令和2年12月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第15512号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和2年9月15日判決 原告株式会社エヌ・エス・ピー 同訴訟代理人弁護士川岸弘樹 同訴訟代理人弁理士廣江武典 同服部素明 同補佐人弁理士中山公博 同廣江政典 同橋本哲 同吉田哲基 同谷口直也 被告株式会社東海建商 同訴訟代理人弁護士加藤洪太郎 同夏目武志 同補佐人弁理士山田博司 同藤川敬知 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目記載1及び2の金具を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録記載1及び2の金具を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1188万円及びこれに対する令和元年6月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は 録記載1及び2の金具を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1188万円及びこれに対する令和元年6月22日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,発明の名称を「基礎コンクリート形成用型枠の支持具」とする特許に係る特許権者であるところ,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,同目録記載1の製品を「被告製品1」と,同目録記載2の製品を「被告製品2」とい い,これらを併せて「各被告製品」という。)は,上記特許に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張している。 そして,本件は,原告が,被告による各被告製品の製造販売は,上記特許権を侵害すると主張して,被告に対し,①特許法(以下「法」という。)100条1項,2項に基づき,各被告製品の製造,販売等の差止め及び各被告製品の廃 棄,並びに②民法709条,法102条2項に基づき,損害賠償金1188万円及びこれに対する令和元年6月22日(不法行為後である訴状送達日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番 号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。)(1) 原告の特許権原告は,発明の名称を「基礎コンクリート形成用型枠の支持具」とする特許権(特許第4446127号。請求項の数は6である。以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。原告は,本件特許につき,平成1 9年5月29日に特許出願をし,同22年1月29日に,その設定登録を受 けた。 (2) 本件発明本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載は,別紙 き,平成1 9年5月29日に特許出願をし,同22年1月29日に,その設定登録を受 けた。 (2) 本件発明本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載は,別紙特許公報の該当部分に記載されたとおりである(そのうち請求項1の記載を,以下「本件特許請求の範囲」といい,これに係る発明を「本件発明」という。)。 (3) 構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などのようにいう。)。 A 基礎コンクリート(30)を形成するために使用される型枠(20)の位置を固定するための支持具(10)であって, B 全体を薄板によって形成するとともに,C 前記型枠(20)の側端面に当接される基部(11)と,D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)と,E 前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角 部(22)に係止される内側係止部(13)と,F 前記基部(11)の内側端部に一体化されて,前記基礎コンクリート(30)に埋設されることになるアンカー部(14)とを備えたものとし,G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形 成したことを特徴とするH 型枠(20)のための支持具(10)(4) 被告の行為等ア被告は,遅くとも平成21年9月ころから本訴提起時に至るまで,被告製品1を,遅くとも平成23年9月ころから本訴提起時に至るまで,被告 製品2を,そ 0)(4) 被告の行為等ア被告は,遅くとも平成21年9月ころから本訴提起時に至るまで,被告製品1を,遅くとも平成23年9月ころから本訴提起時に至るまで,被告 製品2を,それぞれ販売している。 イ各被告製品は,本件発明の構成要件A,B,C,F,G,Hをいずれも充足する。 2 争点(1) 各被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か(構成要件D,Eの充足性,争点1) (2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)ア無効理由1(乙4記載の発明を主引例とする進歩性の欠如)の有無(争点2-1)イ無効理由2(サポート要件違反)の有無(争点2-2)(3) 損害の発生の有無及び損害額(争点3) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(各被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か〔構成要件D,Eの充足性〕)[原告の主張]次のとおり,各被告製品は,構成要件D及びEを充足する。 ア本件特許請求の範囲における「係止」とは,水平方向に固定がなされれば足り,必ずしも上下方向についてまで移動不可能となるように固定することは必須ではなく,それ自体の自重等では容易に落下することがないように保持がなされているものを意味するものと解すべきである。かかる解釈は,本件発明の明細書中の記載(【0011】,【0012】,【0016】, 【0019】,【0021】ないし【0023】)を考慮してなされるものであり,一般的な技術用語の使用例にも合致する。 イそして,各被告製品について,クリップ等は用いなくても,水平方向については固定されていることはもちろんのこと,上下方向についても,それ自体の自重 ,一般的な技術用語の使用例にも合致する。 イそして,各被告製品について,クリップ等は用いなくても,水平方向については固定されていることはもちろんのこと,上下方向についても,それ自体の自重等では容易に落下することがないよう保持されている。そこ で,各被告製品は,構成要件D「外側係止部」及び同E「内側係止部」を 備えている。 [被告の主張]次のとおり,各被告製品は,構成要件D及びEを充足しない。 ア本件発明における「係止」の意義は,「係わり合って止まること。」という一般的な定義との関係,及び本件発明の明細書に記載された,型枠の外 側への開きを防止するという作用効果との関係からすれば,「支持具が型枠に対して内外方向及び上下方向に移動不可能になるように固定されること」と解するのが妥当である。 イそして,各被告製品は突起部を係合してもそれだけでは上下に移動可能であるから,「係止」されているとはいえない。 (2) 争点2-1(無効理由1(乙4記載の考案を主引例とする進歩性の欠如)の有無)[被告の主張]本件特許権には,次のアないしオのとおり,乙4に記載された考案を主引例とする進歩性欠如(法29条2項)の無効理由がある。 ア主引例の構成本件特許出願前に頒布された刊行物である乙4に記載された考案(以下「乙4考案」という。)の構成は,本件発明の構成要件に対応させて分説すると,次のとおりとなる。 A 基礎コンクリート(C,BC)を形成するために使用される型枠(1) の位置を固定するための支持具(8)であって,B 全体を薄板(9)によって形成するとともに,C 前記型枠(1)の側端面に当接される基部( 成するために使用される型枠(1) の位置を固定するための支持具(8)であって,B 全体を薄板(9)によって形成するとともに,C 前記型枠(1)の側端面に当接される基部(9の幅狭となる他端側)と,F 前記基部(9の他端側)の内側端部に一体化されて,前記基礎コンク リート(C,BC)に埋設されることになるアンカー部(9の一端側) とを備えたものとし,G さらに,前記基部(9の他端側)とアンカー部(9の一端側)との間に,このアンカー部(9の一端側)から前記基部(9の他端側)を切断するための切り欠き(13a,13b)を形成したことを特徴とするH 型枠(1)のための支持具(8)。 イ本件発明と主引例との対比本件発明と主引例は,上記アのAないしC,F及びHの点で一致し,同Gについては,「G’ さらに,前記基部とアンカー部との間に,このアンカー部から前記基部を分離するための分離部を形成したことを特徴とする」の限度で一致する。 他方で,本件発明は,「D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E 前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」を備えているが,乙4考案はこれらを備えていない点で相違する(以下,これを「相違点1」と いう。)。 また,一致点の「G’ さらに,前記基部とアンカー部との間に,このアンカー部から前記基部を分離するための分離部D’を形成したことを特徴とする」に関し,本件発明は,「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前 間に,このアンカー部から前記基部を分離するための分離部D’を形成したことを特徴とする」に関し,本件発明は,「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を 折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」のに対し,乙4考案は,「G1 さらに,前記基部(9の他端側)とアンカー部(9の一端側)との間に,このアンカー部(9の一端側)から前記基部(9の他端側)を切断するための切り欠き(13a,13b)を形成したことを特徴とする」ものである点で相違する(以下,これを「相違点2」という。)。 ウ相違点1に係る公知技術等 本件特許出願前に頒布された刊行物である乙5に記載された発明(以下「公知技術2」という。)は,本件発明の「D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E 前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」を備 えている。 なお,コンクリート型枠の支持具において外側係止部及び内側係止部を設ける点は,本件特許出願前に頒布された刊行物である乙6ないし10の各記載(以下,乙6に記載された発明を「公知技術3」,乙7に記載された発明を「公知技術4」,乙8に記載された発明を「公知技術5」,乙9に記 載された発明を「公知技術6」及び乙10に記載された発明を「公知技術7」という。),具体的には,乙6の5頁第18行ないし8頁第18行及び第1図ないし第8図,乙7の段落[0007]ないし[0010],図1及び図2,乙8の段落[0009]~[0013],図1及び図2,乙9の5頁第20行ないし6頁第11行 第18行ないし8頁第18行及び第1図ないし第8図,乙7の段落[0007]ないし[0010],図1及び図2,乙8の段落[0009]~[0013],図1及び図2,乙9の5頁第20行ないし6頁第11行及び図1ないし図3,並びに乙10の段落 [0013]ないし[0017]及び図1ないし図6から明らかなように,周知技術である。 エ相違点2に係る公知技術等公知技術2における「縦方向にミシン目状の分離部18」は,本件発明における「折取部(15)」に相当する以上,公知技術2は,本件発明の「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」構成を備えている。 なお,コンクリート型枠の支持具においてアンカー部から基部を折り取るための折取部を形成した点は,本件特許出願前に頒布された刊行物であ る乙11ないし14の各記載(以下,乙11に記載された発明を「公知技 術8」,乙12に記載された発明を「公知技術9」,乙13に記載された発明を「公知技術10」,及び乙14に記載された発明を「公知技術11」という。),具体的には,乙11の2頁第12行ないし6頁第6行及び第2図,乙12の1頁ないし4頁及び第1図ないし第3図,乙13の段落[0021]ないし[0024],[0036],図1,図2及び図24,並びに乙1 4の段落[0020]及び図2から明らかなように,周知技術である。 オ相違点1及び相違点2の容易想到性以上のとおり,相違点1及び相違点2に係る構成は,主引例である乙4考案と同じくコンクリート型枠を固定する技術である公知技術2に記載されており,また,相違点1に係る構成は,公知 容易想到性以上のとおり,相違点1及び相違点2に係る構成は,主引例である乙4考案と同じくコンクリート型枠を固定する技術である公知技術2に記載されており,また,相違点1に係る構成は,公知技術3,公知技術4,公 知技術5,公知技術6及び公知技術7にも記載されているとおり,周知技術であり,さらに,相違点2に係る構成は,公知技術8,公知技術9,公知技術10及び公知技術11にも記載されているとおり,周知技術である。 そして,公知技術2は,基礎コンクリートを形成するために使用される型枠を支持するための支持具に関する発明であり,本件発明及び乙4考案 と技術分野を同一にするものである。さらに,公知技術2は,上述した構成要件D,E,G以外の各構成要件,すなわち,「A 基礎コンクリートを形成するために使用される型枠(3)の位置を固定するための支持具(10)であって,」,「C 前記型枠(3)の側端面に当接される基部(12)と,」,「F 前記基部(12)の内側端部に一体化されて,前記基礎コンク リートに埋設されることになるアンカー部(11)とを備えたものとし,」,及び「H 型枠のための支持具(10)。」を備える点においても本件発明と共通する。そこで,公知技術2を乙4考案に適用することは,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に想到し得るものである。 また,本件発明により得られる作用効果も,乙4考案及び公知技術2か ら予測しうる範囲内のものであり,格別な作用効果を奏するものとはいえない。 従って,本件発明は,乙4考案に基づいて,特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 [原告の主 ない。 従って,本件発明は,乙4考案に基づいて,特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 [原告の主張]本件発明と乙4考案との一致点,相違点1及び相違点2については,概ね被告の主張するとおりであるが,次のアないしウのとおり,相違点1及び相違点2については容易想到ではないから,乙4考案を主引例とする進歩性欠如(法29条2項)の無効理由は認められないというべきである。 ア相違点1について(ア) 公知技術2(乙5)における規制部(17)及び規制部(15)は,それらによって型枠(3)を挟み込んで,中間巾止め金具(10)自体を型枠3に取り付けるための部分ではないから,本件発明における外側係止部(12)及び内側係止部(13)に相当しない。 公知技術2の技術分野は基礎コンクリートを1回打ち工法によって形成する技術であるのに対し,本件発明及び乙4考案は2度打ち工法によって形成する技術であって,両者は技術分野を異にすること,公知技術2において,規制部(17)及び規制部(15)を設けたのは,支持部(13)側が挟着部(12)側に下がって中間巾止め金具(10)が傾 き,型枠(6)を一定の高さに維持できないという,1回打ち工法特有の課題を解決するためであって,これを主引例である乙4考案において設ける動機付けがないことから,乙4考案に,公知技術2を組み合わせる動機付けがない。 (イ) 公知技術3(乙6)は,コンクリート型枠が断熱材や内外装材を兼ね る構造に関するものであって,本件発明や乙4考案とは,用途も想定さ れている部材の形状・大きさも,製品ジャンルも全く異なるものであるから )は,コンクリート型枠が断熱材や内外装材を兼ね る構造に関するものであって,本件発明や乙4考案とは,用途も想定さ れている部材の形状・大きさも,製品ジャンルも全く異なるものであるから,公知技術3と本件発明及び乙4考案とは技術分野が異なり,また,解決しようとする課題も異なるから,周知技術とはいえない。 (ウ) 公知技術4(乙7)は,一対の型枠の上端又は下端に取り付けられ,一対の型枠間の空間にコンクリートを打設したときに,コンクリートの 圧力で一対の型枠間の間隔が広がらないように,一対の型枠間の間隔を保持する間隔保持具に係るものであり,本件発明や乙4考案のように,2度打ち工法により立ち上がり部を施工するに際に外枠の傾倒を防止するための支持具ではない。そして,乙4の図5には従来技術として公知技術4のような間接保持具を使用しているが,段落【0004】及び【0 005】には,それでも2度打ち工法で立ち上がり部を施工する際に,外枠302の傾倒が生じることが記載されていることから,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)であれば,公知技術4は,2度打ち工法で立ち上がり部を形成する際に型枠の傾倒を防止するようには機能せず,本件発明及び乙4考案とは,その用途及 び機能において全く異なる発明であると理解するはずである。また,公知技術4は,そもそも型枠の側端面に取りつけられるものではない。そこで,公知技術4は,本件発明及び乙4考案と技術分野が関連しないから,本件発明及び乙4考案の技術分野における周知技術とはいえない。 (エ) 公知技術5(乙8)についても,公知技術4と同様の理由で本件発明 及び乙4考案と技術分野が関連しないから,本件発明及び乙4考案の技術分野における周知技術とは 術とはいえない。 (エ) 公知技術5(乙8)についても,公知技術4と同様の理由で本件発明 及び乙4考案と技術分野が関連しないから,本件発明及び乙4考案の技術分野における周知技術とはいえない。 (オ) 公知技術6(乙9)は,断面L字状の補強部を周縁に有するコンクリート型枠を,積上げ金具を介して積み上げて連結する構造に関し,当該コンクリート型枠を連結させるとともに容易に固定できるようした連結 構造を提供することを目的とするものであり,「係止部3a,3bを構成 する折曲片」及び「係止部3a,3bを構成する弾性体4」は,本件発明の「外側係止部(12)」及び「内側係止部(13)」に相当しない。 また,公知技術6は,本件発明や乙4考案のように,2度打ち工法により立ち上がり部を施工するに際に外枠の傾倒を防止するための支持具ではなく,主引例である乙4考案と公知技術6とは技術分野や解決しよう とする課題が異なるから,乙4考案に公知技術6を適用する動機付けはない。 (カ) 公知技術7(乙10)は,ベース上に垂直に立設されて上下に積まれた一対の型枠間に挟まれて配置され,型枠に挟まれた長方形の基部の両面側に曲設された上下各一対の支持片により上下一対の型枠を挟んで保 持する型枠支持具に関し,普通鋼板製であっても,コンクリート基礎の長期にわたる耐久性に悪影響を与えない型枠支持金具を提供することを目的としており,本件発明や乙4考案のように,2度打ち工法により立ち上がり部を施工するに際に外枠の傾倒を防止するための支持具ではない。そうすると,公知技術7は本件発明及び乙4考案と技術分野が関連 しないから,本件発明及び乙4考案の技術分野における周知技術とはいえない。 イ相違点2について( ではない。そうすると,公知技術7は本件発明及び乙4考案と技術分野が関連 しないから,本件発明及び乙4考案の技術分野における周知技術とはいえない。 イ相違点2について(ア) 公知技術2(乙5)の分離部(18)は,本件発明の「折取部(15)」には相当しない。 公知技術2(乙5)に記載されている支持具は,1回打ち工法において立ち上がり部の型枠を浮いた状態で支持するための外枠と内枠の両型枠をつなぐ形で設置されるものであって,相応の強度が必要とされる大型の部材であり,本件発明及び乙4考案において想定される支持具とは使用場面も大きさも全く異なり,2度打ち工法特有の問題を解決するた めの乙4考案と,1回打ち工法を前提とする公知技術2とは技術分野も 解決すべき課題も異なるものであって,公知技術2を主引例である乙4考案に適用する動機付けがない。 (イ) 公知技術8(乙11)は,建築物の基礎コンクリート型枠装置に関するものであり,公知技術9(乙12)は下部の型枠と上部の型枠との間に取り付けて型枠の設置幅を規制する累積型枠における間接規制具であ り,公知技術10(乙13)は,コンクリート型枠Kの間接保持具であり,また,公知技術11(乙14)はコンクリート用型枠の間接保持具である。しかして,これらは,いずれも2度打ち工法特有の課題解決を図ったものではなく,本件発明及び乙4考案とは技術分野が関連しない。 したがって,公知技術8ないし11は,本件発明及び乙4考案の技術分 野における周知技術とはいえないし,主引例である乙4考案に適用する動機付けもなく,当業者がこれを容易に適用できるとはいえない。 (3) 争点2-2(無効理由2(サポート要件違反)の有無)[被告の主張] 術とはいえないし,主引例である乙4考案に適用する動機付けもなく,当業者がこれを容易に適用できるとはいえない。 (3) 争点2-2(無効理由2(サポート要件違反)の有無)[被告の主張]本件特許請求の範囲には,「この基部(11)の外側端部に一体化されて前 記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」なる記載,及び「前記基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」なる記載があり,この「係止」とは支持具が型枠に対して取り付けた位置からずれないことが必要となる。 しかしながら,本件明細書の段落【0016】に記載されるように,「支持具10」を「基部11,外側係止部12,及び内側係止部13によって一つの型枠20の側端面を包み込むようにしながら」取り付けることのみでは,支持具が型枠に対して上下方向において規制されずに移動自在であるため,外側の型枠の内側に流し込まれた生コンクリートによって支持具が下方へ押 圧されることにより,支持具が型枠からずり下がる現象が発生することから, 型枠の外側角部又は内側角部に対して確実な係止はされ得ない。 したがって,本件発明は,発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり,記載不備の無効理由(法第36条第6項第1号)がある。 [原告の主張] 被告の主張は,本件発明において,「支持具が係止によって型枠に対して(水平方向のみならず)上下方向にも完全に固定されなければならない」ことを前提とするところ,この前提自体が誤りである。 すなわち,本件発明は,2度打ちする場合の型枠(20)の外側への 対して(水平方向のみならず)上下方向にも完全に固定されなければならない」ことを前提とするところ,この前提自体が誤りである。 すなわち,本件発明は,2度打ちする場合の型枠(20)の外側への開きを防止する支持具であって(段落【0011】参照),外側係止部(12)や 内側係止部(13)によって型枠(20)に取り付けられることによって支持具が水平方向に固定され,アンカー部(14)がベース部(31)及び防湿部(33)内に埋設固定されていれば,型枠(20)をベース部(31)及び防湿部(33)に対して固定することができ,たとえ型枠に外側に向けて力が働いても,アンカー部がベース部から抜けることがないから,これに より型枠(20)の外側への開きを防止することができるのであって,本件発明の課題を解決する上で,本件発明の支持具が係止によって上下方向に全く移動しないように完全に固定されている必要はない。 当業者であれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明や出願時の技術常識を考慮すれば,請求項1に更に係止のための具体的な手段が示されていなく とも,支持具が金属板である薄板によって形成したものであって,かかる薄板が本質的にそれ自体が弾性力を有しているものであることから(段落【0022】参照),係止のための具体的な外側係止部(12)及び内側係止部(13)によって型枠(20)を挟み込む力を適宜調節し,本件発明がその作用効果を奏するように,支持具(10)を型枠(20)に適切に取り付けるこ とを認識することができるといえる。 したがって,「係止のための必要な手段が反映されていない」から記載不備の無効理由があるとの被告の上記主張には理由がない。 (4) 争点3(損害の発生の有無及び損害額)[原告の主 したがって,「係止のための必要な手段が反映されていない」から記載不備の無効理由があるとの被告の上記主張には理由がない。 (4) 争点3(損害の発生の有無及び損害額)[原告の主張]ア被告製品の推定利益額 過去3年間における販売数量は,被告製品1につき少なくとも22万個,被告製品2につき少なくとも23万個である。また,各被告製品1個当たりの利益率は24円を下らない。そこで,各被告製品の推定利益は,次のとおり,1080万円であり,同額が,原告が被った損害であると推定される(法102条2項)。 (計算式)24円×(22万個+23万個)=1080万円イ弁護士費用相当額本件訴訟追行のため相当と認められる弁護士費用相当額は,上記アの10%である108万円を下らない。 ウ原告に生じた損害額 そうすると,原告に生じた損害額は,アとイの合計額である1188万円である。 [被告の主張]原告の上記主張は争う。被告製品1の過去3年間の販売数量は15万3909個であり,1個当たりの利益は21円である。また,被告製品2の過去 3年間の販売数量は87万0845個であり,1個当たりの利益は14円である。 第3 当裁判所の判断 1 争点2-1について事案に鑑み,まず,無効理由1(乙4考案を主引例とする進歩性の欠如)の 有無(争点2-1)について判断する。 (1) 乙4考案の内容ア乙4には,次の記載があることが認められる。 (ア) 実用新案登録請求の範囲【請求項1】ベースコンクリートBC上にコンクリートを打設してコンクリート基 礎を形成する際に使用すべく所 記載があることが認められる。 (ア) 実用新案登録請求の範囲【請求項1】ベースコンクリートBC上にコンクリートを打設してコンクリート基 礎を形成する際に使用すべく所定間隔で対向配置される内枠4と外枠2から成る型枠の外方への傾倒を防止するコンクリート型枠傾倒防止具8に於いて,上記ベースコンクリートBC及び該ベースコンクリートBC上に打設されるコンクリートCを収容保持すべく,地盤G上に長手方向に立設保 持される複数の縦長外枠2に対応して内枠4が所定間隔をもって上記ベースコンクリートBC上に立設保持され,上記各縦長外枠2の両端には,該縦長外枠2同士を接続すべく連結具10を挿通するための複数の連結孔5を穿設したフランジFを備えて成り,上記型枠傾倒防止具8は,薄板鋼板で所定長さの方形状に形成された 長手方向に複数の貫通孔6が穿設されて,その一端側が上記縦長外枠2の下方に打設される上記ベースコンクリートBCの上面側内部に臨むように隣接する縦長外枠2のフランジF間に他端側が挟持されると共に,挟持された他端側が上記貫通孔6と選択された上記フランジFの連結孔5とを挿通した上記連結具10により締結され,上記ベースコンクリー トBC上にコンクリートCが打設された際に上記縦長外枠2の傾倒を防止するようにしたことを特徴とするコンクリート型枠傾倒防止具。 【請求項2】上記型枠傾倒防止具8は,上記縦長外枠2の離脱後に上記ベースコンクリートBCの外壁面から突出した該外壁面に対応する上下端縁に切断 可能な切り欠き13a,13bが形成されていることを特徴とする請求 項1に記載のコンクリート型枠傾倒防止具。 (イ) 考案の詳細な説明 外壁面に対応する上下端縁に切断 可能な切り欠き13a,13bが形成されていることを特徴とする請求 項1に記載のコンクリート型枠傾倒防止具。 (イ) 考案の詳細な説明【技術分野】【0001】本考案は,ベースコンクリート上にコンクリートを打設してコンクリート基礎を形成する際に使用すべく所定間隔で対向配置され る内枠と外枠とから成る型枠の外方への傾倒を防止するコンクリート型枠傾倒防止具に関する。 【考案が解決しようとする課題】【0012】…従来の型枠保持具では,多数の構成部材から構成されるため,施工時において多くの手間が掛かるだけでなくコスト高になる問 題を有していた。 【0013】本考案は,このような問題点に着目してなされたもので,簡素な構成で且つ施工効率を向上することでコストを低減することができ,コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることがなく型枠の傾倒を防止するようにしたコンクリート型枠傾倒防止具を提供することを目的 とする。 【考案の効果】【0017】請求項1に記載の考案によれば,薄板鋼鈑で方形状に形成された型枠傾倒防止具の一端が互いに接続される縦長外枠端部の縦長フランジ間に挟着され,上記縦長外枠の内部に臨む型枠傾倒防止具の一端 がベースコンクリートBC内に固設された型枠傾倒防止具により縦長外枠が保持されているので,簡易な構成で上記縦長外枠の傾倒を防止することができ,施工作業が単純化されて施工効率を向上することができ,延いてはコストの低減を図ることができる。 【0018】請求項2に記載の考案によれば,縦長外枠の離脱後にベー スコンクリートBCの外壁面から突出した部位が外壁面に対応する切り 欠き はコストの低減を図ることができる。 【0018】請求項2に記載の考案によれば,縦長外枠の離脱後にベー スコンクリートBCの外壁面から突出した部位が外壁面に対応する切り 欠きから容易に切断することができるので,コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく平滑な壁面を形成することができる。 イ以上によれば,乙4考案として,基礎コンクリートを形成するために使用される型枠の位置を固定するための保持具であって,全体を薄板によって形成するとともに,前記型枠のフランジに当接される一端と,前記基礎 コンクリートに埋設されることになる他端とを備えたものとし,さらに,前記一端と前記他端との間に,前記他端から前記一端を切断するための切り欠きを形成したことを特徴とする型枠のための保持具が開示されていると認められる。 そして,このような乙4考案は,簡易な構成の保持具によるコンクリー ト型枠の保持という技術的課題に対し,コンクリート型枠に,上記のように構成した保持具を取り付けて固定させるという構成とすることで上記課題を解決するものであり,また,切り欠きから容易に切断することができる構成として,コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく平滑な壁面を形成することができるという効果をも奏するものと認められる。 (2) 本件発明と引用発明との対比ア本件発明と,上記(1)で認定した乙4考案とを対比すると,両者は,2度打ちにおいて,ベースコンクリート上にコンクリートが打設された際,コンクリートCの重量が縦長外枠に作用するが,縦長外枠の外側に向く傾倒が防止されるように,ベースコンクリートにより型枠傾倒防止具の一端側 が保持される点,及びベースコンクリート内に固設された型枠傾倒防止具の一端から他端を分 作用するが,縦長外枠の外側に向く傾倒が防止されるように,ベースコンクリートにより型枠傾倒防止具の一端側 が保持される点,及びベースコンクリート内に固設された型枠傾倒防止具の一端から他端を分離するための分離部が形成されている点で一致する。 イ他方,本件発明は,「D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E この基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内 側角部(22)に係止される内側係止部(13)」を備えているが,乙4考 案はこれらを備えていない点で相違する(以下「相違点1」という。なお,相違点1につき当事者間に争いはない。)。 また,上記分離部について,本件発明は,「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」のに 対し,乙4考案は,ベースコンクリート内に固設された型枠傾倒防止具の一端と他端との間に,この一端から他端を切断するための切り欠き(13a,13b)を形成したことを特徴とする点で相違する(以下「相違点2」という。なお,相違点2につき当事者間に争いはない。)。 (3) 相違点1の容易想到性 ア公知技術4の内容(ア) 乙7には次の記載がある(図1及び図2は別紙1に記載のもの)。 a 産業上の利用分野【0001】この発明は,コンクリート型枠を所定の対向間隔で保持するための間隔保持具に関するものである。 b 課題を解決するための手段【0005】(中略)この発明は,短冊状の板材よりなる本体の両端に外 を所定の対向間隔で保持するための間隔保持具に関するものである。 b 課題を解決するための手段【0005】(中略)この発明は,短冊状の板材よりなる本体の両端に外側規制片を形成するとともに,その内側に内側規制片を形成し,各規制片間に形成された一対の型枠嵌合部にコンクリート型枠を嵌合して所定の対向間隔で保持する間接保持具において,内側規制片には その弾性により型枠を外側規制片側へ押圧する押圧部を設けるとともに,外側規制片には型枠の縁部に嵌合する掛止部を設けて構成される。 c 作用【0006】型枠の組立てに際し,型枠を嵌合部に嵌入すると,内側規制片の弾性により押圧部が型枠を外側規制片側へ押圧し,外側規 制片の掛止部が型枠の縁部に係合する。(後略) d 実施例【0007】(中略)図1及び図2は本発明による一実施例の間隔保持具を示し,本体1は薄肉の焼入れ鋼板により短冊状に形成されている。本体1の両側には外側規制片2が上方へ折り曲げて形成され,各外側規制片2の内側には内側規制片3が上方へ切り起こして形成され ている。そして,間接保持具は外側規制片2と内側規制片3との間に一対の型枠嵌合部4を備え,本体1をベースコンクリート(図示略)上に設置し,各嵌合部4に型枠5を上方から嵌合して所定の対向間隔で保持できるように構成されている。 (イ) 上記各記載のとおり,乙7には,コンクリート型枠同士の間隔を保持 する間隔保持具に係る技術のうち,間隔保持具と型枠との固定において,間隔保持具の外側規制片2と内側規制片3とで外側角部を有する型枠5を挟むようにした構成に係る技術が開示されている(公知技術4)。 そして,上記保持 ち,間隔保持具と型枠との固定において,間隔保持具の外側規制片2と内側規制片3とで外側角部を有する型枠5を挟むようにした構成に係る技術が開示されている(公知技術4)。 そして,上記保持具の外側規制片及び内側規制片が保持具と一体であること,外側規制片がコンクリート型枠の外側角部を規制し,内側規制 片がコンクリート型枠の内側角部を規制していることからすれば,公知技術4は,「D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E この基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」という各構成を開示している といえる。 イ公知技術5の内容(ア) 乙8には次の記載がある(図1及び図2は別紙2に記載のもの)。 a 産業上の利用分野【0001】本発明は,コンクリート基礎や立ち上がり部を形成す るためのコンクリート型枠板の保持具に関するものである。 b 課題を解決するための手段【0007】(中略)本発明は,本体片の両端部に折曲連設した外側係止片と,夫々該係止片の内側に一定の間隔をおいて本体片の切り起しによって該係止片と同一方向に突出した内側係止片を形成し,コンクリート型枠板の上下端を外側係止片と内側係止片に係止して対向す るコンクリート型枠板を保持するものにおいて,夫々内側係止片の該切り起し用の長手方向の切り込みに連続する可撓用切り込みを内側に向け設けて夫々内側係止片を内側に可撓可能とし,外側係止片との間の間隔を可変できる構成としている。(後略)c 実施例 【0009】(中略) 可撓用切り込みを内側に向け設けて夫々内側係止片を内側に可撓可能とし,外側係止片との間の間隔を可変できる構成としている。(後略)c 実施例 【0009】(中略)図1で示す本例の保持具1は,鋼製の本体片10の両端部に外側係止片11を直角に折曲連設すると共に,夫々該係止片11から内側に一定の間隔をおいて,本体片10の長手方向の切り込み121による切り起しによって内側係止片12を該係止片11と同一方向に突出形成している。 【0012】このように構成した本例は,図2のように,保持具1の夫々の外側係止片11と内側係止片12との間にコンクリート型枠板2を上から差し込むことにより,対向配置した型枠板2の底部を挾持すると共に,上から別の保持具1で夫々の外側係止片11と内側係止片12との間で該型枠板2の上端部を挾持することで,対向した該 型枠板2を一定の間隔をおいて保持するのである。 (イ) 上記各記載のとおり,乙8には,コンクリート基礎や立ち上がり部を形成するためのコンクリート型枠板の保持具に係る技術のうち,コンクリート外側係止片11と内側係止片12との間に外側角部を有するコンクリート型枠板2を差し込むようにした構成に係る技術が開示されてい る(公知技術5)。 そして,上記保持具の外側係止片及び内側係止片が保持具と一体であること,外側係止片がコンクリート型枠の外側角部を規制し,内側係止片がコンクリート型枠の内側角部を規制していることからすれば,公知技術5は,「D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E こ の基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角 ,「D この基部(11)の外側端部に一体化されて前記型枠(20)の外側角部(21)に係止される外側係止部(12)」及び「E こ の基部(11)の内側端部に一体化されて前記型枠(20)の内側角部(22)に係止される内側係止部(13)」という各構成を開示しているといえる。 ウ容易想到性の判断そこで,乙4考案(主引例)において,公知技術4又は公知技術5(副 引例)を組み合わせる動機付け(起因ないし契機)があり相違点1が当業者において容易想到であるといえるかについて検討する。 まず,乙4考案は,コンクリート型枠傾倒防止具に係る技術であるところ,公知技術4(乙7)は型枠同士の間隔を保持する間隔保持具に係る技術,公知技術5(乙8)はコンクリート型枠板の保持具に係る技術であり, そのいずれも,コンクリート型枠を固定するための固定具に係る技術であるといえる。そして,傾倒防止を含め,コンクリート型枠の固定が,事柄の性質上,一連の施工の様々な段階において常に求められる普遍的な要請であることに鑑みると,乙4考案と,公知技術4又は公知技術5の技術分野は,互いに関連し,共通性を有するものというべきである。さらに,乙 4考案も,公知技術4又は公知技術5も,コンクリート型枠を固定具により固定させるという点において,その作用・機能も共通するといえる。 したがって,乙4考案における,型枠傾倒防止具8を縦長外枠2に固定するという技術につき,当業者において,公知技術4又は公知技術5で開示されているような,固定具の外側規制(係止)片及び内側規制(係止) 片で外側角部を有するコンクリート型枠を挟んで固定させるという技術 的構成を適用する動機付けがあるものというべきである。 そうすると,相違点1は,乙4考 (係止)片及び内側規制(係止) 片で外側角部を有するコンクリート型枠を挟んで固定させるという技術 的構成を適用する動機付けがあるものというべきである。 そうすると,相違点1は,乙4考案(主引例)に,公知技術4又は公知技術5(副引例)を適用することで埋めることができるものであって,当業者において容易想到であるものというほかない。 エ原告の主張について これに対し,原告は,公知技術4(乙7)は,一対の型枠の上端又は下端に取り付けられ,一対の型枠間の空間にコンクリートを打設したときに,コンクリートの圧力で一対の型枠間の間隔が広がらないように,一対の型枠間の間隔を保持する間隔保持具に係るものであり,乙4考案のように,2度打ち工法により立ち上がり部を施工する際に外枠の傾倒を防止する ための支持具ではないこと,公知技術4における保持具は,そもそも型枠の側端面に取り付けられるものではないことなどを指摘して,公知技術4は,乙4考案と技術分野が関連せず,乙4考案に適用することはできない旨主張する。また,公知技術5(乙8)についても,同様の理由で乙4考案と技術分野が関連せず,乙4考案に適用することはできない旨主張する。 しかしながら,当業者においては,乙4考案(主引例)において,コンクリート型枠を保持するため固定具を取り付けて固定させるという構成をとる以上は,その固定のための手段について更に検討するとみるのが自然である。しかして,前記のとおり,コンクリート型枠の固定は,どの段階の施工であるかに関わらず要求される普遍的な要請であることに鑑み ると,その際に,コンクリート型枠を固定具により固定させるという点において,共通の作用・機能を有するといえる公知技術4又は公知技術5(副引例)を参照し,こ される普遍的な要請であることに鑑み ると,その際に,コンクリート型枠を固定具により固定させるという点において,共通の作用・機能を有するといえる公知技術4又は公知技術5(副引例)を参照し,これを適用することができると考えるのが合理的というべきである。すなわち,当業者においては,乙4考案において,コンクリート型枠を固定するために使用される固定具としていかなる技術による ものが存在するかを調査し,検討することが想定されるところ,その範囲 が,原告の主張するように「2度打ち工法により立ち上がり部を施工する際に外枠の傾倒を防止する金具」あるいは「型枠の側端面に取りつけられるもの」に限定され,公知技術4又は公知技術5には及ばないと認めるに足る合理的理由はない。原告の主張は,乙4考案の技術分野と関連性を有する技術分野の範囲を過度に限定的に捉えることを前提とするものであ って採用できず,相違点1に係る容易想到性に係る上記判断を左右するものではない。 なお,原告は,本件発明と,公知技術4又は公知技術5との技術分野の相違についても指摘するようであるが,上記のように,乙4考案(主引例)に公知技術4又は公知技術5(副引例)を適用して相違点1を埋めること ができると考えられる以上,原告の上記指摘が,相違点1に係る上記判断を左右するものではない。 (4) 相違点2の容易想到性ア公知技術2の内容乙5には,挟着部12にミシン目状の分離部18を,支持部13にV字 状の切り込みからなる分離部19を設けたので,型枠3,6を取り外した後,金具本体11から挟着部12及び支持部13を取り除くことができることが開示されている(公知技術2)。そして,上記の分離部18は,金具本体11から挟着部12を折り取るための 型枠3,6を取り外した後,金具本体11から挟着部12及び支持部13を取り除くことができることが開示されている(公知技術2)。そして,上記の分離部18は,金具本体11から挟着部12を折り取るための折取部に当たることからすれば,公知技術2は「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14) との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」という構成を採用し,コンクリートの上面に突出物が存在しないようにしたものを開示している。 イ公知技術9の内容乙12には,間隔規制具1に型枠4の設置幅の間隔をおいて切込溝5を 設け,コンクリートが固まってから型枠4を離脱し,コンクリートから突 き出た間隔規制具1の両端部を切込溝から折り取ることが示されている(公知技術9)。そして,上記の切込溝5は,コンクリートから突き出た間隔規制具1の両端部を切込溝から折り取るための折取部に当たることからすれば,公知技術9は「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取る ための折取部(15)を形成したことを特徴とする」という構成を開示している。 ウ公知技術10の内容乙13には,間隔保持具本体1のコンクリート型枠Kの内面側と対向する位置にミシン目15や溝を形成し,布基礎コンクリート打設後に型枠を 外して露出している外側位置規制片5,6を分離することが示されている(公知技術10)。そして,間隔保持具本体1のコンクリート型枠Kの内面側と対向する位置に形成されたミシン目15や溝を形成上記の切込溝5は,布基礎コンクリート打設後に型枠を外して露出している外側位置規制片5,6を分離する て,間隔保持具本体1のコンクリート型枠Kの内面側と対向する位置に形成されたミシン目15や溝を形成上記の切込溝5は,布基礎コンクリート打設後に型枠を外して露出している外側位置規制片5,6を分離するための折取部に当たることからすれば,公知技術10 は「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14)との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」という構成を採用し,作業上安全であり美観上もよいというものを開示している。 エ公知技術11の内容 乙14には,折り取り手段としてのミシン目33が,内側位置規制片31の外側位置において基板23の幅方向に延びるように形成され,そのミシン目33により,基礎コンクリート22形成後に基礎コンクリート22から露出した外側位置規制片25及び外側位置規制片25が形成された側の基板23を折り取ることができることが示されている(公知技術1 1)。そして,折り取り手段としてのミシン目33は,間隔保持具本体1の コンクリート型枠Kの内面側と対向する位置に形成されたミシン目15や溝を形成上記の切込溝5は,基礎コンクリート22形成後に基礎コンクリート22から露出した外側位置規制片25及び外側位置規制片25が形成された側の基板23を折り取るための折取部に当たることからすれば,公知技術11は「G さらに,前記基部(11)とアンカー部(14) との間に,このアンカー部(14)から前記基部(11)を折り取るための折取部(15)を形成したことを特徴とする」という構成を開示している。 オ容易想到性の判断前記アないしエによれば,型枠保持具のうち,基礎コンクリート形成後 に基礎コンクリートから露出 を形成したことを特徴とする」という構成を開示している。 オ容易想到性の判断前記アないしエによれば,型枠保持具のうち,基礎コンクリート形成後 に基礎コンクリートから露出した部分を折り取る手段として,予め型枠保持具に折取部を形成することは,本件発明の出願当時において,周知な技術であったと認められる。しかして,乙4考案においては,簡素な構成で且つ施工効率を向上することでコストを低減することができ,コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく型枠の傾倒を防止するようにし たコンクリート型枠傾倒防止具を提供することを目的とする旨の課題が示されており(【0013】),これと同様の課題・作用・機能を有すると認められる上記周知な技術を適用する動機付け(起因ないし契機)があることが明らかであるから,切り欠きに代えて折取部を形成することは,当業者にとって容易想到であったといえる。 そうすると,相違点2は,乙4考案(主引例)に,上記周知な技術を適用することで埋めることができるものであって,当業者において容易想到であるものというほかない。 カ原告の主張についてこれに対し,原告は,公知技術2及び公知技術9ないし11について, いずれも2度打ち工法特有の課題解決を図ったものではなく,乙4考案と は技術分野が関連しないこと等を指摘し,公知技術2等を主引例である乙4考案に適用する動機付けがない旨を主張して,本件発明の容易想到性を否定する。 しかし,前記説示のとおり,乙4考案においては,簡素な構成で且つ施工効率を向上することでコストを低減することができ,コンクリート基礎 壁面の外観が損なわれることなく型枠の傾倒を防止するようにしたコンクリート型枠傾倒防止具を提供すること は,簡素な構成で且つ施工効率を向上することでコストを低減することができ,コンクリート基礎 壁面の外観が損なわれることなく型枠の傾倒を防止するようにしたコンクリート型枠傾倒防止具を提供することを目的とする旨の課題が示されているところである。しかして,前記のとおり,コンクリート型枠の固定は,どの段階の施工であるかに関わらず要求される普遍的な要請であることに鑑みると,その際に,コンクリート型枠の固定というレベルにおいて 共通の技術的課題を有し,これに対し同様の解決手段(コンクリート型枠に固定具を取り付けて固定させるという構成)をとった公知技術2及び公知技術9ないし11を周知な技術として参照し,これを適用することができると考えるのが合理的というべきである。すなわち,当業者においては,固定具を簡易に折り取るための技術を調査し検討することが想定される ところ,その範囲が,原告の主張するように「2度打ち工法特有の課題解決」に関連する技術に限定されるものと認めるに足りる合理的理由はない。 原告の上記主張は,乙4考案に適用可能な周知技術の範囲を過度に限定的に捉えることを前提とするものであって採用できず,相違点2に係る容易想到性に係る上記判断を左右するものではない。 なお,原告は,本件発明と,公知技術2等との技術分野の相違についても指摘するようであるが,上記のように,乙4考案(主引例)に公知技術2等に開示された周知な技術を適用して相違点2を埋めることができると考えられる以上,原告の上記指摘も,相違点2に係る上記判断を左右するものではない。 (5) 小括 したがって,本件発明については,当業者において,乙4考案(主引例)から容易に想到することができるというべきであるから,本件発明に対する無効理由1(乙4記 い。 小括 したがって,本件発明については,当業者において,乙4考案(主引例)から容易に想到することができるというべきであるから,本件発明に対する無効理由1(乙4記載の発明を主引例とする進歩性の欠如,法29条2項)には理由があるものと認められる。原告は,その他も縷々主張するが,その主張内容を慎重に検討しても,いずれも採用の限りでない。 結論以上によれば,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,その余の点を判断するまでもなく,法104条の3第1項により,原告は,被告に対しその権利を行使することはできない。よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして, 主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官横山真通 裁判官奥俊彦 (別紙)被告製品目録 1 商品名「SP止め金具ZAMタイプ」 2 商品名「新SP止め金具」 別紙1 別紙2
▼ クリックして全文を表示