- 1 -平成23年12月26日判決言渡平成23年(行ケ)第10173号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年11月28日判決 原告株式会社マルテー大塚 訴訟代理人弁理士嶋宣之同田辺敏郎同田辺恵 被告大西賢株式会社 被告補助参加人好川産業株式会社 上記2名訴訟代理人弁理士杉谷勉同戸高弘幸同杉谷知彦主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が,無効2010-800141号事件について,平成23年4月19日にした審決を取り消す。 - 2 -第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯等原告は,発明の名称を「塗装用刷毛」とする特許第4455599号(平成17年9月5日国際出願,平成16年9月30日優先権主張,特願2004-286640号,平成22年2月12日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 被告は,平成22年8月13日,本件特許の無効審判請求(無効2010-800141号事件)をし,原告は,同年11月8日付けで訂正請求書を提出した(以下「本件訂正」という。)。被告は,訂正された請求項1及び2に係る発明の特許 3日,本件特許の無効審判請求(無効2010-800141号事件)をし,原告は,同年11月8日付けで訂正請求書を提出した(以下「本件訂正」という。)。被告は,訂正された請求項1及び2に係る発明の特許を無効とするとの審判を求め,特許庁は,平成23年4月19日,「訂正を認める。 特許第4455599号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月28日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は,次のとおりである(以下,請求項1及び2に係る発明を,それぞれ「本件特許発明1」,「本件特許発明2」といい,これらを総称して「本件各特許発明」という。また,本件訂正後の特許請求の範囲,明細書及び図面を総称して「本件明細書」という。別紙図面1は,本件明細書に添付された図面であり,図1はウェーブ付きモノフィラメントの拡大図,図3は塗装用刷毛の正面図である。 「【請求項1】刷毛部を有する塗装用刷毛であって,刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のモノフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きモノフィラメントを含むとともに,上記ウェーブ付きモノフィラメントの混合割合を,10%~40%とする一方,上記直毛状のモノフィラメントは,ウェーブ付きモノフィラメントよりも太い直毛状のモノフィラメントと,上記ウェーブ付きモノフィラメントと同じ太さの直毛状のモノフィラメントとからなる塗装用刷毛。 【請求項2】刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のモノフィラメントと,化学繊- 3 -維からなる上記ウェーブ付きモノフィラメントと,獣毛とを含む請求項1に記載の塗装用刷毛。」 3 審決の理由(1) 別紙審決書写しのとおりである。その概要は,以下のとおりである。 ア本件訂正は,特許法134条の ーブ付きモノフィラメントと,獣毛とを含む請求項1に記載の塗装用刷毛。」 3 審決の理由(1) 別紙審決書写しのとおりである。その概要は,以下のとおりである。 ア本件訂正は,特許法134条の2第1項1号ないし3号に掲げる事項を目的とするものであり,認められる。 イ本件特許発明1及び本件特許発明2はいずれも,甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。別紙図面2は,甲1に添付された図面である。)及び甲10に記載された発明(以下「甲10発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ本件特許発明1及び本件特許発明2はいずれも,甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ本件特許の特許請求の範囲に記載された「ウェーブ付きモノフィラメントの混合割合を,10%~40%とする」について,混合割合が,明記はなくとも本数比であることが当業者にとって明確であるとはいえないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない。 オしたがって,本件特許は,特許法123条1項2号及び4号に該当し,無効とすべきである。 (2) 上記判断に際し,審決が認定した甲1発明及び甲2発明の内容,甲1発明と本件特許発明1,本件特許発明2との一致点及び相違点,甲2発明との本件特許発明1,本件特許発明2との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア甲1発明及び甲2発明の内容(ア) 甲1発明の内容「柄と,前記柄の一端から延びる混合毛を備える塗装用刷毛であって,前記混合毛は天然毛と少なくとも20重量%の合成樹脂製の捲縮フィラメントとウェーブ状- 4 -の構造を有しない実質的に直線的な合成フィラメントを含む塗装用刷毛。」(イ) 甲2発 用刷毛であって,前記混合毛は天然毛と少なくとも20重量%の合成樹脂製の捲縮フィラメントとウェーブ状- 4 -の構造を有しない実質的に直線的な合成フィラメントを含む塗装用刷毛。」(イ) 甲2発明の内容「柄と,前記柄の一端から延びる混合合成フィラメントを備える塗装用刷毛であって,前記混合フィラメントは従来型合成フィラメントと約10重量%~約90重量%の合成樹脂製の捲縮フィラメントとを含み,例えば従来型合成フィラメントの代表的な商業用フィラメントは,約.012インチの基部直径と,.008インチの先端直径を有し,好ましい一実施形態では,合成樹脂製の捲縮フィラメントは,. 012インチの基部直径と,.008インチの先端直径を有する,塗装用刷毛。」イ甲1発明と本件特許発明1との一致点及び相違点(ア) 一致点「刷毛部を有する塗装用刷毛であって,刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む塗装用刷毛。」(イ) 相違点a 相違点1各フィラメントが,本件特許発明1においては「モノフィラメント」であるのに対し,甲1発明においてはそのような特定がない点。 b 相違点2ウェーブ付きフィラメントの混合割合が,本件特許発明1においては「10%~40%」であるのに対し,甲1発明においては20重量%である点。 c 相違点3本件特許発明1においては,「直毛状のフィラメントは,ウェーブ付きフィラメントよりも太い直毛状のフィラメントと,上記ウェーブ付きフィラメントと同じ太さの直毛状のフィラメントとからなる」のに対し,甲1発明においてはそのような特定がない点。 ウ甲1発明と本件特許発明2との相違点甲1発明の「天然毛」は,本件特許発明2の「獣毛」に相当し,両者は,上記イ- ラメントとからなる」のに対し,甲1発明においてはそのような特定がない点。 ウ甲1発明と本件特許発明2との相違点甲1発明の「天然毛」は,本件特許発明2の「獣毛」に相当し,両者は,上記イ- 5 -(イ) の相違点以外の相違点はない。 エ甲2発明と本件特許発明1との一致点及び相違点(ア) 一致点「刷毛部を有する塗装用刷毛であって,刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含むとともに,上記直毛状のフィラメントは,上記ウェーブ付きフィラメントと同じ太さの直毛状のフィラメントからなる塗装用刷毛。」(イ) 相違点a 相違点1各フィラメントが,本件特許発明1においては「モノフィラメント」であるのに対し,甲2発明においてはそのような特定がない点。 b 相違点2ウェーブ付きフィラメントの混合割合が,本件特許発明1においては「10%~40%」であるのに対し,甲2発明においては「約10重量%~90重量%」である点。 c 相違点3本件特許発明1においては,「直毛状のフィラメントは,ウェーブ付きフィラメントよりも太い直毛状のフィラメントと,上記ウェーブ付きフィラメントと同じ太さの直毛状のフィラメントとからなる」のに対し,甲2発明においては「直毛状のフィラメントは,上記ウェーブ付きフィラメントと同じ太さの直毛状のフィラメントからなる」にとどまる点。 オ甲2発明と本件特許発明1との相違点本件特許発明2と甲2発明は,上記エ(イ) の相違点1ないし3に加え,次の相違点がある。 相違点4本件特許発明2においては,「獣毛を含む」のに対し,甲2発明においては,そ- 6 -のような特定がない点。 第3 当事者の主張 1 取消事由に係る原告の主張審決 。 相違点4本件特許発明2においては,「獣毛を含む」のに対し,甲2発明においては,そ- 6 -のような特定がない点。 第3 当事者の主張 1 取消事由に係る原告の主張審決には,(1) 本件各特許発明が甲1発明等から容易想到であるとした判断の誤り(取消事由1),(2) 本件各特許発明が甲2発明等から容易想到であるとした判断の誤り(取消事由2),(3) 本件特許発明1の容易想到性判断に当たり,商業的成功を考慮しなかった誤り(取消事由3),(4) 本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の要件を満たさないとした判断の誤り(取消事由4)があり,これらは,審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。 すなわち,(1) 本件各特許発明が甲1発明等から容易想到であるとした判断の誤り(取消事由1)ア本件各特許発明と甲1発明の一致点の認定の誤り及び相違点の看過審決は,本件各特許発明と甲1発明について,「刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む」ことを一致点として認定した。 しかし,審決の認定は誤りである。 甲1発明は,水性塗料を用いたとき,豚毛などの天然毛の腰が弱くなるのを補うために,合成捲縮フィラメントを用いるものであるから(甲1訳文1頁11ないし21行,27ないし29行),天然毛と合成捲縮フィラメントとの組み合わせが必須であり,合成捲縮フィラメントと任意的な要素である直線的な合成フィラメントのみの組み合わせはあり得ない。 また,甲1発明の合成捲縮フィラメントは,豚毛の特性である塗料の含み,吐き出し特性を維持しつつ,水性塗料に対する豚毛の腰の弱さを補うために,合成捲縮フィラメントが混合されたものであるのに対し,本件各特許発明は, 明の合成捲縮フィラメントは,豚毛の特性である塗料の含み,吐き出し特性を維持しつつ,水性塗料に対する豚毛の腰の弱さを補うために,合成捲縮フィラメントが混合されたものであるのに対し,本件各特許発明は,水性塗料が低粘度のため直毛状のモノフィラメントだけでは刷毛としての含み性が極端に劣るこ- 7 -とから,ウェーブ付きモノフィラメントを混合させ,それらの相乗効果によって,化学繊維からなるモノフィラメントを積極的に用いながら,まとまり性と含み性の両方の機能を同時に達成できるようにしたものである(本件明細書の【0004】,【0007】)。ウェーブ付きモノフィラメントに,刷毛全体の腰の強さを維持するという機能はなく,甲1発明の合成捲縮フィラメントと本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントは同じではない。 さらに,甲1では,その好ましい例に,ウェーブ状の構造を有しない従来型フィラメントを含むものではない(甲1訳文3頁3ないし5行)。甲1における,従来型フィラメントは,合成捲縮フィラメントと相乗的に機能するものではなく,それを含むか否かは任意的であるのに対し,本件各特許発明における直毛状のモノフィラメントは,ウェーブ付きモノフィラメントと混合することによって,化学繊維を積極的に用いた刷毛における含み性とまとまり性の両方の効果を同時に達成でき,両者は相乗的に機能しあうものである。したがって,甲1発明の従来型フィラメントと,本件各特許発明の直毛状のモノフィラメントとは相違する。 以上のとおり,審決は,甲1発明の認定を誤り,「刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む」ことを一致点として認定し,相違点を看過した誤りがある。 イ本件各特許発明と甲1発明の相違点についての容易想到性判断の誤り(ア のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む」ことを一致点として認定し,相違点を看過した誤りがある。 イ本件各特許発明と甲1発明の相違点についての容易想到性判断の誤り(ア) 審決は,本件特許発明1と甲1発明の相違点2について,甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合20重量%が,本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合10%~40%の範囲内にあるから,実質的な相違点ではないと判断し,本件特許発明2と甲1発明の相違点についても同様に判断した。 しかし,審決の判断は誤りである。 上記アのとおり,本件特許発明1のウェーブ付きモノフィラメントと,甲1発明の合成捲縮フィラメントとは,技術的意義において相違する。 また,甲1発明における合成捲縮フィラメントの混合割合20重量%は,天然毛- 8 -の腰の弱さを補うための比率であり,当該刷毛のまとまり性と含み性の両方を達成するために必要とされる比率ではない。甲1には,40~60重量%の天然毛に対して残りを合成捲縮フィラメントとする構成が好ましい例として示されている(甲1訳文2頁33,34行)。審決が述べるとおり本数比と重量比の差がわずかであるとするならば,甲1発明は,合成捲縮フィラメントの混合割合が本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合の上限である40%を超えるものを含むことになり,当該刷毛のまとまり性が悪くなるという不都合が生じる。これに対し,本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合は,多くなるほど塗料の含み性は良くなる一方,まとまり性が損なわれて作業性が悪くなることから,直毛状のモノフィラメントとウェーブ付きモノフィラメントとを混合したとき,水性塗料の含み性と塗装作業において求められるまとまり性を同時に達成 る一方,まとまり性が損なわれて作業性が悪くなることから,直毛状のモノフィラメントとウェーブ付きモノフィラメントとを混合したとき,水性塗料の含み性と塗装作業において求められるまとまり性を同時に達成するための混合割合の折衷点として,「10%~40%」と規定したものである(甲24の【0006】)。 したがって,甲1発明と本件特許発明1の相違点2は実質的な相違点ではないと判断した審決は誤りであり,同様に,甲1発明と本件特許発明2との相違点に関する審決の判断も誤りである。 (イ) 審決は,本件特許発明1と甲1発明の相違点3について,甲10に「2種のストレートな筆毛は,クリンプを有する筆毛より太いストレートな筆毛と,クリンプを有する筆毛と同じ太さのストレートな筆毛からなる」との技術事項が記載されていることを前提として,甲10記載の発明を甲1発明に適用して,相違点3に係る本件特許発明1のように構成することは当業者が容易に想到できたと判断し,また,本件特許発明2と甲1発明の相違点についても同様に判断した。 しかし,審決の判断は誤りである。 甲10には,小径な筆毛3とクリンプを有する筆毛4との直径を同じにするという技術思想は開示されていない。すなわち,甲10には,大径のストレートな筆毛2の直径は8~14ミル程度が好ましく,小径のストレートな筆毛3の直径は2~- 9 -4ミル程度が好ましい,クリンプを有する筆毛4の直径は2~5ミル程度が好ましいと記載されているが,これらの直径に関しては,いずれもそれらの許容範囲を示したにすぎない。小径なストレートな筆毛3とクリンプを有する筆毛4とが,上記許容範囲で重複する部分はあるが,それらを1ミルずつに分ければ完全に一致する確率は1/4になり,さらに直径を細かく分ければ組み合わせは無限になって,直径が一致する確 クリンプを有する筆毛4とが,上記許容範囲で重複する部分はあるが,それらを1ミルずつに分ければ完全に一致する確率は1/4になり,さらに直径を細かく分ければ組み合わせは無限になって,直径が一致する確率はより低くなるから,筆毛3と筆毛4の直径の許容範囲が重複するからといって,両者の直径を同じにするという技術思想が甲10に開示されているとはいえない。 審決は,甲10には,実施例として,小径なストレートな筆毛3の直径が3ミル,クリンプを有する筆毛4の直径が3ミルのものが開示されているとするが,上記実施例として示された筆毛3と筆毛4の寸法以外に,直径を同じにするという考え方や必然性は開示されておらず,上記実施例は,両者の直径が,上記寸法の許容範囲で一致したにすぎないというべきである。 したがって,甲1発明に甲10記載の発明を組み合わせることによって,本件各特許発明を当業者が容易に想到できるとした審決の判断は誤りである。 (2) 本件各特許発明が甲2発明等から容易想到であるとした判断の誤り(取消事由2)ア相違点2に係る構成の容易想到性判断の誤り審決は,本件特許発明1と甲2発明の相違点2について,甲2発明の捲縮フィラメントの混合割合「約10重量%~90重量%」は本件特許発明1のウェーブ付きモノフィラメントの混合割合「10%~40%」(本数比)と少なくとも重複する範囲であると推認される,本件明細書及び図面を参照しても本件特許発明1の混合割合の上限値,下限値の格別の臨界的意義は明らかでないとして,「甲2発明の混合割合の数値範囲を実験等により適宜好適化することにより,相違点2に係る本件特許発明1のように構成することは当業者が適宜なし得たことにすぎない。」と判断し,また,本件特許発明2と甲2発明の相違点についても同様に判断した。 - 10 - することにより,相違点2に係る本件特許発明1のように構成することは当業者が適宜なし得たことにすぎない。」と判断し,また,本件特許発明2と甲2発明の相違点についても同様に判断した。 - 10 -しかし,審決の判断は誤りである。 甲2発明において,捲縮フィラメントを最大の90重量%の混合割合にすると,当該刷毛のまとまり性がなくなることから,その混合割合は当該刷毛のまとまり性を課題としない比率であり,刷毛のまとまり性を課題とした本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合とは技術的意義が異なる。 また,本件明細書には,まとまり性と含み性の両方を達成するときの臨界点がウェーブ付きモノフィラメントの混合割合10%~40%であることが記載され(甲24の【0017】),本件特許発明1は,直毛状のモノフィラメントとウェーブ付きモノフィラメントとを混合したとき,水性塗料の含み性を保ちながら,まとまり性を同時に達成するためのウェーブ付きモノフィラメントの混合割合の折衷点が10%~40%であることを案出したものであるから,上記混合割合は,含み性とまとまり性とを同時に達成する上で技術的必然性を有する。 したがって,90重量%までを含む甲2発明の混合割合の数値範囲を適宜好適化することにより,相違点2に係る本件特許発明1のように構成することは当業者が適宜なし得たとした審決の判断は誤りであり,同様に,本件特許発明2についての容易想到性の判断も誤りである。 イ相違点3に係る構成の容易想到性判断の誤り審決は,本件特許発明1と甲2発明の相違点3について,甲2発明に,直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとを混合する上で,それらの太さを同じとする発明が開示されていることを前提として,甲10ないし甲12から,2種のストレートな筆毛を含み, ,甲2発明に,直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとを混合する上で,それらの太さを同じとする発明が開示されていることを前提として,甲10ないし甲12から,2種のストレートな筆毛を含み,そのうち1種がクリンプを有する筆毛よりも太いストレートな筆毛である技術事項が周知であると認定し,太さを同じにした甲2発明に,相対的に太い直毛状のフィラメントが示された甲10ないし甲12記載の発明を組み合わせることは,当業者であれば容易に発明できたものであると判断し,また,本件特許発明2と甲2発明の相違点についても同様に判断した。 しかし,審決の判断は誤りである。 - 11 -(ア) 甲2発明には,直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとの太さを同じにするという技術思想はない。 すなわち,甲2には,「フィラメント20は,典型的には少なくとも約.005インチの基部直径を有する。代表的な商業用フィラメントは,約.012インチの基部直径と,.008インチの先端直径を有する。」(甲2訳文2頁32ないし34行)と記載されるが,約.012インチの基部直径と,.008インチの先端直径とを有する従来型合成フィラメントについては,代表的な商業用フィラメントの寸法を紹介したにすぎず,その寸法が合成樹脂製の捲縮フィラメントと同じでなければならないという技術的必然性を示すものではない。また,合成捲縮フィラメントについても,「合成捲縮フィラメントが先細ではない場合,それらは一般的に少なくとも.005インチの直径を有し,好ましくは.005~.025インチの直径を有する。」(甲2訳文3頁13ないし21行)と記載され,先細でない合成捲縮フィラメントは,上記従来型合成フィラメント20よりも細い直径のものも太い直径のものも許容範囲に含まれる。さらに,先細のフィラメント 。」(甲2訳文3頁13ないし21行)と記載され,先細でない合成捲縮フィラメントは,上記従来型合成フィラメント20よりも細い直径のものも太い直径のものも許容範囲に含まれる。さらに,先細のフィラメントの先端直径について,「好ましい他の実施形態では,フィラメント22は.015の基部直径と,. 010の先端直径を有し,」(甲2訳文3頁20,21行)と記載され,上記代表的な商業用フィラメントとは太さが異なる。そうすると,甲2には,従来型合成フィラメントと合成樹脂製の捲縮フィラメントとの直径を同じにしなければならないという技術思想は開示されていないというべきである。 したがって,甲2に,従来型合成フィラメント(直毛状のフィラメント)と合成捲縮フィラメント(ウェーブ付きフィラメント)とを混合する上で,それらの太さを同じする発明が開示されているとの審決の前提は誤りである。 (イ) また,上記(1)イ(イ)と同様,甲10ないし甲12には,ストレートの小径な筆毛とクリンプを有する筆毛との太さの許容範囲が示されているとともに,それらの範囲が一部において重複している寸法が示されているだけで,ストレートの小径な筆毛とクリンプを有する筆毛との太さを同じにするという技術思想は開示されて- 12 -いない。特に,甲10ないし甲12記載の発明には,本件特許発明1のように,相対的に細い直毛状のモノフィラメントと,ウェーブ付きモノフィラメントとの太さを同じにして含み性とまとまり性を同時に達成するという技術的必然性はない。 (ウ) 以上のとおり,甲2発明及び甲10ないし甲12記載の発明のいずれにも,相対的に細い直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとの太さを同じにするという技術思想が開示されていないから,甲2発明及び甲10ないし甲12記載の発明から,本件特許発明1 発明のいずれにも,相対的に細い直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとの太さを同じにするという技術思想が開示されていないから,甲2発明及び甲10ないし甲12記載の発明から,本件特許発明1に想到する動機付けがない。 したがって,本件各特許発明は,甲2発明に甲10ないし甲12記載の発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できるとした審決の判断は誤りである。 (3) 取消事由3(本件特許発明1の容易想到性判断に当たり,商業的成功を考慮しなかった誤り)審決は,本件特許発明1の容易想到性判断に当たり,商業的成功を考慮しなかった点に誤りがある。 近年,環境対策として,水性塗料のアルカリに反応しない化学繊維を用いた刷毛が望まれたが,特に直毛状の化学繊維を刷毛にそのまま用いると,塗料の含み性がほとんど保てないという問題が顕著になったことから,直毛状のモノフィラメントにウェーブ付きのモノフィラメントを混合し,ウェーブ付きモノフィラメントの混合割合を種々検討した結果,本件特許発明1のように,10~40%の比率が,含み性も保ちながら,塗装作業上問題のないまとまり性を達成することができた。 原告が市場に提供した本件特許発明1の実施品は,塗装の熟練者から絶大な支持を得た(甲31ないし甲34)。本件特許発明1の容易想到性は,発明の実施品についての商業的な成功によって基礎づけられるべきであり,審決は,この点の考慮を欠いて容易想到性を肯定した誤りがある。 (4) 本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の要件を満たさないとした判断の誤り(取消事由4)審決は,本件特許の特許請求の範囲に記載された「ウェーブ付きモノフィラメン- 13 -トの混合割合を10%~40%とする」について,本件特許の特許請求の範囲,明細書及び図面のいず 取消事由4)審決は,本件特許の特許請求の範囲に記載された「ウェーブ付きモノフィラメン- 13 -トの混合割合を10%~40%とする」について,本件特許の特許請求の範囲,明細書及び図面のいずれにも混合割合が何を基準にするのかについて記載されず,甲13ないし16,19によれば,刷毛や筆等の毛の割合については,本数,体積,重量のいずれを基準とする場合も存在することが理解できるから,本件特許における混合割合が本数比であることが当業者にとって明確であるとはいえないとして,本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の要件を満たさないと判断した。 しかし,審決の判断は誤りである。 「%」は,数の比を示すのが原則であり,重量や体積における比率を表現する場合は,例外的に,重量%あるいは体積%を用いる。本件特許発明1において,毛を本数として数えられる以上,原則どおり本数比と理解できる(甲28,甲29,甲30の1ないし3)。 また,本件特許発明1は,ウェーブ付きモノフィラメントの構成比を本数比でとらえることに意味がある。すなわち,塗装用刷毛では,種類の異なる毛を混ぜて使用することがあるが,化学繊維の場合,その毛の原材料に応じて比重がかなり相違し,比重の異なる化学繊維を混毛したときに,その構成比を重量%にすると,ウェーブ付きモノフィラメントの本数比が異なる場合があり,まとまり性がなくなったり,含み性が損なわれたりするが,繊維の構成比を本数比にしておけば,異種の化学繊維を用いても,その性能を安定させることができる。 したがって,本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの構成比は,原則どおり本数比と考えるべきもので,本数比であるかどうか不明確であるとした審決の判断は誤りである。 2 被告及び被告補助参加人の反論(1) 取 におけるウェーブ付きモノフィラメントの構成比は,原則どおり本数比と考えるべきもので,本数比であるかどうか不明確であるとした審決の判断は誤りである。 2 被告及び被告補助参加人の反論(1) 取消事由1(本件各特許発明が甲1発明等から容易想到であるとした判断の誤り)に対しア本件各特許発明と甲1発明の一致点の認定の誤り及び相違点の看過について- 14 -原告は,審決が,甲1発明の認定を誤り,「刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む」ことを一致点として認定し,相違点を看過した誤りがある旨主張する。 しかし,原告の主張は以下のとおり失当である。 (ア) 甲1発明において,合成捲縮フィラメントと任意的な要素である直線的な合成フィラメントのみの組み合わせがあり得るかについて甲1が,天然毛と合成捲縮フィラメントとの組み合わせを必須とする発明に限って開示しているとしても,審決が認定した甲1発明の混合毛は,天然毛及び合成捲縮フィラメントを含んでおり,同発明が,甲1に記載されていないとはいえない。 また,甲1には,混合毛が直線的な合成フィラメントを任意に含んでもよい旨が記載され,直線的な合成フィラメントは好ましくは含まれないほうがよい旨は記載されていないから,直線的な合成フィラメントを含む混合毛を備えた発明が甲1に記載されていると認定することは妨げられない。 (イ) 甲1発明の合成捲縮フィラメントと本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントが同じであるかについて甲1発明の合成捲縮フィラメントが本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントに相当することは原告も認めており,両者は,本件各特許発明においては「モノ」フィラメントであるのに対し,甲1発明においてはそのような特定がない点 ラメントが本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントに相当することは原告も認めており,両者は,本件各特許発明においては「モノ」フィラメントであるのに対し,甲1発明においてはそのような特定がない点で相違するのみである。 また,本件訂正後の特許請求の範囲に,「ウェーブ付きモノフィラメント」を限定する記載はなく,本件明細書の段落【0008】の記載によれば,「ウェーブ付きモノフィラメント」とは,ウェーブを加えた形状のモノフィラメントをいうにすぎない。また,本件明細書の段落【0006】の記載によれば,刷毛部のまとまりの良さを維持しつつ含み量を多くすることは,「ウェーブ付きモノフィラメント」を直毛状のモノフィラメントと組み合わせただけでは達成されず,「ウェーブ付きモノフィラメント」の混合割合を10%~40%とすることによって初めて達成さ- 15 -れるというのであるから,「ウェーブ付きモノフィラメント」が,「直毛状のモノフィラメントと相まって刷毛のまとまり性と塗料の含み性を向上させるためのもの」であるとしても,それは主観的な意図にすぎず,「ウェーブ付きモノフィラメント」を限定するものではない。両者が異なるとする原告の主張は,本件明細書の記載に基づくものではない。 そして,本件各特許発明と同様な主観的意図が甲1に記載されていなければ,甲1発明の構成と本件各特許発明の構成が同じでない,とはいえない。 したがって,本件各特許発明の「ウェーブ付きモノフィラメント」は,フィラメントとしては甲1発明の合成捲縮フィラメントと異ならず,甲1発明の合成捲縮フィラメントが本件各特許発明の化学繊維からなるウェーブ付きモノフィラメントに相当するとして,これを一致点とした審決の認定に誤りはない。 (ウ) 甲1発明の従来型フィラメントと本件各特許発明の直毛状のモノフ ントが本件各特許発明の化学繊維からなるウェーブ付きモノフィラメントに相当するとして,これを一致点とした審決の認定に誤りはない。 (ウ) 甲1発明の従来型フィラメントと本件各特許発明の直毛状のモノフィラメントとは相違するかについて甲1発明の直線的な合成フィラメントは,本件各特許発明の直毛状のフィラメントに相当することは原告も認めており,両者は,本件各特許発明においては「モノ」フィラメントであるのに対し,甲1発明においてはそのような特定がない点のみが相違する。 また,本件訂正後の特許請求の範囲には,「直毛状のモノフィラメント」を限定する記載はなく,本件明細書には,「直毛状のモノフィラメント」を定義づける記載はないから,ウェーブを有しない直線的な形状のモノフィラメントをいうにすぎない。また,本件明細書の段落【0006】の記載によれば,刷毛部のまとまりの良さを維持しつつ含み量を多くすることは,ウェーブ付きモノフィラメントと直毛状のモノフィラメントとが相まって達成されるとしても,それは主観的な意図にすぎず,「直毛状のモノフィラメント」を限定するものではない。両者が相違するとの原告の主張は,本件明細書の記載に基づくものではない。 したがって,本件各特許発明の「直毛状のモノフィラメント」は,フィラメント- 16 -としては甲1発明の合成捲縮フィラメントと異ならず,甲1発明の従来型フィラメントが本件各特許発明の化学繊維からなる直毛状のモノフィラメントに相当するとして,これを一致点とした審決の認定に誤りはない。 イ本件各特許発明と甲1発明の相違点についての容易想到性判断の誤りに対し(ア) 原告は,技術的意義の異なる甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合と本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合とを比較し,前者が後者の いての容易想到性判断の誤りに対し(ア) 原告は,技術的意義の異なる甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合と本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合とを比較し,前者が後者の範囲内にあるとの理由で,本件特許発明1と甲1発明との相違点2は実質的な相違点ではないと判断した審決は誤りであり,同様に,甲1発明と本件特許発明2との相違点に関する審決の判断も誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 上記ア(イ) のとおり,甲1発明の合成捲縮フィラメントと本件各特許発明におけるウェーブ付きモノフィラメントの技術的意義は異ならない。 また,甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合と本件各特許発明におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合の技術的意義も同じである。すなわち,本件訂正後の特許請求の範囲には「混合割合」を限定する記載はなく,本件明細書には「混合割合」を定義づける記載はない。本件明細書の段落【0006】には,混合割合を10%~40%とする技術的意義として,刷毛部のまとまりの良さを維持しながら,含み量を多くすることができるとの記載があるが,「混合割合」を限定するものではない。そうすると,本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントの混合割合は,含み性とまとまり性とを同時に達成するためのものであるとの解釈に基づく原告の主張は,本件明細書の記載に基づくものではなく,本件各特許発明の「混合割合」の意義は,甲1発明の「混合割合」の意義と異ならない。 なお,まとまり性と塗料の含み性を両方同時に達成するという課題は本件特許の出願前から公知であり,そのような課題を解決するためにウェーブ付きフィラメントの混合割合を特定の数値範囲内とすることも,本件特許の出願前から公知である(甲10の【0005】,【0012】,甲11 の出願前から公知であり,そのような課題を解決するためにウェーブ付きフィラメントの混合割合を特定の数値範囲内とすることも,本件特許の出願前から公知である(甲10の【0005】,【0012】,甲11の【0007】,【0013】)- 17 -から,上記の点は,本件各特許発明の容易想到性を否定する考慮要素にならない。 (イ) 原告は,甲10には,「筆穂1に含まれる小径のストレートな筆毛3及びクリンプを有する筆毛4の太さ(直径)を同じにする」という技術的事項が開示されていないことを前提として,甲10記載の発明に,相対的に細い直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとの太さを同じにしなければならない技術的必然性がなく,甲1発明に甲10記載の発明を組み合わせることによって,本件特許発明1と甲1発明との相違点3について,本件特許発明1のように構成することは当業者が容易に想到できたと判断し,また,本件特許発明2と甲1発明の相違点についても同様であるとした審決の判断は誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 まず,甲10には,「筆穂1に含まれる小径のストレートな筆毛3及びクリンプを有する筆毛4の太さ(直径)を同じにする」との技術が開示されていると解すべきである。すなわち,甲10の段落【0011】,【0012】には,小径の筆毛3,クリンプを有する筆毛4について,好ましい直径の範囲はそれぞれ2~4ミル,2~5ミルであって,略同じであること,筆毛3,筆毛4について,2ミル以上の直径が好ましい理由はいずれも粗い毛が混入することを防ぐためであり,4又は5ミル以下の直径が好ましい理由は,いずれも穂先が割れることを防ぐためであると記載されている。したがって,筆毛3及び筆毛4の各直径について同じ目的で同程度の数値範囲から選択すれば,両者の直径 4又は5ミル以下の直径が好ましい理由は,いずれも穂先が割れることを防ぐためであると記載されている。したがって,筆毛3及び筆毛4の各直径について同じ目的で同程度の数値範囲から選択すれば,両者の直径が同じ値になるといえる。 また,本件訂正が認められたことからも,上記技術的事項は甲10に開示されているというべきである。すなわち,甲10には,小径の筆毛3及びクリンプを有する筆毛4の直径に関して,好ましい数値範囲,その数値範囲が好ましい理由(技術的意義)及び実施例における具体的な数値例が記載されており,本件明細書では,各種モノフィラメント又は各種筆毛の直径に関して数値例が記載されているにすぎないのに比較して,甲10ではさらに好ましい数値範囲,その数値範囲の技術的意義についても記載されている。本件訂正においては,「上記直毛状のモノフィラメ- 18 -ントは,ウェーブ付きモノフィラメントよりも太い直毛状のモノフィラメントと,上記ウェーブ付きモノフィラメントと同じ太さの直毛状のモノフィラメントからなる」という事項が,本件明細書に記載した事項の範囲内であると認められたのであり,本件明細書よりも筆毛2,3の直径についてより詳細に記載されている甲10には,当然,上記事項が開示されているというべきである。 したがって,原告の主張は失当である。 (2) 取消事由2(本件各特許発明が甲2発明等から容易想到であるとした判断の誤り)に対しア原告は,甲2発明における捲縮フィラメントの混合割合は当該刷毛のまとまり性を課題としない比率であり,刷毛のまとまり性を課題とした本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合とは技術的意義が異なる,ウェーブ付きモノフィラメントの混合割合10%~40%は含み性とまとまり性とを同時に達成するための混合割合の折 た本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合とは技術的意義が異なる,ウェーブ付きモノフィラメントの混合割合10%~40%は含み性とまとまり性とを同時に達成するための混合割合の折衷点であり技術的必然性を有するとして,甲2発明の混合割合の数値範囲を適宜好適化することにより,本件特許発明1と甲2発明との相違点2について,本件特許発明1のように構成することは当業者が適宜なし得たとした審決の判断は誤りであり,同様に,本件特許発明2についての容易想到性の判断も誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 甲2発明における混合割合は,混合合成フィラメントにおける合成捲縮フィラメントの割合を意味し,甲2発明の混合合成フィラメント,合成捲縮フィラメントは,それぞれ,本件特許発明1の刷毛部,ウェーブ付きフィラメントに相当する。一方,上記(1)イ(ア)のとおり,本件特許発明1の「混合割合」が,刷毛のまとまり性を課題としている旨の原告の主張は,本件明細書の記載に基づくものとはいえない。 また,甲2には,合成捲縮フィラメントの混合割合として,「約10重量%~90重量%」のみならず,合成捲縮フィラメントの好ましい混合割合を,「約20重量%~80重量%」,「約30重量%~70重量%」とすることも記載されており- 19 -(甲2訳文3頁7ないし10行),混合割合が「20重量%」又は「30重量%」の場合,本件特許発明1の混合割合「10%~40%」の範囲内にあるから,相違点2に係る本件特許発明1の構成に関する審決の容易想到性の判断に誤りはない。 さらに,本件特許の出願経過からみても,本件特許発明1の混合割合を「10%~40%」としたことに技術的必然性があるとはいえない。すなわち,願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(乙2 さらに,本件特許の出願経過からみても,本件特許発明1の混合割合を「10%~40%」としたことに技術的必然性があるとはいえない。すなわち,願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(乙2)には,混合割合として「10%~80%」と記載されるのみであり,混合割合の上限として「40%」とすることやその技術的意義は記載されていない(乙2の【0018】,【0019】)。 平成22年1月7日付け手続補正書(乙3)により,「10%~80%」が「10%~40%」に修正されたが,混合割合と作用効果の関係についての記載は,「80%」が「40%」に修正されたほかは,そのまま流用されているから,本件特許発明1において,ウェーブ付きモノフィラメントの混合割合の上限値を「40%」とすることに格別の技術的意義があるとはいえない。 イ原告は,本件特許発明1と甲2発明との相違点3について,甲2発明及び甲10ないし甲12記載の発明のいずれにも,相対的に細い直毛状のフィラメントとウェーブ付きフィラメントとの太さを同じにするという技術思想が開示されておらず,甲2発明及び甲10ないし甲12記載の発明から本件特許発明1に想到する動機付けがなく,甲2発明に甲10ないし甲12記載の発明を組み合わせることによって,当業者が容易に想到できるとした審決の判断は誤りであり,同様に,本件特許発明2についての容易想到性の判断も誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 甲2には,「従来型合成フィラメント及び合成捲縮フィラメントの直径を同じにする」という技術が開示されている。すなわち,甲2には,「好ましい他の実施形態では,フィラメント22は,.015インチの基部直径と,.010インチの先端直径を有し,各直径の許容差がそれぞれ±15%である。」との記載があり(甲 る。すなわち,甲2には,「好ましい他の実施形態では,フィラメント22は,.015インチの基部直径と,.010インチの先端直径を有し,各直径の許容差がそれぞれ±15%である。」との記載があり(甲2訳文3頁12,13行),合成捲縮フィラメントの基部直径及び先端直径の数値- 20 -例の組合せが無数に存在することを考えると,好ましい一実施形態として例示された数値例が,代表的な商業用フィラメントの基部直径及び先端直径と完全に同じであることは偶然ではなく,合成捲縮フィラメントの寸法を,従来型合成フィラメントとして多用されている商業用フィラメントの寸法と敢えて同じにしたと理解する方が自然である。 また,本件訂正が認められたことからも,上記技術的事項は甲2に開示されているといえる。すなわち,甲2には,従来型合成フィラメント及び合成捲縮フィラメントの直径に関して,具体的な数値例,好ましい数値範囲,代表的な商業用フィラメントの数値例が記載されるのに対し,本件明細書には,各種モノフィラメントの直径に関して,数値例が記載されるのみである。本件訂正により,「上記直毛状のモノフィラメントは,ウェーブ付きモノフィラメントよりも太い直毛状のモノフィラメントと,上記ウェーブ付きモノフィラメントと同じ太さの直毛状のモノフィラメントからなる」との技術的事項が,本件明細書に記載した事項の範囲内であると認められたことに照らすと,本件明細書よりも各種フィラメントの直径についてより詳細に記載される甲2には,「従来型合成フィラメント及び合成捲縮フィラメントの直径を同じにする」との技術的事項が開示されているというべきである。 したがって,審決の容易想到性の判断に誤りはない。 (3) 取消事由3(本件特許発明1の容易想到性判断に当たり,商業的成功を考慮しなかった誤り)に対し 術的事項が開示されているというべきである。 したがって,審決の容易想到性の判断に誤りはない。 (3) 取消事由3(本件特許発明1の容易想到性判断に当たり,商業的成功を考慮しなかった誤り)に対し原告は,本件特許発明1の容易想到性について,発明の実施品についての商業的な成功によって基礎づけられるべきであり,審決は,この点の考慮を欠いて容易想到性を否定した誤りがある旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 原告主張の商業的な成功が,本件特許発明1の技術的特徴に基づくものであるとは認められない。また,本件特許発明1は,甲1発明及び甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,甲2発明及び周知- 21 -の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,仮に,原告の製品が商業的成功を収めていたとしても,本件特許発明1が容易想到であるとした審決の判断を左右しない。 (4) 取消事由4(本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の要件を満たさないとした判断の誤り)に対し原告は,本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの構成比は,本数比と考えるべきもので,本数比であるかどうか不明確であるとした審決の判断は誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 まず,「%」は,数の比を示すことが原則であるとする原告の主張は根拠がない。 刷毛及び筆毛の技術分野において,刷毛部の毛の割合について,本数,体積,重量のいずれを基準にする場合も実際に存在し(甲13ないし甲16,甲19),刷毛等に用いられる毛は,合成樹脂製のフィラメントは,通常,重量(kg)単位や長さ(m),束などで計数されて流通,取引されており,獣毛に関しても,重量単位で取引されることが記載さ 甲16,甲19),刷毛等に用いられる毛は,合成樹脂製のフィラメントは,通常,重量(kg)単位や長さ(m),束などで計数されて流通,取引されており,獣毛に関しても,重量単位で取引されることが記載されている(乙4)。また,刷毛部の毛は微細であり,1つの刷毛に使用される毛の本数が膨大であることを考慮すれば,当業者において,混合割合についての認識が本数比で共通しているとはいえない。さらに,出願経過において,原告は,混合割合は重量比の意味であることを積極的に主張した意見書(乙8)を提出している。 したがって,本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの構成比は,本数比であるかどうか不明確とした審決に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の取消事由1は理由がなく,本件各特許発明が甲1発明及び甲10に記載された発明に基づいて容易に発明することができる旨判断した審決に取り消すべき違法はないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 取消事由1(本件各特許発明が甲1発明等から容易想到であるとした判断の- 22 -誤り)について(1) 本件各特許発明と甲1発明の一致点の認定の誤り及び相違点の看過について原告は,審決が,甲1発明の認定を誤り,「刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む」ことを一致点として認定し,相違点を看過した誤りがある旨主張する。 しかし,原告の主張は以下のとおり失当である。 ア認定事実甲1(訳文1ないし4頁)には次の記載がある。 <技術分野>本発明は,・・・特に獣毛等の天然の毛と合成フィラメントを利用して,塗料含みや吐き出しが良好で,表面適用範囲に優れている塗装用刷毛に関する。 <背景技術>・・・豚毛は通常,先細になっ 術分野>本発明は,・・・特に獣毛等の天然の毛と合成フィラメントを利用して,塗料含みや吐き出しが良好で,表面適用範囲に優れている塗装用刷毛に関する。 <背景技術>・・・豚毛は通常,先細になっており,塗料の含み,吐き出し及び表面適用範囲が優れている。豚毛を含む塗装用刷毛を水性塗料に使用すると,豚毛が塗料から水分を吸収する為,腰が弱くなってしまう。・・・合成繊維毛は水分を吸収しない為,使用中に腰が弱くならない。しかし,合成繊維毛は豚毛に比べて塗料の含み・吐き出しの点で劣っているため,表面適用範囲が小さい。 この為,長手方向の軸に沿ってウェーブ状やしわ状の構造を有する合成フィラメントを含み,かつ,この合成フィラメントに天然毛を組み合わせて,水性塗料に使用したときに優れた効果を発揮する塗装用刷毛の開発が望まれるようになってきている。 <発明の概要>本発明は,天然毛と長手方向の軸に沿ってウェーブ状やしわ形の構造を持った合成フィラメントとの混合物を含む塗装用刷毛を提供することで,天然毛,特に豚毛の使用を使用した刷毛を水性塗料とともに使用することに関連する問題やその他の問題を解決する。天然毛と合成捲縮フィラメントを混合することによって,塗装用- 23 -刷毛は,水性塗料に使用する際に腰が弱くならず,良好な塗料の含み・吐き出し特性を有し,かつ,綺麗な仕上がりとともに優れた表面適用範囲を発揮する。・・・本発明のさらなる目的は,天然毛と合成捲縮フィラメントとを含む塗装用刷毛において,合成捲縮フィラメントは,長手方向の軸に沿ってウェーブ状の構造を有する塗装用刷毛を提供することである。 本発明のもう一つの目的は,塗装の含み・吐き出し特性が良好で,表面適用範囲が優れている塗装用刷毛を提供することである。・・・<好ましい実施形態の説明>・ る塗装用刷毛を提供することである。 本発明のもう一つの目的は,塗装の含み・吐き出し特性が良好で,表面適用範囲が優れている塗装用刷毛を提供することである。・・・<好ましい実施形態の説明>・・・混合毛14は,複数の天然毛20と複数の合成捲縮フィラメント22を備えている。天然毛20には,豚毛,馬毛,リス毛,クロテン毛等がある。・・・混合毛は,少なくとも20重量%の天然毛と,少なくとも20重量%の合成捲縮フィラメントを含むことが好ましい。さらに,混合毛は,よじれや変形が意図的に施されず,長手方向の軸に沿って特徴的なウェーブ状の構造を有しないポリアミド(ナイロンを含む),ポリエステルまたはポリウレタンのフィラメントのような他種のフィラメントを任意に含んでもよい。これら従来型合成フィラメントは,長手方向の軸に沿って実質的に直線的である。 好ましい一例では,混合毛14は,40~60重量%の天然毛を含み,残りを合成捲縮フィラメント22とする。混合毛14は,約50重量%の天然毛と約50%の合成捲縮フィラメントを含んでいることが多くの用途において望ましい。 合成捲縮フィラメント22は,従来の常法によれば,ポリブチレンテフタレートのようなポリエステル樹脂から押し出される。・・・<特許請求の範囲>1.柄と,前記柄の一端から延びる混合毛を備える塗装用刷毛であって,前記混合毛は天然毛と合成樹脂製の捲縮フィラメントとを含み,前記合成捲縮フィラメントが,その長手方向の軸に沿って振幅および頻度がウェーブ状の構造を有する塗装用刷毛。・・・- 24 -9.請求項1に記載の塗装用刷毛において,前記混合毛はさらに,長手方向の軸に沿って振幅や頻度がウェーブ状の構造を与えるクリンプが形成されていない合成フィラメントを含む塗装用刷毛。 イ判断(ア) 上 求項1に記載の塗装用刷毛において,前記混合毛はさらに,長手方向の軸に沿って振幅や頻度がウェーブ状の構造を与えるクリンプが形成されていない合成フィラメントを含む塗装用刷毛。 イ判断(ア) 上記ア認定の事実によれば,甲1記載の塗装用刷毛は,柄と,柄の一端から延びる天然毛と合成樹脂製の捲縮フィラメントを含む混合毛を備え,その混合毛は,少なくとも20重量%の天然毛と,少なくとも20重量%の合成捲縮フィラメントを含むことが好ましいとされ,長手方向の軸に沿ってウェーブ状の構造を有しない実質的に直線的であるポリアミド等の従来型合成フィラメントを任意に含んでもよいことが示される一方,従来型合成フィラメントが含まれないほうが好ましい旨は記載されていない。そうすると,甲1には,天然毛と少なくとも20重量%の合成捲縮フィラメントとウェーブ状の構造を有しない実質的に直線的な合成フィラメントを含む塗装用刷毛が記載されているということができる。したがって,審決が,甲1発明について,「柄と,前記柄の一部から延びる混合毛を備える塗装用刷毛であって,前記混合毛は天然毛と少なくとも20重量%の合成樹脂製の捲縮フィラメントとウェーブ状の構造を有しない実質的に直線的な合成フィラメントを含む塗装用刷毛。」と認定した点に誤りはない。 また,甲1発明の「合成樹脂製の捲縮フィラメント」は,本件各特許発明の「化学繊維からなるウェーブ付き」「フィラメント」に相当し,甲1発明の「ウェーブの構造を有しない実質的に直線的な合成フィラメント」が,本件各特許発明の「化学繊維からなる直毛状の」「フィラメント」に相当する(当事者間に争いはない。)。したがって,審決が,甲1発明と本件各特許発明の一致点について,「刷毛部を有する塗装用刷毛であって,刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメント ィラメント」に相当する(当事者間に争いはない。)。したがって,審決が,甲1発明と本件各特許発明の一致点について,「刷毛部を有する塗装用刷毛であって,刷毛部に,化学繊維からなる直毛状のフィラメントと,化学繊維からなるウェーブ付きフィラメントを含む塗装用刷毛。」と認定した点に誤りはなく,また,相違点の看過もない。 (イ) 原告は,甲1発明においては,天然毛と合成捲縮フィラメントとの組み合わ- 25 -せが必須であり,合成捲縮フィラメントと直線的な合成フィラメントのみの組み合わせはあり得ない旨主張する。しかし,原告の主張は,失当である。すなわち,甲1発明についての審決の認定内容は,「混合毛は天然毛と・・・合成樹脂製の捲縮フィラメントとウェーブ状の構造を有しない実質的に直線的な合成フィラメントを含む」であり,「天然毛と合成捲縮フィラメントとの組み合わせ」に限定したものではないから,原告の主張は前提を欠き,その主張自体失当である。 また,原告は,甲1発明の合成捲縮フィラメントと本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントが同じではない,甲1発明の従来型フィラメントと本件各特許発明の直毛状のモノフィラメントとは,機能,目的において,相違する旨主張する。 しかし,原告の上記主張も,以下のとおり失当である。 上記(ア) のとおり,甲1発明の合成捲縮フィラメントが本件各特許発明のウェーブ付きフィラメントに相当し,甲1発明の従来型フィラメントが,本件各特許発明の直毛状のフィラメントに相当する(当事者間に争いはない)。上記ア記載のとおり,甲1には,発明の機能,目的として,「水性塗料に使用する際に腰が弱くならず,良好な塗料の含み・吐き出し特性を有し,かつ,綺麗な仕上がりとともに優れた表面適用範囲を発揮する」ことが示されているものの,それ以外の機能,目的が 的として,「水性塗料に使用する際に腰が弱くならず,良好な塗料の含み・吐き出し特性を有し,かつ,綺麗な仕上がりとともに優れた表面適用範囲を発揮する」ことが示されているものの,それ以外の機能,目的が排除されることを示唆する記載はないことに照らすと,原告の主張を採用することはできない。 (2) 本件各特許発明と甲1発明の相違点についての容易想到性判断の誤りについてア相違点2に係る構成の容易想到性判断の誤りについて原告は,本件特許発明1と甲1発明の相違点2について,甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合20重量%が,本件特許発明1におけるウェーブ付きモノフィラメントの混合割合10%~40%の範囲内にあるから,実質的な相違点ではないとした審決の判断は誤りであり,また,甲1発明と本件特許発明2との相違点に関する審決の判断も誤りである旨主張する。そして,原告は,その理由として,①- 26 -甲1発明の合成捲縮フィラメントと本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントとは,発明における技術的意義が異なること,②甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合は,天然毛の腰の弱さを補うための比率であるのに対し,本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントの混合割合は,水性塗料の含み性と塗装作業において求められるまとまり性を同時に達成するための比率である点で相違することを挙げる。 しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用の限りでない。 すなわち,上記(1)ア認定のとおり,甲1は,合成捲縮フィラメントの混合割合について,天然毛の腰の弱さを補うという目的のみに限定されるものではないから,本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントの混合割合と技術的意義が異なるとはいえない。また,甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合(少なくとも20重量%)の のみに限定されるものではないから,本件各特許発明のウェーブ付きモノフィラメントの混合割合と技術的意義が異なるとはいえない。また,甲1発明の合成捲縮フィラメントの混合割合(少なくとも20重量%)の数値範囲において,水性塗料の含み性とまとまり性を同時に達成するよう適宜の工夫することは,当然に考慮される事項であると理解される。 したがって,原告の主張は,採用の限りでない。 イ相違点3に係る構成の容易想到性判断の誤りについて原告は,本件特許発明1と甲1発明との相違点3について,甲1発明に甲10記載の発明を組み合わせることによって当業者が容易に想到できたとした審決の判断は誤りであり,また,本件特許発明2と甲1発明の相違点3についても同様であるとした審決の判断は誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は失当である。 (ア) 認定事実甲10には次の記載がある。 【0001】【産業状の利用分野】本考案は,画筆,書道用毛筆,筆ペンなどの筆穂に関する。 【0005】【考案が解決しようとする課題】・・・本考案は,・・・筆穂のまとまり,液の保持性,筆記時のタッチの問題を- 27 -解決することを課題とするものである。 【0007】・・・本考案の筆穂1は,先端をテーパー化した合成樹脂製の筆毛よりなるものであって,筆毛として,径の異なる2種のストレートな筆毛2,3と,クリンプを有する筆毛4と,断面が異形な筆毛5とを少なくとも用いている。 【0011】径の異なる2種のストレートな筆毛の使用目的は,大径のストレートな筆毛2は筆記時の腰安定の目的のため使用するもので,又,小径のストレートな筆毛2(判決注筆毛3の誤記と認める。)は穂先のまとまりの目的のため使用するものである。その直径としては,大径の筆毛2は8~14ミル程度が好ましく, 目的のため使用するもので,又,小径のストレートな筆毛2(判決注筆毛3の誤記と認める。)は穂先のまとまりの目的のため使用するものである。その直径としては,大径の筆毛2は8~14ミル程度が好ましく,小径の筆毛3は2~4ミル程度が好ましい。その理由は,・・・小径の筆毛2(判決注前同様。)の直径が2ミルに満たないとテーパー加工上テーパーが形成されていない,粗い毛が混入することがあり,・・・直径が4ミルを超えると筆記時に筆穂が穂先割れすることがあるからである。・・・【0012】クリンプを有する筆毛4は,穂先の開き及び液の保持性向上の目的のため使用するものであって,・・・その直径は2~5ミル程度が好ましい。その理由は,直径が2ミルに満たないとテーパー加工上テーパーが形成されていない,粗い毛が混入することがあり,直径が5ミルを超えると穂先がバラケたり割れたりすることがあるからである。・・・【0014】本考案の筆穂は,上記4種類の筆毛を必須要件とするものであるが,必要に応じこれら筆毛に他の種類の合成樹脂製筆毛を加えたり,獣毛を加えたりすることもできる。・・・【0015】【実施例】先端をテーパー化し,直径が3ミルであり,長さが35~65mmのストレート- 28 -な6,12-ナイロン製の筆毛を混毛したもの17重量%と,先端をテーパー化し,直径が12ミルであり,長さが35~65mmのストレートな6,12-ナイロン製の筆毛を混毛したもの17重量%と,先端をテーパー化し,直径が3ミルであり,クリンプ状態が平均3.5個/1cmであり,長さが35~65mmである6,12-ナイロン製のクリンプを有する筆毛を混毛したもの33重量%と,先端をテーパー化し,直径が2.5ミルであり,長さが35~65mmの断面が異形(十字状)の6,12-ナイロン 5~65mmである6,12-ナイロン製のクリンプを有する筆毛を混毛したもの33重量%と,先端をテーパー化し,直径が2.5ミルであり,長さが35~65mmの断面が異形(十字状)の6,12-ナイロン製の筆毛を混毛したもの33重量%とを十分に混毛した後,その後端を熱で溶着して束となし,長さ65mm,太さ(筆穂を挿入する軸筒8の口部内径に相当する太さ)10.5mmφの筆穂を得た。・・・(イ) 判断上記(ア) 認定の事実によれば,甲10記載の発明は,筆穂のまとまり,液の保持性,筆記時のタッチの問題の解決を課題とし,先端をテーパー化した合成樹脂製の筆毛よりなるものであって,径の異なる2種のストレートな筆毛2,3,クリンプを有する筆毛4,及び,断面が異形な筆毛5とを少なくとも用いるものであること,大径のストレートな筆毛2は筆記時の腰安定,小径のストレートな筆毛3は穂先のまとまり,クリンプを有する筆毛4は穂先の開き及び液の保持性向上というそれぞれの目的のため使用するものであること,直径は,小径のストレートな筆毛3は2~4ミル程度,クリンプを有する筆毛4は2~5ミル程度が好ましいこと,その理由は,小径の筆毛3の直径が2ミルに満たないとテーパー加工上テーパーが形成されていない粗い毛が混入することがあり,直径が4ミルを超えると筆記時に筆穂が穂先割れすることがあるからであり,クリンプを有する筆毛4の直径が2ミルに満たないとテーパー加工上テーパーが形成されていない粗い毛が混入することがあり,直径が5ミルを超えると穂先がバラケたり割れたりすることがあるからであること,実施例として,相対的に小径のストレートな筆毛とクリンプを有する筆毛の直径がいずれも3ミルである筆穂が示されていることが認められる。 以上のとおり,相対的に小径のストレートな筆毛とクリンプを有 と,実施例として,相対的に小径のストレートな筆毛とクリンプを有する筆毛の直径がいずれも3ミルである筆穂が示されていることが認められる。 以上のとおり,相対的に小径のストレートな筆毛とクリンプを有する筆毛は,直- 29 -径が同程度とされ,そのような直径とする理由も同様であり,両者を異なる直径とすることが好ましいとの示唆はなく,両者の直径が同じである実施例が示されているのであるから,甲10には,小径のストレートな筆毛3及びクリンプを有する筆毛4の太さ(直径)を同じにすることも含めて,両者を同程度とする技術が開示されているというべきである。 したがって,甲10に,上記技術が開示されていることを前提として,本件各特許発明と甲1発明との相違点3について,甲1発明に甲10記載の発明を組み合わせることによって当業者が容易に想到できたとした審決の判断に誤りはない。原告の主張は失当である。 2 小括以上のとおり,原告主張の取消事由1には理由がなく,本件各特許発明が甲1発明及び甲10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの審決の判断に誤りは認められない。本件特許は特許法123条1項2号に該当するから,その余の点について判断するまでもなく,本件特許を無効とした審決の判断に誤りはない。なお,原告は,本件特許発明1に係る発明の実施品の商業的成功により,容易想到性を否定すべきであるある旨主張するが(取消事由3),上記1のとおり,本件特許発明1が公知の技術から容易に想到されるものと認められる本件において,特許発明の実施品が商業的に成功したことによって,上記の判断を左右するとすることはできず,この点の原告の主張は,採用できない。 原告は,他にも縷々主張するが,いずれも採用の限りではない。 第5 結論よって,原告 業的に成功したことによって,上記の判断を左右するとすることはできず,この点の原告の主張は,採用できない。原告は,他にも縷々主張するが,いずれも採用の限りではない。 第5 結論 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官池下朗 裁判官武宮英子
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