昭和36(ネ)814 給与減額分支払請求反訴請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和42年3月1日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を取り消す。      被控訴人は控訴人等に対しそれぞれ別表記載の各金員及びこれに対する 昭和三四年六月一一日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払うべ し。

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主文 原判決を取り消す。 被控訴人は控訴人等に対しそれぞれ別表記載の各金員及びこれに対する昭和三四年六月一一日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払うべし。 控訴人等は被控訴人等に対しそれぞれ別表記載の各金員及びこれに対する昭和三四年六月一一日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払うべし。 訴訟費用は第一、二審を通じてこれを二分し、その一つは控訴人等の負担、その余は被控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人等は、「一、原判決を取り消す。二、被控訴人は控訴人等に対し、それぞれ別表記載の各金員及びこれに対する昭和三四年六月一一日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。三、被控訴人の反訴請求を却下する。四、訴訟費用は本訴及び反訴を通じ第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに第二項について仮執行の宣言を求め、被控訴代理人等は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の主張及び証拠の提出、援用、認否は、次のとおり付加するほか原判決事実摘示記載のとおりであるから、これを引用する。 (被控訴人の主張)一、 労働基準法第二四条第一項は賃金の支払方法を規定したものであつて、相殺禁止の規定ではない。右規定の趣旨を拡張するとしても、せいぜいいわゆる賃金の天引の禁止、例えば労働組合費の天引、貯蓄金の留保、他店からの食費その他の売掛金債権の控除等のごとく、使用者の反対債権の存在を前提ないし予想しない場合に及ぼし得るにとどまり、賃金債権との相殺を禁止する趣旨までも含んでいると解すべきではない。賃金債権との相殺の禁止は、同法第一七条の規定するところである。 このことは次の点からいつても明らかである。すなわち船員法第五三条第一項は、「給料その他の報酬 までも含んでいると解すべきではない。賃金債権との相殺の禁止は、同法第一七条の規定するところである。 このことは次の点からいつても明らかである。すなわち船員法第五三条第一項は、「給料その他の報酬は、法令又は労働協約に特別の定のある場合を除いて、その全額を通貨で直接船員に支払わなければならない。」と規定している。そうして一方同法第三五条は、「船舶所有者は、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺してはならない。但し相殺の額が給料の額の三分の一を超えないとき及び船員の犯罪行為に因る損害賠償の請求権を以てするときは、この限りでない。」と規定している。右第三五条はまず明確に給料債権に対する相殺一般を禁止し、ついで除外例として相殺額が給料の額の三分の一以内であるとき、もしくは自働債権が船員の犯罪行為に因る損害賠償債権である場合をあげているのである。前記両規定を対照すれば一見して明らかなとおり、船員法第五三条第一項は相殺禁止の趣旨を含まないものであり、だからこそ同法第三五条が一般的に相殺を禁止する旨を規定したのである。逆に言えば同法第三五条が相殺を一般的に禁止しているので同法第五三条第一項には相殺禁止の趣旨が含まれていないということもできよう。そ与して船員法第五三条第一項の規定は、若干措辞は異なるが労働基準法第二四条第一項の規定と全く同一の内容を持つている。従つて労働基準法第二四条第一項と同法第一七条との関係については、船員法第五三条第一項と同法第三五条との関係と同様に理解すべきである。 かくて労働基準法上は相殺禁止について規定するのは同法第一七条のみであり、同条は前借金等と賃金との相殺のみを禁止しているに過ぎないから、前借金以外の債権を自働債権とする相殺については民法の規定する諸原則に戻り、不法行為に因つて生じた債権を受働債権とする相殺( みであり、同条は前借金等と賃金との相殺のみを禁止しているに過ぎないから、前借金以外の債権を自働債権とする相殺については民法の規定する諸原則に戻り、不法行為に因つて生じた債権を受働債権とする相殺(民法第五〇九条)、差押禁止債権を受働債権とする相殺(同法第五一〇条)、差し押えられた債権の相殺(同法第五一一条)等に当らない限り、労働基準法上もこれを是認すべきである。 もし労働者の賃金債権に対しては、使用者においていかなる賃金債権を以てする相殺も許されないと解するとしても、使用者としては反対債権を以て労働者の自己に対する賃金債権を差し押え、かつ転付命令を得て直ちに反対債権の満足を得る方法によるだけのことである。これを結果から見れば賃金債権と反対債権とが相殺されたのと選ぶところがない。このような迂遠な道をとらなければならない法律上の根拠はどこにもない。 もちろん労働基準法第二四条第一項の規定は、賃金が確実かつ十分に労働者の手に渡つてその生活維持に不安なからしめようとする規定であること、また一般に労働者の生活を脅かしてはならないことは、改めて言うまでもないことである。しかしそのための措置はすでに民法の上でとられている。使用者が賃金債権に対して相殺をすることも、使用者以外の債権者が賃金債権を差し押えることも、労働者の生活を脅かす点において区別すべき理由はないから、どちらも労働者がその支払期に受くべき金額の四分の一に限り許されることとなつている(民法第五一〇条、民事訴訟法第六一八条)。これをさらに労働基準法第二四条第一項本文が、民法による賃金相殺の制限的許容を排除し、賃金の額がいかに高くても、かつ使用者のなす相殺のみを他の債権者の差押と区別して全然許さないことにしたとすれば、労働者の生活を脅かしてはならないという理由からは、全く説明のできないとと 許容を排除し、賃金の額がいかに高くても、かつ使用者のなす相殺のみを他の債権者の差押と区別して全然許さないことにしたとすれば、労働者の生活を脅かしてはならないという理由からは、全く説明のできないととである。全額払の原則により使用者が貸金債権の相殺を全面的に禁止されるということは、労働者の生活保障の必要を超えて理由なしに使用者の民法上の権利を抑制することになる。 この点に関し労働基準法第二四条第一項但書所定の労働者との協定の活用により、右の不合理を救済できると考えるのは、安易な考え方である。何故なら一方では単に協定を結ばなかつたとの一事により、使用者の正当な権利の行使が労働者の生活を脅かさない、つまり民法が相殺を許している限度においても禁止されるという不合理が残る。他方では単に協定を結んでいるとの一事により、民法上の相殺制限の限度を超えた相殺が許されることになり、労働基準法第二四条は労働者の生活保障とは全く別のことを目的とすると言わなければならなくなる。 二、 仮に労働基準法第二四条第一項が賃金債権との相殺を禁止する趣旨を含むものとしても、本件減額は以下に述べる理由により右規定に反しないと言うべきである。 第一に本件減額は給与と給与との間におけるものであることに留意を要する。労働者が欠勤した時にその欠勤日の賃金が支給されないことは、労働契約の当然の内容であるから(ノーワーク・ノーペイの原則)、もし本件におけるように賃金が予め一定額の月給として定められている場合において、欠勤した後始めて到来する給料支払日に当該月の給与から減額されたならば、何人も当然のこととしてこれを承認するであろう。またもし当該月の給与が全額支給された後に欠勤が行なわれたために、翌月以降の給与から減額されるに至つたならば、この時も通常の常識人としては当然のこととして も当然のこととしてこれを承認するであろう。またもし当該月の給与が全額支給された後に欠勤が行なわれたために、翌月以降の給与から減額されるに至つたならば、この時も通常の常識人としては当然のこととしてこれを承認するところであろう。またこのことは支払日前に賃金債権が発生しない事由が生じたにも拘らず、支払日が接着しているため事実上控除できず全額を支払つた場合にも同様と言うべきである。このように見るならば、本件減額のごとき給与との間の清算は、形式論的に言えば相殺として構成されるであろうが、実質的にはまさに労務供給契約自体の一内容をなしているものというべきであり、給与の調整的相殺と言うべきである。 第二に本件においては、控訴人等は当日欠勤していることを自ら認めている。このように欠勤したときには遠からず減額を受けるべきことは当然に予想し得たところであるから、本件減額によつて思わぬ時に僅かの額の賃金しか手に入らなくなつたり、そのために生活が経済的に脅かされる結果となるとは考えられない。 第三に本件減額は欠勤の当月と接近した月になされている。欠勤後数年も経過して忘れた頃に減額されたのであるならばいざ知らず、本件におけるように接着した時期に減額がなされたからといつて、そのために控訴人等が思わぬ時に僅かな賃金しか手に入らぬことになつて、生活が経済的に脅かされる結果となつたとは考えられないところである。 第四に本件減額は給与の総額の五分の一を超過していない。この程度の金額を減額されたからといつて、控訴人等の生活が経済的に脅かされる結果となるとは考えられない。 三、 本件減額のためには、現実に減額する日の一ケ月半前にその内申書の提出を求めなければならなかつた。 当時の給料支給日は次のとおりであつたから、その一ヶ月半前というと、それぞれ下欄記載の日迄に右の 、 本件減額のためには、現実に減額する日の一ケ月半前にその内申書の提出を求めなければならなかつた。 当時の給料支給日は次のとおりであつたから、その一ヶ月半前というと、それぞれ下欄記載の日迄に右の処置をとることが必要であつたのである。 支払期日処置をとるべき日昭和三三年一二月分昭和三三年一二月五日昭和三三年一〇月二〇日同三四年一月分同三四年一月一四日同三三年一一月二五日(正月休みを五日間とみてこれを差し引く)同年二月分同年二月一七日同三三年一二月二八日(正月休みを差し引く)同年三月分同年三月二〇日同三四年二月五日昭和三三年一二月一一日までの欠勤を理由として減額をする場合に、どの月分の給与から減額することが可能かと言うと、右に述べたところから明らかなとおり、減額が可能な給与としては一応昭和三四年二月分の給与が浮び上つてくる。しかしその前に起案の検討、減額の早見表の作成作業等に一〇日間は必要である。当時群馬県における教職員の人数は総員約一二、〇〇〇名(内約二、〇〇〇名は県立校関係)、地方教育事務所一〇ケ所、市町村教育委員会数七八、県立学校数四二校(他に分校二〇校)、小中学校数五四四校(他に分校一〇一校)であり、本件減額はこのうち約四、八〇〇名を対象とし、金額は約六百万円に及ぶものである。右のような膨大な事務量の処理に当つたのであるから、本件のごとき程度の日時を費したからといつて、減額の時期を特に延引したものということはできない。他方控訴人等の側の立場に立つてみても、もはや減額を予想し得ない程の時期に減額したものということもできないであ とき程度の日時を費したからといつて、減額の時期を特に延引したものということはできない。他方控訴人等の側の立場に立つてみても、もはや減額を予想し得ない程の時期に減額したものということもできないであろう。 (控訴人等の主張)一、 労働基準法第二四条第一項は、賃金を唯一の収入とする労働者の生活を安定させるという労働政策上の見地から設けられた規定であつて、たとえ労働者の債務不履行や不法行為を理由とする損害賠償請求権を自働債権とする場合でも、賃金債権との相殺を許さない趣旨と解すべきである(最高裁第二小法廷昭和三一年一一月二日判決、同大法廷昭和三六年五月三一日判決)。右規定と同法第一七条との関係についでも、同法第一七条は従前屡々行なわれた前借金と賃金債権との相殺が著しく労働者の基本的人権を侵害するものであるから、これを特に明示的に禁止したものと解すべきであり、同法第二四条の規定があるからといつて同法第一七条の規定が無用のものとなるのではなく、また同法第一七条の規定があるからといつて同法第二四条の趣旨を前述のように解することの妨げとなる訳ではない。 もつともこの点に関しては、船員法第三五条の規定が存在することを以て、労働基準法第二四条第一項が賃金債権に対する相殺を全面的に禁止したものではないと解する根拠とする見解もあるけれども、その理由がないことは以下に述べる通りである。すなわち船員法は一般労働者とは同一に規律し得ない船舶乗務労働者の労働関係について設けられた特別法であるから(労働基準法第一一六条、船員法第六条参照)、両者の労働関係の相違がもたらす規律の特殊性があるのであつて、その特殊性の由つて来たる所以を考えず、ただちに一般の労働関係の規律と同日に論ずるのは不当であり、例外を以て原則を論ずる誤りを犯すものというべきである。 のみならず船員 律の特殊性があるのであつて、その特殊性の由つて来たる所以を考えず、ただちに一般の労働関係の規律と同日に論ずるのは不当であり、例外を以て原則を論ずる誤りを犯すものというべきである。 のみならず船員法自体もその第五三条において賃金の全額払、通貨払、直接払と賃金債権との相殺の禁止を原則としているのであり、相殺許容を規定する同法第三五条はまさに右第五三条が例外として規定する「法令……に特別の定のある場合」に該当すると解すべきである。従つて船員法第三五条の規定は、労働基準法第二四条第一項が賃金債権に対する相殺禁止の趣旨を含まない根拠となるものではない。 二、 次に労働基準法第二四条第一項はいわゆる調整的相殺をも禁止する趣旨ではないとする見解について述べるのに、一定の期間内の労働に対する賃金が当該一定の期間の満了前に支払われることになるように支払日が定められている場合において、その支払日以後当該期間満了以前に賃金債権が発生しない事由が生じたときや、あるいは賃金債権の発生を妨げる事由が支払日に接着して生じたため、事実上右支払日に控除をすることが不可能であるとき等にも、次の支払日以降の給与からの相殺を禁止するのは余りにも実情にそぐわないから、このようないわば調整的な相殺は事実上不可避であるとする見解がある。なるほど減額事由の存在が客観的に明白であつて、その点につき労使間に争がないことを前提とするならば、賃金支払の過不足を事務的に調整するための相殺が必要とされることも考えられよう。しかしだからといつて直ちに労働基準法第二四条第一項の全額払の原則を緩和すべきだということにはならない。何故なら右規定の法意は、前述のとおり労働者の一定額の賃金収入をみだりに減少させないことによつて、労働者がこれにより日常営む一定の規模の生活を維持せしめるところにあるが、賃金 ということにはならない。何故なら右規定の法意は、前述のとおり労働者の一定額の賃金収入をみだりに減少させないことによつて、労働者がこれにより日常営む一定の規模の生活を維持せしめるところにあるが、賃金の過不足の調整とは殆ど常に労働者の一定の賃金収入を減少させ、事実としてその生活に打撃を与えるものであつて、前記法意に反する点においては、過払分の調整も他の反対債権による相殺となんら選ぶところがないからである。いわんや使用者が一方的に減額事由の存在が明白であるとするが、労働者がこれを争う場合には、たとえ使用者側に事務上の必要があるとしても、これを相殺によつて処理せしめることが許されないのは言うまでもない。このような場合にも相殺を認めることは、実質上使用者に自力救済の利益を認め、これを争い権利を回復するための手続的負担を労働者に負わしめることを意味するから、もし右のような一方的調整としての相殺が許されるとすれば、労働者の生活の安定は甚しく害され、労働基準法第二四条第一項の法意は遂に没却されてしまうに至るであろう。右規定の趣旨からすれば、その解釈運用は厳格になされるべきであり、従つて同項但書所定の事由がないにも拘らず、単なる便宜から相殺禁止の原則を緩和することは許されないところである。 かくしていずれにせよ使用者としては、いわゆる調整的相殺をなすためにも前期条項但書所定の要件を満たす以外には途がないのである。従つて使用者において右の方途に出ない場合の不利益は使用者自身が負うべきことは理の当然である。もちろんこの場合でも使用者に対しては別途不当利得返還請求ないし損害賠償請求をする途は残されているのであつて、その権利行使が全く封ぜられる訳ではない。 三、 次に本件減額については、その根拠となるべき労働基準法第二四条第一項但書所定の法令は存在しない。 いし損害賠償請求をする途は残されているのであつて、その権利行使が全く封ぜられる訳ではない。 三、 次に本件減額については、その根拠となるべき労働基準法第二四条第一項但書所定の法令は存在しない。 すなわち「群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一八条及び「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例」第一八条は、「学校職員が勤務しないときは、その勤務しないことにつき、教育委員会の承認があつた場合を除くほか、その勤務しない一時間につき、……勤務一時間当りの給与額を減額して給与を支給する。」という文言からも明らかなように、実体的な減額を許容する根拠となる規定であつて、減額の手続、方法及び時期については、なんら触れるところがないのである。 従つて右各規定が減額の手続についてなんら触れていないからといつて、減額の時期、方法につきなんら限定しない趣旨であると解し、あるいは減額事由の発生した月の翌月以降の給与からの減額を許容する趣旨であると解するのは極めて不当である。「群馬県職員の給与に関する条例」に前記各規定と同内容の減額に関する規定があり、その支給規則にこのような減額を「それぞれの月以降の給料及びこれに対応する暫定手当から差し引く。」と規定されていることは、なんら前記見解を左右するものではないし、まして本件減額以後県立学校職員及び市町村立学校職員につき同様の規定を含む支給規則が公布施行されたことは、本件減額が明確な法令の根拠なしに行なわれたという事実を動かすものではない。 労働基準法第二四条第一項本文の立法趣旨が前記のとおりである以上、これに対する例外事由を規定した同項但書は、厳格に限定的に解すべきであつて、これを類推拡張して原則を脅かすような解釈は厳に戒めるべきである。 四、 被控訴人主張の前記三の事実のうち、本件減額のためには現実に減額する 由を規定した同項但書は、厳格に限定的に解すべきであつて、これを類推拡張して原則を脅かすような解釈は厳に戒めるべきである。 四、 被控訴人主張の前記三の事実のうち、本件減額のためには現実に減額する日の一ケ月半前に内申書の提出を求めなければならなかつたこと、減額前における起案の検討その他の事務処理に一〇日間は必要であることは争う。当時の群馬県における教職員の人数、地方教育事務所、市町村教育委員会の数、学校数、及び減額の総金額等は知らない。 (証拠関係)控訴代理人等は当審において甲第一号証、同第二号証の一、二、同第三号証の一ないし三、同第四、第五号証を提出し、当審証人A、同B、同Cの各証言を援用し、乙号各証の成立はいずれも認めると述べた。 被控訴代理人等は当審において乙第一号証の一、二、同第二、第三号証、同第四号証の一、二、同第五号証、同第六号証の一ないし三、同第七ないし第一二号証を提出し、当審証人Dの証言を採用し、前記甲号各証の成立はいずれも認めると述べた。 理由 第一、 控訴人等の本訴請求について一、 控訴人等が昭和三四年三月当時いずれも原判決添付別表所属校欄記載のとおり、群馬県内の公立学校の教員として勤務していたものであつて、その給与が県立学校の教員である控訴人Eについては、地方公務員法第二四条、「群馬県立学校職員の給与に関する条例(昭和三一年九月二九日群馬県条例第四一号)」により、また市町村立学校の教員であるその余の控訴人等については、市町村立学校職員給与負担法第一条、「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例(昭和三一年九月二九日群馬県条例第四二号)」により、いずれも被控訴人の負担とすることと定められており、昭和三四年三月当時における控訴人等の給与のうち給料と暫定手当との合計額がそれぞれ に関する条例(昭和三一年九月二九日群馬県条例第四二号)」により、いずれも被控訴人の負担とすることと定められており、昭和三四年三月当時における控訴人等の給与のうち給料と暫定手当との合計額がそれぞれ原判決添付別表(イ)欄記載のとおりであつて、被控訴人においてこれを原則として毎月二一日に一二月は五日に、またそれらの日が休日ないし日曜日に当るときはその前日に、その月分を支払うべきことと定められていたことは当事者間に争がなく、また控訴人等が昭和三四年三月中その勤務する各学校において正常に勤務したにも拘らず、被控訴人において同月二〇日控訴人等に対しその月分の給与を支払うに際し、給料及び暫定手当として前記原判決添付別表(イ)欄記載の金額から(ハ)欄記載の金額を減額し、(ロ)欄記載の金額のみを支払つたこともまた当事者間に争がない。 二、 そこで次に被控訴人主張の抗弁について考えるのに控訴人等が平常勤務日である前記別表(ニ)欄記載の各年月日に、服務監督権者である群馬県ないし各市町村教育委員会の承認を受けないで勤務しなかつたこと、及び控訴人等が右勤務を欠いた各月において、当月分の給料及び暫定手当の全額である前記別表(ホ)欄記載の金額の支払を受けたことは、いずれも当事者間に争がない。そうして被控訴人は、控訴人等の右無断欠勤の事実に基づき、「群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一八条、第一九条、同条例附則(昭和三二年八月一日群馬県条例第四四号)第一八項、及び「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例」第一八条、同条例附則(昭和三二年八月一日群馬県条例第四五号)第一八項により、前記別表(ハ)欄記載の各金員を昭和三四年三月分の給与から減額し、その残額を控訴人等に支払つたものである旨主張するので、右減額の適否について判断する。 まず控訴人は右支払が適法である 一八項により、前記別表(ハ)欄記載の各金員を昭和三四年三月分の給与から減額し、その残額を控訴人等に支払つたものである旨主張するので、右減額の適否について判断する。 まず控訴人は右支払が適法である理由として、前記別表(イ)欄記載の金額は減額事由がない限り毎月支払われるべき基準額であるに過ぎず、もし所定の減額事由があるときは当然右基準額から減額をなすべきものであり、従つて控訴人等の昭和三四年三月分の給与債権は右減額がなされた残額のみについて発生したというべきであるから、同月分の給与は全額支払済である旨主張する。しかしながら地方公務員法第二四条第六項、第二五条第一項、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第四二条によれば、県費負担教職員の給与は都道府県の条例に基づいて支給されなければならないことと定められているところ、これに基づく前記「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例」第一二条は、「1給料の計算期間(以下「給与期間」という。)は月の一日から末日までとし、給与期間につき給料月額の全額を支給する。2給料の支給日は、その月の二十一日とする。ただし、支給日が休日又は日曜日にあたるときは、その前日とする。3災害その他特別の事情により、その必要を認めたときは、前項の支給日を変更することができる。」旨を定めており、同じく第一三条は、「1新たに学校職員となつた者には、その日から給料を支給し、昇給、降給等により給料額に異動を生じた者には、その日から新たに定められた給料を支給する。ただし離職した公務員が即日学校職員となつたときは、その日の翌日から給料を支給する。2学校職員が離職し、又は死亡したときは、その日まで給料を支給する。3前二項の規定により給料を支給する場合であつて、給与期間の初日から支給する場合以外のときは、その給料額は、その給与期間の現 給する。2学校職員が離職し、又は死亡したときは、その日まで給料を支給する。3前二項の規定により給料を支給する場合であつて、給与期間の初日から支給する場合以外のときは、その給料額は、その給与期間の現日数から勤務を要しない日の日数を差し引いた日数を基礎として日割によつて計算する。」旨を規定しており、「群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一二条、第一三条にも右と同一の規定が存している。そうしてこれによると原則として毎月二一日に控訴人等に対して支払われる給料は、その月の勤務に対するものとして支払われていることが明らかである。従つてある月に発生した減額事由に基づき、その月分の給与から減額がなされた場合においては、その月の給与債権は減額後の残額についてのみ発生しているにほかならず、右残額の支払によつてその月分の給与は全額支払済といえようけれども、減額措置をした当該月に減額事由が存在しない場合には、仮にその以前に減額事由が発生しており、その減額が未だなされていないとしても、当該月の勤務に対するものであるその月の給与債権額が当然に減少するいわれはない。このような場合に当該月の給与から減額をなせば、右減額措置そのものが適法なものとして許されるか否かは別論として、当該月に発生した給与債権の全額を現実に支払つたことにならないのは明らかである。従つて控訴人等の昭和三四年三月分の給与債権は、被控訴人において同月中に減額事由が発生したことを主張立証しない限り、控訴人等の同月中の勤務に対しその全額について発生したものとするほかなく、前記三月分の給与債権が昭和三三年一〇月ないし一二月中の欠勤による減額をなした残額についてのみしか発生していないとする被控訴人の主張は、その理由がなく採用できない。 三、 次に被控訴人は、控訴人等の昭和三四年三月分の給与債権が全額につ ないし一二月中の欠勤による減額をなした残額についてのみしか発生していないとする被控訴人の主張は、その理由がなく採用できない。 三、 次に被控訴人は、控訴人等の昭和三四年三月分の給与債権が全額について発生したとしても、これから同三三年一〇月ないし一二月中の無断欠勤分の給与を減額することは適法であると主張し、控訴人等は右減額措置は労働基準法第二四条第一項により禁止される旨主張するので、この点について判断する。控訴人等が前記のとおり原判決添付別表 (二) 欄記載の各年月日に、服務監督権者である各教育委員会の承認を受けないで欠勤しながら、右欠勤した各月において当月分の給料及び暫定手当の全額の支払を受けたことは当事者間に争がなく、この場合各月分の給与債権は、欠勤による減額をなした残額についてのみ発生しているのであるから、右減額をなすべきであつた金額については過払の結果となつているのであり、従つて控訴人等は右各金額を法律上の原因なくして不当に利得したものというべきであつて、被控訴人等に対し、右各金額相当の不当利得返還請求権を有することとなる。従つて被控訴人において控訴人等の昭和三四年三月分の給与から前記各金額を減額したのは、とりも直さず右不当利得返還請求権を自働債権とし、右三月分の給与債権を受働債権として、その対当額において相殺をなしたものというべきである。そこで右相殺の適否について考えるのに、地方公務員法第五八条(昭和四〇年五月一八日法律第七一号による改正前のもの)により地方公務員である控訴人等に対してもその適用があると解される労働基準法第二四条第一項本文は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」旨を定めている。 右規定のうちのいわゆる全額払の原則の趣旨とするところは、労働者の賃金が労働者の生活を支える主要な財源 項本文は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」旨を定めている。 右規定のうちのいわゆる全額払の原則の趣旨とするところは、労働者の賃金が労働者の生活を支える主要な財源であることから、他の通貨払の原則、直接払の原則及び毎月一定期日払の原則等とあいまつて、これが確実に労働者の手に渡るように保障し、労働者の生活を経済的不安から守ろうとする点にある。そうしてこれにより全額払の原則は、同法第一七条の前借金相殺の禁止及び同法第一八条の強制貯金の禁止等の諸規定とあいまつて、種々の理由による賃金の控除を防止することにより、労働者の人身拘束をもたらす前近代的な労働関係を絶止し、使用者の一方的意思により賃金の控除が行なわれることによつて、労働者が期待していた賃金の全額を現実に入手することができないため、その生活に経済的不安が生ずることを防止する結果をもたらすこととなる。以上に述べた全額払の原則の趣旨から考えると、労働基準法第二四条第一項本文の規定は、使用者において労働者の賃金債権に対し、労働者に対して有する反対債権を以て相殺することも許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である(最高裁大法廷昭和三六年五月三一日判決・最高民集一五巻五号一四八二頁参照)。この点につき被控訴人は、その主張の根拠として労働基準法第二四条第一項が相殺禁止の趣旨をも包含するとすれば、同法第一七条の前借金相殺の禁止の規定が存在理由を失うと主張するけれども、右第一七条の規定は前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金との相殺が、歴史的に見て特に労働者の人身拘束等の弊害を生ずることが甚だしかつたことにかんがみ、これをあらためて明示的に禁止するとともに、同法第二四条第一項の全額払の原則について認められる同項但書所定のような例外を認めず、一律 労働者の人身拘束等の弊害を生ずることが甚だしかつたことにかんがみ、これをあらためて明示的に禁止するとともに、同法第二四条第一項の全額払の原則について認められる同項但書所定のような例外を認めず、一律にこれを禁止することとし、さらに同法第二四条の規定の違反に対しては、同法第一二〇条第一号により五千円以下の罰金が課せられるのに対し、同法第一七条の規定の違反に対しては、同法第一一九条第一号により六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金という一層厳重な処罰をもつて臨むことを明らかにしているのである。従つて同法第二四条第一項が相殺禁止の趣旨を包含するとの前記見解をとつても、同法第一七条の規定が存在理由を失うことにはならない。 また被控訴人は、相殺制限に関する船員法第三五条の規定の存在を以て、全額払の原則中に相殺禁止の趣旨が包含されないことの根拠である旨主張する。すなわち、船員法第五三条第一項は、「給料その他の報酬は、法令又は労働協約に特別の定のある場合を除いて、その全額を通貨で直接船員に支払わなければならない。」旨を定め、労働基準法第二四条第一項本文に照応して、いわゆる全額払の原則を明らかにしており、一方船員法第三五条は、「船舶所有者は、船員に対する債権と給料の支払の債務とを相殺してはならない。但し相殺の額が給料の額の三分の一を超えないとき及び船員の犯罪行為に因る損害賠償の請求権を以てするときは、この限りでない。」旨を規定し、右両規定を対比すれば、船員法第五三条第一項所定のいわゆる全額払の原則は、船舶所有者の船員に対する反対債権を以てする相殺を禁止する趣旨までを包含するものではなく、従つてその故にこそ同法第三五条が右のような相殺を原則的に禁止する趣旨を明らかにしているものと解する余地があるように見える。しかしながら同法第四条によれば、同法でいら「給 までを包含するものではなく、従つてその故にこそ同法第三五条が右のような相殺を原則的に禁止する趣旨を明らかにしているものと解する余地があるように見える。しかしながら同法第四条によれば、同法でいら「給料」とは船舶所有者が船員に対し一定の金額により定期に支払う報酬のうち基本となるべき固定給をいうことが明らかであるから、同法第三五条但書により船舶所有者が相殺を以て対抗することを一定の制限の下に認められるのは、右固定給の部分に限られるのであり、その他の報酬は同法第五三条第一項の全額払の原則にかえり、一般に相殺を禁止されることとなると解するのが妥当である。従つて同法第三五条は但書の船員の労働関係の特殊性から生じた相殺許容の点の方にむしろ意味があり、これが全額払の原則の例外となるのであつて、このような例外規定を欠く労働基準法の場合にあつては、一般に相殺禁止の趣旨がより厳格に維持されているものと解することも可能である。そうであるとすれば、船員法に同法第三五条のような規定が存在することを以て、労働基準法第二四条第一項の全額払の原則中に相殺禁止の趣旨が包含されていないことの根拠とすることはできない。以上に述べたような労働基準法第二四条第一項の趣旨によつて考えるときは、使用者が労働者の賃金債権に対し、労働者に対する反対債権を以て相殺することは、原則としてその反対債権の発生原因のいかんを問わず、許されないものと解すべきである。 <要旨>しかしながら本件におけるように給与過払による不当利得返還請求権を自働債権とする相殺も、例外なく一</要旨>切許されないと解すべきか否かについては、なお検討を要するものといわなければならない。何故ならとのような相殺は、毎月毎に発生する給与債権の調整ないし清算としての意義を有する点で、給与と全く関係のない他の債権によつてなされる かについては、なお検討を要するものといわなければならない。何故ならとのような相殺は、毎月毎に発生する給与債権の調整ないし清算としての意義を有する点で、給与と全く関係のない他の債権によつてなされる相殺の場合とはいささかその意義を異にするし、また本件におけるように毎月一定期日を定めてその月の勤務に対する給与が支払われる場合においては、右期日が月の末日でない限り常に給与の一部は前払としての性格を持つこととなるのであるが、支払期日後に減額事由が発生した場合には、当然その月の給与から減額することは不可能となる訳であるから、このような場合にも一切相殺を許さないとすることは、減額事由の発生時期の前後という偶然の事情によつて、労働者が過払給与の任意の返還に応じない場合に、使用者に対し著しい煩わしさを避け難いこととすることになり、不合理でもあるからである。そうして当裁判所は以上の観点から、給与過払による不当利得返還請求権を自働債権とする相殺の場合においては、過払給与を当該支払期日における給与から減額することが社会通念上不可能であり、かつ右給与支払後最初に到来した減額をなし得べき機会に減額がなされた場合に限つて、―本件におけるように毎月一回給与が支払われる場合には、せいぜい給与過払のあつた月の翌月に限つて、―例外的にその月の給与からの減額すなわち相殺が許されるものと解する。この場合においても、民法第五一〇条、民事訴訟法第六一八条により、原則として総額の四分の一を超える部分については相殺を以て対抗することができないという制限に服することはもちろんである。このように解しても労働者の人身拘束の防止ないし労働者の経済的保護という労働基準法第二四条第一項の趣旨にもとる虞はないと考えられる。 以上に述べたところを具体的に適用してみると、本件におけるように原則として に解しても労働者の人身拘束の防止ないし労働者の経済的保護という労働基準法第二四条第一項の趣旨にもとる虞はないと考えられる。 以上に述べたところを具体的に適用してみると、本件におけるように原則として毎月二一日にその月分の給与が支給されている事案においては、当該月の二一日までに減額事由が発生した場合には、観念的にはその月の給与から減額することが可能なのであるが、給与支給日に近接した日に減額事由が発生したため、当該月の給与から減額することが事務処理上不可能である場合のように、社会通念上当該月の給与からの減額が不可能であることが客観的に明らかな場合には、翌月分の給与からの減額を認めるのが妥当であろう。次に当該月の二二日以降に減額事由が発生した場合には、その月分の給与は既に支払済であるからこれからの減額は不可能であり、従つて原則として減額をなし得べき最初の機会である翌月一二日の翌月分の給与支給の際、減額することが認められてしかるべきである。以上のとおりこのような減額が認められるのは、せいぜい減額事由の発生した月の翌月までに限られるものとするのが妥当である。 ところでこの点に関しては、減額の時期が給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期になされ、かつ減額の金額が労働者の経済生活を脅かす結果となる虞がない範囲内にあるとの条件のもとに、相殺をより広範囲に認めようとする見解がある。しかしながら元来労働基準法第二四条第一項の趣旨が前記のとおりである以上、例外的に相殺が許容される範囲を画するに際しては、右規定の趣旨を害しないよう慎重な配慮をなすべきものであり、能う限り厳格な態度を以て臨むべきものである。この観点に立つて考えると、給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期という概念自体が甚だ不明確であるのみならず、もともと給与の ものであり、能う限り厳格な態度を以て臨むべきものである。この観点に立つて考えると、給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期という概念自体が甚だ不明確であるのみならず、もともと給与の清算調整というからには、清算調整を必要とする原因の発生した後遅滞なく最初に到来した機会に減額をなすのが本筋であろうし、そのように解するのがむしろ当事者の気持にもまた社会通念にも合致すると思われる。また合理的に接着した時期というような不明確な基準のもとに、使用者側の一方的意思により減額の時期を決し得るとすることは、前掲労働基準法第二四条第一項の規定の趣旨に副う所以ではない。 このことは具体的事案において、労働者が減額の時期を予期したとしても、あるいは使用者において減額の時期を事前に労働者に予告したような事実があつたとしても、本質的には変りのないことである。また減額の金額が労働者の経済生活を脅かす虞がない場合というのも、その具体的適用に際しては多分に疑義を生ずる虞がある。この点について、前記民法第五一〇条、民事訴訟法第六一八条による制限があることを以て、労働者の経済生活を脅かす虞がないことの根拠としたり、あるいは右各規定所定の制限を以て前記相殺金額の制限の基準に援用したりすることは、全く理由がないことである。何故なら右各規定は、もともと相殺制限に関する一般規定として、労働者の給与債権を受働債権とする相殺にも適用があることもちろんであるが、右の一般的制限だけでは労働者の経済生活保護に十分でないところ、労働基準法第二四条第一項が特別規定として、右の一般的制限の範囲内の相殺をも原則的に禁止したものであること前述のとおりだからである。従つて右労働基準法の規定の趣旨に反しないものとして、例外的に許容されるべき相殺の範囲を考えるに当り、相殺金額の面からの合 の範囲内の相殺をも原則的に禁止したものであること前述のとおりだからである。従つて右労働基準法の規定の趣旨に反しないものとして、例外的に許容されるべき相殺の範囲を考えるに当り、相殺金額の面からの合理的な制限があることを以て、特に合理的に接着した期間内の相殺を許容する根拠としょうとするならば、前記民法等所定の一般的制限とは別個の、これよりさらに厳重な基準を設定しなければならないこととなる。このような観点に立つときは、労働者の経済生活を脅かす結果となる虞がない範囲内の金額という基準は、余りにも抽象的に過ぎ明確さを欠くものというほかない。なおこの点については仮に労働者各個人において減額すべき金額につき諒解をしていた事実があつたとしても、前記労働基準法第二四条第一項の法意からいつて、右減額が適法なものとなるとは解せられない。以上要するに期間及び金額の点で合理的な制限をすれば、減額をなし得べき最初の機会に限らず減額を許容してよいとする見解は、結局は前述の労働基準法第二四条第一項の趣旨を、使用者の一方的意思によつて踏みにじる危険を認めることとなるから、妥当なものということはできない。また使用者と労働者との間に前判示のような範囲を超える減額をも許容する旨の黙示の合意が存在するとの見解も、少なくとも労働者側の意思に合致するものとは思われず、採用することはできない。 なお被控訴人はその主張を裏づける根拠として、前記「群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一八条、及び「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例」第一八条が、減額をどの月の給与からすべきかについてなんらの制約を置いていないことをあげている。しかし右各規定を減額事由が発生した月の翌月以降の給与から減額することを無制限に許容する趣旨であると解すべきでないことは後述のとおりであるから、被控訴人の んらの制約を置いていないことをあげている。しかし右各規定を減額事由が発生した月の翌月以降の給与から減額することを無制限に許容する趣旨であると解すべきでないことは後述のとおりであるから、被控訴人の右主張はその理由がない。また被控訴人は同じくその主張を裏づける根拠として、被控訴人主張の人事院指令の存在をあげている。なるほど国家公務員について、「一般職の職員の給与に関する法律(昭和二五年四月三日法律第九五号)」第一五条が、前記条例中の各規定とほぼ同一内容のことを規定しているところ、人事院が右法律の実施及び技術的解釈に必要な人事院規則を制定し、及び人事院指令を発する権限を有することは、同法第二条第一号の規定によつて明らかである。そうして人事院が右権限に基づき同法第一五条の運用方針として、「減額すべき給与額は、……その次の給与期間以降の俸給……から差し引く。」旨の指令(一般職の職員の給与に関する法律の運用方針昭和二六年一月一一日給実甲第二八号)を発しているにしても、もし右指令が無制限に次の給与期間以降の俸給等からの差引を許容する趣旨であるとするならば、後記のとおり国家公務員についても原則としてその準用があると考えられる労働基準法第二四条第一項の規定に照らして、これが適法であるとは解し難いし、仮に適法であるとしても、国家公務員のうち一般職に属する職員については、国家公務員法の第一次改正法律附則(昭和二三年一二月三日法律第二二二号)第三条の規定により、労働基準法の規定が一定の制限範囲内で準用されるのに過ぎないのに反し、地方公務員については、地方公務員法第五八条(昭和四〇年五月一八日法律第七一号による改正前のもの)の規定により、労働基準法の規定がいくつかの除外規定を除き、同法第二四条をも含め原則として適用されることとなつていたように(その後前記改正 五八条(昭和四〇年五月一八日法律第七一号による改正前のもの)の規定により、労働基準法の規定がいくつかの除外規定を除き、同法第二四条をも含め原則として適用されることとなつていたように(その後前記改正法律により地方公務員法第二五条に第二項として「職員の給与は、法律又は条例により特に認められた場合を除き、通貨で、直接職員に、その全額を支払わなければならない。」旨の規定が設けられ、これに伴い労働基準法第二四条第一項の規定は適用されないこととなつた。)、両者と労働基準法の定める諸原則との関係を一様に解することほできないから、前記人事院指令を本件における被控訴人の前記主張を裏づける根拠とするのは相当でない。 また被控訴人主張のように、「群馬県職員の給与に関する条例(昭和二六年一〇月一七日群馬県条例第五五号)」第一〇条に前記県立及び市町村立学校職員に関する各条例中のそれと同様の減額規定が存し、これについて「職員の給与の支給に関する規則(昭和三三年一〇月二一日群馬県人事委員会規則第七号)」第一二条第二項が、前記人事院指令と同様減額事由の生じた月以降の給料から差し引く旨規定しているにしても、これを被控訴人の主張を裏づける根拠となし難いことは前述したところから明らかであろう。また被控訴人主張のように本件減額後である昭和三五年一一月四日群馬県教育委員会と人事委員会とが協議した結果、「群馬県公立学校職員の給与の支給に関する規則」が公布施行され、同規則第八条第二項に「県立学校職員および市町村立学校職員の各減額すべき給与額は、減額すべき理由の生じた月の分の給料に対応する額とし、それぞれの月以後の給料およびこれに対応する暫定手当から差し引く。」旨の規定があるにしても、本件減額を適法化することができないのは再言するを要しない。 以上に述べたところを本件について見 る額とし、それぞれの月以後の給料およびこれに対応する暫定手当から差し引く。」旨の規定があるにしても、本件減額を適法化することができないのは再言するを要しない。 以上に述べたところを本件について見るのに、控訴人等が各教育委員会の承認を受けないで欠勤したのは、原判決添付別表(ニ)欄各記載のとおり、昭和三三年一〇月二八日、同年一二月一日、三日ないし六日、八日ないし一一日であり、控訴人等に対する給与の支払日が毎月二一日(但し一二月は五日)であつたことは前記のとおりである。従つて、昭和三三年一〇月二八日の欠勤については、同月分の給与は既に支払済であり、従つて右過払分の減額をなし得べき最初の機会は同年一一月二一日の一一月分の給与支払の際となる。また同年一二月中の欠勤については、同月五日以前の欠勤は給与支払前のものであるから観念的には同分の給与支払の際これから減額すべきこととなるが、給与支払日に近接しているため事務処理上減額が不可能であるならば、その範囲内では給与支払後にかかる同月六日以降の欠勤と同様昭和三四年一月分の給与支払の際が減額をなし得べき最初の機会となる。しかるに被控訴人はいずれもその際に減額をなさず、昭和三四年三月二〇日の三月分の給与支払の際本件減額をなしたのであるから、右減額は前述したところ明らかなとおり、不適法なものといわざるを得ない。 四、 仮にこの点を一歩譲つて、減額事由発生後最初に到来した機会に減額をなすことが社会通念上不可能であると認められるような特別の事情があり、しかもそのことが客観的にも明白であるような場合には、その後に到来する減額が可能となつた最初の機会に減額をすることが許されるとしても、その要件の審査に当つては、特に厳格な態度を以て臨むべきことは、既に述べたところから明らかであろう。 ところで被控訴人は本件減額 る減額が可能となつた最初の機会に減額をすることが許されるとしても、その要件の審査に当つては、特に厳格な態度を以て臨むべきことは、既に述べたところから明らかであろう。 ところで被控訴人は本件減額を昭和三四年二月以前にはなし得なかつた旨主張し、これは右に述べたような意味での特別な事情が存在したとの趣旨の主張にも解し得るので、この点について判断する。いずれも成立に争のない乙第一号証の一、二、同第二、第三号証、同第四号証の一、二、同第六号証の一ないし三、同第七、第八号証並びに当審証人A、同B(但しいずれも後記採用しない部分を除く)、同C、原審及び当審証人Dの各証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。すなわち本件減額の原因となつている控訴人等の前記欠勤は、群馬県教職員組合傘下の教職員の勤務評定反対闘争の一環として、統一行動に参加するため行なわれたものであり、昭和三三年一〇月二八日の統一行動への参加人員は五、〇〇〇名を超え、同年一二月一〇日の統一行動の際にも少なくとも二、〇〇〇名を超える程の多数にのぼつた。そこで群馬県教育委員会教育長としては、直ちに各学校長から当日における学校運営の状況、児童、生徒の登校状況、職員の勤務状況等についての報告を徴していたのであるが、同教育委員会事務局は同年一一月に入つてから右無断欠勤を理由とする給与の減額をするか否かの検討を始め、減額が法律的に可能であるか否かの調査研究等に着手した。そうしてその後全日勤務を欠いた者に対しては減額が可能であるとの結論に達し、減額についての具体的方法の研究、あるいは減額についての準備作業にとりかかつた。しかし同年一一月一五日が勤務評定書の提出期限であつたこともあり、事務局がこれに関する事務、さらに勤務評定書の提出阻止闘争あるいは提出された評定書の返還闘争に は減額についての準備作業にとりかかつた。しかし同年一一月一五日が勤務評定書の提出期限であつたこともあり、事務局がこれに関する事務、さらに勤務評定書の提出阻止闘争あるいは提出された評定書の返還闘争に対する応接、二、三の学校長から提起された勤務評定義務不存在確認訴訟への対策等に追われ、さらに例年行なわれる教員採用試験に関する事務、期末手当、勤勉手当支給に関する事務処理等に忙殺されていたため、本件減額に関する事務の処理は思うに任せない状態であつた。その後翌三四年一月下旬に至り中断していた減額事務を再開し、通達文書、減額早見表の作成等にとりかかつて、同年二月五日群馬県教育委員会教育長名義を以て、各市町村教育委員会教育長及び地方教育事務所長に対し、昭和三三年四月一日以降翌三四年一月末日までの間、服務監督権者の承認を受けないで一日の全勤務時間を勤務しなかつた者の給与減額をなすべき旨、及びそれについて該当者のある市町村教育委員会は、減額に関する内申書を同月一五日までに関係地方教育事務所に提出し、地方教育事務所は同月二〇日までに県教職員課へ提出すべき旨の通達を発した。そうしてその後提出された内申書の調査検討、誤謬の訂正等をなしたうえ、同年三月五日同じく教育長名義を以て関係の市町村教育委員会教育長、県立学校長、地方教育事務所長に宛て給与減額の決定通知をなし、出納事務処理についての打合せ等をなしたうえ、同月二〇月三月分の給与支払に際して数千名の該当者に対する給与の減額をなした。以上の事実を認めることができ、当審証人A、同Bの各証言中右認定に反する部分は採用せず、他にこの認定を左右するような証拠は存在しない。 以上認定の事実によつて考えるのに、本件減額の原因となつている控訴人等の無断欠勤が、前述のとおり群馬県教職員組合の勤務評定反対闘争という通常とは著し 他にこの認定を左右するような証拠は存在しない。 以上認定の事実によつて考えるのに、本件減額の原因となつている控訴人等の無断欠勤が、前述のとおり群馬県教職員組合の勤務評定反対闘争という通常とは著しく異なる事態のもとに行なわれたものであつて、欠勤した者の範囲も広範でかつ多数にのぼつており、しかも当日における各教職員の勤務の態様も一様でなく、その正確な把握には相当の困難が伴つたであろうことは想像するに難くない。しかし本来本件におけるように、教育委員会の承認を受けないで勤務しなかつたことに基づく給与の減額について明らかにすべき事項は、勤務を欠いた教職員の氏名と勤務を欠いた時間数及び勤務を欠いた点についての教育委員会の承認の有無に尽きるのであつて、いずれも裁量の入る余地のない事項である。そうしてこれらの点については、校務を掌り教職員を直接監督する立場にある校長(学校教育法第二八条第三項、第四〇条参照)が、比較的容易にこれを把握し得るのが通常であろう。そうして前掲各証拠によれば、本件において減額が昭和三四年三月に至るまでなされなかつたことの主たる原因は、前記の諸点についての調査の困難さというよりも、むしろ減額事務を担当していた群馬県教育委員会事務局が、減額自体をなすか否かあるいはその法律上の可否、根拠等の調査研究等に相当の日時を費し、あるいは他の所管事務の処理に忙殺されていた点にあつたものと認めることができる。そうして前判示のとおり減額は能う限り迅速になすべきものであり、減額事由発生後最初に到来した減額をなし得べき機会になすことを本則とする趣旨からいえば、右のような事由が減額の遅延を正当化する理由とならないことは明らかであろう。 そうして前掲各証拠によれば、通常の給与支払事務手続においては、各学校から管轄財務事務所に支出仕訳書が提出されるのは ば、右のような事由が減額の遅延を正当化する理由とならないことは明らかであろう。 そうして前掲各証拠によれば、通常の給与支払事務手続においては、各学校から管轄財務事務所に支出仕訳書が提出されるのは、毎月五日から一〇日位までの間であることが認められるが、前記認定の事実によれば昭和三四年二月以前の給与から減額をなすため事務手続上必要な期限までに、所要の減額事務をなすことが客観的に不可能てあつたと認めることはできず、原審及び当審証人Dの証言中右認定に反する部分は採用しないし、他にこの認定を左右するような証拠は存在しない。従つて昭和三四年二月以前には本件減額をなし得なかつたことを前提として、本件減額が適法であるとする被控訴人の主張は、その前提を欠き理由がない。 五、 最後に被控訴人は、本件相殺が労働基準法第二四条第一項本文に違背するとしても、右は法令に当る前記「群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一八条、第一九条、及び「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例」第一八条に基づいてなされたのであり、労働基準法第二四条第一項但書所定の法令に別段の定めがある場合に該当するから適法である旨主張する。「群馬県市町村立学校職員の給与に関する条例」第一八条は「1.学校職員が勤務しないときは、その勤務しないことにつき、教育委員会の承認があつた場合を除くほか、その勤務しない一時間につき勤務一時間当りの給与額を減額して給与を支給する。2.勤務一時間当りの給与額は、給料の月額に十二を乗じ、その額を一週間の勤務時間に五十二を乗じたもので除した額とする。」旨規定しており、「群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一八条、第一九条もこれと同様の内容である。そうして右規定が給与の減額をなし得る場合と、減額の計算方法とを定めたものであつて、減額事由が発生した月の翌月以降の 群馬県立学校職員の給与に関する条例」第一八条、第一九条もこれと同様の内容である。そうして右規定が給与の減額をなし得る場合と、減額の計算方法とを定めたものであつて、減額事由が発生した月の翌月以降の給与から減額することまで特に許容する趣旨を明示していないことは、その文言自体から明らかである。従つて右各規定は、減額事由が発生した当該月の給与から減額をなす場合、及び前判示のとおりその後の月の給与から減額をなすことが例外的に許容される場合に適用されるべきものであつて、控訴人主張のように、減額事由の発生した月の翌月以降の給与からの減額を許容した規定であると解することはできない。もちろん被控訴人主張のような趣旨に解釈した方が使用者にとつて便宜ではあろうけれども、前述の労働基準法第二四条第一項本文所定の全額払の原則の趣旨を考えれば、同項但書所定の例外の場合は厳格に解釈するのが妥当であるから、被控訴人主張のような趣旨であることが規定の文言上明示されていない本件のような場合に、安易に拡張解釈することは慎しむべきである。被控訴人としてはもしどうしても必要があつたのならば、その当時としては同条但書所定の控訴人側との協定による方法をとればよかつたのであつて、このような方法をとらなかつた本件のような場合にまで、前記のような拡張解釈により使用者側の便宜をはからねばならぬ必要は存しない。 以上に述べたとおり被控訴人主張の抗弁はいずれも採用することができず、被控訴人において控訴人等の昭和三四年三月分の給与から本件減額をなしたのは、労働基準法第二四条第一項に違反する違法な行為というほかないから、控訴人等より被控訴人に対し、右三月分給与債権の未払分として、減額された原判決添付別表(ハ)欄記載の金額である別表記載の各金員及びこれに対する支払期限後である昭和三四年六月一一 というほかないから、控訴人等より被控訴人に対し、右三月分給与債権の未払分として、減額された原判決添付別表(ハ)欄記載の金額である別表記載の各金員及びこれに対する支払期限後である昭和三四年六月一一日以降各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴請求はその理由がある。 第二、 被控訴人の反訴請求について一、 まず本件反訴が適法であるか否かの点について判断するのに、被控訴人の反訴請求は、被控訴人が控訴人等に対して有するとする昭和三三年一〇月分及び一二月分の給与支払の際の過払を原因とする不当利得返還請求であるところ、被控訴人は本訴において控訴人等の本訴請求に対する抗弁として、右不当利得返還請求権を自働債権とする相殺を主張していたこと前述のとおりである。そうして相殺の抗弁については、民事訴訟法第一九九条第二項により自働債権の存否についての判断が相殺を以て対抗した額につき既判力を生ずる旨定められている。従つて本訴において相殺の自働債権に供した旨主張した債権につき、同時に反訴その他の別訴においてその同一部分を訴求することが許されるか否かについては疑問があり、裁判所に二重の判断を求めることとなるし、既判力の牴触を生ずる可能性があるとの理由のもとにこれを否定する見解もある。しかし少なくとも本件におけるように同一訴訟手続において審理判断される反訴において、しかも予備的反訴という形式で本訴において相殺に供した旨主張した自働債権を訴求する場合には、右のような恐れはないのであるから、このような反訴は許容されてしかるべきである。すなわち被告が本訴で勝訴すればもちろん反訴請求に対する判断はその必要がなくなるのであるし、また本訴で敗訴しても相殺の抗弁が相殺不適状ないし本件におけるように相殺禁止等の理由で排斥された場合には、自働債権に 告が本訴で勝訴すればもちろん反訴請求に対する判断はその必要がなくなるのであるし、また本訴で敗訴しても相殺の抗弁が相殺不適状ないし本件におけるように相殺禁止等の理由で排斥された場合には、自働債権についての既判力は生じないのであつて、このような場合には被告としてはまさに反訴において自働債権の存否につき訴求する利益を有するものというべきである。また仮に本訴において自働債権不存在の理由で相殺の抗弁が排斥されて被告が敗訴した場合においては、重ねて反訴において同一事項についての判断を求めることは許されず、反訴は、不適法として却下を免れないと解するのが相当であり、このように解するならば、二重の判断ないし既判力の牴触というような問題は生じない。以上に述べたところから明らかなとおり、被控訴人の本件反訴請求の目的が本訴における相殺の抗弁の自働債権それ自体であるという理由だけでは、本件反訴が不適法であるということはできないし、また本訴における相殺の抗弁の方も不適法となることはないと解する。 二、 次に本件反訴が反訴としての要件を充たしているか否かについて判断する。民事訴訟法第二三九条によれば、反訴の要件として反訴請求が本訴請求又はこれに対する防禦方法と牽連することが必要とされている。そうして右規定にいわゆる本訴請求と牽連するとは、本訴請求とその権利関係の内容又は発生原因の点で事実上又は法律上共通性が存在することであり、本訴の防禦方法と牽連するとは、抗弁事由とその内容又は発生原因において事実上又は法律上共通性が存在することをいうものと解すべきである。 ところで本件における控訴人等の本訴請求は、前述のとおり控訴人等の被控訴人に対する昭和三四年三月分の給与債権のうちの未払残額の支払請求であり、被控訴人の反訴請求は、被控訴人が控訴人等に対して有するとする。昭和 件における控訴人等の本訴請求は、前述のとおり控訴人等の被控訴人に対する昭和三四年三月分の給与債権のうちの未払残額の支払請求であり、被控訴人の反訴請求は、被控訴人が控訴人等に対して有するとする。昭和三三年一〇月分及び一二月分の給与支払の際の過払を原因とする不当利得返還請求である。そうして各月に支払われる給与がその月の勤務に対するものとして支払われていることは前述のとおりであり、従つて各月毎に支払われるべき給与債権は一応別個の存在を有するものと解すべきであるけれども、右両請求はいずれも控訴人等との間の同一の労働契約の存在を前提とするものであり、各給与債権の発生した月の間隔もせいぜい五箇月程度なのであるから、右両請求は権利関係の発生原因の相当部分において事実上共通性があり、これを同一手続内において併合審理することが訴訟経済の要請にも合致するものと解される。従つてこの観点からするときは、被控訴人の反訴請求は控訴人等の本訴請求と牽連するものと解するのが相当である。仮にそうでないとしても、被控訴人は本訴において反訴請求にかかる不当利得返還請求権を自働債権とする相殺を抗弁として主張していることは前記のとおりであり、本件反訴請求が本訴の防禦方法である右抗弁と牽連することはいうまでもない。そうしてこのように本訴の防禦方法と牽連する反訴が適法であるためには、反訴請求の牽連する防禦方法が適法に提出されていることが必要であるが、実体法上その理由があることは必要でないと解すべきであるから、本件におけるように本訴において相殺の抗弁が相殺禁止の理由により排斥されたとしても、これと牽連する反訴請求が不適法となるいわれはなく、この意味からいつても本件反訴は適法であるといわなければならない。 三、 よつて本案について判断するのに、控訴人等が平常勤務日である原判決添付 、これと牽連する反訴請求が不適法となるいわれはなく、この意味からいつても本件反訴は適法であるといわなければならない。 三、 よつて本案について判断するのに、控訴人等が平常勤務日である原判決添付別表(ニ)欄記載の各年月日に、服務監督権者である各教育委員会の承認を受けないで勤務しなかつたこと、及び控訴人等が右勤務を欠いた各月において、当月分の給料及び暫定手当の全額である別表(ホ)欄記載の金額の支払いを受けたことは当事者間に争がなく、右欠勤分の給与額がそれぞれ別表(ハ)欄記載の各金額であることは、控訴人等において明らかに争わないからこれを自白したものとみなすべきである。そうして右事実によれば控訴人等は法律上の原因なくして前記欠勤分の給与額を利得し、これにより被控訴人は右各金額相当の損害を受けたものというべきであり、かつ前掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人等はこの点につき悪意の受益者であると認められるから、被控訴人より控訴人等に対し、前記原判決別表(ハ)欄記載の金額である別表記載の各金員及びこれに対する右各金員の受領日後である昭和三五年六月二四日以降各完済に至るまで、民事法定利率年五分の割合による利息の支払を求める反訴請求はその理由がある。 第四、 結論以上に述べたとおりで、控訴人等の本訴請求はその理由があり、正当として認容すべきであるから、これと異なる原判決は取消を免れず、また被控訴人の予備的反訴にかかる請求もその理由があるから、正当としてこれを認容すべきである。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九三条第一項本文、第九二条本文、第八九条を適用し、なお本訴請求については仮執行の宣言を付さないのを相当と認めるからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官満田文彦裁判官弓削孟裁判官藤田耕 条本文、第八九条を適用し、なお本訴請求については仮執行の宣言を付さないのを相当と認めるからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官満田文彦裁判官弓削孟裁判官藤田耕三)

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