令和6(う)170 詐欺幇助、詐欺、所得税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年9月30日 名古屋高等裁判所 破棄自判 名古屋地方裁判所
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判決文本文2,702 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役8年6月及び罰金800万円に処する。 原審における未決勾留日数中150日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは、金4万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 1 本件事案の概要と控訴の趣意本件は、被告人が、①被害者である男性3名がそれぞれ自己に好意を寄せていることに乗じ、自身が金銭的な問題を抱えている旨仄めかし、その支払ができないとの種々の虚偽事実を告げて合計約1億5000万円を詐取し(原判示第2ないし第4)、②男性を籠絡して自己に好意を抱かせた後に金銭をだまし取る手法等をまとめた文書データを販売し、助言する方法により、同データを購入した本犯者(ら)が合計約1000万円を詐取するのを幇助し(原判示第1)、③自身が詐取した金員を所得として申告せずに令和3年分及び令和4年分の所得税額合計約4000万円を免れた(原判示第5)事案である。弁護人の控訴趣意は量刑不当の主張であり、被告人を懲役9年及び罰金800万円に処した原判決の量刑が重過ぎて不当であるというのである。 2 原判決の量刑判断の概要原判決はまず、重い詐欺の各事案についてみると、マッチングアプリ等を通じて知り合った被害者らの男性心理を手玉に取り、その好意に付け込む誠に狡猾な犯行であるとした上、被害額は非常に多額に及ぶなど生じた結果も重大であり、被告人は詐取した金銭をホストクラブでの遊興費等に費消し何ら被害回復の措置は講じられておらず、被害者らが厳罰を望むのも当然であるとした。また、被告人は、同様の詐欺の手法をマニュアル化してインターネット上で販売し、実際にそれを利用した本犯者らが約100 何ら被害回復の措置は講じられておらず、被害者らが厳罰を望むのも当然であるとした。また、被告人は、同様の詐欺の手法をマニュアル化してインターネット上で販売し、実際にそれを利用した本犯者らが約1000万円もの金銭を詐取するのを幇助し、本犯者の求めに応じ て男性の籠絡方法を助言するなど、主体的に同種犯罪を助長しており、この点も悪質であるとし、更に被告人が、被害者らから得た金銭につき税務申告する必要性を認識しながらその申告を怠って多額の税金をほ脱した点も量刑上看過できないとした。そして、被告人は、意中のホストらの売上げに貢献するための資金を得たいなどと考えて本件各犯行に及んでおり、その動機は誠に身勝手で酌むべき余地はないとし、以上によれば、被告人の刑事責任は相当重いといわざるを得ないとした。その上で、被告人が事実をいずれも認めた上、被害者らに対する謝罪と賠償の意思を示すなど、被告人なりの反省の態度を示していること、詐欺幇助の点については本犯者と被害者らとの間で示談が成立していると窺われること、原判示第3の各犯行で詐取した金額合計1億1000万円余の使途先であるホストがそのうち、1800万円弱を同被害者に返還する意向を示していること、知人らが社会復帰後の支援を表明していること、前科は異種罰金前科1犯にとどまること等も考慮し、被告人を上記刑に処した。 3 当裁判所の判断⑴ 上記のような原判決による量刑事情の指摘及び評価並びにこれに基づく量刑判断に誤りはなく、その量刑が、その言渡しの時点で重過ぎて不当であるとはいえない。 ⑵ 弁護人は、原判決は、被告人が意中のホストらの売上げに貢献するための資金を得たいなどと考えて本件各犯行に及んでおり、その動機は誠に身勝手で酌むべき余地はないと判断しているところ、 いえない。 ⑵ 弁護人は、原判決は、被告人が意中のホストらの売上げに貢献するための資金を得たいなどと考えて本件各犯行に及んでおり、その動機は誠に身勝手で酌むべき余地はないと判断しているところ、本件は、幼少期から両親による虐待がなされ、学校生活においても友人に恵まれない等居場所がなく、常に寂しさのような感情を有していた被告人自身の生い立ちを考慮すれば、愛情に飢えた被告人をホストらに食い物にされた事案であり、本件各犯行当時、ホスト及びホストクラブは被告人の存在を承認する唯一の居場所で、単なる遊興・浪費の事案とは異にするものであるから、本件各犯行の動機につき酌むべき余地がないと断ずるのは相当でない、と主張する。 しかしながら、被告人の生い立ちや被告人とホスト等の関係が弁護人の主張のとおりであるとしても、本件のような詐欺等あるいは脱税の犯行に及ぶことを正当化できる事情は何ら見出すことができないのであって、動機が身勝手で酌むべき余地はないとした原判決の評価に誤りは認められない。弁護人の主張は採用できない。 ⑶ もっとも、当審における事実取調べの結果によれば、原判決後、被告人は改めて、自身の責任が重大であることを自覚し、被害者らに謝罪の意思を示すなど、被告人なりに更に反省を深めていることに加え、上記原判示第3の各犯行の詐取金の使途先であるホストが同被害者に損害賠償として1800万円を支払うとともに、同ホストが勤めていたホストクラブの店長も同被害者に損害賠償として1140万円を支払うことを予定しており、交渉中であることなどが認められる。 こうした事情と原判決時点の事情を併せ考慮すると、原判決の量刑は重過ぎるに至ったというべきであり、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認められる。 そこで、 であることなどが認められる。 こうした事情と原判決時点の事情を併せ考慮すると、原判決の量刑は重過ぎるに至ったというべきであり、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認められる。 そこで、刑訴法397条2項により原判決を破棄した上、同法400条ただし書を適用し、本件被告事件について次のとおり更に判決する。 原判決が認定した各罪となるべき事実にその挙示する法令(科刑上一罪の処理、刑種の選択、法律上の減軽、併合罪の処理を含む。)を適用し、その処断刑期の範囲内で、被告人を懲役8年6月及び罰金800万円に処し、刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中150日をその懲役刑に算入し、その罰金を完納することができないときは、同法18条により金4万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し、原審における訴訟費用については刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。 令和6年9月30日名古屋高等裁判所刑事第2部 裁判長裁判官田邊三保子 裁判官細野高広 裁判官山田順子

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