述(二回)及び同人作成の各書面中には、なるほど被告人両名の弁解に沿う部分があるけれども、これらは、その前提とする事実において当裁判所の認定する事実と異なる点などがあり、採用することができない。 二過失の共同正犯の成立を認めた理由について証拠標目欄掲記の各証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1) 被告人A1は昭和三八年七月ころから、同B1は昭和四六年九月ころからそれぞれ鉄骨組立業を営む有限会社G1鉄工所に勤務していたものであるが、本件火災発生当時、いずれも鉄骨組立工として鋼材の電気溶接などの業務に従事し、上司の指示により、随時、現場の責任者となり、あるいは他の従業員(昭和五二年一〇月当時の従業員数は被告人両名を含めて五名であつた。)とともに右責任者を応援するという形で同社が請け負つた鉄骨組立加工関係の仕事をしていた。 (2) 被告人A1は、昭和五二年一〇月当時、上司V1(当時の代表者W1の息子)の指示で、G1鉄工所が「C1」(経営者D1)から受注した食堂拡張工事の現場責任者となり、「C1」の作業現場において、随時、手の空いた他の従業員の応援を得て右拡張工事に従事していたところ、本件火災発生当日(同月一一日)午前中、右D1から追加工事として前記H鋼間柱の取付け方を依頼され、いつたんG1鉄工所に戻り、同所作業場で間柱にするH鋼を見つくろい、その一端に四角形の鉄板を溶接したうえ、同日昼過ぎ、たまたま同日昼から手空きであつた被告人B1と同僚のJ1との両名とともに、右間柱取付け作業及び屋上ベランダの手すり移動作業を行うため「C1」に赴いたが、その際、右準備にかかるH鋼間柱も「C1」に搬入した。 (3) 「C1」では、J1が主体となつて手すりの移動作業を終えてのち、被告人両名とJ1との三名において、電源車から電 ため「C1」に赴いたが、その際、右準備にかかるH鋼間柱も「C1」に搬入した。 (3) 「C1」では、J1が主体となつて手すりの移動作業を終えてのち、被告人両名とJ1との三名において、電源車から電源コードを間柱取付け作業の現場へ引き込み、前示のように、旧館東側の外壁開口部に右準備にかかるH鋼間柱を(前記鉄板―フランジ―を上にして)垂直にはめ込んだところ、H鋼梁とH鋼間柱上部鉄板との間に隙間ができたため、被告人B1において、急遽前記丸棒二本を調達した。そしてH鋼間柱のはめ込み具合を見るため、前記庇にたまたま上つていた被告人A1において、同所でまず所携の電気溶接機ホルダーに同被告人手持ちの溶接棒を装着し、前記H鋼梁とH鋼間柱上部鉄板との隙間向かつて右側の部分と向かつて左側の部分との両方に前記の丸棒一本ずつをあてがつて仮付けし、更に向かつて右側部分を溶接固定し、その間地上にいた被告人B1とJ1とにおいて、右溶接の際に発生し火花となつて飛散落下するスパツタの状況を下方で監視し、続いて被告人B1が同A1に交替しようと持ちかけ、同被告人がこれを了承したので同被告人と交替して庇に上り、同被告人から受け取つたホルダーに被告人B1の手持ちの溶接棒を装着し、向かつて左側部分を溶接固定し、その間被告人A1とJ1とにおいて前同様スパツタの状況を地上から監視していた(なお、H鋼梁とH鋼間柱上部鉄板との間隙の正面向かつて右半分の溶接も被告人両名のうちいずれかによりなされたことは明らかであるが、そのいずれかは特定できない。)が、本件溶接作業終了と同時に、ばけつ一個にあらかじめ汲み置いていた水を右溶接箇所付近に散水し、その後、被告人両名とJ1との三名で電源コード等のあと片付けをした。 (4) 被告人両名が、右のように、本件溶接作業を途中で交替したのは、作業開始前か じめ汲み置いていた水を右溶接箇所付近に散水し、その後、被告人両名とJ1との三名で電源コード等のあと片付けをした。 (4) 被告人両名が、右のように、本件溶接作業を途中で交替したのは、作業開始前からあらかじめ決めていたわけではなく(なお、被告人A1がまず溶接作業にあたつたのも前記(3)に説示した事情による。)、また、現場責任者である被告人A1から被告人B1に指示がなされたわけでもなく、前示のように、たまたま溶接作業を開始した被告人A1の様子を地上で(スパツタの状況を監視しながら)見守つていた被告人B1において、被告人A1が庇の上で窮屈そうに作業をしているのを見て、「代わろうか」と声をかけたところ、被告人A1がこれに応じたことによるものである。 以上の事実に更に前記各証拠を加えて考察すれば、本件溶接作業においては被告人A1が一応現場の責任者となつていたとはいえ、被告人B1は決して被告人A1の指揮命令に拘束されるといつた関係にあつたわけではなく、溶接職人としては被告人A1とほぼ対等同格の立場で右作業に従事したものであるというべきであり、また、前記溶接箇所周辺には、これと接着し若しくは接着に近い状態でベニヤ板、フエルトなどの前記可燃物が存在し、この状態で高温度のスパツタを周囲に飛散させ、かつ高温度の輻射熱を周辺に発散放射させるという溶接作業を行う被告人両名としては、このままの状態で本件溶接作業を行うならば右輻射熱やスパツタなどのため右可燃物が発火し、その結果建物が燃焼、焼燬するといつた大事に至るということを当然予見することができ、また、予見していなければならないことであり(前記のごとく、被告人両名が交互に地上でスパツタの飛散状況を監視し、ばけつの水を溶接箇所に掛けたことなどは現に可燃物の発火や火災の危険性を予測していた証左である。)、以上 ければならないことであり(前記のごとく、被告人両名が交互に地上でスパツタの飛散状況を監視し、ばけつの水を溶接箇所に掛けたことなどは現に可燃物の発火や火災の危険性を予測していた証左である。)、以上のことは電気溶接機を用いて行う鋼材溶接作業の業務に従事する者一般についてもいい得るところであるから、被告人両名には、電気溶接機を用いて本件溶接作業を行うに当たり、作業開始前にあらかじめ溶接箇所周辺の可燃物が発火しないよう輻射熱やスパツタなどを遮へいする措置を講じておかなければならない(換言すれば右措置をしないまま右作業を始めてはならない)という業務上の注意義務があつたといわざるを得ない。 <要旨>以上によると、(1)被告人両名の行つた本件溶接作業(電気溶接機を用いて行う鋼材溶接作業)は、まさに同</要旨>一機会に同一場所で前記H鋼梁とH鋼間柱上部鉄板とを溶接固定するという一つの目的に向けられた作業をほぼ対等の立場で交互に(交替して)一方が、溶接し、他方が監視するという方法で二人が一体となつて協力して行つた(一方が他方の動作を利用して行つた)ものであり、また、(2)被告人両名の間には、あらかじめ前説示の遮へい措置を講じないまま本件溶接作業を始めても、作業中に一方が溶接し他方が監視し作業終了後に溶接箇所にばけつ一杯の水を掛ければ大丈夫である(可燃物への着火の危険性はない)からこのまま本件溶接作業にとりかかろうと考えていること(予見義務違反の心理状態)についての相互の意思連絡の下に本件溶接作業という一つの実質的危険行為を共同して(危険防止の対策上も相互に相手の動作を利用し補充しあうという共同実行意思の下に共同して)本件溶接作業を遂行したものと認められる。つまり、被告人両名は、単に職場の同僚としてあらかじめ前記措置を講ずることなくして前記危険な溶接 手の動作を利用し補充しあうという共同実行意思の下に共同して)本件溶接作業を遂行したものと認められる。つまり、被告人両名は、単に職場の同僚としてあらかじめ前記措置を講ずることなくして前記危険な溶接作業(実質的危険行為)をそれぞれ独立に行つたというものではない。このような場合、被告人両名は、共同の注意義務違反行為の所産としての本件火災について、業務上失火の同時犯ではなく、その共同正犯としての責任を負うべきものと解するのが相当である。 (法令の適用)被告人両名の判示各所為は、いずれも刑法一一七条の二前段、一〇八条、六〇条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するので、所定刑中各罰金刑を選択し、その所定金額の範囲内で処断すべきところ、前叙の被告人両名の過失内容や結果の重大性(宿泊施設たる旧館全部が焼失し、被害額も多額であり、かかる被害の甚大性も当然予見可能の状態であつたこと)などに照らすと、被告人両名の刑責は決して軽くないが、他面、被告人両名が使用人にすぎないこととかこれまで格別問題もなく社会生活を送つてきたものであることとかの酌むべき事情もあるので、これらの事情やその他本件が被告人ら控訴の事件であることや被告人らの経歴などの諸事情をも考慮して、被告人両名を各罰金七万円に処し、被告人らにおいて右各罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金二〇〇〇円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置し、原審及び当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名に連帯して負担させることとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官山本卓裁判官鈴木之夫裁判官油田弘佑)別紙<記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾2添付> 長裁判官山本卓裁判官鈴木之夫裁判官油田弘佑)別紙<記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾2添付>

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