令和5特(わ)311 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
令和7年3月21日 東京地方裁判所
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判決文本文20,462 文字)

令和7年3月21日東京地方裁判所刑事第16部宣告令和5年特(わ)第311号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反 主文 被告人株式会社Bを罰金2億円に、被告人B1を懲役1年6 月に処する。 被告人B1に対し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実)株式会社Cグループ(令和元年12月31日以前の商号は株式会社C)、株式会社D及び被告人株式会社B(平成30年7月16日以前の商号は株式会社B´。以下「被告会社」という。)は、いずれも広告代理業等を営む事業者、株式会社E、F及びGは、いずれもイベントの企画・運営等を営む事業者であり、C1は、株式 会社Cグループのスポーツ局局長補等の地位にあり、その従業者として公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)が順次発注する第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、両大会を合わせて「東京2020大会」という。)に関して競技・会場ごとに実施される各テストイベント計画立案等業務 委託契約並びに同契約の受注者との間で締結されることとされていた各テストイベント実施等業務委託契約及び各本大会運営等業務委託契約(以下「テストイベント計画立案等業務委託契約等」という。)の受注等に関する業務に従事していたもの、D1は、株式会社D´のスポーツビジネス局長の地位にあるとともに同社及び株式会社Dが共同で設置した「TOKYO2020推進プロジェクト」の構成員の地位 にあり、株式会社Dの従業者として前記同様の業務に従事していたもの、被告人B にあるとともに同社及び株式会社Dが共同で設置した「TOKYO2020推進プロジェクト」の構成員の地位 にあり、株式会社Dの従業者として前記同様の業務に従事していたもの、被告人B 1は、被告会社の2020推進室本部長兼執行役員等の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事していたもの、E1は、株式会社Eの執行役員の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事していたもの、F1は、株式会社Fの常務取締役等の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事していたもの、G1は、株式会社Gの取締役等の地位にあり、その従業者として前記同様の業 務に従事していたもの、Hは、組織委員会大会準備運営第一局次長等として、テストイベント計画立案等業務委託契約等の発注等に関する業務に従事していたものである。 被告人B1は、H、C1、D1、E1、F1、G1、広告代理業等を営むその他の事業者1社(以下、同事業者を「A社」といい、A社と株式会社Cグループ、株 式会社D、被告会社、株式会社E、株式会社F及び株式会社Gの6社とを合わせて「関係事業者7社」という。)の従業者として前記同様にテストイベント計画立案等業務委託契約等の受注等に関する業務に従事していた者及びそれぞれその従業者として業務に従事する関係事業者7社の他の従業者らと共謀の上、前記従業者らがそれぞれその従業者として業務に従事する関係事業者7社の業務に関し、平成30 年2月頃から同年7月頃までの間、東京都港区(住所省略)所在の組織委員会事務所等において、面談等の方法により、テストイベント計画立案等業務委託契約等について関係事業者7社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札 、テストイベント計画立案等業務委託契約等について関係事業者7社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行うことなどを合意した上、同合意に従ってテストイベント計画立案等業務 委託契約等についてそれぞれ受注予定事業者を決定するなどし、もって関係事業者7社が共同して、テストイベント計画立案等業務委託契約等の受注に関し、相互にその事業活動を拘束し、遂行することにより、公共の利益に反して、テストイベント計画立案等業務委託契約等の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。 (事実認定の補足説明) 第1 争点被告会社及び被告人B1の弁護人ら(以下「弁護人ら」という。)は、判示の各テストイベント計画立案等業務委託契約について独占禁止法89条1項1号及び3条所定の不当な取引制限罪が成立することは認めるものの、各テストイベント実施等業務委託契約及び各本大会運営等業務委託契約については、同罪は成立せず、無罪 である旨主張している。 当裁判所は、弁護人らの主張等を踏まえても、被告会社及び被告人B1について、判示のとおり、テストイベント計画立案等業務委託契約等について、不当な取引制限罪が成立すると判断したので、以下、その理由を補足して説明する。 第2 事実関係等 関係各証拠によれば、以下の事実が明らかに認められる。なお、弁護人は、同意された各供述調書等の証拠の信用性を争う旨主張しているが、以下に記載する事実関係については、当時の関係者間のメール、資料、手帳、議事録等の客観的な資料に照らし、いずれもその存在を認めることができる。 1 東京2020大会、組織委員会の概要等 ⑴ 東京2020大会においては は、当時の関係者間のメール、資料、手帳、議事録等の客観的な資料に照らし、いずれもその存在を認めることができる。 1 東京2020大会、組織委員会の概要等 ⑴ 東京2020大会においては、同大会を招致するに当たって東京都及び日本オリンピック委員会と国際オリンピック委員会との間で締結された開催都市契約に基づき、本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場において、競技や会場毎に、競技運営、会場運営等のテストイベントを行うこととされていた。 ⑵ 東京2020大会の準備及び運営に関する事業等を行っていた組織委員会に は、テストイベントに関連する業務を担当する部局としてテストイベントマネジメント課(以下「TEM」という。)が置かれ、Hは、TEMが置かれていた大会準備運営第一局(以下「第一局」という。)の次長として、テストイベントに関する業務(以下「テストイベント業務」という。)の発注業務に中心的な関与をしていた。 ⑶ア組織委員会における物品・役務等の調達は、会計処理規程に基づいて行わ れており、同規程は、契約の方法として、競争入札、複数見積契約、プロポーザル方式契約のほか、単数見積による契約として特別契約を定めているところ、同規程33条は、原則として競争入札によることを定め、それ以外の方法によって調達する場合には、同規程34条ないし36条に定める例外的な場合に当たる必要があるとされていた(以下、「特別契約」のことを、一般的な用例に従い、「随意契約」 という。)。 イテストイベント業務は、テストイベント計画立案等業務(以下「計画業務」という。)とテストイベント実施等業務(以下「実施業務」という。)に分けられ、入札の単位となった会場・競技の案件(以下「会場案件」という。)毎に発注されたが、各会場 計画立案等業務(以下「計画業務」という。)とテストイベント実施等業務(以下「実施業務」という。)に分けられ、入札の単位となった会場・競技の案件(以下「会場案件」という。)毎に発注されたが、各会場案件に係る計画業務(以下「本件計画業務」という。)については一 般競争入札により、その実施業務及びその後の本大会運営等業務(以下「本大会業務」という。)については、随意契約により発注された(以下、各会場案件に係る実施業務を「本件実施業務」、同案件に係る本大会業務を「本件本大会業務」という。)。 2 各事業者の事業内容等 被告会社は、日本でも有数の広告代理店として、スポーツイベントのマーケティング、スポーツイベントの競技運営、会場運営等(以下、単に「競技大会の運営等」という。)を行っていた。 Cは、国内で圧倒的に最大手の広告代理店として、スポーツイベントのマーケティング、競技大会の運営等を行っており、長年にわたり、日本オリンピック委 員会のマーケティング専任代理店を務めていたほか、様々な大規模スポーツイベントにおいて、そのマーケティング等を行うなどしていた。東京2020大会においても、組織委員会からマーケティング専任代理店に選定されており、自社の従業者を組織委員会の幹部職員として出向させるなど、組織委員会を始め東京2020大会全体の運営に対して大きな影響力を有していた。 株式会社D(以下「D」という。)及びA社も、C及び被告会社とともに、広告 代理店として競技大会の運営等を行っており、株式会社E(以下「E」という。)、株式会社F(以下「F」という。)及び株式会社G(以下「G」という。)は、いずれもイベントの企画・運営等の事業を行う事業者として、競技大会の運営等を行っていた。 関係事業者7社は、経験 う。)、株式会社F(以下「F」という。)及び株式会社G(以下「G」という。)は、いずれもイベントの企画・運営等の事業を行う事業者として、競技大会の運営等を行っていた。 関係事業者7社は、経験やノウハウ等に応じて、それぞれ競技大会の運営等 を得意とする競技・会場があり、また、日本でスポーツの競技大会の運営等を行うことのできる実績、能力のある事業者は、関係事業者7社をはじめとする一定の範囲の事業者に限られていた。 3 テストイベント業務の発注方式の決定経緯等⑴ア Hは、平成29年7月頃から、テストイベントの実施が遅延する中、テス トイベント業務の事業委託に関する発注方法について、Cの従業者らに協力を求めるなどして検討した結果、時間的に余裕のない状況で、各競技について競技大会の運営等の実績等を有する事業者を確保するためには、随意契約により、テストイベント業務を発注する必要があると考え、組織委員会内部での調整を進めることとした。 イ Hは、平成29年10月11日及び同月12日、組織委員会における財務全般の最高責任者であったI1(以下「I1」という。)や、その部下で、組織委員会における物品・役務等の調達全般を担当する調達部の部長であったI2(以下「I2」という。)と順次打合せを行った。Hは、テストイベント業務を外部事業者に委託すべきことに加え、テストイベント業務の委託先事業者は、テストイベントを 実施する競技の国際競技団体や国内競技団体との良好な関係を構築できていること、テストイベントを実施する競技について競技団体が主催する国際競技大会を運営した実績があることに加え、「テストイベント、本大会の準備・実施運営を遂行しうる充分な制作能力を有していること」が必要であって、これらの要件を満たす事業者については随意契約 催する国際競技大会を運営した実績があることに加え、「テストイベント、本大会の準備・実施運営を遂行しうる充分な制作能力を有していること」が必要であって、これらの要件を満たす事業者については随意契約により発注することが適当であり、該当する事業者がいない 場合には、総合評価方式入札の選定が可能であるとの説明を行うなどした。 しかし、I1及びI2は、Hの説明を踏まえても、前記会計処理規程に照らせば、随意契約によってテストイベント業務の委託先事業者を選定する特別な理由はないと考え、テストイベント業務を随意契約によって調達することを承諾しなかった。 ウその後も、TEMと調達部の職員との間でテストイベント業務の調達方法について検討が進められたが、平成30年1月11日には、同業務のうち本件計画業 務については、その委託先事業者を総合評価方式の一般競争入札(以下、単に「入札」ということがある。)によって選定すること等が事実上決定され、同年3月15日には、組織委員会において、事務総長が議長を務め、予算の執行に関して事実上の意思決定を行っていた経営会議において、本件計画業務を一般競争入札によって発注することが決定された。同経営会議の場で、Hは、本大会に向けては別途検 討を行うが、当然本大会を見据えてのテストイベントであるから、基本的には同じ事業者でいくことを考えている旨発言し、それに対して、事務総長であったI3(以下「I3」という。)も、テストイベントの委託業者と本番の委託業者は、基本的には、一致しないと意味がないなどと発言した。 ⑵アウの経営会議での意思決定等を踏まえ、平成30年3月22日に開催さ れた調達管理委員会において、本件計画業務の調達方式を総合評価方式の一般競争入札とすることが審議された。その際、I2から アウの経営会議での意思決定等を踏まえ、平成30年3月22日に開催さ れた調達管理委員会において、本件計画業務の調達方式を総合評価方式の一般競争入札とすることが審議された。その際、I2から、総合評価方式による条件付き一般競争入札としたい旨の説明があったほか、今回はテストイベントの計画立案のみであるが、引き続き特別契約にてテストイベントの運営を委託することを想定しているなどといった説明がされた。審議の結果、「事業者の選定にあたっては、技術 点70点、価格点30点の総合評価方式とする。なお、本大会における運営業務を見据え、本大会のコスト最適化に向けた提案を技術点の評価項目に含める。」との内容を盛り込んだ議案が、原案のとおり了承された。同議案のうち「なお」以下は、事業者が本大会業務を随意契約により受託する際に価格を安くするための仕組みであった。 結局、本件計画業務の発注に関する事業者決定基準においては、満点100点の うち、価格点が30点、技術点が70点とされ、技術点中20点は、「対象競技テストイベント事業実施における予算計画の管理手法及び本大会コスト最適化に向けた提案」に充てられた。この事業者決定基準は、入札の際に、事業者に公表された。 イ組織委員会がある業務について一般競争入札により発注する場合には、調達部が当該業務の担当部署と協議の上で予定価格を決定していた。そして、本件計画 業務の予定価格は、会場案件毎に原則一つの事業者から下見積書の提出を受け、同見積書記載の金額を元に決められていた。もっとも、調達部は、準備が遅れる中、テストイベントの実施運営等に関する全体的な予算との関係等を考慮して、1競技当たり2000万円で計算した範囲内であれば、TEMが予定価格案として提案してきた、下見積書記載の金額にあ 準備が遅れる中、テストイベントの実施運営等に関する全体的な予算との関係等を考慮して、1競技当たり2000万円で計算した範囲内であれば、TEMが予定価格案として提案してきた、下見積書記載の金額にある程度余裕を持たせた金額や下見積書記載の金額 に近い金額をそのまま予定価格としていた。 4 Hらが面談等を行うに至る経緯等Hは、本件計画業務が一般競争入札により発注されることになったことを受け、競技大会が短期間に多数かつ大規模に行われる東京2020大会の競技大会の運営等を遺漏なく行うためには、各事業者の実績等を把握した上で、各事業者に受注し てもらいたい競技を伝えたり、各事業者の意向を取りまとめるなどして調整を行うことが必要と考え、平成30年1月25日及び同月30日、C1等のCの従業者らと打合せを行い、HやCの従業者らで、実績等がある、Cを除く関係事業者7社を含む複数の事業者の従業者らと面談等のやりとりを行うこととした。 5 被告会社関係者の動向等 本件事案に関する被告会社関係者の動向等として、以下の事実等が認められる。 被告会社においては、東京2020大会関連業務につき、平成29年7月に2020推進室を設置し、被告人B1が同室本部長に就任するとともに、同室設置以前から同業務を担当していたB2(以下「B2」という。)が、同室副本部長に就任した。B2は、Cスポーツ局2020東京オリンピックパラリンピック室(以 下「オリパラ室」という。)室長であるC2(以下「C2」という。)との面談等 により同業務関連の情報等を得ていた。 被告人B1は、2020推進室設置に先立つ同年6月28日、同室担当取締役となるB3(以下「B3」という。)と共に、B2から、大会やプレイベントの運営は約50の大会で構成され、全体の仕切り ていた。 被告人B1は、2020推進室設置に先立つ同年6月28日、同室担当取締役となるB3(以下「B3」という。)と共に、B2から、大会やプレイベントの運営は約50の大会で構成され、全体の仕切りをCが軸になって推進しているものの、現状、いくつかの大会に関してはA社及び被告会社と分け合う意向が示されている こと等が記載された資料に沿って、東京2020大会関連業務に関する現状説明を受けるなどした。 その上で、被告人B1は、同年8月1日、B2と共に、東京2020大会に関し、C2及びCスポーツ局局長補であったC1(以下「C1」という。)と打合せを行った。また、被告人B1は、同月31日、B2に加え、被告会社の当時の代表取締 役会長であったB4(以下「B4」という。)及び社長であったB5(以下「B5」という。)と共に、Hの下を訪問した。 B2は、平成29年11月下旬頃、東京2020大会に関する報告用資料を作成し、これに基いて、B5に対し、被告会社として獲得を目指す競技種目の検討に係る進捗状況を報告するなどした。同資料には、「競技運営に関して」との項目 において、本年度内に本大会運営を視野に入れたテストマッチのスキームを確定する予定などと記載されていた。 B2は、平成29年12月13日のC1らとの面談に続き、同月19日に被告人B1と打合せの機会を設けた上で、翌20日に被告人B1と共にHと会食した。 その上で、同月25日、B4及びB5に対し、東京2020大会に関する現況等の 報告を行った。同報告用の資料には、「組織委員会・Cより」「2会場の競技に関して、Bで運営を行わないかとのオファーあり」、「基本、アグリーの方向で検討中だが、随契ベースでの発注は困難なため何らかの形での入札案件ベースとなる→「受注確定には至っていな り」「2会場の競技に関して、Bで運営を行わないかとのオファーあり」、「基本、アグリーの方向で検討中だが、随契ベースでの発注は困難なため何らかの形での入札案件ベースとなる→「受注確定には至っていないが、可能性は大きい」という段階」等の記載があった。 B2は、平成30年1月中旬頃、被告会社から組織委員会に出向してTEM に在籍していたB6(以下「B6」という。)から、計画業務の入札手続に関して、 バドミントン競技に係る下見積書の作成を依頼されたことを受け、2020推進室の一員であったB7を介して、被告会社の子会社従業員に対し、下見積りの作成を依頼したが、この依頼メールには、計画業務の仕様書や、事業者決定基準等が添付されていた。 これを受けた下見積書提出後、B2は、B6から、2度にわたり、見積額を高く してほしい旨の連絡を受けるなどしたことから、この依頼に従い、見積合計金額を高くした下見積書を作成して、組織委員会に提出した。結局、当初の下見積額が税込約500万円のところ、最終的に提出した下見積額は税込1900万円弱となった。 B2は、平成30年1月29日のB4とHとの面談に備え、同月下旬頃、B 4に対し、東京2020大会に関する状況等の報告を行った。同報告用の資料には、「計画業務の受託社がテスト大会の実務担当にそのままシフトするイメージ(テスト大会のレビューを踏まえた、本大会の計画・本大会の実施運営も一連の流れだが、スキームは現状不透明)」、「「今後の運営委託のスキームが不透明な状況」と「受け皿の体制構築を早期に手配する必要性」」などと記載されていた。 被告人B1は、同月30日、B2に対し、「昨晩、B4会長がHさんと一献中に電話が入った件」「情報共有と今後の対応を打ち合わせてください。」等 早期に手配する必要性」」などと記載されていた。 被告人B1は、同月30日、B2に対し、「昨晩、B4会長がHさんと一献中に電話が入った件」「情報共有と今後の対応を打ち合わせてください。」等と記載したメールを送信し、同年2月1日、B2との打合せを行った。また、被告人B1は、同月7日、B3、B2等と共に、被告会社における人員補強等のための打合せを行った上で、同月8日、B2と共に、Hと面談した。 B2は、平成30年2月28日、報告用資料を基に、B3及び被告人B1との間で打合せを行った。同資料には、同打合せのポイントとして、計画業務の入札の公示時期である同年4月に向けて、東京2020大会の競技運営業務に関し、被告会社として受注を目指す業務内容の範囲を明確にするとともに、そのための体制構築方針を明確にする旨の記載がされている。 B2は、同打合せの結果等も踏まえて報告用資料を作成し、同年3月19日、B 3及び被告人B1と共に、同資料に基づき、B5に対し、同方針等に関する報告を行うなどした。同資料には、「競技運営に関する基本情報」として、テスト大会に関しては、基本計画が「18年3~6月にピッチ」、実施が「19年(競技によって時期は変動)」、「レビュー」と分けられた上、「計画業務でピッチ→実施は随契の方針」等の記載がされ、また、本大会に関しては、「本来はテストから地続き だが、スキームは分割」等の記載がされており、さらに、「競技運営に関する当社のスコープ(案)」として、「計5競技にフォーカスする」などと記載された上、「基本計画策定途上において、業務としての収益性が担保されない状況となった場合においては、実施業務に関して辞退できる“逃げ道”を残す」等の記載がされるなどしていた。 ⑺ 被告会社に 上、「基本計画策定途上において、業務としての収益性が担保されない状況となった場合においては、実施業務に関して辞退できる“逃げ道”を残す」等の記載がされるなどしていた。 ⑺ 被告会社において作成された平成30年5月8日更新と記載のある「2020推進室室会アジェンダ資料」と題する資料には、「中核業務である2020年の本大会競技運営業務につながるテストイベントの計画業務獲得」に関するものとして、①K会場、②L会場及び③武蔵野の森総合スポーツプラザ会場・東京スタジアム会場の各計画業務が記載され、「当面のアクション/スケジュール・予定」とし て、①については「5月10日企画書提出済み」、「5月16日プレゼン(5月中に結果判明予定)」、②については「6月上旬公示⇒6月下旬提案予定」、③については「5月下旬公示⇒6月中旬提案予定」と記載され、「中期的なスケジュール」として、①について「19年7月・9月にテストイベント実施」、「テストイベントが堅調に進めば、本大会運営業務に地続きで突入」と記載されるなどしている。 6 被告会社以外の関係者らの動向等HやC1らは、4記載の面談等のやり取りを行う以前から競技毎に大会運営実績等を有する事業者を記載した一覧表を作成するなどしていたところ、4記載の面談等の結果を踏まえ、各事業者の実績、受注希望のほか、本件計画業務全体における委託先事業者のバランス等を踏まえたHの意向等も考慮して、前記一覧表を修正す るなどし、平成30年4月2日の打合せを経て、同日までの面談等の結果を集約し、 Hが各事業者との間で、計画業務の入札行動、協業体制等について認識の一致が得られた会場案件について整理するなどして、前記一覧表の最終更新を行った。 7 入札結果等とその後の推移⑴ 各会場案件 Hが各事業者との間で、計画業務の入札行動、協業体制等について認識の一致が得られた会場案件について整理するなどして、前記一覧表の最終更新を行った。 7 入札結果等とその後の推移⑴ 各会場案件について、計画業務が入札により発注されたところ、相当数の会場において、Hの意向に沿った、関係事業者7社中では1社のみによる入札が行わ れ、その結果も、全26会場案件中、合計二つの会場案件を除く、24会場案件においてHの意向に沿った事業者が受注するに至り、更にそのうち16会場案件については、Hの意向に沿った事業者のみが入札に参加して必要書類を提出するに至った。 被告会社においては、このうち、K会場の計画業務について約1939万円(予 定価格3000万円)で、L会場の計画業務について約1065万円(予定価格1500万円)で、武蔵野の森総合スポーツプラザ会場・東京スタジアム会場の計画業務について約3791万円(予定価格5900万円)で、それぞれ入札に参加して、いずれも受注した。 ⑵ また、計画業務が発注された後、順次、実施業務及び本大会業務が発注され たところ、同一会場で行われる競技の本大会業務は同一の事業者が行った方が効率的であるなどといった理由から、それぞれ同一会場で行われる他の競技の計画業務を受注していた別の事業者に本大会業務を委託したサッカー及びマラソンスイミングを除いて、計画業務を受注した事業者が、その会場案件において行われた実施業務及び本大会業務を随意契約により受注した。被告会社においても、上記3会場の 実施業務及び本大会業務について、随意契約で発注を受けて受注した。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 第2の3記載の事実関係からすると、組織委員会において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が、基本 会業務について、随意契約で発注を受けて受注した。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 第2の3記載の事実関係からすると、組織委員会において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が、基本的には、その後の本件実施業務及び本件本大会業務を受注する方針(以下「本件方針」という。)とされており、このような 方針の下、本件計画業務の発注がされたものと認められる。第2の7⑵記載の事実も、このような認定を裏付ける。 アそして、第2の5⑶記載の事実関係によると、B2は、遅くとも平成29年12月25日には、組織委員会やCの関係者から、東京2020大会の競技運営が「何らかの形で」の「入札」になる旨の情報を得ていたことが明らかである。 そして、第2の5⑷ないし同⑺記載の事実関係によれば、B2は、平成30年1月下旬には、計画業務が入札になる旨の確定的な情報を得ており、同時点や同年3月19日の時点において、計画業務を受注した事業者が実施業務も随意契約で担うことが組織委員会側の「方針」であることや、本大会業務は「本来」的に「地続き」であるとの認識を有していたものと認められる。 イこの点に関して、B2は、当公判廷において、要旨、次のとおり供述した。 平成29年秋頃までは、組織委員会やCの関係者とは、テストイベント業務と本大会業務とを分けることなく、競技毎に実績のある事業者に随意契約で発注されることを前提とした話がされていた。 平成30年1月に入り、計画業務について一般競争入札とする旨の確定的な情報を入手し、同月下旬頃までに得た情報を基に、同時点におけるB4等への前記報告用の資料を作成した。自分自身も、通常、計画業務と実施業務が分離されることはなく、日程が苦しい中で実施業務のために入札を実施す 入手し、同月下旬頃までに得た情報を基に、同時点におけるB4等への前記報告用の資料を作成した。自分自身も、通常、計画業務と実施業務が分離されることはなく、日程が苦しい中で実施業務のために入札を実施することが現実的ではないことや、テストイベントは本大会のリハーサルの意味合いを持つため、テストイベン ト業務の受注事業者が本大会を受注することが望ましい旨考えていたが、組織委員会の関係者等からも、計画業務を担当した競技・会場に対して、実施業務もそのまま随意契約で担当する、基本的にテストイベントを担当した事業者が本大会をそのまま担当するのが一番スムーズだと考えている旨の説明を受けており、同報告用資料にその旨記載した。その一方で、テストイベント業務の受注事業者と同一事業者 が本大会業務までそのまま担えるかどうかや、その発注方式等は明らかではなく、 そのような中でも本大会業務を見据えた人員体制等を構築していく必要があるというジレンマを抱えていたことから、同報告用資料にその旨も記載した。 同年3月19日時点においても、同様の情報を基にして、B5等に対する報告用資料を作成した。HやTEMの意向どおりに本大会業務について随意契約での発注となる可能性はあると認識していた一方で、その確証まではなく、調達部門の反対 等によって入札による発注となる可能性も考えられたことから、本大会に関し、「本来はテストから地続きだが、スキームは分割」との記載をした。 また、東京2020大会に関係した事業者中の一社の従業者として、同社の東京2020大会関連業務に従事していたJも、当公判廷において、平成30年2月8日及び同年3月29日のHとの面談時において、今回の入札は計画業務に関す るものであるが、その後の実施業務、本大会業務は随意契約が望ま 業務に従事していたJも、当公判廷において、平成30年2月8日及び同年3月29日のHとの面談時において、今回の入札は計画業務に関す るものであるが、その後の実施業務、本大会業務は随意契約が望ましく、組織委員会内部でそのような話があると告げられており、計画業務の受注事業者が本大会業務まで随意契約で受注する可能性が高いと考えていた旨供述しているところである。 ウこのようなB2やJの供述内容は、第2の3アから同アまでに記載した 組織委員会内部の状況とも符合するものであって信用することができ、アの認定の根拠たり得るものと言える。弁護人らは、B2作成に係る前記各報告資料につき明らかに事実とは異なる記載が散見されるなどと指摘するが、アの認定に関わる記載についての指摘とは言えず、アの認定を妨げるものではない。 そして、B2は第2の5記載のとおり、アに認定した認識を自らの上司等と適時 に情報共有していたものである。 アこれに関する被告人B1の対応状況を見ると、被告人B1は、第2の5記載のとおり、B2から、説明を受けるなどしたことを皮切りに、B2と共にC1と打合せをしたり、Hと会うなどしている。 被告人B1は、その上で、B4が、B2から、第2の5記載のとおり、計画業 務が入札となることのほか、第2の5記載のとおり、計画業務の受託社が実施業 務にそのままシフトするイメージであることや、本大会の計画・実施運営も一連の流れであること等を含む報告を受けた上で、平成30年1月29日のHとの面談に臨んだ後、B2と打合せを行うとともに、同年2月7日には、被告会社における人員補強等のための打合せを行い、同月8日、B2と共に、Hと面談した。また、被告人B1は、第2の5記載のとおり、B2等と共に、被告会社として 打合せを行うとともに、同年2月7日には、被告会社における人員補強等のための打合せを行い、同月8日、B2と共に、Hと面談した。また、被告人B1は、第2の5記載のとおり、B2等と共に、被告会社として受注を目指 す業務内容の範囲やそのための体制構築方針等を明確にするための打合せを行った上で、B5に対し、計画業務で入札が行われ、実施業務は随意契約の方針であることや、本大会については「本来」はテストイベントから「地続き」であることなどを報告した。 これらの被告人B1の行動は、被告人B1が、被告会社の従業者として、被 告会社の東京2020大会関連業務のため、被告会社で同業務を担当する部署の長として、組織委員会やCの関係者らから得た情報について上司と共有を図るB2と十分に連携を取りながら、部下であるB2を介するほか、自らその場に同席するなどして、B4やB5にも報告・相談しつつ、被告会社としての東京2020大会に向けた方針等を作り上げていたこと等を示すものといえる。B2が組織委員会やC の関係者等から得た情報のうち、計画業務を担当した競技・会場に対して、実施業務もそのまま随意契約で担当する、基本的にテストイベントを担当した事業者が本大会をそのまま担当するという情報のみを被告人B1と共有しないなどと言うことは、およそ考え難いことからすると、被告人B1も、組織委員会内における本件方針を認識していたと認定することができる。 この点に関連するHの当公判廷における供述によると、H自身が、被告人B1等被告会社関係者に、明示的に、本件実施業務や本件本大会業務が、本件計画業務の受託事業者に随意契約により委託されるものであるといった話をしたか否かにつき確定的に認定することまではできないものの、Hが、テストイベントと本大会の連続性に 施業務や本件本大会業務が、本件計画業務の受託事業者に随意契約により委託されるものであるといった話をしたか否かにつき確定的に認定することまではできないものの、Hが、テストイベントと本大会の連続性について、「本大会のためのテストイベントなので、そこが分離されるという ことをそもそも想定していなかった」、「テストイベント業務だけ取るということ の意味はほとんどない」、「(テストイベントは)事業会社の人がノウハウを身につけるという話で(ある)」、各事業者と面談した当時、事業者側にとっても「当たり前すぎる」ことと思っていた、などと述べ、テストイベントは、本大会の運営等を検証するために、委託を受けた民間事業者において実際に業務を経験してもらい、知見等を得させていくことが目的なのであって、当該事業者においてテストイ ベント業務のみを受注することの意味がないことは当然のことであり、計画業務に引き続き、実施業務及び本大会業務を別々の事業者が受注することは基本的に想定し難いものである旨供述していることも、上記認定を支えるものと言える。 イこれに対し、被告人B1は、計画業務が入札になると認識したときから、実施業務、本大会業務等の全てについて、確実に入札での発注となり、事業者の選 び直しをしていくことになると思っていた、B2は、B4を喜ばせるための忖度として、報告用資料に、話を盛ったり、空想や妄想の類を載せることがあり、本件計画業務、本件実施業務及び本件本大会業務の発注形態等について事実が記載されていないことは分かっていたなどと供述する。 しかしながら、B2による前記発注形態等の報告とB4への忖度等が結び付くと は言い難い。そもそも、被告会社で東京2020大会関連業務を担当する部署の長である被告人B1が、B4やB5に る。 しかしながら、B2による前記発注形態等の報告とB4への忖度等が結び付くと は言い難い。そもそも、被告会社で東京2020大会関連業務を担当する部署の長である被告人B1が、B4やB5に対するB2による明らかに事実と異なる報告をそのまま放置することは、不自然というほかない。被告人B1の前記供述は信用することができない。 この点、弁護人らは、第2の5記載の2020推進室室会アジェンダ資料 のうち、K会場についてのみ「テストイベントが堅調に進めば、本大会運営業務に地続きで突入」と記載されていることは、被告人B1らに対して組織委員会の関係者等から本件方針の伝達があったことを否定する事実である旨主張するが、同資料は、K会場以外の会場では、計画業務の入札に関する公示すらされていない時点に作成されたものであって、中期的なスケジュールを記載する段階になかったと考え るのが自然であり、弁護人らによる同主張はアの検討を左右するものではない。 また、弁護人らは、組織委員会において、計画業務についても当初は随意契約が想定されながら、調達部門に反対され入札となった経緯がある以上、被告人B1が計画業務に引き続く実施業務や本大会業務も入札になると考えるのは当然かつ自然であるとも主張するが、そのような経緯は関係事業者の従業者に実施業務や本大会業務が入札となる余地を想起させるものであるとしても、本件方針を認識している こととは両立するものであって、アの認定を妨げる事情とは言えない。アで認定したところからすれば、いずれにせよ、被告人B1ら被告会社関係者において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が、その後の本件実施業務及び本件本大会業務を受注する可能性が相当程度に高いと認識していたことは疑う余地がない。 さら 告人B1ら被告会社関係者において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が、その後の本件実施業務及び本件本大会業務を受注する可能性が相当程度に高いと認識していたことは疑う余地がない。 さらに、弁護人らは、第2の5記載のB2作成に係る平成30年3月19日に おけるB5等に対する報告用資料上の「基本計画策定途上において、業務としての収益性が担保されない状況となった場合においては、実施業務に関して辞退できる“逃げ道”を残す」との記載は、組織委員会の本件方針に関して被告会社において認識がなかったことを強く推認させる事情である旨も主張するが、その記載ぶりからすると、事業者として実施業務や本大会業務の受注につき同資料記載の「状況」 となった場合の選択肢の一つを記載したものにすぎないことが明らかであって、この点も、アの認定を妨げる事情とはいえない。 3 そして、関係事業者7社中被告会社以外の各事業者にとっても、テストイベントが本大会の運営能力向上のため本大会で使用する競技会場において行うものであることは明らかであったと言えるから、それらの関係性等に照らし、これら各事 業者においても、本件計画業務を受注した事業者がその後の本件実施業務及び本件本大会業務を受注するのが合理的であると考えていたものと認められる。上記のとおりHも当公判廷においてこのような認定に沿った供述をしているところである。 その上で、各事業者は、平成30年4月以降、前記事業者決定基準等の公表された資料を見た上で計画業務に係る入札に臨み、その際、特段、当該基準の趣旨等に ついて疑問等が述べられたといった事情はうかがわれない。 さらに、その後も、各事業者は、計画業務を受注していない競技・会場について本大会業務を受注するために営業活動を行う 等に ついて疑問等が述べられたといった事情はうかがわれない。 さらに、その後も、各事業者は、計画業務を受注していない競技・会場について本大会業務を受注するために営業活動を行うなど、計画業務とその後の実施業務及び本大会業務の受注者が異なり得ることを前提とした活動をしたことをうかがわせる客観的な証拠も見当たらない。かえって、被告会社以外の各事業者に関する手帳、メール、資料、議事録等には、組織委員会による本件方針と整合する内容の記 載が見られるところである。 以上の事情を踏まえれば、被告会社を含む各事業者においても、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が、その後の本件実施業務及び本件本大会業務を受注する可能性が相当程度に高いことを前提としていたと認められる。 この点に関して、弁護人らは、本件実施業務及び本件本大会業務も「一定 の取引分野」として、不当な取引制限罪における「合意」の範囲に含まれるというためには、本件計画業務の入札段階で、その後の実施業務及び本大会業務について随意契約により連続して同一事業者に発注する方針が組織委員会と事業者側とで合意又は連絡されていた、すなわち、事業者側にも随意契約での発注となる旨の認識があったことが立証される必要がある旨主張する。 アそこで検討すると、不当な取引制限罪が成立するには、複数の事業者間において、取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調を合わせるという意思の連絡が必要と解されるところ、そのような意思の連絡があるというためには、事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、直接又は特定の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為 を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解さ 、事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、直接又は特定の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為 を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解される。 イ本件で、本件計画業務について不当な取引制限罪が成立することについては、被告会社や被告人B1にも争いがなく、関係証拠に照らしても、これを認定することができるが、これは、HやC1らにおいて各事業者と面談等を行い、その結果を一覧表に最終的にまとめた平成30年4月2日までに、関係事業者7社中の各事業 者の従業者らにおいて、本件計画業務の受注に関し、発注者である組織委員会の幹 部職員として当該業務の発注について中心的な役割を果たしていたHの意向に沿うことにより当該事業者自体の受注可能性が高まると認識しただけでなく、H等からHの意向を示されるなどした他の同種事業者らも、受注の可能性を高めるために、Hの意向に沿って入札等に向けた行動等をとることを相当程度の確実性をもって相互に予測した上で、自らも他の事業者と歩調を合わせ、Hの意向に沿った入札行動 等を行う旨の意思を他の事業者と共有するに至っていたと認定することができ、ア記載の意思の連絡があったものとして、「罪となるべき事実」記載のとおり、関係事業者7社間において、受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該受注予定事業者のみが入札を行うこと等を合意していた(以下「本件基本合意」という。)と認めることができるからである。 これを前提にすると、本件のように、本件基本合意をした際、組織委員会において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を受注することを基本的な方針としており、各事業者においても、本件計画業務を受注した事業者と同一の 際、組織委員会において、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が本件実施業務及び本件本大会業務を受注することを基本的な方針としており、各事業者においても、本件計画業務を受注した事業者と同一の事業者が、その後の本件実施業務及び本件本大会業務を受注する可能性が相当程度に高いことを前提として、前記のとおり相互に認識な いし予測した上で、自らも歩調を合わせた入札行動等を行う意思を共有していた事実が認められる以上、本件基本合意の対象である「一定の取引分野」に、本件実施業務及び本件本大会業務も含まれると認定するには十分であって、弁護人が主張するように、一般競争入札となった計画業務の入札段階で、その後随意契約により本件計画業務を受注したのと同一の事業者に発注するとの方針が、組織委員会と事業 者側とで合意又は連絡され、事業者側に、随意契約での発注となる旨の確定的な認識があるまでの必要はないと言うべきである。 ウなお、弁護人らは、の主張に関連して、被告会社には、上記一覧表の存在や競合他社の動向は判然とせず、Hらから一社入札等の確約もなく、被告会社において、計画業務の入札では、競争を想定して相当低く抑えた価格で応札していると いったように希望する会場案件を落札できる確度が低かった、また、競争を想定し つつも1円入札又はこれに類する低廉な価格での入札は行っていない、これらのことは、一定の取引分野及び競争を制限する合意や共謀が成立した範囲に本件実施業務及び本件本大会業務が含まれていないことの根拠となるなどと主張する。しかしながら、被告会社においてHやCが被告会社のほかA社等に被告会社に対するのと同様の働きかけを行なっていると認識していたことは、第2の5記載の事実からし て明らかであるし、第2の3や5記載の下見積や予 ら、被告会社においてHやCが被告会社のほかA社等に被告会社に対するのと同様の働きかけを行なっていると認識していたことは、第2の5記載の事実からし て明らかであるし、第2の3や5記載の下見積や予定価格の決定経緯等からすると、応札価格に関する事実をもって、計画業務の落札確度が低いものと被告会社が認識していたと見ることはできない。上記のとおり認定した本件基本合意の内容に照らせば、結果として、関係事業者7社の一部の間で入札が競合したことや、1円入札に類する低廉な価格での入札を行っていないことが、本件基本合意の内容と矛盾す るものとも言えない。 エ以上によれば、弁護人らのの主張は採用することができない。 5 なお、弁護人らは、被告人B1が、平成31年4月1日付けで被告会社の親会社に異動しており、同日以降は東京2020大会業務には一切関与しておらず、同異動後に随意契約が締結された実施業務及び本大会業務についてまで罪に問われ ることは承服し難い旨も主張するが、被告人B1が判示の共謀から離脱した事情は何ら見当たらないのであるから、同主張を採用することはできない。 弁護人のその余の主張を踏まえても、これまで認定したところは左右されない。 第4 結語以上によれば、本件基本合意の対象には、本件計画業務のみならず、本件実施業 務及び本件本大会業務が含まれていたと認められ、「罪となるべき事実」記載のとおりの事実を認定することができる。 (量刑の理由)本件は、東京2020大会に関する入札について、関係事業者7社の従業者らが、 発注者である組織委員会の幹部職員や、その意を受けた関係事業者の従業者らを通 じるなどして、談合したという事案である。 国内外から注目を集め大規模に開催された東京2020大会 、 発注者である組織委員会の幹部職員や、その意を受けた関係事業者の従業者らを通 じるなどして、談合したという事案である。 国内外から注目を集め大規模に開催された東京2020大会の準備・運営に関する事案で、合意等の対象となった契約等の規模は委託先事業者に対して支払われた実績額で合計約437億円と多額に及んでいる。また、本件には東京2020大会等大規模スポーツイベントの運営等を行うことのできる事業者の多くが参加してお り、本件計画業務の入札に参加した全事業者11社、本件計画業務を受注するに至った事業者9社のうち7社を占める。これら複数の大手事業者を含む関係事業者7社の多数の従業者が関与して行われたものであることに照らしても、大規模な入札談合事案と言える。そして、受注予定事業者以外の事業者が応札を行った例はあるものの、結果として、本件合意の対象となった全26の各会場案件のうち、24に おいて受注予定事業者が受注するに至り、更にそのうち16については、受注が望ましいとされた事業者のみが入札に参加して必要書類を提出するに至ったこと等を考慮すれば、結果として公正かつ自由な競争を阻害した程度も大きいと言うべきである。 被告人B1は、前記組織委員会幹部職員との、被告会社における部下職員を介し たものも含む、面談やメールのやり取り等を通じて、同幹部職員において競技大会が行われる会場案件毎に受注が適切と考えている事業者がいること等を認識した上で、被告会社として東京2020大会に関係する業務を受注するため、同幹部職員の意向に沿った入札等の行動をとろうと考えるなどして、本件に加担した。従業者として被告会社の利益を図るためとはいえ、安易な選択と言わざるを得ず、非難は 免れない。結果として、被告会社は、3つの会場案件に った入札等の行動をとろうと考えるなどして、本件に加担した。従業者として被告会社の利益を図るためとはいえ、安易な選択と言わざるを得ず、非難は 免れない。結果として、被告会社は、3つの会場案件について受注予定事業者となって一連の業務を受注し、その売上額も、証拠上、43億円を上回る。 しかしながら、本件における合意の内容は、判示のとおり基本的に受注予定事業者のみが入札を行うこと等にとどまり、受注予定事業者に確実に受注させるため入札参加の有無や入札価格等について情報交換がされた事実までは認められず、競争 を制限する程度は、必ずしも強くはない。さらに、関係事業者7社の中でも最大手 の事業者以外の事業者としては、発注者である組織委員会の幹部職員のほか、当該最大手事業者の意向に一定程度気を配りつつ、事業活動を行わざるを得ない状況が生じていた事情も認められる。 その上で、被告人B1及び被告会社には前科前歴がないこと、被告人B1については前述のとおり個人的な利得を目的として本件に加担したものではないこと等の 事情も認められる。 以上の事情を総合考慮し、主文のとおり、被告会社及び被告人B1に対して刑を定め、被告人B1に対しては、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑被告会社につき罰金2億円、被告人B1につき懲役1年6月)令和7年3月10日 東京地方裁判所刑事第16部 裁判長裁判官安永健次 裁判官花田隆光 裁判官小寺柊斗 隆光 裁判官小寺柊斗

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