平成14(行ウ)8 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月15日 大津地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文22,612 文字)

主文 1 被告Aは,大津市に対し,109万7187円(ただし,68万6187円の限度において被告Bと,24万円の限度において被告Cと,それぞれ連帯して)を支払え。 2 被告Bは,被告Aと連帯して,大津市に対し,68万6187円を支払え。 3 被告Cは,被告Aと連帯して,大津市に対し,24万円を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用はこれを5分し,その2を原告らの,その余を被告らの負担とし,参加に要した費用はこれを5分し,その2を原告らの,その余を参加人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告A及び同Bは,大津市に対し,各自223万1187円を支払え。 (2) 被告A及び同Cは,大津市に対し,各自60万円を支払え。 (3) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁(本案前の答弁)(1) 本件訴えのうち,平成9年ないし同12年の各食糧費の支出にかかる訴えをいずれも却下する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 (本案に対する答弁)(1) 原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事実関係Ⅰ 事案の概要本件は,大津市が,平成9年度から同13年度までに新旧学区自治連合会長との懇談会において,食糧費合計283万1187円を支出した行為は,事務の遂行等の過程における接遇ではなく,接遇の合理的理由もないから違法であり,仮に接遇が認容されるとしても1人あたり約1万円という相当な範囲を逸脱した違法なものであり,これにより,大津市は上記支出と同額の損害を被ったと主張して,原告らが,大津市に代位して,大津市の支出の専決権者ないし本来的な支出決裁権者であった被告らに対して,地方自 を逸脱した違法なものであり,これにより,大津市は上記支出と同額の損害を被ったと主張して,原告らが,大津市に代位して,大津市の支出の専決権者ないし本来的な支出決裁権者であった被告らに対して,地方自治法等の一部を改正する法律(平成14年法律4号)による改正前の地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号前段に基づき,損害の賠償を求めた住民訴訟である。 Ⅱ 基礎となる事実(争いのない事実,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実。) 1 当事者(1) 原告らは,大津市の住民である。 (2)ア被告Aは,大津市の市長である。 イ被告Bは,平成9年度ないし同12年度の大津市の住民自治課長(以下,各部課については,特に断らない限り,大津市のそれを指す。),被告Cは,平成13年度の自治振興課長であり,当時,大津市において,100万円未満の経費の支出については課長が決裁権者であり(乙3),上記被告両名は,上記各年度における本件に係る食糧費の支出の専決決裁権者であった。 2 食糧費の支出大津市は,平成9年度から同13年度までに,下記の表のとおり,新旧学区自治連合会長との懇談会(以下「本件各懇談会」という。)を開催し,食糧費を支出した(以下「本件各支出」という。)(甲2)。 年度開催日支出先支出金額出席者数支出日9年度  9年5月9日琵琶湖ホテル 51万3000円 57人9年6月20日10年度 10年5月11日琵琶湖ホテル 52万0000円 52人10年8月5日11年度 11年5月10日琵琶湖ホテル 58万9366円 59人11年8月10日12年度 12年6月9日あみ定 60万8821円 61人12年7月17 月5日11年度 11年5月10日琵琶湖ホテル 58万9366円 59人11年8月10日12年度 12年6月9日あみ定 60万8821円 61人12年7月17日13年度 13年5月9日大津プリンスホテル  60万0000円 60人13年6月29日合計 283万1187円本件各支出のうち,平成9年度ないし同12年度は被告Bが,同13年度は被告Cが,いずれも専決権者として支出の決裁をなした。 3 監査請求原告らは,平成14年3月29日,大津市監査委員に対し,法242条1項に基づき,大津市長に関する措置請求を行い,本件各支出は違法,不当であるとして,本件各支出にかかる食糧費283万1187円を大津市に返還する措置を同監査委員に求めた。 同監査委員は,同年5月8日付けの書面により,上記請求に対し,本件各支出のうち平成9年度から同12年度の各支出については,監査請求期間を経過したことに正当な理由がないとしてこれを却下する旨を,本件各支出のうち同13年度の支出は違法,不当な公金の支出に該当しないとしてこれを棄却する旨を原告らに通知した(甲2)。 Ⅲ 争点 1 本件各支出のうち平成9年度ないし同12年度の各支出にかかる監査請求期間経過について正当な理由があるか(本案前の答弁に関して)。 2 本件各支出を公金から行ったことの違法性の有無。 3 本件各支出について違法性が認められる場合の被告らの責任。 4 平成9年度の支出について,被告Bに対する損害賠償請求権は時効により消滅しているか。 Ⅳ 争点についての当事者の主張 1 争点1(監査請求期間経過について正当な理由があるか)について(原告らの主張)(1) 法242条2項ただし書は,「正当な理由」があるときは,不 消滅しているか。 Ⅳ 争点についての当事者の主張 1 争点1(監査請求期間経過について正当な理由があるか)について(原告らの主張)(1) 法242条2項ただし書は,「正当な理由」があるときは,不当な公金支出等の行為のあった日または終わった日から1年を経過した場合でも,住民監査請求をすることができると規定しているところ,原告らには,以下のとおり,「正当な理由」がある。 ア原告らが結成した「比叡平を明るくする会」が大津市に対して初めて報償金の監査請求を行った平成11年4月ころ,原告らが大津市の担当職員に対して食糧費の支出について質問したところ,「平成6年度から食糧費の支出は廃止されており,現在はありません。」と回答され,原告らは当該職員の言葉を信じていた。 イ原告らが行った平成14年1月24日付けの公文書公開請求(甲3)によって公開された公文書中,自治振興費の科目の中に「食糧費」はなかった(甲4の1,2)。 ウところが,同年2月初めころ,原告らは,元学区自治連合会長が「市は,毎年年度始めに新旧の学区連合会長との懇親会を行っており」などと発言をしていることを知り,上記公開された文書を精査したが,食糧費の支出と思われるような説明はなかった。 エそこで,原告らは,同年3月6日付けで「その他自治振興推進事業費」という項目の内訳について情報公開請求を行った(甲5)。 その結果,原告らは,平成12年度の自治振興推進事業費の内訳に関する文書を入手することができ,これにより,新旧学区自治連合会長との懇談会経費として60万8821円の支出がされていることが判明し,この情報公開請求によって初めて食糧費の不正支出行為の存在及び内容を知ることができた(甲6,7)。 (2) 原告らが平成9年度から同13年度までの食糧費の支出について監査請求をしたのは平成1 判明し,この情報公開請求によって初めて食糧費の不正支出行為の存在及び内容を知ることができた(甲6,7)。 (2) 原告らが平成9年度から同13年度までの食糧費の支出について監査請求をしたのは平成14年3月29日のことであるから,原告らは,上記行為を知ることができたときから相当な期間内に監査請求した。 なお,後記(被告ら及び参加人の主張)(1)の各公文書には,「食糧費」の記載は総額で示されているにすぎず,原告らが主張している本件各懇談会への支出が社会通念上儀礼の範囲を逸脱しているか否かを判断することはできないから,上記各公文書の存在と同文書が公開可能な状態に置かれていたことをもって,上記「正当な理由」が存在しないとの根拠とすることはできない。 (被告ら及び参加人の主張)(1) 平成9年度から同12年度における各食糧費については,それぞれの年度において「大津市各会計予算説明書」(大津市長が年度開始前に予算を議会に提出するに際し提出されるものであって〔法211条1項,2項〕,議決された予算の送付を受けた後,当該各年度開始直前の3月中に住民に公表されている〔法219条2項〕。以下「予算説明書」という。)及び「歳入歳出決算事項別明細書」(議会の認定に付すべき決算とあわせて議会に提出されるものであって〔法233条5項,同施行令166条2項,同施行規則16条,16条の2〕,議決された決算の送付を受けた後,住民に公表されている〔法233条6項〕。以下「決算明細書」という。)に記載されており,大津市民はいつでもこれらを閲覧でき,また,支出負担行為書等食糧費に関する書類は,大津市情報公開条例に基づき公開請求をすることができる。 (2) したがって,原告らが,相当な注意力をもってすれば,平成9年度ないし平成12年度の食糧費については,法242条2項の定める する書類は,大津市情報公開条例に基づき公開請求をすることができる。 (2) したがって,原告らが,相当な注意力をもってすれば,平成9年度ないし平成12年度の食糧費については,法242条2項の定める1年を経過する前に監査請求ができたことは明らかであって,上記各支出について監査請求期間を経過したことに「正当な理由」はない。 2 争点2(本件各支出の違法性の有無)について(原告らの主張)(1)ア本件各支出の主たる目的は,懇親を図ることであり,事務の遂行,対外的折衝等を行う過程における接遇ではない。 イ本件各懇談会の主たる目的が,被告らが主張するように,地域住民の代表である学区自治連合会長から地域の実情や市政に対する要望や意見を聴くことにあるとしても,当該接遇が社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものであるときは,その接遇は地方公共団体の事務に当然伴うものといえず,これに要した費用を公金により支出することは違法となるところ,地方公共団体は公的存在であって,その事務を処理するに当たっては,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(法2条14項),その経費は目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて支出してはならない(地方財政法4条1項)のであるから,社会通念上儀礼の範囲内か否かの判断は,当該接遇の必要性に加え,予算執行時における経済状態,国民の消費及び生活水準等の諸事情,さらには,当該接遇を必要とする行政事務の性質・内容,目的,効果等をも考慮しなければならない。そして,食糧費が行政事務等の執行上直接の必要に基づいて費消される経費であるという性質に鑑みるならば,当該行政事務等の存在が明確にされるとともに,当該支出と事務執行との間に直接的な関連性が認められなければならない。 そうすると,学区自治連合会長と大津市の幹部職員との間の意思 う性質に鑑みるならば,当該行政事務等の存在が明確にされるとともに,当該支出と事務執行との間に直接的な関連性が認められなければならない。 そうすると,学区自治連合会長と大津市の幹部職員との間の意思疎通を図るために,2時間半もの時間を費やして酒類や料理を提供する必要はまったくないのであるから,本件各懇談会は普通地方公共団体の事務を遂行することにはあたらない。 ウまた,本件各懇談会の出席者には,年13万円の学区自治連合会長手当と同人らが兼ねている単位自治会長報償金として5000円+(70円×所帯数)の金銭が支払われているから,重ねて報償としての接遇をする合理性もない。 (2) 仮に,何らかの接遇が容認されるとしても,本件各支出は1人当たり約1万円という高額な金額であり,社会通念上相当な範囲を逸脱した違法がある。 なお,公費を用いた飲食費は,国家公務員倫理法及び倫理規程で贈与等の報告義務が課されている5000円を参考にして,1人当たり5000円以下とすべきであり,このことは上記法律等施行前の平成9年当時にもあてはまるものである。 (被告ら及び参加人の主張)(1) 本件各懇談会の趣旨及び目的大津市は,毎年1回,大津市自治連合会総会終了後,新旧学区自治連合会長を招き,市三役をはじめとする幹部職員が出席して懇談会を開催しており,会場は,大津市自治連合会の総会が開催される場所で,出席者は,新旧学区自治連合会長三十数名と市関係者二十数名である。 本件各懇談会の目的は,地域住民の代表である学区自治連合会長から地域の実情や市政に対する要望や意見を広く聴き,また市政に対する理解を深めてもらい,意見交換をしながら,今後の市政運営に反映させることにあり,更に学区自治連合会長間の相互理解や懇親を深めるためのものでもある。 (2) 本件各支出の適法性についてア 市政に対する理解を深めてもらい,意見交換をしながら,今後の市政運営に反映させることにあり,更に学区自治連合会長間の相互理解や懇親を深めるためのものでもある。 (2) 本件各支出の適法性についてア本件各懇談会は,上記(1)のとおり,地域住民の代表ともいうべき学区自治連合会長から市政に対する要望や意見を聴いたり,意見交換を行うもので,今後の市政の運営にとって極めて重要であって,市の事務の遂行そのものである。 なお,本件各懇談会は,対外的折衝を行う過程における接遇とはいえないが,そうでないからといって,違法となるものではない。 イ学区自治連合会長に対する報償金は,自治会長は自治会(その区域内に生ずるさまざまな共同の問題に対処することを通して,地域を代表しつつ地域の共同管理に当たる住民組織)の代表者であって,自治会の諸活動の意見調整や取りまとめ,市道の官民境界立会などを行っていること,学区自治連合会長は,学区自治連合会(学区単位の自治会の連合組織)の諸活動(自治会間の意見調整や学区要望の取りまとめ等の地域課題への対処)についての意見調整や取りまとめを行っていることから,大津市がこれらの市政全般にわたる協力に報いるための謝金として支出しているものである。 一方,本件懇談会の趣旨は,上記(1)のとおり,市政に対する忌憚のない要望や意見を聴くとともに,意見交換も行い,今後の市政に反映させるための年一度の接遇であって,報償金とは明らかに趣旨,目的を異にするものである。 ウ大津市の平成13年度の予算編成要綱において,懇談会に係る食糧費の支出は1人につき1万円以内とされており,社会通念上の儀礼の範囲内にとどまる接遇である。 原告らが参考にすべきとする国家公務員倫理法及び同倫理規定は,公務に対する国民の信頼を確保することを目的とするものであって,い 万円以内とされており,社会通念上の儀礼の範囲内にとどまる接遇である。 原告らが参考にすべきとする国家公務員倫理法及び同倫理規定は,公務に対する国民の信頼を確保することを目的とするものであって,いわば供応を受ける立場にある公務員を律しようとする趣旨であって,食糧費支出の社会通念の説明に用いるのは当たらない。 3 争点3(違法性が認められる場合の被告らの責任)について(原告らの主張)(1) 被告Bは,平成9年度ないし同12年度の住民自治課長,被告Cは,平成13年度の自治振興課長であり,当時,大津市において,100万円未満の経費の支出については課長が決裁権者であった(乙3)。上記被告両名は本件に係る支出の専決決裁権者であり,本件各食糧費の支出は違法であるから,専決決裁権者である上記被告両名は責任を負う。 (2) 被告Aは,大津市の市長として,当該地方公共団体を代表するものであり(法147条),当該地方公共団体の条例,予算その他の議会の決議に基づく事務その他公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理,執行する義務を負い(法138条の2),予算の執行,地方税の賦課徴収,分担金,使用料,加入金又は手数料の徴収,財産の取得,管理及び処分等の広範な財務会計上の行為を行う権限を有する者である(法149条)ところ,その職責及び権限の内容に鑑みると,長は,その権限に属する一定の範囲の財務会計上の行為をあらかじめ特定の吏員に委任することとしている場合でも,財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている以上,財務会計上の行為の適否が問題とされている当該代位請求住民訴訟において,法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当する。 被告Aは,上記のとおり,委任を受けた吏員である被告B及び被告Cが財務会計上の違法行為をすることを阻 れている当該代位請求住民訴訟において,法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当する。 被告Aは,上記のとおり,委任を受けた吏員である被告B及び被告Cが財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務を有しているところ,これに違反し,漫然と事態を放置して,本件各支出行為を招来せしめたのであり,故意又は過失により被告B及び被告Cが財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったのであるから,大津市に対し,上記行為によって大津市が被った損害を賠償すべき責任がある。 (被告ら及び参加人の主張)被告らの責任に関する原告らの主張は,いずれも争う。 4 争点4(消滅時効の成否)について(被告Bの主張)平成9年度の食糧費にかかる請求は,法243条の2第1項に基づく損害賠償請求であるから,法236条により権利を行使し得るときから5年間にこれを行わなければ,時効により消滅するところ,同年度の食糧費の支出は平成9年6月20日までに行われたものである。他方,原告らが,本訴提起時において被告としていたA及びDから,被告をA,B及びCに変更する旨の申立てをしたのは平成15年1月17日であるから,被告Bに対する同9年度の食糧費にかかる損害賠償請求権は,支出から5年が経過した平成14年6月21日には時効により消滅している。 (原告らの主張)(1) 消滅時効制度は,「権利の上に眠れる者は保護されない。」という点を根拠の一つとし,また,時効の中断は,権利の主張があることによって,権利者が権利の上に眠れる者とはいえなくなることを主たる根拠とするものである。 違法な公金支出に関係する者のうちの一部を被告とし,原告たる住民より住民訴訟の提起があった場合には,当該訴えにより,違法な公金支出を是正しうる立場にある者全体に対し,違法な公金支出の是正を要求す 違法な公金支出に関係する者のうちの一部を被告とし,原告たる住民より住民訴訟の提起があった場合には,当該訴えにより,違法な公金支出を是正しうる立場にある者全体に対し,違法な公金支出の是正を要求する旨の権利主張が外部的に明確化されていると考えられるから,当該訴え提起によって,原告らはもはや権利の上に眠れる者とはいえない。 (2) 財務会計上の行為を行う権限の所在及びその委任関係等に関する法令,条例,訓令等の定めや普通地方公共団体内部の行政組織が複雑であるため,法242条の2第1項4号所定の「当該職員」に対する訴えを提起しようとする住民において,誰が問題となる財務会計上の行為につき権限を有するか判定することが困難であるにもかかわらず,上記訴えは,同条2項1号ないし4号に掲げる期間内に提起しなければならず,この期間内に誤った者を被告として訴えを提起し,その後,改めて正当な被告に対して訴えを提起しようとしても出訴期間の経過により許されないことがある。 (3) 住民訴訟制度は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであることから,これを防止するため,地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として,住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであって,執行機関又は職員の財務会計上の行為又は怠る事実の適否ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場合に,住民が自らの手により違法の防止又は是正を図ることができる点に制度の本来の意義がある。 このような趣旨に鑑みれば,本件のように違法な公金支出に関係する者のうちの一部に対して原 反し対立する場合に,住民が自らの手により違法の防止又は是正を図ることができる点に制度の本来の意義がある。 このような趣旨に鑑みれば,本件のように違法な公金支出に関係する者のうちの一部に対して原告たる住民より住民訴訟の提起があった場合,当該訴え提起時において,違法な公金支出を是正しうる立場にある他の者との関係においても,時効中断の効力が発生すると解さなければならない。 (4) したがって,上記の時効制度の趣旨,住民訴訟制度の性質に鑑みると,平成14年6月5日の原告らの訴え提起をもって被告Bの平成9年度の食糧費支出に関する損害賠償請求権についても時効中断の効力が発生し,時効は成立していない。 第3 当裁判所の判断Ⅰ 争点1について 1 本件監査請求のうち,平成9年度ないし同12年度における各食糧費の支出は,第2のⅡ2の表記載の日に支出されており,これらの支出行為につき原告らが監査請求を行ったのは平成14年3月29日であり,当該行為の終わった日から1年以内に法242条1項に基づく請求が行われていない。そこで,まず,原告らが監査請求期間を徒過したことについて,同条2項ただし書にいう「正当な理由」が認められるか検討する。 2 「正当な理由」の存否の判断基準法242条2項本文は,普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為は,たとえそれが違法・不当なものであったとしても,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るとしておくことが法的安定性を損ない好ましくないとして,監査請求の期間を当該行為のあった日又は終わった日から1年と定めている。 しかし,当該行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされ,1年を経過してから初めて明らかになった場合等にもその趣旨を貫くのは相当ではないことから,同項ただし書は,「正当な理由」があるときは,例外 かし,当該行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされ,1年を経過してから初めて明らかになった場合等にもその趣旨を貫くのは相当ではないことから,同項ただし書は,「正当な理由」があるときは,例外として,同項本文の期間が経過した後であっても普通地方公共団体の住民が監査請求をすることができるとしたのである。したがって,当該行為が秘密裡にされた場合,同条ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情がない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかによって判断するべきものといわなければならない(最高裁判所昭和63年4月22日第二小法廷判決・裁判集民事154号57頁参照)。 そして,そのことは当該行為が秘密裡になされた場合に限らず,普通公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合にも,同様であると解するべきである。したがって,そのような場合には,「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求を行うことが可能な程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決・裁判集民事207号39頁参照)。 3 前記第2のⅡ認定の事実及び証拠(該当個所に掲記したもの。)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告Eは,平成14年1月24日,平成10年以降の自治振興費中の公共事業等報償金について,公文書公開請求 び証拠(該当個所に掲記したもの。)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告Eは,平成14年1月24日,平成10年以降の自治振興費中の公共事業等報償金について,公文書公開請求を行った(甲3)。これによって平成12年度,同13年度の「主要な施策の成果説明書」(甲4の1,2)が公開された。 これらの中の「自治振興費」の「9 その他自治振興推進事業費」の科目中に食糧費が含まれている旨の記載や説明は特になされていない。 (2) その後,原告らは,平成14年2月初めころ,元学区自治連合会長のFから「市は,毎年年度初めに,新旧の学区連合会長との懇親会を行っており,酒は飲み放題で,帰りはタクシーが使え,こんな結構なことはない。」との話を聞いた(甲7)。 (3) 原告らは,上記(2)の話を聞いて,再度上記(1)で公開を受けた公文書を精査したが,食糧費の支出と思われる説明の記載はなかったことから,「その他自治振興推進事業費」の項目の中に食糧費支出が含まれているのではないかと考え,自治振興課に対し,「その他自治振興推進事業費」の内訳について尋ねたところ,大津市職員は「平成12年度主要な施策の成果説明書」の「9 その他自治振興推進事業費3,030,965円」の内訳を記載した説明書を原告に交付した(甲6,7,10,乙23)。 交付された「平成12年度主要な施策の成果説明書」には,「9 その他自治振興推進事業費 3,030,965円の内訳」として,同支出の内訳が記載されており,食糧費に関しては「(8) 新旧学区自治連合会長との懇談会経費8,821円」との記載がなされていた(甲6,7)。 原告らはこれにより食糧費の支出がなされていることを知り,原告Gは,平成14年3月6日,平成9年度ないし同11年度,同13年度度の自治振興推進事業費「 21円」との記載がなされていた(甲6,7)。 原告らはこれにより食糧費の支出がなされていることを知り,原告Gは,平成14年3月6日,平成9年度ないし同11年度,同13年度度の自治振興推進事業費「その他自治振興推進事業費」中,「新旧学区自治連合会長との懇談会経費」について公文書公開請求を行った(甲5,7)。 (4) 原告らは,公開された文書により,上記(2)のFの発言が真実であったことが分かったとして,平成14年3月29日,平成9年度から同13年度までの本件各支出について,任意団体である31学区の自治連合会長との懇談会で,酒食をともなう一人平均1万円の接遇を行うことは,違法,不当であるとして,監査請求を行った(甲1,7)。 (5) 大津市の昭和53年ころから現在に至るまでの大津市の住民に対する会計予算及び予算説明書等の公開状況は以下のとおりである。 ア(ア) 大津市では,市議会で予算関係の決議があると,法219条1項に基づき,3日以内に,予算関係書類が議長から市長に送付され,この書類を総務部総務課が受領する。総務課では,同条2項に基づき,再議その他の措置を要しないときは直ちにその「要領」を住民に公表し,その方法として,受け取った予算関係書類を総務課の窓口で縦覧に供している。 (イ) 他方,大津市総務部情報統計課では,市議会開会の約1週間前に開催される議会運営委員会で提出議案の説明がなされた後,総務部財政課から予算議案の冊子(法211条1項に規定する予算及び同条2項に規定する予算に関する説明書)が送付されてくると,所管の市政資料コーナーに備え付け,住民に市政に関する情報を提供している。 (ウ) また,総務部財政課は,上記(ア),(イ)の「予算」,「予算に関する説明書」とは別に,予算内容を分かりやすく説明した「予算の概要」を作成し,これを市政 民に市政に関する情報を提供している。 (ウ) また,総務部財政課は,上記(ア),(イ)の「予算」,「予算に関する説明書」とは別に,予算内容を分かりやすく説明した「予算の概要」を作成し,これを市政資料コーナーの窓口で住民に提供している。 イ歳入歳出決算事項別明細書や主要な施策の成果説明書等の決算関係書類についても,上記アと同様の手順で住民に公開されている。 ウ上記ア及びイは,市政情報の提供として行っているものであり,住民は特別な手続きをとることなく,書類を見たり,コピーしたりすることができる。 エ平成6年1月以降は,情報公開制度が実施され,さらに詳しく内容が知りたいときには,同制度により担当課へ情報公開を求められるようになった。 (以上,乙23)(6) 食糧費支出に関する各文書の記載状況① 食糧費支出に関する予算関係書類の記載状況ア平成9年度の大津市各会計予算説明書(乙7)の「21 自治振興費」中「1 1 需用費」の内訳として「食糧費 627」との記載がなされている。 イ同10年度の大津市各会計予算説明書(乙8)には,「20 自治振興費」中「11 需用費」の内訳として「食糧費 569」との記載がなされている。 ウ同11年度の大津市各会計予算説明書(乙9)には,「20 自治振興費」中「11 需用費」の内訳として「食糧費 38」との記載がなされている。 エ同12年度の大津市各会計予算説明書(乙10)には,「20 自治振興費」中「11 需用費」の内訳として「食糧費 578」との記載がなされている。 ② 食糧費支出に関する決算書関係書類の記載状況ア平成9年度の「歳入歳出決算事項別明細書」(乙11)には,歳出の目「21自治振興費」について区分「11 需用費」の備考欄に「食糧費 533,945」との記載がなされている。 イ同10年度の「歳 平成9年度の「歳入歳出決算事項別明細書」(乙11)には,歳出の目「21自治振興費」について区分「11 需用費」の備考欄に「食糧費 533,945」との記載がなされている。 イ同10年度の「歳入歳出決算事項別明細書」(乙12)の歳出の目「20 自治振興費」の区分「11 需用費」の備考欄に「食糧費 563,216」との記載がなされている。 ウ同11年度の「歳入歳出決算事項別明細書実質収支に関する調書財産に関する調書基金運用状況報告書」(乙13)歳出の目「20 自治振興費」の区分「11 需用費」の備考欄に「食糧費 603,824」との記載がなされている。 エ同12年度の「歳入歳出決算事項別明細書実質収支に関する調書財産に関する調書基金運用状況報告書」(乙14)の歳出の目「20 自治振興費」の区分「11 需用費」の備考欄には,「食糧費 640,055」との記載がなされている。 4 上記3認定事実によれば,(1) 大津市においては,予算説明書及び決算明細書が市民に公表されていて,市民がいつでも閲覧できる状況にあり,また,支出負担行為等食糧費の支出に関する書類については,大津市情報公開条例に基づき公開請求できるところ,決算明細書(歳入歳出決算事項別明細書)には,歳出の目「21 自治振興費」の区分「1 1 需用費」の備考欄に「食糧費 533,945」と記載されているものの(平成9年度分。以後の年度分についても同趣旨の記載がされている。),その内訳については記載されていない。 (2) したがって,大津市の住民において,上記食糧費の支出について,その使途,目的,相手方等の内容を知るには,情報公開により,食糧費の支出に関する文書の公開を求め,公開された文書を精査すること等によらざるを得ない。 (3) 上記3(2)ないし(4)のとおり,原 て,その使途,目的,相手方等の内容を知るには,情報公開により,食糧費の支出に関する文書の公開を求め,公開された文書を精査すること等によらざるを得ない。 (3) 上記3(2)ないし(4)のとおり,原告らは,平成14年2月始めころのFの話を契機に,大津市職員から交付を受けた文書により新旧学区自治連合会長との懇談会経費に食糧費が支出されていることを知り,原告Gにおいて平成14年3月6日付けで公文書公開請求を行って公開された文書により,平成9年度から同13年度までに行われた新旧学区自治連合会長との懇談会において,任意団体である31学区の自治連合会長との懇談会で,酒食をともなう一人平均1万円の接遇を行うことは,違法,不当であることが判明したとして,同月29日,平成9年度から同13年度までの本件各支出について監査請求を行った。 のであり,以上をあわせ考えれば,大津市民であれば何時でも閲覧可能な状態に置かれている予算説明書及び決算明細書の記載から,大津市の住民である原告らにおいて,相当の注意力をもって食糧費についての調査を尽くすべきであったとは言い難く,原告らにおいて,相当の注意力を持って調査すれば,監査請求を行うに足りる程度に食糧費の存在及び内容を知り得たのは,平成14年2月初めころ,Fから食糧費の存在をうかがわせる発言を聞いた時というのが相当である。 そして,原告らは,上記3(3)のとおり,公文書公開請求を行い,大津市の食糧費の支出状況等を調査の上,上記3(4)のとおり同年3月29日には,監査請求を行っているのであるから,事実関係の調査に要する期間等を勘案すれば,原告の上記監査請求は,相当な期間内に行われたということができる。 以上によれば,原告らには,監査請求期間を徒過したことにつき,法242条1項ただし書の「正当な理由」があり,原告らの監 勘案すれば,原告の上記監査請求は,相当な期間内に行われたということができる。 以上によれば,原告らには,監査請求期間を徒過したことにつき,法242条1項ただし書の「正当な理由」があり,原告らの監査請求は適法に行われたと認めるのが相当である。 Ⅱ 争点2について 1 違法性の判断基準普通地方公共団体の長又は執行機関が,事務を遂行し,対外的折衝等を行う過程において,社会通念上儀礼の範囲にとどまる程度の接遇を行うことは,当該普通地方公共団体も,社会的実体を有するものとして活動していることからすれば,当該事務に随伴するものとして,許容されるというべきであり,接遇の内容及び程度等については,接遇に要する経費の支出権限を有する者の裁量に委ねられていると解される。 しかし,接遇に要する経費の支出は,公的存在である普通地方公共団体により行われるものであり,その事務を処理するに当たっては,最少の経費で最大の効果を上げるよう努めるべきであること(法2条14項),地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要かつ最少の限度をこえて,これを支出してはならないこと(地方財政法4条1項)を考慮すれば,食糧費による接遇は,その節度を超え,社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には,普通地方公共団体の事務に当然伴うものとはいえず,これに要した費用を食糧費から支出することは許されず,その支出は違法となる。 そして,社会通念上儀礼の範囲内であるかは,行政事務及び事業と会合の関連性,接遇の必要性,接遇の相手方の身分,地位及び出席人数,接遇の場所,内容及び費用等から総合して判断されるべきである。 2 第2のⅡ掲記の事実及び証拠(該当個所に掲記したもの。)並びに弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 (1)ア(ア) 自治会は,その区域の住民相互の連絡,環境 ら総合して判断されるべきである。 2 第2のⅡ掲記の事実及び証拠(該当個所に掲記したもの。)並びに弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 (1)ア(ア) 自治会は,その区域の住民相互の連絡,環境の整備等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うこと等を目的として町又は字の区域等に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体であり(法260条の2),大津市との関係において,広報誌,チラシ,ポスター等の配布,市の各種行事,事業への参加協力,交通災害共済や各種募金事務,公共工事の説明会等への協力を行っている。 (イ) 自治会長は,自治会の代表者であり,自治会の諸活動の意見調整や取りまとめ,市道の官民境界の立会等を行っている。 イ(ア) 学区自治連合会は,学区単位の自治会の連合組織であり,学区内の自治会相互の緊密な連繋と学区民の福祉の推進を図るために組織された団体であり,自治会間の意見の調整や学区要望の取りまとめ等の地域課題に対処している。 (イ) 学区自治連合会長は,その代表として,学区自治連合会の上記諸活動についての意見調整や取りまとめを行っている。なお,学区自治連合会長の中には自治会長を兼ねる者もあり,平成13年度においては,ほぼ半数が自治会長を兼ねていた。 ウ大津市では,自治会長及び学区自治連合会長の上記の市政への協力に報いるための謝金として,自治会長及び学区自治連合会長に対して,毎年報償金を支出している。 (以上,弁論の全趣旨)(2)ア大津市では,毎年一回,大津市自治連合会総会が開催されている。 イ平成13年度の総会は,平成13年5月9日,大津市内所在の大津プリンスホテルで開催され,総会終了後,大津市の各所管課長から大津市自治連合会に対して下記の依頼がなされた。 (ア) 琵琶湖を美しくする運動実践本部の活動につい 平成13年5月9日,大津市内所在の大津プリンスホテルで開催され,総会終了後,大津市の各所管課長から大津市自治連合会に対して下記の依頼がなされた。 (ア) 琵琶湖を美しくする運動実践本部の活動について(環境保全課)(イ) 生涯学習関連事業について(生涯学習課)(ウ) 日赤社資募集について(総務課)(エ) 「緑の募金」への協力について(公園緑地課)(オ) 選挙公報の配布について(選挙管理委員会)(カ) 防犯自治会総会への参加について(自治振興課)(以上,乙6,弁論の全趣旨)(3)ア大津市では,学区自治連合会長から地域の実情,市政に対する要望や意見を聴き,市政に対する理解を深めてもらい,意見交換しながら,今後の市政運営に反映させることと,学区自治連合会長間の相互理解や懇親を深めることを目的として,大津市長の名において,学区自治連合会長及び退任学区自治連合会長に案内状を送り,上記(2)アの大津市自治連合会総会終了後,新旧学区自治連合会長を招き,市長,助役,収入役の市三役他,市の幹部職員らが出席して懇談会を開催している(乙5,弁論の全趣旨)。 イ学区自治連合会長に対しては,年額13万円の学区自治連合会長手当及び自治会長を兼ねている者に対しては報償金として5000円+(70円×世帯数)が支払われている(争いのない事実及び弁論の全趣旨)。 ウ平成9年度から同13年度までに行われた懇談会の開催時間,出席者,接遇内容は以下のとおりであり,被告Aは大津市長として上記各懇談会に,被告Bは住民自治課長として平成9年度ないし同12年度の各懇談会に,被告Cは自治振興課長として同13年度の懇談会に,それぞれ出席した。 ① 平成9年度平成9年5月9日午後6時から大津市内所在の「琵琶湖ホテル」において新旧学区自治連合会長との懇談会が開催された。出席者は,学 振興課長として同13年度の懇談会に,それぞれ出席した。 ① 平成9年度平成9年5月9日午後6時から大津市内所在の「琵琶湖ホテル」において新旧学区自治連合会長との懇談会が開催された。出席者は,学区自治連合会長31人,退任学区自治連合会長2人,市関係者24人の合計57人で,出席予定者59人のうち退任学区自治連合会長2人が欠席した。1人あたりの料金は9000円(合計51万3000円)で,同年6月20日,専決決裁権者である被告Bの決裁により,その支出が行われた(乙15,16)。 ② 平成10年度平成10年5月11日午後5時から,大津市内所在の「琵琶湖ホテル」において開催された。出席者は学区自治連合会長30人,退任学区自治連合会長2人,市関係者20人の合計52人であり,出席予定者55人のうち学区自治連合会長1人,退任学区自治連合会長1人,市関係者1人が欠席した。1人あたりの料金は1万円(内訳は料理8000円,飲み物2000円で,合計52万円)で,同年8月5日,専決決裁権者である被告Bの決裁により,その支出が行われた(乙17,18)。 ③ 平成11年度平成11年5月10日午後5時から,大津市内所在の「琵琶湖ホテル」において開催された。出席者は学区自治連合会長31人,退任学区自治連合会長6人,市関係者22人の合計59人で,出席予定者全員が出席した。料金は合計58万9366円(内訳会席料理〔6000円〕×59,ビール〔600円〕×57,日本酒〔600円〕×168,ウーロン茶〔350円〕×10,ウイスキー〔700円〕×2,冷酒〔1100円〕2,サービス料4万9610円,特別消費税1万6371円,消費税2万7285円)で,同年8月10日,専決決裁権者である被告Bの決裁により,その支出が行われた(乙19,20)。 ④ 平成12年度平成12年 ビス料4万9610円,特別消費税1万6371円,消費税2万7285円)で,同年8月10日,専決決裁権者である被告Bの決裁により,その支出が行われた(乙19,20)。 ④ 平成12年度平成12年6月9日午後5時30分から,大津市内所在の料理旅館「あみ定」において開催された。出席者は学区自治連合会長31人,退任学区自治連合会長8人,市関係者22人の合計61人で,出席予定者全員が出席した。料金は合計60万8821円(内訳料理〔6000円〕×61,ビール〔700円〕×64,日本酒〔700円〕×134,ウーロン茶〔300円〕×21,サービス料7万5630円,消費税2万8991円)で,同年7月17日,専決決裁権者である被告Bの決裁により,その支出が行われた(乙21,22)。 ⑤ 平成13年度平成13年5月9日午後5時30分から,大津市内所在の「大津プリンスホテル」において開催された。出席者は学区自治連合会長31人,退任学区自治連合会長4人,市関係者25人の60人で,出席予定者のうち退任学区自治連合会長2人が欠席し,市関係者の出席者が当初予定より2人増えた。料金は合計60万円(内訳料理〔税込み7500円〕×60,飲み物〔税込み2500円〕×60)で,同年6月29日,専決決裁権者である被告Cの決裁により,その支出が行われた(乙1,2,5)。 (4) 大津市における平成13年度予算編成要綱(乙4)には,「Ⅳ歳出に関する事項」中,「4一般行政経費」について,「物件費について,毎年その節減を行ってきたところであるが,今日の厳しい財政事情に鑑み,引き続き徹底した経費の洗い直しを行い,なお一層の節減を図り必要最小限度の見積額とすること。また,環境負荷の低減のために策定された「環境にやさしい大津市役所率先実行計画」の推進により,積極的に物件費の削減につ した経費の洗い直しを行い,なお一層の節減を図り必要最小限度の見積額とすること。また,環境負荷の低減のために策定された「環境にやさしい大津市役所率先実行計画」の推進により,積極的に物件費の削減につとめること。」との記載がなされ,同項中「③食糧費」として「会議等の重要性,市との関わりの程度等総合的に勘案し必要最小限度の出席人員及び額とすること」とされている。 また,同要綱内の平成13年度予算編成に伴う事務連絡事項の11項において,「見積単価は,単価計算等の基準単価によるもののほか,次のとおりとする。」「(3)食糧費昼食…一人につき700円以内,懇談会…一人につき1万円以内」とされている。 3(1) 上記2認定にかかる自治会及び学区自治連合会の目的及び活動,学区自治連合会の代表者として学区自治連合会長が担当している職務や果たしている役割等に照らせば,大津市において,自治会の学区単位の連合組織である学区自治連合会の代表者である学区自治連合会長と懇談の場を持ち,学区自治連合会長から,地域の実情,市政に対する要望や意見を聴き,市政に対する理解を深め,意見交換しながら,今後の市政運営に反映させることを目的として,新旧学区自治連合会長らと大津市の三役他幹部職員らとの間で,懇談会を開催することは,市民の声を市政に反映させ,市民に対して市政への理解と協力を求めることに資するものということができ,市の事務の遂行と関連するものと認めるのが相当である。上記2(3)アによれば,懇談会の副次的な目的として,学区自治連合会長間の相互理解や懇親を深めることがあったことが認められるものの,そのことをもって,上記認定を左右するものということはできない。 (2) そこで,進んで本件各懇談会への食糧費の支出が社会通念上儀礼の範囲を逸脱するものであるかについて検討する。 ア められるものの,そのことをもって,上記認定を左右するものということはできない。 (2) そこで,進んで本件各懇談会への食糧費の支出が社会通念上儀礼の範囲を逸脱するものであるかについて検討する。 ア上記2及び上記(1)によれば,(ア)①本件各懇談会の目的は,上記2(3)アのとおりであり,上記(1)のとおり,市政との関連性も認められるものであること,②上記2(4)のとおり,大津市の平成13年度の予算編成要綱内の同年度予算編成に伴う事務連絡事項には,懇談会は1人につき1万円以内とされていたこと,③本件各懇談会は,上記①の目的のもとに年1回のみ開催される懇談会であることなどの事実が認められる。 (イ)他方,〔ア〕本件各懇談会は,いずれもホテル等,比較的高額の食糧費支出が予定される場所で開催されたものであること,〔イ〕出席者の内訳は新旧学区自治連合会長32人ないし39人のほか,市の三役他幹部職員も20人ないし25人出席し,合計では52人ないし61人であったこと,〔ウ〕その接遇内容は,平成9年度は1人あたり9000円(明細は不明であるが,平成10年度ないし同13年度の懇談会の内容等に照らして,料理と飲み物を含むものと推認する。),同10年度は1人あたり8000円の料理と2000円の飲み物,同11年度と同12年度は1人あたり6000円の料理に加えて酒類が提供され,その量は,同11年度はビール(600円)57,日本酒(600円)×168,ウイスキー(700円)×2,冷酒(1100円)×2であり,平成12年度はビール(700円)×64,日本酒(700円)×134であったこと,また,平成13年度は,1人あたり7500円の料理(税込み),2500円の飲み物(税込み)であったこと,〔エ〕本件懇談会の参加者から出された要望,意見や参加者相互で行われた意見交換 4であったこと,また,平成13年度は,1人あたり7500円の料理(税込み),2500円の飲み物(税込み)であったこと,〔エ〕本件懇談会の参加者から出された要望,意見や参加者相互で行われた意見交換に関する資料等は残されておらず,本件懇談会の目的が達成されているかどうか,その結果がどのように市政に反映されているかなどを検証することができない性質の会合であること,〔オ〕平成12年4月1日施行の「国家公務員倫理法」(平成11年法律129号)及び「国家公務員倫理規程」(平成12年政令101号)では,国家公務員が5000円を超える贈与等を受けた場合には報告義務を課しているところ,これは同法が,国家公務員の職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り,もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的(1条)とするものであり,同法及び同規程がただちに本件において適用されるものではないにせよ,その基準は,国家公務員に対する接遇等にとどまらず,広く公務に関わる接遇の相当な範囲についての基準を一定程度反映したものであると考えることができ,この点,本件各支出がなされたのは,平成9年から同13年であるところ,同9年及び同10年における社会状況は,同法及び同規程が制定施行された同11年及び同12年当時とさほど大きな相違があったとは認め難く,むしろ,酒食を伴う会合への食糧費支出に対する市民の関心が高まっていていた時期であったともいえること(甲8,弁論の全趣旨),以上の事実が認められる。 イ上記アの事実をあわせ考えると,本件各懇談会は大津市の事務の遂行と関連するものと認めることができ,そのための支出自体が直ちにすべて違法となるとはいえないものの,上記ア(ア),(イ)〔ア〕ないし〔エ〕のとおりの本件懇談会の趣旨,目的,場所,内容,出席者の の遂行と関連するものと認めることができ,そのための支出自体が直ちにすべて違法となるとはいえないものの,上記ア(ア),(イ)〔ア〕ないし〔エ〕のとおりの本件懇談会の趣旨,目的,場所,内容,出席者の地位等に加えて同(イ)〔オ〕の事情を併せ考えれば,多くとも1人あたり単価6000円までをもって相当な支出というべきであって,これを超える支出については,特段の事情のない限り,社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものであって,違法と評価されるものであるといわざるを得ない。 そして,本件において,本件懇談会の出席者の地位,職務内容等に照らして,上記限度を超える飲食を要する特段の事情の存在を肯認するに足りる証拠はない。 したがって,本件各支出行為のうち,1人あたり6000円を超える金員に関する部分は裁量を逸脱した違法なものであると解するのが相当である。 Ⅲ 争点3について 1 大津市は,上記Ⅱ3(2)イのとおりの違法な支出により,以下のとおりの損害を被っているということができる。 (1) 平成9年度分 17万1000円(2) 同10年度分 20万8000円(3) 同11年度分 23万5366円(4) 同12年度分 24万2821円(5) 同13年度分 24万円以上合計 109万7187円2(1) 本件各支出のうち,平成9年度ないし同12年度については被告Bが住民自治課長として,同13年度分については被告Cが自治振興課長として,それぞれ専決権を有していたところ,被告Bは平成9年度ないし同12年度の本件各懇談会に,被告Cは同13年度の本件懇談会に,それぞれ出席したのであって,1人あたり6000円を超えかつ酒類の提供を伴う本件各懇談会の内容等に照らし,本件各支出が違法(一部違法)となることを容易に認識し得たのに,漫然と本件支出をなしたのであるか ぞれ出席したのであって,1人あたり6000円を超えかつ酒類の提供を伴う本件各懇談会の内容等に照らし,本件各支出が違法(一部違法)となることを容易に認識し得たのに,漫然と本件支出をなしたのであるから,上記違法な支出について重大な過失があったといわざるを得ず,大津市に対して賠償義務を負う。 (2) 被告Aは,財務会計上の行為を行う権限を本来的に有するものであって,被告B及び被告Cに本件各支出を専決させたものであるから,被告B及び被告Cの財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によって上記違法行為を阻止しなかったときには,大津市に対し,賠償責任を負うものというべきところ,被告Aは,本件各懇談会に出席し,食糧費を支出して,上記Ⅱ2(3)のような接遇をしていたことを知っていたと認められるにもかかわらず,被告B及び被告Cに対する指揮監督を怠り,少なくとも過失によって,被告B及び被告Cの上記各違法(一部違法)な本件各支出を阻止しなかったのであるから,被告Aは,大津市に対して,賠償義務を負うというのが相当である。 Ⅳ 争点4について 1 法242条の2第1項4号所定の「当該職員」に対する損害賠償の訴えは,地方公共団体が当該職員に対して有する損害賠償請求権を住民が訴訟上代位行使する形式によるものであって,その請求権は,法243条の2第1項に基づく損害賠償請求権であるから,権利を行使し得る時から5年間これを行わないときは,時効により消滅する(法236条)。 2 上記第2Ⅱ2のとおり,平成9年度の食糧費の支出は平成9年6月20日に行われたところ,原告らは,当該支出につき,平成14年6月5日,A及びDを被告として,大津地方裁判所に本訴を提起し,平成15年1月18日,被告とすべき者を誤ったとして被告をA及びDからA,B及びCに変更す たところ,原告らは,当該支出につき,平成14年6月5日,A及びDを被告として,大津地方裁判所に本訴を提起し,平成15年1月18日,被告とすべき者を誤ったとして被告をA及びDからA,B及びCに変更することの許可を求め(法242条の2第6項,行政事件訴訟法43条,同法40条2項,同法15条),同裁判所は,同年2月7日,その旨の許可をしたことは,本件記録上明らかである。 3 行政事件訴訟法15条に基づき,被告の変更許可がなされると,これによって新被告に対する新訴が提起されたことになって,従前の被告に対する訴えは取り下げたものとみなされるから,被告Bに対する平成9年度の食糧費にかかる損害賠償請求権は,上記支出から5年を経過した平成14年6月21日の経過をもって,時効により消滅したということができる。 4 原告らは,前記第2のⅣ4(原告らの主張)のとおり,時効制度の趣旨や住民訴訟制度の性質に鑑み,被告Bの平成9年度の食糧費支出に関する損害賠償請求権については時効中断の効力が発生し,時効は成立していない旨縷々主張するが,いずれもその前提において採用することができない。 Ⅴ 結論よって,原告らの請求は,大津市に対し,被告Aにおいて109万7187円の(ただし,68万6187円の限度において被告Bと,24万円の限度において被告Cとそれぞれ連帯する。),被告Bにおいて被告Aと連帯して68万6187円の,被告Cにおいて被告Aと連帯して24万円の各支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用(参加に要した費用を含む。)の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条,65条1項本文,66条を適用し,仮執行宣言は相当でないからその申立てを却下し,主文のとおり判決する。 大津地方 参加に要した費用を含む。)の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条,65条1項本文,66条を適用し,仮執行宣言は相当でないからその申立てを却下し,主文のとおり判決する。 大津地方裁判所民事部裁判長裁判官神吉正則裁判官島村典男裁判官永井美奈

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