上記の者に対する危険運転致死傷被告事件について、当裁判所は、検察官林正章及び同高栁美希、国選弁護人清水友香(主任)及び同辰野真也並びに被害者参加人A、被害者参加弁護士淺野高宏及び同倉茂尚寛各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役8年に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和4年11月14日午後1時2分頃、普通乗用自動車を運転し、札幌市甲区(住所省略)先の信号機により交通整理の行われている交差点を乙方面から丙区方面に向かい直進するに当たり、同交差点の対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを同交差点入口の停止線手前約115メートルの地点で認めながら、これを殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約90ないし92キロメートルで自車を運転して同交差点内に進入したことにより、折から左方道路から信号に従い進行してきたB(当時63歳)運転の普通乗用自動車を直前に迫って認め、急制動の措置を講じる間もなく、同車右側面部に自車前部を衝突させ、その衝撃により前記B運転車両をその左前方に弾き飛ばし、自車対向車線で信号に従って停止していたC(当時51歳)運転の普通乗用自動車左前部に前記B運転車両左側面部を衝突させ、さらに、自車を対向車線に逸走させて前記C運転車両前部に自車後部を衝突させ、よって、前記Bに全身打撲複雑骨折の傷害を負わせ、同日午後2時23分頃、札幌市甲区(住所省略)所在の丁病院において、同人を同傷害により死亡させるとともに、前記Cに加療約1週間を要する頸椎捻挫の傷害を、同人運転車両の同乗者D(当時51歳)に加療約1週間を要する頸椎捻挫の傷害をそれぞれ負わせた。 (証拠の標目) (省略)(法令の適用) 罰条危険運転致死の点自 の傷害を、同人運転車両の同乗者D(当時51歳)に加療約1週間を要する頸椎捻挫の傷害をそれぞれ負わせた。 (証拠の標目) (省略)(法令の適用) 罰条危険運転致死の点自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条7号(人を死亡させた場合)危険運転致傷の点被害者ごとに自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条7号(人を負傷させた場合)科刑上一罪の処理刑法54条1項前段、10条(1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い危険運転致死の罪の刑で処断)訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由)被告人は、白昼の時間帯に、市内中心部の幹線道路において、最高速度の時速50キロメートルを大きく超える時速約90ないし92キロメートルもの高速度で、赤信号の表示を無視して本件犯行現場の交差点に進入しており、その犯行態様は、人の死傷に関わる重大な事故を引き起こす危険性が高い悪質なものである。本件犯行により、何ら落ち度のない1名の尊い命が失われ、2名が看過できない傷害を負わされたという被害結果は誠に重大である。大切な家族を奪われた遺族の悲しみや喪失感も非常に大きいものがあるが、被告人からは見るべき慰謝の措置は講じられておらず、遺族が峻烈な処罰感情を有しているのも当然である。 被告人は、バッティングセンターでバッティングができなかったことなど、様々な些細な出来事にいら立ちを募らせ、高速度で交差点の信号を無視する運転を継続するうちに、前記交差点付近の道路に差し掛かり、赤信号の表示を確認しながら、急ブレーキを踏むよりもそのまま進行した方が安全に通過できるなどと考えて本件犯行に及んでいる。このような動機・経緯等に関し、被告人の精神鑑定を行っ 付近の道路に差し掛かり、赤信号の表示を確認しながら、急ブレーキを踏むよりもそのまま進行した方が安全に通過できるなどと考えて本件犯行に及んでいる。このような動機・経緯等に関し、被告人の精神鑑定を行った医師は、被告人には、感情のコントロールや生活上の問題を適切に解決することが苦手で、不快な環境刺激に対して過敏に情動が反応していら立った状態となり、短絡的・衝動的に他者の被害を顧みずに危険行動に及ぶといった特異な人格性向があり、 本件犯行も同様の心理的な機序により惹起されたものと推察されるが、被告人に明らかな精神障害はなく、こうした人格性向も飽くまで正常心理の範囲内であると述べている。そうすると、前記のような動機・経緯に酌むべきものがあるとはいえず、被告人は相応の非難を免れない。 以上によれば、本件の犯情は相当に悪く、被害者1名の危険運転致死(信号殊更無視)の同種事案の中では、ひき逃げ等悪質な交通法規違反を伴っていないことからして、最も重い部類とまではいえないものの、やや重めから中程度の部類に位置づけられる。 その上で、一般情状について検討すると、被告人は、前記の人格性向や成熟度の低さ等から誠実な振る舞いができないが、被告人なりに反省しているとしても、本件の重大性を認識して深く反省しているとはいえないし、被告人の母親が社会復帰後被告人に対する実効的な監督をすることも期待し難く、その他に量刑を大きく左右する事情は見当たらない。 以上を踏まえ、被告人を主文の刑に処するのが相当と判断した。 (求刑懲役10年)令和5年10月5日札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官吉戒純一 裁判官藤井俊彦 裁判官小町勇 方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官 吉戒純一 裁判官 藤井俊彦 裁判官 小町勇祈
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